JP2010517545A - 一塩基変異多型(snp)を判別する方法 - Google Patents

一塩基変異多型(snp)を判別する方法 Download PDF

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Abstract

本発明は、改良された感度及び特異性を与える一塩基変異多型(SNP)を判別する方法を提供する。また、本発明はテストキットに関する。
したがって、本発明は、生物試料に適用されるタイピング・アッセイにおける遺伝子型決定の方法であって、前記試料が興味がある1つの核酸標的を含んでおり、前記標的核酸が単一のヌクレオチド多型(SNP)を含みやすく、
−各々のプローブが野生型及び少なくとも一つのあり得る突然変異の両方のSNP位置でリアルタイム検出を可能にする少なくとも2本の異なる標識化プローブの存在下で、標的のリアルタイム増幅を実行すること及びアンプリコンの多数のコピーを作成すること
−2つの検出プローブの組合せことのシグナルに基づいて判別変数値を評価すること、及び
−遺伝子型を判別する工程を含む方法である。
本発明は、特に診断、予防及び治療への適用に有用である。

Description

本発明は、改良された感度及び特異性を与える一塩基変異多型を判別する方法を提供する。
一塩基変異多型(SNP)は単一塩基変化又は点突然変異であるが、いわゆる「インデル(indel)」突然変異(ヌクレオチドの挿入又は欠失)も含み、個体間の遺伝的多様性を生じる。SNPは、ヒトの全遺伝的多様性の約90%を構成し、30億塩基のヒトゲノムに沿って、100から300塩基ごとに生じる。しかしながら、SNPはウイルスのような他の生物で非常により高頻度に生じ得る。SNPはゲノムのコード領域または非コード領域で生じ得る。コード領域のSNPは、タンパク質産物のアミノ酸配列を変更してもよく、又は変更しなくてもよい。非コード領域のSNPはプロモーター又はプロセシング部位を変え得るし、遺伝子の転写及び/又はプロセシングに影響を及ぼす可能性がある。個体が興味のあるゲノム領域に特定のSNPを有するかどうかの知見は、さまざまな疾患の診断、予防及び治療への適用を開発するために十分な情報を提供する。
SNPを遺伝子型決定する方法はたくさんある。SNP遺伝子型決定方法の重要な条件は、対立遺伝子間に多型が存在することをはっきりと見分けることである。ヒトは2倍体であるので、2対立遺伝子のSNPの場合は3つの遺伝子型があり得る:患者はホモ接合野生型配列、ホモ接合突然変異配列、又はヘテロ接合配列を有する。これらの方法の大多数は、分子レベルのメカニズムに基づいて4つのグループに分けることができる:対立遺伝子特異的ハイブリダイゼーション、対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチド・ライゲーション、プライマー伸長、シークエンシング。
最近になって、リアルタイムPCRの出現により、FRETプローブの融解曲線解析及びTaqMan(登録商標)アッセイとしても知られる5’蛍光ヌクレアーゼ・アッセイなどのSNP検出の均一系方法の開発が可能になった。これらの方法はシグナル増幅及び対立遺伝子検出が単一の閉じたチューブ中で達成できるので、魅力的である。それらは、蛍光対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチド(ASO)プローブを使用し、通常、統合蛍光光度計を含むリアルタイム・サーモサイクラーで実施される。これらの方法は、適切なプローブデザイン及びバッファー組成、及びPCRサイクル条件の調節が必要である。従って、これらのサイクル条件では、最適化される最も重要な変数の一つは、一本鎖DNAへのプライマーの結合を可能にする温度であるアニーリング温度(T)である。低いTは非特異的PCR産物の合成を生じる可能性があり、一方で高いTは所望のPCR産物の産生量を減じる可能性がある。その結果として、最適なTの使用は、ミスマッチが存在しても、標的DNAのプライマーへのクロス・ハイブリダイゼーションを回避しないが、最小限にする。PCR増幅の効率のプライマー間の差異は、正常ヌクレオチドと突然変異ヌクレオチドとを容易に判別することを可能にするには、十分に大きいものではないかもしれない。
PCRリアルタイムによりSNP検出を改良するために、蛍光モニタリングが最適化される。
FRETハイブリダイゼーション・ブローブの融解曲線解析は、ユタ大学が特許を取得した技術である(WO-A-97/46707)。
