JP6679296B2 - 高エネルギービーム溶接用Al合金材及びその製造方法 - Google Patents

高エネルギービーム溶接用Al合金材及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、高エネルギービーム溶接用Al合金材であって、特に耐溶接割れ性に優れるAl合金材に関するものである。
近年、輸送材や構造材等の分野において、従来使用されてきたFeやCuをAl合金材に置き換えることによる軽量化の要求が増えてきている。このような材料の置き換えにおいては、各部材に必要とされる強度や耐食性、成形性、接合性などを満たすことが必要で有り、Al合金材に関する種々の検討が成されている。特に、Al合金はFeやCuに比べて熱膨張率が大きく、表面に強固な酸化皮膜を形成するために接合性の向上が重要である。
中、高強度材として一般的に用いられるAl合金として、Al−Mg系合金が知られている。Al−Mg系合金は、Mgの添加量により強度の調整が可能な非熱処理型合金であり、代表的な合金としては、5052や5154、5083などが挙げられる。前記Al合金は、強度や成形性、溶接性などを考慮してMgの添加量が調整され、輸送材や構造材等に用いられている。
また、近年、TIG溶接やMIG溶接に代表される従来の溶接方法に対して、高エネルギービームを使用したレーザ溶接法や電子ビーム溶接法などの接合技術が開発されている。これらの高エネルギービーム溶接は、低歪み、高速度の溶接が可能であることが特徴である。しかしながら、生産性の向上のために高エネルギービームを使用して高速度で溶接を行う場合には、溶融部の急激な凝固を伴うために溶接割れが発生しやすい。特に、1〜3mass%程度のMgを含有するAl−Mg系合金は特に溶接割れが発生し易いことが知られており、充分な注意が必要である。
特許文献1には、所定の組成を有するAl−Mn−Mg合金をパルスレーザ溶接する際において、パルス波形を調整することにより溶接割れを抑制する技術が開示されている。
また、特許文献2には、バスバー用途に使用するAl−Fe系合金に関する技術が提案されている。この特許文献2においては、Feの添加により溶接割れを抑制することが示されている。
特開2011−200915号公報 特開2014−181395号公報
しかしながら、特許文献1に開示されている方法では、使用するAl合金材の組成としてMgが1.2mass%を超える範囲で添加された材料では割れが発生するため、中、高強度なAl合金材に対して、割れの発生を抑制できる材料とは言えないのが現状であった。
また、特許文献2に示すAl−Fe系合金では、Mgの添加により高強度化した材料では効果が確認されていない。また、O材強度が低い材料であるため、溶接継手を作製した際の継手強度が低く、構造材として十分な強度を有していない等の問題がある。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、高エネルギービーム溶接に用いられるAl合金材であって、特に耐溶接割れ性に優れるAl合金材を提供することを目的とする。
本発明者等は鋭意研究を重ねた結果、高エネルギービーム溶接用のAl−Mg系合金の組成を調整することにより、高エネルギービーム溶接における割れの抑制が可能であることを見出して本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は請求項1において、Mg:1.20〜3.30mass%、Fe:0.75〜2.40mass%及びMn:0.20〜1.00mass%を含有し、Si:0.25mass%未満、Cu:0.10mass%未満、Zn:0.10mass%未満にそれぞれ規制し、残部Al及び不可避的不純物からなるAl合金からなり、O材に調質を行った場合における引張強度が125MPa以上であり、当該Al合金中のAl−Fe−Mn系金属化合物の平均粒子径が0.30〜5.00μmであることを特徴とする高エネルギービーム溶接用Al合金材とした。
本発明は請求項2では請求項1において、前記Al合金が、Cr:0.050〜0.350mass%、V:0.050〜0.100mass%及びNi:0.050〜2.000mass%からなる群から選択される1種又は2種以上を更に含有するものとした。
