JP2005027517A - ヒトチトクロームp4502a6遺伝子多型の簡易検出方法および検出用試薬 - Google Patents
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Abstract
【課題】明確にかつ再現性よく、かつ簡便な操作で薬物代謝酵素遺伝子多型を検出することができる方法及びそのための試薬を提供する。
【解決手段】特定の塩基配列の何れか1つに対して実質的に相補的な配列を含むオリゴヌクレオチドを用いることを特徴とするヒトチトクロームP4502A6遺伝子のエクソン3中の遺伝子多型を検出する方法。好ましくは遺伝子およびまたはその断片を含む試料を増幅させることによって、ヒトチトクロームP4502A6遺伝子のエクソン3中の遺伝子多型を検出する。
【選択図】なし
【解決手段】特定の塩基配列の何れか1つに対して実質的に相補的な配列を含むオリゴヌクレオチドを用いることを特徴とするヒトチトクロームP4502A6遺伝子のエクソン3中の遺伝子多型を検出する方法。好ましくは遺伝子およびまたはその断片を含む試料を増幅させることによって、ヒトチトクロームP4502A6遺伝子のエクソン3中の遺伝子多型を検出する。
【選択図】なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、試料中に存在する薬物代謝酵素遺伝子多型の中で特にヒトチトクロームP4502A6の遺伝子多型を検出する方法および試薬に関する。
【0002】
【従来の技術】
本発明において、遺伝子多型とは野生型とは異なる塩基配列を有することをいう。遺伝子の塩基多型は薬物代謝において副作用および治療失敗の発生において個体間変動の原因として重要な役割を果たし、体質として知られる基礎代謝等の個人差の原因としても知られている。その上、これらは多数の疾患の遺伝マーカーとしての働きもする。それゆえ、これら突然変異の解明は臨床的に重要であり、ルーチンの表現型分類が臨床研究における精神医学患者および自発志願者にとって特に推奨される(GramおよびBrsen, European Consensus Conference on Pharmacogenetics. Commission of the European Communities, Luxembourg, 1990, 第87〜96頁; Balantら、 Eur. J. Clin. Pharmacol. 第36巻、第551〜554頁、(1989))。また、原因となる変異型遺伝子の同定に続くそれぞれの遺伝子型の検出用の核酸配列分析法が所望される。
【0003】
従来の核酸配列分析技術としては、例えば核酸配列決定法(シークエンシング法)がある。核酸配列決定法は核酸配列中に含まれる塩基多型を検出、同定することができるが、鋳型核酸の調製、DNAポリメラーゼ反応、ポリアクリルアミドゲル電気泳動、核酸配列の解析等を行うため多大な労力と時間が必要である。また近年の自動シークエンサーを用いることで省力化は行うことができるが、高価な装置が必要であるという問題がある。
一方、遺伝子の点突然変異により引き起こされる遺伝病が種々知られており、それらの中には、遺伝子のどの部位がどのように点突然変異することにより遺伝病が引き起こされるかわかっているものも少なくない。
【0004】
このような予想される点突然変異を検出する方法として、従来より、PCR(polymerase chain reaction)法(特許文献1、2参照)などの遺伝子増幅法を利用した遺伝子の点突然変異の検出方法が知られている。この方法では、遺伝子増幅法に用いる一対のオリゴヌクレオチドのうちの一方のオリゴヌクレオチドとして、野生型遺伝子の増幅領域の端部領域に完全に相補的な野生型用オリゴヌクレオチドと、変異型遺伝子の増幅領域の端部領域に完全に相補的な変異型用オリゴヌクレオチドとを用いる。変異型のオリゴヌクレオチドは、その3’末端が予想される点突然変異を起こしたヌクレオチドに相補的なヌクレオチドになっている。このような野生型及び変異型用オリゴヌクレオチドをそれぞれ別個に用いて試料遺伝子を遺伝子増幅法に供する。
【0005】
試料遺伝子が野生型であれば、野生型用オリゴヌクレオチドを用いた場合には核酸の増幅が起きるが、変異型用オリゴヌクレオチドを用いた場合には、オリゴヌクレオチドの3’末端が試料遺伝子の対応ヌクレオチドと相補的ではない(ミスマッチ)ので伸長反応が起きず、核酸の増幅は起きない。一方、試料遺伝子が変異型であれば、逆に、野生型用オリゴヌクレオチドを用いた場合には増幅が起きず、変異型用オリゴヌクレオチドを用いた場合に増幅が起きる。従って、各オリゴヌクレオチドを用いた場合に増幅が起きるか否かを調べることにより、試料遺伝子が野生型か変異型かを判別することができ、それによって試料遺伝子中の点突然変異を同定することができる。この時増幅がおきたか否かを調べる方法として、増幅産物をアガロースゲル電気泳動した後、エチジウムブロマイド等の核酸特異的結合蛍光試薬を用いて染色の後、UV照射して増幅核酸の有無を検出できる。またほかの様式として、ナイロン膜上に増幅核酸を固定し、標識プローブを用いて検出するサザンブロット法、個体担体上に固定した補足プローブで捕捉した後検出プローブを作用させて検出するサンドイッチハイブリダイゼーション法などが開発されてきた。さらに、近年では、ポリメラーゼの5’エキソヌクレアーゼ活性を利用し、ハイブリした各遺伝子多型に相補的な標識オリゴヌクレオチドから標識をポリメラーゼ反応に応じて遊離させることによって検出する方法も開発されてきている。
【0006】
【特許文献1】
特公平4−67960号公報
【特許文献2】
特公平4−67957号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記のような方法により増幅核酸を検出し、容易に多型を同定が行えるように思われるが、実際には、操作は煩雑であり、検出値を数値化することが困難である為に野生型シグナルと多型シグナルの比をとると言った解析が困難となり、正確な多型を同定するには多大な作業が必要であった。
【0008】
たとえば電気泳動法によれば野生型及び変異型を別々に検出する必要がありまた泳動像から核酸量を正確に数値化することは困難である。またサザンブロット法やサンドイッチハイブリダイゼーション法ではプローブとのハイブリダイゼーション反応が必要であり、その条件を厳密に整える必要がある。更には過剰なプローブを除去する工程が必要であり、操作は非常に煩雑である。また薬物代謝酵素遺伝子多型を検出するためには数カ所の変異箇所を調べることが必要である。このため、上記方法においては数多くの工程を数カ所に対して個々に行わねばならず、検出作業には多大な労力が必要であった。
【0009】
またさらには、ヒトチトクロームP450 2A6の遺伝子多型の検出においてこれまで、2A6遺伝子領域に特異的なオリゴヌクレオチドを用いて増幅させた後、制限酵素でその増幅断片を切断することによって多型を検出するPCR−RFLP法が用いられているが、制限酵素の処理条件によってその再現性に課題があった。
