JP2010279983A - Al合金溶接継手 - Google Patents

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Abstract

【課題】所定のAl材料の溶融溶接によって得られる接合体において、その溶接割れ感受性を低減させると共に、強度特性に優れた溶接継手を容易に実現すること。
【解決手段】所定量のCu、Mg、並びにZnを含む合金組成のAl合金母材を、特定量のMg、Cr、Ti、Si、Fe、Cu、Zr、及びZnを含み、残部がAl及び不可避的不純物からなる合金組成の溶加材を用いて、溶融溶接して得られる溶接継手において、溶接金属部の最大厚さ:t1 、その中心硬さ:Hv1 、熱影響部の厚さ:t2 、その最軟化部の硬さ:Hv2 としたときに、次の関係式:
1 ×Hv1 ≧1.9×t2 ×Hv2
Hv1 ≧70
を満足するように構成した。
【選択図】なし

Description

本発明は、Al合金溶接継手に係り、特に、所定合金組成のアルミニウム(Al)合金からなるAl合金母材の溶接において、高強度で且つ割れ感受性の低い継手特性を実現したAl合金溶接継手に関するものである。
従来から、産業用途を初め、建築、輸送、日用品、家庭用品等の各種の分野において、構造部材や装置、部品等の軽量化を図るために、それを構成する材料(部材)として、アルミニウム(Al)材質のものが、採用されてきている。そして、そのような用途において、引張強さで250MPa以上の高強度が必要とされる場合には、従来において、7003や7N01といった、AA乃至JIS規格に規定されるAl−Zn−Mg系の7000系Al合金押出材が、用いられてきている。また、かかる用途における目的とする最終形状乃至は構造の少なくとも一部を与える部材は、その形状の複雑性等に応じて、複数のAl材料にて構成されて、それら複数のAl材料が、TIGやMIG等の溶接手法を用いて溶融溶接されて、一体的な構造の部材とされるのであるが、そのような溶融溶接に際して、4043や4047の如き、Al−Si系の4000系Al合金からなる、従来からの溶加材を用いた場合にあっては、溶接金属の強度が低いために、溶接継手における低強度の溶接金属部位で破断するという問題があった。なお、ここで用いられる「7003」や「4043」等の四桁の数字(英文字を含む)は、何れも、AA乃至JIS規格に規定されるAl合金を示すものである。
そこで、7000系Al合金からなるAl材料の溶融溶接において形成される溶接金属部位の強度を高めるべく、そのような溶融溶接に用いられる溶加材として、5554、5356、5183等の、Al−Mg系の5000系Al合金からなる溶加材が、「軽金属溶接」、Vol.45、No.10、第461〜470頁(2007)(非特許文献1)において、提案されている。しかしながら、目的とする部材の更なる軽量化のために、その薄肉高強度化を図るべく、そのような部材を構成するAl材料を与える7000系Al合金のMg量、Zn量、或いはCu量を増加させたりすると、上述の如き5000系Al合金からなる溶加材では、溶接割れ感受性を低減させるには不充分であり、母材熱影響部(HAZ)よりも溶接金属部位が低強度となってしまう問題が内在している。
また、7000系Al合金は溶接割れ感受性に敏感であるところから、そのような溶接割れ感受性を低減させるために、例えば、特開平1−143791号公報(特許文献1)において、Mg:6〜10wt%、Zr:0.25〜1.5wt%を含有するAl合金溶加材が、提案されている他、特開平5−169290号公報(特許文献2)においては、Zn:1〜6%、Mg:3〜6%(Zn≦Mg)、Mn:0.2〜0.9%、Cr:0.05〜0.5%、Ti:0.05〜0.2%、B:0.01〜0.2%、Zr:0.05〜2%を含有するAl合金溶加材が、また特開2000−317676号公報(特許文献3)においては、Zn:5〜8%、Mg:1〜3%、Cu:2〜4%、Sc:0.03〜3.0%、Cr:0.05〜0.2%、V:0.01〜0.5%、Ti:0.005〜0.2%、Ag:0.03〜2%を含有するAl合金溶加材が、更に特表2001−519239号公報(特許文献4)においては、Mg:5.0〜6.5%、Mn:0.4〜1.2%、Zn:0.4〜<2.0%、Zr:0.05〜0.3%、Cr:0.3%以下、Ti:0.2%以下、Fe:0.5%以下、Si:0.5%以下、Cu:0.25%以下を含有するAl合金溶加材が、それぞれ、提案されている。