全体的な説明
本発明の発明者らは、例えば、ライブラリー、例えばランダムペプチドまたはCDRライブラリーをスクリーニングするための細胞表面ディスプレイシステムの一部として使用することができる多機能融合タンパク質を開発した。融合タンパク質には、1つまたは複数のリガンドと複合体形成または融合したトランスフェリン部分が含まれる。トランスフェリン部分はまた、表面露出アミノ酸残基をランダム化することによって、リガンドとしても役割を果たすことができる。
本発明には、トランスフェリン以外のタンパク質を含有する融合タンパク質が含まれるが、ただし、他のタンパク質は可溶性であり、かつ融合タンパク質の残りの部分から切断された場合、または融合タンパク質の残りの部分なしで再構築された場合に、融合した1つまたは複数のリガンドに血清半減期の増加を与えることができる。例えば、アルブミンまたはその変異体もしくは断片をトランスフェリンの代わりに使用することができる。
本発明の一実施形態では、融合タンパク質のトランスフェリン部分は、中程度から高度にグリコシル化されているストーク部分と融合している。本発明のこの実施形態では、融合タンパク質は、融合タンパク質を酵母細胞の細胞壁に共有結合または非共有結合させることができる細胞壁連結メンバーを含有する。
本発明の別の実施形態では、融合タンパク質は、膜貫通ドメインなどのアンカー部分を含有する。融合タンパク質はまた、GPIアンカーを介して細胞膜にアンカーされていてもよい。そのようなアンカーを使用して本発明の融合タンパク質を哺乳動物細胞上で発現させることができる。本発明の融合タンパク質はストーク部分およびアンカー部分をどちらも含有し得るが、本発明には、ストーク部分を含み、アンカー部分を含まない融合タンパク質、およびアンカー部分を含み、ストーク部分を含まないものも含まれる。
本発明の一実施形態では、融合タンパク質は酵母中で発現される。そのような融合タンパク質は、Aga1pおよびAga2p酵母ディスプレイシステムと比較して細胞表面にディスプレイされたペプチドを有するクローンの割合の増加を提供することを含めて、従来技術を超える利点を提供する。本発明の融合タンパク質はまた、結合するために、利用可能なN末端を必要とする、リガンドのスクリーニングの柔軟性も提供する。さらに、本発明の融合タンパク質を哺乳動物細胞膜にアンカーさせることにより、本発明の融合タンパク質は、哺乳動物細胞上で発現および提示されることも可能である。
本発明にはまた、融合タンパク質またはその一部分を含む治療組成物、および融合タンパク質またはその一部分を、そのような治療剤を必要としている対象に投与することによって、疾患または障害を治療、予防または寛解させる方法も含まれる。本発明の融合タンパク質には、推定上の治療タンパク質の少なくとも断片または変異体がリガンド部分として含まれる。本発明の一実施形態では、トランスフェリンおよびリガンド、すなわち融合タンパク質の治療部分を細胞から切断し、生物製剤またはワクチンを調製するために使用することができる。例えば、融合タンパク質の治療部分をストーク部分またはアンカーから切断することができる。
定義
本明細書中で使用する用語「生物活性」とは、生物学的状況において、すなわち、生物中またはそのin vitro複写中において、治療分子、リガンド部分、タンパク質またはペプチドによって行われる機能または一組の活性をいう。生物活性には、それだけには限定されないが、特許請求した融合タンパク質の治療分子部分の機能、例えば、それだけには限定されないが、応答性細胞系からの細胞外基質の分泌の誘導、ホルモン分泌の誘導、化学走性の誘導、有糸分裂誘発の誘導、分化の誘導、または応答性細胞の細胞分裂の阻害が含まれ得る。本発明の融合タンパク質またはペプチドは、その治療タンパク質のネイティブ対応物の1つまたは複数の生物活性を示す場合に、生物活性を有するとみなされる。
本明細書中で使用する、トランスフェリン配列中の「に対応するアミノ酸」または「均等アミノ酸」は、第1のトランスフェリン配列と少なくとも第2のトランスフェリン配列との間の同一性または類似度を最大にするために、アラインメントによって同定する。第2のトランスフェリン配列中の均等アミノ酸を同定するために使用する数字は、第1のトランスフェリン配列中の対応するアミノ酸を同定するために使用する数字に基づいている。特定の場合では、これらの語句を、ウサギ血清トランスフェリン中の特定の残基と比較した、ヒトトランスフェリン中のアミノ酸残基を説明するために使用し得る。
本明細書中で使用する用語「Tf部分」、「Tfタンパク質の断片」もしくは「Tfタンパク質」、または「Tfタンパク質の一部分」とは、天然に存在するTfタンパク質またはその突然変異体の少なくとも約5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%を含むアミノ酸配列をいう。
本明細書中で使用する用語「遺伝子」とは、生物学的機能に関連する任意のDNAセグメントをいう。したがって、遺伝子には、それだけには限定されないが、その発現に必要なコード配列および/または調節配列が含まれる。遺伝子にはまた、例えば他のタンパク質の認識配列を形成する、発現されないDNAセグメントも含まれることができる。遺伝子は、目的の供給源からクローニングすることまたは既知もしくは予測される配列情報から合成することを含めて、様々な供給源から得ることができ、所望のパラメータを有するように設計された配列が含まれ得る。
本明細書中で使用する「異種ポリヌクレオチド」または「異種核酸」または「異種遺伝子」または「異種配列」または「外因性DNAセグメント」とは、特定の宿主細胞に対して外来の供給源に由来するか、または、同じ供給源に由来する場合は、その最初の形態から改変されている、ポリヌクレオチド、核酸またはDNAセグメントをいう。宿主細胞中の異種遺伝子には、特定の宿主細胞に対して内在性であるが、改変されている遺伝子が含まれる。したがって、この用語は、細胞に対して外来もしくは異種であるか、または細胞に対して相同的であるが、宿主細胞の核酸内で、その要素が通常見つからない位置にある、DNAセグメントをいう。例として、酵母細胞に対してネイティブであるが、ヒトTf配列に結合しているシグナル配列は、異種である。
本明細書中で使用する「単離した」核酸配列とは、アガロースゲル電気泳動によって決定して、他の核酸配列を本質的に含まない、例えば、少なくとも約20%純粋、好ましくは少なくとも約40%純粋、より好ましくは約60%純粋、さらにより好ましくは約80%純粋、最も好ましくは約90%純粋、さらに最も好ましくは約95%純粋な核酸配列をいう。例えば、単離した核酸配列は、核酸配列をその天然の位置からそれが複製される別の部位へと再配置するために遺伝子操作で使用される、標準のクローニング手順によって得ることができる。クローニング手順は、ポリペプチドをコードしている核酸配列を含む所望の核酸断片の切除および単離、ベクター分子内への断片の挿入、ならびに宿主細胞内への組換えベクターの取り込みを含む場合があり、ここで核酸配列の複数のコピーまたはクローンが複製される。核酸配列は、ゲノム、cDNA、RNA、半合成、合成由来、またはその任意の組合せであり得る。
本明細書中で使用する、2つ以上のDNAコード配列は、DNAコード配列間のインフレーム融合の結果、DNAコード配列が融合ポリペプチドに翻訳される場合に、「連結(joined)」または「融合」しているといわれる。融合タンパク質に関連する用語「融合」は、リガンド部分、ストーク部分、およびアンカー部分を含む。Tf融合タンパク質はトランスフェリン部分とストーク部分との融合であり、細胞壁結合メンバーを含有する。
本明細書中で使用する「改変トランスフェリン」とは、野生型トランスフェリンと比較して、そのアミノ酸配列の少なくとも1つの改変を示すトランスフェリン分子をいう。
本明細書中で使用する「改変トランスフェリン融合タンパク質」とは、ストーク部分と融合したリガンドと複合体形成または融合した改変トランスフェリン(またはその断片もしくは変異体)の少なくとも1つの分子の融合によって形成されるタンパク質をいう。
本明細書中で使用する用語「核酸」または「ポリヌクレオチド」とは、一本鎖または二本鎖の形態の、デオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドおよびそのポリマーをいう。具体的に限定しない限りは、この用語には、参照核酸と同様の結合特性を有し、天然に存在するヌクレオチドと同様の様式で代謝される、天然ヌクレオチドの類似体を含有する核酸が包含される。別段に指定しない限りは、特定の核酸配列には、保存的に改変されたその変異体(例えば縮重コドン置換)および相補的配列、ならびに明確に示した配列も暗黙的に包含される。具体的には、縮重コドン置換は、1つもしくは複数の選択した(またはすべての)コドンの3番目の位置が、混合塩基および/またはデオキシイノシン残基で置換されている配列を作製することによって達成し得る(Batzer他(1991)Nucleic Acid Res.、19:5081;Ohtsuka他(1985)J.Biol.Chem.、260:2605〜2608;Cassol他(1992);Rossolini他(1994)Mol.Cell.Probes、8:91〜98)。用語、核酸は、遺伝子、cDNA、および遺伝子によってコードされているmRNAと互換性があるように使用される。
本明細書中で使用するDNAセグメントは、別のDNAセグメントと機能的な関係で配置されている場合に、「作動可能に連結している」といわれる。例えば、シグナル配列のDNAは、融合タンパク質の分泌に参加するプレタンパク質として発現される場合に、本発明の融合タンパク質をコードしているDNAと作動可能に連結しており、プロモーターまたはエンハンサーは、配列の転写を刺激する場合に、コード配列と作動可能に連結している。一般に、作動可能に連結しているDNA配列は連続的であり、シグナル配列または融合タンパク質の場合は、連続的かつ読取り相にある。しかし、エンハンサーは、それらが調節する転写のコード配列と連続的である必要はない。この状況では、連結は、好都合な制限部位またはその代わりに挿入されたアダプターもしくはリンカーでのライゲーションによって達成する。
本明細書中で使用する用語「プロモーター」とは、RNAポリメラーゼと結合して転写を開始することに関与するDNAの領域をいう。
本明細書中で使用する用語「組換え」とは、組換えDNAを用いた形質転換を受けた細胞、組織または生物をいう。
本明細書中で使用する、標的化部分、タンパク質、ポリペプチドまたはペプチドとは、特定の細胞型、例えば、リンパ球などの正常細胞、または癌細胞などの異常細胞と特異的に結合し、したがって、Tf融合タンパク質または化合物(薬物もしくは細胞毒性剤)をその細胞型に対して特異的に標的化するために使用し得る分子をいう。
本明細書中で使用する「治療タンパク質」とは、1つまたは複数の治療活性および/または生物活性を有するタンパク質、ポリペプチド、抗体、ペプチドまたはその断片もしくは変異体をいう。本発明によって包含される治療タンパク質には、それだけには限定されないが、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、抗体、および生物剤が含まれる。用語、ペプチド、タンパク質、およびポリペプチドは、本明細書中で互換性があるように使用される。さらに、用語「治療タンパク質」とは、治療タンパク質の内在性または天然に存在する相関物をいい得る。「治療活性」を示すポリペプチドまたは「治療上の活性がある」タンパク質とは、本明細書中に記載の治療タンパク質のうちの1つもしくは複数または他に当分野で知られているものなどの治療タンパク質に関連する、1つまたは複数の既知の生物学的活性および/または治療活性を保有するポリペプチドを意味する。非限定的な例として、「治療タンパク質」とは、疾患、状態または障害を治療、予防または寛解させるために有用なタンパク質である。そのような疾患、状態または障害は、ヒトまたは非ヒト動物、例えば獣医学的使用におけるものであり得る。
本明細書中で使用する用語「形質転換」とは、細胞内への核酸、すなわちヌクレオチドポリマーの移動をいう。本明細書中で使用する用語「遺伝子形質転換」とは、細胞内へのDNA、特に組換えDNAの移動および取り込みをいう。
本明細書中で使用する用語「形質転換体」とは、形質転換を受けた細胞、組織または生物をいう。
本明細書中で使用する用語「導入遺伝子」とは、その機能が保証される様式で生物、宿主細胞またはベクター内に挿入された核酸をいう。
本明細書中で使用する用語「トランスジェニック」とは、様々な形質転換方法のうちの1つによって、外来または改変遺伝子、特に改変Tf融合タンパク質コードしている遺伝子を受け取っており、外来または改変遺伝子を受け取る生物の種と外来または改変遺伝子が同じまたは異なる種由来である、細胞、細胞培養物、生物、細菌、真菌、動物、植物、および前述のうちの任意のものの子孫をいう。
「複数の変異体または変異体」とは、参照核酸またはポリペプチドとは異なるが、その本質的な特性を保持しているポリヌクレオチドまたは核酸をいう。一般に、変異体は全体的に非常に類似しており、多くの領域において参照核酸またはポリペプチドと同一である。本明細書中で使用する「変異体」とは、配列がネイティブ治療タンパク質とは異なるが、本明細書中の他の箇所に記載した、または他に当分野で知られている少なくとも1つのその機能特性および/または治療特性を保持している、本発明のトランスフェリン融合タンパク質の治療タンパク質部分をいう。
本明細書中で使用する用語「ベクター」とは、広く、外因性核酸をコードしている任意のプラスミド、ファージミドまたはウイルスをいう。この用語にはまた、例えばポリリシン化合物などの、ビリオンまたは細胞内への核酸の移動を促進する非プラスミド、非ファージミドおよび非ウイルス化合物も含まれると解釈される。ベクターは、核酸もしくはその突然変異体を細胞に送達するための送達ビヒクルとして適切なウイルスベクターであるか、または、ベクターは、同じ目的に適した非ウイルスベクターであり得る。DNAを細胞および組織に送達するためのウイルスおよび非ウイルスベクターの例は当分野で周知であり、例えば、Ma他(1997、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.、94:12744〜12746)に記載されている。ウイルスベクターの例には、それだけには限定されないが、組換えワクシニアウイルス、組換えアデノウイルス、組換えレトロウイルス、組換えアデノ関連ウイルス、組換えトリポックスウイルスなどが含まれる(Cranage他、1986、EMBO J.、5:3057〜3063;1994年8月18日公開の国際特許出願WO94/17810;1994年10月27日公開の国際特許出願WO94/23744)。非ウイルスベクターの例には、それだけには限定されないが、リポソーム、DNAのポリアミン誘導体、などが含まれる。
本明細書中で使用する用語「野生型」とは、天然に存在するポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列をいう。
本明細書中で使用する「骨格タンパク質」、「骨格ポリペプチド」、または「骨格」とは、ランダムペプチドなどのアミノ酸配列を融合させることができるタンパク質をいう。ペプチドは骨格に対して外因性である。
本明細書中で使用する「ランダムペプチド配列」とは、2つ以上のアミノ酸単量体からなり、確率的またはランダムプロセスによって構築されるアミノ酸配列をいう。ランダムペプチドにはフレームワークまたは骨格モチーフが含まれることができ、これは不変配列を含み得る。ランダムペプチド配列は、非変異、すなわち非ランダムのアミノ酸の一部分を含有し得る。
本明細書中で使用する「ランダムペプチドライブラリー」とは、一組のランダムペプチドをコードしている一組のポリヌクレオチド配列、これらのポリヌクレオチド配列によってコードされている一組のランダムペプチド、およびこれらのランダムペプチドを含有する融合タンパク質をいう。
本明細書中で使用する用語「擬似ランダム」とは、例えば、1つの位置での残基の可変性の度合が別の位置での残基の可変性の度合と異なるが、どの擬似ランダム位置でも、いかに制限されていようとある程度の残基の可変性が許容されるように可変性が制限されている、一組の配列をいう。
本明細書中で使用する用語「定義された配列フレームワーク」とは、非ランダム基準、一般に実験データまたは構造データの基準に基づいて選択された一組の定義された配列をいい、例えば、定義された配列フレームワークは、β−シート構造を形成すると予測される一組のアミノ酸配列を含み得るか、または、他の変異のうち、とりわけロイシンジッパーの7つ組の反復モチーフ、亜鉛−フィンガードメインを含み得る。「定義された配列カーネル」とは、制限された範囲の可変性を包含する一組の配列である。20種の慣用のアミノ酸の完全にランダムな10量体配列は(20)10個の配列のうちの任意のものであることができ、20種の慣用のアミノ酸の擬似ランダム10量体配列は(20)10個の配列のうちの任意のものであることができるが、特定の位置および/または全体的に特定の残基に対して偏りを示す一方で、定義された配列カーネルは、それぞれの残基の位置が許容される20種の慣用のアミノ酸(および/または許容される慣用でないアミノ/イミノ酸)のうちの任意のものであることを可能にした場合の潜在的な配列の最大数よりも少ない、配列の部分組である。定義された配列カーネルは、一般に、変異および不変残基の位置を含み、かつ/または、アミノ酸残基の定義された部分組などから選択された残基を含むことができる変異残基の位置を、セグメントとしてもしくは個々の選択されたライブラリーメンバー配列の全長にわたって含む。定義された配列カーネルとは、アミノ酸配列またはポリヌクレオチド配列のどちらをいうこともできる。
本明細書中で使用する「リンカー」または「スペーサー」とは、DNA結合タンパク質およびランダムペプチドなどの2つの分子を接続する分子または分子群をいい、例えば、最小限のDNA結合タンパク質からの立体障害でランダムペプチドが受容体と結合できるように、2つの分子を望ましい立体配置に配置する役割を果たす。
本明細書中で使用する用語「可変セグメント」とは、ランダム、擬似ランダム、または定義されたカーネル配列を含む、新生ペプチドの一部分をいう。可変セグメントは、変異および不変残基の位置をどちらも含むことができ、変異残基の位置での残基の可変性の度合は制限され得る。どちらの選択肢も、従事者の判断で選択される。典型的には、可変セグメントは約3〜20個のアミノ酸残基の長さ、例えば、8〜10個のアミノ酸の長さであるが、可変セグメントはより長くてもよく、また、抗体断片、核酸結合タンパク質、受容体タンパク質などの抗体部分または受容体タンパク質を含み得る。
本明細書中で使用する用語「エピトープ」とは、抗体の可変領域結合ポケットと相互作用する結合相互作用を形成することができる、抗原または他の巨大分子の一部分をいう。典型的には、そのような結合相互作用は、CDRの1つまたは複数のアミノ酸残基との分子間接触として現れる。
本明細書中で使用する用語「受容体」、「標的」、または「薬剤」とは、所定のリガンドに対して親和性を有する分子をいう。受容体は、天然に存在する分子または合成分子であることができる。受容体は、変更していない状態または他の種との凝集体として用いることができる。受容体は、結合メンバー、すなわちリガンドと、直接または特異的結合基質を介して、共有結合または非共有結合していることができる。受容体の例には、それだけには限定されないが、モノクローナル抗体および特異的抗原性決定要因(ウイルス、細胞、または他の物質上など)と反応性を有する抗血清を含めた抗体、細胞膜受容体、抗原、分子を含有するエピトープ、複合多糖および糖タンパク質、酵素ならびにホルモン受容体が含まれる。
本明細書中で使用する用語「リガンド」または「リガンド部分」とは、特定の受容体または薬剤によって認識される、ランダムペプチドまたは可変セグメント配列などの分子をいう。当業者には理解されるように、分子(または巨大分子複合体)は、受容体およびリガンドの両方であることができる。
本明細書中で使用する「融合した」、「複合体形成した」または「作動可能に連結している」とは、骨格構造の安定性に対する混乱が最小限となるような様式で、ランダムペプチドと骨格タンパク質とは一緒に連結されていることを意味する。
本明細書中で使用する用語「単鎖抗体」とは、ポリペプチド結合、一般にスペーサーペプチド(例えば[Gly−Gly−Gly−Gly−Ser]x配列番号17)を介した連結で、VHドメインおよびVLドメインを含み、アミノおよび/またはカルボキシ末端で追加のアミノ酸配列を含み得る、ポリペプチドをいう。例えば、単鎖抗体は、コードされているポリヌクレオチドを連結するための係留セグメントを含み得る。例として、scFvは単鎖抗体である。単鎖抗体は、一般に、免疫グロブリンスーパーファミリーの遺伝子によって実質的にコードされている少なくとも10個の連続的なアミノ酸の、1つまたは複数のポリペプチドセグメントからなるタンパク質であり(例えば、本明細書中に参考として組み込まれている、免疫グロブリン遺伝子スーパーファミリー(The Immunoglobulin Gene Superfamily)、A.F.WilliamsおよびA.N.Barclay、免疫グロブリン遺伝子(Immunoglobulin Genes)、T.Honjo、F.W.Alt、およびT.H.Rabbitts編、(1989)Academic Press:カリフォルニア州San Diego、ページ361〜387参照)、最も頻繁には、げっ歯類、非ヒト霊長類、トリ、ブタ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、またはヒト重鎖もしくは軽鎖の遺伝子配列によってコードされている。機能的な単鎖抗体は、一般に、特異的な標的分子、典型的には受容体または抗原(エピトープ)と結合する特性が保持されるように、免疫グロブリンスーパーファミリー遺伝子産物の十分な部分を含有する。
本明細書中で使用する用語「相補性決定領域」および「CDR」とは、KabatおよびChothiaのCDRの定義によって例示されるように当分野で認識されている用語をいい、また、一般に超可変領域または超可変ループとしても知られる。ChothiaおよびLesk(1987)J.Mol.Biol.、196:901;Chothia他(1989)Nature、342:877;E.A.Kabat他、免疫学的に関心のあるタンパク質の配列(Sequences of Proteins of Immunological Interest)(国立衛生研究所、メリーランド州Bethesda)(1987);ならびにTramontano他(1990)J.Mol.Biol.、215:175を参照されたい。可変領域ドメインは、典型的には、アミノ末端で天然に存在する免疫グロブリン鎖の約105〜115個のアミノ酸、例えばアミノ酸1〜110を含むが、若干短いまたは長い可変ドメインも単鎖抗体の形成に適している。
免疫グロブリンの軽鎖または重鎖可変領域は、CDRとも呼ばれる3つの超可変領域によって中断された「フレームワーク」領域からなる。フレームワーク領域およびCDRの範囲は正確に定義されている。「免疫学的に関心のあるタンパク質の配列(Sequences of Proteins of Immunological Interest)」、E.Kabat他、第4版、米国保険社会福祉省、メリーランド州Bethesda(1987)を参照されたい。様々な軽鎖または重鎖のフレームワーク領域の配列は、種内で比較的保存されている。本明細書中で使用する「ヒトフレームワーク領域」とは、天然に存在するヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域と実質的に同一(約85%以上、通常は90〜95%以上)なフレームワーク領域である。抗体のフレームワーク領域、すなわち、構成要素である軽鎖および重鎖の合わせたフレームワーク領域は、CDRを配置および整列させる役割を持つ。CDRは、抗原のエピトープと結合することを主に担っている。
別段に定義しない限りは、本明細書中で使用するすべての技術用語および専門用語は、本発明の属する分野の技術者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書中に記載したものに類似または均等なすべての方法および材料を、本発明の実施または試験において使用することができるが、好ましい方法および材料を記載する。
トランスフェリンおよびトランスフェリンの改変
本発明の融合タンパク質には、ランダムペプチドまたはCDRなどのリガンドを受容体または薬剤に提示することができる、トランスフェリン(Tf)タンパク質またはその一部分が含まれる。Tf部分はストーク部分のN末端と融合している。融合タンパク質のTfタンパク質またはその一部分は、融合タンパク質のTf「の一部分」、「領域」または「部分」と呼ばれ得る。本明細書中で使用する、トランスフェリン融合タンパク質とは、ストーク部分と融合したトランスフェリンタンパク質もしくは部分であり、細胞壁連結メンバーを含有し、アンカー部分を含有していてもよいか、または、細胞膜アンカーと直接融合したトランスフェリンタンパク質もしくは部分である。
