JP2011020982A - 液晶材料の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 本発明が解決しようとする課題は、再結晶操作による高い比抵抗値を有する液晶化合物の、安全性の高い製造方法を提供することであり、この製造方法により得られた液晶化合物を使用した液晶組成物を提供することであり、高い比抵抗値を有する液晶化合物を得る安全性の高い再結晶方法を提供することである。
【解決手段】
一般式(1)
【化1】
Figure 2011020982

で表される化合物をリチウムイオン、ナトリウムイオン、アンモニウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン及びカルシウムイオンの濃度の総和が1.0ppb以下であるアルコール類溶媒、ケトン類溶媒、エステル類溶媒、エーテル類溶媒又はニトリル類溶媒から選択される単一又は混合溶媒を用いて再結晶した後に、再結晶に使用した溶媒を留去する。
【選択図】 なし

Description

本発明は高い比抵抗値を有する液晶材料の製造方法に関する。
液晶表示素子は液晶テレビ、携帯電話やパソコンなどをはじめとする民生用途から産業用途まで広く使用されるようになった。これらは製品寿命が数年から十数年と比較的長く、この間正常に動作するために、これに使用する液晶材料には高い安定性が求められる。液晶材料の代表的な安定性の指標として比抵抗値がある。液晶表示素子が正常に動作するためには、それに使用する液晶材料の比抵抗値が十分高くなければならならず、また経時劣化も抑えなければならない。
液晶材料の安定性を向上させるために、これまで多くの研究がなされてきた。例えば、液晶材料中の水分や金属イオンを除去する方法として、液晶材料をシリカゲルと接触させる方法(特許文献1参照)、活性アルミナと接触させる方法(特許文献2参照)、イオン交換樹脂で処理する方法(特許文献3参照)、ゼオライトと接触させる方法(特許文献4参照)が開示されている。更に、対向する一対の電極間に液晶化合物を入れ、電界をかけることにより、電界による移動度の比較的大きなNa、K等の金属イオンや、SO 2−、NO 、Cl等のイオン性不純物を除去する方法等(特許文献5〜7参照)が開示されている。これら精製法は既に液晶材料に含まれる不純物を除去するための方法である。
一方、液晶材料に対する要求は高速応答化や高コントラスト化など多岐に渡る。これら物性は単独の化合物では達成することができず、複数の液晶化合物を混合し、液晶組成物として要求に対応している。その際、各液晶化合物を正確に秤量し、その混合比を目標値に正しく合わせることが重要である。混合比に誤差が生じると物性が変化してしまい、要求を満たす液晶組成物を調製できないからである。
ここで、液晶化合物の多くは室温では固体である。このため溶媒に溶けた溶液状態の液晶化合物から溶媒をほぼ留去すると一気に結晶化が進行し、全体が一体の固体となってしまう。液晶化合物は完全に溶媒を留去せずに使用すると、安定性が低下する等の不具合を生じるため望ましくない。このため、減圧下で液晶化合物の結晶中に取り込まれた溶媒を除去する必要がある。しかし、その得られた固体の塊が大きいと内部に取り込まれた溶媒が揮発せず除去することができない。また、液晶組成物の調製時の秤量を塊を砕きながら行わなければならないため、極めて作業が困難となり、秤量の正確性も確保できない。これに対し、液晶化合物を粉体として調製すると、溶媒の留去も秤量時の微調整も容易となる。しかし先に示した精製法は液晶材料を液晶状態あるいは溶液状態で処理するものであり、処理後に得られる液晶化合物は粉体とならない。
液晶化合物を簡便に粉体として得るためには再結晶が有効であり、実際に液晶化合物を再結晶で精製する例は数多くある(特許文献8)。再結晶は、化合物を溶媒に溶かし、温度差や溶媒の蒸発、溶媒の混合比の変化等による溶解度の差などを利用して結晶を析出させ、それをろ取することにより行う。この際結晶の析出速度等を調整することにより、均一で細かな結晶を得ることができる。このように得られた粉体の液晶化合物は粒子が細かいため溶媒の留去を容易に行うことができ、また容易に掬うことができるため、秤量が容易であり、添加量の細かな調節もできる。しかし再結晶工程においてしばしば問題となるのが静電気の発生である。