そして、それらの溶加材では、Zrを添加したり、Scを添加したりすることで、溶接割れ感受性が低減せしめられているのである。
しかしながら、溶接継手における継手部(溶接金属部位)を高強度にするためには、溶接金属部と母材の熱影響部(HAZ)における最軟化部の硬さを制御する必要があり、そしてそのために、溶加材のMg含有量の制御が必要であった。そこで、かかる溶加材のMg含有量を5.5%以上とすることが考えられるのであるが、その際、従来技術のように、Zr含有量を多くしたり、或いはScを含有せしめたりすると、金属組織中において、巨大晶出物が形成されるようになるところから、1.6mmや2.4mm等の線径を有する溶加材を作製するに際して、その線引加工に悪影響をもたらし、線引加工途中で切断等の問題を惹起して、その製造が困難となったり、その生産性を悪化せしめたりすることとなる。更に、そのような問題に加えて、溶接金属中においても、MgやZr、Scの存在により巨大晶出物を生じる恐れがあり、そのために、継手強度が低下したり、溶接継手の特性が安定しない恐れがある等という問題を内在する。このため、溶加材を与えるAl合金中のMg含有量を、5.5%以上として、継手部を高強度化した際には、母材の成分とも絡めて、溶加材においても、その有効な合金組成を得る必要があった。
特開平1−143791号公報 特開平5−169290号公報 特開2000−317676号公報 特表2001−519239号公報
「軽金属溶接」、Vol.45、No.10、第461〜470頁(2007)
ここにおいて、本発明は、上述の如き事情を背景にして為されたものであって、その解決課題とするところは、所定のAl材料の溶融溶接によって得られる接合体において、その溶接割れ感受性を低減させると共に、強度特性に優れた溶接継手を容易に実現することの出来る技術を提供することにある。
そして、本発明にあっては、かくの如き課題を解決するために、質量基準にて、Cu:0.01〜0.50%、Mg:0.5〜2.1%、並びにZn:4.0〜8.5%を含み、残部がAl及び不可避的不純物からなる合金組成を有するAl合金母材を、質量基準にて、Mg:5.5〜8.0%、Cr:0.05〜0.25%、Ti:0.25%以下、Si:0.4%以下、Fe:0.4%以下、Cu:0.1%以下、Zr:0.05%以下、及びZn:0.25%以下を含み、残部がAl及び不可避的不純物からなる合金組成を有するAl合金溶加材を用いて、溶融溶接して得られる溶接継手にして、該溶融溶接により形成される溶接金属部の最大厚さをt1 とし、その中心硬さをHv1 とすると共に、前記母材の熱影響部の厚さをt2 とし、更にその最軟化部の硬さをHv2 としたときに、次の関係式:
1 ×Hv1 ≧1.9×t2 ×Hv2
Hv1 ≧70
を満足するように構成したことを特徴とするAl合金溶接継手を、その要旨とするものである。
なお、このような本発明に従うAl合金溶加材の望ましい態様の一つによれば、前記溶加材は、更に、0.5〜1.0質量%のMnを含有しており、これによって、溶接金属部位の高靭性化が、より一層有利に図られ得ることとなる。
