ところで、近年、自動車のドアは、上方部位になるにつれて車内側に位置するように湾曲した形状のものが多くなってきている。このような湾曲形状のドアに対して直線状に形成されたガラスランを装着するとシールリップが傾れるように変形してしまうことが懸念される。特に、上記のようにドアガラスがドアの厚み方向に変位したり、ガラスランの組付け誤差等が生じたりすると、ガラスランの長手方向において部分的にシールリップのドアガラスとの接触位置が大きくずれてしまうことが懸念され、場合によってはシール切れを起こしてしまうおそれがある。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、シール性の向上を図ることのできるガラスランを提供することにある。
以下、上記目的等を解決するのに適した各手段につき項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果等を付記する。
手段1.基底部と、該基底部から延びる車内側側壁部及び車外側側壁部とを具備して断面略コ字状をなし、車両のドアフレームの内周に沿って設けられた取付部に取着される本体部と、
前記車内側側壁部の略先端から車外側かつ前記基底部側に向けて延びる車内側シールリップと、
前記車外側側壁部の略先端から車内側かつ前記基底部側に向けて延びる車外側シールリップとを備え、
昇降するドアガラスの車内側の面に前記車内側シールリップが接触し、ドアガラスの車外側の面に前記車外側シールリップが接触することで、ドアガラスとドアフレームとの間のシールが行われ、
前記車内側シールリップ及び前記車外側シールリップのうち少なくとも一方に関して、 下記要件(1)、(2)、(3)の全てを満たすことを特徴とするガラスラン。
要件(1);断面がドアガラスから離間する方向に凸となるような湾曲形状、又は、直線状に構成されていること。
要件(2);先端部が最も厚肉に構成されていること。
要件(3);先端部のうちドアガラスと接触する部位における断面の曲率半径が0.4mm以上、0.6mm以下に構成されていること。
尚、ここに言う「断面」とは、本体部(ガラスラン)の長手方向に対して直交する方向に切断した場合の断面を意味している(以下同様)。
手段1によれば、要件(1)を満たすシールリップは、その断面がドアガラスから離間する方向に凸(対応する側壁部側に凸)となるような湾曲形状、又は、直線状に構成されているため、その先端部のみでドアガラスに接触させることができる。すなわち、要件(1)を満たすシールリップに関しては、ドアガラスとの接触位置(シール線)を先端部に統一することができ、たとえ本体部の内側に進入したドアガラスがドアの厚み方向に変位したとしても、当該シールリップの先端部がドアガラスと常時接触した状態とすることができる。従って、シールリップのドアガラスとの接触位置が大きくずれた部位ができてしまう(シール線が大きく折れ曲がってしまう)ことに起因してシール切れを起こし易くなってしまうといった事態を防止することができる。
ところで、要件(1)を満たすシールリップは、ドアガラスとの接触部位が先端部のみに規定されることから、シールリップの先端部が波打つようにして変形してしまうと、シール切れを起こすことが懸念される。これに対し、本手段1では要件(2)をも満たしていることから、先端部の剛性が高められて先端部の変形が抑止され、当該シールリップの先端部を確実にドアガラスに接触させることができる。従って、シールリップの先端部のみをドアガラスに接触させる構成において、確実にシール性の向上を図ることができる。特に、ドアガラスとの接触面積が小さい場合には、かかる作用効果が一層顕著なものとなる。
さらに、要件(1)、(2)を満たすシールリップが要件(3)をも満たしていることから、ドアガラスとの接触面積を減らすことができ、ドアガラスの摺動性の向上やドアガラスの摺動に際して異音が発生することを防止するといった作用効果が奏される。また、ドアガラスとの接触部位の断面形状が曲率半径の比較的小さい円弧状であることから、例えば、ドアガラスがドアの厚み方向に変位したとしても、ドアガラスとの接触位置が、曲率半径が0.4mm以上、0.6mm以下の部位の表面上で変化するだけであり、ドアガラスとの接触面積を増減させることなく、常にドアガラスといわば線で接触するようにしてシールを行うことができる。従って、上記作用効果が一層確実に奏される。さらに、先端部でドアガラスと接触するシールリップに関し、ドアガラスとの接触面積が小さく、かつ接触部位が断面円弧状をなしていることによって、ドアガラスが本体部の内側、すなわち、車内側シールリップと車外側シールリップとの間に進入する際に、シールリップは、その先端部がドアガラスに案内されるようにして比較的スムースに追従変形することができる。