JP2010534318A - 癌および慢性炎症のグリコシル化マーカー - Google Patents

癌および慢性炎症のグリコシル化マーカー Download PDF

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Abstract

本発明は、癌性および悪性状態、およびさらに炎症誘発性免疫反応により媒介される疾患の、診断および予後診断において用いるための、新規なバイオマーカーを提供する。バイオマーカーは糖タンパク質であり、そのレベルおよび発現は、本発明者らにより特定の疾患状態と対応づけられている。本発明はさらに、癌性状態または炎症誘発性疾患の処置において用いられる処置の療法への応答をモニタリングするのに用いる方法へも拡張される。

Description

本発明は、グリコシル化の解析が関連する、癌および慢性炎症を診断およびモニタリングする方法、ならびに癌および慢性炎症の処置への応答をモニタリングする方法に関する。特に本発明は、癌性および悪性状態の診断に用いる、グリコシル化マーカーを提供する。
初期の段階での癌の発見は生存の可能性を増加させる。多くの癌は、腫瘍がまだ局在している間に診断されれば、処置および治癒が可能である。しかしほとんどの癌は、周囲の組織に浸潤するか、または遠い部位に転移するまで発見されない。例えば、診断時に局在しているのは、乳癌の50%、前立腺癌の56%、そして結腸直腸癌の35%のみである。状況は他の種類の癌についてはさらに悪い。膵癌の約80%が診断時には既に転移しており、このため診断後の1年生存率は約19%であり、5年生存率は約4%である。類似する5年生存率(<5%)が、肝細胞癌について報告された。癌の発見におけるこの遅れは、早期発見が処置の成功に重要であるため、予後の悪化をもたらす。癌の処置に対する治療の選択肢が増加するにつれて、癌の早期発見は予後の改善にさらに重要となっている。
近年、ある種類の癌に対して血清タンパク質マーカーが開発されている。例えば、前立腺症状の血清中に見出される前立腺細胞から分泌される糖タンパク質である、前立腺特異的抗原(PSA)は、前立腺癌の腫瘍マーカーとして現在用いられている。癌の診断およびモニタリング用の他のタンパク質マーカーは、肝細胞癌および睾丸癌に対するα−フェトプロテイン、膀胱癌に対するNMP22、神経芽細胞腫に対するカテコールアミン、多発性骨髄腫に対する免疫グロブリン、結腸直腸癌に対する癌胎児抗原(CEA)、乳癌に対するHER−2、CA15−3およびCA27−29、卵巣癌に対するCA125、および膵癌に対するCA19−9などである。
これらのマーカーの開発はある種の癌の臨床管理を容易にするが、これらのバイオマーカーの解析は、癌診断の単一のスクリーニング法として用いるには感受性が低く、特異性も十分ではない。したがって、より感受性および特異性が高く、癌の進行の診断とモニタリングの両方について最も早いステージにおいて再発および転移を検出できる、新しい癌関連バイオマーカーおよび診断方法の開発が強く望まれている。
多くの急性期血清タンパク質、例えばハプトグロビンβ鎖、α1−酸性糖タンパク質およびα1−抗キモトリプシンは、糖タンパク質である。炎症の間、急性期タンパク質の血清レベルは1000倍までにも増加する可能性がある。これらの分子に付着したグリカン構造は、長期(慢性)炎症の間に変化する。最もよく理解されているグリコシル化変化の2つは、グリカン分岐の程度(キトビオースコアに付着するGlcNAcの数により規定される)およびシアリルルイスx(SLe/CD15)構造のレベルである。SLeエピトープは、ガラクトースにα2,3結合したシアル酸とGlcNAcにα1,3結合したフコースからなり、白血球血管外遊出に関わっている。SLeは、IL1−β、TNF−α、リポ多糖類およびホルボールミリスチン酸アセテートに応答して内皮細胞で独占的に発現される、内皮セレクチン(E−セレクチン)に対するリガンドである。天然にSLeエピトープを発現する白血球は、この相互作用を用いて内皮に付着し、インテグリン相互作用の後に、細胞は血流から血管外遊出される。SLeレベルは転移癌細胞で顕著に高く、癌細胞により転移のために利用可能である。SLeエピトープは、急性期タンパク質であるハプトグロビン、α1−酸性糖タンパク質およびα1−抗キモトリプシンに付着した、N−結合型グリカン上に存在する。
炎症誘発性サイトカインIL1−βおよびIL−6により刺激されるとHuH0−7肝細胞系から分泌される、α1−酸性糖タンパク質のN−結合型グリカンは、分岐およびSLeエピトープの増加を示す。急性炎症の間、α1−酸性糖タンパク質は、増加した二分岐構造を有するが、これは慢性炎症では三分岐および四分岐構造へとシフトする。これらのグリコシル化変化は、妊娠、関節リューマチ、慢性肝硬変および癌における慢性炎症と関連する。
サイトカインは活性化細胞により分泌されるシグナリング分子であって、これは、クロスモジュレーションにおいて作用して精製された免疫応答を示すことにより、細胞増殖および分化、白血球のランダムおよび方向性の遊走、炎症および適応免疫機能を制御する。多くの腫瘍は、特に腫瘍成長の後期ステージにおいて炎症性要素を有し、炎症過程は腫瘍の増殖および進行を促進させ得る。炎症関連サイトカインは、IL−6、IL1−β、TNF−α、IFN−γ、TNF−β、およびおそらくIL−8およびIL−11を含む。血清中のIL−1、IL−6、TNF−αおよびLIFは、急性期反応として知られている過程において、肝細胞を刺激して急性期タンパク質を分泌することができる。
癌においては、腫瘍の存在は慢性炎症を引き起こし、患者の90%においてSLeの術後レベルは減少し、60%が正常レベルとなる。血清糖タンパク質における高レベルのSLe、または腫瘍組織でのSLeエピトープの発現は、不良な転帰と関連する。SLeは腫瘍ステージの良好な予後因子であるが(71%)、しかし非小細胞肺癌に対しては弱い診断マーカーである(24%)。
乳癌は世界で最も多い癌であり、世界中の女性の癌関連の最大の死亡数をもたらしている。毎年110万件の新しい症例が診断され、400,000人以上の死亡が報告されている。任意の他の悪性腫瘍におけるのと同様に、スクリーニング、発見、診断、予後の評価、処置のモニタリングおよび再発の予測のためのみでなく、乳癌患者の臨床管理における重要な役割を果たすためにも、非侵襲的マーカーに対する緊急の必要性が存在する。乳癌に対して最も一般的に用いられているマーカーは、CA15−3および癌胎児抗原(CEA)である。しかしCA15−3は、バイオマーカーとして2つの重要な基準、すなわち特異性および感受性が欠如している。したがって、これは多くの場合CEAと共に測定され、患者の予後の決定およびモニタリングのためにのみ推奨される(Duffy M.J.による概説)。
乳癌のグリコシル化は20年以上も研究されており、グリコシル化経路の種々の側面を包含する。上記のように、最も幅広く研究されているグリカンはシアリルルイスx(SLe/CD15)であり、Lexの非シアリル化形態はCD15としても知られている。SLeの立体配座構造と、フコース、ガラクトースおよびシアル酸のカルボキシル基を介した、SLeの、E−セレクチンのレクチンドメインへの結合は、E−セレクチン結合を介して癌細胞転移を抑制するための糖模倣(glycomimetic)薬剤の開発の基礎である。
乳癌組織の免疫組織化学により、SLe発現が、原発腫瘍の大きさおよびリンパ節転移に関わりなく、生存についての独立した予後の指標であることが示された。同じ患者の乳癌病巣と正常な乳房組織の比較研究は、上皮細胞でのSLe発現が、癌試料に限定されていることを示した。同時に、P−およびE−セレクチン発現の両方が悪性組織の内皮細胞で大幅に強化され、これは、SLeのセレクチンへの結合が、癌細胞の転移を支援するとの提唱と整合する。RCNH4結腸癌細胞の肝臓への高い転移能力は、細胞表面SLeの発現のためであり、これが、肝洞様リンパ球媒介性死滅への感受性を減少させる。しかし、腫瘍細胞表面糖タンパク質でのSLeの過剰発現は逆の効果を有する可能性があり、CD94受容体複合体およびNKG2D、NKG2CおよびSLeを認識するCD161(Higai et al., 2006)を介した、ナチュラルキラー(NK)細胞による細胞溶解をもたらす。これらの報告は、種々のレベルのSLe発現が、異なる生物学的結果を導き得るとの事実を強調する。
卵巣癌は、英国の癌死亡率統計によれば、女性における産婦人科的な癌全ての中で最も致死的である。多くの患者は病気が進行ステージに入って診断される。癌が初期に診断されるほど5年生存率は高くなり、これは初期のステージでは90%を越えるが、進行ステージIIIおよびIVでは、30%に減少する。
ヒト癌腫において、グリコシル化の変化が記載され、これにはシアリルルイスx(SLe)の存在を含む。上述したように、SLeエピトープは、α1,3結合フコースを有するGlcNAc残基と、α2,3結合シアル酸を有するβ1−4結合ガラクトースからなる。腫瘍転移において提唱されている役割に加えて、SLeはまた、慢性炎症の間に、ハプトグロビン、α1−酸性糖タンパク質およびα1−抗キモトリプシン上ならびに好中球においても、上方調節される。卵巣癌についての前の報告は、卵巣癌患者のハプトグロビンおよびIgGでのグリコシル化の変化を指摘している。
幾つかの潜在的マーカーが現在研究されており、これには、OVX1、M−CSF、インヒビン、カリクレイン、TPSおよびリゾホスファチジン酸が含まれる。いくつかの研究における、よりプロテオミクスに基づくアプローチは、卵巣癌バイオマーカーに対する可能性を説明する。
現在卵巣癌はの診断は、超音波検査および血清マーカーCA125によって最も頻繁になされている。CA125は現在、卵巣癌に対する最善のマーカーであるが、しかし、このマーカーは初期ステージの癌の診断には信頼性が低い。CA125は卵巣癌患者の80〜90%で上昇する;レベルは病気のステージと共に高くなる。さらに、これは粘液性よりも非粘液性腫瘍において高い。CA125は、良性状態、妊婦、および他の癌において擬陽性の応答を与える可能性がある。これは本質的に、この致死的な癌に対して、CA125の使用に置き換えるかまたは補完する、追加のマーカーが必要であることを示す。
本発明者らは驚くべきことに、大規模な実験を行って、癌性または悪性状態の発生および進行に関連する、グリコシル化における1つより多くの変化をモニタリングすることにより、感受性の高い特異的な診断方法に到達できることを確認した。
本発明の第1の側面により、癌性および/または悪性状態の診断のための方法であって、ステップ:
−対象からの試験試料を供給すること、
−試験試料中の癌性および/または悪性状態についての2種または3種以上のグリコシル化マーカーのレベルを決定すること、
−前記2種または3種以上のグリコシル化マーカーの決定レベルに基づいて、診断を提供すること、
を含む前記方法が提供される。
一般に、前記2種または3種以上のグリコシル化マーカーは、癌性および/または悪性状態に特異的である。一般に診断は、2種または3種以上のグリコシル化マーカーの決定レベルを予め決定された標準尺度と比較して、前記決定レベルの値を用いて、2種または3種以上のグリコシル化マーカーのレベルが統計的に有意であるかどうかを決定することに基づく。
本発明者らはさらに、癌性および/または悪性状態の診断に加えて、本発明の方法およびマーカーが、対象における癌性状態の予後診断のための方法に関連してさらなる有用性を有することを、確認した。
したがって、本発明の第2の側面により、対象における癌性または悪性状態の予後診断のための方法であって、ステップ:
−対象からの試験試料を供給すること、
−試験試料中の癌性および/または悪性状態についての2種または3種以上のグリコシル化マーカーのレベルを決定すること、
−前記2種または3種以上のマーカーのレベルから、予後を決定すること、
を含む前記方法が提供される。
一般に、予後診断は、少なくとも2種のグリコシル化マーカーの決定された値を、既知の標準値または標準曲線と比較することにより作成する。
さらに、本発明のマーカーおよび方法は、対象における癌性または悪性状態の処置に対する、対象の応答をモニタリングするための方法において、有用性を有する。
したがって、本発明の第3の側面により、癌性および/または悪性状態の処置用の治療化合物を投与された対象の、治療への応答を決定するための方法であって、ステップ:
−対象からの試験試料を供給すること、
−試験試料中の癌性および/または悪性状態についての2種または3種以上のグリコシル化マーカーのレベルを決定すること、
−前記2種または3種以上のマーカーのレベルから、応答を決定すること、
を含む前記方法が提供される。
本発明の方法において1種より多いグリコシル化マーカーを用いることは、診断、予後、および/または治療への応答の決定のための、ただ1つのグリコシル化マーカーが関与する方法により達成されるよりも改善された(すなわち、より特異的および/または感受性の高い)方法を提供することが見出された。改善のレベルは加算的であってよいが、好ましくは相乗的である。
本発明の前述の側面は、試験試料中の、癌性および/または悪性状態についての2種、3種、4種、5種、6種、7種、8種、9種、10種または11種以上の、好ましくは5〜10種のグリコシル化マーカーのレベルを決定する(およびしたがって、これに基づいて診断、予後または応答を決定する)のが好ましい。しかし、生体試料中の全ての(すなわち、全または不精製の)グリコシル化マーカーに基づく決定が関与する方法は、好ましくない。実際、決定は、癌性および/または悪性状態についての30、40、20、または15種より少ないグリコシル化マーカーに対して行うことが好ましい。
上記方法において用いるグリコシル化マーカーは、当業者に知られた、および/または本明細書に記載された、癌性および/または悪性状態の発生および/または進行に関連する糖タンパク質のグリコシル化における変化を示す、任意のグリコシル化マーカーであってよい。さらなる限定を意図しないが、しかし明確さのために、これらのマーカーは以下からなる群から選択される:グリカン分岐における変化;オリゴマンノース、ハイブリッドおよび複合型N−グリカン、O−グリカンまたはこれらの成分(例えばフコシル化、SLeエピトープ、ラクトサミン延長)のレベルにおける変化;グリカン間のレベルの比率における変化;GU値;または同類のもの;またはこれらの任意の組合せ。グリコシル化マーカーは、O−および/またはN−結合型グリカンと関連していてもよい。
より具体的には、例えば、好適なマーカーは、以下からなる群から選択してよい:GU値が10.65より高いグリカン、SLe構造、SLeの消化由来A2FG1、SLeの消化由来A3FG1、SLeの消化由来A4FG1、シアリル化三分岐グリカン、シアリル化四分岐グリカン、α1,3フコース含有グリカン、α1,3モノフコシル化三分岐グリカン、α1,3ジフコシル化三分岐グリカン、α1,3モノフコシル化四分岐グリカン、α1,3ジフコシル化四分岐グリカン、ラクトサミン延長を有する四分岐グリカン、α2,3シアリル化グリカンのα2,6シアリル化グリカンに対する比率、アガラクトシル化フコシル化二分岐グリカン、コアフコシル化アガラクトシル化二分岐グリカン、トランスフェリン上のコアフコシル化モノシアリル化グリカン、ハプトグロビンβ鎖上のグリカン上のSLe、ハプトグロビンβ鎖上のグリカン上のSLeの消化由来A3FG1、ハプトグロビンβ鎖上のグリカン上のSLeの消化由来A4FG1、α1−酸性糖タンパク質上のグリカン上のSLe、α1−酸性糖タンパク質上のグリカン上のSLeの消化由来A3FG1、α1−抗キモトリプシン上のグリカン上のSLe、α1−抗キモトリプシン上のグリカン上のSLeの消化由来A3FG1、α1−抗トリプシン上の四分岐テトラガラクトシル化グリカン、IgG上のコアフコシル化アガラクトシル化二分岐グリカン、IgG上のアガラクトシル化グリカン、IgG上のグリカンのシアリル化、IgG上のグリカンのガラクトシル化、トランスフェリン上のグリカン上のFA2G2S1、トランスフェリン上のグリカン上のFA2BG2S1、およびα1−抗トリプシン上のグリカン上のA4G4、または同類のもの、またはこれらの任意の組合せ。
ある態様において、ノンパラメトリック統計試験をクラスカル・ワリスの検定と共に用いて、SLeレベルについて全群を比較し、次にマンホイットニー検定によりマーカーの個々の群の比較を行うことができる。相関解析は、一般にスピアマンの両側検定を用いて実施してよい。ある態様において、P<0.05値を、有意性のカットオフ値として用いてよい。
グリコシル化マーカーがその上に見出されたグリカンを、総グリカンとして、または消化グリカンとして(したがってグリカンの断片に基づいて)解析することができる。
好ましくは、マーカーは、GU値が10.65より高いグリカン、SLe構造、SLeの消化由来A3FG1、シアリル化三分岐グリカン、シアリル化四分岐グリカン、α1,3フコース含有グリカンからなる群から選択される。
さらなる限定は意図しないが、明確さのために、前述の方法において用いるためのグリコシル化マーカーの好ましい組合せは、以下からなる群から選択することができる:S3およびS4、フコース、GUが10.65の三および四分岐グリカン;A3FG1およびFA2;SLeおよびフコシル化アガラクトシル化二分岐グリカンまたは同類のもの;またはこれらの任意の組合せ。
不確かさを避けるために、「2種または3種以上」のグリコシル化マーカーへの言及は、方法が2種類または3種類以上のグリコシル化マーカーに関連することを意味し、2例または3例以上の同種のグリコシル化マーカーに関するのではない。
さらなる大規模な実験に続いて、本発明者らは、癌性または悪性状態の発生および進行に関連するグリコシル化における変化(すなわち、グリコシル化マーカー)、およびグリコシル化における変化によって規定されない癌マーカーをモニタリングすることにより、感受性が高く特異的な診断方法に到達できることを確認した。
したがって、本発明の第4の側面により、癌性および/または悪性状態の診断方法であって、ステップ:
−対象からの試験試料を供給すること、
−試験試料中の癌性および/または悪性状態についての1種または2種以上のグリコシル化マーカーのレベル、および癌性および/または悪性状態についての1種または2種以上の非グリコシル化マーカーのレベルを決定すること、および
−前記1種または2種以上のグリコシル化マーカーおよび1種または2種以上の非グリコシル化マーカーの決定されたレベルに基づいて、診断を提供すること、
を含む、前記方法が提供される。
本発明者らはさらに、癌性および/または悪性状態の診断に加えて、本発明の方法およびマーカーが、対象における癌性状態の予後診断のための方法に関連するさらなる有用性を有することを確認した。
したがって、本発明の第5の側面により、対象における癌性または悪性状態の予後診断のための方法であって、ステップ:
−対象からの試験試料を供給すること、
−試験試料中の癌性および/または悪性状態についての1種または2種以上のグリコシル化マーカーのレベル、および癌性および/または悪性状態についての1種または2種以上の非グリコシル化マーカーのレベルを決定すること、および
−前記1種または2種以上のグリコシル化マーカーおよび1種または2種以上の非グリコシル化マーカーの決定されたレベルから、予後を決定すること、
を含む、前記方法が提供される。
さらに、本発明の方法およびマーカーは、癌性または悪性状態の処置に対する対象の応答をモニタリングするための方法に、有用性を有する。
したがって、本発明の第6の側面により、癌性および/または悪性状態の処置用の治療化合物を投与された対象の、治療への応答を決定するための方法であって、ステップ:
−対象からの試験試料を供給すること、
−試験試料中の癌性および/または悪性状態についての1種または2種以上のグリコシル化マーカーのレベル、および癌性および/または悪性状態についての1種または2種以上の非グリコシル化マーカーのレベルを決定すること、
−前記1種または2種以上のグリコシル化マーカーおよび1種または2種以上の非グリコシル化マーカーの決定されたレベルから、応答を決定すること、
を含む、前記方法が提供される。
グリコシル化マーカーを非グリコシル化マーカーと組み合わせて用いることは、ただ1種のグリコシル化マーカー、および/または複数のグリコシル化マーカーが関連する方法によって達成されるよりも、より改善された(例えばより特異的および/またはより感受性の高い)診断、予後、および/または治療への応答を決定する方法を提供することが見出されている。改善のレベルは加算的であってよいが、好ましくは相乗的である。
本発明の第4、第5、および第6の側面の方法は、試験試料中の、2種、3種、4種、5種、6種、7種、8種、9種、10種または11種以上の、癌性および/または悪性状態についての非グリコシル化マーカーのレベル、および/または癌性および/または悪性状態についてのグリコシル化マーカーのレベルを決定する(したがって、それに基づいて診断、予後または反応を決定する)のが好ましく、好ましくは5〜10種のグリコシル化マーカーおよび/または5〜10種の非グリコシル化マーカーを用いる。しかし、生体試料中の全ての(すなわち、全または不精製の)グリコシル化マーカーに基づく決定が関与する方法は、好ましくない。実際、決定は、癌性および/または悪性状態についての40、30、20、または15種より少ないグリコシル化および/または非グリコシル化マーカーに対して行うことが好ましい。
本発明の第4、第5、および第6の側面の方法で用いるグリコシル化マーカーは、本発明の第1、第2、および第3の側面に関して上述した任意のもの、およびそれらの好ましいまたは任意の態様を含むものであってよい。
癌性および/または悪性状態の非グリコシル化マーカーは、それらが癌性および/または悪性状態の発生および/または進行に関連する糖タンパク質のグリコシル化における変化を表わすため、マーカーとして特徴づけられていない、癌性および/または悪性状態の任意のマーカーである。かかる非グリコシル化マーカーは当業者に知られており、および/または本明細書に記載されている。さらなる限定を意図することなく、しかし明確さのために、これらのマーカーは以下からなる群から選択してよい:炎症マーカー、サイトカイン、ケモカイン、遺伝子マーカー、カテコールアミン、免疫グロブリン、血管新生のマーカーまたは同類のもの、またはこれらの任意の組合せ。より具体的には、例えば、好適なマーカーは以下からなる群から選択してよい:α−フェトプロテイン、NMP22、癌胎児抗原(CEA)、HER−2、CA15−3、CA27−29、CA125、CA19−9、およびC反応性蛋白(CRP)、IL−4、IL−10、IL−1α、およびIL−1β、MCP−1または同類のもの、またはこれらの任意の組合せ。
さらなる限定を意図することなく、しかし明確さのために、上述の方法において用いるためのグリコシル化および非グリコシル化マーカーの好ましい組合せは、以下からなる群から選択することができる:CRPおよび任意の上述のグリコシル化マーカーの任意の1種、2種、3種、4種、5種、6種、または7種以上;CRPならびにグリコシル化マーカーS3およびS4、フコース、GUが10.65、三および四分岐グリカンの任意の1種、2種または3種;S3およびS4、フコース、GUが10.65、三および四分岐グリカン、ならびにCRP;フコシル化アガラクトシル化二分岐グリカンおよびCRP;1種または2種以上の炎症誘発性サイトカイン(例えばIl−1αおよびIl−1β)および上から選択される1種または2種以上のグリコシル化マーカー;1種または2種以上の炎症誘発性サイトカイン(例えばIL−4およびIL−10)および上から選択される1種または2種以上のグリコシル化マーカー;1種または2種以上のケモカイン(例えばMCP−1)および上から選択される1種または2種以上のグリコシル化マーカー;またはこれらの組合せ。
不確かさを避けるために、「1種または2種以上」の非グリコシル化マーカーへの言及は、方法が1種類または2種類以上の非グリコシル化マーカーに関連することを意味し、1例または2例以上の同種の非グリコシル化マーカーに関するのではない。
本発明者らによるさらなる大規模な実験で、癌および慢性炎症の発生および進行に関連する、グリコシル化およびサイトカイン発現プロファイルにおける多数の変化が同定された。これらの変化を同定することにより、本発明者らは、癌および慢性炎症を診断する、およびさらにこれらの疾患の処置に対する応答をモニタリングするための、改善された方法において用いるための、これらのマーカーとしての有用性を認識した。
したがって、本発明の第7の側面により、癌性および/または悪性状態の診断方法であって、ステップ:
−対象からの試験試料を供給すること、
−以下を含む群から選択される少なくとも1種のマーカーのレベルを決定すること:GU値が10.65より高いグリカン、SLe構造、SLeの消化由来A2FG1、SLeの消化由来A3FG1、SLeの消化由来A4FG1、シアリル化三分岐グリカン、シアリル化四分岐グリカン、α1,3フコース含有グリカン、α1,3モノフコシル化三分岐グリカン、α1,3ジフコシル化三分岐グリカン、α1,3モノフコシル化四分岐グリカン、α1,3ジフコシル化四分岐グリカン、ラクトサミン延長を有する四分岐グリカン、α2,3シアリル化グリカンのα2,6シアリル化グリカンに対する比率、アガラクトシル化フコシル化二分岐グリカン、コアフコシル化アガラクトシル化二分岐グリカン、トランスフェリン上のコアフコシル化モノシアリル化グリカン、ハプトグロビンβ鎖上のグリカン上のSLe、ハプトグロビンβ鎖上のグリカン上のSLeの消化由来A3FG1、ハプトグロビンβ鎖上のグリカン上のSLeの消化由来A4FG1、α1−酸性糖タンパク質上のグリカン上のSLe、α1−酸性糖タンパク質上のグリカン上のSLeの消化由来A3FG1、α1−抗キモトリプシン上のグリカン上のSLe、α1−抗キモトリプシン上のグリカン上のSLeの消化由来A3FG1、α1−抗トリプシン上の四分岐テトラガラクトシル化グリカン、IgG上のコアフコシル化アガラクトシル化二分岐グリカン、IgG上のアガラクトシル化グリカン、IgG上のグリカンのシアリル化、IgG上のグリカンのガラクトシル化、トランスフェリン上のグリカン上のFA2G2S1、トランスフェリン上のグリカン上のFA2BG2S1、およびα1−抗トリプシン上のグリカン上のA4G4、または同類のもの、またはこれらの任意の組合せ;および
