JP6847766B2 - アルミニウム合金溶加材、アルミニウム合金の溶接方法及びアルミニウム合金材 - Google Patents
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アルミニウム合金の被溶接材を接合するアルミニウム合金溶加材であって、
前記アルミニウム合金溶加材は、Mg:5.0〜10.0%(mass%、以下同じ。)、B:0.0001〜0.010%、Mn:0.40〜1.5%、Cr:0.050〜0.25%、Si:0.40%以下、Fe:0.40%以下を含み残部Al及び不可避的不純物からなる合金組成を有し、
前記被溶接材は、Mg:5.0〜10.0%、B:0.0001〜0.010%を含む合金組成を有する、
ことを特徴とする。
こととしてもよい。
こととしてもよい。
上記のアルミニウム合金溶加材を使用して、前記被溶接材を溶接する、
ことを特徴とする。
溶接電流が400A〜1200Aの範囲で前記被溶接材をMIG溶接する、
こととしてもよい。
前記アルミニウム合金溶加材と前記被溶接材とのB濃度の和を0.0002〜0.02%とする、
こととしてもよい。
アルミニウム合金溶加材を使用する溶接の被溶接材であるアルミニウム合金材であって、
前記アルミニウム合金溶加材は、Mg:5.0〜10.0%(mass%、以下同じ。)、B:0.0001〜0.010%、Mn:0.40〜1.5%、Cr:0.050〜0.25%、Si:0.40%以下、Fe:0.40%以下を含み残部Al及び不可避的不純物からなる合金組成を有し、
前記アルミニウム合金材は、Mg:5.0〜10.0%、B:0.0001〜0.010%、Si:0.20〜0.40%、Fe:0.10〜0.30%、Cu:0.020〜0.10、Mn:0.60〜1.5%、Cr:0.00〜0.10%、Zn:0.030〜0.25%、Ti:0.010〜0.060%、Zr:0.020〜0.030%を含み残部Al及び不可避的不純物からなる合金組成を有する、
ことを特徴とする。
調質Oにおける引張強さが320MPa以上である、
こととしてもよい。
本発明に係るアルミニウム合金溶加材は、Mg:5.0〜10mass%、B:0.0001〜0.010mass%を含む合金組成を有する。
前記アルミニウム合金溶加材は、さらにMn:0.40〜1.5mass%、Cr:0.050〜0.25mass%、Si:0.40mass%以下、Fe:0.40mass%以下、Zn:0.25mass%以下、Zr:0.050mass%以下、Ti:0.25mass%以下を含んでも良い。
さらに、Cu:0.05〜1.0%を選択的添加元素として含んでも良い。
Mgは、溶接金属の高強度化を図る上において必須の添加元素である。Mgの有効な添加効果を得る上においては、5.0mass%以上の含有量とする必要がある。他方、Mgの含有量が10.0mass%を超えるようになると、ワイヤ製造のためのビレットを鋳造する際に、金属組織中にMg−Si系脆化層が形成されるようになる。そのため、熱間加工、抽伸加工することが困難となって、目的とする直径の溶加材を得ることが出来なくなる。
Bは、特に溶接工程における溶融凝固過程で金属組織の微細化効果を奏する元素である。そのために、0.0001mass%以上の割合で含有せしめる必要がある。他方、Bの含有量が0.010mass%を超えると、金属組織中に粗大な凝集物を生成して、熱間加工、抽伸加工することが困難となって、目的とする直径の溶加材を得ることが出来なくなる。
Mnは、溶接金属の高靭性化に寄与し、溶接継手の曲げ加工性を向上させる成分である。Mnの添加効果を充分に発揮させるためには、0.40mass%以上の割合で含有せしめる必要がある。他方、Mnの含有量が多くなり過ぎると、ワイヤ製造のためのビレット鋳造する際に、粗大なAl−Mn系晶出物が生成して、抽伸加工が困難となる等の問題を惹起するようになる。
