JP2011018588A - 絶縁層形成用スラリー、リチウムイオン二次電池用セパレータおよびその製造方法、並びにリチウムイオン二次電池 - Google Patents

絶縁層形成用スラリー、リチウムイオン二次電池用セパレータおよびその製造方法、並びにリチウムイオン二次電池 Download PDF

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Abstract

【課題】 微粒子を含有するリチウムイオン二次電池用セパレータを構成するのに好適な絶縁層を形成するためのスラリーであって、優れた長期貯蔵性を有するスラリー、該スラリーを用いて製造されるリチウムイオン二次電池用セパレータおよびその製造方法、並びに該リチウムイオン二次電池用セパレータを有するリチウムイオン二次電池を提供する。
【解決手段】 リチウムイオン二次電池用セパレータに適用可能な、イオン透過性および耐熱性を有する絶縁層を形成するためのスラリーであって、耐熱性微粒子、増粘剤および媒体を含有しており、前記耐熱性微粒子の少なくとも一部がリン灰石であり、pHが7〜11である絶縁層形成用スラリー、前記絶縁層形成用スラリーを基材に塗布する工程を経て製造されるリチウムイオン二次電池用セパレータおよびその製造方法、並びに前記セパレータを有するリチウムイオン二次電池により、前記課題を解決する。
【選択図】 なし

Description

本発明は、リチウムイオン二次電池用セパレータを構成するのに好適な絶縁層を形成するためのスラリー、前記スラリーを用いて形成される絶縁層を有するリチウムイオン二次電池用セパレータおよびその製造方法、並びに該リチウムイオン二次電池用セパレータを有するリチウムイオン二次電池に関するものである。
非水電解質電池の一種であるリチウムイオン二次電池は、エネルギー密度が高いという特徴から、携帯電話やノート型パーソナルコンピューターなどの携帯機器の電源として広く用いられている。携帯機器の高性能化に伴ってリチウムイオン二次電池の高容量化が更に進む傾向にあり、安全性の確保が重要となっている。
現行のリチウムイオン二次電池では、正極と負極の間に介在させるセパレータとして、例えば厚みが20〜30μm程度のポリオレフィン系の微多孔性フィルムが使用されている。また、セパレータの素材としては、電池の熱暴走温度以下でセパレータの構成樹脂を溶融させて空孔を閉塞させ、これにより電池の内部抵抗を上昇させて短絡の際などに電池の安全性を向上させる所謂シャットダウン効果を確保するため、融点の低いポリエチレンが適用されることがある。
ところで、こうしたセパレータとしては、例えば、多孔化と強度向上のために一軸延伸または二軸延伸したフィルムが用いられている。このようなセパレータは、単独で存在する膜として供給されるため、作業性などの点で一定の強度が要求され、これを前記延伸によって確保している。しかし、このような延伸フィルムでは結晶化度が増大しており、シャットダウン温度も、電池の熱暴走温度に近い温度にまで高まっているため、電池の安全性確保のためのマージンが十分とは言い難い。
また、前記延伸によってフィルムにはひずみが生じており、これが高温に曝されると、残留応力によって収縮が起こるという問題がある。収縮温度は、融点、すなわちシャットダウン温度と非常に近いところに存在する。このため、ポリオレフィン系の微多孔性フィルムセパレータを使用するときには、充電異常時などに電池の温度がシャットダウン温度に達すると、電流を直ちに減少させて電池の温度上昇を防止しなければならない。空孔が十分に閉塞せず電流を直ちに減少できなかった場合には、電池の温度は容易にセパレータの収縮温度にまで上昇するため、内部短絡による発火の危険性があるからである。
このようなセパレータの熱収縮による短絡を防止し、電池の信頼性を高める技術として、例えば、耐熱性の良好な多孔質基体と、フィラー粒子と、シャットダウン機能を確保するための樹脂成分とを有するセパレータによりリチウムイオン二次電池などの電気化学素子を構成することが提案されている(特許文献1)。
特許文献1の技術によれば、異常過熱した際にも熱暴走が生じ難い安全性に優れたリチウムイオン二次電池を提供することができる。
国際公開2006/62153号
なお、特許文献1には、無機微粒子をフィラーとして使用し、前記フィラーを分散させたスラリーを基材などに塗布する工程を経てセパレータを製造する方法も記載されている。
ところが、無機微粒子は、水や有機溶媒といった媒体に比べて比重が大きいためにスラリー中で沈降しやすく、また、特に粒径が1μm以下の微粒子の場合には、微粒子同士が凝集しやすいことから、スラリー中での微粒子の分散状態を安定に保つことが困難な場合がある。
スラリー中での微粒子の分散状態を安定に保つことができない場合には、スラリーの貯蔵時に微粒子の凝集や沈降が生じてしまう。微粒子が凝集したり沈降したスラリーを基材などに塗布すると、塗布ムラが生じやすい。また、スラリー中での微粒子の分散状態が特に不安定なものでは、基材などへの塗布後、乾燥するまでの間に微粒子が凝集したり沈降したりして、塗布面にムラが生じる場合もある。
スラリーの塗布ムラが生じると、形成されるセパレータの均一性が低くなり、リチウムイオン二次電池内において、セパレータ中のイオン伝導性にムラが生じ、特に高電流密度での充電時において、リチウムの析出などの不具合が生じる虞があり、また、析出したリチウムがデンドライト状の結晶となった場合には、かかるデンドライトによって短絡が発生する虞もある。
このようなことから、セパレータ製造用のスラリーにおいては、製造されるセパレータの品質をより安定化するために、微粒子などの分散状態の安定性を高めることが好ましく、特許文献1に記載の技術は、このような点において未だ改善の余地を残している。
なお、微粒子を分散させたスラリーにおいて、微粒子の沈降などを防止する手段として、例えばポリエチレングリコールなどの合成高分子や、カルボキシメチルセルロースなどの天然多糖類などを増粘剤として添加し、スラリーの粘度を高めることで、微粒子を沈み難くする手法が知られている。よって、セパレータ製造用のスラリーに、こうした手法を適用することも考えられる。
セパレータ製造用のスラリーの媒体には、塗布および乾燥後の媒体回収の容易さや、環境上の問題から、水を用いることが好ましい。スラリーの媒体を水とする場合には、増粘剤も水を媒体として用い、水に溶かしたり分散させたりした増粘剤をスラリーに適量加え、スラリーの粘度調節を行うことが一般的となる。
ところが、増粘剤の媒体を水としたときには、水中に含まれるバクテリアなどによって増粘剤が分解される場合がある。こうした増粘剤の分解反応は経時的に進行するため、スラリーを調製する際に、その粘度を微粒子の沈降を防止するのに好適な値に調節していても、スラリーの貯蔵途中に徐々に粘度が低下して、微粒子の沈降が生じる虞がある。
よって、調製後に長期間貯蔵する可能性のあるセパレータ製造用のスラリーにおいては、微粒子の分散状態が長期にわたって安定に保たれるようにして、長期貯蔵性を高めることが求められる。
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、微粒子を含有するリチウムイオン二次電池用セパレータを構成するのに好適な絶縁層を形成するためのスラリーであって、優れた長期貯蔵性を有するスラリー、該スラリーを用いて製造されるリチウムイオン二次電池用セパレータおよびその製造方法、並びに該リチウムイオン二次電池用セパレータを有するリチウムイオン二次電池を提供することにある。
前記課題を解決し得た本発明の絶縁層形成用スラリーは、リチウムイオン二次電池用セパレータに適用可能な、イオン透過性および耐熱性を有する絶縁層を形成するためのスラリーであって、少なくとも、耐熱性微粒子、増粘剤および媒体を含有しており、前記耐熱性微粒子の少なくとも一部がリン灰石であり、pHが7〜11であることを特徴とするものである。
本発明の絶縁層形成用スラリーでは、形成される絶縁層の耐熱性などを高めるための耐熱性微粒子に抗菌性の強いリン灰石を使用し、かつスラリーのpHを7〜11と高く調整することで増粘剤の分解を抑制しており、これにより長期間貯蔵しても耐熱性微粒子の分散状態が良好に維持され得るようにしている。
なお、本明細書でいう「耐熱性を有する絶縁層」とは、絶縁層の耐熱温度が150℃以上であること、すなわち、絶縁層が少なくとも150℃において実質的に変形しないことを意味しており、より具体的には、150℃に加熱された絶縁層を目視観察した際に熱収縮が確認されないことをいう。
また、本発明のリチウムイオン二次電池用セパレータ(以下、単に「セパレータ」という場合がある。)は、リチウムイオン二次電池用正極、リチウムイオン二次電池用負極および多孔質基材よりなる群から選択される少なくとも1種の基材に、本発明の絶縁層形成用スラリーを塗布する工程を経て形成された多孔質の絶縁層を有することを特徴とするものである。
更に、本発明のリチウムイオン二次電池用セパレータの製造方法は、リチウムイオン二次電池用正極、リチウムイオン二次電池用負極および多孔質基材よりなる群から選択される少なくとも1種の基材に、本発明の絶縁層形成用スラリーを、コーターにより連続的に塗布し、乾燥して、前記基材と一体化した多孔質の絶縁層を形成する工程を有することを特徴とする。
また、本発明のリチウムイオン二次電池は、正極、負極およびセパレータを少なくとも有するリチウムイオン二次電池であって、前記セパレータが、本発明のリチウムイオン二次電池用セパレータであることを特徴とするものである。