このため、ドアの窓部を閉鎖すること(ドアガラスの上昇)に伴うドアガラスの本体部内側への進入動作、さらには窓部を開放すること(ドアガラスの下降)に伴うドアガラスの本体部内側からの退出動作がスムースに行われ、結果として、ドアガラスをスムースに摺動させることができる。尚、ドアガラスと接触する部位における断面の曲率半径が0.4mmよりも小さいと成形が難しくなるとともに、摩耗し易くなってしまうおそれがある。一方、0.6mmよりも大きな場合には、ドアガラスと面接触状態になり易く、かつ、偏摩擦を生じ易くなってしまうおそれがある。
手段2.前記要件(1)、(2)、(3)を満たすシールリップは、先端部に膨出部が設けられることで当該先端部がその他の部位よりも厚肉に構成され、
前記膨出部は、前記シールリップのドアガラス側の面とは反対側の面から突出していることを特徴とする手段1に記載のガラスラン。
手段2によれば、シールリップの先端部に膨出部を設けて当該先端部をその他の部位よりも厚肉とすることで、先端部の波打つような変形を防止するといった作用効果が一層確実に奏される。また、例えば、膨出部をシールリップのドアガラス側の面から突出させることのみでシールリップの先端部に膨出部を形成すると、シールリップのドアガラスとの接触部位の曲率半径を小さくする関係上、膨出部の形状に制約が生じ、先端部において厚肉部を好適に形成できないおそれがある。これに対し、本手段2によれば、シールリップのドアガラス側の面とは反対側の面に膨出部を設けているため、シールリップのドアガラスとの接触部位及び膨出部をそれぞれ好適な形状に形成することができる。従って、シールリップのドアガラスとの接触部位の曲率半径を小さく構成し、なおかつ、シールリップの先端部に厚肉部を形成するといった構成を確実に実現することができる。
手段3.前記要件(1)、(2)、(3)を満たすシールリップは、その断面において、ドアガラス側の表面上の2点のみで接する仮想直線を引くことのできる形状をなすとともに、
前記仮想直線と直交する方向において前記仮想直線から前記シールリップの前記ドアガラス側の表面までの最大距離が0.4mm以上となっていることを特徴とする手段1又は2に記載のガラスラン。
手段3によれば、要件(1)、(2)、(3)を満たすシールリップの延出方向中間位置がドアガラスに接触するといった事態を確実に回避することができ、より確実に先端部のみでドアガラスに接触させることができる。結果として、上記手段1の作用効果が確実に奏される。
手段4.前記要件(1)、(2)、(3)を満たすシールリップは、先端部においてドアガラス側の面から当該シールリップの延出方向に対して交差する方向に突出する突条部を備え、
前記仮想直線は前記突条部の表面上の点を一方側の接点とし、
前記突条部の表面のうち前記接点を含むドアガラスに接触する部位における断面の曲率半径が0.4mm以上、0.6mm以下に構成されていることを特徴とする手段3に記載のガラスラン。
手段4によれば、要件(1)、(2)、(3)を満たすシールリップをより確実に曲率半径が0.4mm以上、0.6mm以下に構成された部位のみでドアガラスに接触させることができる。結果として、上記手段1の作用効果が確実に奏される。
手段5.前記要件(1)、(2)、(3)を満たすシールリップは、その付根部においてその他の部位よりも薄肉な薄肉部を備えていることを特徴とする手段1乃至4のいずれか1つに記載のガラスラン。
手段5によれば、シールリップがその付根部において積極的に変形するようになる。このため、シールリップは付根部を中心に、その形状を保持したまま傾倒するようにして変形しやすくなり、結果的に、シールリップが延出方向中間部位において屈曲してしまうといった事態を抑止することができる。従って、シールリップが屈曲変形することで先端部以外の部位においてもドアガラスと当接してしまうといった事態をより確実に防止することができる。
尚、「前記薄肉部は、前記シールリップのドアガラス側の面とは反対側の面において、前記シールリップの付根部に溝部が設けられることで形成されていること」としてもよい。この場合、本体部の内側にドアガラスが進入する際のシールリップの傾倒変形をよりスムースなものとすることができ、上記作用効果が一層確実に奏される。
手段6.ドアガラスの上縁部に対応して設けられる押出成形部と、ドアガラスの縦縁部に対応して設けられる押出成形部とを接続する型成形部を備え、
