JP2010275665A - 極細複合繊維及びその製造方法、並びに繊維構造物 - Google Patents

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Abstract

【課題】供給樹脂を溶剤に溶解又は分散することなくエレクトロスピニング法を用いてポリオキシメチレン系重合体を含む繊維の極細複合繊維を得ること、及び極細複合繊維の製造方法と極細複合繊維を含む繊維構造物を提供する。
【解決手段】本発明の極細複合繊維は、第一成分がポリオキシメチレン系重合体、第二成分が熱可塑性重合体である2以上の相を持つ固体状の複合樹脂形成物を、供給側電極前及び/又は前記供給側電極と捕集電極間で加熱溶融し、エレクトロスピニング(electro spinning)により伸張して得られる。
【選択図】図2

Description

本発明は、エレクトロスピニング法(静電紡糸法)(electro spinning)を用いた極細繊維及びその製造方法及びこの方法によって得られた極細複合繊維を含む繊維構造物に関する。
従来からポリオキシメチレン重合体を用いた繊維は、一般に溶融紡糸により製造されている(特許文献1、特許文献2)。ところが溶融紡糸法では、極細繊維を得ることは困難であり、単繊維繊度で約4deci tex以下の繊維を安定して得ることは困難であった。
一方、極細繊維を得る方法としてエレクトロスピニング法が下記特許文献3〜5によって提案されている。固体溶融エレクトロスピニング法は特許文献3に開示されている。
特開2001−009205号公報 特開2006−172821号公報 特開2007−239114号公報 特開2007−197859号公報 特開2005−154927号公報
しかし、従来のエレクトロスピニング法では、以下の問題があった。帯電しにくいポリマーは電圧をかけても細繊維化しにくく、エレクトロスピニング法に適用することは困難であった。また、前記特許文献では、紡糸前の供給樹脂を溶剤に溶解又は分散する必要があり、得られた繊維に溶剤に起因する成分が残留する問題があった。得られた繊維に溶剤が残留すると、後に溶剤に起因する成分がしみ出して様々な問題が発生するおそれがある。
本発明は、前記従来の問題を解決するため、供給樹脂を溶剤に溶解又は分散することなくエレクトロスピニング法を用いてポリオキシメチレン系重合体を含む繊維の極細複合繊維を得ること、及び極細複合繊維の製造方法と極細複合繊維を含む繊維構造物を提供する。
本発明の極細複合繊維は、第一成分がポリオキシメチレン系重合体、第二成分が熱可塑性重合体である2以上の相を持つ固体状の複合樹脂形成物を、供給側電極前及び/又は前記供給側電極と捕集電極間で加熱溶融し、エレクトロスピニング(electro spinning)により伸張して得られることを特徴とする。
本発明の極細複合繊維の製造方法は、第一成分がポリオキシメチレン系重合体、第二成分が熱可塑性重合体である2以上の相を持つ固体状の複合樹脂形成物を供給側電極に供給する工程と、前記供給側電極前及び/又は前記供給側電極と捕集側電極との間で加熱溶融する工程と、前記溶融した複合樹脂形成物をエレクトロスピニング(electro spinning)により伸張する工程を含むことを特徴とする。
本発明の繊維構造物は、第一成分がポリオキシメチレン系重合体、第二成分が熱可塑性重合体である2以上の相を持つ固体状の複合樹脂形成物を、供給側電極前及び/又は前記供給側電極と捕集電極間で加熱溶融し、エレクトロスピニング(electro spinning)により伸張して得られることを特徴とする。
本発明は、原料として第一成分がポリオキシメチレン系重合体、第二成分が熱可塑性重合体である2以上の相を持つ固体状の複合樹脂形成物を使用し、その複合樹脂形成物が電極間の供給側電極を通過する際帯電し、エレクトロスピニングすることにより伸張され、従来法では得ることが困難であった極細複合繊を使用しないで得ることができる。すなわち、紡糸前の供給樹脂を溶剤に溶解又は分散することはせず、樹脂それ自体を紡糸できるので、得られた繊維には溶剤に起因する成分が存在しない利点がある。また、本発明の極細複合繊維は、ポリオキシメチレン重合体の性質に起因して、耐有機溶剤性や耐油性に優れている。