簡単な形態では、反応混合物は2つのオリゴヌクレオチド・プローブを含み、標的配列の隣接領域にハイブリダイズする。2つのプローブの隣接した3’及び5’エンドは蛍光色素により標識化される。「ドナー」により放たれる蛍光は、「アクセプター」フルオロフォアを励起し、固有な蛍光複合体を作成する。複合体は、プローブが増幅されたDNA上の隣接部位に結合した時のみに形成される。PCR増幅が完了した時点で、「融解曲線」は、アンプリコン/プローブのヘテロ二本鎖をゆっくりと加熱し、プローブとアンプリコンの解離から生じる蛍光の変化を測定することによって作成される。融解曲線解析の原理は、各々の二本鎖DNAが、独自の特異的な融解温度(Tm)(DNAの50%が一本鎖になる温度と定義される)を持つことである。従って、温度曲線は正常及び突然変異対立遺伝子で異なる。変異プローブと野生型対立遺伝子との間の単一ヌクレオチド・ミスマッチは、突然変異対立遺伝子で形成された複合体よりも低温度で、プローブを解離又は融解させる。この技術は、核酸中でSNPを確認するために使用することができるが、それにもかかわらず、実用化にはいくらか難点がある。2種の対立遺伝子間の配列の差異が非常に少ない場合には、アンプリコンのあるタイプに好ましく結合するようにデザインされたプローブは、またもう一方のアンプリコンのタイプにも結合を示す可能性が非常によくある。例えば、SNPが置換である場合には、PCR産物の融解動態は、確実に検出するにはあまりにも小さい。
融解曲線アプローチの一般的な代替手段は、加水分解(TaqMan(登録商標))プローブを使用することである。この技術は、国際出願WO-A-92/02638において開示されている。5’−エキソヌクレアーゼ・アッセイは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅された標的DNAを分析するために、FRETクエンチングを使用する。プローブは、フルオロフォアと好ましくは5’と3’末端に位置するクエンチャー部分を含むオリゴヌクレオチドである。アプローチは、変異体と正常な対立遺伝子に相補的な2つの標識化ASOプローブを使用する。2つのプローブは、異なる蛍光性レポーター色素を持つが、一般的なクエンチャー色素を共有する。損害をうけていない場合、プローブはリポーターとクエンチャー色素の近接性のために蛍光を発しない。PCRのアニーリング段階の間、2つのプローブは、標的配列、プライマー部位の下流へのハイブリダイゼーションを争う。プライマーが伸長されるにつれて、ハイブリダイズしたプローブはサーモフィルス・アクアティカス(Taq)ポリメラーゼの5’−ヌクレアーゼ活性によって続いて切断される。これは、蛍光放出の著しい増加を引き起こしているクエンチャーから、レポーター色素を分離することに結果としてなる。遺伝子型決定は、PCR増幅の後、2つのレポーター色素の蛍光強度の計測で測定される。TaqMan(登録商標)プローブがリアルタイムPCR増幅の間に消化されるので、プローブは増幅後融解曲線分析で検出できない。この典型的な5’−ヌクレアーゼ・アッセイ技術を利用して、温度独立性蛍光シグナルは、PCRプロセスの間、ハイブリダイズしたTaqManプローブのエキソヌクレアーゼ分解によって生じる。
完全にマッチしたプローブが優先して分解されて蛍光シグナルの増加が生じるので、この方法は多型標的の判別ができるようにするためにプローブの慎重なデザインを必要とする。融解曲線解析で上記したように、この技術は、アーティファクトのリスクに類似した問題を起こす。
したがって、核酸配列のSNPの測定に役立つ非常に感度が高い方法に対する要求が依然としてある。
リアルタイム増幅は、遺伝子発現またはウイルス量計測のための定量分析だけでなく、上に明らかにしたようにSNP遺伝子型決定に定性分析の開発を可能にする。これらの分野において、増幅の間に得られたデータは、オリジナルの試料の標的核酸の量を決定するために用いられる。多くの研究が定量分析を実行するために必要とされており、複数の方法が存在する。分子ビーコン検出と関連しているNASBA増幅プロセスの場合には、ウイルス量の定量化の方法がNucleic Acids Research(2002, vol. 30, No6 e26)に記載されている。この方法は、オリジナル試料のHIV−1 RNAの量を決定することを可能にする。この量の評価は、NASBAの両方の転写速度によって及びビーコンの特異的なアンプリコン/標的との会合速度によって生成される蛍光の動態に基づく。野生型RNA(WT)がキャリブレーターRNA(Q)の固定量の存在下で共増幅された場合、定量化変数は次の比率によって決定される:
1,WT WT/k1,Q Q