任意のトランスフェリンを用いて本発明の改変Tf融合タンパク質を作製し得る。例として、野生型ヒトTf(Tf)は、約75kDa(グリコシル化を考慮に入れず)の679個のアミノ酸のタンパク質であり、2つの主ローブまたはドメイン、N(約330個のアミノ酸)およびC(約340個のアミノ酸)を有し、これは遺伝子複製に起源すると考えられている。すべてその全体が本明細書中に参考として組み込まれているGenBank受託番号NM001063、XM002793、M12530、XM039845、XM039847およびS95936(www.ncbi.nlm.nih.gov)、ならびに配列番号1、2および3を参照されたい。2つのドメインは時間と共に分岐しているが、高い度合の同一性/類似度を保持している。
NおよびCドメインのそれぞれは、2つのサブドメイン、すなわち、N1およびN2、C1およびC2へとさらに分けられる。Tfの機能は、鉄を身体の細胞へと輸送することである。このプロセスは、すべての細胞、特に活発に成長中の細胞上で発現されるTf受容体(TfR)によって媒介される。TfRは鉄と結合した形態のTf(2つの鉄分子が1個の受容体と結合している)を認識し、その後、エンドサイトーシスが起こり、ここでTfR/Tf複合体がエンドソームに輸送され、この時点でpHが局所的に低下する結果、結合した鉄が放出され、TfR/Tf複合体が細胞表面へと再循環され、Tf(その鉄が結合していない形態ではアポTfとして知られる)が放出される。受容体結合は、主にTfのCドメインを介するものである。グリコシル化されていない鉄と結合したTfは受容体と結合するので、Cドメイン中の2つのグリコシル化部位は受容体結合に関与していないと考えられる。
それぞれのTf分子は2つの鉄イオン(Fe3+)を保有することができる。これらは、N1およびN2、C1およびC2サブドメインの間の空間中に複合体形成されており、分子の立体構造変化をもたらす。
ヒトトランスフェリンでは、鉄結合部位は、少なくとも配列番号3のアミノ酸、Asp63(ネイティブTfシグナル配列が含まれる配列番号2のAsp82)、Asp392(配列番号2のAsp411)、Tyr95(配列番号2のTyr114)、Tyr426(配列番号2のTyr445)、Tyr188(配列番号2のTyr207)、Tyr514または517(配列番号2のTyr533またはTyr536)、His249(配列番号2のHis268)、およびHis585(配列番号2のHis604)を含む。ヒンジ領域は、少なくとも配列番号3のNドメインアミノ酸残基94〜96、245〜247および/または316〜318、ならびにCドメインアミノ酸残基425〜427、581〜582および/または652〜658を含む。炭酸結合部位は、少なくとも配列番号3のアミノ酸、Thr120(配列番号2のThr139)、Thr452(配列番号2のThr471)、Arg124(配列番号2のArg143)、Arg456(配列番号2のArg475)、Ala126(配列番号2のAla145)、Ala458(配列番号2のAla477)、Gly127(配列番号2のGly146)、およびGly459(配列番号2のGly478)を含む。
本発明の一実施形態では、融合タンパク質には改変ヒトトランスフェリンが含まれるが、ヒトTf変異体、ウシ、ブタ、ヒツジ、イヌ、ウサギ、ラット、マウス、ハムスター、ハリモグラ、カモノハシ、ニワトリ、カエル、イモムシ、サル、類人猿、ならびに他のウシ科、イヌ科およびトリ科の種を含めた、任意の動物Tf分子を用いて本発明の融合タンパク質を生成し得る。これらのTf配列はすべて、GenBankおよび他の公開データベースから入手可能である。ヒトTfヌクレオチド配列が利用可能であり(配列番号1、2および3ならびに上述したwww.ncbi.nlm.nih.govから入手可能な受託番号を参照)、これを用いて、TfまたはTfのドメインと選択した治療分子との遺伝子融合体を作製することができる。融合体はまた、ラクトトランスフェリン(ラクトフェリン)GenBank受託番号NM_002343)またはメラノトランスフェリンなどの関連分子からも作製し得る。
ラクトフェリン(Lf)は天然の防御鉄結合タンパク質であり、抗細菌、抗糸状菌、抗ウイルス、抗新生物および抗炎症性活性を保有することが判明している。このタンパク質は、常在菌叢に一般的にさらされている外分泌液、すなわち乳、涙、経鼻浸出液、唾液、気管支粘液、胃腸管液、頚膣粘液および精液中に存在する。さらに、Lfは循環多形核好中球(PMN)の二次特異的顆粒の主要な構成要素である。敗血性領域におけるPMNの脱顆粒の際にアポタンパク質が放出される。Lfの主な機能は、フリーラジカルに媒介される損傷を抑制し、浸潤する微生物および新生細胞の金属利用能を減少させるために、流体中および炎症領域中の遊離鉄を捕捉することである。成体における125I Lfの代謝回転率を検査した研究では、Lfは肝臓および脾臓によって迅速に取り込まれ、放射活性が肝臓および脾臓中で数週間持続したことが示された(Bennett他(1979)、Clin.Sci.、(ロンドン)57:453〜460)。
一実施形態では、本発明の融合タンパク質のトランスフェリン部分には、トランスフェリンスプライシング変異体が含まれる。一例では、トランスフェリンスプライシング変異体は、ヒトトランスフェリンのスプライシング変異体であることができる。具体的な一実施形態では、ヒトトランスフェリンスプライシング変異体は、Genbank受託番号AAA61140のものであることができる。
別の実施形態では、本発明の融合タンパク質のトランスフェリン部分には、ラクトフェリンスプライシング変異体が含まれる。一例では、ヒト血清ラクトフェリンスプライシング変異体は、好中球ラクトフェリンの新規スプライシング変異体であることができる。具体的な一実施形態では、好中球ラクトフェリンスプライシング変異体は、Genbank受託番号AAA59479のものであることができる。別の具体的な実施形態では、好中球ラクトフェリンスプライシング変異体は、アミノ酸配列EDCIALKGEADA(配列番号4)を含むことができ、これには新規のスプライス変異領域が含まれる。
融合はまた、メラノトランスフェリン(GenBank受託番号NM_013900、ネズミメラノトランスフェリン)を用いても作製し得る。メラノトランスフェリンとは、悪性黒色腫細胞中に高レベルで見つかるグリコシル化されたタンパク質であり、最初にヒト黒色腫抗原p97と命名された(Brown他、1982、Nature、296:171〜173)。これは、ヒト血清トランスフェリン、ヒトラクトフェリン、およびニワトリトランスフェリンと高い配列相同性を有する(Brown他、1982、Nature、296:171〜173;Rose他、Proc.Natl.Acad.Sci.、1986、83:1261〜1265)。しかし、これらのタンパク質とは異なり、メラノトランスフェリンに対する細胞受容体は同定されていない。メラノトランスフェリンは鉄と可逆的に結合し、2つの形態で存在し、その一方はグリコシルホスファチジルイノシトールアンカーによって細胞膜に結合し、他方の形態は可溶性かつ活発に分泌される(Baker他、1992、FEBS Lett、298:215〜218;Alemany他、1993、J.Cell Sci.、104:1155〜1162;Food他、1994、J.Biol.Chem.、274:7011〜7017)。
改変Tf融合は、任意のTfタンパク質、断片、ドメイン、または遺伝子操作したドメインを用いて作製し得る。例えば、融合タンパク質は、ネイティブTfシグナル配列を有するまたは有さない完全長Tf配列を用いて作製し得る。トランス体も個々のNまたはCドメインなどの単一のTfドメインを用いて作製し得る。トランス体はまた、2つのNドメインまたは2つのCドメインなどの2つのTfドメインを用いても作製し得る。一部の実施形態では、グリコシル化、鉄結合および/またはTf受容体結合を減少、阻害または防止するようにCドメインが変更されている、治療タンパク質と単一のCドメインとの融合を生成し得る。他の実施形態では、Tfグリコシル化部位はCドメイン中に存在し、Nドメインはそれ自体では鉄またはTf受容体と結合しないので、単一のNドメインの使用が有利である。一実施形態では、Tf融合タンパク質は、高レベルで発現される単一のNドメインを有する。
本明細書中で使用する、N様ドメインとして機能するように改変したC末端ドメインまたはローブは、ネイティブまたは野生型Nドメインもしくはローブと実質的に同様のグリコシル化パターンまたは鉄結合特性を示すように改変されている。一実施形態では、Cドメインまたはローブは、グリコシル化されておらず、かつ関連するCドメイン領域またはアミノ酸がネイティブまたは野生型Nドメインの対応する領域または部位中に存在するものへと置換されることによって鉄を結合しないように、改変されている。
本明細書中で使用する「2つのNドメインまたはローブ」を含むTf部分には、ネイティブCドメインまたはローブを第2のネイティブまたは野生型Nドメインもしくはローブまたは改変したNドメインもしくはローブで置き換えるように、または、野生型または改変Nドメインと実質的に同様に機能するように改変されているCドメインを含有するように、改変されたTf分子が含まれる。その全体が本明細書中に参考として組み込まれている米国仮特許出願60/406,977号を参照されたい。
2つのドメインの三次元構造を重ね合わすこと(Swiss PDB Viewer 3.7b2、Iterative Magic Fit)、および直接アミノ酸アラインメント(ClustalW多重アラインメント)による、2つのドメインの分析により、2つのドメインが時間と共に分岐していることが明らかとなっている。アミノ酸のアラインメントにより、2つのドメイン間で42%の同一性および59%の類似度が示されている。しかし、Nドメインの約80%が構造的等価性についてCドメインと一致する。Cドメインはまた、Nドメインと比較していくつかの余分なジスルフィド結合も有する。
NおよびCドメインの分子モデルのアラインメントにより、以下の構造的等価性が明らかとなっている。
2つのドメインのジスルフィド結合は、以下のようにアラインメントされる。
一実施形態では、融合タンパク質のトランスフェリン部分には、トランスフェリンの少なくとも2つのN末端ローブが含まれる。さらなる実施形態では、融合タンパク質のトランスフェリン部分には、ヒト血清トランスフェリンに由来するトランスフェリンの少なくとも2つのN末端ローブが含まれる。
別の実施形態では、融合タンパク質のトランスフェリン部分には、配列番号3のAsp63、Gly65、Tyr95、Tyr188、およびHis249からなる群から選択された少なくとも1つのアミノ酸残基に突然変異を有するトランスフェリンの少なくとも2つのN末端ローブが含まれるか、それを含むか、またはそれからなる。
別の実施形態では、改変された融合タンパク質のトランスフェリン部分には、配列番号3のLys206またはHis207に突然変異を有する組換えヒト血清トランスフェリンN末端ローブ突然変異体が含まれる。
別の実施形態では、融合タンパク質のトランスフェリン部分には、トランスフェリンの少なくとも2つのC末端ローブが含まれるか、それを含むか、それから本質的になるか、またはそれからなる。さらなる実施形態では、融合タンパク質のトランスフェリン部分には、ヒト血清トランスフェリンに由来するトランスフェリンの少なくとも2つのC末端ローブが含まれる。
さらなる実施形態では、C末端ローブ突然変異体にはさらに、配列番号3のAsn413およびAsn611のうちの少なくとも1つの突然変異が含まれ、これはグリコシル化を許容しない。
別の実施形態では、トランスフェリン部分には、配列番号3のAsp392、Tyr426、Tyr514、Tyr517およびHis585からなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸残基に突然変異を有するトランスフェリンの少なくとも2つのC末端ローブが含まれ、突然変異体は金属イオンと結合する能力を保持している。代替実施形態では、トランスフェリン部分には、配列番号3のTyr426、Tyr514、Tyr517およびHis585からなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸残基に突然変異を有するトランスフェリンの少なくとも2つのC末端ローブが含まれ、突然変異体は金属イオンと結合する能力が低下している。別の実施形態では、トランスフェリン部分には、配列番号3のAsp392、Tyr426、Tyr517およびHis585からなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸残基に突然変異を有するトランスフェリンの少なくとも2つのC末端ローブが含まれ、突然変異体は金属イオンと結合する能力を保持しておらず、Nドメインと実質的に同様に機能する。
一部の実施形態では、TfまたはTf部分は、融合タンパク質のTfまたはTf部分およびリガンドが融合タンパク質の残りの部分から切断されている場合に、融合していない状態、すなわちTfと融合していないリガンドのin vivo循環半減期、血清安定性(半減期)、in vitro安定性または生体利用度と比較して、リガンド、すなわち治療剤のin vivo循環半減期、血清安定性、in vitro溶液安定性または生体利用度が増加するために十分な長さである。安定性、in vivo循環半減期または生体利用度のそのような増加は、融合していないリガンド部分領域を超えて約30%、50%、70%、80%、90%以上の増加であり得る。一部の事例では、改変トランスフェリンを含むリガンド部分は、融合していない状態のリガンドと比較して約1日以上、1〜2日以上、3〜5日以上、5〜10日以上、10〜15日以上、10〜20日以上、約12〜18日または約14〜17日の血清半減期を示す。
TfのCドメインが融合タンパク質の一部である場合、2つのN結合型グリコシル化部位、配列番号3のN413およびN611に対応するアミノ酸残基は、酵母系中で発現させるために、グリコシル化または過マンノシル化を防止し、融合タンパク質の血清半減期を延長させるために、突然変異させ得る(アシアロ−、または一部の例ではモノシアロ−Tfもしくはジシアロ−Tfを産生するため)。N413およびN611に対応するTfアミノ酸に加えて、N−X−S/Tグリコシル化部位内またはそれに隣接する残基の突然変異は、グリコシル化を防止または実質的に減少させる。Funk他の米国特許第5,986,067号を参照されたい。例えば、本発明には、アミノ酸S415およびT613の改変が含まれる。一実施形態では、トランスフェリン部分は、S415AおよびT613Aの改変を含有する。本実施形態では、アミノ酸の改変は、配列番号3のS415およびT613に対応する。
ピキア・パストリス中で発現されるTfのNドメインは、S32において単一の六単糖でO結合型グリコシル化されることも報告されており、これも、そのようなグリコシル化を防止するために突然変異または改変し得る。さらに、O結合型グリコシル化は、酵母宿主細胞中で、PMT遺伝子のうちの1つまたは複数における突然変異を用いて減少または排除し得る。
したがって、本発明の一実施形態では、融合タンパク質には、トランスフェリンが、それだけには限定されないが、Tfのアシアロ−、モノシアロ−およびジシアロ−形態を含めて減少したグリコシル化を示す、改変トランスフェリン分子が含まれる。別の実施形態では、融合タンパク質のトランスフェリン部分には、グリコシル化を防止するために突然変異させた組換えトランスフェリン突然変異体が含まれる。別の実施形態では、融合タンパク質のトランスフェリン部分には、完全にグリコシル化された組換えトランスフェリン突然変異体が含まれる。さらなる実施形態では、融合タンパク質のトランスフェリン部分には、グリコシル化を防止するために突然変異させた組換えヒト血清トランスフェリン突然変異体が含まれ、配列番号3のAsn413およびAsn611のうちの少なくとも1つが、グリコシル化を許容しないアミノ酸へと突然変異している。別の実施形態では、融合タンパク質のトランスフェリン部分には、グリコシル化を防止または実質的に減少させるために突然変異させた組換えヒト血清トランスフェリン突然変異体が含まれ、突然変異は、N−X−S/Tグリコシル化部位内の残基に対するものであり得る。さらに、グリコシル化は、セリンまたはスレオニン残基を突然変異させることによって減少または防止し得る。例えば、本発明の一実施形態では、融合タンパク質のトランスフェリン部分には、グリコシル化を防止するために突然変異させた組換えヒト血清トランスフェリン突然変異体が含まれ、配列番号3のSer415およびThr613のうちの少なくとも1つが、グリコシル化を許容しないアミノ酸へと突然変異している。さらに、Xをプロリンに変更することでグリコシル化が阻害されることが知られている。
以下により詳述するように、本発明の改変Tfを含む改変Tf融合タンパク質はまた、鉄と結合しないおよび/またはTf受容体と結合しないように遺伝子操作してもよい。本発明の他の実施形態では、鉄結合は保持され、Tfの鉄結合能力を用いて、治療タンパク質またはペプチド(複数可)を細胞の内部および/または血液脳関門(BBB)を越えて送達し得る。Nドメインは、鉄をロードした場合に単独ではTfRと結合せず、鉄と結合したCドメインはTfRと結合するが、全分子と同じ親和性ではない。
別の実施形態では、トランスフェリン融合タンパク質のトランスフェリン部分には、突然変異を有する組換えトランスフェリン突然変異体は金属イオンと結合する能力を保持していない。代替実施形態では、トランスフェリン融合タンパク質のトランスフェリン部分には突然変異を有する組換えトランスフェリン突然変異体が含まれ、突然変異体の金属イオンに対する結合親和性は、野生型血清トランスフェリンよりも弱い。代替実施形態では、トランスフェリン融合タンパク質のトランスフェリン部分には突然変異を有する組換えトランスフェリン突然変異体が含まれ、突然変異体の金属イオンに対する結合親和性は、野生型血清トランスフェリンよりも強い。
別の実施形態では、トランスフェリン部分には突然変異を有する組換えトランスフェリン突然変異体が含まれ、突然変異体は、トランスフェリン受容体と結合する能力を保持していない。代替実施形態では、トランスフェリン部分には突然変異を有する組換えトランスフェリン突然変異体が含まれ、突然変異体のトランスフェリン受容体に対する結合親和性は、野生型血清トランスフェリンよりも弱い。代替実施形態では、トランスフェリン部分には突然変異を有する組換えトランスフェリン突然変異体が含まれ、突然変異体のトランスフェリン受容体に対する結合親和性は、野生型血清トランスフェリンよりも強い。
別の実施形態では、トランスフェリン部分には突然変異を有する組換えトランスフェリン突然変異体が含まれ、突然変異体は、炭酸イオンと結合する能力を保持していない。代替実施形態では、トランスフェリン部分には突然変異を有する組換えトランスフェリン突然変異体が含まれ、突然変異体の炭酸イオンに対する結合親和性は、野生型血清トランスフェリンよりも弱い。代替実施形態では、トランスフェリン部分には突然変異を有する組換えトランスフェリン突然変異体が含まれ、突然変異体の炭酸イオンの結合親和性は、野生型血清トランスフェリンよりも強い。
別の実施形態では、トランスフェリン部分には、配列番号3のAsp63、Gly65、Tyr95、Tyr188、His249、Asp392、Tyr426、Tyr514、Tyr517およびHis585からなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸残基に突然変異を有する組換えヒト血清トランスフェリン突然変異体が含まれ、突然変異体は金属イオンと結合する能力を保持している。代替実施形態では、配列番号3のAsp63、Gly65、Tyr95、Tyr188、His249、Asp392、Tyr426、Tyr514、Tyr517およびHis585からなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸残基に突然変異を有する組換えヒト血清トランスフェリン突然変異体であり、突然変異体は金属イオンと結合する能力が低下している。別の実施形態では、配列番号3のAsp63、Gly65、Tyr95、Tyr188、His249、Asp392、Tyr426、Tyr517およびHis585からなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸残基に突然変異を有する組換えヒト血清トランスフェリン突然変異体であり、突然変異体は金属イオンと結合する能力を保持していない。
別の実施形態では、トランスフェリン部分には、配列番号3のLys206またはHis207に突然変異を有する組換えヒト血清トランスフェリン突然変異体が含まれ、突然変異体の金属イオンに対する結合力は、野生型ヒト血清トランスフェリンよりも強い(その全体が本明細書中に参考として組み込まれている米国特許第5,986,067号参照)。代替実施形態では、トランスフェリン部分には、配列番号3のLys206またはHis207に突然変異を有する組換えヒト血清トランスフェリン突然変異体が含まれ、突然変異体の金属イオンに対する結合力は、野生型ヒト血清トランスフェリンよりも弱い。さらなる実施形態では、トランスフェリン部分には、配列番号3のLys206またはHis207に突然変異を有する組換えヒト血清トランスフェリン突然変異体が含まれ、突然変異体は金属イオンと結合しない。
それだけには限定されないが、一般的に利用可能な分子技術、例えば、Sambrook他、分子クローニング:実験室の手引き(Molecular Cloning:A Laboratory Manual)、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、1989に開示されているものを含めた任意の利用可能な技術を使用して、本発明の融合タンパク質を生成し得る。当分野で周知の部位特異的突然変異誘発を達成するための技術を用いてヌクレオチド置換を実施する場合、コードされているアミノ酸の変化は、好ましくは軽微な性質のもの、すなわち保存的アミノ酸置換であるが、他の非保存的置換も、特に改変トランスフェリン部分、例えば、減少したグリコシル化、減少した鉄結合などを示す改変融合タンパク質を生成する場合に、企図される。アミノ酸置換、小さな欠失または挿入、典型的には約30個のアミノ酸のうちの1つ、トランスフェリンドメイン間の挿入、小さなアミノもしくはカルボキシル末端の伸長、例えばアミノ末端のメチオニン残基、またはトランスフェリンドメイン間の50、40、30、20もしくは10個未満の残基の小さなリンカーペプチドまたはトランスフェリンタンパク質と治療タンパク質もしくはペプチド、リガンド、または抗体可変領域もしくはストーク領域との連結、または、ポリヒスチジン路、抗原性エピトープまたは結合ドメインなどの精製を促進する小さな伸長が、特に企図される。
保存的アミノ酸の置換の例は、塩基性アミノ酸(アルギニン、リシン、ヒスチジンなど)、酸性アミノ酸(グルタミン酸およびアスパラギン酸など)、極性アミノ酸(グルタミンおよびアスパラギンなど)、疎水性アミノ酸(ロイシン、イソロイシン、バリンなど)、芳香族アミノ酸(フェニルアラニン、トリプトファン、チロシンなど)ならびに小アミノ酸(グリシン、アラニン、セリン、スレオニン、メチオニンなど)の群内など、同じ群内で行う置換である。
非保存的置換とは、1つの群のアミノ酸を別の群のアミノ酸で置換することを包含する。例えば、非保存的置換には、極性アミノ酸で疎水性アミノ酸を置換することが含まれる。ヌクレオチド置換の一般的な説明には、例えば、Ford他(1991)、Prot.Exp.Pur.、2:95〜107を参照されたい。非保存的置換、欠失および挿入は、Tf受容体に対する鉄の結合を示さないもしくは減少した結合を示す、および/または融合タンパク質の結合を示さないもしくは減少した結合を示す、本発明のTf融合タンパク質、好ましくはトランス体を生成するために特に有用である。
本発明のポリペプチドおよびタンパク質では、以下の慣用のリストに従ってアミノ酸を指定するために、以下のシステムに従う。
鉄結合および/または受容体結合は、配列番号3のTf Nドメイン残基Asp63、Tyr95、Tyr188、His249ならびに/またはCドメイン残基Asp392、Tyr426、Tyr514および/もしくはHis585のうちの1つまたは複数に対応するアミノ酸残基の欠失、置換またはその中への挿入を含めた突然変異によって、減少または混乱させ得る。鉄結合はまた、配列番号3のアミノ酸Lys206、His207またはArg632への突然変異によっても影響を与え得る。炭酸結合は、配列番号3のTf Nドメイン残基Thr120、Arg124、Ala126、Gly127ならびに/またはCドメイン残基Thr452、Arg456、Ala458および/もしくはGly459のうちの1つまたは複数に対応するアミノ酸残基の欠失、置換またはその中への挿入を含めた突然変異によって、減少または混乱させ得る。炭酸結合の減少または混乱は、鉄および/または受容体結合に有害な影響を与え得る。
Tf受容体の結合は、鉄結合について上述したTf Nドメイン残基のうちの1つまたは複数に対応するアミノ酸残基の欠失、置換またはその中への挿入を含めた突然変異によって、減少または混乱させ得る。
上述のように、グリコシル化は、Cドメイン残基N413および/またはN611に対応するN−X−S/T部位内のTf Cドメイン残基のうちの1つまたは複数に対応するアミノ酸残基の欠失、置換またはその中への挿入を含めた突然変異によって、減少または防止し得る。米国特許第5,986,067号を参照されたい。例えば、N413および/またはN611をGlu残基に突然変異させてもよく、隣接アミノ酸であってもよい。一実施形態では、S415および/またはT613をAla残基に突然変異させる。