図1は本発明における一実施例のエレクトロスピニング装置の概略説明図である。 図2は本発明における別の実施例のエレクトロスピニング装置の概略説明図である。 図3は本発明の実験番号3で得られた極細繊維の走査電子顕微鏡(SEM、倍率5000倍)の写真である。 図4は本発明の実験番号3で得られた極細繊維の走査電子顕微鏡(SEM、倍率5000倍)の写真である。 図5は本発明の実験番号3で得られた極細繊維の走査電子顕微鏡(SEM、倍率5000倍)の写真である。
本発明者は、固体溶融エレクトロスピニング法において、なぜ特定の樹脂は効率よく伸張(extension)または延伸(drawing)できないかを検討した。その結果、ある特定の樹脂にはポリプロピレン(PP)のように体積固有抵抗値が1016〜1020Ω・cmと高いものがあり、このようなものは電圧を印加しても電荷を持ちにくく、細繊維化することは困難であることがわかった。代表的樹脂の体積固有抵抗は次のとおりである。
備考1:表1のデータは旭化成アミダス社プラスチックス編集部編、「プラスチック・データブック」1999年12月1日発行、工業調査会、186頁を参考にした。
そこで、固体状の原料を用いて、体積固有抵抗の低い樹脂成分を複合樹脂形成物にすることを検討した。複合樹脂形成物の複合方法は様々あるが、繊維状の複合樹脂形成物に限って言うと断面形状から見て分割型、サイドバイサイド型、海島型、芯鞘型(これには芯と鞘をどの成分にするかの選択がある)等があり、様々な検討をした結果、原料として、少なくともポリオキシメチレン重合体を含む複合樹脂形成物を使用すると伸張性がよいことがわかった。これは、ポリオキシメチレン重合体の体積固有抵抗値が比較的低いことに起因すると考えられる。
本発明において、体積固有抵抗値はASTM D−257によって測定する。
固体溶融エレクトロスピニングは、供給側電極を通過する際に帯電された樹脂が、捕集側電極に向かって電気引力によって高速で伸張されるので、体積固有抵抗値が1015Ω・cmを超えるものは、帯電しにくいためエレクトロスピニングに不向きな樹脂である。しかし、本発明は伸張時に体積固有抵抗値が1012Ω・cm〜1013Ω・cm程度であるポリオキシメチレン重合体と熱可塑性重合体を組み合わせることにより、ポリオキシメチレン重合体の易エレクトロスピニング性の影響力で体積固有抵抗値が高い樹脂であっても伸張することができる。これは、固体状の複合樹脂形成物が電極間における供給側電極前及び/又は前記供給側電極と捕集電極間で加熱溶融されるときに、加熱溶融された原料繊維の先端において、ポリオキシメチレン重合体がエレクトロスピニングするまでに充分に帯電し、その勢いで、熱可塑性重合体も同時に伸張されてスピニングされると推測される。
本発明においては、電極間の供給側電極と捕集側電極との間に電圧を印加する。好ましい印加電圧は、20〜100kVであり、さらに好ましくは30〜50kVである。
前記の範囲であると、樹脂に帯電しやすく、電極間でスパークやコロナ放電も起こりにくく、引火等の問題もない。電圧が20kV未満であると、雰囲気中の空間(電極間)において電極間の抵抗があるため、電子の流れが悪くなり、樹脂が帯電しにくくなる恐れがある。また、100kVを超えるようであると、電極間でスパークやコロナ放電がおこり、樹脂に引火する恐れがある。
そして、電極間距離は、得られる極細複合繊維の繊維径(直径)、繊維径のばらつき、及び捕集側電極への極細繊維の集積性を考慮して、適宜選択してよい。たとえば、電極間距離は2〜25cmが好ましく、さらに好ましくは5〜20cmである。前記の範囲であると、樹脂に帯電しやすく、電極間でスパークやコロナ放電も起こりにくく、引火等の問題もない。電極間距離が2cm未満であると電極間でスパークやコロナ放電が起こりやすくなり、樹脂に引火する恐れがある。25cmを超えるようであると、電極間の抵抗が高くなり、電子の流れが妨げられ、樹脂が帯電しにくくなる傾向にある。
供給側電極に供給する複合樹脂形成物は、固体状態又は半溶融(軟化)状態で供給することが好ましい。半溶融(軟化)状態とは、複合樹脂形成物の一成分を溶融状態であり、他の一成分は非溶融状態である状態をいう。供給側電極を通過する際には、加熱して溶融状の複合樹脂形成物であってもよい。好ましくは、繊維の状態で供給する。複合樹脂形成物が繊維の状態であると、極細複合繊維の断面形状は繊維状の複合樹脂形成物の断面形状と相似形状となりやすく、エレクトロスピニングして得られる極細複合繊維の断面形状を制御しやすい。複合樹脂形成物(複合繊維)としては、モノフィラメント、モノフィラメントを複数本収束したマルチフィラメント、又はトウであることが好ましい。前記においてマルチフィラメントとはフィラメント数が2〜100本をいい、トウとはフィラメント数が100本を超えるものをいう。中でも、エレクトロスピニング性の点から、モノフィラメントを10〜1000本収束したマルチフィラメント又はトウであることが好ましい。