ここで、k1,RNA(k1,WT及びk1,Qを表す)は、分子ビーコン結合の反応速度常数であり、VRNA(VWT及びVQを表す)は、転写速度である。HIV−1アッセイの多くの研究は、この定量化変数が実際は固定されたキャリブレーターRNA濃度におけるWT RNA濃度のためのロバスト推定量であることを示している。
全ての予想に反して、本発明の発明者は、上記の定量化変数k1,WTWT/k1,QQが、定量的NASBAベースアッセイで使われているように、SNP遺伝子型決定アッセイの判別変数として、蛍光シグナル単独に基づく分類よりも非常に良好な結果で、使用できることを発見した。
したがって、本発明は生物試料に適用されるタイピングアッセイでの遺伝子型決定方法であって、前記試料は興味がある1つの核酸標的を含んでおり、前記標的核酸は一塩基変異多型(SNP)を含みやすく;前記方法が、
−各プローブが野生型及び少なくとも一つのあり得る突然変異型の両方のSNP位置でのリアルタイム検出を可能にする少なくとも2本の異なる標識化プローブの存在下で、標的のリアルタイム増幅を実行すること及びアンプリコンの多数のコピーを作成すること、
−2つの検出プローブの組合せごとのシグナルに基づいて判別変数値を評価すること、及び
−遺伝子型を判別する工程を含む方法である。
2対立遺伝子アッセイの場合には、遺伝子型の間の判別は、ホモ接合野生型またはホモ接合突然変異型からヘテロ接合突然変異型を見分けるために行われる。
下で説明するように、転写速度比率が相殺するので、判別変数値の判別力は相対会合反応速度定数(k1)に基づく。
タイピングアッセイにおいて、k1値の背後の理論は、アンプリコンの異なる種類に対するプローブの交差反応性のために、うまく設計されたキャリブレーターによる定量分析の場合よりも複雑である。したがって、2対立遺伝子のタイピングアッセイの場合、4つの結合反応速度定数が判断されなければならない:
・kWT→WT:野生型アンプリコンに結合する野生型プローブの反応速度定数を表わす、
・kWT→m:突然変異型アンプリコンに結合する野生型プローブの反応速度定数を表わす、
・km→WT:野生型アンプリコンに結合する突然変異型プローブの反応速度定数を表わす、
・km→m:突然変異型アンプリコンに結合する突然変異型プローブの反応速度定数を表わす。
プローブの特異性により、km→WTの値はkWT→WTの値よりかなり小さく、同様に、この状態はkm→mについてのkWT→mにもあてはまる。
タイピングアッセイが本来は定量的でないが、2本の蛍光カーブに由来しうる定量化変数が分類のための判別変数として使われ得る。これを説明するために、2対立遺伝子のタイピングアッセイを考慮する。ホモ接合の試料の場合には、1種類のみのアンプリコンRNAがあり、それと両方のビーコンは結合する。したがって、転写速度は、1種類のみのアンプリコンに関連する(野生型または突然変異型アンプリコン)。
野生型ホモ接合標的の増幅を考慮する場合は、野生型プローブによって生じるシグナルは、kWT→WTWT(ここで、VWTは野生型アンプリコンの転写速度)の値を評価するために用いられる。このアンプリコンが産生された唯一のものである場合は、変異プローブによって生じたシグナルはkm→WTWTの値を評価するために用いられる。従って、定量的アッセイで使用する比率k1,WTWT/k1,QQは、転写速度が相殺するので、kWT→WTWT/km→WTWTに減じられ、次にkWT→WT/km→WTに減じられる。従って、本方法の一実施形態によれば、ホモ接合野生型の場合の判別変数値の評価は、比率kWT→WT/km→WTまたはその逆数の評価によって実現される。
同様に、ホモ接合の突然変異型の遺伝子型の場合は、比率は、kWT→mm/km→mm、続いてkWT→m/km→mに減じられる。第1の比率(kWT→WT/km→WT)が第2の(kWT→m/km→m)より数値的にかなり大きいことは、明らかである。従って、本方法の一実施形態によれば、ホモ接合突然変異型の場合の判別変数値の評価は、比率kWT→m/km→mまたはその逆数の評価によって実現される。
ヘテロ接合遺伝子型の場合には、2つの異なる標的がある。増幅の開始物質がDNAである場合、両方の対立遺伝子が同一量で存在するので、増幅の後の試料のアンプリコンの濃度が同一であることは明らかである。また、標的配列の非常に小さい差異により、アンプリコンの転写速度は同一であると思われる。比率は、今度は、野生型プローブの結合性を反映して(分数の)分子が、kWT→WTとkwt→mの組合せに減じられ、突然変異型プローブの結合性を反映して、分母のkm→mとkm→WTの組合せに減じられる。2つの遺伝子が等濃度であるので、この組合せは加算であり、従って比率は(kWT→WT + kWT→m)/(km→m + km→WT)である。それゆえに、本方法の一実施形態によれば、ヘテロ接合型の場合の判別変数値の評価は、比率(kWT→WT + kWT→m)/(km→m + km→WT)またはその逆数の評価によって実現する。