本発明の目的は、上記のような課題を解決して、明確にかつ再現性よく薬物代謝酵素遺伝子多型を検出することができる方法及びそのための試薬を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記事情に鑑み、鋭意研究の結果、上記の従来法に対して、特定の塩基多型部位を含む核酸配列に、野生型検出用オリゴヌクレオチド及びまたは1種又は2種の変異型用オリゴヌクレオチドを同時に又は別々に反応させた後、2本鎖特異的該オリゴヌクレオチドの量を測定することで、煩雑な検出操作を必要とせずまた容易に数値化したデータが得られ、したがって明確な多型同定が可能となる方法を見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
すなわち、本発明は以下のような構成からなる。
(1)配列表の配列番号1から4で示される塩基配列の何れか1つに対して実質的に相補的な配列を含むオリゴヌクレオチドを用いることを特徴とするヒトチトクロームP450 2A6遺伝子のエクソン3中の遺伝子多型を検出する方法。
【0012】
(2) ヒトチトクロームP4502A6遺伝子およびまたはその断片を含む試料を増幅させることによって、ヒトチトクロームP450 2A6遺伝子のエクソン3中の遺伝子多型を検出する(1)に記載の遺伝子多型を検出する方法。
【0013】
(3) 取得された増幅産物と核酸特異標識との相互作用により、検出することを特徴とする(2)記載の遺伝子多型を検出する方法。
【0014】
(4) 配列表の配列番号1から4で示される塩基配列の何れか1つに対して実質的に相補的な配列を含むオリゴヌクレオチドを用いることを特徴とするヒトチトクロームP450 2A6遺伝子のエクソン3中の遺伝子多型検出試薬。
【0015】
(5) 配列表の配列番号1から4で示される塩基配列の何れか1つに対して実質的に相補的な配列を含むオリゴヌクレオチドプライマーを用い、ヒトチトクロームP4502A6遺伝子およびまたはその断片を含む試料を増幅させることによって、ヒトチトクロームP450 2A6遺伝子のエクソン3中の遺伝子多型を検出する試薬。
【0016】
(6) 取得された増幅産物と核酸特異標識との相互作用により、検出することを特徴とする(5)記載の遺伝子多型を検出する試薬。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。試料中に含まれる薬物代謝酵素の遺伝子多型部位を含む染色体又はその断片は、目的の遺伝子の情報を担う遺伝子多型部位を含む標的核酸であれば、特に制限されない。該標的核酸の例としては、Alu配列、蛋白質をコードする遺伝子のエキソンやイントロン、プロモーターなどが例示できる。
【0018】
本発明において、核酸配列を単に核酸ということがある。変異型核酸とは、野生型核酸のうち少なくとも1つ、好ましくは1つのヌクレオチドが点突然変異して他のヌクレオチドに置換されているものや、野生型核酸の一部に挿入、欠失配列等を含む核酸のことであり、どの部位のヌクレオチドが変異しているかが解明されているものである。このような遺伝子多型により薬物代謝酵素の代謝活性が異なっていることが解明されてきており、本発明の方法は試料中の核酸がこのような予想される変異を有しているか否かを検査し、被験者の有する薬物代謝酵素遺伝子のタイプを検出する方法である。
【0019】
本発明は、ヒトチトクロームP450 2A6遺伝子のエクソン3中の遺伝子多型を検出する方法において、配列表の配列番号1から4で示される塩基配列の何れか1つに対して実質的に相補的な配列を含むオリゴヌクレオチドを用いることを特徴とする。
これらの配列は2A6の変異部位に相当し、配列番号2および4は2A6*1(天然型)の配列に相当し、配列番号1および3は2A6*2(変異型)の配列に相当している。
ここで、実質的に相補的とは、完全に相補鎖として一致する必要はなく、一般の核酸増幅条件等でハイブリダイゼーションが起こる程度に相補的であればよく、3箇所、好ましくは2箇所、さらに好ましくは1箇所までのミスマッチは許容範囲である。
【0020】
本発明で用いるオリゴヌクレオチドは、配列表の配列番号1から4で示される塩基配列の何れか1つに対して実質的に相補的な配列を含み、さらにこれに加えた配列を有していても良いが、実質的に相補的な配列より短く欠けているものしか有しない場合には、検出の再現性が乏しくなるため好ましくない。
本発明におけるオリゴヌクレオチドの好ましい長さとしては、13〜35塩基、さらに好ましい下限は16塩基、さらに好ましい上限は30塩基である。これらの範囲を超えると、再現性が低下したりすることがある。
【0021】
本発明においては、配列表の配列番号1から4で示される塩基配列の何れか1つに対して実質的に相補的な配列を含むオリゴヌクレオチドを用いて遺伝子多型を検出する方法であれば、上述や以下に記述する従来の方法等その方法の如何によるものではないが、ヒトチトクロームP4502A6遺伝子およびまたはその断片を含む試料を増幅させることによって、ヒトチトクロームP450 2A6遺伝子のエクソン3中の遺伝子多型を検出する方法であることが好ましい。
以下、ヒトチトクロームP4502A6遺伝子およびまたはその断片を含む試料を増幅させる方法を中心に本発明を説明する。
【0022】
本発明において、野生型オリゴヌクレオチドと変異型オリゴヌクレオチドを作用させる反応とは一般的に、一本鎖に変性した標的核酸にオリゴヌクレオチド、4種類のデオキシヌクレオシド三リン酸(dNTP)とDNAポリメラーゼを作用させることで、標的核酸を鋳型とするオリゴヌクレオチド伸長反応が起こり核酸配列の相補鎖が合成される反応を含む。
【0023】
本発明において、野生型用オリゴヌクレオチドとは、通常の表現型を有している遺伝子多型部位を含む染色体又はその断片に相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドであって、変異型用オリゴヌクレオチドとは、野生型とは異なる配列を有している遺伝子多型部位を含む染色体又はその断片に相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドである。
【0024】
本発明に用いられる上記オリゴヌクレオチドの最も好ましい形態は、3‘末端から2番目のヌクレオチドが野生型あるいは変異型配列のヌクレオチドと相補的に対応するように設計され、さらに必要に応じ3’末端から3〜5番目に人為的なミスマッチ塩基を導入されたものである。以下、この最も好ましい例を中心に説明する。
【0025】
このように設計した場合野生型用オリゴヌクレオチド/野生型核酸及び変異型用オリゴヌクレオチド/変異型核酸の組合せにおいて、各オリゴヌクレオチドは少なくとも3’ 末端から2番目の配列までは一致する為伸長反応は起こる。一方、野生型用オリゴヌクレオチド/変異型核酸及び変異型用オリゴヌクレオチド/野生型核酸の組合せにおいてはオリゴヌクレオチドの3‘末端より2番目の塩基がミスマッチとなるため伸長反応が起こらない、さらにもう1塩基の人為的ミスマッチを導入した場合はさらに伸長反応が起こりにくくなる。
