JP2010287446A - 二次電池用電解質 - Google Patents

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Abstract

【課題】 イオン伝導度に優れた高分子電解質を提供することを目的とする。
【解決手段】 イソタクティシティーが80%以上のポリオキシプロピレングリコール(A)と電解質塩化合物(B)を必須成分とすることを特徴とする電池用電解質を用いる。
【選択図】 なし

Description

本発明は、イオン伝導性高分子に関する。さらに詳しくは、リチウム電池などの二次電池用の電解質に関する。
近年、各種電子・電気機器の高性能・高機能化または小型・軽量化に対する市場の要求が非常に大きくなっている。これらの要求を実現するため、エネルギー供給のデバイスである電池に対して、より高いエネルギー密度や出力密度が要求されている。
そこで従来の鉛蓄電池、ニッケル−カドミニウム電池などのより高いエネルギー密度や出力密度を有するリチウム電池が注目されている。
従来の二次電池の電解質としては、一般的に液体電解質、特に有機電解液にイオン性の化合物を溶解させたものが用いられてきたが、液体電解質は、電解液の外部への液漏れ、揮発、電極物質の溶出などが発生しやすいため、長期信頼性などが問題であった。
この改善策として、高分子電解質が検討されており、概ね2種類に分類される。一つは、電解質として電解液を高分子化合物でゲル化し、電解液の流動性をなくしたゲル電解質を用いる方法であり、もう一つの方法は、有機溶媒をまったく使用しない高分子全固体電解質である。
ゲル電解質としては、例えば、ポリメチルメタクリレート系のようにポリマーを架橋させ化学結合により架橋点をつくりゲル化させる方法やポリフッ化ビニリデン系やポリアクリロニトリル系のように結晶化させ高分子鎖が架橋点をつくりゲル化させる方法が知られている(例えば、非特許文献1)。
一方、高分子全固体電解質としては、例えば、ポリオキシエチレングリコールの末端をアクリル変性させ架橋させた架橋物と電解質塩を含む高分子固体電解質が提案され、室温で10−4S/cmのイオン伝導度が達成されている(例えば、特許文献1)。
高分子全固体電解質は、信頼性においてはゲル電解質より優れた材料となる可能性があるが、現在のところ、イオン伝導度などの電池に関する必要条件を十分満たすような材料は見当たらない。
特開2008−130529号公報
小山 昇監修、「ポリマーバッテリー」、シーエムシー出版、1998年発行
本発明はイオン伝導度に優れた高分子電解質を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の目的を達成するべく検討を行った結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、アイソタクティシティーが80%以上のポリオキシプロピレングリコール(A)と電解質塩化合物(B)を必須成分とすることを特徴とする二次電池用電解質;およびアイソタクティシティーが80%以上のポリオキシプロピレングリコール(A)とホウ酸または下記一般式(1)で表されるホウ酸エステル(D)を反応させて得られる架橋物(C)、および電解質塩化合物(B)を必須成分とすることを特徴とする二次電池用電解質である。
Figure 2010287446
[式(1)中の3個のRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜4個のアルキル基またはアリール基を表す。]
本発明の高分子電解質を用いて得られた二次電池は、電解質の外部へ漏洩などがないために、高い信頼性と安全性が得られ、また、高いイオン伝導度のため高い出力密度を提供することができる。
本願の電池用電解質は、
(1)アイソタクティックポリオキシプロピレングリコール(A)と電解質塩化合物(B)を必須成分とする第1発明と、
(2)アイソタクティックポリオキシプロピレングリコール(A)とホウ酸または下記一般式(1)で表されるホウ酸エステル(D)を反応させて得られる架橋物(C)、および電解質塩化合物(B)を必須成分とする第2発明からなる。
まず、第1発明の電池用電解質を説明する。
必須成分のアイソタクティックポリオキシプロピレングリコール(A)のアイソタクティシティーは、導電性の観点から、好ましくは80〜100%、さらに好ましくは90〜100%である。
アイソタクティシティーは、Macromolecules,vol.35、No.6、2389−2392貢(2002年)に掲載の方法で算出することができ、具体的には13C−NMRを用いて以下のようにして求める。
測定試料30mgを直径5mmの13C−NMR用試料管に秤量し、約0.5mlの重水素化溶剤を加え溶解させ、分析用試料とする。ここで、重水素化溶剤は、例えば重水素化クロロホルム、重水素化トルエン、重水素化ジメチルスルホキシド、重水素化ジメチルホルムアミドであり、試料を溶解させることのできる溶剤を適宜選択する。
具体的には13C−NMRの3種類のメチン由来の信号は、それぞれシンジオタクチック値(S)75.1ppm付近とヘテロタクチック(H)75.3ppm付近とアイソタクチック値(I)75.5ppm付近に観測される。アイソタクティシティーを次の計算式(1)により算出する。
