JP2010285559A - シンチレータ用結晶及び放射線検出器 - Google Patents

シンチレータ用結晶及び放射線検出器 Download PDF

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【課題】 添加物を含むことなく、優れた蛍光出力を得ることができるシンチレータ用結晶を提供すること。
【解決手段】 下記一般式(1)で表されるシンチレータ用結晶。
CeX (1)
(一般式(1)中、CeXは母体材料の化学組成を示し、Xはハロゲン元素からなる群より選択される1種以上の元素を示し、yは下記式(A):
2.5≦y<3.0 (A)
で表される条件を満足する数値を示す。)
【選択図】 図1

Description

本発明は、シンチレータ用結晶及び放射線検出器に関する。
従来、シンチレータを備えた、いわゆるシンチレータ型放射線検出器が知られている。この放射線検出器では、まずシンチレータにγ線等の放射線が入射して蛍光が発生する。次いで、発生した蛍光を光電子増倍管などの光検出器で検出して電子信号を変換する。次に、種々の電子回路でその電気信号を処理して、計数率、蛍光量、時間情報などの各種情報を得る。そして、その各種情報から、入射した放射線の強度、エネルギー、発生位置・方向などの情報を入手する。このシンチレータ型放射線検出器は、主に核医学、高エネルギー物理、放射線管理、地下検層などの分野で幅広く利用されている。
シンチレータ型放射線検出器は、γ線検出の別の手段として知られている半導体検出器に比べ、一般的にエネルギー弁別能力に劣る。しかしながら、シンチレータ型放射線検出器は、半導体検出器よりも密度や実効原子番号が高いものがあり、1つの放射線に対する応答時間が短い。そのため、シンチレータ型放射線検出器は、高エネルギーγ線の検出、精度の高い時間情報や高い検出効率が必要な場合に、半導体検出器よりも適しているといえる。
γ線検出の際にシンチレータ型放射線検出器に求められる特性としては、γ線の検出効率が高いこと、エネルギー弁別能力に優れること、並びに時間分解能に優れることが挙げられる。これらを同時に実現すべくシンチレータに求められる特性としては、その密度及び実効原子番号が高いこと、蛍光量(蛍光強度)が大きいこと、蛍光波長が光検出器の波長感度に適していること、エネルギー分解能に優れていること、並びに、蛍光の立ち上がりが早く減衰時間が短いこと等が挙げられる。
シンチレータの密度及び実効原子番号が高いと、γ線とシンチレータとの相互作用確率を高めて、検出効率を高くすることができる。また、蛍光減衰時間が短ければ、γ線毎の処理時間が短くてすみ、短時間にしてより多くのγ線からの信号処理を可能とし、いわゆる時間的な感度を高くすることができる。一方、シンチレータ型放射線検出器のエネルギー弁別能力を高めるには、対応する光検出器における量子変換、並びに、得られた電気信号を処理する回路の増幅過程における揺らぎを小さくする必要がある。これを実現するには、光検出器の感度波長に適した蛍光波長において蛍光量(蛍光強度)が大きいことが求められる。
また、上述のとおり、シンチレータ自体のエネルギー分解能が優れていることも重要である。2つのγ線が実質的に同時にシンチレータに入射すると、各々のγ線に基づいてシンチレータから蛍光が生じる。シンチレータ型放射線検出器の時間分解能は、例えば、それらの蛍光から得られる電気信号の時間差を統計的に測定したときの分布で評価できる。時間分解能を優れたものとするには、蛍光が生じた瞬間からの微小時間Δtにおける電気信号をより大きくする必要がある。この電気信号を大きくするためのシンチレータの条件は、蛍光量が大きいこと、蛍光波長が光検出器に適したものであること、蛍光の立ち上がりが早いこと、並びに、減衰時間が短いことである。
シンチレータ型放射線検出器の応用の一例として、最近用途が拡大している核医学診断装置の陽電子放出型断層撮影(Positron Emission Tomography:PET)装置について説明する。PET装置は陽電子放出核種を含む、例えば糖を主成分とした薬剤を被験者の体内に投与し、その分布を画像化する装置である。このPET装置を用いることで、ミリメートル単位の初期癌をも発見可能となる。
