JP2010280327A - 空気入りタイヤ - Google Patents

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JP2010280327A JP2009136238A JP2009136238A JP2010280327A JP 2010280327 A JP2010280327 A JP 2010280327A JP 2009136238 A JP2009136238 A JP 2009136238A JP 2009136238 A JP2009136238 A JP 2009136238A JP 2010280327 A JP2010280327 A JP 2010280327A
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Abstract

【課題】耐久性に優れた空気入りタイヤ2の提供。
【解決手段】このタイヤは、トレッド4、ウイング6、サイドウォール8、クリンチ部10、ビード12、カーカス14、支持層16、ベルト18及びバンド20を備えている。サイドウォール8は、凹凸模様を備えている。この凹凸模様は、多数の要素62からなる。要素62を空気が横切るとき、乱流が生じる。この乱流により、タイヤ2の熱が大気へと放出される。それぞれの要素62は、特定方向に沿って下向きに傾斜する第一スロープ面と、特定方向に沿って上向きに傾斜する第二スロープ面とを有している。第二スロープ面の傾斜角度βは、第一スロープ面の傾斜角度αよりも大きい。差(β−α)は、5°以上80°以下である。クリンチ部が要素62を備えてもよい。
【選択図】図1

Description

本発明は、空気入りタイヤに関する。詳細には、本発明は、空気入りタイヤのサイド面の改良に関する。
サイドウォールの内側に支持層を備えたランフラットタイヤが開発され、普及しつつある。この支持層には、高硬度な架橋ゴムが用いられている。このランフラットタイヤは、サイド補強型と称されている。このタイプのランフラットタイヤでは、パンクによって内圧が低下すると、支持層によって荷重が支えられる。この支持層は、パンク状態でのタイヤの撓みを抑制する。パンク状態で走行が継続されても、高硬度な架橋ゴムが、支持層での発熱を抑制する。このランフラットタイヤでは、パンク状態でも、ある程度の距離の走行が可能である。このランフラットタイヤが装着された自動車には、スペアタイヤの常備は不要である。このランフラットタイヤの採用により、不便な場所でのタイヤ交換が避けられうる。
パンク状態にあるランフラットタイヤの走行が継続されると、支持層の変形と復元とが繰り返される。この繰り返しにより支持層で熱が生じ、タイヤが高温に達する。この熱は、タイヤを構成するゴム部材の破損及びゴム部材間の剥離を招来する。破損及び剥離が生じたタイヤでは、走行は不可能である。パンク状態での長時間の走行が可能なランフラットタイヤが望まれている。換言すれば、熱に起因する破損及び剥離が生じにくいランフラットタイヤが望まれている。
特開2007−50854公報には、サイドウォールの表面に溝を備えたランフラットタイヤが開示されている。この溝を備えたサイドウォールの表面積は、大きい。従って、このタイヤの大気との接触面積は、大きい。大きな接触面積により、タイヤから大気への放熱が促進される。このタイヤは、昇温しにくい。
国際公開WO2007/32405公報には、サイド部に凸部を備えたランフラットタイヤが開示されている。この凸部は、タイヤの周りに乱流を発生させる。この乱流により、タイヤから大気への放熱が促進される。このタイヤは、昇温しにくい。
特開2007−50854公報 国際公開WO2007/32405公報
特開2007−50854公報に開示されたランフラットタイヤでは、大きな表面積によって放熱が促進されるが、その効果は限定的である。国際公開WO2007/32405公報に開示されたランフラットタイヤでは、凸部の下流において空気が滞留するので、この凸部の下流における放熱は不十分である。不十分な放熱は、タイヤの耐久性を阻害する。従来のランフラットタイヤの、パンク状態での耐久性には、改善の余地がある。通常状態(タイヤに正規内圧が負荷された状態)におけるタイヤの耐久性にも、改善の余地がある。
