JPWO2012005152A1 - 非水電池用セパレータおよび非水電池 - Google Patents

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Abstract

本発明の非水電池用セパレータは、多孔質基材と、耐熱性多孔質膜とが、一体化しており、前記耐熱性多孔質膜は、耐熱温度が150℃以上の微粒子と、有機バインダとを含み、前記微粒子の平均粒子径が、0.01〜10μmであり、前記耐熱性多孔質膜の全固形分中に占める前記有機バインダの割合が、7体積%以下であることを特徴とする。また、本発明の非水電池は、上記耐熱性多孔質膜または上記本発明のセパレータを備えていることを特徴とする。

Description

本発明は、非水電池において、正極と負極とを仕切る隔離材に適用するのに好適な耐熱性多孔質膜、該耐熱性多孔質膜を用いた非水電池用セパレータ、および前記耐熱性多孔質膜または前記非水電池用セパレータを有し、出力特性および安全性に優れた非水電池に関するものである。
非水電池の一種であるリチウム二次電池は、エネルギー密度が高いという特徴から、携帯電話やノート型パーソナルコンピューターなどの携帯機器の電源として広く用いられている。更に近年は、高エネルギー密度という特性を活かして、電動アシスト自転車、電動バイク、電気自動車、ハイブリッド自動車といった車載用の電源としての適用も検討されている。このような車載用途の電源は、携帯機器の電源と比べて容量が大きいため、更なる安全性確保が重要である。一方で、要求される出力も携帯機器の電源に比べて大きいため、出力特性を劣化させない安全化技術が要求されている。
現行のリチウム二次電池では、正極と負極の間に介在させるセパレータとして、例えば厚みが20〜30μm程度のポリオレフィン系の微多孔性フィルム(微多孔膜)が使用されている。また、セパレータの素材としては、電池の異常発熱温度以下でセパレータの構成樹脂を溶融させて空孔を閉塞させ、これにより電池の内部抵抗を上昇させて短絡の際などに電池の安全性を向上させる所謂シャットダウン効果を確保するため、ポリエチレンなどのポリオレフィンの中でも融点の低い材料が適用されることがある。
ところで、こうしたセパレータとしては、例えば、多孔化と強度向上のために一軸延伸または二軸延伸したフィルムが用いられている。このようなセパレータは、単独で存在する膜として供給されるため、作業性などの点で一定の強度が要求され、これを前記延伸によって確保している。しかし、このような延伸フィルムでは結晶化度が増大しており、シャットダウン温度も、電池の異常発熱温度に近い温度にまで高まっているため、電池の安全性確保のためのマージンが十分とは言い難い。
また、前記延伸によってフィルムにはひずみが生じており、これが高温に曝されると、残留応力によって収縮が起こるという問題がある。収縮温度は、融点、すなわちシャットダウン温度と非常に近いところに存在する。このため、ポリオレフィン系の微多孔性フィルムセパレータを使用するときには、充電異常時などにより電池の温度がシャットダウン温度に達すると、電流を直ちに減少させて電池の温度上昇を防止しなければならない。空孔が十分に閉塞せず電流を直ちに減少できなかった場合には、電池の温度は容易にセパレータの収縮温度にまで上昇するため、内部短絡による異常発熱の危険性があるからである。
このようなセパレータの熱収縮による短絡を防止し、電池の信頼性を高める技術として、例えば、耐熱性の良好な多孔質基材と、フィラー粒子と、シャットダウン機能を確保するための樹脂成分とを有するセパレータにより電気化学素子を構成することが提案されている(特許文献1〜3)。
また、ポリオレフィン製の多孔質膜に耐熱性樹脂や無機微粒子などを主体とした耐熱層を形成して、耐熱性を高めることが提案されている(特許文献4〜6)。
特許文献1〜6に開示の技術によれば、電池の異常時の際にも異常発熱が生じ難い安全性に優れた電池を提供することができる。
国際公開第2006/62153号 特表2005−536858号公報 国際公開第2009/44741号 特開2000−30686号公報 特開2008−300362号公報 特表2008−524824号公報
ところで、リチウム二次電池を例えば車載用途に適用する場合には、安全性と同時に高い出力特性が要求される。
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、高い安全性と高い出力特性とを有する非水電池、正極と負極との隔離材として機能でき、前記非水電池を構成可能な耐熱性多孔質膜、および前記非水電池を構成可能なセパレータを提供する。
本発明の非水電池用セパレータは、多孔質基材と、耐熱性多孔質膜とが、一体化している非水電池用セパレータであって、前記耐熱性多孔質膜は、耐熱温度が150℃以上の微粒子と、有機バインダとを含み、前記微粒子の平均粒子径が、0.01〜10μmであり、前記耐熱性多孔質膜の全固形分中に占める前記有機バインダの割合が、7体積%以下であることを特徴とする。
また、本発明の第1の非水電池は、正極、負極、耐熱性多孔質膜および非水電解質を含む非水電池であって、前記耐熱性多孔質膜と、前記正極および前記負極から選ばれる少なくとも一方とが、一体化しており、前記耐熱性多孔質膜は、耐熱温度が150℃以上の微粒子と、有機バインダとを含み、前記微粒子の平均粒子径が、0.01〜10μmであり、前記耐熱性多孔質膜の全固形分中に占める前記有機バインダの割合が、7体積%以下であることを特徴とする。
また、本発明の第2の非水電池は、正極、負極、セパレータおよび非水電解質を含む非水電池であって、前記セパレータが、多孔質基材と、耐熱性多孔質膜とが、一体化しており、前記耐熱性多孔質膜は、耐熱温度が150℃以上の微粒子と、有機バインダとを含み、前記微粒子の平均粒子径が、0.01〜10μmであり、前記耐熱性多孔質膜の全固形分中に占める前記有機バインダの割合が、7体積%以下であることを特徴とする。
本発明によれば、高い安全性と高い出力特性とを有する非水電池、正極と負極との隔離材として機能でき、前記非水電池を構成可能な耐熱性多孔質膜、および前記非水電池を構成可能なセパレータを提供することができる。
図1は、本発明のリチウム二次電池の一例を示す断面図である。
先ず、本発明の耐熱性多孔質膜について説明する。本発明の耐熱性多孔質膜は、耐熱温度が150℃以上の微粒子と、有機バインダとを少なくとも含有するものであり、非水電池において、正極と負極とを仕切る隔離材として好適なものである。
すなわち、本発明の耐熱性多孔質膜は、例えば非水電池の正極および負極のうちの少なくとも一方と一体化されることで、前記非水電池内において、正極と負極とを隔離するセパレータとして作用したり、多孔質基材と一体化されることで、独立膜としての非水電池用セパレータを構成したりするものである。
本発明の耐熱性多孔質膜においては、全固形分の全体積(空孔部分を除く耐熱性多孔質膜の構成成分の全体積。以降に記載する耐熱性多孔質膜およびセパレータにおける「全固形分の全体積」について、同じである。)中に占める有機バインダの体積の割合を、7体積%以下とする。耐熱性多孔質膜における有機バインダの割合を前記のように小さくすることで、空孔が有機バインダによって塞がれることを防止して、耐熱性多孔質膜におけるイオン透過性を高め、この耐熱性多孔質膜を用いた電池の出力特性を高めることができる。前記の効果をより良好に確保する観点から、耐熱性多孔質膜の全固形分中に占める有機バインダの割合は、5体積%以下であることが好ましく、3体積%以下であることがより好ましく、1体積%以下であることが更に好ましい。特に、後述する、分子内にアミド基を有する有機バインダ、中でもN−ビニルアセトアミドの単独重合体や共重合体では、前記微粒子を結着する場合にその割合が多いと、形成される多孔質膜の柔軟性が低下して電極の巻回などが困難になる場合があり、耐熱性多孔質膜の柔軟性付与の観点からも、有機バインダの割合はできるだけ少なくすることが望ましい。
ただし、耐熱性多孔質膜における有機バインダの割合が小さすぎると、例えば耐熱温度が150℃以上の微粒子同士を結着する力が弱くなって、耐熱性多孔質膜から前記微粒子が脱落しやすくなったり、また、耐熱性多孔質膜が電極や多孔質基材から剥離しやすくなったりする。よって、耐熱性多孔質膜の全固形分中に占める有機バインダの割合は、0.5体積%以上であることが好ましい。
有機バインダとしては、耐熱性多孔質膜中の成分同士や、耐熱性多孔質膜と多孔質基材や電極とを良好に結着でき、更に電気化学的に安定で、かつ電池の有する非水電解質(非水電解液)に対して安定であれば特に制限はないが、引張強度や引張弾性率が高いことに加えて、耐熱温度が150℃以上の微粒子との接着性が良好であることから、分子内にアミド基(アミド結合)を有するものが好ましく、下記一般式(1)で表されるモノマー由来の構造単位を含んでいるものがより好ましい。下記一般式(1)で表されるモノマーを用いて重合体を形成した場合、炭素−炭素二重結合の部分が開裂して主鎖を形成する。よって、下記一般式(1)で表されるモノマー由来の構造単位を含む有機バインダにおいては、アミド基を含む部分[−NR−(C=O)−R]を側鎖に有するものとなる。
Figure 2012005152
前記一般式(1)中、Rは水素またはメチル基、RおよびRは、Rが水素もしくは炭素数1〜6のアルキル基およびRが水素もしくは炭素数1〜4のアルキル基であるか、またはRとRとが互いに結合して環を形成しており、前記環のRおよびRにおける炭素数の合計が2〜10である。
なお、Rにおける炭素数1〜6のアルキル基には、直鎖アルキル基、分岐状アルキル基、環状アルキル基など、炭素数1〜6のアルキル基全般が含まれる。また、Rにおける炭素数1〜4のアルキル基には、直鎖アルキル基、分岐状アルキル基、環状アルキル基など、炭素数1〜4のアルキル基全般が含まれる。
前記一般式(1)で表されるモノマー由来の構造単位を含む有機バインダとしては、例えば、前記一般式(1)で表されるモノマーの単独重合体や共重合体が挙げられる。
前記一般式(1)で表されるモノマーとしては、例えば、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルホルムアミド、N−メチル,N−ビニルホルムアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニル−2−カプロラクタムなどが挙げられる。
よって、前記一般式(1)で表されるモノマーの単独重合体としては、例えば、ポリN−ビニルアセトアミド、ポリN−ビニルホルムアミド、ポリN−メチル,N−ビニルホルムアミド、ポリN−ビニルピロリドン、ポリN−ビニル−2−カプロラクタムなどが挙げられる。
前記一般式(1)で表されるモノマーの共重合体としては、例えば、N−ビニルアセトアミドと、N−ビニルアセトアミド以外のエチレン性不飽和モノマーとの共重合体;N−ビニルホルムアミドと、N−ビニルホルムアミド以外のエチレン性不飽和モノマーとの共重合体;N−メチル,N−ビニルホルムアミドと、N−メチル,N−ビニルホルムアミド以外のエチレン性不飽和モノマーとの共重合体;N−ビニルピロリドンと、N−ビニルピロリドン以外のエチレン性不飽和モノマーとの共重合体;などが挙げられる。また、前記一般式(1)で表されるモノマーの共重合体には、前記一般式(1)で表されるモノマーを2種以上用いた共重合体も含まれる。
前記の共重合体の形成に用い得るエチレン性不飽和モノマー[前記一般式(1)で表されるモノマー以外のエチレン性不飽和モノマー]としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、オクチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、オクチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、酢酸ビニル、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、ビニルピロリドン、マレイン酸、イタコン酸、2−アクリルアミド−2−メチル−プロパンスルホン酸、2−アクリルアミドエタンスルホン酸、2−メタクリルアミドエタンスルホン酸、3−メタクリルアミドプロパンスルホン酸、アクリル酸メチルスルホン酸、メタクリル酸メチルスルホン酸、アクリル酸−2−エチルスルホン酸、メタクリル酸−2−エチルスルホン酸、アクリル酸−3−プロピルスルホン酸、メタクリル酸−3−プロピルスルホン酸、アクリル酸−2−メチル−3−プロピルスルホン酸、メタクリル酸−2−メチル−3−プロピルスルホン酸、アクリル酸−1,1’−ジメチル−2−エチルスルホン酸、メタクリル酸−1,1’−ジメチル−2−エチルスルホン酸またはそれらの塩、メチルビニルケトン、エチルビニルケトン、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、含フッ素エチレン、スチレンまたはその誘導体、ビニルアリルベンゼンなどが挙げられ、これらのうちの1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記一般式(1)で表されるモノマーと、前記一般式(1)で表されるモノマー以外のエチレン性不飽和モノマーとの共重合体における共重合比(質量比)は、後者のエチレン性不飽和モノマーが2〜50質量%であることが好ましい。
分子内にアミド基を有する有機バインダ[好ましくは、前記一般式(1)で表されるモノマー由来の構造単位を含む有機バインダ]の分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて測定される数平均分子量(ポリスチレン換算値)で、1000以上であることが好ましく、4000以上であることがより好ましく、また、1000000以下であることが好ましく、700000以下であることがより好ましく、500000以下であることが更に好ましい。
耐熱性多孔質膜は、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA、酢酸ビニル由来の構造単位が20〜35モル%のもの)、(メタ)アクリレート重合体[「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートとメタクリレートとを含む意味である。以下、同じ。]、フッ素系ゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリウレタンなどの樹脂のうちの1種または2種以上を有機バインダとして用いてもよく、これらの樹脂の1種または2種以上と前記の分子内にアミド基を有する有機バインダとを併用してもよい。
耐熱性多孔質膜に係る耐熱温度が150℃以上の微粒子は、耐熱性多孔質膜の主体となったり、後述する繊維状物同士の間に形成される空隙を埋めるなどして、リチウムデンドライトに起因する短絡の発生を抑制する作用を有している。なお、本明細書でいう、耐熱温度が150℃以上の微粒子、および耐熱温度が150℃以上の繊維状物(後述する)における「耐熱温度が150℃以上」とは、少なくとも150℃において変形などの形状変化が目視で確認されないことを意味している。
耐熱温度が150℃以上の微粒子としては、電気絶縁性を有しており、電気化学的に安定で、更に電池の有する非水電解質(非水電解液)や、耐熱性多孔質膜形成用組成物(溶媒を含む組成物)に用いる溶媒に対して安定であれば特に制限はない。なお、本明細書でいう「非水電解質に対して安定」とは、非水電池に係る非水電解質中で変形および化学的組成変化を起こさないことを意味している。また、本明細書でいう「電気化学的に安定」とは、電池の充放電の際に化学変化が生じないことを意味している。
このような耐熱温度が150℃以上の微粒子の具体例としては、例えば、酸化鉄、SiO、Al、TiO、BaTiO、ZrOなどの酸化物微粒子;窒化アルミニウム、窒化ケイ素などの窒化物微粒子;フッ化カルシウム、フッ化バリウム、硫酸バリウムなどの難溶性のイオン結晶微粒子;シリコン、ダイヤモンドなどの共有結合性結晶微粒子;タルク、モンモリロナイトなどの粘土微粒子;ベーマイト、ゼオライト、アパタイト、カオリン、ムライト、スピネル、オリビン、セリサイト、ベントナイト、ハイドロタルサイトなどの鉱物資源由来物質あるいはそれらの人造物;などの無機微粒子が挙げられる。また、金属微粒子;SnO、スズ−インジウム酸化物(ITO)などの酸化物微粒子;カーボンブラック、グラファイトなどの炭素質微粒子;などの導電性微粒子の表面を、電気絶縁性を有する材料(例えば、前記の電気絶縁性の絶縁性微粒子を構成する材料など)で表面処理することで、電気絶縁性を持たせた微粒子であってもよい。
また、耐熱温度が150℃以上の微粒子には、有機微粒子を用いることもできる。有機微粒子の具体例としては、ポリイミド、メラミン系樹脂、フェノール系樹脂、架橋ポリメチルメタクリレート(架橋PMMA)、架橋ポリスチレン(架橋PS)、ポリジビニルベンゼン(PDVB)、ベンゾグアナミン−ホルムアルデヒド縮合物などの架橋高分子の微粒子;熱可塑性ポリイミドなどの耐熱性高分子の微粒子;が挙げられる。これらの有機微粒子を構成する有機樹脂(高分子)は、前記例示の材料の混合物、変性体、誘導体、共重合体(ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体)、架橋体(前記の耐熱性高分子の場合)であってもよい。
耐熱温度が150℃以上の微粒子には、前記例示の各種微粒子を1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、耐熱温度が150℃以上の微粒子は、前記例示の各種微粒子を構成する材料を2種以上含有する粒子であってもよい。なお、前記例示の各種微粒子の中でも、例えば、耐熱性多孔質膜の耐酸化性をより高め得ることから、無機酸化物微粒子が好ましく、アルミナ、シリカ、ベーマイトがより好ましい。
耐熱温度が150℃以上の微粒子の形態としては、球状、粒子状、板状などいずれの形態であってもよいが、板状であることが好ましい。板状粒子としては、各種市販品が挙げられ、例えば、旭硝子エスアイテック社製「サンラブリー」(SiO)、石原産業社製「NST−B1」の粉砕品(TiO)、堺化学工業社製の板状硫酸バリウム「Hシリーズ」、「HLシリーズ」、林化成社製「ミクロンホワイト」(タルク)、林化成社製「ベンゲル」(ベントナイト)、河合石灰社製「BMM」や「BMT」(ベーマイト)、河合石灰社製「セラシュールBMT−B」[アルミナ(Al)]、キンセイマテック社製「セラフ」(アルミナ)、斐川鉱業社製「斐川マイカ Z−20」(セリサイト)などが入手可能である。この他、SiO、Al、ZrOおよびCeOについては、特開2003−206475号公報に開示の方法により作製することができる。
耐熱温度が150℃以上の微粒子が板状である場合には、耐熱性多孔質膜中において、前記微粒子を、その平板面が耐熱性多孔質膜の面にほぼ平行となるように配向させることが好ましく、このような耐熱性多孔質膜を使用することで、電池の短絡の発生をより良好に抑制できる。これは、耐熱温度が150℃以上の微粒子を前記のように配向させることで、微粒子同士が平板面の一部で重なるように配置されるため、耐熱性多孔質膜の片面から他面に向かう空孔(貫通孔)が、直線ではなく曲折した形で形成される(すなわち、曲路率が大きくなる)と考えられ、これにより、リチウムデンドライトが耐熱性多孔質膜を貫通することを防止できることから、短絡の発生がより良好に抑制されるものと推測される。
耐熱温度が150℃以上の微粒子が板状の粒子である場合の形態としては、例えば、アスペクト比(板状粒子中の最大長さ/板状粒子の厚み)が、5以上であることが好ましく、10以上であることがより好ましく、また、100以下であることが好ましく、50以下であることがより好ましい。また、粒子の平板面の長軸方向長さと短軸方向長さの比(短軸方向長さ/長軸方向長さ)の平均値は、0.3以上であることが好ましく、0.5以上であることがより好ましい(1、すなわち、長軸方向長さと短軸方向長さとが同じであってもよい)。耐熱温度が150℃以上の微粒子が、前記のようなアスペクト比や平板面の長軸方向長さと短軸方向長さの比の平均値を有する板状粒子である場合には、前記の短絡防止作用がより有効に発揮される。