本発明のTf融合タンパク質がグリコシル化、鉄結合、炭酸結合および/または受容体結合を防止するように改変されていない場合は、グリコシル化、鉄および/または炭酸イオンを融合タンパク質から剥ぎ取るまたは切断除去し得る。例えば、利用可能な脱グリコシラーゼを用いて、グリコシル化残基、特にTf部分と結合している糖残基を融合タンパク質から切断してもよく、グリコシル化酵素を欠く酵母を用いて、グリコシル化を防止してもよく、かつ/または組換え細胞を、グリコシル化を防止する薬剤、例えばツニカマイシンの存在下で成長させてもよい。
融合タンパク質の炭水化物はまた、融合タンパク質を脱グリコシラーゼで処理することによって、酵素的に減少または完全に取り除いてもよい。脱グリコシラーゼは当分野で周知である。脱グリコシラーゼの例には、それだけには限定されないが、ガラクトシダーゼ、PNGase A、PNGase F、グルコシダーゼ、マンノシダーゼ、フコシダーゼ、およびEndo H脱グリコシラーゼが含まれる。
鉄結合およびTf受容体の認識に必要な立体構造変化を防止するためにヒンジ領域を改変することなど、Tfの三次元構造を変更するためにさらなる突然変異をTfに行い得る。例えば、突然変異を、Nドメインアミノ酸残基94〜96、245〜247および/または316〜318ならびにCドメインアミノ酸残基425〜427、581〜582および/または652〜658の中または周辺に行い得る。さらに、Tfの構造および機能を変更するために、これらの部位のフランキング領域の中または周辺に突然変異を行い得る。
本発明の一態様では、融合タンパク質は、リガンドの半減期または生体利用度を延長するため、および一部の例ではリガンドを細胞内に送達するために、担体タンパク質として機能することができ、血液脳関門を横断する能力を保持している。代替実施形態では、融合タンパク質には改変トランスフェリン分子が含まれ、トランスフェリンは、血液脳関門を横断する能力を保持していない。
別の実施形態では、融合タンパク質には改変トランスフェリン分子が含まれ、トランスフェリン分子は、トランスフェリン受容体と結合して抗体可変領域を細胞内に輸送する能力を保持している。代替実施形態では、融合タンパク質には改変トランスフェリン分子が含まれ、トランスフェリン分子は、トランスフェリン受容体と結合して抗体可変領域を細胞内に輸送する能力を保持していない。
さらなる実施形態では、融合タンパク質には改変トランスフェリン分子が含まれ、トランスフェリン分子は、トランスフェリン受容体と結合して抗体可変領域を細胞内に輸送する能力を保持しているが、血液脳関門を横断する能力を保持していない。代替実施形態では、融合タンパク質には改変トランスフェリン分子が含まれ、トランスフェリン分子は、血液脳関門を横断する能力を保持しているが、トランスフェリン受容体と結合して抗体可変領域を細胞内に輸送する能力を保持していない。
トランスフェリン融合タンパク質
本発明の融合タンパク質は、Tfタンパク質のN末端および/またはC末端と結合したリガンド、抗体可変領域またはランダムペプチドを1つまたは複数コピー含有し得る。一実施形態では、リガンド部分は、Tfタンパク質のN末端に結合している。一部の実施形態では、リガンド、可変領域またはペプチドは、Tfタンパク質のNおよびC末端の両方に結合しており、融合タンパク質は、これらの領域の1つまたは複数の均等物を、Tfの片方または両方の末端に含有し得る。
他の実施形態では、1つまたは複数のリガンドは、Tfのループの1つまたは複数内などの、トランスフェリンペプチド内に、例えばTfタンパク質の既知のドメイン内に挿入する。Ali他(1999)J.Biol.Chem.、274(34):24066〜24073を参照されたい。
本発明の一実施形態では、リガンドをトランスフェリンのNローブ内に挿入する。例えば、以下の表に示すように、本発明にはまた、1つまたは複数の挿入を、NローブのN1およびN2ドメイン内の他の位置またはその周辺で行うことができることも含まれる。
さらに別の実施形態では、リガンドは、トランスフェリンタンパク質の表面露出アミノ酸残基でランダム化されたアミノ酸残基を含む。ランダム化されたアミノ酸残基は、表面露出アミノ酸の一領域内または表面露出アミノ酸の複数の領域内に位置することができる。例えば、ランダム化されたアミノ酸は、配列番号3のアミノ酸残基約85〜アミノ酸残基約92、アミノ酸残基約276〜アミノ酸残基約298、またはアミノ酸残基約207〜アミノ酸残基約217からなる領域のうちの1つまたは複数内に含有されることができる。本発明の一実施形態では、ランダム化されたアミノ酸残基は、配列番号3の位置Y85、G86、S87、E89、D90およびQ92に位置する。別の実施形態では、ランダム化されたアミノ酸残基は、配列番号3の位置K276、D277、K280、Q283、S286およびD297に位置し、S298に位置していてもよい。さらに別の実施形態では、ランダム化されたアミノ酸残基は、配列番号3の位置H207、S208、F211、E212およびA215に位置し、N216および/またはK217に位置していてもよい。
一領域あたりのランダム化されたアミノ酸残基の数は変動することができるが、好ましくは、少なくとも約3、少なくとも約4、少なくとも約5、少なくとも約6、少なくとも約7、少なくとも約8、少なくとも約9または少なくとも約10個以上のアミノ酸残基が一領域あたりランダム化されている。
本発明の一実施形態では、リガンド部分は、それだけには限定されないが、α4インテグリン(例えば、a4b1およびa4b7)を含めた、インテグリンと結合することができるリガンド配列などの既知のリガンド結合配列を含有する。そのようなリガンドには、それだけには限定されないが、VCAMおよびMadCAMが含まれる。その全体がすべての目的のために本明細書中に組み込まれているJackson、2002、Current Pharmaceutical Design.*:1229〜1253を参照されたい。
組織損傷および疾患をもたらす炎症プロセスが、白血球細胞表面上に発現される、α4インテグリンであるa4b1およびa4b7によって部分的に媒介されている。これらの糖タンパク質受容体は、患部組織中で発現される、その主なリガンドである血管細胞接着分子(VCAM)および粘膜アドレシン細胞接着分子(MAdCAM)との相互作用を介して、細胞接着を変調する。結合の際、一緒になったインテグリン/CAMの細胞表面での相互作用により、白血球が血管壁に堅く接着し、次いで患部組織内に侵入することがもたらされる。様々な器官内における上昇した細胞接着分子(CAM)の発現は、いくつかの自己免疫疾患と関連づけられている。本発明の一実施形態では、α4インテグリンまたはそのCAMリガンドと結合することができる1つまたは複数のペプチドを含有するトランス体(すなわち、トランスフェリンおよびリガンドを含む融合タンパク質)を、炎症を治療および/または媒介するために、対象に投与することができる。本発明の一実施形態では、α−4インテグリンまたはそのCAMリガンドと結合することができる1つまたは複数のペプチドを含有するトランス体を、自己免疫疾患を治療するために対象に投与することができる。
本発明の別の実施形態では、リガンド部分は、既知のリガンド結合配列およびランダム化されたアミノ酸残基を、リガンド結合配列内またはリガンド結合配列の片側もしくは両側のいずれかに含む。例えば、本発明には、ランダム化されたアミノ酸残基によって取り囲まれたインテグリン結合配列RGDを含有するトランスフェリン融合タンパク質が含まれる。そのような融合タンパク質は、トランスフェリン部分内、例えば、配列番号3のアミノ酸289および290の間に挿入することができる。本発明の一実施形態では、インテグリン結合配列およびランダム化されたペプチドのリガンド部分はCXXXRGDXXXCであり、Xはランダム化されたアミノ酸残基である。本発明の別の実施形態では、インテグリン結合配列およびランダム化されたペプチドのリガンド部分はXXXRGDXXXである。本発明にはまた、それだけには限定されないが、ランダム化されたペプチドによって取り囲まれたインテグリン結合配列KGDおよびランダム化されたペプチドによって取り囲まれたインテグリン結合配列LDVも含まれる。
本発明の別の実施形態では、リガンド部分は抗体可変領域である。本実施形態では、一般に、本発明のトランスフェリン融合タンパク質は、1つの改変トランスフェリン由来の領域および1つの抗体可変領域を有し得る。しかし、複数の抗体可変領域を用いて本発明のトランスフェリン融合タンパク質を生成し、それにより多機能の改変Tf融合タンパク質を生成し得る。
一実施形態では、本発明の融合タンパク質は、トランスフェリン分子またはその一部分と融合した抗体可変領域またはその一部分を含有する。別の実施形態では、本発明の融合タンパク質は、トランスフェリン分子のN末端と融合した抗体可変領域を含有する。代替実施形態では、本発明の融合タンパク質は、トランスフェリン分子のC末端と融合した抗体可変領域を含有する。さらなる実施形態では、本発明の融合タンパク質は、抗体可変領域のN末端と融合したトランスフェリン分子を含有する。代替実施形態では、本発明の融合タンパク質は、抗体可変領域のC末端と融合したトランスフェリン分子を含有する。
本発明はまた、改変トランスフェリン分子またはその一部分と融合した抗体可変領域またはその一部分を含有する融合タンパク質も提供する。
他の実施形態では、本発明の融合タンパク質は、改変トランスフェリンのN末端およびC末端の両方と融合した抗体可変領域を含有する。別の実施形態では、NおよびC末端で融合した抗体可変領域は、同じ抗原と結合する。また、同じ抗原と結合する抗体可変領域は異なる抗体に由来していてもよく、したがって、同じ標的上の異なるエピトープと結合する。代替実施形態では、NおよびC末端で融合した抗体可変領域は、異なる抗原と結合する。別の代替実施形態では、NおよびC末端と融合した抗体可変領域は、異なる抗原と結合し、これは、疾患、障害、または状態を治療または予防するために2つの異なる細胞を活性化させるために有用であり得る。別の実施形態では、NおよびC末端で融合した抗体可変領域は、異なる抗原と結合し、これは、一般的に患者内で同時に起こることが当分野で知られている疾患または障害を治療または予防するために2つの異なる抗原を架橋するために、有用であり得る。
さらに、本発明のトランスフェリン融合タンパク質はまた、目的の抗体可変領域、例えば治療タンパク質またはその断片もしくは変異体と結合する単鎖抗体を、改変トランスフェリンの内部領域内に挿入することによっても生成し得る。改変トランスフェリンの内部領域には、それだけには限定されないが、ループ領域、鉄結合部位、ヒンジ領域、炭酸水素結合部位または受容体結合ドメインが含まれる。
改変トランスフェリン分子のタンパク質配列内にはいくつかのループまたはターンが存在し、これらはジスルフィド結合によって安定化されている。これらのループは、特異的生物活性を有する改変トランスフェリン分子を作製するための、治療上の活性があるペプチド、好ましくは抗体可変領域、特に機能的となるために二次構造を要するもの、または治療タンパク質、好ましくは抗体可変領域の挿入、または内部融合に有用である。
抗体可変領域、好ましくはCDRなどのリガンドが、Tf分子の少なくとも1つのループ内に挿入されたまたはそれを置き換えた場合、挿入は、表面露出ループ領域のうちの任意のものの内部およびTfの他の領域に行い得る。例えば、挿入は、Tfのアミノ酸32〜33、74〜75、256〜257、279〜280および288〜289を含むループ内に行い得る。Ali他、上記を参照されたい。上述のように、挿入はまた、以下にさらに詳述するように、鉄および炭酸水素の結合の部位、ヒンジ領域、ならびに受容体結合ドメインなどのTfの他の領域内にも行い得る。タンパク質またはペプチドの挿入に関して改変/置き換えを受け入れられるTfタンパク質配列中のループも、ランダムペプチド挿入物のスクリーニング可能なライブラリーの開発に使用し得る。利用可能なファージおよび細菌ディスプレイシステムを含めたペプチドライブラリーを作製するために、Tfドメイン内にクローニングおよび/またはTfの末端と融合させる前に、任意の手順を用いて核酸挿入物を生成し得る。
TfのN末端は遊離しており、融合タンパク質の本体から離れる方に向いている。トランスフェリンのN末端とのリガンドまたは複数のリガンドの融合は、本発明の一実施形態である。そのような融合には、それだけには限定されないが、リガンドとTfを隔てるためのポリグリシンストレッチまたはPEAPTDリンカー(配列番号18)などのリンカー領域が含まれ得る。
TfのC末端は、埋まっているまたは部分的に埋まっており、C末端から6番目のアミノ酸でジスルフィド結合によって固定され得ると考えられる。ヒトTfでは、C末端アミノ酸はプロリンであり、これは、その方向付けに応じて、融合タンパク質を分子の本体から離れる方にまたはその内部に向くようにする。本発明の一部の実施形態では、C末端のリンカーまたはスペーサー部分を使用し得る。また、N末端付近にはプロリンも存在する。本発明の一態様では、N末端および/またはC末端のプロリンは別のアミノ酸で修飾または置換されていてもよい。本発明の別の態様では、C末端の係留を解くためにC末端ジスルフィド結合を排除し得る。
ストーク部分
本発明のストーク部分は、そのN末端でトランスフェリン部分またはリガンドと融合しており、そのC末端でアンカー部分と融合していてもよい。酵母細胞中で発現させた場合、ストーク部分のC末端は、細胞内、例えば細胞壁内に位置する。本発明の一実施形態では、ストーク部分は、融合タンパク質を酵母細胞の細胞壁と共有結合または非共有結合させる細胞壁連結メンバーとして作用する。
本発明のストーク部分は、竿様またはブラシ様の立体構造を有する。この種の立体構造は、中程度から高度にグリコシル化されたペプチドに典型的である。本発明のストーク部分は、N−グリカンまたはO−グリカンを含有する。その全体が本明細書中に参考として組み込まれている米国特許第6,114,147号を参照されたい。O−グリカンにより、N−グリカンと比較して、ストーク部分が伸長した竿様の立体構造を取りやすくなるので、O−グリカンの存在はN−グリカンよりも好ましい。ストーク部分はまた、セリンおよびスレオニングリコシル化部位の中程度から高度なグリコシル化も含有し得る。
本発明の融合タンパク質のストーク部分は、中程度から高い割合のセリンまたはスレオニン残基を含有する。例えば、本発明には、少なくとも約5%以上のセリンおよび/もしくはスレオニン残基、少なくとも約10%以上のセリンおよび/もしくはスレオニン残基、少なくとも約20%以上のセリンおよび/もしくはスレオニン残基、少なくとも約30%以上のセリンおよび/もしくはスレオニン残基、少なくとも約40%以上のセリンおよび/もしくはスレオニン残基、少なくとも約50%以上のセリンおよび/もしくはスレオニン残基、少なくとも約60%以上のセリンおよび/もしくはスレオニン残基、少なくとも約70%以上のセリンおよび/もしくはスレオニン残基、少なくとも約80%以上のセリンおよび/もしくはスレオニン残基、または少なくとも約90%以上のセリンおよび/もしくはスレオニン残基を有するストーク部分が含まれる。本発明の一実施形態では、ストーク部分は、約20〜30%のセリンおよび/もしくはスレオニン残基、約20〜40%のセリンおよび/もしくはスレオニン残基、約30〜40%のセリンおよび/もしくはスレオニン残基、約20〜50%のセリンおよび/もしくはスレオニン残基、約30〜50%のセリンおよび/もしくはスレオニン残基、約20〜60のセリンおよび/もしくはスレオニン残基または約30〜60%のセリンおよび/もしくはスレオニン残基を含有する。
ストーク部分は、少なくとも約5重量%以上のN−もしくはO−グリカン、少なくとも約10重量%以上のN−もしくはO−グリカン、少なくとも約20重量%以上のN−もしくはO−グリカン、少なくとも約30重量%以上のN−もしくはO−グリカン、少なくとも約40重量%以上のN−もしくはO−グリカン、少なくとも約50重量%以上のN−もしくはO−グリカン、少なくとも約60重量%以上のN−もしくはO−グリカン、少なくとも約70重量%以上のN−もしくはO−グリカン、少なくとも約80重量%以上のN−もしくはO−グリカン、または少なくとも約90重量%以上のN−もしくはO−グリカンを含有し得る。本発明の一実施形態では、ストーク部分は、約20〜30重量%のO−グリカン、約20〜40重量%のO−グリカン、約30〜40重量%のO−グリカン、約20〜50重量%のO−グリカン、約30〜50重量%のO−グリカン、約20〜60重量%のO−グリカンまたは約30〜60%のO−グリカンを含有する。別の実施形態では、グリカン、特にO−グリカンの存在により、ストーク部分が細胞壁のタンパク質中に存在するβグルカンと架橋結合することが可能となる。したがって、本発明のストーク部分は、細胞壁連結メンバーとして機能することができる。
ストーク部分は、ムチンタンパク質またはムチンタンパク質の一部分、すなわち、MUC型タンパク質のメンバーを含むことができる。MUC型ムチンとは、高度にグリコシル化されており、気道、胃腸管、および生殖器系の上皮中で発現される、構造的に関連する分子のファミリーであり、例えば、MUC1(GenBank受託番号AF125525)、MUC2(GenBank受託番号L21998)、MUC3(GenBank受託番号AF113616)、MUC4(GenBank受託番号AJ000281)、MUC5AC(GenBank受託番号U83139)、MUC5B(GenBank受託番号AJ001402)、MUC6(GenBank受託番号U97698)、MUC7(GenBank受託番号L13283)、MUC8(GenBank受託番号U14383)、MUC9(GenBank受託番号AW271430)がある。本発明の一実施形態では、ストーク部分は、hMUC1またはhMUC1タンパク質の一部分、例えば、配列番号70の核酸によってコードされている配列番号71および配列番号5の核酸によってコードされているポリペプチドを含有する。本発明の別の実施形態では、ストーク部分は、hMUC3またはhMUC3タンパク質の一部分を含有する。例えば、本発明には、配列番号68の核酸によってコードされている、配列番号69のhMUC3のストークが含まれる。
本発明の融合タンパク質にはまた、ムチンタンパク質、ムチン様タンパク質およびその一部分の類似体および誘導体などの変異体を含むストークも含まれる。変異体は、細胞の表面上でのタンパク質のディスプレイを最適化するために作製し得る。変異体は、当分野で知られている方法によって作製することができる。例えば、変異体は、反復アミノ酸残基を除去することならびに/またはペプチドをランダム突然変異誘発および選択に供することによって遺伝子操作することができる。
本発明のストーク部分はまた、それだけには限定されないが、AGA1(例えば配列番号72の核酸配列によってコードされている配列番号73)、MAdCAM−1、GlyCAM−1、CD34、E−セレクチン、P−セレクチン、もしくはL−セレクチン由来のコンセンサス反復、またはウイルス糖タンパク質スパイク(インフルエンザ、単純ヘルペス、ヒト免疫不全、もしくはタバコモザイクウイルスなど)ならびにその変異体および断片を含めた、ムチン以外のグリコシル化されたタンパク質から誘導することもできる。すべてその全体が本明細書中に参考として組み込まれている、国際公開公報WO01/46698、Girard他(1995)Immunity、2:113〜123、およびVan Kinken他(1998)Anal.Biochem.、265:103〜116を参照されたい。本発明には、2つ以上のグリコシル化されたタンパク質の反復またはその断片、および2つ以上の種類のグリコシル化されたタンパク質の組合せが含まれる。
本発明の別の実施形態では、ストークは、1つまたは複数の遊離システイン残基を含有するように遺伝子操作されている。1つまたは複数の遊離システイン残基は、酵母細胞の細胞壁中のタンパク質の遊離システイン残基とジスルフィド結合を形成することができる。細胞壁内での1つまたは複数のジスルフィド結合の形成は、細胞壁結合メンバーとして機能することができるストーク部分を遺伝子操作して設計するために使用することができる別の方法を表す。
本発明の融合タンパク質を酵母細胞中で発現させる場合、ストーク部分は、酵母細胞の細胞壁全体にわたるように十分な長さであることが好ましい。好ましくは、ストーク部分のN末端は細胞壁の外側に位置し、最も好ましくは、トランスフェリン部分およびリガンドと宿主酵母細胞との間の立体障害を減少させるために、酵母細胞から離れるように竿様の立体配置で伸長している。ストーク部分は、少なくとも約25個のアミノ酸、少なくとも約50個のアミノ酸、少なくとも約75個のアミノ酸、少なくとも約100個のアミノ酸、少なくとも約125個のアミノ酸、少なくとも約150個のアミノ酸、少なくとも約175個のアミノ酸、少なくとも約200個のアミノ酸、少なくとも約225個のアミノ酸、少なくとも約250個のアミノ酸、少なくとも約275個のアミノ酸、少なくとも約300個のアミノ酸、少なくとも約325個のアミノ酸、少なくとも約350個のアミノ酸、少なくとも約375個のアミノ酸、少なくとも約400個のアミノ酸、少なくとも約425個のアミノ酸、少なくとも約450個のアミノ酸、少なくとも約475個のアミノ酸の長さ、少なくとも約500個のアミノ酸の長さ、少なくとも約525個のアミノ酸の長さ、少なくとも約550個のアミノ酸の長さ、少なくとも約575個のアミノ酸の長さ、少なくとも約600個のアミノ酸の長さ、少なくとも約625個のアミノ酸の長さ、または少なくとも約650個のアミノ酸の長さであるべきである。一実施形態では、ストーク部分は約500個のアミノ酸の長さである。別の実施形態では、ストーク部分は約300〜600個のアミノ酸の長さである。
アンカー部分
本発明の融合タンパク質のアンカー部分は、融合タンパク質を宿主細胞表面または基質表面に物理的に係留させる融合タンパク質の一部分である。本発明の一実施形態では、アンカー部分は、融合タンパク質を、それだけには限定されないが哺乳動物細胞膜などの細胞膜に係留させる。本発明の別の実施形態では、アンカー部分は、融合タンパク質を、それだけには限定されないが酵母細胞壁などの細胞壁に係留または固定することができる。アンカーが融合タンパク質を細胞壁に係留させる場合、これは細胞壁連結メンバーである。
アンカー部分は、融合タンパク質を細胞壁または細胞膜に一過的に係留させることができる。本発明の一実施形態では、アンカー部分は、融合タンパク質を細胞壁または細胞膜に一過的に係留させ、これにより、ストーク部分が細胞壁と共有結合または非共有結合する機会が提供される。例えば、細胞中のアンカーの一過性の係留は、ストーク部分由来のO−グリカンが細胞壁のβグルカンと架橋結合することを可能にし得る。
本発明の一実施形態では、アンカー部分は、微生物、例えば酵母およびカビなどの下等真核生物、ならびに哺乳動物細胞系などの哺乳動物細胞の細胞膜または壁内に付着する。アンカー部分は、プロリンなどのアミノ酸を用いて細胞膜または細胞壁中にアンカーする、長いC末端を有し得る(Kok(1990)FEMS Microbiology Reviews、87:15〜42)。
アンカー部分は、グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)アンカーを使用することによって細胞にアンカーされることができる。Conzelmann他、EMBO、9:653〜661ならびにLipkeおよびOvalle(1998)J.Bacteriol.、180:3735〜3740を参照されたい。本明細書中に開示するGPIシグナルペプチドなどのGPIシグナル配列ペプチドは、GPIと融合タンパク質のC末端との結合をシグナルする。GPIシグナル自体は3つのドメイン、すなわち、GPI結合部位(ω部位)+ω部位の下流の第1および第2のアミノ酸を含有する領域、5〜10個のアミノ酸のスペーサー、ならびに10〜15個のアミノ酸の疎水性ストレッチを有する。GPIシグナルを含有するタンパク質はω部位で切断され、その結果生じるタンパク質のカルボキシ末端がGPI部分と共有結合する。この反応は小胞体内で起こる。GPI部分によって膜と会合した後、GPIと結合したタンパク質は、その後、細胞表面に輸送され、タンパク質が短いωマイナス領域中に塩基性残基(Rおよび/またはK)を含有する場合は、GPIにアンカーされたタンパク質として形質膜上に留まる。ω−4/−5部位でV、I、またはLを有し、ω−2部位でYまたはNを有するGPIと会合したタンパク質は、細胞膜内に取り込まれる。Hamada他(1999)J.Bacteriol.、181:3886〜3889;Nuoffer他(1993)J.Biol.Chem.、268:10558〜10563;De Nobel他(1994)Trends Cell Biol.、4:42〜45.;Hamada他(1998)Mol.Gen.Genet.、258:53〜59;およびVan Der Vaart他(1998)Biotechnol.Genet.Eng.Rev.、15:387〜411を参照されたい。
本発明の一実施形態では、酵母GPI YIR019Cを用いてトランスフェリン融合タンパク質のアンカー部分を提供する。図2にGPI YIR019Cの図を提供する。アミノ酸配列中のω部位(配列番号15)はグリシンであり、その片側に空間を有するように例示されている。空間はω部位の片側のスペーサー領域の指標である。太字のIおよびYアミノ酸は、それぞれω−5/−4および−2部位である。
