しかしながら、前述した画像記録装置では、画像記録中にジャムを生じると、記録媒体の表面上に残存する光照射等の処理を受けていない未硬化、未定着のインクが、ジャム処理の際に画像記録装置の内部や作業者に付着する。
そのため、画像記録装置の内部に付着したインクの除去が必要となり、画像記録装置の稼動効率が低下してしまう。また、装置内部や作業者に付着したインクが、ジャム処理後、正常に搬送されてきた記録媒体に転移して記録媒体を汚染し、記録画像の画質や製品としての品質を劣化させてしまう。
そこで、本発明は、記録媒体にジャムが発生した場合に、装置内や作業者に未硬化のインクが付着することを防止可能な画像記録装置を提供することを目的とする。また、本発明は、インクに光を照射して硬化させる画像記録装置の特性を利用して未硬化のインクを硬化させることで、インクの付着を確実に防止することができる画像記録装置を提供することをも目的とする。
前記の問題を解決するために、請求項1の画像記録装置は、
記録媒体に対してインクを吐出する記録ヘッドと、
前記記録媒体と記録ヘッドとを相対的に移動させる移動装置と、
前記記録媒体上に吐出されたインクを硬化させるための光を照射する光照射装置と、
前記記録媒体のジャムを検知するジャム検知装置と、
前記ジャム検知装置が記録媒体のジャムを検知した場合に、前記記録媒体上に未硬化のインクがある場合にはジャム処理を禁止するように制御する制御部と
を備え、
前記制御部は、前記ジャム検知装置が記録媒体のジャムを検知した際に、前記光照射装置により前記記録媒体上の未硬化のインクに対して光を照射するように構成されており、前記光照射装置が所定のエネルギーを照射したことに応じて、ジャム処理の禁止を解除することを特徴とする。
請求項1に記載の発明によれば、ジャム検知装置が記録媒体のジャムを検知すると、制御部は、記録媒体上に未硬化のインクがあるか否かを判断して未硬化のインクがあると判断した場合には、画像記録装置の上部本体部や扉等の開放可能部分の開放を阻止するように指示を出し、ジャム処理が行われることを禁止する。
そして、制御部は、ジャム検知装置が記録媒体のジャムを検知すると、通常の画像記録で使用されている光照射装置を使ってジャムを生じた記録媒体上に残存する未硬化のインクに光を照射してインクを硬化させる。
そして、制御部は、光照射装置から所定のエネルギーが照射されてからジャム処理の禁止を解除する。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の画像記録装置において、
さらに、前記光照射装置を所定の高さに上昇させ、前記記録媒体の搬送方向とは逆の方向に移動させる光源移動機構を備え、
前記制御部は、前記ジャム検知装置が記録媒体のジャムを検知した際に、前記光源移動機構を起動させて、前記光照射装置を、所定の高さまで上昇させ、前記搬送方向とは逆方向に移動させて、前記記録媒体上の未硬化のインクに光を照射することを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の画像記録装置において、前記制御部は、前記ジャム検知装置によるジャム検知時における前記記録媒体上のインクの硬化の際、前記記録ヘッドを前記記録媒体上から退避させるように構成されていることを特徴とする。
請求項3に記載の発明によれば、画像記録装置の制御部は、ジャムを生じた記録媒体上に残存する未硬化のインクの硬化を行う際、記録ヘッドを記録媒体の上方から退避させる。
請求項4に記載の発明は、画像記録装置は、
記録媒体に対してインクを吐出する記録ヘッドと、
前記記録媒体と記録ヘッドとを相対的に移動させる移動装置と、
前記記録媒体上に吐出されたインクを硬化させるための光を照射する光照射装置と、
前記記録媒体のジャムを検知するジャム検知装置と、
前記ジャム検知装置が記録媒体のジャムを検知した場合に、前記記録媒体上に未硬化のインクがある場合にはジャム処理を禁止するように制御する制御部と
を備え、
さらに、前記光照射装置とは別体の補助光照射装置を備え、
前記制御部は、前記ジャム検知装置が記録媒体のジャムを検知した際に、前記補助光照射装置により前記記録媒体上の未硬化のインクに対して光を照射するように構成されており、前記補助光照射装置が所定のエネルギーを照射したことに応じて、ジャム処理の禁止を解除することを特徴とする。
請求項4に記載の発明によれば、ジャム検知装置が記録媒体のジャムを検知すると、制御部は、記録媒体上に未硬化のインクがあるか否かを判断して未硬化のインクがあると判断した場合には、画像記録装置の上部本体部や扉等の開放可能部分の開放を阻止するように指示を出し、ジャム処理が行われることを禁止する。
そして、制御部は、ジャム検知装置が記録媒体のジャムを検知すると、通常の画像記録で使用されている光照射装置とは別体の補助光照射装置を使ってジャムを生じた記録媒体上に残存する未硬化のインクに光を照射してインクを硬化させる。
そして、制御部は、補助光照射装置から所定のエネルギーが照射されてからジャム処理の禁止を解除する。
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の画像記録装置において、
さらに、前記記録媒体を裏面側から支持し、下方に回動可能とされた記録媒体載置装置を備え、
前記制御部は、前記ジャム検知装置が記録媒体のジャムを検知した際に、前記記録媒体載置装置を下方に回動させて前記記録媒体を裏面側に退避させ、前記補助光照射装置を点灯させ、前記記録媒体上の未硬化のインクに光を照射することを特徴とする。
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の画像記録装置において、前記制御部は、前記ジャム検知装置によるジャム検知時における前記記録媒体上のインクの硬化の際、前記記録ヘッドのノズル面を保護部材で保護するように構成されていることを特徴とする。
請求項6に記載の発明によれば、画像記録装置の制御部は、ジャムを生じた記録媒体上に残存する未硬化のインクの硬化を行う際、例えば、記録ヘッドのノズル面を保護部材で覆うようにして、ノズル面を保護する。
請求項7に記載の発明は、請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の画像記録装置において、前記ジャム検知装置のジャム検知に応じて、前記制御部が画像記録装置本体の開放を禁止することによりジャム処理が禁止されることを特徴とする。
