以下、本発明の好ましい実施の形態を挙げて、さらに詳しく説明する。
本発明の特徴である溶解懸濁法による粒子は、以下のようにして製造される。
先ず、結着樹脂(a)と着色剤やワックスを、該結着樹脂(a)を溶解させることができ、且つ水と非混和性の有機溶媒に溶解あるいは分散させ、結着樹脂溶解液を調製する。このとき、結着樹脂溶解液中には、必要に応じてその他の添加剤を添加することができる。次いで、前記結着樹脂溶解液を、分散安定剤を含有する水系媒体中に分散させて、結着樹脂溶解液の液滴を形成させる。そして、加熱、減圧の如き方法を用いて前記液滴中の有機溶媒を除去し、該液滴を固化させることによって所望の粒径を有する粒子を得る。
本発明において、前記液滴形成時の分散安定剤には樹脂微粒子(b’)を用いる。そして、前記樹脂微粒子(b’)は、分散安定剤としての役割を担った後、形成される粒子上に残留し、該粒子の表面を層状に覆うことになる。
本発明では、こうして得られた溶解懸濁法による粒子を芯粒子とし、その表面に樹脂微粒子(c’)による被覆層をさらに形成する。具体的には、前記芯粒子が分散した水系媒体に樹脂微粒子(c’)を添加した後、該水系媒体中への水溶性無機塩の添加や、酸やアルカリによるpH制御の如き方法によって樹脂微粒子(c’)の分散能を不安定化させ、共存する芯粒子の表面に凝集、付着させる。こうして前記溶解懸濁法による芯粒子の表面に、樹脂微粒子(c’)による被覆層を設けたカプセルトナーを製造することができる。
本発明者らは、上記芯粒子と被覆層との密着性に影響を及ぼす要因として、芯粒子が分散した水系媒体に樹脂微粒子(c’)を添加する際の、水系媒体中に残留する有機溶媒の量に着目した。
そして、上記水系媒体中の有機溶媒の濃度が特定の範囲内にあるときに、樹脂微粒子(c’)を添加することによって、密着性に優れた被覆層の形成が可能となることを見出した。その結果、得られたカプセルトナーは、長期の使用における耐久性が大幅に改善されることを見出し、本発明を完成するに至った。
上記結着樹脂溶解液を水系媒体中に分散させ、液滴を形成させた段階においては、水系媒体中の有機溶媒濃度は飽和溶解度に達している。前記液滴中の有機溶媒の除去によって芯粒子の形成が進行すると、水系媒体中の有機溶媒濃度はやがて飽和溶解度を下回り、有機溶媒濃度が5.00質量%以下となる領域では、液滴中の有機溶媒は大半が水系媒体側に移行して芯粒子の形成が概ね完了する。この状態で樹脂微粒子(c’)を添加した場合、樹脂微粒子(c’)の芯粒子への埋没や、樹脂微粒子を介しての芯粒子同士の凝集といった不具合の発生を防ぐことができる。
一方、水系媒体中の有機溶媒の濃度が0.10質量%以上である領域では、芯粒子は若干の有機溶媒を包含して柔軟性を維持した状態であると考えられ、樹脂微粒子(c’)を凝集、付着させた際に、十分な付着強度を得ることができる。
すなわち、上述した不具合を防止し、且つ安定した付着強度を得るためには、樹脂微粒子(c’)を添加する際の水系媒体中に残留する有機溶媒の濃度は、0.10質量%以上、5.00質量%以下であることが好ましい。より好ましい有機溶媒の濃度は、0.30質量%以上、3.00質量%以下である。
本発明においては、前記芯粒子の表面に樹脂微粒子(c’)を凝集、付着させて被覆層を形成する際、この芯粒子が分散した分散液を加熱処理することもできる。
トナーの耐熱保存性を向上させる目的のため、被覆層に用いる樹脂微粒子(c’)の主成分である樹脂(c)のガラス転移温度を、芯粒子の主構成材料となる結着樹脂(a)のガラス転移温度よりも高くする必要があることは言うまでもない。
一方、芯粒子の形成時に用いる樹脂微粒子(b’)は、あくまでも分散安定剤としての機能を有していれば良く、その主成分である樹脂(b)のガラス転移温度は、必ずしも結着樹脂(a)のガラス転移温度より高くする必要はない。むしろ、芯粒子が本来発現すべき低温定着性が損なわれないようにするためには、結着樹脂(a)のガラス転移温度と同等レベルであることが好ましい。
すなわち、前記樹脂(c)のガラス転移温度は、前記樹脂(b)のガラス転移温度よりも高いことが好ましく、上述した加熱処理は、前記樹脂(b)のガラス転移温度以上、前記樹脂(c)のガラス転移温度以下の温度範囲で行うことが好ましい。
加熱処理温度をこの様な範囲に調整することにより、芯粒子と被覆層との付着強度をさらに向上させることができる。また、過度の加熱による芯粒子同士の凝集を防止することができる。
本発明において、前記結着樹脂(a)のガラス転移温度をTg(a)、前記樹脂(b)のガラス転移温度をTg(b)、前記樹脂(c)のガラス転移温度をTg(c)としたとき、Tg(a)乃至Tg(c)は、以下の関係式(1)および(2)をともに満足することが特に好ましい。
この様な関係を満足することによって、芯粒子本来の低温定着性が大きく損なわれることなく、且つ十分な耐熱保存性の改善効果を得ることができる。
|Tg(b)−Tg(a)|<20 ・・・(1)
20<Tg(c)−Tg(a)<50 ・・・(2)
尚、前記結着樹脂(a)のガラス転移温度が高過ぎる場合、良好な低温定着性が得られなくなるが、低過ぎる場合には、トナーとしてのガラス転移温度が低くなってしまうことによる種々の弊害が生じる。これは、樹脂微粒子(c’)で形成される被覆層の効果を得ることが困難になるためで、具体的には、耐熱保存性の低下、定着時における被定着シートの巻きつき、高温オフセットの如き弊害である。また、定着後の画像を高温下で保存した時の安定性が低下するという不具合も生じやすい。
したがって、好適な低温定着性と耐熱保存性を得るためには、結着樹脂(a)のガラス転移温度Tg(a)は、30乃至60℃の範囲であることが好ましい。
尚、高温オフセットとは、定着時において溶融したトナーの一部が上述した熱ローラーや定着フィルムの表面に付着し、これが後続の被定着シートを汚染する現象をいう。
本発明において、前記結着樹脂溶解液による液滴の形成に使用する樹脂微粒子(b’)の量は、該結着樹脂溶解液中の固形分量に対して3.0質量部以上、15.0質量部以下であることが好ましい。また、前記芯粒子の表面に形成する被覆層に用いる樹脂微粒子(c’)の量は、該芯粒子の量に対して2.0質量部以上、10.0質量部以下であることが好ましい。樹脂微粒子(b’)と樹脂微粒子(c’)の量を上記範囲とすることにより、低温定着性と耐熱保存性との両立をより効果的に達成することができる。
本発明において、前記樹脂微粒子(b’)の水中におけるゼータ電位測定によって求められる等電点を示すpHは、前記樹脂微粒子(c’)の水中におけるゼータ電位測定によって求められる等電点を示すpHよりも低いことが好ましい。
そして、前記樹脂微粒子(c’)を前記芯粒子の表面に付着させる工程においては、これらの粒子を共存させた水系媒体のpHを、前記樹脂微粒子(b’)の等電点を示すpH以上、前記樹脂微粒子(c’)の等電点を示すpH以下の範囲になるように調整することが好ましい。
本発明に使用する樹脂微粒子(b’)および該樹脂微粒子(c’)は、少なくとも水中で自己分散性を発現し得る官能基を含有する樹脂で構成される。水中で自己分散性を発現し得る官能基とは、具体的にはカルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基の如き官能基、もしくはこれらの塩を挙げることができる。
通常、これら樹脂微粒子の水中におけるゼータ電位は、中性付近のpH領域においては負の値を示すが、pHを下げるとともに0mVに近付く傾向を示し、さらにpHを下げると、やがて正の値に転じる。そして、ゼータ電位の値が0mVを示す点のことを等電点と言う。
前記樹脂微粒子(b’)の等電点を示すpHが、前記樹脂微粒子(c’)の等電点を示すpHよりも低いということは、以下のことを意味している。すなわち、水系媒体中において、樹脂微粒子(c’)のゼータ電位が0mVとなるとき、樹脂微粒子(b’)の表面電荷は負電荷を保持しており、樹脂微粒子(b’)のゼータ電位が0mVを示すときには、樹脂微粒子(c’)の表面電荷は既に正電荷に転じている。
上述の通り、本発明における芯粒子は、分散安定剤として使用した樹脂微粒子(b’)によって表面が層状に覆われているから、該芯粒子の水中におけるゼータ電位は、実質的に樹脂微粒子(b’)のゼータ電位に等しいとみなすことができる。
つまり、芯粒子と樹脂微粒子(c’)を水系媒体中に共存させた状態で、酸を添加してpHを下げて行った場合、該樹脂微粒子(c’)が水中での分散能を消失していく過程において、芯粒子と樹脂微粒子(c’)との間に電気的な吸引力が作用することになる。
これによって樹脂微粒子(c’)同士の単独による凝集を抑制しつつ、芯粒子の表面に該樹脂微粒子(c’)を均一に付着させることができるようになり、より均質で且つ強固な被覆層を形成することが可能になる。
樹脂微粒子(c’)を芯粒子の表面により均一に付着させるためには、前記樹脂微粒子(b’)の等電点を示すpHをPH(b)、前記樹脂微粒子(c’)の等電点を示すpHをPH(c)としたとき、PH(b)およびPH(c)が以下の関係式(3)を満足することが特に好ましい。
PH(c)−PH(b)>0.3 ・・・(3)
上記関係式(3)を満足させるための手法としては、樹脂微粒子(b’)を構成する樹脂(b)に、スルホン酸基を少なくとも含有する樹脂を使用することが好適である。
スルホン酸基は高い極性を有しており、樹脂微粒子(b’)の等電点を示すpHを効果的に低くすることができる。したがって、このような樹脂微粒子(b’)を表面に配した芯粒子を用いることで、樹脂微粒子(c’)をより均一に芯粒子の表面に付着させることができる。
樹脂微粒子(b’)を構成する樹脂(b)のスルホン酸価が低過ぎると、等電点を示すpHが高くなり、樹脂微粒子(c’)を均一に付着させる効果が得られない。また、高過ぎる場合には、トナー化したときの吸湿性が増し、摩擦帯電の安定性が損なわれることがある。したがって、樹脂(b)のスルホン酸価は、5.0mgKOH/g以上、25.0mgKOH/g以下であることが好ましい。
尚、ここでいう酸価とは、樹脂(b)中のスルホン酸基の含有量を表わすもので、スルホン酸基が塩の状態である場合には、酸の状態に戻したときの値として表す。
このように、本発明の製造方法は、溶解懸濁法によって得られる粒子を芯粒子とし、その表面に樹脂微粒子による被覆層を設けたことを特徴とするものである。そして、芯粒子の表面に樹脂微粒子を付着させる工程において、前工程である結着樹脂溶解液の液滴を形成する際に使用した有機溶媒の、水系媒体中の残留濃度について規定したものである。さらに、従来は考慮されてこなかった、芯粒子(上記液滴形成の際に使用する樹脂微粒子)と、被覆層の構成材料として使用する樹脂微粒子のゼータ電位測定から求められる等電点の関係について規定したものである。
したがって、従来の溶解懸濁法によるカプセル化技術や、従来の樹脂微粒子の固着によるカプセル化技術によって得られる従来のトナーとは技術を異にするものであって、これらの技術を単に組み合わせただけでは、本発明の目的を達成することは困難である。
以上の通りであるから、本発明のトナーの製造方法によれば、優れた低温定着性と耐熱保存性とを有し、長期の使用における耐久性にも優れ、さらには摩擦帯電の安定性にも優れたトナーを実現することが可能となる。
以下に、本発明の特徴である溶解懸濁法による芯粒子について詳しく述べる。