少なくとも1つの前記型成形部に関し、長手方向において前記型成形部の形成幅は2mm以上、8mm以下となっていることを特徴とする手段1乃至5のいずれか1つに記載のガラスラン。
例えば、ガラスランのコーナー部において、ドアガラスの上縁部に対応して設けられる押出成形部(上辺部)と、ドアガラスの縦縁部に対応して設けられる押出成形部(縦辺部)とをそのまま互いに突き当たるまで延長させるようにして接続する場合、上辺部のシールリップと縦辺部のシールリップとの境界部に、ドアフレームの内外周方向に延びる断面略V字状の溝が形成される。この場合、当該溝が形成されたコーナー部においては、シールリップを先端部でしかドアガラスに接触させることができない。このため、例えば、シールリップがドアガラス側に凸となるように湾曲形状をなし、コーナー部以外ではシールリップがその先端部よりも付根部側の位置でドアガラスに接触する構成であると、コーナー部においてシール切れを起こすおそれがある。
従って、従来、前記溝が極力形成されないように、コーナー部においてシールリップの断面形状を徐々に変化させ、コーナー部においてもシールリップをその先端部よりも付根部側の位置でドアガラスと接触させることで、コーナー部におけるシール切れを抑止していた。しかしながら、この場合、型成形部を比較的大きく形成せざるを得なかった。
これに対し、上記要件(1)を満たすシールリップは、ドアガラスとの接触位置が先端部になることから、上辺部と縦辺部との端末部同士を形成幅が2mm以上、8mm以下の型成形部で接続したとしても、シールリップのドアガラスとの接触位置(シール位置)が先端部に統一される。このため、コーナー部においてシール切れを起こすといった事態を確実に防止することができる。従って、シール切れを招くことなく、本手段6に記載のように、型成形部を極力小さくすることができ、型成形部にかかる材料費の低減、型成形部を成形する金型装置(金型及び射出成形機を含む)の小型化・簡略化、及びこれに伴う設備コストの低減、製造工程の効率化等を図ることができる。結果として、製造コストの大幅な低減を図ることができる。
尚、型成形部の形成幅を2mm未満とした場合、例えば、ドアガラスの上縁部に対応して設けられる押出成形部(上辺部)や、ドアガラスの縦縁部に対応して設けられる押出成形部(縦辺部)のシールリップが変形して、当該変形に基づく応力が型成形部のシールリップに作用した際に、当該型成形部のシールリップがいびつに変形しやすくなってしまうおそれがあるが、形成幅を2mm以上とすることで、前記応力を分散させて受けることができ、前記変形を抑制することができる。また、型成形部の形成幅が8mmを超える場合、場合によっては、型成形部のシールリップの先端部におけるシール性の低下を招くおそれがある上、上記した製造コストを低減させるといった作用効果が十分に奏されないことが懸念される。これに対し、形成幅を8mm以下とすることで、かかる不具合を回避することができる上、コーナー部における意匠性の向上を図ることができる。
手段7.前記車内側シールリップ及び前記車外側シールリップの両方が、前記要件(1)、(2)、(3)の全てを満たすことを特徴とする手段1乃至6のいずれか1つに記載のガラスラン。
手段7によれば、上記手段1の作用効果が一層確実に奏される。
以下に、一実施形態について図面を参照しつつ説明する。図1に示すように、自動車のドア用開口部を開閉するフロントドア(以下、単に「ドア1」と称する)には、昇降可能なドアガラスGと、当該ドアガラスGの外周形状に対応して設けられ、ドアガラスGの昇降を案内するとともに、ドアガラスGの周縁部とドアフレーム2との間をシールするガラスラン5とが設けられている。
ガラスラン5は、ドアガラスGの上縁部に対応する押出成形部6、ドアガラスGの前後の縦縁部に対応する押出成形部7、8と、押出成形部6−7、6−8の端末部同士を接続する型成形部9、10とから構成されている。各押出成形部6〜8は、図示しない押出成形機によりほぼ直線状に形成される。型成形部9、10は、2つの押出成形部6−7、6−8が所定の角度をなした状態で相互に接続されるように図示しない金型装置にて接続成形される。すなわち、型成形部9、10は、ガラスラン5のコーナー部に形成されている。そして、窓部Wの外周に沿って形成されるサッシュ部DS、及びサッシュ部DSの前後の縦辺部を下方に延長するようにしてドアパネル3内に設けられたチャンネル部DCの内周に当該ガラスラン5が取付けられている。本実施形態では、ガラスラン5がEPDM(エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム)により構成されている。また、本実施形態では、サッシュ部DS及びチャンネル部DCが取付部に相当する。