本発明によれば、優れた長期貯蔵性を有する絶縁層形成用スラリーが提供できる。本発明の絶縁層形成用スラリーを用いて製造される本発明のリチウムイオン二次電池用セパレータは、優れた耐熱性を有するものであり、また、前記リチウムイオン二次電池用セパレータを有する本発明のリチウムイオン二次電池は、優れた信頼性を有するものである。更に、本発明の製造方法によれば、本発明のリチウムイオン二次電池用セパレータを安定かつ連続的に製造できる。
本発明の絶縁層形成用スラリーは、リチウムイオン二次電池用セパレータを構成可能な多孔質の絶縁層を形成するためのものであり、少なくとも、耐熱性微粒子、増粘剤および媒体を含有している。
耐熱性微粒子は、本発明の絶縁層形成用スラリーにより製造されるリチウムイオン二次電池用セパレータにおいて、その耐熱性を高め、リチウムイオン二次電池用セパレータの高温での寸法安定性を向上させたり、リチウムデンドライトに起因する微小短絡の発生を抑制する作用を有するものである。
そして、本発明の絶縁層形成用スラリーでは、耐熱性微粒子としてリン灰石を使用する。リン灰石は、吸着作用を有しており、抗菌性が強い。そのため、リン灰石を用いることで、スラリー中でのバクテリアなどの繁殖を良好に抑制できるため、例えば、バクテリアにより分解し易い天然多糖類を使用した場合でも、その分解を抑えることができる。よって、本発明の絶縁層形成用スラリーは、長期間貯蔵しても、その間の粘度変動が小さく、耐熱性微粒子の分散状態が良好に維持される。
また、リン灰石は機械的強度が高く、また、真密度も3.1g/cm以上であることから、これを含有するスラリーを用いることで、密度の大きな絶縁層を形成することができる。更に、リン灰石はモース硬度が4〜5と、金属酸化物などで構成された耐熱性微粒子よりも硬度が低いため、例えば、スラリーの調製に用いる分散装置の金属製容器との接触によるコンタミネーションの混入を抑制でき、より品質の高い絶縁層を形成できるスラリーとなる。
リン灰石とは、リンとカルシウムとを主成分とする鉱物であり、アパタイトとも呼ばれている。リン灰石の具体例としては、例えば、フッ素リン灰石、水酸リン灰石、塩素リン灰石、炭酸フッ素リン灰石、炭酸水酸リン灰石などが挙げられる。本発明の絶縁層形成用スラリーには、これらのリン灰石のうちの1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なお、これらの中でも、水酸リン灰石は、ハイドロキシアパタイトとも呼ばれ、歯や骨の主成分で、化学的に安定な材料であり、また、フッ素リン灰石は、耐酸性に優れた材料であることから、水酸リン灰石やフッ素リン灰石を使用することがより好ましい。
絶縁層形成用スラリーには、耐熱性微粒子として前記のリン灰石のみを使用してもよいが、リン灰石以外の耐熱性微粒子をリン灰石と併用してもよい。リン灰石以外の耐熱性微粒子としては、電気絶縁性を有しており、電気化学的に安定で、リチウムイオン二次電池の有する有機電解液や、絶縁層形成用スラリーに用いる媒体(溶媒、分散媒)に安定であり、高温状態で電解液に溶解しないものであれば、特に制限はない。
なお、本明細書でいう「有機電解液に対して安定な耐熱性微粒子」とは、有機電解液(リチウムイオン二次電池の電解液として使用される有機電解液)中で変形および化学的組成変化の起こらない耐熱性微粒子を意味している。また、本明細書でいう「高温状態」とは、具体的には150℃以上の温度であり、このような温度の有機電解液中で変形および化学的組成変化の起こらない安定な粒子であればよい(すなわち、リン灰石も含めた「耐熱性微粒子」の「耐熱性」とは、少なくとも150℃において、有機電解液中で変形および化学的組成変化が生じないことを意味している。)。更に、本明細書でいう「電気化学的に安定な」とは、リチウムイオン二次電池の充放電の際に化学変化が生じないことを意味している。
リン灰石以外の耐熱性微粒子の具体例としては、例えば、酸化鉄、Al(アルミナ)、SiO(シリカ)、TiO、BaTiO、ZrOなどの酸化物微粒子(金属酸化物微粒子);窒化アルミニウム、窒化ケイ素などの窒化物微粒子;水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどの水酸化物微粒子(金属水酸化物微粒子);フッ化カルシウム、フッ化バリウム、硫酸バリウムなどの難溶性のイオン結晶微粒子;シリコン、ダイヤモンドなどの共有結合性結晶微粒子;タルク、モンモリロナイトなどの粘土微粒子;ベーマイト、ゼオライト、アパタイト、カオリン、ムライト、スピネル、オリビン、セリサイト、ベントナイトなどの鉱物資源由来物質またはそれらの人造物;などが挙げられる。また、金属微粒子;SnO、スズ−インジウム酸化物(ITO)などの酸化物微粒子;カーボンブラック、グラファイトなどの炭素質微粒子;などの導電性微粒子の表面を、電気絶縁性を有する材料(例えば、前記の電気絶縁性の耐熱性微粒子を構成する材料など)で表面処理することで、電気絶縁性を持たせた微粒子であってもよい。リン灰石以外の耐熱性微粒子を用いる場合、前記例示のものを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、金属酸化物微粒子(特にアルミナ、シリカ)、金属水酸化物微粒子、金属水酸化酸化物微粒子(ベーマイトなど)が好ましい。
耐熱性微粒子の形態としては、球状、粒子状、板状などいずれの形態であってもよいが、板状であることが好ましい。板状粒子としては、各種市販品が挙げられ、例えば、旭硝子エスアイテック社製「サンラブリー(商品名)」(SiO)、石原産業社製「NST−B1(商品名)」の粉砕品(TiO)、堺化学工業社製の板状硫酸バリウム「Hシリーズ(商品名)」、「HLシリーズ(商品名)」、林化成社製「ミクロンホワイト(商品名)」(タルク)、林化成社製「ベンゲル(商品名)」(ベントナイト)、河合石灰社製「BMM(商品名)」や「BMT(商品名)」(ベーマイト)、河合石灰社製「セラシュールBMT−B(商品名)」[アルミナ(Al)]、キンセイマテック社製「セラフ(商品名)」(アルミナ)、斐川鉱業社製「斐川マイカ Z−20(商品名)」(セリサイト)などが入手可能である。この他、SiO、Al、ZrO、CeOについては、特開2003−206475号公報に開示の方法により作製することができる。
耐熱性微粒子が板状である場合には、セパレータ中において、耐熱性微粒子を、その平板面がセパレータの面にほぼ平行となるように配向させることで、短絡の発生をより良好に抑制できる。これは、耐熱性微粒子を前記のように配向させることで、耐熱性微粒子同士が平板面の一部で重なるように配置されるため、セパレータの片面から他面に向かう空孔(貫通孔)が、直線ではなく曲折した形で形成される(すなわち、曲路率が大きくなる)と考えられ、これにより、リチウムデンドライトがセパレータを貫通することを防止できることから、短絡の発生がより良好に抑制されるものと推測される。
耐熱性微粒子が板状の粒子である場合の形態としては、例えば、アスペクト比(板状粒子中の最大長さと板状粒子の厚みの比)が、好ましくは5以上、より好ましくは10以上であって、好ましくは100以下、より好ましくは50以下である。また、粒子の平板面の長軸方向長さと短軸方向長さの比の平均値は、好ましくは0.3以上、より好ましくは0.5以上である(1、すなわち、長軸方向長さと短軸方向長さとが同じであってもよい)。板状の耐熱性微粒子が、前記のようなアスペクト比や平板面の長軸方向長さと短軸方向長さの比の平均値を有する場合には、前記の短絡防止作用がより有効に発揮される。
なお、耐熱性微粒子が板状である場合における前記の平板面の長軸方向長さと短軸方向長さの比の平均値は、走査型電子顕微鏡(SEM)により撮影した画像を画像解析することにより求められる値である。更に耐熱性微粒子が板状である場合における前記のアスペクト比も、SEMにより撮影した画像を、画像解析することにより求められる値である。
また、耐熱性微粒子には、一次粒子が凝集した二次粒子構造を有している微粒子が含まれていることが好ましい。このような微粒子の例としては、大明化学社製「ベーマイト C06(商品名)」、「ベーマイト C20(商品名)」(ベーマイト)、米庄石灰工業社製「ED−1(商品名)」(CaCO)、J.M.Huber社製「Zeolex 94HP(商品名)」(クレイ)などが挙げられる。
耐熱性微粒子として一次粒子が凝集した二次粒子構造を有している微粒子を用いた場合には、凝集した二次粒子が粒子同士の細密充填を防止するので、絶縁層の空孔をより大きくすることが可能であり、かかる絶縁層を有するリチウムイオン二次電池用セパレータにより構成されるリチウムイオン二次電池は、電気自動車、ハイブリッド式自動車、電動バイク、電動アシスト自転車、電動工具、シェーバーなどの、より高出力が要求される用途に好適なものとなる。
耐熱性微粒子(リン灰石、およびリン灰石以外の耐熱性微粒子)の平均粒径は、0.01μm以上であることが好ましく、0.1μm以上であることがより好ましく、また、15μm以下であることが好ましく、5μm以下であることがより好ましい。なお、本明細書でいう耐熱性微粒子の平均粒径は、レーザー散乱粒度分布計(例えば、HORIBA社製「LA−920」)を用い、耐熱性微粒子を溶解したり、耐熱性微粒子が膨潤したりしない媒体に、耐熱性微粒子を分散させて測定した数平均粒子径である。
