JP2013167738A - トナー製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】少なくとも結着樹脂の凝集工程を有するトナーの製造方法であって、ポリエステル樹脂を、エステル系溶媒を含む有機溶媒に溶解し、ポリエステル樹脂溶解液を得る溶解工程、前記ポリエステル樹脂溶解液を水系分散媒中に乳化分散させ、ポリエステル樹脂乳化液を得る乳化工程、並びに前記ポリエステル樹脂乳化液から前記有機溶媒を除去する脱溶媒工程により、ポリエステル樹脂分散液を得る工程と、前記ポリエステル樹脂分散液を含む水系媒体中で、前記ポリエステル樹脂を少なくとも結着樹脂として含み、前記結着樹脂を凝集させる凝集工程を有し、前記脱溶媒工程後に得られる前記ポリエステル樹脂分散液中に、前記エステル系溶媒およびアルコール系溶媒が含まれ、前記エステル系溶媒濃度A(ppm)と前記アルコール系溶媒濃度B(ppm)とが以下の条件:200≦A≦1000、50≦B≦1500、および0.2≦B/A≦7.5を満たすことを特徴とするトナーの製造方法が提供される。
【選択図】なし
Description
前記ポリエステル樹脂溶解液を水系分散媒中に乳化分散させ、ポリエステル樹脂乳化液を得る乳化工程、
前記ポリエステル樹脂乳化液から前記有機溶媒を除去してポリエステル樹脂分散液を得る脱溶媒工程、
前記ポリエステル樹脂分散液を含む水系媒体中で、前記ポリエステル樹脂を用いて凝集を行う凝集工程、
を有するトナーの製造方法であって、
前記脱溶媒工程後に得られる前記ポリエステル樹脂分散液中に、前記エステル系溶媒およびアルコール系溶媒が含有されるものであり、
前記エステル系溶媒の濃度をA(ppm)、前記アルコール系溶媒の濃度をB(ppm)とすると、前記エステル系溶媒濃度Aと前記アルコール系溶媒濃度Bが以下の条件を満たすことを特徴とするトナーの製造方法、
200≦A≦1000、
50≦B≦1500、および
0.2≦B/A≦7.5、が提供される。
270≦A≦720
170≦B≦1330
0.5≦B/A≦4.5
を満たす。
前記ポリエステル樹脂分散液中に含有されるエステル系溶媒濃度をA(ppm)、とアルコール系溶媒濃度をB(ppm)とすると、
エステル系溶媒濃度Aとアルコール系溶媒濃度Bが以下の条件を満たすことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のトナーの製造方法に用いられるポリエステル樹脂分散液、
200≦A≦1000、
50≦B≦1500、および
0.2≦B/A≦7.5、
が提供される。
(1−1)溶解工程
溶解工程は、ポリエステル樹脂を、少なくともエステル系溶媒を含む有機溶媒に溶解し、ポリエステル樹脂溶解液を得る工程である。ポリエステル樹脂を混合溶媒に溶解させる際には、完全に溶解しさえすれば特に制限はないが、例えば、20〜60℃で、30〜180分撹拌することができる。以下では、本発明に使用し得る有機溶媒およびポリエステル樹脂を例を挙げて説明する。
本発明では、ポリエステル樹脂を溶解させるための有機溶媒として、少なくともエステル系溶媒を含有するものが用いられる。本発明では、後述する脱溶媒工程後に得られるポリエステル樹脂分散液中に特定量のエステル系溶媒およびアルコール系溶媒を含有するものであるが、溶解工程でエステル系溶媒のみを使用してもアルコール系溶媒を含有するポリエステル樹脂分散液が得られる。これは、ポリエステル樹脂分散液を得る工程中で塩基性物質の存在により、微量のエステル系溶媒が酸化されてアルコールを形成するためと考えられる。本発明では、この様にして生じるアルコール系溶媒を後の工程に利用できるため、溶解工程ではエステル系溶媒だけの有機溶媒を使用することができる。
本発明に使用し得るエステル系溶媒としては、ポリエステル樹脂を溶解させることができれば特に制限はないが、水系媒体中での油滴(ポリエステル樹脂溶解液粒子)形成が可能なものがよく、さらに、後述する脱溶媒工程で蒸留除去が行い易い低沸点のものが好ましい。より具体的には、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸−n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸−n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸−sec−ブチル、酢酸−3−メトキシブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル、シュウ酸ジメチル、シュウ酸ジエチル、コハク酸ジメチル、コハク酸ジエチル、炭酸ジエチル、炭酸ジメチル等のエステル系溶媒が挙げられる。これらの有機溶媒は、単独で使用しても、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明に使用し得るアルコール系溶媒としては、特に制限はないが、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等が挙げられる。これらのアルコールは、単独で使用しても、二種以上を組み合わせて使用してもよい。このうち、蒸留除去しやすいことから、エタノール、メタノールおよびイソプロパノールがより好ましく、エタノールが特に好ましい。エタノールは、上記のエステル系溶媒のうち特に好ましい酢酸エチルが分解した際に生成するアルコールである。