【0026】
オリゴヌクレオチドの好ましい長さとしては、13〜35塩基、さらに好ましい下限は16塩基、さらに好ましい上限は30塩基であり、上記ミスマッチ部位は、該オリゴヌクレオチド中に少なくとも1つ存在する。また、その位置は、3’末端の3番目から5’末端までのいずれかであれば、特に限定されないが、好ましくは、3’末端の3番目に近い位置、より好ましくは、3’末端から3番目が好ましい。人為的なミスマッチの数の上限はハイブリダイゼーションする限りにおいて特に制限はないが、実質的な相補部分において、3箇所以内、さらには2箇所以内、特には1箇所であることが好ましい。また、実質的な相補部分以外、例えば5’末端側等に他の機能を持たせるため、完全には相補的でない配列を導入することもできる。
【0027】
3番目に人為的ミスマッチを用いた場合、伸長反応を期待しない核酸配列を鋳型とした時には、塩基多型部位と併せて2塩基のミスマッチとなり、伸長反応が強く阻害される。
本発明においては、上記野生型用オリゴヌクレオチドと1種又は2種の変異型用オリゴヌクレオチドを、試料に別々、又は同時に作用させる。
本発明において、オリゴヌクレオチドの伸長方法は、基本的には、従来の方法を用いて行うことができる。通常、一本鎖に変性させた特定の塩基多型部位を含む染色体又はその断片に、4種類のデオキシヌクレオシド三リン酸(dNTP)及びDNAポリメラーゼと共に、野生型用オリゴヌクレオチドと、1種又は2種の変異型用オリゴヌクレオチドを同時又はそれぞれ別個に用いて作用させることで、標的核酸を鋳型としてオリゴヌクレオチドが伸長する。
【0028】
該伸長反応は、Molecular Cloning, A Laboratory Manual (Sambrookら、1989)に記載の方法に従って行うことができる。本発明において、特定の塩基多型部位を含む染色体又は断片の増幅方法も、基本的には、従来の方法を用いて行うことができ、通常、一本鎖に変性させた特定の塩基多型部位を含む染色体又はその断片に、4種類のデオキシヌクレオシド三リン酸(dNTP)及びDNAポリメラーゼ及びリバースプライマーと共に、野生型用オリゴヌクレオチドと、1種又は2種の変異型用オリゴヌクレオチド(フォーワードプライマーに相当)を同時又はそれぞれ別個に用いて作用させることで、標的核酸を鋳型としてファワードオリゴヌクレオチドとリバースオリゴヌクレオチドの間で増幅される。
【0029】
核酸増幅方法としては、PCR、NASBA(Nucleic acid sequence−based amplification method;Nature 第350巻、第91頁(1991))、LCR(国際公開89/12696号公報、特開平2−2934号公報)、SDA(Strand Displacement Amplification:Nucleic acid research 第20巻、第1691頁(1992))、RCA(国際公開90/1069号公報)、TMA(Transcription mediated amplification method;J.Clin.Microbiol. 第31巻、第3270頁(1993))Invader法などが挙げられ、これらを参照することができる。
【0030】
LCR法は、標的核酸に2種類のオリゴヌクレオチド、デオキシヌクレオシド三リン酸(dNTP)とリガーゼを作用させ標的核酸上で2種類のオリゴヌクレオチドを結合させる反応を繰り返すことによって標的核酸を増幅させる方法である。
SDAは、その配列に制限酵素サイトを有する鋳型と相補的に結合するオリゴヌクレオチドを用い、伸長反応と制限酵素処理を繰り返すことによって核酸を増幅させる方法である。
RCAは、環状の標的核酸に対し相補的なオリゴヌクレオチドとDNAポリメラーゼを作用させることによって、新たに生成したオリゴヌクレオチドが、鋳型から離されながら、連続的に標的核酸を増幅させる方法である。
【0031】
invader法は、DNAターゲットフラグメントに対して相補的配列を持つインベーダーオリゴと5’のフラップ構造を持ち、SNPを検出するための相補的オリゴ(シグナルプローブ)を使用する。まずターゲットDNAに対してインベーダーオリゴとシグナルプローブをハイブリダイズさせる。この時、インベーダーオリゴとプローブは1塩基がオーバーラップする構造(invasive structure)を持つ。この部分にCleavaseが作用し、SNP部位のシグナルプローブの塩基とターゲットの塩基が相補的(SNPなし)の場合にはシグナルプローブの5’フリップが切断される。切断された5’フリップはFRET Probe (Fluorescence resonance energy transfer probe)にハイブリダイズします。FRET プローブ上には蛍光色素とクエンチャー(Quencher)が近接しており、蛍光が抑制されているが、5’フリップDNAが結合することによりCleavaseによって蛍光色素の部分が切断され、蛍光シグナルが検出可能である。
【0032】
なかでもPCR法は、試料核酸、4種類のデオキシヌクレオシド三リン酸、一対のオリゴヌクレオチド及び耐熱性DNAポリメラーゼの存在下で、変性、アニーリング、伸長の3工程からなるサイクルを繰り返すことにより、上記一対のオリゴヌクレオチドで挟まれる試料核酸の領域を指数関数的に増幅させる方法である。すなわち、変性工程で試料の核酸を変性し、続くアニーリング工程において各オリゴヌクレオチドと、それぞれに相補的な一本鎖試料核酸上の領域とをハイブリダイズさせ、続く伸長工程で、各オリゴヌクレオチドを起点としてDNAポリメラーゼの働きにより鋳型となる各一本鎖試料核酸に相補的なDNA鎖を伸長させ、二本鎖DNAとする。この1サイクルにより、1本の二本鎖DNAが2本の二本鎖DNAに増幅される。従って、このサイクルをn回繰り返せば、理論上上記一対のオリゴヌクレオチドで挟まれた試料DNAの領域は2n倍に増幅される。増幅されたDNA領域は大量に存在するので、電気泳動等の方法により容易に検出できる。よって、遺伝子増幅法を用いれば、従来では検出不可能であった、極めて微量(1分子でも可)の試料核酸をも検出することが可能であり、最近非常に広く用いられている技術である。
【0033】
上記のような核酸増幅法を利用した方法では、野生型核酸を増幅できる野生型用オリゴヌクレオチドと、変異型核酸を増幅できる変異型用オリゴヌクレオチドをそれぞれ別個又は同時に用いて遺伝子増幅法を行う。
【0034】