リン灰石と、リン灰石以外の耐熱性微粒子とを併用して絶縁層形成用スラリーを構成する場合、リン灰石の使用による効果(特に、抗菌性に基づく前記の効果)をより良好に確保する観点から、スラリーに含まれる全耐熱性微粒子中のリン灰石の含有量を、20質量%以上とすることが好ましく、30質量%以上とすることが好ましい。
本発明の絶縁層形成用スラリーには増粘剤を使用する。増粘剤の使用することで、絶縁層形成用スラリーの粘度を調整し、耐熱性微粒子の分散の安定性を高めることができる。
増粘剤としては、絶縁層形成用スラリー中において、耐熱性微粒子を凝集させるなどの副作用がなく、必要な粘度にスラリーを調整できる増粘剤であればよいが、少量の添加で高い増粘作用を有するものが好ましい。また、増粘剤は、スラリーに使用する媒体に対して良好に溶解または分散し得るものであることが好ましい。未溶解分や凝集物(いわゆる「ままこ」)が、スラリー中に多数存在すると、耐熱性微粒子の分散が不均一になり、スラリーを基材などに塗布し、乾燥することで形成される絶縁層中に、耐熱性微粒子の濃度の小さな部分が発生する虞がある。このような場合、耐熱性微粒子の使用による絶縁層の耐熱性向上効果が小さくなり、ひいては、リチウムイオン二次電池の信頼性向上効果や耐熱性向上効果が小さくなる虞がある。
なお、絶縁層形成用スラリー中でのままこの含有量の目安としては、スラリーを目開き30μmのメッシュフィルターに通したときに、フィルター上に残る残渣が、スラリー1L当たり1個以下であることが好ましく、スラリー5L当たり1個以下であることがより好ましい。
増粘剤の具体例としては、ポリエチレングリコール、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、ビニルメチルエーテル−無水マレイン酸共重合体などの合成高分子;キサンタンガム、ウェランガム、ジェランガム、グアーガム、カラギーナン、セルロース誘導体(カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなど)、デキストリン、アルファー化でんぷんなどのでんぷん類などの天然多糖類;モンモリロナイト、ヘクトライトなどの粘土鉱物;ヒュームドシリカ、ヒュームドアルミナ、ヒュームドチタニアなどの無機酸化物類;などが挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。前記の粘土鉱物や無機酸化物類の場合には、一次粒子の粒径が、耐熱性微粒子よりも小さいもの(例えば、数nm〜数十nm程度)を使用することが好ましく、また、一次粒子が多数繋がったストラクチャ構造を有するもの(ヒュームドシリカなど)が好ましい。
前記例示の増粘剤のなかでも、絶縁層形成用スラリーに好適な媒体である水に対する溶解性が高く、少量で増粘効果が高い点で、天然多糖類がより好ましく、キサンタンガム、ウェランガム、ジェランガムが更に好ましく、キサンタンガムが特に好ましい。また、絶縁層形成用スラリーにチクソ性を付与する場合には、ヒュームドシリカ、ヒュームドアルミナ、ヒュームドチタニアなどの無機酸化物類を添加することが好ましい。
絶縁層形成用スラリーにおける増粘剤の含有量は、設定する絶縁層形成用スラリーの粘度に応じて変動するが、例えば、増粘剤としてスラリー塗布後の乾燥工程で揮発しないものを用いる場合には、絶縁層に残留することになるため、多量に用いるのは好ましくなく、具体的には、スラリー中の固形分(媒体を除く構成成分。以下、同じ。)の全体積中、10体積%以下であることが好ましく、5体積%以下であることがより好ましく、1体積%以下であることが更に好ましい。また、絶縁層形成用スラリーにおける増粘剤の含有量は、スラリー中の固形分の全体積中、0.1体積%以上であることが好ましい。
絶縁層形成用スラリーの媒体には、水を主成分とするものを用いることが好ましい。なお、本発明でいう「媒体」とは、絶縁層形成用スラリー中において、絶縁層形成時の乾燥の際に残る固形分を除いた残りの部分を指す。また、「水を主成分とする」とは、媒体中の構成成分のうち、水が70質量%以上含有されていることを指す。水を主成分とする場合のその他の媒体としては、例えば、絶縁層形成用スラリーの界面張力制御のために添加される後記アルコール類などが挙げられる。特に環境保護の観点からは、水100質量%の媒体を用いることが好ましい。
媒体として用いる水としては、井戸水、水道水などをイオン交換させたイオン交換水;これらを蒸留処理した精製水;が好ましく、前記のイオン交換水や精製水を、ガンマ線、エチレンオキサイトガスまたは紫外線などによって滅菌処理した水がより好ましく、前記の精製水に前記の滅菌処理した水が特に好ましい。特に、増粘剤として、より分解しやすい天然多糖類を使用した場合には、媒体として使用する水を滅菌処理することで、リン灰石の抗菌作用と相俟って、バクテリアなどによる天然多糖類の分解をより高度に抑制することができる。
なお、媒体に使用する水に滅菌処理を施す場合、滅菌の度合いは、水中に含まれる真菌や生菌の数で判断すればよい。具体的には、日本薬局方の一般試験法に記載の無菌試験法のメンブランフィルター法により、培地に無菌試験法チオグリコール酸培地Iを用い、培養温度30℃、培養時間14日間の条件で求められる真菌および生菌の個数が、水1mL中にそれぞれ50以下となるまで滅菌処理を施すことが好ましい。
本発明の絶縁層形成用スラリーは、pHを7以上、好ましくは8以上と高くする。絶縁層形成用スラリーのpHを高くすることによっても増粘剤の分解を抑制できるため、長期貯蔵時における粘度変化を抑えることが可能となる。ただし、絶縁層形成用スラリーのpHが高すぎると、例えば、スラリーを貯蔵する容器の腐食などが生じたり、ハンドリングの際に危険が伴うようになる。よって、絶縁層形成用スラリーのpHは、11以下とし、10以下とすることが好ましい。
絶縁層形成用スラリーのpHの調整方法については、特に制限はなく、一般的なアルカリ剤、例えば金属水酸化物(水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど)の水溶液を添加する方法;スラリーを構成する耐熱性微粒子や増粘剤、更には後述するバインダなどがアルカリ性を帯びている場合には、水で希釈する方法;製造過程でアルカリ性を呈する不純物が混入しやすい耐熱性微粒子を使用する場合に、耐熱性微粒子を洗浄した後にスラリーの調製に供する方法;などが挙げられる。なお、pH調整に使用する水についても、絶縁層形成用スラリーの媒体に使用する水として先に例示したイオン交換水や精製水、更には、これらを前記方法で滅菌処理した水が好ましい。
なお、本明細書でいう絶縁層形成用スラリーのpHは、ゼータ電位測定装置を用いて測定される値である。
また、絶縁層形成用スラリーには、絶縁層(リチウムイオン二次電池用セパレータ)において、耐熱性微粒子同士や、耐熱性微粒子と絶縁層を構成するその他の成分(後述する)とを接着したり、絶縁層と基材(リチウムイオン二次電池用正極、リチウムイオン二次電池用負極、多孔質基材など)とを接着したりする目的で、バインダを含有させてもよい。
バインダには、耐熱性微粒子同士や耐熱性微粒子と絶縁層を構成するその他の成分、絶縁層と基材とを良好に接着でき、リチウムイオン二次電池内部で電気化学的に安定であり、リチウムイオン二次電池の有する有機電解液に対して安定であるものであればいずれでもよい。なお、前記の増粘剤のうち、バインダとしての機能も有するものについては、バインダとして使用することもできる。
バインダの具体例としては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA、酢酸ビニル由来の構造単位が20〜35モル%のもの)、エチレン−エチルアクリレート共重合体などのエチレン−アクリル酸共重合体、フッ素系ゴム、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリN−ビニルアセトアミド、架橋アクリル樹脂、ポリウレタン、エポキシ樹脂などが用いられる。これらのバインダは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記例示のバインダの中でも、150℃以上の耐熱性を有する耐熱樹脂が好ましく、特に、エチレン−アクリル酸共重合体、フッ素系ゴム、SBRなどの柔軟性の高い材料がより好ましい。これらの具体例としては、三井デュポンポリケミカル社製の「エバフレックスシリーズ(EVA、商品名)」、日本ユニカー社製のEVA、三井デュポンポリケミカル社製の「エバフレックス−EEAシリーズ(エチレン−アクリル酸共重合体、商品名)」、日本ユニカー社製のEEA、ダイキン工業社製の「ダイエルラテックスシリーズ(フッ素ゴム、商品名)」、JSR社製の「TRD−2001(SBR、商品名)」、日本ゼオン社製の「EM−400B(SBR、商品名)」などが挙げられる。また、アクリル酸ブチルを主成分とし、これを架橋した構造を有する低ガラス転移温度の架橋アクリル樹脂(自己架橋型アクリル樹脂)も好ましい。
絶縁層形成用スラリーにおけるバインダの含有量は、バインダの使用による作用をより有効に発揮させる観点から、耐熱性微粒子の体積を100%とした場合に、1%以上であることが好ましく、5%以上であることがより好ましく、10%以上であることが更に好ましい。また、絶縁層形成用スラリー中のバインダ量が多すぎると、形成される絶縁層において、その空孔が埋められてイオンの透過性が低下し、リチウムイオン二次電池の特性に悪影響が出る虞があることから、その含有量は、耐熱性微粒子の体積を100%とした場合に、30%以下であることが好ましく、20%以下であることがより好ましい。