高い比抵抗値を有する液晶材料を得るためには、それを構成する各液晶化合物も高い比抵抗値を有している必要があり、秤量前の最終工程として再結晶を行う場合、品質上の要求から、その再結晶後の液晶化合物は高い比抵抗値を有していなければならない。高い比抵抗値を有する液晶化合物を再結晶により得るためには、特にヘキサン、ヘプタンやトルエン等の導電率の低い溶媒から再結晶を行うと良いことが知られている。しかし、これら導電率の低い溶媒を使用すると、結晶析出、撹拌及びろ過等の際に発生した静電気が帯電し、着火性の放電により火災等の重大災害を発生する恐れがある。これら安全性を高めるためには、導電率の高い溶媒を使用し、静電気の帯電を抑えることが有用である。しかし、導電率の高い溶媒は一般的にイオン成分等を溶解しやすいため、これら成分の影響により再結晶後の液晶化合物の比抵抗値が実用レベルに達しないとの問題がある。このように再結晶により高い比抵抗値を有する液晶化合物を得る安全で実用的な方法が切望されているものの、具体的な解決手段はこれまでに報告されていない。
特開昭62−210420号公報 特開昭58−1774号公報 特開昭52−59081号公報 特開昭63−261224号公報 特開昭50−108186号公報 特開昭51−11069号公報 特開平4−86812号公報 特開2007−176818号公報
再結晶操作による高い比抵抗値を有する液晶化合物の、安全性の高い製造方法を提供することであり、この製造方法により得られた液晶化合物を使用した液晶組成物を提供することであり、高い比抵抗値を有する液晶化合物を得る安全性の高い再結晶方法を提供することである。
本願発明者らは本願発明の対象化合物に関し鋭意検討した結果、特定の製造方法により前述の課題を解決できることを見出し、本願発明を完成するに至った。
本願発明は、(i)一般式(1)
Figure 2011020982
(式中、Rは炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数1〜6のアルコキシ基又は炭素数2〜6のアルケニルオキシ基を表し、
aは1、2又は3を表し、
及びAはそれぞれ独立に(a) トランス−1,4−シクロへキシレン基(この基中に存在する1個のメチレン基又は隣接していない2個以上のメチレン基は−O−又は−S−に置き換えられてもよい)、
(b) 1,4−フェニレン基(この基中に存在する1個の−CH=又は隣接していない2個以上の−CH=は窒素原子に置き換えられてもよい)、3,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン基、及び
(c) 1,4−ビシクロ(2.2.2)オクチレン基、ナフタレン−2,6−ジイル基、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基及び1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン-2,6−ジイル基、クロマン−2,6−ジイル基
からなる群より選ばれる基を表すが、上記の基(a)、基(b)又は基(c)に含まれる水素原子はそれぞれフッ素原子、トリフルオロメチル基、トリフルオロメトキシ基又は塩素原子で置換されていても良く、Aが複数存在する場合、それらは同一であっても異なっていても良く、
は単結合、−CHCH−、−CH=CH−、−CHO−、−OCH−、−CFO−、−OCF−、−COO−又は−OCO−を表すが、複数存在するZは同一であっても異なっていても良く、
は水素原子、フッ素原子、塩素原子、トリフルオロメチル基、トリフルオロメトキシ基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数1〜6のアルコキシ基又は炭素数2〜6のアルケニルオキシ基を表す。)で表される化合物の比抵抗値を、式(A−1)及び(A−2)
Figure 2011020982
を各50質量%ずつ含み、比抵抗値が1.0×1013Ω・m以上である液晶組成物(M−1)に、一般式(1)で表される化合物を20質量%添加した液晶組成物の比抵抗値と定義し、該一般式(1)で表される化合物の比抵抗値が8.0×1011Ω・m未満である場合において、一般式(1)で表される化合物をリチウムイオン、ナトリウムイオン、アンモニウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン及びカルシウムイオンの濃度の総和が1.0ppb以下であるアルコール類溶媒、ケトン類溶媒、エステル類溶媒、エーテル類溶媒又はニトリル類溶媒から選択される単一又は混合溶媒を用いて再結晶した後に、再結晶に使用した溶媒を留去することによる、再結晶後の一般式(1)で表される化合物の比抵抗値が8.0×1011Ω・m以上を示す結晶状態の一般式(1)で表される化合物の製造方法、(ii)その際に行う再結晶方法、(iii)本願製造方法により得られた液晶化合物を加え液晶状態とした液晶組成物を提供する。