このように、本発明に従うAl合金溶接継手にあっては、所定量のCu、Mg、Znを含む合金組成のAl合金母材の溶融溶接に際して、特定量のMg、Zr、Si、Fe、Cu、Cr、Zn及びTiを含み、残部がAl及び不可避的不純物からなる合金組成の溶加材を用いると共に、溶接金属部の硬さと共に、母材の熱影響部(HAZ)における最軟化部の硬さを制御したことによって、接合せしめられたAl合金母材の連結部(溶接部位乃至は溶接金属部位)における強度や伸び等の特性を効果的に高め、また、溶接割れ感受性を有利に低減せしめ得て、高強度で健全な溶接継手を安定的に実現せしめ得ることとなったのである。
そして、かかる本発明に従う構成を採用したことによって、母材の熱影響部と溶接金属部との硬さのバランスが整い、母材の熱影響部から優先的に破断させることが可能となると共に、延性も有利に向上せしめ得たのである。
板状のAl合金母材を溶融溶接して得られるAl合金溶接継手において、その溶接金属部を横切る方向の横断面の概略を示すと共に、そのような横断面における溶接金属部の中心からの距離とビッカース硬さとの関係の一例を示すものであって、(a)は、そのような溶接継手における横断面の概略部分図であり、(b)は、溶接金属部の中心からの距離とビッカース硬さとの関係を示すグラフである。
ところで、本発明において溶接対象とされるAl合金母材としては、優れた特性を有する継手を得る上において、特定量のCu、Mg及びZnを含み、残部がAl及び不可避的不純物である合金組成の、7000系Al合金からなる所定のAl材料が、用いられることとなる。
そのようなAl材料を与える7000系Al合金において、その合金成分の一つであるCu(銅)は、Al材料の強度の向上と耐応力腐食割れ性を改善する効果を有し、その含有量が0.01%(質量基準、以下同じ)未満では、それらの効果が充分ではないところから、少なくとも0.01%以上の割合において、含有せしめられることとなる。また、Cuの含有量が多くなると、Al材料の押出成形性を悪化せしめると共に、Al材料の焼入れ感受性が高くなり、押出直後の急冷であっても、焼入れに遅れが生じたりするため、T4調質やT6調質を行なっても充分な強度が得られなくなるところから、かかるCu含有量の上限は、0.50%とする必要がある。
また、Mg(マグネシウム)は、Al合金の強度を高める主要な元素であるため、それによる効果を充分に発揮させるには、0.5%以上の割合において含有せしめる必要がある。一方、このMg含有量が多くなり過ぎると、強度は高くなるものの、伸びが低下し、加工性が悪化するようになると共に、Al材料の押出成形時において押出圧力が増大し、押出操作が困難となるところから、Mg含有量の上限は、2.1%とする必要がある。これにより、加工性を保持するために必要とされる、4.0%以上の伸びが有利に確保されることとなる。なお、そのようなMgの含有による優れた効果を有利に発揮させる上において、Mg含有量としては、好ましくは1.0〜2.1%、更に好ましくは1.2〜2.1%、特に1.3〜2.1%の割合が、有利に採用されることとなる。
さらに、Zn(亜鉛)は、Mgと共存して、Al合金に時効性を与え、所定の時効処理(人工時効)により硬さを向上させる作用を発揮する元素であって、その効果を充分に発揮させるべく、4.0%以上の含有量において用いられることとなる。尤も、このZnも、その含有量が多くなると、硬さは高くなるものの、伸びが低下するようになり、加工性が悪化する問題を生じると共に、押出時の割れが発生し易くなるところから、Znの含有量は、8.5%以下に止める必要がある。なお、このZn含有量は、好ましくは5.0〜8.5%であり、更に好ましくは6.0〜8.5%、特に7.5〜8.5%の範囲が、有利に採用されるのである。
そして、かくの如き合金組成の7000系Al合金等からなる各種のAl材料は、そのようなAl合金を用いて得られたビレット等から、押出成形、鍛造成形、鋳造成形等の公知の成形手法によって、中実構造、中空構造や、形材、厚板等の形状の、公知の各種の形態において製造され、本発明で対象とされるAl材料(母材)として、目的とする用途の部材の形成に用いられることとなる。