耐熱温度が150℃以上の微粒子が板状である場合における前記の平板面の長軸方向長さと短軸方向長さの比の平均値は、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)により撮影した画像を画像解析することにより求めることができる。更に耐熱温度が150℃以上の微粒子が板状である場合における前記のアスペクト比も、SEMにより撮影した画像を、画像解析することにより求めることができる。
耐熱温度が150℃以上の微粒子の平均粒子径は、小さすぎると、前記の有機バインダ量では、微粒子同士の結着を十分に得られない虞があることから、0.01μm以上であり、0.1μm以上であることが好ましい。ただし、耐熱温度が150℃以上の微粒子の平均粒子径が大きすぎると、耐熱性多孔質膜が厚くなりすぎて、これを用いた電池のエネルギー密度が低下するなどの虞がある。よって、耐熱温度が150℃以上の微粒子の平均粒子径は、10μm以下であり、5μm以下であることが好ましい。なお、本明細書でいう耐熱温度が150℃以上の微粒子の平均粒子径は、例えば、レーザー散乱粒度分布計(例えば、HORIBA社製「LA−920」)を用い、耐熱温度が150℃以上の微粒子を溶解したり、耐熱温度が150℃以上の微粒子が膨潤したりしない媒体に、耐熱温度が150℃以上の微粒子を分散させて測定した数平均粒子径として規定することができる。
また、耐熱温度が150℃以上の微粒子の比表面積は、100m/g以下であることが好ましく、50m/g以下であることがより好ましく、30m/g以下であることが更に好ましい。耐熱温度が150℃以上の微粒子の比表面積が大きくなると、一般に、微粒子同士や、微粒子と基材や電極とを良好に結着するために必要となる有機バインダの量が多くなる傾向にあり、耐熱性多孔質膜における有機バインダの割合を、前記の値に調整し難くなる虞がある。また、耐熱温度が150℃以上の微粒子の比表面積が大きくなると、微粒子表面に吸着する水分が大きくなって、非水電池の電池特性を低下させる虞もある。一方、耐熱温度が150℃以上の微粒子の比表面積は、1m/g以上であることが好ましい。本明細書で耐熱温度が150℃以上の微粒子の比表面積は、窒素ガスを用いてBET法により測定した値である。
また、本発明の耐熱性多孔質膜は、耐熱温度が150℃以上といった耐熱性の高い微粒子を用いているため、その作用によって、高温時における熱収縮が抑制されており高い寸法安定性を有している。更に、このような耐熱性の高い耐熱性多孔質膜が電極(正極および/または負極)と一体化している場合には、高温時における耐熱性多孔質膜全体の寸法安定性が更に向上する。一方、多孔質基材と本発明の耐熱性多孔質膜とが一体化されて構成された本発明の非水電池用セパレータは、多孔質基材が例えばポリオレフィン製微多孔膜のように高温時の寸法安定性に劣るものであっても、耐熱温度が150℃以上の微粒子の作用によって高温時の寸法安定性が良好な耐熱性多孔質膜と一体化していることから、多孔質基材の熱収縮が抑制され、高温時におけるセパレータ全体の寸法安定性が向上する。そのため、電極と一体化した本発明の耐熱性多孔質膜を有する非水電池や、本発明の非水電池用セパレータを有する非水電池では、例えば従来のポリエチレン製微多孔膜のみで構成されるセパレータを用いた電池で生じていたセパレータの熱収縮に起因する短絡の発生が防止できることから、電池内が異常過熱した際の信頼性および安全性をより高めることができる。
また、本発明の耐熱性多孔質膜を有する非水電池(本発明の非水電池)では、高温時におけるセパレータの熱収縮に起因する短絡の防止を、例えばセパレータを厚くする以外の構成で達成できるため、正極と負極とを仕切る隔離材(本発明の耐熱性多孔質膜または本発明の非水電池用セパレータ)の厚みを比較的薄くすることが可能であり、これにより、エネルギー密度の低下を可及的に抑制することもできる。
耐熱性多孔質膜中における耐熱温度が150℃以上の微粒子の量は、前記微粒子を使用することによる作用をより有効に発揮させる観点から、耐熱性多孔質膜の全固形分の全体積中、10体積%以上であることが好ましく、30体積%以上であることがより好ましく、40体積%以上であることが更に好ましい。
後記の繊維状物を含有しない耐熱性多孔質膜であって、後記の熱溶融性微粒子や膨潤性微粒子を含有させてシャットダウン機能も持たせる場合には、耐熱温度が150℃以上の微粒子の耐熱性多孔質膜中の量は、例えば、耐熱性多孔質膜の全固形分の全体積中、80体積%以下であることが好ましい。また、後記の繊維状物を含有せず、かつシャットダウン機能を有しない耐熱性多孔質膜とする場合には、耐熱温度が150℃以上の微粒子の耐熱性多孔質膜中の量は更に多くてもよく、具体的には、耐熱性多孔質膜の全固形分の全体積中、99.5体積%以下であれば問題ない。
他方、後記の繊維状物を含有する耐熱性多孔質膜であって、後記の熱溶融性微粒子や膨潤性微粒子を含有させてシャットダウン機能も持たせる場合には、耐熱温度が150℃以上の微粒子の耐熱性多孔質膜中の量は、例えば、耐熱性多孔質膜の全固形分の全体積中、70体積%以下であることが好ましい。また、後記の繊維状物を含有し、かつシャットダウン機能を有しない耐熱性多孔質膜とする場合には、耐熱温度が150℃以上の微粒子の耐熱性多孔質膜中の量は更に多くてもよく、具体的には、耐熱性多孔質膜の全固形分の全体積中、80体積%以下であれば問題ない。
耐熱性多孔質膜は、繊維状物を含有していてもよい。繊維状物を含有することで、耐熱性多孔質膜の強度を高めることができる。なお、本明細書でいう「繊維状物」とは、アスペクト比[長尺方向の長さ/長尺方向に直交する方向の幅(直径)]が4以上のものを意味している。繊維状物のアスペクト比は、10以上であることが好ましい。
繊維状物は、耐熱温度が150℃以上であることが好ましい。例えば、140℃以下の温度で溶融して耐熱性多孔質膜の空孔を塞ぎ、耐熱性多孔質膜中のイオンの移動を遮断する機能(いわゆるシャットダウン機能)を付与できる材料を耐熱性多孔質膜に含有させた場合(詳しくは後述する)、耐熱温度が150℃以上の繊維状物も多孔質膜に含有させておくことで、電池内での発熱などによってシャットダウンが起こった後、更に10℃以上セパレータの温度が上昇しても、その形状をより安定に保ち得るようにできる。他方、シャットダウン機能を付与していない場合でも、耐熱温度が150℃以上の繊維状物も用いた耐熱性多孔質膜や、更にこの耐熱性多孔質膜を用いたセパレータでは、150℃の温度においても、その変形を実質的になくすことができる。
繊維状物は、好ましくは耐熱温度が150℃以上であり、かつ電気絶縁性を有しており、電気化学的に安定で、更に非水電池の有する非水電解質(非水電解液)や、耐熱性多孔質膜形成用組成物に用いる溶媒に安定であれば、更に好ましい。
繊維状物の具体的な構成材料としては、例えば、セルロース、セルロース変成体(カルボキシメチルセルロースなど)、ポリプロピレン(PP)、ポリエステル[ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)など]、ポリアクリロニトリル(PAN)、アラミド、ポリアミドイミド、ポリイミドなどの樹脂;ガラス、アルミナ、シリカなどの無機材料(無機酸化物);などが挙げられる。繊維状物は、これらの構成材料の1種を含有していてもよく、2種以上を含有していても構わない。また、繊維状物は、構成成分として、前記の構成材料の他に、必要に応じて、公知の各種添加剤(例えば、樹脂である場合には酸化防止剤など)を含有していても構わない。
繊維状物には、耐熱温度が150℃以上の微粒子との接着性を高めるために、コロナ処理や界面活性剤処理などの表面処理を施してもよい。
繊維状物の直径は、耐熱性多孔質膜の厚み以下であればよいが、例えば、0.01〜5μmであることが好ましい。径が大きすぎると、繊維状物同士の絡み合いが不足して、例えば、繊維状物を使用することによる耐熱性多孔質膜の強度向上効果が小さくなる虞がある。また、径が小さすぎると、耐熱性多孔質膜の空孔が小さくなりすぎて、イオン透過性が低下する傾向にあり、電池の出力特性向上効果が小さくなる虞がある。
耐熱性多孔質膜中での繊維状物の存在状態は、例えば、長軸(長尺方向の軸)の、耐熱性多孔質膜面に対する角度が平均で30°以下であることが好ましく、20°以下であることがより好ましい。
耐熱性多孔質膜が前記の繊維状物を含有する場合における耐熱性多孔質膜中の繊維状物の含有量は、繊維状物の使用による作用をより有効に発揮させる観点から、耐熱性多孔質膜の全固形分の全体積中、10体積%以上であることが好ましく、30体積%以上であることがより好ましい。他方、前記の繊維状物を含有する耐熱性多孔質膜において、繊維状物の含有量が多すぎると、他の成分(耐熱温度が150℃以上の微粒子など)の含有量が少なくなって、これら他の成分による作用が低下することがあるため、繊維状物の含有量は、耐熱性多孔質膜の全固形分の全体積中、85体積%以下であることが好ましく、70体積%以下であることがより好ましい。
本発明の耐熱性多孔質膜には、シャットダウン機能を付与することができる。シャットダウン機能を有する耐熱性多孔質膜とするには、例えば、80〜150℃で溶融する熱溶融性微粒子や、80〜150℃の温度下で非水電解液を吸収して膨潤する膨潤性微粒子を含有させる方法が採用できる。
なお、耐熱性多孔質膜における前記のシャットダウン機能は、例えば、モデルセルの温度による抵抗上昇により評価することが可能である。すなわち、正極、負極、耐熱性多孔質膜(正極および負極のうちのいずれか一方と一体化している)、および非水電解液を備えたモデルセルを作製し、このモデルセルを恒温槽中に保持し、5℃/分の速度で昇温しながらモデルセルの内部抵抗値を測定し、測定された内部抵抗値が、加熱前(室温で測定した抵抗値)の5倍以上となる温度を測定することで、この温度を耐熱性多孔質膜の有するシャットダウン温度として評価することができる。
80〜150℃で溶融する熱溶融性微粒子、すなわち、日本工業規格(JIS)K 7121の規定に準じて、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定される融解温度が80〜150℃の微粒子を含有する耐熱性多孔質膜では、80〜150℃(またはそれ以上の温度)に曝されたときに、熱溶融性微粒子が溶融して耐熱性多孔質膜の空孔が閉塞されるため、Liイオンの移動が阻害される。よって、このような耐熱性多孔質膜を正極と負極との隔離材に用いた非水電池においては、高温時における急激な放電反応が抑制される。この場合、前記の内部抵抗上昇により評価されるセパレータのシャットダウン温度は、熱溶融性微粒子の融点以上150℃以下となる。熱溶融性微粒子の融点(前記融解温度)は、140℃以下であることがより好ましい。
熱溶融性微粒子の構成材料の具体例としては、ポリエチレン(PE)、エチレン由来の構造単位が85モル%以上の共重合ポリオレフィン、PP、またはポリオレフィン誘導体(塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレンなど)、ポリオレフィンワックス、石油ワックス、カルナバワックスなどが挙げられる。前記共重合ポリオレフィンとしては、エチレン−ビニルモノマー共重合体、より具体的には、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−メチルアクリレート共重合体、またはエチレン−エチルアクリレート共重合体が例示できる。また、ポリシクロオレフィンなどを用いることもできる。熱溶融性微粒子は、これらの構成材料の1種のみを有していてもよく、2種以上を有していても構わない。これらの中でも、PE、ポリオレフィンワックス、またはエチレン由来の構造単位が85モル%以上のEVAが好適である。また、熱溶融性微粒子は、構成成分として、前記の構成材料の他に、必要に応じて、樹脂に添加される公知の各種添加剤(例えば、酸化防止剤など)を含有していても構わない。
熱溶融性微粒子の粒子径としては、前述の耐熱温度が150℃以上の微粒子と同じ測定法で測定される数平均粒子径で、例えば、0.001μm以上であることが好ましく、0.1μm以上であることがより好ましく、また、15μm以下であることが好ましく、1μm以下であることがより好ましい。
80〜150℃の温度下で非水電解液を吸収して膨潤する膨潤性微粒子を有する耐熱性多孔質膜では、電池内で高温に曝されたときに、膨潤性微粒子が非水電解液を吸収して大きく膨張する(以下、膨潤性微粒子における温度の上昇に伴って非水電解液を吸収し大きく膨張する機能を「熱膨潤性」という)ことにより、耐熱性多孔質膜内のLiイオンの伝導性を著しく低下させるため、電池の内部抵抗が上昇し、前記のシャットダウン機能を確実に確保することが可能となる。
このような熱膨潤性を有する膨潤性微粒子としては、例えば、架橋ポリスチレン(PS)、架橋アクリル樹脂[例えば、架橋ポリメチルメタクリレート(PMMA)]、架橋フッ素樹脂[例えば、架橋ポリフッ化ビニリデン(PVDF)]などが好適であり、架橋PMMAが特に好ましい。
膨潤性微粒子の粒子径は、レーザー散乱粒度分布計(例えば、HORIBA社製「LA−920」)を用い、微粒子を膨潤しない媒体(例えば水)に分散させて測定した数平均粒子径で、0.1〜20μmであることが好ましい。
膨潤性微粒子の市販品としては、例えば、ガンツ化成社製の架橋PMMA「ガンツパール(製品名)」、東洋インキ社製の架橋PMMA「RSP1079(製品名)」などが入手可能である。
耐熱性多孔質膜にシャットダウン機能を持たせるには、熱溶融性微粒子のみを含有させてもよく、膨潤性微粒子のみを含有させてもよく、熱溶融性微粒子と膨潤性微粒子の両者を含有させてもよい。また、膨潤性微粒子をコアとし、その表面を熱溶融性微粒子の構成材料で覆ったコアシェル型の微粒子のような、熱溶融性微粒子の構成材料と膨潤性微粒子の構成材料との複合体微粒子を耐熱性多孔質膜に含有させてもよい。
熱溶融性微粒子や膨潤性微粒子を耐熱性多孔質膜に含有させることでシャットダウン機能を持たせる場合、良好なシャットダウン機能を確保する点からは、耐熱性多孔質膜中における熱溶融性微粒子または膨潤性微粒子の含有量(耐熱性多孔質膜が、熱溶融性微粒子と膨潤性微粒子との両者を含有する場合は、その合計量であり、熱溶融性微粒子の構成材料と膨潤性微粒子の構成材料との複合体微粒子を含有する場合は、その量。耐熱性多孔質膜中における熱溶融性微粒子または膨潤性微粒子の含有量について、以下同じ。)は、耐熱性多孔質膜の全固形分の全体積中、5〜70体積%であることが好ましい。これらの微粒子の含有量が少なすぎると、これらを含有させることによるシャットダウン効果が小さくなることがあり、多すぎると、耐熱性多孔質膜中における耐熱温度が150℃以上の微粒子や繊維状物などの含有量が減ることになるため、これらによって確保される効果が小さくなることがある。
本発明の耐熱性多孔質膜の具体的な態様としては、例えば、下記(a)、(b)および(c)の態様が挙げられる。
(a)耐熱温度が150℃以上の微粒子(および必要に応じてその他の微粒子)が有機バインダにより結着されて形成されたシート状の耐熱性多孔質膜。
(b)耐熱温度が150℃以上の微粒子と繊維状物(更には、必要に応じてその他の微粒子)とが均一に分散し、これらが有機バインダにより結着されて形成されたシート状の耐熱性多孔質膜。
(c)繊維状物が多数集合して、これらのみによりシート状物を形成しているもの、例えば、織布、不織布(紙を含む)といった形態のものを用い、このシート状物中に耐熱温度が150℃以上の微粒子や必要に応じてその他の微粒子を含有させ、有機バインダによってシート状物に係る繊維状物と各種微粒子などを結着することで構成した単一層からなる耐熱性多孔質膜。
このような態様の耐熱性多孔質膜は、非水電池に使用される電極(正極および/または負極)と一体化され、正極と負極とを仕切る隔離材として用いられる。
よって、本発明の耐熱性多孔質膜を形成し、電極と一体化するに当たっては、例えば、(a)および(b)の態様の耐熱性多孔質膜については、耐熱温度が150℃以上の微粒子および有機バインダ、更には、必要に応じて繊維状物およびその他の微粒子を含み、これらを溶媒(分散媒を含む。以下同じ。)に分散させて耐熱性多孔質膜形成用組成物を調製し(有機バインダについては溶媒に溶解しているものを用いてもよい)、これを電極の表面に塗布し、乾燥して電極表面に耐熱性多孔質膜を直接形成する方法が採用できる。
また、PETフィルムや金属板などの基材に前記の耐熱性多孔質膜形成用組成物を塗布し、乾燥して(a)や(b)の態様の耐熱性多孔質膜を形成し、これを基材から剥離した後に電極と重ね合わせ、ロールプレスなどにより電極と一体化してもよい。
また、(c)の態様の耐熱性多孔質膜を形成するには、繊維状物のシート状物に、前記の耐熱性多孔質膜形成用組成物を含浸させ、一定のギャップを通して不要な組成物を除去した後、乾燥して独立膜の耐熱性多孔質膜を得ることができる。なお、この耐熱性多孔質膜は、その後、電極と重ね合わせ、ロールプレスなどにより電極と一体化する。
(c)の態様の耐熱性多孔質膜で使用する繊維状物のシート状物としては、前記例示の各材料を構成成分に含む繊維状物の少なくとも1種で構成される織布や、これら繊維状物同士が絡み合った構造を有する不織布などの多孔質シートなどが挙げられる。より具体的には、紙、PP不織布、ポリエステル不織布(PET不織布、PEN不織布、PBT不織布など)、PAN不織布などの不織布などが例示できる。
耐熱性多孔質膜形成用組成物に用いられる溶媒は、耐熱温度が150℃以上の微粒子や熱溶融性微粒子、膨潤性微粒子などを均一に分散でき、また、有機バインダを均一に溶解または分散できるものであればよいが、例えば、トルエンなどの芳香族炭化水素;テトラヒドロフランなどのフラン類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類;などの有機溶媒が好適である。なお、これらの溶媒に、界面張力を制御する目的で、アルコール(エチレングリコール、プロピレングリコールなど)、または、モノメチルアセテートなどの各種プロピレンオキサイド系グリコールエーテルなどを適宜添加しても良い。また、バインダが水溶性である場合、エマルジョンとして使用する場合などでは、水を溶媒としてもよく、この際にもアルコール類(メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、エチレングリコールなど)を適宜加えて界面張力を制御することもできる。
前記の耐熱性多孔質膜形成用組成物では、耐熱温度が150℃以上の微粒子、有機バインダ、熱溶融性微粒子、膨潤性微粒子、繊維状物などを含む固形分含量を、例えば10〜80質量%とすることが好ましい。
耐熱温度が150℃以上の微粒子に板状粒子を用いた場合、耐熱性多孔質膜中における板状粒子の配向性を高めるには、耐熱性多孔質膜形成用組成物を電極表面やその他の基材表面に塗布した塗膜(乾燥前の塗膜)や、耐熱性多孔質膜形成用組成物を含浸させたシート状物において、これらの組成物にシェアをかければよい。例えば、耐熱温度が150℃以上の微粒子などをシート状物の空孔内に存在させる方法として上述した耐熱性多孔質膜形成用組成物をシート状物に含浸させた後、一定のギャップを通す方法により、耐熱性多孔質膜形成用組成物にシェアをかけることが可能であり、これにより、板状粒子の配向性を高めることができる。
また、耐熱性多孔質膜中において、板状の、耐熱温度が150℃以上の微粒子の配向性をより高めるには、前記のシェアをかける方法以外にも、高固形分濃度(例えば50〜80質量%)の耐熱性多孔質膜形成用組成物を使用する方法;耐熱温度が150℃以上の微粒子を、ディスパー、アジター、ホモジナイザー、ボールミル、アトライター、ジェットミルなどの各種混合・攪拌装置、分散装置などを用いて溶媒に分散させ、得られた分散体に有機バインダ(更に、必要に応じて繊維状物、熱溶融性微粒子、膨潤性微粒子など)を添加・混合して調製した耐熱性多孔質膜形成用組成物を使用する方法;表面に油脂類、界面活性剤、シランカップリング剤などの分散性剤を作用させて、表面を改質した耐熱温度が150℃以上の微粒子を用いて調製した耐熱性多孔質膜形成用組成物を使用する方法;形状、径またはアスペクト比の異なる耐熱温度が150℃以上の微粒子を併用して調製した耐熱性多孔質膜形成用組成物を使用する方法;耐熱性多孔質膜形成用組成物をシート状物に含浸させたり、基材上に塗布したりした後の乾燥条件を制御する方法;耐熱性多孔質膜を加圧や加熱加圧プレスする方法;耐熱性多孔質膜形成用組成物をシート状物に含浸させたり、基材上に塗布したりした後、乾燥前に磁場をかける方法;などが採用でき、これらの方法をそれぞれ単独で実施してもよく、2種以上の方法を組み合わせて実施してもよい。