本願発明の製造方法により、高い比抵抗値を有する液晶化合物を安全な再結晶操作により得ることができるようになる。よって、本願発明により長期間使用可能な液晶表示素子を作成するための液晶組成物を得ることが可能となった点において有用である。更に、再結晶操作中の災害危険性が減少する点において有用である。
一般式(1)において、A又はAのうち少なくとも一つは群(A)
Figure 2011020982
又は群(B)
Figure 2011020982
から選ぶのが好ましい。さらに群(B)の中では、
Figure 2011020982
がより好ましい。
又はAのうち少なくとも一つを群(A)から選んだ場合、Aを群(A)から選ぶことが好ましい。
又はAのうち少なくとも一つを群(A)から選んだ場合、Yはフッ素原子が好ましく、Rはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基又はペンチル基が好ましく、Zは単結合、−CHCH−、−CFO−又は−OCF−が好ましい。
又はAのうち少なくとも一つを群(B)から選んだ場合、R及びYはそれぞれ独立的に炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数1〜6のアルコキシ基又は炭素数2〜6のアルケニルオキシ基を表すが、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ビニル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペントキシ基、3−ブテニルオキシ基及び4−ペンテニルオキシ基が好ましく、Zは単結合、−CHCH−、−CHO−、−OCH−、−CFO−又はOCF−が好ましい。
比抵抗値が1.0×1013Ω・m以上である液晶組成物(M−1)に、一般式(1)で表される化合物を20質量%添加した液晶組成物の比抵抗値が8.0×1011Ω・m未満である場合、一般式(1)で表される化合物を含む液晶組成物を使用した液晶表示素子は表示不良を起こすことがあるのに対し、(M−1)に一般式(1)で表される化合物を20質量%添加した液晶組成物の比抵抗値が8.0×1011Ω・m以上である場合にはそのようなことは起きず、長期間の使用でも問題なく動作する。より高い信頼性を得るためには比抵抗値を高くすることが望ましいが、比抵抗値を上げるため、精製工程を繰り返すと収率の低下を招き、安価に製造することが出来なくなる。このため、実用的には、比抵抗値が1.0×1013Ω・m以上である液晶組成物(M−1)に、精製後の一般式(1)で表される化合物を20質量%添加した液晶組成物の比抵抗値は8.0×1011Ω・mが好ましく、1.0×1012Ω・mが好ましく、5.0×1012Ω・mが好ましく、1.0×1013Ω・mが好ましい。この比抵抗値は高いほど好ましいが、液晶化合物は有機物であり、限界がある。
本願発明に使用する精製前の一般式(1)で表される化合物は比抵抗値が十分高い場合本願精製を行う必要がない。また、あまりに低いと本願発明を数回繰り返す必要が出てくる。このため、下限値として9.9×1011Ω・mが好ましく、8.0×1011Ω・mが好ましく、5.0×1011Ω・mが好ましく、1.0×1011Ω・mが好ましく、1.0×1010Ω・mが好ましく、1.0×10Ω・mが好ましく、1.0×10Ω・mが好ましく、上限値として9.9×1011Ω・mが好ましく、8.0×1011Ω・mが好ましく、5.0×1011Ω・mが好ましく、1.0×1011Ω・mが好ましく、1.0×1010Ω・mが好ましく、1.0×10Ω・mが好ましく、1.0×10Ω・mが好ましい。
