JP2011009521A - 半導体装置及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】窒化物半導体デバイス層がエッチングされないようにしながら、窒化物半導体デバイス層を基板から剥離することができるようにする。
【解決手段】半導体装置の製造方法を、基板12上に、エッチング犠牲層13を形成する工程と、エッチング犠牲層13上に、エッチングストッパ層2を形成する工程と、エッチングストッパ層2上に、窒化物半導体デバイス層1を形成する工程と、エッチング犠牲層13を、光電気化学エッチングによって除去する工程とを含むものとし、エッチングストッパ層2を、窒化物半導体デバイス層1に正孔が蓄積することを防止する層とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、窒化物半導体を用いた半導体装置及びその製造方法に関する。
GaN系電子デバイスは、その物性的特徴から高耐圧で高速動作可能なデバイスとして、例えばミリ波帯レーダシステム、無線通信基地局システム、サーバシステム等への応用が期待されている。
一方、GaN系光デバイスは、そのバンドギャップ波長帯を利用して、信号機の青色LED(Light Emitting Diode)、自動車のヘッドランプや室内照明の白色LED、ブルーレイディスク用青紫色レーザなどへの実用化がすでに進んでいる。
通常、これらのデバイスにおいては、主に放熱のために窒化物半導体デバイス層を成長したSiC基板やサファイア基板を例えば100μm前後にまで薄化する。しかしながら、これらの基板は非常に高価である。
そこで、低コスト化のために、光電気化学(PEC;Photoelectrochemical)エッチングを用いて、窒化物半導体デバイス層をこれらの基板から剥離して、基板を再利用することが検討されている。剥離が出来れば、放熱のための基板薄化も不要となる。
例えば、光電気化学エッチングを用いてGaNをエッチングする場合、GaNのバンドギャップに相当する波長(365nm)よりも短いUV(Ultra Violet)光(紫外線)を照射する。これにより、GaN中に電子−正孔対が生成され、電子はバイアス印加によって引き抜かれ、残った正孔がGaNの表面側に移動する。そして、水酸化カリウム(KOH)水溶液のOHイオンとの反応でGaN表面の酸化・溶解を繰り返しながらGaNがエッチングされる。
C. Youtsey et al., "Highly anisotropic photoenhanced wet etching of n-type GaN", Appl. Phys. Lett. 71(15), 13 October 1997, pp.2151-2153
ところで、例えば図33に示すように、サファイア基板上に、n型GaN犠牲層及びp型GaNエッチングストッパ層を介して、窒化物半導体デバイス層を形成する。そして、KOH水溶液を用いた光電気化学エッチングによってn型GaN犠牲層を除去して、サファイア基板から窒化物半導体デバイス層を剥離することが考えられる。
この場合、n型導電性を持つGaN層とKOH水溶液との表面ポテンシャルの関係により、n型GaN層の表面には正孔が溜まりやすい(図33、図34中、2−2′参照)。また、p型導電性を持つGaN層とKOH水溶液との表面ポテンシャルの関係により、正孔は表面に出現しにくい(図33、図34中、1−1′参照)。このため、n型導電性を持つGaN層はエッチング犠牲層として、p型導電性を持つGaN層はエッチングストッパ層として機能する。
さらに、例えば図33に示すように、n型GaN犠牲層にトレンチ電極が接するようにすることで、高速にエッチングを進めることが可能となる。
しかしながら、窒化物半導体デバイス層を基板から剥離する工程において、剥離時間が長くなると、エッチング液にさらされている時間が長くなるため、図35に示すように、p型GaNエッチングストッパ層も徐々にエッチングされてしまうことがわかった。
この場合、n型GaN犠牲層/p型GaNエッチングストッパ層領域(図35、図36中、3−3′参照)では、UV光照射によって、常に電子−正孔対が生成され、電子はバイアス印加によってトレンチ電極側に引き抜かれる。
一方、n型GaN犠牲層で生成された正孔でOHイオンとの反応が出来なかった一部の正孔は余剰となる。そして、pn接合のバンドポテンシャルの関係より、これらの余剰の正孔はp型GaNエッチングストッパ層や窒化物半導体デバイス層に流れ込み、p型GaNエッチングストッパ層で生成された正孔とともにp型GaNエッチングストッパ層や窒化物半導体デバイス層に蓄積し続けることになる。
正孔が蓄積し続けると、いかにKOH水溶液に対して表面ポテンシャル障壁を持つp型GaNエッチングストッパ層といえども、正孔がある確率で表面側に出現し、OHイオンと反応することになる(図35、図36中、4−4′参照)。これにより、p型GaNエッチングストッパ層もわずかではあるが、エッチングが進行することになる。このようにして、p型GaNエッチングストッパ層が、エッチングストッパ層として十分機能せず、エッチングされてしまい、窒化物半導体デバイス層に正孔が蓄積していると、窒化物半導体デバイス層もエッチング(侵食)されてしまうおそれがある。
そこで、窒化物半導体デバイス層がエッチングされないようにしながら、窒化物半導体デバイス層を基板から剥離することができるようにしたい。
このため、本半導体装置の製造方法は、基板上に、エッチング犠牲層を形成する工程と、エッチング犠牲層上に、エッチングストッパ層を形成する工程と、エッチングストッパ層上に、窒化物半導体デバイス層を形成する工程と、エッチング犠牲層を、光電気化学エッチングによって除去する工程とを含み、エッチングストッパ層は、窒化物半導体デバイス層に正孔が蓄積することを防止する層であることを要件とする。
本半導体装置は、窒化物半導体デバイス層と、窒化物半導体デバイス層に正孔が蓄積することを防止するエッチングストッパ層とを備え、窒化物半導体デバイス層を成長させるために用いる基板を有しないことを要件とする。
したがって、本半導体装置及びその製造方法によれば、窒化物半導体デバイス層がエッチングされないようにしながら、窒化物半導体デバイス層を基板から剥離することができるという利点がある。
第1実施形態にかかる半導体装置の製造方法における原理を説明するための模式図である。 第1実施形態にかかる半導体装置の製造方法における原理を説明するためのエネルギバンドダイヤグラムである。 (A),(B)は、第1実施形態にかかる半導体装置の製造方法を説明するための模式的断面図である。 (A)〜(C)は、第1実施形態にかかる半導体装置の製造方法を説明するための模式的平面図である。 (A),(B)は、第1実施形態にかかる半導体装置の製造方法を説明するための模式的断面図であり、(A)は、図4(C)中、X方向から見た模式的断面図であり、(B)は、図4(C)中、Y方向から見た模式的断面図である。 (A),(B)は、第1実施形態にかかる半導体装置の製造方法を説明するための模式的断面図であり、(A)は、図4(C)中、X方向から見た模式的断面図であり、(B)は、図4(C)中、Y方向から見た模式的断面図である。 (A),(B)は、第1実施形態にかかる半導体装置の製造方法を説明するための模式的断面図であり、(A)は、図4(C)中、X方向から見た模式的断面図であり、(B)は、図4(C)中、Y方向から見た模式的断面図である。 (A),(B)は、第1実施形態にかかる半導体装置の製造方法を説明するための模式的断面図であり、(A)は、図4(C)中、X方向から見た模式的断面図であり、(B)は、図4(C)中、Y方向から見た模式的断面図である。 (A),(B)は、第1実施形態にかかる半導体装置の製造方法を説明するための模式的断面図であり、(A)は、図4(C)中、X方向から見た模式的断面図であり、(B)は、図4(C)中、Y方向から見た模式的断面図である。 (A),(B)は、第1実施形態にかかる半導体装置の製造方法を説明するための模式的断面図であり、(A)は、図4(C)中、X方向から見た模式的断面図であり、(B)は、図4(C)中、Y方向から見た模式的断面図である。 (A),(B)は、第1実施形態にかかる半導体装置の製造方法を説明するための模式的断面図であり、(A)は、図4(C)中、X方向から見た模式的断面図であり、(B)は、図4(C)中、Y方向から見た模式的断面図である。 (A),(B)は、第1実施形態にかかる半導体装置の製造方法を説明するための模式的断面図であり、(A)は、図4(C)中、X方向から見た模式的断面図であり、(B)は、図4(C)中、Y方向から見た模式的断面図である。 第1実施形態にかかる半導体装置の製造方法を説明するための模式的平面図である。 (A),(B)は、第1実施形態にかかる半導体装置の製造方法を説明するための模式的断面図であり、(A)は、図4(C)中、X方向から見た模式的断面図であり、(B)は、図4(C)中、Y方向から見た模式的断面図である。 (A),(B)は、第1実施形態にかかる半導体装置の製造方法を説明するための模式的断面図であり、(A)は、図4(C)中、X方向から見た模式的断面図であり、(B)は、図4(C)中、Y方向から見た模式的断面図である。 (A),(B)は、第1実施形態にかかる半導体装置の製造方法を説明するための模式的断面図であり、(A)は、図4(C)中、X方向から見た模式的断面図であり、(B)は、図4(C)中、Y方向から見た模式的断面図である。 第1実施形態にかかる半導体装置の製造方法を説明するための模式的断面図である。 第1実施形態にかかる半導体装置の製造方法及び半導体装置の構成を説明するための模式的断面図である。 第2実施形態にかかる半導体装置の構成を説明するための模式的断面図である。 第2実施形態にかかる半導体装置の製造方法を説明するための模式的平面図である。 (A),(B)は、第3実施形態にかかる半導体装置の製造方法を説明するための模式的断面図である。 (A)〜(D)は、第3実施形態にかかる半導体装置の製造方法を説明するための模式的断面図である。 (A)〜(D)は、第3実施形態にかかる半導体装置の製造方法及び半導体装置の構成を説明するための模式的断面図である。 (A)〜(D)は、第4実施形態にかかる半導体装置の製造方法を説明するための模式的断面図である。 (A)〜(D)は、第4実施形態にかかる半導体装置の製造方法を説明するための模式的断面図である。 (A),(B)は、第4実施形態にかかる半導体装置の製造方法及び半導体装置の構成を説明するための模式的断面図である。 第5実施形態にかかる半導体装置の製造方法における原理を説明するための模式図である。 第5実施形態にかかる半導体装置の製造方法における原理を説明するためのエネルギバンドダイヤグラムである。 第5実施形態にかかる半導体装置の製造方法における課題を説明するためのエネルギバンドダイヤグラムである。 第5実施形態にかかる半導体装置の製造方法を説明するための模式的断面図である。 (A)は、第5実施形態にかかる半導体装置のAlGaN/GaN超格子構造まで成長させたエピタキシャルウェハのX線回折パターンを示しており、(B)は、第5実施形態にかかる半導体装置のAlGaN/GaN超格子構造まで成長させたエピタキシャルウェハのAFM像を示している。 第5実施形態にかかる半導体装置の製造方法及び半導体装置の構成を説明するための模式的断面図である。 半導体装置の製造方法において光電気化学エッチングを用いる場合を説明するための模式図である。 半導体装置の製造方法において光電気化学エッチングを用いる場合のエネルギバンドダイヤグラムである。 半導体装置の製造方法において光電気化学エッチングを用いる場合の課題を説明するための模式図である。 半導体装置の製造方法において光電気化学エッチングを用いる場合の課題を説明するためのエネルギバンドダイヤグラムである。
以下、図面により、本実施形態にかかる半導体装置及びその製造方法について説明する。
[第1実施形態]
第1実施形態にかかる半導体装置及びその製造方法について、図1〜図18を参照しながら説明する。
本実施形態にかかる半導体装置は、窒化物半導体を用いた半導体装置であって、例えば窒化ガリウム(GaN)系高電子移動度トランジスタ[GaN−HEMT(High Electron Mobility Transistor);GaN系デバイス]である。本実施形態では、窒化物半導体デバイス層の表面側に電極を配置する横型電子デバイス(GaN系横型電子デバイス)である。
本半導体装置は、図18に示すように、窒化物半導体デバイス層1と、エッチングストッパ層2とを備え、例えばアルミナセラミック基板等の台座3に接着層4を介して実装されている。
本実施形態では、窒化物半導体デバイス層1は、GaN層(チャネル層)5と、AlGaN層(バリア層)6とを含む。そして、素子分離領域7が形成されている。また、AlGaN層6上にソース電極8、ドレイン電極9及びゲート電極10が形成されている。さらに、表面はSiN膜(絶縁膜)11で覆われている。
なお、エッチングストッパ層2の構成については後述する。
また、本実施形態では、このように構成される半導体装置を製造するのに、図3(B)に示すようなデバイスを用いる。つまり、基板12と、GaN層5及びAlGaN層6を含む窒化物半導体デバイス層1と、エッチング犠牲層13と、エッチングストッパ層2とを備え、素子分離領域7、ソース電極8、ドレイン電極9、ゲート電極10、SiN膜11を有するデバイスを用いる。
そして、図1に示すように、光電気化学(PEC)エッチングによってエッチング犠牲層13を除去し、窒化物半導体デバイス層1を基板12から分離した後、図18に示すように、接着層4を介して台座3に実装することによって、半導体装置が製造される。この場合、半導体装置は、窒化物半導体デバイス層1と、窒化物半導体デバイス層1に正孔が蓄積することを防止するエッチングストッパ層2とを備え、窒化物半導体デバイス層1を成長させるために用いる基板を有しないものとして構成される。
本実施形態では、図3(B)に示すように、基板12は、サファイア基板である。このサファイア基板12上には、AlN核形成層14が形成されている。つまり、サファイア基板12とエッチング犠牲層13との間には、AlN核形成層14が形成されている。
エッチング犠牲層13は、基板12と窒化物半導体デバイス層1との間に設けられており、光電気化学エッチングによって除去される層である。本実施形態では、エッチング犠牲層13はn型GaN層である。
エッチングストッパ層2は、窒化物半導体デバイス層1とエッチング犠牲層13との間に設けられており、窒化物半導体デバイス層1に正孔が蓄積することを防止する層である。
ここでは、エッチングストッパ層2、即ち、窒化物半導体デバイス層1に正孔が蓄積することを防止する層は、ディープトラップ(ディープレベル)を含む窒化物半導体層である。
ここで、ディープトラップを含む窒化物半導体層2は、例えば、Fe,Mn,Co,Cr等の遷移金属がドープされた窒化物半導体層、Mg又はZnをドープ(例えば高濃度ドープ)し、かつ、活性化していない窒化物半導体層、Cドープ窒化物半導体層、低温成長された窒化物半導体層である。但し、多結晶化すると、エッチング液に容易に溶けてしまうため、単結晶が好ましい。なお、ディープトラップを含む窒化物半導体層2は、複数(多数)のディープトラップを含む窒化物半導体層であることが好ましい。
なお、低温成長窒化物半導体層とは、通常の成長温度よりも200℃〜300℃程度温度を下げて成長させた窒化物半導体層をいう。例えば、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法によって成長させる場合には、700℃〜800℃程度の温度で成長させることをいう。また、MBE(Molecular Beam Epitaxy)法によって成長させる場合には、500℃〜600℃程度の温度で成長させることをいう。
本実施形態では、ディープトラップを含む窒化物半導体層2は、FeドープGaN層(ディープトラップを含むGaN層)である。
次に、このようなディープトラップを含む窒化物半導体層2を、窒化物半導体デバイス層1とエッチング犠牲層13との間に導入することで、窒化物半導体デバイス層1に正孔が蓄積することを防止できる原理について、図1及び図2を参照しながら説明する。
ここで、図2は、n型GaN犠牲層13、ディープトラップを含むGaN層2、デバイス層1としてのGaN層のエネルギバンドダイヤグラムを示している。図2中、5−5′は、n型GaN犠牲層13とディープトラップを含むGaN層2との間(図1中、5−5′参照)のエネルギバンドダイヤグラムを示している。また、図2中、6−6′は、ディープトラップを含むGaN層2とKOH溶液との間(図1中、6−6′参照)のエネルギバンドダイヤグラムを示している。
図2中、5−5′で示す領域、即ち、n型GaN犠牲層/ディープトラップを含むGaN層領域では、UV光(365nm)照射によって、電子−正孔対が生成され、電子はバイアス印加によってトレンチ電極側に引き抜かれる。
一方、n型GaN犠牲層13で生成された正孔でOHイオンとの反応が出来なかった一部の正孔は余剰となる。そして、n型GaN犠牲層13とディープトラップを含むGaN層2とのバンドポテンシャルの関係より、これらの余剰の正孔は、ディープトラップを含むGaN層2に流れ込み、トラップに捕獲される。つまり、上述の発明が解決しようとする課題の欄で説明したように、p型GaNエッチングストッパ層を用いると、n型GaN犠牲層で励起された一部の余剰正孔がp型GaNエッチングストッパ層やデバイス層としてのGaN層に流れ込み、蓄積してしまう。これに対し、ディープトラップを含むGaN層2を用いると、ディープトラップを含むGaN層2に流れ込んだ正孔はトラップに捕獲される。このように、ディープトラップを含むGaN層2によって、デバイス層1としてのGaN層に正孔が蓄積するのを防止することができる。
また、ディープトラップを含むGaN層2で励起された正孔は、非発光再結合中心となるディープトラップで、励起後直ちに再結合(非発光再結合)し、消滅する。
さらに、n型GaN犠牲層13が除去され、エッチング液(KOH溶液)にむき出しとなった領域、即ち、図1、図2中、6−6′で示す領域においても、ディープトラップを含むGaN層2の表面側に正孔が出現することがなく、ディープトラップで再結合し、消滅する。