本発明の目的は、耐久性に優れた空気入りタイヤの提供にある。
本発明に係る空気入りタイヤは、
その外面がトレッド面をなすトレッド、
それぞれが上記トレッドの端から半径方向略内向きに延びる一対のサイドウォール、
それぞれが上記サイドウォールよりも半径方向略内側に位置する一対のビード、
並びに
上記トレッド及びサイドウォールに沿っており、両ビードの間に架け渡されたカーカス
を備える。このタイヤのサイド面には、凹凸模様が形成されている。この凹凸模様は、その軸方向が特定方向に沿う多数の要素からなる。それぞれの要素は、特定方向に沿って下向きに傾斜する第一スロープ面と、特定方向に沿って上向きに傾斜する第二スロープ面とを有する。第二スロープ面の傾斜角度βは、第一スロープ面の傾斜角度αよりも大きい。
好ましくは、傾斜角度βと傾斜角度αとの差(β−α)は、5°以上80°以下である。好ましくは、要素は、円柱の一部である形状を有する。
本発明に係るタイヤでは、凹凸模様により、サイド面の大きな表面積が達成される。大きな表面積は、タイヤから大気への放熱を促進する。このタイヤでは、第二スロープ面において、十分に乱流が発生する。この乱流により、タイヤから大気への放熱が促進される。この乱流は、隣接する要素の第一スロープ面に沿って円滑に流れる。このタイヤでは、空気の滞留が生じにくいので、放熱が阻害されない。このタイヤは、昇温しにくい。このタイヤでは、熱に起因するゴム部材の破損及びゴム部材間の剥離が生じにくい。このタイヤは、耐久性に優れる。
図1は、本発明の一実施形態に係る空気入りタイヤの一部が示された断面図である。 図2は、図1のタイヤのサイドウォールの一部が示された拡大正面図である。 図3は、図2のサイドウォールの一部が示された拡大正面図である。 図4は、図3のIV−IV線に沿った断面図である。 図5は、図2のサイドウォールの一部が示された拡大断面図である。 図6は、図1のタイヤが示された模式的正面図である。 図1は、本発明の他の実施形態に係る空気入りタイヤの一部が示された断面図である。
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
図1には、パンク状態で走行しうるランフラットタイヤ2が示されている。図1において、上下方向が半径方向であり、左右方向が軸方向であり、紙面との垂直方向が周方向である。このタイヤ2は、図1中の一点鎖線Eqを中心としたほぼ左右対称の形状を呈する。この一点鎖線Eqは、タイヤ2の赤道面を表す。この図1において両矢印Hで示されているのは、基準線BL(後に詳説)からのタイヤ2の高さである。
このタイヤ2は、トレッド4、ウイング6、サイドウォール8、クリンチ部10、ビード12、カーカス14、支持層16、ベルト18、バンド20、インナーライナー22及びチェーファー24を備えている。ベルト18及びバンド20は、補強層を構成している。ベルト18のみから、補強層が構成されてもよい。バンド20のみから、補強層が構成されてもよい。
トレッド4は、半径方向外向きに凸な形状を呈している。トレッド4は、路面と接地するトレッド面26を形成する。トレッド面26には、溝28が刻まれている。この溝28により、トレッドパターンが形成されている。トレッド4は、キャップ層30とベース層32とを有している。キャップ層30は、架橋ゴムからなる。ベース層32は、他の架橋ゴムからなる。キャップ層30は、ベース層32の半径方向外側に位置している。キャップ層30は、ベース層32に積層されている。
サイドウォール8は、トレッド4の端から半径方向略内向きに延びている。このサイドウォール8は、架橋ゴムからなる。サイドウォール8は、カーカス14の外傷を防止する。サイドウォール8は、リブ34を備えている。リブ34は、軸方向外側に向かって突出している。パンク状態での走行のとき、このリブ34がリムのフランジ36と当接する。この当接により、ビード12の変形が抑制されうる。変形が抑制されたタイヤ2は、パンク状態での耐久性に優れる。