いくつかのサッカロマイセスアンカー部分が当分野で知られており、これを用いて本発明の融合タンパク質を構築することができる。酵母GPIシグナルタンパク質の他の例には、それだけには限定されないが、YDR534C、YNL327W、YOR214C、YDR134C、YPL130、YOR009W、YER150W、YDR077W、YOR383C、YJR151C、YJR004、YJL078C、YLR110C、およびYNL300Wが含まれる。さらに、GPIシグナルタンパク質は、カニジダ・グラブラタのEPA1、カンジダ・アルビカンスのHwp1p、またはトリパノソーマ・ブルセイのVSGのGPIなどの他の生物から使用することができる。
本発明の一実施形態では、アンカー部分は、哺乳動物部分またはその誘導体もしくは断片である。本発明の別の実施形態では、GPIシグナルペプチドは、哺乳動物GPIシグナルタンパク質である。例えば、本発明には、表1に開示されているものなどの、ヒトMDP GPIシグナルタンパク質の誘導体が含まれる(実施例5参照)。
本発明にはまた、1つまたは複数の未結合のシステイン残基を有するアンカー部分を含む融合タンパク質も含まれる。システイン残基は、細胞壁中のタンパク質のシステイン残基とジスルフィド結合を形成することによって、融合タンパク質を細胞に係留させるように作用することができる。
本発明には、膜貫通ドメイン(TMD)をアンカー部分として含む融合タンパク質が含まれる。本発明の一実施形態では、TMDは、1回貫通のI型またはII型の膜タンパク質の領域である。例えば、本発明には、それだけには限定されないが、FUS1の残基70〜98が含まれる。
本発明の別の実施形態では、TMDは、マルチスパン膜タンパク質のいくつかの膜貫通領域のうちの1つまたは複数を含む。本発明の一実施形態では、TMDは、約10〜60個のアミノ酸、約15〜60個のアミノ酸、約20〜60個のアミノ酸、約30〜60個のアミノ酸または約25〜50個のアミノ酸を含むマルチスパン膜タンパク質の疎水性領域である。例えば、本発明には、それだけには限定されないが、残基25〜30、73〜100、171〜198、249〜277、714〜742、761〜789、838〜858、864〜884、940〜967および979〜1000(サッカロマイセスゲノムデータベースのアノテーション)からなる群からのサッカロマイセスのSTE6由来の、1つまたは複数のTMDが含まれる。
別の実施形態では、アンカー部分を用いて、トランスフェリン融合タンパク質をマイクロアレイなどの固体形基質に係留させる。アンカー部分は、好ましくは、ポリヒスチジン、SEAP、またはM1およびM2フラグなどの、短いエピトープタグ(すなわち、抗体、典型的にはモノクローナル抗体によって認識される配列)である。すべてその全体が参考として組み込まれている、Bush他(1991)J.Biol.Chem.、266:13811〜13814、Berger他(1988)Gene、66:1〜10、米国特許第5,011,912号、米国特許第4,851,341号、米国特許第4,703,004号、および米国特許第4,782,137号を参照されたい。一実施形態では、ストークドメインは、抗ムチン抗体などの抗ストーク配列抗体によって基質に係留している。
アルブミン
本発明にはまた、リガンドを標的に「提示」するためにトランスフェリン以外のタンパク質またはタンパク質断片を用いる融合タンパク質も含まれる。適切なタンパク質は、可溶性かつ少なくとも約50個のアミノ酸以上の長さのものである。本発明の一実施形態では、タンパク質またはタンパク質断片は、トランスフェリンと類似の二次構造を含有する。
タンパク質またはその断片が、融合タンパク質のストーク部分から切断し、治療剤として使用した場合に、リガンドの半減期を増加させることができることが好ましい。例えば、本発明は、アルブミン部分、ストーク部分および細胞壁連結メンバーを含有する融合タンパク質の使用を想定している。本発明はまた、アルブミン部分およびアンカー部分を含有する融合タンパク質の使用も想定している。アルブミン部分は、融合タンパク質のアルブミンおよびリガンド部分を融合タンパク質の残りの部分から切断し、リガンドを治療剤として必要としている患者に投与した場合に、リガンド、すなわち治療剤に血清半減期の増加を与えることができる。
アルブミン部分を含有する融合タンパク質は、アルブミンタンパク質、アルブミン変異体またはその断片を含有し得る。一実施形態では、アルブミンタンパク質は、配列番号66の核酸配列によってコードされている配列番号67のアミノ酸配列を含む。本発明には、当分野で知られているアルブミンの改変が含まれる。
核酸
核酸分子も本発明によって提供する。これらは、リガンド部分と共有結合または連結したトランスフェリンタンパク質またはトランスフェリンタンパク質の一部分を含む改変Tf融合タンパク質をコードしている。融合タンパク質はさらに、リンカー領域、例えば、約50、40、30、20、または10個未満のアミノ酸残基リンカーをさらに含み得る。リンカーは、トランスフェリンタンパク質またはその一部分とリガンド部分の間で共有結合していることができる。本発明の核酸分子は精製してもしていなくてもよい。
核酸分子を複製し、コードされている融合タンパク質を発現させるための宿主細胞およびベクターも提供する。原核であれ真核であれ、任意のベクターまたは宿主細胞を使用し得るが、真核発現系、特に酵母発現系および哺乳動物発現系が好ましい場合がある。多くのベクターおよび宿主細胞が、そのような目的のために当分野で知られている。所望の用途のために適切な組を選択することは、十分に当分野の技術範囲内にある。
目的のトランスフェリン、トランスフェリンの一部分および治療タンパク質をコードしているDNA配列を、当分野で知られている様々なゲノムまたはcDNAライブラリーからクローニングし得る。プローブに基づいた方法を用いてそのようなDNA配列を単離する技術は慣用技術であり、当業者に周知である。そのようなDNA配列を単離するためのプローブは、公開されているDNAまたはタンパク質配列に基づき得る(例えば、その全体が本明細書中に参考として組み込まれている、Baldwin,G.S.(1993)様々な種由来のトランスフェリン配列の比較(Comparison of Transferrin Sequences from Different Species)、Comp.Biochem.Physiol.、106B/1:203〜218およびその中で引用されるすべての参考文献を参照)。あるいは、本明細書中に参考として組み込まれている、Mullis他(米国特許第4,683,195号)およびMullis(米国特許第4,683,202号)に開示されているポリメラーゼ連鎖反応(PCR)方法を使用し得る。そのようなDNA配列を単離するためのライブラリーの選択およびプローブの選択は、当分野の通常の技術レベルの範囲内にある。
当分野で知られている、2つのポリヌクレオチドまたはポリペプチド間の「類似度」は、一方のポリヌクレオチドまたはポリペプチドのヌクレオチドまたはアミノ酸配列およびその保存されているヌクレオチドまたはアミノ酸置換体を、第2のポリヌクレオチドまたはポリペプチドの配列と比較することによって決定する。また、2つのポリペプチドまたは2つのポリヌクレオチド配列間の配列関連性の度合を意味する「同一性」も、当分野で知られており、これは、2本のそのような配列間の一致の同一性によって決定する。同一性および類似度はどちらも容易に計算することができる(計算分子生物学(Computational Molecular Biology)、Lesk,A.M.編、Oxford University Press、New York、1988;バイオコンピューティング:情報科学およびゲノムプロジェクト(Biocomputing:Informatics and Genome Projects)、Smith,D.W.編、Academic Press、New York、1993;配列データのコンピュータ分析、パートI(Computer Analysis of Sequence Data,Part I)、Griffin,A.M.、およびGriffin,H.G.編、Humana Press、New Jersey、1994;分子生物学における配列解析(Sequence Analysis in Molecular Biology)、von Heinje,G.、Academic Press、1987;ならびに配列解析プライマー(Sequence Analysis Primer)、Gribskov,M.およびDevereux,J.編、M Stockton Press、New York、1991)。
2つのポリヌクレオチドおよびポリペプチド配列間の同一性および類似度を測定するいくつかの方法が存在し、用語「同一性」および「類似度」は当業者に周知である(分子生物学における配列解析(Sequence Analysis in Molecular Biology)、von Heinje,G.、Academic Press、1987;配列解析プライマー(Sequence Analysis Primer)、Gribskov,M.およびDevereux,J.編、M Stockton Press、New York、1991;ならびにCarillo,H.、およびLipman,D.、SIAM J.Applied Math.、48:1073(1988)。2つの配列間の同一性または類似度を決定するために一般的に用いられる方法には、それだけには限定されないが、巨大コンピュータの手引き(Guide to Huge Computers)、Martin J.Bishop編、Academic Press、San Diego、1994、ならびにCarillo,H.およびLipman,D.、SIAM J.Applied Math.48:1073(1988)に開示されているものが含まれる。
同一性を決定する好ましい方法は、試験する2つの配列間の最大一致を与えるように設計されている。同一性および類似度を決定するための方法は、コンピュータプログラムにコードされている。2つの配列間の同一性および類似度を決定するための好ましいコンピュータプログラム方法には、それだけには限定されないが、GCGプログラムパッケージ(Devereux他、Nucl.Acid Res.、12(1):387(1984))、BLASTP、BLASTN、FASTA(Atschul他、J.Mol.Biol.、215:403(1990))が含まれる。上述の類似度または同一性の度合は、2つの配列間の同一性の度合として決定し、これはしばしば、第1の配列の第2の配列からの派生を示す。2つの核酸配列間の同一性の度合は、GCGプログラムパッケージで提供されるGAPなどの、当分野で知られているコンピュータプログラムの手段によって決定し得る(NeedlemanおよびWunsch、J.Mol.Biol.、48:443〜453(1970))。本発明のために2つの核酸配列間の同一性の度合を決定する目的では、GAPを以下の設定で使用する:GAP作成ペナルティ5.0およびGAP伸長ペナルティ0.3。
コドンの最適化
遺伝暗号の縮重は、ネイティブDNA配列によってコードされているポリペプチドと同一のアミノ酸配列を有するポリペプチドを産生しつつ、目的のトランスフェリンタンパク質および/または治療タンパク質のヌクレオチド配列の可変性を可能にする。「コドンの最適化」として知られるこの手順は(その全体が本明細書中に参考として組み込まれている米国特許第5,547,871号に記載)、そのような変更されたDNA配列を設計する手段を提供する。コドンが最適化された遺伝子の設計は、その遺伝子の生物中のコドン使用頻度、最近傍頻度、RNA安定性、二次構造形成の潜在性、合成経路および意図する将来のDNA操作を含めた、様々な要素を考慮すべきである。具体的には、利用可能な方法を用いて、所定の融合タンパク質コードしているコドンを、酵母発現系を用いた場合に酵母によって最も容易に認識されるものに変更し得る。
遺伝暗号の縮重は、同一のアミノ酸配列が様々な異なる様式でコードおよび翻訳されることを可能にする。例えば、ロイシン、セリンおよびアルギニンは、それぞれ6つの異なるコドンによってコードされており、バリン、プロリン、スレオニン、アラニンおよびグリシンは、それぞれ4つの異なるコドンによってコードされている。しかし、そのような同義コドンの使用頻度は、真核生物および原核生物間でゲノムごとに異なる。例えば、哺乳動物間の同義コドンの選択パターンは非常に類似している一方で、酵母(出芽酵母)、細菌(大腸菌等)および昆虫(キイロショウジョウバエ等)などの進化的に遠い生物は、明白に異なるゲノムコドン使用頻度のパターンを示す(Grantham,R.他、Nucl.Acid Res.、8、49〜62(1980);Grantham,R.他、Nucl.Acid Res.、9、43〜74(1981);Maroyama,T.他、Nucl.Acid Res.、14、151〜197(1986);Aota,S.他、Nucl.Acid Res.、16、315〜402(1988);Wada,K.他、Nucl.Acid Res.、19補遺、1981〜1985(1991);Kurland,C.G.、FEBS Lett.、285、165〜169(1991))。これらのコドン選択パターンの差異は、ペプチド伸長率を変調することによって、個々の遺伝子の全体的な発現レベルに寄与していると考えられている。(Kurland,C.G.、FEBS Lett.、285、165〜169(1991);Pedersen,S.、EMBO J.、3、2895〜2898(1984);Sorensen,M.A.、J.Mol.Biol.、207、365〜377(1989);Randall,L.L.他、Eur.J.Biochem.、107、375〜379(1980);Curran,J.F.、およびYarus,M.、J.Mol.Biol.、209、65〜77(1989);Varenne,S.他、J.Mol.Biol.、180、549〜576(1984)、Varenne,S.他、J.Mol、Biol.、180、549〜576(1984);Garel,J.−P.、J.Theor.Biol.、43、211〜225(1974);Ikemura,T.、J.Mol.Biol.、146、1〜21(1981);Ikemura,T.、J.Mol.Biol.、151、389〜409(1981))。
合成遺伝子のコドン使用頻度は、組換えタンパク質の発現に使用することを意図する細胞/生物、特に酵母種の正確な(または可能な限り密に関連している)ゲノムに由来する核遺伝子のコドン使用頻度を反映すべきである。上述のように、一実施形態では、酵母発現のために本明細書中に記載したように改変する前または後に、ヒトTf配列のコドンを最適化し、治療タンパク質ヌクレオチド配列(複数可)もそうである。
ベクター
本発明で使用するための発現ユニットは、一般に、5’から3’の方向で作動可能に連結している、以下の要素を含む:転写プロモーター、分泌シグナル配列、目的の治療タンパク質またはペプチドをコードしているDNA配列と連結したトランスフェリンタンパク質またはトランスフェリンタンパク質の一部分を含む改変Tf融合タンパク質をコードしているDNA配列、および転写ターミネーター。上述のように、Tf部分と融合したまたはその中にある治療タンパク質またはペプチドの任意の配置を、本発明のベクターで使用し得る。適切なプロモーター、シグナル配列およびターミネーターの選択は、選択した宿主細胞によって決定され、当業者には明らかであり、以下にさらに詳述する。
本発明で使用するための適切な酵母ベクターは米国特許第6,291,212号に記載されており、YRp7(Struhl他、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、76:1035〜1039、1978)、YEp13(Broach他、Gene、8:121〜133、1979)、pJDB249およびpJDB219(Beggs、Nature、275:104〜108、1978)、pPPC0005、pSeCHSA、pScNHSA、pC4ならびにその誘導体が含まれる。有用な酵母プラスミドベクターにはまた、pRS403〜406、pRS413〜416およびStratagene Cloning Systems、米国カリフォルニア州La Jolla、92037から入手可能なピキアベクターも含まれる。プラスミドpRS403、pRS404、pRS405およびpRS406は酵母組込みプラスミド(YIp)であり、酵母選択マーカーHIS3、TRP1、LEU2およびURA3を取り込む。プラスミドpRS413〜41.6は、酵母セントロメアプラスミド(YCp)である。
そのようなベクターには、一般に、形質転換体の選択を可能にするために表現型アッセイが存在する、優性の表現型を示す多数の遺伝子のうちの1つであり得る選択マーカーが含まれる。好ましい選択マーカーは、宿主細胞栄養要求性を補完する、抗生物質耐性を与える、または細胞が特定の炭素源を利用することを可能にするものであり、LEU2(Broach他、同書)、URA3(Botstein他、Gene、8:17、1979)、HIS3(Struhl他、同書)またはPOT1(KawasakiおよびBell、欧州特許第171,142号)が含まれる。他の適切な選択マーカーには、酵母細胞にクロラムフェニコール耐性を与えるCAT遺伝子が含まれる。酵母で使用するための好ましいプロモーターには、酵母解糖遺伝子(Hitzeman他、J Biol.Chem.、225:12073〜12080、1980;AlberおよびKawasaki、J.Mol.Appl.Genet.、1:419〜434、1982;Kawasaki、米国特許第4,599,311号)またはアルコール脱水素酵素遺伝子(Young他、化学物質のための微生物の遺伝子操作(Genetic Engineering of Microorganisms for Chemicals、Hollaender他(編)、ページ355、ニューヨーク州Plenum、1982;Ammerer、Meth.Enzymol.、101:192〜201、1983)由来のプロモーターが含まれる。この観点から、使用できるプロモーターは、TPI1プロモーター(Kawasaki、米国特許第4,599,311号)およびADH2−4C(米国特許第6,291,212号参照プロモーターである(Russell他、Nature、304:652〜654、1983号)。発現ユニットにはまた、転写ターミネーターも含まれ得る。1つの転写ターミネーターはTPI1ターミネーターである(AlberおよびKawasaki、同書)。
酵母に加えて、本発明の改変融合タンパク質は、糸状菌、例えば真菌アスペルギルスの株中でも発現させることができる。有用なプロモーターの例には、adh3プロモーター(McKnight他、EMBO J.、4:2093〜2099、1985)およびtpiAプロモーターなどの、アスペルギルス・ニデュランスの解糖遺伝子に由来するものが含まれる。適切なターミネーターの例は、adh3ターミネーターである(McKnight他、同書)。そのような構成要素を利用する発現ユニットを、例えばアスペルギルスの染色体DNA内に挿入されることができるベクター内にクローニングし得る。
本発明の実施において使用するための哺乳動物発現ベクターには、改変Tf融合タンパク質の転写を指示することができるプロモーターが含まれる。プロモーターには、それだけには限定されないが、ウイルスプロモーターおよび細胞プロモーターが含まれる。例えば、ウイルスプロモーターには、アデノウイルス2由来の主要後期プロモーター(KaufmanおよびSharp、Mol.Cell.Biol.、2:1304〜13199、1982)およびSV40プロモーター(Subramani他、Mol.Cell.Biol.、1:854〜864、1981)が含まれる。細胞プロモーターには、マウスメタロチオネイン1プロモーター(Palmiter他、Science、222:809〜814、1983)およびマウスV6(米国特許第6,291,212号参照)プロモーター(Grant他、Nuc.Acids Res.、15:5496、1987)が含まれる。1つのそのようなプロモーターは、マウスVH(米国特許第6,291,212号参照)プロモーターである(Loh他、同書)。そのような発現ベクターはまた、プロモーターの下流かつトランスフェリン融合タンパク質をコードしているDNA配列の上流に位置する一組のRNAスプライシング部位も含有し得る。RNAスプライシング部位は、例えば、アデノウイルスおよび/または免疫グロブリン遺伝子から得られ得る。
発現ベクター中にはまた、目的のコード配列の下流に位置するポリアデニル化シグナルも含有される。ポリアデニル化シグナルには、SV40由来の初期または後期ポリアデニル化シグナル(KaufmanおよびSharp、同書)、アデノウイルス5E1B領域由来のポリアデニル化シグナルおよびヒト成長ホルモン遺伝子ターミネーター(DeNoto他、Nucl.Acid Res.、9:3719〜3730、1981)が含まれる。1つのそのようなポリアデニル化シグナルは、VH(米国特許第6,291,212号参照)遺伝子ターミネーターである(Loh他、同書)。発現ベクターには、プロモーターとRNAスプライシング部位との間に位置するアデノウイルス2トリパータイトリーダーなどの、非コードウイルスリーダー配列が含まれ得る。好ましいベクターにはまた、SV40エンハンサーおよびマウス(米国特許第6,291,212号参照)エンハンサーなどのエンハンサー配列も含まれ得る(Gillies、Cell、33:717〜728、1983)。発現ベクターにはまた、アデノウイルスVA RNAをコードしている配列も含まれ得る。
形質転換
真菌を形質転換させる技術は文献で周知であり、例えば、Beggs(同書)、Hinnen他(Proc.Natl.Acad.Sci.USA、75:1929〜1933、1978)、Yelton他(Proc.Natl.Acad.Sci.USA、81:1740〜1747、1984)、およびRussell(Nature、301:167〜169、1983)に記載されている。宿主細胞の遺伝子型は、一般に、発現ベクター上に存在する選択マーカーによって補完される遺伝的欠陥を含有する。具体的な宿主および選択マーカーの選択は、当分野の通常の技術レベルの範囲内にある。
本発明の改変Tf融合タンパク質を含むクローニングしたDNA配列を、例えばリン酸カルシウム媒介の形質移入によって、培養した哺乳動物細胞内に導入し得る(Wigler他、Cell、14:725、1978;CorsaroおよびPearson、Somatic Cell Genetics、7:603、1981;GrahamおよびVan der Eb、Virology、52:456、1973)。クローニングしたDNA配列を哺乳動物細胞内に導入するための他の技術、例えば、電気穿孔(Neumann他、EMBO J.、1:841〜845、1982)、またはリポフェクションも使用し得る。クローニングしたDNAを組み込んだ細胞を同定するために、一般に選択マーカーを目的の遺伝子またはcDNAと共に細胞内に導入する。培養した哺乳動物細胞で使用するための好ましい選択マーカーには、ネオマイシン、ハイグロマイシン、およびメトトレキサートなどの薬物に対する耐性を与える遺伝子が含まれる。選択マーカーは、増幅可能な選択マーカーであり得る。1つの増幅可能な選択マーカーはDHFR遺伝子である。1つの増幅可能なマーカーはDHFRr(米国特許第6,291,212号参照)cDNAである(SimonsenおよびLevinson、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、80:2495〜2499、1983)。選択マーカーはThilly(哺乳動物細胞技術(Mammalican Cell Technology)、Butterworth Publishers、マサチューセッツ州Stoneham)によって総説されており、選択マーカーの選択は、十分に当分野の通常の技術レベルの範囲内にある。
宿主細胞
本発明にはまた、本発明の改変トランスフェリン融合タンパク質を発現するように形質転換させた細胞、例えば酵母細胞または哺乳動物細胞も含まれる。形質転換させた宿主細胞自体に加えて、本発明にはまた、これらの細胞の培養物、例えば、モノクローナル(クローン的に均質な)培養物、または栄養素培地中のモノクローナル培養物に由来する培養物も含まれる。ポリペプチドが分泌される場合、培地は細胞と共に、または細胞を濾過もしくは遠心分離して取り除いた場合は細胞なしで、ポリペプチドを含有する。
本発明の実施において使用するための宿主細胞には、哺乳動物、昆虫、真菌、植物および細菌の培養細胞などの、外因性DNAで形質転換または形質移入することができ、かつ培養中で成長することができる真核細胞、および一部の事例では原核細胞が含まれる。
酵母の種(例えば、サッカロマイセスspp.、シゾサッカロマイセスspp.、ピキアspp.)を含めた真菌細胞を、本発明で宿主細胞として使用し得る。本発明の実施において、本発明のトランスフェリン融合タンパク質を発現させるための宿主として有用であることが企図される酵母の例示的な属は、ピキア(以前はハンゼヌラとして分類されていた種を含む)、サッカロマイセス、クルイベロマイセス、アスペルギルス、カンジダ、トルロプシス、トルラスポラ、シゾサッカロマイセス、シテロマイセス、パキソレン、ザイゴサッカロマイセス、デバロマイセス、トリコデルマ、セファロスポリウム、フミコラ、ケカビ、ニューロスポラ、ヤロウイア、メツニコビア、ロドスポリジウム、ロイコスポリジウム、ボトリオアスカス、スポリジオボラス、エンドマイコプシスなどである。サッカロマイセスspp.の例は、出芽酵母、エス・イタリクスおよびエス・ルーキシである。クルイベロマイセスspp.の例はケー・ラクチスおよびケー・マルキシアヌスである。適切な種はティー・デルブリュッキである。ピキア(ハンゼヌラ)spp.の例は、ピー・アングスタ(以前はエイチ・ポリモルファ)、ピー・アノマラ(以前はエイチ・アノマラ)およびピー・パストリスである。