再結晶を行う前に、使用に耐えるほどの純度を有していれば他の精製方法や再結晶を行う必要はないが、十分な純度の液晶化合物を得るためには、事前に他の精製方法や再結晶を行っておくことが好ましい。また、本願発明に使用する精製前の一般式(1)で表される化合物は化学的な純度としては特に規定はないが、本願発明の精製後に他の精製をせず使用するため、高い方が望ましく、ガスクロマトグラフィー(カラム:DB−1、キャリアーガス:ヘリウム)の面積比で95%以上のものを使用することが好ましく、97%以上が望ましく、99%以上が望ましく、99.5%以上が望ましく、99.8%以上が更に望ましい。この際、比抵抗値を低下させる恐れのない化合物や、既に特性が確認されておりその影響が確認され許容できる濃度が規定されているような化合物は化学純度決定においては一般式(1)で表される化合物に含めてもよい。
また、再結晶を行う前にカラムクロマトグラフィーを行い、比抵抗値の低下の原因となるイオン性不純物を除くことが好ましい。カラムクロマトグラフィーに使用する精製剤としてはシリカゲル、アルミナ又はそれらの両方を使用するのが好ましい。その際に使用する展開溶媒としては、ヘキサン、ヘプタン又はトルエンから選択される単一又は混合溶媒が好ましい。
再結晶にはリチウムイオン、ナトリウムイオン、アンモニウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン及びカルシウムイオンの濃度の総和が1.0ppb以下の溶媒を使用すればよいが、その調製方法は問わない。使用しようとする溶媒の上記濃度の総和が1.0ppbを超える場合には、例えばイオン交換樹脂で処理することにより、1.0ppb以下とすることができる。
再結晶に使用する溶媒の種類としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、アセトン、2−ブタノン、酢酸エチル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、メチル−t−ブチルエーテル、アセトニトリル又はプロピオニトリルから選択される単一又は混合溶媒が好ましく、メタノール、エタノール、アセトン又は2−ブタノンから選択される単一又は混合溶媒がより好ましい。
再結晶は一般式(1)で表される化合物を溶媒に溶解させた後、溶解させた際の温度より低い温度に冷却して行うことができる。化合物は完全に溶解させることが好ましいが、その後の晶析、ろ過の作業に支障がない範囲においては未溶解の部分が残っても良い。冷却の際は、急冷してもよいし徐冷してもよい。冷却後は温度を一定に保っても良いし、更に冷却しながら結晶を析出させていっても良い。また、結晶を析出させる際は攪拌を行っても良いし、静置してもよい。結晶の大きさをそろえ、結晶サイズをあまり大きくしない場合には攪拌したほうが好ましい。また、別の再結晶の方法として、一般式(1)で表される化合物を溶解性の高い溶媒に溶解させた後、溶解性の低い溶媒を加えて晶析させて行うこともできる。
再結晶後の溶媒の留去は、減圧下に室温で又は加熱しながら行うことができる。この際に、加熱手段に特に制限はなく、設定温度から数度の範囲で制御できる方法であれば如何なる方法をとることもできる。実施の容易性から温調を備え溶液を満たした容器に液晶化合物を入れた容器を浸す方法や該容器をマントルヒーター等で加熱する方法、更に液晶化合物を乗せた棚に加熱した液体を流す流路を設けこれにより加熱する方法が挙げられる。また、溶媒を留去する際には気化熱により液晶化合物が冷却されるので温度低下を低減することを目的として加熱していない溶液により前記手段を行うこともできる。また、これら方法を用いず、温度制御しないで溶媒を留去することも可能である。作業時間の短縮のために、下限温度を20℃とすることが好ましく、30℃とすることが好ましく、35℃とすることが好ましく、40℃とすることが更に好ましい。上限温度としては、温度を上げると溶媒の留去速度は上がるため高い方が好ましいが、あまり高温とすると液晶化合物の分解や酸化等が起こり好ましくない。また、融点以上に加熱してしまうと乾燥後に室温まで冷却するとすべてが一体の固体となり、粉体として得られないため好ましくない。このため、融点未満が好ましく、60℃が好ましく、55℃が好ましく、50℃が好ましく、45℃が好ましく、40℃が好ましい。溶媒留去時は液晶化合物を入れた容器や棚を静止させていても良いし、動かしていても良い。しかし、効率の点から回転や振動させることが好ましい。
本願発明の製造方法により得られた結晶及び本願発明の結晶は、その後更に他の精製を行わずに他の液晶化合物と混合し、液晶組成物を調製する。液晶組成物とした後は必要に応じろ過や吸着剤による処理を行っても良い。