クリンチ部10は、サイドウォール8の半径方向略内側に位置している。クリンチ部10は、軸方向において、ビード12及びカーカス14よりも外側に位置している。クリンチ部10は、リムのフランジ36と当接している。
ビード12は、サイドウォール8の半径方向内側に位置している。ビード12は、コア38と、このコア38から半径方向外向きに延びるエイペックス40とを備えている。コア38はリング状であり、巻回された非伸縮性ワイヤー(典型的にはスチール製ワイヤー)を含む。エイペックス40は、半径方向外向きに先細りである。エイペックス40は、高硬度な架橋ゴムからなる。
図1において矢印Haで示されているのは、基準線BLからのエイペックス40の高さである。この基準線BLは、コア38の、半径方向における最も内側地点を通過する。この基準線BLは、軸方向に延びる。タイヤ2の高さHに対するエイペックス40の高さHaの比(Ha/H)は、0.1以上0.7以下が好ましい。比(Ha/H)が0.1以上であるエイペックス40は、パンク状態において車重を支持しうる。このエイペックス40は、パンク状態でのタイヤ2の耐久性に寄与する。この観点から、比(Ha/H)は0.2以上がより好ましい。比(Ha/H)が0.7以下であるタイヤ2は、乗り心地性に優れる。この観点から、比(Ha/H)は0.6以下がより好ましい。
カーカス14は、カーカスプライ42からなる。カーカスプライ42は、両側のビード12の間に架け渡されており、トレッド4及びサイドウォール8に沿っている。カーカスプライ42は、コア38の周りを、軸方向内側から外側に向かって折り返されている。この折り返しにより、カーカスプライ42には、主部44と折り返し部46とが形成されている。折り返し部46の端48は、ベルト18の直下にまで至っている。換言すれば、折り返し部46はベルト18とオーバーラップしている。このカーカス14は、いわゆる「超ハイターンアップ構造」を有する。超ハイターンアップ構造を有するカーカス14は、パンク状態におけるタイヤ2の耐久性に寄与する。このカーカス14は、パンク状態での耐久性に寄与する。
カーカスプライ42は、並列された多数のコードとトッピングゴムとからなる。各コードが赤道面に対してなす角度の絶対値は、45°から90°、さらには75°から90°である。換言すれば、このカーカス14はラジアル構造を有する。コードは、有機繊維からなる。好ましい有機繊維としては、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、レーヨン繊維、ポリエチレンナフタレート繊維及びアラミド繊維が例示される。
支持層16は、サイドウォール8の軸方向内側に位置している。支持層16は、カーカス14とインナーライナー22とに挟まれてる。支持層16は、半径方向において、内向きに先細りであり外向きにも先細りである。この支持層16は、三日月に類似の形状である。支持層16は、高硬度な架橋ゴムからなる。タイヤ2がパンクしたとき、この支持層16が荷重を支える。この支持層16により、パンク状態であっても、タイヤ2はある程度の距離を走行しうる。このランフラットタイヤ2は、サイド補強型である。タイヤ2が、図1に示された支持層16の形状とは異なる形状を有する支持層を備えてもよい。
カーカス14のうち、支持層16とオーバーラップしている部分は、インナーライナー22と離れている。換言すれば、支持層16の存在により、カーカス14は湾曲されられている。パンク状態のとき、支持層16には圧縮荷重がかかり、カーカス14のうち支持層16と近接している領域には引張り荷重がかかる。支持層16はゴム塊なので、圧縮荷重に十分に耐えうる。カーカス14のコードは、引張り荷重に十分に耐えうる。支持層16とカーカスコードとにより、パンク状態でのタイヤ2の縦撓みが抑制される。縦撓みが抑制されたタイヤ2は、パンク状態での操縦安定性に優れる。