本発明のTf融合タンパク質を産生するために特に有用な宿主細胞は、メタノール栄養性ピキア・パストリスである(Steinlein他(1995)Protein Express Purif.、6:619〜624)。ピキア・パストリスは、そのアルコールオキシダーゼプロモーターが単離およびクローニングされて以来、外来タンパク質を産生させるための極めて優れた宿主となるように開発されている。その形質転換は、1985年に最初に報告されている。ピー・パストリスは、グルコースが存在しない場合にメタノールを炭素源として利用することができる。ピー・パストリス発現系は、メタノールの代謝の最初のステップを触媒する酵素であるアルコールオキシダーゼの発現をコードしている遺伝子を調節する、メタノール誘導性アルコールオキシダーゼ(AOX1)プロモーターを使用することができる。このプロモーターは特徴づけられ、一連のピー・パストリス発現ベクター内に取り込まれている。ピー・パストリス内で産生されるタンパク質は、通常は正しく折り畳まれて培地中に分泌されるので、遺伝子操作したピー・パストリスの発酵は、大腸菌発現系の優れた代替系を提供する。破傷風毒素断片、ボルダテラ百日咳ペルタクチン、ヒト血清アルブミンおよびリゾチームを含めたいくつかのタンパク質が、この系を用いて産生されている。
エフ・オキシスポラムの形質転換は、例えば、Malardier他(1989)Gene、78:147〜156に記載のように実施し得る。
酵母の出芽酵母の株が別の好ましい宿主である。一実施形態では、糖タンパク質のアスパラギン結合のグリコシル化に必要な遺伝子の遺伝子欠損を含有する酵母細胞、より具体的には出芽酵母の宿主細胞を使用する。そのような欠損を有する出芽酵母の宿主細胞は、突然変異および選択の標準技術を用いて調製し得るが、グリコシル化または過マンノシル化を防止または減少するために、利用可能な酵母株が改変されている。Ballou他(J.Biol.Chem.、255:5986〜5991、1980)は、アスパラギン結合のグリコシル化に影響を与える遺伝子が欠損している、マンノタンパク質生合成突然変異体の単離を記載している。GentzschおよびTanner(Glycobiology,7:481〜486、1997)は、酵母におけるタンパク質のO−グリコシル化の最初のステップを担っている酵素をコードしている、少なくとも6つの遺伝子(PMT1〜6)のファミリーを記載している。これらの遺伝子のうちの1つまたは複数が欠損している突然変異体は、O結合型グリコシル化の減少および/または変更されたO−グリコシル化の特異性を示す。
異種タンパク質の産生を最適化するためには、宿主株が、タンパク質分解活性の減少をもたらす、出芽酵母pep4突然変異(Jones、Genetics、85:23〜33、1977)などの突然変異を保有することが好ましい場合がある。大量の本発明のTf融合タンパク質を産生するためには、他のプロテアーゼコード領域中に突然変異を含有する宿主株が特に有用である。
本発明のDNA構築体を含有する宿主細胞は、適切な成長培地中で成長させる。本明細書中で使用する用語「適切な成長培地」とは、細胞の成長に必要な栄養素を含有する培地を意味する。細胞成長に必要な栄養素には、炭素源、窒素源、必須アミノ酸、ビタミン、鉱物および成長因子が含まれ得る。成長培地は、一般に、例えば、DNA構築体上のまたはDNA構築体と共に同時形質移入した選択マーカーによって補完される、薬物選択または必須栄養素の欠乏によって、DNA構築体を含有する細胞を選択する。例えば、酵母細胞は、好ましくは、炭素源、例えばスクロース、非アミノ酸窒素源、無機塩、ビタミンおよび必須アミノ酸の添加物を含む、既知組成の培地中で成長させる。培地のpHは、好ましくは、2より高く8未満のpH、好ましくはpH5.5〜6.5で維持する。安定なpHを維持するための方法には、緩衝化および好ましくは水酸化ナトリウムを加えることによる持続的なpH調節が含まれる。好ましい緩衝剤には、コハク酸およびビス−トリスが含まれる(Sigma Chemical Co.、モンタナ州St.Louis)。アスパラギン結合のグリコシル化に必要な遺伝子の欠損を有する酵母細胞は、好ましくは、浸透圧安定化剤を含有する培地中で成長させる。1つのそのような浸透圧安定化剤は、0.1M〜1.5M、好ましくは0.5Mまたは1.0Mの濃度で培地に添加したソルビトールである。
培養した哺乳動物細胞は、一般に、市販の血清含有培地または無血清培地中で成長させる。使用する特定の細胞系に適切な培地の選択は、当分野の通常の技術レベルの範囲内にある。形質移入した哺乳動物細胞を一定期間、典型的には1〜2日間成長させて、目的のDNA配列(複数可)の発現を開始させる。その後、薬物選択を適用して、選択マーカーを安定した様式で発現している細胞の成長を選択する。増幅可能な選択マーカーで形質移入した細胞では、薬物濃度を段階的に増加させて、クローニングした配列のコピー数が増加したもの、ひいては発現レベルが増加したものを選択し得る。
バキュロウイルス/昆虫細胞発現系もまた、本発明の改変Tf融合タンパク質を産生するために使用し得る。BacPAK(商標)バキュロウイルス発現系(BD Biosciences(Clontech))は、組換えタンパク質を昆虫宿主細胞中、高レベルで発現する。標的遺伝子を運搬ベクター内に挿入し、これを、直鎖状にしたBacPAK6ウイルスDNAと共に昆虫宿主細胞内に同時形質移入する。BacPAK6 DNAは、バキュロウイルスゲノムの必須部分を欠いている。DNAがベクターと組み換わる際、必須要素が修復され、標的遺伝子がバキュロウイルスゲノムに移される。組換え後、いくつかのウイルス溶菌斑を選択して精製し、組換え表現型を確認する。その後、新しく単離された組換えウイルスを増幅し、昆虫細胞培養物を感染させて大量の所望のタンパク質を産生させるために、使用することができる。
分泌シグナル配列
用語「分泌シグナル配列」または「シグナル配列」または「分泌リーダー配列」は、互換性があるように使用され、例えば、どちらもその全体が本明細書中に参考として組み込まれている、米国特許第6,291,212号および米国特許第5,547,871号に記載されている。分泌シグナル配列またはシグナル配列または分泌リーダー配列は分泌ペプチドをコードしている。分泌ペプチドとは、細胞からの成熟ポリペプチドまたはタンパク質の分泌を指示するように作用するアミノ酸配列である。分泌ペプチドは一般に、疎水性アミノ酸の核を特徴とし、典型的には(ただし排他的ではない)新しく合成されたタンパク質のアミノ末端に見つかる。非常に多くの場合、分泌ペプチドは分泌中に成熟タンパク質から切断される。分泌ペプチドは、分泌経路を通る際に成熟タンパク質からのシグナルペプチドの切断を可能にする、プロセッシング部位を含有し得る。プロセッシング部位は、シグナルペプチド内にコードされているか、または、例えばin vitro突然変異誘発によってシグナルペプチドに付加されていてもよい。
分泌ペプチドを用いて本発明の改変Tf融合タンパク質の分泌を指示し得る。他の分泌ペプチドと組み合わせて使用し得る1つのそのような分泌ペプチドは、酵母バリアタンパク質の第3ドメインである。分泌シグナル配列またはシグナル配列または分泌リーダー配列が、タンパク質の分泌をもたらす複雑な一連の翻訳後プロセッシングステップに必要である。インタクトなシグナル配列が存在する場合、発現されるタンパク質が粗面小胞体の細胞内腔に入り、その後、ゴルジ体を介して分泌小胞に輸送され、最後に細胞外に輸送される。一般に、シグナル配列は開始コドンの直後にあり、分泌されるタンパク質のアミノ末端でシグナルペプチドをコードしている。ほとんどの場合、シグナル配列は、シグナルペプチダーゼと呼ばれる特異的プロテアーゼによって切断除去される。好ましいシグナル配列は、ウイルス、哺乳動物または酵母発現ベクターを用いた組換えタンパク質の発現のプロセッシングおよび輸出効率を向上させる。一部の事例では、ネイティブTfシグナル配列を用いて本発明の融合タンパク質を発現および分泌させ得る。
リンカー
本発明の改変トランスフェリン融合タンパク質のTf部分とリガンドとは、より大きな物理的分離をもたらし、融合したタンパク質間でより多くの空間的な可動性を可能にすることで、抗体可変領域の、例えばその同族受容体と結合するための接触性を最大限にするために、直接または様々な長さのリンカーペプチドを用いて融合させることができる。リンカーペプチドは、柔軟またはより強固なアミノ酸からなり得る。一実施形態では、本発明には、(PEAPTD)n(配列番号18)などの、実質的にヘリックスでないリンカーが含まれる。別の実施形態では、本発明の融合タンパク質は、ポリグリシンストレッチを有するリンカーを含有する。リンカーは、約50、40、30、20、または10個未満のアミノ酸残基であることができる。リンカーは、トランスフェリンタンパク質またはその一部分と抗体可変領域との間で共有結合していることができる。
リンカーはまた、リガンドまたは複数のリガンド内の抗体可変領域を連結させるためにも使用し得る。抗体可変領域を連結させるための適切なリンカーは、全抗体の結合特異性を維持する三次元構造へと折り畳まれる抗体可変領域を可能にするものである。
スクリーニング方法
本発明の融合タンパク質ライブラリーをスクリーニングによって同定され得るリガンドが対する、可能な標的分子の数は、事実上無限大である。例えば、標的分子、すなわち受容体または薬剤は、抗体(もしくはその結合部分)または抗原であり得る。抗体が結合する抗原は既知であってもよく、場合によっては配列決定されていてもよく、その場合、本発明を用いて抗原のエピトープのマップ作成を行い得る。特定の自己免疫疾患などの場合のように抗原が未知の場合、例えば、疾患に罹患している患者由来の血清、体液、組織、または細胞を用いて、自己免疫応答を誘発するペプチド、ひいては抗原を同定するためのスクリーニング方法を提示することができる。ペプチドが同定された後、そのペプチドは、ワクチン、治療剤、診断試薬などを開発するための基準として役割を果たす、またはそれを提供することができる。対するリガンドをスクリーニングし得る標的分子のリストには、すべての目的のためにその全体が本明細書中に参考として組み込まれている、国際公開公報WO01/46698を参照されたい。
スクリーニングは、当分野の従事者に周知の方法のうちの1つを用いて、例えばバイオパニング、FACSまたはMACSなどによって行い得る。本発明の一実施形態では、受容体の活性化についてスクリーニングを行う。標的は、精製した溶液中にあるか、または表面結合もしくは細胞と会合していることができる。標的は、例えば、ビオチンを用いて、または当分野で知られている他の方法によって標識し得る。
所望の特性を有するポリペプチドおよびペプチドを単離し、対応する核酸配列の配列決定またはアミノ酸配列決定または質量分析によって同定することができる。続く最適化は、部分配列を異なる配列、好ましくはランダム配列で置き換えること、および1回または複数回のスクリーニングステップの繰り返しによって、行い得る。
ペプチドライブラリーが構築された後、宿主細胞をライブラリーベクターで形質転換させる。成功した形質転換体は、典型的には、選択培地または選択的条件下、例えば、適切な成長培地または使用するベクターに応じた他のもの中で成長させることによって選択する。この選択は、固体または液体の成長培地で行い得る。固体培地上での細菌細胞の成長では、細胞を、高密度(約108〜109個の形質転換体/m2)で、例えば選択的抗生物質を含有するL−寒天の広い表面上で成長させて、本質的にコンフルエントな菌叢を形成させる。液体培養物中での成長には、細胞をL−ブロス(抗生物質選択を有する)中で、約10回以上の倍加で成長させ得る。ライブラリーの大きさが理由で、液体培養物中での成長がより好都合であり得る一方で、固体培地上での成長は、増幅プロセス中の偏りの可能性がより低くなる可能性が高い。
トランスフェリン融合タンパク質のペプチドライブラリーを酵母細胞表面ディスプレイによってスクリーニングする場合、酵母細胞は、トランスフェリン融合タンパク質をコードしている発現ベクターを用いて形質転換させる。エラープローンポリメラーゼ連鎖反応およびDNAシャフリングなど、一連の突然変異誘発方法が酵母表面ディスプレイライブラリーの構築と矛盾がない。Boder他(2000)Methods of Enzymology、328:430〜444を参照されたい。あるいは、発現された融合タンパク質のトランフェリン部分がランダムペプチド配列またはCDRの骨格として役割を果たすことができる。
酵母細胞トランスフェリン融合タンパク質のペプチドライブラリーが作製された後、望ましいペプチドを同定するためのいくつかの手法が当分野で知られている。例えば、比較的低い親和性濃度の場合(Kd>nM、または、新規結合特異性を単離するためにライブラリーをスクリーニングしている場合は親和性なし)、低濃度の蛍光標識した標的、すなわち受容体または薬剤との平衡結合によって、ペプチドを識別することができる。密に結合するタンパク質を進化させるために設計された用途には、リガンドモル濃度の過剰を維持するために過剰に大量の希釈標的溶液が必要であり得、これは試料の取扱いを複雑化させる。そのような場合、解離動力学の変化によって結合親和性の向上を近似し得る。化学量論的に制限される標的の動力学的競合を用いて、集団内の改善されたクローンを同定することができる(Hawkins他(1992)J.Mol.Biol.、226:889)。しかし、この手法ではスクリーニング手法の定量的な予測可能性が排除され、一般的には推奨されない。Boder他(2000)Methods of Enzymology、328:430〜444を参照されたい。
標的は、ビオチン標識もしくは蛍光標識するか、または目的のリガンド、すなわちトランスフェリン上にディスプレイされるペプチドを標識することができる。好ましくは、標的は標識されている。標識した標的、例えばビオチン標識した標的を、トランスフェリン融合タンパク質のペプチドライブラリーと共にインキュベーションすることができる。ライブラリーは、少なくとも約104個のメンバー(すなわちディスプレイされたペプチド)、少なくとも約105個のメンバー、少なくとも約106個のメンバー、少なくとも約107個のメンバー、少なくとも約108個のメンバー、少なくとも約109個のメンバー、少なくとも約1010個のメンバー、少なくとも約1011個のメンバー、少なくとも約1012個のメンバー、少なくとも約1013個のメンバー、少なくとも約1014個のメンバー、少なくとも約1015個のメンバー、または少なくとも約1016個のメンバーを有し得る。
インキュベーション後、細胞を、二次抗体、ステプトアビジンで標識した分子、または当分野で知られている他の方法などの第2の標識で標識することができる。二次抗体は抗ビオチン抗体であることができる。ストレプトアビジンで標識した分子には、それだけには限定されないが、ストレプトアビジン−フィコエリスリンまたはストレプトアビジンマイクロビーズが含まれる。
フローサイトメトリーを用いて、当分野で知られているように細胞集団を分析することができる。これを行った場合、集団のうちの表示している画分のみが分析される。どちらもその全体が本明細書中に参考として組み込まれている、Boder他(2000)Methods of Enzymology、328:430〜444およびKondo他(2004)Appl.Microbiol.Biotechnol.、64:28〜40を参照されたい。
あるいは、標識したビーズからなる第2の標識、すなわち、抗ビオチンまたはストレプトアビジンで標識したビーズを使用する場合、リガンドおよび標的分子の混合物は、その全体が本明細書中に参考として組み込まれているYeung他(2002)Biotechnol.Prog.、18:212〜220に記載されているように、磁気分別プロトコルを用いて分別することができる。MACS(登録商標)マイクロビーズキットをこのスクリーニングプロトコルと共に使用することができる(Miltenyi Biotec GmbH)。磁気分別はFACSと併せて使用することができる。
本発明の一実施形態では、酵母細胞中で発現される単一の目的リガンドを特徴づけることが望ましい。発現されたタンパク質は様々な方法でスクリーニングし得る。タンパク質が機能を有する場合は、これを直接アッセイし得る。例えば、酵母表面上で発現された単鎖抗体は完全に機能的であり、抗原との結合に基づいてスクリーニングし得る。タンパク質が、容易にアッセイできる検出可能な機能を有さない場合は、リガンドの発現は抗体を用いて監視し得る。酵母細胞はファージよりもはるかに大きいため、単一の酵母細胞上のタンパク質の表現型を監視するためにフローサイトメトリーを使用することができる。
本発明の別の実施形態では、リガンド部分と受容体または薬剤との結合を、ELISA、標的のネイティブ結合パートナーが知られている場合は競合結合アッセイ、サンドイッチアッセイ、その結合がペプチドライブラリーによって遮断される放射性リガンドを用いた放射性受容体アッセイなどの、細胞表面ディスプレイ以外の当分野で知られている手段によって行う。これらの方法では、Tf融合タンパク質のペプチドライブラリーで形質転換させた宿主細胞を溶解する。Tf融合タンパク質ペプチドは、それだけには限定されないが抗MUC1抗体などの適切なアンカー部分を介して、アッセイ基質にアンカーされている。スクリーニングプロセスは、Tfペプチドライブラリーを目的の標的と反応させて、ベースライン結合レベルを確立することを含み、これを、続くペプチドライブラリーの結合活性と比較する。アッセイの性質は、標的と結合するまたはそれと競合する少量のペプチドを検出するために十分に高感度である限りは重要でない。アッセイ条件は、様々な目的の結合基質の最適な結合条件または他の生物活性を考慮するために変化させ得る。したがって、pH、温度、塩濃度、体積および結合時間などは、すべて、目的環境に似ている条件下でペプチドと標的との結合を達成するために変化させ得る。
Tfペプチドライブラリーが目的の標的と結合するペプチドまたは複数のペプチドを保有することが決定された後、本発明の方法を用いて、混合物中のペプチド(複数可)の配列を同定することができる。標的と結合するペプチドを表示している細胞を、MACSまたはFACSスクリーニングによってライブラリーの全集団から単離することができる。非特異的結合剤をすべて枯渇させるために、最初の単離物にスクリーニングプロセスを2〜3回繰り返す。その後、結合親和性に基づいて単離するためのFACS分別によるスクリーニングの最終回を行う。プラスミドDNAを単離した細胞から回収し、挿入領域のDNAを配列決定してタンパク質配列を決定する。その後、単離物間の共通モチーフを決定することができる。
治療リガンド分子
本発明のリガンドは、推定または既知の治療分子であることができる。本明細書中で使用する、治療分子とは、典型的には、in vitroまたはin vivoで有益な生物学的効果を発揮することができるタンパク質またはペプチドであり、正常な恒常性、生理学または病状に関連して有益な効果を発揮するタンパク質またはペプチドが含まれる。治療分子には、ガラクトシダーゼなどのマーカーまたはタンパク質精製補助剤として一般的に使用されている融合パートナーは含まれない(例えば、米国特許第5,986,067号およびAldred他(1984)Biochem.Biophys.Res.Commun.、122:960〜965参照)。例えば、病状に関連する有益な効果には、疾患の予防、疾患の安定化、疾患の症状の軽減もしくは緩和または変調、治療した対象に有益な効果をもたらす根底にある欠損の緩和または治癒を含めた、治療した対象に有利な任意の効果が含まれる。
治療リガンドは、上述のように、トランスフェリン部分と直接、またはリンカー部分を介して間接的に、融合していてよい。一実施形態では、融合タンパク質を切断して、トランスフェリンおよび融合タンパク質のリガンド部分を融合タンパク質の残りの部分から分離することが望ましい場合がある。別の実施形態では、リガンドを融合タンパク質の残りの部分から切断することが望ましい場合がある。
本発明の融合タンパク質のリガンド部分は、治療タンパク質の少なくとも断片もしくは変異体、および/または抗体の少なくとも断片もしくは変異体を含有し得る。さらなる実施形態では、融合タンパク質は、タンパク質または抗体のペプチド断片またはペプチド変異体を含有することができ、変異体または断片は、少なくとも1つの生物学的活性または治療活性を保持している。融合タンパク質は、Nおよび/もしくはC末端と融合した、その中に挿入された、または改変トランスフェリンのループ内に挿入された、少なくとも約3、少なくとも約4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも35、または少なくとも約40、少なくとも約50、少なくとも約55、少なくとも約60または少なくとも約70個以上のアミノ酸の長さのペプチド断片またはペプチド変異体であることができる、治療タンパク質を含有することができる。
別の実施形態では、本発明の融合タンパク質のリガンド部分は、完全長タンパク質およびアミノ酸配列のアミノ末端から1つまたは複数の残基が欠失したポリペプチドが含まれる治療タンパク質の断片であることができる、治療タンパク質部分を含有する。
別の実施形態では、本発明の融合タンパク質のリガンド部分は、完全長タンパク質およびアミノ酸配列のカルボキシ末端から1つまたは複数の残基が欠失したポリペプチドが含まれる治療タンパク質の断片であることができる、治療タンパク質部分を含有する。
別の実施形態では、本発明の融合タンパク質のリガンド部分は、アミノおよびカルボキシの両末端から1つまたは複数のアミノ酸が欠失していることができる治療タンパク質部分を含有する。
別の実施形態では、融合タンパク質は、本明細書中に記載した参照治療タンパク質と少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%もしくは99%同一である治療タンパク質部分、すなわちリガンド部分、またはその断片を含有する。さらなる実施形態では、トランスフェリン融合分子は、上述のN末端およびC末端が欠失したアミノ酸配列を有する参照ポリペプチドと少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一である治療タンパク質部分を含有する。
別の実施形態では、融合タンパク質は、例えば治療タンパク質のネイティブまたは野生型アミノ酸配列と少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一な治療タンパク質部分を含有する。これらのポリペプチドの断片も提供する。
細胞表面および分泌タンパク質などの、本発明の改変トランスフェリン融合タンパク質の治療タンパク質部分に対応する治療タンパク質は、1つまたは複数のオリゴ糖基を結合することによって修飾することができる。グリコシル化と呼ばれる修飾は、タンパク質の物理特性に顕著な影響を与えることができ、タンパク質の安定性、分泌、および局在化に重要となることができる。グリコシル化はポリペプチド主鎖に沿った特定の位置で起こる。通常は2つの主要な種類のグリコシル化、すなわち、セリンまたはスレオニン残基と結合したO結合型オリゴ糖を特徴とするグリコシル化、およびAsn−X−Ser/Thr配列(式中、Xはプロリン以外のアミノ酸であることができる)中のアスパラギン残基と結合しているN結合型オリゴ糖を特徴とするグリコシル化が存在する。タンパク質の構造および細胞型などの可変要素は、様々なグリコシル化部位における、鎖内の炭水化物単位の数および性質に影響を与える。グリコシル化異性体も、所定の細胞型内の同じ部位で一般的である。例えば、数種のヒトインターフェロンがグリコシル化されている。
本発明の融合タンパク質の治療タンパク質部分に対応する治療タンパク質、ならびにその類似体および変異体は、1つまたは複数の部位におけるグリコシル化が、それらが発現される宿主細胞によるその核酸配列の遺伝子操作(複数可)の結果、またはその発現の他の条件が原因で変更されているように、改変し得る。例えば、グリコシル化異性体を、グリコシル化部位を廃止もしくは導入することによって、例えば、グルタミンでアスパラギンを置換することなどのアミノ酸残基の置換または欠失によって産生するか、または、グリコシル化されていない組換えタンパク質を、タンパク質を、それをグリコシル化しない宿主細胞中、例えばグリコシル化欠損酵母中で発現させることによって産生し得る。これらの手法は当分野で知られている。
治療タンパク質およびその核酸配列は当分野で周知であり、化学情報検索サービス(例えばCASレジストリ)、GenBank、およびGenSeqなどの公開データベースから入手可能である。以下で言及する受託番号および配列は、その全体が本明細書中に参考として組み込まれている。
