JP2011021308A - 繊維処理剤および合成繊維の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 本発明の目的は、各成分の高濃度水性液(少なくとも30重量%以上)を用いて処理剤を調製する場合であっても、室温(20〜25℃)で溶解・混合して均一安定なエマルションである繊維処理剤を調製でき、かつカード・練条・粗紡・精紡などの紡績工程においてローラー巻付や脱落スカムの発生が少なく、高速紡績に適応できる繊維処理剤、およびこの繊維処理剤を用いた合成繊維の製造方法を提供することである。
【解決手段】 本発明の繊維処理剤は、炭素数8〜18の脂肪酸カリウム塩からなるA成分と、アクリル樹脂からなるB成分と、炭素数6〜8のアルキル基を有するアルキル燐酸エステルカリウム塩および/またはポリオキシアルキレンアルキル燐酸エステルカリウム塩からなるC成分とを必須成分として含むものである。
【選択図】 なし

Description

本発明は、繊維処理剤および合成繊維の製造方法に関する。本発明は、さらに詳しくは、合成繊維製造のための繊維処理剤およびこれを用いた合成繊維の製造方法に関する。
合成繊維紡績用繊維処理剤としては、従来から、各種のアルキル燐酸エステル塩を主成分とし、ノニオン活性剤を配合したものが広く用いられている。なかでも、平均炭素数16〜22のアルキル燐酸エステルカリウム塩を主成分とし、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル系活性剤またはポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル系活性剤とポリオキシアルキレンアルキルアミンとを配合した繊維処理剤が主流として用いられている。
上記繊維処理剤は高温多湿条件下であっても粘着性が小さいため、紡績工程においてローラー巻付や脱落スカムの発生が少ないという特性を有している。また、平均炭素数16〜22のアルキル燐酸エステルカリウム塩を主成分とし、パラフィンワックス系成分を配合した繊維処理剤は高速紡績に適応するという特性がある(特許文献1〜3等参照)。また、平均炭素数16〜22のアルキル燐酸エステルカリウム塩を主成分とした繊維処理剤において、パラフィンワックス系成分を使用しなくても炭素数6〜8の燐酸エステルカリウム塩とポリオキシアルキレンアルキルエーテル系活性剤、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル系活性剤またはポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル系活性剤を配合した繊維処理剤は高速紡績に適応するほか、紡糸・延伸工程でも使用できるという特性がある(特許文献4参照)。
一般に上記繊維処理剤は、繊維処理剤を合成繊維に付与する製造現場で、処理剤を構成する各成分の高濃度水性液(少なくとも30重量%以上)と場合によっては水を混合して、各成分が所定の濃度になるように調製される。従って、繊維処理剤の製品コスト(各成分の輸送費、処理剤の製造費等)を安価にするために、各成分の水性液は出来る限り高濃度のものが望まれる。
しかしながら、これら特許文献の繊維処理剤の主成分である平均炭素数16〜22のアルキル燐酸エステルカリウム塩の高濃度水性液は、60℃以下の水温では水に十分に溶解せず、極めて不安定なエマルションとなる。したがって、繊維処理剤を合成繊維に付与する製造現場では、溶解水を70℃以上に加温してから、この高濃度水性液を溶解水や他成分(水性液)等と混合して処理剤を調製しているのが現状である。このことは製造現場においてエネルギー浪費を強いていることにつながり、また溶解設備に加温装置を付帯させる必要があり、設備的な負担が生じている。この問題は併用するほかの成分共存下で溶解しても同様である。
特許第3222215号公報 特開2002−020971号公報 特開2004−204363号公報 特開2008−063713号公報
本発明の目的は、各成分の高濃度水性液(少なくとも30重量%以上)を用いて処理剤を調製する場合であっても、室温(20〜25℃)で溶解・混合して均一安定なエマルションである繊維処理剤を調製でき、かつカード・練条・粗紡・精紡などの紡績工程においてローラー巻付や脱落スカムの発生が少なく、高速紡績に適応できる繊維処理剤、およびこの繊維処理剤を用いた合成繊維の製造方法を提供することである。
上記課題を解決するために、本発明者らは鋭意検討した結果、炭素数8〜18の脂肪酸カリウム塩、アクリル樹脂および炭素数6〜8のアルキル基を有するアルキル燐酸エステルカリウム塩および/またはポリオキシアルキレンアルキル燐酸エステルカリウム塩を必須成分として、それぞれを特定量含む繊維処理剤であれば、上記課題が解決されることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明にかかる繊維処理剤は、炭素数8〜18の脂肪酸カリウム塩からなるA成分と、アクリル樹脂からなるB成分と、炭素数6〜8のアルキル基を有するアルキル燐酸エステルカリウム塩および/またはポリオキシアルキレンアルキル燐酸エステルカリウム塩からなるC成分を必須成分として含むものであり、A成分を100重量%としたときに、B成分の配合割合が5〜35重量%であり、C成分の配合割合が2〜20重量%であるとより好ましい。
本発明の繊維処理剤では、以下に示す(1)〜(4)から選ばれるいずれかの構成要件をさらに満足すると好ましい。
(1)ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテルおよびポリエチレングリコール脂肪酸エステルから選ばれる少なくとも1種のD成分をさらに含有する。
(2)上記(1)において、A成分を100重量%としたときに、B成分の配合割合が5〜35重量%であり、C成分の配合割合が2〜20重量%であり、D成分の配合割合が8〜50重量%である。
(3)繊維処理剤が水をさらに含む水性液となっており、A成分、B成分およびC成分の合計量の繊維処理剤全体に占める配合割合が0.05〜20重量%である。
(4)繊維処理剤が短繊維用の処理剤である。
本発明にかかる合成繊維の製造方法は、紡糸工程、延伸工程および仕上工程から選ばれる少なくとも1つの工程で、上記繊維処理剤を原料合成繊維に付与する製造方法である。ここで、合成繊維に付着したA成分、B成分およびC成分の合計量が合成繊維の0.08〜2.0重量%となるように調整されると好ましく、合成繊維がポリエステル繊維であるとより効果を発揮し、なかでもポリエチレンテレフタレート繊維であるとさらに効果を発揮する。
本発明によれば、各成分の高濃度水性液を混合して繊維処理剤を調製する場合であっても、室温で溶解・混合して、均一安定なエマルションである繊維処理剤を調製でき、溶解時の加温が省略でき、省エネルギー化が図れる。また、溶解設備に加温装置が付帯していなくても使用可能である。
また、たとえば、本発明の繊維処理剤によって処理されたポリエステル短繊維では高温多湿条件下であってもローラー巻付や脱落スカムの発生が少なく、カード・練条・粗紡・精紡等の各工程を高速化しても、静電気の発生、繊維損傷を抑制でき、良好なドラフト性が得られる。したがって、品質の良好な紡績糸が得られる。
U%の定義を示す模式図
〔繊維処理剤〕
本発明の繊維処理剤は、A成分、B成分およびC成分を必須成分とする繊維処理剤であり、好ましくはD成分をさらに含有する。
本発明の繊維処理剤は、合成繊維製造のための紡糸工程、延伸工程および仕上工程から選ばれる少なくとも1つの工程で使用される。したがって、本発明の繊維処理剤は、紡糸工程、延伸工程および仕上工程のいずれか1つの工程で使用されていてもよいが、仕上工程で使用されるのが好ましい。
