JP7423172B1 - 電磁波吸収フィルム及びその製造装置、並びにかかる電磁波吸収フィルムを有する近傍界電磁波吸収体 - Google Patents

電磁波吸収フィルム及びその製造装置、並びにかかる電磁波吸収フィルムを有する近傍界電磁波吸収体 Download PDF

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Abstract

【課題】 100 MHz乃至5 GHzと広範な周波数範囲において高い放射ノイズ吸収能を有し、グランドを接続することなく使用できる電磁波吸収フィルム及び近傍界電磁波吸収体、並びに電磁波吸収フィルムの製造装置を提供する。【解決手段】 プラスチックフィルムと、その一面に形成された金属薄膜とを有し、前記金属薄膜は不規則な幅及び間隔で二方向に形成された実質的に平行な多数の線状痕を有するとともに、各方向において前記線状痕が高密度に形成された領域と前記線状痕が低密度に形成された領域とを交互に有し、両方向の線状痕の交差により前記高密度領域が格子状になっている電磁波吸収フィルム。【選択図】図4

Description

本発明は、例えば100 MHz乃至5 GHzと広範な周波数範囲において高い放射ノイズ吸収能を有し、グランドを接続することなく使用できる電磁波吸収フィルム及び近傍界電磁波吸収体、並びにかかる電磁波吸収フィルムを製造する装置に関する。
各種の通信機器や電子機器において電子部品から放出された電磁波ノイズによる誤動作等を防止するために、種々の電磁波吸収体が実用化されている。このような状況下で、本発明者は、特許第4685977号(特許文献1)により、プラスチックフィルムと、その少なくとも一面に設けた単層又は多層の金属薄膜とを有し、前記金属薄膜に多数の実質的に平行で断続的な線状痕が不規則な幅及び間隔で二方向に形成されていることを特徴とする電磁波吸収能の異方性が低減された線状痕付き金属薄膜-プラスチック複合フィルムを提案した。特許文献1は、複数枚の線状痕付き金属薄膜-プラスチック複合フィルムを直接又は誘電体層を介して積層すると、電磁波吸収能が向上すると記載している。特許文献1の線状痕付き金属薄膜-プラスチック複合フィルムは広範な周波数範囲において優れた伝導ノイズ吸収能を有するが、1 GHz未満の周波数帯における放射ノイズ吸収能については必ずしも十分ではなかった。
特許第5203295号(特許文献2)は、プラスチックフィルムと、その少なくとも一面に設けた磁性金属薄膜とを有する磁性複合フィルム、及びプラスチックフィルムと、その少なくとも一面に設けた非磁性金属薄膜とを有する非磁性複合フィルムを積層してなり、前記磁性金属薄膜及び前記非磁性金属薄膜の少なくとも一方に、多数の実質的に平行で断続的な線状痕が不規則な長さ、幅及び間隔で少なくとも一方向に形成されており、前記線状痕は1~100μmの平均幅及び1~100μmの平均間隔を有し、前記線状痕の90%以上が0.1~1,000μmの範囲内の幅を有することを特徴とする電磁波吸収フィルムを開示している。特許文献2は、磁性金属薄膜の表面抵抗を1~377Ω/□とし、非磁性金属薄膜の表面抵抗を377~10,000Ω/□とした電磁波吸収フィルムは、近傍界における電磁波ノイズの吸収性に優れていると記載している。
しかし、特許文献2の電磁波ノイズの吸収はいわゆる伝導ノイズの吸収であり、放射ノイズに関しては1 GHz未満乃至数GHzと広範な周波数範囲において極大化する周波数が存在することが分った。そのため、この電磁波吸収フィルムを実用化する場合、極大化したノイズの放射を防止するために、グランド(GND)を接続する必要がある。
WO 2012/090586号(特許文献3)は、プラスチックフィルムの一面に金属薄膜を形成してなる複数枚の電磁波吸収フィルムを接着してなる近傍界電磁波吸収体であって、少なくとも一枚の電磁波吸収フィルムの金属薄膜は磁性金属の薄膜層を有するだけでなく、少なくとも一枚の電磁波吸収フィルムの金属薄膜に不規則な幅及び間隔で実質的に平行な多数の断続的な線状痕が二方向に形成されていることを特徴とする近傍界電磁波吸収体を開示している。特許文献3は、各電磁波吸収フィルムの金属薄膜が線状痕の形成後に50~1500Ω/□の範囲内の表面抵抗を有すると記載している。この近傍界電磁波吸収体も1 GHz未満乃至数GHzと広範な周波数範囲の伝導ノイズ吸収能に優れている。しかし、放射ノイズに関しては、極大化する周波数が存在することが分った。従って、特許文献2と同様に、この近傍界電磁波吸収体を実用化する場合、極大化したノイズの放射を防止するために、グランド(GND)を接続する必要がある。
特許第5559668号(特許文献4)は、電磁波反射体の前に複数枚の電磁波吸収フィルムを誘電体を介して積層してなる電磁波吸収体であって、各電磁波吸収フィルムはプラスチックフィルムの一面に導電体層を形成してなり、各電磁波吸収フィルムの導電体層は100~1000Ω/□の範囲内の表面抵抗を有し、最前の電磁波吸収フィルムの導電体層の表面抵抗はその次の電磁波吸収フィルムの導電体層の表面抵抗より100Ω/□以上大きく、(a) 前記電磁波吸収フィルムが2枚の場合、第一の電磁波吸収フィルムと第二の電磁波吸収フィルムとの間隔と、前記第二の電磁波吸収フィルムと前記電磁波反射体との間隔との比が100:30~80:70であり、(b) 前記電磁波吸収フィルムが3枚以上の場合、第一の電磁波吸収フィルムと第二の電磁波吸収フィルムとの間隔と、前記第二の電磁波吸収フィルムと第三の電磁波吸収フィルムとの間隔との比が100:30~80:70であり、前記電磁波吸収フィルムのプラスチックフィルム側に不規則な幅及び間隔で実質的に平行な多数の断続的な線状痕が二方向に形成されており、前記線状痕の幅は90%以上が0.1~100μmの範囲内にあって、平均1~50μmであり、前記線状痕の間隔は0.1~200μmの範囲内にあって、平均1~100μmであることを特徴とする電磁波吸収体を開示している。特許文献4は、最前の電磁波吸収フィルムの導電体層の表面抵抗がその次の電磁波吸収フィルムの導電体層の表面抵抗より100Ω/□以上大きいので、単に同じ表面抵抗の複数枚の電磁波吸収フィルムを積層した場合と比較して著しく高い電磁波吸収能を有するだけでなく、電磁波吸収能の異方性が低下すると記載している。しかし、この電磁波吸収体は電磁波反射体(アルミニウム板)の前に複数枚の電磁波吸収フィルムを誘電体を介して積層した構造を有するので、ETC,FRID等の用途に適するが、電子部品等に貼付する近傍界電磁波吸収体として利用することができない。
特許第4685977号公報 特許第5203295号公報 WO 2012/090586号公報 特許第5559668号公報
従って本発明の第一の目的は、例えば100 MHz乃至5 GHzと広範な周波数範囲において高い放射ノイズ吸収能を有し、グランドを接続することなく使用できる電磁波吸収フィルムを提供することである。
本発明の第二の目的は、例えば100 MHz乃至5 GHzと広範な周波数範囲においてさらに高い放射ノイズ吸収能を有し、グランドを接続することなく使用できる近傍界電磁波吸収体を提供することである。
本発明の第三の目的は、上記電磁波吸収フィルムを効率良く製造することができる装置を提供することである。
上記目的に鑑み鋭意研究の結果、本発明者は、(a) 二方向の線状痕を金属薄膜の全面に形成する代わりに、線状痕の密度が高い領域と低い領域が二方向の各々に交互に配置されるように線状痕を間欠的に形成すると、両方向の線状痕の交差により線状痕の高密度領域が格子状に分布するようになり、例えば100 MHz乃至5 GHzと広範な周波数範囲において高い放射ノイズ吸収能を有する電磁波吸収フィルムが得られること、(b) 線状痕の高密度領域を格子状に有する電磁波吸収フィルムと、二方向の線状痕が金属薄膜の全面に形成された電磁波吸収フィルムとを組合せることにより、例えば100 MHz乃至5 GHzと広範な周波数範囲においてさらに高い放射ノイズ吸収能を有する近傍界電磁波吸収体が得られること、及び(c) 金属薄膜の全面に二方向の線状痕を形成する装置において、パターンロールの形状又は駆動方式を変更することにより、二方向の各々で線状痕の密度が高い領域と低い領域を交互に形成することができることを発見し、本発明に想到した。