このため、エッチングストッパ層としてのディープトラップを含むGaN層2の表面側に正孔が出現することがなく、OHイオンと反応しないため、ディープトラップを含むGaN層2はエッチングされず、エッチングストッパ層として機能する。また、ディープトラップを含むGaN層2を設けているため、デバイス層1としてのGaN層に正孔が蓄積しない。これにより、デバイス層1としてのGaN層がエッチングされないようにすることができる。
次に、本実施形態にかかる半導体装置(GaN−HEMT)の製造方法について、図3〜図18を参照しながら説明する。
まず、図3(A)に示すように、例えば、MOCVD法によって、サファイア基板12上に、基板温度750℃で、AlN核形成層14(25nm)を形成する。その後、基板温度1050℃で、n型GaN犠牲層13(1μm)、FeドープGaN層2(0.2μm)、GaNチャネル層5(1μm)、AlGaNバリア層6(25nm)を順次成長させる。
これにより、サファイア基板12上に、AlN核形成層14を介して、n型GaN犠牲層13が形成される。また、n型GaN犠牲層13上に、エッチングストッパ層としてのFeドープGaN層2が形成される。つまり、n型GaN犠牲層13上に、窒化物半導体デバイス層に正孔が蓄積することを防止する層としてのFeドープGaN層2が形成される。さらに、エッチングストッパ層としてのFeドープGaN層2上に、窒化物半導体デバイス層1としてのGaNチャネル層5及びAlGaNバリア層6が形成される。
ここで、材料ガスにはトリメチルガリウム(TMG)、トリメチルアルミニウム(TMA)、アンモニア(NH)を、Si原料にはモノシラン(SiH)、Fe原料にはフェロセン(CpFe)、キャリアガスには水素(H)と窒素(N)を用いれば良い。
成長後、エピタキシャルウェハに対して、図3(B)に示すように、例えばイオン注入で素子分離領域7を形成し、ソース電極8、ドレイン電極9及びゲート電極10を形成し、SiN膜(絶縁膜)11でパッシベーションを行なう等して、デバイスの表面側を形成する。なお、素子分離領域7を形成する際に、n型GaN犠牲層13まで不活性化しないようにイオン注入の加速電圧を制御する。
なお、素子分離はドライエッチングで行なっても良い。この場合、n型GaN犠牲層をエッチングしないようにする。
ここで、図4(A)〜(C)は、上述のようにして作製したデバイス(ウェハ)のチップレイアウトを示している。
ここでは、図4(B)に示すように、長方形チップの長辺方向に平行にエッチング液挿入用スクライブライン(縦)15を、短辺方向に平行に犠牲層コンタクト用スクライブライン(横)16を形成する。このように、エッチング液挿入用スクライブライン15をチップの長辺方向に平行に形成することによって、エッチング時間を短縮することができる。また、マルチフィンガゲートGaN−HEMTの場合、図4(C)に示すように、Y方向に各電極(ソース電極、ドレイン電極、ゲート電極)が順に配置される。
このため、まず、図5(A),(B)に示すように、レジスト17を塗布し、エッチング液挿入用スクライブライン(縦)15のパターニングを行なう。
ここで、図5(A),(B)は、それぞれ、図4(C)のチップのX方向から見た模式的断面図、図4(C)のチップのY方向から見た模式的断面図を示している。なお、図5(A)では、マルチフィンガゲートではあるが、2つのゲート電極10のみを示し、それ以外を省略している。また、図5(B)では、チップ群の2列分のみを示し、それ以外を省略している。
次に、図6(A),(B)に示すように、例えば、アンテナパワー500W/バイアスパワー50Wで、SF/CHF系ドライエッチングによって、SiNパッシベーション膜11をエッチングする。
その後、例えば、アンテナパワー200W/バイアスパワー30Wで、Cl系ドライエッチングによって、窒化物半導体層6,5,2,13,14をサファイア基板12の表面が露出するまでエッチングする。ここでは、Cl系ドライエッチングによって、AlGaNバリア層6、GaNチャネル層5、FeドープGaN層2、n型GaN犠牲層13、AlN核形成層14を除去する。
次に、レジスト17を剥離した後、図7(A),(B)に示すように、再度、レジスト18(保護用レジスト)を塗布して、犠牲層コンタクト用スクライブライン(横)16のパターニングを行なう。
次いで、図8(A),(B)に示すように、上述のドライエッチングと同様に、SF/CHF系ドライエッチングによって、SiNパッシベーション膜11をエッチングする。
その後、Cl系ドライエッチングによって、窒化物半導体層6,5,2をn型GaN犠牲層13の表面が露出するまでエッチングする。ここでは、Cl系ドライエッチングによって、AlGaNバリア層6、GaNチャネル層7、FeドープGaN層2を除去する。
そして、図9(A),(B)に示すように、例えば500nm厚のTiをスパッタして、トレンチ電極19を形成する。
次に、エッチング液挿入部を開口するために、図10(A),(B)に示すように、レジスト20を塗布し、パターニングを行なう。
次いで、図11(A),(B)に示すように、レジスト開口部のTi19を例えばミリングで除去した後、図12(A),(B)に示すように、例えば酸素ドライエッチングによって、レジスト20を除去する。
これにより、図13に示すようなチップレイアウトになる。
図13に示すように、Tiからなるトレンチ電極(Ti配線)19は、ウェハ外周部まで延びており、ウェハ外周部と同程度の大きさのリング電極49(図1参照)に接触させることで、一度に光電気化学エッチングができるようになっている。
次に、図14(A),(B)に示すように、光電気化学エッチングを行なって、n型GaN犠牲層13を除去する。
ここで、エッチング液は、例えば0.1M KOH水溶液を用いれば良い。また、n型GaN犠牲層13を選択的にエッチングするために、例えば、水銀ランプ光源とウェハとの間に波長365nmのバンドパスフィルタを挿入すれば良い。この場合、得られる光量は約80mW/cmである。また、ウェハとPt陰極(図1参照)間のバイアス電圧は1Vとすれば良い。
このような光電気化学エッチングは、図15(A),(B)に示すように、サファイア基板12から窒化物半導体デバイス層1を剥離(分離)しうる状態になるまで行なう。
図16(A),(B)に示すように、チップはトレンチ電極19によって支持されるため、ばらばらにはならない。水洗を緩やかに行なった後、乾燥させれば良い。
一方、チップは、例えば500nm厚のTiからなるトレンチ電極19で固定されているだけであるため、例えば真空ピンセットなどで容易にピックアップできる。ピックアップしたチップは、図17に示すように、例えばアルミナセラミック基板等の台座3に接着層4を介して実装する。ここで、接着層としては、例えば、接着剤、ワックス、銀や銅のペースト状の物、AuSnソルダー等を用いれば良い。
最後に、図18に示すように、トレンチ電極19及びレジスト18を除去する。
このようにして、本実施形態にかかる半導体装置(GaN−HEMT)を作製することができる。
したがって、本実施形態にかかる半導体装置及びその製造方法によれば、窒化物半導体デバイス層1がエッチングされないようにしながら、窒化物半導体デバイス層1を基板12から剥離することができるという利点がある。
つまり、ディープトラップを有する窒化物半導体層(ここではFeドープGaN層)2を、n型GaN犠牲層13と窒化物半導体デバイス層1との間に設ける。このため、エッチングストッパ層としてのディープトラップを有する窒化物半導体層2は、その表面側に正孔が出現することがなく、OHイオンと反応しないため、エッチングされない。また、窒化物半導体デバイス層1に光電気化学エッチングに寄与しなかった正孔が蓄積するのを防止することもできる。このため、窒化物半導体デバイス層1がエッチングされないようにしながら、窒化物半導体デバイス層1を基板12から剥離することができる。このように、ディープトラップを有する窒化物半導体層2によって、上述の発明が解決しようとする課題の欄で説明したp型GaNエッチングストッパ層よりもエッチング耐性の優れたエッチングストッパ層を提供できることになる。
[第2実施形態]
第2実施形態にかかる半導体装置及びその製造方法について、図19、図20を参照しながら説明する。
本実施形態では、窒化物半導体を用いた半導体装置としての窒化物半導体光デバイス(GaN系デバイス)、具体的には、窒化物半導体デバイス層の表面側に電極を配置する横型光デバイス(GaN系横型光デバイス)に、本発明を適用した場合を例に挙げて説明する。
本実施形態では、半導体装置を製造するのに、図19に示すようなデバイスを用いる。つまり、基板12と、窒化物半導体デバイス層1Aと、エッチング犠牲層13と、エッチングストッパ層2とを備えるデバイスを用いる。なお、図19では、上述の第1実施形態[例えば図3(B)参照]と同一のものには同一の符号を付している。
ここで、窒化物半導体デバイス層1Aは、n型GaNコンタクト層29、n型AlGaN層21、n型GaN層22、InGaN/GaN多重量子井戸層(多層構造)23、p型AlGaN層24、p型GaN層25を含む。
また、n型AlGaN層21、n型GaN層22、InGaN/GaN多層量子井戸層23、p型AlGaN層24、p型GaN層25を含むメサ構造が形成されている。また、n型GaNコンタクト層29上に例えばTi/Alからなるn型オーミック電極26、p型GaN層25上に例えばNi/Auからなるp型オーミック電極27が形成されている。さらに、表面はSiN膜(絶縁膜)28で覆われている。