当業者は、本発明の教示に基づいて、上記の本発明の比率から僅かにそれるが、それにもかかわらず機能するようなSNPの存在を評価するための比率を使用することが可能であると理解する。例えば加算の代わりに、減算、乗算または除算も考えられる。これらの比率を利用させる他のいかなる解法も、上記発明の保護の範囲に入る。
転写速度比率が相殺してプローブ結合速度だけが残るので、観察された判別変数値は、標的、プライマー及び酵素の正確な量から独立しており、酵素の活性から独立している。したがって、例えばPCRの様に、判別変数値は、NASBA以外の増幅方法を含む遺伝子型決定アッセイで有効であり得る。
本方法の一実施形態によれば、2つの検出プローブの各組合せの判別変数値の評価は、2つの検出プローブがアンプリコンに結合する反応の相対会合反応速度定数(k1)の評価によって実現する。
本方法の他の実施形態によれば、2つの検出プローブの各組合せの判別変数値の評価は、2つの検出プローブがアンプリコンから分離する反応の相対解離反応速度定数(k2)の評価によって実現する。
したがって、各検出プローブのための判別変数値の評価は、遺伝子型を決定することを可能にする。判別変数が表されるスケールは、閾値を使用して範囲に分けられることが可能であり、その値はプローブの性質に依存する。
従って、本方法の一実施形態によれば、2つのプローブシグナルの組合せに由来する判別変数が達し得る値の範囲は、閾値を使用して範囲に分けることができ、それにより各遺伝子型ごとに判別変数が達し得る値の範囲は、これらの範囲の1つに集まる。
2対立遺伝子のSNPの場合には、判別変数が達し得る値は、閾値を使用して3つの範囲に分けられる:
・ 下部範囲は以下を含む:
o第1のプローブが突然変異型を検出できて、さらに第2のプローブが野生型を検出できる場合は、ホモ接合野生型のクラスター。第1および第2のプローブは、判別変数の比率中の反応速度位置に関する。第1のプローブの反応速度は(分数の)分子であり、第2のプローブの反応速度は分母である。
o第1のプローブが野生型を検出できて、さらに第2のプローブが突然変異型を検出できる場合は、ホモ接合突然変異型のクラスター。
・ 上部範囲は以下を含む:
o第1のプローブが野生型を検出できて、さらに第2のプローブが突然変異型を検出できる場合は、ホモ接合野生型のクラスター。
o第2のプローブが突然変異型を検出できて、さらに第1のプローブが野生型を検出できる場合は、ホモ接合突然変異型のクラスター。
・ 中間範囲(下部と上部範囲の間で、オーバーラップしない範囲)は、ヘテロ接合型のクラスターを含む。
他の実施形態によれば、本発明は、2つ以上の遺伝子のカテゴリーが検出されなければならないマルチ対立遺伝子タイピング・アッセイの遺伝子型決定のための方法である。
2つのプローブを使わなければならない場合に、上に記載したものと同じ原理が適用されるが、判別値が達し得る値の範囲は3つ以上の範囲に分けられることになる。例えば、3対立遺伝子のタイピング・アッセイの場合は、1つの範囲は3つのWT対立遺伝子の結果のクラスターを含み、1つの範囲は2つの野生型と1つの突然変異型対立遺伝子を含み、1つの範囲は1つの野生型と2つの突然変異型対立遺伝子を含み、第4では3つの突然変異対立遺伝子の結果である。
3対立遺伝子のタイピング・アッセイでは、遺伝子型は、例えば、AAA、AAG、AGGとGGGであり得る。2対立遺伝子のタイピング・アッセイと同様に、判別変数は、それぞれk1,A→A/k1,G→A、(2k1,A→A+k1,A→G)/(2k1,G→A+k1,G→G)、(k1,A→A+2k1,A→G)/(k1,G→A+2k1,G→G)とk1,A→G/k1,G→Gを評価する。これは、次に4つの異なる範囲に結果として成り、2つの中間のグループが互いに最も接近する。
3つ以上のプローブを使用しなければならない場合、判別変数値は2本の蛍光カーブの各組合せに由来し得る。多次元的な分類ストラテジーが、同じ原理を使用して、使われることになる。
好ましくは、プローブは、親和性を増大する変更態様を有する一つ以上のヌクレオチドおよび/またはヌクレオチド・アナログを含む。多型部位に対するプローブの親和性が増大するので、多型に対する感度は低下する。したがって、プローブは複数のアンプリコンであって、各アンプリコンが既知の又は未知の異なるSNPを含むものを認識することができる。