すなわち、本発明の電磁波吸収フィルムは、プラスチックフィルムと、前記プラスチックフィルムの一面に形成された金属薄膜とを有し、前記金属薄膜は不規則な幅及び間隔で二方向に形成された実質的に平行な多数の線状痕を有するとともに、各方向において前記線状痕が高密度に形成された高密度領域と前記線状痕が低密度に形成された低密度領域とを交互に有し、両方向の線状痕の交差により線状痕の高密度領域が格子状に分布することを特徴とする。
各方向において前記高密度領域の表面抵抗率は30~200Ω/□であり、前記低密度領域の表面抵抗率は0~20Ω/□であるのが好ましい。
各方向における前記高密度領域と前記低密度領域との長さ比は5/1~1/5であるのが好ましい。
各方向において前記高密度領域の長さは0.2~10 mmであり、前記低密度領域の長さは0.2~10 mmであるのが好ましい。
上記電磁波吸収フィルムを製造する本発明の第一の装置は、
2本のパターンロールと、
前記金属薄膜が2本のパターンロールに摺接するように前記プラスチックフィルムを搬送する手段と、
前記金属薄膜を前記パターンロールに押圧する押えロールとを具備し、
2本のパターンロールは前記金属薄膜に摺接する面内において前記プラスチックフィルムの幅方向に関して相互に逆の側に傾斜しており、
各パターンロールの外周面には線状痕形成領域と線状痕非形成領域とが周方向に交互に設けられており、
前記線状痕形成領域が表面に多数の高硬度微粒子を有することを特徴とする。
本発明の一実施形態では、前記パターンロールの前記線状痕非形成領域は前記線状痕形成領域より半径方向内側に後退している。前記線状痕非形成領域の後退距離Dhは1 mm以上であるのが好ましい。
本発明の別の実施形態では、前記線状痕非形成領域は高硬度微粒子を有さない。この場合、前記線状痕非形成領域の半径は前記線状痕形成領域の半径と同じで良いが、小さくても良い。
上記電磁波吸収フィルムを製造する本発明の第二の装置は、
外周面全体に多数の高硬度微粒子を有する2本のパターンロールと、
前記パターンロールに沿って前記プラスチックフィルムを搬送する手段と、
各パターンロールの両側に配置された押えロールとを具備し、
2本のパターンロールは前記金属薄膜に摺接する面内において前記プラスチックフィルムの幅方向に関して相互に逆の側に傾斜しており、
各パターンロールが前記金属薄膜に間欠的に摺接するように、各パターンロール及びその両側の押えロールの少なくとも一方を前記金属薄膜に対して垂直方向に駆動する装置を具備することを特徴とする。
本発明の近傍界電磁波吸収体は、少なくとも1層のプラスチックフィルムと、第一及び第二の金属薄膜とを有し、
前記第一の金属薄膜は不規則な幅及び間隔で二方向に形成された実質的に平行な多数の線状痕を有するとともに、各方向において前記線状痕が高密度に形成された高密度領域と前記線状痕が低密度に形成された低密度領域とを交互に有し、両方向の線状痕の交差により前記高密度領域が格子状に分布しており、
前記第二の金属薄膜の全面には実質的に平行な多数の断続的な線状痕が不規則な幅及び間隔で二方向に形成されていることを特徴とする。
本発明の近傍界電磁波吸収体において、前記第一の金属薄膜における前記線状痕の各方向において前記高密度領域の表面抵抗率は30~200Ω/□であり、前記低密度領域の表面抵抗率は0~20Ω/□であるのが好ましい。
本発明の近傍界電磁波吸収体において、前記第一の金属薄膜における各方向の前記高密度領域と前記低密度領域との長さ比は5/1~1/5であるのが好ましい。
本発明の近傍界電磁波吸収体において、前記第一の金属薄膜における各方向の前記高密度領域の長さは0.2~10 mmであり、前記低密度領域の長さは0.2~10 mmであるのが好ましい。
本発明の第一の実施形態の近傍界電磁波吸収体は、プラスチックフィルムの片面に前記第一の金属薄膜を有する第一の電磁波吸収フィルムと、プラスチックフィルムの片面に前記第二の金属薄膜を有する第二の電磁波吸収フィルムとが接着された構造を有するのが好ましい。
本発明の第一の実施形態の近傍界電磁波吸収体において、前記第一及び第二の電磁波吸収フィルムは前記第一及び第二の金属薄膜を内側にして接着されているのが好ましい。
本発明の第二の実施形態の近傍界電磁波吸収体は、1枚のプラスチックフィルムの両面に前記第一及び第二の金属薄膜を有するのが好ましい。
本発明の電磁波吸収フィルム及び近傍界電磁波吸収体において、二方向の線状痕の交差角は30~90°であるのが好ましい。
本発明の電磁波吸収フィルム及び近傍界電磁波吸収体において、前記金属薄膜の厚さは20~100 nmであるのが好ましい。
本発明の電磁波吸収フィルム及び近傍界電磁波吸収体において、前記金属薄膜はアルミニウムからなるのが好ましい。
本発明の電磁波吸収フィルム及び近傍界電磁波吸収体において、前記線状痕の幅Wは0.1~100μmの範囲内にあって、平均1~50μmであり、前記線状痕の間隔Iは0.1~500μmの範囲内にあって、平均1~200μmであるのが好ましい。
本発明の電磁波吸収フィルムは、線状痕の高密度領域及び低密度領域を交互に有する二方向の線状痕群を1つの金属薄膜に重なるように形成してなり、高密度領域が格子状に延在する線状痕分布を有するので、例えば100 MHz乃至5 GHzと広範な周波数範囲において高い放射ノイズ吸収能を有する。また本発明の近傍界電磁波吸収体は、高密度領域が格子状に分布する電磁波吸収フィルムと、金属薄膜の全面に線状痕が形成された電磁波吸収フィルムとを組合せてなるので、さらに高い放射ノイズ吸収能を有する。このような特徴を有する本発明の電磁波吸収フィルム及び近傍界電磁波吸収体は、グランドを接続することなくパソコン、携帯電話、スマートフォン等の各種の電子機器及び通信機器における電子部品に貼付して電磁波ノイズを抑制することができる。
本発明の装置は、(a) 金属薄膜の全面に線状痕を形成する装置におけるパターンロールを、外周面に線状痕形成領域と線状痕非形成領域とを周方向に交互に設けたパターンロールに換えるか、(b) 金属薄膜の全面に線状痕を形成する装置に、パターンロールとその両側の押えロールの少なくとも一方を金属薄膜に対して垂直方向に駆動する装置を付加することにより得られるので、構造が比較的簡単であり、かつ効率的に本発明の電磁波吸収フィルムを製造することができる。
本発明の電磁波吸収フィルムを構成する第一の線状痕群の一例を模式的に示す平面図である。 図1(a) のA-A断面図である。 本発明の電磁波吸収フィルムを構成する第一の線状痕群の別の例を模式的に示す平面図である。 本発明の電磁波吸収フィルムを構成する第二の線状痕群の一例を模式的に示す平面図である。 本発明の電磁波吸収フィルムの一例を模式的に示す平面図である。 図4に示す高密度領域重複部分における部分Aを模式的に示す平面図である。 本発明の第一の実施形態による近傍界電磁波吸収体の一例を示す断面図である。 図6(a) に示す近傍界電磁波吸収体を構成する第一及び第二の電磁波吸収フィルムの配置を示す断面図である。 第二の電磁波吸収フィルムの線状痕付き金属薄膜の一例を示す平面図である。 本発明の第一の実施形態による近傍界電磁波吸収体の別の例を構成する第一及び第二の電磁波吸収フィルムの配置を示す断面図である。 本発明の第二の実施形態による近傍界電磁波吸収体を示す断面図である。 本発明の第二の電磁波吸収フィルムの製造装置の一例を示す斜視図である。 図9(a) の装置を示す平面図である。 図9(b) のB-B断面図である。 フィルムの進行方向に対して傾斜した線状痕が形成される原理を説明するための部分拡大平面図である。 図9(a) の装置において、フィルムに対するパターンロール及び押えロールの傾斜角度を示す部分平面図である。 本発明の第二の電磁波吸収フィルムの製造装置の他の例を示す斜視図である。 本発明の第一の電磁波吸収フィルムを製造する第一の装置に用いるパターンロールの一例を示す概略断面図である。 図11(a) に示すパターンロールの線状痕形成領域を示す部分拡大断面図である。 図11(a) に示すパターンロールの線状痕形成領域及び線状痕非形成領域を周方向に沿って展開した部分断面図である。 本発明の第一の電磁波吸収フィルムを製造する第一の装置に用いるパターンロールの別の例を示す概略断面図である。 本発明の第一の電磁波吸収フィルムを製造する第二の製造装置においてパターンロールが上昇位置にある状態を示す概略図である。 本発明の第一の電磁波吸収フィルムを製造する第二の製造装置においてパターンロールが下降位置にある状態を示す概略図である。 実施例1の第一の電磁波吸収フィルムの顕微鏡写真である。 