そして、光電気化学エッチングによってエッチング犠牲層13を除去し、窒化物半導体デバイス層1Aを基板12から分離した後、接着層4を介して台座3に実装することによって、半導体装置が製造される。この場合、半導体装置は、窒化物半導体デバイス層1Aと、窒化物半導体デバイス層1Aに正孔が蓄積することを防止するエッチングストッパ層2とを備え、窒化物半導体デバイス層1Aを成長させるために用いる基板を有しないものとして構成される。
本実施形態では、図19に示すように、基板12は、サファイア基板である。このサファイア基板12上には、AlN核形成層14が形成されている。つまり、サファイア基板12とエッチング犠牲層13との間には、AlN核形成層14が形成されている。
なお、エッチング犠牲層13やエッチングストッパ層2などのその他の構成の詳細は、上述の第1実施形態の場合と同様であるため、ここではその説明を省略する。
次に、本実施形態にかかる半導体装置(光デバイス)の製造方法について説明する。
上述の第1実施形態の場合[図3(A)参照]と同様のプロセスを行なって、サファイア基板12上に、AlN核形成層14、n型GaN犠牲層13、エッチングストッパ層としてのFeドープGaN層2を形成する。その後、FeドープGaN層2上に、光デバイスを構成する窒化物半導体デバイス層1Aを形成する。
つまり、例えば、MOCVD法によって、サファイア基板12上に、AlN核形成層14(25nm)を基板温度750℃で形成し、基板温度1050℃で、n型GaN犠牲層13(1μm)、FeドープGaN層2(0.2μm)、n型GaNコンタクト層29(0.1μm)、n型AlGaN層21(0.1μm)、n型GaN層22(0.1μm)を順次成長させる(図19参照)。
その後、例えば、基板温度を750℃まで下げて、InGaN/GaN多重量子井戸層(多層構造)23を成長させる(図19参照)。
そして、再び、例えば、基板温度を900℃まで上げて、p型AlGaN層24(0.5nm)、p型GaN層25(1μm)を順次成長させる(図19参照)。
ここでは、上述の第1実施形態において用いたガス以外に、p型不純物Mgの原料として、ビスシクロペンタンマグネシウム(CpMg)を用いれば良い。
これにより、サファイア基板12上に、AlN核形成層14を介して、n型GaN犠牲層13が形成される。また、n型GaN犠牲層13上に、エッチングストッパ層としてのFeドープGaN層2が形成される。つまり、n型GaN犠牲層13上に、窒化物半導体デバイス層に正孔が蓄積することを防止する層としてのFeドープGaN層2が形成される。さらに、エッチングストッパ層としてのFeドープGaN層2上に、窒化物半導体デバイス層1Aとしてのn型GaNコンタクト層29、n型AlGaN層21、n型GaN層22、InGaN/GaN多重量子井戸層(多層構造)23、p型AlGaN層24、p型GaN層25が形成される。
このようにして、エピタキシャルウェハを作製した後、ウェハにプロセスを施して、デバイスを形成する。
まず、活性領域を形成するためにパターニングを行ない、例えばCl系ドライエッチングによって、n型GaNコンタクト層29の表面が露出するまでエッチングを行なう。つまり、ドライエッチングによって、p型GaN層25、p型AlGaN層24、InGaN/GaN多層量子井戸層23、n型GaN層22、n型AlGaN層21を含むメサ構造を形成する。
次に、再度、パターニングを行ない、例えばCl系ドライエッチングによって、FeドープGaN層2の表面が露出するまでエッチングを行なう。これは、n型GaN犠牲層13を除去する際にn型GaNコンタクト層29まで除去されないようにn型GaNコンタクト層29の表面全体がSiN膜28で覆われるようにするためである。
その後、例えば、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)等によって形成されるSiN膜(絶縁膜)28でパッシベーションを行なう。
次いで、n型GaNコンタクト層29上のSiN膜28を開口した後、n型GaNコンタクト層29上に、例えば、Ti/Alを真空蒸着によって堆積し、750℃の熱処理を行なって、n型オーミック電極26を形成する。
同様に、p型GaN層25上のSiN膜28を開口した後、p型GaN層25上に、例えば、Ni/Auを蒸着し、400℃程度の熱処理を行って、p型オーミック電極27を形成する。
その後、上述の第1実施形態(図4〜図8参照)と同様の手順で、エッチング液挿入用スクライブライン15と犠牲層コンタクト用スクライブライン16を形成する。
なお、光デバイスがレーザの場合には、図20に示すように、キャビティ方向に平行にエッチング液挿入用スクライブライン15を配置すれば良く、ダイオードのように正方形に近いデバイスの場合にはどの方向に平行に配置しても良い。
次に、上述の第1実施形態(図9〜図13参照)と同様の手順で、トレンチ電極19を形成した後、エッチング液挿入部(導入口)を形成する。
そして、上述の第1実施形態(図14、図15参照)と同様に、光電気化学エッチングを行ない、n型GaN犠牲層13を除去する。
その後、上述の第1実施形態(図16〜図18参照)と同様に、チップをピックアップし、例えばアルミナセラミック基板等の台座3に接着層4を介して実装する。
最後に、トレンチ電極19及びレジスト18を除去する。
このようにして、本実施形態にかかる半導体装置(光デバイス)を作製することができる。
なお、その他の製造方法の詳細は、上述の第1実施形態の場合と同様であるため、ここではその説明を省略する。
したがって、本実施形態にかかる半導体装置及びその製造方法によれば、上述の第1実施形態の場合と同様に、窒化物半導体デバイス層1Aがエッチングされないようにしながら、窒化物半導体デバイス層1Aを基板12から剥離することができるという利点がある。
つまり、ディープトラップを有する窒化物半導体層(ここではFeドープGaN層)2を、n型GaN犠牲層13と窒化物半導体デバイス層1Aとの間に設ける。このため、エッチングストッパ層としてのディープトラップを有する窒化物半導体層2は、その表面側に正孔が出現することがなく、OHイオンと反応しないため、エッチングされない。また、窒化物半導体デバイス層1Aに光電気化学エッチングに寄与しなかった正孔が蓄積するのを防止することもできる。このため、窒化物半導体デバイス層1Aがエッチングされないようにしながら、窒化物半導体デバイス層1Aを基板12から剥離することができる。このように、ディープトラップを有する窒化物半導体層2によって、上述の発明が解決しようとする課題の欄で説明したp型GaNエッチングストッパ層よりもエッチング耐性の優れたエッチングストッパ層を提供できることになる。
[第3実施形態]
第3実施形態にかかる半導体装置及びその製造方法について、図21〜図23を参照しながら説明する。
本実施形態では、窒化物半導体を用いた半導体装置としての窒化物半導体光デバイス(GaN系デバイス)、具体的には、窒化物半導体デバイス層の表面側及び裏面側に電極を配置する縦型光デバイス(GaN系縦型光デバイス)に、本発明を適用した場合を例に挙げて説明する。
本実施形態では、半導体装置を製造するのに、図22(D)に示すようなデバイスを用いる。つまり、基板12と、窒化物半導体デバイス層1Bと、エッチング犠牲層13と、エッチングストッパ層2とを備えるデバイスを用いる。なお、図22(D)では、上述の第1実施形態[例えば図3(B)参照]と同一のものには同一の符号を付している。
ここで、基板12は、サファイア基板である。このサファイア基板12上には、AlN核形成層14が形成されている。つまり、サファイア基板12とエッチング犠牲層13との間には、AlN核形成層14が形成されている。
窒化物半導体デバイス層1Bは、p型GaN層30、p型AlGaN層31、InGaN/GaN多重量子井戸層(多層構造)32、n型GaN層33、n型AlGaN層34、n型GaN層35を含む。
また、エッチングストッパ層(FeドープGaN層)2、p型GaN層30、p型AlGaN層31、InGaN/GaN多重量子井戸層(多層構造)32、n型GaN層33、n型AlGaN層34、n型GaN層35を含むメサ構造が形成されている。
そして、光電気化学エッチングによってエッチング犠牲層13を除去し、窒化物半導体デバイス層1Bを基板12から分離した後、図23(D)に示すように、接着層4を介して台座3に実装することによって、半導体装置が製造される。この場合、半導体装置は、窒化物半導体デバイス層1Bと、窒化物半導体デバイス層1Bに正孔が蓄積することを防止するエッチングストッパ層2とを備え、窒化物半導体デバイス層1Bを成長させるために用いる基板を有しないものとして構成される。なお、図23(D)では、上述の第1実施形態[例えば図18参照]と同一のものには同一の符号を付している。
ところで、窒化物半導体デバイス層の表面側及び裏面側に電極を配置する縦型光デバイスの場合、エッチングストッパ層としてのFeドープGaN層2は高抵抗であるため、デバイスに電流を流すことができない。