アイソタクティシティー(%)=[(I)/(I+S+H)]×100 (1)
ただし、式中、Iはアイソタクチック信号の積分値、Sはシンジオタクチック信号の積分値、Hはヘテロタクチック信号の積分値である。
アイソタクティックポリオキシプロピレングリコール(A)は、数平均分子量(Mn)が通常2,000〜1,000,000である。
Mnはポリエチレングリコールを標準とするゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)で測定できる。
もう1つの必須成分である電解質塩化合物(B)は、周期表第Ia属の金属塩であり、リチウム、ナトリウム、カリウム等の化合物である。
電解質塩化合物(B)の具体例は、LiPF6、LiBF4、LiClO4、LiAsF6、Li2SiF6、Li[(C253PF3]などのリチウム塩が挙げられる。また、次の一般式で示されるリチウム塩も使用することができる。LiOSO21、LiN(SO22)(SO23)、LiC(SO24)(SO25)(SO26)、LiN(SO2OR7)(SO2OR8)(ここで、R1〜R8は、互いに同一であっても異なっていてもよく、炭素数1〜8のパーフルオロアルキル基である)。これらのリチウム塩は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
これらのうち、好ましくはLiPF6、LiBF4、Li[(C253PF3]、LiOSO21、LiN(SO22)(SO23)、LiC(SO24)(SO25)(SO26)、LiN(SO2OR7)(SO2OR8)が好ましく、さらに好ましくは、LiPF6、LiBF4、LiClO4である。
本発明に用いられる電解質塩化合物(B)は、アイソタクティックポリオキシプロピレングリコール(A)に対して任意の比率で混合することができる。
アイソタクティックポリオキシプロピレングリコール(A)100部に対して電解質塩化合物(B)は3〜20重量部となるように混合することが好ましく、5〜10重量部となるように混合することが、イオン電導度、ポリオキシプロピレングリコールへの溶解度、電解質塩化合物によるイオン伝導体の増加の点からより好ましい。
また、本願の第2発明の電池用電解質は、アイソタクティックポリオキシプロピレングリコール(A)とホウ酸または下記一般式(1)で表されるホウ酸エステル(D)を反応させて得られる架橋物(C)、および電解質塩化合物(B)を必須成分とする。
Figure 2010287446
[式(1)中の3個のRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜4個のアルキル基またはアリール基を表す。]
ホウ酸またはホウ酸エステル(D)と反応させるポリオキシプロピレングリコール(A)は、第1発明で記載したポリオキシプロピレングリコール(A)と同じものが使用できる。
本発明で用いるホウ酸は無水ホウ酸またはホウ酸エステルを用いることができる。
本発明で用いるホウ酸エステル(D)は、式(1)中で表される。式(1)中のRは例えば水素基またはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基の炭素数1〜4個のアルキル基;フェニル基、トリル基、メシチル基などのアリール基が挙げられる。Rは3個同一でも、異なってもかまわない。
ポリオキシプロピレングリコール(A)との反応性の観点から、Rはアルキル基が好まれ、さらにメチル基が好まれる。
本発明で用いるホウ酸エステル(D)は、上記の観点からホウ酸トリアルキルエステルが好まれ、さらにホウ酸トリメチルが好まれる。
架橋物(C)は、ポリオキシプロピレングリコール(A)とホウ酸または一般式(1)で表されるホウ酸エステル(D)を反応させて得られるものである。
架橋物(C)は、種々の方法で調製することができる。
その方法は特に限定されないが、例えば、ポリオキシプロピレングリコール(A)とホウ酸またはホウ酸エステル(D)を加え、50〜200℃にて不活性ガス通気下で減圧による脱水反応または脱溶剤反応することにより得られる。
ポリオキシプロピレングリコール(A)の水酸基1モルに対して、式(1)で表されるホウ酸エステルのホウ素原子1/3モルの比率に置いてポリオキシプロピレングリコールホウ酸トリエステルが生成する。
このとき、ホウ酸エステル化の進行に伴って、網目状ポリマーの形成が起こりえるため、反応系の流動性を保持するために、エステル化反応に対して不活性なトルエンなどの炭化水素系溶剤を適宜用いることができる。
本願の第2発明で表される電解質塩化合物(B)は、第1発明で記載の電解質塩化合物(B)と同じものが使用できる。
電解質塩化合物(B)は、架橋物(C)に対して任意の比率で混合することができる。
架橋物(C)100部に対して電解質塩化合物(B)は3〜20重量部となるように混合することが好ましく、5〜10重量部となるように混合することが、イオン電導度、ポリオキシプロピレングリコールへの溶解度、電解質塩化合物によるイオン伝導体の増加の点からより、好ましい。
本発明の電解質と、従来から知られている正極材料および負極材料を組み合わせることで、イオン電導度、漏洩、引火もしくは継続的に燃焼しない安全性に優れた電池を得ることが可能である。