こうして得られる耐熱性多孔質膜の厚みは、これが使用される電池の短絡防止効果をより高め、また、耐熱性多孔質膜の強度を高める観点から、例えば、3μm以上とすることが好ましく、5μm以上とすることがより好ましい。他方、電池のエネルギー密度をより高める観点からは、耐熱性多孔質膜の厚みは、50μm以下とすることが好ましく、30μm以下とすることがより好ましい。
また、耐熱性多孔質膜の空孔率は、非水電解質の保液量を確保してイオン透過性を良好にするために、乾燥した状態で、20%以上であることが好ましく、30%以上であることがより好ましい。一方、耐熱性多孔質膜の強度確保と電池における内部短絡の防止の観点から、耐熱性多孔質膜の空孔率は、乾燥した状態で、70%以下であることが好ましく、60%以下であることがより好ましい。なお、耐熱性多孔質膜の空孔率:P(%)は、耐熱性多孔質膜の厚み、面積あたりの質量、構成成分の密度から、下記式(2)を用いて各成分iについての総和を求めることにより計算できる。
P={1−(m/t)/(Σa・ρ)}×100 (2)
ここで、前記式(2)中、a:全体の質量を1としたときの成分iの比率、ρ:成分iの密度(g/cm)、m:耐熱性多孔質膜の単位面積あたりの質量(g/cm)、t:耐熱性多孔質膜の厚み(cm)、である。
更に、後記の実施例で示す方法により求められる耐熱性多孔質膜の150℃での熱収縮率(電極と一体化された状態での熱収縮率)は、5%以下であることが好ましい。
また、耐熱性多孔質膜の強度としては、直径が1mmのニードルを用いた突き刺し強度で50g以上であることが望ましい。かかる突き刺し強度が小さすぎると、リチウムのデンドライト結晶が発生した場合に、耐熱性多孔質膜の突き破れによる短絡が発生する虞がある。
更に、耐熱性多孔質膜の透気度は、JIS P 8117に準拠した方法で測定され、0.879g/mmの圧力下で100mlの空気が膜を透過する秒数で示されるガーレー値で10〜300secであることが望ましい。透気度が大きすぎると、イオン透過性が小さくなり、小さすぎると耐熱性多孔質膜の強度が小さくなることがある。
これまでに説明した構成の耐熱性多孔質膜とすることで、前記の熱収縮率や強度、透気度を確保することができる。
次に、本発明の非水電池用セパレータについて説明する。本発明の非水電池用セパレータは、多孔質基材と本発明の耐熱性多孔質膜とが一体化されて構成された多層構造のセパレータである。
セパレータに係る多孔質基材としては、樹脂製の不織布、織布、微多孔膜などを用いることができる。
本発明のセパレータにシャットダウン機能を付与する場合には、多孔質基材の構成樹脂に、融点が80〜150℃の熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。融点が80〜150℃の熱可塑性樹脂としては、熱溶融性微粒子の構成樹脂として先に例示した各種熱可塑性樹脂が挙げられる。このような熱可塑性樹脂で構成される多孔質基材の中でも、ポリオレフィン(PE、エチレン−プロピレン共重合体など)製の微多孔膜が好ましい。
本発明のセパレータにおけるシャットダウン機能も、耐熱性多孔質膜のシャットダウン機能と同様に、モデルセルの温度による抵抗上昇により評価することが可能である。すなわち、正極、負極、セパレータおよび非水電解液を備えたモデルセルを作製し、このモデルセルを恒温槽中に保持し、5℃/分の速度で昇温しながらモデルセルの内部抵抗値を測定し、測定された内部抵抗値が、加熱前(室温で測定した抵抗値)の5倍以上となる温度を測定することで、この温度をセパレータの有するシャットダウン温度として評価することができる。
他方、セパレータの耐熱性を重視して、シャットダウン機能を付与しない場合には、耐熱性樹脂で構成された多孔質基材を用いることもできる。このような耐熱性樹脂としては、耐熱温度が150℃以上で、電池に用いる非水電解質に対して安定であり、更に電池内部での酸化還元反応に対して安定である樹脂であればいずれでもよい。より具体的には、ポリイミド、ポリアミドイミド、アラミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリスルホン、ポリウレタン、PAN、ポリエステル(PET、PBT、PENなど)などの耐熱性樹脂が挙げられる。
多孔質基材として使用される微多孔膜には、前記の熱可塑性樹脂により構成されるもの、前記の耐熱性樹脂により構成されるもののいずれにおいても、従来公知の方法によって製造されたものを用いることができる。例えば、溶剤抽出法、乾式または湿式延伸(1軸または2軸延伸)法などにより作製されたイオン透過性の多孔質フィルムを用いることができる。また、薬剤や超臨界COなどを用いた発泡法により微多孔化したフィルムを用いることもできる。
本発明のセパレータを製造するにあたっては、耐熱性多孔質膜の形成の際に使用される前記の耐熱性多孔質膜形成用組成物を、多孔質基材の表面に塗布し、乾燥する工程を経て、多孔質基材の表面に耐熱性多孔質膜からなる層を形成する方法が採用できる。また、先に例示した独立膜の耐熱性多孔質膜を形成する方法によって得られた耐熱性多孔質膜と、多孔質基材とを重ね、ロールプレスなどにより一体化してもよい。
耐熱性多孔質膜を形成する際に耐熱温度が150℃以上の微粒子に板状粒子を用いた場合において、その配向性を高めるには、耐熱性多孔質膜において板状粒子の配向性を高める方法として先に例示した各種方法を用いることができる。
本発明のセパレータにおいて、耐熱性多孔質膜と多孔質基材とは、それぞれ1枚ずつである必要はなく、複数枚でセパレータを構成していてもよい。例えば、耐熱性多孔質膜の両面に多孔質基材を配置した構成としたり、多孔質基材の両面に耐熱性多孔質膜を配置した構成としてもよい。ただし、耐熱性多孔質膜と多孔質基材との合計枚数を増やしすぎると、セパレータの厚みを増やして電池の内部抵抗の増加やエネルギー密度の低下を招く虞があるので好ましくなく、セパレータ中の耐熱性多孔質膜と多孔質基材との合計枚数は5枚以下であることが好ましい。
このようにして得られる本発明のセパレータにおいては、電池の短絡防止効果をより高め、セパレータの強度を確保して、その取り扱い性を良好とする観点から、その厚みは、例えば、5.5μm以上とすることが好ましく、10μm以上とすることがより好ましい。他方、電池のエネルギー密度をより高める観点からは、セパレータの厚みは、50μm以下とすることが好ましく、30μm以下とすることがより好ましい。
また、本発明のセパレータにおいては、耐熱性多孔質膜の厚みをX(μm)、多孔質基材の厚みをY(μm)としたとき、XとYとの比率Y/Xを1〜20としつつ、セパレータ全体の厚みが前記好適値を満足するようにすることが好ましい。Y/Xが大きすぎると、耐熱性多孔質膜が薄くなりすぎて、例えば、高温時での寸法安定性が劣る多孔質基材を用いた場合に、その熱収縮を抑制する効果が小さくなる虞がある。また、Y/Xが小さすぎると、耐熱性多孔質膜が厚くなりすぎて、セパレータ全体の厚みを増大させ、出力特性の向上効果が小さくなる虞があるなど、電池特性の低下を引き起こすことがある。なお、セパレータが、耐熱性多孔質膜を複数枚有する場合には、厚みXはその総厚みであり、多孔質基材を複数枚有する場合には、厚みYはその総厚みである。
具体的な値で表現すると、多孔質基材の厚み(セパレータが多孔質基材を複数枚有する場合には、その総厚み)は、5μm以上であることが好ましく、また、30μm以下であることが好ましい。そして、耐熱性多孔質膜の厚み(セパレータが耐熱性多孔質膜を複数枚有する場合には、その総厚み)は、0.5μm以上であることが好ましく、1μm以上であることがより好ましく、2μm以上であることが更に好ましく、また、10μm以下であることが好ましく、5μm以下であることがより好ましく、3μm以下であることが更に好ましい。
また、前記式(2)を用い、mをセパレータの単位面積あたりの質量(g/cm)とし、tをセパレータの厚み(cm)として求められるセパレータの空孔率は、非水電解質の保液量を確保してイオン透過性を良好にするために、乾燥した状態で、20%以上であることが好ましく、30%以上であることがより好ましい。一方、セパレータの強度確保と内部短絡の防止の観点から、前記方法により求められるセパレータの空孔率は、乾燥した状態で、70%以下であることが好ましく、60%以下であることがより好ましい。
更に、前記式(2)を用い、mを多孔質基材の単位面積あたりの質量(g/cm)とし、tを多孔質基材の厚み(cm)として求められるセパレータに係る多孔質基材の空孔率は30〜70%であることが好ましい。また、前記式(2)により求められるセパレータに係る耐熱性多孔質膜の空孔率は、電極と一体化される耐熱性多孔質膜の場合と同様に、20%以上(より好ましくは30%以上)、70%以下(より好ましくは60%以下)であることが好ましい。
後記の実施例で示す方法により求められるセパレータの150℃での熱収縮率は、5%以下であることが好ましい。
セパレータの強度としては、直径が1mmのニードルを用いた突き刺し強度で50g以上であることが望ましい。かかる突き刺し強度が小さすぎると、リチウムのデンドライト結晶が発生した場合に、セパレータの突き破れによる短絡が発生する虞がある。
セパレータの透気度は、JIS P 8117に準拠した方法で測定され、0.879g/mmの圧力下で100mlの空気が膜を透過する秒数で示されるガーレー値で10〜300secであることが望ましい。透気度が大きすぎると、イオン透過性が小さくなり、小さすぎるとセパレータの強度が小さくなることがある。
更に、セパレータのガーレー値は下記式(3)の関係を満たすことが好ましい。
Gs≦max{Ga,Gb}+10 (3)
ここで、Gs:セパレータのガーレー値、Ga:多孔質基材のガーレー値、Gb:耐熱性多孔質膜のガーレー値、max{Ga,Gb}:GaとGbのどちらか大きい方、である。ただし、Gbは、下記式(4)を用いて求める。
Gb=Gs−Ga (4)
これまでに説明した構成のセパレータとすることで、前記の熱収縮率や強度、透気度を確保することができる。
また、前述の耐熱性多孔質膜に関し、本発明の耐熱性多孔質膜と電極との一体化物、および本発明のセパレータにおいては、耐熱性多孔質膜の180°の剥離強度が0.6N/cm以上であることが好ましく、1.0N/cm以上であることが更に好ましい。これまでに説明した構成の耐熱性多孔質膜およびセパレータとすることで、前記の剥離強度を確保することができる。
ここでいう剥離強度とは、以下の方法により測定される値である。耐熱性多孔質膜と電極との一体化物、またはセパレータから、幅2cm、長さ5cmの大きさの試験片を切り出し、耐熱性多孔質膜表面の2cm×2cmの領域に粘着テープを貼り付ける。なお、粘着テープのサイズは幅2cm、長さ約5cmで、粘着テープの片端と耐熱性多孔質膜の片端が揃うように貼り付ける。その後、引張試験機を用い、試験片の粘着テープを貼り付けた側とは反対側の端と、試験片に貼り付けた粘着テープの試験片に貼り付けた側とは反対側の端とを把持して、引張速度10mm/minで引っ張り、耐熱性多孔質膜が剥離した時の強度を測定する。
続いて、本発明の非水電池について説明する。本発明の非水電池は、本発明の耐熱性多孔質膜が正極および負極の少なくとも一方と一体化され、対極とを仕切る隔離材として使用されているか、本発明のセパレータが正極と負極とを仕切る隔離材として使用されていればよく、その他の構成および構造については特に制限はなく、従来から知られている非水電解質を用いた非水電池(リチウム一次電池などの非水一次電池、リチウム二次電池などの非水二次電池)で採用されている各種構成および構造を適用することができる。以下には、本発明の非水電池のうち、特に主要な形態であるリチウム二次電池について、詳細に説明する。
リチウム二次電池の形態としては、スチール缶やアルミニウム缶などを外装缶として使用した筒形(角筒形や円筒形など)などが挙げられる。また、金属を蒸着したラミネートフィルムを外装体としたソフトパッケージ電池とすることもできる。
正極は、従来から知られているリチウム二次電池に用いられている正極、すなわち、Liイオンを吸蔵放出可能な活物質を含有する正極であれば特に制限はない。例えば、活物質として、Li1+xMO(−0.1<x<0.1、M:Co、Ni、Mnなど)で表されるリチウム含有遷移金属酸化物;LiMnなどのリチウムマンガン酸化物;LiMnのMnの一部を他元素で置換したLiMn(1−x);オリビン型LiMPO(M:Co、Ni、Mn、Fe);LiMn0.5Ni0.5;Li(1+a)MnNiCo(1−x−y)(−0.1<a<0.1、0<x<0.5、0<y<0.5);などを適用することが可能である。これらの正極活物質に公知の導電助剤(カーボンブラックなどの炭素材料など)やポリフッ化ビニリデン(PVDF)などの結着剤などを適宜添加した正極合剤を、集電体を芯材として成形体(すなわち、正極合剤層)に仕上げたものなどを、正極として用いることができる。
正極の集電体としては、アルミニウムなどの金属の箔、パンチングメタル、網、エキスパンドメタルなどを用い得るが、通常、厚みが10〜30μmのアルミニウム箔が好適に用いられる。
正極側のリード部は、通常、正極作製時に、集電体の一部に正極合剤層を形成せずに集電体の露出部を残し、そこをリード部とすることによって設けられる。ただし、リード部は必ずしも当初から集電体と一体化されたものであることは要求されず、集電体にアルミニウム製の箔などを後から接続することによって設けてもよい。
負極は、従来から知られているリチウム二次電池に用いられている負極、すなわち、Liイオンを吸蔵放出可能な活物質を含有する負極であれば特に制限はない。例えば、活物質として、黒鉛、熱分解炭素類、コークス類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物の焼成体、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、炭素繊維などの、リチウムを吸蔵、放出可能な炭素系材料の1種または2種以上の混合物が用いられる。また、Si、Sn、Ge、Bi、Sb、Inなどの元素およびその合金、リチウム含有窒化物、またはリチウム含有酸化物などのリチウム金属に近い低電圧で充放電できる化合物、もしくはリチウム金属やリチウム/アルミニウム合金も負極活物質として用いることができる。これらの負極活物質に導電助剤(カーボンブラックなどの炭素材料など)やPVDFなどの結着剤などを適宜添加した負極合剤を、集電体を芯材として成形体(負極合剤層)に仕上げたものや、前記の各種合金やリチウム金属の箔を単独、もしくは集電体上に形成したものなどの負極剤層を有するものを、負極として用いることができる。
負極に集電体を用いる場合には、集電体としては、銅製やニッケル製の箔、パンチングメタル、網、エキスパンドメタルなどを用い得るが、通常、銅箔が用いられる。この負極集電体は、高エネルギー密度の電池を得るために負極全体の厚みを薄くする場合、厚みの上限は30μmであることが好ましく、また、下限は5μmであることが望ましい。
負極側のリード部も、正極側のリード部と同様に、通常、負極作製時に、集電体の一部に負極剤層(負極活物質を有する層、負極合剤層を含む)を形成せずに集電体の露出部を残し、そこをリード部とすることによって設けられる。ただし、この負極側のリード部は必ずしも当初から集電体と一体化されたものであることは要求されず、集電体に銅製の箔などを後から接続することによって設けてもよい。
電極は、前記の正極と前記の負極とを、本発明のセパレータを介して積層するか、または、前記の正極および負極のうちの少なくとも一方と本発明の耐熱性多孔質膜とを一体化し、この耐熱性多孔質膜が介在するようにして正極と負極とを積層した積層構造の電極群や、更にこれらを巻回した巻回構造の電極群の形態で用いることができる。なお、正極および負極のうちの少なくとも一方と本発明の耐熱性多孔質膜とを一体化したものを用いて電池を構成する場合、別途セパレータ(例えば、従来から知られているリチウム二次電池などの電池で使用されているポリオレフィン製の微多孔膜セパレータ)を使用してもよいが、本発明の耐熱性多孔質膜が正極と負極とを仕切る隔離材(すなわちセパレータ)として機能するため、特にセパレータを使用する必要はない。
非水電解質としては、リチウム塩を有機溶媒に溶解した溶液(非水電解液)が用いられる。リチウム塩としては、溶媒中で解離してLiイオンを形成し、電池として使用される電圧範囲で分解などの副反応を起こさないものであれば特に制限は無い。例えば、LiClO、LiPF、LiBF、LiAsF、LiSbFなどの無機リチウム塩;LiCFSO、LiCFCO、Li(SO、LiN(CFSO、LiC(CFSO、LiC2n+1SO(2≦n≦7)、LiN(ROSO〔ここでRはフルオロアルキル基〕などの有機リチウム塩;などを用いることができる。
非水電解液に用いる有機溶媒としては、前記のリチウム塩を溶解し、電池として使用される電圧範囲で分解などの副反応を起こさないものであれば特に限定されない。例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネートなどの環状カーボネート;ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネートなどの鎖状カーボネート;プロピオン酸メチルなどの鎖状エステル;γ−ブチロラクトンといった環状エステル;ジメトキシエタン、ジエチルエーテル、1,3−ジオキソラン、ジグライム、トリグライム、テトラグライムなどの鎖状エーテル;ジオキサン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフランなどの環状エーテル;アセトニトリル、プロピオニトリル、メトキシプロピオニトリルといったニトリル類;エチレングリコールサルファイトなどの亜硫酸エステル類;などが挙げられ、これらを1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用しても構わない。なお、より良好な特性の電池とするためには、エチレンカーボネートと鎖状カーボネートの混合溶媒など、高い導電率を得ることができる組み合わせで用いることが望ましい。また、これらの非水電解液に安全性や充放電サイクル性、高温貯蔵性といった特性を向上させる目的で、ビニレンカーボネート類、1,3−プロパンサルトン、ジフェニルジスルフィド、シクロヘキシルベンゼン、ビフェニル、フルオロベンゼン、t−ブチルベンゼンなどの添加剤を適宜加えることもできる。
このリチウム塩の非水電解液中の濃度としては、0.5〜1.5mol/lとすることが好ましく、0.9〜1.25mol/lとすることがより好ましい。
また、前記の有機溶媒の代わりに、エチル−メチルイミダゾリウムトリフルオロメチルスルホニウムイミド、へプチル−トリメチルアンモニウムトリフルオロメチルスルホニウムイミド、ピリジニウムトリフルオロメチルスルホニウムイミド、グアジニウムトリフルオロメチルスルホニウムイミドといった常温溶融塩を用いることもできる。
更に、前記の非水電解液をゲル化するような高分子材料を添加して、非水電解液をゲル状にして電池に用いてもよい。非水電解液をゲル状とするための高分子材料としては、PVDF、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(PVDF−HFP)、PAN、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、エチレンオキシド−プロピレンオキシド共重合体、主鎖または側鎖にエチレンオキシド鎖を有する架橋ポリマー、架橋したポリ(メタ)アクリル酸エステルなど、公知のゲル状電解質形成可能なホストポリマーが挙げられる。
次に、上記リチウム二次電池の一例を図面に基づき説明する。図1は、本発明のリチウム二次電池の一例を示す断面図である。図1において、本発明のリチウム二次電池は、上記で説明した正極活物質を含む正極合剤層を有する正極1と、負極活物質を含む負極合剤層を有する負極2と、本発明のセパレータ3と、非水電解液4とを備えている。正極1と負極2とはセパレータ3を介して渦巻状に巻回され、巻回構造の電極群として非水電解液4と共に円筒形の電池缶5内に収容されている。