同様に、プライマーの個々のいくつかのヌクレオチドが他のヌクレオチドと交換されることは、前記プライマーの特異性と前記プライマーの融解温度がそれほど変わらない限りは、考えられる。通常のヌクレオチドA、G、CとTは別に、イノシン、2’−O−メチルなどのような修飾ヌクレオチドもまた、プライマーとプローブに適用される得ることは、当業者に明らかである。他の実施例は、5−メチルデオキシシチジン、5−ジメチルアミノデオキシウリジン、デオキシウリジン、2,6−ジアミノプリン、5−ブロムデオキシウリジンのような修飾塩基またはハイブリダイゼーションを可能にする他の任意の修飾塩基を含む少なくとも一つのヌクレオチドである。付加的な修飾ヌクレオチドは、米国特許番号第5405950号と5633364号(両方とも、Mock及びLovern)に記載されている。本発明の教示は、請求項の対象に基づいて、このような修飾を可能にする。
方法の一実施形態によれば、増幅は、試料に一対のプライマー、SNP位置の両側にあるフォワード及びリバースプライマーを接触させることによって実行される。NASBA方法が実施される場合は、SNP位置の下流にあるフォワードプライマーと上流にあるリバースプライマーである。PCR増幅が実施される場合には、SNP位置の下流にあるフォワードプライマーと上流にあるリバースプライマーである。
本方法の他の実施形態によれば、リアルタイム増幅は、試料に、一対のプライマーと同時に少なくとも2本の標識プローブを接触させることによって実施される。
本方法の任意の実施形態によれば、各プローブによりアンプリコン上へハイブリダイゼーション、前記SNP位置を含むプローブ−アンプリコン・ハイブリッドによって、リアルタイム検出が可能である。
また、方法の他の実施例によれば、各プローブは、識別可能なシグナルを提供する標識によって、且つ少なくとも一つのヌクレオチドにより異なる配列によって、互いに異なる。
プローブ配列は、野生型標的に又は1つのあり得る突然変異に対応する。
本方法の特定の実施形態において、プローブは分子ビーコンにより構成される。
本方法の特定の実施形態において、標的核酸はDNAである。
また、本方法の特定の実施形態において、増幅反応は、転写ベースの増幅方法、好ましくはNASBA方法である。
NASBA方法は、欧州特許番号EP-B-0329822に記載されている。この方法はRNAの増幅を可能にするが、それは欧州特許出願EP-A-1366179に記載のような、二本鎖の核酸を増幅するために使用され得る。PCRに関するこれらの方法の主要な利点は、等温で実施されるということである。
本発明の別の目的は、生物試料に適用されるSNPタイピング・アッセイにおいて遺伝子型の検出のためのテストキットであって:
−一組のオリゴヌクレオチド・プライマー、
−増幅された核酸配列の少なくとも一部分に対して実質的に相補的な核酸配列を含む少なくとも2つのオリゴヌクレオチド・プローブであって、1つのプローブが野生型の同定のために設けられており、他のプローブが突然変異型の同定のために設けられており、各プローブは検出可能な標識と共に提供され、互いに異なる、少なくとも2つのオリゴヌクレオチド・プローブ、及び
−適切な増幅試薬
を含むキット。
キットの特定の実施形態において、フォワードプライマーと呼ばれるオリゴヌクレオチド・プライマーのうちの少なくとも1つは、RNAポリメラーゼプロモーター、好ましくはT7 RNAポリメラーゼと関連する。
キットの特定の実施形態において、それは、フォワードプライマーとリバースプライマーを使用して増幅される核酸の領域にハイブリダイズすることができる核酸配列を含むオリゴヌクレオチド・プローブから更に成る。
最終的に、本発明は、適切な増幅試薬は転写ベースの増幅方法、好ましくはNASBA方法を可能にする。
(定義)
本発明では、「対立遺伝子」なる用語は、所与の遺伝子又はDNA断片の1又は複数の代替的形態の何れかを指し、所与の遺伝子又はDNA断片の両方又は全ての対立遺伝子は、同じ形質または特徴に関係するが、特定の対立遺伝子によってコードされる産生物または機能は、当該遺伝子又はDNA断片の他の対立遺伝子によってコードされるものと、質的に及び/又は量的に異なる。
したがって、「マルチ対立遺伝子の」なる用語は、複数の対立遺伝子の存在下により特徴づけられる多型的遺伝子座に関連する。「2対立遺伝子の」なる用語は、2つの異なる対立遺伝子によって特徴づけられる多型的遺伝子座に関連する。したがって、2対立遺伝子のSNPは、マルチ対立遺伝子のSNPである。