また、絶縁層形成用スラリーには、長期貯蔵性の更なる向上のために、防腐剤や殺菌剤を添加して増粘剤の分解を抑制してもよい。防腐剤や殺菌剤の具体例としては、安息香酸、パラヒドロキシ安息香酸エステル、アルコール類(エタノール、メタノールなど)、塩素類(次亜塩素酸ナトリウムなど)、過酸化水素、酸類(ホウ酸、酢酸など)、アルカリ類(水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど)などが挙げられる。
また、絶縁層形成用スラリーが発泡しやすく、塗布性に影響する場合には、適宜消泡剤を用いることができる。消泡剤としては、ミネラルオイル系、シリコン系、アクリル系、ポリエーテル系の各種消泡剤を用いることができる。消泡剤の具体例としては、日華化学社製「フォームレックス(商品名)」、日信化学社製「サーフィノール(商品名)シリーズ」、荏原エンジニアリング社製「アワゼロン(商品名)シリーズ」、サンノプコ社製「SNデフォーマー(商品名)シリーズ」などが挙げられる。
更に絶縁層形成用スラリーには、耐熱性微粒子の分散性をより高め、これら耐熱性微粒子同士の凝集をより高度に防止する目的で、適宜分散剤を使用することが可能である。分散剤の具体例としては、アニオン系、カチオン系、ノニオン系の各種界面活性剤;ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩などの高分子系分散剤;などを用いることができる。より具体的には、ADEKA社製「アデカトール(商品名)シリーズ」、「アデカノール(商品名)シリーズ」、サンノプコ社製「SNディスパーサント(商品名)シリーズ」、ライオン社製「ポリティ(商品名)シリーズ」、「アーミン(商品名)シリーズ」、「デュオミン(商品名)シリーズ」、花王社製「ホモゲノール(商品名)シリーズ」、「レオドール(商品名)シリーズ」、「アミート(商品名)シリーズ」、日油社製「ファルバック(商品名)シリーズ」、「セラミゾール(商品名)シリーズ」、「ポリスター(商品名)シリーズ」、味の素ファインテクノ社製「アジスパー(商品名)シリーズ」、東亞合成社製「アロン分散剤(商品名)シリーズ」などが挙げられる。
絶縁層形成用スラリーにおける分散剤の含有量は、その作用をより有効に発揮させる観点から、耐熱性微粒子100質量部に対して、0.1質量部以上であることが好ましい。なお、絶縁層形成用スラリーにおける分散剤量を多すぎると、効果が飽和するのみならず、絶縁層における他の成分の比率が小さくなって、これら他の成分による効果が小さくなる虞があることから、耐熱性微粒子100質量部に対して、5質量部以下であることが好ましい。
また、絶縁層形成用スラリーには、界面張力を制御する目的で、適宜添加剤を加えることができる。添加剤としては、アルコール(メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコールなど)などが挙げられる。
本発明の絶縁層形成用スラリーでは、耐熱性微粒子、増粘剤、および必要に応じて使用されるバインダや、後述する熱溶融性微粒子、膨潤性微粒子などを含む固形分含量を、例えば10〜80質量%とすることが好ましい。
絶縁層形成用スラリーの粘度は、耐熱性微粒子の沈降を良好に抑制し、その分散の安定性を高める観点から、5mPa・s以上であることが好ましく、10mPa・s以上であることがより好ましく、20mPa・s以上であることが更に好ましい。また、絶縁層形成用スラリーの粘度が高すぎると、必要な厚みに均一に塗布することが困難になることから、その粘度は、500mPa・s以下であることが好ましく、300mPa・s以下であることがより好ましく、200mPa・s以下であることが更に好ましい。なお、本明細書でいう絶縁層形成用スラリーの粘度は、振動式粘度計を用いて25℃で測定される値である。
絶縁層形成用スラリーの調製には従来から知られている各種の方法を用いることが可能であり、例えば、前記各種材料(耐熱性微粒子、増粘剤、および必要に応じて使用されるバインダ、防腐剤、殺菌剤、消泡剤、分散剤、更には後述の熱溶融性微粒子、膨潤性微粒子など)を、市販の各種分散装置を用いて媒体中に分散させることで、絶縁層形成用スラリーを調製することが可能である(一部の材料は媒体中に溶解していてもよい)。なお、分散装置が強いシェアを発生するもので、増粘剤やバインダなどの高分子物質の特性に影響がある場合には、耐熱性微粒子および媒体、更には必要に応じて分散剤などを添加し、ハイシェアの分散装置でまず耐熱性微粒子を媒体中に分散させ、その後、増粘剤やバインダなどを添加し、シェアの弱い装置(プロペラ式攪拌装置など)を用いてスラリーを調製することが望ましい。
分散装置の具体例としては、ビーズミル、ボールミル、遊星式ボールミル、サンドミルなどのメディア方式の分散機;ジェットミル、ロッドミル、ナノマイザー、ホモジナイザーなどのメディアレスの分散機;などが挙げられる。
本発明のリチウムイオン二次電池用セパレータは、本発明の絶縁層形成用スラリーを、リチウムイオン二次電池用正極、リチウムイオン二次電池用負極および多孔質基材よりなる群から選択される少なくとも1種の基材に塗布し、乾燥する工程を経て形成された多孔質の絶縁層を有するものである。
絶縁層形成用スラリーを塗布する基材として多孔質基材を用いた場合には、絶縁層と多孔質基材とが別個の層を構成しつつ、これらが一体化した構造のセパレータや、絶縁層形成用スラリーの成分と多孔質基材とが一体となって絶縁層を構成した構造のセパレータを得ることができる。また、前記の絶縁層と多孔質基材とが一体化した層と、別の多孔質層とでセパレータを構成していてもよい。この場合には、絶縁層と多孔質基材とが一体化した層と、多孔質層とが一体化していてもよく、多孔質層が、絶縁層と多孔質基材とが一体化した層とは別個の独立膜で、これらがリチウムイオン二次電池内で重ねられてセパレータを構成していてもよい。
他方、絶縁層形成用スラリーを塗布する基材として、リチウムイオン二次電池用正極やリチウムイオン二次電池負極を用いた場合には、絶縁層とリチウムイオン二次電池用正極および/またはリチウムイオン二次電池用負極とが一体化する。この場合、絶縁層のみでセパレータを構成していてもよく、かかる絶縁層と、別の多孔質層とでセパレータを構成してもよい。絶縁層と、別の多孔質層とでセパレータを構成する場合には、絶縁層と前記多孔質層とが一体化していてもよく、前記多孔質層が絶縁層とは別個の独立膜で、リチウムイオン二次電池内で絶縁層と重ねられてセパレータを構成していてもよい。
リチウムイオン二次電池用正極およびリチウムイオン二次電池用負極としては、後述する本発明のリチウムイオン二次電池を構成するための正極および負極が挙げられる。
多孔質基材としては、材質が、電気絶縁性で、リチウムイオン二次電池内部の電気化学反応に対し安定で、有機電解液に対し安定なものであればいずれでもよいが、織布、不織布または微多孔膜であることが好ましい。微多孔膜としては、通常のリチウムイオン二次電池などのセパレータで使用されている微多孔膜(微多孔性フィルム)と同様の構造を有するものが挙げられる。
多孔質基材の具体的な構成材料としては、例えば、セルロース、セルロース変成体(カルボキシメチルセルロースなど)、ポリオレフィン[ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、エチレン由来の構造単位が85モル%以上の共重合ポリオレフィンなど]、ポリエステル[ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)など]、ポリアクリロニトリル(PAN)、アラミド、ポリアミドイミド、ポリイミドなどの樹脂;ガラス、アルミナ、シリカなどの無機材料(無機酸化物);などが挙げられる。前記共重合ポリオレフィンとしては、エチレン−ビニルモノマー共重合体、より具体的には、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−メチルアクリレート共重合体、またはエチレン−エチルアクリレート共重合体が例示できる。多孔質基材は、これらの構成材料の1種を含有していてもよく、2種以上を含有していても構わない。また、多孔質基材は、構成成分として、前記の構成材料の他に、必要に応じて、公知の各種添加剤(例えば、樹脂である場合には酸化防止剤など)を含有していても構わない。
多孔質基材を用いてセパレータを構成するに当たり、セパレータの耐熱性をより重視する場合には、多孔質基材の構成材料として、前記例示の各種材料の中でも、耐熱性の高いもの(ポリエステル、アラミド、ポリアミドイミド、ポリイミドなどの耐熱性樹脂や、無機材料)を用いることが好ましい。