請求項7に記載の発明によれば、画像記録装置の制御部は、ジャム検知装置がジャムを検知すると、画像記録装置本体の開放を禁止してジャム処理が行われないようにする。
請求項8に記載の発明は、請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載の画像記録装置において、前記制御部は、画像記録装置本体の開放を禁止することを解除することによりジャム処理の禁止を解除することを特徴とする。
請求項8に記載の発明によれば、画像記録装置の制御部は、光照射装置や補助光照射装置から所定のエネルギーが照射されてから画像記録装置本体の開放の禁止を解除する。
請求項9に記載の発明は、請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載の画像記録装置において、前記ジャム処理の禁止を報知する報知手段を備えることを特徴とする。
請求項9に記載の発明によれば、報知手段は、例えば、モニタ画面にジャム処理を禁止し、画像記録装置の上部本体部や扉等がロックされていることを表示し、またはスピーカからの音声によりその旨を報知する。
請求項10に記載の発明は、請求項1乃至請求項9に記載の画像記録装置において、前記ジャム処理の許容を報知する報知手段を備えることを特徴とする。
請求項10に記載の発明によれば、報知手段は、例えば、モニタ画面にジャム処理が許容され、画像記録装置の上部本体部や扉等のロックが解除されたことを表示し、またはスピーカからの音声によりその旨を報知する。
請求項11に記載の発明は、請求項1乃至請求項10のいずれか一項に記載の画像記録装置において、前記インクの硬化の際に、前記記録媒体に照射される光のエネルギー量が通常記録時のエネルギー量の30%以上となるように構成されていることを特徴とする。
請求項11に記載の発明によれば、光照射装置や補助光照射装置からジャムを生じた記録媒体に対して通常記録時のエネルギー量の30%以上のエネルギー量の光が照射される。
請求項12に記載の発明は、請求項1乃至請求項11のいずれか一項に記載の画像記録装置において、前記インクは、紫外線硬化型インクであることを特徴とする。
請求項12に記載の発明によれば、記録ヘッドから紫外線硬化型インクが吐出され、紫外線照射装置や補助紫外線照射装置から紫外線が照射されてインクが硬化される。
請求項1に記載の発明によれば、ジャム検知装置が記録媒体のジャムを検知すると、制御部は、画像記録装置の上部本体部や扉等の開放可能部分の開放を阻止するように指示を出し、ジャム処理が行われることを禁止する。そのため、記録媒体上に未硬化のインクが残存した状態のままジャム処理が行われることを防止することができ、未硬化のインクが装置内や作業者に付着することを防止することが可能となる。
請求項2に記載の発明によれば、ジャム検知装置が記録媒体のジャムを検知すると、制御部は、記録媒体上に未硬化のインクがあるか否かを判断して未硬化のインクがあると判断した場合には、画像記録装置の上部本体部や扉等の開放可能部分の開放を阻止するように指示を出し、ジャム処理が行われることを禁止する。そのため、記録媒体上に未硬化のインクが残存した状態のままジャム処理が行われることを的確に防止することができ、未硬化のインクが装置内や作業者に付着することを確実に防止することが可能となる。また、記録媒体上に未硬化のインクがなく、ジャム処理を行っても装置内や作業者が汚染される危険がない場合には、ジャム処理を許容するようにすることができる。
請求項3に記載の発明によれば、画像記録装置の制御部は、ジャム検知装置がジャムを検知すると、画像記録装置本体の開放を禁止してジャム処理が行われないようにする。そのため、制御部がジャム検知を認識した時点で装置本体の開放を禁止することができ、記録媒体上に未硬化のインクが残存した状態のままジャム処理が行われることを防止することができ、未硬化のインクが装置内や作業者に付着することを防止することが可能となるという前記各請求項に記載の発明の効果をより効果的に発揮させることができる。
請求項4に記載の発明によれば、ジャム検知装置が記録媒体のジャムを検知すると、制御部は、記録媒体上の未硬化のインクを硬化させるように指示を出し、インクが硬化した後はじめてジャム処理が行われることを許容する。そのため、記録媒体上のインクが確実に硬化された状態でジャム処理を行うことができ、インクの付着を的確に防止することが可能となる。
請求項5に記載の発明によれば、報知手段は、例えば、モニタ画面にジャム処理を禁止し、画像記録装置の上部本体部や扉等がロックされていることを表示し、またはスピーカからの音声によりその旨を報知する。そのため、前記請求項1乃至請求項3に記載の発明の効果に加え、作業者が無理に画像記録装置の扉等を開放して画像記録装置が破壊されることを防止することができ、作業者にジャム処理を行う状態になるまで待機させることが可能となる。
請求項6に記載の発明によれば、報知手段は、例えば、モニタ画面にジャム処理が許容され、画像記録装置の上部本体部や扉等のロックが解除されたことを表示し、またはスピーカからの音声によりその旨を報知する。そのため、前記請求項4に記載の発明の効果に加え、画像記録装置がジャム処理可能な状態になったことを作業者が認識することができ、作業者に適切にジャム処理を行わせることが可能となる。
請求項7に記載の発明によれば、画像記録装置の制御部は、ジャム検知装置が記録媒体のジャムを検知すると、通常の画像記録で使用されている光照射装置を使ってジャムを生じた記録媒体上に残存する未硬化のインクに光を照射してインクを硬化させる。そのため、前記各請求項に記載の発明の効果に加え、ジャムを生じた記録媒体上の未硬化のインクを確実に硬化させてからジャム処理が行われるようにすることが可能となり、未硬化のインクが装置内や作業者に付着することを確実に防止することが可能となる。
請求項8に記載の発明によれば、画像記録装置の制御部は、ジャム検知装置が記録媒体のジャムを検知すると、通常の画像記録で使用されている光照射装置とは別体の補助光照射装置を使ってジャムを生じた記録媒体上に残存する未硬化のインクに光を照射してインクを硬化させる。そのため、前記各請求項に記載の発明の効果に加え、ジャムを生じた記録媒体上の未硬化のインクを確実に硬化させてからジャム処理が行われるようにすることが可能となり、未硬化のインクが装置内や作業者に付着することを確実に防止することが可能となるとともに、光照射装置の移動等のための機構を設ける必要がなく、画像記録装置のコンパクト化を図ることが可能となる。