本発明にあっては、上記の如くして得られるAl材料の複数を用いて、それらを、目的とする用途の部材を与えるように、突き合わせ、溶融溶接により一体化せしめるに際して、特定の合金組成を有するAl合金溶加材を用いた溶接操作が採用され、それによって生じた溶接継手にて、それら複数のAl材料が一体化されることによって、目的とする構造の部材が、優れた特性を保持して形成されるのである。
ところで、この本発明で用いられる特定の溶加材は、Mg:5.5〜8.0%、Cr:0.05〜0.25%、Ti:0.25%以下、Si:0.4%以下、Fe:0.4%以下、Cu:0.1%以下、Zr:0.05%以下、及びZn:0.25%以下を含み、残部がAl及び不可避的不純物からなる合金組成を有するものであって、それら元素の規定量を外れた含有量においては、各種の問題が惹起されるようになる。
すなわち、Mg(マグネシウム)は、溶接金属の高強度化(硬さ向上)を図り、溶接割れ感受性の低減に寄与せしめる上において必須の添加元素であって、その有効な添加効果を得る上においては、5.5%以上の含有量とする必要があるが、その含有量が8.0%を超えるようになると、ワイヤ製造のためのビレットを鋳造する際に、金属組織中にMg−Si系脆化層が形成されるようになり、そのため、ワイヤに抽伸加工することが困難となって、目的とする線径の溶加材を得ることが出来なくなる。
また、Cr(クロム)は、溶接割れ感受性の低減に効果があり、そのために、0.05%以上の割合において、含有せしめられることとなるが、その含有量が0.25%を超えるようになると、ワイヤ製造のためのビレットを鋳造する際に、金属組織中に粗大なAl−Cr系晶出物(金属間化合物)を生成して、溶加材としてのワイヤを得るための抽伸加工操作が困難となる問題を惹起する。
さらに、Ti(チタン)は、金属組織の微細化効果があり、そのために、0.25%を超えない割合において、含有せしめられることとなる。なお、このTi含有量が多くなり過ぎると、ワイヤ製造のためのビレットを鋳造する際に、金属組織中にAl−Ti系の粗大な晶出物(金属間化合物)を生成して、抽伸加工操作が困難となる問題を惹起する。
更にまた、Si(ケイ素)、Fe(鉄)、Cu(銅)、Zr(ジルコニウム)及びZn(亜鉛)は、何れも、不純物元素であって、それぞれ、上記で規定される含有量以下となるように制御される必要がある。因みに、Si含有量が多くなると、ワイヤ製造のためのビレットを鋳造する際に、Mg−Si系脆化層を形成して、ワイヤに抽伸加工することが困難となる問題が惹起されるからであり、またFe含有量が多くなると、ワイヤ製造のためのビレットを鋳造する際に、粗大なAl−Fe系晶出物(金属間化合物)を生成して、抽伸加工操作が困難となる問題を生じ、更にCu含有量が多くなり過ぎると、溶接金属部の溶接割れ感受性が高くなる問題が惹起されるからであり、そしてZr含有量が多くなり過ぎると、溶接金属部に粗大な晶出物(金属間化合物)を生成して、抽伸操作が困難となる問題を生じ、加えて、Zn含有量が多くなり過ぎると、溶接金属部にMg−Zn系脆化層が形成され、これが、溶接継手部位の特性、中でも硬さを低下せしめる問題が生じるからである。
なお、本発明にあっては、上記の溶加材の合金組成に加えて、更に、Mn(マンガン)の0.05〜1.0%が、有利に含有せしめられることとなる。この追加の合金成分たるMnは、溶接金属の高靭性化に寄与する成分であって、その添加効果を充分に発揮させるためには、0.05%以上の割合で含有せしめる必要があるが、その含有量が多くなり過ぎると、ワイヤ製造のためのビレットを鋳造する際に、粗大なAl−Mn系晶出物(金属間化合物)を生成して、抽伸加工が困難となる等の問題を惹起するようになる。
そして、本発明における溶加材は、上記した合金成分を有するAl合金を用いて、常法に従って作製されるものであって、一般的には、JIS−Z−3232に規定される径及び許容差の溶接棒や電極ワイヤとして、実現されることとなる。
