JP2010278090A - 電磁波吸収フィルム - Google Patents
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Abstract
【解決手段】プラスチックフィルム10aと、その少なくとも一面に設けた磁性金属薄膜11aとを有する磁性複合フィルム1a、及びプラスチックフィルム10bと、その少なくとも一面に設けた非磁性金属薄膜11bとを有する非磁性複合フィルム1bを積層してなり、磁性金属薄膜11a及び非磁性金属薄膜11bの少なくとも一方に、多数の実質的に平行で断続的な線状痕が少なくとも一方向に不規則に形成されている電磁波吸収フィルム。
【選択図】図1(a)
Description
(1) 第一の電磁波吸収フィルム
図1(a)〜図1(e)は、第一の電磁波吸収フィルムの一例を示す。この電磁波吸収フィルムでは、プラスチックフィルム10aの一面に磁性金属薄膜11aが形成された磁性複合フィルム1aと、プラスチックフィルム10bの一面に非磁性金属薄膜11bが形成された非磁性複合フィルム1bとを、接着層14を介して積層してなり、磁性金属薄膜11a及び非磁性金属薄膜11bの全面に多数の実質的に平行で断続的な線状痕12が不規則に形成されている。
プラスチックフィルム10a,10bを形成する樹脂は、絶縁性とともに十分な強度、可撓性及び加工性を有する限り特に制限されず、例えばポリエステル(ポリエチレンテレフタレート等)、ポリアリーレンサルファイド(ポリフェニレンサルファイド等)、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ポリスチレン、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)等が挙げられる。プラスチックフィルム10a,10bの厚さは10〜100μm程度で良い。
磁性金属薄膜11aを形成する磁性金属は特に限定されないが、耐食性及びコストの観点からニッケル、コバルト又はこれらの合金が好ましく、ニッケルがより好ましい。磁性金属薄膜11aの厚さは0.01μm以上が好ましい。厚さの上限は特に限定的でないが、実用的には10μm程度で十分である。勿論、10μm超の磁性金属薄膜11aを用いても良いが、高周波数の電磁波ノイズの吸収能はほとんど変わらない。安価に製造するためには、磁性金属薄膜11aの厚さは0.01〜5μmが好ましい。
非磁性金属薄膜11bを形成する非磁性金属は特に限定されないが、耐食性及びコストの観点から銅、銀、アルミニウム又はこれらの合金が好ましく、アルミニウムがより好ましい。非磁性金属薄膜11bの厚さは上記と同じでよい。
顕微鏡写真を図式化した図1(c)及び図1(d)から明らかなように、金属薄膜11a,11bに多数の実質的に平行で断続的な線状痕12が直交するように形成されている。なお説明のために、図1(d)では、一方向の線状痕12について、その配向方向に対して直角に切った切り口のみを示し、線状痕12の深さを実際より誇張している。線状痕12の長さ、幅及び間隔は不規則であり、非常に細い線状痕から非常に太い線状痕まで、種々の間隔で不規則に配列している。図1(d)及び図1(e)に示すように、線状痕12には、金属薄膜11a,11bを貫通して非導通部121を形成しているものと、貫通していないが比較的深く設けられて高抵抗部122を形成しているものとがある。図1(e)に示すように、線状高抵抗部122の底部は、金属薄膜11a(11b)の厚さT1の少なくとも約50%に相当する深さT2に達しているのが好ましく、約70%に相当する深さT3に達しているのがより好ましい。この例では線状非導通部121及び線状高抵抗部122の両方が形成されているが、これらのうちの一方のみが形成されていてもよい。すなわち、線状非導通部121及び/又は線状高抵抗部122により隔てられた不定形導体が不規則に接続していると見ることができる。図1(c)は不定形導体の接続部の一例(G)を示す。このような不定形導体の不規則な接続により、種々の周波数の電磁波ノイズを効率良く吸収することができる。