図2に示すように、押出成形部8は、基底部14と、該基底部14から延びる車外側側壁部15及び車内側側壁部16とを具備して断面略コ字状をなし、サッシュ部DS(チャンネル部DC)に嵌め込まれる本体部11と、車外側側壁部15の先端部から車内側かつ基底部14側に向けて延びる車外側シールリップ12と、車内側側壁部16の先端部から車外側かつ基底部14側に向けて延びる車内側シールリップ13とを備えている。ドアガラスGにより窓部Wが閉じられた状態においては、車外側シールリップ12がドアガラスGの外側面に対して圧接され、車内側シールリップ13がドアガラスGの内側面に対して圧接される。これにより、ドアガラスGの車外側及び車内側がそれぞれシールされるようになっている。尚、両シールリップ12、13のドアガラスG側の表面には、熱可塑性エラストマー製の摺動層が0.05mm〜0.5mmの間の所定厚さで設けられている。また、車外側シールリップ12は車内側シールリップ13よりも小さく構成されている。これにより、ドアガラスGが車外側に寄せられ、フラッシュサーフィス化が図られる。加えて、車外側側壁部15には、車外側シールリップ12が接触し得る部位において、押出成形部8の長手方向に沿って延びる複数本の密着防止突条部19が設けられている。尚、密着防止突条部19は省略することも可能である。
また、押出成形部6、7、型成形部9、10についても、基本的に押出成形部8と同様の断面形状をなしており、本体部11及びシールリップ12、13等を備えている。
さて、車内側シールリップ13は、その断面がドアガラスGから離間する方向に凸(車内側側壁部16側に凸)となるような湾曲形状をなしている。本実施形態では、ガラスラン5の長手方向全域にわたり車内側シールリップ13がかかる断面形状をなしている。これによって、車内側シールリップ13は、ガラスラン5の長手方向全域にわたりその先端部のみで本体部11の内側に進入したドアガラスGと接触する構成となっている。尚、車内側シールリップ13は、ドアガラスGと接触した際等において、基本的にその形状を保持したまま、車内側シールリップ13の付根部を中心に傾倒するようにして変形することとなる。
また、車内側シールリップ13は、その先端部においてドアガラスG側の面とは反対側の面から突出する膨出部21を備えており、当該膨出部21が形成された先端部がその他の部位よりも厚肉に構成されている。さらに、車内側シールリップ13は、その先端部においてドアガラスG側の面から当該車内側シールリップ13の延出方向に対して交差する方向に突出する突条部22を備えている。本実施形態では、突条部22の表面のうちドアガラスGに接触する部位における断面の曲率半径が0.5mmに構成されている。
また、車内側シールリップ13は、当該車内側シールリップ13を本体部11の長手方向に対して直交する方向に切断してその断面を見た場合に、ドアガラスG側の表面上の2点のみで接する仮想直線X(図2二点鎖線参照)を引くことのできる形状をなしている。さらに、当該仮想直線Xと直交する方向において仮想直線Xから車内側シールリップ13のドアガラスG側の表面までの最大距離Yが1.0mmとなっている。上記のように、本実施形態では、車内側シールリップ13がドアガラスGから離間する方向に凸となるような湾曲形状をなしているとともに、車内側シールリップ13の先端部においてドアガラスG側に突出する突条部22が形成されていることから、突条部22の曲率半径が0.5mmに形成された部位の表面上の点が前記仮想直線Xの一方側の接点となり、車内側シールリップ13の延出方向略中央位置のところで仮想直線Xから車内側シールリップ13までの距離が最大となっている。
加えて、車外側シールリップ12がドアガラスGに押されて複数の密着防止突条部19に接触した状態(密着防止突条部19がない場合には、車外側側壁部15に面で接触した状態)となった場合においても、車内側シールリップ13は、突条部22のうち曲率半径が0.5mmの部位においてドアガラスGに接触する構成となっている。尚、車内側シールリップ13がドアガラスGに押されて車内側側壁部16に面で接触した状態においても、車内側シールリップ13は、突条部22のうち曲率半径が0.5mmの部位においてドアガラスGに接触する構成となっていることとしてもよい。
加えて、車外側シールリップ12は、その断面がドアガラスGから離間する方向に凸となるように若干湾曲している(ほぼ直線状をなしている)とともに、その先端部においてドアガラスG側に突出する突条部25を備え、当該先端部がその他の部位よりも厚肉に構成されている。