以下、本発明の繊維処理剤を構成する各成分を説明する。
<A成分>
A成分は、炭素数8〜18の脂肪酸カリウム塩であり、好ましくは炭素数10〜12の脂肪酸カリウム塩であり、さらに好ましくは炭素数12の脂肪酸カリウム塩である。A成分は、繊維に平滑性および油膜強度と若干の制電性を付与する成分である。なお、ここで、炭素数8〜18とは、脂肪酸カリウム塩を構成する脂肪酸の炭素数が8〜18であるという意味である。また、A成分の高濃度水性液(少なくとも30重量%以上)は、水に室温(20〜25℃)で溶解・混合し、均一安定なエマルションとなるものである。A成分の水性液としては、具体的には50重量%以下の水性液の調製が可能である。
A成分としては、たとえば、カプリル酸カリウム、カプリン酸カリウム、ラウリン酸カリウム、ミリスチン酸カリウム、パルミチン酸カリウム、ステアリン酸カリウム、オレイン酸カリウム等が挙げられる。なかでも、A成分がラウリン酸カリウムであると、高速紡績時の制電性、巻付防止性、スカム防止性および延伸工程における濡れ性のバランスが良いという点で好ましい。A成分は、これらの脂肪酸カリウム塩のうちの1種から構成されていてもよく、または、2種以上から構成されていてもよい。A成分としては、たとえば、下記化学式(A)で示される脂肪酸カリウム塩が挙げられる。
Figure 2011021308
(但し、上記化学式(A)において、Rは炭素数7〜17の鎖式炭化水素から水素原子1つを除いたものである。)
の炭素数は、7〜17であり、好ましくは9〜11、特に好ましくは11である。Rの炭素数が7未満であると、油膜強度が弱くなり高速紡績時の繊維損傷が発生しやすくなることがある。一方、Rの炭素数が17超であると、濡れ性および制電性が悪くなることがある。また、Rは直鎖の鎖式炭化水素から水素原子1つを除いたものが好ましく、分岐したものでは直鎖のものと比較して若干粘着性が高くなり、スカム発生や主にそれに起因するローラー巻付が若干多くなることがある。Rとしては炭素数7〜17の鎖式炭化水素から水素原子1つを除いたものであれば、特に限定はなく、たとえば、エナンチル基、n−ノニル基、n−ウンデシル基、n−ウンデシル基、n−トリデシル基、n−ペンタデシル基、マルガリル基、cis−9−ヘプタデセニル基等を挙げることができる。これらのうちでも、炭素数7〜17の鎖式炭化水素から水素原子1つを除いたものとしては、n−ノニル基、n−ウンデシル基が好ましく、n−ウンデシル基が特に好ましい。
A成分はカリウム塩であるが、塩の形態がナトリウム塩やリチウム塩の場合は、制電性が悪くなり、アミン塩では油膜強度が弱くなり高速紡績時の繊維損傷が発生しやすくなることがある。
A成分の乾燥重量当りの酸価(単位:mg/gKOH、以下同じ)は10以下が好ましく、さらに好ましくは5以下であり、特に好ましくは0(完全中和)である。A成分の乾燥重量当りの酸価が10超であると制電性が悪くなることがある。ここで、乾燥重量当りの酸価とは、当該成分を赤外線ランプ照射下110℃で揮発分を蒸発させ、連続する150秒間において重量変動幅が0.15%以下になった時点で得られる試料について、JIS−K0070に従って測定されたものをいう。
A成分の製造方法については、特に限定はなく、たとえば、炭素数8〜18の脂肪酸を水酸化カリウムで中和して製造できる。
<B成分>
B成分はアクリル樹脂であり、好ましくは弗素を含有しないアクリル樹脂である。B成分は繊維に対して高い接圧下での油膜強度と若干の平滑性を付与し、さらに粘着性を低減させローラー巻付を防止する成分である。また、B成分の高濃度水性液(少なくとも30重量%以上)は、水に室温(20〜25℃)で溶解・混合し、均一安定なエマルションとなるものである。B成分の水性液としては、具体的には60重量%以下の水性液の調製が可能である。
アクリル樹脂は、アクリル酸および/またはその誘導体を必須成分とする重合性成分を重合して得られる重合物である。たとえば、化学式(BM1)〜(BM4)等で示される単量体を必須成分とする重合性成分を重合して得られる重合物である。重合物が共重合物の場合、それぞれの単量体同士の結合形式については特に限定はなく、ブロック状、ランダム状、交互状のいずれの結合形式であってもよいが、通常はランダム状である。
アクリル酸の誘導体としては、たとえば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル等のアクリル酸エステル;メタクリル酸、エタクリル酸等のα−置換アクリル酸;メタクリル酸メチル等のα−置換アクリル酸エステル(以上、化学式(BM1))等や、(α−置換)アクリル酸アミド(化学式(BM2))、(α−置換)アクリロニトリル(化学式(BM3))、(α−置換)アクリル酸アミドメチロール化物(化学式(BM4))等が挙げられる。
重合性成分は、アクリル酸および/またはその誘導体以外にその他の単量体をさらに含んでいてもよいが、カード・練条工程などの静電気障害の点から、重合性成分には弗素を含まないものが好ましい。このようなその他の単量体としては、たとえば、マレイン酸(エステル)等のアクリル酸以外の不飽和酸(エステル)、スチレン等の不飽和炭化水素、酢酸ビニル等のビニルエステル、塩化ビニル等のハロゲン化ビニル等を挙げることができる。その他の単量体をさらに含有する重合性成分を重合して得られる重合物としては、たとえば、アクリル−スチレン共重合体、アクリル−酢酸ビニル共重合体、アクリル−塩化ビニル共重合体等が挙げられる。
アクリル樹脂が(α−置換)アクリル酸を必須成分とする重合性成分を重合して得られる重合物の場合、そのカルボキシル基の全部または一部が苛性アルカリやアンモニア水等のアルカリ性物質によって中和されていてもよい。
Figure 2011021308
(但し、化学式(BM1)においてRおよびRは水素原子またはアルキル基である)
Figure 2011021308
Figure 2011021308
Figure 2011021308
(但し、化学式(BM2)〜(BM4)においてRは水素原子またはアルキル基である)
上記化学式(BM1)〜(BM4)において、アルキル基の炭素数は8以下が好ましく、炭素数4以下がさらに好ましい。アルキル基の炭素数が8より大きいと、得られたアクリル樹脂の粘着性が大きくなり、紡績工程においてカード通過性が悪くなることがあるほか、ローラー巻付や脱落スカムの発生が多くなることがある。
また、アクリル樹脂は、練条、粗紡および精紡工程における巻付防止の観点から、以下の説明においてAOとして示されるオキシアルキレン基を含まない方がよい場合がある。この場合、アクリル樹脂に含まれるオキシアルキレン基の合計重量割合は、好ましくは20重量%未満、より好ましくは15重量%未満、さらに好ましくは10重量%未満、特に好ましくは5重量%未満、最も好ましくは0重量%である。オキシアルキレン基の合計重量割合が20重量%以上であると、粘着性が高まり、巻付が発生することがある。
重合性成分の重合方法については特に制限はないが、好ましくは乳化重合を挙げることができる。乳化重合であると、得られるアクリル樹脂は水性液中に乳化分散した形態となっているので乳化工程を経ずにそのまま使用することができる。
乳化重合で用いる乳化剤としては、アニオン活性剤、ノニオン活性剤、両性活性剤のいずれかが好ましい。カチオン活性剤を乳化剤に用いると、得られるアクリル樹脂を含む水性液もカチオン性となるため、各成分を配合した際に、アニオン性のA成分およびC成分とコンプレックスを形成して溶液安定性が悪くなることがある。
<C成分>