電磁波吸収フィルム(近傍界電磁波吸収体)の伝導ノイズ吸収能を評価するシステムを示す平面図である。 電磁波吸収フィルム(近傍界電磁波吸収体)の伝導ノイズ吸収能を評価するシステムを示す断面図である。 実施例1の第一の電磁波吸収フィルムのノイズ吸収率Ploss/Pinを示すグラフである。 実施例1の第一の電磁波吸収フィルムの100 MHz乃至5 GHzの範囲における累積放射ノイズを示す写真である。 実施例2の近傍界電磁波吸収体のノイズ吸収率Ploss/Pinを示すグラフである。 実施例2の近傍界電磁波吸収体の100 MHz乃至5 GHzの範囲における累積放射ノイズを示す写真である。 実施例3の第一の電磁波吸収フィルムの顕微鏡写真である。 実施例3の第一の電磁波吸収フィルムのノイズ吸収率Ploss/Pinを示すグラフである。 実施例3の第一の電磁波吸収フィルムの100 MHz乃至5 GHzの範囲における累積放射ノイズを示す写真である。 実施例4の近傍界電磁波吸収体のノイズ吸収率Ploss/Pinを示すグラフである。 実施例4の近傍界電磁波吸収体の100 MHz乃至5 GHzの範囲における累積放射ノイズを示す写真である。 比較例1の第一の電磁波吸収フィルムのノイズ吸収率Ploss/Pinを示すグラフである。 比較例1の第一の電磁波吸収フィルムの100 MHz乃至5 GHzの範囲における累積放射ノイズを示す写真である。 比較例2の近傍界電磁波吸収体のノイズ吸収率Ploss/Pinを示すグラフである。 比較例2の近傍界電磁波吸収体の100 MHz乃至5 GHzの範囲における累積放射ノイズを示す写真である。
本発明の実施形態を添付図面を参照して詳細に説明するが、特に断りがなければ一つの実施形態に関する説明は他の実施形態にも適用される。また下記説明は限定的ではなく、本発明の技術的思想の範囲内で種々の変更をしても良い。
[1] 電磁波吸収フィルム
図1(a) は本発明の電磁波吸収フィルムを構成する第一の線状痕群の一例を模式的に示す平面図であり、図1(b) は図1(a) のA-A断面図である。プラスチックフィルム10の一面に形成された金属薄膜11には実質的に平行な多数の線状痕12aが不規則な幅及び間隔で一方向F1に形成されており、かつ線状痕12aが形成された領域112と線状痕12aが形成されていない領域113とが一方向F1に沿って交互に配置されている。一方向F1に交互に配置された複数の領域112に形成された線状痕12aの全体をここでは「第一の線状痕群」と呼び、第一の線状痕群を有する金属薄膜11を「第一の線状痕付き金属薄膜11a」と呼ぶ。線状痕12aの方向F1に沿って交互に形成された領域112及び領域113は縞模様を形成している。なお、線状痕12aの方向F1における領域112及び領域113の長さLa1及びLa2は製造方法及び装置により決まる。
(1) プラスチックフィルム
プラスチックフィルム10を形成する樹脂は、絶縁性とともに十分な強度、可撓性及び加工性を有する限り特に制限されず、例えばポリエステル(ポリエチレンテレフタレート等)、ポリアリーレンサルファイド(ポリフェニレンサルファイド等)、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ポリスチレン、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)等が挙げられる。中でも、強度及びコストの観点からポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムが好ましい。プラスチックフィルム10の厚さは10~100μm程度で良いが、近傍界電磁波吸収体をできるだけ薄くするために10~30μm程度が好ましい。
(2) 金属薄膜
金属薄膜11は非磁性金属又は磁性金属からなる。非磁性金属として、アルミニウム、銅、銀等が挙げられる。磁性金属として、ニッケル、クロム等が挙げられる。これらの金属は勿論単体に限らず、合金でも良い。コスト及び耐蝕性の観点から、アルミニウムが好ましい。金属薄膜11はスパッタリング法、真空蒸着法等の公知の方法により形成することができる。線状痕の加工程度の制御の観点から、金属薄膜11の厚さは、20~100 nmが好ましく、30~90 nmがより好ましく、40~80 nmが最も好ましい。
(3) 第一の線状痕群
上記の通り、第一の線状痕付き金属薄膜11aの各領域112では、金属薄膜11に実質的に平行な多数の線状痕12aが不規則な幅及び間隔で一方向F1に形成されている。図1(b) に示すように線状痕12aはその配向方向に直交する方向(横手方向)において種々の幅W及び間隔Iを有する。線状痕12aの幅W及び間隔Iはいずれも線状痕形成前の金属薄膜11の表面Sの高さ(元の高さ)を基準にして求める。なお、説明のために図1(b) では線状痕12aの深さを誇張している。
線状痕12aの幅Wは0.1~100μmの範囲内にあるのが好ましく、0.1~70μmの範囲内にあるのがより好ましく、0.5~50μmの範囲内にあるのがさらに好ましく、0.5~20μmの範囲内にあるのが最も好ましい。また線状痕12aの平均幅Wavは1~50μmであるのが好ましく、2~50μmであるのがより好ましく、5~30μmが最も好ましい。線状痕12aの間隔Iは0.1~500μmの範囲内にあるのが好ましく、0.5~200μmの範囲内にあるのがより好ましく、1~100μmの範囲内にあるのがさらに好ましく、1~50μmの範囲内にあるのが最も好ましい。また線状痕12aの平均間隔Iavは1~200μmが好ましく、5~100μmがより好ましく、10~80μmが最も好ましい。なお、線状痕12aの幅W及び平均幅Wav、並びに間隔I及び平均間隔Iavを算出するに当たり、0.1μmの幅までの線状痕12aをカウントした。以下特に断りがなければ、同様である。
線状痕12aの長さLsは、摺接条件(主としてロールとプラスチックフィルムとの相対速度、及びプラスチックフィルムのロールへの巻回角度)だけでなく、領域112の長さによっても決まる。領域112内に線状痕12aの長手方向隙間が位置することもあるので、線状痕12aの長さLsは領域112の長さLa1と同じかそれ未満である。
(a) 第一の線状痕の形成密度
一般に、線状痕の加工程度が増大すると、線状痕の幅W(深さに比例する)が大きくなり、かつ間隔Iが小さくなるので、金属薄膜11に占める線状痕の割合(密度)は大きくなる。従って、線状痕の加工程度を線状痕の密度により表すことができる。ところで、線状痕は非常に小さいだけでなく不揃いであり、かつ高密度に形成されているので、線状痕の密度を直接測定するのは困難である。そこで、線状痕の密度が高くなると金属薄膜11の表面抵抗率及び光透過率も大きくなることに着目し、線状痕の密度を金属薄膜11の表面抵抗率又は光透過率で評価することにする。
図1(a) では領域113に線状痕12aが全く示されていないが、製造方法によっては、例えば図2に示すように領域113にも線状痕12aが僅かに形成されることが多い。しかし、線状痕12aの加工程度が低ければ本発明の効果は十分に得られるので、領域113に線状痕12aが僅かに形成された場合も本発明の範囲内である。そこで、線状痕12aが僅かに形成された場合も含むように、領域113を「無線状痕領域」ではなく「線状痕の低密度領域」又は単に「低密度領域」と呼ぶことにする。これに伴い、線状痕が高密度に形成されている領域112を「線状痕の高密度領域」又は単に「高密度領域」と呼ぶ。
(i) 表面抵抗率
高密度領域112における金属薄膜11の表面抵抗率は30~200Ω/□であるのが好ましい。高密度領域112における金属薄膜11の表面抵抗率が30Ω/□未満又は200Ω/□超であると、電磁波吸収フィルムは十分な電磁波吸収能を発揮できない。一方、低密度領域113における金属薄膜11の表面抵抗率は0~20Ω/□であるのが好ましい。なお、下限の0Ω/□は金属薄膜自体の表面抵抗率と同じである。すなわち、低密度領域113における金属薄膜11に線状痕12aが全く形成されていなくても良い。低密度領域113における金属薄膜11の表面抵抗率が20Ω/□超であると、低密度領域113を設けた効果が不十分となる。より好ましくは、高密度領域112における金属薄膜11の表面抵抗率は30~150Ω/□であり、低密度領域113における金属薄膜11の表面抵抗率は0~15Ω/□である。