「遺伝子型」なる用語は、本願明細書において使用する場合、個体または試料に存在する対立遺伝子の同一性に関連する。通常は、1つは興味がある特定の遺伝子に関する個体の遺伝子型に関連し、倍数体の個体では、それは個体が有する対立遺伝子がどんな組合せであるかについて関連する。
「遺伝子型決定」なる用語は、多型的遺伝子座で特定の対立遺伝子または特定のヌクレオチドを決定することを含む。
「核酸(NA)」により、DNA及びRNAの両方、任意の可能な構造での両方、すなわち、二本鎖(ds)の核酸の形の、または一本鎖(ss)の核酸の形態、またはそれらの組合せ(部分的に、dsまたはss)が意味される。この種の核酸は、場合により少なくとも一つの修飾ヌクレオチドを含む、少なくとも2つのデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドの連続に対応する。
また、このポリヌクレオチドは、ヌクレオチド間の結合のレベルで、例えばホスホロチオネート、H−ホスホネート、アルキル・ホスホネートで修飾されてもよく、背骨のレベルで、例えばアルファ−オリゴヌクレオチド(FR-A-2607507)またはPNAs(M. Egholm等, J. Am. Chem. Soc., 114, 1895-1897, 1992)または2’−O−アルキルリボースで修飾されてもよい。少なくとも一つのホスフェートが核酸に存在する限り、各々のこれらの修飾は組合せられてもよい。核酸は、天然又は合成、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、核酸断片、リボソームRNA、メッセンジャーRNA、トランスファーRNA、例えば以下のような酵素増幅技術によって得られた核酸であってもよい:
− 米国特許第4683195号、米国特許第4683202号及び米国特許第4800159号に記載されているPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)、およびそのRT−PCR(逆転写PCR)誘導体、特に欧州特許EP-B-0569272に記載されているワンステップ形式、
− 特許出願WO-A-90/01069に記載されているRCR(修復連鎖反応)、
− 特許出願WO-A-90/06995の3SR(自家持続配列複製法)、
− 特許出願WO-A-91/02818のNASBA(核酸配列ベース増幅法)、及び
− U.S.のTMA(転写介在増幅法)。
このような「核酸」は、プライマーとプローブとして使用されてもよい。
「プライマー」なる用語は、本願明細書において使用する場合、天然に存在するか(例えば、制限断片として)または合成により産生されるオリゴヌクレオチドを指し、それは、ヌクレオチド及び核酸ポリメリゼーション(例えばDNA依存性またはRNA依存性ポリメラーゼ)のための薬剤及び適切な条件(例えばバッファー、塩、温度とpH)の下に置かれた場合には、核酸ストランド(テンプレートまたは標的配列)に相補的であるプライマー伸長生成物の合成の開始の位置として動くことができる。通常、プライマーセットは少なくとも2つのプライマー、1つの「上流の」プライマーと1つの「下流の」プライマーから成り、それは一緒にアンプリコン(前記プライマーを使用して増幅される配列)を決める。
「標的配列」は、検出される核酸分子の一部として定義される。それはプライマー及び増幅関連酵素により、増幅される。増幅は「アンプリコン」の形成につながり、それはプローブへのハイブリダイゼーションによって物理的に検出される核酸分子である。
「プローブ」なる用語は、本明細書で使用する場合、アンプリコンにハイブリダイズするヌクレオチドの範囲を含むことを意図する。好ましくは、ハイブリダイズする部分は10−50ヌクレオチド、より好ましくは、15−35ヌクレオチド、最も好ましくは15−30ヌクレオチドの範囲である。本発明のプローブは、好ましくは、いわゆる分子ビーコン(MB)である。分子ビーコンと呼ばれるオリゴヌクレオチド・プローブのクラスであって、特異的な核酸標的配列の均一な検出を容易にするものは、記載されている。(Piatek等(1998)Nature Biotechnology 16:359-363; Tyagi及びKramer (1996) Nature Biotechnology 14:303-308)。分子ビーコンは、ステム−ループ構造を有する一本鎖オリゴヌクレオチドである。ループ部は、アンプリコン(DNA又はRNA)に、相補的な配列を含む。ステムは、相補配列の3’末端と5’末端のハイブリダイゼーションにより形成される。ステムはアンプリコンに関係しないことがあり、二本鎖である。ステムの1つのアームは蛍光色素(フルオロフォア)で標識され、さらに他の一つはクエンチング部分と結合する。ステム−ループ状態では、フルオロフォアのエネルギーはクエンチング分子へ移されるので、プローブは蛍光を生じない。分子ビーコンがアンプリコンにハイブリダイズした時には、ステム−ループ構造は失われ、クエンチャーとフルオロフォアは分離される。その段階で、フルオロフォアに放出される蛍光は、検出及び定量化され得る。