本発明は請求項3では請求項1又は2において、前記Al合金が、Ti:0.0050〜0.3000mass%、ならびに、B:0.00010〜0.05000mass%及びC:0.00010〜0.00200mass%の少なくとも一方を更に含有するものとした。
本発明は請求項4において、請求項1〜3のいずれか一項に記載の高エネルギービーム溶接用Al合金材の製造方法であって、前記Al合金を溶解調整する溶解工程と、前記Al合金を冷却速度10℃/sec〜10℃/secの間で鋳造する鋳造工程と、鋳塊を400〜620℃の温度で4〜10時間加熱処理する均質化処理工程と、均質化処理した鋳塊を開始温度300〜550℃で熱間加工する熱間加工工程とを含むことを特徴とするエネルギービーム溶接用Al合金材の製造方法とした。
本発明に係る高エネルギービーム溶接用Al合金材は、耐溶接割れ性に優れるという格別の効果を奏するものである
以下、本発明に係る交エネルギービーム溶接用Al合金材について詳細を説明する。
1.Al合金組成
まず、本発明に係る高エネルギービーム溶接用Al合金材を構成するアルミニウム合金成分組成について説明する。この合金組成を大きく分類すると、必須元素としてMg、Fe及びMn、制限元素としてSi、Cu及びZn、第一の選択的添加元素としてCr、V及びNi、第二の選択的添加元素としてTi、B及びC、とに分けられる。本発明に係る高エネルギービーム溶接用アルミニウム合金材は、これらの合金成分組成を調整することにより、高エネルギービーム溶接における割れの抑制が可能とする。
1−1.必須元素
Mg:1.20〜3.30mass%
Mgは、材料の高強度化に寄与する必須の添加元素である。Mgの含有量は1.20〜3.30mass%(以下、単に「%」と記す)とする。Mgの含有量が1.20%未満では高強度化に寄与する添加効果を得ることができない。一方、Mgの含有量が3.30%を超えると溶接部内部に残存するブローホールが増加する。その結果、継手強度の低下が生じる。好ましいMgの含有量は、2.00〜3.00%である。
Fe:0.75〜2.40%
Feは、高エネルギービーム溶接において割れの抑制に寄与する成分である。Feの含有量は0.75〜2.40%とする。Feの含有量が0.75%未満では上記効果が十分に得られない。一方、Fe含有量が2.40%を超えると粗大なAl−Fe系金属間化合物が形成されるため加工性が低下すると共に,溶接時の溶融挙動が不安定化する。好ましいFeの含有量は、0.90〜1.80%である。
Mn:0.20〜1.00%
Mnは、材料の高強度化に寄与する添加元素である。Mnの含有量は0.20〜1.00%とする。Mnの含有量が0.20%未満では上記効果が十分に得られない。一方、Mn含有量が1.00%を超えると粗大なAl−Fe−Mn系金属間化合物が形成されるため、加工性が低下すると共に溶接時の溶融挙動が不安定化し、溶け込み深さが不安定化し易い。好ましいMnの含有量は0.3〜0.8%である。
1−2.規制元素
Si:0.25%未満
Siは、高エネルギービーム溶接において、割れの発生を引き起こす成分であるためAl合金中にSiが含有されることは好ましくない。Siの含有量が0.25%以上であると、溶接時に割れが発生し易くなる。従って、Siの含有量を0.25%未満に規制する。Siの含有量は、0.10%未満に規制するのが好ましいが、Siの含有量を極めて低い値で管理することは製造上困難であることから、その下限値は製造上可能な範囲で自ずと決められる。
Cu:0.10%未満
Cuは、高エネルギービーム溶接において、割れの発生を引き起こす成分であるためAl合金中にCuが含有されることは好ましくない。Cuの含有量が0.10%以上であると、溶接時に割れが発生し易くなる。従って、Cuの含有量を0.10%未満に規制する。Cuの含有量は、0.05%未満に規制するのが好ましく、0%が最も好ましい。
Zn:0.10%未満