溶解懸濁法による芯粒子の製造は、前記樹脂微粒子(b’)を分散させた水系媒体中に前記結着樹脂溶解液を分散させ、得られた液滴から有機溶媒を除去して固化することにより行う。
前記芯粒子の製造に使用する結着樹脂(a)は、ポリエステル樹脂を主成分として含有する。ここで「主成分」とは、結着樹脂(a)の総量に対し50質量%以上をポリエステル樹脂が占めることを意味する。
前記ポリエステルと樹脂しては、多価アルコール成分と多価カルボン酸成分を公知の方法で縮重合させたものを使用することができる。具体的には、以下の化合物が挙げられる。
2価のアルコール成分としては、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(3.3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(2.0)−ポリオキシエチレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(6)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンの如きビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、下記一般式(I)で示されるビスフェノール誘導体、または、下記一般式(II)で示される化合物が挙げられる。
(式中、Rはエチレンまたはプロピレン基であり、xおよびyはそれぞれ1以上の整数であり、且つx+yの平均値は2乃至10である。)
(式中、R’は−CH
2CH
2−、−CH
2CH(CH
3)−、または−CH
2−C(CH
3)
2−である。)
3価以上のアルコール成分としては、ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼンが挙げられる。
多価カルボン酸成分としては、フタル酸、イソフタル酸およびテレフタル酸の如き芳香族ジカルボン酸類またはその無水物;琥珀酸、アジピン酸、セバシン酸およびアゼライン酸の如きアルキルジカルボン酸類またはその無水物;炭素数6乃至12のアルキル基で置換された琥珀酸若しくはその無水物;フマル酸、マレイン酸およびシトラコン酸の如き不飽和ジカルボン酸類またはその無水物;n−ドデセニルコハク酸、イソドデセニルコハク酸、トリメリット酸が挙げられる。
これらの中でも、特に前記一般式(I)で示されるビスフェノール誘導体、および炭素数2乃至6のアルキルジオールをジオール成分とし、二価のカルボン酸またはその酸無水物、またはその低級アルキルエステルからなるカルボン酸成分(例えば、フマル酸、マレイン酸、マレイン酸、フタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、炭素数4乃至10のアルキルジカルボン酸、およびこれら化合物の酸無水物)を酸成分として、これらを縮重合したポリエステル樹脂が好適である。
上記ポリエステル樹脂の製造方法としては、例えば、酸化反応による合成法、カルボン酸およびその誘導体からの合成、マイケル付加反応に代表されるエステル基導入反応、カルボン酸化合物とアルコール化合物からの脱水縮合反応を利用する方法、酸ハロゲン化物とアルコール化合物からの反応、エステル交換反応が挙げられる。触媒としては、エステル化反応に使う一般の酸性またはアルカリ性触媒、例えば酢酸亜鉛やチタン化合物を用いることができる。その後、再結晶法、蒸留法の如き方法により高純度化させてもよい。
上記結着樹脂(a)は、ポリエステル樹脂の他に、例えばビニル系樹脂、ポリエステル樹脂ユニットとビニル系樹脂ユニットを有するハイブリッド樹脂、ポリエステルとビニル系樹脂との混合樹脂、エポキシ樹脂が含有されていてもよい。その場合、ポリエステル樹脂の含有量は、結着樹脂(a)の全量に対して50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましい。
上記結着樹脂(a)の分子量は、ピーク分子量が8000以下であることが好ましく、5500以下であることがより好ましい。また、分子量10万以上の割合が5.0%以下であることが好ましく、1.0%以下であることがより好ましい。さらに、分子量1000以下の割合が10.0%以下であることが好ましく、7.0%以下であることがより好ましい。
結着樹脂(a)のピーク分子量が8000以下であり、分子量10万以上の割合が5.0%以下であれば、前述した分散安定剤として用いる樹脂微粒子や、被覆層の構成材料として用いる樹脂微粒子によって定着性が著しく損なわれるのを防止することができる。また、分子量1000以下の割合が10.0%以下であれば、熱的に不安定な低分子量成分による部材の汚染を防止することができる。
上述した結着樹脂中の低分子量成分の割合を低減する手法としては、結着樹脂を溶媒に溶解させ、この樹脂溶液を水と接触させて放置し、低分子量成分のみを水側に移行させることによって除去する方法を用いることができる。
尚、分子量の調節を目的として、2種類以上の分子量を持つ樹脂を混合して使用してもよい。
本発明における芯粒子には、公知の着色剤を使用することができ、黒色着色剤としてのカーボンブラック、磁性粉体、また、以下に示すイエロー/マゼンタ/シアン着色剤が挙げられる。
イエロー着色剤としては、以下のものが挙げられる。縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アンスラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、アリルアミド化合物。具体的には、C.I.ピグメントイエロー12、13、14、15、17、62、74、83、93、94、95、109、110、111、128、129、147、168、180が好適に用いられる。
マゼンタ着色剤としては、以下のものが挙げられる。縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アンスラキノン、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物。具体的には、C.I.ピグメントレッド2、3、5、6、7、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、122、144、146、166、169、177、184、185、202、206、220、221、254が好適に用いられる。
シアン着色剤としては、以下のものが挙げられる。銅フタロシアニン化合物およびその誘導体、アンスラキノン化合物、塩基染料レーキ化合物。具体的には、C.I.ピグメントブルー1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、66が好適に用いられる。
これらの着色剤は単独または混合し、さらには固溶体の状態で用いることができる。黒色着色剤として磁性粉体を用いる場合、その添加量は芯粒子中の結着樹脂100質量部に対して40乃至150質量部であることが好ましい。黒色着色剤としてカーボンブラックを用いる場合、その添加量は芯粒子中の結着樹脂100質量部に対して1乃至20質量部であることが好ましい。また、カラートナーの場合、色相角、彩度、明度、耐候性、OHP透明性、トナー中への分散性の点から選択され、その好ましい添加量は、芯粒子中の結着樹脂100質量部に対して1乃至20質量部である。
これらの着色剤は水相移行性にも注意を払う必要があり、必要に応じて疎水化処理の如き表面改質を施すことが好ましい。例えば、染料系の着色剤を表面処理する好ましい方法としては、予め染料の存在下に重合性単量体を重合させる方法が挙げられる。カーボンブラックについては、上記染料と同様の処理の他に、カーボンブラックの表面官能基と反応する物質、例えば、ポリオルガノシロキサンでグラフト処理を行ってもよい。
また、磁性粉体は、四三酸化鉄、γ−酸化鉄の如き酸化鉄を主成分とするものであり、一般に親水性を有している。そのため、分散媒としての水との相互作用によって磁性粉体が粒子表面に偏在しやすく、得られるトナー粒子は表面に露出した磁性粉体のために流動性および摩擦帯電の均一性に劣るものとなる。したがって、磁性粉体はカップリング剤によって表面を均一に疎水化処理することが好ましい。使用できるカップリング剤としては、シランカップリング剤、チタンカップリング剤が挙げられ、特にシランカップリング剤が好適に用いられる。
本発明における芯粒子には、定着性向上のためにワックスを内包させることが好ましい。使用可能なワックスとしては、以下のものが挙げられる。
パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタムの如き石油系ワックスおよびその誘導体;モンタンワックスおよびその誘導体;フィッシャートロプシュ法による炭化水素ワックスおよびその誘導体;ポリエチレンに代表されるポリオレフィンワックスおよびその誘導体;カルナバワックス、キャンデリラワックスの如き天然ワックスおよびその誘導体。誘導体には、酸化物やビニル系モノマーとのブロック共重合物、グラフト変性物が含まれる。さらに、高級脂肪族アルコール、ステアリン酸、パルミチン酸の如き脂肪酸、あるいはその化合物、酸アミドワックス、エステルワックス、ケトン、硬化ヒマシ油およびその誘導体、植物系ワックス、動物性ワックスも使用できる。これらのワックスは単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
これらのワックスの中でも、示差走差熱量計により測定されるDSC曲線において昇温時に温度40乃至130℃の領域に最大吸熱ピークを有するものが好ましく、さらには温度45乃至120℃の領域に有するものがより好ましい。このようなワックスを用いることにより、低温定着性に大きく寄与しつつ、離型性をも効果的に発現することができる。最大吸熱ピークが40℃未満であるとワックス成分の自己凝集力が弱くなり、結果として耐高温オフセット性が低下する。また、定着時以外でのワックスの染み出しが生じやすくなり、トナーの摩擦帯電量が低下するとともに、高温高湿下での耐久性が低下する。一方、最大吸熱ピークが130℃を超えると定着温度が高くなり、低温オフセットが発生しやすくなるため好ましくない。さらに、最大吸熱ピーク温度が高過ぎると造粒中にワックス成分が析出するという不具合を生じ、ワックスの分散性が低下するため好ましくない。
ワックスの含有量は、結着樹脂100質量部に対し1乃至30質量部であることが好ましく、3乃至20質量部であることがより好ましい。ワックスの含有量が1質量部未満では、十分な添加効果が得られず、オフセット抑制効果も低下する。一方、30質量部を超えると、長期間の保存性が低下するとともに、着色剤やその他のトナー材料の分散性が悪くなり、トナーの流動性の低下や画像特性の低下を招きやすい。また、定着時以外にもワックス成分の染み出しが生じるようになり、高温高湿下での耐久性が低下する。
本発明における芯粒子には、結晶性ポリエステルを含有させてもよい。結晶性ポリエステルとしては、脂肪族ジオールを主成分にしたアルコール成分と脂肪族ジカルボン酸化合物を主成分としたカルボン酸成分を縮重合させて得られる樹脂が用いられる。
脂肪族ジオールとしては、以下のものが挙げられる。エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール。これらの中でも、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールが好ましい。