他方、リチウムイオン二次電池が高温になった場合に、多孔質基材の溶融によりセパレータの空孔を閉塞させ、イオンの伝導を阻害してリチウムイオン二次電池の安全性を確保する、いわゆるシャットダウン機能を付与する場合には、所定の温度で溶融、軟化する材料によって構成した多孔質基材を用いることが好ましい。多孔質基材の構成樹脂の溶融、軟化する温度としては、好ましくは80℃以上、より好ましくは100℃以上であって、好ましくは150℃以下、より好ましくは140℃以下である。なお、多孔質基材の構成樹脂の溶融、軟化する温度は、JIS K 7121の規定に準じて、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定される融解温度で判断できる(後記の熱溶融性微粒子についても、同じである。)。このような構成材料としては、ポリオレフィンが好ましく、PEがより好ましい。そして、より良好なシャットダウン機能を得るためには、PEの微多孔膜を用いてセパレータを構成することが特に好ましい。
なお、多孔質基材には、耐熱性微粒子との接着性を高めるために、コロナ処理や界面活性剤処理などの表面処理を施してもよい。
多孔質基材として織布または不織布を用いる場合には、その構成材料が繊維状であるが、繊維の直径は、セパレータの厚み以下であればよい。具体的には、繊維の直径は、例えば、0.01〜5μmであることが好ましい。径が大きすぎると、繊維同士の絡み合いが不足して、これらで構成される多孔質基材の強度、ひいてはセパレータの強度が小さくなって取扱いが困難となることがある。また、径が小さすぎると、セパレータの空孔が小さくなりすぎてイオン透過性が低下する傾向にあり、リチウムイオン二次電池の負荷特性を低下させてしまうことがある。
また、多孔質基材としての織布または不織布は、繊維同士を結着するために適宜バインダを用いてもよい。バインダとしては、例えば、絶縁層に含有させるバインダ(絶縁層形成用スラリーに含有させるバインダ)として先に例示した各種バインダが挙げられる。
また、前記多孔質基材が、織布または不織布のように、繊維で構成されるものであって、特にその空孔の開口径が比較的大きい場合(例えば、空孔の開口径が5μm以上の場合)には、これがリチウムイオン二次電池の短絡の要因となりやすい。よって、この場合には、耐熱性微粒子の一部または全部が基材の空孔内に存在する構造とすることが好ましい。また、耐熱性微粒子以外の微粒子(後述する熱溶融性微粒子や膨潤性微粒子など)の一部または全部が、多孔質基材の空孔内に存在する構造とすることがより好ましい。このような構造とすることで、耐熱性微粒子以外の微粒子を用いることによる作用(熱溶融性微粒子や膨潤性微粒子であればシャットダウン機能)がより有効に発揮されるようになる。多孔質基材の空孔内に耐熱性微粒子や熱溶融性微粒子、膨潤性微粒子などを存在させるには、例えば、絶縁層形成用スラリーを多孔質基材に含浸させた後、一定のギャップを通して余分なスラリーを除去し、その後乾燥するなどの工程を経ればよい。
本発明のセパレータに用いる多孔質基材としては、厚みを薄くできるという点で、不織布や微多孔膜がより好ましい。不織布や微多孔膜は従来公知の方法によって製造したものを用いることができる。より具体的には、不織布については、スパンボンド、メルトブロー、湿式、乾式、エレクトロスピニングなどの方法によって製造したものを使用することができる。また、微多孔膜については、発泡法、溶剤抽出法、乾式延伸法、湿式延伸法などの公知の各種方法によって製造したものを使用することができる。
なお、絶縁層中にシャットダウン機能を確保するための材料を含有させたり、セパレータにシャットダウン機能を確保するための層を設けたりして、セパレータにシャットダウン機能を付与することもできる。特に、耐熱性の高い樹脂を用いて構成した多孔質基材を使用したり、多孔質基材を用いずにセパレータを構成したりする場合に、セパレータのシャットダウン機能を確保するには、このような方法が推奨される。
なお、セパレータにシャットダウン機能を付与するための層は、前記の、絶縁層と多孔質基材と一体化した層と、別の多孔質層とで構成されるセパレータや、絶縁層と別の多孔質層とで構成されるセパレータにおける「別の多孔質層」に該当する。このような「別の多孔質層」としては、例えば、前記の、所定の温度で溶融、軟化する材料によって構成した多孔質基材(より好ましくは微多孔膜)が挙げられる。
なお、シャットダウン機能を付与するための層(特に微多孔膜)は、高温下で熱収縮を起こしやすいが、本発明のセパレータでは、耐熱性微粒子を含有する絶縁層の作用によって、セパレータ全体の熱収縮が抑制され、高温時のセパレータの寸法安定性を高めることができる。また、シャットダウン機能を付与するための層を別途設けない構成のセパレータであっても、絶縁層に係る耐熱性微粒子の作用によって、セパレータの熱収縮が抑制される。そのため、本発明のセパレータを用いたリチウムイオン二次電池では、高温時におけるセパレータの収縮による内部短絡の発生を抑制して、その信頼性、安全性を高めることができる。
絶縁層にシャットダウン機能を確保するための材料を添加する場合の前記材料としては、リチウムイオン二次電池内が高温になった際に溶融、軟化する熱溶融性微粒子や、有機電解液中で膨潤し、かつ温度の上昇により膨潤度が増大する膨潤性微粒子が挙げられる。
熱溶融性微粒子の溶融、軟化する温度としては、好ましくは80℃以上、より好ましくは100℃以上であって、好ましくは150℃以下、より好ましくは140℃以下である。このような熱溶融性微粒子の構成材料の具体例としては、PE、エチレン由来の構造単位が85モル%以上の共重合ポリオレフィン、PP、またはポリオレフィン誘導体(塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレンなど)、ポリオレフィンワックス、石油ワックス、カルナバワックスなどが挙げられる。前記共重合ポリオレフィンとしては、エチレン−ビニルモノマー共重合体、より具体的には、EVA、エチレン−メチルアクリレート共重合体、またはエチレン−エチルアクリレート共重合体が例示できる。また、ポリシクロオレフィンなどを用いることもできる。熱溶融性微粒子は、これらの構成材料の1種のみを有していてもよく、2種以上を有していても構わない。これらの中でも、PE、ポリオレフィンワックス、またはエチレン由来の構造単位が85モル%以上のEVAが好適である。また、前記熱溶融性微粒子は、構成成分として、前記の構成材料の他に、必要に応じて、樹脂に添加される公知の各種添加剤(例えば、酸化防止剤など)を含有していても構わない。
熱溶融性微粒子の粒径としては、耐熱性微粒子と同じ測定法で測定される数平均粒子径で、例えば、好ましくは0.001μm以上、より好ましくは0.1μm以上であって、好ましくは15μm以下、より好ましくは1μm以下である。
有機電解液中で膨潤でき、かつ温度の上昇により膨潤度が増大する膨潤性微粒子をセパレータが有する場合には、リチウムイオン二次電池内で高温に曝されたときに、膨潤性微粒子の膨潤によって有機電解液を吸収して大きく膨張する(以下、膨潤性微粒子における温度の上昇に伴って膨潤度が増大する機能を「熱膨潤性」という。)ことにより、セパレータ内のLiイオンの伝導性を著しく低下させるため、リチウムイオン二次電池の内部抵抗が上昇し、前記のシャットダウン機能を確実に確保することが可能となる。膨潤性微粒子としては、前記の熱膨潤性を示す温度が、75〜125℃であるものが好ましい。
このような熱膨潤性を有する膨潤性微粒子としては、例えば、架橋ポリスチレン(PS)、架橋アクリル樹脂[例えば、架橋ポリメチルメタクリレート(PMMA)]、架橋フッ素樹脂[例えば、架橋ポリフッ化ビニリデン(PVDF)]などが好適であり、架橋PMMAが特に好ましい。
膨潤性微粒子の粒径は、レーザー散乱粒度分布計(例えば、HORIBA社製「LA−920」)を用い、微粒子を膨潤しない媒体(例えば水)に分散させて測定した数平均粒子径で、0.1〜20μmであることが好ましい。
膨潤性微粒子の市販品としては、例えば、ガンツ化成社製の架橋PMMA「ガンツパール(製品名)」、東洋インキ社製の架橋PMMA「RSP1079(製品名)」などが入手可能である。
なお、セパレータに係る前記のシャットダウン機能は、例えば、モデルセルの温度による抵抗上昇により評価することが可能である。すなわち、正極、負極、セパレータ、および有機電解液を備えたモデルセルを作製し、このモデルセルを高温槽中に保持し、5℃/分の速度で昇温しながらモデルセルの内部抵抗値を測定し、測定された内部抵抗値が、加熱前(室温で測定した抵抗値)の5倍以上となる温度を測定することで、この温度をセパレータの有するシャットダウン温度として評価することができる。
セパレータは、絶縁層や多孔質基材からなる層を複数有していてもよい。例えば、絶縁層の両面に微多孔膜を配置してセパレータを構成したり、微多孔膜の両面に絶縁層を配置してセパレータを構成してもよい。ただし、セパレータの有する層数が多くなりすぎると、セパレータの厚みを増やしてリチウムイオン二次電池の内部抵抗の増加やエネルギー密度の低下を招く虞があるので好ましくなく、セパレータ中の層数は5層以下であることが好ましい。
本発明のセパレータにおける耐熱性微粒子の含有量は、耐熱性微粒子を使用することによる作用をより有効に発揮させる観点から、セパレータの構成成分の全体積中、10体積%以上であることが好ましく、30体積%以上であることがより好ましく、40体積%以上であることが更に好ましい。
また、例えば多孔質基材を用いずに、電極表面に絶縁層を形成する場合、前記の熱溶融性微粒子や膨潤性微粒子を含有させて、シャットダウン機能も持たせるときには、セパレータ中の耐熱性微粒子の体積比率の上限は、例えば80体積%であることが好ましい。他方、多孔質基材を用いず、かつシャットダウン機能を有しないセパレータとする場合には、セパレータ中の耐熱性微粒子の体積比率は、更に高い比率でもよく、例えば95体積%以下であれば問題ない。