そこで、本実施形態では、図23(D)に示すように、エッチングストッパ層としてのFeドープGaN層2を一部除去した領域に、p型導電性を持つ窒化物半導体層としてのp型GaN層30が形成されている。つまり、エッチングストッパ層としてのFeドープGaN層2は分断されており、分断されたFeドープGaN層2の間に、p型導電性を持つ窒化物半導体層としてのp型GaN層30が形成されている。
そして、n型GaN層35に接するように、例えばTi/Al/Ni/Auからなるn型オーミック電極36、エッチングストッパ層としてのFeドープGaN層2及びp型GaN層30に接するように、例えばNi/Auからなるp型オーミック電極38が形成されている。さらに、表面はSiN膜(絶縁膜)37で覆われている。
なお、エッチング犠牲層13やエッチングストッパ層2などのその他の構成の詳細は、上述の第1実施形態の場合と同様であるため、ここではその説明を省略する。
次に、本実施形態にかかる半導体装置(光デバイス)の製造方法について、図21〜図23を参照しながら説明する。
まず、上述の第1実施形態の場合[図3(A)参照]と同様のプロセスを行なって、図21(A)に示すように、サファイア基板12上に、AlN核形成層14、n型GaN犠牲層13、FeドープGaN層2を形成する。そして、図21(B)に示すように、FeドープGaN層2を一部除去した後、図22(A)〜(D)に示すように、n型GaN犠牲層13及びFeドープGaN層2上に、光デバイスを構成する窒化物半導体デバイス層1Bを形成する。
つまり、図21(A)に示すように、まず、例えば、MOCVD法によって、サファイア基板12上に、AlN核形成層14(25nm)を基板温度750℃で形成し、基板温度1050℃で、n型GaN犠牲層13(1μm)、エッチングストッパ層としてのFeドープGaN層2(0.2μm)を順次成長させる。
次に、図21(B)に示すように、エピタキシャルウェハ上に、レジスト39を塗布し、パターニングを行ない、例えば、Cl系ドライエッチングによって、n型GaN犠牲層13の表面が露出するまで、FeドープGaN層2の一部を除去する。
次いで、レジスト剥離後、図22(A)に示すように、再度、例えば、MOCVD法によって、p型GaN層30(1μm)、p型AlGaN層31(0.5nm)を基板温度1050℃で成長させた後、基板温度を750℃まで下げて、InGaN/GaN多重量子井戸層(多層構造)32を成長させる。
そして、再び、例えば、基板温度を900℃まで上げて、n型GaN層33(0.1μm)、n型AlGaN層34(0.1μm)、n型GaN層35(0.1μm)を順次成長させる。
これにより、サファイア基板12上に、AlN核形成層14を介して、n型GaN犠牲層13が形成される。また、n型GaN犠牲層13上に、エッチングストッパ層としてのFeドープGaN層2が形成される。つまり、n型GaN犠牲層13上に、窒化物半導体デバイス層に正孔が蓄積することを防止する層としてのFeドープGaN層2が形成される。さらに、エッチングストッパ層としてのFeドープGaN層2上に、窒化物半導体デバイス層1Bとしてのp型GaN層30、p型AlGaN層31、InGaN/GaN多重量子井戸層(多層構造)32、n型GaN層33、n型AlGaN層34、n型GaN層35が形成される。
このようにして、エピタキシャルウェハを作製した後、ウェハにプロセスを施して、デバイスを形成する。
まず、デバイス領域を分離するために、図22(B)に示すように、レジスト40を塗布し、パターニングを行ない、図22(C)に示すように、例えば、Cl系ドライエッチングによって、n型GaN犠牲層13の表面が露出するまでエッチングを行なう。
その後、図22(D)に示すように、例えば、プラズマCVD等によって形成されるSiN膜(絶縁膜)37でパッシベーションを行なう。
次いで、n型GaN層35上のSiN膜37を開口した後、例えば、Ti/Al/Ni/Auを真空蒸着によって堆積し、750℃の熱処理を行なって、n型オーミック電極36を形成する。
その後、上述の第1実施形態(図4〜図8参照)と同様の手順で、エッチング液挿入用スクライブライン(ダイシングライン)15と犠牲層コンタクト用スクライブライン(ダイシングライン)16を形成する。
次に、上述の第1実施形態(図9〜図13参照)と同様の手順で、トレンチ電極19を形成した後、エッチング液挿入部(導入口)を形成する。なお、ここでは、保護用レジスト及びトレンチ電極19は図示していない。
そして、上述の第1実施形態(図14、図15参照)と同様に、図23(A)に示すように、光電気化学エッチングを行ない、n型GaN犠牲層13を除去する。
ここで、上述の発明が解決しようとする課題の欄で説明したように、p型GaN層は、エッチング時間が長くなり、正孔がp型GaN層に蓄積されると、徐々にエッチングされてしまう。
そこで、n型GaN犠牲層13と接するp型GaN層30の幅を短くすることによって、p型GaN層30の直下のn型GaN犠牲層13を除去するエッチング時間を短縮することができるようにしている。これにより、p型GaN層30はほとんどエッチングされないようにしながら、窒化物半導体デバイス層1Bを基板12から剥離することができるようにしている。
そして、トレンチ電極19及びレジストを除去した後、図23(B),(C)に示すように、チップをピックアップし、反転させて、例えばアルミナセラミック基板等の台座3に接着層4を介して実装する。
最後に、エッチングストッパ層としてのFeドープGaN層2及びp型GaN層30上に、例えば、Ni/Auを蒸着し、400℃程度の熱処理を行なって、p型オーミック電極38を形成する。
このようにして、本実施形態にかかる半導体装置(光デバイス)を作製することができる。
なお、その他の製造方法の詳細は、上述の第1実施形態の場合と同様であるため、ここではその説明を省略する。
したがって、本実施形態にかかる半導体装置及びその製造方法によれば、上述の第1実施形態の場合と同様に、窒化物半導体デバイス層1Bがエッチングされないようにしながら、窒化物半導体デバイス層1Bを基板12から剥離することができるという利点がある。
つまり、ディープトラップを有する窒化物半導体層(ここではFeドープGaN層)2を、n型GaN犠牲層13と窒化物半導体デバイス層1Bとの間に設ける。このため、エッチングストッパ層としてのディープトラップを有する窒化物半導体層2は、その表面側に正孔が出現することがなく、OHイオンと反応しないため、エッチングされない。また、窒化物半導体デバイス層1Bに光電気化学エッチングに寄与しなかった正孔が蓄積するのを防止することもできる。このため、窒化物半導体デバイス層1Bがエッチングされないようにしながら、窒化物半導体デバイス層1Bを基板12から剥離することができる。このように、ディープトラップを有する窒化物半導体層2によって、上述の発明が解決しようとする課題の欄で説明したp型GaNエッチングストッパ層よりもエッチング耐性の優れたエッチングストッパ層を提供できることになる。
特に、本実施形態では、FeドープGaN層2を一部除去し、除去した領域をp型GaN層30で埋め込むことによって、表面側及び裏面側に電極36,38を配置する縦型光デバイスを実現できるようにしている。そして、n型GaN犠牲層13と接するp型GaN層30の幅を短くして、p型GaN層30の直下のn型GaN犠牲層13を除去するエッチング時間を短縮するようにしている。このため、窒化物半導体デバイス層1Bを構成するp型GaN層30がエッチングされないようにしながら、窒化物半導体デバイス層1Bを基板12から剥離することができることになる。
なお、上述の実施形態では、エッチングストッパ層2としてFeドープGaN層を用いる場合に適した構成として説明しているが、エッチングストッパ層2として、例えばFe,Mn,Co,Cr等の遷移金属がドープされた窒化物半導体層を用いる場合等にも、上述の実施形態のような構成を適用することができる。
[第4実施形態]
第4実施形態にかかる半導体装置及びその製造方法について、図24〜図26を参照しながら説明する。
本実施形態では、窒化物半導体を用いた半導体装置としての窒化物半導体電子デバイス(GaN系デバイス;例えばGaN−HEMT)、具体的には、窒化物半導体デバイス層の表面側及び裏面側に電極を配置する縦型電子デバイス(GaN系縦型電子デバイス)に、本発明を適用した場合を例に挙げて説明する。
本実施形態では、半導体装置を製造するのに、図24(D)に示すようなデバイスを用いる。つまり、基板12と、窒化物半導体デバイス層1Cと、エッチング犠牲層13と、エッチングストッパ層2とを備えるデバイスを用いる。なお、図24(D)では、上述の第1実施形態[例えば図3(B)参照]と同一のものには同一の符号を付している。
ここで、基板12は、サファイア基板である。このサファイア基板12上には、AlN核形成層14が形成されている。つまり、サファイア基板12とエッチング犠牲層13との間には、AlN核形成層14が形成されている。
窒化物半導体デバイス層1Cは、n型GaN層42、n型AlGaN層43を含む。そして、素子分離領域7が形成されている。また、n型AlGaN層43の表面側にソース電極8及びゲート電極10が形成されている。また、図26(B)に示すように、エッチングストッパ層としてのFeドープGaN層2及びn型GaN層42の裏面側にドレイン電極9が形成されている。さらに、表面はSiN膜(絶縁膜)11で覆われている。