高密度領域112及び低密度領域113が非常に微細な場合、それぞれの表面抵抗率を測定するのが困難である。従って、図1(a) に示すように線状痕が一方向に交互に形成された金属薄膜における高密度領域112と同じ条件で線状痕が全面に形成された金属薄膜の表面抵抗率を測定し、それを高密度領域112の表面抵抗率Rs1とする。また、線状痕を全く形成していない金属薄膜11の表面抵抗率Rs0を測定する。低密度領域113の表面抵抗率Rs2は、表面抵抗率Rs1及びRs0から算出することができる。
(ii) 光透過率
高密度領域112における金属薄膜11の光透過率は3~10%であるのが好ましく、4~8%であるのがより好ましい。また、低密度領域113における金属薄膜11の光透過率は0~2.5%であるのが好ましく、0~2%であるのがより好ましい。なお、0%の光透過率は線状痕12aが全く形成されていない状態である。なお、高密度領域112における金属薄膜11の光透過率は表面抵抗率と相関する。
(b) 高密度領域及び低密度領域の長さ
線状痕12aの方向F1において、高密度領域112の長さLa1は0.2~10 mmであるのが好ましく、低密度領域113の長さLa2は0.2~10 mmであるのが好ましい。高密度領域112の長さLa1が0.2 mm未満か、低密度領域113の長さLa2が10 mm超であると、電磁波吸収能が低すぎる。一方、高密度領域112の長さLa1が10 mm超か、低密度領域113の長さLa2が0.2 mm未満であると、低密度領域113を設ける効果が不十分であり、電磁波吸収フィルムの放射ノイズ吸収能が低くなる。高密度領域112の長さLa1は1~5 mmであるのがより好ましく、低密度領域113の長さLa2は1~5 mmであるのがより好ましい。
線状痕12aの方向F1に沿って、高密度領域112と低密度領域113との長さ比La1/La2は5/1~1/5であるのが好ましい。長さ比La1/La2が1/5未満であると、電磁波吸収能が低すぎる。また長さ比La1/La2が5/1超であると、低密度領域113を設ける効果が不十分であり、電磁波吸収フィルムの放射ノイズ吸収能が低くなる。電磁波吸収能の等方性の観点から、長さ比La1/La2は2/1~1/2であるのがより好ましく、1/1であるのが特に好ましい。
(4) 第二の線状痕群
図3は、図1に示す第一の線状痕群とともに本発明の電磁波吸収フィルムを構成する第二の線状痕群の一例を模式的に示す平面図である。第二の線状痕群は、第一の線状痕群が形成された金属薄膜11上に重複するように形成される。後述するように、第二の線状痕群における線状痕12bの方向F2は第一の線状痕群における線状痕12aの方向F1と異なる必要がある。なお、第二の線状痕群における線状痕12bの幅W、平均幅Wav、間隔I及び平均間隔Iavの範囲は、第一の線状痕群における範囲と同じでも良い。また、第二の線状痕群における高密度領域112及び低密度領域113の表面抵抗率及び光透過率の範囲、並びにそれらの長さ及び比の範囲も、第一の線状痕群における範囲と同じで良い。
第一の線状痕群における高密度領域112の長さLa1と第二の線状痕群における高密度領域112の長さLb1は同じでも良いが、異なっていても良い。異なる場合、比La1/Lb1は1/2~2/1であるのが好ましく、2/3~3/2であるのがより好ましい。なお、異なる場合でも、第二の線状痕群における高密度領域112及び低密度領域113の線状痕密度は第一の線状痕群における場合と同じで良い。要するに、第二の線状痕群は線状痕の方向以外第一の線状痕群と同じでも良い。
(5) 電磁波吸収フィルムの構成
図4は、第一の線状痕群と第二の線状痕群とを併せ持つ本発明の電磁波吸収フィルム100の一例を模式的に示す平面図である。第一及び第二の線状痕群の重ね合わせにより、金属薄膜11上に、高密度領域112同士の重複部分114はドット状に分布し、高密度領域112と低密度領域113の重複部分115は高密度領域112同士の重複部分114を介して格子状に分布し、低密度領域113同士の重複部分116はドット状に分布する。
高密度領域重複部分114では、図5に模式的に示すように第一の線状痕群の線状痕12aと第二の線状痕群の線状痕12bとは交差角θsで交差している。線状痕12a,12bの交差角θsは30~90°であるのが好ましく、60~90°であるのがより好ましく、80~90°であるのが最も好ましく、90°であるのが特に好ましい。交差角θsが90°に近づくにつれて電磁波吸収能は等方的になる。
図5においてLs1,Ls2はそれぞれ線状痕12a,12bの長さを示す。線状痕12aの長さLs1と線状痕12bの長さLs2は異なっていても良いが、同じであると電磁波吸収能が等方的になるので好ましい。線状痕12aの長さLs1と線状痕12bの長さLs2が異なる場合、長さ比Ls1/Ls2は1/2~2/1が好ましく、2/3~3/2がより好ましい。
高密度領域-低密度領域重複部分115では、線状痕12a,12bの一方が主に形成されており、他方の線状痕はほとんど形成されていない。そのため、伝導ノイズ吸収能は高密度領域重複部分114より低いが、放射ノイズ吸収能は向上している。各高密度領域-低密度領域重複部分115ではほとんどの線状痕が一方向に配向しているが、隣接する高密度領域-低密度領域重複部分115におけるほとんどの線状痕が交差角θsだけ異なる方向に配向しているので、電磁波吸収フィルム全体としては電磁波吸収能がほぼ等方的になる。
低密度領域重複部分116では、線状痕12a,12bがほとんど形成されていないので、金属薄膜11自体に近い機能を有し、大きな放射ノイズ吸収能を発揮する。低密度領域重複部分116に吸収された電磁波ノイズから生じた電流は隣接する高密度領域-低密度領域重複部分115及び高密度領域重複部分114に流れ、そこで減衰される。
本発明の電磁波吸収フィルム100では、線状痕12a,12bの交差により高密度領域-高密度領域重複部分114が高密度領域-低密度領域重複部分115を介して格子状に分布するので、高密度領域112は金属薄膜11上に格子状に分布することになる。高密度領域112の格子状分布により、十分な伝導ノイズ吸収能を確保しながら良好な放射ノイズ吸収能も発揮することができる。
[2] 近傍界電磁波吸収体
本発明の近傍界電磁波吸収体は、(a) 不規則な幅及び間隔で二方向に形成された実質的に平行な多数の線状痕を有するとともに、各方向において前記線状痕が高密度に形成された領域と前記線状痕が低密度に形成された領域とを交互に有し、両方向の線状痕の交差により前記高密度領域が格子状に分布する第一の線状痕付き金属薄膜と、(b) 実質的に平行な多数の断続的な二方向の線状痕が不規則な幅及び間隔で全面に形成されている第二の線状痕付き金属薄膜とを有する。
(1) 第一の実施形態
本発明の第一の実施形態による近傍界電磁波吸収体の一例は、図6(a) 及び図6(b) に示すように、プラスチックフィルム10a上に第一の線状痕付き金属薄膜11aを有する第一の電磁波吸収フィルム100aと、プラスチックフィルム10b上に第二の線状痕付き金属薄膜11bを有する第二の電磁波吸収フィルム100bとを接着してなる。この例では第一及び第二の線状痕付き金属薄膜11a,11bが対向しているので、両者の導通を防止するために接着層20は非導電性である。接着層20を非常に薄くすると第一及び第二の線状痕付き金属薄膜11a及び11bは電磁気的に結合する。接着層20は接着剤により形成することができるが、ヒートシール又は両面接着テープにより形成しても良い。
第二の電磁波吸収フィルム100bは、実質的に平行な多数の線状痕が金属薄膜11の全面に不規則な幅及び間隔で二方向に形成されていること以外、第一の電磁波吸収フィルム100aと同じで良い。図6(c) は第二の電磁波吸収フィルム100bの線状痕付き金属薄膜11bの一例を示す。
第二の線状痕付き金属薄膜11bにおける線状痕12の幅Wは0.1~100μmの範囲内にあるのが好ましく、0.1~70μmの範囲内にあるのがより好ましく、0.5~50μmの範囲内にあるのがさらに好ましく、0.5~20μmの範囲内にあるのが最も好ましい。また線状痕12の平均幅Wavは1~50μmであるのが好ましく、2~50μmであるのがさらに好ましく、5~30μmが最も好ましい。線状痕12の間隔Iは0.1~500μmの範囲内にあるのが好ましく、0.5~200μmの範囲内にあるのがより好ましく、1~100μmの範囲内にあるのが最も好ましく、1~50μmの範囲内にあるのが特に好ましい。また線状痕12の平均間隔Iavは1~200μmが好ましく、5~100μmがより好ましく、10~80μmが最も好ましい。