Znは、高エネルギービーム溶接の際に、割れの発生とイレギュラービードの形成を引き起こす成分であるためAl合金中にZnが含有されることは好ましくない。Znの含有量が0.10%以上になると、溶接割れや溶接ビードの不整を生じ易くなる。従って、Znの含有量を0.10%未満に規制する。Znの含有量は、0.05%未満に規制するのが好ましく、0%が最も好ましい。
1−3.第一の選択的添加元素
Cr:0.050〜0.350%
Crは、結晶粒の微細化、高エネルギービーム溶接における割れの抑制に寄与する成分である。Crの含有量は、0.050〜0.350%とする。Crの含有量が0.050%未満では上記効果が十分に得られない。一方、Crの含有量が0.350%を超えると粗大なAl−Cr系金属間化合物が形成されるため、溶接ビードの不整を生じ易くなる。好ましいCrの含有量は、0.15〜0.30%である。
V:0.050〜0.100%
Vは、高エネルギービーム溶接における割れの抑制に寄与する成分である。Vの含有量は、0.050〜0.100%とする。Vの含有量が0.050%未満では上記効果が十分に得られない。一方、Vの含有量が0.100%を超えると粗大なAl−V系金属間化合物が形成されるため、溶接ビードの不整を生じ易くなる。
Ni:0.050〜2.000%
Niは、高エネルギービーム溶接における割れの抑制に寄与する成分である。Niの含有量は、0.050〜2.000%とする。Niの含有量が0.050%未満では上記効果が十分に得られない。一方、Niの含有量が2.000%を超えると粗大なAl−Ni系、Al−Fe−Ni系金属間化合物が形成されるため、溶接ビードの不整を生じ易くなる。好ましいNiの含有量は、0.500〜1.500%である。
1−4.第二の選択的添加元素
Ti:0.0050〜0.3000%、B:0.00010〜0.05000%、C:0.00010〜0.00200%
Tiはマトリクス中に固溶して強度向上させる他に、層状に分布して板厚方向の腐食の進展を防ぐ効果を発揮する。また、TiとBから形成されるTiB及びTiとCから形成されるTiCは、鋳塊組織の微細化材として作用する。さらに、溶接部の結晶粒の微細化に寄与し、継手強度の向上効果を有する。溶接継手においては、溶接部における溶融凝固の結果加工歪みは消失し、継手強度は調質Oにおける強度に近い値となる。このように、溶接部の結晶粒を微細化することにより、継手強度の向上効果を保障することができる。
本発明では、選択的添加元素として、Ti:0.0050〜0.3000%をB:0.00010〜0.05000%及びC:0.00010〜0.00200%の少なくとも一方と共存させて含有させる。Tiの含有量が0.0050%未満では、上記効果が十分に得られない。一方、0.3000%を超えると粗大凝集物によって溶融挙動が不安定化し、ビードの不整を生じ易くなる。Bの含有量が0.00010%未満では、微細化材の効果が十分に得られない場合がある。一方、0.05000%を超えるとTi−B系化合物(例えば、TiB)の粗大凝集物によって溶融挙動が不安定化し、ビードの不整を生じ易くなる。また、Cの含有量が0.00010%未満では、十分な微細化効果が得られない場合がある。一方、0.00200%を超えるとTi−C系化合物(例えば、TiC)の粗大凝集物により、溶融挙動が不安定化し、ビードの不整を生じ易くなる。
その他の元素:
また、また、本発明に係るAl合金の残部は、Alと不可避的不純物とからなる。ここで、不可避的不純物は、各々が0.050%以下で、かつ、合計で0.150%以下であれば、本発明で得られるAl合金材としての特性を損なうことはない。
2.高エネルギービーム溶接用Al合金材の調質Oにおける引張強度
次に、本発明に係る高エネルギービーム溶接用Al合金材の調質Oにおける強度について説明する。
高エネルギービーム溶接用Al合金材は、O材に調質を行った場合において125MPa以上の引張強度を有するものとする。溶接継手においては、溶接部及び熱影響部における加工歪みが消失するため、継手強度は調質Oにおける強度に近い値となる。したがって、調質Oにおける引張強度を125MPa以上とすることにより、構造材としての最低限の強度を保障することが出来る。この調質Oにおける引張強度は170MPa以上であることが好ましい。なお、調質Oにおける引張強度の上限値は、Al合金組成や製造工程に拠って決まるが、本発明では、300MPaである。