また、かかる溶加材を用いた、前記Al材料の溶融溶接に際しては、MIG溶接、TIG溶接等のアーク溶接や、レーザ溶接、電子ビーム溶接等の公知の溶融溶接手法が、適宜に採用されて、それら複数のAl材料が、前記した溶加材によって形成される溶接継手を介して一体的に接合されて、目的とする形状乃至は構造の部材を与える接合体が形成されるのである。
そして、本発明にあっては、かくの如き溶加材を用いて、前記したAl材料(母材)を溶融溶接するに際して、それら母材と溶加材の成分を最適化することで、溶接金属部及び母材の熱影響部の硬さを制御することが出来ることとなるのであるが、母材の熱影響部で優先的に破断する最良の状態とするには、それぞれの厚さも関係することが見出され、そのため、下記の関係式(1)及び(2)を満足するように構成して、所期の目的を有利に達成し得るようにしたのである。
1 ×Hv1 ≧1.9×t2 ×Hv2 ・・・(1)
Hv1 ≧70 ・・・(2)
[但し、t1 :溶接金属部の最大厚さ
Hv1 :溶接金属部の中心硬さ、換言すれば溶接金属部の中央部位における熱影 響部(母材)厚さの1/2位置に相当する部位の硬さ
2 :母材の熱影響部の厚さ
Hv2 :母材の熱影響部における最軟化部の硬さ]
ここで、図1(a)には、板状のAl合金母材2,2を溶融溶接して得られた接合体において、その溶接金属部4を横切る方向における横断面の概略が、部分的に示されているが、そのような横断面図において、t1 は、溶接金属部4の最大厚さとなる、その中心部位(2枚の母材2,2の略突合せ中央部位に相当する)の厚さであり、そして、母材2の熱影響部(HAZ)の厚さ:t2 は、実質的に母材2の厚さに等しいものとなる。また、溶接金属部4の中心硬さ:Hv1 とは、溶接金属部4の幅方向(横断方向)の中心で且つ溶接金属部4における母材相当箇所の肉厚中心の部位、換言すれば母材2の厚さ(t2 )の1/2位置に相当する部位となる、即ち図1(a)の横断面において、溶接金属部4の中心線Yと母材2の厚さ方向の中心を通る直線Xとの交点となるO位置における断面硬さのことを言うものであり、更に、熱影響部(HAZ)の最軟化部の硬さ:Hv2 は、熱影響部(HAZ)の板厚方向中心部位(t2 /2位置)の断面における、長手方向(図において左右方向)1mm間隔での硬さ測定により得られる硬さ分布から、図1(b)に示される如く、最も硬さの小さい値が、採用されることとなる。なお、そのような硬さ(Hv)は、接合方向に直角な方向の断面を、JIS−Z−2244に準拠して、ビッカース硬さ試験機を用いて、荷重1kgfにて測定されるものである。
なお、上記の関係式(1)において、その左辺よりも右辺の値が大きくなると、溶接継手における溶接金属部(ボンド部)4において破断してしまう問題があり、また、前記関係式(2)において、Hv1 が70未満の場合にあっても、板厚とは関係なしに、溶接金属部4の硬さが小さくなり過ぎて、同様に、溶接金属部4で破断してしまう問題が惹起されるところから、前記の関係式(1)及び(2)を満足するように、母材2の厚さ(t2 )を選定し、更に、溶接金属部4の目的とする最大厚さ(t1 )が実現されるように、そして、それぞれの溶接金属部4や熱影響部(HAZ)の所定部位の硬さ:Hv1 、Hv2 が実現されるように、所定の溶融溶接操作が、実施されることとなるのである。また、それぞれの厚さ:t1 、t2 は、溶接操作の種類や溶接条件、更には目的とする接合体によって適宜に選定されるところであって、例えば、t2 は、アーク溶接操作が採用される場合には、一般に0.5mm以上とされ、またt1 は、t2 の厚さに関連して決定され、そしてt1 が厚い場合には、溶接操作が繰返し実施されて、目的とする厚さ:t1 が実現されることとなる。