Crは、溶接割れ感受性の低減に効果を奏する元素である。Crの有効な添加効果を得るためには、0.050mass%以上の割合で含有せしめる必要がある。他方、Crの含有量が0.25mass%を超えるようになると、ワイヤ製造のためのビレットを鋳造する際に、金属組織中に粗大なAl−Cr系晶出物を生成して、溶加材としてのワイヤを得るための抽伸加工操作が困難となる問題を惹起する。
Tiは、特に鋳造工程における溶融凝固過程で金属組織の微細化効果を奏する元素であり、ビレット鋳造時に添加される場合がある。他方、Tiの含有量が0.25mass%を超えると、金属組織中にAl−Ti系の粗大な晶出物を生成して、抽伸加工操作が困難となる問題を惹起する。したがって、Tiの含有量は0.25%以下に制御されることが望ましい。
Fe:0.40mass%以下
Zn:0.25mass%以下
Zr:0.050mass%以下
Si、Fe、Zn及びZrは、何れも、不純物元素であって、それぞれ、上記で規定される含有量以下となるように制御されることが望ましい。Si含有量が多くなり過ぎると、溶接金属部の溶接割れ感受性が高くなる問題が惹起される。Fe含有量が多くなり過ぎると、ワイヤ製造のためのビレットを鋳造する際に、粗大なAl−Fe系晶出物を生成して、抽伸加工操作が困難となる問題を生じる。Zn含有量が多くなり過ぎると、溶接金属部にMg−Zn系脆化層が形成され、溶接継手部位の特性、中でも強度を低下せしめる問題が生じる。Zr含有量が多くなり過ぎると、巨大晶出物を生成して、抽伸操作が困難となる問題が生じる。
なお、Si、Feについては、通常工業的に用いられるアルミニウム母合金中に一定量含有される元素であり、アルミニウム合金中の含有量を0.01%未満に制御することは製造上工業的ではない。したがって、Si、Feの下限値は通常0.01%程度である。
Cuは、溶接金属の高強度化を図る上において選択的に添加される元素である。Cuの有効な添加効果を得る上においては、0.05mass%以上の含有量とする必要がある。他方、Cuの含有量が1.0mass%を超えるようになると、溶接割れ感受性が高くなる問題が惹起される。
本発明に従う溶加材は、上記した合金成分を有するアルミニウム合金を用いて、常法に従って作製されるものである。一般的には、JIS Z3232に規定される径及び許容差の溶接棒又は電極ワイヤとして、実現されることとなる。
本発明に係る溶加材は、MIG溶接に用いられ、溶接電流が400〜1200Aの溶接条件で溶接することで顕著な効果を有する。溶接時の溶接電流は、被溶接材の厚さと溶接パス数により大凡決まる。厚さ6mmを超える厚板を溶接する際には、低い溶接電流にて多層で溶接される場合が多い。しかしながら、多層溶接では品質管理が難しいことや生産性が低下することから、少ない溶接パス数にて溶接する需要が高まっている。高い溶接電流にて溶接を行う場合には、MgやZn等の元素が蒸発することによる継手強度の低下が課題として存在する。これに対し、本発明に係る溶加材は、溶接電流が400Aを超える場合に生じるMgの蒸発を補うことが出来るため、継手効率を低下させることが無い。また、溶接電流が400A以下の条件で溶接する場合においても、5183合金、5356合金又は5556合金等の従来の溶加材よりも高い継手効率、曲げ加工性が得られる。溶接電流が1200Aを越える溶接条件ではパッカリングが発生するため溶接が不可能である。