ただし、図1においては、煩雑化を避けるため、正極1や負極2の作製にあたり使用した集電体である金属箔などは図示していない。また、セパレータ3は、その切断面を示すが、断面を示すハッチングは付していない。
電池缶5は、例えば鉄製で表面にニッケルメッキが施されていて、その底部には上記巻回構造の電極群の挿入に先立って、例えばポリプロピレンからなる絶縁体6が配置されている。封口板7は、例えばアルミニウム製で円板状をしていて、その中央部に薄肉部7aが設けられ、かつ薄肉部7aの周囲に電池内圧を防爆弁9に作用させるための圧力導入口7bとしての孔が設けられている。そして、薄肉部7aの上面に防爆弁9の突出部9aが溶接され、溶接部分11を構成している。封口板7に設けた薄肉部7aや防爆弁9の突出部9aなどは、図面上での理解がしやすいように、切断面のみを図示しており、切断面後方の輪郭線は図示を省略している。また、封口板7の薄肉部7aと防爆弁9の突出部9aとの溶接部分11も、図面上での理解が容易なように、実際よりは誇張した状態に図示している。
端子板8は、例えば圧延鋼製で表面にニッケルメッキが施され、周縁部が鍔状になった帽子状をしており、端子板8にはガス排出口8aが設けられている。防爆弁9は、例えばアルミニウム製で円板状をしており、その中央部には発電要素側(図1では、下側)に先端部を有する突出部9aが設けられ、かつ薄肉部9bが設けられ、突出部9aの下面が、上記のように、封口板7の薄肉部7aの上面に溶接され、溶接部分11を形成している。絶縁パッキング10は、例えばポリプロピレン製で環状をしており、封口板7の周縁部の上部に配置され、その上部に防爆弁9が配置していて、封口板7と防爆弁9とを絶縁するとともに、両者の間から電解液が漏れないように両者の間隙を封止している。環状ガスケット12は、例えばポリプロピレンで形成されている。リード体13は、例えばアルミニウムで形成され、封口板7と正極1とを接続している。巻回構造の電極群の上部には絶縁体14が配置され、負極2と電池缶5の底部とは、例えばニッケル製のリード体15で接続されている。
図1の電池においては、封口板7の薄肉部7aと防爆弁9の突出部9aとが溶接部分11で接触し、防爆弁9の周縁部と端子板8の周縁部とが接触し、正極1と封口板7とは正極側のリード体13で接続されているので、通常の状態では、正極1と端子板8とは、リード体13、封口板7、防爆弁9およびそれらの溶接部分11によって電気的接続が得られ、電路として正常に機能する。
そして、電池が高温に曝されたり、過充電によって発熱するなど、電池に異常事態が起こり、電池内部にガスが発生して電池の内圧が上昇した場合には、その内圧上昇により、防爆弁9の中央部が内圧方向(図1では、上側の方向)に変形する。それに伴って溶接部分11で一体化されてなる封口板7の薄肉部7aに剪断力が働いて該薄肉部7aが破断するか、または防爆弁9の突出部9aと封口板7の薄肉部7aとの溶接部分11が剥離した後、この防爆弁9に設けられている薄肉部9bが開裂してガスを端子板8のガス排出口8aから電池外部に排出させて電池の破裂を防止することができるように設計されている。
本発明の非水電池は、従来から知られているリチウム二次電池などの非水電池が用いられている各種用途と同じ用途に適用することができる。
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に述べる。ただし、下記実施例は、本発明を制限するものではない。
(実施例1)
<電極の作製>
正極は次のようにして作製した。先ず、リチウム含有複合酸化物であるLiCoO(正極活物質)90質量部に、導電助剤としてカーボンブラック5質量部を加えて混合し、この混合物に、バインダとしてPVDF:5質量部をNMPに溶解させた溶液を加え、混合して正極合剤含有スラリーとし、70メッシュの網を通過させて粒径が大きなものを取り除いた。この正極合剤含有スラリーを、厚みが15μmのアルミニウム箔からなる正極集電体の両面に均一に塗付して乾燥し、その後、ロールプレス機により圧縮成形して総厚さを105μmにした後、切断し、アルミニウム製のリード体を溶接して、帯状の正極を作製した。
また、負極は次のようにして作製した。負極活物質として人造黒鉛を用い、バインダとしてPVDFを用い、これらを質量比95:5の割合で混合し、更にNMPを加えて混合して負極合剤含有ペーストとした。この負極合剤含有ペーストを、厚みが10μmの銅箔からなる負極集電体の両面に均一に塗布して乾燥し、その後、ロールプレス機により圧縮成形して総厚さを100μmにした後、切断し、ニッケル製のリード体を溶接して、帯状の負極を作製した。
<電解液の調製>
エチレンカーボネート、メチルエチルカーボネート、およびジエチルカーボネートの体積比10:10:30の混合溶媒にLiPFを1.0mol/lの濃度で溶解させたものに、ビニレンカーボネートを、電解液の全質量に対して2.5質量%となるように添加して、電解液(非水電解質)を調製した。
<セパレータの作製>
耐熱温度が150℃以上の微粒子であるベーマイト粉末(板状、平均粒径1μm、アスペクト比10、比表面積8m/g)4000gを、水4000gに4回に分けて加え、ディスパーにより2800rpmで5時間攪拌して均一なスラリーを調製した。この分散液に有機バインダであるポリN−ビニルアセトアミド(PNVA)の水溶液(濃度10質量%)1200gを加え、更に水を加えて均一に分散するまで室温で攪拌し、固形分比率が30質量%のスラリー(耐熱性多孔質膜形成用スラリー)を調製した。
片面をコロナ放電処理したPE製微多孔膜(厚み16μm、空孔率40%、PEの融点135℃)を多孔質基材として用い、その処理面上に前記のスラリーをマイクログラビアコーターによって塗布し、乾燥して耐熱性多孔質膜を形成することで、厚みが20μmのセパレータを得た。このセパレータの耐熱性多孔質膜の全固形分の全体積中における有機バインダの体積割合は7.0体積%であり、耐熱性多孔質膜の空孔率は48%であった。
<電池の組み立て>
前記のようにして得たセパレータを、耐熱性多孔質膜側が正極側に向くように前記正極と前記負極との間に介在させつつ重ね、渦巻状に巻回して巻回体電極群を作製した。得られた巻回体電極群を、径18mm、高さ65mmの鉄製電池缶に入れ、電解液を注入した後に封止を行って、リチウム二次電池を作製した。なお、このリチウム二次電池は、缶の上部に、内圧が上昇した場合に圧力を逃がすための防爆弁を備えている。本実施例のリチウム二次電池では、4.2Vまで充電した場合(正極の電位がLi基準で4.3V)の設計電気容量は、1400mAhである。
(実施例2)
実施例1で用いたものと同じベーマイト粉末4000gを、水4000gに4回に分けて加え、ディスパーにより2800rpmで5時間攪拌して均一な分散液を調製した。この分散液に有機バインダであるPNVAの水溶液(濃度10質量%)400gを加え、更に水を加えて均一に分散するまで室温で攪拌し、固形分比率が30質量%のスラリーを調製した。このスラリーにフッ素系界面活性剤(パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物)を、水100質量部に対して0.1質量部の量で添加し、均一になるまで攪拌して耐熱性多孔質膜形成用スラリーを得た。
実施例1で用いたものと同じPE製微多孔膜の処理面上に、マイクログラビアコーターを用いて前記スラリーを塗布した後、乾燥して耐熱性多孔質膜を形成することで、厚みが20μmのセパレータを得た。このセパレータの耐熱性多孔質膜の全固形分の全体積中における有機バインダの体積割合は2.5体積%であり、耐熱性多孔質膜の空孔率は52%であった。
そして、このセパレータを用いた以外は、実施例1と同様にしてリチウム二次電池を作製した。
(実施例3)
耐熱温度が150℃以上の微粒子を、一次粒子の連なった二次粒子状ベーマイト(平均粒径0.6μm、比表面積15m/g)に変更した以外は、実施例2と同様にして耐熱性多孔質膜形成用スラリーを作製した。PE製多孔膜を中心にして、その両側にPP製多孔膜を積層した3層構造のポリオレフィン製微多孔膜(厚み16μm、空孔率40%、PE層に係るPEの融点135℃)上に、マイクログラビアコーターを用いて前記スラリーを塗布した後、乾燥して耐熱性多孔質膜を形成することで、厚みが18μmのセパレータを得た。このセパレータの耐熱性多孔質膜の全固形分の全体積中における有機バインダの体積割合は2.5体積%であり、耐熱性多孔質膜の空孔率は55%であった。
そして、このセパレータを用いた以外は、実施例1と同様にしてリチウム二次電池を作製した。
(実施例4)
耐熱温度が150℃以上の微粒子に、実施例3で用いたものと同じ一次粒子の連なった二次粒子状ベーマイト4000gを用い、これを水4000gに4回に分けて加え、ディスパーにより2800rpmで5時間攪拌して均一な分散液を調製した。この分散液に、80〜150℃の温度下で非水電解液を吸収して膨潤する膨潤性微粒子である架橋PMMA微粒子(平均粒子径0.4μm)の水分散体(固形分比率40質量%)4000gとPNVAの水溶液(濃度10質量%)1600gとを加え、更に水を固形分比率が30質量%になるように加えて、均一になるまで攪拌した。このスラリーに、実施例3で用いたものと同じフッ素系界面活性剤を、水100質量部に対して0.1質量部の量で添加し、均一になるまで攪拌して耐熱性多孔質膜形成用スラリーを得た。
実施例3で用いたものと同じ3層構造のポリオレフィン製微多孔膜上に、マイクログラビアコーターを用いて前記スラリーを塗布した後、乾燥して耐熱性多孔質膜を形成することで、厚みが20μmのセパレータを得た。このセパレータの耐熱性多孔質膜の全固形分の全体積中における有機バインダの体積割合は4.8体積%であり、耐熱性多孔質膜の空孔率は50%であった。
そして、このセパレータを用いた以外は、実施例1と同様にしてリチウム二次電池を作製した。
(実施例5)
耐熱温度が150℃以上の微粒子に、一次粒子の連なった二次粒子状ベーマイト(平均粒子径0.06μm、比表面積100m/g)4000gを用い、これを水4000gに4回に分けて加え、ディスパーにより2800rpmで5時間攪拌して均一な分散液を調製した。この分散液に、熱溶融性微粒子としてPE微粒子(融点135℃)の水分散体(固形分比率40質量%)4000gとPNVAの水溶液(濃度10質量%)2100gと加え、更に水を固形分比率が30質量%になるように加えて、均一になるまで攪拌し、耐熱性多孔質膜形成用スラリーを得た。PET製不織布(目付け8g/m、厚み16μm)を多孔質基材として用い、それに前記スラリーをディップ塗布し、乾燥して耐熱性多孔質膜を形成することで、厚みが20μmのセパレータを得た。このセパレータの耐熱性多孔質膜の全固形分の全体積中における有機バインダの体積割合は6.2体積%であり、耐熱性多孔質膜の空孔率は38%であった。
そして、このセパレータを用いた以外は、実施例1と同様にしてリチウム二次電池を作製した。
(実施例6)
耐熱温度が150℃以上の微粒子にアルミナ微粒子(平均粒子径0.4μm、比表面積7m/g)4000gを用い、これを水4000gに4回に分けて加え、ディスパーにより2800rpmで5時間攪拌して均一な分散液を調製した。この分散液に、熱溶融性微粒子としてPE微粒子(融点135℃)の水分散体(固形分比率40質量%)4000gとPNVAの水溶液(濃度10質量%)1600gとを加え、更に水を固形分比率が30質量%になるように加えて、均一になるまで攪拌し、耐熱性多孔質膜形成用スラリーを得た。
前記のスラリーを、実施例1で作製したものと同じ負極の両面上に、マイクログラビアコーターを用いて塗布し、厚みが20μmの耐熱性多孔質膜を形成した。耐熱性多孔質膜の全固形分の全体積中における有機バインダの体積割合は4.5体積%であり、耐熱性多孔質膜の空孔率は50%であった。
前記の耐熱性多孔質膜と一体化した負極と、実施例1で作製したものと同じ正極とを重ね合わせ、渦巻状に巻回して巻回体電極群を作製した。この巻回体電極群を用いた以外は、実施例1と同様にしてリチウム二次電池を作製した。
(実施例7)
実施例6で調製したものと同じ耐熱性多孔質膜形成用スラリーを、実施例1で作製したものと同じ負極の両面上に、マイクログラビアコーターを用いて塗布し、厚みが10μmの耐熱性多孔質膜を形成した。また、実施例6で調製したものと同じ耐熱性多孔質膜形成用スラリーを、実施例1で作製したものと同じ正極の両面上に、マイクログラビアコーターを用いて塗布し、厚みが10μmの耐熱性多孔質膜を形成した。
前記の耐熱性多孔質膜と一体化した負極と、前記の耐熱性多孔質膜と一体化した正極とを用いた以外は、実施例6と同様にしてリチウム二次電池を作製した。
(比較例1)
有機バインダであるPNVAの水溶液(濃度10質量%)の使用量を2000gに変更した以外は、実施例1と同様にして耐熱性多孔質膜形成用スラリーを調製し、このスラリーを用いた以外は、実施例1と同様にしてセパレータを作製した。このセパレータの耐熱性多孔質膜の全固形分の全体積中における有機バインダの体積割合は11体積%であり、耐熱性多孔質膜の空孔率は42%であった。
そして、このセパレータを用いた以外は、実施例1と同様にしてリチウム二次電池を作製した。
(比較例2)
耐熱温度が150℃以上の微粒子に、ベーマイト粒子(平均粒子径0.005μm、比表面積250m/g)を用いた以外は実施例1と同様にして調製した耐熱性多孔質膜形成用スラリーを用い、実施例1と同様にしてセパレータを作製した。しかしながら、耐熱性多孔質膜のフィラーがすぐに剥がれてしまったため、電池の作製は実施しなかった。
(比較例3)
耐熱温度が150℃以上の微粒子に、比較例2で用いたものと同じベーマイト粒子4000gを使用し、これを水4000gに4回に分けて加え、ディスパーにより2800rpmで5時間攪拌して均一な分散液を調製した。この分散液に有機バインダであるPNVAの水溶液(濃度10質量%)4000gを加え、均一に分散するまで室温で攪拌して、耐熱性多孔質膜形成用スラリーを調製した。そして、このスラリーを用いた以外は、実施例1と同様にしてセパレータを作製した。このセパレータの耐熱性多孔質膜の全固形分の全体積中における有機バインダの体積割合は20体積%であり、耐熱性多孔質膜の空孔率は38%であった。
更に、このセパレータを用いた以外は、実施例1と同様にしてリチウム二次電池を作製した。
実施例および比較例のリチウム二次電池、並びに実施例および比較例の電池に使用したセパレータまたは耐熱性多孔質膜について、下記の各評価を行った。
<セパレータまたは耐熱性多孔質膜の熱収縮試験>
実施例1〜5および比較例1、3の電池に使用したセパレータ、並びに実施例6、7の電池に使用した耐熱性多孔質膜と負極との一体化物から、MD方向、TD方向をそれぞれ5cm、10cmとした短冊状のサンプル片を切り取った。ここで、MD方向とは、セパレータまたは耐熱性多孔質膜と負極との一体化物の作製の際の機械方向であり、TD方向はそれらに垂直な方向である。
前記の各サンプルについて、長辺方向(TD方向)の中心と短片方向(MD方向)の中心とで交差するように、長辺方向および短辺方向に平行にそれぞれ3cmずつの直線を油性ペンでマークした。なお、それぞれの直線の中心は、これらの直線の交差点とした。これらのサンプルを恒温槽に吊るし、槽内温度を5℃/分の割合で温度上昇させ、150℃に到達後、150℃で1時間温度を保持した。150℃で1時間保持した後の長辺方向および短辺方向のマークの長さを測定し、昇温前のそれぞれのマークの長さと昇温後のそれぞれのマークの長さとの差を求め、昇温前のそれぞれのマークの長さに対するこれらの差の比を百分率で算出して、それぞれの方向の熱収縮率とした。なお、各セパレータおよび耐熱性多孔質膜の熱収縮率は、長辺方向の熱収縮率と短辺方向の熱収縮率のうちの値の大きい方とした。
<充放電特性評価>
実施例1〜7および比較例1、3の各電池について、以下の条件で充放電を行い、充電容量および放電容量をそれぞれ求め、充電容量に対する放電容量の割合を充電効率として評価した。充電は、0.2Cの電流値で電池電圧が4.2Vになるまで定電流充電を行い、次いで、4.2Vでの定電圧充電を行う定電流−定電圧充電とした。充電終了までの総充電時間は15時間とした。充電後の各電池を、0.2Cの放電電流で、電池電圧が3.0Vになるまで放電を行ったところ、実施例1〜7および比較例1、3の電池は、充電効率がほぼ100%となり、電池として良好に作動することが確認できた。
<出力特性評価>
実施例1〜7および比較例1、3の各電池について、充放電特性評価と同じ条件で充電し、1Cの放電電流で電池電圧が3.0Vになるまで放電したときの放電容量と、同条件で充電し、10Cの放電電流で電池電圧が3.0Vになるまで放電したときの放電容量とを測定し、1Cでの放電容量に対する10Cでの放電容量の比(10C/1C容量比)を百分率で表して、各電池の出力特性を評価した。
<安全性評価>
以下の方法により、実施例1〜7および比較例1、3の各電池の昇温試験を行った。電池を恒温槽に入れ、30℃から150℃まで毎分1℃の割合で温度上昇させて過熱し、電池の表面温度の変化を求めた。その結果、全ての電池で異常な温度上昇は確認されず、安全性が優れていることが確認できた。
安全性評価を除く前記の各評価結果を表1に示す。
Figure 2012005152
表1に示す通り、有機バインダの体積割合が適正な耐熱性多孔質膜を有する実施例1〜7のリチウム二次電池は、出力特性が良好である。また、実施例1〜5のリチウム二次電池で使用したセパレータおよび実施例6、7のリチウム二次電池で使用した耐熱性多孔質膜は、150℃での熱収縮率が小さいことから、これらを使用した実施例1〜7のリチウム二次電池は、電池内が高温となっても、セパレータや隔離材(電極と一体化された耐熱性多孔質膜)の熱収縮による短絡の発生を抑制することができ、前記の安全性評価で示した通り、良好な安全性を有している。
これに対し、有機バインダの体積割合が大きすぎる耐熱性多孔質膜を有する比較例1、3のリチウム二次電池は、出力特性が実施例の電池よりも劣っている。
本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で、上記以外の形態としても実施が可能である。本出願に開示された実施形態は一例であって、これらに限定はされない。本発明の範囲は、上述の明細書の記載よりも、添付されている請求の範囲の記載を優先して解釈され、請求の範囲と均等の範囲内での全ての変更は、請求の範囲に含まれるものである。
1 正極
2 負極
3 セパレータ
4 非水電解液
5 電池缶
6 絶縁体
7 封口板
7a 薄肉部
7b 圧力導入口
8 端子板
8a ガス排出口
9 防爆弁
9a 突出部
9b 薄肉部
10 絶縁パッキング
11 溶接部分
12 環状ガスケット
13 リード体
14 絶縁体
15 リード体
本発明は、非水電池において、正極と負極とを仕切る隔離材に適用するのに好適な耐熱性多孔質膜、該耐熱性多孔質膜を用いた非水電池用セパレータ、および前記耐熱性多孔質膜または前記非水電池用セパレータを有し、出力特性および安全性に優れた非水電池に関するものである。
非水電池の一種であるリチウム二次電池は、エネルギー密度が高いという特徴から、携帯電話やノート型パーソナルコンピューターなどの携帯機器の電源として広く用いられている。更に近年は、高エネルギー密度という特性を活かして、電動アシスト自転車、電動バイク、電気自動車、ハイブリッド自動車といった車載用の電源としての適用も検討されている。このような車載用途の電源は、携帯機器の電源と比べて容量が大きいため、更なる安全性確保が重要である。一方で、要求される出力も携帯機器の電源に比べて大きいため、出力特性を劣化させない安全化技術が要求されている。
現行のリチウム二次電池では、正極と負極の間に介在させるセパレータとして、例えば厚みが20〜30μm程度のポリオレフィン系の微多孔性フィルム(微多孔膜)が使用されている。また、セパレータの素材としては、電池の異常発熱温度以下でセパレータの構成樹脂を溶融させて空孔を閉塞させ、これにより電池の内部抵抗を上昇させて短絡の際などに電池の安全性を向上させる所謂シャットダウン効果を確保するため、ポリエチレンなどのポリオレフィンの中でも融点の低い材料が適用されることがある。
ところで、こうしたセパレータとしては、例えば、多孔化と強度向上のために一軸延伸または二軸延伸したフィルムが用いられている。このようなセパレータは、単独で存在する膜として供給されるため、作業性などの点で一定の強度が要求され、これを前記延伸によって確保している。しかし、このような延伸フィルムでは結晶化度が増大しており、シャットダウン温度も、電池の異常発熱温度に近い温度にまで高まっているため、電池の安全性確保のためのマージンが十分とは言い難い。