C成分は炭素数6〜8のアルキル基を有するアルキル燐酸エステルカリウム塩および/またはポリオキシアルキレンアルキル燐酸エステルカリウム塩である。C成分は繊維に制電性と若干の集束性および油膜強度を付与する成分である。なお、ここで、炭素数6〜8とは、アルキル燐酸エステルカリウム塩を構成するアルキル基の炭素数が6〜8であるという意味であり、ポリオキシアルキレン結合の分の炭素は含まない。また、C成分の高濃度水性液(少なくとも30重量%以上)は、水に室温(20〜25℃)で溶解・混合し、均一安定なエマルションとなるものである。C成分の水性液としては、具体的には95重量%以下の水性液の調製が可能である。
C成分としては、たとえば、n−ヘキシル燐酸カリウム、n−ヘプチル燐酸カリウム、n−オクチル燐酸カリウム、ポリオキシエチレンn−オクチル燐酸カリウム等が挙げられる。なかでも、C成分がn−ヘキシル燐酸カリウムであると、高速紡績時の制電性、巻付防止性およびスカム防止性のバランスが良いという点で好ましい。C成分は、これらのアルキル燐酸エステルカリウム塩のうちの1種から構成されていてもよく、または、2種以上から構成されていてもよい。
C成分としては、たとえば、下記化学式(C1)で示されるモノアルキル燐酸ジカリウムまたはモノ(ポリオキシアルキレンアルキル)燐酸ジカリウム(C1成分)、下記化学式(C2)で示されるジアルキル燐酸モノカリウムまたはビス(ポリオキシアルキレンアルキル)燐酸モノカリウム(C2成分)、下記化学式(C3)で示されるモノアルキル燐酸水素モノカリウムまたはモノ(ポリオキシアルキレンアルキル)燐酸水素モノカリウム(C3成分)、および下記化学式(C4)で示される縮合燐酸アルキルエステルのカリウム塩または縮合燐酸ポリオキシアルキレンアルキルエステルのカリウム塩(C4成分)等を挙げることができる。下記化学式(C4)で示されるC4成分は、その1例で燐酸が縮合した2量体となった構造に基づくものであるが、さらに縮合した3量体、4量体、5量体、・・・・等となった構造に基づくものでもよい。C成分は、これらの成分のうちの1種から構成されていてもよく、または、2種以上から構成されていてもよい。無論、C成分は、これらの成分の4種から構成されていてもよい。C成分は、通常、これらの成分の混合物を意味する。
Figure 2011021308
Figure 2011021308
Figure 2011021308
Figure 2011021308
(但し、上記化学式(C1)〜(C4)において、Rは炭素数6〜8のアルキル基であり、AOはオキシアルキレン基、nはモル数であり、通常平均モル数で表記され、nは0または正数である)
としては炭素数6〜8のアルキル基であれば、特に限定はないが、直鎖のアルキル基が好ましい。たとえば、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基等のアルキル基を挙げることができる。これらのうちでも、n−ヘキシル基が特に好ましい。
化学式(C1)〜(C4)において、AOはオキシアルキレン基であり、たとえば、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基等を挙げることができる。また、化学式(C1)〜(C4)において、nはオキシアルキレン基の平均モル数を示し、一般には平均付加モル数ということもある。nは好ましくは0〜10であり、さらに好ましくは0〜4であり、特に好ましくは0である。nが10超であってもよいが、この場合は、スカム発生が多くなり、粘着性が増大してローラー巻付が発生することがある。
C成分の中和形態としてはカリウム塩が好ましい。さらにC成分の乾燥重量当りの酸価は30以下が好ましく、より好ましくは20以下であり、さらに好ましくは10以下である。C成分の乾燥重量当りの酸価が30超であると制電性が悪くなることがある。
C成分の製造方法については、特に限定はないが、たとえば、炭素数6〜8のアルコールまたは前述のアルコールにエチレンオキシド等のアルキレンオキシドを付加させたポリオキシアルキレンアルキルエーテルを無水燐酸と反応させて酸性アルキル燐酸エステルとし、さらに水酸化カリウムで中和して製造できる。
炭素数6〜8のアルコールとしては、炭素数6〜8の直鎖の鎖式飽和第1級アルコールが好ましく、たとえば、n−ヘキシルアルコール、n−ヘプチルアルコール、n−オクチルアルコール等を挙げることができる。これらのアルコールを1種または2種以上使用してもよい。
上記製造方法でC成分を製造した場合、得られるC1成分〜C4成分のモル比率は、おおむね(C1成分)>(C2成分)>(C4成分)>(C3成分)を満たすが、C1成分およびC2成分の比率は同等または逆転する場合もある。
<D成分>
D成分は、本発明の繊維処理剤においてさらに含有してもよい成分である。D成分はポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテルおよびポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステルから選ばれる少なくとも1種であり、繊維に集束性を付与し、また繊維処理剤の繊維への濡れ性を付与する成分である。D成分は、1種から構成されていてもよく、または、2種以上から構成されていてもよい。
ポリオキシアルキレンアルキルエーテルは、たとえば、下記化学式(D1)で表現することができる成分であり、この成分をD1成分ということがある。
Figure 2011021308
(但し、化学式(D1)において、Rはアルキル基、AOはオキシアルキレン基、nはモル数であり、通常平均モル数で表記される。)
化学式(D1)において、Rはアルキル基であれば特に制限はないが、Rが炭素数8〜14のアルキル基であるのが好ましく、Rが直鎖であるとさらに好ましい。Rの炭素数が8〜14の範囲外であってもよいが、Rの炭素数が8未満であると、濡れ性が悪くなることがある。一方、Rの炭素数が14超であると、常温で固体状となるため集束性が悪くなることがある。
としては、たとえば、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、ラウリル基、n−トリデシル基、ミリスチル基、2−エチルヘキシル基、iso−ウンデシル基、iso−トリデシル基、2−ドデシル基、3−ドデシル基、2−トリデシル基、3−トリデシル基等を挙げることができる。
化学式(D1)において、AOはオキシアルキレン基であり、たとえば、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基等を挙げることができる。なかでも、オキシアルキレン基としては、制電性および濡れ性の点で、オキシエチレン基が好ましい。
オキシアルキレン基がオキシエチレン基を含む場合、オキシアルキレン基全体に占めるオキシエチレン基の割合は、好ましくは75モル%以上、特に好ましくは100モル%である。
オキシアルキレン基が2種以上のオキシアルキレン基から構成される場合、それぞれ種類の異なるオキシアルキレン基の結合形式については、特に限定はなく、ブロック状、ランダム状、交互状のいずれの結合形式であってもよい。
化学式(D1)において、nはオキシアルキレン基の平均モル数を示し、一般には平均付加モル数ということもある。オキシアルキレン基の平均モル数は、D1成分1モル当たりに含まれるオキシアルキレン基の総モル数を意味する。nは好ましくは3〜12である。nが3〜12の範囲外であってもよいが、nが3未満であると、濡れ性が悪くなることがある。一方、nが12超であると、スカム発生が多くなり、粘着性が増大してローラー巻付が発生することがある。