−前記少なくとも1種のマーカーの決定されたレベルに基づき、診断を提供すること、
を含む、前記方法が提供される。
本発明者らはさらに、癌性または悪性状態の診断に加えて、本発明の方法およびマーカーは、対象における癌性状態の予後診断のための方法に関してさらなる有用性を有することを確認した。
したがって、本発明の第8の側面により、対象における癌性または悪性状態の予後診断のための方法であって、ステップ:
−対象からの試験試料を供給すること、
−試験試料中の、本発明の第7の側面に記した少なくとも1種のマーカーのレベルを決定すること、および
−前記少なくとも1種のマーカーのレベルから、予後を決定すること、
を含む、前記方法が提供される。
さらに、本発明のマーカーおよび方法は、対象における癌性または悪性状態の処置に対する、対象の応答をモニタリングする方法において、有用性を有する。
本発明の第9の側面により、癌性または悪性状態の処置用の治療化合物を投与された対象の、治療への応答を決定するための方法であって、ステップ:
−対象からの試験試料を供給すること、
−試験試料中の、本発明の第7の側面に記した少なくとも1種のマーカーのレベルを決定すること、および
−前記少なくとも1種または2種以上のマーカーのレベルから、応答を決定すること、
を含む、前記方法が提供される。
本発明の第7、第8、および第9の側面の好ましい態様において、方法は、本発明のこれらの側面に記したグリコシル化マーカーの1種のみに基づく決定も含む。
グリコシル化マーカーは、O−および/またはN−結合型グリカンに関連していてもよい。
不確かさを避けるために、「少なくとも1種」および「1種のみ」のグリコシル化マーカーへの言及は、方法が1種類のみのグリコシル化マーカーに関連することを意味し、グリコシル化マーカーの1例のみ(すなわち、単一分子の事象)に関するのではない。
本発明者らは、癌性および/または悪性状態に関連する糖タンパク質のグリコシル化における個々の変化は、多くの糖タンパク質に共通し得ることを見出した。したがって、本発明の任意の側面によるグリコシル化マーカーは、好ましくは、特定の糖タンパク質に存在するものに限定されない。しかし明確さのために、グリコシル化マーカーは好ましくは、以下からなる群から選択される糖タンパク質に関連するものである:急性期糖タンパク質(例えば血清アミロイドA、ハプトグロビン、α1−酸性糖タンパク質、α1−抗トリプシン、α1−抗キモトリプシン、フィブリノーゲン、トランスフェリン、2−マクログロブリン、プロトロンビン、第VIII因子、フォンウィルブランド因子またはプラスミノゲン)、癌性および/または悪性状態に関連する他の血清タンパク質、α−フェトプロテイン、NMP22、癌胎児抗原(CEA)、HER−2、CA15−3、CA27−29、CA125、CA19−9、およびC反応性蛋白(CRP)、IgG、または同類のもの、またはこれらの任意の組合せ。
本発明は、本発明者らにより本明細書に同定されたマーカーおよびマーカーの組合せの、少なくとも1つの癌性または悪性状態の、診断および/または予後診断のための方法における使用に拡張される。
したがって、本発明の第10の側面により、癌性および/または悪性状態の診断用の方法における、次のものの使用を提供する:(1)本発明の第1の側面による2種または3種以上のグリコシル化マーカーであって、これらの任意の好ましいもしくは随意の態様を含むもの、(2)本発明の第4の側面による、1種または2種以上のグリコシル化マーカーおよび1種または2種以上の非グリコシル化マーカーであって、これらの任意の好ましいもしくは随意の態様を含むもの、または、(3)本発明の第7の側面による、少なくとも1種のグリコシル化マーカーであって、これらの任意の好ましいもしくは随意の態様を含むもの。
したがって、本発明の第11の側面により、癌性または悪性状態の予後診断のための、次の使用を提供する:(1)本発明の第2の側面による2種または3種以上のグリコシル化マーカーであって、これらの任意の好ましいもしくは随意の態様を含むもの、(2)本発明の第5の側面による、1種または2種以上のグリコシル化マーカーおよび1種または2種以上の非グリコシル化マーカーであって、これらの任意の好ましいもしくは随意の態様を含むもの、または、(3)本発明の第8の側面による、少なくとも1種のグリコシル化マーカーであって、これらの任意の好ましいもしくは随意の態様を含むもの。
したがって、本発明の第12の側面により、癌性または悪性状態の処置のために、治療化合物を投与された対象において該対象の応答を決定するための方法における、次のものの使用を提供する:(1)本発明の第3の側面による2種または3種以上のグリコシル化マーカーであって、これらの任意の好ましいもしくは随意の態様を含むもの、(2)本発明の第6の側面による、1種または2種以上のグリコシル化マーカーおよび1種または2種以上の非グリコシル化マーカーであって、これらの任意の好ましいもしくは随意の態様を含むもの、または、(3)本発明の第9の側面による、少なくとも1種のグリコシル化マーカーであって、これらの任意の好ましいもしくは随意の態様を含むもの。
本発明の第13の側面において、少なくとも1つの癌性状態を診断するためのキットであって、
−(1)本発明の第1の側面による2種または3種以上のグリコシル化マーカーであって、これらの任意の好ましいもしくは随意の態様を含むもの、(2)本発明の第4の側面による、1種または2種以上のグリコシル化マーカーおよび1種または2種以上の非グリコシル化マーカーであって、これらの任意の好ましいもしくは随意の態様を含むもの、または、(3)本発明の第7の側面による、少なくとも1種のグリコシル化マーカーであって、これらの任意の好ましいもしくは随意の態様を含むもの、を検出するための手段、および
−これを用いるための指示書、
を含む前記キットが提供される。
1種より多くのマーカー(グリコシル化または非グリコシル化マーカー)の解析が関与する、本発明の任意の側面による方法は、各マーカーの、別個の、同時の、または順番の解析を含むことができる。
本発明の側面において、1種、2種または3種以上のグリコシル化マーカーのレベルの解析が、1種または2種以上の非グリコシル化マーカーのレベルの解析と任意に組み合わされて関与する方法が、診断、予後または治療組成物への応答の決定を提供するために提供される。
当業者は、特に本明細書に提供された結果に照らすと、解析すべきレベルをよく認識するであろう。しかし明確さのために、解析すべきレベルは例えば:試料中のマーカーの量;試料中の1種のマーカー量の、少なくとも1種のさらなるマーカーの量に対する比率;マーカーのプール(全糖タンパク質プールからであってもよい)における1つのマーカーの量のパーセンテージ、または;クロマトグラフィ追跡における1種または2種以上のマーカーを示すピークの、数、位置、および/または高さまたは集積であってよい。試験試料中の1種または2種以上のマーカーのレベルは、基本的に任意の便利な技術または技術の組合せにより決定することができる。例えば、マーカーは、試料またはその派生物もしくは成分(例えば、血清、血清画分、細胞または組織溶解物、グリカンプール、単離タンパク質等)に対して、クロマトグラフィ(例えば順相または弱陰イオン交換HPLC)、質量分析、ゲル電気泳動(例えば1次元または2次元ゲル電気泳動)、キャピラリー電気泳動、および/または免疫検定またはELISA(例えば免疫PCR、ELISA、レクチンELISA、ウェスタンブロット、またはレクチン免疫検定法)を実施することにより、検出可能である。
例えば、以下の実施例およびDwek et al.による米国特許出願第20060269974号、名称「癌の診断およびモニタリング用のグリコシル化マーカー」、Dwek et al.による第20060270048号、名称「生理学的グリコシル化マーカーを同定する自動化戦略」、およびDwek et al.による第20060269979号、名称「関節リューマチおよび他の自己免疫疾患の診断とモニタリングのための高スループットグリカン解析」を参照のこと。
当業者は、特に本明細書に提供された結果に照らすと、これらのレベルの決定がどのように診断、予後、または治療化合物への応答を指示するかについてよく認識するであろう。
しかし、不確かさを避けるために、本発明の全ての側面の方法は、好ましくは、1または2以上の対照試料の1種または2種以上のグリコシル化マーカー、および/または1種または2種以上の非グリコシル化マーカーと比較した、1種、2種または3種以上のグリコシル化マーカーのレベルの間の差(または変化)を、任意に1種または2種以上の非グリコシル化マーカーのレベルの間の差(または変化)と組み合わせて、決定するステップを含む。対照試料は、疾患を有さない1または2以上の対象に由来する試料、または対象から以前に得た試料、例えば、該対象が癌性または悪性状態を有していなかった間の、または該状態の早期ステージにおける、前記試料であってよい。
レベルにおける差、または変化は、これらのレベルにおける増加または減少であることができる。かかる差または変化は、それ自体、マーカーの異なる量、2つのマーカー量の間の異なる比率、クロマトグラフィ追跡の特定領域における異なる数のスパイク、クロマトグラフィ追跡のスパイクの異なる高さとして、表わすことができる。
したがって、本発明の診断、予後診断およびモニタリングの方法は、試験試料中の1種または2種以上のマーカーのレベルを比較すること、およびこのレベルを対照試料中の1種または2種以上のマーカーのレベルと比較すること、およびこれらのレベルの間の差に基づき、診断、予後および/または応答を決定すること、というステップを含むことができる。
例えば、対象からの試料中の、疾患(例えば癌および/または悪性疾患)と関連すると同定されたマーカーのレベルと、健康な個人から取得した対照試料中の該マーカーのレベルの間の差は、対象中のこの疾患についての陽性診断(positive diagnosis)を決定することができる。
例えば、疾患を有する対象からの試料中の、疾患(例えば癌および/または悪性疾患)と関連すると同定されたマーカーのレベルと、該対象から早期に取得した対照試料中の該マーカーのレベルの間の差は、疾患の進行または退縮を較正することができる。
例えば、疾患を有する対象からの治療化合物による処置後の試料中の、疾患(例えば癌および/または悪性疾患)と関連すると同定されたマーカーのレベルと、該対象から早期に治療化合物の投与前に取得した対照試料中の該マーカーのレベルの間の差は、治療化合物に対する個人による応答を較正することができる(すなわち、治療化合物が疾患を処置しているかどうかを決定する)。
例えば、対照試料と比べた、試験試料中の1種または2種以上のマーカーのレベルの増加は、肺癌、ステージ4の肺癌、および/またはステージ3の肺癌の存在を示す。
マーカーのレベルにおける任意の変化は、疾患の陽性診断、進行または退縮を示すことができ、または治療化合物への応答は、当業者により理解される。
さらなる限定は意図しないが、明確さのために、例えば、1つの態様において、差または変化は、GU値が10.65より高いグリカン、SLe構造、SLeの消化由来A3FG1、SLeの消化由来A4FG1、シアリル化三分岐グリカン、シアリル化四分岐グリカン、α1,3フコース含有グリカン、ハプトグロビンβ鎖上のグリカン上のSLe、ハプトグロビンβ鎖上のグリカン上のSLeの消化由来A3FG1、ハプトグロビンβ鎖上のグリカン上のSLeの消化由来A4FG1、炎症誘発性サイトカイン、IL−4およびIL−10の、1つまたは2つ以上のレベルにおける増加であることができ、これは、癌、例えば肺癌、およびさらに好ましくはステージ4の肺癌、および/またはステージ3の肺癌の存在を示す。GU値が10.65より高いグリカン、および/またはα1,3フコース含有グリカンは、ハプトグロビングリカンを含んでよい。
他の例示の態様において、α1,3ジフコシル化三分岐グリカン、SLe構造、SLeの消化由来A2FG1、SLeの消化由来A3FG1、α1,3モノフコシル化三分岐グリカン、α1,3モノフコシル化四分岐グリカン、α1,3ジフコシル化四分岐グリカン、ラクトサミン延長を有する四分岐グリカン、α2,3シアリル化グリカンのα2,6シアリル化グリカンに対する比率、およびアガラクトシル化フコシル化二分岐グリカンの1種または2種以上のレベルにおける増加は、癌、例えば乳癌の存在を示す。一般に乳癌について、α2,3シアリル化の増加は、トリシアリル化断片において最も大きい。
さらに他の例示の態様において、コアフコシル化アガラクトシル化二分岐グリカンの増加、トランスフェリン上のコアフコシル化モノシアリル化グリカンの減少、ハプトグロビンβ鎖上のグリカン上のSLeの増加、SLe構造の増加、SLeの消化由来A3FG1の増加、ハプトグロビンβ鎖上のグリカン上のSLeの消化由来A3FG1の増加、α1−酸性糖タンパク質上のグリカン上のSLeの増加、α1−酸性糖タンパク質上のグリカン上のSLeの消化由来A3FG1の増加、α1−抗キモトリプシン上のグリカン上のSLeの増加、α1−抗キモトリプシン上のグリカン上のSLeの消化由来A3FG1の増加、α1−抗トリプシン上の四分岐テトラガラクトシル化グリカンの増加、IgG上のコアフコシル化アガラクトシル化二分岐グリカンの増加、IgG上のアガラクトシル化グリカンの増加、IgG上のグリカンのシアリル化の減少、IgG上のグリカンのガラクトシル化の減少、トランスフェリン上のグリカン上のFA2G2S1の減少、α2,3シアリル化グリカンのα2,6シアリル化グリカンに対する比率の変化、および/またはα1−抗トリプシン上のグリカン上のA4G4の増加は、癌、例えば卵巣癌の存在を示す。
一般に、例えば卵巣癌において、α2,3シアリル化グリカンのα2,6シアリル化グリカンに対する比率の変化は、α2,3シアリル化グリカンのα2,6シアリル化グリカンに対する比率における減少を含む。卵巣癌において、α2,3シアリル化の減少は一般に、ジシアリル化断片におけるものである。
さらなる差を、実施例および添付の図に提供する結果から直接外挿することができる(例または図の疾患の状態または糖タンパク質に必ずしも限定はしない)。
当業者は、対照と比較した、レベルにおける任意の統計的に有意な差は、診断、予後または応答の決定因子となるだろうことを認識する。対象からの試料中の1種または2種以上のマーカーのレベルの、対照における該マーカーのレベルからの差の程度であって、有意な変化または差を示し、かつ診断、予後または応答の決定因子となるであろう前記の差の程度は、当業者の範囲内で決定することができる。不確かさを避けるために、また明確さのために、有意な差は、マーカーの決定されたレベルが、対照マーカーのそれらから、5、10、15または20%より大きく変化したものであることが好ましい。
1種より多いグリコシル化マーカーに基づくか、または、1種もしくは2種以上のグリコシル化マーカーと1種もしくは2種以上の非リコシル化マーカーの組合せに基づく解析が関与する、本発明の任意の側面の1つの態様において、好ましくは方法は、クラスター分析を行って、少なくとも2種のマーカーの間の相互作用または相互関係を特徴付けることを、さらに含む。もっとも好ましくは、クラスター分析を用いて、対象からの試料中のマーカーと対照からの試料中のそれらとの間の相互作用または相互関係を示す。かかるクラスター分析はしたがって、対象試料中のマーカーと対照試料中のマーカーの間の差(または変化)を同定するのに用いることができ、したがって、診断、予後、または治療剤への応答を決定できる。
特定の態様において、サイトカインレベルのクラスター分析を行ってもよく、これは例えばIL−1αおよびIL−1βなどの炎症誘発性または抗炎症性サイトカイン、例えばIL−4およびIL−10などの抗炎症性サイトカイン、および例えばMCP−1などのケモカインの解析を含むが、これらに限定されない。これは、グリコシル化マーカーのクラスター分析と組み合わせてもよい。
一連の個別パラメータを通したクラスター分析に基づくクラスター分析の形態は、本明細書で後に説明する(Cluster-Statistical 5.0, Statsoft Inc, USAも参照のこと)。
しかし、特に好ましいクラスター分析の形態は、部分的最小二乗プロジェクション(PLSプロジェクション)の形態である。PLSプロジェクションは、対象および対照に由来する任意数のマーカーから得たデータについて実施することができる。各マーカーのレベルについてのデータは、初めに変数重要度プロット(VIP)に帰属させ、続いてPLSにかける。PLS−DA解析は、Hoeskuldsson, A. "PLS regression methods.", J.Chemometr., 2 (1988) 211-2281および Wold, S., Sjoestroem, M., and Eriksson, L., "PLS regression: A basic tool of chemometrics, Chemometrics and Intelligent Laboratory Systems", 58, 109-130, 2001.に記載されている。
診断、予後、または応答は、例えば癌の種類、癌の臨床状態(癌、前癌状態、良性状態、状態なし)またはステージなどの決定を含むことができるが、これに限定しない。
本発明者らは、マーカーが特定の癌に限定されなくてもよいことを確認した。癌、癌性状態または悪性状態は、肺癌、乳癌、卵巣癌、膵癌、前立腺癌、ブドウ膜黒色腫、肝細胞癌、膀胱癌、腎臓癌、結腸癌または胃癌、神経芽細胞腫、多発性骨髄腫、結腸直腸癌、癌腫、または同類のもの、またはこれらの任意の組合せであってよいが、これらに限定されない。
血清グライコームにおける変化の組合せの解析は、癌性および良性腫瘍の分類を改善する可能性がある。したがって、1つの態様において、2種または3種以上のマーカーのレベルを解析して、腫瘍が良性であるか悪性であるかを決定する。例えば、SLeおよびコアフコシル化アガラクトシル化二分岐グリカンのレベルを解析して、卵巣癌の有無を決定する。各マーカーのレベルは、同時にまたは連続して解析してよく、および任意に、前述のクラスター分析を用いてもよい。
本発明者らは驚くべきことに、フコシル化アガラクトシル化二分岐グリカンとC反応性蛋白(CRP)のレベルが、卵巣癌において相関しないことを示した。したがって、本発明のさらなる、または代替的態様において、フコシル化アガラクトシル化二分岐グリカンおよびCRPのレベルを決定して、非癌性の炎症状態から卵巣癌を識別することができる。
治療化合物への応答を決定することに関連する本発明の方法は、以前に癌と診断された対象において実施してよく、該方法は、
−対象を癌について処置すること;
−処置開始前の対象からの第1試験試料、および処置開始後の対象からの第2試験試料を供給すること;および
第1試験試料中の1種または2種以上のマーカーのレベルを、第2試験試料中のレベルと比較して、対象の処置(例えば、治療化合物の投与)への応答をモニタリングすること、
を含む。
本発明の任意の側面における対象は、好ましくは哺乳類、典型的にはヒトである。対象は、動物または細胞株であってよく、好ましくは疾患のモデルとして用いるために調製された動物または細胞株(例えば癌細胞株、または転換された生物)、または任意のバイオプロセシングにおいて用いられる動物または細胞株(例えば転換された生物)である。
本発明の方法は、グリコシル化マーカーのレベルの任意の変化をバイオプロセシングにおける変化の指標(例えば、必要なバイオプロセスに供されるためのその能力に影響し得る、生物の生化学における変化)として使用することにより、対象におけるバイオプロセシングの一貫性(consistency)をモニタリングするために用いることができる。
本発明の方法は、不死化された癌細胞株または動物モデルの、病気の細胞(例えば癌細胞)を増殖させる一貫性をモニタリングするために用いることができる。時間に伴うグリコシル化マーカーのレベルの変化(すなわち、早い時期に動物または細胞株について得た対照試料と比較して測定したもの)は、癌細胞を自然に産生する能力における変化を示し得る。
ある態様において、対象からの試料を供給するステップはさらに、患者からの試料を得るステップを含むことができる。試験試料は、当分野に知られている基本的に任意の便利な技術により得ることができ、組織または体液由来の試料、または糖タンパク質を含有するであろう、または含有することが合理的に期待できる、任意の他の好適な試料を得ることを含むことができる。
ある態様において、前記試料は、全血清、血漿、血液、尿、痰、精液、精漿、胸水、腹水、乳頭吸引液、大便および唾液を含んでよいが、これに限定されない。
特定の種類の体液または組織は、癌の種類に依存し得る(例えば、肺組織、乳房組織、卵巣組織または膵臓組織などを、対応する癌の診断または予後診断のために用いる)。いくつかの態様において、試料は腫瘍細胞から得ることができる。
1つの態様において、炎症誘発性サイトカインの間、IL−4とIL−10の間、および/または炎症誘発性サイトカインとIL−4、IL−10およびMCP−1の1種または2種以上の間の、強い連関(linkage)の存在は、癌、例えば肺癌および/またはステージ4の肺癌の存在を示す。用語「強い連関」は、本明細書において、癌および/または慢性炎症の不在において観察されるものより大きい、連関または相関を記載するのに用いる。これらのサイトカインの各々の、個々のレベル、またはその組合せレベルは、本発明の方法の一部として決定することができる。
マーカーは、例えば全試料から、試料からの糖タンパク質のプールから、または試料から精製された1種または2種以上のタンパク質から、検出することができる。
したがって、本発明の任意の側面の1態様において、N−結合型および/またはO−結合型グリカンのプールを、試験試料中(例えば、血清からグリコシダーゼによる消化により糖タンパク質を精製することなく)の全糖タンパク質から遊離し、グリカンのプールにおける1種または2種以上のマーカーのレベルを決定する。述べたように、グリカンマーカーは、特定のタンパク質上、例えば1種または2種以上の急性期タンパク質(例えば、血清アミロイドA、ハプトグロビン、α1−酸性糖タンパク質、α1−抗トリプシン、α1−抗キモトリプシン、フィブリノーゲン、トランスフェリン、2−マクログロブリン、プロトロンビン、第VIII因子、フォンウィルブランド因子)または目的のその他の血清タンパク質上で、任意に検出される。
特定のタンパク質上のマーカーは、試料からタンパク質を精製してもしなくても、検出可能である。したがって、1つの態様において、1種または2種以上のタンパク質(例えば1種または2種以上の急性期タンパク質)を、該タンパク質上の1種または2種以上のマーカーのレベルの決定前に、試験試料から単離する。HPLCによるグリカンマーカーの高スループット解析の前に、急性期タンパク質の親和性精製を行ってこれを単離することが、本明細書の例に記載されている。試料は、マーカーの検出前に、必要に応じて処置することができ、例えば、細胞および/または組織を、細胞内糖タンパク質マーカーの検出用に任意に溶解する。
試験試料中の1種または2種以上のマーカーのレベルは、基本的に任意の便利な技術または技術の組合せにより決定することができる。例えば、マーカーは、試料またはその派生物もしくは成分(例えば、血清、血清画分、細胞または組織溶解物、グリカンプール、単離タンパク質等)に対して、クロマトグラフィ(例えば順相または弱陰イオン交換HPLC)、質量分析、ゲル電気泳動(例えば1次元または2次元ゲル電気泳動)、キャピラリー電気泳動、および/または免疫検定(例えば免疫PCR、ELISA、レクチンELISA、ウェスタンブロット、またはレクチン免疫検定法)を行うことにより、検出可能である。例えば、以下の実施例およびDwek et al.による米国特許出願第20060269974号、名称「癌の診断およびモニタリング用のグリコシル化マーカー」、Dwek et al.による第20060270048号、名称「生理学的グリコシル化マーカーを同定する自動化戦略」、およびDwek et al.による第20060269979号、名称「関節リューマチおよび他の自己免疫疾患の診断とモニタリングのための高スループットグリカン解析」を参照のこと。
特定のグリコシル化マーカーの「指紋」を保存するデータベースを用いて、上述の方法からマーカーの有無を解析することができる。多数の特定の既知のグリコシル化マーカーについての、例えば、クロマトグラフィ、質量分析、ゲル電気泳動、キャピラリー電気泳動、および/または免疫検定の結果を、データベースに保存することができる。本発明の方法は、かかるデータベースを調べて、対象および/または対照試料に由来するクロマトグラフィ、質量分析、ゲル電気泳動、キャピラリー電気泳動、および/または免疫検定の結果と、データベースにあるそれらとを突き合わせて、それによりどのマーカーが存在するかを同定するステップを含むことができる。