また、本実施形態では、ガラスラン5の長手方向における型成形部9、10の形成幅は3mmとなっている。具体的に、本実施形態では、型成形部9、10によって接続される押出成形部6、7、8の端末部が、各押出成形部6、7、8の長手方向に対して斜めにカットされている。さらに、押出成形部6の側壁部15(16)の前端縁と先端縁(ドア1の内周側の端縁)とのなす角度が、押出成形部7の側壁部15(16)の上端縁と先端縁とのなす角度と同じであり、押出成形部6の側壁部15(16)の後端縁と先端縁とのなす角度が、押出成形部8の側壁部15(16)の上端縁と先端縁とのなす角度と同じとなっている。尚、シールリップ12、13や基底部14についても、側壁部15、16の角度に合わせて斜めにカットされている。
そして、押出成形部6−7、6−8の端末部を互いに略突き合わせるようにして(端末部間に3mmの型部成形空間が形成されるようにして)、押出成形部6−7、6−8を図示しない金型装置の金型にセットし、金型に未加硫のEPDMを充填して加硫させることで、型成形部9、10が形成される。つまり、本実施形態では、押出成形部6、7は、型成形部9によって、押出成形部6−7のなすコーナー部の角度が丁度半分のところで接続され、押出成形部6、8は、型成形部10によって、押出成形部6−8のなすコーナー部の角度が丁度半分のところで接続されている。当該構成により、例えば、端末部の角度が異なる押出成形部6、7、8同士を接続する場合に比べ、歩留まりの向上、押出成形部6、7、8の端末部をカットする裁断装置の簡素化、生産性の向上等を図ることができる。尚、ドアガラスGによって窓部Wを閉め切った状態において、型成形部9、10の車内側シールリップ13の先端部(突条部22)は、ドアガラスGの外周縁よりもドアガラスGの内周側に位置し、ドアガラスGの内側面と接触する構成となっている。
以上詳述したように、本実施形態では、車内側シールリップ13は、その断面がドアガラスGから離間する方向に凸となるような湾曲形状に構成されている。このため、車内側シールリップ13をその先端部のみでドアガラスGに接触させることができる。すなわち、車内側シールリップ13のドアガラスGとの接触位置(シール線)を先端部に統一することができ、たとえ本体部11の内側に進入したドアガラスGがドア1の厚み方向に変位したとしても、当該車内側シールリップ13の先端部がドアガラスGと常時接触した状態とすることができる。従って、車内側シールリップ13のドアガラスGとの接触位置が大きくずれた部位ができてしまう(シール線が大きく折れ曲がってしまう)ことに起因してシール切れを起こし易くなってしまうといった事態を防止することができる。
また、本実施形態では、車内側シールリップ13の先端部に膨出部21が設けられており、当該先端部がその他の部位よりも厚肉に構成されている。このため、車内側シールリップ13の先端部の剛性が高められて先端部の変形が抑止され、ガラスラン5の長手方向全域にわたり当該車内側シールリップ13の先端部を確実にドアガラスGに接触させることができる。従って、車内側シールリップ13の先端部のみをドアガラスGに接触させる構成において、確実にシール性の向上を図ることができる。特に、ドアガラスGとの接触面積が小さい場合には、かかる作用効果がより顕著なものとなる。
さらに、車内側シールリップ13は、その先端部においてドアガラスG側に突出する突条部22を備え、突条部22のうちドアガラスGと接触する部位における断面の曲率半径が0.5mmとなっている。このため、ドアガラスGとの接触面積を減らすことができ、ドアガラスGの摺動性の向上やドアガラスGの摺動に際して異音が発生することを防止するといった作用効果が奏される。また、ドアガラスGとの接触部位が断面円弧状をなしていることから、例えば、ドアガラスGがドア1の厚み方向に変位したとしても、ドアガラスGとの接触位置が突条部22の表面上で変化するだけであり、ドアガラスGとの接触面積を増減させることなく、常にドアガラスGと線で接触するようにしてシールを行うことができる。従って、上記作用効果が一層確実に奏される。さらに、先端部でドアガラスGと接触する車内側シールリップ13に関し、ドアガラスGとの接触面積が小さく、かつ接触部位が断面円弧状をなしていることによって、ドアガラスGが本体部11の内側、すなわち、車内側シールリップ13と車外側シールリップ12との間に進入する際に、車内側シールリップ13は、その先端部がドアガラスGに案内されるようにして比較的スムースに追従変形することができる。このため、ドア1の窓部Wを閉鎖すること(ドアガラスGの上昇)に伴うドアガラスGの本体部11内側への進入動作、さらには窓部Wを開放すること(ドアガラスGの下降)に伴うドアガラスGの本体部11内側からの退出動作がスムースに行われ、結果として、ドアガラスGをスムースに摺動させることができる。