第二の線状痕付き金属薄膜11bにおける線状痕12の長さLsは、摺接条件(主としてパターンロール及びプラスチックフィルムの相対的な周速、により決まるので、摺接条件を変えない限り大部分がほぼ同じである(ほぼ平均長さに等しい)。線状痕12の長さLsは特に限定的でなく、実用的には1~100 mm程度で良く、好ましくは2~10 mmである。
第二の線状痕付き金属薄膜11bにおける二方向の線状痕12の交差角θsは30~90°が好ましく、45~90°がより好ましく、60~90°が最も好ましく、90°が特に好ましい。
第一及び第二の線状痕付き金属薄膜11a,11bを対向させる代わりに、図7に示すように各線状痕付き金属薄膜11a,11bが各プラスチックフィルムの一方の側に位置するように第一及び第二の電磁波吸収フィルム100a,100bを接着しても良い。
(2) 第二の実施形態
図8は本発明の第二の実施形態による近傍界電磁波吸収体を示す。この近傍界電磁波吸収体は一枚のプラスチックフィルム10と、その両面に設けられた第一及び第二の線状痕付き金属薄膜11a,11bとからなる。第一及び第二の線状痕付き金属薄膜11a,11b自体は第一の実施形態と同じで良い。
[3] 電磁波吸収フィルムの製造装置
第一の線状痕付き金属薄膜は第二の線状痕付き金属薄膜より複雑な構造を有するので、まず第二の線状痕付き金属薄膜を有する第二の電磁波吸収フィルムの製造装置について説明する。
(1) 第二の電磁波吸収フィルムの製造装置
図9(a)~図9(e) は第二の電磁波吸収フィルム100bを製造する装置の一例を示す。図示の装置は、(a) 金属薄膜を有するプラスチックフィルム10を巻き出すリール21と、(b) プラスチックフィルム10の幅方向に対して傾斜して配置された第一のパターンロール2aと、(c) 第一のパターンロール2aの上流側でそれと反対側に配置された第一の押えロール3aと、(d) プラスチックフィルム10の幅方向に関して第一のパターンロール2aと逆方向に傾斜し、かつ第一のパターンロール2aと同じ側に配置された第二のパターンロール2bと、(e) 第二のパターンロール2bの下流側でそれと反対側に配置された第二の押えロール3bと、(f) 線状痕が形成された金属薄膜を有するプラスチックフィルム10’(第二の電磁波吸収フィルム100b)を巻き取るリール24とを有する。その他に、所定の位置に複数のガイドロール22,23が配置されている。各パターンロール2a,2bは、撓みを防止するためにバックアップロール(例えばゴムロール)5a,5bで支持されている。
図9(c) に示すように、各パターンロール2a,2bとの摺接位置より低い位置で各押えロール3a,3bがプラスチックフィルム10の金属薄膜に接するので、プラスチックフィルム10は各パターンロール2a,2bに押圧される。この条件を満たしたまま各押えロール3a,3bの高さを調整することにより、各パターンロール2a,2bへの押圧力を調整できる。具体的には、各押えロール3a,3bの位置を低くすると、プラスチックフィルム10の金属薄膜に対する各パターンロール2a,2bの押圧力が増大するので、金属薄膜に形成される線状痕は深くなる(金属薄膜の加工度は上がる)。逆に各押えロール3a,3bの位置を高くすると、プラスチックフィルム10の金属薄膜に対する各パターンロール2a,2bの押圧力が低下するので、プラスチックフィルム10の金属薄膜に形成される線状痕は浅くなる(金属薄膜の加工度は低下する)。一般に、線状痕が深くなる程金属薄膜に残存する金属量は減少するので、線状痕付き金属薄膜の表面抵抗率は増大する。従って、線状痕付き金属薄膜の表面抵抗率は、プラスチックフィルム10の金属薄膜に対する各パターンロール2a,2bの押圧力を変更することにより調整することができる。なお、線状痕が深くなると、線状痕の幅は広くなり、従って線状痕同士の間隔は狭くなる傾向がある。プラスチックフィルム10の各パターンロール2a,2bに対する押圧力は、各パターンロール2a,2bをプラスチックフィルム10方向に位置移動させることにより調整することもできる。各パターンロール2a,2bの位置移動は、各パターンロール2a,2bに取り付けられた駆動装置(図示せず)により行うことができる。
図9(d) は線状痕12がプラスチックフィルム10の進行方向に対して斜めに形成される原理を示す。プラスチックフィルム10の進行方向に対してパターンロール2aは傾斜しているので、パターンロール2a上の硬質微粒子の移動方向(回転方向)とプラスチックフィルム10の進行方向とは異なる。そこでXで示すように、任意の時点においてパターンロール2a上の点Aにおける硬質微粒子がプラスチックフィルム10の金属薄膜と接触して痕Bが形成されたとすると、所定の時間後に硬質微粒子は点A’まで移動し、痕Bは点B’まで移動する。点Aから点A’まで硬質微粒子が移動する間、痕は連続的に形成されるので、点A’から点B’まで延在する線状痕12が形成されたことになる。
第一及び第二のパターンロール2a,2bで形成される線状痕12の方向及び交差角θsは、各パターンロール2a,2bのプラスチックフィルム10に対する角度、及び/又はプラスチックフィルム10の走行速度に対する各パターンロール2a,2bの周速度を変更することにより調整することができる。例えば、プラスチックフィルム10の走行速度bに対するパターンロール2aの周速度aを増大させると、図9(d) のYで示すように線状痕12を線分C’D’のようにプラスチックフィルム10の進行方向に対して45°にすることができる。同様に、プラスチックフィルム10の幅方向に対するパターンロール2aの傾斜角θ2を変えると、パターンロール2aの周速度aを変えることができる。これはパターンロール2bについても同様である。従って、両パターンロール2a,2bの調整により、線状痕12の方向を変更することができる。
各パターンロール2a,2bはプラスチックフィルム10に対して傾斜しているので、各パターンロール2a,2bとの摺接によりプラスチックフィルム10は幅方向の力を受ける。従って、プラスチックフィルム10の蛇行を防止するために、各パターンロール2a,2bに対する各押えロール3a,3bの高さ及び/又は角度を調整するのが好ましい。例えば、パターンロール2aの軸線と押えロール3aの軸線との交差角θ3を適宜調節すると、幅方向の力をキャンセルするように押圧力の幅方向分布が得られ、もって蛇行を防止することができる。またパターンロール2aと押えロール3aとの間隔の調整も蛇行の防止に寄与する。プラスチックフィルム10の蛇行及び破断を防止するために、プラスチックフィルム10の幅方向に対して傾斜した第一及び第二のパターンロール2a,2bの回転方向はプラスチックフィルム10の進行方向と同じであるのが好ましい。
図10は直交する線状痕を形成する装置の別の例を示す。この装置は、第二のパターンロール32bがプラスチックフィルム10の幅方向と平行に(進行方向に直角に)配置されている点で図9(a)~図9(e) に示す装置と異なる。従って、図9(a)~図9(e) に示す装置と異なる部分のみ以下説明する。第二のパターンロール32bの回転方向はプラスチックフィルム10の進行方向と同じでも逆でも良い。また第二の押えロール33bは第二のパターンロール32bの上流側でも下流側でも良い。この装置は、図9(d) においてZで示すように、線状痕12'の方向(線分E’F’)をプラスチックフィルム10の幅方向にし、直交する線状痕を形成するのに適している。
プラスチックフィルム10の走行速度は5~200 m/分が好ましく、パターンロールの周速は10~2,000 m/分が好ましい。パターンロールの傾斜角θ2は20°~60°が好ましく、特に約45°が好ましい。フィルム10の張力(押圧力に比例する)は0.05~5 kgf/cm幅が好ましい。
パターンロールは、鋭い角部を有するモース硬度5以上の微粒子を表面に有するロール、例えば特開2002-59487号に記載されているダイヤモンドロールが好ましい。線状痕の幅は微粒子の粒径により決まるので、ダイヤモンド微粒子の90%以上は0.1~100μmの範囲内の粒径を有するのが好ましく、0.1~70μmの範囲内の粒径がより好ましい。ダイヤモンド微粒子はロール面に30%以上の面積率で付着しているのが好ましい。ダイヤモンド微粒子の固定はニッケル等の金属の層により行うのが好ましい。
(2) 第一の電磁波吸収フィルムの製造装置