野生型用オリゴヌクレオチドを用いて試料核酸を伸長または増幅反応を行った場合、試料核酸が野生型であれば反応が起きるが、変異型では反応が起きない。逆に、変異型用オリゴヌクレオチドを用いて試料核酸を伸長または増幅反応を行った場合、試料核酸が変異型であれば反応が起きるが、野生型であれば反応は起こらない。従って、一つの試料を二つに分け、一方は野生型用オリゴヌクレオチドを用いて反応を行い、他方は変異型用オリゴヌクレオチドを用いて反応を行い、反応が起ったか否かを調べることにより、試料核酸が野生型であるか変異型であるかを明確に知ることができる。特に、ヒトを始め、高等生物は、1種類の遺伝子について、父親由来の遺伝子と母親由来の遺伝子をそれぞれ1つずつ有しているが、この方法によれば、試料遺伝子が野生型のホモか、変異型のホモか、あるいは、両方のヘテロかを区別することもできる。すなわち、ヘテロの場合には、野生型遺伝子と変異型遺伝子が共に存在するから野生型用オリゴヌクレオチドを用いた場合も変異型用オリゴヌクレオチドを用いた場合も反応が起きる。
【0035】
また、オリゴヌクレオチドが反応したか否かを検出する方法とは、特定の塩基多型部位を含む染色体又は断片を含む核酸試料に、一定量の野生型用オリゴヌクレオチドと及び1種又は2種の変異型用オリゴヌクレオチド(フォーワードプライマーに相当)を同時にまたはそれぞれ別々に用いて反応を行った後、2本鎖核酸特異的結合物質と反応させることによって前記増幅反応により生じたオリゴヌクレオチド量を検出できる。
【0036】
上記検出方法としては、標識したオリゴヌクレオチドを用いることも可能である。
例えば、該検出は、該各オリゴヌクレオチドを、予め酵素、ビオチン、蛍光物質、ハプテン、抗原、抗体、放射性物質および発光団などによって標識しておき、伸長又は増幅反応後に、反応したオリゴヌクレオチドの標識を検出することによって、遺伝子多型の検出を行うことができる。酵素としては、アルカリフォスファターゼ、ペルオキシダーゼなどが挙げられる。蛍光物質としては、FITC,6−FAM,HEX,TET,TAMRA,テキサスレッド、Cy3、Cy5などが挙げられる。
ハプテンとしては、ビオチン、ジゴキシゲニンなどが挙げられる。
放射性物質としては、32P、35Sなどが挙げられる。
発光団としては、ルテニウムなどが挙げられる。
【0037】
該標識は、オリゴヌクレオチドの伸長反応に影響を与えることがなければオリゴヌクレオチドのどの位置に結合させてもよい。好ましくは、5’ 部位である。
野生型用オリゴヌクレオチドと変異型用オリゴヌクレオチドに異なる標識を用いた場合には、1つの反応槽で検出ができる。
【0038】
キット
本発明の遺伝子多型検出試薬は上述の通り、配列表の配列番号1から4で示される塩基配列の何れか1つに対して実質的に相補的な配列を含むオリゴヌクレオチドを用いることを特徴とするヒトチトクロームP450 2A6遺伝子のエクソン3中の遺伝子多型検出試薬である。
本発明において、キットとしては野生型用オリゴヌクレオチド及び1種又は2種の変異型用オリゴヌクレオチド、リバースオリゴヌクレオチド、DNAポリメラーゼ、4種類のデオキシヌクレオシド三リン酸(dNTP)を含む薬物代謝酵素遺伝子多型検出用試薬キットを含むものである事ことが好ましい。
また、該各オリゴヌクレオチドは、予め上述したような酵素、ビオチン、蛍光物質、ハプテン、抗原、抗体、放射性物質および発光団などによって標識されていてもよい。
【0039】
【実施例】
以下、実施例に基づき本発明をより具体的に説明する。もっとも、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0040】
実施例1 CYP2A6*2遺伝子多型の検出
(1) CYP2A6 遺伝子の 479 番目 T → A の多型を検出するオリゴヌクレオチドの合成
パーキンエルマー社製DNAシンセサイザー392型を用いて、ホスホアミダイト法にて、配列番号1〜3に示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチド(以下、オリゴ1〜3と示す)を合成した。合成はマニュアルに従い、各種オリゴヌクレオチドの脱保護はアンモニア水で55℃、一夜実施した。オリゴヌクレオチドの精製はパーキンエルマー社OPCカラムにて実施した。もしくはDNA合成受託会社((株)日本バイオサービス、(株)サワディー、Proligo KK、アマシャムファルマシア
バイオテク(株)等)に依頼した。
オリゴ1は3’末端から2番目に野生型(T)のヌクレオチド配列、および3番目に人為的ミスマッチ(C→A)を有し、オリゴ2は3’末端から2番目に変異型(A)のヌクレオチド配列、および3番目に人為的ミスマッチ(C→A)を有し、オリゴ3がアンチセンス鎖であり、オリゴ1、2と組み合わせて増幅反応のオリゴヌクレオチドとして使用される。なお、オリゴ1、2、3は必要により標識して使用されても良い。
なお、オリゴ1は配列番号1に対して実質的に相補的な配列を含み、オリゴ2は配列番号2に対して実質的に相補的な配列を含む。
【0041】
(2) PCR 法による CYP2A6*2 遺伝子多型の解析
▲1▼ PCR法による増幅反応
ヒト白血球からフェノール・クロロフォルム法により抽出したDNA溶液をサンプルとして使用して、下記試薬を添加して、下記条件によりCYP2A6*2遺伝子多型を解析した。
【0042】
試薬
以下の試薬を含む25μl溶液を調製した。
Taq DNAポリメラーゼ反応液
オリゴ1および/または2 5 pmol
オリゴ3 5 pmol
×10緩衝液 2.5 μl
2mM dNTP 2.5 μl
25 mM MgCl2 1.5 μl
Taq DNAポリメラーゼ 1.3 U
抽出DNA溶液 100 ng
【0043】
オリゴ1:gcttcctcat cgacgccatc
オリゴ2:gcttcctcat cgacgccaac
オリゴ3:tcctgggt gttttccttc
【0044】
増幅条件
95℃・5分
95℃・30秒、60℃・30秒、72℃、30秒(35サイクル)
72℃・2分。
【0045】
▲2▼ 核酸特異的結合物質による検出
▲1▼の増幅反応液3μlを10000倍に希釈されたSyberGreenI(Molecular Probe製)の溶液100μlに加えて、室温にて攪拌後に暗室中で蛍光プレートリーダー(大日本製薬社)で蛍光強度量を測定した。所要時間は約5分であった。
得られた蛍光強度から、以下の計算式を用いて試料の蛍光強度量を算出した。
[式1] FL(試料の蛍光強度)=FLb−FLs
FLb:Negative Control (試料が未添加)の蛍光強度
FLs:各試料の蛍光強度
【0046】
【表1】
【0047】
上記のように、オリゴヌクレオチドを用いて、塩基多型特異的増幅反応を行い、増幅反応物質を核酸特異的結合物質を用いて測定することで、容易にかつ迅速に遺伝子型を明確に判定することができた。
【0048】
【発明の効果】
上述したように、本発明により、試料核酸中の遺伝子多型を明確にまた簡便に検出できる方法が提供される。本発明の方法では、これまでの方法のように煩雑な操作を必要としないので、迅速で容易に再現性の良い結果が得られた。
【配列表】
【発明の属する技術分野】