請求項9に記載の発明によれば、画像記録装置の制御部は、光照射装置から所定のエネルギーが照射されてから画像記録装置本体の開放の禁止を解除する。そのため、前記各請求項に記載の発明の効果に加え、ジャムを生じた記録媒体上の未硬化のインクに所定のエネルギーの光を照射して確実に硬化させてから画像記録装置本体が開放可能となり、未硬化のインクが装置内や作業者に付着することを確実に防止することが可能となる
請求項10に記載の発明によれば、画像記録装置の制御部は、補助光照射装置から所定のエネルギーが照射されてから画像記録装置本体の開放の禁止を解除する。そのため、前記各請求項に記載の発明の効果に加え、ジャムを生じた記録媒体上の未硬化のインクに所定のエネルギーの光を照射して確実に硬化させてから画像記録装置本体が開放可能となり、未硬化のインクが装置内や作業者に付着することを確実に防止することが可能となる
請求項11に記載の発明によれば、画像記録装置の制御部は、ジャムを生じた記録媒体上に残存する未硬化のインクの硬化を行う際、記録ヘッドを記録媒体の上方から退避させるため、前記各請求項に記載の発明の効果に加え、記録ヘッドのノズル面に光が到達してノズル面上でインクが硬化することを防止することが可能となる。
請求項12に記載の発明によれば、画像記録装置の制御部は、ジャムを生じた記録媒体上に残存する未硬化のインクの硬化を行う際、例えば、記録ヘッドのノズル面を保護部材で覆うようにして、ノズル面を保護する。そのため、前記各請求項に記載の発明の効果に加え、記録ヘッドのノズル面に到達する光を遮断して、ノズル面上でインクが硬化することを確実に防止することが可能となる。
請求項13に記載の発明によれば、記録媒体載置装置は、記録ヘッドや光照射装置下方の部分が下方に移動して、ジャムを生じた記録媒体を裏面側に移動させて、記録媒体載置装置の下方に設けられた補助光照射装置から光を照射して記録媒体上の未硬化のインクを硬化させることができる。そのため、前記請求項7に記載の発明の効果に加え、画像記録装置をさらにコンパクトに設計することが可能となる。
請求項14に記載の発明によれば、光照射装置や補助光照射装置からジャムを生じた記録媒体に対して照射される光のエネルギー量が通常記録時のエネルギー量の30%以上であれば、記録媒体上の未硬化のインクが実用上支障がない程度まで硬化させることが可能となり、前記各請求項に記載の発明の効果に加え、未硬化のインクが装置内や作業者に付着して記録媒体に転移する事態を回避することができる。
請求項15に記載の発明によれば、画像記録装置を、記録ヘッドから紫外線硬化型インクが吐出され、紫外線照射装置や補助紫外線照射装置から紫外線が照射されてインクが硬化されるように構成することが可能となるため、前記各請求項に記載の発明の効果に加え、種類が多く、扱いが容易な紫外線硬化型インクや紫外線照射装置の中から最適なものを選択して用いることができ、画像記録装置の有効性や安定性、低価格性、コンパクト化等を含む利便性等の向上を図ることが可能となる。
以下、本発明に係る画像記録装置の実施の形態について、図面を参照して説明する。
[第1の実施の形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る画像記録装置を示す概略側面図であり、画像記録装置は、主に、略筐状の本体部1の上側を構成する上部本体部2と、下側を構成する下部本体部3と、モニタ画面やスピーカを備えた報知手段としての表示部4より構成されている。以下、図1において右側を装置の前方、左側を装置の後方という。
本体部1の側面後方内側には、回動軸5を有する図示しない蝶番構造が設けられており、この回動軸5を介して上部本体部2が下部本体部3に対して図中矢印A方向に回動自在に連結されている。また、下部本体部3の前方内側には、短い棒状のロックピン6が側面から突設されており、画像記録装置の通常の使用状態では、このロックピン6に、上部本体部2の前方内側に設けられたロック爪7の鉤爪状とされた先端部が係止されて、上部本体部2が閉じた状態に保持されるようになっている。
上部本体部2の側面前方外部には、ロック解除レバー8が設けられており、このロック解除レバー8を操作することにより、前記ロック爪7が回動してロックピン6から外れ、上部本体部2が開いた状態となるようになっている。
さらに、上部本体部2および下部本体部3の側面内側には、上部本体部2の開動作を阻止ためのロック機構9a、9bが設けられており、ロック機構9a、9bは、手動では解除することはできず、後述する制御部からの指示により解除されるようになっている。
なお、ロック機構9a、9bは、制御部によりロックおよび解除が制御できるものであればよく、例えば、機械的な係止や電磁的な吸着を利用する構成とすることができる。また、ロック機構9a、9bは、前記ロック解除レバー8の操作によるロック爪7がロックピン6から外れることを阻止または許容することで上部本体部2の開動作を阻止または許容するように構成することも可能である。
図2は、本実施形態に係る画像記録装置の記録部を示す斜視図であり、図3は、図2の記録部の側面図である。画像記録装置の内部に設けられた記録部10には、記録媒体Pを裏面側から支持する記録媒体載置装置としての平板状のプラテン11が略水平に配置されている。記録媒体Pは、プラテン11の表面に沿って図中矢印X方向(以下、搬送方向という。)に搬送されるようになっている。
プラテン11の搬送方向下流側には、記録媒体Pを搬送方向に移動させる搬送ローラ12が設けられており、搬送ローラ12の端部には、プーリ13が取り付けられている。搬送ローラ12の側方には、搬送駆動モータ14が配設されている。搬送ローラ12のプーリ13と搬送駆動モータ14の出力軸との間には、タイミングベルト15が掛け渡されており、搬送駆動モータ14の回転駆動が搬送ローラ12に伝達され、搬送ローラ12の回転により記録媒体Pが搬送方向に搬送されるようになっている。