また、例えば、膨出部21を車内側シールリップ13のドアガラスG側の面から突出させることのみで車内側シールリップ13の先端部に厚肉部を形成する場合、車内側シールリップ13のドアガラスGとの接触部位の曲率半径を小さくする関係上、膨出部21の形状に制約が生じ、先端部において厚肉部を好適に形成できないおそれがある。これに対し、本実施形態によれば、膨出部21は、車内側シールリップ13のドアガラスG側の面とは反対側の面に設けられている。このため、車内側シールリップ13のドアガラスGとの接触部位である突条部22及び膨出部21をそれぞれ好適な形状に形成することができる。従って、車内側シールリップ13のドアガラスGとの接触部位(突条部22)の曲率半径を小さく構成し、なおかつ、車内側シールリップ13の先端部に厚肉部を形成するといった構成を確実に実現することができる。
加えて、本実施形態では、車内側シールリップ13を断面方向から見た場合に、ドアガラスG側の表面上の2点のみで接する仮想直線X(図2の二点鎖線参照)と、車内側シールリップ13のドアガラスG側の面との間の仮想直線Xに対して直交する方向における最大距離Yが1.0mmとなっている。このため、車内側シールリップ13の延出方向中間位置がドアガラスGに接触するといった事態を確実に回避することができ、より確実に先端部のみでドアガラスGに接触させることができる。特に、本実施形態では、仮想直線Xの一方の接点が突条部22の曲率半径が0.5mmの部位の表面上に存在することから、先端部以外の部位での接触をより確実に回避させることができる上、車内側シールリップ13をより確実に曲率半径が0.5mmに構成された部位のみでドアガラスGに接触させることができる。尚、車内側シールリップ13のドアガラスG側の表面に設けられる熱可塑性エラストマー製の摺動層によって突条部22を形成してもよい。
また、車内側シールリップ13は、ドアガラスGから離間する方向に凸となるように湾曲形状をなし、ドアガラスGとの接触位置が先端部になることから、ドアガラスGの上縁部に対応して設けられる押出成形部6(上辺部)と、ドアガラスGの縦縁部に対応して設けられる押出成形部7、8(縦辺部)との端末部同士を、形成幅が3mmの型成形部9、10で接続したとしても、ガラスラン5の長手方向全域にわたり車内側シールリップ13のドアガラスGとの接触位置(シール位置)が先端部に統一される。このため、コーナー部とそれ以外の一般部とでシールリップのシール位置がずれることに起因して、コーナー部においてシール切れを起こすといった事態を防止しつつ、型成形部9、10を極力小さくすることができる。従って、型成形部9、10にかかる材料費の低減、型成形部9、10を成形する金型装置(金型及び射出成形機を含む)の小型化・簡略化、及びこれに伴う設備コストの低減、製造工程の効率化等を図ることができる。結果として、製造コストの大幅な低減を図ることができる。
尚、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。勿論、以下において例示しない他の応用例、変更例も当然可能である。
(a)上記実施形態では、車内側シールリップ13(車外側シールリップ12)は、ドアガラスGから離間する方向に凸となるような湾曲形状をなしているが、車内側シールリップ13(車外側シールリップ12)を直線状に構成してもよい。当該構成を採用する場合においても、車内側シールリップ13をその先端部のみでドアガラスGに接触させることができる。但し、ドアガラスGから離間する方向に凸となるような湾曲形状とした方が車内側シールリップ13の先端部以外の部位をドアガラスGから遠ざけることができ、先端部以外の部位がドアガラスGに接触してしまうといったおそれをより確実に防止することができる。尚、直線状に形成された車内側シールリップ13に関しても、その先端部が最も厚肉となっていることとする。