本発明に係る溶加材は、Mg:5〜10%を含むアルミニウム合金を溶接する際にその効果を発揮する。従来、Al−Mg系合金として溶接構造体に多く用いられている合金はJIS5083合金であり、その成分範囲はMg:4.0〜4.9mass%、Mn:0.40〜1.0mass%、Si:0.40mass%以下、Fe:0.40mass%以下、Cu:0.10mass%以下、Cr:0.050〜0.25mass%、Zn:0.25mass%以下、Ti:0.15mass%以下、残部Al及び不可避的不純物として規定されている。本発明に係る溶加材が効果を発揮する被溶接材は、前記JIS5083合金よりもMg添加量が高いアルミニウム合金である。したがって、前記アルミニウム合金はJIS5083合金に比べて高強度なAl−Mg系合金材である。添加されるMg量やその他の微量元素によってO材の引張強さ(以下、本明細書では「O材強度」という。)は300MPa〜400MPaの範囲で変化する。本発明に係る溶加材は、前記アルミニウム合金のO材強度範囲を有するAl−Mg系合金に使用して初めてその効果を発揮するものである。
本発明に係る溶加材と被溶接材のB濃度の和は0.0002〜0.02%とすることが望ましい。溶接金属部のB濃度は、溶加材と被溶接材のB濃度によって決まる。溶接金属部の結晶粒を微細化し、溶接継手の曲げ加工性を向上させるためには、溶加材と被溶接材のB濃度の和を0.0002〜0.02%とすると良い。B濃度の和が0.0002%未満であると、溶接金属部の結晶粒が粗大化し溶接継手の曲げ加工性が低下する。B濃度の和が0.02%を超えると、溶接金属部に粗大な凝集物が形成され、溶接継手の曲げ加工性が低下する。
Claims (8)
- アルミニウム合金の被溶接材を接合するアルミニウム合金溶加材であって、
前記アルミニウム合金溶加材は、Mg:5.0〜10.0%(mass%、以下同じ。)、B:0.0001〜0.010%、Mn:0.40〜1.5%、Cr:0.050〜0.25%、Si:0.40%以下、Fe:0.40%以下を含み残部Al及び不可避的不純物からなる合金組成を有し、
前記被溶接材は、Mg:5.0〜10.0%、B:0.0001〜0.010%を含む合金組成を有する、
ことを特徴とするアルミニウム合金溶加材。 - 請求項1に記載のアルミニウム合金溶加材に対して、さらにZn:0.25%以下、Zr:0.050%以下、Ti:0.25%以下からなる群から選択される1種又は2種以上を含む、
ことを特徴とするアルミニウム合金溶加材。 - 請求項1又は2に記載のアルミニウム合金溶加材に対して、さらにCu:0.05〜1.0%を含む、
ことを特徴とするアルミニウム合金溶加材。 - 請求項1〜3のいずれか1項に記載のアルミニウム合金溶加材を使用して、前記被溶接材を溶接する、
ことを特徴とするアルミニウム合金の溶接方法。 - 溶接電流が400A〜1200Aの範囲で前記被溶接材をMIG溶接する、
ことを特徴とする請求項4に記載のアルミニウム合金の溶接方法。 - 前記アルミニウム合金溶加材と前記被溶接材とのB濃度の和を0.0002〜0.02%とする、
ことを特徴とする請求項4又は5に記載のアルミニウム合金の溶接方法。 - アルミニウム合金溶加材を使用する溶接の被溶接材であるアルミニウム合金材であって、
前記アルミニウム合金溶加材は、Mg:5.0〜10.0%(mass%、以下同じ。)、B:0.0001〜0.010%、Mn:0.40〜1.5%、Cr:0.050〜0.25%、Si:0.40%以下、Fe:0.40%以下を含み残部Al及び不可避的不純物からなる合金組成を有し、
前記アルミニウム合金材は、Mg:5.0〜10.0%、B:0.0001〜0.010%、Si:0.20〜0.40%、Fe:0.10〜0.30%、Cu:0.020〜0.10、Mn:0.60〜1.5%、Cr:0.00〜0.10%、Zn:0.030〜0.25%、Ti:0.010〜0.060%、Zr:0.020〜0.030%を含み残部Al及び不可避的不純物からなる合金組成を有する、
ことを特徴とするアルミニウム合金材。 - 調質Oにおける引張強さが320MPa以上である、
ことを特徴とする請求項7に記載のアルミニウム合金材。
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