3.Al−Fe−Mn系金属間化合物の平均粒子径
次に、本発明に係る高エネルギービーム溶接用Al合金材のAl−Fe−Mn系金属間化合物の平均粒子径について説明する。
高エネルギービーム溶接用Al合金材は、金属組織中に存在するAl−Fe−Mn系金属間化合物の平均粒子径が0.30〜5.00μmとする。Al−Fe−Mn系金属間化合物は、高エネルギービーム溶接における溶融挙動に影響を与え、合金中に存在するAl−Fe−Mn系金属間化合物の平均粒子径が0.30〜5.00μmである時に溶接深さ安定性が優れる。前記Al−Fe−Mn系金属間化合物の平均粒子径が0.30μm未満であると、溶接深さ安定性に与える効果が十分ではない。一方、前記Al−Fe−Mn系金属間化合物の平均粒子径が5.00μmを超えると、溶接深さ安定性は悪化することに加え、イレギュラービードが発生する。好ましいAl−Fe−Mn系金属間化合物の平均粒子径は、1.00〜5.00μmである。
4.高エネルギービーム溶接用Al合金材の製造方法
次に、本発明に係る高エネルギービーム溶接用Al合金材の製造工程について詳述する。本発明に係る高エネルギービーム溶接用Al合金材の製造方法は、基本的には、圧延、押出及び鍛造といったAl合金展伸材の常法に従って製造することができるが、その製造工程のうちの溶解・鋳造工程において所定の合金組成に調整することによって、優れた耐溶接割れ性を付与することが可能となる。
圧延・押出・鍛造といったAl合金展伸材に共通して行われる製造方法について説明する。高エネルギービーム溶接用Al合金材の製造方法は、Al合金溶湯を本発明に係るAl合金の成分範囲内に溶解調整する溶解工程と;溶解調整された溶湯を鋳造して鋳塊を得る鋳造工程と;鋳塊を特定条件で保持する均質化処理工程と;均質化処理した鋳塊を特定の条件で熱間加工する熱間加工工程と;必要に応じて熱間加工材を特定の条件で冷間加工する冷間加工工程と;必要に応じて焼鈍処理工程と;を備える。
4−1.溶解工程
溶解工程としては、Al合金溶湯を本発明に係るAl合金の成分範囲内に溶解調整を行い、当該Al合金溶湯に対して、脱ガス処理や不純物を除去するための濾過処理などを行う。
4−2.鋳造工程
鋳造工程としては、半連続鋳造法(DC鋳造法またはホットトップ鋳造法)又は連続鋳造法(CC鋳造法)によって鋳塊(スラブ)に製造する。Al−Fe−Mn系金属間化合物の平均結晶粒径を制御するため、鋳造時の冷却速度を10〜10℃/secの範囲とするのが好ましい。冷却速度が10℃/sec未満では、Al−Fe−Mn系金属間化合物の平均粒子径が5.00μmを超える虞がある。一方で、冷却速度が10℃/secを超えると、Al−Fe−Mn系金属間化合物が十分に成長しない。また、鋳造に使用する原料として、溶接用構造材として一般的に使用されている5052や5154などのスクラップを多く使用してもよい。鋳造後には、引き続き行われる熱間加工に備えて、必要に応じて鋳塊表面の鋳肌を削り取る面削を行ってもよく、面削は後述する均質化処理後に行ってもよい。
4−3.均質化処理工程
均質化処理工程としては、通常、Al合金の鋳造の凝固時に形成される凝固組織に特徴的な濃度偏析を解消して均一化させるために均質化処理が施される。均質化処理温度は400〜620℃である。均質化処理温度が400℃未満であると充分な均質化効果が得られず、Al−Fe−Mn系金属間化合物の平均粒子径が0.30μm未満となる虞がある。一方、均質化処理温度が620℃を超えると鋳塊が溶融する恐れがあるため好ましくない。また、処理時間は4〜10時間である。処理時間が4時間未満であると充分な均質化効果が得られず、Al−Fe−Mn系金属間化合物の平均粒子径が0.30μm未満となる虞がある。一方、処理時間が10時間を超えると生産性が低下する。
4−4熱間加工工程