パンク状態での縦歪みの抑制の観点から、支持層16の硬度は60以上が好ましく、65以上がより好ましい。通常状態(タイヤ2に正規内圧が負荷された状態)の乗り心地性の観点から、硬度は90以下が好ましく、80以下がより好ましい。硬度は、「JIS K6253」の規定に準じ、タイプAのデュロメータによって測定される。図1に示された断面にこのデュロメータが押し付けられ、硬度が測定される。測定は、23℃の温度下でなされる。
支持層16の下端50は、エイペックス40の上端52よりも、半径方向において内側に位置している。換言すれば、支持層16はエイペックス40とオーバーラップしている。図1において矢印L1で示されているのは、支持層16の下端50とエイペックス40の上端52との半径方向距離である。距離L1は、5mm以上50mm以下が好ましい。距離L1がこの範囲であるタイヤ2では、均一な剛性分布が得られる。距離L1は10mm以上がより好ましい。距離L1は40mm以下がより好ましい。
支持層16の上端54は、ベルト18の端56よりも軸方向において内側に位置している。換言すれば、支持層16はベルト18とオーバーラップしている。図1において矢印L2で示されているのは、支持層16の上端54とベルト18の端56との軸方向距離である。距離L2は、2mm以上50mm以下が好ましい。距離L2がこの範囲であるタイヤ2では、均一な剛性分布が得られる。距離L2は5mm以上がより好ましい。距離L1は40mm以下がより好ましい。
パンク状態での縦歪みの抑制の観点から、支持層16の最大厚みは3mm以上が好ましく、4mm以上がより好ましく、7mm以上が特に好ましい。タイヤ2の軽量の観点から、最大厚みは、25mm以下が好ましく、20mm以下がより好ましい。
ベルト18は、カーカス14の半径方向外側に位置している。ベルト18は、カーカス14と積層されている。ベルト18は、カーカス14を補強する。ベルト18は、内側層58及び外側層60からなる。図1から明らかなように、内側層58の幅は、外側層60の幅よりも若干大きい。図示されていないが、内側層58及び外側層60のそれぞれは、並列された多数のコードとトッピングゴムとからなる。各コードは、赤道面に対して傾斜している。傾斜角度の絶対値は、通常は10°以上35°以下である。内側層58のコードの赤道面に対する傾斜方向は、外側層60のコードの赤道面に対する傾斜方向とは逆である。コードの好ましい材質は、スチールである。コードに、有機繊維が用いられてもよい。ベルト18の軸方向幅は、タイヤ2の最大幅の0.85倍以上1.0倍以下が好ましい。ベルト18が、3以上の層を備えてもよい。
バンド20は、ベルト18を覆っている。図示されていないが、このバンド20は、コードとトッピングゴムとからなる。コードは、螺旋状に巻かれている。このバンド20は、いわゆるジョイントレス構造を有する。コードは、実質的に周方向に延びている。周方向に対するコードの角度は、5°以下、さらには2°以下である。このコードによりベルト18が拘束されるので、ベルト18のリフティングが抑制される。コードは、有機繊維からなる。好ましい有機繊維としては、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、レーヨン繊維、ポリエチレンナフタレート繊維及びアラミド繊維が例示される。
タイヤ2が、バンド20に代えて、ベルト18の端の近傍のみを覆うエッジバンドを備えてもよい。タイヤ2が、バンド20と共に、エッジバンドを備えてもよい。
インナーライナー22は、カーカス14の内周面に接合されている。インナーライナー22は、架橋ゴムからなる。インナーライナー22には、空気遮蔽性に優れたゴムが用いられている。インナーライナー22は、タイヤ2の内圧を保持する。
図1に示されるように、このタイヤ2は、そのサイド面に凹凸模様を備えている。本発明においてサイド面とは、タイヤ2の外面のうち軸方向から目視されうる領域を意味する。典型的には、凹凸模様は、サイドウォール8の外面又はクリンチ部10の外面に形成される。