そして、光電気化学エッチングによってエッチング犠牲層13を除去し、窒化物半導体デバイス層1Cを基板12から分離した後、図26(B)に示すように、接着層4を介して台座3に実装することによって、半導体装置が製造される。この場合、半導体装置は、窒化物半導体デバイス層1Cと、窒化物半導体デバイス層1Cに正孔が蓄積することを防止するエッチングストッパ層2とを備え、窒化物半導体デバイス層1Cを成長させるために用いる基板を有しないものとして構成される。なお、図26(B)では、上述の第1実施形態[例えば図18参照]と同一のものには同一の符号を付している。
ところで、上述の第3実施形態にかかる縦型光デバイスでは、FeドープGaN層2を一部除去し、除去した領域をp型GaN層30で埋め込み、p型GaN層30に接するようにp型オーミック電極38を形成している。
一方、縦型電子デバイスの場合、一般的には、n型オーミック電極を形成する。このため、FeドープGaN層2を一部除去した領域にp型半導体層(p型GaN層)が残存しているとオーミックをとることができない。
窒化物半導体デバイス層1Cを上述のように構成する場合、FeドープGaN層2を一部除去した領域に、窒化物半導体デバイス層1Cを構成するn型半導体層(n型GaN層)42が露出していると、n型半導体層42はエッチングレートが速いため、著しく侵食されてしまうことになる。
そこで、本実施形態では、FeドープGaN層2を一部除去した領域を、エッチングストッパ層としてのp型GaN層41で覆った後、n型GaN層42で埋め込むようにしている。つまり、n型GaN層42の裏面側の表面がエッチングストッパ層としてのp型GaN層41で覆われるようにしている。この場合、窒化物半導体デバイス層1Cを構成するn型GaN層42とn型GaN犠牲層13との間に、エッチングストッパ層として、FeドープGaN層2及びp型GaN層41が設けられることになる。そして、p型GaN層41の幅及び膜厚を調整することによって、エッチング犠牲層(n型GaN犠牲層)13が除去されるのと同時に、n型GaN層42を覆っているp型GaN層41も除去され、窒化物半導体デバイス層1Cが基板12から剥離されるようにしている。
つまり、本実施形態では、エッチングストッパ層としてのFeドープGaN層2を一部除去した領域に、n型GaN層42、及び、p型導電性を持つ窒化物半導体層としてのp型GaN層41が形成されている。つまり、エッチングストッパ層としてのFeドープGaN層2は分断されており、分断されたFeドープGaN層2の間に、n型GaN層42、及び、p型導電性を持つ窒化物半導体層としてのp型GaN層41が形成されている。
なお、エッチング犠牲層やエッチングストッパ層などのその他の構成の詳細は、上述の第1実施形態の場合と同様であるため、ここではその説明を省略する。
次に、本実施形態にかかる半導体装置(GaN−HEMT)の製造方法について、図24〜図26を参照しながら説明する。
まず、上述の第1実施形態の場合[図3(A)参照]と同様のプロセスを行なって、図24(A)に示すように、サファイア基板12上に、AlN核形成層14、n型GaN犠牲層13、FeドープGaN層2を形成する。そして、図24(B)に示すように、FeドープGaN層2を一部除去した後、図24(C),(D)に示すように、n型GaN犠牲層13及びFeドープGaN層2上に、エッチングストッパ層としてのp型GaN層41、及び、GaN−HEMTを構成する窒化物半導体デバイス層1Cを形成する。
つまり、図24(A)に示すように、まず、例えば、MOCVD法によって、サファイア基板12上に、AlN核形成層14(25nm)を基板温度750℃で形成し、基板温度1050℃で、n型GaN犠牲層13(1μm)、エッチングストッパ層としてのFeドープGaN層2(0.2μm)を順次成長させる。
次に、図24(B)に示すように、エピタキシャルウェハ上に、レジスト44を塗布し、パターニングを行ない、例えば、Cl系ドライエッチングによって、n型GaN犠牲層13の表面が露出するまで、FeドープGaN層2の一部を除去する。
次いで、レジスト剥離後、図24(C)に示すように、再度、例えば、MOCVD法によって、エッチングストッパ層としてのp型GaN層41(20nm)、n型GaN層42(2μm)、n型AlGaN層43(20nm)を基板温度1050℃で成長させる。
これにより、サファイア基板12上に、AlN核形成層14を介して、n型GaN犠牲層13が形成される。また、n型GaN犠牲層13上に、エッチングストッパ層としてのFeドープGaN層2が形成される。つまり、n型GaN犠牲層13上に、窒化物半導体デバイス層に正孔が蓄積することを防止する層としてのFeドープGaN層2が形成される。さらに、エッチングストッパ層としてのFeドープGaN層2上に、エッチングストッパ層としてのp型GaN層41、窒化物半導体デバイス層1Cとしてのn型GaN層42、n型AlGaN層43が形成される。
そして、エピタキシャルウェハに対して、図24(D)に示すように、例えばイオン注入で素子分離領域7を形成し、例えばTi/Alからなるソース電極8、及び、例えばNi/Auからなるゲート電極10を形成し、SiN膜(絶縁膜)11でパッシベーションを行なう等して、デバイスの表面側を形成する。
その後、上述の第1実施形態(図4〜図8参照)と同様の手順で、エッチング液挿入用スクライブライン(ダイシングライン)15と犠牲層コンタクト用スクライブライン(ダイシングライン)16を形成する。
次に、上述の第1実施形態(図9〜図13参照)と同様の手順で、トレンチ電極19を形成した後、エッチング液挿入部(導入口)を形成する。なお、ここでは、保護用レジスト及びトレンチ電極19は図示していない。
そして、上述の第1実施形態(図14、図15参照)と同様に、図25(A)〜(C)に示すように、光電気化学エッチングを行ない、n型GaN犠牲層13を除去する。
ここで、上述の発明が解決しようとする課題の欄で説明したように、p型GaN層は、エッチング時間が長くなり、正孔がp型GaN層に蓄積されると、徐々にエッチングされてしまう。
そこで、n型GaN犠牲層13と接するp型GaN層41の幅及び膜厚を調整することによって、図25(C)に示すように、n型GaN犠牲層13が除去されるのと同時にp型GaN層41も除去されるようにしている。これにより、n型GaN層42はほとんどエッチングされないようにしながら、窒化物半導体デバイス層1Cを基板12から剥離することができるようにしている。
その後、トレンチ電極19及びレジストを除去した後、チップをピックアップし、反転させて、図25(D)に示すように、サポート基板45などに接着剤46で仮接着する。
そして、図26(A)に示すように、剥離したチップの裏面、即ち、n型GaN層42、p型GaN層41及びFeドープGaN層2上に、例えばTi/Alからなるドレイン電極9を形成する。その後、仮接着を外し、例えば、550℃で熱処理を行なってオーミックをとる。
その後、チップをピックアップし、反転させて、図26(B)に示すように、例えばアルミナセラミック基板等の台座3に接着層4を介して実装する。
このようにして、本実施形態にかかる半導体装置(GaN−HEMT)を作製することができる。
なお、その他の製造方法の詳細は、上述の第1実施形態の場合と同様であるため、ここではその説明を省略する。
したがって、本実施形態にかかる半導体装置及びその製造方法によれば、上述の第1実施形態の場合と同様に、窒化物半導体デバイス層1Cがエッチングされないようにしながら、窒化物半導体デバイス層1Cを基板12から剥離することができるという利点がある。
つまり、ディープトラップを有する窒化物半導体層(ここではFeドープGaN層)2を、n型GaN犠牲層13と窒化物半導体デバイス層1Cとの間に設ける。このため、エッチングストッパ層としてのディープトラップを有する窒化物半導体層2は、その表面側に正孔が出現することがなく、OHイオンと反応しないため、エッチングされない。また、窒化物半導体デバイス層1Cに光電気化学エッチングに寄与しなかった正孔が蓄積するのを防止することもできる。このため、窒化物半導体デバイス層1Cがエッチングされないようにしながら、窒化物半導体デバイス層1Cを基板12から剥離することができる。このように、ディープトラップを有する窒化物半導体層2によって、上述の発明が解決しようとする課題の欄で説明したp型GaNエッチングストッパ層よりもエッチング耐性の優れたエッチングストッパ層を提供できることになる。
特に、本実施形態では、FeドープGaN層2を一部除去し、除去した領域に埋め込まれるn型GaN層42をp型GaN層(薄膜)41で被覆することによって、表面側及び裏面側に電極を配置する縦型電子デバイスを実現できるようにしている。そして、n型GaN犠牲層13と接するp型GaN層41の幅及び膜厚を調整して、n型GaN犠牲層13が除去されるのと同時にp型GaN層41も除去されるようにしている。このため、窒化物半導体デバイス層1Cを構成するn型GaN層42がエッチングされないようにしながら、窒化物半導体デバイス層1Cを基板12から剥離することができることになる。