搬送駆動モータ14には、図示しないジャム検知装置が取り付けられている。ジャム検知装置は、搬送駆動モータ14のトルクを測定するようになっており、記録媒体Pにジャムが生じた場合に搬送駆動モータ14にかかる規定値範囲外のトルクを測定すると、制御部にジャム検知信号を送信するようになっている。なお、記録媒体Pが図示しない巻き出しローラから巻き出され、記録部10で画像を記録された後、巻き取りローラに巻き取られるような場合には、ジャム検知装置を巻き出しローラや巻き取りローラに取り付けてトルクを測定するように構成することも可能である。
搬送ローラ12の上方には、ピンチローラ16が設けられており、ピンチローラ16は、搬送ローラ12の搬送力が記録媒体Pに確実に伝達されるように搬送ローラ12との間で記録媒体Pを挟持するようになっている。また、プラテン11の搬送方向上流側には、記録媒体Pをプラテン上に案内するためのガイドローラ17が配設されている。
プラテン11の上方には、画像記録装置で使用される各色の紫外線硬化型インク(図2および図3では、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の場合を示す。)に対応するラインヘッド方式の複数の記録ヘッド18がそれぞれ記録媒体Pの幅方向に延在するように配設されており、各記録ヘッド18の記録媒体に対応するノズル面19には、記録媒体Pに対してそれぞれの色のインクを吐出する複数のノズル20が形成されている。
なお、本実施形態に用いられるインクは、紫外線硬化型インクには限定されず、光照射により硬化するインクであればよい。また、紫外線硬化型インクとしては、光重合性化合物としてカチオン重合性化合物またはラジカル重合性化合物を含むカチオン硬化性インクまたはラジカル硬化性インクが好ましく用いられる。両者を複合させたハイブリッド型インクを用いることも可能である。
特に、カチオン硬化性インクは、酸素による重合反応の阻害が少ない又はないため、空気中で記録動作を行う本実施形態のような画像記録装置には適しており、相対的低エネルギーの光源が使える等、機能性および汎用性に優れている。本実施形態に用いられるカチオン硬化性インクは、具体的には、少なくともオキセタン化合物やエポキシ化合物、ビニルエーテル化合物等のカチオン重合性化合物と、光カチオン重合開始剤と、色材とを含む混合物であり、紫外線が照射されると重合して硬化する性質を具備するものである。本実施形態では、カチオン重合性インクを例示しているが、本発明においてはラジカル重合性インクや上述のハイブリッド型インクを用いることもできる。
なお、図2は記録ヘッド18を概略的に示したものであり、実際には、記録ヘッド18は画像記録装置に求められる機能に応じて設けられる本数や長さ等は任意に決められる。さらに、インクの色もYMCKには限定されず、画像記録装置の機能に応じて適宜選択されて用いられる。また、本実施形態では、1色のインクに対して1本の記録ヘッド18が対応するようにされているが、例えば、1色のインクを吐出する記録ヘッドを複数に分割された記録ヘッドで構成するようにしてもよい。
また、本実施形態では、通常の記録動作状態では位置が固定された記録ヘッド18の下方に前記搬送ローラ12により記録媒体Pが搬送され、記録媒体Pと記録ヘッド18とが相対的に移動する(従って、本実施形態では、搬送ローラ12や搬送駆動モータ14が移動装置に相当する。)が、反対に、記録媒体Pの位置を固定しておいて、記録媒体Pに対して記録ヘッド18を移動させながら記録媒体上に画像を記録するように構成することも可能である。
各記録ヘッド18には、供給管を介してインクタンクが接続されており(ともに図示しない)、インクタンクから各記録ヘッド18から吐出される色インクが適宜供給されるようになっている。
記録ヘッド18には、記録ヘッド18をプラテン上方の所定位置に設けられた退避位置に移動させるための図示しない移動機構(以下、ヘッド移動機構という。)が設けられている。退避位置には、記録ヘッド18のノズル面19を保護するための図示しない保護部材が設けられており、記録ヘッド18は、ジャムが発生すると、ヘッド移動機構により退避位置に運ばれ、そのノズル面19が保護部材で覆われるようになっている。
なお、保護部材は、例えば、すべての記録ヘッド18のノズル面19全域を覆うようにして保護する構造でもよく、また、各記録ヘッド18の各ノズル面19にそれぞれかぶせて保護するような構造でもよい。退避位置は、画像記録装置の構造等によって適宜決められ、例えば、記録ヘッド18を通常記録時の位置から真上に上昇させた位置に退避させるように構成してもよい。さらに、本実施形態では、記録ヘッド18と保護部材とを別体としたが、例えば、記録ヘッド18のノズル面側に、退避時にノズル20やノズル面19を覆うように動作してそれらを保護する保護部材を設けることも可能である。
記録ヘッド18の搬送方向下流側には、インクを硬化させるための光を照射する光照射装置としての紫外線照射装置21が記録ヘッド18と平行に設けられており、紫外線照射装置21は、下方に搬送されてきた記録媒体上のインクに対して内蔵された光源22から紫外線を照射してインクを硬化させるようになっている。光源22としては、高圧水銀ランプや低圧水銀ランプ、冷陰極殺菌ランプ、熱陰極殺菌ランプ、無電極ランプ、エキシマランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、LED(Light Emitting Diode)等の種々の光源を用いることができる。また、紫外線照射装置21の下方の開口部に、石英ガラス等を取り付けるように構成することも可能である。
紫外線照射装置21には、記録ヘッド18の前記移動機構とは別体の図示しない移動機構(以下、光源移動機構という。)が設けられており、光源移動機構は、制御部からの指示に応じて、紫外線照射装置21を所定の高さ(すなわち、プラテン11との距離)に上昇させ、搬送方向とは逆の方向(すなわち、ガイドローラ17に向かう方向)に紫外線照射装置21を移動させ、記録媒体Pに紫外線を照射させるように構成されている。
なお、記録媒体Pに対する紫外線照射完了後、紫外線照射装置21を、例えば、搬送ローラ12やピンチローラ16のさらに下流側に設けられた退避位置に収容するように構成してもよい。
なお、紫外線照射装置21が、例えば、複数の記録ヘッド18の各間隙にそれぞれ配置される場合もあり、その場合には、ヘッド移動機構は複数の記録ヘッド18を移動させ、光源移動機構は記録ヘッド18の各間隙に設けられた複数の紫外線照射装置21の全部または一部を移動させるように構成することも可能である。