また、脂肪族ジオール以外の多価アルコール成分が含有されていてもよく、以下のものが挙げられる。ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス (4−ヒドロキシフェニル) プロパン、ポリオキシエチレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンの如きビスフェノールAのアルキレン(炭素数2乃至3)オキサイド(平均付加モル数1乃至10)付加物;グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパンの如き3価以上の多価アルコール。
脂肪族ジカルボン酸化合物としては、以下のものが挙げられる。シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、n−ドデシルコハク酸、n−ドデセニルコハク酸;およびこれらの酸無水物、アルキル(炭素数1乃至3)エステル。これらの中でも、フマル酸およびアジピン酸が好ましい。
また、脂肪族ジカルボン酸化合物以外の多価カルボン酸成分が含有されていてもよく、以下のものが挙げられる。フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸の如き芳香族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸の如き脂環式ジカルボン酸;トリメリット酸、ピロメリット酸の如き3価以上の多価カルボン酸;およびこれらの酸無水物、アルキル(炭素数1乃至3)エステル。
本発明における芯粒子において、前記結着樹脂溶解液の液滴の形成に使用する樹脂微粒子(b’)の構成材料である樹脂(b)としては、以下のものが挙げられる。ビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ケイ素系樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、アニリン樹脂、アイオノマー樹脂、ポリカーボネート樹脂。これらの樹脂は単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
前記樹脂(b)は、樹脂微粒子の水性分散体を形成し得るものである必要があり、これらの樹脂の中でも、ビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂が好ましい。
また、有機溶媒に対する耐久性を有しながら、適度な親和性も必要であることから、ポリウレタン樹脂が特に好ましい。以下に、ポリウレタン樹脂について詳しく述べる。
本発明における芯粒子に使用するポリウレタン樹脂は、ジオール成分とジイソシアネート成分との反応物である樹脂を含む樹脂であり、これら成分の種類や配合比の調整により、各種機能を有する樹脂を得ることができる。
ジイソシネート成分としては、以下のものが挙げられる。炭素数(NCO基中の炭素を除く、以下同様)6乃至20の芳香族ジイソシアネート、炭素数2乃至18の脂肪族ジイソシアネート、炭素数4乃至15の脂環式ジイソシアネート、炭素数8乃至15の芳香族炭化水素ジイソシアネート、およびこれらジイソシアネートの変性物(ウレタン基、カルボジイミド基、アロファネート基、ウレア基、ビューレット基、ウレトジオン基、ウレトイミン基、イソシアヌレート基、オキサゾリドン基含有変性物。以下、変性ジイソシアネートともいう)、並びにこれらの2種以上の混合物。
上記芳香族ジイソシアネートとしては、以下のものが挙げられる。1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート。
また、上記脂肪族ジイソシアネートとしては、以下のものが挙げられる。エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエート、ビス(2−イソシアナトエチル)フマレート、ビス(2−イソシアナトエチル)カーボネート、2−イソシアナトエチル−2,6−ジイソシアナトヘキサノエート。
また、上記脂環式ジイソシアネートとしては、以下のものが挙げられる。イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート(水添MDI)、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート(水添TDI)、ビス(2−イソシアナトエチル)−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボキシレート、2,5−ノルボルナンジイソシアネート、2,6−ノルボルナンジイソシアネート。
これらの中で好ましいものは6乃至15の芳香族ジイソシアネート、炭素数4乃至12の脂肪族ジイソシアネート、および炭素数4乃至15の脂環式ジイソシアネートであり、特に好ましいものはヘキサメチレンジイソシアネートおよびイソホロンジイソシアネートである。
また、上記ジイソシアネート成分に加えて、3官能以上のイソシアネート化合物を用いることもできる。3官能以上のイソシアネート化合物としては、以下のものが挙げられる。ポリアリルポリイソシアネート、4,4’,4”−トリフェニルメタントリイソシアネート、m−イソシアナトフェニルスルホニルイソシアネート、p−イソシアナトフェニルスルホニルイソシアネート。
ジオール成分としては、以下のものが挙げられる。エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、オクタンジオール、デカンジオール、ドデカンジオール、テトラデカンジオール、ネオペンチルグリコール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオールの如きアルキレングリコール;ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールの如きアルキレンエーテルグリコール;1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールAの如き脂環式ジオール;ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSの如きビスフェノール類;上記脂環式ジオールのアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド)付加物;上記ビスフェノール類のアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド)付加物; ポリε−カプロラクトンジオール、ポリブタジエンジオール。
これらの中で、アルキル構造を有するものが、有機溶剤への溶解性の点で好ましく、炭素数2乃至12のアルキレングリコールを用いることが特に好ましい。
また、上記ジオール成分に加えて、末端が水酸基であるポリエステルオリゴマー(末端ジオールポリエステルオリゴマー)も好適なジオール成分として用いることができる。
このとき、末端ジオールポリエステルオリゴマーの分子量が大き過ぎると、イソシアネート化合物との反応性が低下し、ポリエステルの性質が強くなりすぎて有機溶媒に可溶となってしまう。そのため、末端ジオールポリエステルオリゴマーの分子量(数平均分子量)は、3000以下であることが好ましく、より好ましくは800以上、2000以下である。
また、上記末端ジオールポリエステルオリゴマーの含有量が多すぎると、ジオール成分とジイソシアネート成分との反応物が有機溶媒に可溶となってしまうことがあり、少なすぎる場合には、ジオール成分とジイソシアネート成分との反応物が熱的に固くなって、定着性を阻害することがある。そのため、末端ジオールポリエステルオリゴマーの含有量は、ジオール成分とジイソシアネート成分との反応物を構成するモノマー中において、1モル%以上、10モル%以下であることが好ましく、より好ましくは3モル%以上、6モル%以下である。
また、上記末端ジオールポリエステルオリゴマーは、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドで変性された、エーテル結合を有していてもよい。
上記ポリウレタン樹脂は、アミノ化合物とイソシアネート化合物との反応によるウレア結合を併用して含有させることもできる。
上記アミノ化合物としては、以下のものが挙げられる。ジアミノエタン、ジアミノプロパン、ジアミノブタン、ジアミノヘキサン、ピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン、アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン(イソホロンジアミン)、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、アミノエチルエタノールアミン、ヒドラジン、ヒドラジン水和物の如きジアミン;トリエチルアミン、ジエチレントリアミン、1,8−ジアミノ−4−アミノメチルオクタンの如きトリアミン。
また、上記ポリウレタン樹脂は、上記以外にも、イソシアネート化合物とカルボン酸基、シアノ基、チオール基の如き反応性の高い水素が存在する基を有する化合物との反応物も併用して用いることができる。
さらに、上記ポリウレタン樹脂は、側鎖にカルボン酸基、スルホン酸基、カルボン酸塩基、スルホン酸塩基を有していることが、水性分散体を形成しやすく、また、有機溶剤に対する安定が向上する点で好ましい。
側鎖にカルボン酸基、スルホン酸基、カルボン酸塩基、スルホン酸塩基を導入する手法としては、これらの基を側鎖に有するジオール成分を用いればよい。
側鎖にカルボン酸基、またはカルボン酸塩基を有するジオール成分としては、以下のものが挙げられる。ジメチロール酢酸、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、ジメチロール酪酸、ジメチロールペンタン酸の如きジヒドロキシルカルボン酸類およびその金属塩。
一方、側鎖にスルホン酸基、またはスルホン酸塩基を有するジオール成分としては、以下のものが挙げられる。スルホイソフタル酸、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸およびその金属塩。
そして、側鎖にこれらの基を有するジオール成分の含有量が少ない場合、樹脂微粒子の水性分散体としたときの分散性が低下し、造粒性が損なわれる場合がある。一方、多すぎる場合には、ジオール成分とジイソシアネート成分との反応物が水系媒体中に溶解し易くなり、分散剤としての機能を果たせなくなる場合がある。したがって、側鎖にこれらの基を有するジオール成分の含有量は、ジオール成分とジイソシアネート成分との反応物を形成する全モノマーに対して10モル%以上、50モル%以下であることが好ましく、20モル%以上、30モル%以下であることがより好ましい。
上記樹脂(b)を主成分とする樹脂微粒子(b’)を製造する方法は、特に限定されるものではなく、乳化重合法や、ソープフリー乳化重合法、転相乳化法、樹脂を溶融もしくは有機溶媒に溶解して液状化し、これを水系媒体中で懸濁させて造粒する方法を用いることができる。これらの製法の中でも、転相乳化法は、乳化剤や分散安定剤を必要とせず、より小粒径の樹脂微粒子が容易に得られるため、特に好適である。