熱間加工としては、板を製造する場合は熱間圧延により行い、管や棒などを製造する場合は熱間押出により行い、その他の形状に加工する場合は熱間鍛造により行うことができる。本発明の実施形態に係るAl合金はいずれの熱間加工も行うことができ、またその加工条件は、最終製品の特性に影響しないため、熱間加工条件は素材の熱間加工性を考慮して、本発明の効果を奏する範囲で適宜選択される。本発明の効果を奏する範囲においては、熱間加工開始温度は300〜550℃である。熱間加工開始温度が300℃未満であると加工が困難となることに加え、Al−Fe−Mn系金属間化合物が十分に成長せず、平均粒子径が0.30μm未満となる虞がある。一方、熱間加工開始温度が550℃を超えると溶融する虞がある。
4−5.冷間加工工程
最終製品の形状及び強度に精度良く仕上げるため、熱間加工の後、冷間加工を行ってもよい。冷間加工は、板を製造する場合は冷間圧延、管や棒などを製造する場合は冷間引抜き、その他の形状に加工する場合は冷間鍛造によって行う。冷間加工工程を実施する場合には、最終的な特性に影響しないため、本発明の効果を奏する範囲で適宜選択される。本発明の効果を奏する範囲においては、冷間加工工程における加工率は、20〜70%である。冷間加工率が20%未満であると充分な加工硬化が起こらないため冷間加工の必要性が無くなる。一方、70%を超えると加工硬化により冷間加工性が低下し、割れが生じる虞がある。
3−6.焼鈍工程
良好な冷間加工性を保持するために、冷間加工の前、途中及び後の少なくともいずれかにおいて、焼鈍を施してもよい。焼鈍を実施する場合には、最終的な特性に影響しないため、本発明の効果を奏する範囲で適宜選択される。本発明の効果を奏する範囲においては、焼鈍の温度を300〜500℃とするのが好ましい。焼鈍温度が300℃未満であると焼鈍効果が十分ではない。一方、焼鈍温度が500℃を超えると結晶粒成長が促進され、粗大な結晶粒を形成する虞がある。また、処理時間は0.5〜8時間である。処理時間が0.5時間未満であると充分な焼鈍効果が得られなくなる、一方、処理時間が8時間を超えると生産性が低下する。
4.高エネルギービームによる溶接
従来の溶接手法であるアーク溶接においては、溶接割れを抑制するために、溶加材を用いて溶接部の成分を調整する。一方で、高エネルギービーム溶接は高速度で溶接が可能であり生産性が高いという利点があるため、生産性の低下を招く溶加材の使用を行わない場合が多い。また、高エネルギービーム溶接では、溶融部が凝固する際の冷却速度が大きいため、溶接部における歪み速度は大きくなる。したがって、生産性の向上を図って高エネルギービーム溶接を適用した場合には、従来の溶接手法を用いるよりも溶接割れが発生し易くなる。本発明に係る高エネルギービーム溶接用Al合金材は、合金成分組成を調整することにより、前記高エネルギービームによる溶接において優れた耐溶接割れ性を示す。
溶接に使用する高エネルギービームとしては、電子ビームやレーザビームなどが選択可能である。また、前記ビームの波形は、連続波やパルス波などが用いられる。溶接に用いられる出力は60kW以下である場合が多く、溶接速度は1mm/s〜1000mm/sの間で適宜選択される。本発明に係る高エネルギービーム溶接用Al合金材を接合する相手部材の合金としては、同一の合金組成を有するAl合金展伸材を使用することが好ましいが、他の合金組成を有するAl合金展伸材、銅及び銅合金、鋼材なども適用できる。
以下に、本発明の実施例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
まず、表1及び表2に示す成分組成であり、板厚3mmのAl合金熱間圧延板を、表3に示す条件で溶解鋳造、均質化処理、熱間加工を施すことにより製造した。製造した合金番号と製造条件の組合せは表4、表5の通りである。なお溶解鋳造には、常法の半連続鋳造法(DC鋳造)を用いた。
Figure 0006679296
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その後、冷間圧延工程にかけ、板厚1mmの冷間圧延板を得た。冷間圧延工程では、加工率(圧下率)を33%とした。更にこの冷間圧延板を390℃で4時間の条件で最終焼鈍を行い、高エネルギービーム溶接用Al合金材試料とした。なお、上記で作製した試料は全てO材である。
上記試料について以下の評価を行った。
〔引張強度〕
上記で作製したAl合金板の引張強度を測定した。引張強度はJIS Z 2201で規定されるJIS5号試験片を試料から切り出し、JIS Z 2241準拠による引張試験により測定した。結果を表4及び5に示す。