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下、特に定めない限り、%は重量%、部は重量部を示す。
製造例1
アイソタクティックポリオキシプロピレングリコールは、例えば特開2008−291241号公報に示される方法により製造した。
窒素雰囲気下、サレン錯体(N,N‘−ビス−(3,5−ジ−tert−ブチルサリチリデン)−1,2−フェニレンジアミノコバルトアセテート)1.1部、酢酸12.4部、ラセミ体プロピレンオキサイド57g、トルエン150mLを0.5Lナスフラスコに入れ、0℃で6時間攪拌した。反応後に0.1Nの塩酸を150mL加えると沈殿が生成した。これにジクロロメタンを150mL加えて溶解させて分液を行った後、有機層から溶剤をロータリーエバポレーターで留去した。析出した固体を40℃のアセトン150mLに溶解し、0℃で24時間冷却した。析出した白色固体を減圧濾過により得られた白色固体に0.1NのKOH−メタノール溶液を500mL入れ、80℃で2時間攪拌した。その後0.1Nの塩酸で中和し、トルエン250mLと水0.5Lを加え、分液を3回行った。有機層から溶剤をロータリーエバポレーターで除去することでアイソタクティックポリオキシプロピレングリコール(A−1)を55部得た。
アイソタクティシティーは99%、数平均分子量(Mn)は2,000、収率は50%であった。
製造例2
製造例1で作成したアイソタクティックポリオキシプロピレングリコール(A−1)2,000部にホウ酸トリメチル69部を加え、窒素雰囲気下120℃まで徐々に昇温させ、120℃に達したら系内をゆっくりと減圧し、0.40Pa以下の状態を4時間保持し、反応の進行に伴い発生する揮発分を除去した。その後、ろ過することによりアイソタクティックポリオキシプロピレングリコールホウ酸エステル変性物(C−1)1,700部を得た。
実施例1
製造例1で作成したアイソタクティックポリオキシプロピレングリコール(A−1)2、000部およびLiClO604部をアセトン2,000部に溶解させ、上記の方法により電解質フィルムを得た。
実施例2
実施例1において、アイソタクティックポリオキシプロピレングリコール(A−1)を製造例2で作製したアイソタクティックポリオキシプロピレングリコールホウ酸エステル変性物(C−1)とした以外は、実施例1と同様な操作を行い、本発明の電解質を得た。
比較例1
実施例1において、アイソタクティックポリオキシプロピレングリコール(A−1)をポリオキシエチレングリコール(Mn=2,000)を用いた以外は、実施例1と同様な操作を行い、比較のための電解質を得た。
比較例2
実施例1において、アイソタクティックポリオキシプロピレングリコール(A−1)を、KOHを触媒として製造された通常のポリオキシプロピレングリコール(Mn=2,000、アイソタクティシティー25%とした以外は、実施例1と同様な操作を行い、比較のための電解質を得た。
実施例1、2で作成した本発明の 固体電解質、および比較例1、2で作成した比較のための固体電解質のイオン伝導度を下記の方法で測定した。その結果を表1に示す。
Figure 2010287446
<電解質フィルムの作成>
実施例1、2、比較例1、2で作成した固体電解質のアセトン溶液をシャーレ注ぎ、減圧下でアセトンを完全に乾燥させ揮発除去した。シャーレから、フィルムをはがし、高分子固体電解質フィルムを得た。
<イオン伝導度の測定方法>
上記の高分子固体電解質フィルムをドライボックス中で直径1.5cmにくり抜いてイオン伝導度の測定サンプルとし、ステンレス鋼電極ではさみ、交流インピーダンス法により、室温(20℃)での実数インピーダンス成分R(Ω)を求めた。
電解質サンプルのイオン伝導率σ(S/cm)は、インピーダンス成分R(Ω)、電解質サンプルの厚さd(cm)、および電極と電解質サンプルの接触面積A(cm)から求めた。
イオン伝導率σ(S/cm)=d/(R×A)
表1に示すとおり、高分子電解質に比較的よく使用されるポリオキシエチレングリコールを使用した比較例1の電解質、およびアイソタクティシティー25%のポリオキシプロピレングリコールを使用した比較例2の電解質に比べ、本発明である実施例1および2の電解質は優れたイオン伝導度を示すことがわかる。
本発明の二次電池用固体電解質は、イオン伝導度が優れているため有用である。また、本発明の電解質を用いた二次電池は、高出力電池として有用である。

Claims (3)

  1. アイソタクティシティーが80%以上のポリオキシプロピレングリコール(A)と電解質塩化合物(B)を必須成分とすることを特徴とする二次電池用電解質。
  2. アイソタクティシティーが80%以上のポリオキシプロピレングリコール(A)とホウ酸または下記一般式(1)で表されるホウ酸エステル(D)を反応させて得られる架橋物(C)、および電解質塩化合物(B)を必須成分とすることを特徴とする二次電池用電解質。
    Figure 2010287446
    [式(1)中の3個のRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜4個のアルキル基またはアリール基を表す。]
  3. 請求項1または2記載の二次電池用電解質を用いたリチウムイオン電池。
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