図4は、本実施形態に係る画像記録装置の制御部の構成を示すブロック図である。制御部23には、CPU24やインターフェース25、図示しないRAM、ROM等がバスにより接続されて構成されたコンピュータが用いられている。
制御部23は、ロック制御部26、記録ヘッド制御部27、ヘッド移動制御部28、紫外線照射制御部29、光源移動制御部30および搬送制御部31を備えており、それらはCPU24からの指示に応じてそれぞれロック機構9a、9b、ノズル20を含む記録ヘッド18、ヘッド移動機構32、光源22を含む紫外線照射装置21、光源移動機構33および搬送駆動モータ14に信号を送り、それらの動作を制御するようになっている。また、制御部23は、画像記録装置を構成する他の装置に対してもそれぞれに対応する図示しない制御部を介して信号を送り、それらの動作制御等を行うようになっている。
また、制御部23のCPU24には、インターフェース25を介して外部のコンピュータや画像記録装置の本体部1に設けられたキーボードやタッチパネル或いはDVDやCD、MD等の読み取り装置等の入力装置Dが接続されており、CPU24は入力装置Dから入力された情報に応じて各制御部26〜31を介して画像記録等の動作を行わせるようになっている。
さらに、制御部23のCPU24には、前述したジャム検知装置34が接続されており、ジャム検知装置34が記録媒体Pのジャムを検知した際に送信される前記ジャム検知信号をCPU24が受信して、記録媒体Pにジャムが発生したと判断されるようになっている。また、制御部23のCPU24には、前述した表示部4が接続されており、表示部4は、CPU24からの指示に応じて必要な情報をモニタ画面に表示し、スピーカから音声で報知するようになっている。
次に、本実施形態の画像記録装置の制御部23における制御構成について説明する。
画像記録装置の制御部23は、入力装置Dから記録媒体Pに記録すべき画像情報を受信すると、RAM等の記憶装置に記憶させる。また、記録開始信号が入力されると、紫外線照射制御部29に紫外線照射装置21の光源22を点灯させるように指示を送る。光源22から発せられる紫外線の光量が安定すると、搬送制御部31に指示を送り搬送駆動モータ14を起動させて搬送ローラ12を回転させ、記録媒体Pを搬送方向Xに搬送させる。
また、制御部23は、記録ヘッド制御部27を介して画像情報を記録ヘッド18に送信し、記録ヘッド18のノズル20から所要の色インクを吐出させる。記録媒体Pに着弾したインクは、記録媒体Pの搬送により紫外線照射装置21の下方に移動し、光源22からの紫外線の照射を受けて硬化して、記録媒体上に所定の画像が形成される。
吸湿や高温の光源による加熱、搬送ローラ12とピンチローラ16との間の不均一なニップ力等の影響で記録媒体Pに波打ちやシワ、カール等の凹凸が生じると、記録媒体Pが記録ヘッド18や紫外線照射装置21の下方で詰まり、ジャムが発生することがある(図5参照)。このようなジャムが発生すると、ジャムと記録ヘッド18や紫外線照射装置21との間で摩擦が生じ、搬送ローラ12の回転が阻止される。そのため、搬送ローラ12を円滑に回転させようとする搬送駆動モータ14に異常なトルクがかかり、搬送駆動モータ14のトルクが規定値の範囲を超える。これをジャム検知装置34が検知して、制御部23にジャム検知信号を送信する。
図6は、本実施形態に係る画像記録装置の制御部における処理手順を示すフローチャートである。記録媒体Pにジャムが発生したまま画像記録を続行すると、ジャムにより記録ヘッド18のノズル20や紫外線照射装置21が損傷される等の事態が生じるため、制御部23は、ジャムが発生したか否かを、ジャム検知装置34からジャム検知信号が送信されてきたかどうかを常時監視して判断する(ステップS1)。
そして、制御部23は、ジャム検知装置34からのジャム検知信号を受信してジャムが発生したと判断すると、ロック制御部26(図5参照)を介してロック機構9a、9bを作動させて上部本体部2をロックし、上部本体部2の開放を阻止してジャム処理を禁止する(ステップS2)。前述したように、ロック機構9a、9bが、ロック解除レバー8(図1参照)の操作によりロック爪7がロックピン6から外れることを阻止しまたは許容することで上体本体部2の開動作を阻止または許容するように構成されている場合には、制御部23は、ロック制御部26を介してロック機構9a、9bにロック爪7がロックピン6から外れることを阻止させて、ロック状態を継続する。
次に、搬送制御部31を介して搬送駆動モータ14の駆動を停止させて記録媒体Pの搬送を停止させ(ステップS3)、記録ヘッド制御部27を介して記録ヘッド18からのインクの吐出を停止させる(ステップS4)。さらに、紫外線照射制御部29を介して紫外線照射装置21の光源22を消灯させ(ステップS5)、表示部4に信号を送り、ジャム処理を禁止したことをモニタ画面に表示させ、スピーカからその旨を報知させる(ステップS6)。
また、制御部23は、ヘッド移動制御部28を介してヘッド移動機構32を起動させ、記録ヘッド18を前記退避位置に移動させて記録媒体上から退避させ、退避位置に備えられた保護部材の位置まで記録ヘッド18を移動させて、そのノズル面19に保護部材を被せてノズル面19を保護する(ステップS7)。なお、上記記録媒体の搬送停止(ステップS3)からヘッド保護(ステップS7)までの順番は必ずしも上記の順番どおりでなくてもよく、また、同時並行で行われるように構成することも可能である。
記録ヘッド18のノズル面19の保護が完了すると、制御部23は、紫外線照射制御部29を介して紫外線照射装置21の光源22を点灯させて、光源移動制御部30を介して光源移動機構を起動させ、紫外線照射装置21をジャムと摩擦が生じない程度に所定の高さまで上昇させて記録媒体Pのジャムと紫外線照射装置21との干渉を解消させる。そして、紫外線照射装置21を搬送方向Xとは逆方向に移動させていき、記録媒体上の未硬化のインクに紫外線を照射してインクを硬化させる(ステップS8)。
そして、紫外線照射装置21から記録媒体Pに対して所定のエネルギー量の紫外線が照射されたか否かが判断され(ステップS9)、紫外線の照射量が所定のエネルギー量に達するまで照射が続けられる。