〔溶接割れ〕
板厚1.0mmを有する上記試料であるAl合金板を2枚用いて、レーザによる突合せ溶接を実施し、溶接割れの評価を行った。レーザ照射条件は、出力が2000W、速度が20m/minの連続波とし、溶接長は100mmとした。評価基準としては、溶接後の断面を観察し、溶接部表面及び断面に割れが無いものを「○」、溶接部断面のみに割れが存在するものを「△」、断面及び表面に割れが存在するものを「×」として評価を行った。結果を表4及び5に示す。
〔イレギュラービード〕
板厚1.5mmを有する上記試料であるAl合金板を2枚用いて、レーザ出力を2000Wとして、溶接速度を15m/minの連続波条件でビードオンプレート(BOP)溶接を1000mm施し、形成された溶接ビードの形状を測定し、イレギュラービードについて評価を行った。評価基準としては、ビード幅の最大値と最小値の差がビード算術平均幅に対して10%未満の場合に「○」、10〜15%の場合に「△」、15%以上の場合に「×」として評価した。結果を表4及び5に示す。
〔ブローホール〕
前記イレギュラービードの評価を行った試料に対し、X線透過像観察を行い、ブローホールの評価を行った。評価基準としては、溶接ビード1000mmを観察し、ブローホールが0.3個/mm未満の場合に「○」、0.3〜0.6個/mmの場合に「△」、0.6個/mmを超える場合に「×」として評価した。結果を表4及び5に示す。
〔溶接部の結晶粒径〕
前記イレギュラービード評価試験と同条件にてレーザ溶接を行った上記試料に対して、任意断面を光学顕微鏡にて観察し、これを画像解析ソフトによって解析することにより溶接部における平均結晶粒サイズを求めた。評価基準としては、平均結晶粒サイズが円相当直径で50μm未満のものを「◎」、50μm〜150μmのものを「○」、150μmを超えるものを「×」とした。結果を表4及び5に示す。
〔Al−Fe−Mn系金属間化合物の平均粒子径〕
最終焼鈍後の上記試料を用いて、任意断面についてSEMを用いたEDXにより分析を行い、Al−Fe−Mn系の金属間化合物のみを選択して画像解析を行った。結果を表4及び5に示す。
〔溶け込み安定性〕
前記イレギュラービード評価試験と同条件にてレーザ溶接を行った上記試料に対して、溶接長さ方向に15mm間隔で50断面を切り出し、光学顕微鏡にて溶け込み深さを測定した。評価基準としては、前記50断面の溶け込み深さより標準偏差を計算し、標準偏差が50μm以下であるものを「○」、50μmを超えて70μm未満のものを「△」、前記標準偏差が70μm以上のものを「×」とした。結果を表4及び5に示す。
表4、5に示すように、発明例1〜34では、溶接割れ、イレギュラービード、ブローホール、熱影響部の結晶粒径、Al−Fe−Mn系金属間化合物の平均粒子径及び溶け込み安定性が優良であり、引張強度に優れる高エネルギービーム溶接用Al合金材が得られた。これに対して比較例35〜62では、何れも、本発明の規定外の構成要件を含んでいた。
比較例35では、鋳造時の冷却速度が高過ぎたため、Al−Fe−Mn系金属間化合物の平均粒子径が小さく、溶け込み深さのばらつきが大きくなり安定性に欠けた。
比較例36では、均質化温度が低過ぎたため、Al−Fe−Mn系金属間化合物の平均粒子径が小さく、溶け込み深さのばらつきが大きくなり安定性に欠けた。
比較例37、42、46では、均質化処理温度が高過ぎたために鋳塊が溶融し、製造が出来なかった。
比較例38では、均質化処理時間が短すぎたため、Al−Fe−Mn系金属間化合物の平均粒子径が小さく、溶け込み深さのばらつきが大きくなり安定性に欠けた。
比較例39、43、47では、熱間圧延の開始温度が低過ぎたため、熱間加工の過程で割れが発生し製造が出来なかった。
比較例40、44、48では、熱間圧延の開始温度が高過ぎたため、鋳塊が溶融し、製造が出来なかった。
比較例41、45では、鋳造時の冷却速度が低過ぎたため、Al−Fe−Mn系金属間化合物の平均粒子径が大きく、溶け込み深さのバラつきが大きくなり安定性に欠けた。
比較例49では、Mgの含有量が多過ぎたために、溶接部に多数のブローホールが発生した。