D1成分としては、たとえば、ポリオキシエチレンオクチルエーテル、ポリオキシエチレンデシルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンミリスチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンオクチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンデシルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンミリスチルエーテル等が挙げられる。D1成分は、これらのうちの1種から構成されていてもよく、または、2種以上から構成されていてもよい。
D1成分は、たとえば、n−オクチルアルコール、ラウリルアルコール等の鎖式飽和アルコールに、触媒存在下で、エチレンオキシド等のアルキレンオキシドを付加反応させて製造される。
次に、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテルは、たとえば、下記化学式(D2)で表現することができる成分であり、この成分をD2成分ということがある。
Figure 2011021308
(但し、化学式(D2)において、Rはアルケニル基(炭化水素基中に二重結合1つ)、AOはオキシアルキレン基、nはモル数であり、通常平均モル数で表記される。)
D2成分について特に制限はないが、Rが炭素数8〜18のアルケニル基であるのが好ましく、Rが直鎖であるとさらに好ましい。なお、2重結合部分の結合形態は、シスおよびトランスのいずれでもよい。Rの炭素数が8〜18の範囲外であってもよいが、Rの炭素数が8未満であると、濡れ性が悪くなることがある。一方、Rの炭素数が18超であると、常温で固体状となるため集束性が悪くなることがある。
としては、たとえば、3−ドデセニル基、オレイル基、エライジル基等を挙げることができる。
化学式(D2)において、AOはオキシアルキレン基であり、たとえば、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基等を挙げることができる。なかでも、オキシアルキレン基としては、制電性および濡れ性の点で、オキシエチレン基が好ましい。
オキシアルキレン基がオキシエチレン基を含む場合、オキシアルキレン基全体に占めるオキシエチレン基の割合は、好ましくは75モル%以上、特に好ましくは100モル%である。
オキシアルキレン基が2種以上のオキシアルキレン基から構成される場合、それぞれ種類の異なるオキシアルキレン基の結合形式については、特に限定はなく、ブロック状、ランダム状、交互状のいずれの結合形式であってもよい。
化学式(D2)において、nはオキシアルキレン基の平均モル数を示し、一般には平均付加モル数ということもある。オキシアルキレン基の平均モル数は、D2成分1モル当たりに含まれるオキシアルキレン基の総モル数を意味する。好ましくは3〜12である。nが3〜12の範囲外であってもよいが、nが3未満であると、濡れ性が低くなることがある。一方、nが12超であると、スカム発生が多くなり、粘着性が増大してローラー巻付が発生することがある。
D2成分としては、たとえば、ポリオキシエチレン3−ドデセニルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンエライジルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン3−ドデセニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンエライジルエーテル等が挙げられる。D2成分は、これらのうちの1種から構成されていてもよく、または、2種以上から構成されていてもよい。
D2成分は、たとえば、3−ドデセン1−オール、オレイルアルコール、エライジルアルコール等の鎖式不飽和アルコールに、触媒存在下で、エチレンオキシド等のアルキレンオキシドを付加反応させて製造される。
次に、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテルは、たとえば、下記化学式(D3)で表現することができる成分であり、この成分をD3成分ということがある。
Figure 2011021308
(但し、化学式(D3)において、Rはアルキル基、AOはオキシアルキレン基、nはモル数であり、通常平均モル数で表記される。)
D3成分について特に制限はないが、Rが炭素数6〜12のアルキル基であるのが好ましく、Rが直鎖であるとさらに好ましい。Rの炭素数が6〜12の範囲外であってもよいが、Rの炭素数が6未満であると、濡れ性が悪くなることがある。一方、Rの炭素数が12超であると、常温で固体状となるため集束性が悪くなることがある。
としては、たとえば、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、ラウリル基、2−エチルヘキシル基、iso−ノニル基、iso−デシル基、iso−ウンデシル基、2−オクチル基、3−オクチル基、2−ノニル基、3−ノニル基、2−2−ドデシル基、3−ドデシル基等を挙げることができる。
化学式(D3)において、AOはオキシアルキレン基であり、たとえば、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基等を挙げることができる。なかでも、オキシアルキレン基としては、制電性および濡れ性の点で、オキシエチレン基が好ましい。
オキシアルキレン基がオキシエチレン基を含む場合、オキシアルキレン基全体に占めるオキシエチレン基の割合は、好ましくは75モル%以上、特に好ましくは100モル%である。
オキシアルキレン基が2種以上のオキシアルキレン基から構成される場合、それぞれ種類の異なるオキシアルキレン基の結合形式については、特に限定はなく、ブロック状、ランダム状、交互状のいずれの結合形式であってもよい。
化学式(D3)において、nはオキシアルキレン基の平均モル数を示し、一般には平均付加モル数ということもある。オキシアルキレン基の平均モル数は、D3成分1モル当たりに含まれるオキシアルキレン基の総モル数を意味する。nは好ましくは3〜12である。nが3〜12の範囲外であってもよいが、nが3未満であると、濡れ性が悪くなることがある。一方、nが12超であると、スカム発生が多くなり、粘着性が増大してローラー巻付が発生することがある。
化学式(D3)において、Cに結合するRおよびO(酸素原子)の位置関係(配向性)はオルト、メタ、パラいずれでもよい。
D3成分としては、たとえば、ポリオキシエチレンヘキシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルフェニルエーテル等が挙げられる。D3成分は、これらのうちの1種から構成されていてもよく、または、2種以上から構成されていてもよい。
D3成分は、たとえば、オクチルフェノール、ノニルフェノール等の鎖式飽和アルキル基を有するフェノールに、触媒存在下で、エチレンオキシド等のアルキレンオキシドを付加反応させて製造される。
次に、ポリエチレングリコール脂肪酸エステルは、たとえば、下記化学式(D4)で表現することができる成分であり、この成分をD4成分ということがある。
Figure 2011021308
(但し、化学式(D4)において、RおよびRは炭素数1以上の脂肪族アシル基または水素原子である。RおよびRは同一でも異なっても構わないが、RおよびRの両方が水素原子である場合は除かれる。また、nは平均モル数である。なお、通常はD4成分の化学名は脂肪族アシル基とnの数値の組み合わせではなく、構成する脂肪酸とポリエチレングリコールの分子量(MWと略すこともある)の組み合わせで表記される。)