方法は任意に、対象の処置に対する応答をモニタリングするために用いられる。したがって、対象が以前に癌であると診断された態様の1つのクラスにおいて、方法は、該対象を癌について処置すること、処置の開始前に対象から第1試験試料を得ること、処置の開始後に対象から第2試験試料を得ること、および第1試験試料中の1種または2種以上のマーカーのレベルを、第2試験試料中のそれらと比較して、対象の処置に対する応答をモニタリングすることを含む。
任意に、試験試料中の、本明細書に記載の2種または3種以上(例えば、3種、4種、5種、または6種、または7種以上)のマーカーのレベルを決定する。同様に、本明細書に記載のマーカーは、癌に対する他のマーカー、例えばグリコシル化、遺伝、および/またはタンパク質マーカーと組み合わせて用いることができる。したがって、例えば、方法は、対象からの試験試料中、または他の臨床試料中の、1種または2種以上の追加のマーカーのレベルを決定すること、および、1種または2種以上のマーカーのレベルおよび1種または2種以上の追加のマーカーのレベルから、診断、予後、および/または応答を決定することを含むことができる。有用な追加のマーカーとしては、例えば、乳癌に対してはCA15−3、CEA、および/またはC反応性蛋白、ならびに卵巣癌に対してはCA125および/またはC反応性蛋白、ならびに肺癌に対してはC反応性蛋白が挙げられる。
本発明の第14の側面において、対象の炎症状態を、本発明の少なくとも1種のマーカーを用いて評価する方法が提供される。したがって、あるさらなる態様において、次を含む方法が提供される:対象から試験試料を供給すること;試験試料中の、以下からなる群:GU値が10.65より高いグリカン、SLe構造、SLeの消化由来A2FG1、SLeの消化由来A3FG1、SLeの消化由来A4FG1、シアリル化三分岐N−グリカン、シアリル化四分岐グリカン、α1,3フコース含有グリカン、α1,3モノフコシル化三分岐グリカン、α1,3ジフコシル化三分岐グリカン、α1,3モノフコシル化四分岐グリカン、α1,3ジフコシル化四分岐グリカン、ラクトサミン延長を有する四分岐グリカン、α2,3シアリル化グリカンのα2,6シアリル化グリカンに対する比率、アガラクトシル化フコシル化二分岐グリカン、コアフコシル化アガラクトシル化二分岐グリカン、
トランスフェリン上のコアフコシル化モノシアリル化グリカン、ハプトグロビンβ鎖上のグリカン上のSLe、ハプトグロビンβ鎖上のグリカン上のSLeの消化由来A3FG1、ハプトグロビンβ鎖上のグリカン上のSLeの消化由来A4FG1、α1−酸性糖タンパク質上のグリカン上のSLe、α1−酸性糖タンパク質上のグリカン上のSLeの消化由来A3FG1、α1−抗キモトリプシン上のグリカン上のSLe、α1−抗キモトリプシン上のグリカン上のSLeの消化由来A3FG1、α1−抗トリプシン上の四分岐テトラガラクトシル化グリカン、IgG上のコアフコシル化アガラクトシル化二分岐グリカン、IgG上のアガラクトシル化グリカン、IgG上のグリカンのシアリル化、IgG上のグリカンのガラクトシル化、トランスフェリン上のグリカン上のFA2G2S1、トランスフェリン上のグリカン上のFA2BG2S1、およびα1−抗トリプシン上のグリカン上のA4G4、から選択される1種または2種以上のマーカーのレベルを決定すること;および、試験試料中の1種または2種以上のマーカーのレベルを、対照試料中の1種または2種以上のマーカーのレベルと比較することを含み、ここで、対照試料中と比べた、試験試料中の1種または2種以上のマーカーのレベルの増加は、慢性炎症を示している。
方法はさらに、1種または2種以上のマーカーのレベルに基づいて、対象の癌または慢性炎症疾患の診断、予後診断、および/またはそれに対する処置への応答をモニタリングすることを含んでよい(例えば、上述のような癌、関節リューマチ、婦人科の良性疾患、例えば子宮内膜症または嚢胞、慢性閉塞性肺疾患、変形性関節症、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎およびクローン病)、乾癬、結核、慢性胆嚢炎、気管支拡張症、珪肺症または創傷に移植された異物による慢性炎症)。
本発明の第1〜第13の側面について述べた実質的に全ての態様は、変更すべきところは変更して、第14の側面についてもあてはまる。前者の態様に対する状況が、癌性および/または悪性状態(または関連する用語)への参照のために第14の側面と整合しないよう見える場合、これを慢性炎症状態(または関連する用語)に関して置き換えてもよい。これは例えば、検出するマーカーの数、慢性炎症の他のマーカー(例えば、C反応性蛋白)との組合せでの使用、試料の種類、マーカーを検出するために用いる技術(単数または複数)および/または同類のものについてである。
組成物は、本発明の別の特徴である。たとえば、本発明の任意の側面の方法を実施するのに有用な、または実施する間に形成される組成物である。例えば、本発明の組成物は任意に、本発明の1つのマーカーに対する抗体を、または方法の別々のマーカーに対してそれぞれ産生された1つより多くの抗体を、試料中のマーカーのレベルを決定するための他の試薬と任意に組み合わせて含む。
したがって、態様の例示の一般クラスの1つは、第1タンパク質の第1糖型に対する第1抗体を含み、該糖型は、次の1種または2種以上を含む:GU値が10.65より高いグリカン、SLe構造、SLeの消化由来A2FG1、SLeの消化由来A3FG1、SLeの消化由来A4FG1、シアリル化三分岐グリカン、シアリル化四分岐グリカン、α1,3フコース含有グリカン、α1,3モノフコシル化三分岐グリカン、α1,3ジフコシル化三分岐グリカン、α1,3モノフコシル化四分岐グリカン、α1,3ジフコシル化四分岐グリカン、ラクトサミン延長を有する四分岐グリカン、α2,3シアリル化グリカンのα2,6シアリル化グリカンに対する比率、アガラクトシル化フコシル化二分岐グリカン、コアフコシル化アガラクトシル化二分岐グリカン、トランスフェリン上のコアフコシル化モノシアリル化グリカン、ハプトグロビンβ鎖上のグリカン上のSLe、ハプトグロビンβ鎖上のグリカン上のSLeの消化由来A3FG1、ハプトグロビンβ鎖上のグリカン上のSLeの消化由来A4FG1、α1−酸性糖タンパク質上のグリカン上のSLe、α1−酸性糖タンパク質上のグリカン上のSLeの消化由来A3FG1、α1−抗キモトリプシン上のグリカン上のSLe、α1−抗キモトリプシン上のグリカン上のSLeの消化由来A3FG1、α1−抗トリプシン上の四分岐テトラガラクトシル化グリカン、IgG上のコアフコシル化アガラクトシル化二分岐グリカン、IgG上のアガラクトシル化グリカン、IgG上のグリカンのシアリル化、IgG上のグリカンのガラクトシル化、トランスフェリン上のグリカン上のFA2G2S1、トランスフェリン上のグリカン上のFA2BG2S1、およびα1−抗トリプシン上のグリカン上のA4G4。
1つの態様において、レクチンを用いて、α2、3シアリル化N−結合型グリカンとα2、6シアリル化N−結合型グリカンを識別することができる。例えば、Maackia AmurensisレクチンIIをα2、3シアリル化N−結合型グリカンの場合に用い、Sambucus Nigra barkレクチンをα2、6シアリル化N−結合型グリカンの場合に用いることができる。α2、3およびα2、6シアリル化は、全血清に関連する。
組成物は任意に、第1タンパク質(例えば、急性期タンパク質または他の血清タンパク質または目的のタンパク質)の第1糖型、対象からの試料、レクチン、第1抗体に対する第2抗体、第1抗体に関連する核酸タグ(共有結合的または非共有結合的に、および任意に、多重アッセイ用の組成物における他の抗体上の任意の他のタグから識別可能に)、第1タンパク質の第2糖型に対する第2抗体、および/または第2タンパク質の糖型に対する第3抗体を含む。第2抗体またはレクチンは任意に、例えば蛍光標識または酵素で標識されてもよく、または標識を結合するよう構成されている(例えばビオチニル化されている)。組成物は、1種または2種以上の核酸タグ(例えば、ポリメラーゼ、ヌクレオチドなど)を増幅するための試薬、レクチンまたは第2抗体(例えば、蛍光性または発色基質)を検出するための試薬などを含むことができる。
組成物の1種または2種以上の要素を含むキットもまた、本発明の特徴である。例えば、キットは、上述の抗体、および任意にまたレクチン、第1抗体に対する第2抗体、第1タンパク質の第2糖型に対する第2抗体、第2タンパク質の糖型に対する第3抗体、1種または2種以上の核酸タグを増幅するための試薬、レクチンまたは第2抗体を検出するための試薬などを、1または2以上の容器内に包装して含むことができる。一般にキットは、キットの要素を癌または炎症状態の診断、予後診断またはモニタリングに用いるための指示書を含む。
上記の相関を実施するシステムも、本発明の特徴である。一般にシステムは、本発明の1種または2種以上のマーカーのレベルを特定の診断、予後診断等と相関させる、システム命令を含む。システム命令は、マーカーレベルに関して検出された情報を、該マーカーと関連する表現型との間の相関を含むデータベースと比較する。システムは、マーカー検出情報に関する試料特異的な情報を、例えば自動的またはユーザーインターフェイスを介して入力するための、およびその情報をデータベースと比較するための手段を含む。
システムは、1種または2種以上のマーカーレベルを検出するための1または2以上のデータ取得モジュールを含むことができる。これらは、試料ハンドラー(例えば液体ハンドラー)、ロボティクス、マイクロフルイディクスシステム、タンパク質精製モジュール、検出器、クロマトグフィ装置、質量分析器、サーモサイクラー(thermocycler)、またはこれらの組合せを、例えば試料を取得するため、試料を希釈またはアリコートするため、マーカー物質(例えばタンパク質)を精製するため、マーカーを検出するためなどに、含むことができる。解析すべき試料または上記の組成物は、任意に、システムの一部であり、またはこれとは別のものと考えることができる。
任意に、ユーザーとのインターフェイス用のシステム部品が提供される。例えば、システムは、コンピュータに実装されたシステム命令の出力をユーザーが見るためのユーザー可視ディスプレイ、ユーザーのコマンドを入力し、システムを起動させるなどのための、ユーザー入力装置(例えばキーボードまたはマウスなどのポインティグデバイス)などを含むことができる。一般に、目的のシステムはコンピュータを含み、ここで種々のコンピュータ実装システム命令がコンピューターソフトウェアに具現化されており、例えば、コンピュータで読み取り可能なメディア上に保存されている。
上の本発明の側面に記載された、任意の上述のグリカンは、N−またはO−結合型であってよい。
略語
2−AB:2−アミノベンズアミド、ABS:Arthrobacter ureafaciensシアリダーゼ、AMF:アーモンドミールα−フコシダーゼ、BKF:ウシ腎臓フコシダーゼ、BTG:β−ガラクトシダーゼ、CHAPS:3−[(3−コールアミドプロピル)ジメチルアンモニオ]−1−プロパンスルホネート、CRP:C反応性蛋白、DTT:ジチオスレイトール、EDTA:エチレンジアミン四酢酸、EGF:上皮細胞成長因子、FUT3:α(1,3)フコシルトランスフェラーゼ、GlcNAc:N−アセチルグルコサミン、GU:グルコース単位、GUH:肺炎連鎖球菌からクローニングされ大腸菌に発現されたβ−N−アセチルグルコサミニダーゼ、HIV:ヒト免疫不全ウイルス、HPLC:高速液体クロマトグラフィ、IEF:等電集束法、IgG:免疫グロブリンG、IL:インターロイキン、IFN−γ:インターフェロン−γ、IPG:不動化pH勾配、JBM:ジャックビーンα−マンノシダーゼ、MALDI:マトリクス支援レーザー脱離イオン化、MCP−1:単球走化性タンパク質−1、MIP−1:マクロファージ炎症タンパク質−1、MS:質量分析、NAN1:肺炎連鎖球菌シアリダーゼ、NP−HPLC:順相HPLC、NSAID:非ステロイド抗炎症薬、PAGE:ポリアクリルアミドゲル電気泳動、RT:室温、SDS−PAGE:ラウリル硫酸ナトリウムPAGE、sILR:溶解性IL6受容体、SLe(SLex):シアリルルイスX、SPG:肺炎連鎖球菌β−ガラクトシダーゼ、ST3GalIV:α(2,3)シアリルトランスフェラーゼIV、TOF:飛行時間、TNF:腫瘍壊死因子、WAX:弱陰イオン交換クロマトグラフィ、XMF:Xhanthomonus種α−フコシダーゼ。
構造の略語:全てのN−グリカンは2つのコアGlcNAcを有する;略語の先頭のFは、内部のGlcNAcにα1−6結合したコアフコースを表わす;Mx:コアGlcNAc上のマンノースの数(x);Ax:トリマンノシルコア上の分岐(GlcNAc)の数;A2:二分岐でβ1−2結合の2つのGlcNAcを有する;A3:三分岐で、2つのマンノースにβ1−2結合するGlcNAcおよびα1−3結合マンノースにβ1−4結合する第三のGlcNAcを有する;B:コアマンノースにβ1−4結合した二分岐したGlcNAc、Gx:分岐上のβ1−4結合ガラクトースの数(x);F(x):分岐GlcNAcにα1−3結合したフコースの数(x);Lac(x):ラクトサミン(Galβ1−4GlcNAc)延長の数(x);Sx:ガラクトースに結合したシアル酸の数(x)。
定義
他に規定されない限り、本明細書で用いる全ての技術および科学用語は、本発明が関連する分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。以下の定義は当分野の定義を補足して本出願に向けられており、任意の関連または非関連のケースに、例えば任意の一般に所有された特許または出願に帰属するものではない。本明細書に記載されたものと類似または等価の任意の方法および材料を本発明の試験の実践に用いることができるが、しかし好ましい材料および方法は、本明細書に記載されたものである。したがって、本明細書において用いる専門用語は、特定の態様を説明すること目的とし、限定を意図するものではない。
本明細書および添付のクレームで用いる場合、「a」「an」および「the」の単数形は、文脈から明らかにそうでない場合を除いて複数形を含む。したがって、例えば「タンパク質(a protein)」への言及は複数タンパク質を含み;「細胞(a cell)」への言及は複数細胞の混合物を含む、などである。
「アミノ酸配列」は、内容に応じて、アミノ酸残基のポリマー(例えばタンパク質)またはアミノ酸ポリマーを表わす文字列である。
「ポリペプチド」または「タンパク質」は、2種または3種以上のアミノ酸残基を含むポリマーである。ポリマーは、標識、クエンチャー、保護基などの非アミノ酸要素をさらに含むことができ、任意にグリコシル化などの修飾を含むことができる。ポリペプチドのアミノ酸残基は、天然または非天然で、不飽和、非修飾、飽和または修飾されていることができる。
用語「糖タンパク質」は、アミノ酸配列および該アミノ酸配列に付随する1種または2種以上のオリゴ糖(グリカン)構造を指す。所定の糖タンパク質は、1種または2種以上の「糖型」を有することができる。特定の糖タンパク質の糖型の各々は、同一のアミノ酸配列を有する;しかし、特定の糖型に付随するグリカン(単数または複数)は、少なくとも1つの単糖類または結合において異なっている。
用語「グリカン」は、多糖類(2種または3種以上の単糖類残基を含むポリマー)を指す。「グリカン」はまた、複合糖質、例えば糖タンパク質または糖脂質などの炭水化物部分を指すのに用いることもできる。グリカンは、単糖類残基のホモポリマーまたはヘテロポリマーであることができ、直鎖または分枝状であることができる。「N−結合型」グリカンは、タンパク質のアスパラギン残基のR基窒素に付着して見出され、一方「O−結合型」グリカンは、セリンまたはスレオニン残基のR基酸素に付着して見出される。
グリカンの「GU値」(または「糖単位値」)は、グリカンのおよその寸法を示す。GU値は基本的に、特定のグリカンがクロマトグラフィーカラムから溶出する時間を表す。実時間または容積で表された溶出時間は、個々のカラムやその古さなどに依存して変化し得るため、カラムは初めに、グリコース(glycose)オリゴマーの標準混合物で較正する。
1または2以上のラクトサミン延長を有する四分岐N−結合型グリカンは、4つのガラクトースおよび該4つのガラクトースの任意の1つに結合した1または2以上の追加のGal−GlcNAc(ラクトサミン)延長を有する、四分岐構造である。これは、4つまでのシアル酸を有することができる(A4G(4)4LacS4)。
明細書を通して、用語「A2FG1」とは、天然に存在するA2FG1および、グリカンをシアリダーゼ、ガラクトシダーゼおよび/またはα1,2フコシダーゼで消化して得られるA2FG1の両方を含む。したがって、用語「SLeの消化由来A2FG1」は、本明細書において、天然に存在するA2FG1およびSLeの消化に由来するA2FG1を含むと理解される。
明細書を通して、用語「A3FG1」とは、天然に存在するA3FG1および、グリカンをシアリダーゼ、ガラクトシダーゼおよび/またはα1,2フコシダーゼで消化して得られるA3FG1の両方を含む。したがって、用語「SLeの消化由来A3FG1」は、本明細書において、天然に存在するA3FG1およびSLeの消化に由来するA3FG1を含むと理解される。
明細書を通して、用語「A4FG1」とは、天然に存在するA4FG1および、グリカンをシアリダーゼ、ガラクトシダーゼおよび/またはα1,2フコシダーゼで消化して得られるA4FG1の両方を含む。したがって、用語「SLeの消化由来A4FG1」は、本明細書において、天然に存在するA4FG1およびSLeの消化に由来するA4FG1を含むと理解される。
「急性期タンパク質」は、その血漿濃度が炎症に反応して、例えば25%以上、増加(正の急性期タンパク質)または減少(負の急性期タンパク質)するタンパク質である。
用語「対象」とは、動物、より好ましくは哺乳類、および最も好ましくはヒトを意味する。一般に、対象は疾病、疾患、または興味ある状態、例えば癌もしくは慢性炎症を有することが知られているか、または有することが疑われているものである。
用語「マーカー」とは、対象から得た生体試料中に検出可能な分子であって、対象における疾病、疾患、または興味ある状態(または疾病、疾患または状態への感受性)を示すものを指す。本発明に特に興味深いマーカーとしては、疾病、疾患または状態を有する個人からの試料と健康対照との間のグリコシル化の差を示す、グリカンおよび糖タンパク質を含む。
「対照試料」は、疾病、疾患、または興味ある状態(例えば癌または慢性炎症)に影響されていない単一の個体に由来するもの、または1より多数のかかる個体からプールされた試料であることができる。
本発明の文脈において、用語「単離された」とは、タンパク質などの生体物質であって、その天然の環境中において通常付随するか相互作用する成分が、実質的にないものを言う。単離された物質は任意に、天然環境中では見出されない物質、例えば細胞を含む。細胞または血清から単離されたタンパク質は、例えば、細胞または血清から精製または部分的に精製することができる。
本明細書において、「抗体」は、免疫グロブリン遺伝子または免疫グロブリン遺伝子断片から実質的または部分的にコードされた1または2以上のポリペプチドを含むタンパク質である。認識された免疫グロブリン遺伝子としては、κ、λ、α、γ、δ、ε、およびμ定常領域遺伝子、および種々の免疫グロブリン可変領域遺伝子が挙げられる。軽鎖はκまたはλのどちらかに分類される。重鎖はγ、μ、α、δまたはεとして分類され、これらは次に、免疫グロブリンクラスIgG、IgM、IgA、IgDおよびIgEをそれぞれ規定する。典型的な免疫グロブリン(抗体)構造単位は、テトラマーを含む。各テトラマーはポリペプチド鎖の2つの同一対からなり、各対は1つの「軽い」鎖(約25kD)および1つの「重い」鎖(約50〜70kD)を有する。各鎖のN末端は、主として抗原認識に役割を果たす約100〜110以上のアミノ酸の可変領域を規定する。可変軽鎖(VL)および可変重鎖(VH)の用語はそれぞれ、これらの軽および重鎖を指す。抗体は、無傷の免疫グロブリンとして、または種々のペプチダーゼによる消化により産生された多数の良好に特徴付けられた断片として存在する。
したがって、例えばペプシンは、ヒンジ領域のジスルフィド結合の下の抗体を消化して、F(ab)’2を、すなわちそれ自体がジスルフィド結合によりVH−CH1に結合した軽鎖であるFabのダイマーを産生する。F(ab)’2は、マイルドな条件下で還元されて、ヒンジ領域のジスルフィド結合を破ることができ、これによって(Fab)’2ダイマーはFab’モノマーに変換される。Fab’モノマーは本質的にヒンジ領域の一部を有するFabである(他の抗体断片のさらに詳細な説明については、Fundamental Immunology, W.E. Paul, ed., Raven Press, N.Y. (1999)を参照のこと)。種々の抗体断片が無傷の抗体の消化について定義されているが、当業者は、かかるFab’断片は化学的または組換えDNA方法論を用いてデノボ合成できることを認識する。したがって、本明細書における用語、抗体は、全抗体の修飾により産生されるか、または組換えDNA方法論を用いてデノボ合成された、抗体または断片を含む。抗体には、例えば、ポリクローナルおよびモノクローナル抗体、および複数鎖または単鎖抗体を含み、これらには、可変重鎖および可変軽鎖が一緒に(直接またはペプチドリンカーを介して)結合されて連続ポリペプチドを形成する、単鎖Fv(sFvまたはscFv)抗体、およびヒト化またはキメラ抗体が含まれる。
「免疫検定」は、抗体のその抗原への特異的結合を利用して、試料中の抗原を同定および/または定量する。免疫検定は、単一の抗体または2種もしくは3種以上の抗体(単一の抗原または複数の抗原に対する)を含むことができる。
種々の追加の用語は、本明細書に定義されまたは別に特徴付けられている。
図1は、血清グライコームのNP−HPLCエキソグリコシダーゼ消化プロファイルを示す。a)は、図示のグリカンの単糖類残基の記号および結合角度を示す。2AB標識N−結合型グリカンはエキソグリコシダーゼにより消化して、NP−HPLC(b)により、および弱陰イオン交換クロマトグラフィ(c)により、解析した。各ピークの全ての構造は、Royle et al. (Royle et al.)により既に完全に特徴付けられている。図示されているのは、もっとも重要なグリカンである。S:ピーク内でグリカンに付着しているシアル酸の数。用いたエキソグリコシダーゼは以下である:ABS:Arthobacter Ureafaciensシアリダーゼ(シアル酸を取り除く)、BTG:ウシ精巣β−ガラクトシダーゼ(α1,3結合フコースが付着していなければ、ガラクトースを取り除く)、BKF:ウシ腎臓フコシダーゼ(コアフコースを取り除く)、AMF:アーモンドミールフコシダーゼ(α1,3/4結合フコースを取り除く)。
図2は、対照および肺癌血清および単離されたハプトグロビンの、特徴付けられたグリコシル化変化のドットプロットを示す。プロットは、a)ステージ3(n=15)およびステージ4(n=12)肺癌患者および健康対照(n=10)からの個々の血清試料についての、全血清N−結合型グリカンプール(血清グライコーム)の一部としてのグリカン構造の面積パーセンテージ;およびb)対照(n=4)およびステージ4肺癌患者(n=4)の単離されたハプトグロビンからの、全N−結合型グリカンプールの一部としてのグリカン構造の面積パーセンテージである。GU>10.65であるグリカンのパーセンテージは、GU>10.65を超える全てのピークより下の総面積を計算して得た(図1a)。α1,3フコースのパーセンテージは、シアリダーゼおよびβ−ガラクトシダーゼ消化の血清グライコームから計算した。α1,3フコースを含むピークは、α1,3特異的フコシダーゼ消化により同定した(図1b)。三および四分岐構造のパーセンテージは、シアリダーゼおよびβ−ガラクトシダーゼフコシダーゼ消化の血清グライコームから計算した(図1b)。トリ(S3)およびテトラ(S4)−シアリル化構造のパーセンテージは、WAX−HPLCを用いて計算した(図1c)。バーはデータセットの平均値を示す。
図3は、単離されたハプトグロビンのSDS PAGE解析を示す。肺癌および対照血清を用いてインキュベーションした抗ハプトグロビンレジン(10μl)を、4〜15%Bis-Trisゲル(Invitrogen)および7μlのMultiMarkタンパク質ラダー上に流した。レジンから溶出した物質は、ハプトグロビンβ鎖およびα鎖を示す。ハプトグロビンβ鎖を切り出し、N−結合型グリカンを解析した。 図4は、血清N−結合型グライコームおよび単離ハプトグロビンのNP−HPLCを示す。2AB標識N−結合型グリカンをNP−HPLC上に流した。強調表示された領域は、GU値>10.65のグリカン構造を示す。図示されているのは、健康なボランティアにおけるGU値>10.65の血清グライコームにおいて同定された、グリカン構造である。図はまた、健康なボランティアからのハプトグロビンβ鎖のN−結合型グリカンプロファイルの例を示す。グリカンの用語については、図1を参照のこと。
図5は、対照群および癌の群についての血清サイトカインレベルを示す。血清サイトカイン濃度はEndogen(登録商標)SearchLight(商標)(Pierce Biotechnology, www.endogen.com)が提供するサービスにより決定した。プロットしたレベルは、5つの対照血清(灰色)および5つのステージ4肺癌および乳癌血清試料(黒)の平均値±標準誤差である。すべての値は、データセットの最大値を100として正規化した。ケモカインMCP−1、MIP−1αおよびRantesは、CCL2、CCL3およびCCL5としても知られている。