薬剤から放出された陽電子は直ちに近くの電子と結合して対消滅を起こし、一対の消滅γ線が互いに180°の方向に放出される。このγ線を、リング状に設置した多数のシンチレータ型放射線検出器で同時に捉える。このとき、γ線が入射した2つのシンチレータを結んだ直線上に薬剤があるので、それらのγ線に基づく情報から画像を再構成することにより体内の薬剤分布を把握することができる。
PET装置では画像の分解能が重要となるため、1つのシンチレータ素子のサイズを小さくする必要がある。また、PET装置を用いた診断は短時間で終了することが求められる。これらの要求に応えるためには、PET装置は、511keVと高いエネルギー量を有する消滅γ線に対して検出効率を向上されることが望まれる。
また、体内で起こる消滅γ線の散乱、あるいは外部からのγ線を識別するためには、シンチレータ型放射線検出器のエネルギー弁別能が重要となる。さらには、一対の消滅γ線を非常に短いタイムウィンドウを設けて同時計数するので、シンチレータ型放射線検出器は時間分解能に優れることが望まれる。
シンチレータは、その材料の観点から有機シンチレータと無機シンチレータとに大別される。このうち、無機シンチレータとしては、その材料にNaI:Tl、CsI:Tl、BiGe12(BGO)、GdSiO:Ce(GSO)(以上、例えば、特許文献1及び特許文献2参照)、LuSiO:Ce(LSO)(例えば、特許文献3参照)などを用いたものが挙げられる。
これらの中でも、無機シンチレータとして最もよく知られているのは、材料にNaI:Tlを用いたものである。この無機シンチレータは、1948年にR.Hofstadterによって発見されて以来、現在に至るまでほとんどのγ線検出器分野で最も使用されているシンチレータである。NaIは潮解性があるため、使用の際に、例えばパッケージなどによる防水処理を施す必要がある。しかしながら、この無機シンチレータはコストパフォーマンスに優れ、結晶の大型化も容易であり、蛍光量も多く、しかも蛍光波長も光電子増倍管の読み出しに適している。その一方、この無機シンチレータの欠点としては、密度がそれほど大きくないこと、蛍光の立ち上がりが早くないこと、蛍光減衰時間がそれほど短くないことなどが挙げられる。
これ以外の無機シンチレータのうち、CsI:Tlを用いたものはNaI:Tlを用いたものに比べて潮解性が弱く、蛍光量も大きい。一方で、その蛍光の立ち上がり時間や減衰時間はNaI:Tlよりも長く、密度もそれほど大きくない。また、BGOを用いたものは密度や実効原子番号が非常に大きく潮解性が極めて小さい。しかしながら、このシンチレータは蛍光量が小さい上に、蛍光波長も光電子増倍管に適した波長ではなく、なおかつ減衰時間も長いという欠点を有する。
また、GSO:Ceを用いたものは、Ceが持つ高い蛍光効率と減衰の早さを利用した初めてのシンチレータである。このシンチレータは、減衰時間が早く、エネルギー分解能に優れている。しかしながら、蛍光量はそれほど大きくなく、蛍光の立ち上がり時間も早くない。また、LSO:Ceを用いたものは蛍光の立ち上がり時間と減衰時間が短く、蛍光量が大きく、蛍光波長も光電子増倍管に適している。ところが、このシンチレータはエネルギー分解能が良好ではないこと、並びに、Luに含まれる放射性同位元素による自己蛍光が極めて大きいためその用途が限定されてしまうこと、といった欠点も併せ持つ。
そこで、Ceを賦活材とした希土類ハライド単結晶が、新しいシンチレータ材料として注目されている。この希土類ハライド単結晶を用いたシンチレータは、蛍光量が大きく、エネルギー分解能に優れ、しかも蛍光減衰時間も短いという利点を有する。シンチレータに用いられる希土類ハライドとしては、LaCl:Ce(例えば、特許文献4参照)、LaBr:Ce(例えば、特許文献5及び非特許文献1参照)、CeBr(例えば、特許文献6及び非特許文献2参照)及びLuI:Ce(例えば、非特許文献3参照)などが開示されている。