D4成分について特に制限はないが、R、Rの一方が炭素数8〜14の飽和脂肪族アシル基または炭素数8〜18の不飽和脂肪族アシル基、もう一方が水素原子であるもの、つまりポリエチレングリコールモノ脂肪酸エステルが好ましい。D4成分がポリエチレングリコールジ脂肪酸エステルであると制電性・濡れ性が悪くなることがある。また、脂肪族アシル基の炭素数が8未満であると、濡れ性が悪くなることがある。一方、脂肪族アシル基の炭素数が14超(不飽和の場合は18超)であると、常温で固体状となるため集束性が悪くなることがある。また、アシル基の炭化水素の部分は直鎖であればより好ましい。
およびRの例としては、たとえば、C15CO基(カプリロイル基)、C19CO基(カプロイル基)、C1123CO基(ラウロイル基)、C1327CO基(ミリストイル基)、cis−C1733CO基(オレオイル基)、trans−C1733CO基(エライジオイル基)等を挙げることができる。
化学式(D4)において、nはオキシエチレン基の平均モル数を示し、好ましくは6〜14、ポリエチレングリコールの分子量に換算すると300〜600である。nが6未満であると制電性や濡れ性が悪くなることがある。一方、nが14超であると、スカム発生が多くなり、粘着性が増大してローラー巻付が発生することがある。
D4成分としてはポリエチレングリコール(MW=300)モノカプリル酸エステル、ポリエチレングリコール(MW=300)モノカプリン酸エステル、ポリエチレングリコール(MW=300)モノラウリン酸エステル、ポリエチレングリコール(MW=400)モノラウリン酸エステル、ポリエチレングリコール(MW=400)モノオレイン酸エステル、ポリエチレングリコール(MW=600)モノオレイン酸エステル等が挙げられる。D4成分は、これらのうちの1種から構成されていてもよく、または、2種以上から構成されていてもよい。
D4成分は、たとえば、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸等の脂肪酸と、ポリエチレングリコールとを触媒存在下で脱水縮合(エステル化)反応して製造される。また、前記脂肪酸に触媒存在下でエチレンオキシドを付加させて製造することもある。
<A成分〜D成分の配合割合>
本発明の繊維処理剤は、A成分、B成分およびC成分を必須成分とする。
本発明の繊維処理剤中のB成分の配合割合は、D成分の有無にかかわらず、A成分を100重量%としたときに、5〜35重量%であり、好ましくは10〜30重量%であり、より好ましくは15〜25重量%であり、さらに好ましくは20〜25重量%である。B成分の配合割合が5重量%未満であると、油膜強度強化効果や粘着性低減効果が十分ではなく、高速紡績時の繊維損傷抑制、スカム発生の低減、ローラー巻付の防止等が十分でないことがある。一方、B成分の配合割合が35重量%超であると、制電性および集束性が悪くなるほか、濡れ性が悪くなることがある。
本発明の繊維処理剤中のC成分の配合割合は、D成分の有無にかかわらず、A成分を100重量%としたときに、好ましくは2〜20重量%であり、より好ましくは3〜20重量%、さらに好ましくは3〜16重量%である。C成分の配合割合が2重量%未満であると、制電性および集束性が不足することがある。一方、C成分の配合割合が20重量%超であると、高温多湿時の吸湿性が強くなるので粘着性が大きくなり、スカム発生や主にそれに起因するローラー巻付が多くなることがある。
本発明の繊維処理剤は、好ましくは、A成分、B成分およびC成分に加えてD成分をさらに含有する。
本発明の繊維処理剤中のD成分の配合割合については特に限定はないが、A成分を100重量%としたときに、好ましくは8〜50重量%であり、より好ましくは10〜45重量%、さらに好ましくは15〜40重量%である。D成分の配合割合が8重量%未満であると、濡れ性が低くなり、また繊維の集束性が不足することがある。一方、D成分の配合割合が50重量%超であると、スカム発生や主にそれに起因するローラー巻付が多くなるほか、油膜強度が弱くなり高速紡績時の繊維損傷が発生しやすくなることがある。
<その他成分>
本発明の繊維処理剤は、本発明の効果を損なわない範囲で、上記で説明したA成分、B成分、C成分およびD成分以外の成分(その他成分)を含有していてもよい。その他成分としては、たとえば、水;他の界面活性剤;消泡剤;防腐剤;脂肪酸アルキルエステル等の平滑剤等を挙げることができる。本発明の繊維処理剤が水をさらに含む水性液(エマルション)になっていると、外観安定性および流動性という点で好ましい。
なお、その他成分の高濃度水性液(少なくとも30重量%以上)が水に室温(20〜25℃)で溶解・混合できない成分である場合、本発明の繊維処理剤は該成分を実質的に含まないことが好ましい。具体的な成分としては、平均炭素数16〜22のアルキル燐酸エステルおよび/またはその塩が挙げられ、その繊維処理剤全体に占める配合割合は、A成分を100重量%としたときに、5重量%未満が好ましく、1重量%未満がより好ましく、含有しないのがさらに好ましい。
なお、その他成分にはD成分の代わりに他の集束性、濡れ性を付与する成分(以下擬D成分とする)も含まれる。擬D成分の具体例としてはポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリエチレングリコール芳香族酸エステル、ポリプロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンロジンエステル等が挙げられる。但し、擬D成分を使用した場合にはD成分を使用した場合に比べると制電性、スカム発生や主にそれに起因するローラー巻付等の点で劣る場合がある。
本発明の繊維処理剤が水をさらに含む水性液の場合(給油液の場合)、A成分、B成分およびC成分の合計量が繊維処理剤全体に占める配合割合については、特に限定はないが、好ましくは0.05〜20重量%、さらに好ましくは0.1〜10重量%である。A成分、B成分およびC成分の合計量が繊維処理剤全体に占める配合割合が、0.05重量%未満であると、所望の性能が得られない場合があり、繊維処理剤の給油工程において高めの含液率(給油される繊維処理剤重量の繊維重量に対する比率)が必要となるため、液垂れが多くなることがある。一方、A成分、B成分およびC成分の合計量が20重量%超であると、繊維処理剤の安定性が悪くなり、沈殿が発生したり、溶液が増粘したりすることがある。
<繊維処理剤の製造方法>
本発明の繊維処理剤は、A成分、B成分およびC成分を必須とし、必要に応じてD成分やその他成分を混合することによって製造でき、それぞれの成分の混合順序については特に限定はない。A成分の形態には水性液、粉体状およびブロック状等があるが、取り扱い性の上からは水性液が好ましい。B成分は通常は乳化重合によって製造され、C成分は通常中和によって製造される。したがって、本発明の繊維処理剤は、好ましくは、A成分を含む水性液、B成分を含む水性液およびC成分を含む水性液を混合することによって製造される。本発明の繊維処理剤は、好ましくは、A成分を含む水性液、B成分を含む水性液、C成分を含む水性液およびD成分を混合し、必要に応じてその他成分から選ばれる成分をさらに混合して製造してもよい。
さらに好ましくは、本発明の繊維処理剤は、A成分を含む水性液(たとえば、A成分の濃度30〜40重量%)と、B成分を含む水性液(たとえば、B成分の濃度20〜60重量%)と、C成分を含む水性液とD成分とを予め混合して得られる混合液(たとえば、C成分およびD成分の合計の濃度70〜90重量%)と、必要に応じてその他成分とを、加温することなく室温で混合することによって製造される。