本発明は、試料中に存在する薬物代謝酵素遺伝子多型の中で特にヒトチトクロームP4502A6の遺伝子多型を検出する方法および試薬に関する。
【0002】
【従来の技術】
本発明において、遺伝子多型とは野生型とは異なる塩基配列を有することをいう。遺伝子の塩基多型は薬物代謝において副作用および治療失敗の発生において個体間変動の原因として重要な役割を果たし、体質として知られる基礎代謝等の個人差の原因としても知られている。その上、これらは多数の疾患の遺伝マーカーとしての働きもする。それゆえ、これら突然変異の解明は臨床的に重要であり、ルーチンの表現型分類が臨床研究における精神医学患者および自発志願者にとって特に推奨される(GramおよびBrsen, European Consensus Conference on Pharmacogenetics. Commission of the European Communities, Luxembourg, 1990, 第87〜96頁; Balantら、 Eur. J. Clin. Pharmacol. 第36巻、第551〜554頁、(1989))。また、原因となる変異型遺伝子の同定に続くそれぞれの遺伝子型の検出用の核酸配列分析法が所望される。
【0003】
従来の核酸配列分析技術としては、例えば核酸配列決定法(シークエンシング法)がある。核酸配列決定法は核酸配列中に含まれる塩基多型を検出、同定することができるが、鋳型核酸の調製、DNAポリメラーゼ反応、ポリアクリルアミドゲル電気泳動、核酸配列の解析等を行うため多大な労力と時間が必要である。また近年の自動シークエンサーを用いることで省力化は行うことができるが、高価な装置が必要であるという問題がある。
一方、遺伝子の点突然変異により引き起こされる遺伝病が種々知られており、それらの中には、遺伝子のどの部位がどのように点突然変異することにより遺伝病が引き起こされるかわかっているものも少なくない。
【0004】
このような予想される点突然変異を検出する方法として、従来より、PCR(polymerase chain reaction)法(特許文献1、2参照)などの遺伝子増幅法を利用した遺伝子の点突然変異の検出方法が知られている。この方法では、遺伝子増幅法に用いる一対のオリゴヌクレオチドのうちの一方のオリゴヌクレオチドとして、野生型遺伝子の増幅領域の端部領域に完全に相補的な野生型用オリゴヌクレオチドと、変異型遺伝子の増幅領域の端部領域に完全に相補的な変異型用オリゴヌクレオチドとを用いる。変異型のオリゴヌクレオチドは、その3’末端が予想される点突然変異を起こしたヌクレオチドに相補的なヌクレオチドになっている。このような野生型及び変異型用オリゴヌクレオチドをそれぞれ別個に用いて試料遺伝子を遺伝子増幅法に供する。
【0005】
試料遺伝子が野生型であれば、野生型用オリゴヌクレオチドを用いた場合には核酸の増幅が起きるが、変異型用オリゴヌクレオチドを用いた場合には、オリゴヌクレオチドの3’末端が試料遺伝子の対応ヌクレオチドと相補的ではない(ミスマッチ)ので伸長反応が起きず、核酸の増幅は起きない。一方、試料遺伝子が変異型であれば、逆に、野生型用オリゴヌクレオチドを用いた場合には増幅が起きず、変異型用オリゴヌクレオチドを用いた場合に増幅が起きる。従って、各オリゴヌクレオチドを用いた場合に増幅が起きるか否かを調べることにより、試料遺伝子が野生型か変異型かを判別することができ、それによって試料遺伝子中の点突然変異を同定することができる。この時増幅がおきたか否かを調べる方法として、増幅産物をアガロースゲル電気泳動した後、エチジウムブロマイド等の核酸特異的結合蛍光試薬を用いて染色の後、UV照射して増幅核酸の有無を検出できる。またほかの様式として、ナイロン膜上に増幅核酸を固定し、標識プローブを用いて検出するサザンブロット法、個体担体上に固定した補足プローブで捕捉した後検出プローブを作用させて検出するサンドイッチハイブリダイゼーション法などが開発されてきた。さらに、近年では、ポリメラーゼの5’エキソヌクレアーゼ活性を利用し、ハイブリした各遺伝子多型に相補的な標識オリゴヌクレオチドから標識をポリメラーゼ反応に応じて遊離させることによって検出する方法も開発されてきている。
【0006】
【特許文献1】
特公平4−67960号公報
【特許文献2】
特公平4−67957号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記のような方法により増幅核酸を検出し、容易に多型を同定が行えるように思われるが、実際には、操作は煩雑であり、検出値を数値化することが困難である為に野生型シグナルと多型シグナルの比をとると言った解析が困難となり、正確な多型を同定するには多大な作業が必要であった。
【0008】
たとえば電気泳動法によれば野生型及び変異型を別々に検出する必要がありまた泳動像から核酸量を正確に数値化することは困難である。またサザンブロット法やサンドイッチハイブリダイゼーション法ではプローブとのハイブリダイゼーション反応が必要であり、その条件を厳密に整える必要がある。更には過剰なプローブを除去する工程が必要であり、操作は非常に煩雑である。また薬物代謝酵素遺伝子多型を検出するためには数カ所の変異箇所を調べることが必要である。このため、上記方法においては数多くの工程を数カ所に対して個々に行わねばならず、検出作業には多大な労力が必要であった。
【0009】
またさらには、ヒトチトクロームP450 2A6の遺伝子多型の検出においてこれまで、2A6遺伝子領域に特異的なオリゴヌクレオチドを用いて増幅させた後、制限酵素でその増幅断片を切断することによって多型を検出するPCR−RFLP法が用いられているが、制限酵素の処理条件によってその再現性に課題があった。
本発明の目的は、上記のような課題を解決して、明確にかつ再現性よく薬物代謝酵素遺伝子多型を検出することができる方法及びそのための試薬を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記事情に鑑み、鋭意研究の結果、上記の従来法に対して、特定の塩基多型部位を含む核酸配列に、野生型検出用オリゴヌクレオチド及びまたは1種又は2種の変異型用オリゴヌクレオチドを同時に又は別々に反応させた後、2本鎖特異的該オリゴヌクレオチドの量を測定することで、煩雑な検出操作を必要とせずまた容易に数値化したデータが得られ、したがって明確な多型同定が可能となる方法を見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
すなわち、本発明は以下のような構成からなる。
(1)配列表の配列番号1から4で示される塩基配列の何れか1つに対して実質的に相補的な配列を含むオリゴヌクレオチドを用いることを特徴とするヒトチトクロームP450 2A6遺伝子のエクソン3中の遺伝子多型を検出する方法。
【0012】
(2) ヒトチトクロームP4502A6遺伝子およびまたはその断片を含む試料を増幅させることによって、ヒトチトクロームP450 2A6遺伝子のエクソン3中の遺伝子多型を検出する(1)に記載の遺伝子多型を検出する方法。