転相乳化法では、自己乳化性を有する樹脂、あるいは中和によって自己乳化性を発現し得る樹脂を使用する。ここで、自己乳化性を有する樹脂とは、水系媒体中で自己分散が可能な官能基を分子内に含有する樹脂であって、具体的にはカルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基もしくはこれらの塩を含有する樹脂である。また、中和によって自己乳化性を発現し得る樹脂とは、中和によって親水性が増大し、水系媒体中での自己分散が可能となり得る官能基を、分子内に含有する樹脂である。
これらの自己乳化型の樹脂を有機溶媒に溶解し、必要に応じて中和剤を加え、撹拌しながら水系媒体と混合すると、前記樹脂の溶解液が転相乳化を起こして微小な粒子を生成する。前記有機溶媒は、転相乳化後に加熱、減圧の如き方法を用いて除去する。
このように、転相乳化法によれば、前記官能基の作用によって実質的に乳化剤や分散安定剤を用いることなく、安定した樹脂微粒子の水性分散体を得ることができる。こうして得られた樹脂微粒子は、そのまま水性分散体として前記結着樹脂溶解液の液滴の形成に使用してもよい。また、前記水性分散体に酸を添加して樹脂中の酸性基を塩の状態から酸の状態に戻し、ろ過および洗浄を行った後、水に再分散させて使用してもよい。
また、前記有機溶媒は、前記樹脂(b)を溶解するものであれば特に限定されるものではなく、以下のものが挙げられる。キシレン、ヘキサンの如き炭化水素系溶媒;塩化メチレン、クロロホルム、ジクロルエタンの如きハロゲン化炭化水素系溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピルの如きエステル系溶媒;ジエチルエーテルの如きエーテル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサンの如きケトン系溶媒;メタノール、エタノール、ブタノールの如きアルコール系溶媒。これらの中でも、脱溶剤が容易な低沸点の有機溶媒を使用することがより好ましい。
上記樹脂微粒子(b’)の粒径が小さ過ぎる場合、前記結着樹脂溶解液の液滴を形成する際の造粒安定性が低下する傾向にある。大き過ぎる場合は、形成される芯粒子の粒径を所望の大きさに制御することが困難になる。したがって、樹脂微粒子(b’)の粒径は、数平均粒子径で30nm以上、300nm以下であることが好ましい。より好ましくは、50nm以上、100nm以下である。
上記結着樹脂溶解液の調製方法について、特に好ましい一例を詳細に説明する。
結着樹脂(a)を溶解させることができ、且つ水と非混和性を示す有機溶媒としては、以下のものが例示できる。キシレン、ヘキサンの如き炭化水素系溶媒;塩化メチレン、クロロホルム、ジクロルエタンの如きハロゲン化炭化水素系溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピルの如きエステル系溶媒;ジエチルエーテルの如きエーテル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサンの如きケトン系溶媒。
上記結着樹脂(a)は、予め上記有機溶媒に溶解させた溶液の形で用いることが好ましい。この場合、樹脂の溶解性や溶解液の粘度によって異なるが、次工程での製造のしやすさを考慮して、樹脂成分として40乃至60質量%の範囲で配合することが好ましい。また、溶解時に有機溶媒の沸点以下で加熱してもよい。
上記ワックスについては、上記有機溶媒中に分散させた形態をとることが好ましい。すなわち、予め湿式もしくは乾式で機械的に粉砕されたワックスを有機溶媒中に分散し、ワックス分散液として用いることが好ましい。このとき、ワックス分散液に分散剤を添加することによって、ワックスの分散性をさらに向上させることができる。
上記着色剤についても同様に、上記有機溶媒中に分散させた着色剤分散液として用いることが好ましい。着色剤の分散性を上げるためには、上記結着樹脂(a)とともに分散して用いることが特に好ましい。以下に、着色剤分散液の調製方法について、例を挙げて説明する。
(1)湿式分散(メディア分散)
着色剤、結着樹脂(a)、その他添加剤と上記有機溶媒を混合し、この混合物を分散用メディアの存在下で分散機を用いて分散した後、分散用メディアを回収し、着色剤分散液を得る方法である。上記分散機としては、例えば、アトライター(三井三池工機(株)製)を使用する。上記分散用メディアとしては、例えば、アルミナ、ジルコニア、ガラス、鉄のビーズが挙げられるが、メディア汚染が極めて少ないジルコニアビーズが好ましい。ビーズ径は、2乃至5mmが良好な分散性を示す点で好ましい。
(2)乾式混練
着色剤、結着樹脂(a)、その他添加剤を、ニーダーやロール式の分散器で溶融混練し(乾式)、得られた溶融混練物を粉砕した後、上記有機溶媒に溶解させる方法である。
これらの方法によって着色剤分散液を調製した後、超音波による分散処理を行うと、分散液中の着色剤の凝集隗がほぐれ、さらなる微分散が可能である。
結着樹脂溶解液は、これら樹脂溶解液、ワックス分散液、着色剤分散液を上記有機溶媒中に所望量配合し、分散させることで調製することができる。
次に、上記水系媒体の調製方法について、特に好ましい一例を詳細に説明する。
水系媒体は、水単独でもよいが、水と混和可能な溶剤を併用することもできる。混和可能な溶剤としては、以下のものが挙げられる。メタノール、イソプロパノール、エチレングリコールの如きアルコール類;アセトン、メチルエチルケトンの如き低級ケトン類;ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、メチルセルソルブ。特に、上記結着樹脂溶解液に用いる有機溶媒を適量混ぜておくと、造粒中の液滴の安定性を高めることができ好ましい。
本発明においては、上記水系媒体に所定量の樹脂微粒子(b’)の水性分散体を加え、該樹脂微粒子(b’)を分散させる。樹脂微粒子(b’)の配合量は、液滴形成のために使用する上記結着樹脂溶解液中に含まれる固形分量に対して3.0質量部以上、15.0質量部以下であることが好ましく、液滴の安定性や所望する芯粒子の粒径に合わせて適宜調整すればよい。
また、上記水系媒体中には、公知の界面活性剤、分散剤、水溶性ポリマー、または粘度調整剤を添加することもできる。
上記界面活性剤としては、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤が挙げられる。これらは、芯粒子形成の際の極性に併せて任意に選択することができ、以下のものが挙げられる。アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、リン酸エステルの如きアニオン界面活性剤;アルキルアミン塩、アミノアルコール脂肪酸誘導体、ポリアミン脂肪酸誘導体、イミダゾリンの如きアミン塩型のカチオン界面活性剤;アルキルトリメチルアンモニム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、ピリジニウム塩、アルキルイソキノリニウム塩、塩化ベンゼトニウムの如き四級アンモニウム塩型のカチオン界面活性剤;脂肪酸アミド誘導体、多価アルコール誘導体の如き非イオン界面活性剤;アラニン、ドデシルジ(アミノエチル)グリシン、ジ(オクチルアミノエチル)グリシン、N−アルキル−N,N−ジメチルアンモニウムべタインの如き両性界面活性剤。
上記分散剤としては、以下のものが挙げられる。アクリル酸、メタクリル酸、α−シアノアクリル酸、α−シアノメタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸の如き酸類;アクリル酸β−ヒドロキシエチル、メタクリル酸β−ヒドロキシエチル、アクリル酸β−ヒドロキシプロビル、メタクリル酸β−ヒドロキシプロピル、アクリル酸γ−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸γ−ヒドロキシプロピル、アクリル酸3−クロロ2−ヒドロキシプロビル、メタクリル酸3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル、ジエチレングリコールモノアクリル酸エステル、ジエチレングリコールモノメタクリル酸エステル、グリセリンモノアクリル酸エステル、グリセリンモノメタクリル酸エステル、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミドの如き水酸基を含有する(メタ)アクリル系単量体;ビニルアルコール、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルプロピルエーテルの如きビニルアルコールとのエ一テル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニルの如きビニルアルコールとカルボン酸基を含有する化合物のエステル類;アクリルアミド、メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド或いはこれらのメチロール化合物;アクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライドの如き酸クロライド類;ビニルピリジン、ビニルピロリドン、ビニルイミダゾール、エチレンイミンの如き窒素原子、またはその複素環を有する化合物のホモポリマーまたは共重合体;ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシプロピレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシプロピレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルフェニルエステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエステルの如きポリオキシエチレン類;メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースの如きセルロース類。
芯粒子の調製は、こうして得られた樹脂微粒子(b’)を分散させた水系媒体中に、上記結着樹脂溶解液を分散させて行う。このとき分散方法には特に制約はなく、低速剪断方式、高速剪断方式、摩擦方式、高圧ジェット方式、超音波方式の如き方式を用いることができるが、形成される液滴の粒径を3乃至10μm程度にするためには、高速剪断方式が好ましい。
例えば、以下の汎用装置を使用することができる。ウルトラタラックス(IKA社製)、ポリトロン(キネマティカ社製)、TKオートホモミキサー(特殊機化工業(株)製)、エバラマイルダー(荏原製作所(株)製)、TKホモミックラインフロー(特殊機化工業(株)製)、コロイドミル(神鋼パンテック社製)、スラッシャー、トリゴナル湿式微粉砕機(三井三池化工機(株)製)、キャビトロン(ユーロテック社製)、ファインフローミル(太平洋機工(株)製)の如き連続式乳化機、クレアミックス(エムテクニック社製)、フィルミックス(特殊機化工業(株)製)の如きバッチ式もしくは連続両用乳化機。
高速剪断式分散機を用いて分散を行う場合、回転数は特に限定されないが、通常1000乃至30000rpm、好ましくは3000乃至20000rpmである。