本発明の繊維処理剤を構成する各成分は、その高濃度水性液(少なくとも30重量%以上)が水に室温(20〜25℃)で溶解・混合し、均一安定なエマルションとなる成分である。従って、繊維処理剤を合成繊維に付与するような製造現場において、各成分の高濃度水性液を室温で溶解・混合して、安定なエマルションである繊維処理剤を調製することができる。
本発明の繊維処理剤を製造するための原料を取扱、保管、運搬等する場合、A成分は、これ以外の成分(具体的には、B成分、C成分、D成分およびその他成分から選ばれる少なくとも1種)と共存させない方が好ましい。A成分にこれ以外の成分(具体的には、B成分、C成分、D成分およびその他成分から選ばれる少なくとも1種)を共存させた場合、得られる本発明の繊維処理剤の製品安定性が悪くなり、分離や増粘などの外観不良を起こすことがある。B成分についても同様であり、これ以外の成分(具体的には、A成分、C成分、D成分およびその他成分から選ばれる少なくとも1種)と共存させない方が好ましいが、B成分が低濃度品すなわち水中油型エマルションの状態になっている場合は、その他成分と共存可能な場合がある。なお、C成分およびD成分については両者を共存させても、得られる本発明の繊維処理剤の製品安定性は良好であり問題はない。この場合、C成分とD成分の配合品の高濃度品の水性液としては、具体的には90重量%以下の水性液の調製が可能である。もちろん、C成分およびD成分を混合せずに、別々に分けておいてもよい。
また、本発明の繊維処理剤の低濃度(20重量%以下)水性液の調製方法として、A成分、C成分については未中和物、すなわちA成分に相応する脂肪酸、C成分に相応する酸性燐酸エステルを使用し、水性液調製の際に必要量の水酸化カリウム、炭酸カリウムまたは炭酸水素カリウムを添加し、中和後、B成分、必要に応じD成分およびその他成分を添加する方法も挙げられる。この場合、A成分、C成分のいずれか一方のみが未中和物であっても構わない。もちろん、この方法による水性液作製も室温(加温なし)で行うことが可能である。
なお、中和前にB成分を先に溶解させてからA成分未中和物、C成分未中和物を添加する場合は、中和剤に水酸化カリウムを用いるとB成分が水酸化カリウムによって加水分解を受けて変質する可能性があるので好ましくない。
〔合成繊維の製造方法〕
本発明の合成繊維の製造方法は、紡糸工程、延伸工程および仕上工程から選ばれる少なくとも1つの工程で、上記で説明した繊維処理剤を原料合成繊維に付与する製造方法である。本発明の繊維処理剤は仕上工程で付与するのが特に好ましい。
(原料)合成繊維については、特に限定はなく、たとえば、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリオレフィン繊維、ポリフェニレンサルファイド(PPS)繊維、ビニロン繊維、アクリル繊維、ポリケトン繊維、弗素繊維等を挙げることができ、これらの複合繊維も含まれる。なかでも、合成繊維がポリエステル繊維であると、繊維の耐久性や他の繊維との混紡のしやすさの点で好ましく、ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維であるとさらに好ましい。また、合成繊維は紡績工程に供される場合には短繊維が好ましい。なお、ポリエステル繊維とはポリエチレンテレフタレート繊維のほかに、ポリ乳酸(PLA)繊維、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)繊維、ポリブチレンテレフタレート(PBT)繊維、ポリエチレンナフタレート(PEN)繊維、ポリアリレート繊維等エステル結合を形成する反応によって縮合させた高分子からなる繊維を意味し、これらの複合繊維も含まれる。また、短繊維とは、延伸後に所定の長さに切断されたステープルファイバーを意味し、長繊維とは、延伸後、連続繊維の形態で巻き取って製品となるフィラメントを意味する。
以下では、合成繊維がポリエチレンテレフタレート繊維である場合において、製造工程である紡糸工程、延伸工程および仕上工程について、詳しく説明する。
<紡糸工程>
紡糸工程では、ポリエチレンテレフタレート原料が溶融紡糸され、次いで、得られた原料ポリエステル繊維のサブトウに対して集束性・平滑性を付与し、ガイド等の磨耗防止のために、繊維処理剤(以下、紡糸工程で付与される繊維処理剤を紡糸用繊維処理剤ということがある。)が原料ポリエチレンテレフタレート繊維に付与される。紡糸用繊維処理剤は、通常、A成分、B成分およびC成分の合計量が占める割合が0.05〜1.0重量%である水性液(エマルション)となっており、紡糸後のトウに浸漬法またはローラータッチ法で給油される。通常、紡糸用繊維処理剤を付与されたトウは、一旦ケンスに収容されることが多いが、繊維生産設備によってはケンスに収容することなく直ぐに延伸工程に供されることもある。したがって、紡糸工程において延伸用繊維処理剤をも併せて付与することも多い。
<延伸工程>
延伸工程では、紡糸工程で得られる紡糸用繊維処理剤を付与したトウに対して、十分な延伸性を得るために繊維処理剤(以下、延伸工程で付与される繊維処理剤を延伸用繊維処理剤ということがある。)が付与される。
延伸用繊維処理剤は、通常、A成分、B成分およびC成分の合計量が占める割合が0.05〜1.0重量%である水性液(エマルション)となっており、延伸前のトウに浸漬法またはローラータッチ法で給油される。通常、延伸用繊維処理剤は、前述の紡糸用繊維処理剤と同一のものが使用されることが多く、繊維生産設備によっては延伸工程での繊維処理剤付与は省略されることもある。
<仕上工程>
仕上工程では、カードおよび練条工程の静電気防止(制電性)、カードおよび練条工程における集束性、練条、粗紡および精紡工程の巻付防止(平滑性・低粘着性)、カードおよび精紡工程での繊維損傷防止(油膜強度)のために、(その他特殊用途において吸水性(再湿潤性)などを付与することもある)繊維処理剤(以下、仕上工程で付与される繊維処理剤を仕上用繊維処理剤ということがある。)が付与される。高速紡績用仕上用繊維処理剤では通常の紡績用仕上用繊維処理剤よりも高度な制電性、平滑性、油膜強度が要求される。本発明の繊維処理剤は前記特性を兼ね備えている。
仕上用繊維処理剤は、通常、水性液(エマルション)となっている。仕上用繊維処理剤において、A成分、B成分およびC成分の合計量が占める割合が0.05〜20重量%であると好ましく、また、A成分、B成分、C成分およびD成分の合計量が占める割合が0.05〜20重量%であると好ましい。その付与方法は巻縮工程前または巻縮工程後にトウに浸漬法またはローラータッチ法で給油してもよく、または、切断工程後にスプレー法によって給油してもよい。
本発明の合成繊維の製造方法では、紡糸工程、延伸工程および仕上工程から選ばれる少なくとも1つの工程で、本発明の繊維処理剤を原料合成繊維に付与すればよいが、B成分の性質から本発明の繊維処理剤は仕上用繊維処理剤で使用するのが好ましい。本発明の仕上用繊維処理剤は、紡績用に最適である。
<繊維処理剤の付与>
本発明の製造方法において、合成繊維に付着したA成分、B成分およびC成分の合計量は、合成繊維の種類等によっても異なるが、0.08〜2.0重量%、好ましくは0.08〜0.3重量%、より好ましくは0.09〜0.14重量%、さらに好ましくは0.09〜0.12重量%となるように調整される。合成繊維に付着したA成分、B成分およびC成分の合計量が、0.08重量%未満であると、制電性が不足するほか、繊維損傷が多くなることがある。一方、合計量が、2.0重量%超であると、スカム発生や主にそれに起因するローラー巻付の発生が多くなることがある。