また、前記延伸によってフィルムにはひずみが生じており、これが高温に曝されると、残留応力によって収縮が起こるという問題がある。収縮温度は、融点、すなわちシャットダウン温度と非常に近いところに存在する。このため、ポリオレフィン系の微多孔性フィルムセパレータを使用するときには、充電異常時などにより電池の温度がシャットダウン温度に達すると、電流を直ちに減少させて電池の温度上昇を防止しなければならない。空孔が十分に閉塞せず電流を直ちに減少できなかった場合には、電池の温度は容易にセパレータの収縮温度にまで上昇するため、内部短絡による異常発熱の危険性があるからである。
このようなセパレータの熱収縮による短絡を防止し、電池の信頼性を高める技術として、例えば、耐熱性の良好な多孔質基材と、フィラー粒子と、シャットダウン機能を確保するための樹脂成分とを有するセパレータにより電気化学素子を構成することが提案されている(特許文献1〜3)。
また、ポリオレフィン製の多孔質膜に耐熱性樹脂や無機微粒子などを主体とした耐熱層を形成して、耐熱性を高めることが提案されている(特許文献4〜6)。
特許文献1〜6に開示の技術によれば、電池の異常時の際にも異常発熱が生じ難い安全性に優れた電池を提供することができる。
国際公開第2006/62153号 特表2005−536858号公報 国際公開第2009/44741号 特開2000−30686号公報 特開2008−300362号公報 特表2008−524824号公報
ところで、リチウム二次電池を例えば車載用途に適用する場合には、安全性と同時に高い出力特性が要求される。
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、高い安全性と高い出力特性とを有する非水電池、正極と負極との隔離材として機能でき、前記非水電池を構成可能な耐熱性多孔質膜、および前記非水電池を構成可能なセパレータを提供する。
本発明の非水電池用セパレータは、多孔質基材と、耐熱性多孔質膜とが、一体化している非水電池用セパレータであって、前記耐熱性多孔質膜は、耐熱温度が150℃以上の微粒子と、有機バインダとを含み、前記微粒子の平均粒子径が、0.01〜10μmであり、前記耐熱性多孔質膜の全固形分中に占める前記有機バインダの割合が、7体積%以下であることを特徴とする。
また、本発明の第1の非水電池は、正極、負極、耐熱性多孔質膜および非水電解質を含む非水電池であって、前記耐熱性多孔質膜と、前記正極および前記負極から選ばれる少なくとも一方とが、一体化しており、前記耐熱性多孔質膜は、耐熱温度が150℃以上の微粒子と、有機バインダとを含み、前記微粒子の平均粒子径が、0.01〜10μmであり、前記耐熱性多孔質膜の全固形分中に占める前記有機バインダの割合が、7体積%以下であることを特徴とする。
また、本発明の第2の非水電池は、正極、負極、セパレータおよび非水電解質を含む非水電池であって、前記セパレータが、多孔質基材と、耐熱性多孔質膜とが、一体化しており、前記耐熱性多孔質膜は、耐熱温度が150℃以上の微粒子と、有機バインダとを含み、前記微粒子の平均粒子径が、0.01〜10μmであり、前記耐熱性多孔質膜の全固形分中に占める前記有機バインダの割合が、7体積%以下であることを特徴とする。
本発明によれば、高い安全性と高い出力特性とを有する非水電池、正極と負極との隔離材として機能でき、前記非水電池を構成可能な耐熱性多孔質膜、および前記非水電池を構成可能なセパレータを提供することができる。
図1は、本発明のリチウム二次電池の一例を示す断面図である。
先ず、本発明の耐熱性多孔質膜について説明する。本発明の耐熱性多孔質膜は、耐熱温度が150℃以上の微粒子と、有機バインダとを少なくとも含有するものであり、非水電池において、正極と負極とを仕切る隔離材として好適なものである。
すなわち、本発明の耐熱性多孔質膜は、例えば非水電池の正極および負極のうちの少なくとも一方と一体化されることで、前記非水電池内において、正極と負極とを隔離するセパレータとして作用したり、多孔質基材と一体化されることで、独立膜としての非水電池用セパレータを構成したりするものである。
本発明の耐熱性多孔質膜においては、全固形分の全体積(空孔部分を除く耐熱性多孔質膜の構成成分の全体積。以降に記載する耐熱性多孔質膜およびセパレータにおける「全固形分の全体積」について、同じである。)中に占める有機バインダの体積の割合を、7体積%以下とする。耐熱性多孔質膜における有機バインダの割合を前記のように小さくすることで、空孔が有機バインダによって塞がれることを防止して、耐熱性多孔質膜におけるイオン透過性を高め、この耐熱性多孔質膜を用いた電池の出力特性を高めることができる。前記の効果をより良好に確保する観点から、耐熱性多孔質膜の全固形分中に占める有機バインダの割合は、5体積%以下であることが好ましく、3体積%以下であることがより好ましく、1体積%以下であることが更に好ましい。特に、後述する、分子内にアミド基を有する有機バインダ、中でもN−ビニルアセトアミドの単独重合体や共重合体では、前記微粒子を結着する場合にその割合が多いと、形成される多孔質膜の柔軟性が低下して電極の巻回などが困難になる場合があり、耐熱性多孔質膜の柔軟性付与の観点からも、有機バインダの割合はできるだけ少なくすることが望ましい。
ただし、耐熱性多孔質膜における有機バインダの割合が小さすぎると、例えば耐熱温度が150℃以上の微粒子同士を結着する力が弱くなって、耐熱性多孔質膜から前記微粒子が脱落しやすくなったり、また、耐熱性多孔質膜が電極や多孔質基材から剥離しやすくなったりする。よって、耐熱性多孔質膜の全固形分中に占める有機バインダの割合は、0.5体積%以上であることが好ましい。
有機バインダとしては、耐熱性多孔質膜中の成分同士や、耐熱性多孔質膜と多孔質基材や電極とを良好に結着でき、更に電気化学的に安定で、かつ電池の有する非水電解質(非水電解液)に対して安定であれば特に制限はないが、引張強度や引張弾性率が高いことに加えて、耐熱温度が150℃以上の微粒子との接着性が良好であることから、分子内にアミド基(アミド結合)を有するものが好ましく、下記一般式(1)で表されるモノマー由来の構造単位を含んでいるものがより好ましい。下記一般式(1)で表されるモノマーを用いて重合体を形成した場合、炭素−炭素二重結合の部分が開裂して主鎖を形成する。よって、下記一般式(1)で表されるモノマー由来の構造単位を含む有機バインダにおいては、アミド基を含む部分[−NR3−(C=O)−R2]を側鎖に有するものとなる。
Figure 2012005152
前記一般式(1)中、R1は水素またはメチル基、R2およびR3は、R2が水素もしくは炭素数1〜6のアルキル基およびR3が水素もしくは炭素数1〜4のアルキル基であるか、またはR2とR3とが互いに結合して環を形成しており、前記環のR2およびR3における炭素数の合計が2〜10である。
なお、R2における炭素数1〜6のアルキル基には、直鎖アルキル基、分岐状アルキル基、環状アルキル基など、炭素数1〜6のアルキル基全般が含まれる。また、R3における炭素数1〜4のアルキル基には、直鎖アルキル基、分岐状アルキル基、環状アルキル基など、炭素数1〜4のアルキル基全般が含まれる。
前記一般式(1)で表されるモノマー由来の構造単位を含む有機バインダとしては、例えば、前記一般式(1)で表されるモノマーの単独重合体や共重合体が挙げられる。
前記一般式(1)で表されるモノマーとしては、例えば、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルホルムアミド、N−メチル,N−ビニルホルムアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニル−2−カプロラクタムなどが挙げられる。
よって、前記一般式(1)で表されるモノマーの単独重合体としては、例えば、ポリN−ビニルアセトアミド、ポリN−ビニルホルムアミド、ポリN−メチル,N−ビニルホルムアミド、ポリN−ビニルピロリドン、ポリN−ビニル−2−カプロラクタムなどが挙げられる。
前記一般式(1)で表されるモノマーの共重合体としては、例えば、N−ビニルアセトアミドと、N−ビニルアセトアミド以外のエチレン性不飽和モノマーとの共重合体;N−ビニルホルムアミドと、N−ビニルホルムアミド以外のエチレン性不飽和モノマーとの共重合体;N−メチル,N−ビニルホルムアミドと、N−メチル,N−ビニルホルムアミド以外のエチレン性不飽和モノマーとの共重合体;N−ビニルピロリドンと、N−ビニルピロリドン以外のエチレン性不飽和モノマーとの共重合体;などが挙げられる。また、前記一般式(1)で表されるモノマーの共重合体には、前記一般式(1)で表されるモノマーを2種以上用いた共重合体も含まれる。
前記の共重合体の形成に用い得るエチレン性不飽和モノマー[前記一般式(1)で表されるモノマー以外のエチレン性不飽和モノマー]としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、オクチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、オクチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、酢酸ビニル、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、ビニルピロリドン、マレイン酸、イタコン酸、2−アクリルアミド−2−メチル−プロパンスルホン酸、2−アクリルアミドエタンスルホン酸、2−メタクリルアミドエタンスルホン酸、3−メタクリルアミドプロパンスルホン酸、アクリル酸メチルスルホン酸、メタクリル酸メチルスルホン酸、アクリル酸−2−エチルスルホン酸、メタクリル酸−2−エチルスルホン酸、アクリル酸−3−プロピルスルホン酸、メタクリル酸−3−プロピルスルホン酸、アクリル酸−2−メチル−3−プロピルスルホン酸、メタクリル酸−2−メチル−3−プロピルスルホン酸、アクリル酸−1,1’−ジメチル−2−エチルスルホン酸、メタクリル酸−1,1’−ジメチル−2−エチルスルホン酸またはそれらの塩、メチルビニルケトン、エチルビニルケトン、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、含フッ素エチレン、スチレンまたはその誘導体、ビニルアリルベンゼンなどが挙げられ、これらのうちの1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記一般式(1)で表されるモノマーと、前記一般式(1)で表されるモノマー以外のエチレン性不飽和モノマーとの共重合体における共重合比(質量比)は、後者のエチレン性不飽和モノマーが2〜50質量%であることが好ましい。
分子内にアミド基を有する有機バインダ[好ましくは、前記一般式(1)で表されるモノマー由来の構造単位を含む有機バインダ]の分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて測定される数平均分子量(ポリスチレン換算値)で、1000以上であることが好ましく、4000以上であることがより好ましく、また、1000000以下であることが好ましく、700000以下であることがより好ましく、500000以下であることが更に好ましい。
耐熱性多孔質膜は、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA、酢酸ビニル由来の構造単位が20〜35モル%のもの)、(メタ)アクリレート重合体[「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートとメタクリレートとを含む意味である。以下、同じ。]、フッ素系ゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリウレタンなどの樹脂のうちの1種または2種以上を有機バインダとして用いてもよく、これらの樹脂の1種または2種以上と前記の分子内にアミド基を有する有機バインダとを併用してもよい。
耐熱性多孔質膜に係る耐熱温度が150℃以上の微粒子は、耐熱性多孔質膜の主体となったり、後述する繊維状物同士の間に形成される空隙を埋めるなどして、リチウムデンドライトに起因する短絡の発生を抑制する作用を有している。なお、本明細書でいう、耐熱温度が150℃以上の微粒子、および耐熱温度が150℃以上の繊維状物(後述する)における「耐熱温度が150℃以上」とは、少なくとも150℃において変形などの形状変化が目視で確認されないことを意味している。
耐熱温度が150℃以上の微粒子としては、電気絶縁性を有しており、電気化学的に安定で、更に電池の有する非水電解質(非水電解液)や、耐熱性多孔質膜形成用組成物(溶媒を含む組成物)に用いる溶媒に対して安定であれば特に制限はない。なお、本明細書でいう「非水電解質に対して安定」とは、非水電池に係る非水電解質中で変形および化学的組成変化を起こさないことを意味している。また、本明細書でいう「電気化学的に安定」とは、電池の充放電の際に化学変化が生じないことを意味している。
このような耐熱温度が150℃以上の微粒子の具体例としては、例えば、酸化鉄、SiO2、Al23、TiO2、BaTiO3、ZrO2などの酸化物微粒子;窒化アルミニウム、窒化ケイ素などの窒化物微粒子;フッ化カルシウム、フッ化バリウム、硫酸バリウムなどの難溶性のイオン結晶微粒子;シリコン、ダイヤモンドなどの共有結合性結晶微粒子;タルク、モンモリロナイトなどの粘土微粒子;ベーマイト、ゼオライト、アパタイト、カオリン、ムライト、スピネル、オリビン、セリサイト、ベントナイト、ハイドロタルサイトなどの鉱物資源由来物質あるいはそれらの人造物;などの無機微粒子が挙げられる。また、金属微粒子;SnO2、スズ−インジウム酸化物(ITO)などの酸化物微粒子;カーボンブラック、グラファイトなどの炭素質微粒子;などの導電性微粒子の表面を、電気絶縁性を有する材料(例えば、前記の電気絶縁性の絶縁性微粒子を構成する材料など)で表面処理することで、電気絶縁性を持たせた微粒子であってもよい。
また、耐熱温度が150℃以上の微粒子には、有機微粒子を用いることもできる。有機微粒子の具体例としては、ポリイミド、メラミン系樹脂、フェノール系樹脂、架橋ポリメチルメタクリレート(架橋PMMA)、架橋ポリスチレン(架橋PS)、ポリジビニルベンゼン(PDVB)、ベンゾグアナミン−ホルムアルデヒド縮合物などの架橋高分子の微粒子;熱可塑性ポリイミドなどの耐熱性高分子の微粒子;が挙げられる。これらの有機微粒子を構成する有機樹脂(高分子)は、前記例示の材料の混合物、変性体、誘導体、共重合体(ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体)、架橋体(前記の耐熱性高分子の場合)であってもよい。
耐熱温度が150℃以上の微粒子には、前記例示の各種微粒子を1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、耐熱温度が150℃以上の微粒子は、前記例示の各種微粒子を構成する材料を2種以上含有する粒子であってもよい。なお、前記例示の各種微粒子の中でも、例えば、耐熱性多孔質膜の耐酸化性をより高め得ることから、無機酸化物微粒子が好ましく、アルミナ、シリカ、ベーマイトがより好ましい。
耐熱温度が150℃以上の微粒子の形態としては、球状、粒子状、板状などいずれの形態であってもよいが、板状であることが好ましい。板状粒子としては、各種市販品が挙げられ、例えば、旭硝子エスアイテック社製「サンラブリー」(SiO2)、石原産業社製「NST−B1」の粉砕品(TiO2)、堺化学工業社製の板状硫酸バリウム「Hシリーズ」、「HLシリーズ」、林化成社製「ミクロンホワイト」(タルク)、林化成社製「ベンゲル」(ベントナイト)、河合石灰社製「BMM」や「BMT」(ベーマイト)、河合石灰社製「セラシュールBMT−B」[アルミナ(Al23)]、キンセイマテック社製「セラフ」(アルミナ)、斐川鉱業社製「斐川マイカ Z−20」(セリサイト)などが入手可能である。この他、SiO2、Al23、ZrO2およびCeO2については、特開2003−206475号公報に開示の方法により作製することができる。
耐熱温度が150℃以上の微粒子が板状である場合には、耐熱性多孔質膜中において、前記微粒子を、その平板面が耐熱性多孔質膜の面にほぼ平行となるように配向させることが好ましく、このような耐熱性多孔質膜を使用することで、電池の短絡の発生をより良好に抑制できる。これは、耐熱温度が150℃以上の微粒子を前記のように配向させることで、微粒子同士が平板面の一部で重なるように配置されるため、耐熱性多孔質膜の片面から他面に向かう空孔(貫通孔)が、直線ではなく曲折した形で形成される(すなわち、曲路率が大きくなる)と考えられ、これにより、リチウムデンドライトが耐熱性多孔質膜を貫通することを防止できることから、短絡の発生がより良好に抑制されるものと推測される。
耐熱温度が150℃以上の微粒子が板状の粒子である場合の形態としては、例えば、アスペクト比(板状粒子中の最大長さ/板状粒子の厚み)が、5以上であることが好ましく、10以上であることがより好ましく、また、100以下であることが好ましく、50以下であることがより好ましい。また、粒子の平板面の長軸方向長さと短軸方向長さの比(短軸方向長さ/長軸方向長さ)の平均値は、0.3以上であることが好ましく、0.5以上であることがより好ましい(1、すなわち、長軸方向長さと短軸方向長さとが同じであってもよい)。耐熱温度が150℃以上の微粒子が、前記のようなアスペクト比や平板面の長軸方向長さと短軸方向長さの比の平均値を有する板状粒子である場合には、前記の短絡防止作用がより有効に発揮される。
耐熱温度が150℃以上の微粒子が板状である場合における前記の平板面の長軸方向長さと短軸方向長さの比の平均値は、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)により撮影した画像を画像解析することにより求めることができる。更に耐熱温度が150℃以上の微粒子が板状である場合における前記のアスペクト比も、SEMにより撮影した画像を、画像解析することにより求めることができる。
耐熱温度が150℃以上の微粒子の平均粒子径は、小さすぎると、前記の有機バインダ量では、微粒子同士の結着を十分に得られない虞があることから、0.01μm以上であり、0.1μm以上であることが好ましい。ただし、耐熱温度が150℃以上の微粒子の平均粒子径が大きすぎると、耐熱性多孔質膜が厚くなりすぎて、これを用いた電池のエネルギー密度が低下するなどの虞がある。よって、耐熱温度が150℃以上の微粒子の平均粒子径は、10μm以下であり、5μm以下であることが好ましい。なお、本明細書でいう耐熱温度が150℃以上の微粒子の平均粒子径は、例えば、レーザー散乱粒度分布計(例えば、HORIBA社製「LA−920」)を用い、耐熱温度が150℃以上の微粒子を溶解したり、耐熱温度が150℃以上の微粒子が膨潤したりしない媒体に、耐熱温度が150℃以上の微粒子を分散させて測定した数平均粒子径として規定することができる。
また、耐熱温度が150℃以上の微粒子の比表面積は、100m2/g以下であることが好ましく、50m2/g以下であることがより好ましく、30m2/g以下であることが更に好ましい。耐熱温度が150℃以上の微粒子の比表面積が大きくなると、一般に、微粒子同士や、微粒子と基材や電極とを良好に結着するために必要となる有機バインダの量が多くなる傾向にあり、耐熱性多孔質膜における有機バインダの割合を、前記の値に調整し難くなる虞がある。また、耐熱温度が150℃以上の微粒子の比表面積が大きくなると、微粒子表面に吸着する水分が大きくなって、非水電池の電池特性を低下させる虞もある。一方、耐熱温度が150℃以上の微粒子の比表面積は、1m2/g以上であることが好ましい。本明細書で耐熱温度が150℃以上の微粒子の比表面積は、窒素ガスを用いてBET法により測定した値である。