本発明は、本明細書中に記載の治療タンパク質の断片を含む融合タンパク質にさらに向けられている。タンパク質のN末端からの1つまたは複数のアミノ酸の欠失が治療タンパク質部分の1つまたは複数の生物学的機能の改変または損失をもたらす場合でも、他の治療活性および/または機能的活性(例えば、生物活性、多量体化する能力、リガンドと結合する能力)は依然として保持され得る。例えば、N末端欠失を有するポリペプチドが、ポリペプチドの完全もしくは成熟形態を認識する抗体を誘導するおよび/またはそれと結合する能力は、一般に、完全ポリペプチドの残基の大部分未満がN末端から除去された場合に保持される。完全ポリペプチドのN末端残基を欠く特定のポリペプチドがそのような免疫学的活性を保持しているかどうかは、本明細書中に記載のおよび他の様式で当分野において知られているルーチン方法によってアッセイすることができる。多数の欠失N末端アミノ酸残基を有する突然変異体が一部の生物学的または免疫原性活性を保持し得ることは、多分にある。実際、わずか6個のアミノ酸残基から構成されるペプチドが、しばしば免疫応答を誘起し得る。
また、上述のように、治療タンパク質のN末端またはC末端からの1つまたは複数のアミノ酸の欠失がタンパク質の1つまたは複数の生物学的機能の改変または損失をもたらす場合でも、他の機能的活性、例えば、生物活性、多量体化する能力、リガンドと結合する能力、および/または治療活性は、依然として保持され得る。例えば、C末端欠失を有するポリペプチドがポリペプチドの完全もしくは成熟形態を認識する抗体を誘導するおよび/またはそれと結合する能力は、一般に、完全または成熟ポリペプチドの残基の大多数未満がC末端から除去された場合に保持される。参照ポリペプチドのN末端および/またはC末端残基を欠く特定のポリペプチドが治療活性を保持しているかどうかは、本明細書中に記載のおよび/または他の様式で当分野において知られているルーチン方法によって、容易に決定することができる。
治療タンパク質のペプチド断片は、そのアミノ酸配列が断片である治療タンパク質のポリペプチド配列の治療活性および/もしくは機能的活性、例えば、生物活性を表示するアミノ酸配列を、含む、またはそれからなる断片であることができる。
他のポリペプチド断片は、生物活性のある断片である。生物活性のある断片とは、本発明で使用する治療タンパク質の活性と類似しているが、必ずしも同一ではない活性を示すものである。断片の生物活性には、向上した所望の活性、または減少した望ましくない活性が含まれ得る。
一般に、タンパク質の変異体は、全体的に非常に類似しており、多くの領域中で、本発明のトランスフェリン融合タンパク質の治療タンパク質部分に対応する治療タンパク質のアミノ酸配列と同一である。これらの変異体をコードしている核酸も、本発明によって包含される。
本発明で使用し得るさらなる治療ポリペプチドは、当業者に知られているストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、治療タンパク質のアミノ酸配列をコードしている核酸分子の相補体とハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされている、ポリペプチドである。例えば、Ausubel,F.M.他編、1989、分子生物学の最新プロトコル(Current protocol in Molecular Biology)、Green Publishing Associates,Inc.、およびJohn Wiley & Sons Inc.、New.Yorkを参照されたい。これらのポリペプチドをコードしているポリヌクレオチドも、本発明によって包含される。
本発明の問い合わせアミノ酸配列と少なくとも例えば95%「同一」であるアミノ酸配列を有するポリペプチドとは、対象ポリペプチド配列に問い合わせアミノ酸配列のそれぞれ100個のアミノ酸あたり5個のアミノ酸の変更が含まれ得る以外は、対象ポリペプチドのアミノ酸配列が問い合わせ配列と同一であることを意図する。言い換えれば、問い合わせアミノ酸配列と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドを得るためには、対象配列中のアミノ酸残基の5%までが、挿入、欠失、または別のアミノ酸で置換されていてよい。参照配列のこれらの変更は、参照アミノ酸配列のアミノもしくはカルボキシ末端の位置またはこれらの末端位置間の任意の箇所で、参照配列中の残基間で個々に分散して、または参照配列内の1つもしくは複数の連続的な群で、起こり得る。
実際、任意の特定のポリペプチドが、例えば本発明の融合タンパク質またはその断片(融合タンパク質の治療タンパク質部分またはその一部分など)のアミノ酸配列と少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一であるかどうかは、既知のコンピュータプログラムを用いて慣用的に決定することができる。グローバル配列アラインメントとしても呼ばれる、問い合わせ配列(本発明の配列)と対象配列との間の最良の全体一致を決定するための一方法は、Brufiag他(Comp.App.Biosci、245〜(1990))のアルゴリズムに基づいたFASTDBコンピュータプログラムを用いて決定することができる。
本発明のポリヌクレオチド変異体は、コード領域、非コード領域、または両方の変更を含有し得る。サイレント置換、付加、または欠失を生じるが、コードされているポリペプチドの特性または活性を変更しない変更を含有するポリヌクレオチド変異体を用いて、改変リガンド部分を生成し得る。遺伝暗号の縮重が原因のサイレント置換によって生成されたヌクレオチド変異体を利用することができる。さらに、約50個未満、40個未満、30個未満、20個未満、10個未満、または5〜50、5〜25、5〜10、1〜5、もしくは1〜2個のアミノ酸が任意の組合せで置換、欠失、または付加されているポリペプチド変異体も、利用することができる。ポリヌクレオチド変異体は、様々な理由、例えば、特定の宿主のためにコドン発現を最適化する(上述のように、ヒトmRNAにおけるコドンを酵母または大腸菌などの宿主によって好ましいものに変更する)ために生成することができる。
他の実施形態では、治療タンパク質部分、すなわちリガンド部分は、野生型配列と比較して保存的置換を有する。「保存的置換」とは、脂肪族または疎水性アミノ酸Ala、Val、LeuおよびIleの交換、ヒドロキシル残基SerおよびThrの交換、酸性残基AspおよびGluの交換、アミド残基AsnおよびGlnの交換、塩基性残基Lys、Arg、およびHisの交換、芳香族残基Phe、Tyr、およびTrpの交換、ならびに小サイズアミノ酸Ala、Ser、Thr、Met、およびGlyの交換などの、群内の交換を意図する。表現型がサイレントなアミノ酸置換の作製に関する指針は、例えば、Bowie他、「タンパク質配列中のメッセージの解読:アミノ酸置換の許容度(Deciphering the Message in Protein Sequences:Tolerance to Amino Acid Substitutions)」、Science、247:1306〜1310(1990)に提供されている。具体的な実施形態では、本発明のポリペプチドは、本明細書中に記載の治療タンパク質のアミノ酸配列および/または血清トランスフェリン、および/または本発明の改変トランスフェリンタンパク質の断片または変異体を含む、またはそれからなり、断片または変異体は、参照アミノ酸配列と比較した場合に1〜5、5〜10、5〜25、5〜50、10〜50または50〜150個のアミノ酸残基の付加、置換、および/または欠失を有する。さらなる実施形態では、アミノ酸置換は保存的である。これらのポリペプチドをコードしている核酸も、本発明によって包含される。
本発明の改変融合タンパク質は、ペプチド結合または修飾ペプチド結合によって互いに連結したアミノ酸から構成されることができ、20種の遺伝子にコードされているアミノ酸以外のアミノ酸を含有し得る。ポリペプチドは、翻訳後プロセッシングなどの天然のプロセス、または当分野で周知の化学修飾技術のどちらかによって修飾され得る。そのような修飾は基本的な教科書およびより詳細な専攻論文、ならびに膨大な研究文献中に十分に記載されている。
修飾は、ペプチド主鎖、アミノ酸側鎖およびアミノまたはカルボキシ末端を含めた、ポリペプチド中の任意の箇所で起こることができる。同じ種類の修飾が同じまたは異なる度合で、所定のポリペプチド中のいくつかの部位に存在し得ることを理解されよう。また、所定のポリペプチドは、多種類の修飾を含有し得る。ポリペプチドは、例えばユビキチン化の結果分枝鎖状であってもよく、また、分岐を有するまたは有さない環状であってもよい。環状、分枝鎖状、および分岐環状ポリペプチドは、翻訳後の自然のプロセスから生じ得るか、または合成方法によって作製し得る。修飾には、アセチル化、アシル化、ADP−リボシル化、アミド化、フラビンの共有結合、ヘム部分の共有結合、ヌクレオチドまたはヌクレオチド誘導体の共有結合、脂質または脂質誘導体の共有結合、ホスホチジルイノシトールの共有結合、架橋結合、環化、ジスルフィド結合の形成、脱メチル化、共有架橋結合の形成、システインの形成、グリコシル化、GPIアンカーの形成、ヒドロキシル化、ヨウ素化、メチル化、ミリスチル化、酸化、peg化、タンパク質分解処理、リン酸化、プレニル化、ラセミ化、硫酸化、アルギニン化などのトランスファー−RNA媒介性のタンパク質へのアミノ酸の付加、およびユビキチン化が含まれる。(例えば、タンパク質−構造および分子特性(PROTEINS−STRUCTURE AND MOLECULAR PROPERTIES)、第2版、T.E.Creighton,W.H.Freeman and Company、New York(1993);タンパク質の翻訳後共有修飾(POST−TRANSLATIONAL COVALENT MODIFICATION OF PROTEINS)、B.C.Johnson編、Academic Press、ニューヨーク、ページ1〜12(1983);Seifter他(1990)Meth.Enzymol.、182:626〜646;Rattan他、Ann.N.Y.Acad.Sci.、663:48〜62を参照されたい。
リガンド部分として使用し得る治療分子には、それだけには限定されないが、ホルモン、マトリックスタンパク質、免疫抑制剤、気管支拡張剤、心血管作動剤、酵素、CNS剤、神経伝達物質、受容体タンパク質またはペプチド、成長ホルモン、成長因子、抗ウイルスペプチド、膜融合阻害ペプチド、サイトカイン、リンホカイン、モノカイン、インターロイキン、コロニー刺激因子、分化因子、血管形成因子、受容体リガンド、癌関連タンパク質、抗新生物剤、ウイルスペプチド、抗生物質ペプチド、血液タンパク質、拮抗タンパク質、転写因子、抗血管形成因子、拮抗タンパク質またはペプチド、受容体拮抗剤、抗体、単鎖抗体および細胞接着分子が含まれる。様々な治療分子を単一の融合タンパク質に合わせて、二重または多重機能的治療分子を生成し得る。また、様々な分子を組み合わせて使用して、治療部分および標的化部分を有する融合タンパク質も生成し得る。治療分子は、本発明のストーク部分と直接融合させるか、または、Tf部分もしくはアルブミン部分などの提示部分と融合もしくはその中に挿入することができる。
サイトカインとは、特定の受容体を介して非酵素的に作用して免疫応答を制御する、免疫系の細胞によって放出される可溶性タンパク質である。サイトカインは、低濃度で、特定の受容体と高い親和性で結合して作用するという点で、ホルモンに似ている。本明細書中で使用する用語「サイトカイン」とは、そのサイトカインに対する受容体を有する細胞中で特異的な生物学的応答を誘発する、天然に存在するまたは組換えのタンパク質、その類似体、およびその断片を説明するものである。サイトカインには、好ましくは、インターロイキン−2(IL−2)(GenBank受託番号S77834)、IL−3(GenBank受託番号M14743)、IL−4(GenBank受託番号M23442)、IL−5(GenBank受託番号J03478)、IL−6(GenBank受託番号M14584)、IL−7(GenBank受託番号NM_000880)、IL−10(GenBank受託番号NM_000572)、IL−12(GenBank受託番号AF180562やGenBank受託番号AF180563)、IL−13(GenBank受託番号U10307)、IL−14(GenBank受託番号XM_170924)、IL−15(GenBank受託番号X91233)、IL−16(GenBank受託番号NM_004513)、IL−17(GenBank受託番号NM_002190)およびIL−18(GenBank受託番号NM_001562)などのインターロイキン、顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)(GenBank受託番号X03021)、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)(GenBank受託番号X03656)、血小板活性化因子(GenBank受託番号NM_000437)およびエリスロポエイチン(GenBank受託番号X02158)などの造血因子、TNFα(GenBank受託番号X02910)などの腫瘍壊死因子(TNF)、リンフォトキシン−α(GenBank受託番号X02911)、リンフォトキシン−β(GenBank受託番号L11016)、ロイコレグリン、マクロファージ遊走阻害因子(GenBank受託番号M25639)、およびニューロロイキン(GenBank受託番号K03515)などのリンホカイン、レプチン(GenBank受託番号U43415)などの代謝プロセスの制御因子、インターフェロンα(IFNα)(GenBank受託番号M54886)、IFNβ(GenBank受託番号V00534)、IFNγ(GenBank受託番号J00219)、IFNo(GenBank受託番号NM_002177)などのインターフェロン、トロンボスポンジン1(THBS1)(GenBank受託番号NM_003246)、THBS2(GenBank受託番号L12350)、THBS3(GenBank受託番号L38969)、THBS4(GenBank受託番号NM_003248)、ならびにケモカインが含まれる。好ましくは、本発明の改変トランスフェリン−サイトカイン融合タンパク質はサイトカイン生物活性を示す。
本明細書中で使用する用語「ホルモン」とは、特定の細胞または組織によって産生され、身体の他の箇所に位置する別の細胞または組織で特異的な生物学的変化または活性が起こることを引き起こす、いくつかの生物活性のある物質のうちの任意のものを説明するものである。ホルモンには、好ましくは、プロインスリン(GenBank受託番号V00565)、インスリン(GenBank受託番号NM_000207)、成長ホルモン1(GenBank受託番号V00520)、成長ホルモン2(GenBank受託番号F006060)、成長ホルモン放出因子(GenBank受託番号NM_021081)、インスリン様成長因子I(GenBank受託番号M27544)、インスリン様成長因子II(GenBank受託番号NM_000612)、インスリン様成長因子結合タンパク質1(IGFBP−1)(GenBank受託番号M59316)、IGFBP−2(GenBank受託番号X16302)、IGFBP−3(GenBank受託番号NM_000598)、IGFBP−4(GenBank受託番号Y12508)、IGFBP−5(GenBank受託番号M65062)、IGFBP−6(GenBank受託番号NM_002178)、IGFBP−7(GenBank受託番号NM_001553)、絨毛性ゴナドトロピンβ鎖(GenBank受託番号NM_033142)、絨毛性ゴナドトロピンα鎖(GenBank受託番号NM_000735)、黄体形成ホルモンβ(GenBank受託番号X00264)、卵胞刺激ホルモンβ(GenBank受託番号NM_000510)、甲状腺刺激ホルモンβ(GenBank受託番号NM_000549)、プロラクチン(GenBank受託番号NM_000948)、プロオピオメラノコルチン(GenBank受託番号V01510)、コルチコトロピン(ACTH)、β−リポトロピン、α−メラニン形成細胞刺激ホルモン(α−MSH)、γ−リポトロピン、β−MSH、β−エンドルフィン、およびコルチコトロピン様中間体ローブペプチド(CLIP)が含まれる。
また、用語「ホルモン」には、いわゆる腸島軸(enteroinsular axis)に属する、インスリン分泌を制御する胃腸管系ホルモンであるグルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)、ならびにGLP−1受容体作用剤であるエキセンディン(例えばエキセンディン−4およびその変異体)も含まれる。
本明細書中で使用する用語「成長因子」とは、受容体と結合して細胞増殖を刺激する任意のタンパク質またはペプチドを説明するものである。成長因子には、好ましくは、血小板由来成長因子−α(PDGF−α)(GenBank受託番号X03795)、PDGF−β(GenBank受託番号X02811)、ステロイドホルモン、表皮成長因子(EGF)(GenBank受託番号NM_001963)、線維芽細胞成長因子1(FGF1)(GenBank受託番号NM_000800)、FGF2(GenBank受託番号NM_002006)、FGF3(GenBank受託番号NM_005247)、FGF4(GenBank受託番号NM_002007)、FGF5(GenBank受託番号M37825)、FGF6(GenBank受託番号X57075)、FGF7(GenBank受託番号NM_002009)、FGF8(GenBank受託番号AH006649)、FGF9(GenBank受託番号NM_002010)、FGF10(GenBank受託番号AB002097)、FGF11(GenBank受託番号NM_004112)、FGF12(GenBank受託番号NM_021032)、FGF13(GenBank受託番号NM_004114)、FGF14(GenBank受託番号NM_004115)、FGF16(GenBank受託番号AB009391)、FGF17(GenBank受託番号NM_003867)、FGF18(GenBank受託番号AF075292)、FGF19(GenBank受託番号NM_005117)、FGF20(GenBank受託番号NM_019851)、FGF21(GenBank受託番号NM_019113)、FGF22(GenBank受託番号NM_020637)、およびFGF23(GenBank受託番号NM_020638)などの線維芽細胞成長因子、アンジオゲニン(GenBank受託番号M11567)、脳由来神経栄養因子(GenBank受託番号M61176)、毛様体神経栄養性成長因子(GenBank受託番号X60542)、トランスフォーミング成長因子−α(TGF−α)(GenBank受託番号X70340)、TGF−β(GenBank受託番号X02812)、神経成長因子−α(NGF−α)(GenBank受託番号NM_010915)、NGF−β(GenBank受託番号X52599)、メタロプロテイナーゼの組織阻害剤1(TIMP1)(GenBank受託番号NM_003254)、TIMP2(GenBank受託番号NM_003255)、TIMP3(GenBank受託番号U02571)、TIMP4(GenBank受託番号U76456)ならびにマクロファージ刺激1(GenBank受託番号L11924)が含まれる。
本明細書中で使用する用語「マトリックスタンパク質」とは、通常は細胞外基質中に見つかるタンパク質またはペプチドを説明するものである。これらのタンパク質は、強度、濾過、または接着に機能的に重要であり得る。マトリックスタンパク質には、好ましくは、コラーゲンI(GenBank受託番号Z74615)、コラーゲンII(GenBank受託番号X16711)、コラーゲンIII(GenBank受託番号X14420)、コラーゲンIV(GenBank受託番号NM_001845)、コラーゲンV(GenBank受託番号NM_000393)、コラーゲンVI(GenBank受託番号NM_058175)、コラーゲンVII(GenBank受託番号L02870)、コラーゲンVIII(GenBank受託番号NM_001850)、コラーゲンIX(GenBank受託番号X54412)、コラーゲンX(GenBank受託番号X60382)、コラーゲンXI(GenBank受託番号J04177)、およびコラーゲンXII(GenBank受託番号U73778)などのコラーゲン、LAMA2(GenBank受託番号NM_000426)、LAMA3(GenBank受託番号L34155)、LAMA4(GenBank受託番号NM_002290)、LAMB1(GenBank受託番号NM_002291)、LAMB3(GenBank受託番号L25541)、LAMC1(GenBank受託番号NM_002293)などのラミニンタンパク質、ナイドジェン(GenBank受託番号NM_002508)、α−テクトリン(GenBank受託番号NM_005422)、β−テクトリン(GenBank受託番号NM_058222)、ならびにフィブロネクチン(GenBank受託番号X02761)が含まれる。
用語「血液タンパク質」とは、伝統的に血漿を起源とするものと定義され、その多くは現在では一般的に組換え手段によって産生され、それだけには限定されないが、ネイティブ血清タンパク質、その誘導体、断片および突然変異体または変異体、血液凝固因子、誘導体、突然変異体、変異体および断片(第VII、VIII、IX、X因子を含む)、プロテアーゼ阻害剤(抗トロンビン3、α−1抗トリプシン)、ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化剤、免疫グロブリン、フォンウィルブランド因子およびフォンウィルブランド突然変異体、フィブロネクチン、フィブリノーゲン、トロンビンならびにヘモグロビンが含まれる。
本明細書中で使用する用語「酵素」とは、自身が恒久的に変更または破壊されることなしに、特異的な反応を触媒する任意のタンパク質またはタンパク質性物質を説明するものである。酵素には、好ましくは、F2(GenBank受託番号XM_170688)、F7(GenBank受託番号XM_027508)、F8(GenBank受託番号XM_013124)、F9(GenBank受託番号NM_000133)、F10(GenBank受託番号AF503510)および他のものなどの凝固因子、マトリックスメタロプロテイナーゼI(GenBank受託番号MMP1)(GenBank受託番号NM_002421)、MMP2(GenBank受託番号NM_004530)、MMP3(GenBank受託番号NM_002422)、MMP7(GenBank受託番号NM_002423)、MMP8(GenBank受託番号NM_002424)、MMP9(GenBank受託番号NM_004994)、MMP10(GenBank受託番号NM_002425)、MMP12(GenBank受託番号NM_002426)、MMP13(GenBank受託番号X75308)、MMP20(GenBank受託番号NM_004771)などのマトリックスメタロプロテイナーゼ、アデノシンデアミナーゼ(GenBank受託番号NM_000022)、MAPK3(GenBank受託番号XM_055766)、MAP2K2(GenBank受託番号NM_030662)、MAP2K1(GenBank受託番号NM_002755)、MAP2K4(GenBank受託番号NM_003010)、MAP2K7(AF013588)、およびMAPK12(NM_002969)などのマイトジェン活性化タンパク質キナーゼ、JNKK1(GenBank受託番号U17743)、JNKK2(GenBank受託番号AF014401)、JAK1(M64174)、JAK2(NM_004972)、およびJAK3(NM_000215)などのキナーゼ、ならびにPPM1A(GenBank受託番号NM_021003)およびPPM1D(GenBank受託番号NM_003620)などのホスファターゼが含まれる。
本明細書中で使用する用語「転写因子」とは、タンパク質をコードしている遺伝子の転写に関与している任意のタンパク質またはペプチドを説明するものである。転写因子には、Sp1、Sp2(GenBank受託番号NM_003110)、Sp3(GenBank受託番号AY070137)、Sp4(GenBank受託番号NM_003112)NFYB(GenBank受託番号NM_006166)、Hap2(GenBank受託番号M59079)、GATA−1(GenBank受託番号NM_002049)、GATA−2(GenBank受託番号NM_002050)、GATA−3(GenBank受託番号X55122)、GATA−4(GenBank受託番号L34357)、GATA−5、GATA−6(GenBank受託番号NM_005257)、FOG2(NM_012082)、Eryf1(GenBank受託番号X17254)、TRPS1(GenBank受託番号NM_014112)、NF−E2(GenBank受託番号NM_006163)、NF−E3、NF−E4、TFCP2(GenBank受託番号NM_005653)、Oct−1(GenBank受託番号X13403)、HOXB2(GenBank受託番号NM_002145)、HOX2H(GenBank受託番号X16665)などのホメオボックスタンパク質、無毛相同体(GenBank受託番号NM_005144)、MADH1(GenBank受託番号NM_005900)、MADH2(GenBank受託番号NM_005901)、MADH3(GenBank受託番号NM_005902)、MADH4(GenBank受託番号NM_005359)、MADH5(GenBank受託番号AF009678)、MADH6(GenBank受託番号NM_005585)、MADH7(GenBank受託番号NM_005904)、MADH9(GenBank受託番号NM_005905)などのマザーズアゲンストデカペンタプレジックタンパク質(mothers against decapentaplegic protein)、ならびにSTAT1(GenBank受託番号XM_010893)、STAT2(GenBank受託番号NM_005419)、STAT3(GenBank受託番号AJ012463)、STAT4(GenBank受託番号NM_003151)、STAT5(GenBank受託番号L41142)、およびSTAT6(GenBank受託番号NM_003153)などの転写タンパク質のシグナル伝達物質および活性化剤が含まれ得る。