「判別変数」なる用語は、2つのプローブの観察された反応に由来し得る反応変数であり、最終的な分類のために使用され得る反応変数を意味する。また、「判別変数」なる用語は、蛍光カーブに由来し得る「定量化変数」と呼ぶことができる。
本発明は、添付の図面を参照して、実施例により、さらに記載される:
図1は、最高水準の技術に従って得られた結果を表す。2つの分子ビーコン・シグナルについて観察された蛍光シグナル増加は、十分な判別につながらない。凡例:A、AA遺伝子型;G、GG遺伝子型;H、ヘテロ接合遺伝子型GA。 図2は、本発明による技術によって得られた結果を表す。定量化変数値は、図1から蛍光比率の比率に対する対数尺度の縦軸にプロットされる。グループの間で要求される判別が達成される唯一の方法は、縦軸にプロットされる定量化変数値に基づく。凡例:A、AA遺伝子型;G、GG遺伝子型;H、ヘテロ接合遺伝子型GA。
(実施例)
血栓症はヒトの主要な疾患であり、心筋梗塞、肺塞栓症または脳卒中によって、毎年、何十万人もが死亡し、数百万人が衰弱する。危険因子は、遺伝的及び後天的条件の両方を含む。通常、血栓症の傾向は、機能亢進性の凝固経路、機能減退性の抗凝血物質機構または機能減退性線維素溶解から生じうる。これらの経路のタンパク質をコードする遺伝子の突然変異は、血栓症に対する素因において、重要な役割を果たす。
起こりうるSNPのうちの1つは、凝固因子(すなわち因子II)のうちの1つをコードする遺伝子に関する。特異的な位置に、G(野生型)またはA(変異体)ヌクレオチドは存在し得る。
患者の3つの群(ホモ接合野生型、ホモ接合突然変異型及びヘテロ接合型)からの臨床サンプルを、NucliSens EasyQ因子IIアッセイに供した。このアッセイにおいて、ゲノムDNAは、両方の分子ビーコンが存在する場合には、増幅される。増幅産生物の蓄積により、蛍光シグナルは生じる。シグナルの量の簡単な測定は、初期の背景レベル以上の時間内に観察された最大限の蛍光シグナルの比率である。
明確な分類は、この蛍光増加の範囲に基づく:
−ホモ接合遺伝子型の場合には、1つのシグナルタイプが支配することが期待される(AかG)、
−一方で、ヘテロ接合遺伝子型の場合には、両方のシグナルが出現させられる。
しかしながら、遺伝子型間のかなりの相同性のために、完全に特異的なビーコンを開発することができないと、その結果、図1から分かるように、両方のシグナルは全3つのグループを出現させる。遺伝子型GGグループは他2つ(GAとAA)から明らかに分離されるが、これらの2つは相当な重なりを示す。
代わりとして、定量化変数が、使われた。結果は、図2に示される。水平軸上に、蛍光シグナル増加の比率は、示される。明らかに、定量化変数値の分離は、完全である。
定量化変数値のいくつかの要約統計量は、下記の表1に示される:
表1
Figure 2010517545

Claims (24)

  1. 生物試料に適用されるタイピング・アッセイにおける遺伝子型決定の方法であって、前記試料が興味がある1つの核酸標的を含んでおり、前記標的核酸が単一のヌクレオチド多型(SNP)を含みやすく;前記方法が
    -各々のプローブが野生型及び少なくとも一つのあり得る突然変異型の両方のSNP位置でのリアルタイム検出を可能にする少なくとも2本の異なる標識化プローブの存在下で、標的のリアルタイム増幅を実行すること及びアンプリコンの多数のコピーを作成すること、
    -2つの検出プローブの各組合せのシグナルに基づいて判別変数値を評価すること、及び
    -遺伝子型を判別する工程
    を含む方法。
  2. 前記増幅は、前記試料を、SNP位置の両側にあるフォワードプライマーとリバースプライマーである一対のプライマーに接触させることによって実施される、請求項1に記載の方法。
  3. リアルタイム増幅は、前記試料に、一対のプライマーと同時に少なくとも2本の標識プローブを接触させることによって実施される、請求項1に記載の方法。