これらの中でも、LaBr:CeおよびCeBrは、これらを材料としたシンチレータの密度、実効原子番号、蛍光量、エネルギー分解能、蛍光の立ち上がり、蛍光減衰時間がNaI:Tlよりも優れている。そのため、これらの材料は、あらゆるシンチレータ型放射線検出器の応用分野で期待されており、特に、そのエネルギー分解能の高さ、並びにそのシンチレータを組み込んだ放射線検出器の時間分解能の高さが注目されている。そのため、上記の材料を用いたシンチレータは、核医学における次世代型PETの候補である、TOF(Time of Flight)方式を取り入れたTOF−PETへの応用にも非常に期待されている(例えば、特許文献7参照)。
以上説明した、従来の材料を用いた主な無機シンチレータの特性を表1に示す。
Figure 2010285559
また、PET用途に向けたシンチレータは、その特性として、密度がより高く、蛍光出力がより高いものほど、装置特性をさらに高められることが知られている。例えば、より大きな蛍光出力はより優れた時間分解能を実現し、それによってより性能の高いTOF−PETを提供できる。しかし、上述した希土類ハライド結晶は、蛍光出力が必ずしも十分であるとはいえない。
蛍光出力を向上させる方法としては、特定の不純物を添加することが有用であると知られている。例えば特許文献8、9では希土類ハライドに特定の金属元素を添加することにより蛍光出力の向上を実現している。
特公昭62−008472号公報 特開2003−300795号公報 特許第2852944号 特表2004−500462号公報 特表2003−523446号公報 米国特許第7405404号 国際公開第04/044613号パンフレット US2008/0011953号公報 特開2008−101180号公報
Nuclear Instrument And Methods In Physics Research A486(2002)254 IEEE Transactions Nuclear Science, Vol.52(2005)3157 Nuclear Instrument And Methods In Physics Research A537(2005)279
しかしながら、添加物を使用する方法では、添加元素の元素半径や価数に起因する、結晶内での偏析が問題になり、結晶中に均一に元素を分散させることが極めて難しい。そしてこれは結晶内における特性に不均一性を生じさせ、一台で数万個の結晶を用いるPET装置では好ましくない。
そこで、本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、添加物を含むことなく、優れた蛍光出力を得ることができるシンチレータ用結晶及びそれを用いた放射線検出器を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明は、下記一般式(1)で表されるシンチレータ用結晶を提供する。
CeX(1)
ここで、一般式(1)中、CeXは母体材料の化学組成を示し、Xはハロゲン元素からなる群より選択される1種以上の元素を示し、yは下記式(A):
2.5≦y<3.0 (A)
で表される条件を満足する数値を示す。
本発明者らは、上記目的を達成すべく、CeF、CeCl、CeBr、CeI等のハロゲン化セリウムの蛍光発生の物理的機構について鋭意研究を重ねた結果、ハロゲン化セリウムの化学組成において、CeとX(ハロゲン元素)との組成比が、Ceが1に対してXが3よりも僅かに少なくなるように調整することによって、蛍光出力を増大させることができることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明のシンチレータ用結晶は、母体材料がCeXで表されるハロゲン化セリウムであり、yが、2.5以上3.0未満の範囲に含まれることによって、蛍光出力を増加させることができ、また、添加元素を含まないため、他の特性に対する悪影響を抑制することができる。