図3(a)及び図3(b)は第一の電磁波吸収フィルムのさらに別の例を示す。この例では、金属薄膜11aに線状痕12の他に、多数の微細穴13がランダムに設けられている。図示の例では微細穴13は金属薄膜11aを貫通しているが、微細穴13は必ずしも金属薄膜11aを貫通していなくてもよい。微細穴13は、線状痕12の場合と同様に表面に高硬度微粒子を有するパターンロールを金属薄膜11aに押圧することにより形成される。貫通穴を形成するためには、高硬度微粒子の平均直径は金属薄膜11aの厚さの約2倍以上ある必要があり、実用的には高硬度微粒子の平均直径は金属薄膜11aの厚さより十分に大きい。微細穴13は、金属薄膜11a,11bの一方にあってもよいし、これらの両方にあってもよい。
接着層14としては、シーラントフィルム(ポリエチレンフィルム等)、合成樹脂コンパウンド、ホットメルト接着剤等が挙げられる。
電磁波ノイズの吸収能をさらに向上するために、電磁波吸収フィルム1に円錐状、球面状等の多数のエンボスを施しても良い。エンボスの直径及び深さはそれぞれ100μm以上が好ましく、150〜250μmがより好ましい。エンボスの面積率は20〜60%が好ましい。
図4は、本発明の第二の電磁波吸収フィルムの一例を示す。この電磁波吸収フィルムでは、プラスチックフィルム10の一面に磁性金属薄膜11aが形成されているとともに、他面に非磁性金属薄膜11bが形成されており、磁性金属薄膜11a及び非磁性金属薄膜11bの少なくとも一方の全面に多数の実質的に平行で断続的な線状痕12が不規則に形成されている以外、図1(a)〜図1(f)に示す電磁波吸収フィルム1と同じである。第二の電磁波吸収フィルムも、微細穴13及びエンボスを有してもよい。これらは第一の電磁波吸収フィルムについて説明したものと同じで良い。
(1) 第一の電磁波吸収フィルムの製造方法
第一の電磁波吸収フィルム1は、プラスチックフィルム10a,10bの一面に蒸着法、めっき法又は箔接合法により磁性金属薄膜11a,非磁性金属薄膜11bをそれぞれ形成し、得られた磁性複合フィルム1a及び非磁性複合フィルム1bの少なくとも一方について、金属薄膜の側を多数の高硬度の微粒子を表面に有するパターンロールに摺接させることにより、多数の実質的に平行な線状痕12を形成した後、複合フィルム1a,1bを、接着層14を介して積層することにより製造する。
磁性金属及び非磁性金属の蒸着は、例えば真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理蒸着法、プラズマCVD法、熱CVD法、光CVD法等の化学気相蒸着法等により行うことができる。
(i) 線状痕形成装置
図1(c)及び図2(a)〜図2(c)に示すような複数方向に配向する線状痕12は、プラスチックフィルム10a,10bに形成した金属薄膜11a,11bに、多数の高硬度の微粒子を表面に有し、軸線方向が異なる複数のパターンロールを摺接させる装置を用いて形成することができる。
線状痕の傾斜角及び交差角だけでなく、それらの深さ、幅、長さ及び間隔を決める運転条件としては、複合フィルムの走行速度、パターンロールの回転速度及び傾斜角θ2、複合フィルムの張力(押えロールの縦方向位置、パターンロールからの距離、及びパターンロールからの傾斜角θ3等により決まる。)等である。複合フィルムの走行速度は5〜200 m/分が好ましく、パターンロールの回転速度(周速)は10〜2,000 m/分が好ましい。傾斜角θ2は20°〜60°が好ましく、特に約45°が好ましい。複合フィルムの張力は0.05〜5kgf/cm幅が好ましい。
線状痕形成装置に使用するパターンロールは、特開2002-59487号に記載されているダイヤモンドロールが好ましい。線状痕の幅は微粒子の粒径により決まるので、ダイヤモンド微粒子の90%以上は1〜1,000μmの範囲内の粒径を有するのが好ましく、10〜200μmの範囲内の粒径がより好ましい。ダイヤモンド微粒子はロール面に50%以上の面積率で付着しているのが好ましい。
特許第2063411号等に記載の方法により金属薄膜11a(11b)に多数の微細穴13を形成することができる。例えば、鋭い角部を有するモース硬度5以上の多数の微粒子が表面に付着した第一ロール(上記線状痕形成用ロールと同じで良い)と、第一ロールに押圧された平滑な第二ロールとの間隙に、金属薄膜11a(11b)を第一ロールの側にして、複合フィルム1a(1b)を通過させる。微細穴13の平均開口径、平均面積率及び深さは、第一ロールの微粒子の粒径及び面積率並びに押圧力等により調整できる。