【0013】
(3) 取得された増幅産物と核酸特異標識との相互作用により、検出することを特徴とする(2)記載の遺伝子多型を検出する方法。
【0014】
(4) 配列表の配列番号1から4で示される塩基配列の何れか1つに対して実質的に相補的な配列を含むオリゴヌクレオチドを用いることを特徴とするヒトチトクロームP450 2A6遺伝子のエクソン3中の遺伝子多型検出試薬。
【0015】
(5) 配列表の配列番号1から4で示される塩基配列の何れか1つに対して実質的に相補的な配列を含むオリゴヌクレオチドプライマーを用い、ヒトチトクロームP4502A6遺伝子およびまたはその断片を含む試料を増幅させることによって、ヒトチトクロームP450 2A6遺伝子のエクソン3中の遺伝子多型を検出する試薬。
【0016】
(6) 取得された増幅産物と核酸特異標識との相互作用により、検出することを特徴とする(5)記載の遺伝子多型を検出する試薬。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。試料中に含まれる薬物代謝酵素の遺伝子多型部位を含む染色体又はその断片は、目的の遺伝子の情報を担う遺伝子多型部位を含む標的核酸であれば、特に制限されない。該標的核酸の例としては、Alu配列、蛋白質をコードする遺伝子のエキソンやイントロン、プロモーターなどが例示できる。
【0018】
本発明において、核酸配列を単に核酸ということがある。変異型核酸とは、野生型核酸のうち少なくとも1つ、好ましくは1つのヌクレオチドが点突然変異して他のヌクレオチドに置換されているものや、野生型核酸の一部に挿入、欠失配列等を含む核酸のことであり、どの部位のヌクレオチドが変異しているかが解明されているものである。このような遺伝子多型により薬物代謝酵素の代謝活性が異なっていることが解明されてきており、本発明の方法は試料中の核酸がこのような予想される変異を有しているか否かを検査し、被験者の有する薬物代謝酵素遺伝子のタイプを検出する方法である。
【0019】
本発明は、ヒトチトクロームP450 2A6遺伝子のエクソン3中の遺伝子多型を検出する方法において、配列表の配列番号1から4で示される塩基配列の何れか1つに対して実質的に相補的な配列を含むオリゴヌクレオチドを用いることを特徴とする。
これらの配列は2A6の変異部位に相当し、配列番号2および4は2A6*1(天然型)の配列に相当し、配列番号1および3は2A6*2(変異型)の配列に相当している。
ここで、実質的に相補的とは、完全に相補鎖として一致する必要はなく、一般の核酸増幅条件等でハイブリダイゼーションが起こる程度に相補的であればよく、3箇所、好ましくは2箇所、さらに好ましくは1箇所までのミスマッチは許容範囲である。
【0020】
本発明で用いるオリゴヌクレオチドは、配列表の配列番号1から4で示される塩基配列の何れか1つに対して実質的に相補的な配列を含み、さらにこれに加えた配列を有していても良いが、実質的に相補的な配列より短く欠けているものしか有しない場合には、検出の再現性が乏しくなるため好ましくない。
本発明におけるオリゴヌクレオチドの好ましい長さとしては、13〜35塩基、さらに好ましい下限は16塩基、さらに好ましい上限は30塩基である。これらの範囲を超えると、再現性が低下したりすることがある。
【0021】
本発明においては、配列表の配列番号1から4で示される塩基配列の何れか1つに対して実質的に相補的な配列を含むオリゴヌクレオチドを用いて遺伝子多型を検出する方法であれば、上述や以下に記述する従来の方法等その方法の如何によるものではないが、ヒトチトクロームP4502A6遺伝子およびまたはその断片を含む試料を増幅させることによって、ヒトチトクロームP450 2A6遺伝子のエクソン3中の遺伝子多型を検出する方法であることが好ましい。
以下、ヒトチトクロームP4502A6遺伝子およびまたはその断片を含む試料を増幅させる方法を中心に本発明を説明する。
【0022】
本発明において、野生型オリゴヌクレオチドと変異型オリゴヌクレオチドを作用させる反応とは一般的に、一本鎖に変性した標的核酸にオリゴヌクレオチド、4種類のデオキシヌクレオシド三リン酸(dNTP)とDNAポリメラーゼを作用させることで、標的核酸を鋳型とするオリゴヌクレオチド伸長反応が起こり核酸配列の相補鎖が合成される反応を含む。
【0023】
本発明において、野生型用オリゴヌクレオチドとは、通常の表現型を有している遺伝子多型部位を含む染色体又はその断片に相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドであって、変異型用オリゴヌクレオチドとは、野生型とは異なる配列を有している遺伝子多型部位を含む染色体又はその断片に相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドである。
【0024】
本発明に用いられる上記オリゴヌクレオチドの最も好ましい形態は、3‘末端から2番目のヌクレオチドが野生型あるいは変異型配列のヌクレオチドと相補的に対応するように設計され、さらに必要に応じ3’末端から3〜5番目に人為的なミスマッチ塩基を導入されたものである。以下、この最も好ましい例を中心に説明する。
【0025】
このように設計した場合野生型用オリゴヌクレオチド/野生型核酸及び変異型用オリゴヌクレオチド/変異型核酸の組合せにおいて、各オリゴヌクレオチドは少なくとも3’ 末端から2番目の配列までは一致する為伸長反応は起こる。一方、野生型用オリゴヌクレオチド/変異型核酸及び変異型用オリゴヌクレオチド/野生型核酸の組合せにおいてはオリゴヌクレオチドの3‘末端より2番目の塩基がミスマッチとなるため伸長反応が起こらない、さらにもう1塩基の人為的ミスマッチを導入した場合はさらに伸長反応が起こりにくくなる。
【0026】
オリゴヌクレオチドの好ましい長さとしては、13〜35塩基、さらに好ましい下限は16塩基、さらに好ましい上限は30塩基であり、上記ミスマッチ部位は、該オリゴヌクレオチド中に少なくとも1つ存在する。また、その位置は、3’末端の3番目から5’末端までのいずれかであれば、特に限定されないが、好ましくは、3’末端の3番目に近い位置、より好ましくは、3’末端から3番目が好ましい。人為的なミスマッチの数の上限はハイブリダイゼーションする限りにおいて特に制限はないが、実質的な相補部分において、3箇所以内、さらには2箇所以内、特には1箇所であることが好ましい。また、実質的な相補部分以外、例えば5’末端側等に他の機能を持たせるため、完全には相補的でない配列を導入することもできる。
【0027】
3番目に人為的ミスマッチを用いた場合、伸長反応を期待しない核酸配列を鋳型とした時には、塩基多型部位と併せて2塩基のミスマッチとなり、伸長反応が強く阻害される。
本発明においては、上記野生型用オリゴヌクレオチドと1種又は2種の変異型用オリゴヌクレオチドを、試料に別々、又は同時に作用させる。