本発明のシンチレータ用結晶のXはBrであることが好ましい。Brを用いることによって、より効率よく蛍光するシンチレータを得ることができる。
本発明のシンチレータ用結晶は単結晶であることが好ましい。単結晶を用いることによって、高い透明度のシンチレータを得ることができる。
本発明の放射線検出器は、光電子増倍管と、光電子増倍管の光電面の外側に設けられた上記シンチレータ用結晶を備えるシンチレータと、を有する。また、本発明の放射線検出器は、陽電子放出型断層撮影装置に組み込まれていることが好ましい。
本発明のシンチレータ用結晶を備えるシンチレータを、光電子増倍管の光電面の外側に設けることによって、核医学、高エネルギー物理、放射線管理、地下検層等の分野で要求されている性能を満足できる放射線検出器及び陽電子放出型断層撮影装置を提供することができる。
本発明によれば、添加物を含むことなく、大きな蛍光出力を得ることができるシンチレータ用結晶及びそれを用いた放射線検出器を提供することができる。
ブリッジマン法に用いられる炉(VB炉)の構造を示す模式断面図である。
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。また、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
本実施形態のシンチレータ用結晶は、下記一般式(1)で表される。
CeX (1)
ここで、一般式(1)中、CeXは母体材料の化学組成を示し、Xはハロゲン元素からなる群より選択される1種以上の元素を示し、yは下記式(A):
2.5≦y<3.0 (A)
で表される条件を満足する数値を示す。
一般式(1)のXはハロゲン元素からなる群より選択される1種以上の元素であり、具体的にはF、Cl、Br、I等を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。このうち、シンチレータ用結晶としては、透明性が高く、比較的単結晶育成が容易であることと、蛍光賦活材であるCeが効率よく蛍光することが望まれることから、上記Xとして、Brを最も好適に使用できる。
本実施形態に係るシンチレータ用結晶の、一般式(1)におけるyは、2.5以上3.0未満であり、2.5〜2.8であることが好ましい。yがこの範囲に含まれることによって、より蛍光出力を増加させることができ、他の特性に対する悪影響を抑制することができる。また、シンチレータ用結晶の母体材料に、添加物を添加することなく蛍光出力を増加させることができるため、添加元素の元素半径や価数に起因する、結晶内での偏析や、結晶内における特性の不均一性を防ぐことができる。yが2.5未満、または3.0以上である場合は、蛍光出力が増加するという本発明の効果を得られず、また、結晶中のクラックが増えることがある。
本実施形態にかかるシンチレータ用結晶は、高い透明度のシンチレータを得る観点から、単結晶であることが好ましい。シンチレータ用単結晶の母体材料の原料としては、例えば商業的に入手可能なCeF、CeCl、CeBr、CeI等のハロゲン化セリウムを用いることができる。また、これらの原料は、乾燥状態が良いものが好ましい。また、これらの原料の純度は高い方が好ましく、99.9質量%以上であることがより好ましく、99.99質量%以上であることがさらに好ましい。また、母体材料の原料は粉末、ビーズ、焼結体、多結晶体、単結晶体など、いずれの形態のものでも構わなく、これらの中から1種または複数を選択して使用することができる。
単結晶の製造方法は、母体材料の原料であるハロゲン化セリウムと、必要に応じてドーパントとの混合原料を加熱して溶融した後、冷却して結晶化するような、例えばブリッジマン法やチョクラルスキー法を用いることができる。
以下に、本発明の一実施形態に係るシンチレータ用単結晶を、ブリッジマン法によって
製造する方法の一例を説明する。