図6は、患者および対照におけるサイトカイン、ケモカイン、CRPおよびsIL6Rレベルのクラスター分析を示す。連結樹(joining tree)クラスタリングを、a)対照血清およびb)患者(肺癌および乳癌)について行った。パラメータのクラスタは、連関のレベルにより分類した(サスペンディッドグループ分け(suspended grouping)の平均リンクの方法による)。かかるクラスタリングは、試験に関与するケモカインおよびサイトカインの、全スペクトル内の一定パラメータ間の関連性を反映している。マークしたのは、炎症誘発性サイトカイン(黒太線)、T2サイトカイン(黒細線)およびケモカイン(点線)である。ケモカインMCP−1、MIP−1αおよびRantesは、CCL2、CCL3およびCCL5としても知られている。
図7は、CRPとGU>10.65のグリカン構造のパーセンテージとの線形回帰分析を示す。サイトカインデータは、グリコシル化データと相関した。有意な相関(P<0.05)は、GU値>10.65のN−結合型グリカン構造のパーセンテージと血清CRPとの間に、a)癌患者(肺癌および乳癌)と健康対照をまとめて解析した場合、およびb)肺癌および乳癌患者のみを解析した場合に同定された。各グラフには、相関係数と確率の値、および各直線の式を示す。
図8は、急性期タンパク質の発現を調節するサイトカインとグリコシル化マシナリーの相互作用の図表示である。この図のデータは、ここに強調表示されたデータおよびvan Dijk W. et al. 1995; Loyer P. et al. 1993;lshibashis Y. et al. 2005;Abbott et al. 1991およびWigmore et al. 1997のデータからまとめた。各サイトカインの効果は特異的であることができ、一般反応ではなく、場合によっては、急性期タンパク質のセットまたはグリコシル化酵素の正確な改変を特異的に調節することは、注目すべきである。ここに図示したのは、サイトカインの累積的効果である。
図9は、健康対照および進行乳癌患者からの全血清タンパク質から遊離された、N−グリカンのNP−HPLCプロファイルを示す。N−グリカンプールは117以上の構造からなり、これらのすべては、Royle L. 2006に記載されているように、NP−HPLCをエキソグリコシダーゼ消化、WAX HPLCおよび質量分析と組み合わせて同定されている。グルコース単位(GU)は、グリカンプロファイルを標準デキストランラダーと比較することにより得た。(a)上図;乳癌において、GU10.75でA3F1G3S3構造の増加を示す未消化のN−グリカンプール。(b)下図:WAX HPLCにより分離された対照および患者の血清からのN−グリカンプールのトリシアリル化断片のNPプロファイルであって、対照と比べて患者において、A3F1G3S1での増加を増幅する。
図10は、グリカンマーカーであるA3FG1の同定および定量化を示す。(a)GU7.5でのA3FG1の定量化のためのシアリダーゼおよびβ−ガラクトシダーゼ消化後の、全N−グリカンプロファイル、A3F1G3S3の消化産物。A3:トリマンノシルコアに結合した3つのGlcNAcを指す三分岐;Gx:分岐上のβ1−4結合ガラクトースの数(x);S(x):ガラクトースに結合したシアル酸の数(x);およびF(x):分岐GlcNAcにα1−3結合したフコースの数(x)。(b)A3FG1ピークを収集し、さらにAMF、JBHおよびSPGで順番に消化して、その特異的結合を、既知のIgGグリカン(データ示されず)との比較による支援を得て決定した。ABS:Arthrobacter ureafaciensシアリダーゼ(全てのシアル酸を取り除く)、BTG:ウシ精巣β−ガラクトシダーゼ(全てのガラクトースを取り除く)、AMF:アーモンドミールフコシダーゼ(α1,3/4結合フコースのみを取り除く)、JBH:ジャックビーンヘキソサミニダーゼ(GlcNAcを取り除く)、およびSPG:肺炎連鎖球菌β−ガラクトシダーゼ(β1−4結合ガラクトースのみを取り除く)。
図11は、健康対照(n=19)および進行乳癌患者(n=18)のN−グリカンプールから定量されたグリカンマーカーであるA3FG1の散布図を示す。黒いバーは各群の平均レベルを示す:対照(2.96%±1.65)および進行乳癌(6.55%±3.02)。 図12は、乳癌患者の全血清(n=10)からのグリカンマーカーA3FG1(図12A)の相関についての経時的試験を示す。各患者から評価のために2つの試料を得た;診断後の初期ステージの試料と、転移検出後の進行ステージの試料である。(a)エキソグリコシダーゼ消化およびNP HPLCにより定量化したA3FG1レベルを、疾患進行の期間に対してプロットした。 図12は、乳癌患者の全血清(n=10)からのグリカンマーカーCA15−3(図12B)の相関についての経時的試験を示す。各患者から評価のために2つの試料を得た;診断後の初期ステージの試料と、転移検出後の進行ステージの試料である。(b)臨床化学自動検定(Bayer Centaur)により測定したCA15−3も、乳癌の持続期間に対してプロットした。
図13Aは、血清グリカンマーカーを担持する候補タンパク質を同定するための、グリコプロテオミクスの結果を示す。蛍光染料OGT1238(Oxford Glycosciences, Abingdon, UK)で染色した、乳癌血清(80μg)の2D PAGE。乳癌および対照血清のデュプリケートのゲルを、KM93抗体を用いてSLeに対して免疫ブロットし、標的タンパク質(i〜iii)を強調表示した。 図13Bは、2Dゲルから切り出した患者Aからの試料の、α1−酸性糖タンパク質、α1−抗キモトリプシンおよびハプトグロビンのN−グリカンプールから定量したA3FG1レベルを、全血清およびCA15−3から測定したA3FG1に対してプロットしたものを示す。患者の時系列記録:(i)放射療法後、乳腺切除ステージ3、グレード2(T3P3M1)−20個中16個のリンパ節に腫瘍を有する浸潤乳癌(少なくとも100mm);(ii)6ヶ月の補助化学療法に続いて、タモキシフェン、およびさらにゾラデックスとタモキシフェンの組合せ;(iii)痛みおよび腫瘍マーカーの増加、ただし骨のスキャン、超音波およびX線には進行の証拠なし;および(iv)肝臓および右胸膜に転移を検出。
図14Aは、A)対照試料から、WAXHPLC上への荷電(charge)により前に分離したグリカンの、典型的なNPHPLCクロマトグラムを示す。(a)全非分画血清グリカン、(b)中性画分、(c)モノシアリル化画分、(d)ジシアリル化画分、(e)トリシアリル化画分。ピークIDについては表4を参照のこと。各ピークの全ての構造は、Royle et al. (Royle et al.)により既に完全に特徴付けられている。上に番号付けされたピークは、全3人の患者において対照と大きく異なるものに対応する。 図14Bは、B)ステージIII卵巣癌患者の試料から、WAXHPLC上への荷電(charge)により前に分離したグリカンの、典型的なNPHPLCクロマトグラムを示す。(a)全非分画血清グリカン、(b)中性画分、(c)モノシアリル化画分、(d)ジシアリル化画分、(e)トリシアリル化画分。ピークIDについては表4を参照のこと。各ピークの全ての構造は、Royle et al. (Royle et al.)により既に完全に特徴付けられている。上に番号付けされたピークは、全3人の患者において対照と大きく異なるものに対応する。
図15は、SLe(A3FG1)、FA2、A3F1G1とFA2、およびCA125の、血清試料中のレベルの比較を示す(健康対照、良性の婦人科的状態、境界型卵巣腫瘍、卵巣癌(ov ca)、原発性腹膜癌腫症(PPC)、卵巣に転移した子宮内膜癌(met to ov)および他の婦人科の癌)。 図15は、SLe(A3FG1)、FA2、A3F1G1とFA2、およびCA125の、血清試料中のレベルの比較を示す(健康対照、良性の婦人科的状態、境界型卵巣腫瘍、卵巣癌(ov ca)、原発性腹膜癌腫症(PPC)、卵巣に転移した子宮内膜癌(met to ov)および他の婦人科の癌)。 図16は、(a)対照試料、(b)ステージIII卵巣癌患者、(c)悪性黒色腫、および(d)他の婦人科の癌からの、シアリダーゼおよびβ1−4ガラクトシダーゼ消化後の血清グリカンの典型的なNPHPLCクロマトグラムを示す。
図17は、SDS−PAGEにより精製されたIgG重鎖から遊離された、血清グリカンのNPHPLCクロマトグラムを示す。a)対照試料、およびb)〜d)ステージIII卵巣癌患者試料:G0:アガラクトシル化、G1:モノガラクトシル化、G2:ジガラクトシル化、およびS:シアリル化グリカン構造。 図18は、患者B(ステージIII卵巣癌)からの血清タンパク質を、2−DEにより、7cm、pH3〜10、非線形不動化pH勾配(pH3〜10NL IPG)および4〜12%SDS−PAGE勾配ゲル(multimarkマーカーを用いた)を用いて分離したことを示す。ゲルは蛍光染料(OGT1238)で染色し、画像はFuji LAS-1000カメラにより撮影した。
図19Aは、A:対照からのハプトグロビンβ鎖2Dゲルスポットから遊離された血清グリカンのNPHPLCクロマトグラムを示す。 図19Bは、B:患者B(ステージIII卵巣癌)からのハプトグロビンβ鎖2Dゲルスポットから遊離された血清グリカンのNPHPLCクロマトグラムを示す。 図20Aは、血清グリカンのNPHPLCクロマトグラムを示し、前記血清グリカンは、A)プールされた(a)対照、(b)良性、(c)悪性、および(d)転移試料からの、α1−酸性糖タンパク質2Dゲルスポットから遊離されたものである。用いたエキソグリコシダーゼは以下である:ABS:シアル酸を取り除く、SPG:β1−4結合ガラクトースを取り除く、XMF:α1,2結合フコースを取り除く、およびAMF:α1,3およびα1,4結合フコースを取り除く。 図20Bは、血清グリカンのNPHPLCクロマトグラムを示し、前記血清グリカンは、B)外側アームフコシル化構造の構造的配置について、エキソグリコシダーゼにより消化された2Dゲルから切り出された、プールされた悪性試料からのα1−抗キモトリプシンから遊離されたものである。用いたエキソグリコシダーゼは以下である:ABS:シアル酸を取り除く、SPG:β1−4結合ガラクトースを取り除く、XMF:α1,2結合フコースを取り除く、およびAMF:α1,3およびα1,4結合フコースを取り除く。
図21は、部分最少二乗判別解析(PLS DA)であって、健康な対象と肺癌の試料の、HPLC解析およびBiochek IncのCat番号BC-1119の高感度CRP酵素免疫アッセイキットを用いたCRPから選択されたマーカーの組合せに基づく分離を示す。PLS DAプロットに対するマーカーの相対的貢献因子は、下の図に示し、これは、可変重要プロット(VIP)解析により決定した。結果は、血清グライコームからの特定の糖類および非グリコシル化タンパク質マーカー(CRP)を組み合わせた複数のマーカーが、CRPまたはグリカン単独よりも良好に、肺癌患者と健康対照を識別したことを示す。
図22は全血清グリカンのWAX分画を示し、ここで(a)は、健康対照対象(左側)および進行卵巣癌の対象(右側)の試料からの全血清グリカンが、中性、モノ−、ジ−およびトリシアリル化画分に分離されている、弱陰イオン交換(WAX)クロマトグラフィ分離追跡を示す。(b)〜(e)は、健康対照の対象(左側)および進行卵巣癌の対象(右側)の試料からの、中性、モノ−、ジ−およびトリシアリル化画分に分離された全血清グリカンの、NP HPLCプロファイルを示す。全ての画分において、対照および疾患対象の間の全グリコシル化プロファイルの差は明らかである。例として、三分岐画分を丸で囲んだ。
図23は、グリコシル化マーカーである三分岐フコシル化グリカンバイオマーカーの、高感受性であるが特異的ではない性質を示し、この結果はWAX HPLCにより全血清から得たものである。ある範囲の癌および健康な対象からのトリシアリル化画分の比較を示す。全ての癌試料において、SLexエピトープを有する三分岐グリカンの、SLexエピトープを有さない三分岐グリカンに対する比率は、健康対照からの試料に見出される同比率より大きい。このマーカーはしたがって、試験した全ての癌に共通する。
図24は、健康な精液および前立腺癌患者の血清からのPSAサブフォーム(F1〜F5)のグリカン解析を示す。各ピークのグリカンを、上のRHSに示す。全てのプロファイルにおいて、ピーク3および4(ジシアリル化グリカン)の相対的比率は、癌において、ピーク1および2(モノシアリル化グリカン)に比べて減少している。F4において、F1〜F3と比べてシアリル化が減少している。良性前立腺過形成〜局在化した局所的進行の転移性前立腺癌までの、モノおよびジシアリル化グリカンの両方を含むF3のレベルにおいて、減少が見られる。良性前立腺過形成〜局在化した局所的進行の転移性前立腺癌までの、ほぼモノシアリル化グリカンを含むF4のレベルにおいて、増加が見られる。
図25は、健康対照、非転移性癌の患者および転移膵癌患者からの血清の2Dゲルから切り出した、α1−酸性糖タンパク質のN−グリカン解析を示す。これらの図の結果は、いくつかのグリカンは疾患の重篤度と共に減少し(図25(a)の影の部分)、いくつかのグリカンは疾患の重篤度と共に増加すること(図25(b)の影の部分)を実証する。典型的には、グリカンはSLexおよび高次の分岐を有する。 図25は、健康対照、非転移性癌の患者および転移膵癌患者からの血清の2Dゲルから切り出した、α1−酸性糖タンパク質のN−グリカン解析を示す。これらの図の結果は、いくつかのグリカンは疾患の重篤度と共に減少し(図25(a)の影の部分)、いくつかのグリカンは疾患の重篤度と共に増加すること(図25(b)の影の部分)を実証する。典型的には、グリカンはSLexおよび高次の分岐を有する。
図26は、部分最少二乗判別解析(PLSDA)であって、上図では卵巣癌患者と良性組織の患者の識別を示し、下図では、境界型患者と卵巣癌患者の識別を示す。解析は、PLS−DAによる多数のグリコシル化マーカーからのデータのプールに基づき、各プールされたマーカーは、リンクされたPLS−DAプロットの反対側の数字欄により示した。グリコシル化マーカーF(6)A2は、「2」として示されている。 図27は、グリカンプールのHPLC解析を示し、図26のPLS−DAプロットはこれに基づいている。数字をつけたピークは、図26の右側のバーチャートに示した各マーカーの番号に対応する。
発明の詳細な説明
種々のタンパク質のグリコシル化は、癌および慢性炎症を含む一定の疾患および状態において変化する。癌および/または炎症を診断、処置またはモニタリングするための種々の新規なグリコシル化マーカーが、本明細書に記載される。グリカンマーカーを用いる方法が記載され、また関連する組成物、システムおよびキットも記載される。
抗体
抗体、例えば本発明のグリカンマーカーを有するポリペプチドに特異的な抗体は、当分野によく知られた方法で生成することができる。かかる抗体としては、ポリクローナル、モノクローナル、キメラ、ヒト化、単鎖、Fab断片、およびFab発現ライブラリにより産生される断片が挙げられるが、これらに限定されない。
ポリペプチドは、抗体産生のために生物活性を必要としない。しかし、ポリペプチドまたはオリゴペプチドは抗原性である。特異的抗体を誘導するために用いるペプチドは、一般に少なくとも約5個のアミノ酸のアミノ酸配列を有し、多くの場合少なくとも約10または20個のアミノ酸のアミノ酸配列を有する。ポリペプチドの短い伸展(short stretch)は任意に他のタンパク質と、例えばキーホールリンペットヘモシアニンと、および融合タンパク質またはポリペプチドに対して産生された抗体と、融合することができる。
ポリクローナルおよびモノクローナル抗体を産生するための多くの方法が当業者に知られており、本発明のマーカーを有するポリペプチドに特異的な抗体を産生するために適用することができる。例えば、Coligan (1991 ) Current Protocols in Immunology Wiley/Greene, NY;およびHarlow and Lane (1989) Antibodies: A Laboratory Manual Cold Spring Harbor Press, NY;Stites et al. (eds.) Basic and Clinical Immunology (4th ed.) Lange Medical Publications, Los Altos, CAおよびこれに引用されている参考文献;Goding (1986) Monoclonal Antibodies: Principles and Practice (2d ed.) Academic Press, New York, NY;Fundamental Immunology, e.g., 4th Edition (or later),W.E. Paul (ed.), Raven Press, N.Y. (1998);およびKohler and Milstein (1975) Nature 256: 495-497を参照のこと。抗体調製の他の好適な方法としては、ファージまたは類似のベクターにおける組換え抗体のライブラリの選択である。例えば、Huse et al. (1989) Science 246: 1275-1281;および Ward, et al. (1989) Nature 341 : 544-546.を参照のこと。抗体調製および操作技術についてのさらなる詳細は、USPN 5,482,856, Borrebaeck (ed) (1995) Antibody Engineering, 2nd Edition Freeman and Company, NY (Borrebaeck);McCafferty et al. (1996) Antibody Engineering, A Practical Approach IRL at Oxford Press, Oxford, England (McCafferty);Paul (1995) Antibody Engineering Protocols Humana Press, Towata, NJ (Paul);Ostberg et al. (1983) Hybridoma 2: 361-367, Ostberg, USPN 4,634,664および Engelman et al. USPN 4,634,666に見出すことができる。特異的なモノクローナルおよびポリクローナル抗体および抗血清は、少なくとも約0.1μMのKdで通常結合しており、好ましくは少なくとも約0.01μMまたはそれ以上、および最も一般的に好ましくは0.001μMまたはそれ以上のKdで結合している。
分子生物学的技術
本発明の実施においては、分子生物学、微生物学における多くの従来技術および組換えDNA技術が任意に用いられる。これらの技術はよく知られており、例えばBerger and Kimmel, Guide to Molecular Cloning Techniques, Methods in Enzymology volume 152 Academic Press, Inc., San Diego, CA;Sambrook et al., Molecular Cloning - A Laboratory Manual (3rd Ed.), Vol. 1-3, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, New York, 2000およびCurrent Protocols in Molecular Biology, F. M. Ausubel et al., eds., Current Protocols, a joint venture between Greene Publishing Associates, Inc. and John Wiley & Sons, Inc., (supplemented through 2007)に解説されている。例えば細胞単離および培養のための、他の有用な参考文献としては、Freshney (1994) Culture of Animal Cells, a Manual of Basic Technique, third edition, Wiley-Liss, New Yorkおよびこれに引用されている参考文献;Payne et al. (1992) Plant Cell and Tissue Culture in Liquid Systems John Wiley & Sons, Inc. New York, NY;Gamborg and Phillips (Eds.) (1995) Plant Cell, Tissue and Organ Culture; Fundamental Methods Springer Lab Manual, Springer-Verlag (Berlin Heidelberg New York)およびAtlas and Parks (Eds.) The Handbook of Microbiological Media (1993) CRC Press, Boca Raton, FLが挙げられる。核酸を作る方法(例えば、in vitro増幅、細胞からの精製、または化学合成による)、核酸を操作する方法(例えば、制限酵素消化、連結などによる、部位特異的突然変異誘発)、および核酸の操作および作製に有用な種々のベクター、細胞株などは、上記文献に記載されている。さらに、実質的に任意のポリヌクレオチドを、種々の市場のソースの任意のものからカスタムオーダーまたは標準オーダーすることができる。
本明細書に示した他の文献に加えて、種々の精製/タンパク質精製方法が当分野に知られており、例えば以下の文献に記載のものを含む:R. Scopes, Protein Purification, Springer-Verlag, N.Y. (1982);Deutscher, Methods in Enzymology Vol. 182: Guide to Protein Purification, Academic Press, Inc. N.Y. (1990);Sandana (1997) Bioseparation of Proteins, Academic Press, Inc.;Bollag et al. (1996) Protein Methods, 2nd Edition Wiley-Liss, NY;Walker (1996) The Protein Protocols Handbook Humana Press, NJ;Harris and Angal (1990) Protein Purification Applications: A Practical Approach IRL Press at Oxford, Oxford, England;Harris and Angal Protein Purification Methods: A Practical Approach IRL Press at Oxford, Oxford, England;Scopes (1993) Protein Purification: Principles and Practice 3rd Edition Springer Verlag, NY;Janson and Ryden (1998) Protein Purification: Principles, High Resolution Methods and Applications, Second Edition Wiley-VCH, NY;およびWalker (1998) Protein Protocols on CD-ROM Humana Press, NJ;ならびにこれらに引用されている参考文献。

本明細書に記載された例および態様は説明目的のみのためであり、これに照らした種々の改変および変更が当業者に示唆され、それらは本明細書の精神および範囲ならびに添付のクレームの範囲内であることが理解される。したがって、以下の例は、クレームされた本発明を限定するためにではなく、説明のために提供される。
例1−肺癌
材料および方法
血清試料セット
試験に用いた肺癌血清試料は、非小細胞または小細胞癌腫系統の肺癌を有すると診断された患者からのものである。患者の血清は、年齢を適合させた健康対照血清と共に試験した。試験した血清は、男性および女性の患者/ボランティアからであった。肺癌血清は、Fox Chase, Cancer Center, Philadelphia, USAから入手した。乳癌患者血清は、John Robertson教授(Brest Surgery Unit, Nottingham, City Hospital)から入手した。
血清からのハプトグロビンの1ステップ単離
親和性レジンを、マウス抗ヒトハプトグロビンHG36クローン(H6395、Sigma-Aldrich)を用いて調製した。IgGは、1mlのHiTrapタンパク質Gカラム(Pharmacia)を用いて、前に記載のようにして(Arnold J.N. et al.)精製した。精製IgG(1mg)を、0.1MのNaHCO、0.5MのNaCl、pH8.3で透析した。親和性レジンを、50mlの1mMのHClでRTにて15分間水和した水和レジン1ml当たり、0.29gの臭化シアンで活性化したセファロース4B(Sigma-Aldrich C9142)を用いて調製した。HClをろ過して除去し、1mlの湿潤なレジンケーキを、透析した抗ハプトグロビンIgG(0.5mg/ml)に加えた。これをゆっくりした回転によりRTで2時間撹拌した。レジンを20mlの0.1Mトリス、140mMのNaCl、pH8.0で洗浄し、30mlの洗浄緩衝液中に入れ、RTで2時間回転させて混合し、いかなる残留活性部位もブロックした。レジンを次にPBS−0.5mMのEDTAで平衡させて保存した。