また、多孔質基材を用いてセパレータを構成する場合であって、絶縁層中に前記の熱溶融性微粒子や膨潤性微粒子を含有させて、シャットダウン機能も持たせたセパレータとしたり、熱溶融性の樹脂で構成された多孔質基材(例えば微多孔膜)と絶縁層とでセパレータを構成したりするときには、セパレータ中の耐熱性微粒子の体積比率の上限は、例えば60体積%であることが好ましい。他方、多孔質基材を用い、かつシャットダウン機能を有しないセパレータとする場合には、セパレータ中の耐熱性微粒子の体積比率は、更に高い比率でもよく、例えば80体積%以下であれば問題ない。
また、セパレータにおいて、良好なシャットダウン機能を確保する観点からは、セパレータ中における熱溶融性樹脂(熱溶融性樹脂で構成される多孔質基材または熱溶融性微粒子)および/または膨潤性微粒子の含有量は、セパレータの構成成分の全体積中、5〜70体積%であることが好ましい。セパレータ中における熱溶融性樹脂や膨潤性微粒子の含有量が少なすぎると、これらを含有させることによるシャットダウン効果が小さくなることがあり、多すぎると、セパレータ中における耐熱性微粒子などの含有量が減ることになるため、これらによって確保される効果が小さくなることがある。
よって、絶縁層形成用スラリーにおいては、形成後の絶縁層における各構成成分の含有量が前記好適値を満足できるような量で、これら構成成分を配合することが好ましい。
リチウムイオン二次電池の短絡防止効果をより高め、セパレータの強度を確保して、その取り扱い性を良好とする観点から、セパレータの厚みは、例えば、3μm以上とすることが好ましく、5μm以上とすることがより好ましい。他方、リチウムイオン二次電池のエネルギー密度をより高める観点からは、セパレータの厚みは、50μm以下とすることが好ましく、30μm以下とすることがより好ましい。例えば、絶縁層のみでセパレータを構成する場合には、絶縁層の厚みが、前記のセパレータの好適厚みを満足するようにすればよい。
また、例えば、絶縁層と多孔質基材とを有し、これらが別個の層を形成しているセパレータの場合(特に多孔質基材が微多孔膜の場合)場合には、絶縁層の厚みをX(μm)、多孔質基材の厚みをY(μm)としたとき、XとYとの比率Y/Xを1〜10としつつ、セパレータ全体の厚みが前記好適値を満足するようにすることが好ましい。Y/Xが大きすぎると、絶縁層が薄くなりすぎて、例えば、多孔質基材の高温時での寸法安定性が劣る場合に、その熱収縮を抑制する効果が小さくなる虞がある。また、Y/Xが小さすぎると、絶縁層が厚くなりすぎて、セパレータ全体の厚みを増大させ、負荷特性などのリチウムイオン二次電池の特性の低下を引き起こす虞がある。なお、セパレータが、絶縁層を複数有する場合には、厚みXはその総厚みであり、多孔質基材を複数有する場合には、厚みYはその総厚みである。
具体的な値で表現すると、多孔質基材の厚み(セパレータが多孔質基材を複数有する場合には、その総厚み)は、5μm以上であることが好ましく、また、30μm以下であることが好ましい。そして、絶縁層の厚み(セパレータが絶縁層を複数有する場合には、その総厚み)は、1μm以上であることが好ましく、2μm以上であることがより好ましく、4μm以上であることが更に好ましく、また、20μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましく、6μm以下であることがより好ましい。
また、セパレータの空孔率は、有機電解液の保液量を確保してイオン透過性を良好にするために、乾燥した状態で、20%以上であることが好ましく、30%以上であることがより好ましい。一方、セパレータの強度確保と内部短絡の防止の観点から、セパレータの空孔率は、乾燥した状態で、70%以下であることが好ましく、60%以下であることがより好ましい。なお、セパレータの空孔率:P(%)は、セパレータの厚み、面積あたりの質量、構成成分の密度から、次式を用いて各成分iについての総和を求めることにより計算できる。
P = Σaρ /(m/t)
ここで、前記式中、a:質量%で表した成分iの比率、ρ:成分iの密度(g/cm)、m:セパレータの単位面積あたりの質量(g/cm)、t:セパレータの厚み(cm)、である。
また、セパレータの透気度は、JIS P 8117に準拠した方法で測定され、0.879g/mmの圧力下で100mlの空気が膜を透過する秒数で示されるガーレー値で10〜300secであることが望ましい。透気度が大きすぎると、イオン透過性が小さくなり、小さすぎるとセパレータの強度が小さくなることがある。前記の透気度は、これまでに説明した構成のセパレータとすることで確保できる。
本発明のセパレータは、例えば、本発明の製造方法、すなわち、リチウムイオン二次電池用正極、リチウムイオン二次電池用負極および多孔質基材から選ばれる少なくとも1種の基材に、絶縁層形成用スラリーを塗布した後、所定の温度で乾燥して媒体を除去する方法により製造できる。
絶縁層形成用スラリーを基材表面に塗布する際には、従来公知の塗工機、例えば、ダイコーター、グラビアコーター、リバースロールコーター、スクイズロールコーター、カーテンコーター、ブレードコーター、ナイフコーターなどの塗工機を用いることができる。
また、セパレータ中において、耐熱性微粒子として板状粒子を用いた場合、その配向性を高めるには、絶縁層形成用スラリーを基材に塗布する際に、絶縁層形成用スラリーにシェアをかければよい。絶縁層形成用スラリーにシェアをかけるには、例えば、多孔質基材を用いてセパレータを製造する場合では、絶縁層形成用スラリーを多孔質基材に含浸させた後、一定のギャップを通して余分なスラリーを除去し、その後乾燥するなどの工程を経ればよい。
また、セパレータ中において、板状の耐熱性微粒子の配向性をより高めるには、前記のシェアをかける方法以外にも、高固形分濃度(例えば50〜80質量%)の絶縁層形成用スラリーを使用する方法;耐熱性微粒子を溶媒に、ディスパー、アジター、ホモジナイザー、ボールミル、アトライター、ジェットミルなどの各種混合・攪拌装置、分散装置などを用いて分散させ、得られた分散体にバインダ(更に、必要に応じて熱溶融性微粒子、膨潤性微粒子など)を添加・混合して調製した絶縁層形成用スラリーを使用する方法;表面に油脂類、界面活性剤、シランカップリング剤などの分散性剤を作用させて、表面を改質した耐熱性微粒子を用いて調製した絶縁層形成用スラリーを使用する方法;形状、径またはアスペクト比の異なる耐熱性微粒子を併用して調製した絶縁層形成用スラリーを使用する方法;絶縁層形成用スラリーを多孔質基材に塗布・含浸させたり、基材表面に塗布したりした後の乾燥条件を制御する方法;セパレータを加圧や加熱加圧プレスする方法;絶縁層形成用スラリーを基材に塗布・含浸させたり、基材表面に塗布したりした後、乾燥前に磁場をかける方法;などが採用でき、これらの方法をそれぞれ単独で実施してもよく、2種以上の方法を組み合わせて実施してもよい。
本発明の製造方法では、セパレータを構成する絶縁層の形成に、耐熱性微粒子の良好な分散状態を長期にわたって維持し得る本発明の絶縁層形成用スラリーを用いている。そのため、本発明の製造方法によれば、例えば、長期間貯蔵した絶縁層形成用スラリーを使用しても、均一性の高い絶縁層を有するセパレータを製造できる。また、本発明の製造方法によれば、長尺のセパレータを連続的に製造しても、製造初期と製造終期とで均一性が高い絶縁層を有し、品質が安定したセパレータとすることができる。
本発明のリチウムイオン二次電池は、耐熱性の良好な本発明のセパレータを有しており、電池内が高温になっても、セパレータの熱収縮に起因する内部短絡の発生が抑制でき、また、前記セパレータによってリチウムデンドライトの析出に起因する微小短絡の発生も抑制できることから、安全性および信頼性が優れている。
本発明のリチウムイオン二次電池は、本発明のリチウムイオン二次電池用セパレータを用いていれば、その他の構成、構造については特に制限はなく、従来から知られているリチウムイオン二次電池が備えている各種構成、構造を採用することができる。
リチウムイオン二次電池の形態としては、スチール缶やアルミニウム缶などを外装缶として使用した筒形(角筒形や円筒形など)などが挙げられる。また、金属を蒸着したラミネートフィルムを外装体としたソフトパッケージ電池とすることもできる。
正極としては、従来から知られているリチウムイオン二次電池に用いられている正極、すなわち、Liイオンを吸蔵放出可能な活物質を含有する正極であれば特に制限はない。例えば、活物質として、Li1+xMO(−0.1<x<0.1、M:Co、Ni、Mnなど)で表されるリチウム含有遷移金属酸化物;LiMnなどのリチウムマンガン酸化物;LiMnのMnの一部を他元素で置換したLiMn(1−x);オリビン型LiMPO(M:Co、Ni、Mn、Fe);LiMn0.5Ni0.5;Li(1+a)MnNiCo(1−x−y)(−0.1<a<0.1、0<x<0.5、0<y<0.5);などを適用することが可能であり、これらの正極活物質に公知の導電助剤(カーボンブラックなどの炭素材料など)やポリフッ化ビニリデン(PVDF)などの結着剤などを適宜添加した正極合剤を、集電体を芯材として成形体(すなわち、正極合剤層)に仕上げたものなどを用いることができる。
正極の集電体としては、アルミニウムなどの金属の箔、パンチングメタル、網、エキスパンドメタルなどを用い得るが、通常、厚みが10〜30μmのアルミニウム箔が好適に用いられる。