なお、上述の実施形態では、n型GaN層42を覆うエッチングストッパ層としてp型GaN層41を用いているが、これに限られるものではない。例えばAlGaN層を用いても良く、この場合も同様の効果が得られる。
また、上述の実施形態では、エッチングストッパ層2としてFeドープGaN層を用いる場合を例に挙げて説明しているが、エッチングストッパ層2として、例えばFe,Mn,Co,Cr等の遷移金属がドープされた窒化物半導体層を用いる場合等にも、上述の実施形態のような構成を適用することができる。
[第5実施形態]
第5実施形態にかかる半導体装置及びその製造方法について、図27〜図32を参照しながら説明する。
本実施形態にかかる半導体装置(GaN−HEMT)は、上述の第1実施形態のもの(図18参照)に対し、窒化物半導体デバイス層1と接着層4との間に設けられ、窒化物半導体デバイス層1に正孔が蓄積することを防止するエッチングストッパ層の構成が異なる。
つまり、本半導体装置は、図32に示すように、窒化物半導体デバイス層1と、エッチングストッパ層50(ここではAlGaN/GaN多層膜)とを備え、例えばアルミナセラミック基板等の台座3に接着層4を介して実装されている。なお、図32では、上述の第1実施形態(例えば図18参照)と同一のものには同一の符号を付している。
本実施形態では、窒化物半導体デバイス層1は、GaN層(チャネル層)5と、AlGaN層(バリア層)6とを含む。そして、素子分離領域7が形成されている。また、AlGaN層6上にソース電極8、ドレイン電極9及びゲート電極10が形成されている。さらに、表面はSiN膜(絶縁膜)11で覆われている。
なお、エッチングストッパ層50の構成については後述する。
また、本実施形態では、このように構成される半導体装置を製造するのに、図30に示すようなウェハを用いる。つまり、基板12と、GaN層5及びAlGaN層6を含む窒化物半導体デバイス層1と、エッチング犠牲層13と、エッチングストッパ層50(ここではAlGaN/GaN多層膜)とを備えるウェハを用いる。なお、上述の第1実施形態の場合と同様に、このようなウェハにプロセスを施して、素子分離領域7、ソース電極8、ドレイン電極9、ゲート電極10、SiN膜11を有するデバイスが形成される。また、図30では、上述の第1実施形態[例えば図3(A)参照]と同一のものには同一の符号を付している。
そして、図27に示すように、光電気化学(PEC)エッチングによってエッチング犠牲層13を除去し、窒化物半導体デバイス層1を基板12から分離した後、図32に示すように、接着層4を介して台座3に実装することによって、半導体装置が製造される。この場合、半導体装置は、窒化物半導体デバイス層1と、窒化物半導体デバイス層1に正孔が蓄積することを防止するエッチングストッパ層50とを備え、窒化物半導体デバイス層1を成長させるために用いる基板を有しないものとして構成される。なお、図27では、上述の第1実施形態(例えば図1参照)と同一のものには同一の符号を付している。
本実施形態では、図30に示すように、基板12は、サファイア基板である。このサファイア基板12上には、AlN核形成層14が形成されている。つまり、サファイア基板12とエッチング犠牲層13との間には、AlN核形成層14が形成されている。
また、本実施形態では、エッチングストッパ層50は、図28に示すように、エッチング犠牲層13よりもバンドギャップの大きい窒化物半導体障壁層(バリア層)と、窒化物半導体障壁層よりもバンドギャップの小さい窒化物半導体井戸層とからなる。
ここでは、エッチングストッパ層50は、窒化物半導体障壁層と窒化物半導体井戸層とが繰り返し積層された多層膜である。つまり、エッチングストッパ層50は、少なくとも2層以上の多層膜である。
具体的には、エッチングストッパ層50は、窒化物半導体障壁層と窒化物半導体井戸層とからなる超格子構造を有する超格子エッチングストッパ層(超格子構造層)である。
ここでは、窒化物半導体障壁層は、Al組成50%以上の高いAl組成のAlGaN層(高Al組成AlGaN層)である。また、窒化物半導体井戸層は、GaN層である。そして、エッチングストッパ層50は、これらを6周期積層させてなるAlGaN/GaN超格子エッチングストッパ層(AlGaN/GaN多層膜;AlGaN/GaNエッチングストッパ層)である。AlGaN/GaN超格子エッチングストッパ層50を、高Al組成AlGaN/GaN超格子エッチングストッパ層ともいう。
次に、上述のようなAlGaN/GaNエッチングストッパ層50を、窒化物半導体デバイス層1とエッチング犠牲層13との間に導入することで、窒化物半導体デバイス層1に正孔が蓄積することを防止できる原理について、図27〜図29を参照しながら説明する。
まず、バンドパスフィルタなどによって、GaNのバンドギャップに合わせた波長(365nm)のUV光を導入すると、それよりもバンドギャップの大きい窒化物半導体層では電子−正孔対が形成されないため、エッチングストッパ層として用いるには有利である。
しかしながら、図29に示すように、Al組成10%程度の低いAl組成のAlGaN層をエッチングストッパ層に用いると、価電子帯不連続ΔEvが小さいため、n型GaN犠牲層13で生成され、余剰となった正孔がこの価電子帯不連続ΔEvを乗り越え、窒化物半導体デバイス層1に流れ込み、窒化物半導体デバイス層1に正孔が蓄積することになる。
また、窒化物半導体デバイス層1で生成された電子も、伝導帯不連続ΔEcが小さいため、バイアス印加によってn型GaN犠牲層13側に引き抜かれてしまい、結果的に、窒化物半導体デバイス層1に正孔が蓄積することになる。
このように正孔が蓄積された窒化物半導体デバイス層1にエッチング液(KOH溶液)が接触すると、窒化物半導体デバイス層1がエッチングされてしまうことになる。
この場合、AlGaNエッチングストッパ層のAl組成を高くし、膜厚を増加させることで、エッチング耐性を向上させることが考えられる。
しかしながら、実際には、結晶にクラック等が入ってしまうため、Al組成を高くする場合には、膜厚を薄くしなければならない。
そこで、本実施形態では、図27、図28に示すように、窒化物半導体デバイス層1とエッチング犠牲層13との間に導入されるエッチングストッパ層50に、高Al組成AlGaN層を用いることでバリア性を確保するとともに、AlGaN/GaN超格子構造を採用することでトータル膜厚を増加させてエッチング耐性を向上させるようにしている。
ここで、図28は、n型GaN犠牲層13、AlGaN/GaNエッチングストッパ層50、デバイス層1としてのGaN層のエネルギバンドダイヤグラムを示している。図28中、7−7′は、n型GaN犠牲層13とAlGaN/GaNエッチングストッパ層50との間(図27中、7−7′参照)のエネルギバンドダイヤグラムを示している。また、図28中、8−8′は、AlGaN/GaNエッチングストッパ層50とKOH溶液との間(図27中、8−8′参照)のエネルギバンドダイヤグラムを示している。
図28中、7−7′で示す領域、即ち、n型GaN犠牲層/エッチングストッパ層領域では、UV光(波長365nm)照射によって、電子−正孔対が生成され、電子はバイアス印加によってトレンチ電極19側に引き抜かれる。
一方、n型GaN犠牲層13で生成された正孔は、AlGaN障壁層にブロックされ、n型GaN犠牲層13に残留し、光電気化学エッチングに消費される。
また、AlGaN/GaNエッチングストッパ層50内ではGaN井戸層も量子化されるため、波長365nmのUV光による励起では、AlGaN/GaNエッチングストッパ層50において電子−正孔対は生成されない。
さらに、窒化物半導体デバイス層1で生成される電子−正孔対は、AlGaN障壁層にブロックされ、行き場がないため、常に発光再結合して消滅する。
このように、AlGaN/GaNエッチングストッパ層50によって、デバイス層1としてのGaN層に正孔が蓄積するのを防止することができる。このため、窒化物半導体デバイス層1に正孔が蓄積することがなく、OHイオンと反応しないため、窒化物半導体デバイス層1のエッチングが進行することはない。
また、n型GaN犠牲層13が除去され、エッチング液(KOH溶液)にむき出しとなった領域、即ち、図27、図28中、8−8′で示す領域においても、AlGaN/GaNエッチングストッパ層50の表面側に正孔が出現することがなく、OHイオンと反応しない。このため、AlGaN/GaNエッチングストッパ層50はエッチングされず、エッチングストッパ層として機能する。また、AlGaN/GaNエッチングストッパ層50を設けているため、デバイス層1としてのGaN層に正孔が蓄積しない。これにより、デバイス層1としてのGaN層がエッチングされないようにすることができる。
なお、その他の構成の詳細は、上述の第1実施形態の場合と同様であるため、ここではその説明を省略する。
次に、本実施形態にかかる半導体装置(GaN−HEMT)の製造方法について、図30〜図32を参照しながら説明する。
まず、図30に示すように、例えば、MOCVD法によって、サファイア基板12上に、基板温度750℃で、AlN核形成層14(25nm)を形成する。その後、基板温度1050℃で、n型GaN犠牲層13(1.2μm)、AlGaN/GaNエッチングストッパ層50、GaNチャネル層5(1μm)、AlGaNバリア層6(20nm)を順次成長させる。