本発明に使用しうるポリエステル樹脂は、特に制限はなく、結晶性ポリエステル樹脂、非結晶性ポリエステル樹脂、のいずれも使用できる。ポリエステル樹脂は、典型的には、公知の多価カルボン酸と多価アルコールを触媒の存在下で重縮合反応させることにより製造するものである。また、多価カルボン酸や多価アルコールの誘導体を用いることも可能であり、多価カルボン酸誘導体には多価カルボン酸のアルキルエステルや酸無水物、酸塩化物等がある。また、多価アルコール誘導体には、多価アルコールのエステル化合物やヒドロキシカルボン酸等がある。また、多価カルボン酸および多価アルコール以外の他のモノマーを部分的に結合した、変性ポリエステル樹脂も用いることができる。このうち、末端カルボン酸基をビニル系モノマーにより共重合した非結晶性ポリエステル樹脂が、トナーに使用した場合に耐熱保管性を発現できることから好ましい。特に、後述するスチレンアクリル変性ポリエステル樹脂は、コアシェル構造のトナーに好適に使用される。
一般式(A): HOOC−(CR1=CR2)n−COOH
上記式中のR1とR2は、水素原子、メチル基またはエチル基であり、互いに同じものであっても異なるものであってもよい。また、nは1または2の整数である。
装置:HLC−8020(東ソー社製)
カラム:GMHXLx2、G2000HXLx1
検出器:RI及びUVの少なくともいずれか一方
溶出液流速:1.0ml/分
試料濃度:0.01g/20ml
試料量:100μl
検量線:標準ポリスチレンにて作製
本発明で用いられるポリエステル樹脂のガラス転移点が40℃以上70℃以下のものが好ましく、50℃以上65℃以下のものがより好ましい。ガラス転移点が40℃以上であることにより、最終的に得られたトナーを転写紙等に定着させる際にポリエステル同士が適度に凝集して、ホットオフセット現象を発生させることのないトナー画像を形成することができる。また、ガラス転移点が70℃以下であることにより、得られたトナーの定着時におけるトナー粒子中の樹脂の溶融を阻害することがなく、低温定着のトナーを作製する上で好ましいものである。また、ポリエステル樹脂の軟化点は80〜110℃が好ましく、より好ましくは90〜100℃である。軟化点が上記の範囲であると、得られるトナーが低温定着性に優れたものとなる。
スチレン系単量体の具体例としては、たとえば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−フェニルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン等が挙げられる。これらのスチレン系単量体は、単独で使用しても、二種以上を組み合わせて使用してもよい。このうち、トナーの低温定着性実現の観点から、スチレンがより好ましい。
アクリル酸エステル系単量体の具体例としては、以下に示すアクリル酸エステル単量体とメタクリル酸エステル単量体が代表的なものである。アクリル酸エステル単量体としては、たとえば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸フェニル等が挙げられる。
また、スチレンアクリル共重合体セグメントには、スチレン系単量体とアクリル酸エステル系単量体に加えて一般のビニル系単量体を併用してもよい。ビニル系単量体を併用する場合には、ビニル系単量体の含有量は、他の単量体全体に対し3〜10質量%が好ましい。
上記式中のWxは単量体xの質量分率、Tgxは単量体xの単独重合体のガラス転移温度を表すものである。なお、後述する「ポリエステルセグメントとスチレンアクリル共重合体セグメントを分子結合させた構造を形成する化合物」はガラス転移温度を算出する際には使用しないものとする。
この方法では、先ず、多価カルボン酸と多価アルコールを縮合反応させて重合を行い、ポリエステルセグメントを形成しておく。次に、ポリエステルセグメントの存在下で、スチレン系単量体やアクリル酸エステル系単量体といったビニル系単量体を重合反応させてスチレンアクリル共重合体セグメントを形成する。このとき、スチレン系単量体やアクリル酸エステル系単量体の他に、ポリエステルセグメントに残存するカルボキシ基(−COOH)あるいはヒドロキシ基(−OH)と反応可能な部位とビニル系単量体と反応可能な部位とを有する化合物も使用する。すなわち、この化合物がポリエステルセグメント中のカルボキシ基(−COOH)あるいはヒドロキシ基(−OH)と反応することにより、ポリエステルセグメントは当該化合物が結合した構造のものになる。そして、前記化合物を結合させたポリエステルセグメントの存在下で、スチレン系単量体とアクリル酸エステル系単量体をラジカル重合等の付加反応させることにより、スチレンアクリル共重合体セグメントが形成される。このとき、ポリエステルセグメントに結合した前記化合物のビニル系単量体との反応可能な部位を介して、ポリエステルセグメントとスチレンアクリル共重合体セグメントとが分子結合した構造のスチレンアクリル変性ポリエステルを形成することができる。
この方法では、先ず、スチレン系単量体とアクリル酸エステル系単量体とに代表されるビニル系単量体を付加反応させてスチレンアクリル共重合体セグメントを形成する。次に、スチレンアクリル共重合体セグメントの存在下で、多価カルボン酸と多価アルコールを重合反応させてポリエステルセグメントを形成する。このとき、多価カルボン酸と多価アルコールの他に、スチレンアクリル共重合体セグメントと反応可能な部位と多価カルボン酸や多価アルコールと反応可能な部位を有する化合物も使用する。すなわち、この化合物をスチレンアクリル共重合体セグメントと反応させることにより、スチレンアクリル共重合体セグメントは前記化合物を結合させた構造のものになる。そして、前記化合物を結合させたスチレンアクリル共重合体セグメントの存在下で、多価カルボン酸と多価アルコールを縮合反応させることにより、ポリエステルセグメントが形成される。このとき、スチレンアクリル共重合体セグメントに結合した前記化合物のカルボン酸あるいはアルコールと反応可能な部位を介して、スチレンアクリル共重合体セグメントとポリエステルセグメントが分子結合した構造のスチレンアクリル変性ポリエステルを形成することができる。