正極側のリード部は、通常、正極作製時に、集電体の一部に正極合剤層を形成せずに集電体の露出部を残し、そこをリード部とすることによって設けられる。ただし、リード部は必ずしも当初から集電体と一体化されたものであることは要求されず、集電体にアルミニウム製の箔などを後から接続することによって設けてもよい。
負極としては、従来から知られているリチウムイオン二次電池に用いられている負極、すなわち、Liイオンを吸蔵放出可能な活物質を含有する負極であれば特に制限はない。例えば、活物質として、黒鉛、熱分解炭素類、コークス類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物の焼成体、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、炭素繊維などの、リチウムを吸蔵、放出可能な炭素系材料の1種または2種以上の混合物が用いられる。また、Si、Sn、Ge、Bi、Sb、Inなどの元素およびその合金、リチウム含有窒化物、または酸化物などのリチウム金属に近い低電圧で充放電できる化合物、もしくはリチウム金属やリチウム/アルミニウム合金も負極活物質として用いることができる。これらの負極活物質に導電助剤(カーボンブラックなどの炭素材料など)やPVDFなどの結着剤などを適宜添加した負極合剤を、集電体を芯材として成形体(負極合剤層)に仕上げたものや、前記の各種合金やリチウム金属の箔を単独で用いたり、前記合金やリチウム金属の層を集電体に形成したものなどの負極剤層を有するものが用いられる。
負極に集電体を用いる場合には、集電体としては、銅製やニッケル製の箔、パンチングメタル、網、エキスパンドメタルなどを用い得るが、通常、銅箔が用いられる。この負極集電体は、高エネルギー密度の電池を得るために負極全体の厚みを薄くする場合、厚みの上限は30μmであることが好ましく、また、下限は5μmであることが望ましい。
負極側のリード部も、正極側のリード部と同様に、通常、負極作製時に、集電体の一部に負極剤層(負極活物質を有する層、負極合剤層を含む)を形成せずに集電体の露出部を残し、そこをリード部とすることによって設けられる。ただし、この負極側のリード部は必ずしも当初から集電体と一体化されたものであることは要求されず、集電体に銅製の箔などを後から接続することによって設けてもよい。
電極は、前記の正極と前記の負極とを、本発明のセパレータを介して積層した積層構造の電極群や、更にこれを巻回した巻回構造の電極群の形態で用いることができる。
有機電解液としては、リチウム塩を有機溶媒に溶解した溶液が用いられる。リチウム塩としては、溶媒中で解離してLiイオンを形成し、電池として使用される電圧範囲で分解などの副反応を起こさないものであれば特に制限はない。例えば、LiClO、LiPF、LiBF、LiAsF 、LiSbF などの無機リチウム塩;LiCFSO、LiCFCO、Li(SO、LiN(CFSO、LiC(CFSO、LiC2n+1SO(n≧2)、LiN(RfOSO[ここでRfはフルオロアルキル基]などの有機リチウム塩;などを用いることができる。
有機電解液に用いる有機溶媒としては、前記のリチウム塩を溶解し、電池として使用される電圧範囲で分解などの副反応を起こさないものであれば特に限定されない。例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネートなどの環状カーボネート;ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネートなどの鎖状カーボネート;プロピオン酸メチルなどの鎖状エステル;γ−ブチロラクトンといった環状エステル;ジメトキシエタン、ジエチルエーテル、1,3−ジオキソラン、ジグライム、トリグライム、テトラグライムなどの鎖状エーテル;ジオキサン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフランなどの環状エーテル;アセトニトリル、プロピオニトリル、メトキシプロピオニトリルといったニトリル類;エチレングリコールサルファイトなどの亜硫酸エステル類;などが挙げられ、これらを1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用しても構わない。なお、より良好な特性の電池とするためには、エチレンカーボネートと鎖状カーボネートの混合溶媒など、高い導電率を得ることができる組み合わせで用いることが望ましい。また、これらの電解液に安全性や充放電サイクル性、高温貯蔵性といった特性を向上させる目的で、ビニレンカーボネート類、1,3−プロパンサルトン、ジフェニルジスルフィド、シクロヘキシルベンゼン、ビフェニル、フルオロベンゼン、t−ブチルベンゼン、無水酸、硫黄化エステル、ビニルエチレンカーボネート(VEC)などの添加剤を適宜加えることもできる。
このリチウム塩の有機電解液中の濃度としては、0.5〜1.5mol/lとすることが好ましく、0.9〜1.25mol/lとすることがより好ましい。
また、前記の有機溶媒の代わりに、エチル−メチルイミダゾリウムトリフルオロメチルスルホニウムイミド、へプチル−トリメチルアンモニウムトリフルオロメチルスルホニウムイミド、ピリジニウムトリフルオロメチルスルホニウムイミド、グアジニウムトリフルオロメチルスルホニウムイミドといった常温溶融塩を用いることもできる。
更に、前記の有機電解液を含有してゲル化するような高分子材料を添加して、有機電解液をゲル状にして電池に用いてもよい。有機電解液をゲル状とするための高分子材料としては、PVDF、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(PVDF−HFP)、PAN、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、エチレンオキシド−プロピレンオキシド共重合体、主鎖または側鎖にエチレンオキシド鎖を有する架橋ポリマー、架橋したポリ(メタ)アクリル酸エステルなど、公知のゲル状電解質形成可能なホストポリマーが挙げられる。
本発明のリチウムイオン二次電池は、従来から知られているリチウムイオン二次電池が用いられている各種用途と同じ用途に適用することができる。
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に述べる。ただし、下記実施例は、本発明を制限するものではない。なお、以下に示す各種微粒子の平均粒径およびアスペクト比は、前記の方法により測定した値である。
<絶縁層形成用スラリーの調製>
実施例1
蒸留した水を、波長365nmの紫外線ランプで30分間滅菌処理して精製水を得た。前記の精製水について、前記の方法により真菌数および生菌数を確認したところ、いずれも1mL中に10以下であった。
耐熱性微粒子である粒状フッ素リン灰石[化学式Ca(POF、平均粒径1μm]1000gに、前記精製水1000gと、フッ素リン灰石100質量部に対して1質量部のポリアクリル酸アンモニウム(分散剤)とを添加し、これを卓上ボールミルにて6日間分散を行って分散液を得た。この分散液のpHをゼータ電位測定装置[日本ベル社製「Zetaprobe ZP−11(商品名)」]を用いて測定したところ、10であった。
前記の分散液に、バインダである自己架橋性のアクリル樹脂のエマルジョン(フッ素リン灰石100質量部に対して3質量部)を添加し、更に、増粘剤としてキサンタンガムを2g添加し、スリーワンモーターで1時間攪拌して分散させて、均一な絶縁層形成用スラリーを得た。この絶縁層形成用スラリーの粘度を振動式粘度計[エーアンドディ社製「SV−10(商品名)」]を用いて25℃で測定したところ、30mPa・sであった。また、この絶縁層形成用スラリーのpHを、前記のゼータ電位測定装置を用いて測定したところ、8.5であった。
更に、前記の絶縁層形成用スラリーの安定性を、タービスキャン[英弘精機社製「MA−2000(商品名)」]を用いて、サンプル管中での沈降高さを測定することで評価した。サンプル管に絶縁層形成用スラリーを高さ60mmに注入して後方散乱光強度を測定し、散乱光強度が1以上になる点までの高さを測定し、沈降高さとした。測定開始後1週間での沈降高さは54mmであった。
また、前記の絶縁層形成用スラリーの、調製から3か月貯蔵した後の粘度を、前記と同様にして25℃で測定したところ、30mPa・sであり、貯蔵期間の経過に伴う粘度変化は認められなかった。以下、前記の絶縁層形成用スラリーのうち、調製直後のものを実施例1−1の絶縁層形成用スラリーといい、調製から3か月貯蔵したものを実施例1−2の絶縁層形成用スラリーという。
実施例2
粒状フッ素リン灰石に代えて粒状水酸リン灰石[化学式Ca(POOH、平均粒径3μm]を用いた以外は、実施例1と同様にして絶縁層形成用スラリーを調製した。得られた絶縁層形成用スラリーについて、実施例1と同様にして測定したpHは7.5で、実施例1と同様にして測定した1週間後の沈降高さは56mmであり、実施例1と同様にして測定した調製後の粘度および調製から3か月貯蔵後の粘度は、それぞれ25mPa・s、25mPa・sであった。以下、前記の絶縁層形成用スラリーのうち、調製直後のものを実施例2−1の絶縁層形成用スラリーといい、調製から3か月貯蔵したものを実施例2−2の絶縁層形成用スラリーという。
実施例3