ハプトグロビンは、20μlの血清を10mMのHepes、1MのNaCl、5mMのEDTA、pH7.4で1mlに希釈したものから精製した。これを次に10μl(パックした容量)の抗ハプトグロビン−セファロースレジンでインキュベーションし、4℃にて1時間、結合のためにゆっくり回転させながら置いた。レジンは1000×gの遠心分離で除去し、1mlの希釈緩衝液中に再懸濁させて2回洗浄し、続いて前のように遠心分離した。ペレットを5μlのLaemmli緩衝液(Laemmli et al.)および5μlのDTT(0.5M)に溶解し、70℃で5分間インキュベーションした後、4〜12%Bis-Trisゲル(Invitrogen, US)上に直接負荷してSDS PAGE解析を行った。分離したタンパク質は、クーマシーブルー染色を用いて視覚化した。
血清からのN−結合型グリカンの除去および検出感度
血清グリカンを血清試料(10μl)から、Royle et al. (Royle L. et al. (2006) Methods MoI Biol, 347, 125-143;Royle L et al. (2008) Analytical Biochem, 376, 1-12)に記載のインゲルブロック法を用いて遊離するか、またはタンパク質バンドをSDS PAGEから切り出した。N−結合型グリカンを、ペプチドNグリカナーゼF(1000単位/ml;グリコペプチダーゼ、EC 3.5.1.52)を使ったインゲルN−グリカン遊離を用いて、前に記載のようにして(Bigge, J.C. et al. (1995) Anal Biochem, 230, 229-238;Kuster B. et al. Anal Biochem 1997;250:82-101)遊離した。
グリカンの2−アミノベンズアミド(2−AB)標識
遊離したグリカンは、Ludger Tag(登録商標)2ABグリカン標識キット(Ludger Ltd. Oxford, UK)を用いて、フルオロフォア2AB(Bigge, J.C. et al. (1995) Anal Biochem, 230, 229-238)による還元的アミノ化により標識した。
順相(NP)HPLCおよび弱陰イオン交換HPLC
標識グリカンは、NP−HPLC(Guile G. R. Anal Biochem 1996;240:210-26)および弱陰イオン交換(WAX)HPLC上で分離した。NP−HPLCからのグリカンプロファイルは、水和化および2AB標識グルコースオリゴマー(Guile G. R. Anal Biochem 1996;240:210-26)から調製したデキストランラダーに対して較正した。グリカンにはグルコース単位(GU)値を割り当て、グリカン構造/組成物は、グリカンデータベース(Glycobase http://glycobase.ucd.ie/cgi-bin/public/glycobase.cgi)を参照して推定した。ピーク面積は、試験の公正さを保証するためにILデータを隠して確立した。WAX HPLCは、Zamze et al. (Zamze S. et al. Eur J Biochem 1998;258:243-70)に記載のようにして、Vydac 301VHP575の7.5×50mmの弱陰イオン交換カラム(Hichrom, Berkshire, U.K.)を用いて行った。
エキソグリコシダーゼ消化
エキソグリコシダーゼを用いて、NP−HPLC(Radcliffe C. M. et al. J Biol Chem 2002;277:46415-23)と共に、調製物中に存在するグリカンの構造を確認した。酵素は製造業者の推奨濃度で用い、消化は50mMの酢酸ナトリウム緩衝液、pH5.5を用いて、37℃で16時間実施した。酵素はGlyko lnc (Upper Heyford, UK)から供給された:Arthobacter ureafaciensシアリダーゼ(ABS、EC3.2.1.18)、1〜2U/ml;アーモンドミールα−フコシダーゼ(AMF、EC 3.2.1.51)、3mU/ml;ウシ精巣β−ガラクトシダーゼ(BTG、EC 3.2.1.23)、1U/ml;ジャックビーンαマンノシダーゼ(JBM、EC 3.2.1.24)、100mU/ml;ウシ腎臓フコシダーゼ(BKF)(EC 3.2.1.51)、100U/ml。
血清サイトカインレベル
ステージ4肺癌および2人のステージ4乳癌患者からの2つの血清試料であって、三および四分岐構造の増加およびα1,3フコースの増加が、血清グリコシル化プロファイルに基づき確認された前記試料を、正常範囲のグリカンプロファイルを有すると同定された対照血清と共に解析した。サイトカイン定量化は、ENDOGEN SEARCHLIGHT(登録商標)(Pierce Biotechnology, www.endogen.com)から供給されるサービスにより行った。プールされたヒト血清は、クエン酸血漿(HDS Supplies, High Wycombe, UK)から、記載のようにして(Arnold JN, et al. J Biol Chem 2005;280:29080-7)取得し、クエン酸塩の希釈は、最終ILレベルで修正した。
クラスター分析
試験した免疫化学的パラメータのクラスター分析については、個別のパラメータのシリーズを介するクラスター分析の修正法(Cluster-Statistica 5.0, Statsoft Inc., USA)を用いた。連結樹クラスタリングを、二次の相関測度のデータセットから実施した(r)。相関係数は、チェビシェフ距離を関連性の測度として用いることによりr(S)の負の意味を排除して、クラスター分析に導入した:
S(X,Y)=Maximum|Xi−Yj|
Sの値は、ベクター間の距離の測度として、および試験した免疫化学的パラメータ間の相互関係の測度として考えることができる。この場合、Sの最高値が最も小さい。デンドログラムプロットにおいて、パラメータのクラスタは連関のレベルにより分離される(サスペンディッドグループ分けの平均リンクの方法による)。かかるクラスタリングは、本試験に関与するケモカインおよびサイトカインの全スペクトル内の、一定パラメータ間の関連性を反映する。
統計
シャピロ・ウィルクW検定を行って、各群内でのデータ分布の正規性を決定した。両側マンホイットニーU検定を用いて非正規分布群間のデータを比較し、独立群に対するステューデント両側t検定を正規分布の場合に適用した。スピアマンの順位相関およびピアソン相関を、適切な相関解析に適用した。統計は、"Analyse-it Clinical Laboratory module" (Analyse-it Software Ltd., UK)および"Statistica-99 Edition" (Statsoft Inc., USA)のソフトウェアを用いて行った。回帰分析はExcelで行った。
結果
肺癌患者における血清N−結合型グリカンの変化
肺癌患者および健康対照からの全血清N−結合型グライコームのNP−およびWAX−HPLCを、エキソグリコシダーゼ消化と組み合わせて行い、グリコシル化の変化を同定および定量化した(図1)。ステージ4肺癌患者(n=12)は、健康なボランティアと比較して、トリおよびテトラシアリル化構造の平均して統計的に有意な15%の増加(p>0.05)、およびα−1,3フコースにおける58%の増加(p>0.005)を有していた。α1,3結合フコースを有するトリおよびテトラシアリル化分岐グリカンは、GU>10.65にて、NP−HPLC上で圧倒的に溶出した(Royle L. et al. (2006) Methods MoI Biol, 347, 125-143;Royle L et al. (2008) Analytical Biochem, 376, 1-12)(図1、強調表示された領域)。ステージ4肺癌患者においてGU値>10.65で溶出した糖類のHPLCピーク面積は、対照集団と比べて平均して36%の増加であった(図2)(p<0.012、t=2.91、df=13)。エキソグリコシダーゼ消化を用いて、予備的配置(preliminary assignment)を確認した(図2)。ステージ4肺癌患者(n=4)は、シアリル化三および四分岐構造において、平均して統計的に有意な32%の増加を(p<0.001、t=4.21、df=13)、およびα1,3フコースにおいて76%の増加(p<0.005、t=3.33、df=13)を有していた。ステージ3肺癌患者(n=7)は、健康対照と比べて、シアリル化、分岐またはα1,3フコースのレベルにおける有意な変化はなかった。群間のデータの個々の広がりにはかなりのオーバーラップがあり、このことは、これらのグリコシル化変化にのみ基づいた個別試料の識別を困難にしている(図2)。
肺癌におけるハプトグロビンN−結合型グリコシル化の変化
血清中で約1〜2mg/mlで循環しているハプトグロビンを、ステージ4肺癌患者(n=4)および年齢を適合させた対照(n=4)から単離し(図3)、β鎖のN−結合型グリカンを遊離した(図4)。これは、ステージ4肺癌セットにおいて同定されたグリコシル化変化が、急性期タンパク質レベルの増加の結果によってのみ起こるのではなく、これらのタンパク質に付着した糖型集合体(population)でのシフトの結果であることを示すために実施された。ハプトグロビングリカンプールは、平均して、GU値>10.65のグリカン構造における32%の増加を示した(図2bおよび図4)(p>0.331、t=1.06、df=6)。グリカンプールを、ハプトグロビンに付着したα1,3フコースのレベルについて解析すると、患者群は、対照群に比べて、120%の増加を示した(p>0.111、t=1.87、df=6)。試料セットが少ないために、データは統計的有意性には到達しなかったが、これらのデータは、癌患者の血清においてハプトグロビンの糖型集合体におけるシフトを実証した(図2)。
血清サイトカインデータの解析
この研究は、肺癌において、何人かのステージ4患者は、α1,3フコース残基有りまたは無しのシアリル化三および四分岐構造の血清レベルの増加を有することを同定した。患者(n=4)および対照(n=4)の血清を、サイトカインのパネルについてスクリーニングした。個々人間では、サイトカインレベルの大きな変化が観察された。平均して、癌患者は炎症誘発性サイトカインのより高いレベルを示した(図5)。T2サイトカインIL−4およびIL−10レベルは、平均して、患者においてやや増加していた。IL−6Rの溶解形態であるsIL−6Rは、患者の血清において減少していた。sIL−6Rの減少は統計的に有意であった(p<0.027、t=2.91、df=6)。炎症の他のマーカーであるCRPは、平均して患者群においてやや増加していた。
統計的に有意な異なる相関のセット(p<0.05)が、患者および対照群の血清での個々のサイトカインレベルの発現の間で同定された(表1)。クラスター分析を用いて、両群内における、個々のサイトカインレベルの間の全体の相互作用(または関連性)の特徴を明らかにした。分析により、患者群において炎症誘発性サイトカインの間の強い連関が同定され、一方対照においては、炎症誘発性サイトカインの間にほとんど何の連関も同定されなかった(図6)。興味深いことには、患者群において、T2サイトカインIL−4およびIL−10およびケモカインMCP−1は、炎症誘発性サイトカインと関連し、ここでT2サイトカインIL−4とIL−10は、炎症誘発性サイトカインクラスタ内で緊密に連結している(図6)。これらのデータは、対照とステージ4の癌のセットの間で、サイトカインの相互作用が異なることを示す。癌患者のサイトカインデータのサイトカインレベルおよびクラスタプロファイルは、ステージ4癌患者における炎症状態を反映する(図5および図6)。この試験はまた、癌においてグリコシル化変化を調節することができる、追加のサイトカイン候補も示す。
表1は、a)健康対照およびb)ステージ4癌患者について、個別のサイトカイン(n=4)の間での相関を同定するための解析を示す。四角で囲んだのは、統計的に有意な相関である(p<0.05)。また、クラスター分析を行うために用いた相関係数も示す。ケモカインMCP−1、MIP−1αおよびRantesは、CCL2、CCL3およびCCL5としても知られている。
サイトカインデータおよびCRPレベルとグリコシル化データの相関
ステージ4癌患者およびその対照からのサイトカインデータをグリコシル化データに対して解析し、任意の有意な相関を同定した。GU値>10.65のグリカン構造のパーセンテージ(優勢的にα1,3フコース有りまたは無しのシリアル化三および四分岐構造が溶出する)は、解析したどのサイトカインとも相関しなかった。統計的に有意な正の相関(rs=0.82、p<0.004)が、CRPとGU値>10.65のグリカンの総パーセンテージとの間に同定された(図7a)。CRPは、三および四分岐構造のレベルとは相関しないが(r=0.61、p<0.063)、α1,3フコースのレベルと相関した(r=0.78、p<0.008)。対照とは別に解析した患者のCRP濃度は、GU値>10.65と相関する場合にはほとんど完全な線形の配置であった(ピアソン相関r=1、p<0.0001)(図7b)。別に解析した対照は、CRPと統計的に有意な相関を示さなかった(r=0.94、p>0.056)。
考察
肺癌試料のセットおよび健康対照を用いて、血清グライコームと単離されたハプトグロビン両方からの遊離グリカンのHPLC分離を用いた、完全に定量化されたグリカン解析が提示される。α1,3結合フコースを有するシアリル化三および四分岐構造の増加が、ステージ4肺癌患者(n=12)からの血清N−結合型グライコームに同定された。2つのステージ4肺癌血清および2つのステージ4乳癌血清も、サイトカインのアレイについてスクリーニングした。これは、グリコシル化データとサイトカインデータの間の相関を同定し、癌/慢性炎症におけるグルコシル化に影響を与え得る潜在的なマーカーおよびさらなる候補サイトカインを同定するために行った。サイトカインデータは、予想されたとおり、癌患者からの血清は炎症マーカーを含むことを実証した。グリコシル化データは、得られたサイトカインデータと相関しなかった。しかし、GU値>10.65の複数分岐の大きなグリカン構造のパーセンテージは、血清CRPと統計的に有意な相関を有した。
ステージ4肺癌患者におけるグリコシル化の変化
血清グライコーム(117のユニークな構造)は、HPLCデータを質量分析と組み合わせて用いることにより、既に完全に特徴付けられている(Royle L. et al. (2006) Methods MoI Biol, 347, 125-143;Royle L et al. (2008) Analytical Biochem, 376, 1-12)。肺癌試料セットにおけるグリコシル化の変化を定量化した。ステージ4肺癌において、α1,3フコースおよびシリアル化三および四分岐構造の有意な増加が同定された(図2)。これらの所見と整合して、血清グライコームは、GU値>10.65のグリカン構造の増加を示した(図2)。これらは大部分が、α1,3フコース有りまたは無しのシリアル化三および四分岐グリカンである(図1および図2)(Royle L. et al. (2006) Methods MoI Biol, 347, 125-143;Royle L et al. (2008) Analytical Biochem, 376, 1-12)。単離されたハプトグロビンのN−結合型グリカン(図4)は、血清グライコームレベルで同定された変化が、その一部は糖型集合体におけるシフトによるものであり、急性期タンパク質の血清濃度の増加のみによっておこるものではないことを実証した(図2b)。これらの結果と整合して、ステージ3およびステージ4膵癌患者から単離されたハプトグロビンの68%も、統計的に増加したフコシル化を有することが見出された。
癌vs対照におけるサイトカインデータの解析および、癌におけるグリコシル化変化とのその相関
4人のステージ4癌患者および4人の健康な対照からの血清を、サイトカインの選択について解析して、血清N−結合型グライコームの変化に関与する可能性のあるサイトカインを同定した。平均的な増加が、癌患者の炎症誘発性サイトカインにおいて同定された(図5)。対照群は、サイトカインとは最少の連関を示したが(図6)、癌の群は炎症誘発性サイトカインとの間に強い連関を有した(図6)。これらを総合すると、サイトカインデータは、ステージ4肺癌患者は腫瘍の結果として炎症応答を生成することを示す。IL−1、IL−6、およびTNF−αは肝細胞を刺激して、急性期タンパク質を分泌することが示されている(図8)。血清のIL−1およびTNF−αは、平均して癌の群で中程度に増加した(図5)。NCl−H292癌細胞株において、TNF−αは、ST3GallV、FUT3およびC2/C4GlcNAcトランスフェラーゼ(これが三および四分岐構造を形成する)の選択的発現を増加させる(Ishibashi Y. et al.)。IL1βがIL−8遺伝子の転写的活性化を誘発することを実証した、前の所見と整合して、IL−8とIL1−βの間には有意な相関があった(r=0.97、p<0.026)(表1)。
IL−6の生物活性は、2つの膜結合タンパク質である、ユニークな低親和性結合受容体IL−6Rおよび高親和性受容体gp130によって媒介される。IL−6RはIL−6のアゴニストとして作用する。sIL6Rと複合したIL−6は、細胞表面受容体gp130と結合することにより、細胞を活性化することができる。サイトカイン受容体の溶解形態が、mRNAの代替的スプライシングおよび膜結合受容体のタンパク質分解(脱粒)の結果、in vivoで見出されている。HIV感染、多発性骨髄腫、若年性関節炎、クローン病および潰瘍性大腸炎などいくつかの状態において、sIL−6Rの増加レベルが観察されている。sIL6Rは、急性および慢性感染症において、用量および時間依存性の様式でIL−6への肝細胞応答を促進することにより、急性期タンパク質であるα1−酸性クロモトリプシンおよびハプトグロビンの産生を増加させて、肝臓の応答を調節することに関与するとされている。癌群において、遊離のsIL−6Rは減少した(p<0.027)(図5)。sIL−6Rを検出するために用いたアッセイは、遊離のsIL−6Rに対して産生された抗体を利用し、したがって、IL−6と複合したsIL−6Rの検出は考えにくい。炎症応答においてIL−6の血清レベルは増加し、これはsIL−6Rと複合したIL−6のより高いレベルをもたらし、血清中の遊離のsIL−6R量を減少させる(図7a)。sIL−6Rは、対照群において抗炎症性サイトカインIL−4と統計的に有意な相関を有し(r=0.98、p<0.016)、かつ患者群における炎症誘発性サイトカインIL−1αと相関すること(r=0.97、p<0.029)が示され、これらの2つのサイトカインとsIL−6Rとの関連は、それぞれクラスタ図上で緊密に関連しており、これらのサイトカインによるsIL−6R調節の可能性を示唆する(図6)。
IL−4は、EGFと同様、肝細胞からのサイトカイン誘発性のいくつかの急性期タンパク質の誘発を阻害する。データは、IL−4が癌群で増加し(図4)、さらに炎症応答を調節する炎症誘発性サイトカインと関連していることを示唆する(図6および図8)。癌群において、抗炎症性サイトカインIL−10とIL−4の間には有意な相関があり(rs=0.95、p<0.005)、クラスター分析では強い連関がある(図6および表1)。これらのデータは、これらサイトカインの変化が緊密に関連し、互いに調節しあっていることを示唆する。任意のサイトカインとグリコシル化データの間には統計的に有意な相関はなかった。サイトカインデータはグリコシル化データに直接は関連せず、これはおそらく、これらの分子の相互調節(組合せ)効果のためであろう。炎症におけるグリコシル化変化は、個別および集団の両方でエフェクター機能を有する、いくつかのサイトカインから生じる(図8)。
炎症マーカーCRPは、GU値>10.65の血清N−結合型グリカンのパーセンテージと相関する
有意な相関が、CRPと、GU値>10.65のグリカン構造のパーセンテージとの間(p<0.004)、およびα1,3フコースとの間(p<0.008)に同定されたが、三および四分岐構造のレベルとの間にはなかった。CRPは、炎症に対する非特異的血清マーカーである。ベースラインを超えるCRPレベルは、結腸癌を発症するリスクと関連されているが、直腸癌または前立腺癌ではない。CRPは、炎症反応のない血清中には存在せず、炎症の間に肝臓でのみ発現される。CRPを炎症性サイトカインについて解析すると、患者群においてCRPは炎症誘発性サイトカインと関連しないことが示された(図6)。CRPの血清濃度は、精密な急性期反応を示すように組み合わさって作用する複数のサイトカインの下流効果の結果である。例えば、IL−4はCRPの産生を下方調節することができると実証されたが、フィブリノーゲンまたはα1−抗トリプシンの産生についてはそうでなく、IL−6誘発性のハプトグロビンの発現を阻害できるが、しかしCRPの発現は阻害できない。IL−8は患者群において炎症誘発性サイトカインと高度に関連し(図6)、また以前に肝細胞からのCRPの産生を促進することが実証されている(Wigmore S.J. et al. Am J Physiol 1997;273:720-6)。CRPとGU値>10.65の構造のパーセンテージとの相関は、患者群を別に解析すると、ほぼ完全に線形の配置で相関する(r=1、p<0.0001)。対照群は、それだけで解析すると、全く相関を示さなかった(r=0.94、p>0.056)。これらのデータは、「長期の」慢性炎症は、血清糖型集合体に顕著な変化をもたらすことを実証する。
まとめ
結論として、肺癌群における血清N−結合型グリコシル化変化を、定量的NP−HPLCおよびWAX法を用いて同定した。血清試料をサイトカインのパネルについてスクリーニングし、癌における血清グリコシル化変化が、サイトカイン解析に基づき、血清の炎症状態に関連することが実証された。本研究で用いたグリコシル化解析法の定量的側面を用いて、グリコシル化データを血清サイトカインレベルと相関させることを試みた。癌におけるN−結合型グリコシル化変化は、パネルで解析されたどの1種のサイトカインの血清レベルとも相関しないが、GU値>10.65のグリカン構造のパーセンテージは、驚くべきことに、血清の炎症マーカーであるCRPのレベルと相関した(図7a)。この相関は、患者群のみを解析した場合にはほぼ完全であり(図7b)、癌患者に見られるグリコシル化変化(特にGUレベル>10.65のグリカン構造のパーセンテージ)は、患者の炎症状態に直接関連する可能性を示唆する。グリコシル化変化は、慢性炎症、例えば癌に特異的である(図2)。血清CRPレベルは慢性炎症と急性炎症の間で識別できず、これは、対照群におけるCRPとGU値>10.65の血清グリカンとの間の相関の不在により実証される。これは、例えばGU値>10.65のグリカンのパーセンテージなどのグリコシル化変化の解析が、CRPよりもさらに特異的な癌診断を提示する可能性を示唆する。
例2−乳癌
材料および方法
血清試料
血清は、癌のない女性対照(n=19)およびBrest Surgery Unit, Nottingham, City Hospitalにおける進行乳癌患者(n=18)から、試料収集の前にインフォームドコンセントを得て入手した。癌のない女性の平均年齢は42±13才であり、乳癌患者は63±13才であった。同一の試料バンクから、経時的試験のために患者Aからの4つの血清試料を取得した。30人以上の個人の血清を含む、追加のプールされた対照を、Royle et al. (Royle L. et al. (2006) Methods MoI Biol, 347, 125-143;Royle L et al. (2008) Analytical Biochem, 376, 1-12)で解析されたのと同様に、The National Health Service(NHS)から入手した。
インゲルブロック法によるN−グリカン遊離
血清試料(5ul)は、前に記載のようにして(Royle L. et al. (2006) Methods MoI Biol, 347, 125-143)インゲルブロック法に供した。簡単に述べると、N−グリカンを、血清ゲルブロックまたは血清の2Dゲルから切り出したタンパク質スポットから、37℃で18時間行ったPNGaseF消化(100U/ml、EC 3.5.1.52, Roche Diagnostics GmbH, Mannheim, Germany)により遊離した。抽出したグリカンプールは、次に、Ludger Tag(登録商標)2ABキット(Ludger Ltd, Oxford, UK)を用いて2AB蛍光標識した。
HPLCおよび質量分析によるグリカン解析
標識したN−グリカンを、続いてTSKゲルAmide-80カラムと20〜58%勾配の50mMのギ酸アンモニウム、pH4.4:アセトニトリルを用いた順相(NP)HPLCにより解析した。システムは、デキストランラダーを形成する水和化2AB標識グルコースオリゴマーの外部標準を用いて較正した。N−グリカンの弱陰イオン交換(WAX)HPLC解析は、Vydac 301VHP575の7.5×50mmカラム(Royle L. et al. (2006) Methods MoI Biol, 347, 125-143)を用いて行った。
MALDI−TOF質量分析
陽イオンMALDI−TOF質量スペクトルを、遅延抽出および窒素レーザー(337nm)を適合させたMicromass TofSpec 2E reflectron-TOF質量分析計(Micromass, Manchester, United Kingdom)を用いて記録した。加速電圧は20kVであり;パルス電圧は3200Vであり;遅延抽出イオン源用の遅延は500nsであった。試料は、0.5μlの非標識グリカンの水溶液を、ステンレススチール標的プレート上のマトリクス溶液(アセトニトリル中、0.3mlの2,5−ジヒドロキシ安息香酸飽和溶液)に加え、室温で乾燥させることにより調製した。次に、試料/マトリクス混合物をエタノールから再結晶化した(Harvey, DJ., Nat Methods, 2007)。