液晶化合物には再結晶に使用した溶媒が含まれないことが好ましいが、液晶組成物とした際に悪影響を及ぼさない濃度以下であれば良い。その濃度は200ppm以下が好ましく、100ppm以下が好ましく、50ppm以下が好ましく、20ppm以下が更に好ましい。
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳述するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、以下の実施例及び比較例の組成物における「%」は『質量%』を意味する。溶媒中のイオン濃度の分析にはイオンクロマトグラフを使用し、絶対検量線法によりリチウムイオン、ナトリウムイオン、アンモニウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン及びカルシウムイオンの濃度を算出した。液晶組成物の比抵抗値は、測定用セルに液晶組成物を入れ、電圧(DC)1V印加時の抵抗値を25℃にて測定して得た。
(実施例1) 式(1−1)で表される化合物の再結晶(1)
式(A−1)及び(A−2)
Figure 2011020982
を各50%ずつ含む、比抵抗値が1.0×1013Ω・mである液晶組成物(M−1)に、式(1−1)
Figure 2011020982
で表される化合物を20%添加した液晶組成物の比抵抗値は1.0×1011Ω・mであった。この式(1−1)で表される化合物25gをカラムクロマトグラフィー(充填剤:シリカゲル及びアルミナ、展開溶媒:ヘキサン)で精製し、溶媒を減圧下に留去した。残渣をリチウムイオン、ナトリウムイオン、アンモニウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン及びカルシウムイオンの濃度の総和が0.13ppbであるアセトン50mLに溶解し、5℃で10分間撹拌して晶析させた後−18℃の冷凍庫内で16時間静置した。結晶分をろ取するため、フィルター付きのヌッチェに注いだ。フィルター上に得られた結晶の帯電電位を測定したところ、0.0kVであり、静電気の帯電は見られなかった。得られた結晶をナスフラスコに移し、真空ポンプにより減圧し(266Pa)、ナスフラスコを回転させながら溶媒を留去した。この際、40℃の湯浴にフラスコを浸し、温度制御を行った。20時間後、式(1−1)で表される化合物22.9gを粉末状の結晶として得た。得られた式(1−1)で表される化合物を比抵抗値が1.0×1013Ω・mである液晶組成物(M−1)に20%添加した液晶組成物の比抵抗値は1.4×1012Ω・mであった。
(比較例1) 式(1−1)で表される化合物の再結晶(2)
実施例1において、再結晶にリチウムイオン、ナトリウムイオン、アンモニウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン及びカルシウムイオンの濃度の総和が1.35ppbであるアセトンを使用し、同様の操作を行った。得られた式(1−1)で表される化合物を液晶組成物(M−1)に20%添加した液晶組成物の比抵抗値は6.0×1011Ω・mであった。
(比較例2) 式(1−1)で表される化合物の再結晶(3)
実施例1において、再結晶にヘキサンを使用して同様の操作を行ったところ、ろ取した結晶の帯電電位の絶対値は22.0kV以上であった。この帯電した結晶が導体との間にブラシ放電を発生した場合、ヘキサンの最小着火エネルギー(0.24mJ)と同等以上の放電エネルギーになると推定される。そのため、条件が重なると溶媒のヘキサンに引火する危険がある。また、ろ過の際に金属製の器具を使用した場合、接地の不備があると、静電誘導、電荷分離等により金属製の器具に不安定な電荷が発生し、着火性の火花放電を起こす可能性が考えられ、非常に危険である。
(実施例2)式(1−1)で表される化合物の再結晶(4)
実施例1において、再結晶にリチウムイオン、ナトリウムイオン、アンモニウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン及びカルシウムイオンの濃度の総和が0.20ppbであるエタノール50mLを使用し、同様の操作を行った。ろ過時の結晶の帯電電位は0.0kVであり、収量は23.9gであった。得られた式(1−1)で表される化合物を液晶組成物(M−1)に20%添加した液晶組成物の比抵抗値は2.0×1012Ω・mであった。