粒状フッ素リン灰石に代えて粒状塩素リン灰石[化学式Ca(POCl、平均粒径2μm]を用いた以外は、実施例1と同様にして絶縁層形成用スラリーを調製した。得られた絶縁層形成用スラリーについて、実施例1と同様にして測定したpHは7.5で、実施例1と同様にして測定した1週間後の沈降高さは56mmであり、実施例1と同様にして測定した調製後の粘度および調製から3か月貯蔵後の粘度は、それぞれ25mPa・s、25mPa・sであった。以下、前記の絶縁層形成用スラリーのうち、調製直後のものを実施例3−1の絶縁層形成用スラリーといい、調製から3か月貯蔵したものを実施例3−2の絶縁層形成用スラリーという。
実施例4
耐熱性微粒子である板状ベーマイト(平均粒径1μm、アスペクト比10)を水洗し、120℃で真空乾燥した。
実施例1で用いたものと同じ粒状フッ素リン灰石500gに、水洗した前記の板状ベーマイト500gと、イオン交換水1000gと、フッ素リン灰石と板状ベーマイトとの合計100質量部に対して1質量部のポリアクリル酸アンモニウム(分散剤)とを添加し、これを卓上ボールミルにて6日間分散を行って分散液を得た。そして、この分散液を用いた以外は、実施例1と同様にして絶縁層形成用スラリーを調製した。
得られた絶縁層形成用スラリーについて、実施例1と同様にして測定したpHは10.5で、実施例1と同様にして測定した1週間後の沈降高さは56mmであり、実施例1と同様にして測定した調製後の粘度および調製から3か月貯蔵後の粘度は、それぞれ27mPa・s、27mPa・sであった。以下、前記の絶縁層形成用スラリーのうち、調製直後のものを実施例4−1の絶縁層形成用スラリーといい、調製から3か月貯蔵したものを実施例4−2の絶縁層形成用スラリーという。
比較例1
粒状フッ素リン灰石に代えて粒状シリカ(平均粒径1.3μm)を用い、更に、滅菌処理した精製水に代えてイオン交換水を用いた以外は、実施例1と同様にして絶縁層形成用スラリーを調製した。得られた絶縁層形成用スラリーについて、実施例1と同様にして測定したpHは6.8で、実施例1と同様にして測定した1週間後の沈降高さは56mmであった。また、前記の絶縁層形成用スラリーについて、実施例1と同様にして測定した調製後の粘度、調製から1か月後および調製から3か月貯蔵後の粘度は、それぞれ40mPa・s、35mPa・s、30mPa・sであり、3か月の貯蔵によって粘度が約25%低下した。以下、前記の絶縁層形成用スラリーのうち、調製直後のものを比較例1−1の絶縁層形成用スラリーといい、調製から3か月貯蔵したものを比較例1−2の絶縁層形成用スラリーという。
<セパレータの製造>
実施例5〜12および比較例2、3
実施例1〜4および比較例1で調製した絶縁層形成用スラリー(調製直後のもの、および調製から3か月間貯蔵したもの)を均一に攪拌し、脱泡した後、それぞれの絶縁層形成用スラリー中に厚みが15μmのPET製不織布を通し、引き上げ塗布によりスラリーを塗布した後、所定の間隔を有するギャップの間を通し、乾燥して、厚みが20μmのセパレータを製造した。表1に、各セパレータの製造に使用した絶縁層形成用スラリーを示す。
Figure 2011018588
実施例1〜4の絶縁層形成用スラリーは安定性が高く、調製直後のもの、調製から3か月貯蔵したもののいずれも連続して均一に塗布することができ、これらのスラリーを用いて製造した実施例5〜12のセパレータは、いずれも均一性の高い絶縁層を有するものであった。
これに対し、比較例1の絶縁層形成用スラリーは、調製から3か月貯蔵した場合(比較例1−2の絶縁層形成用スラリー)に、調製直後からの粘度変化が大きいため、PET不織布に良好に塗布することができなかった(比較例3)。
実施例13〜20
実施例1〜4の絶縁層形成用スラリー(調製直後のもの、および調製から3か月間貯蔵したもの)を、それぞれ別のPE製微多孔膜(長尺で厚みが16μm)の片面に、ダイコーターを用いて連続的に塗布し、乾燥して、厚みが20μmのセパレータを製造した。表2に、各セパレータの製造に使用した絶縁層形成用スラリーを示す。
Figure 2011018588
実施例1〜4の絶縁層形成用スラリーは、調製直後のもの、調製から3か月貯蔵したもののいずれも連続して均一に塗布することができ、これらのスラリーを用いて製造した実施例13〜20のセパレータは、いずれも均一性の高い絶縁層を有するものであった。
<リチウムイオン二次電池の製造>
実施例21
正極活物質であるLiCoO:85質量部、導電助剤であるアセチレンブラック:10質量部、およびバインダであるPVDF:5質量部を、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)を溶剤として均一になるように混合して、正極合剤含有ペーストを調製した。このペーストを、集電体となる厚み15μmのアルミニウム箔の両面に、塗布長が表面320mm、裏面250mmになるように間欠塗布し、乾燥した後、カレンダー処理を行って、全厚が150μmになるように正極合剤層の厚みを調整し、幅43mmになるように切断して、長さ340mm、幅43mmの正極を作製した。更にこの正極のアルミニウム箔の露出部にタブ付けを行った。
また、負極活物質である黒鉛:90質量部と、バインダであるPVDF:5質量部とを、NMPを溶剤として均一になるように混合して負極合剤含有ペーストを調製した。この負極合剤含有ペーストを、銅箔からなる厚み10μmの集電体の両面に、塗布長が表面200mm、裏面260mmになるように間欠塗布し、乾燥した後、カレンダー処理を行って全厚が142μmになるように負極合剤層の厚みを調整し、幅45mmになるように切断して、長さ330mm、幅45mmの負極を作製した。更にこの負極の銅箔の露出部にタブ付けを行った。
前記のようにして得られた正極と負極とを、実施例5のセパレータを介して重ね合わせ、渦巻状に巻回して巻回構造の電極群とした。この電極群を直径14mm、高さ50mmの円筒状の電池ケース内に挿入し、電解液(エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートを1:2の体積比で混合した溶媒に、LiPFを1.2mol/lの濃度で溶解させた溶液)を注入し、電池ケースの開口部を定法に従って封止してリチウムイオン二次電池を製造した。
電池組み立て後の予備充電(化成時充電)では、電池の定格容量750mAhに対して20%にあたる電気量となるように、150mAで4.2Vまでの定電流充電と、その後4.2Vでの定電圧充電を、合計6時間行い、その後、150mAで3Vまで定電流放電を行った。
実施例22〜36
セパレータを表3に示すものに変更した以外は、実施例21と同様にしてリチウムイオン二次電池を製造した。
Figure 2011018588
実施例21〜36のリチウムイオン二次電池について、電流150mAで4.2Vまでの定電流充電と4.2Vでの定電圧充電を行った後、150mAで3.0Vまでの放電を行って充放電特性を評価したところ、良好な充放電特性を有しており、良好な信頼性を有していることが判明した。

Claims (10)

  1. リチウムイオン二次電池用セパレータに適用可能な、イオン透過性および耐熱性を有する絶縁層を形成するためのスラリーであって、
    少なくとも、耐熱性微粒子、増粘剤および媒体を含有しており、
    前記耐熱性微粒子の少なくとも一部がリン灰石であり、
    pHが7〜11であることを特徴とする絶縁層形成用スラリー。
  2. リン灰石が、フッ素リン灰石、水酸リン灰石、塩素リン灰石、炭酸フッ素リン灰石および炭酸水酸リン灰石よりなる群から選択される少なくとも1種である請求項1に記載の絶縁層形成用スラリー。
  3. 耐熱性微粒子として、金属酸化物、金属水酸化物および金属水酸化酸化物よりなる群から選択される少なくとも1種の微粒子を更に含有する請求項1または2に記載の絶縁層形成用スラリー。
  4. 媒体の主成分が水であり、増粘剤が天然多糖類である請求項1〜3のいずれかに記載の絶縁層形成用スラリー。
  5. 媒体が、ガンマ線、エチレンオキサイトガスまたは紫外線により滅菌処理を施したものである請求項1〜4のいずれかに記載の絶縁層形成用スラリー。
  6. 粘度が5〜500mPa・sである請求項1〜5のいずれかに記載の絶縁層形成用スラリー。
  7. リチウムイオン二次電池用正極、リチウムイオン二次電池用負極および多孔質基材よりなる群から選択される少なくとも1種の基材に、請求項1〜6のいずれかに記載の絶縁層形成用スラリーを塗布する工程を経て形成された多孔質の絶縁層を有することを特徴とするリチウムイオン二次電池用セパレータ。
  8. 多孔質基材が、織布、不織布または微多孔膜である請求項7に記載のリチウムイオン二次電池用セパレータ。
  9. リチウムイオン二次電池用正極、リチウムイオン二次電池用負極および多孔質基材よりなる群から選択される少なくとも1種の基材に、請求項1〜6のいずれかに記載の絶縁層形成用スラリーを、コーターにより連続的に塗布し、乾燥して、前記基材と一体化した多孔質の絶縁層を形成する工程を有することを特徴とするリチウムイオン二次電池用セパレータの製造方法。
  10. 正極、負極およびセパレータを少なくとも有するリチウムイオン二次電池であって、前記セパレータが、請求項7または8に記載のリチウムイオン二次電池用セパレータであることを特徴とするリチウムイオン二次電池。
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