また、本発明の耐熱性多孔質膜は、耐熱温度が150℃以上といった耐熱性の高い微粒子を用いているため、その作用によって、高温時における熱収縮が抑制されており高い寸法安定性を有している。更に、このような耐熱性の高い耐熱性多孔質膜が電極(正極および/または負極)と一体化している場合には、高温時における耐熱性多孔質膜全体の寸法安定性が更に向上する。一方、多孔質基材と本発明の耐熱性多孔質膜とが一体化されて構成された本発明の非水電池用セパレータは、多孔質基材が例えばポリオレフィン製微多孔膜のように高温時の寸法安定性に劣るものであっても、耐熱温度が150℃以上の微粒子の作用によって高温時の寸法安定性が良好な耐熱性多孔質膜と一体化していることから、多孔質基材の熱収縮が抑制され、高温時におけるセパレータ全体の寸法安定性が向上する。そのため、電極と一体化した本発明の耐熱性多孔質膜を有する非水電池や、本発明の非水電池用セパレータを有する非水電池では、例えば従来のポリエチレン製微多孔膜のみで構成されるセパレータを用いた電池で生じていたセパレータの熱収縮に起因する短絡の発生が防止できることから、電池内が異常過熱した際の信頼性および安全性をより高めることができる。
また、本発明の耐熱性多孔質膜を有する非水電池(本発明の非水電池)では、高温時におけるセパレータの熱収縮に起因する短絡の防止を、例えばセパレータを厚くする以外の構成で達成できるため、正極と負極とを仕切る隔離材(本発明の耐熱性多孔質膜または本発明の非水電池用セパレータ)の厚みを比較的薄くすることが可能であり、これにより、エネルギー密度の低下を可及的に抑制することもできる。
耐熱性多孔質膜中における耐熱温度が150℃以上の微粒子の量は、前記微粒子を使用することによる作用をより有効に発揮させる観点から、耐熱性多孔質膜の全固形分の全体積中、10体積%以上であることが好ましく、30体積%以上であることがより好ましく、40体積%以上であることが更に好ましい。
後記の繊維状物を含有しない耐熱性多孔質膜であって、後記の熱溶融性微粒子や膨潤性微粒子を含有させてシャットダウン機能も持たせる場合には、耐熱温度が150℃以上の微粒子の耐熱性多孔質膜中の量は、例えば、耐熱性多孔質膜の全固形分の全体積中、80体積%以下であることが好ましい。また、後記の繊維状物を含有せず、かつシャットダウン機能を有しない耐熱性多孔質膜とする場合には、耐熱温度が150℃以上の微粒子の耐熱性多孔質膜中の量は更に多くてもよく、具体的には、耐熱性多孔質膜の全固形分の全体積中、99.5体積%以下であれば問題ない。
他方、後記の繊維状物を含有する耐熱性多孔質膜であって、後記の熱溶融性微粒子や膨潤性微粒子を含有させてシャットダウン機能も持たせる場合には、耐熱温度が150℃以上の微粒子の耐熱性多孔質膜中の量は、例えば、耐熱性多孔質膜の全固形分の全体積中、70体積%以下であることが好ましい。また、後記の繊維状物を含有し、かつシャットダウン機能を有しない耐熱性多孔質膜とする場合には、耐熱温度が150℃以上の微粒子の耐熱性多孔質膜中の量は更に多くてもよく、具体的には、耐熱性多孔質膜の全固形分の全体積中、80体積%以下であれば問題ない。
耐熱性多孔質膜は、繊維状物を含有していてもよい。繊維状物を含有することで、耐熱性多孔質膜の強度を高めることができる。なお、本明細書でいう「繊維状物」とは、アスペクト比[長尺方向の長さ/長尺方向に直交する方向の幅(直径)]が4以上のものを意味している。繊維状物のアスペクト比は、10以上であることが好ましい。
繊維状物は、耐熱温度が150℃以上であることが好ましい。例えば、140℃以下の温度で溶融して耐熱性多孔質膜の空孔を塞ぎ、耐熱性多孔質膜中のイオンの移動を遮断する機能(いわゆるシャットダウン機能)を付与できる材料を耐熱性多孔質膜に含有させた場合(詳しくは後述する)、耐熱温度が150℃以上の繊維状物も多孔質膜に含有させておくことで、電池内での発熱などによってシャットダウンが起こった後、更に10℃以上セパレータの温度が上昇しても、その形状をより安定に保ち得るようにできる。他方、シャットダウン機能を付与していない場合でも、耐熱温度が150℃以上の繊維状物も用いた耐熱性多孔質膜や、更にこの耐熱性多孔質膜を用いたセパレータでは、150℃の温度においても、その変形を実質的になくすことができる。
繊維状物は、好ましくは耐熱温度が150℃以上であり、かつ電気絶縁性を有しており、電気化学的に安定で、更に非水電池の有する非水電解質(非水電解液)や、耐熱性多孔質膜形成用組成物に用いる溶媒に安定であれば、更に好ましい。
繊維状物の具体的な構成材料としては、例えば、セルロース、セルロース変成体(カルボキシメチルセルロースなど)、ポリプロピレン(PP)、ポリエステル[ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)など]、ポリアクリロニトリル(PAN)、アラミド、ポリアミドイミド、ポリイミドなどの樹脂;ガラス、アルミナ、シリカなどの無機材料(無機酸化物);などが挙げられる。繊維状物は、これらの構成材料の1種を含有していてもよく、2種以上を含有していても構わない。また、繊維状物は、構成成分として、前記の構成材料の他に、必要に応じて、公知の各種添加剤(例えば、樹脂である場合には酸化防止剤など)を含有していても構わない。
繊維状物には、耐熱温度が150℃以上の微粒子との接着性を高めるために、コロナ処理や界面活性剤処理などの表面処理を施してもよい。
繊維状物の直径は、耐熱性多孔質膜の厚み以下であればよいが、例えば、0.01〜5μmであることが好ましい。径が大きすぎると、繊維状物同士の絡み合いが不足して、例えば、繊維状物を使用することによる耐熱性多孔質膜の強度向上効果が小さくなる虞がある。また、径が小さすぎると、耐熱性多孔質膜の空孔が小さくなりすぎて、イオン透過性が低下する傾向にあり、電池の出力特性向上効果が小さくなる虞がある。
耐熱性多孔質膜中での繊維状物の存在状態は、例えば、長軸(長尺方向の軸)の、耐熱性多孔質膜面に対する角度が平均で30°以下であることが好ましく、20°以下であることがより好ましい。
耐熱性多孔質膜が前記の繊維状物を含有する場合における耐熱性多孔質膜中の繊維状物の含有量は、繊維状物の使用による作用をより有効に発揮させる観点から、耐熱性多孔質膜の全固形分の全体積中、10体積%以上であることが好ましく、30体積%以上であることがより好ましい。他方、前記の繊維状物を含有する耐熱性多孔質膜において、繊維状物の含有量が多すぎると、他の成分(耐熱温度が150℃以上の微粒子など)の含有量が少なくなって、これら他の成分による作用が低下することがあるため、繊維状物の含有量は、耐熱性多孔質膜の全固形分の全体積中、85体積%以下であることが好ましく、70体積%以下であることがより好ましい。
本発明の耐熱性多孔質膜には、シャットダウン機能を付与することができる。シャットダウン機能を有する耐熱性多孔質膜とするには、例えば、80〜150℃で溶融する熱溶融性微粒子や、80〜150℃の温度下で非水電解液を吸収して膨潤する膨潤性微粒子を含有させる方法が採用できる。
なお、耐熱性多孔質膜における前記のシャットダウン機能は、例えば、モデルセルの温度による抵抗上昇により評価することが可能である。すなわち、正極、負極、耐熱性多孔質膜(正極および負極のうちのいずれか一方と一体化している)、および非水電解液を備えたモデルセルを作製し、このモデルセルを恒温槽中に保持し、5℃/分の速度で昇温しながらモデルセルの内部抵抗値を測定し、測定された内部抵抗値が、加熱前(室温で測定した抵抗値)の5倍以上となる温度を測定することで、この温度を耐熱性多孔質膜の有するシャットダウン温度として評価することができる。
80〜150℃で溶融する熱溶融性微粒子、すなわち、日本工業規格(JIS)K 7121の規定に準じて、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定される融解温度が80〜150℃の微粒子を含有する耐熱性多孔質膜では、80〜150℃(またはそれ以上の温度)に曝されたときに、熱溶融性微粒子が溶融して耐熱性多孔質膜の空孔が閉塞されるため、Liイオンの移動が阻害される。よって、このような耐熱性多孔質膜を正極と負極との隔離材に用いた非水電池においては、高温時における急激な放電反応が抑制される。この場合、前記の内部抵抗上昇により評価されるセパレータのシャットダウン温度は、熱溶融性微粒子の融点以上150℃以下となる。熱溶融性微粒子の融点(前記融解温度)は、140℃以下であることがより好ましい。
熱溶融性微粒子の構成材料の具体例としては、ポリエチレン(PE)、エチレン由来の構造単位が85モル%以上の共重合ポリオレフィン、PP、またはポリオレフィン誘導体(塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレンなど)、ポリオレフィンワックス、石油ワックス、カルナバワックスなどが挙げられる。前記共重合ポリオレフィンとしては、エチレン−ビニルモノマー共重合体、より具体的には、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−メチルアクリレート共重合体、またはエチレン−エチルアクリレート共重合体が例示できる。また、ポリシクロオレフィンなどを用いることもできる。熱溶融性微粒子は、これらの構成材料の1種のみを有していてもよく、2種以上を有していても構わない。これらの中でも、PE、ポリオレフィンワックス、またはエチレン由来の構造単位が85モル%以上のEVAが好適である。また、熱溶融性微粒子は、構成成分として、前記の構成材料の他に、必要に応じて、樹脂に添加される公知の各種添加剤(例えば、酸化防止剤など)を含有していても構わない。
熱溶融性微粒子の粒子径としては、前述の耐熱温度が150℃以上の微粒子と同じ測定法で測定される数平均粒子径で、例えば、0.001μm以上であることが好ましく、0.1μm以上であることがより好ましく、また、15μm以下であることが好ましく、1μm以下であることがより好ましい。
80〜150℃の温度下で非水電解液を吸収して膨潤する膨潤性微粒子を有する耐熱性多孔質膜では、電池内で高温に曝されたときに、膨潤性微粒子が非水電解液を吸収して大きく膨張する(以下、膨潤性微粒子における温度の上昇に伴って非水電解液を吸収し大きく膨張する機能を「熱膨潤性」という)ことにより、耐熱性多孔質膜内のLiイオンの伝導性を著しく低下させるため、電池の内部抵抗が上昇し、前記のシャットダウン機能を確実に確保することが可能となる。
このような熱膨潤性を有する膨潤性微粒子としては、例えば、架橋ポリスチレン(PS)、架橋アクリル樹脂[例えば、架橋ポリメチルメタクリレート(PMMA)]、架橋フッ素樹脂[例えば、架橋ポリフッ化ビニリデン(PVDF)]などが好適であり、架橋PMMAが特に好ましい。
膨潤性微粒子の粒子径は、レーザー散乱粒度分布計(例えば、HORIBA社製「LA−920」)を用い、微粒子を膨潤しない媒体(例えば水)に分散させて測定した数平均粒子径で、0.1〜20μmであることが好ましい。
膨潤性微粒子の市販品としては、例えば、ガンツ化成社製の架橋PMMA「ガンツパール(製品名)」、東洋インキ社製の架橋PMMA「RSP1079(製品名)」などが入手可能である。
耐熱性多孔質膜にシャットダウン機能を持たせるには、熱溶融性微粒子のみを含有させてもよく、膨潤性微粒子のみを含有させてもよく、熱溶融性微粒子と膨潤性微粒子の両者を含有させてもよい。また、膨潤性微粒子をコアとし、その表面を熱溶融性微粒子の構成材料で覆ったコアシェル型の微粒子のような、熱溶融性微粒子の構成材料と膨潤性微粒子の構成材料との複合体微粒子を耐熱性多孔質膜に含有させてもよい。
熱溶融性微粒子や膨潤性微粒子を耐熱性多孔質膜に含有させることでシャットダウン機能を持たせる場合、良好なシャットダウン機能を確保する点からは、耐熱性多孔質膜中における熱溶融性微粒子または膨潤性微粒子の含有量(耐熱性多孔質膜が、熱溶融性微粒子と膨潤性微粒子との両者を含有する場合は、その合計量であり、熱溶融性微粒子の構成材料と膨潤性微粒子の構成材料との複合体微粒子を含有する場合は、その量。耐熱性多孔質膜中における熱溶融性微粒子または膨潤性微粒子の含有量について、以下同じ。)は、耐熱性多孔質膜の全固形分の全体積中、5〜70体積%であることが好ましい。これらの微粒子の含有量が少なすぎると、これらを含有させることによるシャットダウン効果が小さくなることがあり、多すぎると、耐熱性多孔質膜中における耐熱温度が150℃以上の微粒子や繊維状物などの含有量が減ることになるため、これらによって確保される効果が小さくなることがある。
本発明の耐熱性多孔質膜の具体的な態様としては、例えば、下記(a)、(b)および(c)の態様が挙げられる。
(a)耐熱温度が150℃以上の微粒子(および必要に応じてその他の微粒子)が有機バインダにより結着されて形成されたシート状の耐熱性多孔質膜。
(b)耐熱温度が150℃以上の微粒子と繊維状物(更には、必要に応じてその他の微粒子)とが均一に分散し、これらが有機バインダにより結着されて形成されたシート状の耐熱性多孔質膜。
(c)繊維状物が多数集合して、これらのみによりシート状物を形成しているもの、例えば、織布、不織布(紙を含む)といった形態のものを用い、このシート状物中に耐熱温度が150℃以上の微粒子や必要に応じてその他の微粒子を含有させ、有機バインダによってシート状物に係る繊維状物と各種微粒子などを結着することで構成した単一層からなる耐熱性多孔質膜。
このような態様の耐熱性多孔質膜は、非水電池に使用される電極(正極および/または負極)と一体化され、正極と負極とを仕切る隔離材として用いられる。
よって、本発明の耐熱性多孔質膜を形成し、電極と一体化するに当たっては、例えば、(a)および(b)の態様の耐熱性多孔質膜については、耐熱温度が150℃以上の微粒子および有機バインダ、更には、必要に応じて繊維状物およびその他の微粒子を含み、これらを溶媒(分散媒を含む。以下同じ。)に分散させて耐熱性多孔質膜形成用組成物を調製し(有機バインダについては溶媒に溶解しているものを用いてもよい)、これを電極の表面に塗布し、乾燥して電極表面に耐熱性多孔質膜を直接形成する方法が採用できる。
また、PETフィルムや金属板などの基材に前記の耐熱性多孔質膜形成用組成物を塗布し、乾燥して(a)や(b)の態様の耐熱性多孔質膜を形成し、これを基材から剥離した後に電極と重ね合わせ、ロールプレスなどにより電極と一体化してもよい。
また、(c)の態様の耐熱性多孔質膜を形成するには、繊維状物のシート状物に、前記の耐熱性多孔質膜形成用組成物を含浸させ、一定のギャップを通して不要な組成物を除去した後、乾燥して独立膜の耐熱性多孔質膜を得ることができる。なお、この耐熱性多孔質膜は、その後、電極と重ね合わせ、ロールプレスなどにより電極と一体化する。
(c)の態様の耐熱性多孔質膜で使用する繊維状物のシート状物としては、前記例示の各材料を構成成分に含む繊維状物の少なくとも1種で構成される織布や、これら繊維状物同士が絡み合った構造を有する不織布などの多孔質シートなどが挙げられる。より具体的には、紙、PP不織布、ポリエステル不織布(PET不織布、PEN不織布、PBT不織布など)、PAN不織布などの不織布などが例示できる。
耐熱性多孔質膜形成用組成物に用いられる溶媒は、耐熱温度が150℃以上の微粒子や熱溶融性微粒子、膨潤性微粒子などを均一に分散でき、また、有機バインダを均一に溶解または分散できるものであればよいが、例えば、トルエンなどの芳香族炭化水素;テトラヒドロフランなどのフラン類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類;などの有機溶媒が好適である。なお、これらの溶媒に、界面張力を制御する目的で、アルコール(エチレングリコール、プロピレングリコールなど)、または、モノメチルアセテートなどの各種プロピレンオキサイド系グリコールエーテルなどを適宜添加しても良い。また、バインダが水溶性である場合、エマルジョンとして使用する場合などでは、水を溶媒としてもよく、この際にもアルコール類(メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、エチレングリコールなど)を適宜加えて界面張力を制御することもできる。
前記の耐熱性多孔質膜形成用組成物では、耐熱温度が150℃以上の微粒子、有機バインダ、熱溶融性微粒子、膨潤性微粒子、繊維状物などを含む固形分含量を、例えば10〜80質量%とすることが好ましい。
耐熱温度が150℃以上の微粒子に板状粒子を用いた場合、耐熱性多孔質膜中における板状粒子の配向性を高めるには、耐熱性多孔質膜形成用組成物を電極表面やその他の基材表面に塗布した塗膜(乾燥前の塗膜)や、耐熱性多孔質膜形成用組成物を含浸させたシート状物において、これらの組成物にシェアをかければよい。例えば、耐熱温度が150℃以上の微粒子などをシート状物の空孔内に存在させる方法として上述した耐熱性多孔質膜形成用組成物をシート状物に含浸させた後、一定のギャップを通す方法により、耐熱性多孔質膜形成用組成物にシェアをかけることが可能であり、これにより、板状粒子の配向性を高めることができる。
また、耐熱性多孔質膜中において、板状の、耐熱温度が150℃以上の微粒子の配向性をより高めるには、前記のシェアをかける方法以外にも、高固形分濃度(例えば50〜80質量%)の耐熱性多孔質膜形成用組成物を使用する方法;耐熱温度が150℃以上の微粒子を、ディスパー、アジター、ホモジナイザー、ボールミル、アトライター、ジェットミルなどの各種混合・攪拌装置、分散装置などを用いて溶媒に分散させ、得られた分散体に有機バインダ(更に、必要に応じて繊維状物、熱溶融性微粒子、膨潤性微粒子など)を添加・混合して調製した耐熱性多孔質膜形成用組成物を使用する方法;表面に油脂類、界面活性剤、シランカップリング剤などの分散性剤を作用させて、表面を改質した耐熱温度が150℃以上の微粒子を用いて調製した耐熱性多孔質膜形成用組成物を使用する方法;形状、径またはアスペクト比の異なる耐熱温度が150℃以上の微粒子を併用して調製した耐熱性多孔質膜形成用組成物を使用する方法;耐熱性多孔質膜形成用組成物をシート状物に含浸させたり、基材上に塗布したりした後の乾燥条件を制御する方法;耐熱性多孔質膜を加圧や加熱加圧プレスする方法;耐熱性多孔質膜形成用組成物をシート状物に含浸させたり、基材上に塗布したりした後、乾燥前に磁場をかける方法;などが採用でき、これらの方法をそれぞれ単独で実施してもよく、2種以上の方法を組み合わせて実施してもよい。
こうして得られる耐熱性多孔質膜の厚みは、これが使用される電池の短絡防止効果をより高め、また、耐熱性多孔質膜の強度を高める観点から、例えば、3μm以上とすることが好ましく、5μm以上とすることがより好ましい。他方、電池のエネルギー密度をより高める観点からは、耐熱性多孔質膜の厚みは、50μm以下とすることが好ましく、30μm以下とすることがより好ましい。
また、耐熱性多孔質膜の空孔率は、非水電解質の保液量を確保してイオン透過性を良好にするために、乾燥した状態で、20%以上であることが好ましく、30%以上であることがより好ましい。一方、耐熱性多孔質膜の強度確保と電池における内部短絡の防止の観点から、耐熱性多孔質膜の空孔率は、乾燥した状態で、70%以下であることが好ましく、60%以下であることがより好ましい。なお、耐熱性多孔質膜の空孔率:P(%)は、耐熱性多孔質膜の厚み、面積あたりの質量、構成成分の密度から、下記式(2)を用いて各成分iについての総和を求めることにより計算できる。
P={1−(m/t)/(Σai・ρi)}×100 (2)
ここで、前記式(2)中、ai:全体の質量を1としたときの成分iの比率、ρi:成分iの密度(g/cm3)、m:耐熱性多孔質膜の単位面積あたりの質量(g/cm2)、t:耐熱性多孔質膜の厚み(cm)、である。
更に、後記の実施例で示す方法により求められる耐熱性多孔質膜の150℃での熱収縮率(電極と一体化された状態での熱収縮率)は、5%以下であることが好ましい。
また、耐熱性多孔質膜の強度としては、直径が1mmのニードルを用いた突き刺し強度で50g以上であることが望ましい。かかる突き刺し強度が小さすぎると、リチウムのデンドライト結晶が発生した場合に、耐熱性多孔質膜の突き破れによる短絡が発生する虞がある。
更に、耐熱性多孔質膜の透気度は、JIS P 8117に準拠した方法で測定され、0.879g/mm2の圧力下で100mlの空気が膜を透過する秒数で示されるガーレー値で10〜300secであることが望ましい。透気度が大きすぎると、イオン透過性が小さくなり、小さすぎると耐熱性多孔質膜の強度が小さくなることがある。
これまでに説明した構成の耐熱性多孔質膜とすることで、前記の熱収縮率や強度、透気度を確保することができる。