(実施例3)式(1−1)で表される化合物の再結晶(5)
実施例1において、再結晶にリチウムイオン、ナトリウムイオン、アンモニウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン及びカルシウムイオンの濃度の総和が0.13ppbであるアセトン25mL及びリチウムイオン、ナトリウムイオン、アンモニウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン及びカルシウムイオンの濃度の総和が0.20ppbであるエタノール25mLからなる混合溶媒を使用し、同様の操作を行った。ろ過時の結晶の帯電電位は0.0kVであり、収量は23.6gであった。得られた式(1−1)で表される化合物を液晶組成物(M−1)に20%添加した液晶組成物の比抵抗値は2.0×1012Ω・mであった。
(実施例4)イオン交換樹脂による溶媒の処理
リチウムイオン、ナトリウムイオン、アンモニウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン及びカルシウムイオンの濃度の総和が1.56ppbであるアセトン100mL及びリチウムイオン、ナトリウムイオン、アンモニウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン及びカルシウムイオンの濃度の総和が1.84ppbであるエタノール100mLからなる混合溶媒Aを調製した。ガラス製クロマトグラフ管に陽イオン交換樹脂及び陰イオン交換樹脂の混合物5gを充填し、混合溶媒A50mLを通液してイオン交換樹脂を洗浄した。その後、混合溶媒A150mLを通液して清浄なガラスフラスコに採取した。得られた混合溶媒を分析したところ、リチウムイオン、ナトリウムイオン、アンモニウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン及びカルシウムイオンの濃度の総和は0.15ppbであった。この混合溶媒を使用し、実施例1記載の方法と同様の操作を行った。ろ過時の結晶の帯電電位は0.0kVであり、収量は23.4gであった。得られた式(1−1)で表される化合物を液晶組成物(M−1)に20%添加した液晶組成物の比抵抗値は1.1×1012Ω・mであった。
(実施例5)
実施例1において、式(1−1)で表される化合物の代わりに下表に示す化合物を用い、同様の操作を行った。なお表中の比抵抗値は、それぞれの化合物を液晶組成物(M−1)に20%添加した液晶組成物のものである。
Figure 2011020982

Claims (14)

  1. 一般式(1)
    Figure 2011020982
    (式中、Rは炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数1〜6のアルコキシ基又は炭素数2〜6のアルケニルオキシ基を表し、
    aは1、2又は3を表し、
    及びAはそれぞれ独立に(a) トランス−1,4−シクロへキシレン基(この基中に存在する1個のメチレン基又は隣接していない2個以上のメチレン基は−O−又は−S−に置き換えられてもよい)、
    (b) 1,4−フェニレン基(この基中に存在する1個の−CH=又は隣接していない2個以上の−CH=は窒素原子に置き換えられてもよい)、3,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン基、及び
    (c) 1,4−ビシクロ(2.2.2)オクチレン基、ナフタレン−2,6−ジイル基、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基及び1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン-2,6−ジイル基、クロマン−2,6−ジイル基
    からなる群より選ばれる基を表すが、上記の基(a)、基(b)又は基(c)に含まれる水素原子はそれぞれフッ素原子、トリフルオロメチル基、トリフルオロメトキシ基又は塩素原子で置換されていても良く、Aが複数存在する場合、それらは同一であっても異なっていても良く、