この方法では、先ず、多価カルボン酸と多価アルコールを縮合反応させてポリエステルセグメントを形成する。また、ポリエステルセグメントを形成する反応系とは別に、スチレン系単量体とアクリル酸エステル系単量体を付加重合させてスチレンアクリル共重合体セグメントを形成する。次に、ポリエステルセグメントとスチレンアクリル共重合体セグメントが共存する系を形成しておき、そこへポリエステルセグメントと結合可能な部位とスチレンアクリル共重合体セグメントと結合可能な部位とを有する化合物を投入する。そして、当該化合物を介して、ポリエステルセグメントとスチレンアクリル共重合体セグメントが分子結合した構造のスチレンアクリル変性ポリエステルを形成することができる。
乳化工程は、上記(1−2)溶解工程で得られたポリエステル樹脂の溶解液を用いて、水系媒体中にポリエステル樹脂溶解液粒子(油滴)が分散している状態の分散液を作製するものである。
乳化工程に使用し得る界面活性剤は、特に限定されるものではないが、たとえば、以下に示すイオン性界面活性剤が好ましく、特にアニオン性界面活性剤が好ましく使用できる。イオン性界面活性剤には、スルホン酸塩、硫酸エステル塩、脂肪酸塩等があり、スルホン酸塩には、たとえば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アリールアルキルポリエーテルスルホン酸ナトリウム、3,3−ジスルホンジフェニル尿素−4,4−ジアゾ−ビス−アミノ−8−ナフトール−6−スルホン酸ナトリウム、o−カルボキシベンゼン−アゾ−ジメチルアニリン、2,2,5,5−テトラメチル−トリフェニルメタン−4,4−ジアゾ−ビス−β−ナフトール−6−スルホン酸ナトリウム等がある。
脱溶媒工程は、上記(1−2)乳化工程で得られた乳化液中の有機溶媒を除去する工程であり、脱溶媒によって、ポリエステル樹脂の粒子が水系媒体中に分散した分散液が得られる。本発明においては、この脱溶媒工程後に得られるポリエステル樹脂分散液中に、エステル系溶媒およびアルコール系溶媒が以下の条件を満たすように含まれることが特徴である。すなわち、エステル系溶媒濃度A(ppm)とアルコール系溶媒濃度B(ppm)とが、200≦A≦1000、50≦B≦1500、および、0.2≦B/A≦7.5 を満たす。
上記工程(1)で得られたポリエステル樹脂分散液は、凝集工程を有するトナーの製造に好ましく使用される。従来凝集工程の際には、ポリエステル樹脂粒子の分散安定性がよくないために、急凝集が生じて、ポリエステル樹脂のみの粗大粒子が形成されたり、他のトナーの構成成分や樹脂成分同志を不必要に結合してしまったり、といった現象が起こりやすかった。その結果、トナー粒子の粒度分布にばらつきが生じる、帯電特性に影響を与える等の理由から、トナー飛散やかぶりといった画像形成時の問題を生じる場合があった。しかし、本発明の方法によれば、上記ポリエステル樹脂分散液が分散安定性に優れているため、これを使用することにより凝集性のバランスが保たれ、上記の急凝集のような現象を避けることができる。その結果、トナー飛散やかぶりの発生の少ない、高精細な画像形成が可能なトナーが得られる。
(2−1)コアシェル型トナーのコア粒子および/またはシェルを形成するための凝集工程は、コアシェル型のトナーの製造工程に含まれる。すなわち、コア粒子を形成する際の結着樹脂にポリエステル樹脂が混合され、コア粒子の製造にポリエステル樹脂を用いる形態、および/または、シェルを形成する際のシェル用樹脂としてポリエステル樹脂を使用する形態がありうる。また、(2−2)トナー母体粒子を形成するための凝集工程は、コアシェル型ではないトナーの製造工程に含まれ、必要に応じて着色剤微粒子と結着樹脂微粒子とを凝集させてトナー母体粒子を形成する際に、少なくともポリエステル樹脂を結着樹脂として使用するものである。
(2−1−1)コアシェル型トナーの構造
コアシェル型のトナーとは、着色剤を含有したガラス転移温度が比較的低めの樹脂粒子(コア粒子)表面に、比較的高めのガラス転移温度の樹脂領域(シェル)を有するトナー粒子である。すなわち、コア粒子表面がシェルで被覆された構造であり、シェルがコア粒子表面を完全に被覆したものも、シェルがコア粒子を完全に被覆せず、ところどころコア粒子が露出しているものも含む。しかしながら、本発明のポリエステル樹脂の分散液をシェル形成用樹脂として用いれば、コア粒子を均一にむらなく被覆できるため、より完全に被覆され、耐熱保管性の向上したトナー粒子の形成が可能となる。
本発明の好ましい実施形態では、上記(1)で得られたポリエステル樹脂分散液を使用する凝集工程を経て、コアシェル型のトナーを製造する。コアシェル構造のトナー粒子は、コア粒子表面をシェル形成用の樹脂粒子で融着、被覆することにより形成される。本発明では、コア粒子の結着樹脂として上記の(1)の工程で得られたポリエステル樹脂の水系分散液を使用してもよいが、シェル形成工程に、シェル形成用樹脂としてポリエステル樹脂の水系分散液を使用することがより好ましい。ポリエステル樹脂は従来トナーの結着樹脂に使用されていたスチレンアクリル樹脂に比較してガラス転移点が高く、これでコア粒子を被覆することによりトナーの耐熱保管性が向上するためである。その際、ポリエステル樹脂としては、コア粒子に固着しやすいことから、上記したポリエステル分子鎖にスチレンアクリル共重合体分子鎖を共有結合させたスチレンアクリル変性ポリエステル樹脂が好ましい。また、ポリエステル樹脂は、さらなる耐熱保管性向上のため、シェルに使用すると共にコア粒子の結着樹脂に混合して使用してもよい。