図2は、図1のタイヤ2のサイドウォール8の一部が示された拡大斜視図である。凹凸模様は、多数の要素62からなる。図4に示されるように、それぞれの要素62は凹陥している。サイド面のうち要素62以外の領域は、ランド64である。この凹凸模様は、魚のウロコに類似のパターンを有する。
要素62を有するサイド面の表面積は、要素62がないと仮定されたときのサイド面の表面積よりも大きい。このタイヤ2の大気との接触面積は、大きい。大きな接触面積により、タイヤ2から大気への放熱が促進される。
図3において、上下方向がタイヤ2の半径方向である。図3において符号Sgで示されているのは、要素62の輪郭内に画かれうる最長の線分である。図3から明らかなように、要素62の輪郭は、この線分Sgに対して対称である。線分Sgは、要素62の軸である。図3において矢印A1で示されているのは、特定方向である。角度θで示されているのは、タイヤ2の半径方向に対する特定方向A1の角度である。この実施形態では、要素62の軸Sgは、特定方向A1に沿っている。全ての要素62において、符号θは同一である。特定方向A1は、仮想された空気の流れ方向と一致する。この流れ方向は、後に詳説される。
図3及び4に示されるように、要素62は、第一スロープ面66、第二スロープ面68及び最深部70を備えている。第一スロープ面66は、一方のランド64から最深部70に至っている。第二スロープ面68は、最深部70から他方のランド64に至っている。第一スロープ面66は、特定方向A1に沿って下向きに傾斜している。第二スロープ面68は、特定方向A1に沿って上向きに傾斜している。図4に、仮想の円柱72が示されている。要素62は、線分Sgを含む平面で円柱72が切り取られた場合の、円柱72の一部の形状を有する。この平面に対し、円柱72の中心線は傾斜している。図2に示された第一ピッチP1及び第二ピッチP2に基づいて多数の円柱72が仮想されることにより、凹凸模様が得られうる。円柱72に代えて、円錐、円錐台、角柱、角錐、角錐台等が仮想されてもよい。
この凹凸模様では、ランド64は点又は線である。理論上は、ランド64は面積を有さない。実際のタイヤ2では、線及び点は若干の幅を有する。従って、ランド64は若干の面積を有する。
図4において符号αで示されているのは、軸Sgに対する第一スロープ面66の傾斜角度である。符号βで示されているのは、軸Sgに対する第二スロープ面68の傾斜角度である。角度βは、角度αよりも大きい。
図5には、2つの要素62a、62bが示されている。図5には、タイヤ2の周りの空気の流れFが示されている。タイヤ2は、走行時に回転する。タイヤ2が装着された車両は、進行する。タイヤ2の回転と車両の進行とにより、要素62を横切って空気が流れる。要素62aの第一スロープ面66に沿って流れる空気は、第二スロープ面68に衝突する。衝突により、渦が生じる。換言すれば、第二スロープ面68において乱流が生じる。第二スロープ面68の角度βが大きいので、十分な乱流が発生する。図5に示されるように、乱流は隣接する要素62bの第一スロープ面66に沿って流れる。第一スロープ面66の角度αが小さいので、乱流はこの第一スロープ面66から剥離しにくい。この第一スロープ面66は、タイヤ2の表面と乱流との接触面積を高める。
パンク状態においてタイヤ2の走行が継続されると、支持層の変形と復元とが繰り返される。この繰り返しにより、支持層で熱が生じる。この熱は、サイドウォール8及びクリンチ部10に伝導する。凹凸模様において生じる乱流は、この熱の大気への放出を促進する。このタイヤ2では、熱によるゴム部材の破損及びゴム部材間の剥離が抑制される。このタイヤ2は、パンク状態での長時間の走行が可能である。乱流は、通常状態での放熱にも寄与する。凹凸模様は、通常状態でのタイヤ2の耐久性にも寄与する。運転者の不注意により、内圧が正規値よりも小さい状態で走行がなされることがある。この場合の耐久性にも、凹凸模様は寄与しうる。
第一スロープ面66の角度αが小さいので、この第一スロープ面66に沿って空気は円滑に流れる。このタイヤ2では、凸部を有する従来のタイヤ及び溝を有する従来のタイヤに見られる滞留が、生じにくい。従って、滞留によって放熱が阻害されることがない。このタイヤ2は、耐久性に極めて優れる。