ところで、上記のようにして得られた、Al材料(母材)の複数が接合されてなる接合体は、T4調質やT6調質が施されてなる状態において、目的とする用途の部材に用いられることとなる。ここで、かかるT4調質やT6調質は、溶体化処理と自然時効処理又は人工時効処理とを、従来と同様に施すことによって、実施され得るものであって、上記の溶接して得られた接合体が、所定の溶体化処理と自然時効処理又は人工時効処理の履歴を有するように、公知の各種の手法に従って行なわれることとなるが、一般に、溶接される前のAl材料(母材)に対して、所定の溶体化処理を施し、次いで、そのようなAl材料の複数を、前記した溶融溶接により形成される溶接継手にて一体的に接合せしめた後、その得られた接合体に対して、自然時効処理や人工時効処理を施し、全体としてT4調質やT6調質が施されるようにして、目的とする用途の部材を得ることが出来る。
さらに、そのようなT4調質やT6調質において、溶体化処理条件としては、一般に、450〜520℃の温度において、0.5〜10時間保持することからなる処理条件が採用され、また、T6調質における人工時効処理にあっても、一般に、90〜210℃の温度において、3〜24時間保持する処理条件が、採用されることとなる。
そして、このようにして得られたAl材料(母材)の接合体にあっては、それを構成する複数のAl材料が、特定の溶加材を用いて形成される溶接継手にて接合せしめられて、一体化されているところから、かかる溶接継手部分においても、優れた強度特性が発揮され、しかも、溶接割れ感受性も効果的に低減されたものとなっていると共に、特に、高強度の所定の7000系Al合金にて形成されたAl材料が用いられることによって、母材強度が250MPa以上にもなり、また、継手強度は200MPa以上となり、更に、継手伸びも4%以上の、優れた特性を有する接合部材として得ることが出来るのであり、以て、各種用途の構造部材や部品、製品等の少なくとも一部を構成する部材として、有利に用いられ得るのである。
以下に、本発明の代表的な実施例を示し、本発明を更に具体的に明らかにすることとするが、本発明が、そのような実施例の記載によって、何等の制約をも受けるものでないことは、言うまでもないところである。また、本発明には、以下の実施例の他にも、更には上記した具体的記述以外にも、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々なる変更、修正、改良等を加え得るものであることが、理解されるべきである。
先ず、下記表1〜表3に示される、各種合金組成のAl合金を溶製して、通常のDC鋳造法により、各種ビレットを製造した。次いで、この得られたビレットを、均質化処理した後、それぞれ、常法に従って直接押出して、板厚が3.0mm又は4.0mmの平板状の各種Al材料を得た。また、それら各種のAl材料には、それぞれ、460℃×1時間の溶体化処理を施して、後述する溶接試験のための各種供試母材を作製した。
一方、溶加材についても、下記表4〜表6に示される、各種合金組成からなるAl合金を溶製した後、上記と同様にしてビレットを作製し、次いで均質化処理を行ない、更に直接押出して、抽伸用素材を得た。その後、線径が1.6mmである溶接ワイヤとして、従来と同様な抽伸加工にて、目的とする各種の溶加材を作製した。
Figure 2010279983
Figure 2010279983
Figure 2010279983
Figure 2010279983
Figure 2010279983
Figure 2010279983
次いで、上記表1〜表3に示される、各種Al材料からなる母材の各2つを用い、それぞれの押出方向の端部を突き合わせて、上記表4〜表6に示される溶加材の、同じ番号のものを用いて、MIG溶接することからなる各種溶接試験を、下記表7〜表9に示される如く実施した。なお、MIG溶接条件は、電流:210A、溶接速度:80cm/分、シールドガス:Ar、シールドガス流量:10〜15L/分なる条件を採用した。
そして、それぞれの溶接試験において得られた接合体に対して、150℃×8時間の人工時効処理を実施することにより、T6調質された、目的とする部材の各種のものを製造した。