(e)着色剤粒子の分散工程
(f)コア用樹脂粒子の凝集、融着工程
(g)第1熟成工程
(h)シェル形成工程(シェル形成のための凝集、融着工程)
(i)第2熟成工程
(j)冷却工程
(k)洗浄工程
(l)乾燥工程
(m)外添剤処理工程
ここで、コアシェル型トナーの製造方法のうち、凝集工程が関わる部分について、好ましい実施形態の概略を図1を用いて説明する。図1中、工程(d)で調製したコア用樹脂微粒子11の分散液に、工程(e)で調製した着色剤微粒子12の分散液を混合し、工程(f)において、凝集剤の添加Cによって凝集させ、コア用樹脂微粒子および着色剤微粒子が凝集した粒子13を形成する。この凝集した粒子13を加熱Dによる融着によって融着し、工程(g)を経て、コア粒子14を形成する。コア粒子14の分散液に、工程(h)において、シェル形成用樹脂であるポリエステル樹脂微粒子15の分散液を投入し、凝集剤の添加Eによってコア粒子14の表面に凝集させ、ポリエステル樹脂微粒子15でコア粒子14を被覆する。コア粒子14を被覆したポリエステル樹脂微粒子15を、加熱Eにより融着させて、シェル16を形成し、工程(i)を経てコアシェル型トナー母体粒子17を製造する。
コア用樹脂の分散工程は、コア用の樹脂粒子を形成する重合性単量体を水系媒体中に投入して重合を行って120nm程度の大きさの樹脂粒子を形成する工程である。コア用樹脂は、結着樹脂として着色剤を含んだコア粒子を基本的に構成する成分である。本発明では、低温定着性を実現するため、コア粒子を形成する結着樹脂(コア用樹脂とも称する)として、スチレンアクリル共重合体を用いることが好ましい。この工程で、スチレン単量体およびアクリル酸エステル単量体を水系媒体中へ投入、分散させ、重合開始剤によりこれら重合性単量体を重合させることによりスチレンアクリル共重合体の樹脂粒子を作製する。ここで、コア用の結着樹脂として、分散液中に上記(1)で製造したポリエステル樹脂の分散液を用いてもよく、スチレンアクリル共重合体と共に用いてもよい。本発明のポリエステル樹脂の分散液は分散性が安定であり、凝集バランスに優れるため、コア粒子に使用することによって、コア粒子の粒度分布がより均一になり、着色剤がコア粒子内に均一に分散され着色剤分散性が向上すると期待される。
スチレンアクリル共重合体は、好ましくはコア用の結着樹脂を主として構成する。コア粒子に含有されるスチレンアクリル共重合体は、少なくとも、スチレン系単量体とアクリル酸エステル系単量体を用いて、ラジカル重合を行うことにより形成されるものである。スチレン系単量体およびアクリル酸エステル系単量体は、上記のスチレンアクリル変性ポリエステル樹脂のスチレンアクリルセグメントの説明において説明したものと同様である。本発明に使用するコア用樹脂の単量体としては、トナーに低温定着性を付与できることから、スチレンおよびアクリル酸n−ブチルが特に好ましい。
(e)着色剤粒子の分散工程は、本発明の好ましい形態で実施され、水系媒体中に着色剤を分散させ、100〜120nm程度の大きさの着色剤粒子分散液を作製する工程である。着色剤の分散処理は、着色剤が均一に分散されることから、界面活性剤を添加し、水系媒体中で界面活性剤濃度を臨界ミセル濃度以上にした状態で行われることが好ましい。界面活性剤としては、上記(1−2)の工程で記載したものと同様のものを使用できる。界面活性剤濃度は、例えば、1〜10質量%が好ましい。着色剤の分散処理に使用する分散機は公知の分散機を用いることができる。このようにして得られる分散液中の着色剤微粒子の粒径は、80〜200nmが好ましい。本発明に使用し得る具体的な着色剤を以下に示す。
本発明により製造されるトナーで使用可能な着色剤は、公知のものが挙げられる。これらの着色剤は必要に応じて単独もしくは2つ以上を選択併用することも可能である。また、着色剤の添加量はトナー全体に対して好ましくは1〜30質量%、より好ましくは2〜20質量%の範囲で、これらの混合物も用いることができる。数平均1次粒子径は種類により多様であるが、概ね10〜200nm程度が好ましい。
この工程は、水系媒体中で前述のコア用樹脂粒子と必要に応じて着色剤粒子および添加剤を凝集させ、凝集させると同時にこれら粒子を融着させてコア粒子を作製する工程である。具体的には、前述の手順で作製したコア用樹脂粒子の分散液、必要に応じて着色剤粒子の分散液および後述する添加剤を混合した凝集用分散液に、臨界凝集濃度以上の凝集剤を添加して塩析させることにより、樹脂粒子と着色剤粒子とを凝集させると同時に、撹拌機構が撹拌翼である反応装置において撹拌し、ポリエステル樹脂のガラス転移点以上で粒子同士を加熱融着させて凝集樹脂粒子(コア粒子)を形成する。そのまま凝集粒子を形成しつつ徐々に粒径を成長させ、コア粒子の大きさが目標の大きさになった時に、食塩水等の塩を添加して凝集を停止させる。
本発明で使用可能な凝集剤は特に限定されるものではないが、金属塩から選択されるものが好適に使用される。たとえば、ナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属の塩等の1価の金属の塩、例えば、カルシウム、マグネシウム、マンガン、銅等の2価の金属の塩、鉄、アルミニウム等の3価の金属の塩等がある。具体的な塩としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、硫酸銅、硫酸マグネシウム、硫酸マンガン等が挙げられ、これらの中で特に好ましくは2価の金属の塩である。2価の金属の塩を使用すると、より少量で凝集を進めることができる。これらは1種または2種以上を組み合わせて使用してもよい。