本発明のさらに別の実施形態では、治療分子は非ヒトまたは非哺乳動物タンパク質である。例えば、HIV gp120、HIV Tat、肝炎、ヘルペス、インフルエンザ、アデノウイルスおよびRSVなどの他のウイルスの表面タンパク質、他のHIV構成要素、マラリア抗原などの寄生虫表面タンパク質、ならびに細菌表面タンパク質を使用し得る。これらの非ヒトタンパク質は、例えば抗原として、または有用な活性を有するので、使用し得る。例えば、治療分子は、ストレプトキナーゼ、スタフィロキナーゼ、アスパラギナーゼ、ウロキナーゼ、または有用な酵素活性を有する他のタンパク質であり得る。
本発明の代替実施形態では、治療分子は、生物活性を有するリガンド−結合タンパク質である。そのようなリガンド−結合タンパク質は、例えば、(1)細胞表面での受容体−リガンドの相互作用を遮断し得る、または(2)血液の液相中の分子の生物活性を中和することで、それがその細胞標的に達することを予防し得る。一部の実施形態では、改変トランスフェリン融合タンパク質には、それだけには限定されないが、低密度リポタンパク質(LDL)受容体、アセチル化LDL受容体、腫瘍壊死因子α受容体、トランスフォーミング成長因子β受容体、サイトカイン受容体、免疫グロブリンFc受容体、ホルモン受容体、グルコース受容体、糖脂質受容体、およびグリコサミノグリカン受容体からなる群から選択される受容体のリガンド−結合ドメインと融合した改変トランスフェリン分子が含まれる。他の実施形態では、リガンド−結合タンパク質には、CD2(M14362)、CD3G(NM_000073)、CD3D(NM_000732)、CD3E(NM_000733)、CD3Z(J04132)、CD28(NM_006139)、CD4(GenBank受託番号NM_000616)、CD1A(GenBank受託番号M28825)、CD1B(GenBank受託番号NM_001764)、CD1C(GenBank受託番号NM_001765)、CD1D(GenBank受託番号NM_001766)、CD80(GenBank受託番号NM_005191)、GNB3(GenBank受託番号AF501884)、CTLA−4(GenBank受託番号NM_005214)、ICAM−1(NM_000201)、ICAM−2(NM_000873)、およびICAM−3(NM_002162)などの細胞間接着分子、TNFRSF1A(GenBank受託番号X55313)、TNFR1SFB(GenBank受託番号NM_001066)、TNFRSF9(GenBank受託番号NM_001561)、TNFRSF10B(GenBank受託番号NM_003842)、TNFRSF11B(GenBank受託番号NM_002546)、およびTNFRSF13B(GenBank受託番号NM_006573)などの腫瘍壊死因子受容体、ならびにIL2RA(GenBank受託番号NM_000417)、IL2RG(GenBank受託番号NM_000206)、IL4R(GenBank受託番号AF421855)、IL7R(GenBank受託番号NM_002185)、IL9R(GenBank受託番号XM_015989)、およびIL13R(GenBank受託番号X95302)などのインターロイキン受容体が含まれる。好ましくは、本発明のリガンド−結合タンパク質の融合体は、リガンド−結合タンパク質の生物活性を表示する。
本明細書中で使用する用語「癌関連タンパク質」とは、癌抑制遺伝子または癌遺伝子によってコードされているタンパク質など、その発現が癌または調節された細胞成長の維持に関連しているタンパク質またはポリペプチドを説明するものである。癌関連タンパク質には、p16(GenBank受託番号AH005371)、p53(GenBank受託番号NM_000546)、p63(GenBank受託番号NM_003722)、p73(GenBank受託番号NM_005427)、BRCA1(GenBank受託番号U14680)、BRCA2(GenBank受託番号NM_000059)、CTBP相互作用タンパク質(GenBank受託番号U72066)、DMBT1(GenBank受託番号NM_004406)、HRAS(GenBank受託番号NM_005343)、NCYM(GenBank受託番号NM_006316)、FGR(GenBank受託番号NM_005248)、myb(GenBank受託番号AF104863)、raf1(GenBank受託番号NM_002880)、erbB2(GenBank受託番号NM_004448)、VAV(GenBank受託番号X16316)、c−fos(V GenBank受託番号01512)、c−fes(GenBank受託番号X52192)、c−jun(GenBank受託番号NM_002228)、MAS1(GenBank受託番号M13150)、pim−1(GenBank受託番号M16750)、TIF1(GenBank受託番号NM_003852)、c−fms(GenBank受託番号X03663)、EGFR(GenBank受託番号NM_005228)、erbA(GenBank受託番号X04707)、c−srcチロシンキナーゼ(GenBank受託番号XM_044659)、c−abl(GenBank受託番号M14752)、N−ras(GenBank受託番号X02751)、K−ras(GenBank受託番号M54968)、jun−B(GenBank受託番号M29039)、c−myc(GenBank受託番号AH001511)、RB1(GenBank受託番号M28419)、DCC(GenBank受託番号X76132)、APC(GenBank受託番号NM_000038)、NF1(GenBank受託番号M89914)、NF2(GenBank受託番号Y18000)、およびbcl−2(GenBank受託番号M13994)が含まれ得る。
本明細書中で使用する「膜融合阻害ペプチド」とは、抗ウイルス活性、抗膜融合能力、および/または細胞内プロセスを変調する能力を示すペプチド、例えば、コイルドコイルペプチド構造を含むものを説明するものである。抗ウイルス活性には、それだけには限定されないが、未感染の細胞へのHIV−1、HIV−2、RSV、SIV、EBV、麻疹、ウイルス、インフルエンザウイルス、またはCMVの感染の阻害が含まれる。さらに、ペプチドの抗膜融合能力、抗ウイルス活性または細胞内変調活性は、単にペプチドの存在だけを要し、そのようなペプチドに対する宿主の免疫応答の刺激を特に必要としない。抗膜融合とは、2つ以上の部分間の膜融合事象のレベルを、ペプチドが存在しない場合に前記部分間で起こる膜融合のレベルと比較して阻害または低下させる、ペプチドの能力をいう。部分は、例えば、細胞膜またはウイルス外被もしくは線毛などのウイルス構造であり得る。本明細書中で使用する用語「抗ウイルスペプチド」とは、細胞のウイルス感染、または例えば細胞間融合もしくは遊離ウイルス感染を介した、生産的なウイルス感染および/もしくはウイルス病因に必要な何らかのウイルス活性を阻害する、ペプチドの能力をいう。そのような感染は、外被に包まれたウイルスの場合で起こるような膜融合、またはウイルス構造および細胞構造に関与する何らかの他の融合事象を含み得る。膜融合阻害ペプチドおよび抗ウイルスペプチドは、多くの場合、複数のウイルスタンパク質に由来するアミノ酸配列(例えば、HIV−1、HIV−2、RSV、およびSIV由来のポリペプチド)を有する。
膜融合阻害ペプチドおよび抗ウイルスペプチドの例は、すべて本明細書中に参考として組み込まれている、国際公開公報WO94/2820、国際公開公報WO96/19495、国際公開公報WO96/40191、国際公開公報WO01/64013ならびに米国特許第6,333,395号、第6,258,782号、第6,228,983号、第6,133,418号、第6,093,794号、第6,068,973号、第6,060,065号、第6,054,265号、第6,020,459号、第6,017,536号、第6,013,263号、第5,464,933号、第5,346,989号、第5,603,933号、第5,656,480号、第5,759,517号、第6,245,737号、第6,326,004号、および第6,348,568号中に見つけることができる。
他の種類のペプチドの例には、本明細書中に記載の治療タンパク質の断片、特に親分子の少なくとも1つの活性を保持しているヒトタンパク質の断片が含まれる。本発明のリガンド部分を生成するために使用し得るペプチドにはまた、模倣体ペプチドおよび治療タンパク質の生物活性を示すが配列または三次元構造が完全長の治療タンパク質とは異なるペプチドも含まれる。非限定的な例として、ペプチドには、Johnson他(2000)Nephrol.Dial.Transplant、15(9):1274〜7、Kuai他(2000)J.Pept.Res.、56(2):59〜62、Barbone他(1999)Nephrol.Dial.Transplant.、14、補遺2:80〜4、Middleton他(1999)J.Biol.Chem.、274(20):14163〜9、Johnson他(1998)Biochemistry、37(11):3699〜710、Johnson他(1997)Chem.Biol.、12:939〜50、Wrighton他(1997)Nat.Biotechnol.、15(12):1261〜5、Livnah他(1996)Science、273:464〜71、およびWrighton他、(1996)Science、273:458〜64に開示されているエリスロポエイチン模倣体ペプチドが含まれる。
治療分子にはまた、アレルゲンタンパク質およびその消化断片も含まれる。これらには、ブタクサ、ライムギ、ミノボロ、オーチャードグラス、ハルガヤ、コヌカグサ、チモシー牧草、イエロードック、コムギ、トウモロコシ、ヤマヨモギ、ブルーグラス、カリフォルニア一年草、アカザ、バミューダグラス、ロシアアザミ(Russian thistle)、マウンテンシーダー(mountain cedar)、オーク、トリネコバノカエデ、サイカモアカエデ、カエデ、ニレなどの花粉アレルゲン、塵ダニ、ハチ毒、食物アレルゲン、動物鱗屑、および他の昆虫毒も含まれる。
他の治療分子には、ウイルス、細菌および原虫ワクチンならびに表面抗原などのその様々な構成要素を含めた微生物ワクチンが含まれる。これらには、これらのタンパク質に由来する糖タンパク質、タンパク質またはペプチドを含有するワクチンが含まれる。そのようなワクチンは、黄色ブドウ球菌、化膿性連鎖球菌、肺炎球菌、骨髄炎菌、淋菌、サルモネラspp.、シゲラspp.、大腸菌、クレブシエラspp.、プロテウスspp.、コレラ菌、ピロリ菌、緑膿菌、インフルエンザ菌、百日咳菌、ヒト結核菌、在郷軍人病菌、梅毒トレポネーマ、クラミジア、破傷風トキソイド、ジフテリアトキソイド、インフルエンザウイルス、アデノウイルス、パラミキソウイルス(流行性耳下腺炎、麻疹)、風疹ウイルス、ポリオウイルス、肝炎ウイルス、ヘルペスウイルス、狂犬病ウイルス、HIV−1、HIV−2、RSVおよびパピローマウイルスから調製する。
好ましい融合分子は、抗HIVウイルスペプチド、抗RSVペプチド、ヒト成長ホルモン、αおよび/またはβインターフェロン、エリスロポエチン(EPO)、EPO様ペプチド、顆粒球−コロニー刺激因子(GCSF)、顆粒球−マクロファージコロニー−刺激因子(GMCSF)、インスリン、インスリン様成長因子(IGF)、トロンボポエイチン、抗体のCDRに対応するペプチド、膵島新生関連タンパク質(INGAP)、カルシトニン、アンジオスタチン、エンドスタチン、インターロイキン−2、成長ホルモン放出因子、ヒト副甲状腺ホルモン、抗腫瘍壊死因子(TNF)ペプチド、インターロイキン−1(IL−1)受容体および/または単鎖抗体を含有し得る。
本発明の融合タンパク質はまた、新しいまたは新規の機能を有する分子をスクリーニングするために、ペプチドライブラリーに由来するペプチドまたはポリペプチドが含まれるように調製してもよい。そのようなペプチドライブラリーには、市販されているものまたは公的に入手可能なもの、例えば、American Peptide Co.Inc.、Cell Sciences Inc.、Invitrogen Corporation、Phoenix Pharmaceuticals Inc.、United States Biological、ならびに利用可能な技術によって生成したもの、例えば、標準手順を用いて作成したバクテリオファージおよび細菌ディスプレイライブラリーが含まれ得る。
本発明のさらに他の実施形態では、融合タンパク質は、当分野で知られている治療タンパク質部分を用いて調製してもよく、すべてその全体が本明細書中に参考として組み込まれている、食品薬品局(www.fda.gov/cber/efoi/approve.htm)ならびにPCT特許公開の国際公開公報WO01/79258、国際公開公報WO01/77137、国際公開公報WO01/79442、国際公開公報WO01/79443、国際公開公報WO01/79444および国際公開公報WO01/79480によって現在認可されているペプチドおよびタンパク質によって例示されている。
本明細書中に参考として組み込まれているPCT国際公開の国際公開公報WO03/020746の表1は、本発明の融合タンパク質の治療タンパク質部分、すなわちリガンド部分に対応する治療タンパク質の限定的なリストを提供する。「治療タンパク質X」の列は、治療タンパク質分子に続いて、治療タンパク質分子またはその断片もしくは変異体を含む、またはそれからなる学名および商標を含有する括弧を開示している。本明細書中で使用する「治療タンパク質X」とは、個々の治療タンパク質分子(CASおよびGenBank受託番号から入手可能なアミノ酸配列によって定義される)、またはこの列に開示されている所定の治療タンパク質分子に関連する治療タンパク質の群全体のどちらかに言及し得る。「例示的な識別子」の列は、タンパク質分子または治療タンパク質分子の断片もしくは変異体のアミノ酸配列を含有するCASレジストリまたはGenbankデータベースの登録に対応する、化学情報検索サービス(CAS)レジストリ番号(米国化学会によって公開)ならびに/または国立バイオテクノロジー情報センター(NCBI)のホームページ(www.ncbi.nlm.nih.gov)から入手可能なGenBank受託番号(例えば、座位のID、NP−XXXXX(参照配列タンパク質)、およびXP−XXXXX(モデルタンパク質)の識別子を提供する。さらに、一部のポリペプチドの例示的なアミノ酸配列を同定するために、GenSeq受託番号および/または学術雑誌の論文の引用が提供されている。
これらのCASおよびGenbankおよびGenSeq受託番号ならびに引用された学術雑誌の論文のそれぞれに関連する要約のページが利用可能であり(例えばPubMed ID番号(PMID))、その全体が本明細書中に参考として組み込まれている。PCT/特許参考文献の列は、すべてその全体が本明細書中に参考として組み込まれている、治療タンパク質分子を記載している特許および/または公開特許出願に対応する米国特許番号またはPCT国際公開番号を提供する。生物活性の列は、治療タンパク質分子に関連する生物活性を記載している。例示的な活性アッセイの列は、治療タンパク質または治療タンパク質Xの部分を含む本発明のトランスフェリン融合タンパク質の治療活性および/または生物活性を試験するために使用し得るアッセイについて記載している参考文献を提供する。これらの参考文献もその全体が本明細書中に参考として組み込まれている。「好ましい適応症Y」の列は、治療タンパク質Xまたは治療タンパク質Xの部分を含む本発明のトランスフェリン融合タンパク質によって治療、予防、診断、または寛解させ得る疾患、障害、および/または状態を記載している。本発明には、その全体が本明細書中に参考として組み込まれている国際公開公報WO03/020746に提供されている治療タンパク質が含まれる。
(実施例1)
GPIアンカー、hMUC1、およびmTF発現カセットの調製
mTf発現カセット(配列番号16)を含有するpREX0549ベクターをSalIおよびHindIIIで消化した。図3はpREX0549のベクターマップを提供する。プライマーP0922およびP0923(配列番号7および配列番号8)を一緒にアニーリングし、pREX0549内にSalI/HindIII消化部位でライゲーションした。P0922およびP0923によって形成されたリンカーは、SpeI、HindIII、およびXbaI制限部位を含有しており、GPIアンカーおよびMUC1ストークをコードしている核酸分子を受け入れるように設計されていた。生じたベクターpREX0628は、P0922/P0923リンカーを有するmTf発現カセットを含有していた。
pREX0628をHindIIIおよびXbaIで消化した。プライマーP0924およびP0925(配列番号9および配列番号10)をアニーリングして、GPIアンカーYIR019cを形成した。YIR019cを消化したpREX0628内にライゲーションして、ベクターpREX0634を作製した。
hMUC1のcDNAを、ヒト乳房腫瘍全RNAライブラリー(Clontech)から、プライマーP0958およびP0959(配列番号11および配列番号12)を用いて、RT−PCRによって増幅した。生じたcDNAを、プライマーP1019およびP1020(配列番号13および配列番号14)を用いて増幅して、SpeIおよびHindIII制限部位を作製した。生じたSpeIおよびHindIII部位を有するhMUC1を配列番号6に提供する。
pREX0634をSpeIおよびHindIIIで消化し、SpeIおよびHindIII部位を有するhMUC1をベクター内にライゲーションした。生じたベクターpREX0663をディスプレイ発現カセット(mTf−MUC1−GPI)として使用した。
pREX0663を用いて高および低コピー数の酵母発現ベクターを作製した。高コピー数の酵母発現ベクターを作製するために、ベクターをNotIで消化することによって、4.1kbのディスプレイ発現カセットをpREX0663から除去した。その後、発現カセットを、NotIで消化し、脱リン酸化されたpSAC35ベクター内にライゲーションして、ベクターpREX0667(酵母ディスプレイベクターI)がもたらされた。
低コピー数の酵母発現ベクターは、pREX0663をNotIで消化し、発現ベクターをNotIで消化し、脱リン酸化されたpREX0699内にライゲーションして、pREX0721酵母ディスプレイ(酵母ディスプレイベクターII)をもたらすことによって作製した。
上述の酵母発現ベクターを用いて、当分野で知られているように酵母細胞および細菌細胞を形質転換させることができる。ベクターは、当分野で知られているように酵母中で発現させることができる。さらに、ランダムペプチドまたはCDRなどのリガンド部分のライブラリーを表示することができる発現されたトランスフェリン融合タンパク質のコレクションを作製して、当分野で知られているように結合剤をスクリーニングするために使用することができる。
(実施例2)
15量体のランダムライブラリーの構築
新規結合特徴を有するトランスフェリン変異体を選択するために、当分野で知られているPCRニッティング(knitting)手順によって、トランスフェリンのアミノ酸位置289〜290でランダムな15量体のライブラリーを構築した(MartinおよびSmith(2006)Biochem J.、396(2):287〜95参照)。15量体のライブラリーを設計したが、結合エピトープを形成するためには通常約7個のアミノ酸しか必要でなく、約109個までのライブラリーは設計したライブラリー(3.3×1019個)のわずかな一部のみしか及ばない。しかし、109個のライブラリーサイズでは、15量体のライブラリーは、同じ大きさの7量体のライブラリーよりも6.4倍多くの7量体を網羅する。
P1174/P1227を用いてトランスフェリンのBamHI/BspEI配列を含有するDNA断片を得た後、2つのPCR反応(それぞれ単一のプライマーP1172およびP1173を用いる)を行って一本鎖DNAを得た。ssDNAを単離し、アニーリングして、ニッティング15量体のライブラリーを形成した。この操作により、ライブラリーが合成オリゴヌクレオチドの元々の複雑さを維持していることが確実にされた。P1174/P1227を用いて二本鎖のニッティング15量体のライブラリーをさらに増幅して、十分な量のDNAが得られた。PCR産物を精製し、BamHI/BspEIで消化し、適切なプラスミドベクター、例えばpREX0995(図4)またはpREX0667内にクローニングした。
P1172(配列番号19)
289〜290の15量体ランダムペプチドlib挿入ニッティング順方向逆方向断片
C CAA CTA TTC AGC TCT CCT 567 567 567 567 567 567 567 567 567 567 567 567 567 567 567 CAT GGG AAG GAC CTG CTG TTT AAG
DNA配列中のそれぞれの位置にランダム性を導入するために、LaBeanおよびKauffman(1993)Protein Sci.、2:1249〜54に従って、ヌクレオチドの混合物(A、G、TおよびC)を、事前に決定した比でその位置に取り込ませた。以下に示す混合物は、ストップコドンの頻度を最小限にし、アミノ酸組成を天然のタンパク質と一致させる。
5 13%のT、32%のG、20%のC、35%のA
6 24%のT、24%のG、22%のC、30%のA
7 37%のT、26%のG、37%のC
P1173(配列番号20)
289〜290の15量体ランダムペプチドlibニッティング逆方向プライマー、前方断片用
AGGAGAGCTGAATAGTTGG
P1174(配列番号21)
289〜290の15量体ランダムペプチドlibニッティング順方向プライマー、前方断片用
CTGGATGCAGGTTTGGTGTATG
P1227(配列番号22)
289〜290の15量体ランダムペプチドlibニッティング逆方向プライマー、後方断片用
TCATGATCTTGGCGATGCAGTC
(実施例3)
Flagを表示している酵母細胞の選択
トランスフェリンのNローブが、ストーク領域huMUC1とGPIシグナル配列との融合によって酵母の表面上に表示されている、酵母ディスプレイシステムを確立した。結合剤の選択におけるこの系の有用性を実証するために、Flagタグ配列DYKDDDDK(配列番号23)、またはランダムの15量体ペプチドライブラリーを、トランスフェリンNローブのアミノ酸位置289に挿入した。その後Flagタグ付けしたトランスフェリンNローブを表示している酵母pREX1012(図6)を、ランダムの15量体ペプチドを有するトランスフェリンNローブを表示している酵母のプールに添加した。この混合集団から、Flagタグ付けしたトランスフェリンNローブを表示している酵母のみを、抗Flag抗体を用いた選択によって回収した。
Flagタグ配列をトランスフェリンのアミノ酸位置289内に挿入するために、Flagタグ配列を組み込んだオリゴを合成し、pREX0667ベクター内にPCRニッティングしてpREX0759(図7)を作製した。その後、Flagタグ配列を含有するpREX0759のBamHI/BspEI断片を使用して、pREX0995(図4)の同じ制限断片を置き換えた。生じたプラスミドpREX1012は、Flagタグ付けしたトランスフェリンNローブ−MUC1−GPI融合タンパク質を発現する。
15量体のライブラリーはまた、pREX0995のBamHI/BspEI部位の間にもクローニングした。15量体のライブラリーの調製を以下に記載する。ライゲーション試料を大腸菌DH5α内に形質転換させ、形質転換混合物を2つのLB/Amp(50μg/mL)の寒天プレートにすべて植えた。すべてのコロニーを収集し、Qiagenプラスミドプレッププロトコルを用いて、いくつかのミニプレップカラムを使用して、プラスミドDNAを抽出した。
pREX1012および15量体のライブラリーの両方のプラスミドDNAを、出芽酵母株DS1101cir°内に形質転換させた。pREX1012の単一コロニーを、スクロース(BMM/S)を含む緩衝最少培地に接種し、終夜培養した。15量体のライブラリーのすべてのコロニーを収集し、BMM/Sに接種した。2つの終夜培養物の細胞計数を血球計算機によって決定し、以下の細胞混合物を調製した。
(A)103個のpREX1012酵母細胞、109個の15量体のライブラリーの酵母細胞と混合(10:107)
(B)103個のpREX1012酵母細胞、108個の15量体のライブラリーの酵母細胞と混合(100:107)