陰イオンエレクトロスプレーイオン化質量分析ESI−MSおよびESI MS/MS
陰イオンエレクトロスプレー質量分析を、Waters-Micromass四重極飛行時間型(Q−TOF)Ultima Global装置を用いて行った。0.5mMのリン酸アンモニウムを含有する、1:1(v:v)のメタノール:水中の非標識グリカン試料をproxeon(Proxeon Biosystems, Odense, Denmark)ナノスプレー毛細管を通して注入した。イオン源条件は以下である:温度120℃;窒素流、50L/時間;注入針電位、1.2kV;コーン電圧、100V;RF−1電圧、150V。スペクトル(2秒スキャン)は、4GHzのデジタル化速度で取得し、十分な信号:ノイズ比が得られるまで蓄積した。MS/MSデータ取得には、親イオンを低解像度で選択して(約4m/z質量ウィンドウ)アイソトープのピークを透過させ、アルゴンで断片化した。衝突セル上の電圧は、質量および電荷により調節して、質量スケールにわたって断片イオンの均一な分布が得られるようにした。典型的な値は80〜120Vであった。
グリカンの配列決定およびエキソグリコシダーゼ消化
N−グリカン構造に、標準デキストランラダーの保持時間との比較により、グルコース単位(GU)を割り当てた。さらなる配列決定および構造確認は、連続エキソグリコシダーゼ消化と、続くNP HPLC(Royle L. et al. 2006)に基づいた。標識グリカンの消化は、酵素のアレイを製造業者の推奨濃度で用いて、50mMの酢酸ナトリウム緩衝液、pH5.5(またはJBM消化用に100mMの酢酸ナトリウム、2mMのZn2+、pH5.0)中、37℃で16時間実施した。酵素は、Prozyme(San Leandro, CA, USA)およびGlyko(Novato, CA, USA)より購入した、Arthrobacter ureafaciensシアリダーゼ(ABS、EC 3.2.1.18);ウシ精巣β−ガラクトシダーゼ(BTG、EC 3.2.1.23);肺炎連鎖球菌β−ガラクトシダーゼ(SPG、EC 3.2.1.23)、アーモンドミールα−フコシダーゼ(AMF、EC 3.2.1.51)、組換え肺炎連鎖球菌ヘキソサミニダーゼ(GUH、EC 3.2.1.30);およびジャックビーンβ−N−アセチルヘキソサミニダーゼ(JBH、EC 3.2.1.30)を含む。
乳癌血清の2次元ゲル電気泳動
プールされた対照および乳癌患者血清試料の2D分離を、デュプリケートで、抗SLeブロッティングおよび蛍光染色の両方について行った。Smith et al. (Smith P. K. et al.Anal Biochem, 1985. 150(1): p. 76-85)のビシンコニン酸(BCA)アッセイ法を用いて決定したタンパク質濃度に基づき、1つのゲル当たり80ugの血清を用いた。血清の各アリコートを、5Mの尿素、2Mのチオウレア、4%(w/v)の3−[(3−コールアミドプロピル)ジメチルアンモニオ]−1−プロパンスルホネート(CHAPS)、65mMのジチオスレイトール(DTT)、2mMのトリブチルホスフィン(TBP)、150mMのNDSB−256(ジメチルベンジルアンモニウムプロパンスルホネート、非洗剤スルホベタインー256:NDSB−256、Merck Biosciences Nottingham, UK)、および0.002%(w/v)のブロモフェノールブルー、0.45%(v/v)のpH2〜4の担体両性電解質(SERVALYT(登録商標)SERVA, Heidelberg, Germany)、0.45%(v/v)のpH9〜11の担体両性電解質および0.9%(v/v)のpH3〜10の担体両性電解質と混合して、総容量がゲル当たり120μlとなるようにし、再膨張トレイ内に移した。Immobiline(登録商標)IPGドライストリップ(DryStrip)pH3〜10NL、7cm(Amersham Biosciences)を前面を下にして試料の上に置き、1mlの鉱物油で被覆し、一晩室温で放置して、再水和させた(Sanchez, J.C. et al. (1997) Electrophoresis, 18, 324-327)。
これに続いて、ストリップをMuiltiphor IIにゲルを上向きにして移し、両端に湿った芯(wick)を配置した。IEFを300Vで1分間、3500Vで90分間、ついでさらに100分間3500で行った(Sanchez, J.C. et al. (1997) Electrophoresis, 18, 324-327)。IPGストリップを次に直ちに15分間、4Mの尿素、2mMのチオウレア、12mMのDTT、50mMのトリス(pH6.8)、2%(w/v)のSDS、30%(w/v)のグリセロールについて室温で平衡化し、0.5%の溶解アガロース中に包埋された4〜12%の2次元Bis-Tris Zoom(登録商標)(Invitrogen)ゲルの上に載せた。2次元電気泳動を125Vで2時間行った。各試料からのゲルを、40%(v/v)エタノール、10%(v/v)酢酸中に一晩固定し、蛍光染料OGT1238(Oxford Glycosciences, Abingdon, UK)で、Hassner et al.(Hassner A. (1984) Synthesis. J Org Chem, 49, 2546-2551)に従って染色した。8ビット単色蛍光画像を、FujiCCDCカメラLAS_1000 plus (Tokyo, Japan)を用いて捉えた。
タンパク質同定のためのN−グリカン遊離、ペプチド抽出、LC−MS/MSおよびデータ解析
質量分析に割り当てられたタンパク質特性を、手動で切り出した。回復したゲル片を、0.5MのDTTで65℃で20分間還元し、続いて100mMのIAA中で30分間インキュベーションし、およびPNGaseFで一晩消化して、N−グリカンを前に記載のように切断した。グリカン抽出の後に、ゲル片をSpeedVac内で乾燥し、インゲルトリプシン(Roche. Basel. Switzerland)消化をShevchenko et al. (Shevchenko A. et al. Proc Natl Acad Sci U S A, 1996. 93(25): p. 14440-5)のプロトコルに従って行った。トリプシンペプチドを、液体クロマトグラフィタンデム質量分析(LC−MS/MS)により、前に記載のようにして(Garcia, A. et al. Proteomics, 2004. 4(3): p. 656-68)解析した。
免疫ブロット法
前に記載した、2Dゲルからのタンパク質である80μgの全血清タンパク質を、ウェスタンブロッティングによりニトロセルロース膜に移した。膜は、PBST中の0.2%のI-Block(Tropix1)で室温で1時間ブロックし、次に0.02%ブロッキング溶液中の5ug/mlのKM93(Calbiochem)で4℃で一晩インキュベーションした。膜を0.5%PBSTで洗浄し、次に0.5μg/mlの抗マウスIgM(Sigma Aldrich)で1時間インキュベーションした。ブロットは、化学発光検出システム(ECL Plus Amersham)を用いて現像した。
結果
進行乳癌血清のN−グリカンプール
進行乳癌患者(n=19)および癌のない対照(n=18)の全血清糖タンパク質からのN−結合型グリカンを、NPおよびエキソグリコシダーゼのアレイを用いる連続消化と組み合わせたWAX HPLCおよびMSにより解析した。117種のN−グリカンが、Royle et al.(Royle L. et al. (2006) Methods MoI Biol, 347, 125-143, Royle L et al. (2008) Analytical Biochem, 376, 1-12)およびHarvey et al. (Harvey D.J. 2007))に記載のような方法により、対照血清中に以前に同定されている。
乳癌および対照の血清タンパク質N−グリカンの比較から、乳癌のN−グリカンが、GU値>10.75のトリシアリル化三分岐構造上の末端GlcNAcにα1,3結合したフコースを有する、外部アームフコシル化の増加した量を有することが示された(A3FG3S3)(図9a)。A3G3S3の非還元末端上のα1,3結合フコースは、SLeエピトープを構成し、これは内皮細胞上に宿る白血球に関与するE−セレクチンのためのリガンドである。
WAX HPLCと続くNP HPLCによる、全電荷(シアリル化の程度)に基づくグリカンプールの分画
この方法は、それぞれ異る荷電画分(0〜4個のシアル酸残基)からの構造の詳細な比較を可能とし、図9bに示すように、α1,3フコシル化三分岐の増加は、トリシアリル化画分におけることを明確に示す。患者の血清中でHPLCおよびMSにより同定された他のN−グリコシル化変化は、α1,3ジフコシル化三分岐、α1,3モノおよびジフコシル化四分岐、ラクトサミン延長付き四分岐グリカンを含む、より量の少ない構造のレベルの増加、およびα2,3のα2,6シアリル化からの増加である(データ示されず)。
グリカンマーカーA3FG1の配列決定および定量化
グリコシダーゼアレイ消化のセットを実施して、グリカン構造を分離および増幅し、また特異的結合を確認した。シアリダーゼおよびβ−ガラクトシダーゼの組合せに続いて、増加したα1,3フコシル化トリシアリル化三分岐構造(GU10.75)を、これが崩壊してα1,3フコシル化モノガラクトシル化三分岐構造(A3FG1)をGU7.5で形成した際に、単離することができた(図10a)。外部アームフコースの存在は、同じGlcNAcに結合したガラクトースのガラクトシダーゼによる切断を阻害し、産物A3FG1をもたらす。
外部アームフコースおよびガラクトース(同じGlcNAcに結合)の結合は、シアリル化ルイスx(α1,3フコース、β1,4ガラクトース)であるか、ルイスa(α1,4フコース、α1,3ガラクトース)であるかを決定するので、グリカンマーカーの特異的結合の識別は非常に重要であった。したがって、α1,3/4フコシダーゼおよびβ1,4ガラクトシダーゼの両方の消化の組合せをグリカンプールについて行い、これが、A3FG1ピークを完全に消化することを見出し、末端エピトープがシアリル化ルイスxであることを確認した。これは、ナノスプレーCID質量分析を用いたイオン断片化により決定されるデータと整合した(データ示されず)。
GU7.5におけるピークの単離を行って、どのGlcNAcにα1,3フコースが結合しているかを特定した。一定範囲の消化の後、フコースが結合するGlcNAcは、トリマンノシルコアへのβ1,4結合であることが示された(図10b)。この構造のGUを、IgGの既知のN−グリカンを標準とした比較により確認した。
A3FG1の面積パーセンテージを定量化し、全乳癌患者および対照における全N−グリカンプールについて比較した。図11に示すように、平均して約3倍の増加が、対照(2.96%±1.65)と比較した進行乳癌に存在した(6.55%±3.02)。
乳癌進行のバイオマーカーとしてのA3FG1
乳癌進行の指標としてのA3FG1の能力を評価するため、経時的ケーススタディを10人の個別の患者(患者A)について行い、ここで、A3FG1レベルを、悪性疾患の間の2つの時点で収集した血清(初期の試料は乳癌が最初に診断された時点で、後の試料はそれらの各々において転移が検出された後に収集)からのCA15−3に対してプロットした(図13B)。A3FG1およびCA15−3の両方の傾向における有意な差が、全10人の患者で見られた。興味深いことには、A3FG1は全ての第2試料中で増加し、乳癌の進行を明確に示した。これはCA15−3レベルとは異なっており、CA15−3では10人の患者中、4例のみでレベルの増加が示され、一方その他の例は有意な増加を示さず、2例ではレベルの減少さえ見られた。これは、一般的な測度であるCA15−3と比較して、乳癌患者の全血清から測定されたグリカンマーカーA3FG1は、疾患の進行および転移の検出に、より信頼性が高いことを示唆する。
A3FG1を担持するタンパク質を探すためのグリコプロテオミクスアプローチ
進行乳癌および対照からの全血清タンパク質を、2D電気泳動(pl3〜10)と、続いてシアリルルイスxエピトープに対する抗体KM93を用いたウェスタンブロッティングに供した。3つの糖タンパク質スポットが患者のブロットに同定され、これらは対照中では観察されなかった(図13a)。これらのスポットを切り出し、グリカン配列決定用のN−グリカン遊離に供し、続いてLC−MS/MSによるタンパク質同定用のトリプシン消化を行った。3つのスポットは全てA3FG3S3構造を含み(データ示されず)、i)α1−抗キモトリプシン、ii)α1−酸性糖タンパク質、およびiii)ハプトグロビンβ鎖として同定された(表2)。
個別のタンパク質対全血清からのA3FG1
これらのタンパク質が、血清中で見られるA3FG1の増加に寄与することを示したので、我々はこれらにおけるA3FG1のレベルを個別に試験して、これらの各々でのグリカンレベルが進行乳癌の期間に増加するかどうかを決定した。このために、個別の患者(患者A)の3つの試料各々の80μg(〜1.5μl)の全血清タンパク質から切り出した、α1−酸性糖タンパク質およびα1−抗キモトリプシンの2Dスポットから、ならびにハプトグロビンβ鎖の最も酸性のスポットから遊離したN−グリカンのA3FG1を、NP HPLCプロファイルから定量した。これらタンパク質のN−グリカンプールから測定したA3FG1レベルを、全血清から定量したA3FG1およびCA15−3と共にプロットした(図13b)。
特定タンパク質のA3FG1の傾向は、最初の2つの試料では全血清からのA3FG1のそれと類似であったが、第3の試料においては全てのタンパク質特異的A3FG1測度は増加し、これは、これらの測度が、CA15−3および全血清中のグリカンマーカーよりも優れた転移の指標であることを示した。この結果は、これらのA3FG1タンパク質糖型の評価が、進行乳房悪性疾患の早期発見の代替案となり得ることを示唆する。
考察
血清N−結合型グリカン解析を、HPLCとコンピュータ支援データ解析および質量分析(MS)技術(Royle L et al. (2008) Analytical Biochem, 376, 1-12)を組み合わせて、9人の進行乳癌患者および10人の女性対照について行った。両群からのN−グリカンプロファイルを比較し、有意な変化を同定した。経時的ケーススタディを行って、グリカン変化と疾患進行の潜在的な相関を、現在の臨床マーカーであるCA15−3と比較して評価した。グリカン解析をプロテオミクスと組み合わせると、乳癌血清中に観察されるグリコシル化の変化に寄与する糖タンパク質の同定が可能となった。
標準の血清グライコームデータベースおよび、個別の年齢を適合させた対照との比較により、乳癌試料は、外部アームフコシル化の増加を、より具体的には、シリアルルイスxエピトープを形成するα1−3結合フコースを有するトリシアリル化三分岐構造の増加を示した。シアリダーゼおよびβ−ガラクトシダーゼ消化の後に、その消化産物である、α1−3結合フコースを有するモノガラクトシル化三分岐構造が正確に定量された。患者はまた、対照と比べて、アガラクトシル化フコシル化二分岐グリカンのレベルの増加も有していた。
乳癌血清における、糖タンパク質のN−グリコシル化の変化
癌および他の疾患におけるN−結合型グリコシル化の変化は、多くの研究興味を引き付け、疾患マーカーとして、および腫瘍の免疫療法としての可能性を示している。堅固で高度に感受性の高い技術を用いて、乳癌からの全血清タンパク質のN−グリカンを解析し、乳癌患者と対照を識別できる、異常な(aberrant)構造(単数または複数)を探索した。
エピトープSLeを形成する、α1,3フコースを有するトリシルアル化三分岐構造の増加したレベルを、対照と比較して患者において同定した(図9a)。このデータは、乳癌血清における分岐の増加を示す。GlcNAcの、複雑なN−結合型構造のトリマンノシルコアへの付加は、酵素GnT−Vにより媒介され、その転写はher−2/neuを含む癌遺伝子により刺激されることが示されている。SLeの合成には、ST3Gal−IVおよびVIによる内部GlcNAc残基のフコシル化に先立って、シアリル化が必要であることが知られている。これらの結果は、乳癌においてはシアリルトランスフェラーゼ(ST)の活性の増加が存在することを示唆し、これは以前に、その両方が疾患の進行と相関する、患者の血清および組織それぞれにおけるレベルの測定により報告されている。SLeの合成に関与する主要なフコシルトランスフェラーゼは、FucT VIであり、その遺伝子発現は乳癌細胞の表面でのSLe発現と相関する(Matsuura N. et al. 1998)。乳癌細胞表面のMUC1上でのSLe発現は、α1,3フコシルトランスフェラーゼ活性の低下のために、炎症性乳癌のヒトSCIDモデルである、MARY−Xにおいて減少した。これにより、周辺の内皮への結合の欠如をもたらし、細胞と球状形成の間の静電気的反発(electrostatic repulsion)はなく、これはまた、E−カドヘリンの過剰発現にも寄与する。これらの効果全ては、FucT−IIIcDNAによるトランスフェクションにより、逆転された。
nm23−H1抑圧遺伝子は、乳癌細胞でのSLe発現と逆相関することが報告され、患者の疾患のない生存率に影響を及ぼす。近年、そのメカニズムがDuan et al.により説明され、彼は、nm23−H1は、GnT−V、ST、およびFucTの遺伝子およびタンパク質発現を下方調節し、SLe発現の減少と、転移の可能性の減少をもたらすと報告した。
A3FG1の形態のSLeグリカンマーカーのレベルを、全ての進行乳癌患者および対照において定量した(図11)。結果は、乳癌患者が平均して、対照より3倍増加した血清SLeレベルを有することを示す。さらに、進行した卵巣癌、肺癌、前立腺癌、および敗血症および膵炎などの炎症性状態の血清における、SLeの増加も観察された。これらの結果を合わせると、血清に存在するSLeは、特定の悪性疾患または他の疾患状態のマーカーではなく、これは、細胞表面でのSLeの発現レベルもまた、特定疾患と相関しないとの結論と整合している。
しかし、このグリカンマーカーは、個々の患者における乳癌の進行および転移の有用な指標となり得る。患者Aのケーススタディにおいて、A3FG1レベルは、転移を示すのにCA15−3よりも良好であることが見出された。乳癌における血清SLeの評価の有用性を支持する、種々の報告が存在する。血清SLeの測定は、ラジオイムノアッセイ(RIA)キットFh6-0tsuka (Otsuka Assay Laboratory)を用い、38U/mlのカットオフ値で、Kurebayashi et al.により前に実施された(Kurebayashi J. et al. Jpn J Clin Oncol 2006;36:150-3)。この試験において、CA15−3と組み合わせてSLeを用いた場合、CA15−3のみ(61.5%)またはCA15−3をCEAと組合せた場合(72.3%)と比べて、検出したケースの数が78.5%に増加した。同様に、高い血清SLeは、複数レベルN2ステージおよび非小細胞肺癌(NSCLC)の劣った結果を予測し、この場合のステージングマーカーとして有用であることが示唆された。血清SLeはまた、進行および再発乳癌において、そのリガンドの溶解性形態であるE−セレクチンとも相関する。
SLeの増加した血清レベルの背後にある原理を理解するために、この構造を担持するタンパク質を決定することが必要であった。急性期タンパク質であるα1−酸性糖タンパク質(AGP)、α1−抗トリプシン(ACT)およびハプトグロビンβ鎖(Hap)は全て、SLeエピトープを有する複雑なグリカン構造を担持することが以前に報告されている。SLeグリカンは、2D電気泳動と続く免疫ブロット法およびグリカン解析により分離された乳癌血清からの、これらのタンパク質から直接同定された(図13a)。AGPは、正の急性期反応物として分類され、5つの潜在的N−グリコシル化部位を有し、そのためこれは、最も重度にグリコシル化された血清タンパク質の1つになっている。AGPグリコシル化の変化はしばしば、2つの他の急性期タンパク質であるα1−プロテアーゼ阻害剤およびACTと共に観察される。
AGPグリコシル化、特に分岐およびフコシル化の程度は、種々の癌および炎症疾患と関連し、線維症などの推定マーカーとして作用する。Duche et al.は、血漿AGP濃度を乳癌、肺癌および卵巣癌患者において測定し、その結果全ての癌群において、対照と比べて増加レベルを示した。AGPの遺伝的変異は対照のそれと類似のようであるが、しかし発現レベルはその濃度に従って増加した(Duche, J.C., et al. Clin Biochem, 2000. 33(3): p. 197-202)。
疾患におけるAGPの生物学的役割は、主としてそれが担持するSLe構造に焦点が当てられている。その抗炎症性の役割には、E−セレクチン発現が炎症誘発性サイトカインにより強化される場合に、セレクチン媒介性の内皮−白血球接着に干渉する、SLeの高い発現レベルが関与する。癌においても同様に、SLeを担持する高濃度のAGPは、内皮細胞上のE−セレクチンへの多量の結合をもたらし、これは細胞表面SLeと競合する。これは、循環するSLeが癌細胞の血管外遊出に対してフィードバック阻害効果を示し、これが転移に対する防衛メカニズムをもたらすとの仮説を支持する。結腸癌における低レベルの血清糖脂質SLeもまた、高い再発および疾患のない期間の短縮と相関することが見出された。治療デザインとしてSLe−E−セレクチン相互作用を阻害するという概念はFukami et al.により用いられ、彼らは、E−セレクチンへのSLeの結合をブロックするマクロスペリド(Macrospelide)Bを用いて、転移が抑制できることを示した(Fukami, A., et al. Biochem Biophys Res Commun, 2002. 291 (4): p. 1065-70)。
Havenaar 1998は妊娠女性におけるAGPα1,3フコシル化を観察し、分岐の定常的な増加およびフコシル化の減少(25週までのみ)が存在し、これは妊娠中に寛解に入るRA患者で観察されるのと同様であり、このことは、おそらく肝臓マシナリーに作用するサイトカイン遺伝子の発現に影響を及ぼすことによる、エストロゲンのAGPグリコシル化への影響(Havenaar)を示唆する。Brinkman-van der linden 1998も、急性炎症とは対照的に、エストロゲンのSLe発現を減少させる効果を示した(Cid MC 1994)。
AGPおよびACTは、ヒト乳癌上皮細胞により合成されることが示されており、興味深いことには、MCF−7培養培地中でレベルが増加する。これは、AGPおよびACTの両方の異常型が、乳房腫瘍に由来するものであり、一般に理解されているように肝臓からのみに由来はしないという可能性を示唆する。このことは、乳癌細胞は必要なグリコシルトランスフェラーゼを発現して、AGPおよびACTの変化した糖型を産生するとの事実によっても強化される。ACTはまた、エストロゲン誘発性の遺伝子であり、そのmRNA発現は、侵潤性乳癌患者における初期の腫瘍再発を予測することが示された。
例3−卵巣癌
材料および方法
血清試料
静脈血試料を、1)健康対照およびSt James's University Hospital in Leeds, UK in Leeds UKにおいて処置を受けている患者、およびb)健康なドナーおよびInstitute of Biochemistry, Bucharestの研究プログラムに参加している黒色腫患者から、倫理的承認およびインフォームドコンセントを得た後に収集した。血液を30〜60分間凝固させた後、2,000gで10分間遠心分離して血清を得て、−80℃で解析まで保管した。
a)最初のパイロット試験に対して、3人の進行卵巣癌患者からの試料を用い(患者A、手術前にステージIIIC漿液性および類内膜(endometrioid)癌腫;患者BおよびC、進行した疾患の再発時にステージIII漿液性癌腫瘍;年齢60〜72歳)、5人の同年齢の女性からの血清プールと比較した。グリコシル化変化を担持する血清タンパク質のスクリーニングのために、8人の同年齢の女性からの対照血清プールを、以下から作製した血清プールと比較した:良性の婦人科状態の3人の女性(原則として漿液性腺腫または嚢胞);悪性卵巣癌(漿液性および類内膜癌腫1例、両側腺癌1例、および両側乳頭状腺癌1例);および転移卵巣癌(乳頭状漿液性腺癌2例、漿液性癌腫1例)。試験の主要な部分に対して、さらなる90例の、対照および卵巣癌患者、他の婦人科の癌または良性の婦人科的状態の患者からの試料も用いた(表5)。CRPの血清濃度は、Advia 1650解析器(Bayer, Newbury, UK)を用いて、CA125はCentaur解析器(Bayer)を用いて解析した。参照範囲は、<10mg/Lおよび<35U/mLであった。
b)試験には、次の悪性黒色腫の患者を用いて、3人の健康対照(年齢35〜52歳)と比較した:4人の悪性黒色腫患者、色素沈着、侵潤クラーク3〜クラーク4(非潰瘍化3例、潰瘍化1例、年齢30〜58歳)、1人の患者は胸部後側の悪性黒色腫の手術から6ヶ月(36歳)、1人は腹部異形成母斑、直径0.8mm/0.2mm(47歳)、および1人は胸部前側鎖骨下の色素沈着過剰悪性黒色腫(52歳)。この患者は以前に腫瘍を有し、外科手術および化学療法を受けていた。フィブリノーゲンは、凝固可能タンパク質として、Swaim and Feders(Swaim W. R. and Feders, M. B. (1967) Clin Chem, 13, 1026-1028.)に記載の方法を用いて決定した。参照範囲は200〜400ng/mlであった。