凝集工程での分散液は、添加剤として、離型剤、分散安定剤、界面活性剤、荷電制御剤等公知の添加剤を含有してもよい。これらの添加剤は、添加剤の分散液として凝集工程に投入してもよいし、着色剤粒子の分散液、コア粒子を構成する結着樹脂の分散液、シェル用樹脂の分散液中に含有されてもよい。
コア粒子の結着樹脂として、上記のスチレンアクリル共重合体の分散液の他に、以下の樹脂の分散液を混合して用いてもよい。例えば、ポリスチレン、ポリp−クロロスチレン、ポリビニルトルエンなどのスチレン及びその置換体の重合体;スチレン−p−クロロスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタレン共重合体、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン−α−クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−アクリロニトリル−インデン共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸エステル共重合体などのスチレン系共重合体;ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、エポキシ樹脂、エポキシポリオール樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸樹脂、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、脂肪族または脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂、などが挙げられ、単独あるいは二種以上混合して使用できる。
この工程は、上記(f)凝集、融着工程に引き続き、反応系を加熱処理することによりコア粒子の形状を所望の形状にするまで熟成を行う工程である。具体的には、凝集・融着させた樹脂粒子および必要に応じて着色剤粒子を含む液を、好ましくは75〜95℃に加熱した状態でその温度を保持して、所望の粒径になるまで粒子を成長させ、コア粒子を得る。その際、コア粒子の粒径としては、4.5〜6.5μmになるまで成長させることが好ましい。コア粒子の粒径は、例えば、コールター・ベックマン社製コールターマルチサイザー3を使用して測定できる。
この工程は、第1熟成工程で形成されたコア粒子の分散液中に、上記(1)で得られたポリエステル樹脂分散液をシェル形成用樹脂として添加し、ポリエステル樹脂微粒子でコア粒子表面を被覆してシェルを形成する工程である。本発明のポリエステル樹脂微粒子の分散液は、上述したように分散安定性に優れ、凝集バランスを向上させるため、コア粒子をムラなくうすく均一な厚さで被覆するシェル形成を可能にしている。このことにより、得られるトナーの低温定着性および耐熱保管性が両立でき、トナーの表面特性が影響する帯電特性等も良好となるため、高精細な画像形成が可能となる。
この工程は、上記シェル形成工程に引き続き、反応系を加熱処理することにより、コア粒子表面へのシェルの被覆を強化するとともに、粒子の形状が所望の形状になるまで熟成を行う工程である。第2熟成工程は、より具体的には、上記シェル形成の際の反応液の温度を、好ましくはさらに80〜100℃(実施例90℃)まで加熱し、撹拌して、粒子の融着を進行させることで、第2熟成工程を実施する。この際、熟成中の粒子の平均円形度を測定し、0.935〜0.955になるまで第2熟成工程を行うことができる。コア粒子の平均円形度は、実施例で使用した装置および方法で測定できる。
この工程は、前記トナー母体粒子の分散液を、第2熟成工程時の温度から、20〜40℃まで冷却処理(急冷処理)する工程である。冷却処理条件としては、好ましくは1〜20℃/minの冷却速度で冷却する。冷却処理方法としては特に限定されるものではなく、反応容器の外部より冷媒を導入して冷却する方法や、冷水を直接反応系に投入して冷却する方法を例示することができる。
濾過工程では、着色粒子の分散液から着色粒子を濾別する。濾過処理方法としては、遠心分離法、ヌッチェなどを使用して行う減圧濾過法、フィルタープレスなどを使用して行う濾過法、遠心分離機で固液分離する方法などがあり、特に限定されるものではない。
乾燥工程では、洗浄処理された着色粒子に乾燥処理が施される。この乾燥工程で使用される乾燥機としては、スプレードライヤー、真空凍結乾燥機、減圧乾燥機等公知の乾燥機が挙げられ、静置棚乾燥機、移動式棚乾燥機、流動層乾燥機、回転式乾燥機、撹拌式乾燥機等を使用することも可能である。乾燥処理された粒子に含有される水分量は、5質量%以下であることが好ましく、更に好ましくは2質量%以下とされる。ここで、乾燥後に得られた、外添剤処理をする前の粒子をトナー母体粒子と称する。
外添剤処理工程では、乾燥処理を施したトナー母体粒子表面へ必要に応じて外添剤を添加、混合して、トナーを完成させる。この外添剤処理工程では、外添剤として好ましくは、数平均1次粒径5nm以上150nmの単分散球状粒子を添加する。外添剤の添加により、トナーの流動性や帯電性が改良され、また、クリーニング性の向上等が実現される。外添剤の種類は特に限定されるものではなく、たとえば、以下に例示する公知の無機微粒子や有機微粒子、及び、滑剤がある。これら外添剤や滑剤の添加量は、トナー母体粒子に対して0.1〜10.0質量%が好ましい。