このタイヤ2では、凹凸模様によって昇温が抑制されるので、支持層16が薄くても、パンク状態での長時間の走行が可能である。薄い支持層16により、タイヤ2の軽量が達成される。薄い支持層16により、転がり抵抗が抑制される。軽量でかつ転がり抵抗が小さなタイヤ2は、車両の低燃費に寄与する。さらに、薄い支持層16により、優れた乗り心地も達成される。
図6において、矢印A2はタイヤ2の回転方向を表し、矢印A3は車両の進行方向を表す。ゾーンZ1では、タイヤ2の回転によってX方向へ空気が流れ、車両の進行によってX方向へ空気が流れる。矢印F1は、ゾーンZ1における合成された流れ方向を表す。ゾーンZ2では、タイヤ2の回転によってY方向へ空気が流れ、車両の進行によってX方向へ空気が流れる。矢印F2は、ゾーンZ2における合成された流れ方向を表す。ゾーンZ3では、タイヤ2の回転によって−X方向へ空気が流れ、車両の進行によってX方向へ空気が流れる。矢印F3は、ゾーンZ3における合成された流れ方向を表す。ゾーンZ4では、タイヤ2の回転によって−Y方向へ空気が流れ、車両の進行によってX方向へ空気が流れる。矢印F4は、ゾーンZ4における合成された流れ方向を表す。
回転中のタイヤ2では、放熱に大きく寄与するゾーンが存在する。要素62の位置、タイヤ2のサイズ、パンク時のタイヤ2の形状、車両のフェンダーの形状、ホイールの形状、車両におけるタイヤ2の取り付け位置等の影響が考慮され、放熱に大きく寄与するゾーンが決定される。このゾーンにおける、合成された流れ方向とほぼ一致するように、仮想された空気の流れ方向A1(図3参照)が決定される。換言すれば、特定方向が決定される。
軸Sgの距離D(図4参照)は、2mm以上70mm以下が好ましい。距離Dが2mm以上である要素62には十分に空気が流入するので、十分に乱流が発生する。この要素62により、タイヤ2の昇温が抑制される。この観点から、距離Dは4mm以上がより好ましく、6mm以上が特に好ましい。距離Dが70mm以下である要素62を有するタイヤ2では、多数の箇所で乱流が発生しうる。さらに、距離Dが70mm以下である要素62を有するタイヤ2では、サイド面の表面積が大きい。大きな表面積により、タイヤ2からの放熱が促進される。この要素62により、タイヤ2の昇温が抑制される。この観点から、距離Dは50mm以下がより好ましく、30mm以下が特に好ましい。タイヤ2が、互いに距離Dの異なる2種以上の要素62を有してもよい。
図4において矢印Deで示されているのは、要素62の深さである。深さDeは、要素62の最深部70と軸Sgとの距離である。深さDeは、0.2mm以上7mm以下が好ましい。深さDeが0.2mm以上である要素62では、十分な乱流が生じる。この観点から、深さDeは0.5mm以上がより好ましく、1.0mm以上が特に好ましい。深さDeが7mm以下である要素62では、最深部70において空気が滞留しにくい。さらに、深さDeが7mm以下であるタイヤ2では、サイドウォール8、クリンチ部10等が十分な厚みを有する。この観点から、深さDeは4mm以下がより好ましく、3.0mm以下が特に好ましい。タイヤ2が、深さDeの異なる2種以上の要素を有してもよい。
第一スロープ面66の角度αは、5°以上40°以下が好ましい。角度αが5°以上である要素62は、十分な深さDeを有する。この観点から、角度αは10°以上がより好ましく、15°以上が特に好ましい。角度αが40°以下である要素62では、空気が滞留しにくい。この観点から、角度αは35°以下がより好ましく、30°以下が特に好ましい。
第二スロープ面68の角度βは、50°以上85°以下が好ましい。角度βが50°以上である要素62では、乱流が十分に発生する。この観点から、角度βは55°以上がより好ましく、60°以上が特に好ましい。角度βが85°以下である要素62では、乱流が剥離しにくい。この観点から、角度αは80°以下がより好ましく、75°以下が特に好ましい。
十分な放熱がなされるとの観点から、差(β−α)は5°以上80°以下が好ましく、10°以上75°以下がより好ましく、15°以上70°以下が特に好ましい。