(a) 第一の製造装置
第一の製造装置は、各パターンロールの外周面に線状痕形成領域と線状痕非形成領域とが周方向に交互に設けられており、前記線状痕形成領域が表面に多数の高硬度微粒子を有する以外、第二の電磁波吸収フィルムの製造装置と基本的に同じ構造を有する。従って、上記パターンロールについて詳細に説明する。
図11(a) は第一の製造装置に用いる各パターンロールの一例を示す。このパターンロール102はロール本体102aと、ロール本体102aの外周面に所定の間隔で交互に形成された線状痕形成領域102b及び線状痕非形成領域102cとからなる。線状痕形成領域102bは、図11(b) に示すように多数の高硬度微粒子102dと、それを保持する固定層102eとを具備する。上記第二の電磁波吸収フィルムの製造装置と同様に、高硬度微粒子102dはダイヤモンド微粒子であるのが好ましく、固定層102eはニッケル等の金属の層であるのが好ましい。線状痕非形成領域102cは、パターンロール102の回転により金属薄膜11が近接位置に来たときでも金属薄膜11に線状痕を全く又はほとんど形成しないように、(a) 多数の高硬度微粒子102dを保持する固定層102eが形成されていない領域、又は(b) 固定層102eのみからなる領域(高硬度微粒子102dを有さない)であるのが好ましい。
線状痕形成領域102bの中心各α1は30~90°であるのが好ましく、45~90°であるのがより好ましい。また、線状痕非形成領域102cの中心各α2は30~90°であるのが好ましく、45~90°であるのがより好ましい。図示の例では、4つの線状痕形成領域102bと4つの線状痕非形成領域102cが交互に設けられているので、α1+α2は90°であるが、これに限定されない。
図12に示すように、線状痕形成領域102b及び線状痕非形成領域102cの周長D1,D2は、両者の中心各α1,α2及びロール本体102aの半径Rにより決まるが、一般にそれぞれ0.2~10 mmであるのが好ましく、1~5 mmであるのがより好ましい。
ロール本体102aの半径Rは3~6 cmであるのが好ましい。半径Rが6 cm超であると、パターンロール102が金属薄膜11に摺接する距離が長すぎ、線状痕高密度領域を短く設定することができない。一方、半径Rが3 cm未満であると、ロール本体102aの剛性が不十分である。ロール本体102aの半径Rは3~5 cmであるのがより好ましい。
図13は第一の製造装置に用いる各パターンロールの別の例を示す。このパターンロール112は、外周面に沿って大外径領域112bと小外径領域112cとを交互に有するロール本体112aと、ロール本体112aの大外径領域112bに形成された線状痕形成領域112dとを有する。線状痕形成領域112dは上記パターンロール102における線状痕形成領域102bと同じで良い。小外径領域112cには多数の高硬度微粒子を保持する固定層を形成する必要はないが、製造効率の観点から小外径領域112cにも多数の高硬度微粒子を保持する固定層を形成しても良い。大外径領域112bと小外径領域112cとの中心角(周長)の比率は、上記パターンロール102における線状痕形成領域102bと線状痕非形成領域102cとの中心角(周長)の比率と同じで良い。
小外径領域112cにも多数の高硬度微粒子を保持する固定層が形成されている場合、大外径領域112bの半径R1と小外径領域112cの半径R2との差Dhは1 mm以上であるのが好ましい。段差Dhが1 mm未満であると、小外径領域112cにおける高硬度微粒子が金属薄膜11に強く摺接する可能性が高く、得られる第一の電磁波吸収フィルムの低密度領域における線状痕の密度が高くなりすぎる。段差Dhは2~5 mmであるのがより好ましい。
ロール本体112aの大外径領域112bの半径R1も3~6 cmであるのが好ましく、3~5 cmであるのがより好ましい。
(b) 第二の製造装置
第二の製造装置は、各パターンロールが金属薄膜に間欠的に摺接するように、パターンロール及び押えロールの少なくとも一方を金属薄膜に対して垂直方向に駆動する装置を具備する以外、第二の電磁波吸収フィルムの製造装置と基本的に同じ構造を有する。従って、パターンロール及び/又は押えロールの垂直駆動について詳細に説明する。
図14(a) 及び図14(b) は、一対の押えロール103a,103bの回転軸が固定されており、パターンロール122の回転軸が駆動装置(図示せず)により一定の時間間隔で金属薄膜11に対して垂直方向に駆動される例を示す。パターンロール122は、第二の電磁波吸収フィルムの製造装置に用いるパターンロール2a,2bと同様に、外周面全体に多数の高硬度微粒子を有する。プラスチックフィルム10は一対の押えロール103a,103bにより一定の高さに保持されている。
図14(a) の状態ではパターンロール122は上昇位置にあり、パターンロール122はプラスチックフィルム10の金属薄膜11に僅かに押圧され、摺接しているので、金属薄膜11に線状痕が形成される。次に、パターンロール122が図14(b) に示すように下降位置に来ると、パターンロール122は金属薄膜11から離れるので、金属薄膜11に線状痕は形成されない。このように各パターンロール122の間欠的な垂直駆動により線状痕の形成が交互に行われるので、第一及び第二の線状痕群の各々を金属薄膜11に線状痕方向に交互に形成することができる。第一及び第二の線状痕群における高密度領域及び低密度領域の長さは、各パターンロール122の垂直駆動の時間間隔により調整することができる。
上記と同じ理由により、パターンロール122の半径Rも3~6 cmであるのが好ましく、3~5 cmであるのがより好ましい。
パターンロール122の垂直駆動の代わりに、一対の押えロール103a,103bを垂直駆動させても高密度領域及び低密度領域を交互に形成することができる。また、パターンロール122及び一対の押えロール103a,103bを逆方向に垂直駆動させると、すなわちパターンロール122の上昇時に一対の押えロール103a,103bを下降させ、パターンロール122の下降時に一対の押えロール103a,103bを上昇させると、パターンロール122の金属薄膜11との摺接の切り換えを速くできるので、高密度領域及び低密度領域を狭く(線状痕方向において短く)することができる。
本発明を以下の実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
実施例1
(1) 第一の電磁波吸収フィルムの製造
図9(a) に示す装置において一対のパターンロール2a,2bの代わりに、粒径分布が50~80μmのダイヤモンド微粒子を電着した一対のパターンロール102、102を用い、第一の製造装置とした。第一の製造装置の上流側のパターンロール102により、厚さ16μmのPETフィルムに真空蒸着した厚さ60 nmのアルミニウム薄膜に下記特性を有する線状痕の高密度領域及び低密度領域を一方向に交互に形成し、第一の線状痕群を作成した。次いで下流側のパターンロール102により、線状痕の高密度領域及び低密度領域を別方向に有する第二の線状痕群を、第一の線状痕群と同じ条件で第一の線状痕群に重ねて作成し、第一の電磁波吸収フィルムを得た。第一及び第二の線状痕群における線状痕の交差角θsは90°であった。この第一の電磁波吸収フィルムの顕微鏡写真を図15に示す。
第一及び第二の線状痕群における線状痕は下記の通り方向以外同じ特性を有していた。
高密度領域
線状痕:
幅Wの範囲:0.5~50μm
平均幅Wav:30μm
横手方向間隔Iの範囲:1~50μm
平均横手方向間隔Iav:40μm
平均長さLav:1 mm
配向方向の長さ:2 mm
低密度領域(1)
配向方向の長さ:2 mm
注:(1) 低密度領域では線状痕が微少であるので、低密度領域の配向方向の長さだけ測定した。
(a) 表面抵抗率の測定
線状痕が一方向に形成された第一の線状痕群における高密度領域と同じ条件で線状痕を全面に形成したアルミニウム薄膜の表面抵抗率を測定し、それを高密度領域の表面抵抗率Rs1とした。また、線状痕を全く形成していないアルミニウム薄膜の表面抵抗率Rs0を測定し、得られた表面抵抗率Rs1及びRs0から低密度領域の表面抵抗率Rs2を算出した。表面抵抗率の測定には、ナプソン株式会社のシート抵抗/表面抵抗率測定器「EC-80P」を用いた。なお、第二の線状痕群の表面抵抗率は第一の線状痕群と同じと見なした。
(b) 光透過率の測定