また、分散に要する時間としては、バッチ方式であれば通常0.1乃至5分である。分散時の温度は、通常0乃至150℃(加圧下)、好ましくは10乃至100℃である。
芯粒子を形成するためには、得られた液滴から有機溶媒を除去して固化する必要がある。有機溶媒を除去する方法としては、系全体を徐々に加熱あるいは減圧し、水系媒体を介して留去する方法を採用することができる。
以下に、本発明の特徴である樹脂微粒子による被覆層について詳しく述べる。
上記芯粒子の表面に被覆層の形成するための樹脂微粒子(c’)は特に制限はなく、結着樹脂溶解液の液滴の形成に使用することのできる樹脂微粒子(b’)と同様のものを使用することができる。
芯粒子の表面に樹脂微粒子(c’)を付着させる場合、通常、芯粒子を分散させた水系媒体中に、樹脂微粒子(c’)の水性分散体を混合して行う。芯粒子と樹脂微粒子(c’)の極性が大きく異なる場合は、単に混合するだけでも電気的な吸引力によって付着させることができるが、そうでない場合には、外的な手段を用いて樹脂微粒子(c’)の分散状態を制御する必要がある。具体的な方法としては、上述した水系媒体中に水溶性無機塩を添加する方法や、酸やアルカリを滴下してpHを調整する方法が挙げられる。
本発明において、樹脂微粒子(c’)を付着させる方法としては、上記樹脂微粒子(b’)と樹脂微粒子(c’)の、水中におけるゼータ電位測定によって求められる等電点の差を利用する方法が特に好ましい。
具体的には、以下の手順にしたがって行う。まず、樹脂微粒子(c’)には、ゼータ電位測定によって求められる等電点を示すpHが、樹脂微粒子(b’)よりも高いものを使用する。そして、樹脂微粒子(b’)が表面に付着した上記芯粒子を分散させた水系媒体中に、樹脂微粒子(c’)の水性分散体を混合した後、酸を滴下して、水系媒体のpHが樹脂微粒子(b’)の等電点を示すpH以上、樹脂微粒子(c’)の等電点を示すpH以下の範囲になるように調整する。ここで、前記樹脂微粒子(b’)と樹脂微粒子(c’)の等電点を示すpHの差は、0.3よりも大きいことが好ましい。
このような方法を用いることで、樹脂微粒子(c’)をより均一に付着させることができる。
いずれの場合も、樹脂微粒子(c’)の分散能を不安定化させ、共存する芯粒子の表面に凝集させるものであるが、上記分散能を急激に変化させると、樹脂微粒子(c’)同士が単独凝集を起こして不均一な付着状態となるため、これらの操作は徐々に行う必要がある。
本発明においては、上述した芯粒子を分散させた水系媒体中への、樹脂微粒子(c’)を含む水性分散体の混合を、水系媒体中に溶解している有機溶媒が完全に除去される前に行う。こうすることで、芯粒子の表面に樹脂微粒子(c’)を付着させた際の付着強度を向上させることができ、密着性に優れた被覆層を形成することが可能になる。
水系媒体中に残留する有機溶媒の好適な濃度は、0.1質量%以上、5.00質量%以下、より好ましくは、0.30質量%以上、3.00質量%以下である。
また、上述した水系媒体中に多量の界面活性剤の添加を行った場合、樹脂微粒子(c’)の分散安定性が高くなり過ぎるために、芯粒子表面への樹脂微粒子(c’)の付着状態の均一性が損なわれることがある。したがって、本発明においては、上述の方法によって得られた芯粒子を分散させた水系媒体の一部または全部を一旦ろ過し、水に再分散させた後、樹脂微粒子(c’)の水性分散体を混合してもよい。
また、こうして水系媒体のろ過および再分散を行った結果、水系媒体中の有機溶媒の濃度が0.10質量%未満になる場合には、有機溶媒を別途添加して所望の濃度に調整してから樹脂微粒子(c’)の水性分散体を混合してもよい。
また、樹脂微粒子(c’)を付着させた後は、容易に剥離・脱落を起こさないよう、固着または融着を行うことが好ましい。具体的な方法としては、水系媒体中に分散させた状態のままで加熱処理する方法や、樹脂微粒子(c’)を溶解あるいは膨潤する溶剤を加えて吸収させ、皮膜化した後に溶剤を除去する方法、ろ過および乾燥を行って取り出した粉体を、加熱下で撹拌混合処理する方法が挙げられる。これらの方法の中でも、水系媒体中で加熱処理する方法は、より均一で且つ強固に固着できる点、および操作が簡便である点で好ましい。
好適な加熱処理温度は、前記樹脂(b)のガラス転移温度以上、前記樹脂(c)のガラス転移温度以下の範囲であるが、樹脂微粒子(c’)が芯粒子に対して十分に高いガラス転移温度を有していない場合は、芯粒子同士までもが融着を起こすことがあるため、注意が必要である。
また、付着させる樹脂微粒子(c’)の量が少ない場合も、芯粒子同士の融着に注意が必要である。前記芯粒子の表面に形成する被覆層に用いる樹脂微粒子(c’)の量は、該芯粒子の量に対して2.0質量部以上、10.0質量部以下であることが好ましい。
本発明において、樹脂微粒子(c’)によって形成される被覆層は、芯粒子の表面を90%以上被覆していることが好ましく、100%被覆していることが特に好ましい。このような被覆率を満足するための前記樹脂微粒子の好適な使用量は一義的に決まるものではなく、前記芯粒子と前記樹脂微粒子(c’)それぞれの粒子径に応じて適宜調整すればよい。また、固着させる樹脂微粒子は必ずしも一層である必要はなく、100%被覆させるためには多層であってもよい。
以上のようにして、薄層でありながら、均質で且つ機械的強度にも優れた被覆層を有するカプセル構造のトナーを得ることができる。
尚、被覆率は、個々のトナー断面の透過電子顕微鏡(TEM)による観察像から直接的に求めることもできるが、樹脂微粒子を構成する樹脂に固有の元素(例えば、スルホン酸基に由来するS元素)を含有する場合には、例えば蛍光X線分析装置(XRF)を用いてトナー中に含まれる該元素の定量分析を行い、計算によって求めることもできる。
本発明のトナーは、荷電特性の安定化を目的として、必要に応じて荷電制御剤を含有させることができる。含有させる方法としては、トナー粒子の内部に添加する方法と外添する方法がある。また、トナー粒子の内部に添加する場合、荷電制御剤は芯粒子に含まれていてもよく、被覆層に含まれていてもよい。
荷電制御剤としては公知のものを利用することができるが、内部に添加する場合には、水系媒体への可溶物を実質的に含まない荷電制御剤が特に好ましい。具体的な化合物としては、ネガ系荷電制御剤として、以下のものが挙げられる。サリチル酸、アルキルサリチル酸、ジアルキルサリチル酸、ナフトエ酸、ダイカルボン酸の如き芳香族カルボン酸の金属化合物;アゾ染料あるいはアゾ顔料の金属塩または金属錯体;スルホン酸またはカルボン酸基を側鎖に持つ高分子型化合物;ホウ素化合物、尿素化合物、ケイ素化合物、カリックスアレーン。
これらの荷電制御剤の使用量としては、結着樹脂の種類、他の添加剤の有無、分散方法を含めたトナー製造方法によって決定されるもので、一義的に限定されるものではない。内部添加する場合は、好ましくは結着樹脂100質量部に対して0.1乃至10質量部、より好ましくは0.1乃至5質量部の範囲で用いられる。また、外部添加する場合は、好ましくはトナー100質量部に対して0.005乃至1.0質量部、より好ましくは0.01乃至0.3質量部である。
本発明によって得られるトナーの重量平均粒径は、より微小な静電潜像のドットを忠実に現像し、高画質な画像を得るため、3.0乃至10.0μmであることが好ましい。重量平均粒径が3.0μm未満になると、転写効率の低下から感光体上の転写残トナーが多くなり、接触帯電工程における感光体の削れやトナー融着の抑制が難しくなる。また、トナー全体の表面積が増大することに加え、粉体としての流動性および撹拌性が低下し、個々のトナー粒子を均一に摩擦帯電させることが困難となることから、ゴースト、カブリ、転写性が低下する傾向となり好ましくない。一方、重量平均粒径が10.0μmを超えると、文字やライン画像に飛び散りが生じやすく、高解像度が得られにくくなる。また、装置が高解像度になっていくと、1ドットの再現性が悪化する傾向になる。
また、本発明によって得られるトナーの平均円形度は、0.970以上であることが好ましい。平均円形度とは、トナー粒子の凹凸度合いを表す指標であり、トナーが完全な球形の場合1.000を示し、形状が複雑になるほど小さな値となる。すなわち、平均円形度が0.970以上であるということは、トナー形状が実質的に球形であることを意味している。このような形状を有するトナーは、摩擦帯電が均一になりやすく、カブリやスリーブゴーストの抑制に効果的である。また、トナー担持体上に形成されるトナーの穂が均一であるため、現像部での制御が容易となる。さらに、球形であるが故に流動性も良好であり、現像器内でのストレスを受けにくいため、高湿度下での長期の使用においても帯電性が低下しにくい。そして、定着時においても熱や圧力がトナー全体に均一にかかりやすいため、定着性の向上にも寄与する。
そして、本発明のトナーには、流動性向上剤が外部添加されていることが、画質向上のために好ましい。
流動性向上剤としては、以下の無機微粉体が好適に用いられる。シリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ベンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素。これら無機微粉体は、単独もしくは複数種を併用しても何ら構わない。
無機微粉体の一次粒子径は、5nm以上、2μm以下であることが好ましく、5nm以上、500nm以下であることがより好ましい。また、無機微粒子のBET法による比表面積は、20m2/g以上、500m2/g以下であることが好ましい。
上記無機微粉体の使用量は、トナー粒子100質量部に対して、0.01質量部以上、5質量部以下であることが好ましく、0.01質量部以上、2.0質量部以下であることがより好ましい。
また、上記無機微粉体は、高湿度下のトナーの流動特性や帯電特性の悪化を防止するために、表面処理剤を用いて疎水化処理されていることが好ましい。好ましい表面処理剤としては、シランカップリング剤、シリル化剤、フッ化アルキル基を有するシランカップリング剤、有機チタネート系カップリング剤、アルミニウム系のカップリング剤、シリコーンオイル、変性シリコーンオイルが例示できる。
本発明のトナーは、そのまま一成分系現像剤として、あるいは磁性キャリアと混合して二成分系現像剤として使用することができる。二成分系現像剤として用いる場合、混合するキャリアの平均粒径は10乃至100μmであることが好ましく、現像剤中のトナー濃度は2乃至15質量%であることが好ましい。
ここで、本発明におけるトナーの、各種物性の測定方法について説明する。
<平均粒径の測定>
トナーの重量平均粒径(D4)および数平均粒径(D1)は、100μmのアパーチャーチューブを備えた細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置「コールター・カウンター Multisizer 3」(登録商標、ベックマン・コールター社製)と、測定条件設定及び測定データ解析をするための付属の専用ソフト「ベックマン・コールター Multisizer 3 Version3.51」(ベックマン・コールター社製)を用いて、実効測定チャンネル数2万5千チャンネルで測定し、測定データの解析を行い、算出した。
測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムをイオン交換水に溶解して濃度が約1質量%となるようにしたもの、例えば、「ISOTON II」(ベックマン・コールター社製)が使用できる。