次に、本発明の非水電池用セパレータについて説明する。本発明の非水電池用セパレータは、多孔質基材と本発明の耐熱性多孔質膜とが一体化されて構成された多層構造のセパレータである。
セパレータに係る多孔質基材としては、樹脂製の不織布、織布、微多孔膜などを用いることができる。
本発明のセパレータにシャットダウン機能を付与する場合には、多孔質基材の構成樹脂に、融点が80〜150℃の熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。融点が80〜150℃の熱可塑性樹脂としては、熱溶融性微粒子の構成樹脂として先に例示した各種熱可塑性樹脂が挙げられる。このような熱可塑性樹脂で構成される多孔質基材の中でも、ポリオレフィン(PE、エチレン−プロピレン共重合体など)製の微多孔膜が好ましい。
本発明のセパレータにおけるシャットダウン機能も、耐熱性多孔質膜のシャットダウン機能と同様に、モデルセルの温度による抵抗上昇により評価することが可能である。すなわち、正極、負極、セパレータおよび非水電解液を備えたモデルセルを作製し、このモデルセルを恒温槽中に保持し、5℃/分の速度で昇温しながらモデルセルの内部抵抗値を測定し、測定された内部抵抗値が、加熱前(室温で測定した抵抗値)の5倍以上となる温度を測定することで、この温度をセパレータの有するシャットダウン温度として評価することができる。
他方、セパレータの耐熱性を重視して、シャットダウン機能を付与しない場合には、耐熱性樹脂で構成された多孔質基材を用いることもできる。このような耐熱性樹脂としては、耐熱温度が150℃以上で、電池に用いる非水電解質に対して安定であり、更に電池内部での酸化還元反応に対して安定である樹脂であればいずれでもよい。より具体的には、ポリイミド、ポリアミドイミド、アラミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリスルホン、ポリウレタン、PAN、ポリエステル(PET、PBT、PENなど)などの耐熱性樹脂が挙げられる。
多孔質基材として使用される微多孔膜には、前記の熱可塑性樹脂により構成されるもの、前記の耐熱性樹脂により構成されるもののいずれにおいても、従来公知の方法によって製造されたものを用いることができる。例えば、溶剤抽出法、乾式または湿式延伸(1軸または2軸延伸)法などにより作製されたイオン透過性の多孔質フィルムを用いることができる。また、薬剤や超臨界CO2などを用いた発泡法により微多孔化したフィルムを用いることもできる。
本発明のセパレータを製造するにあたっては、耐熱性多孔質膜の形成の際に使用される前記の耐熱性多孔質膜形成用組成物を、多孔質基材の表面に塗布し、乾燥する工程を経て、多孔質基材の表面に耐熱性多孔質膜からなる層を形成する方法が採用できる。また、先に例示した独立膜の耐熱性多孔質膜を形成する方法によって得られた耐熱性多孔質膜と、多孔質基材とを重ね、ロールプレスなどにより一体化してもよい。
耐熱性多孔質膜を形成する際に耐熱温度が150℃以上の微粒子に板状粒子を用いた場合において、その配向性を高めるには、耐熱性多孔質膜において板状粒子の配向性を高める方法として先に例示した各種方法を用いることができる。
本発明のセパレータにおいて、耐熱性多孔質膜と多孔質基材とは、それぞれ1枚ずつである必要はなく、複数枚でセパレータを構成していてもよい。例えば、耐熱性多孔質膜の両面に多孔質基材を配置した構成としたり、多孔質基材の両面に耐熱性多孔質膜を配置した構成としてもよい。ただし、耐熱性多孔質膜と多孔質基材との合計枚数を増やしすぎると、セパレータの厚みを増やして電池の内部抵抗の増加やエネルギー密度の低下を招く虞があるので好ましくなく、セパレータ中の耐熱性多孔質膜と多孔質基材との合計枚数は5枚以下であることが好ましい。
このようにして得られる本発明のセパレータにおいては、電池の短絡防止効果をより高め、セパレータの強度を確保して、その取り扱い性を良好とする観点から、その厚みは、例えば、5.5μm以上とすることが好ましく、10μm以上とすることがより好ましい。他方、電池のエネルギー密度をより高める観点からは、セパレータの厚みは、50μm以下とすることが好ましく、30μm以下とすることがより好ましい。
また、本発明のセパレータにおいては、耐熱性多孔質膜の厚みをX(μm)、多孔質基材の厚みをY(μm)としたとき、XとYとの比率Y/Xを1〜20としつつ、セパレータ全体の厚みが前記好適値を満足するようにすることが好ましい。Y/Xが大きすぎると、耐熱性多孔質膜が薄くなりすぎて、例えば、高温時での寸法安定性が劣る多孔質基材を用いた場合に、その熱収縮を抑制する効果が小さくなる虞がある。また、Y/Xが小さすぎると、耐熱性多孔質膜が厚くなりすぎて、セパレータ全体の厚みを増大させ、出力特性の向上効果が小さくなる虞があるなど、電池特性の低下を引き起こすことがある。なお、セパレータが、耐熱性多孔質膜を複数枚有する場合には、厚みXはその総厚みであり、多孔質基材を複数枚有する場合には、厚みYはその総厚みである。
具体的な値で表現すると、多孔質基材の厚み(セパレータが多孔質基材を複数枚有する場合には、その総厚み)は、5μm以上であることが好ましく、また、30μm以下であることが好ましい。そして、耐熱性多孔質膜の厚み(セパレータが耐熱性多孔質膜を複数枚有する場合には、その総厚み)は、0.5μm以上であることが好ましく、1μm以上であることがより好ましく、2μm以上であることが更に好ましく、また、10μm以下であることが好ましく、5μm以下であることがより好ましく、3μm以下であることが更に好ましい。
また、前記式(2)を用い、mをセパレータの単位面積あたりの質量(g/cm2)とし、tをセパレータの厚み(cm)として求められるセパレータの空孔率は、非水電解質の保液量を確保してイオン透過性を良好にするために、乾燥した状態で、20%以上であることが好ましく、30%以上であることがより好ましい。一方、セパレータの強度確保と内部短絡の防止の観点から、前記方法により求められるセパレータの空孔率は、乾燥した状態で、70%以下であることが好ましく、60%以下であることがより好ましい。
更に、前記式(2)を用い、mを多孔質基材の単位面積あたりの質量(g/cm2)とし、tを多孔質基材の厚み(cm)として求められるセパレータに係る多孔質基材の空孔率は30〜70%であることが好ましい。また、前記式(2)により求められるセパレータに係る耐熱性多孔質膜の空孔率は、電極と一体化される耐熱性多孔質膜の場合と同様に、20%以上(より好ましくは30%以上)、70%以下(より好ましくは60%以下)であることが好ましい。
後記の実施例で示す方法により求められるセパレータの150℃での熱収縮率は、5%以下であることが好ましい。
セパレータの強度としては、直径が1mmのニードルを用いた突き刺し強度で50g以上であることが望ましい。かかる突き刺し強度が小さすぎると、リチウムのデンドライト結晶が発生した場合に、セパレータの突き破れによる短絡が発生する虞がある。
セパレータの透気度は、JIS P 8117に準拠した方法で測定され、0.879g/mm2の圧力下で100mlの空気が膜を透過する秒数で示されるガーレー値で10〜300secであることが望ましい。透気度が大きすぎると、イオン透過性が小さくなり、小さすぎるとセパレータの強度が小さくなることがある。
更に、セパレータのガーレー値は下記式(3)の関係を満たすことが好ましい。
Gs≦max{Ga,Gb}+10 (3)
ここで、Gs:セパレータのガーレー値、Ga:多孔質基材のガーレー値、Gb:耐熱性多孔質膜のガーレー値、max{Ga,Gb}:GaとGbのどちらか大きい方、である。ただし、Gbは、下記式(4)を用いて求める。
Gb=Gs−Ga (4)
これまでに説明した構成のセパレータとすることで、前記の熱収縮率や強度、透気度を確保することができる。
また、前述の耐熱性多孔質膜に関し、本発明の耐熱性多孔質膜と電極との一体化物、および本発明のセパレータにおいては、耐熱性多孔質膜の180°の剥離強度が0.6N/cm以上であることが好ましく、1.0N/cm以上であることが更に好ましい。これまでに説明した構成の耐熱性多孔質膜およびセパレータとすることで、前記の剥離強度を確保することができる。
ここでいう剥離強度とは、以下の方法により測定される値である。耐熱性多孔質膜と電極との一体化物、またはセパレータから、幅2cm、長さ5cmの大きさの試験片を切り出し、耐熱性多孔質膜表面の2cm×2cmの領域に粘着テープを貼り付ける。なお、粘着テープのサイズは幅2cm、長さ約5cmで、粘着テープの片端と耐熱性多孔質膜の片端が揃うように貼り付ける。その後、引張試験機を用い、試験片の粘着テープを貼り付けた側とは反対側の端と、試験片に貼り付けた粘着テープの試験片に貼り付けた側とは反対側の端とを把持して、引張速度10mm/minで引っ張り、耐熱性多孔質膜が剥離した時の強度を測定する。
続いて、本発明の非水電池について説明する。本発明の非水電池は、本発明の耐熱性多孔質膜が正極および負極の少なくとも一方と一体化され、対極とを仕切る隔離材として使用されているか、本発明のセパレータが正極と負極とを仕切る隔離材として使用されていればよく、その他の構成および構造については特に制限はなく、従来から知られている非水電解質を用いた非水電池(リチウム一次電池などの非水一次電池、リチウム二次電池などの非水二次電池)で採用されている各種構成および構造を適用することができる。以下には、本発明の非水電池のうち、特に主要な形態であるリチウム二次電池について、詳細に説明する。
リチウム二次電池の形態としては、スチール缶やアルミニウム缶などを外装缶として使用した筒形(角筒形や円筒形など)などが挙げられる。また、金属を蒸着したラミネートフィルムを外装体としたソフトパッケージ電池とすることもできる。
正極は、従来から知られているリチウム二次電池に用いられている正極、すなわち、Liイオンを吸蔵放出可能な活物質を含有する正極であれば特に制限はない。例えば、活物質として、Li1+xMO2(−0.1<x<0.1、M:Co、Ni、Mnなど)で表されるリチウム含有遷移金属酸化物;LiMn24などのリチウムマンガン酸化物;LiMn24のMnの一部を他元素で置換したLiMnx(1-x)2;オリビン型LiMPO4(M:Co、Ni、Mn、Fe);LiMn0.5Ni0.52;Li(1+a)MnxNiyCo(1-x-y)2(−0.1<a<0.1、0<x<0.5、0<y<0.5);などを適用することが可能である。これらの正極活物質に公知の導電助剤(カーボンブラックなどの炭素材料など)やポリフッ化ビニリデン(PVDF)などの結着剤などを適宜添加した正極合剤を、集電体を芯材として成形体(すなわち、正極合剤層)に仕上げたものなどを、正極として用いることができる。
正極の集電体としては、アルミニウムなどの金属の箔、パンチングメタル、網、エキスパンドメタルなどを用い得るが、通常、厚みが10〜30μmのアルミニウム箔が好適に用いられる。
正極側のリード部は、通常、正極作製時に、集電体の一部に正極合剤層を形成せずに集電体の露出部を残し、そこをリード部とすることによって設けられる。ただし、リード部は必ずしも当初から集電体と一体化されたものであることは要求されず、集電体にアルミニウム製の箔などを後から接続することによって設けてもよい。
負極は、従来から知られているリチウム二次電池に用いられている負極、すなわち、Liイオンを吸蔵放出可能な活物質を含有する負極であれば特に制限はない。例えば、活物質として、黒鉛、熱分解炭素類、コークス類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物の焼成体、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、炭素繊維などの、リチウムを吸蔵、放出可能な炭素系材料の1種または2種以上の混合物が用いられる。また、Si、Sn、Ge、Bi、Sb、Inなどの元素およびその合金、リチウム含有窒化物、またはリチウム含有酸化物などのリチウム金属に近い低電圧で充放電できる化合物、もしくはリチウム金属やリチウム/アルミニウム合金も負極活物質として用いることができる。これらの負極活物質に導電助剤(カーボンブラックなどの炭素材料など)やPVDFなどの結着剤などを適宜添加した負極合剤を、集電体を芯材として成形体(負極合剤層)に仕上げたものや、前記の各種合金やリチウム金属の箔を単独、もしくは集電体上に形成したものなどの負極剤層を有するものを、負極として用いることができる。
負極に集電体を用いる場合には、集電体としては、銅製やニッケル製の箔、パンチングメタル、網、エキスパンドメタルなどを用い得るが、通常、銅箔が用いられる。この負極集電体は、高エネルギー密度の電池を得るために負極全体の厚みを薄くする場合、厚みの上限は30μmであることが好ましく、また、下限は5μmであることが望ましい。
負極側のリード部も、正極側のリード部と同様に、通常、負極作製時に、集電体の一部に負極剤層(負極活物質を有する層、負極合剤層を含む)を形成せずに集電体の露出部を残し、そこをリード部とすることによって設けられる。ただし、この負極側のリード部は必ずしも当初から集電体と一体化されたものであることは要求されず、集電体に銅製の箔などを後から接続することによって設けてもよい。
電極は、前記の正極と前記の負極とを、本発明のセパレータを介して積層するか、または、前記の正極および負極のうちの少なくとも一方と本発明の耐熱性多孔質膜とを一体化し、この耐熱性多孔質膜が介在するようにして正極と負極とを積層した積層構造の電極群や、更にこれらを巻回した巻回構造の電極群の形態で用いることができる。なお、正極および負極のうちの少なくとも一方と本発明の耐熱性多孔質膜とを一体化したものを用いて電池を構成する場合、別途セパレータ(例えば、従来から知られているリチウム二次電池などの電池で使用されているポリオレフィン製の微多孔膜セパレータ)を使用してもよいが、本発明の耐熱性多孔質膜が正極と負極とを仕切る隔離材(すなわちセパレータ)として機能するため、特にセパレータを使用する必要はない。
非水電解質としては、リチウム塩を有機溶媒に溶解した溶液(非水電解液)が用いられる。リチウム塩としては、溶媒中で解離してLi+イオンを形成し、電池として使用される電圧範囲で分解などの副反応を起こさないものであれば特に制限は無い。例えば、LiClO4、LiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiSbF6などの無機リチウム塩;LiCF3SO3、LiCF3CO2、Li224(SO32、LiN(CF3SO22、LiC(CF3SO23、LiCn2n+1SO3(2≦n≦7)、LiN(RfOSO22〔ここでRfはフルオロアルキル基〕などの有機リチウム塩;などを用いることができる。
非水電解液に用いる有機溶媒としては、前記のリチウム塩を溶解し、電池として使用される電圧範囲で分解などの副反応を起こさないものであれば特に限定されない。例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネートなどの環状カーボネート;ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネートなどの鎖状カーボネート;プロピオン酸メチルなどの鎖状エステル;γ−ブチロラクトンといった環状エステル;ジメトキシエタン、ジエチルエーテル、1,3−ジオキソラン、ジグライム、トリグライム、テトラグライムなどの鎖状エーテル;ジオキサン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフランなどの環状エーテル;アセトニトリル、プロピオニトリル、メトキシプロピオニトリルといったニトリル類;エチレングリコールサルファイトなどの亜硫酸エステル類;などが挙げられ、これらを1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用しても構わない。なお、より良好な特性の電池とするためには、エチレンカーボネートと鎖状カーボネートの混合溶媒など、高い導電率を得ることができる組み合わせで用いることが望ましい。また、これらの非水電解液に安全性や充放電サイクル性、高温貯蔵性といった特性を向上させる目的で、ビニレンカーボネート類、1,3−プロパンサルトン、ジフェニルジスルフィド、シクロヘキシルベンゼン、ビフェニル、フルオロベンゼン、t−ブチルベンゼンなどの添加剤を適宜加えることもできる。
このリチウム塩の非水電解液中の濃度としては、0.5〜1.5mol/lとすることが好ましく、0.9〜1.25mol/lとすることがより好ましい。
また、前記の有機溶媒の代わりに、エチル−メチルイミダゾリウムトリフルオロメチルスルホニウムイミド、へプチル−トリメチルアンモニウムトリフルオロメチルスルホニウムイミド、ピリジニウムトリフルオロメチルスルホニウムイミド、グアジニウムトリフルオロメチルスルホニウムイミドといった常温溶融塩を用いることもできる。
更に、前記の非水電解液をゲル化するような高分子材料を添加して、非水電解液をゲル状にして電池に用いてもよい。非水電解液をゲル状とするための高分子材料としては、PVDF、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(PVDF−HFP)、PAN、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、エチレンオキシド−プロピレンオキシド共重合体、主鎖または側鎖にエチレンオキシド鎖を有する架橋ポリマー、架橋したポリ(メタ)アクリル酸エステルなど、公知のゲル状電解質形成可能なホストポリマーが挙げられる。
次に、上記リチウム二次電池の一例を図面に基づき説明する。図1は、本発明のリチウム二次電池の一例を示す断面図である。図1において、本発明のリチウム二次電池は、上記で説明した正極活物質を含む正極合剤層を有する正極1と、負極活物質を含む負極合剤層を有する負極2と、本発明のセパレータ3と、非水電解液4とを備えている。正極1と負極2とはセパレータ3を介して渦巻状に巻回され、巻回構造の電極群として非水電解液4と共に円筒形の電池缶5内に収容されている。
ただし、図1においては、煩雑化を避けるため、正極1や負極2の作製にあたり使用した集電体である金属箔などは図示していない。また、セパレータ3は、その切断面を示すが、断面を示すハッチングは付していない。
電池缶5は、例えば鉄製で表面にニッケルメッキが施されていて、その底部には上記巻回構造の電極群の挿入に先立って、例えばポリプロピレンからなる絶縁体6が配置されている。封口板7は、例えばアルミニウム製で円板状をしていて、その中央部に薄肉部7aが設けられ、かつ薄肉部7aの周囲に電池内圧を防爆弁9に作用させるための圧力導入口7bとしての孔が設けられている。そして、薄肉部7aの上面に防爆弁9の突出部9aが溶接され、溶接部分11を構成している。封口板7に設けた薄肉部7aや防爆弁9の突出部9aなどは、図面上での理解がしやすいように、切断面のみを図示しており、切断面後方の輪郭線は図示を省略している。また、封口板7の薄肉部7aと防爆弁9の突出部9aとの溶接部分11も、図面上での理解が容易なように、実際よりは誇張した状態に図示している。
端子板8は、例えば圧延鋼製で表面にニッケルメッキが施され、周縁部が鍔状になった帽子状をしており、端子板8にはガス排出口8aが設けられている。防爆弁9は、例えばアルミニウム製で円板状をしており、その中央部には発電要素側(図1では、下側)に先端部を有する突出部9aが設けられ、かつ薄肉部9bが設けられ、突出部9aの下面が、上記のように、封口板7の薄肉部7aの上面に溶接され、溶接部分11を形成している。絶縁パッキング10は、例えばポリプロピレン製で環状をしており、封口板7の周縁部の上部に配置され、その上部に防爆弁9が配置していて、封口板7と防爆弁9とを絶縁するとともに、両者の間から電解液が漏れないように両者の間隙を封止している。環状ガスケット12は、例えばポリプロピレンで形成されている。リード体13は、例えばアルミニウムで形成され、封口板7と正極1とを接続している。巻回構造の電極群の上部には絶縁体14が配置され、負極2と電池缶5の底部とは、例えばニッケル製のリード体15で接続されている。