要素62の容積は、1.0mm以上400mm以下が好ましい。容積が1.0mm以上である要素62では、十分な乱流が生じる。この観点から、容積は1.5mm以上がより好ましく、2.0mm以上が特に好ましい。容積が400mm以下である要素62では、最深部70において空気が滞留しにくい。さらに、要素62の容積が400mm以下であるタイヤ2では、サイドウォール8、クリンチ部10等が十分な剛性を有する。この観点から、容積は300mm以下がより好ましく、250mm以下が特に好ましい。
全ての要素62の容積の合計値は、300mm以上5000000mm以下が好ましい。合計値が300mm以上であるタイヤ2では、十分な放熱がなされる。この観点から、合計値は600mm以上がより好ましく、800mm以上が特に好ましい。合計値が5000000mm以下であるタイヤ2では、サイドウォール8、クリンチ部10等が十分な剛性を有する。この観点から、容積は1000000mm以下がより好ましく、500000mm以下が特に好ましい。
要素62の面積は、3mm以上4000mm以下が好ましい。面積が3mm以上である要素62では、十分な乱流が生じる。この観点から、面積は12mm以上がより好ましく、20mm以上が特に好ましい。要素62の面積が4000mm以下であるタイヤ2では、サイドウォール8、クリンチ部10等が十分な強度を有する。この観点から、面積は2000mm以下がより好ましく、1300mm以下が特に好ましい。本発明において要素62の面積は、要素62の輪郭に囲まれた領域の面積を意味する。
要素62の総数は、50個以上5000個以下が好ましい。総数が50個以上であるタイヤ2では、多数の箇所で乱流が発生しうる。この観点から、総数は100個以上がより好ましく、150個以上が特に好ましい。総数が5000個以下であるタイヤ2では、個々の要素62が十分なサイズを有しうる。この観点から、総数は2000個以下がより好ましく、1000個以下が特に好ましい。総数及び要素62のパターンは、タイヤ2のサイズ及びサイド部の面積に応じて適宜決定されうる。
上記距離、形状及び総数を有する要素62は、種々のサイズのタイヤ2においてその効果を発揮する。幅が100mm以上350mm以下であり、偏平率が30%以上100%以下であり、リム径が10インチ以上25インチ以下である乗用車タイヤ2において、上記要素62は特に効果を発揮する。
このタイヤ2の製造では、複数のゴム部材がアッセンブリーされて、ローカバー(未加硫タイヤ2)が得られる。このローカバーが、モールドに投入される。ローカバーの外面は、モールドのキャビティ面と当接する。ローカバーの内面は、ブラダー又は中子に当接する。ローカバーは、モールド内で加圧及び加熱される。加圧及び加熱により、ローカバーのゴム組成物が流動する。加熱によりゴムが架橋反応を起こし、タイヤ2が得られる。そのキャビティ面に凸凹模様を有するモールドが用いられることにより、タイヤ2に凹凸模様が形成される。
タイヤ2の各部位の寸法及び角度は、特に言及のない限り、タイヤ2が正規リムに組み込まれ、正規内圧となるようにタイヤ2に空気が充填された状態で測定される。測定時には、タイヤ2には荷重がかけられない。本明細書において正規リムとは、タイヤ2が依拠する規格において定められたリムを意味する。JATMA規格における「標準リム」、TRA規格における「Design Rim」、及びETRTO規格における「Measuring Rim」は、正規リムである。本明細書において正規内圧とは、タイヤ2が依拠する規格において定められた内圧を意味する。JATMA規格における「最高空気圧」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「INFLATION PRESSURE」は、正規内圧である。但し、乗用車タイヤ2の場合、内圧が180kPaの状態で、寸法及び角度が測定される。
図7は、本発明の他の実施形態に係るタイヤの一部が示された断面図である。図7には、2つの要素76が示されている。このタイヤの、要素76以外の構成は、図1に示されたタイヤ2の構成と同等である。