第一の線状痕群における高密度領域と同じ条件で線状痕を全面に形成したアルミニウム薄膜の光透過率を測定し、それを高密度領域の表面抵抗率Lt1とした。また、線状痕を全く形成していないアルミニウム薄膜の光透過率Lt0を測定し、得られた光透過率Lt1及びLt0から低密度領域の光透過率Lt2を算出した。光透過率の測定には、株式会社キーエンス製の透過型レーザ判別センサー(IB-30)を用いた。なお、第二の線状痕群の光透過率は第一の線状痕群と同じと見なした。
高密度領域
表面抵抗率:90Ω/□
光透過率:4.5%
低密度領域
表面抵抗率:8Ω/□
光透過率:1.5%
(2) 伝導ノイズ吸収率の測定
第一の電磁波吸収フィルムから試験片TP1(50 mm×50 mm)を切り出した。50ΩのマイクロストリップラインMSL(64.4 mm×4.4 mm)と、マイクロストリップラインMSLを支持する絶縁基板200と、絶縁基板200の下面に接合された接地グランド電極201と、マイクロストリップラインMSLの両端に接続された導電性ピン202,202と、ネットワークアナライザNAと、ネットワークアナライザNAを導電性ピン202,202に接続する同軸ケーブル203,203とで構成された図16(a) 及び図16(b) に示す近傍界用電磁波評価システムにおいて、試験片TP1の中心がマイクロストリップラインMSLの中心と一致するように、絶縁基板200の上面に試験片TPを粘着剤により貼付した。マイクロストリップラインMSLに0.1~6 GHzの入射波を入力して反射波の電力S11及び透過波の電力S21を測定し、S11及びS21からノイズ吸収率Ploss/Pinを求めた。結果を図17に示す。図17から明らかなように、実施例1の電磁波吸収フィルムのノイズ吸収率Ploss/Pinは、後述する比較例1より劣るが、放射ノイズ吸収能とのバランスでは十分であった。
(3) 放射ノイズの測定
第一の電磁波吸収フィルムから切り出した試験片TP2(40 mm×40 mm)に対して、森田テック株式会社製のEMCノイズスキャナー(WM7400)により、0.03 GHz乃至7 GHzの範囲において周波数をスキャンし、放射ノイズを測定した。図18に実施例1の試験片の累積放射ノイズを示す。なお、試験片の位置は図18中に白枠で示す。以下の累積放射ノイズの写真において、試験片の位置は同じであるので、省略する。
図18から明らかなように、100 MHz乃至5 GHzの周波数範囲内で-10 dBm以上の累積放射ノイズが実質的に観察されなかった。これから、実施例1の第一の電磁波吸収フィルムは、100 MHz乃至5 GHzの周波数範囲において優れた放射ノイズ吸収能を有することが確認された。
実施例2
(1) 第二の電磁波吸収フィルムの製造
粒径分布が50~80μmのダイヤモンド微粒子を電着したパターンロール2a,2bを有する図9(a) に示す構造の装置を用い、実施例1と同じアルミニウム薄膜の全面に下記特性の二方向の線状痕を形成し、第二の電磁波吸収フィルムを得た。
幅Wの範囲:0.5~50μm
平均幅Wav:30μm
横手方向間隔Iの範囲:1~5μm
平均横手方向間隔Iav:40μm
平均長さLav:1 mm
交差角θs:90°
交差する線状痕を全面に有する第二の電磁波吸収フィルムの表面抵抗率及び光透過率を実施例1と同じ方法により測定した結果、それぞれ25Ω/□及び3%であった。
(2) 第一及び第二の電磁波吸収フィルムの接着
上記第二の電磁波吸収フィルムを実施例1で製造した第一の電磁波吸収フィルムに非導電性接着剤により接着し、図6(a) に示す近傍界電磁波吸収体を作製した。接着層20の厚さは5μmであった。
(3) 近傍界電磁波吸収体の伝導ノイズ吸収能及び放射ノイズ吸収能
実施例1と同様に近傍界電磁波吸収体のノイズ吸収率Ploss/Pin及び放射ノイズを測定した結果をそれぞれ図19及び図20に示す。図19及び図20から明らかなように、実施例2の近傍界電磁波吸収体は優れた放射ノイズ吸収能を示すとともに、伝導ノイズ吸収能についても十分であった。
実施例3
(1) 第一の電磁波吸収フィルムの製造
図9(a) に示す装置において一対のパターンロール2a,2bの代わりに、回転軸を垂直駆動する駆動部(図示せず)を有する一対のパターンロール102、102を用い、第二の製造装置とした。各パターンロール102、102の外周面全体に粒径分布が50~80μmのダイヤモンド微粒子が電着されていた。各パターンロール102、102は、金属薄膜11を有するプラスチックフィルム10が移動する間、一定の時間間隔で上下動することにより駆動された。
第二の製造装置の上流側のパターンロール122により、実施例1と同じアルミニウム薄膜に下記特性を有する線状痕の高密度領域及び低密度領域を一方向に交互に形成し、第一の線状痕群を作成した。次いで下流側のパターンロール122により、線状痕の高密度領域及び低密度領域を別方向に有する第二の線状痕群を、第一の線状痕群と同じ条件で第一の線状痕群に重ねて作成し、第一の電磁波吸収フィルムを得た。第一及び第二の線状痕群における線状痕の交差角θsは90°であった。この第一の電磁波吸収フィルムの顕微鏡写真を図21に示す。
第一及び第二の線状痕群における線状痕は下記の通り方向以外同じ特性を有していた。
高密度領域
線状痕:
幅Wの範囲:0.5~50μm
平均幅Wav:35μm
横手方向間隔Iの範囲:1~50μm
平均横手方向間隔Iav:30μm
平均長さLav:1 mm
配向方向の長さ:2 mm
低密度領域(1)
配向方向の長さ:2 mm
注:(1) 低密度領域では線状痕が微少であるので、低密度領域の配向方向の長さだけ測定した。
第一の線状痕群における高密度領域及び低密度領域の表面抵抗率及び光透過率を実施例1と同じ方法により測定した。なお、第二の線状痕群の表面抵抗率及び光透過率は第一の線状痕群と同じと見なした。
高密度領域
表面抵抗率:150Ω/□
光透過率:6%
低密度領域
表面抵抗率:3Ω/□
光透過率:1%
(2) 第一の電磁波吸収フィルムの伝導ノイズ吸収能及び放射ノイズ吸収能
実施例1と同様に第一の電磁波吸収フィルムのノイズ吸収率Ploss/Pin及び放射ノイズを測定した結果をそれぞれ図22及び図23に示す。図22及び図23から明らかなように、実施例3の第一の電磁波吸収フィルムは優れた放射ノイズ吸収能を示すとともに、伝導ノイズ吸収能についても十分であった。
実施例4
(1) 第一及び第二の電磁波吸収フィルムの接着
実施例3の第一の電磁波吸収フィルムを実施例2の第二の電磁波吸収フィルムに非導電性接着剤により接着し、図6(a) に示す近傍界電磁波吸収体を作製した。接着層の厚さは5μmであった。
(2) 近傍界電磁波吸収体の伝導ノイズ吸収能及び放射ノイズ吸収能
実施例1と同様に近傍界電磁波吸収体のノイズ吸収率Ploss/Pin及び放射ノイズを測定した結果をそれぞれ図24及び図25に示す。図24及び図25から明らかなように、実施例4の近傍界電磁波吸収体は優れた放射ノイズ吸収能を示すとともに、伝導ノイズ吸収能についても十分であった。
比較例1
実施例2で製造した1枚の第二の電磁波吸収フィルムから切り出した試験片TP1及び試験片TP2について、実施例1と同じ方法によりノイズ吸収率Ploss/Pin及び放射ノイズを測定した結果、それぞれ図26及び図27に示す通りであった。図26及び図27から明らかなように、比較例1の電磁波吸収フィルムは優れた伝導ノイズ吸収能を示したが、放射ノイズ吸収能については実施例1及び3より著しく劣っていた。
比較例2
実施例2で製造した2枚の第二の電磁波吸収フィルムを接着してなる近傍界電磁波吸収体から切り出した試験片TP1及び試験片TP2について、実施例1と同じ方法によりノイズ吸収率Ploss/Pin及び放射ノイズを測定した結果、それぞれ図28及び図29に示す通りであった。図28及び図29から明らかなように、比較例2の近傍界電磁波吸収体は良好な伝導ノイズ吸収能を示したが、放射ノイズ吸収能については実施例2及び4より著しく劣っていた。
1・・・近傍界電磁波吸収体
10,10a,10b・・・プラスチックフィルム
11,11a,11b・・・金属薄膜
12,12a,12b・・・線状痕
2a,2b,32a,32b・・・第二の電磁波吸収フィルムを製造するためのパターンロール
3a,3b,103a、103b・・・押えロール
20・・・接着層
100a・・・第一の電磁波吸収フィルム
100b・・・第二の電磁波吸収フィルム