図1は、ブリッジマン法に用いられる炉(VB炉)の構造を示す模式断面図である。図1に示すVB炉100は、混合原料2を収納し昇降方向に稼動するるつぼ1と、るつぼ1の降下方向(図中矢印)に沿って温度勾配を形成するためのヒーター4と、るつぼ1を昇降方向に稼動するためのシャフト6と、これらを取り囲む断熱部材5と、これら全てを外包する容器3と、から構成されている。なお容器3の側面または上面には排気口3Aが設けられている。
母体材料の原料であるハロゲン化セリウムを前処理することにより、一般式(1)のyの値の範囲を2.5以上3.0未満とすることができる。前処理の方法として、具体的には、原料を加熱する方法、及び、原料にHBr、CHBr等のハロゲン系ガス、又はAr、N等の不活性ガスなどをフローしながら必要に応じて加熱する方法等が挙げられる。これらの前処理を経て得られた焼結体や多結晶体、又は単結晶体を、前処理後の母体材料の原料とすることができる。
前処理として原料を加熱する場合の雰囲気は、1Pa以下の減圧状態、HBr、CHBr等のハロゲン系ガス雰囲気、又は、Ar、N等の不活性ガス雰囲気であることが好ましいが、一般式(1)中のyの値の範囲を2.5以上3.0未満にしやすいことから、1Pa以下の減圧状態であることがより好ましい。
前処理として原料を加熱する場合の加熱処理温度は、母体材料の原料の融点より100℃以上低くならない温度であり、且つ、母体材料の原料の融点よりも300℃以上高くならない温度であることが好ましい。加熱温度がこれより高いと、yの値の範囲が2.5未満になる恐れがあり、また加熱温度がこれより低いと、yの値が加熱前と変化しないことがある。加熱処理時間は、長すぎても短すぎてもyの値の範囲が2.5以上3.0未満とならないことがある。使用する母体材料の原料の量や加熱処理温度にもよるが、加熱処理時間は、10分以上300分以下であることが好ましい。また、前処理において、ハロゲン系ガスの代わりにNHBrなどの非金属系ハロゲン化物を原料に加えて加熱することもできる。
るつぼ1としては、1000℃程度の高温においても溶融しない、例えば石英ガラス、カーボン、白金などの材質のるつぼを用いることができる。このるつぼに、混合原料2を投入することができる。なお、ドーパントは必要に応じて母体材料の原料に加えることができ、ドーパントを加えず母体材料の原料のみとしても良い。ドーパントとしては、例えば、発光波長の強度分布を変化させる目的で、Na、Fe、Cr、Ni等の元素を含有する物質を用いることができる。該物質としては、例えばNaBr、FeBr、CrBr、NiBr等を用いることができる。ドーパントの配合量は、母体材料の原料100質量部に対して0.05質量部以下とすることが好ましい。
るつぼ1として、例えば石英ガラス製の管を用いる場合は、混合原料2を投入した管内は1Pa以下の減圧状態にして密閉し、アンプルとすることが好ましい。一方、カーボン製や白金製のるつぼを使用する場合は、使用するVB炉100を10−2Pa以下の減圧状態とするか、Nなどの不活性ガスで満たすことが好ましい。なお、その場合VB炉100は、排気口3Aから排気して減圧状態で気密できるような構造とすることができる。
シンチレータ用単結晶の育成は、混合原料2を投入したるつぼ1をVB炉100内に設置し、混合原料2を800℃程度に加熱して溶融した後、るつぼ1を3℃/cm〜15℃/cmの温度勾配(図1の矢印方向に対して)を有するVB炉内で徐々に降下(図1の矢印方向)して冷却することによって行う。るつぼ1の降下速度は、クラックがなく、透明度の高い結晶を得やすくする観点から、3mm/時以下が好ましく、1mm/時以下がより好ましく、0.5mm/時以下がさらに好ましい。これにより、混合原料2は、シンチレータ用単結晶に成長する。
このようにして得られたシンチレータ用単結晶は、光電子増倍管の光電面の外側に設けられたシンチレータとして機能する。放射線検出器は、これらシンチレータ及び光電子増倍管を備えるものである。このような放射線検出器は、公知の放射線検出器と同様に陽電子放出型断層撮影装置に組み込んで使用することができる。なお、光電子増倍管は公知のものであってもよく、放射線検出器及び陽電子放出型断層撮影装置におけるシンチレータ以外の部材は公知のものであってもよい。