比較例50では、Mgの含有量が少な過ぎたために、調質Oにおける引張強度が不足した。
比較例51では、Feの含有量が多過ぎたために、粗大なAl−Fe系金属間化合物が形成されるため、加工性が低下すると共に溶接時の溶融挙動が不安定となった。その結果、溶接時にイレギュラービードが発生した。
比較例52では、Feの含有量が少な過ぎたために、割れの抑制効果が不足となった。その結果、溶接部断面及び表面に割れが発生した。
比較例53では、Mnの含有量が多過ぎたためにAl−Fe−Mn系金属間化合物の平均粒子径が大きく、溶け込み深さのばらつきが大きくなり安定性にかけた。
比較例54では、Mnの含有量が少な過ぎたために、Al−Fe−Mn系金属間化合物の平均粒子径が小さく、溶け込み深さのばらつきが大きくなり安定性にかけた。
比較例55では、Siの含有量が多過ぎたために溶接部断面及び表面に割れが発生し、継手効率が低下した。
比較例56では、Cuの含有量が多過ぎたために溶接部断面及び表面に割れが発生し、継手効率が低下した。
比較例57では、Znの含有量が多過ぎたために、溶接部断面及び表面に割れが発生し、また、溶接時にイレギュラービードが発生し、継手効率が低下した。
比較例58では、Crの含有量が多過ぎたために、粗大なAl−Cr系金属間化合物が形成されるため、溶接ビードの不整が生じた。その結果、溶接時にイレギュラービードが発生した。
比較例59では、Vの含有量が多過ぎたために、粗大なAl−V系金属間化合物が形成されるため、溶接ビードの不整が生じた。その結果、溶接時にイレギュラービードが発生した。
比較例60では、Niの含有量が多過ぎたために、粗大なAl−Ni系、Al−Fe−Ni系金属間化合物が形成されるため、溶接ビードの不整が生じた。その結果、溶接時にイレギュラービードが発生した。
比較例61では、Ti及びBの含有量が多過ぎたために、粗大なTi−B系の凝集物が形成されるため、溶接ビードの不整が生じた。その結果、溶接時にイレギュラービードが発生した。
比較例62では、Ti及びCの含有量が多過ぎたために、粗大なTi−C系の凝集物が形成されるため、溶接ビードの不整が生じた。その結果、溶接時にイレギュラービードが発生した。
本発明は、高エネルギービーム溶接において耐溶接割れ性に優れるAl合金を提供することができ、その産業上の利用可能性に優れる。

Claims (4)

  1. Mg:1.20〜3.30mass%、Fe:0.75〜2.40mass%及びMn:0.20〜1.00mass%を含有し、Si:0.25mass%未満、Cu:0.10mass%未満、Zn:0.10mass%未満にそれぞれ規制し、残部Al及び不可避的不純物からなるAl合金からなり、O材に調質を行った場合における引張強度が125MPa以上であり、当該Al合金中のAl−Fe−Mn系金属間化合物の平均粒子径が0.30〜5.00μmであることを特徴とする高エネルギービーム溶接用Al合金材。
  2. 前記Al合金が、Cr:0.050〜0.350mass%、V:0.050〜0.100mass%及びNi:0.050〜2.000mass%からなる群から選択される1種又は2種以上を更に含有する、請求項1に記載のAl合金材
  3. 前記Al合金が、Ti:0.0050〜0.3000mass%、ならびに、B:0.00010〜0.05000mass%及びC:0.00010〜0.00200mass%の少なくとも一方を更に含有する、請求項1又は2に記載のAl合金材
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の高エネルギービーム溶接用Al合金材の製造方法であって、前記Al合金を溶解調整する溶解工程と、前記Al合金を冷却速度10℃/sec〜10℃/secの間で鋳造する鋳造工程と、鋳塊を400〜620℃の温度で4〜10時間加熱処理する均質化処理工程と、均質化処理した鋳塊を開始温度300〜550℃で熱間加工する熱間加工工程とを含むことを特徴とするエネルギービーム溶接用Al合金材の製造方法。
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