ゲルブロック中のヒト血清からのN−グリカンの遊離および精製
N−グリカンは、NグリコシダーゼF(PNGaseF, Roche, Mannheim, Germany)によるin situ消化により、血清試料中の糖タンパク質から以下において遊離された:a)初めに記載したように、SDS−PAGEゲルバンド内(Royle L. et al. (2006) Methods Mol Biol, 347, 125-143)またはb)Royle et al. (Royle L et al. (2008) Analytical Biochem, 376, 1-12)に記載のように、インゲルブロック内。簡単に述べると、血清試料を還元およびアルキル化し、次にSDSゲルブロックにセットし、洗浄し、N−グリカンをPNGaseFにより遊離する。
N−グリカンの還元末端の蛍光標識
グリカンは2−アミノベンズアミド(2AB)で還元的アミノ化により蛍光標識した(Bigge et al. 1995) (LudgerTag 2-AB labeling kit Ludger Ltd., Abingdon, UK)。
2AB標識N−結合型グリカンのエキソグリコシダーゼ消化
全ての酵素は、Glyko (Novato, CA)またはNew England Biolabs (Hitchin, Herts, UK)から購入した。2AB標識グリカンは、50mMの酢酸ナトリウム緩衝液、pH5.5中、10μlの容量で37℃にて18時間(ただし、緩衝液が100mMの酢酸ナトリウム、2mMZn2+、pH5.0である、JBMの場合は除く)、次の酵素のアレイを用いて消化した:ABS:Arthobacter ureafaciensシアリダーゼ(EC3.2.1.18)、1U/ml;NAN1:肺炎連鎖球菌シアリダーゼ(EC3.2.1.18)、1U/ml;BTG:ウシ精巣β−ガラクトシダーゼ(EC 3.2.1.23)、1U/ml;SPG:肺炎連鎖球菌β−ガラクトシダーゼ(EC 3.2.1.23)、0.1U/ml;BKF:ウシ腎臓α−フコシダーゼ(EC 3.2.1.51)、1U/ml;GUH:肺炎連鎖球菌からクローニングされ、大腸菌に発現されたβ−N−アセチルグルコサミニダーゼ(EC 3.2.1.30)、4U/ml;JBM:ジャックビーンαマンノシダーゼ(EC 3.2.1.24)、50U/ml;AMF:アーモンドミールα−フコシダーゼ(EC 3.2.1.111)、3mU/ml;XMF:Xanthomonus種α−フコシダーゼ(EC 3.2.1.51)、0.1U/ml。インキュベーション後、酵素をタンパク質結合EZフィルター((Millipore Corporation, Beford, MA, USA) (Royle et al. 2006))を通したろ過により除去し、次にN−グリカンをNP−HPLCおよびWAX−HPLCで解析した。
HPLC
NP−HPLCは、Waters温度制御モジュールおよびWaters 2475蛍光検出器を備えた2695 Alliance分離モジュール(Waters, Milford, MA)上で、TSK-GeI Amide-80の4.6×250mmカラム(Anachem, Luton, UK)を用いて行った。溶媒Aは、アンモニア溶液でpH4.4に調節した50mMのギ酸である。溶媒Bは、アセトニトリルである。カラム温度は30℃に設定した。勾配条件は、26〜52%のAの線形勾配で、流速0.4ml/分で104分間であった。試料は74%アセトニトリル中(Royle L et al. (2008) Analytical Biochem, 376, 1-12)に注入した。蛍光は、励起330nmで420nmにおいて測定した。システムは、前に記載のようにして(Royle L. et al. (2006) Methods Mol Biol, 347, 125-143)、デキストランラダーを作製する水和化および2AG標識グルコースオリゴマーの外部標準を用いて較正した。
WAXHPLCは、(Royle L. et al. (2006) Methods MoI Biol, 347, 125-143)に記載のようにして、Vydac 301VHP575の7.5×50mmカラム(Anachem, Luton, Bedfordshire, UK)を用いて行った。簡単に述べると、溶媒Aは0.5Mの蟻酸アンモニウム、pH9であった。溶媒Bは水中の10%(v/v)メタノールであった。勾配条件は、0〜5%勾配のAで12分間、流速1ml/分、次に5〜21%勾配のAで13分間、次に21〜50%勾配のAで25分間、80〜100%勾配のAで5分間、次に100%のAで5分間であった。試料は水中に注入した。
MALDI−TOF MS
陽イオンMALDI−TOF質量スペクトルを、遅延抽出および窒素レーザー(337nm)に適合させたMicromass TofSpec 2E reflectron-TOF質量分析計(Micromass, Manchester, United Kingdom)を用いて記録した。加速電圧は20kVであり;パルス電圧は3200Vであり;遅延抽出イオン源用の遅延は500nsであった。試料は、0.5mlの試料の水溶液を、ステンレススチール標的プレート上のマトリクス溶液(アセトニトリル中、2,5−ジヒドロキシ安息香酸の0.3mlの飽和溶液)に加え、室温で乾燥させることにより調製した。試料/マトリクス混合物を次にエタノールから再結晶化した(Harvey, D.J. (1993) Rapid Commun Mass Spectrom, 7, 614- 619)。
陰イオンエレクトロスプレーイオン化質量分析ESI−MSおよびESI MS/MS
ナノエレクトロスプレー質量分析を、Waters-Micromass四重極飛行時間型(Q−Tof)Ultima Global装置を用いて行った。0.5mMのリン酸アンモニウムを含有する、1:1(v:v)のメタノール:水の中の試料を、Proxeon(Proxeon Biosystems, Odense, Denmark)ナノスプレー毛細管を通して注入した。イオン源条件は以下である:温度120℃;窒素流、50L/時間;注入針電位、1.2kV;コーン電圧、100V;RF−1電圧、150V。スペクトル(2秒スキャン)は、4GHzのデジタル化速度で取得し、十分な信号:ノイズ比が得られるまで蓄積した。MS/MSデータ取得には、親イオンを低解像度で選択して(約4m/z質量ウィンドウ)アイソトープのピークを透過させ、アルゴンで断片化した。衝突セル上の電圧は、質量および電荷により調節して、質量スケールにわたって断片イオンの均一な分布を与えるようにした。典型的な値は80〜120Vであった。
血清IgGの精製
血清(5μl)を、0.1Mのトリス、1MのNaCl、1mMのEDTA、pH7.5で100倍に希釈し、タンパク質Gカラム(Pharmacia Biotech, Uppsala, Sweden)に適用した。カラムは15mlの0.1Mのトリス、1MのNaCl、1mMのEDTA、pH7.5で洗浄して平衡化し、IgGを、0.1Mのグリシン−HCl、pH2.7を用いて1.5mlのチューブ(100μlの0.1Mのトリス、1MのNaCl、1mMのEDTA緩衝液(pH7.5)を含有)内に溶出した。IgGを含む画分をプールし、1×PBSに対して透析膜(Medicell International Ltd., London, UK)を用いて4℃で一晩透析した。透析したIgGを、10μlのレジン(Strata clean resin, Stratagene, La JoIIa, CA, USA)を加えて濃縮し、室温で1時間、結合のためにゆっくり回転させつつ置いた。1000gでの遠心分離の後、上清を除去して、約10μlのペレットがチューブの底に残るようにし、これを還元およびアルキル化し、SDS−PAGEゲルに移した。電気泳動の後、純粋なIgG重鎖バンドをグリカン解析用にゲルから切り取った。
電気泳動
4〜12%のBis-TrisSDS PAGEミニゲル(Invitrogen, Carlsbad, CA, USA)での電気泳動を、室温でLaemmli (Laemmli 1970)の方法に従って行った。ゲルはクーマシーで染色した。全ての試料は解析前に5%の2−メルカプトエタノールで還元した。1つのレーン当たり、血清からの約40μgのタンパク質を負荷した。
2次元電気泳動(2−DE)
80μgのヒト血清を、120μlの試料緩衝液(5Mの尿素、2Mのチオウレア、2mMのトリブチルホスフィン、65mMのDTT、4%のCHAPS、4%(v/w)のNDSB−256、微量のブロモフェノールブルー)に溶解し、2−DEに供した。試料に対し、両性電解質を0.9%Servalyte3−10、0.45%Servalyte2−4および9−11にて加えた。不動化pH勾配ゲル(Immobilineドライストリップ(DryStrip)3−10NL、7cm)を試料中で再水和化し、IEFをSanchez(Sanchez, J. C. et al. (1997) Electrophoresis, 18, 324-327)に記載の方法に従って17℃で実施したが、ただし、次の修正電圧および時間を用いた:最初の1分は200V、3mA、5W、次に3500Vで3時間30分、10mA、5W。焦点合わせの後、IPGストリップを直ちに、4Mの尿素、2Mのチオウレア、2%(w/v)DTT、30%グリセロール、50mMのトリス、pH6.8、2%のSDS、微量のブロモフェノールブルー中で15分間平衡化した。タンパク質は、125Vで2時間、RTにて、4〜12%のBis-Tris勾配ゲル(Invitrogen, Carlsbad, CA, USA)上で2次元分離した。電気泳動の後、ゲルを40%(v/v)エタノール:10%(v/v)酢酸中に固定し、蛍光染料OGT1238(Oxford Glycosciences, Abingdon, UK)を用いて、前に記載の方法(Hassner A. (1984) Synthesis. J Org Chem, 49, 2546-2551)に従って染色した。単色蛍光画像を、Apollo II線形蛍光スキャナー(Oxford Glycosciences)でゲルをスキャンすることにより取得した。
2−DEゲルスポットのグリカン解析
グリカンは、MS解析用に切り取られた1mmのゲルから遊離および抽出した。用いた方法は、ヒト血清に対するインゲルブロック法を修正したものである。ゲル片は2時間以上凍結し、次に15分間、1mlのアセトニトリルおよび1mlの20mMのNaHCOで順番に3回、振とうしつつ洗浄した。各段階の後に、洗浄液は真空下で除去した。糖タンパク質は、ゲル上に負荷する前に還元およびアルキル化せず、したがって還元およびアルキル化はin situで行った:ゲル片は37℃で30分間、20μlの0.5MのDTTと180μlの20mMのNaHCOでインキュベーションし、次に20μlの100mMのIAAを加えて、インキュベーションをさらに30分間RTで続けた。次の手順は、アセトニトリルと20mMのNaHCOによる5回の順番の洗浄から開始される、インゲルブロック法である。十分な量のPNGaseFを加えて、ゲル片を被覆した。遊離されたグリカンは、200μlの水で3回洗浄し、およびさらに順番に200μlのアセトニトリルと200μlの水での洗浄により溶出し、ここで各洗浄は30分間で、ギ酸はフルオロホア2ABで前に記載のようにして処置および標識した(Bigge, J. C. et al. (1995) Anal Biochem, 230, 229-238)。これらの方法により、消化を含む10NP−HPLCクロマトグラム用に十分なグリカンが産生された。ゲルスポットに残されたタンパク質は、質量分析により同定した。
2−DEからのゲルスポットのタンパク質の質量分析による同定(表7参照)
質量分析を、Q−TOF1(Micromass, Manchester, UK)をCapLC(Waters, Milford, MA, USA)と組み合わせて用いて行った。トリプシンペプチドを濃縮し、300μmid/5mmのC18プレカラム上で脱塩し、75μmid/25cmのC18PepMap解析カラム(LC packings, San Francisco, CA, USA)上に溶解した。ペプチドを、0.1%のギ酸を含む45分間の5〜95%アセトニトリル勾配を流速200nl/分で用いて、質量分析計に溶出した。スペクトルを、陽モードにおいてコーン電圧40Vおよび毛細管電圧3300Vで取得した。MSからMS/MSへの切換えは自動的データ依存様式で制御し、ここでは1秒の探索スキャンの後に、最も強いイオンの1秒MS/MSスキャンを3回行った。MS/MS用に選択した前駆体イオンは、さらなる断片化から2分間排除した。スペクトルは、ProteinLynx Globalサーバー2.1.5を用いて処理し、SWISS-PROTおよびNCBIデータベースについて、MASCOTサーチエンジン(Matrix science, London, UK)を用いて探索した。探索はヒト分類学に限定し、カルバミドメチル(carbamidomethyl)システインを固定修飾とし、および酸化メチオニンを潜在的可変修飾とすることができるようにした。データの探索は、全スペクトル上で0.5Daの誤差を許容し、2つまでの誤ったトリプシン切断部位を許容して較正ドリフトおよび不完全な消化を適合させて行い、全てのデータは一貫した誤差分布についてチェックした。
統計解析
ノンパラメトリック統計検定をクラスカル・ワリス検定と共に用いて、SLeレベルについて全群を比較し、続くマンホイットニー検定を個別群の比較に用いた。相関解析を、両側スペアマン検定を用いて行った。全ての例において、P<0.05を有意性のカットオフ値とした。
結果
卵巣癌患者血清中のN−グリコシル化変化の同定
N−グリカンはの同定は、定量的NPHPLCおよび、エキソグリコシダーゼ消化とデータベースマッチング(GlycoBase; URL-http://glycobase.ucd.ie/cgi-bin/public/glycobase.cgi)をマトリクス支援レーザー脱離/イオン化時間飛行型(MALDI−TOF)および陰イオンナノエレクトロスプレー質量分析と組み合わせて用いる構造配置により、前に記載のようにして(Harvey, D.J. (2005a) J Am Soc Mass Spectrom, 16, 622-630;Harvey, D.J. (2005b) J Am Soc Mass Spectrom, 16, 631-646;Harvey, D.J. (2005c) J Am Soc Mass Spectrom, 16, 647-659;Royle L et al. (2008) Analytical Biochem, 376, 1-12)行った。3人の卵巣癌患者におけるN−結合型グリコシル化変化を予備試験で解析して、特異的グリカン構造を同定したが、そのレベルは患者試料において変化している。これら血清からの結果を、健康対照プールからのもの(性別および年齢を適合させた5つの正常な血清試料)と比較した。
3人の患者からの全血清グリカンを、WAXHPLC上で電荷に従って分画し、各画分を続いてNPHPLCにより解析し、これを、ステージIII卵巣癌患者(B)および対照試料からのプロファイルにより表した(図14)。シリアル化グリカンの相対量は、WAXHPLCから計算した(表3)。
これらのデータから、患者試料からのモノシアリル化グリカンのレベルは、対照プールのそれらのおよそ半分であり、一方、トリおよびテトラシアリル化グリカンのレベルは増加(約2倍)した。ジシアリル化グリカンの相対量には有意な変化はなかった。画分におけるグリカン構造は、エキソグリコシダーゼ消化、NPHPLCおよびMALDI MSを用いて確認した。WAX画分および全血清からの各グリカンの面積パーセンテージは、WAX画分のNPHPLCクロマトグラムに同定されたグリカン、およびそれらのレベルをまとめた表4に示されている。
血清N−結合型グリカンの中性画分において:コアフコシル化二分岐グリカン(FA2)は、患者において10.8%から27.0(±4.7)%に増加し;ManGlcNAc(M8)は、癌において5.7%から3.7(±0.4)%に減少し;一方、ManGlcNAc(M9)とテトラガラクトシル化四分岐構造(A4G4)の両方を含むピークは、6.1%から8.4(±1.1)%に増加した。
モノシアリル化N−結合型グリカン画分において、癌試料においてフコシル化の減少が存在する。バイセクト有りまたは無しのコアフコシル化ジガラクトシル化モノシアリル化構造(B)、FA2G2S1およびFA2BG2S1は、18.0%から13.8(±2.4)%に(およびそれぞれ16.4%から9.1%(±1.4)%に)減少し、一方、ステージIIIにおいて、ジガラクトシル化モノシアリル化構造(A2G2S1)は、34.4%から42.8(±4.1)%に増加した。
ジシアリル化画分において、α2,3シアル酸レベルは、α2,6シアル酸レベルと比較して、ステージIII卵巣癌において対照よりもわずかにのみ低かった。表4は、A2G2S(6,6)2は、59.0%から62.2(±1.3)%に増加したが、A2G2S(3,6)2は、37.6%から35.2(±1.0)%に減少し、A2G2S(3,3)2は、3.4%から2.6(±0.3)%に減少したことを示す。これらの構造は、α2,3結合のみを消化するNAN1シアリダーゼにより確認された。
トリシアリル化画分は、癌において外部アームフコシル化の増加を示した。SLe含有三分岐グリカン(A3F1G3S3)は、ステージIII卵巣癌において、46.1%から60.4(±3.5)%に増加し、一方トリシアリル化非フコシル化グリカン(A3G3S3)は、39.6%から23.6(±8.8)%に減少する。
全体として、癌血清グリカンと健康対照グリカンとの間の最も大きな差は、非分画全血清グリカンプールにおいても明確に観察されるように、A3FG1レベル(6.5%から14.8(±2.1)%へ)、およびFA2レベル(1.9%から3.4(±0.8)%へ)の2倍の増加である。
SLe、FA2およびCA125のレベルについてのさらに拡張された試験を、健康対照、および良性婦人科的状態、境界型卵巣腫瘍、卵巣癌、原発性腹膜癌腫、卵巣に転移した子宮内膜癌および他の婦人科の癌の患者からの、90例の血清試料について行った(図15)。遊離されたグリカンは、シアリダーゼおよびβ1−4ガラクトシダーゼで消化されて、構造A3F1G1を与える。この消化は、SLe含有構造を、低いGU値のピークへと消化される任意の他のものから分離し、統合のための明確に分離されたピークを残して、全グリカンの正確なパーセンテージを与える。
SLeの解析は、健康対照と比べて、卵巣癌患者において有意に増加したレベルのみを示す(p<0.01)が、ただし対照試料の数は少なく(n=7)、年齢範囲もやや若い(表5参照)。しかし、対照と比較した、他の癌または卵巣に転移した癌を有する患者との間の差は、より著しい(p<0.002)。さらに、良性の婦人科的状態を有する患者もまた、かなり重なりあうレベルを示しており、癌患者からのものと有意には異ならない。これは、CA125の結果とは対照的であり、CA125は卵巣癌群に対してより良好な特異性を示す。
FA2の解析は、卵巣癌患者において、健康対照(p<0.022)および良性婦人科的状態(p<0.0054)と比べて有意な増加を明らかに示す。卵巣癌の患者の、他の婦人科の癌患者との差は有意ではなかった。FA2の解析をSLeと組み合わせると、卵巣癌患者における、健康対照(p<0.016)および良性婦人科的状態(p<0.0016)と比べたさらに有意な増加を明らかに示す。しかし、卵巣癌患者と他の婦人科の癌患者との差は有意ではなかった。これは、これら2つのマーカーの組合せが、卵巣癌の診断を改善することを示唆する。
SLeの変化が、元にある炎症性変化を反映している可能性を、C反応性蛋白(CRP)濃度を全試料について比較することにより検討した(非公開のデータ)。正の相関が見出された(p<0.0023;r=0.32、Cl=0.12〜0.5)が、幾人かの患者は顕著な急性期反応を示したにも関わらず、SLeレベルの増加はなく、その逆もまた真であった。これは特に、19人中5人のみがCRP>10mg/lである「他の癌」群の患者について明らかであった。CRPとCA125の相関は、CRPとSLeの相関よりも正であった(p<0.0001;r=0.41、Cl=0.22〜0.57)。CRPとFA2の相関は有意ではなかった。
興味深いことには、悪性黒色腫試料における血清グリカンのグリコシル化は、炎症が関与しない良性試料および対照と比べても、変化が同定されなかった(図16)。全ての患者についてフィブリノーゲンレベルを決定し、その濃度は280〜370ng/mlの間であった。炎症において増加するこのタンパク質の正常値は200〜400ng/mlである。これは、これらの黒色腫患者が、低レベルの炎症プロセスを有することを確認する。
標的グリカンにより占有される糖タンパク質の同定
全血清糖タンパク質からのグリカン構造における特異的な変化を同定したので、次の目的は、どの個々の糖タンパク質がこれらのグリカンを担持するかを同定するための初めの試験を行うことであった。FA2グリカンレベルの倍増が見出された:この構造は、以前に、免疫グロブリンG(IgG)上にあることが示されている。そこでIgGを、タンパク質Gカラム上の親和性クロマトグラフィにより単離し、重鎖からN−結合型グリカンを解析した(図17および表6)。アガラクトシル化構造(G0)を含むIgG(ほぼFA2により表わされる)は2倍となった(27.1%から53.2(±3.3)%へ増加);モノガラクトシル化(G1)は減少した(33.2%から27.1(±5.3)%);ジガラクトシル化(G2)構造は減少した(22.3%から8.5(±1.9)%);全体のシアリル化は減少した(17.5%から11.2(±6.6)%)(表6)。全ての構造は、エキソグリコシダーゼ消化により確認した(Parekh, R. B. et al. (1985) Nature, 316, 452-457)。
ハプトグロビンβ鎖は、癌において異常にグリコシル化することが前に示されている。血清プロテオームを試験して、これらおよび他の糖タンパク質がグリコシル化変化を示すかどうかを検討した。2D SDS−PAGEを用いて、卵巣癌血清タンパク質を分離し、次にこれらのタンパク質スポットを切り取って、可能なグリコシル化変化について、各個別スポットのグリカン解析によりスクリーニングした。
図18は、ステージIII卵巣癌患者(B)からの全血清の2D電気泳動を示す。N−グリカンはこれらの個別スポットから放出され、質量分析を用いて同定されて(表7)、ハプトグロビンβ鎖糖型(He Z. et al. (2006) Biochem Biophys Res Commun, 343, 496-503)、α1−酸性糖タンパク質およびα1−抗キモトリプシンであった。
ハプトグロビンβ鎖、α1−酸性糖タンパク質およびα1−抗キモトリプシンの場合に、主要なグリコシル化変化が同定された(図19、図20)。ハプトグロビンは、スポット1〜6の系統中において最高タンパク価で同定されたが、ただし、スポット1の補体C3を除く(表7)。しかし、補体C3のN−結合型グリコシル化はマンノース構造からなることが知られており、したがってこれらスポット全てに渡り検出された複合グリカンはハプトグロビンに由来し、ただし、C3の共遊走を反映する微量のマンノースも検出された。α1−抗キモトリプシンは、スポット8において最高タンパク価で同定され、しかしながらα1−抗トリプシンもこのスポットに見出されおり、ただしより低いスコアで同定され(表7)、α1−抗キモトリプシン上にグリカンは強調表示されなかった(非公開のデータ)。したがってこれも、α1−抗キモトリプシン上に記載されたグリカンの変化したレベルに干渉するものではない(図20)。
図19は、対照およびステージIII卵巣癌患者Bにおける、2Dミニゲルの系統中の1つのスポットからのハプトグロビンβ鎖糖型のNPHPLCプロファイルを示し、図20は、プールされた対照、良性、悪性および転移の血清からのα1−酸性糖タンパク質2DゲルスポットのNPHPLCプロファイル、および、外部アームフコシル化構造の構造的配置のためにエキソグリコシダーゼにより消化された、1つの2Dゲルスポットから切り取られたプールされた悪性試料からの、α1−抗キモトリプシンのNPHPLCプロファイルを示す。
ハプトグロビンβ鎖、α1−酸性糖タンパク質およびα1−抗キモトリプシン上のA3F1G3S3を同定した。これらの、卵巣癌患者タンパク質における糖型の相対的特性における変化は、全血清のグリカンプロファイルの変化、特に、WAXHPLCの中性およびトリシアリル化画分の変化に寄与する。同様のプロファイル変化が、全6つのハプトグロビンβ鎖スポットにおいて、および進行卵巣癌患者において(図19)、および、プールされた卵巣癌患者の血清において、悪性および転移の血清を、良性および対照血清と比較して、観察された(非公開のデータ)。異なるスポットは、異なる糖型のサブセットを含むことが実証されている。酸性の増加にしたがって、糖型はさらにゲルの左へと遊走する(図18)。ハプトグロビンβ鎖において、A3F1G3S3のレベルはほとんどの酸性糖型で最高であり、A2G2S1は最低である(図19)。
考察