  4. 各プローブによるアンプリコン上へのハイブリダイゼーション、前記SNP位置を含むプローブ−アンプリコン・ハイブリッドによって、リアルタイム検出が可能である、請求項1から3の何れか一項に記載の方法。
  5. 各プローブは、識別可能なシグナルを提供する標識によって、且つ少なくとも一つのヌクレオチドにより異なる配列によって、互いに異なる、請求項1から4の何れか一項に記載の方法。
  6. プローブ配列が野生型標的に又は1つのあり得る突然変異型に対応する、請求項5に記載の方法。
  7. 2つの検出プローブの各組合せの判別変数値の評価は、2つの検出プローブがアンプリコンと結合する反応の相対会合反応速度定数(k1)の評価によって実現する、請求項1から6の何れか一項に記載の方法。
  8. 2つの検出プローブの各組合せの判別変数値の評価は、2つの検出プローブがアンプリコンから分離する反応の相対解離反応速度定数(k2)の評価によって実現する、請求項1から6の何れか一項に記載の方法。
  9. 2つのプローブシグナルの組合せに由来する判別変数が達し得る値の範囲は、閾値を使用して範囲に分けることができ、それにより各遺伝子型ごとに判別変数が達し得る値の範囲は、これらの範囲の1つに集まる、請求項7又は8に記載の方法。
  10. マルチ対立遺伝子SNPが2対立遺伝子SNPである、請求項1から9の何れか一項に記載の方法。
  11. 判別変数が達し得る値は、閾値を使用して3つの範囲に分けられる、請求項10に記載の方法。
  12. ヘテロ接合の標的の場合、判別変数が達し得る値は、中間範囲に集まる、請求項10に記載の方法。
  13. 判別変数の達し得る値が下部範囲に集まる場合、標的配列は:
    第1のプローブが突然変異型を検出できて、さらに第2のプローブが野生型を検出できる場合は、ホモ接合野生型であり、
    第1のプローブが野生型を検出できて、さらに第2のプローブが突然変異型を検出できる場合は、ホモ接合突然変異型である、請求項7および10に記載の方法。
  14. 判別変数の達し得る値が上部範囲に集まる場合、標的配列は:
    第1のプローブが野生型を検出できて、さらに第2のプローブが突然変異型を検出できる場合は、ホモ接合野生型であり、
    第2のプローブが突然変異型を検出できて、さらに第1のプローブが野生型を検出できる場合は、ホモ接合突然変異型である、請求項7および10に記載の方法。
  15. ヘテロ接合型の場合の判別変数値の評価は、比率(kWT→WT + kWT→m)/(km→m + kmWT)またはその逆数の評価によって実現する、請求項12に記載の方法。
  16. ホモ接合型の場合の判別変数値の評価は、比率kWT→m/km→mまたはその逆数の評価によって実現する、請求項13または14に記載の方法。
  17. ホモ接合型の場合の判別変数値の評価は、比率kWT→WT/km→WTまたはその逆数の評価によって実現する、請求項13または14に記載の方法。
  18. プローブが分子ビーコンによって構成される、請求項1から17の何れか一項に記載の方法。
  19. 標的核酸配列がDNAである、請求項1から18の何れか一項に記載の方法。
  20. 増幅反応が転写ベースの増幅方法、好ましくはNASBA方法である、請求項1から19の何れか一項に記載の方法。
  21. 生物試料に適用されるタイピング・アッセイにおいて遺伝子型の検出のためのテストキットであって:
    −一組のオリゴヌクレオチド・プライマー、
    −増幅された核酸配列の少なくとも一部分に対して実質的に相補的な核酸配列を含む少なくとも2つのオリゴヌクレオチド・プローブであって、1つのプローブが野生型の同定のために設けられており、他のプローブが突然変異型の同定のために設けられており、各プローブは検出可能な標識と共に提供され、互いに異なる、少なくとも2つのオリゴヌクレオチド・プローブ、及び
    −適切な増幅試薬を含むキット。
  22. オリゴヌクレオチド・プライマーのうちの少なくとも1つのいわゆるフォワードプライマーは、RNAポリメラーゼプロモーター、好ましくはT7 RNAポリメラーゼと関連する、請求項21に記載のテストキット。
  23. 各オリゴヌクレオチド・プローブがフォワードプライマーとリバースプライマーを使用して増幅される核酸の領域にハイブリダイズすることができる核酸配列を含む、請求項21または22に記載のテストキット。
  24. 適切な増幅試薬が転写ベースの増幅方法、好ましくはNASBA方法を可能にする、請求項18から23の何れか一項に記載のテストキット。
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