尚、測定、解析を行う前に、以下のように専用ソフトの設定を行った。
専用ソフトの「標準測定方法(SOM)を変更画面」において、コントロールモードの総カウント数を50000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(ベックマン・コールター社製)を用いて得られた値を設定した。閾値/ノイズレベルの測定ボタンを押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定した。また、カレントを1600μAに、ゲインを2に、電解液をISOTON IIに設定し、測定後のアパーチャーチューブのフラッシュにチェックを入れた。
専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定画面」において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を2μmから60μmまでに設定した。
具体的な測定法は以下の通りである。
(1)Multisizer 3専用のガラス製250ml丸底ビーカーに前記電解水溶液約200mlを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行った。そして、解析ソフトの「アパーチャーのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡を除去しておく。
(2)ガラス製の100ml平底ビーカーに前記電解水溶液約30mlを入れ、この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で3質量倍に希釈した希釈液を約0.3ml加えた。
(3)発振周波数50kHzの発振器2個を、位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispension System Tetora150」(日科機バイオス社製)の水槽内に所定量のイオン交換水を入れ、この水槽中に前記コンタミノンNを約2ml添加した。
(4)前記(2)のビーカーを前記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の、電解水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整した。
(5)前記(4)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナー約10mgを少量ずつ前記電解水溶液に添加し、分散させた。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続した。尚、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節した。
(6)サンプルスタンド内に設置した前記(1)の丸底ビーカーに、ピペットを用いてトナーを分散した前記(5)の電解質水溶液を滴下し、測定濃度が約5%となるように調整した。そして、測定粒子数が50000個になるまで測定を行った。
(7)測定データを装置付属の前記専用ソフトにて解析を行い、重量平均粒径(D4)および数平均粒径(D1)を算出した。尚、専用ソフトでグラフ/体積%と設定したときの、分析/体積統計値(算術平均)画面の「平均径」が重量平均粒径(D4)であり、専用ソフトでグラフ/個数%と設定したときの、分析/個数統計値(算術平均)画面の「平均径」が数平均粒径(D1)である。
<平均円形度の測定>
トナーの平均円形度は、シスメックス社製のフロー式粒子像分析装置(FPIA−3000型)を用いて測定を行った。
具体的な測定方法としては、イオン交換水20mlに分散剤として界面活性剤、好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸塩を適量加えた後、測定試料0.02gを加える。そして、発振周波数50kHz、電気的出力150Wの卓上型の超音波洗浄器分散機(例えば、ヴェルヴォクリーア社製のVS−150)を用いて2分間分散処理を行い、測定用の分散液とする。その際、分散液の温度が10℃以上40℃以下となる様に適宜冷却する。
測定には、標準対物レンズ(10倍)を搭載した前記フロー式粒子像測定装置を用い、シース液にはシスメックス社製のパーティクルシース(PSE−900A)を使用する。前記手順に従って調整した分散液を前記フロー式粒子像測定装置に導入し、トータルカウントモードで3000個のトナー粒子を計測して、解析粒子径を円相当径3.00μm以上200.00μm以下に限定し、トナー粒子の平均円形度を求める。
測定にあたっては、測定開始前に標準ラテックス粒子(例えば、Duke Scientific社製5200Aをイオン交換水で希釈したもの)を用いて自動焦点調整を行う。その後、測定開始から2時間毎に焦点調整を実施することが好ましい。
なお、実施例では、シスメックス社による校正作業が行われた、シスメックス社が発行する校正証明書の発行を受けたフロー式粒子像測定装置を使用した。そして、解析粒子径を円相当径3.00μm以上200.00μm以下に限定した以外は、校正証明を受けた時の測定および解析条件で測定を行った。
<水系媒体中の有機溶媒濃度の測定>
水系媒体中に残存する有機溶媒の濃度は、脱溶剤中の撹拌容器からスラリーの一部を随時抜き取り、ガスクロマトグラフィー測定装置(横河アナリティカルシステムズ社製「6890N」)を用いて測定する。
具体的には、抜き取ったスラリーを孔径0.5μmの耐溶剤性メンブランフィルターで濾過し、必要に応じて水で希釈したものを試料とする。
濃度の算出にあたっては、使用する有機溶媒毎に所定濃度の水溶液を調整し、それぞれの測定によって得られたピークのエリア面積値から作成した検量線を用いて求めた。尚、本実施例では、有機溶媒にはすべて酢酸エチルを使用した。酢酸エチルの水への溶解度は8.5質量%(温度20℃)である。
<ガラス転移温度の測定>
樹脂のガラス転移温度は、TAインスツルメント社製の示差走査熱量計(2920MDSC)を用い、以下のようにして求めることができる。
まず、試料約6mgをアルミパンに精秤し、空のアルミパンをリファレンスパンとして用意し、窒素雰囲気下、測定温度範囲20乃至150℃で、昇温速度2℃/分、モジュレーション振幅±0.6℃、周波数1回/分の条件で測定を行う。
測定によって得られた昇温時のリバーシングヒートフロー曲線から、吸熱を示す曲線と前後のベースラインとの接線を描き、それぞれの接線の交点を結ぶ直線の中点を求めて、これをガラス転移温度とする。
<ゼータ電位の測定>
樹脂微粒子のゼータ電位は、超音波方式ゼータ電位測定装置DT−1200(Dispersion Technology社製)を用いて、以下のようにして測定することができる。
まず、分散媒として純水を用意し、これに0.5質量%の芯粒子あるいは樹脂微粒子を添加する。このとき、必要に応じてゼータ電位に影響を及ぼさないノニオン系の界面活性剤を適量添加することができる。次に、超音波分散機を用いて3分間分散させた後、10分間脱泡しながら撹拌を行い、芯粒子あるいは樹脂微粒子の分散液とする。こうして得られた各分散液について、上記装置を用いてゼータ電位の測定を行う。また、この際、同時に分散液のpHも測定する。
次いで、上記分散液に濃度1モル/リットルの塩酸水溶液(必要に応じて濃度1モル/リットルの水酸化カリウム水溶液)を適量加えて分散液のpHを0.5程度低くなるように調整し、同様にしてゼータ電位を測定する。そして、ゼータ電位の値が正に転じるまで、分散液のpHをおよそ0.5ずつ順次変化させながら、この操作を繰り返し行う。
こうして得られたpHとゼータ電位の値をグラフにプロットし、各プロットを結んでpH−ゼータ電位曲線を作成する。等電点を示すpHは、ゼータ電位が0mVとなるときのpHの値を作成したグラフのpH−ゼータ電位曲線から求める。
<酸価の測定>
樹脂微粒子を構成する樹脂の酸価は、樹脂1g中に含まれる官能基を中和するのに必要な水酸化カリウムの量で表され、以下の方法によって求められる。
基本操作は、JISK−0070に基づく。この方法は、特にカルボン酸基の酸価を求める場合に好適である。
1)先ず、試料0.5乃至2.0gを300mlのビーカーに精秤し、このときの重量をWgとする。試料の官能基が塩の状態である場合には、予め酸の状態に戻したものを使用する。
2)これに、トルエン/エタノール(4/1)の混合液150mlを加えて溶解する。
3)0.1mol/lのKOHエタノール溶液を用いて滴定する。滴定は、例えば、京都電子社製の電位差滴定測定装置AT−400(winworkstation)と、ABP−410電動ビュレットを用いての自動滴定を利用して行うことができる。
4)この時のKOH溶液の消費量をSmlとする。また、同時にブランクを測定して、この時のKOHの消費量をBmlとする。
5)次式により、酸価を計算する。尚、式中のfは、KOHのファクターである。
酸価(mgKOH/g)={(S−B)×0.1f×56.1}/W
また、樹脂微粒子中のスルホン酸基の酸価を求めるときは、例えば蛍光X線分析装置(XRF)を用いてS元素の定量分析を行い、樹脂1g中に含まれる官能基当量を水酸化カリウムの量に換算して求めることができる。
<樹脂微粒子の粒子径の測定>
樹脂微粒子の粒子径は、マイクロトラック粒度分布測定装置HRA(X−100)(日機装社製)を用い、0.001μm乃至10μmのレンジ設定で測定を行い、個数平均粒子径として測定した。尚、希釈溶媒には、水を使用した。
以下、本発明の製造方法について、実施例を用いて具体的に説明する。
<樹脂微粒子分散液(1)の調製>
撹拌機、コンデンサー、温度計、窒素導入管を備えた反応容器に下記の単量体を仕込み、窒素雰囲気下、温度67℃に昇温して、撹拌しながら1時間反応を行った。
・プロピレングリコール、エチレングリコール、ブタンジオールの40:50:10モル 混合物と、テレフタル酸、イソフタル酸の等モル混合物から得られた、数平均分子量約 2000のポリエステルジオール : 319.2質量部
・プロピレングリコール : 18.2質量部
・ジメチロールプロパン酸 : 13.0質量部
・N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸ナトリウム:
33.7質量部
・イソホロンジイソシアネート : 41.5質量部
・アセトン : 60.0質量部
次いで、ヘキサメチレンジイソシアネート93.4質量部を添加し、さらに温度67℃で、30分反応させた後、冷却した。
上記反応物に、さらに100.0質量部のアセトンを追加した後、トリエチルアミン70.0質量部を投入し、撹拌した。上記アセトン溶液を、イオン交換水1000質量部に500rpmで撹拌しながら滴下し、微粒子分散液を調製した。
次いで、10%アンモニア水100.0質量部にエチレンジアミン50.0質量部を溶解させた水溶液を投入し、温度50℃で、8時間反応させることにより、伸長反応を行った。さらに、イオン交換水を固形分濃度が20質量%になるまで添加した。これを、樹脂微粒子分散液(1)とした。
<樹脂微粒子分散液(2)の調製>
撹拌機、コンデンサー、温度計、窒素導入管を備えた反応容器に下記の単量体を仕込み、窒素雰囲気下、温度67℃に昇温して、撹拌しながら1時間反応を行った。