少なくとも一方が線状痕12を有し、必要に応じて微細穴13を形成した磁性複合フィルム1a及び非磁性複合フィルム1bを、接着層14を介して積層する。
上記積層工程(d)の後、円錐状、球面状等の多数の突起を有するロール等を用いてエンボス加工する。
第二の電磁波吸収フィルム1用の複合フィルムは、プラスチックフィルム10の一面に蒸着法、めっき法又は箔接合法により磁性金属薄膜11aを形成し、他面に蒸着法、めっき法又は箔接合法により非磁性金属薄膜11bを形成することにより得られる。線状痕12及び微細穴13の形成方法自体は第一の電磁波吸収フィルムの場合と同じである。必要に応じて、プラスチックフィルムを熱ラミネート法等で金属薄膜11a,11bに接着することにより、プラスチック保護層を形成することができる。
電磁波吸収フィルム表面での電磁波ノイズの反射係数Sは、式:S=(R−Z)/(R+Z)[ただしZは入射する電磁波ノイズの特性インピーダンス(Ω)であり、Rは電磁波吸収フィルムの表面抵抗(Ω/□)である]により表されるので、RをZに等しくすると、反射係数Sが0となり、理論上反射波が生じない。ただし近傍界[放射源の近傍で、一般的に式:d0≦λ0/(2π)(d0は放射源から電磁波吸収フィルムまでの距離であり、λ0は電磁波ノイズの波長である)で表される領域]ではZがd0に応じて大きく変化し、遠方界[放射源から十分に遠く、一般的に式:d0>λ0/(2π)(d0及びλ0は各々上記と同じである)で表される領域]では、Zが自由空間の特性インピーダンスとほぼ同じである。そのため電磁波吸収フィルムを近傍界に配置する場合、RがZに近くなるように、Zに応じてRを調整すればよく、遠方界に配置する場合、Rを自由空間の特性インピーダンス(377Ω)に近いレベルにすればよい。具体的には、電磁波吸収フィルムを近傍界に配置する場合、磁性金属薄膜の表面抵抗(シート抵抗)を1〜377Ω/□とし、非磁性金属薄膜の表面抵抗を377〜10,000Ω/□とするのが好ましく、これにより電界及び磁界の両方を効率的に吸収することができる。磁性金属薄膜の表面抵抗は5〜377Ω/□がより好ましく、非磁性金属薄膜の表面抵抗は377〜7,000Ω/□がより好ましい。表面抵抗は直流二端子法で測定する。表面抵抗は、金属薄膜11a,11bの材料、厚さ、線状痕12の幅、間隔及び長さを選択することにより調整することができる。
このような特徴を有する本発明の電磁波吸収フィルムは、携帯電話、パーソナルコンピュータ、テレビ等の電子機器や通信機器;ICタグ、非接触ICカード等を用いるRFID(Radio Frequency Identification)システム;無線LANシステム等における電磁波ノイズの漏洩及び進入の防止や、情報の漏洩防止等に適しており、電子・通信機器の筺体、建築物の壁等に配置することができる。
(1) 複合フィルムの作製
二軸延伸PETフィルム[厚さ:16μm、誘電率:3.2(1 MHz)、誘電正接:1.0%(1 MHz)、融点:265℃、ガラス転移温度:75℃]の一面に、真空蒸着法により厚さ30 nmのニッケル層を形成し、磁性複合フィルムを作製した。厚さ12μmの二軸延伸PETフィルムの一面に、真空蒸着法により厚さ50 nmのアルミニウム層を形成し、非磁性複合フィルムを作製した。
図10に示す装置を用い、粒径の分布が50〜80μmのダイヤモンド微粒子を電着したパターンロール42に、ニッケル層をパターンロール42の側にして磁性複合フィルム1aを摺接させ、図2(d)に示す一方向に配向する線状痕を形成した。複合フィルム1aの周速を10 m/分とし、パターンロール2の周速を200 m/分とし、複合フィルム1aに掛ける張力を0.1 kgf/cm幅とし、フィルムの巻回角度θ1を30°とした。得られたフィルムの線状痕の幅は0.5〜5μmの範囲であり、線状痕の平均幅は2μmであり、線状痕の間隔は2〜10μmの範囲であり、線状痕の平均間隔は5μmであり、線状痕の平均長さは5mmであった。