本研究の目的は、どのタンパク質が、卵巣癌患者の血清グライコームにおける変化に寄与しているかを同定すること、および血清タンパク質のグリカンの変化が、卵巣癌のマーカーとして有用性を有する可能性があるかどうかを決定することであった。全血清N−グリカンを、定量的および詳細に順相(NP)HPLC、弱陰イオン交換(WAX)HPLCおよび質量分析(MS)を用いて解析した初めのパイロット試験において、進行卵巣癌の3人の患者からの試料を、プールされた対照試料と比較した。この所見に基づき、高スループット技術を用いて、健康対照、および卵巣癌、良性婦人科的状態、または他の婦人科の癌の患者からの全90の血清試料における、A3FG1およびFA2(コアフコシル化アガラクトシル化二分岐グリカン構造)のレベルをモニタリングした。これにより、卵巣癌患者において、対照または良性状態、およびまた他の癌と比べて、発現の増加という初めの所見が確認された。蛍光染色された2D−SDS PAGEゲル上の個別のスポットから単離されたタンパク質のグリコシル化の状態を決定する技術を用いたさらなる試験により、ハプトグロビン、α1−酸性糖タンパク質、α1−抗キモトリプシンおよびまたIgGを含む、いくつかの急性期タンパク質の糖型における、主要な種々の差が見出された。
卵巣癌血清試料におけるグリカン構造の変化
進行卵巣癌患者の血清試料にいくつかのグリコシル化変化が観察された。最も重要なのは、A3FG1およびFA2レベルの増加であった。
トリシアリル化画分におけるSLeレベルの増加は、肝細胞におけるフコシルトランスフェラーゼの調節の変化を示唆する。SLe構造をもたらすためには、前駆体コア構造を最初にシアリル化し、次にα(1,3/1,4)フコシルトランスフェラーゼによりフコシル化しなければならない。SLeレベルの増加は、α1,2フコシルトランスフェラーゼの発現の減少と相関し、これは、α2,3シアリルトランスフェラーゼと同一の基質について競合し、ヒト膵癌細胞においてα(1,3/1,4)フコシルトランスフェラーゼの発現を増加させる。卵巣癌および他の婦人科の癌の異なるステージにおけるA3FG1のレベルを決定して、良性婦人科的状態と比較した。それにより、対照より高いが、これは卵巣癌に特異的ではないことが実証された。A3FG1のレベルの増加はまた、膵炎および敗血症の炎症状態においても見出された。
分岐およびシアリル化の両方における有意な増加が同定された。分岐の増加は、末端シアル酸残基に対してさらなる部位を作り、シアリルトランスフェラーゼの上方調節と共に、シアリル化を増加させる。これは、進行ステージ、腫瘍の進行および転移と相関する。分岐における変化およびシアリル化の増加は、前に、慢性炎症状態においても同定された。これらの変化は、ゴルジにおけるシアリルトランスフェラーゼおよびフコシルトランスフェラーゼの発現レベルにおける差を反映する。
全体的なシアリル化の増加に加えて、ジシアリル化画分におけるα2,3からα2,6へのシアル酸結合のシフトも観察された。これらの所見は、卵巣癌患者の腫瘍組織における、N−結合型グリコシル化に役割を果たすα2,3シアリルトランスフェラーゼのmRNA発現の減少、およびα2,6シアリルトランスフェラーゼの増加という、前の所見とも一致する。これは、我々がここで血清中に同定したように、腫瘍が暴露されたサイトカインが、腫瘍細胞上の糖型集合体において同様のシフトを引き起こすことを示唆する可能性がある。炎症(腫瘍)部位で分泌されたサイトカインが、血清へのそれらの経路を見出して、肝細胞のグリコシル化マシナリーに影響を及ぼし、血清糖型にシフトを生じさせることが可能である。
対照血清と比較して、卵巣癌血清における他の顕著な差は、FA2レベルの倍増である。この構造は、前に、大部分がIgGに付着することが示されている。
CA125に付着する主要なN−グリカンは、大部分が、1個を超えるシアル酸を有さない、モノフコシル化二分岐、三分岐、および四分岐バイセクト(bisected)構造であることが記載されている。CA125グリカンを我々の主要なグリカンのレベル変化と比較し、我々は、CA125のレベルの増加は、全血清グリカンにおける主要な変化に寄与しないことを提唱する。グリコシル化変化は、血清の特定の糖タンパク質の特異的な糖型に関連する可能性がある。CA125も慢性膵炎において増加するが、敗血症では増加しない。
興味深いことには、炎症が関与しない、試験した悪性黒色腫試料においては、血清グリカンのグリコシル化の変化は観察されなかった(図16)。
レベル変化したグリカンを含む血清糖タンパク質の同定
急性期反応
感染症、外傷、手術、火傷または炎症状態で生じる急性期反応は、IL−6などの炎症性サイトカインの放出の増加の結果、急性期タンパク質の血漿濃度に顕著な変化をもたらし、TNFはC反応性蛋白、血清アミロイドA、ハプトグロビン、α1−酸性糖タンパク質、α1−抗トリプシン、α1−抗キモトリプシンおよびフィブリノーゲン(陽性急性期タンパク質)を刺激し、同時に、アルブミンおよびトランスフェリン(陰性急性期タンパク質)のレベルは減少する。パイロット試験において感受性の高い定量的技術を用いて、ハプトグロビン、α1−酸性糖タンパク質、およびα1−抗キモトリプシンでのグリコシル化変化を、進行卵巣癌患者の血清において同定した。
血漿での陽性急性期タンパク質の増加はグリコシル化の変化に相関する
ハプトグロビンは血漿中に分泌される肝臓タンパク質であり、血漿中で遊離のヘモグロビンに結合して、これを分解系酵素がアクセスできるようにする。ハプトグロビンβ鎖の発現は卵巣癌で増加し、化学療法により減少し、CA125のレベルと相関する。タンパク質レベルにおけるこの増加は、血清グライコームの幾つかの変化を説明し得る。しかし、2Dゲル解析からの結果(図19)は、ハプトグロビンβ鎖上のSLe構造における増加も示す。これは、Thompson et al.による、腫瘍サイズと共に増加するハプトグロビンのフコース含量の増加を同定した結果と整合する。SLe構造は、α1−酸性糖タンパク質およびα1−抗キモトリプシン上でも増加することが見出されている(図20)。これらは両方とも肝臓により産生され、血漿に分泌される。SLeはまた、これらタンパク質の全てで炎症中に発現される。α1−酸性糖タンパク質は、急性期反応の間、免疫応答を調節する。その合成は、グルココルチコイド、インターロイキン−1(IL−1)およびIL−6により制御される。α1−抗キモトリプシンは好中球カテプシンGおよび肥満細胞キマーゼを阻害することができ、これらの両方は、アンギオテンシン−1を活性アンギオテンシン−2に変換可能である。
癌および炎症における、ハプトグロビンβ鎖、α1−抗キモトリプシン、およびα1−酸性糖タンパク質上のSLe構造のレベルの増加は、これらのグリコシル化変化が、これら急性期タンパク質濃度の増加に寄与する可能性があることを示唆する。末端シアル酸およびフコースの添加は、肝臓のアシアロ糖タンパク質受容体にアクセス可能な遊離のガラクトースの量を抑制し、したがって、それらの循環からのクリアランスを延長し、その高い濃度をもたらす。これらの糖タンパク質の濃度の増加は、その抗アポトーシスおよび抗炎症性の特性のためであるかもしれない。これらは、α1−酸性糖タンパク質およびα1−抗キモトリプシンの場合について報告されている。それらの抗アポトーシス特性は、がんの進行に有利である可能性がある。
血清におけるこれらの肝臓タンパク質のグリコシル化は、肝臓の実質細胞におけるそれらの生合成の間のグリコシル化プロセスから由来し得る;炎症性サイトカイン、コルチコステロイド、および成長因子は、これらの変化を調節するようである。興味深いことには、通常はSLe上に置かれるタンパク質のみが、このマーカーのレベルの増加を有する。SLeを発現しないタンパク質は、卵巣癌においてこれを加えず、例えばトランスフェリンである。
免疫グロブリンGでのガラクトシル化の減少はその機能に影響する
卵巣癌患者のIgG上のグリカンのN−結合型解析は、ガラクトシル化およびシアリル化のレベルに顕著な減少を示した(図17および表6)。アガラクトシルIgGオリゴ糖の増加は、血漿細胞のGal−T活性の減少、またはガラクトシルトランスフェラーゼの低い発現レベルを有する血漿細胞の特定のサブセットの産生の増加の結果であり得る。異なる糖型は、リガンドとの相互作用の効率が違い得る。IgG−G0糖型は関節リューマチ血清で増加し、例えば滑膜細胞上に集まるIgG分子のFc領域上のこの糖型の末端GlcNAcは、膠原性レクチンマンノース結合タンパク質(MBL)により認識することができ、補体活性化がもたらされる。IgGのシアリル化は、ナチュラルキラー細胞の細胞毒性を減少させ、抗炎症性効果を示す。アガラクトシルIgG糖型の増加は、胃癌および肺癌の腫瘍の進行および転移と共に(Kanoh et al. 2004)、ならびに関節リューマチ、結核、炎症性腸疾患(Parekh et al. 1985; Axford et al. 1992)および脈管炎(Holland et al. 2002)などの他の疾患において、主に同定されている。したがって、卵巣癌血清のIgG上のアガラクトシル化グリカンのこの増加は、炎症状態の指標となり得る。
結論として、新しく開発された高スループット技術により、血清のグリコシル化変化の迅速なモニタリングが可能となった。対照と進行卵巣癌の血清の間の差が記載され、これには、全血清グリカンプロファイルにおける、FA2およびSLe構造の量の倍増、およびジシアリル化画分のシアル酸結合のα2,3からα2,6へのシフトが含まれる。A3FG1のレベルのみでは卵巣癌に特異的でないが、FA2とA3FG1の組合せは、良性婦人科的状態の、卵巣癌からの識別を大幅に改善する。どのタンパク質グリカンが、全血清グリカンにおけるこれらの変化に寄与するかをさらに試験するために、これらのグリカンを担持する血清糖タンパク質を同定した。新しく開発された、高感受性のHPLCに基づく技術は、同じ患者からの総タンパク質のスクリーニングを可能にした。2Dミニゲル上の1つのスポットから切り取ったタンパク質のグリコシル化のこの解析は、増加したSLe構造を有するハプトグロビンβ鎖、α1−酸性糖タンパク質およびα1−抗キモトリプシン、および減少したガラクトシル化およびシアリル化を有するIgGを示す。SLeを有するタンパク質のみが、このエピトープの増加レベルを有する。これらのグリコシル化変化の全ては、癌が慢性炎症を模倣することを示唆する。この理論は、多くのこれらグリコシル化変化が観察された、炎症状態である敗血症および急性膵炎において記載されたグリコシル化により、また、炎症が関与しない我々の悪性黒色腫試料において、グリカンレベルの変化がないという事実により、支持される。癌は、特に遅いステージにおいて、慢性炎症を引き起こしえる。炎症は急性期反応をもたらし、ここで肝臓は、抗アポトーシス特性を有する急性期タンパク質を産生する。炎症においてこれは損傷された組織の再構築を支援するが、それ自体で考えると、癌細胞を保護し促進する。この仮説が正しければ、抗炎症薬は癌の処置に有効であるはずである。非ステロイド抗炎症薬(NSAID)は、癌の発症および進行の予防および保護の両方に、有効である。
まとめ
全試料、すなわち除去されたり精製されていない試料のグリコシル化解析を行うことは、癌の診断およびモニタリングに特に有用である。グリコシル化プロファイルにおける差は、癌患者の試料における、癌と特異的に関連する糖タンパク質、例えばα−フェトプロテインの存在と特異的に関連する可能性があるが、多くの他の腫瘍糖タンパク質、すなわち、癌の特異的炎症マーカーではない糖タンパク質は、変化したグリコシル化を担持することが予想され、何故ならば、グリコシル化経路は通常、腫瘍細胞に分布しているからである。これに基づき、全体液または体組織の試料に対して、特定の糖タンパク質を単離または精製することなく、詳細なグリコシル化解析を行うことは、精製された糖タンパク質のグリコシル化解析と比較して、増幅された、癌のグリコシル化マーカーを同定することが予想できる。
本明細書で参照された全ての文献は、参照としてここに組み込まれる。本発明の記載された態様への種々の改変および修正は、本発明の範囲から逸脱することなく、当業者には明らかである。本発明は特定の好ましい態様との関連で記載されているが、クレームされた本発明はかかる特定の態様に特に限定されないことが、理解されるべきである。事実、本発明を実施する、記載された様式の当業者に明らかな種々の改変は、本発明に包含されることが意図される。

Claims (26)

  1. 対象における、癌性および/または悪性状態の診断、癌性および/または悪性状態の予後診断、および/または癌の処置への応答のモニタリングのための方法であって、ステップ:
    −対象からの試験試料を供給すること、
    −試験試料中の癌性および/または悪性状態についての2種または3種以上のグリコシル化マーカーのレベルを決定すること、
    −前記2種または3種以上のグリコシル化マーカーのレベルに基づいて、診断、予後診断、または応答の決定を提供すること、
    を含む、前記方法。
  2. 癌性および/または悪性状態についての2種、3種、4種、5種、6種、7種、8種、9種または10種のグリコシル化マーカーのレベルを決定する、請求項1に記載の方法。
  3. 対象における、癌性および/または悪性状態の診断、癌性および/または悪性状態の予後診断、および/または癌の処置への応答のモニタリングのための方法であって、ステップ:
    −対象からの試験試料を供給すること、
    −試験試料中の癌性および/または悪性状態についての1種または2種以上のグリコシル化マーカーのレベル、および癌性および/または悪性状態についての1種または2種以上の非グリコシル化マーカーのレベルを決定すること、および
    −前記1種または2種以上のグリコシル化マーカーのレベルおよび1種または2種以上の非グリコシル化マーカーのレベルに基づいて、診断、予後診断、または応答の決定を提供すること、
    を含む、前記方法。
  4. 癌性および/または悪性状態についての2種、3種、4種、5種、6種、7種、8種、9種または10種のグリコシル化マーカーのレベルを決定する、請求項3に記載の方法。
  5. 癌性および/または悪性状態についての2種、3種、4種、5種、6種、7種、8種、9種または10種の非グリコシル化マーカーのレベルを決定する、請求項3または4に記載の方法。
  6. 非グリコシル化マーカーが、炎症マーカー、サイトカイン、ケモカイン、遺伝子マーカー、カテコールアミン、免疫グロブリン、血管新生のマーカーまたは同類のもの、またはこれらの任意の組合せからなる群から選択される、請求項3〜5のいずれかに記載の方法。
  7. 非グリコシル化マーカーが、α−フェトプロテイン、NMP22、癌胎児抗原(CEA)、HER−2、CA15−3、CA27−29、CA125、CA19−9、およびC反応性蛋白(CRP)、IL−4、IL−10、IL−1α、およびIL−1β、MCP−1または同類のもの、またはこれらの任意の組合せからなる群から選択される、請求項3〜5のいずれかに記載の方法。
  8. 対象における、癌性および/または悪性状態の診断、癌性および/または悪性状態の予後診断、および/または癌の処置への応答のモニタリングのための方法であって、ステップ:
    −対象からの試験試料を供給すること、
    −GU値が10.65より高いグリカン、SLe構造、SLeの消化由来A2FG1、SLeの消化由来A3FG1、SLeの消化由来A4FG1、シアリル化三分岐グリカン、シアリル化四分岐グリカン、α1,3フコース含有グリカン、α1,3モノフコシル化三分岐グリカン、α1,3ジフコシル化三分岐グリカン、α1,3モノフコシル化四分岐グリカン、α1,3ジフコシル化四分岐グリカン、ラクトサミン延長を有する四分岐グリカン、α2,3シアリル化グリカンのα2,6シアリル化グリカンに対する比率、アガラクトシル化フコシル化二分岐グリカン、コアフコシル化アガラクトシル化二分岐グリカン、トランスフェリン上のコアフコシル化モノシアリル化グリカン、ハプトグロビンβ鎖上のグリカン上のSLe、ハプトグロビンβ鎖上のグリカン上のSLeの消化由来A3FG1、ハプトグロビンβ鎖上のグリカン上のSLeの消化由来A4FG1、α1−酸性糖タンパク質上のグリカン上のSLe、α1−酸性糖タンパク質上のグリカン上のSLeの消化由来A3FG1、α1−抗キモトリプシン上のグリカン上のSLe、α1−抗キモトリプシン上のグリカン上のSLeの消化由来A3FG1、α1−抗トリプシン上の四分岐テトラガラクトシル化グリカン、IgG上のコアフコシル化アガラクトシル化二分岐グリカン、IgG上のアガラクトシル化グリカン、IgG上のグリカンのシアリル化、IgG上のグリカンのガラクトシル化、トランスフェリン上のグリカン上のFA2G2S1、トランスフェリン上のグリカン上のFA2BG2S1、およびα1−抗トリプシン上のグリカン上のA4G4、または同類のもの、またはこれらの任意の組合せを含む群から選択される、少なくとも1種のマーカーのレベルを決定すること、および
    −前記少なくとも1種のマーカーの決定されたレベルに基づいて、診断、予後診断、または応答の決定を提供すること、
    を含む、前記方法。
  9. グリコシル化マーカーが、グリカン分岐の変化;オリゴマンノース、ハイブリッドおよび複合型N−グリカン、O−グリカン、またはこれらの成分の、レベルの変化;グリカン間のレベルの比率の変化、GU値の変化;または同類のもの;またはこれらの任意の組合せからなる群から選択される、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
  10. グリコシル化マーカーが、GU値が10.65より高いグリカン、SLe構造、SLeの消化由来A2FG1、SLeの消化由来A3FG1、SLeの消化由来A4FG1、シアリル化三分岐グリカン、シアリル化四分岐グリカン、α1,3フコース含有グリカン、α1,3モノフコシル化三分岐グリカン、α1,3ジフコシル化三分岐グリカン、α1,3モノフコシル化四分岐グリカン、α1,3ジフコシル化四分岐グリカン、ラクトサミン延長を有する四分岐グリカン、α2,3シアリル化グリカンのα2,6シアリル化グリカンに対する比率、アガラクトシル化フコシル化二分岐グリカン、コアフコシル化アガラクトシル化二分岐グリカン、トランスフェリン上のコアフコシル化モノシアリル化グリカン、ハプトグロビンβ鎖上のグリカン上のSLe、ハプトグロビンβ鎖上のグリカン上のSLeの消化由来A3FG1、ハプトグロビンβ鎖上のグリカン上のSLeの消化由来A4FG1、α1−酸性糖タンパク質上のグリカン上のSLe、α1−酸性糖タンパク質上のグリカン上のSLeの消化由来A3FG1、α1−抗キモトリプシン上のグリカン上のSLe、α1−抗キモトリプシン上のグリカン上のSLeの消化由来A3FG1、α1−抗トリプシン上の四分岐テトラガラクトシル化グリカン、IgG上のコアフコシル化アガラクトシル化二分岐グリカン、IgG上のアガラクトシル化グリカン、IgG上のグリカンのシアリル化、IgG上のグリカンのガラクトシル化、トランスフェリン上のグリカン上のFA2G2S1、トランスフェリン上のグリカン上のFA2BG2S1、およびα1−抗トリプシン上のグリカン上のA4G4、または同類のもの、またはこれらの任意の組合せからなる群から選択される、請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
  11. 方法が、グリコシル化マーカーの以下の群:S3およびS4、フコース、GUが10.65の三および四分岐グリカン;A3FG1およびFA2;SLeおよびフコシル化アガラクトシル化二分岐グリカン;または同類のもの;またはこれらの任意の組合せ;の1つの、全要素の解析を含む、請求項1〜10のいずれかに記載の方法。
  12. 方法が、マーカーの以下の群:CRPおよび、任意のグリコシル化マーカーの任意の1種、2種、3種、4種、5種、6種、または7種以上;CRPおよび、グリコシル化マーカーであるS3およびS4、フコース、10.65のGU、三および四分岐グリカンの任意の1種、2種または3種;S3およびS4、フコース、10.65のGU、三および四分岐グリカン、およびCRP;フコシル化アガラクトシル化二分岐グリカンおよびCRP;1種または2種以上の炎症誘発性サイトカインおよび1種または2種以上のグリコシル化マーカー;1種または2種以上の抗炎症性サイトカインおよび1種または2種以上のグリコシル化マーカー;1種または2種以上のケモカインおよび1種または2種以上のグリコシル化マーカー;または同類のもの;またはこれらの任意の組合せ;の1つの、全要素の解析を含む、請求項3〜7のいずれかに記載の方法。
  13. 対象がヒトである、請求項1〜12のいずれかに記載の方法。
  14. 試験試料が体液または生体組織を含む、請求項1〜13のいずれかに記載の方法。
  15. 体液が、血清、血漿、または尿を含む、請求項14に記載の方法。
  16. 試験試料中の1種または2種以上のマーカーレベルを、対照試料中の1種または2種以上のマーカーレベルと比較して、診断、予後診断、および/または応答を決定することを含む、請求項1〜15のいずれかに記載の方法。
  17. 試験試料中の1種または2種以上のマーカーレベルの、対照試料と比較した増加が、癌の存在を示す、請求項1〜16のいずれかに記載の方法。
  18. 試験試料中の1種または2種以上のマーカーレベルを決定することが、試験試料中の1種または2種以上の急性期タンパク質上の1種または2種以上のマーカーレベルの決定を含む、請求項1〜17のいずれかに記載の方法。
  19. 1種または2種以上の急性期タンパク質が、血清アミロイドA、ハプトグロビン、α1−酸性糖タンパク質、α1−抗トリプシン、α1−抗キモトリプシン、フィブリノーゲンおよびトランスフェリンからなる群から選択される、請求項18に記載の方法。
  20. 方法が、試験試料中の1種または2種以上の急性期タンパク質を単離した後、1種または2種以上の急性期タンパク質上の1種または2種以上のマーカーレベルを決定することを含む、請求項18または19に記載の方法。
  21. 試験試料中の1種または2種以上のマーカーのレベルを決定することが、試験試料中の総糖タンパク質からグリカンのプールを遊離すること、およびグリカンのプールから1種または2種以上のマーカーのレベルを決定することを含む、請求項1〜20のいずれかに記載の方法。
  22. 試験試料中の1種または2種以上のマーカーのレベルを決定することが、試料またはその派生物もしくは成分についてクロマトグラフィを実施することを含む、請求項1〜21のいずれかに記載の方法。
  23. 試験試料中の1種または2種以上のマーカーのレベルを決定することが、試料またはその派生物もしくは成分について、質量分析、免疫PCR,二次元ゲル電気泳動、ELISA、レクチンELISA、ウェスタンブロット、免疫学的検定、レクチン免疫学的検定、または1次元ゲル電気泳動を実施することを含む、請求項1〜22のいずれかに記載の方法。
  24. 対象の炎症状態を評価するための方法であって、ステップ:
    −対象からの試験試料を供給すること、
    −試験試料中の慢性炎症についての2種または3種以上のグリコシル化マーカーのレベルを決定すること、
    −前記2種または3種以上のグリコシル化マーカーのレベルに基づいて、評価を提供すること、
    を含む、前記方法。
  25. 対象の炎症状態を評価するための方法であって、ステップ:
    −対象からの試験試料を供給すること、
    −試験試料中の慢性炎症についての1種または2種以上のグリコシル化マーカーのレベル、および慢性炎症についての1種または2種以上の非グリコシル化マーカーのレベルを決定すること、
    −前記1種または2種以上のグリコシル化マーカーのレベルおよび1種または2種以上の非グリコシル化マーカーのレベルに基づいて、評価を提供すること、
    を含む、前記方法。
  26. 対象の炎症状態を評価するための方法であって、ステップ:
    −対象からの試験試料を供給すること、
    −GU値が10.65より高いグリカン、SLe構造、SLeの消化由来A2FG1、SLeの消化由来A3FG1、SLeの消化由来A4FG1、シアリル化三分岐グリカン、シアリル化四分岐グリカン、α1,3フコース含有グリカン、α1,3モノフコシル化三分岐グリカン、α1,3ジフコシル化三分岐グリカン、α1,3モノフコシル化四分岐グリカン、α1,3ジフコシル化四分岐グリカン、ラクトサミン延長を有する四分岐グリカン、α2,3シアリル化グリカンのα2,6シアリル化グリカンに対する比率、アガラクトシル化フコシル化二分岐グリカン、コアフコシル化アガラクトシル化二分岐グリカン、トランスフェリン上のコアフコシル化モノシアリル化グリカン、ハプトグロビンβ鎖上のグリカン上のSLe、ハプトグロビンβ鎖上のグリカン上のSLeの消化由来A3FG1、ハプトグロビンβ鎖上のグリカン上のSLeの消化由来A4FG1、α1−酸性糖タンパク質上のグリカン上のSLe、α1−酸性糖タンパク質上のグリカン上のSLeの消化由来A3FG1、α1−抗キモトリプシン上のグリカン上のSLe、α1−抗キモトリプシン上のグリカン上のSLeの消化由来A3FG1、α1−抗トリプシン上の四分岐テトラガラクトシル化グリカン、IgG上のコアフコシル化アガラクトシル化二分岐グリカン、IgG上のアガラクトシル化グリカン、IgG上のグリカンのシアリル化、IgG上のグリカンのガラクトシル化、トランスフェリン上のグリカン上のFA2G2S1、トランスフェリン上のグリカン上のFA2BG2S1、およびα1−抗トリプシン上のグリカン上のA4G4、または同類のもの、またはこれらの任意の組合せを含む群から選択される、少なくとも1種のマーカーのレベルを決定すること、および
    −前記少なくとも1種のマーカーの決定されたレベルに基づいて、評価を提供すること、
    を含む、前記方法。
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