・プロピレングリコール、エチレングリコール、ブタンジオールの40:50:10モル 混合物と、テレフタル酸、イソフタル酸の等モル混合物から得られた、数平均分子量約 2000のポリエステルジオール : 308.8質量部
・ジメチロールプロパン酸 : 62.3質量部
・N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸ナトリウム:
5.2質量部
・イソホロンジイソシアネート : 72.7質量部
・アセトン : 60.0質量部
次いで、ヘキサメチレンジイソシアネート70.1質量部を添加し、さらに温度67℃で、30分反応させた後、冷却した。
上記反応物に、さらに100.0質量部のアセトンを追加した後、トリエチルアミン70.0質量部を投入し、撹拌した。上記アセトン溶液を、イオン交換水1000質量部に500rpmで撹拌しながら滴下し、微粒子分散液を調製した。
次いで、10%アンモニア水100.0質量部にエチレンジアミン50.0質量部を溶解させた水溶液を投入し、温度50℃で、8時間反応させることにより、伸長反応を行った。さらに、イオン交換水を固形分濃度が20質量%になるまで添加した。これを、樹脂微粒子分散液(2)とした。
<樹脂微粒子分散液(3)の調製>
撹拌機、コンデンサー、温度計、窒素導入管を備えた反応容器に下記の単量体を仕込み、窒素雰囲気下、温度67℃に昇温して、撹拌しながら1時間反応を行った。
・プロピレングリコール、エチレングリコール、ブタンジオールの40:50:10モル 混合物と、テレフタル酸、イソフタル酸の等モル混合物から得られた、数平均分子量約 2000のポリエステルジオール : 315.6質量部
・プロピレングリコール : 16.6質量部
・N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸ナトリウム:
62.3質量部
・ヘキサメチレンジイソシアネート : 60.0質量部
・アセトン : 60.0質量部
次いで、ヘキサメチレンジイソシアネート64.6質量部を添加し、さらに温度67℃で、30分反応させた後、冷却した。
上記反応物に、さらに100.0質量部のアセトンを追加した後、トリエチルアミン70.0質量部を投入し、撹拌した。上記アセトン溶液を、イオン交換水1000質量部に500rpmで撹拌しながら滴下し、微粒子分散液を調製した。
次いで、10%アンモニア水100.0質量部にエチレンジアミン50.0質量部を溶解させた水溶液を投入し、温度50℃で、8時間反応させることにより、伸長反応を行った。さらに、イオン交換水を固形分濃度が20質量%になるまで添加した。これを、樹脂微粒子分散液(3)とした。
<樹脂微粒子分散液(4)の調製>
撹拌機、コンデンサー、温度計、窒素導入管を備えた反応容器に下記の単量体を仕込み、窒素雰囲気下、温度67℃に昇温して、撹拌しながら1時間反応を行った。
・プロピレングリコール、エチレングリコール、ブタンジオールの40:50:10モル 混合物と、テレフタル酸、イソフタル酸の等モル混合物から得られた、数平均分子量約 2000のポリエステルジオール : 290.6質量部
・プロピレングリコール : 13.0質量部
・ジメチロールプロパン酸 : 13.0質量部
・N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸ナトリウム:
51.9質量部
・イソホロンジイソシアネート : 109.0質量部
・アセトン : 60.0質量部
次いで、ヘキサメチレンジイソシアネート41.5質量部を添加し、さらに温度67℃で、30分反応させた後、冷却した。
上記反応物に、さらに100.0質量部のアセトンを追加した後、トリエチルアミン70.0質量部を投入し、撹拌した。上記アセトン溶液を、イオン交換水1000質量部に500rpmで撹拌しながら滴下し、微粒子分散液を調製した。
次いで、10%アンモニア水100.0質量部にエチレンジアミン50.0質量部を溶解させた水溶液を投入し、温度50℃で、8時間反応させることにより、伸長反応を行った。さらに、イオン交換水を固形分濃度が20質量%になるまで添加した。これを、樹脂微粒子分散液(4)とした。
<樹脂微粒子分散液(5)の調製>
撹拌機、コンデンサー、温度計、窒素導入管を備えた反応容器に下記の単量体を仕込み、窒素雰囲気下、温度67℃に昇温して、撹拌しながら1時間反応を行った。
・プロピレングリコール、エチレングリコール、ブタンジオールの40:50:10モル 混合物と、テレフタル酸、イソフタル酸の等モル混合物から得られた、数平均分子量約 2000のポリエステルジオール : 282.3質量部
・プロピレングリコール : 3.1質量部
・ジメチロールプロパン酸 : 54.5質量部
・N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸ナトリウム:
13.0質量部
・イソホロンジイソシアネート : 70.0質量部
・アセトン : 60質量部
次いで、イソホロンジイソシアネート96.1質量部を添加し、さらに温度67℃で、30分反応させた後、冷却した。
上記反応物に、さらに100.0質量部のアセトンを追加した後、トリエチルアミン70.0質量部を投入し、撹拌した。上記アセトン溶液を、イオン交換水1000質量部に500rpmで撹拌しながら滴下し、微粒子分散液を調製した。
次いで、10%アンモニア水100.0質量部にエチレンジアミン50.0質量部を溶解させた水溶液を投入し、温度50℃で、8時間反応させることにより、伸長反応を行った。さらに、イオン交換水を固形分濃度が20質量%になるまで添加した。これを、樹脂微粒子分散液(5)とした。
<樹脂微粒子分散液(6)の調製>
撹拌機、コンデンサー、温度計、窒素導入管を備えた反応容器に下記の単量体を仕込み、エステル化触媒としてテトラブトキシチタネート0.03質量部を添加し、窒素雰囲気下、温度210℃に昇温して、撹拌しながら5時間反応を行った。
・ビスフェノールA−プロピレンオキサイド2モル付加物 : 49.9質量部
・エチレングリコール : 9.0質量部
・テレフタル酸 : 20.5質量部
・イソフタル酸 : 13.7質量部
・無水トリメリット酸 : 7.0質量部
次いで、反応容器内を5乃至20mmHgに減圧しながら、さらに5時間反応を行い、ポリエステル樹脂を得た。
撹拌機、コンデンサー、温度計、窒素導入管を備えた反応容器に、得られたポリエステル樹脂100.0質量部とブチルセロソルブ75.0質量部を仕込み、温度90℃に加熱して溶解した後、70℃まで冷却した。
次いで、1モル/リットルのアンモニア水溶液18.0質量部を加え、上記温度を保持しながら30分間撹拌を行った後、温度70℃のイオン交換水300.0質量部を添加して水分散させた。得られた水分散体を蒸留装置に移し、留分温度が100℃に達するまで蒸留を行った。
冷却後、得られた水分散体にイオン交換水を加え、分散液中の固形分濃度が20質量%になるように調整した。これを、樹脂微粒子分散液(6)とした。
<樹脂微粒子分散液(7)の調製>
単量体の仕込み量を下記のように変更した以外は、樹脂微粒子分散液(6)の調製と同様にして、ポリエステル樹脂の水分散体を得た。
・ビスフェノールA−プロピレンオキサイド2モル付加物 : 49.5質量部
・エチレングリコール : 9.2質量部
・テレフタル酸 : 23.0質量部
・イソフタル酸 : 12.1質量部
・無水トリメリット酸 : 6.2質量部
冷却後、得られた水分散体にイオン交換水を加え、分散液中の固形分濃度が20質量%になるように調整し、樹脂微粒子分散液(7)とした。
<樹脂微粒子分散液(8)の調製>
撹拌機、コンデンサー、温度計、窒素導入管を備えた反応容器に、イオン交換水350.0質量部とドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.5質量部を仕込み、窒素雰囲気下、90℃に昇温して、2%過酸化水素水溶液8質量部、および2%アスコルビン酸水溶液8質量部を添加した。
次いで、下記の単量体混合物と乳化剤水溶液および重合開始剤水溶液を、撹拌しながら5時間かけて滴下した。
(単量体)
・スチレン : 94.0質量部
・メタクリル酸 : 3.3質量部
・メチルメタクリレート : 2.6質量部
・t−ドデシルメルカプタン : 0.05質量部
(乳化剤)
・ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム : 0.3質量部
・ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル : 0.01質量部
・イオン交換水 : 20.0質量部
(重合開始剤)
・2%過酸化水素水溶液 : 40.0質量部
・2%アスコルビン酸水溶液 : 40.0質量部
滴下後、上記温度を保持しながら、さらに2時間重合反応を行い、冷却してスチレン/アクリル系樹脂の水分散体を得た。
得られた水分散体にイオン交換水を加え、分散液中の固形分濃度が20質量%になるように調整した。これを、樹脂微粒子分散液(8)とした。
こうして得られた樹脂微粒子分散液(1)乃至(8)ついて、各分散液中の樹脂微粒子の個数平均粒子径を、マイクロトラック粒度分布測定装置HRA(X−100)(日機装社製)を用いて測定した。
また、各樹脂微粒子のゼータ電位を、超音波方式ゼータ電位測定装置DT−1200(Dispersion Technology社製)を用いて測定し、前述の方法にしたがって等電点を示すpHの値を求めた。
また、各分散液の一部を抜き取って、ろ過および洗浄した後、乾燥して固形分として取り出し、得られた樹脂の酸価とガラス転移温度をそれぞれ測定した。尚、カルボン酸価については上述した滴定法によって求め、スルホン酸価については蛍光X線分析装置(XRF)によるS元素の定量結果から計算によって求めた。
結果を、それぞれ表1にまとめて示した。
<ポリエステル樹脂の作製>
撹拌機、コンデンサー、温度計、窒素導入管を備えた反応容器に下記の単量体および縮合触媒を投入した。
・ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン: 30.0質量部
・ポリオキシエチレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン: 33.0質量部
・テレフタル酸 : 21.0質量部
・無水トリメリット酸 : 1.0質量部
・フマル酸 : 3.0質量部
・ドデセニルコハク酸 : 12.0質量部
・酸化ジブチル錫 : 0.1質量部
窒素雰囲気下、反応容器内を温度170℃に昇温して、撹拌しながら、且つ生成するメタノールを留去しながら7時間反応を行った。
次に、温度240℃まで徐々に昇温し、生成するプロピレングリコールおよび水を留去しながら、5時間反応を行い、さらに20mmHgの減圧下にて反応を行った。
生成した固形分を取り出し、室温まで冷却した後、粉砕し、粒子化してポリエステル樹脂を得た。得られたポリエステル樹脂のガラス転移温度は46℃、酸価は18mgKOH/gであった。
<ポリエステル樹脂溶液の作製>
撹拌羽根付きの密閉容器に酢酸エチルを50.0質量部投入し、回転数100rpmで撹拌しているところに上記ポリエステル樹脂50.0質量部を加え、室温で10時間撹拌することでポリエステル樹脂溶液を調製した。
<ワックス分散液の作製>