    は単結合、−CHCH−、−CH=CH−、−CHO−、−OCH−、−CFO−、−OCF−、−COO−又は−OCO−を表すが、複数存在するZは同一であっても異なっていても良く、
    は水素原子、フッ素原子、塩素原子、トリフルオロメチル基、トリフルオロメトキシ基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数1〜6のアルコキシ基又は炭素数2〜6のアルケニルオキシ基を表す。)で表される化合物の比抵抗値を、式(A−1)及び(A−2)
    Figure 2011020982
    を各50質量%ずつ含み、比抵抗値が1.0×1013Ω・m以上である液晶組成物(M−1)に、一般式(1)で表される化合物を20質量%添加した液晶組成物の比抵抗値と定義し、該一般式(1)で表される化合物の比抵抗値が8.0×1011Ω・m未満である場合において、一般式(1)で表される化合物をリチウムイオン、ナトリウムイオン、アンモニウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン及びカルシウムイオンの濃度の総和が1.0ppb以下であるアルコール類溶媒、ケトン類溶媒、エステル類溶媒、エーテル類溶媒又はニトリル類溶媒から選択される単一又は混合溶媒を用いて再結晶した後に、再結晶に使用した溶媒を留去することによる、再結晶後の一般式(1)で表される化合物の比抵抗値が8.0×1011Ω・m以上を示す結晶状態の一般式(1)で表される化合物の製造方法。
  2. 一般式(1)において、A又はAのうち少なくとも1つが
    Figure 2011020982
    を表す請求項1記載の製造方法。
  3. 一般式(1)において、Yがフッ素原子を表す請求項1又は2記載の製造方法。
  4. 一般式(1)において、Rがメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基又はペンチル基であり、Zは単結合、−CHCH−、−CFO−又は−OCF−を表す請求項1、2又は3のいずれかに記載の製造方法。
  5. 一般式(1)において、A又はAのうち少なくとも1つが
    Figure 2011020982
    を表す請求項1記載の製造方法。
  6. 一般式(1)においてR及びYがそれぞれ独立的にメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ビニル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペントキシ基、3−ブテニルオキシ基又は4−ペンテニルオキシ基を表し、Zが単結合、−CHCH−、−CHO−又は−OCH−を表す請求項1又は5記載の製造方法。
  7. 一般式(1)においてA又はAのうち少なくとも1つが
    Figure 2011020982
    を表す請求項1又は6記載の製造方法。
  8. 再結晶に使用する溶媒がメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、アセトン、2−ブタノン、酢酸エチル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、メチル−t−ブチルエーテル、アセトニトリル又はプロピオニトリルから選択される単一又は混合溶媒である請求項1〜7のいずれかに記載の製造方法。
  9. 再結晶に使用する溶媒がメタノール、エタノール、アセトン又は2−ブタノンから選択される単一又は混合溶媒である請求項8記載の製造方法。
  10. 請求項1〜9のいずれかに記載の製造方法を行う前に一般式(1)で表される化合物をカラムクロマトグラフィーにより精製することを特徴とする製造方法。
  11. イオン交換樹脂で処理した溶媒を再結晶に使用することを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の製造方法。
  12. 再結晶後の一般式(1)で表される化合物の比抵抗値が1.0×1012Ω・m以上を示す請求項1〜11のいずれかに記載の製造方法。
  13. 請求項1〜12のいずれかに記載の方法により製造された一般式(1)で表される化合物を含有する液晶組成物。
  14. 請求項1〜12のいずれかに記載の製造方法を実施する際に行う再結晶方法。
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