その際、紫外線照射装置21からジャムを生じた記録媒体Pに照射される紫外線のエネルギー量(照度×時間)が通常記録時と同じエネルギー量となるように、すなわち、光源22から発光される紫外線のエネルギー量を変えないでインクを硬化させることも可能であるが、処理時間の短縮や消費電力の低減、紫外線照射装置21の温度を下げる等の種々の観点から、光源22から発光される紫外線のエネルギー量を変更(増大もしくは減少)することも可能である。
この場合、照射される紫外線のエネルギー量は、通常記録時のエネルギー量の30%以上であることが望ましい。ここで、通常記録時の紫外線のエネルギー量とは、画像が記録された記録媒体Pを強く擦ってもインクが剥がれ落ちない密着状態(記録媒体上への定着状態)にするために必要なエネルギー量をいう。
なお、前記照射すべき紫外線のエネルギー量が30%以上であることが望ましい理由は以下の通りである。まず、下限値については、スライドガラス上にインクを塗布して種々のエネルギー量の紫外線を照射してインクを硬化させた後、インク上に1.8cm四方のカバーガラスを置き、その上から20gの重りを載せて5秒間貼り合わせ、カバーガラスへのインクの転移による着色面積の全体面積に対する割合を求める。その割合が10%以下であれば実用上支障がなく、紫外線のエネルギー量が通常記録時のエネルギー量の30%であれば前記割合が10%以下となる。
また、照射すべき紫外線のエネルギー量は、過剰照射による記録媒体Pの劣化や発火等が生じない程度まで増加させることができる。記録媒体の種類や使用する光源の種類、或いは光源が連続光であるかパルス光であるか等によっても異なるが、通常記録時のエネルギー量の1000倍程度まで増加させることが可能である。
制御部23は、予め設定されたジャム発生時における光源22からの発光照度および光源移動機構33による紫外線照射装置21の移動速度に基づいて、紫外線照射制御部29を介して紫外線照射装置21の光源22からの発光照度を調整し、光源移動制御部30を介して紫外線照射装置21を前記移動速度で移動させる。
制御部23は、前記ステップS9で紫外線照射装置21から記録媒体Pに対して所定のエネルギー量の紫外線が照射され、記録媒体上の未硬化のインクが硬化されたと判断すると、光源移動制御部30を介して光源移動機構33に、紫外線照射装置21を搬送方向に移動させて通常記録時の位置に戻させ、紫外線照射制御部29を介して紫外線照射装置21の光源22を消灯させる(ステップS10)。そして、ロック制御部26を介してロック機構9a、9bのロックを解除し(ステップS11)、上部本体部2を開放可能としてジャム処理を許容する。また、制御部23は、表示部4に信号を送り、ジャム処理が可能であることをモニタ画面に表示させ、スピーカからその旨を報知させる(ステップS12)。
このように、本実施形態の画像記録装置によれば、ジャムが発生した場合に、制御部の指示によりロック機構9a、9bが上部本体部2の開放を阻止してジャム処理を禁止するため、記録媒体上に未硬化のインクが残存した状態のままジャム処理が行われることを的確に防止することができ、未硬化のインクが装置内や作業者に付着することを確実に防止することが可能となる。
また、ジャムが発生した場合に、記録媒体上のインクを硬化してからロック機構9a、9bを解除して上部本体部2を開放可能にし、ジャム処理を許容するため、記録媒体上の未硬化のインクが硬化された状態でジャム処理を行うことが可能となり、インクの付着を的確に防止することができる。
さらに、本実施形態のようにジャム発生時に記録ヘッドを退避位置に退避させ、そのノズル面を保護部材で保護するようにすれば、記録ヘッドのノズル面に紫外線が到達することを確実に防止することができ、ノズル面でインクが硬化してノズルからのインクの吐出に悪影響が生じることを回避することができる。
[第2の実施の形態]
第2の実施形態に係る画像記録装置は、前記第1の実施形態に係る画像記録装置と同様の構成を有し、制御部23における制御構成においても、ジャムが発生したか否かの判断(ステップS1)と上部本体部2のロック(ステップS2)の間に記録媒体上に未硬化のインクがあるか否かの判断を行う点のみが異なるものである。そのため、前記第1の実施形態と同一の装置、部材等については同一の符号を用いて説明する。
図7は、本実施形態に係る画像記録装置の制御部における処理手順を示すフローチャートである。本実施形態では、第1の実施形態と同様に、制御部23は、ジャムが発生したか否かを、ジャム検知装置34からジャム検知信号が送信されてきたかどうかを常時監視して判断し(ステップS1)、制御部23は、ジャム検知装置34からのジャム検知信号を受信してジャムが発生したと判断すると、次に、記録媒体上に未硬化のインクがあるか否かの判断を行うようになっている(ステップS13)。
制御部23における記録媒体上に未硬化インクが残っているか否かの判断は、例えば、紫外線照射装置21の下方を通過する記録媒体Pを検知可能な図示しない検知センサを紫外線照射装置21に設けておき、記録ヘッド18によるインクの吐出から紫外線照射装置21の下方を通過するまでの最大所要時間が2.5秒である場合に、記録ヘッド18から最後にインクが吐出されてから2.5秒以内に制御部23がジャム検知信号を受信した場合には未硬化のインクが残っていると判断され、2.5秒以上経過後に制御部23がジャム検知信号を受信した場合には未硬化のインクは残っていないと判断される。
制御部23は、このようにして、前記判断(ステップS13)において、記録媒体上に未硬化のインクがあると判断すると、前記第1の実施形態と同様に、以下の上部本体部2のロック(ステップS2)からジャム処理が可能であることの報知(ステップS12)までの処理を行う。また、前記判断(ステップS13)において、記録媒体上に未硬化のインクが残っていないと判断すると、以下のステップS2からステップS12の処理を行わずに処理を終了する。
このように、本実施形態の画像記録装置によれば、記録媒体上に残存する未硬化のインクの有無を判断し、未硬化のインクがあれば硬化させた後にジャム処理を行うことができるようにするため、第1の実施形態と同様に、記録媒体上に未硬化のインクが残存した状態のままジャム処理が行われることを的確に防止することができ、未硬化のインクが装置内や作業者に付着して記録媒体等を汚染することを確実に防止することが可能となる。