本実施形態では、必要に応じて着色剤および添加剤が分散され、結着樹脂によって融着された、コアシェル型ではない均質な構造のトナーを製造する。具体的には、本実施形態のトナーの製造方法は、以下の(n)〜(r)の工程を含む。本発明のポリエステル樹脂微粒子の分散液は下記工程(o)で使用され、この場合にはポリエステル樹脂がトナー母体粒子の結着樹脂として使用される。以下、(n)〜(r)の工程について説明する。
(o)凝集、熟成工程
(p)濾過、洗浄工程
(q)乾燥工程
(r)外添剤処理工程
(n)着色剤粒子の分散工程
着色剤粒子の分散工程では、水系媒体中に、少なくとも着色剤を含有する着色剤微粒子の分散液を形成する。この工程は、上記(e)着色剤粒子の分散工程と同様にして実施することができる。よって、詳細な説明は省略する。なお、上記したように本発明の製造方法はクリアトナーにも適用できるため、その場合には着色剤粒子の分散工程は実施されない。
凝集、融着工程においては、上記(1)の工程で得られたポリエステル樹脂の分散液および必要に応じて上記(n)の工程で得られた着色剤粒子の分散液および上記した添加剤を混合して凝集用分散液を調製し、ポリエステル樹脂微粒子および着色剤微粒子を水系媒体中で塩析、凝集、融着させ、トナー母体粒子の分散液を形成させる。また、結着樹脂として、ポリエステル樹脂以外の樹脂、好ましくはスチレンアクリル共重合体の分散液を混合して使用することもでき、上記した他の結着樹脂も使用できる。
上記のような方法で製造したトナーは、キャリアと混合して2成分現像剤として好ましく用いることができる。以下、本発明のトナーと共に使用し得るキャリアについて説明する。キャリアとしては、磁性を有する芯材粒子がコート用樹脂で被覆されて構成されるものが好ましく用いられる。
本発明で使用可能な芯材粒子は、磁場の存在によりその方向に強く磁化する物質(磁性体)で、たとえば、鉄、ニッケル、コバルト等の強磁性金属、マグネタイトやフェライト、これらを含む合金や化合物、これらを樹脂中に分散させたもの等がある。
キャリアの芯材粒子の被覆に用いられる樹脂は、被覆を形成することが可能な公知の熱可塑性樹脂が使用され、これら熱可塑性樹脂としては、たとえば、ビニル系単量体を用いてラジカル重合等を行うことにより形成されるビニル系樹脂が代表的なものである。その他に多価カルボン酸化合物と多価アルコール化合物の重縮合により形成されるポリエステル樹脂等がある。
上記のようにして得られたトナーとキャリアとを、混合比率が、トナー濃度が現像剤中に3質量%から10質量%となる範囲になるように混合して、本発明の2成分現像剤が製造される。混合方法としては特に制限はなく、機械的混合方法で均一になるまで混合すればよい。例えば、Vブレンダ等で、回転数5〜50rpm、撹拌時間を5〜40分として、撹拌混合することができる。
(1)ポリエステル樹脂粒子分散液の作製
(1−1)ポリエステル樹脂(スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂)の作製
以下の手順により、ポリエステル分子鎖にスチレンアクリル共重合体分子鎖を分子結合させたスチレンアクリル変性ポリエステル樹脂を含有するポリエステル樹脂を作製した。
ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物 500質量部
テレフタル酸 154質量部
フマル酸 45質量部
オクチル酸スズ 2質量部
を投入し、温度230℃で8時間の重縮合反応を行い、さらに、8kPaで1時間重縮合反応を継続後、160℃に冷却した。この様にしてポリエステル分子を形成した。
スチレン 142質量部
n−ブチルアクリレート 35質量部
重合開始剤(ジ−t−ブチルパーオキサイド) 10質量部
滴下後、温度160℃を維持した状態で1時間の付加重合反応を行った後、200℃に昇温させ、10kPaで1時間保持した。この様にして、スチレンアクリル変性ポリエステル分子を構成するスチレンアクリル共重合体分子鎖の含有割合が20質量%のスチレンアクリル変性ポリエステル樹脂(以下「ポリエステル樹脂」)を作製した。
ポリエステル樹脂分散液(1)の作製
上記(1−1)により得られたポリエステル樹脂100質量部を、酢酸エチル400質量部に溶解させ、次いで、5.0質量%の水酸化ナトリウム水溶液25質量部を添加して、樹脂溶液を形成した。この樹脂溶液を撹拌装置を有する容器へ投入し、樹脂溶液を撹拌しながら、0.26質量%のラウリル硫酸ナトリウム水溶液638質量部を30分かけて滴下混合した。上記ラウリル硫酸ナトリウム水溶液を滴下途中、反応容器内の液が白濁し、さらに、上記ラウリル硫酸ナトリウム水溶液を全量滴下後、樹脂溶液粒子を均一に分散させた乳化液が形成された。当該乳化液中の樹脂溶液粒子をレーザ回折式粒度分布測定装置「LA−750」(堀場製作所社製)にて測定したところ、体積平均粒径は135nmであった。
オーブン温度:80℃
ニードル温度:150℃
トランスファー温度:150℃
<ガスクロマトグラフ測定条件>
カラム:社製、DB−624
(内径250μm、膜厚1.4μm、長さ30mm)
キャリアガス:ヘリウム
インジェクション温度:200℃
検出器温度:250℃
カラム流量:1.5ml/分
カラム温度:40℃×2分ホールドの後、昇温速度10℃/分で230℃まで
(2)結着樹脂(コア用樹脂)粒子分散液の作製
(2−1)第1段重合
撹拌装置、温度センサ、温度制御装置、冷却管、窒素導入装置を取り付けた反応容器に予めアニオン性界面活性剤「ラウリル硫酸ナトリウム」2.0質量部をイオン交換水2900質量部に溶解させたアニオン性界面活性剤溶液を仕込み、窒素気流下230rpmの撹拌速度で撹拌しながら、内温を80℃に昇温させた。
スチレン 540質量部
n−ブチルアクリレート 270質量部
メタクリル酸 65質量部
n−オクチルメルカプタン 17質量部