図1の電池においては、封口板7の薄肉部7aと防爆弁9の突出部9aとが溶接部分11で接触し、防爆弁9の周縁部と端子板8の周縁部とが接触し、正極1と封口板7とは正極側のリード体13で接続されているので、通常の状態では、正極1と端子板8とは、リード体13、封口板7、防爆弁9およびそれらの溶接部分11によって電気的接続が得られ、電路として正常に機能する。
そして、電池が高温に曝されたり、過充電によって発熱するなど、電池に異常事態が起こり、電池内部にガスが発生して電池の内圧が上昇した場合には、その内圧上昇により、防爆弁9の中央部が内圧方向(図1では、上側の方向)に変形する。それに伴って溶接部分11で一体化されてなる封口板7の薄肉部7aに剪断力が働いて該薄肉部7aが破断するか、または防爆弁9の突出部9aと封口板7の薄肉部7aとの溶接部分11が剥離した後、この防爆弁9に設けられている薄肉部9bが開裂してガスを端子板8のガス排出口8aから電池外部に排出させて電池の破裂を防止することができるように設計されている。
本発明の非水電池は、従来から知られているリチウム二次電池などの非水電池が用いられている各種用途と同じ用途に適用することができる。
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に述べる。ただし、下記実施例は、本発明を制限するものではない。
(実施例1)
<電極の作製>
正極は次のようにして作製した。先ず、リチウム含有複合酸化物であるLiCoO2(正極活物質)90質量部に、導電助剤としてカーボンブラック5質量部を加えて混合し、この混合物に、バインダとしてPVDF:5質量部をNMPに溶解させた溶液を加え、混合して正極合剤含有スラリーとし、70メッシュの網を通過させて粒径が大きなものを取り除いた。この正極合剤含有スラリーを、厚みが15μmのアルミニウム箔からなる正極集電体の両面に均一に塗付して乾燥し、その後、ロールプレス機により圧縮成形して総厚さを105μmにした後、切断し、アルミニウム製のリード体を溶接して、帯状の正極を作製した。
また、負極は次のようにして作製した。負極活物質として人造黒鉛を用い、バインダとしてPVDFを用い、これらを質量比95:5の割合で混合し、更にNMPを加えて混合して負極合剤含有ペーストとした。この負極合剤含有ペーストを、厚みが10μmの銅箔からなる負極集電体の両面に均一に塗布して乾燥し、その後、ロールプレス機により圧縮成形して総厚さを100μmにした後、切断し、ニッケル製のリード体を溶接して、帯状の負極を作製した。
<電解液の調製>
エチレンカーボネート、メチルエチルカーボネート、およびジエチルカーボネートの体積比10:10:30の混合溶媒にLiPF6を1.0mol/lの濃度で溶解させたものに、ビニレンカーボネートを、電解液の全質量に対して2.5質量%となるように添加して、電解液(非水電解質)を調製した。
<セパレータの作製>
耐熱温度が150℃以上の微粒子であるベーマイト粉末(板状、平均粒径1μm、アスペクト比10、比表面積8m2/g)4000gを、水4000gに4回に分けて加え、ディスパーにより2800rpmで5時間攪拌して均一なスラリーを調製した。この分散液に有機バインダであるポリN−ビニルアセトアミド(PNVA)の水溶液(濃度10質量%)1200gを加え、更に水を加えて均一に分散するまで室温で攪拌し、固形分比率が30質量%のスラリー(耐熱性多孔質膜形成用スラリー)を調製した。
片面をコロナ放電処理したPE製微多孔膜(厚み16μm、空孔率40%、PEの融点135℃)を多孔質基材として用い、その処理面上に前記のスラリーをマイクログラビアコーターによって塗布し、乾燥して耐熱性多孔質膜を形成することで、厚みが20μmのセパレータを得た。このセパレータの耐熱性多孔質膜の全固形分の全体積中における有機バインダの体積割合は7.0体積%であり、耐熱性多孔質膜の空孔率は48%であった。
<電池の組み立て>
前記のようにして得たセパレータを、耐熱性多孔質膜側が正極側に向くように前記正極と前記負極との間に介在させつつ重ね、渦巻状に巻回して巻回体電極群を作製した。得られた巻回体電極群を、径18mm、高さ65mmの鉄製電池缶に入れ、電解液を注入した後に封止を行って、リチウム二次電池を作製した。なお、このリチウム二次電池は、缶の上部に、内圧が上昇した場合に圧力を逃がすための防爆弁を備えている。本実施例のリチウム二次電池では、4.2Vまで充電した場合(正極の電位がLi基準で4.3V)の設計電気容量は、1400mAhである。
(実施例2)
実施例1で用いたものと同じベーマイト粉末4000gを、水4000gに4回に分けて加え、ディスパーにより2800rpmで5時間攪拌して均一な分散液を調製した。この分散液に有機バインダであるPNVAの水溶液(濃度10質量%)400gを加え、更に水を加えて均一に分散するまで室温で攪拌し、固形分比率が30質量%のスラリーを調製した。このスラリーにフッ素系界面活性剤(パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物)を、水100質量部に対して0.1質量部の量で添加し、均一になるまで攪拌して耐熱性多孔質膜形成用スラリーを得た。
実施例1で用いたものと同じPE製微多孔膜の処理面上に、マイクログラビアコーターを用いて前記スラリーを塗布した後、乾燥して耐熱性多孔質膜を形成することで、厚みが20μmのセパレータを得た。このセパレータの耐熱性多孔質膜の全固形分の全体積中における有機バインダの体積割合は2.5体積%であり、耐熱性多孔質膜の空孔率は52%であった。
そして、このセパレータを用いた以外は、実施例1と同様にしてリチウム二次電池を作製した。
(実施例3)
耐熱温度が150℃以上の微粒子を、一次粒子の連なった二次粒子状ベーマイト(平均粒径0.6μm、比表面積15m2/g)に変更した以外は、実施例2と同様にして耐熱性多孔質膜形成用スラリーを作製した。PE製多孔膜を中心にして、その両側にPP製多孔膜を積層した3層構造のポリオレフィン製微多孔膜(厚み16μm、空孔率40%、PE層に係るPEの融点135℃)上に、マイクログラビアコーターを用いて前記スラリーを塗布した後、乾燥して耐熱性多孔質膜を形成することで、厚みが18μmのセパレータを得た。このセパレータの耐熱性多孔質膜の全固形分の全体積中における有機バインダの体積割合は2.5体積%であり、耐熱性多孔質膜の空孔率は55%であった。
そして、このセパレータを用いた以外は、実施例1と同様にしてリチウム二次電池を作製した。
(実施例4)
耐熱温度が150℃以上の微粒子に、実施例3で用いたものと同じ一次粒子の連なった二次粒子状ベーマイト4000gを用い、これを水4000gに4回に分けて加え、ディスパーにより2800rpmで5時間攪拌して均一な分散液を調製した。この分散液に、80〜150℃の温度下で非水電解液を吸収して膨潤する膨潤性微粒子である架橋PMMA微粒子(平均粒子径0.4μm)の水分散体(固形分比率40質量%)4000gとPNVAの水溶液(濃度10質量%)1600gとを加え、更に水を固形分比率が30質量%になるように加えて、均一になるまで攪拌した。このスラリーに、実施例3で用いたものと同じフッ素系界面活性剤を、水100質量部に対して0.1質量部の量で添加し、均一になるまで攪拌して耐熱性多孔質膜形成用スラリーを得た。
実施例3で用いたものと同じ3層構造のポリオレフィン製微多孔膜上に、マイクログラビアコーターを用いて前記スラリーを塗布した後、乾燥して耐熱性多孔質膜を形成することで、厚みが20μmのセパレータを得た。このセパレータの耐熱性多孔質膜の全固形分の全体積中における有機バインダの体積割合は4.8体積%であり、耐熱性多孔質膜の空孔率は50%であった。
そして、このセパレータを用いた以外は、実施例1と同様にしてリチウム二次電池を作製した。
(実施例5)
耐熱温度が150℃以上の微粒子に、一次粒子の連なった二次粒子状ベーマイト(平均粒子径0.06μm、比表面積100m2/g)4000gを用い、これを水4000gに4回に分けて加え、ディスパーにより2800rpmで5時間攪拌して均一な分散液を調製した。この分散液に、熱溶融性微粒子としてPE微粒子(融点135℃)の水分散体(固形分比率40質量%)4000gとPNVAの水溶液(濃度10質量%)2100gと加え、更に水を固形分比率が30質量%になるように加えて、均一になるまで攪拌し、耐熱性多孔質膜形成用スラリーを得た。PET製不織布(目付け8g/m2、厚み16μm)を多孔質基材として用い、それに前記スラリーをディップ塗布し、乾燥して耐熱性多孔質膜を形成することで、厚みが20μmのセパレータを得た。このセパレータの耐熱性多孔質膜の全固形分の全体積中における有機バインダの体積割合は6.2体積%であり、耐熱性多孔質膜の空孔率は38%であった。
そして、このセパレータを用いた以外は、実施例1と同様にしてリチウム二次電池を作製した。
(実施例6)
耐熱温度が150℃以上の微粒子にアルミナ微粒子(平均粒子径0.4μm、比表面積7m2/g)4000gを用い、これを水4000gに4回に分けて加え、ディスパーにより2800rpmで5時間攪拌して均一な分散液を調製した。この分散液に、熱溶融性微粒子としてPE微粒子(融点135℃)の水分散体(固形分比率40質量%)4000gとPNVAの水溶液(濃度10質量%)1600gとを加え、更に水を固形分比率が30質量%になるように加えて、均一になるまで攪拌し、耐熱性多孔質膜形成用スラリーを得た。
前記のスラリーを、実施例1で作製したものと同じ負極の両面上に、マイクログラビアコーターを用いて塗布し、厚みが20μmの耐熱性多孔質膜を形成した。耐熱性多孔質膜の全固形分の全体積中における有機バインダの体積割合は4.5体積%であり、耐熱性多孔質膜の空孔率は50%であった。
前記の耐熱性多孔質膜と一体化した負極と、実施例1で作製したものと同じ正極とを重ね合わせ、渦巻状に巻回して巻回体電極群を作製した。この巻回体電極群を用いた以外は、実施例1と同様にしてリチウム二次電池を作製した。
(実施例7)
実施例6で調製したものと同じ耐熱性多孔質膜形成用スラリーを、実施例1で作製したものと同じ負極の両面上に、マイクログラビアコーターを用いて塗布し、厚みが10μmの耐熱性多孔質膜を形成した。また、実施例6で調製したものと同じ耐熱性多孔質膜形成用スラリーを、実施例1で作製したものと同じ正極の両面上に、マイクログラビアコーターを用いて塗布し、厚みが10μmの耐熱性多孔質膜を形成した。
前記の耐熱性多孔質膜と一体化した負極と、前記の耐熱性多孔質膜と一体化した正極とを用いた以外は、実施例6と同様にしてリチウム二次電池を作製した。
(比較例1)
有機バインダであるPNVAの水溶液(濃度10質量%)の使用量を2000gに変更した以外は、実施例1と同様にして耐熱性多孔質膜形成用スラリーを調製し、このスラリーを用いた以外は、実施例1と同様にしてセパレータを作製した。このセパレータの耐熱性多孔質膜の全固形分の全体積中における有機バインダの体積割合は11体積%であり、耐熱性多孔質膜の空孔率は42%であった。
そして、このセパレータを用いた以外は、実施例1と同様にしてリチウム二次電池を作製した。
(比較例2)
耐熱温度が150℃以上の微粒子に、ベーマイト粒子(平均粒子径0.005μm、比表面積250m2/g)を用いた以外は実施例1と同様にして調製した耐熱性多孔質膜形成用スラリーを用い、実施例1と同様にしてセパレータを作製した。しかしながら、耐熱性多孔質膜のフィラーがすぐに剥がれてしまったため、電池の作製は実施しなかった。
(比較例3)
耐熱温度が150℃以上の微粒子に、比較例2で用いたものと同じベーマイト粒子4000gを使用し、これを水4000gに4回に分けて加え、ディスパーにより2800rpmで5時間攪拌して均一な分散液を調製した。この分散液に有機バインダであるPNVAの水溶液(濃度10質量%)4000gを加え、均一に分散するまで室温で攪拌して、耐熱性多孔質膜形成用スラリーを調製した。そして、このスラリーを用いた以外は、実施例1と同様にしてセパレータを作製した。このセパレータの耐熱性多孔質膜の全固形分の全体積中における有機バインダの体積割合は20体積%であり、耐熱性多孔質膜の空孔率は38%であった。
更に、このセパレータを用いた以外は、実施例1と同様にしてリチウム二次電池を作製した。
実施例および比較例のリチウム二次電池、並びに実施例および比較例の電池に使用したセパレータまたは耐熱性多孔質膜について、下記の各評価を行った。
<セパレータまたは耐熱性多孔質膜の熱収縮試験>
実施例1〜5および比較例1、3の電池に使用したセパレータ、並びに実施例6、7の電池に使用した耐熱性多孔質膜と負極との一体化物から、MD方向、TD方向をそれぞれ5cm、10cmとした短冊状のサンプル片を切り取った。ここで、MD方向とは、セパレータまたは耐熱性多孔質膜と負極との一体化物の作製の際の機械方向であり、TD方向はそれらに垂直な方向である。
前記の各サンプルについて、長辺方向(TD方向)の中心と短片方向(MD方向)の中心とで交差するように、長辺方向および短辺方向に平行にそれぞれ3cmずつの直線を油性ペンでマークした。なお、それぞれの直線の中心は、これらの直線の交差点とした。これらのサンプルを恒温槽に吊るし、槽内温度を5℃/分の割合で温度上昇させ、150℃に到達後、150℃で1時間温度を保持した。150℃で1時間保持した後の長辺方向および短辺方向のマークの長さを測定し、昇温前のそれぞれのマークの長さと昇温後のそれぞれのマークの長さとの差を求め、昇温前のそれぞれのマークの長さに対するこれらの差の比を百分率で算出して、それぞれの方向の熱収縮率とした。なお、各セパレータおよび耐熱性多孔質膜の熱収縮率は、長辺方向の熱収縮率と短辺方向の熱収縮率のうちの値の大きい方とした。
<充放電特性評価>
実施例1〜7および比較例1、3の各電池について、以下の条件で充放電を行い、充電容量および放電容量をそれぞれ求め、充電容量に対する放電容量の割合を充電効率として評価した。充電は、0.2Cの電流値で電池電圧が4.2Vになるまで定電流充電を行い、次いで、4.2Vでの定電圧充電を行う定電流−定電圧充電とした。充電終了までの総充電時間は15時間とした。充電後の各電池を、0.2Cの放電電流で、電池電圧が3.0Vになるまで放電を行ったところ、実施例1〜7および比較例1、3の電池は、充電効率がほぼ100%となり、電池として良好に作動することが確認できた。
<出力特性評価>
実施例1〜7および比較例1、3の各電池について、充放電特性評価と同じ条件で充電し、1Cの放電電流で電池電圧が3.0Vになるまで放電したときの放電容量と、同条件で充電し、10Cの放電電流で電池電圧が3.0Vになるまで放電したときの放電容量とを測定し、1Cでの放電容量に対する10Cでの放電容量の比(10C/1C容量比)を百分率で表して、各電池の出力特性を評価した。
<安全性評価>
以下の方法により、実施例1〜7および比較例1、3の各電池の昇温試験を行った。電池を恒温槽に入れ、30℃から150℃まで毎分1℃の割合で温度上昇させて過熱し、電池の表面温度の変化を求めた。その結果、全ての電池で異常な温度上昇は確認されず、安全性が優れていることが確認できた。
安全性評価を除く前記の各評価結果を表1に示す。
Figure 2012005152
表1に示す通り、有機バインダの体積割合が適正な耐熱性多孔質膜を有する実施例1〜7のリチウム二次電池は、出力特性が良好である。また、実施例1〜5のリチウム二次電池で使用したセパレータおよび実施例6、7のリチウム二次電池で使用した耐熱性多孔質膜は、150℃での熱収縮率が小さいことから、これらを使用した実施例1〜7のリチウム二次電池は、電池内が高温となっても、セパレータや隔離材(電極と一体化された耐熱性多孔質膜)の熱収縮による短絡の発生を抑制することができ、前記の安全性評価で示した通り、良好な安全性を有している。
これに対し、有機バインダの体積割合が大きすぎる耐熱性多孔質膜を有する比較例1、3のリチウム二次電池は、出力特性が実施例の電池よりも劣っている。
本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で、上記以外の形態としても実施が可能である。本出願に開示された実施形態は一例であって、これらに限定はされない。本発明の範囲は、上述の明細書の記載よりも、添付されている請求の範囲の記載を優先して解釈され、請求の範囲と均等の範囲内での全ての変更は、請求の範囲に含まれるものである。
1 正極
2 負極
3 セパレータ
4 非水電解液
5 電池缶
6 絶縁体
7 封口板
7a 薄肉部
7b 圧力導入口
8 端子板
8a ガス排出口
9 防爆弁
9a 突出部
9b 薄肉部
10 絶縁パッキング
11 溶接部分
12 環状ガスケット
13 リード体
14 絶縁体
15 リード体

Claims (20)

  1. 多孔質基材と、耐熱性多孔質膜とが、一体化している非水電池用セパレータであって、
    前記耐熱性多孔質膜は、耐熱温度が150℃以上の微粒子と、有機バインダとを含み、
    前記微粒子の平均粒子径が、0.01〜10μmであり、
    前記耐熱性多孔質膜の全固形分中に占める前記有機バインダの割合が、7体積%以下であることを特徴とする非水電池用セパレータ。
  2. 前記多孔質基材が、ポリオレフィン製微多孔膜である請求項1に記載の非水電池用セパレータ。
  3. 150℃における熱収縮率が、5%以下である請求項1に記載の非水電池用セパレータ。
  4. 前記微粒子が、無機酸化物微粒子である請求項1に記載の非水電池用セパレータ。
  5. 前記耐熱性多孔質膜は、80〜150℃で溶融する微粒子を更に含む請求項1に記載の非水電池用セパレータ。
  6. 前記耐熱性多孔質膜は、80〜150℃の温度下で非水電解液を吸収して膨潤する微粒子を更に含む請求項1に記載の非水電池用セパレータ。
  7. 前記有機バインダは、分子内にアミド結合を有する請求項1に記載の非水電池用セパレータ。
  8. 前記有機バインダは、下記一般式(1)で表されるモノマー由来の構造単位を含む請求項7に記載の非水電池用セパレータ。
    Figure 2012005152
    前記一般式(1)中、Rは水素またはメチル基、RおよびRは、Rが水素もしくは炭素数1〜6のアルキル基およびRが水素もしくは炭素数1〜4のアルキル基であるか、またはRとRとが互いに結合して環を形成しており、前記環のRおよびRにおける炭素数の合計が2〜10である。
  9. 正極、負極、耐熱性多孔質膜および非水電解質を含む非水電池であって、
    前記耐熱性多孔質膜と、前記正極および前記負極から選ばれる少なくとも一方とが、一体化しており、
    前記耐熱性多孔質膜は、耐熱温度が150℃以上の微粒子と、有機バインダとを含み、
    前記微粒子の平均粒子径が、0.01〜10μmであり、
    前記耐熱性多孔質膜の全固形分中に占める前記有機バインダの割合が、7体積%以下であることを特徴とする非水電池。
  10. 前記微粒子が、無機酸化物微粒子である請求項9に記載の非水電池。
  11. 前記耐熱性多孔質膜は、80〜150℃で溶融する微粒子を更に含む請求項9に記載の非水電池。
  12. 前記耐熱性多孔質膜は、80〜150℃の温度下で非水電解液を吸収して膨潤する微粒子を更に含む請求項9に記載の非水電池。
  13. 前記有機バインダは、分子内にアミド結合を有する請求項9に記載の非水電池。
  14. 正極、負極、セパレータおよび非水電解質を含む非水電池であって、
    前記セパレータが、多孔質基材と、耐熱性多孔質膜とが、一体化しており、
    前記耐熱性多孔質膜は、耐熱温度が150℃以上の微粒子と、有機バインダとを含み、
    前記微粒子の平均粒子径が、0.01〜10μmであり、
    前記耐熱性多孔質膜の全固形分中に占める前記有機バインダの割合が、7体積%以下であることを特徴とする非水電池。
  15. 前記多孔質基材が、ポリオレフィン製微多孔膜である請求項14に記載の非水電池。
  16. 前記セパレータの150℃における熱収縮率が、5%以下である請求項14に記載の非水電池。
  17. 前記微粒子が、無機酸化物微粒子である請求項14に記載の非水電池。
  18. 前記耐熱性多孔質膜は、80〜150℃で溶融する微粒子を更に含む請求項14に記載の非水電池。
  19. 前記耐熱性多孔質膜は、80〜150℃の温度下で非水電解液を吸収して膨潤する微粒子を更に含む請求項14に記載の非水電池。
  20. 前記有機バインダは、分子内にアミド結合を有する請求項14に記載の非水電池。
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