また、記録媒体上に未硬化のインクがないと判断され、ジャム処理を行っても装置内や作業者が汚染される危険がない場合には、インクの硬化等の処理を行うことなくジャム処理を許容するため、必要がある場合にだけ紫外線照射等を行うようにすることができ、無駄な電力消費等を回避することが可能となる。
[第3の実施の形態]
第3の実施形態に係る画像記録装置は、前記第1および第2の実施形態の画像記録装置と同様の作用効果を奏するものであり、記録部10の構成の一部やジャム検知装置が異なるだけであり、前記第1および第2の実施形態と同一の装置、部材については同一の符号を用いて説明する。
また、第3の実施形態の画像記録装置は、例えば、カット紙等の1枚ずつに分割された記録媒体Pに対して好適に適用されるので、記録媒体Pがそのような記録媒体であることを前提に説明する。なお、前記第1および第2の実施形態の画像記録装置が、分割された記録媒体Pにも適用されることは言うまでもない。また、第1〜第3の実施形態を組み合わせて用いることも可能である。
第3の実施形態の画像記録装置の本体部1の構成は、第1および第2の実施形態の画像記録装置の本体部1(図1参照)と同様である。
図8は、第3の実施形態に係る画像記録装置の記録部を示す側面図である。本実施形態では、記録ヘッド18の搬送方向最上流側の端部および紫外線照射装置21の搬送方向下流側の側面に、ジャム検知装置34としての光学センサ34a、34bがそれぞれ記録媒体Pに対向するように取り付けられている。光学センサ34a、34bは、搬送されてくる記録媒体Pの先端および後端を光学的に検知する非接触センサであるが、光学センサの代わりに、例えば、記録媒体Pの厚さを検知するなど記録媒体Pの先端、後端を物理的に検知する接触センサを用いることも可能である。
本実施形態では、記録媒体載置装置である平板状のプラテン11は、記録ヘッド18の下方のプラテン部分11aと他のプラテン部分とが分割されており、プラテン部分11aは、搬送方向上流側のプラテン部分と蝶番構造35を介して下方に回動可能に連結されている。また、プラテン部分11aの搬送方向下流側のプラテン部分には、ストッパ36が取り付けられており、通常の状態ではストッパ36が作動してプラテン部分11aの下方への回動が阻止され、プラテン部分11aが他のプラテン部分と同一平面をなすようにされている。プラテン部分11aは、ストッパ36を解除することにより下方に回動するようになっている(図9参照)。
また、ストッパ36の下方には、補助光照射装置として紫外線照射装置21とは別体の補助紫外線照射装置37が搬送方向の略上流側を向くように配置されており、補助紫外線照射装置37には、光源38が内蔵されている。光源38としては、紫外線照射装置21の光源22と同種の光源が用いられてもよく、また、高圧水銀ランプや低圧水銀ランプ、冷陰極殺菌ランプ、熱陰極殺菌ランプ、無電極ランプ、エキシマランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、LED等の他の種類の光源を用いることも可能である。
なお、図示を省略するが、本実施形態の記録部10では、図2に示した記録部10における搬送ローラ12およびピンチローラ16とガイドローラ17との搬送方向Xに対する上流側および下流側の位置関係が反対になっている(すなわち、搬送ローラ12等が搬送方向上流側に配置されている。)。
図10は、第3の実施形態に係る画像記録装置の制御部の構成を示すブロック図である。制御部23のCPU24は、前述したロック制御部26等のほかに、プラテン回動制御部39および補助照射制御部40を備えており、制御部23は、それらを介して前記ストッパ36を含むプラテン回動機構41および補助紫外線照射装置37の動作の制御を行うように構成されている。
次に、第3の実施形態に係る画像記録装置の制御部23における制御構成について説明する。
図11は、本実施形態に係る画像記録装置の制御部における処理手順を示すフローチャートである。本実施形態では、第1および第2の実施形態と同様に、制御部23は、ジャムが発生したか否かを常時監視して判断する(ステップS1)。具体的には、本実施形態では、ジャムが発生したか否かの判断は、記録媒体Pの先端(または後端。以下では省略)を搬送方向上流側の光学センサ34aが検知してから下流側の光学センサ34bが検知するまでの時間間隔を監視することにより行われる。
すなわち、予め通常の記録状態における正常な時間間隔を記録媒体Pの搬送速度と光学センサ34a、34bの距離とから求めておき、制御部23は、上流側の光学センサ34aが記録媒体Pの先端を検知して送信してきた信号を受信してから所定時間(例えば、前記正常な時間間隔の1.5倍)が経過する前に下流側の光学センサ34bから記録媒体Pの先端を検知した信号を送信してきた場合には、記録媒体Pにはジャムが発生していないと判断する。また、制御部23は、上流側の光学センサ34aが記録媒体Pの先端を検知して送信してきた信号を受信してから所定時間経過しても下流側の光学センサ34bから検知信号が送信されてこない場合には、記録媒体Pにジャムが発生したと判断する。
制御部23は、ジャム検知装置34からのジャム検知信号を受信してジャムが発生したと判断すると、次に、記録媒体上に未硬化のインクがあるか否かの判断を行うようになっている(ステップS13)。具体的には、制御部23は、前記判断(ステップS1)でジャムが発生したと判断された記録媒体Pに対して記録ヘッド18のノズル20からインクが吐出されていれば、記録媒体上に未硬化のインクがあると判断する。また、制御部23は、インクが吐出されていなければ、記録媒体上に未硬化のインクはないと判断して、以下のステップS2からステップS12の処理を行わずに処理を終了する。なお、第1の実施形態のように、この判断(ステップS13)を行わずに、次のロック工程(ステップS2)に移行するようにすることも可能である。
次に、制御部23は、前記ステップS13で記録媒体上に未硬化のインクがあると判断すると、ロック制御部26を介してロック機構9a、9bを作動させて上部本体部2をロックし、上部本体部2の開放を阻止してジャム処理を禁止する(ステップS2)。前述したように、ロック機構9a、9bが、ロック解除レバー8(図1参照)の操作によりロック爪7がロックピン6から外れることを阻止しまたは許容することで上体本体部2の開動作を阻止または許容するように構成されている場合には、制御部23は、ロック制御部26を介してロック機構9a、9bにロック爪7がロックピン6から外れることを阻止させて、ロック状態を継続する。