(b)また、上記実施形態では、車内側シールリップ13及び車外側シールリップ12の両方が、ドアガラスGから離間する方向に凸となるような湾曲形状に形成されているものを示したが、車内側シールリップ13及び車外側シールリップ12の少なくとも一方が、ドアガラスGから離間する方向に凸となるような湾曲形状、又は、直線状に構成されていればよい。例えば、車内側シールリップ13をドアガラスG側に凸となるような湾曲形状に形成し、車外側シールリップ12をドアガラスGから離間する側に凸となるような湾曲形状に形成することとしてもよい。但し、一般に、ドアガラスGはフラッシュサーフィス化の観点から窓部Wを閉鎖した状態において車外側に寄せられる(車外側シールリップ12に比較的強く押付けられる)ため、車外側シールリップ12の方が車内側シールリップ13に比べシール状態が維持されやすい。このため、少なくとも車内側シールリップ13に上記構成(ドアガラスGから離間する側に凸となる湾曲形状又は直線状)を適用するのが望ましい。さらには、上記手段7に示したように、車内側シールリップ13及び車外側シールリップ12の両方に上記構成を適用するのがより望ましい。但し、シールリップ12、13のどちらか一方だけに上記構成を適用する場合、当該一方のシールリップ12又は13は、その先端部が最も厚肉に構成される上、ドアガラスGに接触する部位における断面の曲率半径が0.5mm(0.4mm以上、0.6mm以下)に構成されることとする。尚、車内側シールリップ13及び車外側シールリップ12のうち一方をドアガラスGから離間する方向に凸となる湾曲形状とし、他方を直線状に構成することとしてもよい。また、両シールリップ12、13を直線状に構成してもよい。さらに、直線状に構成されたシールリップ12、13の先端部には、ドアガラスG側の面から突出する突条部22が必須に設けられていることとする。
(c)上記実施形態では、突条部22の表面のうちドアガラスGに接触する部位の曲率半径が0.5mmに構成されているが、0.4mm以上、0.6mm以下に構成されていることとしてもよく、ドアガラスGとの接触面積を減らす等の作用効果が十分に奏される。尚、ドアガラスGと接触する突条部22の曲率半径が0.4mm未満である場合、押出成形によって当該突条部22を上手く作れないおそれがある。一方、突条部22の曲率半径が0.6mmを超える場合、ドアガラスGとの接触面積が増え、ドアガラスGの摺動時の抵抗が増大する等の不具合を招くおそれがある。
さらに、上記実施形態では特に言及していないが、車外側シールリップ12の突条部25のうちドアガラスGに接触する部位における断面の曲率半径は0.4mm以上、0.6mm以下であることとしてもよい。
また、上記実施形態において、膨出部21の断面形状は特に限定されるものではなく、車内シールリップ13の先端部形状(突条部22の形状)に応じて、車内側シールリップ13の変形が防止されるような形状に形成されていればよい。加えて、上記実施形態において、膨出部21、突条部22を省略することとしてもよい。但し、ドアガラスGから離間する側に凸となる湾曲形状をなす車内側シールリップ13はその先端部が最も厚肉であり、車内側シールリップ13のうちドアガラスGと接触する部位の曲率半径が0.4mm〜0.6mmであることとする。
(d)上記実施形態では、車内側シールリップ13は、仮想直線Xと直交する方向において仮想直線Xから車内側シールリップ13のドアガラスG側の表面までの最大距離Yが1.0mmとなるように構成されているが、距離Yを0.4mm以上としてもよい。このように、距離Yを0.4mm以上とすることで、車内側シールリップ13の延出方向中間位置がドアガラスGに接触することを防止するといった作用効果が十分に奏される。また、距離Yを2.4mm以下にすることとしてもよい。この場合、突条部22を形成するために使用される材料の抑制、ドアガラスGが本体部11の内側に進入した際の車内側シールリップ13の変形量の抑制等を図ることができる。
(e)上記実施形態では特に言及していないが、車内側シールリップ13の付根部をその他の部位よりも薄肉に構成することとしてもよい。例えば、図3に示すように、車内側シールリップ13の付根部に対し、ドアガラスG側の面とは反対側の面において溝部31を形成することで、当該溝部31が形成された付根部をその他の部位よりも薄肉に構成すること(付根部において薄肉部が形成されていること)としてもよい。これにより、車内側シールリップ13は、その付根部において積極的に変形するようになり、ドアガラスGと接触して傾倒変形する際に、その形状が維持され易い。このため、車内側シールリップ13が延出方向中間部位において屈曲してしまうといった事態を抑止することができ、先端部以外の部位においてもドアガラスGと当接してしまうといった事態をより確実に防止することができる。