本発明において、オリゴヌクレオチドの伸長方法は、基本的には、従来の方法を用いて行うことができる。通常、一本鎖に変性させた特定の塩基多型部位を含む染色体又はその断片に、4種類のデオキシヌクレオシド三リン酸(dNTP)及びDNAポリメラーゼと共に、野生型用オリゴヌクレオチドと、1種又は2種の変異型用オリゴヌクレオチドを同時又はそれぞれ別個に用いて作用させることで、標的核酸を鋳型としてオリゴヌクレオチドが伸長する。
【0028】
該伸長反応は、Molecular Cloning, A Laboratory Manual (Sambrookら、1989)に記載の方法に従って行うことができる。本発明において、特定の塩基多型部位を含む染色体又は断片の増幅方法も、基本的には、従来の方法を用いて行うことができ、通常、一本鎖に変性させた特定の塩基多型部位を含む染色体又はその断片に、4種類のデオキシヌクレオシド三リン酸(dNTP)及びDNAポリメラーゼ及びリバースプライマーと共に、野生型用オリゴヌクレオチドと、1種又は2種の変異型用オリゴヌクレオチド(フォーワードプライマーに相当)を同時又はそれぞれ別個に用いて作用させることで、標的核酸を鋳型としてファワードオリゴヌクレオチドとリバースオリゴヌクレオチドの間で増幅される。
【0029】
核酸増幅方法としては、PCR、NASBA(Nucleic acid sequence−based amplification method;Nature 第350巻、第91頁(1991))、LCR(国際公開89/12696号公報、特開平2−2934号公報)、SDA(Strand Displacement Amplification:Nucleic acid research 第20巻、第1691頁(1992))、RCA(国際公開90/1069号公報)、TMA(Transcription mediated amplification method;J.Clin.Microbiol. 第31巻、第3270頁(1993))Invader法などが挙げられ、これらを参照することができる。
【0030】
LCR法は、標的核酸に2種類のオリゴヌクレオチド、デオキシヌクレオシド三リン酸(dNTP)とリガーゼを作用させ標的核酸上で2種類のオリゴヌクレオチドを結合させる反応を繰り返すことによって標的核酸を増幅させる方法である。
SDAは、その配列に制限酵素サイトを有する鋳型と相補的に結合するオリゴヌクレオチドを用い、伸長反応と制限酵素処理を繰り返すことによって核酸を増幅させる方法である。
RCAは、環状の標的核酸に対し相補的なオリゴヌクレオチドとDNAポリメラーゼを作用させることによって、新たに生成したオリゴヌクレオチドが、鋳型から離されながら、連続的に標的核酸を増幅させる方法である。
【0031】
invader法は、DNAターゲットフラグメントに対して相補的配列を持つインベーダーオリゴと5’のフラップ構造を持ち、SNPを検出するための相補的オリゴ(シグナルプローブ)を使用する。まずターゲットDNAに対してインベーダーオリゴとシグナルプローブをハイブリダイズさせる。この時、インベーダーオリゴとプローブは1塩基がオーバーラップする構造(invasive structure)を持つ。この部分にCleavaseが作用し、SNP部位のシグナルプローブの塩基とターゲットの塩基が相補的(SNPなし)の場合にはシグナルプローブの5’フリップが切断される。切断された5’フリップはFRET Probe (Fluorescence resonance energy transfer probe)にハイブリダイズします。FRET プローブ上には蛍光色素とクエンチャー(Quencher)が近接しており、蛍光が抑制されているが、5’フリップDNAが結合することによりCleavaseによって蛍光色素の部分が切断され、蛍光シグナルが検出可能である。
【0032】
なかでもPCR法は、試料核酸、4種類のデオキシヌクレオシド三リン酸、一対のオリゴヌクレオチド及び耐熱性DNAポリメラーゼの存在下で、変性、アニーリング、伸長の3工程からなるサイクルを繰り返すことにより、上記一対のオリゴヌクレオチドで挟まれる試料核酸の領域を指数関数的に増幅させる方法である。すなわち、変性工程で試料の核酸を変性し、続くアニーリング工程において各オリゴヌクレオチドと、それぞれに相補的な一本鎖試料核酸上の領域とをハイブリダイズさせ、続く伸長工程で、各オリゴヌクレオチドを起点としてDNAポリメラーゼの働きにより鋳型となる各一本鎖試料核酸に相補的なDNA鎖を伸長させ、二本鎖DNAとする。この1サイクルにより、1本の二本鎖DNAが2本の二本鎖DNAに増幅される。従って、このサイクルをn回繰り返せば、理論上上記一対のオリゴヌクレオチドで挟まれた試料DNAの領域は2n倍に増幅される。増幅されたDNA領域は大量に存在するので、電気泳動等の方法により容易に検出できる。よって、遺伝子増幅法を用いれば、従来では検出不可能であった、極めて微量(1分子でも可)の試料核酸をも検出することが可能であり、最近非常に広く用いられている技術である。
【0033】
上記のような核酸増幅法を利用した方法では、野生型核酸を増幅できる野生型用オリゴヌクレオチドと、変異型核酸を増幅できる変異型用オリゴヌクレオチドをそれぞれ別個又は同時に用いて遺伝子増幅法を行う。
【0034】
野生型用オリゴヌクレオチドを用いて試料核酸を伸長または増幅反応を行った場合、試料核酸が野生型であれば反応が起きるが、変異型では反応が起きない。逆に、変異型用オリゴヌクレオチドを用いて試料核酸を伸長または増幅反応を行った場合、試料核酸が変異型であれば反応が起きるが、野生型であれば反応は起こらない。従って、一つの試料を二つに分け、一方は野生型用オリゴヌクレオチドを用いて反応を行い、他方は変異型用オリゴヌクレオチドを用いて反応を行い、反応が起ったか否かを調べることにより、試料核酸が野生型であるか変異型であるかを明確に知ることができる。特に、ヒトを始め、高等生物は、1種類の遺伝子について、父親由来の遺伝子と母親由来の遺伝子をそれぞれ1つずつ有しているが、この方法によれば、試料遺伝子が野生型のホモか、変異型のホモか、あるいは、両方のヘテロかを区別することもできる。すなわち、ヘテロの場合には、野生型遺伝子と変異型遺伝子が共に存在するから野生型用オリゴヌクレオチドを用いた場合も変異型用オリゴヌクレオチドを用いた場合も反応が起きる。
【0035】
また、オリゴヌクレオチドが反応したか否かを検出する方法とは、特定の塩基多型部位を含む染色体又は断片を含む核酸試料に、一定量の野生型用オリゴヌクレオチドと及び1種又は2種の変異型用オリゴヌクレオチド(フォーワードプライマーに相当)を同時にまたはそれぞれ別々に用いて反応を行った後、2本鎖核酸特異的結合物質と反応させることによって前記増幅反応により生じたオリゴヌクレオチド量を検出できる。
【0036】
上記検出方法としては、標識したオリゴヌクレオチドを用いることも可能である。