滴下終了後、溶液を78℃において1時間にわたって加熱・撹拌することによって重合(第1段重合)を行い、「樹脂微粒子(a1)」の分散液を調製した。
撹拌装置を取り付けたフラスコ内において、以下の溶液(2):
溶液(2)
スチレン 94質量部
n−ブチルアクリレート 60質量部
メタクリル酸 11質量部
n−オクチルメルカプタン 5質量部
に、離型剤としてパラフィンワックス(融点:73℃)51質量部を添加し、85℃に加温して溶解させて単量体溶液(2)を調製した。
上記の樹脂微粒子(a11)の分散液に、重合開始剤「KPS」2.5質量部をイオン交換水110質量部に溶解させた開始剤水溶液を添加し、80℃の温度条件下において、以下の溶液(3):
溶液(3)
スチレン 230質量部
n−ブチルアクリレート 100質量部
n−オクチルメルカプタン 5.2質量部
を1時間かけて滴下した。滴下終了後、3時間にわたって加熱・撹拌することによって重合(第3段重合)を行った。その後、28℃まで冷却し、アニオン性界面活性剤溶液中に結着樹脂微粒子(コア用樹脂微粒子)が分散した「結着樹脂粒子分散液」を作製した。結着樹脂微粒子のガラス転移点は65℃、軟化点は90℃、の重量平均分子量は18000であった。
(3)着色剤微粒子分散液の作製方法
ドデシル硫酸ナトリウム90質量部をイオン交換水1600質量部に撹拌溶解し、この溶液を撹拌しながら、カーボンブラック「モーガルL」(キャボット社製)420質量部を徐々に添加し、次いで、撹拌装置「クレアミックス」(エム・テクニック社製)を用いて分散処理することにより、着色剤微粒子が分散されてなる着色剤微粒子の分散液を調製した。この分散液における着色剤微粒子の粒子径を、マイクロトラック粒度分布測定装置「UPA−150」(日機装社製)を用いて測定したところ、117nmであった。
≪トナー母体粒子1の作製≫
撹拌装置、温度センサ、冷却管を取り付けた反応容器に、「結着樹脂微粒子分散液」を固形分換算で288質量部、イオン交換水2000質量部を投入し、5モル/リットルの水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを10に調整した。
凝集、融着工程にて作製した粒子(「トナー母体粒子1の分散液」)を遠心分離機で固液分離し、トナー母体粒子のウェットケーキを形成した。該ウェットケーキを、遠心分離機で濾液の電気伝導度が5μS/cmになるまで35℃のイオン交換水で洗浄し、その後「フラッシュジェットドライヤー」(セイシン企業社製)に移し、水分量が0.5質量%となるまで乾燥して、トナー母体粒子〔1〕を作製した。
上記の「トナー母体粒子〔1〕」に、疎水性シリカ(数平均一次粒子径=12nm)1質量%および疎水性チタニア(数平均一次粒子径=20nm)0.3質量%を添加し、ヘンシェルミキサーにより混合して、トナー1を作製した。
フェライトコア100質量部とシクロヘキシルメタクリレート/メチルメタクリレート(共重合比5/5)の共重合体樹脂粒子を5質量部とを、撹拌羽根付き高速混合機に投入し、120℃で30分間撹拌混合して機械的衝撃力の作用でフェライトコアの表面に樹脂コート層を形成し、体積基準メディアン径50μmのキャリアを得た。キャリアの体積基準メディアン径は、湿式分散機を備えたレーザ回折式粒度分布測定装置「へロス(HELOS)」(シンパティック社製)により測定した。
実施例2〜12では、ポリエステル樹脂分散液中の残留有機溶媒量が、それぞれ下記表1に示した量になるように制御した以外は、実施例1と同様にしてトナーおよび二成分現像剤を作製した。なお、実施例2〜12、比較例1〜4では、ポリエステル樹脂分散液を作成する際にポリエステル樹脂100質量部を溶解させる有機溶媒を総量400質量部となるように調製した。たとえば、実施例2では、酢酸エチル395質量部とエタノール5質量部からなる混合溶媒を、実施例10では、酢酸エチル375質量部とエタノール25質量部からなる混合溶媒を用いた。実施例2〜12のそれぞれにおいて、総量400質量部中に含まれるエタノールの量を上記表1に示した。このように、エタノール量を変化させることにより、実施例2〜12においてポリエステル樹脂分散液中の残留有機溶媒量を制御した。
比較例1〜4では、樹脂分散液中の残留有機溶媒量が、それぞれ下記表2に示した量になるように制御した以外は、実施例1と同様にしてトナーおよび二成分現像剤を作製した。比較例1〜4のそれぞれにおいて、総量400質量部中に含まれるエタノールの量を上記表1に示した。このように、エタノール量を変化させることにより、比較例1〜4においてポリエステル樹脂分散液中の残留有機溶媒量を制御した。
上記のように得られた実施例1〜12および比較例1〜4のトナーは、下記の方法で耐熱保存性、低温定着性、トナー飛散およびかぶりを評価した。評価結果は、併せて下記表2に示す。
(1)耐熱保管性
トナー0.5gを内径21mmの10mLガラス瓶に取り、蓋を閉めて、タップデンサー「KYT−2000」(セイシン企業製)を用いて室温で600回振とうした後、蓋を取った状態で温度55℃、湿度35%RHの環境下に2時間放置した。次いで、トナーを48メッシュ(目開き350μm)の篩上に、トナーの凝集物が解砕しないように注意しながらのせて、パウダーテスター(ホソカワミクロン社製)にセットし、押さえバー、ノブナットで固定し、送り幅1mmの振動強度に調節し、10秒間振動を加えた後、篩上に残存した残存トナー量を測定し、下記式(1)により残存トナー量の比率であるトナー凝集率を算出した。なお、20%以下であれば実使用上問題なく、合格と判断される。
<評価基準>
トナー凝集率が15質量%未満:トナーの耐熱保管性が極めて良好