先染綿(一旦短繊維として製造された綿を先に染色処理し、その後に仕上用繊維処理剤を付与して製造される綿)などの場合は、紡糸用繊維処理剤や延伸用繊維処理剤は染色工程にて脱落するので、A成分、B成分およびC成分の合計量について、0.15〜0.25重量%となるように調整されていると好ましい。0.15重量%未満では制電性が不足するほか、繊維損傷が多くなることがある。0.25重量%超であると、スカム発生や主にそれに起因するローラー巻付の発生が多くなることがある。また、特殊銘柄の繊維、たとえば、特殊なポリプロピレン繊維ではA成分、B成分およびC成分の合計量が1.8〜2.0重量%が好ましい場合がある。
本発明の繊維処理剤は、上記の紡糸工程、延伸工程、仕上工程を経て、巻縮、切断された短繊維の繊維処理剤として使用されることが好ましい。短繊維は紡績糸、不織布、詰綿等の製造に使用されるが、これらのなかでも本発明の繊維処理剤は、紡績糸の製造に用いる短繊維の繊維処理剤として使用されるのが好ましい。
本発明の繊維処理剤によって処理された短繊維を紡績工程に供すると、高温多湿条件下であってもローラー巻付や脱落スカムの発生が少なく、カード・練条・粗紡・精紡等の各工程を高速化しても、静電気の発生、繊維損傷を抑制でき、良好なドラフト性が得られる。したがって、品質の良好な紡績糸が得られる。
ここで、本発明の繊維処理剤が処理された短繊維を使用して紡績する紡績工程の内、カード工程、練条工程、および精紡工程について簡潔に説明する。
<カード工程>
繊維処理剤が処理された短繊維は、繊維塊を解きほぐした(開繊した)後に、これを梳って超短繊維や未開繊部などを取り除き、スライバー(詰綿・不織布用の場合はウェブ)に仕上げ、スライバーをコイリング装置でケンスに収容する(詰綿・不織布用の場合はウェブの状態で次工程に進む)。当発明の繊維処理剤を用いると、カード工程を高速化しても発生静電気が少なく、コイラーチューブ、ガイドなどにスカムが蓄積しにくい利点がある。また、できあがったスライバーまたはウェブのネップが少ない利点もある。
<練条工程>
得られたカードスライバーを引き伸ばして繊維の平行度を高めることによりスライバー強度を上げ、かつスライバーの太さを均整化する。できあがったスライバーはカード工程同様にケンスに収容する。通常練条工程は2〜3回繰り返される。当発明の繊維処理剤を用いると、練条工程を高速化しても発生静電気が少なく、ローラー、コイラーチューブ、ガイドなどにスカムが蓄積しにくく、ローラーに巻付が起こりにくい利点がある。また、ドラフト性が良好であり、精紡糸の糸斑が小さい利点もある。
<精紡工程>
紡績糸を作製する工程で代表的なものにリング精紡とオープンエンド精紡がある。リング精紡の場合は精紡に先立って練条スライバーに軽く撚りを与えて引き伸ばし、ひも状の粗糸を作製し(粗紡)、粗糸にさらに撚りを与えて引き伸ばし紡績糸とする。できあがった紡績糸はスピンドルとトラベラーの周速度の差を利用してボビンに巻き取られる。当発明の繊維処理剤を用いると、リング精紡工程を高速化しても精紡ローラーへの巻付、繊維損傷、白粉発生および糸切れが少ない利点がある。また、カードネップやドラフト性不良に起因する糸斑も小さい利点もある。一方、オープンエンド精紡の場合は、練条スライバーをコーミングワイヤーで一旦解きほぐし、高速回転しているローターの遠心力を利用して繊維を結束、加撚して紡績糸とする。当発明の繊維処理剤を用いると、オープンエンド精紡工程を高速化しても繊維損傷、白粉発生および糸切れが少ない利点がある。
以下に本発明を実施例および比較例によって説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、各実施例および比較例における評価項目と評価方法は以下の通りである。以下では、「部」および「%」は、いずれも「重量部」および「重量%」を意味する。
(実施例1〜23および比較例1〜17)
表1〜3に示す各成分を25℃の水を用いて、各成分の合計量が5重量%になるように(実施例ではA成分、B成分およびC成分の合計量が3.9〜4.8重量%となるように)、それぞれを手動撹拌により溶解、希釈して繊維処理剤1〜23および比較繊維処理剤1〜17をそれぞれ調製した。なお、表1〜3において、A成分、B成分、C成分および*の付した成分については表中の有効成分の欄の重量%の水性液の状態になっているものを使用した。表1〜3における比率の数値はそれぞれの成分の純分の重量比率(水を含まない)である。
このようにして調製した繊維処理剤1〜23および比較繊維処理剤1〜17について、下記評価方法に従って物性を評価し、結果をそれぞれ表4および5に示した。
Figure 2011021308
Figure 2011021308
*1 品名 マーポグロー 300P ((メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸アルキルエステル−スチレン共重合体中和物(弗素非含有):B成分含有率35%:松本油脂製薬株式会社製)
*2 品名 マーポゾール W−60D ((メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体中和物(弗素非含有):B成分含有率20%:松本油脂製薬株式会社製)
*3 品名 マーポゾール EP−2K ((メタ)アクリル酸アルキルエステル−酢酸ビニル共重合体(弗素非含有):B成分含有率48%:松本油脂製薬株式会社製)
Figure 2011021308
上記表1〜3において、括弧内に示す数値nはそれぞれの化合物におけるオキシエチレン基の平均モル数を示し、MWは構成するポリエチレングリコールの分子量を示す。
比較例1〜6の比較繊維処理剤は全てステアリル燐酸カリウムを使用している。比較例1は従来公知の一般紡績用繊維処理剤である。比較例2〜5は従来公知の高速紡績用繊維処理剤である。比較例7はA成分の代わりにラウリン酸ナトリウム塩を用いた繊維処理剤である。比較例8はA成分の代わりにカプロン酸カリウムを用いた繊維処理剤である。比較例9〜12はそれぞれ比較例1・2・3・5のステアリル燐酸カリウムをラウリン酸カリウムに置き換えた繊維処理剤である。比較例13はB成分の代わりに変性ポリエチレン樹脂を用いた繊維処理剤である。比較例14はB成分の代わりにノボラック型エポキシ樹脂乳化物を用いた繊維処理剤である。比較例15はB成分の代わりに水溶性ポリアミド樹脂を用いた繊維処理剤である。比較例16はC成分の代わりにn−デシル燐酸カリウムを用いた繊維処理剤である。比較例17はC成分の代わりにポリオキシエチレン(n=10)ラウリルアミンを用いた繊維処理剤である。
[評価方法]
(1)5重量%エマルション(繊維処理剤)の安定性
上記で作製した繊維処理剤である5重量%エマルションについて、肉眼で状態を確認した。
○:エマルションに未溶解物は見られず均一である。
×:エマルションに未溶解物が見られる。
(2)紡績評価用ポリエチレンテレフタレート短繊維
給油綿の作製においては、上記で作製した繊維処理剤である5重量%エマルションをさらに25℃の水で希釈して使用した(未溶解物のあるもの(前段落の×判定のもの)については、繊維に給油処理するのには好ましくないので、評価対象にはしなかった。但し従来公知の一般紡績用繊維処理剤である比較例1の処方に限り加温溶解して調製し、参考例1として評価対象にした。)。原料繊維(太さ1.45dtex、長さ38mmのポリエチレンテレフタレート短繊維)100gに対して、評価対象の繊維処理剤が付着処理後の繊維の0.13重量%になるように(すなわち、A成分、B成分およびC成分の合計量が付着処理後の繊維の0.10〜0.12重量%となるように)、スプレー処理を行い、80℃の温風乾燥機の中で2時間乾燥した。乾燥後に得られたポリエチレンテレフタレート短繊維を、それぞれ、評価環境条件下で温湿度調節させた後、下記評価方法の(3)〜(8)に従って評価した。