102・・・第一の電磁波吸収フィルムを製造するために第一の装置に用いるパターンロールの一例
102a・・・ロール本体
102b・・・線状痕形成領域
102c・・・線状痕非形成領域
102d・・・高密度微粒子
102e・・・固定層
112・・・第一の電磁波吸収フィルムを製造するために第一の装置に用いるパターンロールの別の例
112a・・・ロール本体
112b・・・大外径領域
112c・・・小外径領域
112d・・・線状痕形成領域
122・・・第一の電磁波吸収フィルムを製造するために第二の装置に用いるパターンロール
α1・・・線状痕形成領域の中心角
α2・・・線状痕非形成領域の中心角
R・・・ロール本体の半径
R1・・・大外径領域の半径
R2・・・小外径領域の半径

Claims (24)

  1. プラスチックフィルムと、前記プラスチックフィルムの一面に形成された金属薄膜とを有し、前記金属薄膜は不規則な幅及び間隔で二方向に形成された実質的に平行な多数の線状痕を有するとともに、各方向において前記線状痕が高密度に形成された高密度領域と前記線状痕が低密度に形成された低密度領域とを交互に有し、両方向の線状痕の交差により前記高密度領域が格子状になっていることを特徴とする電磁波吸収フィルム。
  2. 請求項1に記載の電磁波吸収フィルムにおいて、前記高密度領域の表面抵抗率が30~200Ω/□であり、前記低密度領域の表面抵抗率が0~20Ω/□であることを特徴とする電磁波吸収フィルム。
  3. 請求項1に記載の電磁波吸収フィルムにおいて、二方向の線状痕の交差角が30~90°であることを特徴とする電磁波吸収フィルム。
  4. 請求項1に記載の電磁波吸収フィルムにおいて、各方向における前記高密度領域と前記低密度領域との長さ比が5/1~1/5であることを特徴とする電磁波吸収フィルム。
  5. 請求項4に記載の電磁波吸収フィルムにおいて、各方向における前記高密度領域の長さが0.2~10 mmであり、前記低密度領域の長さが0.2~10 mmであることを特徴とする電磁波吸収フィルム。
  6. 請求項1に記載の電磁波吸収フィルムにおいて、前記金属薄膜の厚さが20~100 nmであることを特徴とする電磁波吸収フィルム。
  7. 請求項1に記載の近傍界電磁波吸収体において、前記金属薄膜がアルミニウムからなることを特徴とする近傍界電磁波吸収体。
  8. 請求項1~5のいずれかに記載の電磁波吸収フィルムにおいて、前記線状痕の幅は0.1~100μmの範囲内にあって、平均2~50μmであり、前記線状痕の間隔は0.1~500μmの範囲内にあって、平均10~100μmであることを特徴とする電磁波吸収フィルム。
  9. プラスチックフィルムと、前記プラスチックフィルムの一面に形成された金属薄膜とを有し、前記金属薄膜は不規則な幅及び間隔で二方向に形成された実質的に平行な多数の線状痕を有するとともに、各方向において前記線状痕が高密度に形成された高密度領域と前記線状痕が低密度に形成された低密度領域とを交互に有し、両方向の線状痕の交差により前記高密度領域が格子状に分布する電磁波吸収フィルムを製造する装置であって、
    2本のパターンロールと、
    前記金属薄膜が2本のパターンロールに摺接するように前記プラスチックフィルムを搬送する手段と、
    前記金属薄膜を前記パターンロールに押圧する押えロールとを具備し、
    2本のパターンロールは前記金属薄膜に摺接する面内において前記プラスチックフィルムの幅方向に関して相互に逆の側に傾斜しており、
    各パターンロールの外周面には線状痕形成領域と線状痕非形成領域とが周方向に交互に設けられており、
    前記線状痕形成領域が表面に多数の高硬度微粒子を有することを特徴とする装置。
  10. 請求項9に記載の電磁波吸収フィルムの製造装置において、前記パターンロールの前記線状痕非形成領域が前記線状痕形成領域より半径方向内側に後退していることを特徴とする装置。
  11. 請求項10に記載の電磁波吸収フィルムの製造装置において、前記パターンロールの前記線状痕非形成領域が前記線状痕形成領域より半径方向内側に1 mm以上後退していることを特徴とする装置。
  12. 請求項9に記載の電磁波吸収フィルムの製造装置において、前記線状痕非形成領域が高硬度微粒子を有さない領域であることを特徴とする装置。
  13. プラスチックフィルムと、前記プラスチックフィルムの一面に形成された金属薄膜とを有し、前記金属薄膜は不規則な幅及び間隔で二方向に形成された実質的に平行な多数の線状痕を有するとともに、各方向において前記線状痕が高密度に形成された高密度領域と前記線状痕が低密度に形成された低密度領域とを交互に有し、両方向の線状痕の交差により前記高密度領域が格子状に分布する電磁波吸収フィルムを製造する装置であって、
    外周面全体に多数の高硬度微粒子を有する2本のパターンロールと、
    前記パターンロールに沿って前記プラスチックフィルムを搬送する手段と、
    各パターンロールの両側に配置された押えロールとを具備し、
    2本のパターンロールは前記金属薄膜に摺接する面内において前記プラスチックフィルムの幅方向に関して相互に逆の側に傾斜しており、
    各パターンロールが前記金属薄膜に間欠的に摺接するように、各パターンロール及びその両側の押えロールの少なくとも一方を前記金属薄膜に対して垂直方向に駆動する装置を具備することを特徴とする装置。
  14. 少なくとも1層のプラスチックフィルムと、第一及び第二の金属薄膜とを有する近傍界電磁波吸収体であって、
    前記第一の金属薄膜は不規則な幅及び間隔で二方向に形成された実質的に平行な多数の線状痕を有するとともに、各方向において前記線状痕が高密度に形成された高密度領域と前記線状痕が低密度に形成された低密度領域とを交互に有し、両方向の線状痕の交差により前記高密度領域が格子状に分布しており、
    前記第二の金属薄膜の全面には実質的に平行な多数の断続的な線状痕が不規則な幅及び間隔で二方向に形成されていることを特徴とする近傍界電磁波吸収体。
  15. 請求項14に記載の近傍界電磁波吸収体において、前記高密度領域の表面抵抗率が30~200Ω/□であり、前記低密度領域の表面抵抗率が0~20Ω/□であることを特徴とする近傍界電磁波吸収体。
  16. 請求項14に記載の近傍界電磁波吸収体において、前記第一の金属薄膜における各方向の前記高密度領域と前記低密度領域との長さ比が5/1~1/5であることを特徴とする近傍界電磁波吸収体。
  17. 請求項14に記載の近傍界電磁波吸収体において、前記第一の金属薄膜における各方向の前記高密度領域の長さが0.2~10 mmであり、前記低密度領域の長さが0.2~10 mmであることを特徴とする近傍界電磁波吸収体。
  18. 請求項14に記載の近傍界電磁波吸収体において、プラスチックフィルムの片面に前記第一の金属薄膜を有する第一の電磁波吸収フィルムと、プラスチックフィルムの片面に前記第二の金属薄膜を有する第二の電磁波吸収フィルムとが接着されていることを特徴とする近傍界電磁波吸収体。
  19. 請求項18に記載の近傍界電磁波吸収体において、前記第一及び第二の金属薄膜を内側にして前記第一及び第二の電磁波吸収フィルムが接着されていることを特徴とする近傍界電磁波吸収体。
  20. 請求項14に記載の近傍界電磁波吸収体において、1枚のプラスチックフィルムの両面に前記第一及び第二の金属薄膜を有することを特徴とする近傍界電磁波吸収体。
  21. 請求項14に記載の近傍界電磁波吸収体において、前記第一及び第二の金属薄膜の各々における二方向の線状痕の交差角が30~90°であることを特徴とする電磁波吸収フィルム。
  22. 請求項14に記載の近傍界電磁波吸収体において、前記第一及び第二の金属薄膜の各々の厚さが20~100 nmであることを特徴とする近傍界電磁波吸収体。
  23. 請求項14に記載の近傍界電磁波吸収体において、前記第一及び第二の金属薄膜の各々がアルミニウムからなることを特徴とする近傍界電磁波吸収体。
  24. 請求項14~23のいずれかに記載の近傍界電磁波吸収体において、前記第一及び第二の金属薄膜における前記線状痕の幅は0.1~100μmの範囲内にあって、平均2~50μmであり、前記線状痕の間隔は0.1~500μmの範囲内にあって、平均10~100μmであることを特徴とする近傍界電磁波吸収体。
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