次に、得られた希土類ハライドシンチレータの評価方法について説明する。評価内容としては、例えばCe元素とハロゲン元素の元素構成比(すなわち一般式(1)のyの値の測定)、蛍光出力測定などが挙げられる。
ここでyの値とは、実際に育成した単結晶中のCe元素とハロゲン元素の原子%の比で表される。測定方法としては、例えば、誘導結合プラズマ発行分光法(以下ICP−AESと記す)、原子吸光法、イオンクロマトグラフ、蛍光X線分析法、エネルギー分散型X線分光法(以下SEM−EDXと記す)などによって測定することができる。
蛍光出力とは、例えば放射線計測に適した応答速度の早い光電子増倍管とシンチレータを組み合わせ、単一のエネルギーのγ線、例えば137Csから得られる約662keVのγ線をシンチレータに照射し、そのγ線のエネルギーが全てシンチレータ内で吸収されたときに得られる蛍光量の平均値として表される。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではない。
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
シンチレータ用結晶の母体材料の原料として、CeBr(アルドリッチ社製、純度99.99%、融点約733℃)25gを石英アンプル内に投入した。原料の前処理として、原料の入った石英アンプル内を1Paに減圧して、減圧状態のまま原料を800℃に加熱し、その加熱状態で石英アンプルを1時間保持することによって原料を溶融した。冷却してから減圧状態を維持したまま石英アンプルを密閉した。その後、原料の入った石英アンプルをVB炉内の所定の場所に設置した。
続いて、次の通りブリッジマン法による単結晶育成を行った。まず、ヒーターを800℃に加熱し、その加熱状態で石英アンプルを24時間保持することによって石英アンプル内の原料を再度溶融した。その後、石英アンプルを0.5mm/時の速度で200時間かけて下降させた。下降終了後、ヒーターを10℃/時の速度で室温まで徐冷し、単結晶を得た。
(実施例2)
シンチレータ用結晶の母体材料の原料として、CeBr(アルドリッチ社製、純度99.99%、融点約733℃)25gを石英アンプル内に投入した。原料の前処理として、原料の入った石英アンプル内を1Paに減圧して、減圧状態のまま原料を900℃に加熱し、その加熱状態で石英アンプルを1時間保持することによって原料を溶融した。冷却してから減圧状態を維持したまま石英アンプルを密閉した。その後は、実施例1と同様にして単結晶を得た。
(実施例3)
シンチレータ用結晶の母体材料の原料として、CeBr(アルドリッチ社製、純度99.99%、融点約733℃)25gを石英アンプル内に投入した。原料の前処理として、原料の入った石英アンプル内を1Paに減圧したのち、アルゴンガスで石英アンプル内を置換した。その後石英アンプル内にアルゴンガスを流しながら原料を900℃に加熱し、その加熱状態で石英アンプルを1時間保持することによって原料を溶融した。冷却してから、石英アンプル内を1Paに減圧して、減圧状態を維持したまま石英アンプルを密閉した。その後は、実施例1と同様にして単結晶を得た。
(比較例1)
シンチレータ用結晶の母体材料の原料として、CeBr(アルドリッチ社製、純度99.99%、融点約733℃)25gを石英アンプル内に投入し、石英アンプル内を1Paに減圧して、減圧状態を維持したまま石英アンプルを密閉した。その後は、実施例1と同様にして単結晶を得た。
(比較例2)
シンチレータ用結晶の母体材料の原料として、CeBr(アルドリッチ社製、純度99.99%)25gを石英アンプル内に投入し、石英アンプル内を1Paに減圧して、減圧状態のまま原料を900℃に加熱し、その加熱状態で石英アンプルを1時間保持することによって原料を溶融した。冷却してから、NHBr(アルドリッチ社製、純度99.99%)1gを、溶融した原料の入った石英アンプル内に投入し、石英アンプル内を1Paに減圧して、減圧状態を維持したまま石英アンプルを密閉した。その後は、実施例1と同様にして単結晶を得た。