細胞混合物を、1mlの細胞遮断溶液(1×PBS/0.05%のTween−20、1%のBSA)中、氷上で30分間インキュベーションした。遠心分離後(13000rpmで30秒間)、細胞ペレットを、ビオチン標識した抗Flag抗体(Sigma Aldrich、1:25希釈)を含む1mlの洗浄溶液(1×PBS、0.5%のBSA、2mMのEDTA)中に懸濁させ、氷上で30分間インキュベーションした。細胞を1mlの洗浄溶液で2回洗浄し、800□l(A)または160□l(B)の遮断溶液に懸濁させた。細胞懸濁液に200□l(A)または40□l(B)のストレプトアビジンMACSマイクロビーズ(Miltenyi Biotec)を加え、氷上で30分間インキュベーションした。標識した細胞を、MSカラムを用いて、製造者の指示(Miltenyi Biotec)に従って、未標識の細胞から分離した。標識した細胞を収集し、BMM/Sアガロースプレートに植え、小コロニーが現れるまで30℃でインキュベーションした。
2回目の選択は、それぞれのプレートからすべてのコロニーを収集、それらを終夜、30℃で、5mlのBMM/S中で成長させることによって行った。これらの培養物から、1.5のOD600に等しい細胞を、上述のようにさらなるMACS分離の回に供した。この2回目のスクリーニングからの細胞を、終夜、30℃で、5mlのBMM/S中で培養した。それぞれの選択の前および後の酵母細胞培養物を、Agilent TechnolgyのBioanalyzerで、抗Flagモノクローナル抗体(Sigma Aldrich)およびAPCで標識したヤギ抗マウス検出抗体を用いたFACSによって分析した。FACS分析は製造者の指示に従って行った。Flagタグ付けした酵母の存在が2回のMACS分離後に明らかとなった(図8)。
(実施例4)
Aga1ストークディスプレイ
酵母遺伝子AGA1の核領域のDNA配列(成熟タンパク質の残基116〜658)は、以下のプライマーを用いたS288c酵母ゲノムDNAのPCRによって得た。
約1.5kbまでのPCR産物を単離し、XbaI/HindIIIで消化した。断片を、SpeI/HindIIIで消化したpREX0855(図9)内にライゲーションし、大腸菌DH5α内に形質転換させた。生じたすべてのコロニーを収集し、プラスミドDNAを細胞から単離した。発現カセットをNotI消化によって回収し、pSAC35内にライゲーションして酵母発現ベクターが得られた。
前述のように、酵母内への形質転換および抗Flag抗体を用いたFACS。酵母コロニーは、匹敵するMUC1ストークに基づいた構築体よりも約10倍高い、高レベルのNローブの表示を示した(データ示さず)。
単一の酵母コロニーを単離し、プラスミドDNAをこの酵母細胞から抽出した。抽出したプラスミドDNAをNotI消化した後にNotI発現カセットを回収し、NotIで消化したpREX0855内にライゲーションして、プラスミドpREX1087(図10)、Flag−Nローブ−Aga1−GPI発現カセットを含有するpUCに基づいたベクターが得られた。Aga1に対応するDNA配列の領域の配列決定を行って、その同一性を確認した。この発現カセットはまた、pSAC35内に逆方向でも移して、pREX1106(図11)が得られた。
(実施例5)
酵母細胞中で機能する哺乳動物GPI変異体の選択
哺乳動物GPIシグナルは、細胞内輸送、膜貫通シグナルの伝達およびクラスリン非依存性エンドサイトーシスなど、その酵母対応物が果たさない役割を果たす(Biochem J.、1993、294:305〜324)。酵母細胞は、細胞膜を有するだけでなく、哺乳動物細胞には存在しない細胞壁も有し、酵母GPIの多くは、タンパク質を酵母細胞壁に標的化する独特な配列を有する(J Bacteriol、1999、181:3886〜3889)。ヒト胎盤アルカリホスホターゼのGPIは、酵母細胞中ではまったく機能しないことが示されている(Mol Microbiol、1999、34:247〜256)。発現された組換えタンパク質を酵母細胞壁内に結合させることができる新規配列を得る手段として、pREX0885(図9)に基づくが、huMDPのGPI配列
を使用した酵母ディスプレイベクター。この配列は、4つの完全にランダムなコドン(X)およびいくつかの(下線)合理的な改変を取り込むように改変されており、
GPI配列を上述のように改変したFlagタグ−Nローブ−MUC1ストーク−GPIの融合タンパク質を発現する酵母ライブラリーを、出芽酵母株DS1101cir°内に形質転換させた。細胞壁に融合タンパク質が結合したすべての酵母細胞を、ビオチン標識した抗Flag抗体を用いたMACSによって単離した。
2つのオリゴ、P2035およびP2036(以下参照)をアニーリングし、Taqポリメラーゼを用いて伸長した。生じたDNA断片を精製し、HindIII/XbaIで消化し、HindIII/XbaIで消化したpREX0855(以下および図9参照)内にライゲーションした。
プライマー
ライゲーション混合物を大腸菌DH5α内に形質転換させて、約5×105個のコロニーが得られた。すべてのコロニーを収集し、プラスミドDNAを単離した。プラスミドDNAをNotIで消化して発現カセットを回収し、SAC35内にクローニングして酵母発現ライブラリーを作製した。このライブラリーを電気穿孔によってDS1101cir°細胞内に形質転換させた。前述のライブラリーの終夜培養物を、ビオチン標識した抗Flag抗体を用いたMACSに供した。単離した細胞を、同じ抗体を用いたMACSによってすぐに再度精製した。生じた細胞をBMMSプレートに植え、FACSおよびDNA配列分析によって24個のコロニーを特徴づけた。(Flagスパイクに説明を参照。)
読取り可能な配列を与えた22個のクローンのうち、7個のみが様々なレベルのディスプレイで完全長のGPIアンカーを有しており(表1)、それらのうちの最良のものは、酵母GPIアンカーを有する同じ融合タンパク質を発現するpREX1003ベクターよりも良好であった。
予想外に、クローンの50%がランダム化されたコドンのうちの1つでストップコドンによって切断されており、GPIアンカーシグナルが有効に欠失していた。これら12個のクローンのうち、2つがpREX1003よりも有意に良好なディスプレイレベルを有することが決定され、ストップコドンの直前にシステイン残基を含有することが見出された(CQIGGS*(配列番号34)およびCQ*、*=ストップコドン)(図12)。恐らく、これらの構築体は、細胞壁タンパク質中の遊離システイン残基とのジスルフィド結合を解して細胞壁内に架橋結合されていた。
(実施例6)
RGDライブラリーの構築およびスクリーニング
インテグリン□IIb□3と結合し、血小板の凝集を阻害するトランスフェリン変異体の選択には、インテグリン結合配列Arg−Gly−Asp(RGD)の片側に3つのランダム化されたアミノ酸を含むペプチドを、Tf骨格(CXXXRGDXXXC、Xはランダム化位置を表す)内に、トランスフェリンのアミノ酸位置289〜290でPCRニッティング手順によって挿入することによって、ライブラリーを構築した。
プライマーP1980/P2181およびP2127/P1173を用いてpREX1106(図11)を増幅して、断片AおよびBが得られた(図13)。
P1173
289〜290のニッティング逆方向プライマー、前方断片用
AGGAGAGCTGAATAGTTGG
P1980
ランダムペプチドライブラリーのニッティング順方向プライマーを含有する289〜290のRGD、後方断片用
CCAACTATTCAGCTCTCCTTGT567567567AGAGGAGAC567567567TGTCATGGGAAGGACCTGCTGTTTAAG
5 13%のT、32%のG、20%のC、35%のA
6 24%のT、24%のG、22%のC、30%のA
7 37%のT、26%のG、37%のC
(ストップコドンの頻度を最小限にし、アミノ酸組成を天然タンパク質に一致するためのヌクレオチド混合物;Labean,THおよびKauffman,SA、1993、Protein Science.、2:1249〜1254)
P2127
289〜290のニッティング順方向プライマー、前方断片用
CCTCCTACCTTGATTGCATCAG
P2181
289〜290のニッティング逆方向プライマー、後方断片用
GGAGATGAAGAAGTCAAACTTGGG
P2139
ギャップ修復GPI lib
GAGGCACTTGATGGTTCAATGG
プライマーP1980はランダム化された配列を導入した。増幅したDNA断片をゲル精製し、単一のプライマー(断片AにはP2181、断片BにはP2127)を用いてさらに増幅して、一本鎖DNA(ss−Aおよびss−B)が得られた。ss−Aおよびss−BをdNTPおよびクレノウ酵素の存在下でアニーリングして、二本鎖断片を形成した。最後に、このアニーリング産物を、P2127およびP2139を用いて増幅し、ゲル精製して、RGD−ライブラリー挿入物を作製した。この操作により、ライブラリーが合成オリゴヌクレオチドの元々の複雑さを維持していることが確実にされた。
挿入物を用いて、BamHI−BspEIで消化したpREX1106内へのギャップ修復によって、以下に提供する電気穿孔方法を使用して、7×108個のライブラリーを構築した。それぞれのギャップ修復反応について、1.4□gのBamHI/BspEIで消化したpREX1106を1□gの前述のRGD−ライブラリー挿入物と混合し、DS1101cir°酵母細胞内に電気穿孔した。
ライブラリーを構築するための酵母(DS1101cir°)の高効率電気穿孔
1)100mLのYEP/S(1%w/vの酵母抽出物、2%w/vのペプトン、2%w/vのスクロース)をOD600=0.2まで、DS1101cir°の新鮮な終夜培養物から接種する。
2)細胞を30℃、200rpmで0.8のOD600まで成長させる(約5時間)。
3)2,000rpmで5分間の遠心分離によって細胞を収集する。
4)上清を傾瀉し、ペレットを18mLのTE(10mMのトリス−HCl、pH7.5および1mMのEDTA)バッファーに再懸濁させる。その後、2mLの1Mの酢酸リチウムを加える。
5)細胞を30℃、ローラードラム内で45分間インキュベーションする。
6)0.5mLの1MのDTTを加える。
7)15分間、30℃、ローラードラム内でインキュベーションする。
8)室温で80mLの滅菌水で洗浄する。
9)室温で100mLの滅菌水でペレットを洗浄する。
10)10mLの氷冷の1Mのソルビトールでペレットを洗浄する。
11)細胞を60μLの氷冷の1Mのソルビトール(6つの形質転換に十分)に再懸濁させる。
12)細胞を氷上に保ち、滅菌微量遠心チューブ中で以下を混合する:
i.50μLのコンピテントな酵母細胞
ii.1.4μgのDNA(5μLまで)
iii.5μgのssDNA(0.5μlの10mg/mL)
13)律動前に氷上で5分間インキュベーションする。細胞/DNA懸濁液を0.2cmの氷冷キュベットの底に軽く叩き落し、1回律動をかける:
i.電位 1.5Kv
ii.電気容量 25□F
iii.抵抗 200Ω
14)すぐに1mLのYEP/Sと1Mのソルビトールの50:50混合物を加え、酵母を微量遠心チューブに移し、30℃で1時間、酵母を回復させる(回復の必要がない場合もある、試験が必要)。
15)細胞を5000rpm、1分間の遠心分離によって収集し、1mLの1Mのソルビトールで1回洗浄する。
16)1mLの1Mのソルビトールに再懸濁させ、BMM/Sプレートに拡げる。30℃でインキュベーションする。
□IIb□3に対する高親和性トランス体を、ヒト血小板から精製したインテグリンでコーティングしたプレート上の酵母ディスプレイライブラリーから選択した。□IIb□3インテグリンの精製は、軽微な変更を加えたHillman他に従って実施した(Hillman他、2002、Protein Expr.Purif.、25(3):494〜502)。インテグリンをコーティングバッファー(50mMのホウ酸バッファー、pH9.5)で希釈し(1:30希釈)、ペトリ皿に終夜、4℃でコーティングした。バッファーA(20mMのトリス−HCl、pH7.5、150mMのNaCl、1mMのMgCl2、1mMのCaCl2および1mMのMnCl2)で3回すすいだ後、プレートを2時間、室温で、結合バッファー+1%のBSAを用いて遮断した。プレート上の40OD600単位の、BMM/S(2%w/vのスクロース)中、30℃、200rpmで成長させた終夜酵母RGDライブラリーを遠心分離によって収集し、1%のBSAおよびGRGDSP阻害ペプチド(1回目の選択には1□g/mL、2回目の選択には10□g/mL)を含む10mLの結合バッファーに再懸濁させ、コーティングしたインテグリンと共に2時間、室温で穏やかに振盪しながらインキュベーションした。結合バッファーで3回洗浄することで未結合の細胞を洗浄除去し、結合した細胞を収集した。
可溶性タンパク質の産生
RGD配列を含有するNローブのDNAコード領域を酵母ディスプレイベクターから回収し、酵母発現ベクター内にクローニングして、RGD配列を含有する可溶性Tf分子を産生させた。これらは高細胞密度の流加発酵で発現させ、カラムクロマトグラフィーによって精製した。天然の□IIb□3リガンドの配列と比較した選択されたクローンの配列の例を以下に提供する。
インテグリン結合分析
RGDトランス体とインテグリンの直接結合をELISAによって測定した。インテグリンをコーティングバッファーに希釈し、Maxisorb ELISAプレート上に終夜、4℃でコーティングした。プレートを、1%のBSAおよび0.05%のTween−20(結合バッファー)を含有するバッファーAで、2時間、室温で振盪しながら遮断した。結合バッファーに希釈したトランス体をインテグリンと4℃、終夜で結合させた。未結合の物質を、0.05%のTween−20(洗浄バッファー)を含有するバッファーAで洗浄した。結合した物質を、結合バッファー中のビオチン標識した抗トランスフェリンおよびストレプトアビジン−HRPを用いて検出し、それぞれのステップ後に洗浄バッファーで洗浄した。結合の定量は、SpecrtraMax Gemini EMおよびSoftMaxソフトウェアで、QuantaBlue蛍光基質を用いて行った。図14を参照されたい。
トランス体の結合はまた、競合ELISAアッセイ様式でも評価した。インテグリンをコーティングし、プレートを上記のように遮断した。結合バッファー中のトランス体、または調節ペプチド、およびビオチン標識したフィブロネクチンを適切なウェルに加え、終夜4℃で結合させた。プレートを洗浄バッファーで洗浄し、ストレプトアビジン−HRPを用いて結合したフィブロネクチンを検出した。結合の定量は上記のように行った。図15を参照されたい。
血小板凝集分析
血小板凝集アッセイを、マウス血小板リッチな血漿(PRP)を用いて行った。新鮮な血小板をB6マウスから得た。使用のために血小板を2.5×108個/mLまで希釈した。血小板の凝集は、凝集系を用いて、37℃で攪拌しながら(900rpm)測定した。試験試料をPRPと共に10分間インキュベーションした後、ADP(10μM)を加えた。血小板の凝集の程度を、濁度測定によって6分間連続的に監視し、光透過率の増加として表した。図16を参照されたい。
(実施例7)
MUC3ストークの遺伝子操作
酵母の表面にタンパク質を表示させるために、ヒトMUC3(hMUC3)タンパク質をディスプレイストークとして最適化した。反復の一部を除去し、酵母用に最適化した合成オリゴヌクレオチドコドンによる構築を可能にするためにhMUC3のDNA配列(Genebank受託番号AAC02272)を改変した。生じたhMUC3ストークの配列(以下の配列参照)をGenScript Corporation、ニュージャージー州Piscatawayによって合成した。
改変hMUC3のDNAは、酵母ディスプレイベクター内にある場合、大腸菌中で不安定であることが判明した。hMUC3のDNA配列を、ランダム突然変異誘発および大腸菌中で安定なクローンの選択によってさらに遺伝子操作した。hMUC3のDNA配列を、エラープローンPCR、GeneMorph IIキット(Stratagene)による2回のランダム突然変異誘発に供した。生じたPCR断片をSpeI/HindIIIで消化し、SpeI/HindIIIで消化したpREX0855内にライゲーションした。ライゲーション混合物を用いて大腸菌XL1−Blueを形質転換させた。細胞を植え、終夜成長させ、バイオマスのすべてをプレートから回収した。プラスミドDNAを回収し、NotI/XmnIで消化し、アガロースゲル電気泳動によって分離した。正しい大きさのDNAバンドをゲルから切り出して精製した。hMUC3ストークを有するNotIディスプレイカセットを含有する生じたDNAを、酵母中のギャップ修復によって、pSAC35に基づいた酵母ディスプレイベクターpREX1003内にクローニングした。
生じたすべての酵母をBMM/S培地中で培養し、抗FLAG抗体でコーティングしたプレート上のパニング選択に供した。抗Flag抗体(SigmaのF9291)をコーティングバッファー(50mMのホウ酸バッファー、pH9.5)に希釈し(1:25希釈)、ペトリ皿上に終夜、4℃でコーティングした。結合バッファー(PBS−T、2mMのEDTA、1%のBSA)で3回すすいだ後、プレートを結合バッファーで2時間、室温で遮断した。40OD600単位の終夜酵母培養物を収集し、10mLの結合バッファーに懸濁させ、コーティングした抗体で2時間、室温で、穏やかに振盪しながらインキュベーションした。未結合の細胞を、結合バッファーを用いた3回の洗浄で洗浄除去し、結合した細胞を収集した。
FACS分析によって実証されるように、結合剤は高レベルのタンパク質のディスプレイを示した(図17)。個々のクローンを単離して、大腸菌中で安定であり、かつ酵母中で高レベルのディスプレイを与えるhMUC3のDNA配列が得られた。
改変ヒトMUC3遺伝子(配列番号76)
(実施例8)
表面露出トランスフェリンアミノ酸残基のランダム化
トランスフェリン融合タンパク質ライブラリーは、Tf分子内のいくつかの点における表面露出アミノ酸残基、例えば6個の表面露出残基のランダム化によって作製することができ、すなわちこれは挿入ではない。これらの残基は連続的である必要はないが、好ましくは、分子の本体から離れて溶媒相中に突出している側鎖の領域として群化されている。6個の表面露出残基を有するライブラリーは、約107個までのタンパク質しか必要とせず、したがって、1つのライブラリーあたり20〜40個の形質転換しか必要としない(プライマーの品質に依存する)。
3つの可能な部位の例は、以下のとおりである。
(実施例9)
哺乳動物細胞の表面上でのトランスフェリン融合タンパク質の発現
材料および方法
HEK−293細胞を、10%のウシ胎児血清(HyClone)、L−グルタミン(GIBCO−BRL)、およびHEPES(GIBCO−BRL)を添加したDMEM(HyClone)中で成長させて維持した。
ヒト胎盤アルカリホスファターゼ(ALPP)GPIのDNA配列を、プライマーP0926およびP0927をアニーリングし、その後、TaqDNAポリメラーゼで伸長させることによって作製した。
PCR反応条件は、94℃で1分間、25サイクルの94℃で40秒間、55℃で40秒間および72℃で2分間、次いで72℃で7分間の伸長であった。PCR産物をHindIII/XbaIで消化し、pREX0757(図18)HindIII/XbaI部位内にクローニングし、これにより酵母のGPI配列が除去され、その後、配列決定した。生じたプラスミドpREX1234(図19)は、N末端にFLAGタグを有し、C末端にヒトGPI配列を有する改変トランスフェリン(mTf)を含有していた。このmTfカセットを、以下の条件下でプライマーP2225およびP2226を用いたPCRによって哺乳動物発現ベクター内にクローニングするために、5’および3’末端を改変した:94℃で1分間、25サイクルの94℃で40秒間、55℃で40秒間および72℃で2分間、次いで72℃で7分間の伸長。
このPCR産物をpcDNA3.1(Invitrogen、カリフォルニア州Carlsbad)内にクローニングしてpREX1235(図20)を作製した。pREX1235中のmTfカセットの配列は、DNA配列決定によって確認された。
HEK−293細胞を、FuGENE6(Roche)を用いて、製造者のプロトコルに従って、pREX1235で形質移入した。細胞を1×リン酸緩衝液(1×PBS)で洗浄し、細胞溶解バッファー(20mMのトリス−HCl、pH7.4、150mMのNaCl、1%Triton X−100、1mMのEDTA)ならびにHalt(商標)ホスファターゼ阻害剤カクテル(Pierce)およびプロテアーゼ阻害剤カクテル(Sigma)の混合物を用いて、終夜4℃で溶解した。細胞を30分間、14,000rpm、4℃でペレット化した。上清を収集し、抗Flagアガロースビーズ(Sigma)と2時間4℃で結合させた。ペレットを溶解バッファーで1回、トリス緩衝生理食塩水(TBS)(20mMのトリス−HCl、pH7.4、150mMのNaCl)+0.5%のTriton X−100で2回、および1×PBSで1回洗浄した。試料をNuPAGE(登録商標)LDS試料ローディングバッファー+試料還元剤(Invitrogen)で溶出させた。回収されたタンパク質をNuPAGE(商標)4〜12%のビス−トリスゲル(Invitrogen)に流し、NuPAGE(登録商標)移動バッファーを用いて製造者の指示に従って、PVDF(Invitrogen)膜に移した。ブロットをPBS−T(1×PBS+0.2%のTween−20)中に5%の無脂肪乾燥乳で、1時間室温で遮断し、FLAG(1:1000のマウス抗FLAG BioM2;Sigma)またはヒトトランスフェリン(1:4000のビオチン標識したニワトリ抗ヒトトランスフェリン;Accurate Chemical & Scientific)のどちらかに対するビオチン標識した一次抗体を用いて2時間室温(RT)でプロービングし、ストレプアビジン−西洋ワサビペルオキシダーゼ(SA−HRP)(1:2500のImmunoPure(登録商標)ストレプアビジン西洋ワサビペルオキシダーゼコンジュゲート;Pierce)と共に1時間室温でインキュベートした。あるいは、表面ビオチン化実験には、ブロットを、SA−HRP(1:2500;Pierce)のみを用いてプロービングした。すべてのブロットは、SuperSignal West Dura長期間基質(Extended Duration Substrate)(Pierce)を用いて展開し、Quantity Oneソフトウェア(v.4.5.0;Bio−Rad)を用いてFluor−S(商標)MultiImager(Bio−Rad)で可視化した。
HEK−293細胞を上述のように24時間形質移入した。細胞を滅菌した氷冷の1×PBSで3回洗浄した。その後、細胞を1×PBS中の0.5mg/mLのスルホ−NHS−LC−ビオチン試薬(Pierce)で処理し、揺れプラットフォーム上で2時間、4℃でインキュベーションした。表面ビオチン化後、細胞をクエンチバッファー(1×PBS+100mMのグリシン)で3回洗浄し、上述のように免疫沈降および免疫ブロッティングを行うために細胞溶解バッファーに再懸濁させた。
HEK−293細胞を上述のように24時間形質移入した。細胞を滅菌した1×PBSで1回洗浄し、その後、さらなる1×PBSに再懸濁させ、計数した。4.25×105個の細胞/試料を1.5mLのエッペンドルフチューブに移した。細胞を4000rpm、3分間、4℃でペレット化した。その後、細胞を1×PBS−T(0.05%のTween−20)で30分間、室温で遮断し、遠心分離し、一次抗体(1:25〜1:625のマウス抗FLAG BioM2;Sigma)に再懸濁させ、30分間、室温でインキュベーションした。細胞を1×PBS−Tで2回洗浄し、二次抗体(1:100のヤギ抗マウス−APC;Molecular Probes)に再懸濁させ、30分間、室温でインキュベーションした。1×PBS−Tで2回さらに洗浄した後、細胞を細胞バッファー(Agilent)に再懸濁させて細胞を2×106個の細胞/mLの最終濃度にし、製造者の指示に従って細胞蛍光チップ(細胞蛍光LabChip(登録商標)キット、Agilent)に載せた。すべてのFACS分析は、Agilent2100バイオアナライザーおよび2100ソフトウェアを用いて行った。
結果
pREX1235またはモックで形質移入した細胞のどちらかの溶解物を、抗FLAG−アガロースビーズを用いた免疫沈降、次いでウェスタンブロッティングに供した。抗FLAGまたは抗トランスフェリン抗体のどちらかを用いたウェスタンブロットのプロービングにより、トランスフェリンおよびFLAG部分の両方の存在が明らかに実証された(図21)。
pREX1235またはモックで形質移入した細胞を表面ビオチン標識した後、溶解し、抗FLAG−アガロースを用いた免疫沈降およびストレプアビジン−HRPを用いたウェスタンブロッティングに供した。表面ビオチン化は、露出した血漿膜タンパク質のみがウェスタンブロッティングで検出されることを確実にする。予測された分子量のFLAGで沈殿可能なタンパク質が観察され、これは、FLAG−トランスフェリンの融合が細胞表面上に発現されていることを実証している(図22)。
さらに、形質移入した細胞を蛍光活性化細胞分別(FACS)分析に供した。pREX1235で形質移入した細胞では、モックで形質移入した細胞と比較して4倍の染色の増加が観察され、これは、FLAG−トランスフェリンの融合の細胞表面発現を明らかに実証している(図23)。
本発明を、上記実施例を参照しながら詳述したが、本発明の精神から逸脱せずに様々な改変を行うことができることを理解されよう。したがって、本発明は以下の特許請求の範囲によってのみ限定される。本出願中で言及したすべての引用した特許、特許出願および出版物は、その全体が本明細書中に参考として組み込まれている。