表面抵抗を直流二端子法で測定した。図11に示すように、線状痕を形成した磁性複合フィルム1aを15 cm×15 cmにカットした試験片の線状痕と直交する方向の両端部に、4個ずつ銅電極(長さ3cm×幅1cm)6を配置し、対向する四対の電極6,6間の抵抗値を測定し、平均することにより、線状痕と直交する方向の表面抵抗を求めた結果、30Ω/□であった。これと同様にして、線状痕を形成した非磁性複合フィルム1bの表面抵抗を求めた結果、6,000Ω/□であった。
線状痕を形成した磁性複合フィルム及び非磁性複合フィルムを、ニッケル層及びアルミニウム層が対向するように接合し、図1(a)に示す電磁波吸収フィルムを作製した。
電磁波吸収フィルムの電磁波ノイズの吸収能を以下の方法により評価した。図12に示すように、裏面を接地した誘電基板71上に形成したマイクロストリップライン(80×50 mm)7と、その両端を同軸ケーブル81,81で接続したネットワークアナライザ8とを有する装置を用い、マイクロストリップライン7上に電磁波吸収フィルム(80×50 mm)1を配置し、ネットワークアナライザ8から0.3〜12 GHzの周波数の信号をマイクロストリップライン7に入射し、反射量[S11(dB)]及び透過量[S21(dB)]を測定し、式:RTP=-10 log{10S21/10/(1-10S11/10)}に従い、伝送減衰率RTP(dB)を求めた。結果を図13に示す。
厚さ16μmの二軸延伸PETフィルムの一面に、真空蒸着法により厚さ50 nmのニッケル層を形成し、磁性複合フィルムを作製した。磁性複合フィルムの表面抵抗は10Ω/□であった。
1a',1b'・・・線状痕付きの複合フィルム
10,10a,10b・・・プラスチックフィルム
11a,11b・・・金属薄膜
12,12a,12a',12b,12b',12c,12’・・・線状痕
121・・・非導通部
122・・・高抵抗部
12A,12B・・・線状痕群
13・・・微細穴
14・・・接着層
2a,2b,2c,2d,32b,32c,33b,42・・・パターンロール
3a,3b,3c,3d,30b,43・・・押えロール
4a,4b,4c,4d,44a,44b・・・電気抵抗測定手段(ロール)
40・・・絶縁部
41・・・電極
5a,5b,35a・・・バックアップロール
21,24・・・リール
22,23・・・ガイドロール
Claims (5)
- プラスチックフィルムと、その少なくとも一面に設けた磁性金属薄膜とを有する磁性複合フィルム、及びプラスチックフィルムと、その少なくとも一面に設けた非磁性金属薄膜とを有する非磁性複合フィルムを積層してなり、前記磁性金属薄膜及び前記非磁性金属薄膜の少なくとも一方に、多数の実質的に平行で断続的な線状痕が少なくとも一方向に不規則に形成されていることを特徴とする電磁波吸収フィルム。
- プラスチックフィルムと、その一面に設けた磁性金属薄膜と、他面に設けた非磁性金属薄膜とを有し、前記磁性金属薄膜及び前記非磁性金属薄膜の少なくとも一方に、多数の実質的に平行で断続的な線状痕が少なくとも一方向に不規則に形成されていることを特徴とする電磁波吸収フィルム。
- 請求項1又は2に記載の電磁波吸収フィルムにおいて、前記磁性金属がニッケルであり、前記非磁性金属がアルミニウムであり、少なくとも前記非磁性金属薄膜に前記線状痕が形成されていることを特徴とする電磁波吸収フィルム。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の電磁波吸収フィルムにおいて、前記線状痕は1〜100μmの平均幅及び1〜100μmの平均間隔を有し、前記線状痕の90%以上が0.1〜1,000μmの範囲内の幅を有することを特徴とする電磁波吸収フィルム。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の電磁波吸収フィルムにおいて、前記磁性金属薄膜の表面抵抗が1〜377Ω/□であり、前記非磁性金属薄膜の表面抵抗が377〜10,000Ω/□であることを特徴とする電磁波吸収フィルム。
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