そして、制御部23は、搬送制御部31を介して搬送駆動モータ14の駆動を停止させて記録媒体Pの搬送を停止させ(ステップS3)、記録ヘッド制御部27を介して記録ヘッド18からのインクの吐出を停止させる(ステップS4)。また、紫外線照射制御部29を介して紫外線照射装置21の光源22を消灯させ(ステップS5)、表示部4に信号を送り、ジャム処理を禁止したことをモニタ画面に表示させ、スピーカからその旨を報知させる(ステップS6)。なお、上記記録媒体の搬送停止(ステップS3)から報知(ステップS6)までの順番は必ずしも上記の順番どおりでなくてもよく、また、同時並行で行われるように構成することも可能である。
次に、制御部23は、プラテン回動制御部39を介してストッパ36を解除するなどプラテン回動機構41を作動させてプラテン部分11aを下方に回動させてジャムを生じている記録媒体Pを裏面側に退避させ(ステップS14)、図9に示したように、記録ヘッド18のノズル面19を保護部材42で覆うようにして保護する(ステップS7)。
記録ヘッド18のノズル面19の保護が完了すると、制御部23は、補助照射制御部40を介して補助紫外線照射装置37を点灯させ、光源38から必要なエネルギー量の紫外線を記録媒体Pに照射して、記録媒体上の未硬化のインクを硬化させる(ステップS15)。制御部23は、補助紫外線照射装置37から記録媒体Pに対して所定のエネルギー量の紫外線が照射されたか否かを判断し(ステップS9)、紫外線の照射量が所定のエネルギー量に達するまで照射を続ける。照射すべき紫外線のエネルギー量は第1の実施形態において述べた通りである。
なお、補助紫外線照射装置37からの紫外線照射の間、記録ヘッド18を第1の実施形態と同様に退避位置まで移動させて保護部材による保護を行うことができる。また、図9に示したように、記録ヘッド18を退避させず、その場でノズル面19に保護部材42を被せるなどしてノズル面19を保護するようにしてもよい。
制御部23は、前記ステップS9で補助紫外線照射装置37から記録媒体Pに対して所定のエネルギー量の紫外線が照射され、記録媒体上の未硬化のインクが硬化されたと判断すると、補助照射制御部40を介して補助紫外線照射装置37の光源38を消灯させる(ステップS10)。そして、ロック制御部26を介してロック機構9a、9bのロックを解除し(ステップS11)、上部本体部2を開放可能としてジャム処理を許容する。また、制御部23は、表示部4に信号を送り、ジャム処理が可能であることをモニタ画面に表示させ、スピーカからその旨を報知させる(ステップS12)。
このように、本実施形態の画像記録装置によれば、第1および第2の実施形態の場合と同様に、記録媒体上に未硬化のインクが残存した状態のままジャム処理を行うことを的確に防止することができるから、未硬化のインクが装置内や作業者に付着することを確実に防止する等の効果が得られる。
また、第1の実施形態や第2の実施形態とは異なり、未硬化のインクの硬化の際に、通常の記録動作に用いられる紫外線照射装置を移動させず、また、記録ヘッドを必ずしも退避させなくてすむため、光源移動機構やヘッド移動機構、記録ヘッドの退避位置等を設ける必要がなくなり、画像記録装置のコンパクト化を図ることが可能となる。
なお、第3の実施形態において、補助紫外線照射装置を位置固定せず、プラテン部分11aに載置されて下方に移動してきた記録媒体のジャムの上方を移動しながら記録媒体上の未硬化のインクに紫外線を照射するように構成することも可能である。
また、本発明は、前記第1〜第3の実施形態のようなラインヘッド方式の画像記録装置のみならず、例えば、シリアルヘッド方式の画像記録装置にも同様に適用することができる。また、記録媒体にインクを吐出した後に光照射装置でインクを硬化させる画像記録装置であれば、ジャム発生時に未硬化のインクが記録媒体上に残存するという問題は生じ得るから、そのような画像記録装置にも適用できる。さらに、記録ヘッドから一旦ドラムやベルト等の中間転写体にインクを吐出し、その中間転写体から記録媒体上にインクを転写した後に光を照射してインクを硬化させる構成の画像記録装置にも適用可能である。
さらに、前記第1〜第3の実施形態では、装置の構造上、ジャム処理を禁止するために上部本体部の開放を阻止するように構成したが、この他にも、例えば、画像記録装置の扉の開放を阻止したり、或いはインクが未硬化のままの記録媒体を装置外に排出することを抑制したりするように構成することも可能であり、ジャム発生時に作業者がジャム処理を行うことを禁止できるものであれば本発明に含まれる。
また、前記第1〜第3の実施形態では、プラテン上を記録媒体が搬送される場合について述べたが、記録媒体載置装置としては、プラテンのみならず、搬送ベルトやプラテンと搬送ベルトとを組み合わせたものも使用されており、そのような記録媒体載置装置を備えた画像記録装置についても本発明が適用できる。特に、第3の実施形態で、分割されたプラテンを用いる代わりに、搬送ベルト(またはそれとプラテンを組み合わせたもの)を複数並設し、記録ヘッドの下方の搬送ベルトを下方に回動可能とするように構成することも可能である。
前記第1乃至第3の実施の形態のステップS2においては、画像記録装置本体のジャム処理のための開放を禁止すべく、ジャム検知装置34のジャム検知に応じて、ロック機構9がロックを開始するようにしても良いし、それ以前から画像記録装置本体の開放がロックされている場合には、ロックを継続させるようにしても良い。この画像記録装置本体の開放を禁止するロックについては、ステップS9にて紫外線照射装置21もしくは補助紫外線照射装置37が所定のエネルギー(照度×時間)を照射したことに応じて解除されるものである。また、本発明は、インクの吐出が行われる記録ヘッド18からインクの硬化が行われる紫外線照射装置21の間およびその近傍においてジャムが発生した場合はもとより、当該エリアでジャムは発生していないが、画像記録装置内の他の部分にてジャムが発生した場合に、記録媒体の搬送が停止され、未硬化のインクが画像記録装置内に存在する状態においても適用可能であることは言うまでもない。