トナー凝集率が20質量%以下:トナーの耐熱保管性が良好
トナー凝集率が20質量%を超える:トナーの耐熱保管性が悪く、使用不可
(2)低温定着性
市販のカラー複合機「bizhub PRO C6500」(コニカミノルタビジネステクノロジーズ社製)において、定着装置を、定着上ベルトの表面温度を140〜170℃の範囲で、定着下ローラの表面温度を120〜150℃の範囲で変更することができるように改造したものを用い、評価紙「NPi上質紙128g/m2」(日本製紙製)上に、定着速度300mm/secで、トナー付着量11.3g/m2のベタ画像を定着させる定着試験を、コールドオフセットによる定着不良が観察されるまで、設定される定着温度(定着上ベルトの表面温度)を170℃、165℃、…と5℃刻みで減少させるように変更しながら繰り返し行った。なお、定着下ローラは、常に定着上ベルトの表面温度より20℃低い表面温度に設定した。そして、コールドオフセットによる定着不良が観察されない定着実験の最低の定着温度を定着下限温度として評価した。なお、この定着下限温度が低ければ低い程、低温定着性に優れることを意味し、165℃以下であれば実使用上問題なく、合格と判断される。
定着下限温度が150℃以下:実写性能において低温定着性が極めて良好
定着下限温度が165℃以下:実写性能において低温定着性が良好
定着下限温度が170℃以上:実写性能において低温定着性が悪く、使用不可
(3)トナー飛散
上記画像形成装置に、上記で製造したトナーと現像剤を順次装填し、高温高湿(30℃、80%RH)のプリント環境で、印字率が10%の文字画像をA4判の上質紙に40万枚プリントした。トナー飛散は、40万枚プリント終了後に、現像器周辺のトナーこぼれとトナー飛散による画像形成装置の機内汚れ状態を目視で観察して評価した。トナー飛散は、下記の◎、○および△を合格とする。
◎:トナーこぼれ、トナー飛散による機内汚れ全くなく、トナー飛散によるプリント画像の汚れ欠陥もなし
○:軽微なトナーこぼれ、トナー飛散による機内汚れはあるが、トナー飛散によるプリント画像の汚れ欠陥がなく、実用上問題ないレベル
△:トナーこぼれ、トナー飛散による機内汚れがあり、トナー飛散によるプリント画像の汚れ欠陥が一部に認められるが、実用上問題ないレベル
×:トナーこぼれ、トナー飛散による機内汚れがひどく、トナー飛散によるプリント画像の汚れ欠陥が認められ、実用上問題となるレベル。
かぶりは、上記の40万枚プリント終了時のプリントの無地部分のかぶり濃度で評価した。かぶり濃度の測定は、印字されていない上質紙(白紙)の濃度を20ヶ所、画像濃度を測定し、その平均値を白紙濃度とし、次に、無地画像のプリントがなされた上質紙の白地部分を同様に20ヶ所、画像濃度を測定し平均濃度を算出し、その平均濃度から前記白紙濃度を引いた値をかぶり濃度として評価した。測定は反射濃度計「RD−918」(マクベス社製)を用いて行った。
◎:かぶり濃度0.003以下
○:かぶり濃度0.006以下
×:かぶり濃度0.007以上
かぶり濃度は0.006以下を合格とする。
2、12 着色剤微粒子
3、13 凝集した粒子
4 トナー母体粒子
11 コア用樹脂微粒子
14 コア粒子
15 ポリエステル樹脂微粒子
16 シェル
17 コアシェル型トナー母体粒子
A、C、E 凝集剤の添加
B、D、F 加熱による融着
Claims (4)
- 少なくともエステル系溶媒を含む有機溶媒にポリエステル樹脂を溶解し、ポリエステル樹脂溶解液を得る溶解工程、
前記ポリエステル樹脂溶解液を水系分散媒中に乳化分散させ、ポリエステル樹脂乳化液を得る乳化工程、
前記ポリエステル樹脂乳化液から前記有機溶媒を除去してポリエステル樹脂分散液を得る脱溶媒工程、
前記ポリエステル樹脂分散液を含む水系媒体中で、前記ポリエステル樹脂を用いて凝集を行う凝集工程、
を有するトナーの製造方法であって、
前記脱溶媒工程後に得られる前記ポリエステル樹脂分散液中に、前記エステル系溶媒およびアルコール系溶媒が含有されるものであり、
前記エステル系溶媒の濃度をA(ppm)、前記アルコール系溶媒の濃度をB(ppm)とすると、前記エステル系溶媒濃度Aと前記アルコール系溶媒濃度Bが以下の条件を満たすことを特徴とするトナーの製造方法。
200≦A≦1000、
50≦B≦1500、および
0.2≦B/A≦7.5 - 前記エステル系溶媒が、酢酸エチル、酢酸メチルおよび酢酸ブチルからなる群から選ばれる少なくとも一種であり、前記アルコール系溶媒が、エタノール、メタノールおよびイソプロパノールからなる群から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項1に記載のトナーの製造方法。
- 前記エステル系溶媒濃度A(ppm)と前記アルコール系溶媒濃度B(ppm)とが、以下の条件:
270≦A≦720
170≦B≦1330
0.5≦B/A≦4.5
を満たすことを特徴とする請求項1または2に記載のトナーの製造方法。 - ポリエステル樹脂がエステル系溶媒およびアルコール系溶媒を含む水系媒体中に分散されてなるポリエステル樹脂分散液であり、
前記ポリエステル樹脂分散液中に含有されるエステル系溶媒濃度をA(ppm)、アルコール系溶媒濃度をB(ppm)とすると、
エステル系溶媒濃度Aとアルコール系溶媒濃度Bが以下の条件を満たすことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のトナーの製造方法に用いられるポリエステル樹脂分散液。
200≦A≦1000、
50≦B≦1500、および
0.2≦B/A≦7.5
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