かくして得られた各種の接合部材について、その溶接継手部位に割れが発生しているか、どうか、当該溶接継手部位の接合方向に直角な方向となる横断面を顕微鏡観察することにより評価する一方、それぞれの溶接継手部位について、溶接金属部の最大厚さ(t1 )や熱影響部(HAZ)の厚さ(t2 )を測定し、また溶接金属部の中心硬さ(Hv1 )や熱影響部(HAZ)の最軟化部硬さ(Hv2 )を、その横断面から、JIS−Z−2244に準拠して、ビッカース硬さ試験機にて、荷重1kgfにて測定し、更に引張試験を行ない、それぞれの継手の伸びについて測定すると共に、破断位置を調べた。
なお、各継手の引張試験は、JIS−Z−2201に規定される5号引張試験片を、その長さ方向が母材の押出方向となるように、且つ試験片の中央部位に溶接金属部が位置するようにして、それぞれの溶接接合体から切り出し、余盛を付けたままにおいて、JIS−Z−2241に準拠して、引張試験を実施した。
また、破断位置の評価においては、破断が、溶接金属部位において発生したか、或いは、溶接金属部位と母材部との境界部位(ボンド部)において発生したか、または、母材部の熱影響部(HAZ)において発生したか、の何れかにおいて、評価した。
そして、上記の試験・評価の結果を、下記表7〜表9に、併せて示した。
Figure 2010279983
Figure 2010279983
Figure 2010279983
かかる表7〜表9の結果から明らかな如く、本発明に従う合金組成の、7000系Al合金からなるAl材料である母材(No.1〜27)を用い、それを、本発明に従う合金組成の溶加材(No.1〜27)にてMIG溶接した、溶接試験1〜27においては、硬さ及び伸び等の物性に優れた溶接継手が得られると共に、割れ感受性にも優れており、しかも、破断位置が熱影響部(HAZ)となって、優れた破断特性を示す溶接継手構造体を得ることが出来ることが認められる。
これに対して、溶接されるAl材料の合金組成が本発明の範囲外となったり(使用母材No.58〜64)、或いは、溶加材を与える合金組成が本発明の範囲外となったり(使用溶加材No.31〜57,65〜72)した場合における、溶接試験31〜72にあっては、伸びが低下したり、溶接金属部の硬さが低くなり過ぎ、また破断位置がボンド部や溶接金属部となったり、割れが発生する等の問題を惹起して、目的とする接合部材としての使用に少なからぬ問題があることが、明らかとなった。なお、溶接試験66〜69及び72においては、それに用いられる溶加材No.66〜69及び72の抽伸加工時に破断が惹起されて、目的とする線径の溶接ワイヤを得ることが出来ず、そのため、それぞれの溶接試験を実施することが出来なかった。
2 Al合金母材
4 溶接金属部

Claims (2)

  1. 質量基準にて、Cu:0.01〜0.50%、Mg:0.5〜2.1%、並びにZn:4.0〜8.5%を含み、残部がAl及び不可避的不純物からなる合金組成を有するAl合金母材を、質量基準にて、Mg:5.5〜8.0%、Cr:0.05〜0.25%、Ti:0.25%以下、Si:0.4%以下、Fe:0.4%以下、Cu:0.1%以下、Zr:0.05%以下、及びZn:0.25%以下を含み、残部がAl及び不可避的不純物からなる合金組成を有するAl合金溶加材を用いて、溶融溶接して得られる溶接継手にして、
    該溶融溶接により形成される溶接金属部の最大厚さをt1 とし、その中心硬さをHv1 とすると共に、前記母材の熱影響部の厚さをt2 とし、更にその最軟化部の硬さをHv2 としたときに、次の関係式:
    1 ×Hv1 ≧1.9×t2 ×Hv2
    Hv1 ≧70
    を満足するように構成したことを特徴とするAl合金溶接継手。
  2. 前記溶加材が、更に、0.5〜1.0質量%のMnを含んでいる請求項1に記載のAl合金溶接継手。
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