撹拌羽根付きの容器に酢酸エチル80.0質量部とカルナウバワックス(融点81℃)20.0質量部を投入し、容器内を温度70℃に加熱することでカルナウバワックスを酢酸エチルに溶解させた。
次いで、回転数50rpmで緩やかに撹拌しながら、3時間かけて温度25℃まで冷却し、乳白色の液体を得た。
さらに、この溶液を1mmのガラスビーズ20.0質量部とともに耐熱性の容器に投入し、ペイントシェーカー(東洋精機製)にて3時間分散を行った後、ナイロンメッシュでガラスビーズを取り除いてワックス分散液を得た。
<着色剤分散液の作製>
・上記ポリエステル樹脂 : 20.0質量部
・銅フタロシアニン顔料(C.I.Pigment Blue 15:3) :
20.0質量部
・酢酸エチル : 60.0質量部
上記材料を容器中で十分にプレミクスした後、1mmのガラスビーズ20.0質量部とともに耐熱性の容器に投入した。これをペイントシェーカー(東洋精機製)にて3時間分散を行った後、ナイロンメッシュでガラスビーズを取り除いて着色剤分散液を得た。
〔実施例1〕
(結着樹脂溶解液の調製)
・ポリエステル樹脂溶液(樹脂固形分:50質量%) : 148.0質量部
・ワックス分散液(ワックス固形分:20質量%) : 50.0質量部
・着色剤分散液(顔料固形分:20質量%、樹脂固形分:20質量%):40.0質量部
・トリエチルアミン : 0.5質量部
・酢酸エチル : 11.5質量部
上記材料を容器内に投入し、ホモディスパー(特殊機化工業(株)社製)を用いて、回転数5000rpmで10分間撹拌および分散することにより、結着樹脂溶解液を調製した。
(水相の調製)
容器に下記を投入し、TKホモミクサー(特殊機化社製)を用いて回転数5000rpmで1分間撹拌し、水相を調製した。
・イオン交換水 : 225.5質量部
・樹脂微粒子分散液(1) : 25.0質量部
(結着樹脂溶解液中の固形分100.0質量部に対して、樹脂微粒子5.0質量部)
・ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウムの50%水溶液(エレミノールM ON−7、三洋化成工業製) : 25.0質量部
・酢酸エチル : 30.0質量部
(芯粒子分散液の作製)
上記水相中に上記結着樹脂溶解液を投入し、TKホモミクサー(特殊機化社製)を用いて回転数8000rpmで1分間撹拌して結着樹脂溶解液を懸濁させ、液滴を形成した。
次いで、容器に撹拌羽をセットし、200rpmで撹拌しながら系内の温度を30℃に昇温し、且つ66.7kPaに減圧した状態で3時間かけて脱溶剤を行い、芯粒子を形成した。
こうして得られた分散液を室温まで冷却した後、ろ過を行い、直ちにイオン交換水を加えて再分散し、分散液中の固形分濃度が20質量%になるように調整して、芯粒子分散液を得た。
得られた芯粒子分散液の一部を抜き取って孔径0.5μmの耐溶剤性メンブランフィルターで濾過し、濾液中の酢酸エチル濃度をガスクロマトグラフィー測定装置(横河アナリティカルシステムズ社製「6890N」)を用いて測定したところ、1.25質量%であった。
また、フィルター上の固形分は、塩酸洗浄および水洗浄を行った後、ろ過、乾燥した。こうして得られた芯粒子について、平均粒径と平均円形度の測定を行ったところ、重量平均粒径(D4)は6.6μm、個数平均粒径(D1)は5.6μm、平均円形度は0.970であった。
(トナー粒子の作製)
上記芯粒子分散液100.0質量部(固形分20.0質量部)に、撹拌下、上記樹脂微粒子分散液(6)5.0質量部(固形分1.0質量部)を添加した。
次いで、0.2モル/リットルの塩酸水溶液を、0.005リットル/分の滴下速度で、上記分散液のpHが1.7になるまで滴下した後、30分間撹拌を続けた。
さらに、上記分散液の温度を70℃に昇温し、この温度を保持しながら3時間撹拌を行った後、冷却し、ろ過し、水洗および乾燥してトナー粒子を得た。
(トナーの作製)
シリカ微粉体100質量部を、10質量部のヘキサメチルジシラザンで処理し、さらに10質量部のシリコーンオイルで処理して、一次粒径12nm、BET比表面積が120m2/gの疎水性シリカ微粉体を調製した。次いで、上記トナー粒子100.0質量部に対して、該疎水性シリカ微粉体1.0質量部を加え、ヘンシェルミキサー(三井三池化工機製)を用いて混合した。こうして、本発明のトナー(1)を作製した。
〔実施例2乃至5〕
実施例1において、芯粒子分散液の作製工程における脱溶剤を、表2に示す条件にて行った。実施例3および実施例5については、イオン交換水中に再分散した後、さらに適量の酢酸エチルを添加した。これ以外は実施例1とすべて同様にして、本発明のトナー(2)乃至(5)をそれぞれ作製した。
〔比較例1〕
実施例1において、芯粒子分散液の作製を以下のように行った以外は実施例1とすべて同様にして、比較例のトナー(6)を作製した。
(芯粒子分散液の作製)
実施例1と同様にして芯粒子を形成した後、得られた分散液をろ過し、水洗浄し、これにイオン交換水を加えて再分散した。この操作を3回繰り返した後、最後に分散液中の固形分濃度が20質量%になるように調整して芯粒子分散液を得た。
〔比較例2〕
実施例1において、芯粒子分散液の作製を以下のように行った以外は実施例1とすべて同様にして、比較例のトナー(7)を作製した。
(芯粒子分散液の作製)
実施例1と同様にして液滴を形成した後、昇温は行わず、常圧下、撹拌羽による撹拌のみを30分間行ったところで、イオン交換水を加えて分散液中の固形分濃度が20質量%になるように調整し、芯粒子分散液を得た。
実施例1乃至5および比較例1、2における脱溶剤条件と、ガスクロマトグラフィー測定装置によって求めた芯粒子分散液中に残留する酢酸エチルの濃度を、表2に示した。
また、実施例1乃至5および比較例1、2で得られた各トナーについて、使用した樹脂微粒子とその添加量、並びに、平均粒径と平均円形度の値を、表3にまとめて示した。
次に、実施例1乃至5および比較例1、2で得られた各トナーについて、耐ブロッキング性、低温定着性、および連続画出しによる画像濃度低下率の評価を、以下に述べる要領にしたがって行った。結果を、表4にまとめて示した。
<耐ブロッキング性>
トナー10gを容積100mlのポリカップに量り採り、これを内部温度50℃の恒温槽に入れて3日間放置する。その後、ポリカップを取り出して、中のトナーの状態変化を目視にて評価する。判定基準は以下の通りである。
A:変化なし
B:凝集体があるが、すぐにほぐれる
C:凝集体がやや多く、ほぐれにくい
D:凝集体が多く、容易にはほぐれない
E:全くほぐれない
<低温定着性>
トナーと、シリコーン樹脂で表面被覆した磁性微粒子分散型樹脂キャリア(平均粒径35μm)を、トナー濃度が7.0質量%になるように混合して二成分現像剤を調製する。
次いで、この二成分現像剤を、高温高湿下(30℃/80%)で7日間放置した後、常温常湿下(23℃/60%)でさらに3日間放置し、初期混合による帯電をリセットする。
試験機には、市販のフルカラー複写機(CLC5000,キヤノン製)の改造機を使用し、受像紙(80g/m2)上に未定着のトナー画像(単位面積当たりのトナー載り量0.6mg/cm2)を形成する。
定着試験は、上記複写機から取り外し、定着温度が調節できるように改造した、定着ユニットを用いて行う。具体的な評価方法は、以下の通りである。
常温常湿環境下(23℃,60%RH)にて、プロセススピードを180mm/sに設定し、初期温度を120℃として設定温度を5℃ずつ順次昇温させながら、各温度で上記未定着画像の定着を行う。
本発明において、低温定着性は、低温オフセットが観察されず、且つ、得られた定着画像を4.9kPaの荷重をかけたシルボン紙で5往復摺擦したときに、摺擦前後の濃度低下率が5%以下となる温度を定着開始温度とし、以下の基準で評価した。
A:定着開始温度が120℃以下 (特に優れている)
B:定着開始温度が120℃より大きく、130℃以下 (良好である)
C:定着開始温度が130℃より大きく、145℃以下 (問題ないレベルである)
D:定着開始温度が145℃より大きく、160℃以下 (やや劣っている)
E:定着開始温度が160℃より大きい (劣っている)
<画像濃度低下率>
市販のカラーレーザープリンター(LBP−5900SE,キヤノン製)を使用し、シアンカートリッジのトナーを取り出して、これに作製したトナーを150g充填した。該カートリッジをプリンターのシアンステーションに装着し、常温常湿下(23℃、60%RH)、受像紙(キヤノン製オフィスプランナー 64g/m2)を用いて、印字率2%チャートを5000枚連続して画出しした。
画出しの前後での画像濃度をマクベス濃度計によって測定し、下記の評価基準に従って画像濃度の低下について評価した。
A:画像濃度の低下が5%未満(画像濃度の低下が非常に少ない)
B:画像濃度の低下が5%以上、10%未満(画像濃度の低下が少ない)
C:画像濃度の低下が10%以上、15%未満(画像濃度の低下に問題はない)
D:画像濃度の低下が15%以上、20%未満(画像濃度の低下が大きい)
E:画像濃度の低下が20%以上(画像濃度の低下が非常に大きい)
〔実施例6乃至11〕
実施例1において、芯粒子分散液の作製工程で使用した分散安定剤としての樹脂微粒子分散液(1)、トナー粒子の作製工程で使用した被覆層用としての樹脂微粒子分散液(6)に代えて、表5に示す各微粒子分散液を使用した以外は実施例1と同様にして、本発明のトナー(8)乃至(13)をそれぞれ作製した。
但し、ガラス転移温度が低い樹脂微粒子分散液(7)を使用した実施例10のみ、トナー粒子作製時の加熱温度を60℃とした。
〔実施例12乃至15〕
実施例1において、芯粒子分散液の作製工程で使用した分散安定剤としての樹脂微粒子分散液(1)の添加量を、表5に示す量に変えた以外は実施例1とすべて同様にして、本発明のトナー(14)乃至(17)をそれぞれ作製した。
〔実施例16乃至19〕
実施例1において、トナー粒子の作製工程で使用した被覆層用としての樹脂微粒子分散液(6)の添加量を、表5に示す量に変えた以外は実施例1とすべて同様にして、本発明のトナー(18)乃至(21)をそれぞれ作製した。
〔実施例20〕
実施例1において、芯粒子分散液の作製工程で使用した分散安定剤としての樹脂微粒子分散液(1)、トナー粒子の作製工程で使用した被覆層用としての樹脂微粒子分散液(6)に代えた、双方に樹脂微粒子分散液(4)を使用し、トナー粒子作製時の加熱温度を60℃とした以外は実施例1とすべて同様にして、本発明のトナー(22)を作製した。
〔実施例21および22〕
実施例1において、トナー粒子作製時の滴下する塩酸水溶液の量を、表5に示すpHになるように調整した以外は実施例1とすべて同様にして、本発明のトナー(23)、(24)をそれぞれ作製した。
〔実施例23乃至26〕
実施例1において、トナー粒子作製時の加熱温度を、表5に示す温度に変えた以外は実施例1とすべて同様にして、本発明のトナー(25)乃至(28)をそれぞれ作製した。
関係式(1):|Tg(a)−Tg(b)|の値を示した。
関係式(2): Tg(c)−Tg(a)の値を示した。
関係式(3): PH(c)−PH(b)の値を示した。
※樹脂微粒子分散液の添加量は、固形分としての量(質量部)で示した。
実施例6乃至26で得られた各トナーについて、平均粒径と平均円形度の値、並びに、耐ブロッキング性、低温定着性、連続画出しによる画像濃度低下率の各評価結果を、表6にまとめて示した。