(比較例3)
シンチレータ用結晶の母体材料の原料として、CeBr(アルドリッチ社製、純度99.99%、融点約733℃)25gを石英アンプル内に投入し、石英アンプル内を1Paに減圧して、減圧状態のまま原料を400℃に加熱し、その加熱状態で石英アンプルを1時間保持した。冷却してから減圧状態を維持したまま石英アンプルを密閉した。その後は、実施例1と同様にして単結晶を得た。
(比較例4)
シンチレータ用結晶の母体材料の原料として、CeBr(アルドリッチ社製、純度99.99%、融点約733℃)25gを石英アンプル内に投入し、石英アンプル内を1Paに減圧して、減圧状態のまま原料を1200℃に加熱し、その加熱状態で石英アンプルを1時間保持することによって原料を溶融した。冷却してから減圧状態を維持したまま石英アンプルを密閉した。その後は、実施例1と同様にして単結晶を得た。
(評価試験)
<外観の評価>
各実施例及び比較例で作製した単結晶の外観を目視によって観察し、以下の評価基準に基づいて評価した。評価基準は、無色透明で表面にほとんどクラックがないものをA、無色透明で単結晶の一端に僅かにクラックがあるものをB、無色透明で多数のクラックが発生しているものをC、着色しているものをDとし、AまたはBのものを合格と判定した。結果を表2に示す。
<CeとBrの元素比率の測定>
各実施例および比較例で作製した単結晶に含有されるCeとBrの元素比率を、蛍光X線分析装置(装置名:XGT−1000WR、堀場製作所社製)を用いて測定した。測定手順としては、各実施例及び比較例で得られた単結晶から約3mm角の試料片を採取し、検出器内を真空としてから、マイラー膜上に試料片を置き測定した。なお、同一の単結晶の3箇所から試料片を採取し、それらの測定値を平均した値を分析値とした。結果を表2に示す。
<蛍光出力の測定>
各実施例および比較例で作製した単結晶の蛍光出力を、137Csから得られる662keVのγ線を用いて測定した。測定手順としては、まず各実施例及び比較例で得られた単結晶を3×3×3mmの立方体に加工した。立方体の表面は#400の粗さとなるように磨き、表面の汚れを取り除いた後に1面を除いてテフロン(登録商標)テープで巻いた。テフロン(登録商標)テープを巻いていない面に光学グリース(信越化学社製)を塗布し、光電子増倍管(商品名:H7195、浜松ホトニクス社製)の光電面に接触するように配置した。この単結晶を接続した光電子増倍管のダイノード信号を前置増幅器と波長成形増幅器で増幅し、マルチチャンネルアナライザーでエネルギースペクトルを得た。なお、測定は暗箱内で行った。結果を表2に示す。
Figure 2010285559
表2に示されるように、Ceの原子数1に対しBrの原子数yが2.5以上3.0未満である実施例1〜3の単結晶では、yが2.5未満又は3.0以上である比較例1〜3の単結晶よりも、蛍光出力を向上することができ、かつほとんど割れのない単結晶を得ることができた。
1・・・るつぼ、2・・・混合原料、3・・・容器、3A・・・排気口、4・・・ヒーター、5・・・断熱部材、6・・・シャフト、100・・・VB炉。

Claims (5)

  1. 下記一般式(1)で表されるシンチレータ用結晶。
    CeX (1)
    (一般式(1)中、CeXは母体材料の化学組成を示し、Xはハロゲン元素からなる群より選択される1種以上の元素を示し、yは下記式(A):
    2.5≦y<3.0 (A)
    で表される条件を満足する数値を示す。)
  2. 前記XはBrである、請求項1記載のシンチレータ用結晶。
  3. 単結晶である、請求項1または2に記載のシンチレータ用結晶。
  4. 光電子増倍管と、前記光電子増倍管の光電面の外側に設けられた請求項1〜3のいずれか一項に記載のシンチレータ用結晶を備えるシンチレータと、を有する放射線検出器。
  5. 陽電子放出型断層撮影装置に組み込まれている、請求項4記載の放射線検出器。
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