(f)上記実施形態では特に言及していないが、車内側シールリップ13と車内側側壁部16とのなす角度は、本体部11の内側にドアガラスGが進入していない状態において30〜60度となっていることとしてもよい。ちなみに、この角度が大きすぎると(例えば60度を超えると)車内側シールリップ13が反転する(本体部11の外側に捲れる)おそれがある。一方、小さすぎると(例えば30度未満となると)ドアガラスGが本体部11に進入した際にドアガラスGから離間する方向に凸となる湾曲形状に構成された車内側シールリップ13の付根部側が車内側側壁部16に接触しやすくなってしまったり、ドアガラスGが振動した場合にもドアガラスGとの接触状態を維持するべく車内側シールリップ13を比較的長く形成する必要が生じたりするおそれがある。
(g)上記実施形態では、ガラスラン5の長手方向における型成形部9、10の形成幅が3mmとなっているが、特にこのような構成に限定されるものではない。但し、製造コストの低減を図るといった観点からすると、型成形部9、10の一方又は両方の形成幅を2mm〜8mmに構成することが望ましい。
尚、型成形部9、10の形成幅を2mm未満とした場合、例えば、ドアガラスGの上縁部に対応して設けられる押出成形部6(上辺部)や、ドアガラスGの縦縁部に対応して設けられる押出成形部7、8(縦辺部)の車内側シールリップ13が変形して、当該変形に基づく応力が型成形部9、10の車内側シールリップ13に作用した際に、当該型成形部9、10の車内側シールリップ13がいびつに変形しやすくなってしまうおそれがあるが、形成幅を2mm以上とすることで、前記応力を分散させて受けることができ、前記変形を抑制することができる。また、型成形部9、10の形成幅が8mmを超えると、場合によっては、型成形部9、10の車内側シールリップ13の先端部におけるシール性の低下を招くおそれがある上、上記した製造コストを低減させるといった作用効果が十分に奏されないことが懸念される。これに対し、形成幅を8mm以下とすることで、かかる不具合を回避することができる上、ガラスラン5のコーナー部における意匠性の向上を図ることができる。
また、上記実施形態では、同じ角度にカットされた押出成形部6、7、8の端末部同士を接続しているが、角度の異なる端末部同士を接続することとしてもよい。
(h)上記実施形態では特に言及していないが、ドアガラスGとの接触状態にある車内側シールリップ13の先端部(突条部22)は、車内側側壁部16の延出方向において、車内側側壁部16の内側面と車内側シールリップ13との境界部から車内側側壁部16の内側面の全長の8割の長さだけ離れた第1の位置と、車内側側壁部16の内側面と車内側シールリップ13との境界部から車内側側壁部16の内側面の全長の5割の長さだけ離れた第2の位置との間に位置するように構成されている。すなわち、車内側側壁部16の延出方向において車内側シールリップ13の先端部(突条部22)が前記第1の位置よりも基底部14側に位置しないように構成されることで、ガラスラン5のコーナー部(型成形部9、10)において車内側シールリップ13の先端部をドアガラスGの外周縁よりも内周側に位置させやすい。このため、車内側シールリップ13がその先端部においてドアガラスGと接触する構成を採用しても、ドアガラスGのコーナー部の形状を変更することなく、コーナー部において車内側シールリップ13の先端部をドアガラスGに確実に接触させることができる。
尚、図3のガラスラン5に関しては、車内側側壁部16の延出方向において、車内側側壁部16の内側面と車内側シールリップ13との境界部から車内側側壁部16の内側面の全長の6割の長さだけ離れた位置が第1の位置となり、車内側側壁部16の内側面と車内側シールリップ13との境界部から車内側側壁部16の内側面の全長の4割の長さだけ離れた位置が第2の位置となっている。
但し、車内側シールリップ13の延出長が短すぎると、本体部11の内側に進入したドアガラスGがドア1の厚み方向に振動した場合等において車内側シールリップ13とドアガラスGとが離間する(シール切れが発生する)おそれがあるため、ドアガラスGと接触状態にある車内側シールリップ13の先端部は、車内側側壁部16の延出方向において、車内側側壁部16の内側面と車内側シールリップ13との境界部から車内側側壁部16の内側面の全長の3割の長さだけ離れた位置よりも基底部14側に位置するよう構成することが望ましい。
(i)上記実施形態では、ガラスラン5の本体部11とシールリップ12、13とをEPDMをベースとして構成しているが、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)等の別の素材により構成してもよい。また、上記実施形態では、フロントドアのガラスラン5に関して特に詳しく説明しているが、リアドア等のガラスランに適用してもよい。さらに、シールリップ12、13の表面の摺動層は、熱可塑性エラストマーの他にウレタン塗膜で形成してもよい。