図3及び4に示された要素62と同様、この要素76は、第一スロープ面78と第二スロープ面80とを有している。第二スロープ面80の傾斜角度は、第一スロープ面78の傾斜角度よりも大きい。この第二スロープ面80により、十分な乱流が発生する。第一スロープ面78では、乱流の剥離が生じにくい。
このタイヤは、2つの要素76の間に、ランド82を備えている。ランド82は、幅Wを有している。第二スロープ面80で発生した乱流は、ランド82を乗り越えて、隣接する要素76の第一スロープ面78へ移動する。ランド82は平坦なので、ランド82における乱流の剥離は生じにくい。このタイヤは、昇温しにくい。
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
[実施例1]
図2から4に示される要素を備えたタイヤを得た。要素の仕様は、以下の通りである。
角度α:20°
角度β:70°
角度θ:45°
深さDe:2mm
このタイヤのサイズは、「245/40R18」である。
[実施例2から5及び比較例1]
角度α及びβを下記の表1に示される通りとした他は実施例1と同様にして、実施例2から5及び比較例1のタイヤを得た。
[実施例6]
角度θを下記の表1に示される通りとした他は実施例1と同様にして、実施例6のタイヤを得た。
[比較例2]
凹凸模様を設けなかった他は実施例1と同様にして、比較例2のタイヤを得た。
[走行試験]
タイヤを「18×8.5J」のリムに組み込み、このタイヤに内圧が230kPaとなるように空気を充填した。このタイヤを、排気量が4300ccであり、フロントエンジン−リアドライブの乗用車の左後のホイールに装着した。このタイヤのバルブコアを抜き取り、タイヤの内部を大気と連通させた。この乗用車の、左前、右前及び右後のホイールには、内圧が230kPaであるタイヤを装着した。ドライバーに、この乗用車を、テストコースで80km/hの速度で運転させた。タイヤが破壊するまでの走行距離を測定した。この結果が、指数として、下記の表1に示されている。
Figure 2010280327
表1に示されるように、各実施例のタイヤの走行距離は、比較例1及び2のそれよりも大きい。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。
要素による放熱効果は、ランフラットタイヤ以外のタイヤでも得られる。本発明に係る空気入りタイヤは、種々の車両に装着されうる。
2・・・タイヤ
4・・・トレッド
8・・・サイドウォール
10・・・クリンチ部
12・・・ビード
14・・・カーカス
16・・・支持層
18・・・ベルト
20・・・バンド
62、76・・・要素
64、82・・・ランド
66、78・・・第一スロープ面
68、80・・・第二スロープ面
70・・・最深部

Claims (3)

  1. その外面がトレッド面をなすトレッド、
    それぞれが上記トレッドの端から半径方向略内向きに延びる一対のサイドウォール、
    それぞれが上記サイドウォールよりも半径方向略内側に位置する一対のビード、
    並びに
    上記トレッド及びサイドウォールに沿っており、両ビードの間に架け渡されたカーカス
    を備えており、
    そのサイド面に凹凸模様が形成されており、
    上記凹凸模様が、その軸方向が特定方向に沿う多数の要素からなり、
    それぞれの要素が、特定方向に沿って下向きに傾斜する第一スロープ面と、特定方向に沿って上向きに傾斜する第二スロープ面とを有しており、
    上記第二スロープ面の傾斜角度βが、上記第一スロープ面の傾斜角度αよりも大きい空気入りタイヤ。
  2. 上記傾斜角度βと傾斜角度αとの差(β−α)が5°以上80°以下である請求項1に記載のタイヤ。
  3. 上記要素が、円柱の一部である形状を有する請求項1又は2に記載のタイヤ。
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