例えば、該検出は、該各オリゴヌクレオチドを、予め酵素、ビオチン、蛍光物質、ハプテン、抗原、抗体、放射性物質および発光団などによって標識しておき、伸長又は増幅反応後に、反応したオリゴヌクレオチドの標識を検出することによって、遺伝子多型の検出を行うことができる。酵素としては、アルカリフォスファターゼ、ペルオキシダーゼなどが挙げられる。蛍光物質としては、FITC,6−FAM,HEX,TET,TAMRA,テキサスレッド、Cy3、Cy5などが挙げられる。
ハプテンとしては、ビオチン、ジゴキシゲニンなどが挙げられる。
放射性物質としては、32P、35Sなどが挙げられる。
発光団としては、ルテニウムなどが挙げられる。
【0037】
該標識は、オリゴヌクレオチドの伸長反応に影響を与えることがなければオリゴヌクレオチドのどの位置に結合させてもよい。好ましくは、5’ 部位である。
野生型用オリゴヌクレオチドと変異型用オリゴヌクレオチドに異なる標識を用いた場合には、1つの反応槽で検出ができる。
【0038】
キット
本発明の遺伝子多型検出試薬は上述の通り、配列表の配列番号1から4で示される塩基配列の何れか1つに対して実質的に相補的な配列を含むオリゴヌクレオチドを用いることを特徴とするヒトチトクロームP450 2A6遺伝子のエクソン3中の遺伝子多型検出試薬である。
本発明において、キットとしては野生型用オリゴヌクレオチド及び1種又は2種の変異型用オリゴヌクレオチド、リバースオリゴヌクレオチド、DNAポリメラーゼ、4種類のデオキシヌクレオシド三リン酸(dNTP)を含む薬物代謝酵素遺伝子多型検出用試薬キットを含むものである事ことが好ましい。
また、該各オリゴヌクレオチドは、予め上述したような酵素、ビオチン、蛍光物質、ハプテン、抗原、抗体、放射性物質および発光団などによって標識されていてもよい。
【0039】
【実施例】
以下、実施例に基づき本発明をより具体的に説明する。もっとも、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0040】
実施例1 CYP2A6*2遺伝子多型の検出
(1) CYP2A6 遺伝子の 479 番目 T → A の多型を検出するオリゴヌクレオチドの合成
パーキンエルマー社製DNAシンセサイザー392型を用いて、ホスホアミダイト法にて、配列番号1〜3に示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチド(以下、オリゴ1〜3と示す)を合成した。合成はマニュアルに従い、各種オリゴヌクレオチドの脱保護はアンモニア水で55℃、一夜実施した。オリゴヌクレオチドの精製はパーキンエルマー社OPCカラムにて実施した。もしくはDNA合成受託会社((株)日本バイオサービス、(株)サワディー、Proligo KK、アマシャムファルマシア
バイオテク(株)等)に依頼した。
オリゴ1は3’末端から2番目に野生型(T)のヌクレオチド配列、および3番目に人為的ミスマッチ(C→A)を有し、オリゴ2は3’末端から2番目に変異型(A)のヌクレオチド配列、および3番目に人為的ミスマッチ(C→A)を有し、オリゴ3がアンチセンス鎖であり、オリゴ1、2と組み合わせて増幅反応のオリゴヌクレオチドとして使用される。なお、オリゴ1、2、3は必要により標識して使用されても良い。
なお、オリゴ1は配列番号1に対して実質的に相補的な配列を含み、オリゴ2は配列番号2に対して実質的に相補的な配列を含む。
【0041】
(2) PCR 法による CYP2A6*2 遺伝子多型の解析
▲1▼ PCR法による増幅反応
ヒト白血球からフェノール・クロロフォルム法により抽出したDNA溶液をサンプルとして使用して、下記試薬を添加して、下記条件によりCYP2A6*2遺伝子多型を解析した。
【0042】
試薬
以下の試薬を含む25μl溶液を調製した。
Taq DNAポリメラーゼ反応液
オリゴ1および/または2 5 pmol
オリゴ3 5 pmol
×10緩衝液 2.5 μl
2mM dNTP 2.5 μl
25 mM MgCl2 1.5 μl
Taq DNAポリメラーゼ 1.3 U
抽出DNA溶液 100 ng
【0043】
オリゴ1:gcttcctcat cgacgccatc
オリゴ2:gcttcctcat cgacgccaac
オリゴ3:tcctgggt gttttccttc
【0044】
増幅条件
95℃・5分
95℃・30秒、60℃・30秒、72℃、30秒(35サイクル)
72℃・2分。
【0045】
▲2▼ 核酸特異的結合物質による検出
▲1▼の増幅反応液3μlを10000倍に希釈されたSyberGreenI(Molecular Probe製)の溶液100μlに加えて、室温にて攪拌後に暗室中で蛍光プレートリーダー(大日本製薬社)で蛍光強度量を測定した。所要時間は約5分であった。
得られた蛍光強度から、以下の計算式を用いて試料の蛍光強度量を算出した。
[式1] FL(試料の蛍光強度)=FLb−FLs
FLb:Negative Control (試料が未添加)の蛍光強度
FLs:各試料の蛍光強度
【0046】
【表1】
【0047】
上記のように、オリゴヌクレオチドを用いて、塩基多型特異的増幅反応を行い、増幅反応物質を核酸特異的結合物質を用いて測定することで、容易にかつ迅速に遺伝子型を明確に判定することができた。
【0048】
【発明の効果】
上述したように、本発明により、試料核酸中の遺伝子多型を明確にまた簡便に検出できる方法が提供される。本発明の方法では、これまでの方法のように煩雑な操作を必要としないので、迅速で容易に再現性の良い結果が得られた。
【配列表】
Claims (6)
- 配列表の配列番号1から4で示される塩基配列の何れか1つに対して実質的に相補的な配列を含むオリゴヌクレオチドを用いることを特徴とするヒトチトクロームP450 2A6遺伝子のエクソン3中の遺伝子多型を検出する方法。
- ヒトチトクロームP4502A6遺伝子およびまたはその断片を含む試料を増幅させることによって、ヒトチトクロームP450 2A6遺伝子のエクソン3中の遺伝子多型を検出する請求項1に記載の遺伝子多型を検出する方法。
- 取得された増幅産物と核酸特異標識との相互作用により、検出することを特徴とする請求項2記載の遺伝子多型を検出する方法。
- 配列表の配列番号1から4で示される塩基配列の何れか1つに対して実質的に相補的な配列を含むオリゴヌクレオチドを用いることを特徴とするヒトチトクロームP450 2A6遺伝子のエクソン3中の遺伝子多型検出試薬。
- 配列表の配列番号1から4で示される塩基配列の何れか1つに対して実質的に相補的な配列を含むオリゴヌクレオチドプライマーを用い、ヒトチトクロームP4502A6遺伝子およびまたはその断片を含む試料を増幅させることによって、ヒトチトクロームP450 2A6遺伝子のエクソン3中の遺伝子多型を検出する試薬。
- 取得された増幅産物と核酸特異標識との相互作用により、検出することを特徴とする請求項5記載の遺伝子多型を検出する試薬。
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