(3)制電性試験
上記(2)で準備したポリエチレンテレフタレート短繊維をミニチュアオープナーで開繊した後、20℃×45%RHの条件下で温湿度調節し、ミニチュアカード機に通して、ウェブを作製した。さらにそのカードウェブをミニチュア練条機に通して練条スライバーを作製した。カード工程および通過時の発生静電気量を測定し、評価した。なお、カード工程においては高速カードの苛酷なコーミングアクションを想定した条件としてシリンダー回転数970rpmで行い、これを5回繰り返して、5回目の発生静電気量(単位:kV)を測定した。
(4)精紡ローラー巻付試験(粘着性の判断)
上記(3)の制電性試験で作製した練条スライバーを用い、30℃×65%RHに温湿度調節して、リング精紡機を用いて、糸を切断してニューマーに吸引させた状態で精紡を行い、ローラーに巻付くごとにピンセットで除去してその回数を数える。測定時間は15分間である。
(5)高速リング精紡試験
それぞれの繊維処理剤で処理したポリエチレンテレフタレート短繊維をミニチュア紡績機で開繊、カード、練条、粗紡の各工程を経て粗糸を作製し、下記条件にて高速リング精紡を行なった。
精紡機 :RX−240NEW−EST/E(豊田自動織機)
スピンドル回転数:18000rpm
リング径 :38mm
トータルドラフト:80倍
糸番手 :30番
温湿度 :20℃×45%RH
精紡時間 :45分
(6)高速リング精紡時の白粉発生量(油膜強度の判断)
高速リング精紡の際に当該錘のセパレーターおよびリングテーブル面に黒色ビロードを貼り付け、リング周りから発生する繊維屑をビロード上に捕集し、精紡終了後に当該ビロードを回収して目視比較した。判定基準は下記の通りである。
◎:白粉はほとんど認められない。
○:白粉が少し認められる。
△:ときどき糸切れが発生し、白粉が多く認められる。
×:この条件では糸切れが多発し精紡できない。
(7)高速リング精紡糸の糸質
上記精紡評価で作製した高速リング精紡糸について自動糸斑試験機を用いてU%を測定した。U%とは図1に示すようにある測定長(L)を選び、その区間内の糸太さの平均値(X)、−100%、起点(A)、終点(B)で囲われる面積をFとし、区間内の糸の太さの変動(むら曲線)と(X)で囲われる面積をfとすると、U(%)=(f/F)×100で表される。この値が小さいほど糸斑が少なく、糸質が良好であると判断される。
(8)オープンエンド精紡評価
(2)と同条件で給油ポリエチレンテレフタレート綿を3kg作製し、開繊後、実機カード機・練条機を用いて評価用スライバーを作製し、下記条件にて高速ローター式オープンエンド精紡を行った。
精紡機 :オートコロSE−8、シュラフホルスト社製
ローター回転数 :90000rpm
ローター径 :36mm
コーミングローラー回転数:10000rpm
トータルドラフト :120倍
糸番手 :20番
温湿度 :20℃×45%RH
精紡時間 :45分

オープンエンド精紡可否の判定
判定基準は下記の通りである。
○:上記精紡時間内に糸切れは発生しない。
×:短時間で糸切れが頻発し、円滑に精紡できない。
Figure 2011021308
Figure 2011021308
表4および5で下線を示した部分は、問題ありと判定される。また、(障)は静電気による障害が発生したことを意味する。
表4および表5からも明らかなように、本発明の繊維処理剤(実施例1〜23)のエマルションは25℃で作製しても未溶解物はなく安定である。また当該繊維処理剤は、ステアリル燐酸カリウムを用いた参考例1と同等またはそれ以上の紡績性が得られている。なお、実施例6および7では精紡巻付がやや多めであり、実施例8では精紡時の白粉がやや多めである。また、実施例22および23では精紡巻付はやや多めである。
それに対して、ステアリル燐酸カリウムを用いた比較例1〜6はいずれもエマルションを25℃で作製すると未溶解物が発生しそのままでは使用できない。A成分の代わりにラウリン酸ナトリウム塩を用いた比較例7ではカード・練条時の発生静電気量が多く障害が発生している。A成分の代わりにカプロン酸カリウムを使用した比較例8ではリング精紡およびオープンエンド精紡において糸切れが多発している。公知の紡績用繊維処理剤のステアリル燐酸カリウムを単にラウリン酸カリウムに置き換えた比較例9〜12およびB成分の代わりに変性ポリエチレン樹脂を用いた比較例13、B成分の代わりにノボラック型エポキシ樹脂を用いた比較例14およびB成分の代わりに水溶性ポリアミド樹脂を用いた比較例15では精紡巻付が著しく多くなる。C成分の代わりにn−デシル燐酸カリウムを用いた比較例16およびC成分の代わりにポリオキシエチレン(n=10)ラウリルアミンを用いた比較例17ではカード・練条時の発生静電気量が多く障害が発生している。
本発明の繊維処理剤では、各成分の高濃度水性液を混合して繊維処理剤を調製する場合であっても、室温で溶解・混合して、均一安定なエマルションである繊維処理剤を調製でき、溶解時の加温が省略でき、省エネルギー化が図れる。また、本発明の繊維処理剤によって処理されたポリエステル短繊維は、従来のステアリル燐酸エステルカリウム塩を主体とした繊維処理剤で処理されたポリエステル短繊維と同様に、高温多湿条件下であってもローラー巻付や脱落スカムの発生が少なく、カード・練条・粗紡・精紡等の各工程を高速化しても、静電気の発生、繊維損傷を抑制でき、良好なドラフト性が得られる。したがって、品質の良好な紡績糸が得られる。

Claims (10)

  1. 炭素数8〜18の脂肪酸カリウム塩からなるA成分と、アクリル樹脂からなるB成分と、炭素数6〜8のアルキル基を有するアルキル燐酸エステルカリウム塩および/またはポリオキシアルキレンアルキル燐酸エステルカリウム塩からなるC成分とを必須成分として含む、繊維処理剤。
  2. A成分を100重量%としたときに、B成分の配合割合が5〜35重量%であり、C成分の配合割合が2〜20重量%である、請求項1に記載の繊維処理剤。
  3. ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテルおよびポリエチレングリコール脂肪酸エステルから選ばれる少なくとも1種のD成分をさらに含有する、請求項1または2に記載の繊維処理剤。
  4. A成分を100重量%としたときに、B成分の配合割合が5〜35重量%であり、C成分の配合割合が2〜20重量%であり、D成分の配合割合が8〜50重量%である、請求項3に記載の繊維処理剤。
  5. 前記繊維処理剤が水をさらに含む水性液となっており、A成分、B成分およびC成分の合計量の繊維処理剤全体に占める配合割合が0.05〜20重量%である、請求項1〜4のいずれかに記載の繊維処理剤。
  6. 前記繊維処理剤が短繊維用の処理剤である、請求項1〜5のいずれかに記載の繊維処理剤。
  7. 紡糸工程、延伸工程および仕上工程から選ばれる少なくとも1つの工程で、請求項1〜6のいずれかに記載の繊維処理剤を原料合成繊維に付与する、合成繊維の製造方法。
  8. 合成繊維に付着したA成分、B成分およびC成分の合計量が合成繊維の0.08〜2.0重量%となるように調整される、請求項7に記載の合成繊維の製造方法。
  9. 合成繊維がポリエステル繊維である、請求項8に記載の合成繊維の製造方法。
  10. 合成繊維がポリエチレンテレフタレート繊維である、請求項9に記載の合成繊維の製造方法。
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