ここでは、AlGaN/GaNエッチングストッパ層50は、Al組成50%のAlGaN層(3nm)とGaN層(4.8nm)とを例えば6周期積層させて超格子構造としている。
これにより、サファイア基板12上に、AlN核形成層14を介して、n型GaN犠牲層13が形成される。また、n型GaN犠牲層13上に、エッチングストッパ層としてのAlGaN/GaN超格子構造を有するAlGaN/GaNエッチングストッパ層50が形成される。つまり、n型GaN犠牲層13上に、窒化物半導体デバイス層1に正孔が蓄積することを防止する層としてのAlGaN/GaNエッチングストッパ層50が形成される。さらに、エッチングストッパ層としてのAlGaN/GaNエッチングストッパ層50上に、窒化物半導体デバイス層1としてのGaNチャネル層5及びAlGaNバリア層6が形成される。
ここで、図31(A)は、AlGaN/GaN超格子構造を有するエッチングストッパ層50までを成長させたエピタキシャルウェハのX線回折パターンを示しており、図31(B)は、そのAFM(Atomic Force Microscope;原子間力顕微鏡)像を示している。
図31(A)に示すように、X線回折パターンでは、超格子構造特有のサテライトピークが観測されており、超格子構造が崩れていないことが分かる。
また、図31(B)に示すように、AFM像では、通常Al組成30%以上のAlGaN層で見られるスパイラル成長が全く観測されず、良好なステップフロー成長が観測されている。
このように、Al組成50%のAlGaN層(3nm)とGaN層(4.8nm)とを6周期積層させた超格子構造を有するエッチングストッパ層50は、良好な結晶性を持つため、このエッチングストッパ層50上に、良好なGaN−HEMT構造を作製することができる。なお、ここでは、Al組成50%のAlGaN層を用いているが、Al組成50%以上のAlGaN層を用いた場合にも、同様に、良好な結晶性を有するエッチングストッパ層を形成することができる。
その後、上述の第1実施形態の場合と同様の工程を経て、本実施形態にかかる半導体装置(GaN−HEMT)を作製することができる。
なお、その他の製造方法の詳細は、上述の第1実施形態の場合と同様であるため、ここではその説明を省略する。
したがって、本実施形態にかかる半導体装置及びその製造方法によれば、上述の第1実施形態の場合と同様に、窒化物半導体デバイス層1がエッチングされないようにしながら、窒化物半導体デバイス層1を基板12から剥離することができるという利点がある。
つまり、AlGaN/GaNエッチングストッパ層50を、n型GaN犠牲層13と窒化物半導体デバイス層1との間に設ける。このため、AlGaN/GaNエッチングストッパ層50は、その表面側に正孔が出現することがなく、OHイオンと反応しないため、エッチングされない。また、窒化物半導体デバイス層1に光電気化学エッチングに寄与しなかった正孔が蓄積するのを防止することもできる。このため、窒化物半導体デバイス層1がエッチングされないようにしながら、窒化物半導体デバイス層1を基板12から剥離することができる。このように、AlGaN/GaNエッチングストッパ層50によって、上述の発明が解決しようとする課題の欄で説明したp型GaNエッチングストッパ層よりもエッチング耐性の優れたエッチングストッパ層を提供できることになる。
なお、上述の実施形態のエッチングストッパ層50の構成と、上述の第1実施形態〜第4実施形態のエッチングストッパ層2の構成とを組み合わせ、これらの構成を複合した層として構成しても良い。つまり、エッチングストッパ層を、エッチング犠牲層よりもバンドギャップの大きい窒化物半導体障壁層と、窒化物半導体障壁層よりもバンドギャップの小さい窒化物半導体井戸層とからなり、窒化物半導体障壁層又は窒化物半導体井戸層がディープトラップを含むように構成しても良い。具体的には、エッチングストッパ層を、ディープトラップを含むAlGaN/GaNエッチングストッパ層(高Al組成AlGaN/GaN超格子構造層)とする。この場合、GaN層を、ディープトラップを含む層として構成しても良いし、GaN層及びAlGaN層を、ディープトラップを含む層として構成しても良い。これにより、さらにエッチング耐性に優れたエッチングストッパ層を提供できることになる。
[その他]
なお、本発明は、上述した各実施形態及び変形例に記載した構成に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形することが可能である。
例えば、上述の各実施形態及び変形例では、サファイア基板を用いた例を挙げて説明しているが、これに限られるものではなく、UV光が透過する基板であれば、同様のプロセスが可能である。例えば、炭化シリコン基板(SiC基板)、窒化ガリウム基板(GaN基板)、窒化アルミニウム基板(AlN基板)を用いても良い。つまり、上述の各実施形態にかかる半導体装置に用いる基板は、サファイア基板、炭化シリコン基板、窒化ガリウム基板、窒化アルミニウム基板のいずれかであれば良い。
また、上述の各実施形態及び変形例では、窒化物半導体層にAlGaN、GaNを用いた場合を例に挙げて説明しているが、これに限られるものではなく、例えば、InGaN,InAlN,InAlGaNなどを用いても良い。この場合、バンドパスフィルタ等を用いて、UV光の波長を適切に選択することによって、上述の各実施形態及び変形例の場合と同様の効果が得られる。
また、上述の各実施形態及び変形例における半導体装置及びその製造方法を用いることによって、例えば、ミリ波帯レーダシステム、無線通信基地局用システム、サーバシステム、自動車・交通システムや家電製品などの窒化物半導体デバイスを用いる種々のシステム・製品の低コスト化を図ることができる。
1,1A,1B,1C 窒化物半導体デバイス層
2 エッチングストッパ層(窒化物半導体デバイス層に正孔が蓄積することを防止する層;ディープトラップを含む窒化物半導体層;FeドープGaN層)
3 台座
4 接着層
5 GaN層(チャネル層)
6 AlGaN層(バリア層)
7 素子分離領域
8 ソース電極
9 ドレイン電極
10 ゲート電極
11 SiN膜
12 サファイア基板
13 エッチング犠牲層
14 AlN核形成層
15 エッチング液挿入用スクライブライン
16 犠牲層コンタクト用スクライブライン
17,18,20 レジスト
19 トレンチ電極
21 n型AlGaN層
22 n型GaN層
23 InGaN/GaN多重量子井戸層(多層構造)
24 p型AlGaN層
25 p型GaN層
26 n型オーミック電極
27 p型オーミック電極
28 SiN膜
29 n型GaNコンタクト層
30 p型GaN層
31 p型AlGaN層
32 InGaN/GaN多重量子井戸層(多層構造)
33 n型GaN層
34 n型AlGaN層
35 n型GaN層
36 n型オーミック電極
37 SiN膜
38 p型オーミック電極
39,40,44 レジスト
41 p型GaN層
42 n型GaN層
43 n型AlGaN層
45 サポート基板
46 接着剤
49 リング電極
50 エッチングストッパ層(窒化物半導体デバイス層に正孔が蓄積することを防止する層;AlGaN/GaN多層膜)

Claims (6)

  1. 基板上に、エッチング犠牲層を形成する工程と、
    前記エッチング犠牲層上に、エッチングストッパ層を形成する工程と、
    前記エッチングストッパ層上に、窒化物半導体デバイス層を形成する工程と、
    前記エッチング犠牲層を、光電気化学エッチングによって除去する工程とを含み、
    前記エッチングストッパ層は、前記窒化物半導体デバイス層に正孔が蓄積することを防止する層であることを特徴とする半導体装置の製造方法。
  2. 前記エッチングストッパ層が、前記エッチング犠牲層よりもバンドギャップの大きい窒化物半導体障壁層と、前記窒化物半導体障壁層よりもバンドギャップの小さい窒化物半導体井戸層とからなり、前記窒化物半導体障壁層又は前記窒化物半導体井戸層がディープトラップを含むことを特徴とする、請求項1記載の半導体装置の製造方法。
  3. 前記エッチングストッパ層が、ディープトラップを含む窒化物半導体層であることを特徴とする、請求項1記載の半導体装置の製造方法。
  4. 前記エッチングストッパ層が、前記エッチング犠牲層よりもバンドギャップの大きい窒化物半導体障壁層と、前記窒化物半導体障壁層よりもバンドギャップの小さい窒化物半導体井戸層とからなることを特徴とする、請求項1記載の半導体装置の製造方法。
  5. 前記エッチングストッパ層が、分断されており、
    分断された前記エッチングストッパ層の間に、p型導電性を持つ窒化物半導体層を備えることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
  6. 窒化物半導体デバイス層と、
    前記窒化物半導体デバイス層に正孔が蓄積することを防止するエッチングストッパ層とを備え、
    前記窒化物半導体デバイス層を成長させるために用いる基板を有しないことを特徴とする半導体装置。
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