供給側電極を通過した直後の複合樹脂形成物(例えば固体の複合繊維)に、例えばレーザ光線を照射し、複合樹脂形成物を加熱溶融する。予め複合樹脂形成物を溶融状または半溶融状とした場合でも、加えて電極間で加熱溶融することにより、複合樹脂形成物を低粘度化することができるので、伸張性を高くすることができる。レーザ光線には、YAGレーザ、炭酸ガス(CO2)レーザ、アルゴンレーザ、エキシマレーザ、ヘリウム−カドミウムレーザなどの光源から発生されるレーザ光線が含まれる。これらのレーザ光線のうち、高分子樹脂に対して熱吸収率がよく、電源効率が高く、複合繊維の溶融性が高い点から、炭酸ガスレーザによるレーザ光線が好ましい。レーザ光線の波長は、例えば、200nm〜20μm、好ましくは500nm〜18μm、さらに好ましくは1〜16μm(とくに5〜15μm)程度である。複合樹脂形成物を加熱溶融する別の手段としては、波長780nm〜2.5μm領域の近赤外線のような公知の手段を使用することもできる。
レーザ光線の照射方法は、特に限定されないが、複合繊維に対して、局所的に照射できる点から、スポット状にレーザ光線を照射する方法が好ましい。このスポット状レーザ光線を複合繊維に照射するビーム径の大きさは、複合繊維の形状に応じて選択できる。具体的なビーム径は、例えば、線状体樹脂(例えば、モノフィラメント・マルチフィラメント・トウ等)の場合、線状体樹脂の平均径よりも大きい径であればよく、例えば、0.5〜30mm、好ましくは1〜20mm、さらに好ましくは2〜15mm(特に3〜10mm)程度である。線状体樹脂の平均径とビーム径との比率は、線状体樹脂の平均径に対して、1〜100倍程度のビーム径であってもよく、好ましくは2〜50倍、さらに好ましくは3〜30倍(特に5〜20倍)程度のビーム径である。
そして供給側電極通過後にレーザ光線を照射し、複合樹脂形成物を加熱溶融する場合、供給側電極における樹脂形成物が出る側の端部と、樹脂形成物におけるレーザ光線が照射される部位の距離は1〜6mmが好ましい。より好ましくは2〜4mmである。距離が1mm未満であると、レーザ光線照射部が電極に非常に近くなるため、電極の温度が高くなり、その結果樹脂形成物が加熱される時間が長くなり、樹脂分解を起こす恐れがあり、6mmを超えるようであると、供給側電極通過時に帯電させた樹脂形成物の帯電量が減衰していき、そこをレーザ光線で加熱溶融しても溶融状体の樹脂が捕集側電極に向かって伸張しにくい傾向にあるからである。
複合樹脂形成物を溶融するために必要なレーザ光線の出力は、複合樹脂形成物を構成するいずれかの樹脂の最も融点の高い樹脂の融点以上であり、かつ複合樹脂形成物を構成するいずれかの樹脂が発火または分解しない温度となる範囲に制御すればよい。要は、複合樹脂形成物が粘性を有する状態になればよい。複合樹脂形成物が粘性を持たせるように加熱する温度は、複合樹脂形成物の供給速度やレーザ光線の出力、レーザと複合樹脂形成物間の距離、複合樹脂形成物の太さによって、加熱する温度は変わってくるが、例えばレーザ光線の場合好ましくは160℃〜1200℃、より好ましくは600℃〜800℃の加熱温度がよい。160℃を下回る温度であると加熱する熱量が少ないため溶融不良が起こり粘性をもちにくく極細化し難く、また、1200℃を超えると、樹脂が発火又は分解し繊維化できない恐れがある。また、具体的なレーザ光線の出力は、用いる複合樹脂形成物の物性値(融点)や形状、太さ、供給速度などに応じて適宜選択できるが、例えば、3〜100mA、好ましくは3〜50mA、さらに好ましくは6〜40mA程度であってもよい。レーザ光線の出力が3mA未満であると、樹脂を溶融状態にするのにレーザ光線の照射条件は、複合樹脂形成物の融点を測定して制御してもよいが、複合樹脂形成物が径の小さな線状体であり、高電圧が付与される場合には、簡便性の点から、レーザ光線の出力により制御するのが好ましい。レーザ光線は、複合樹脂形成物の周囲から1箇所又は複数箇所から照射してもよい。
溶融された複合樹脂形成物は、電気引力とともに捕集側電極に伸張される。このときの伸張倍率は100〜1000倍、好ましくは200〜800倍、さらに好ましくは300〜500倍程度である。この伸張倍率に伸ばされることにより、極細繊維化される。このときには超延伸がおきている可能性もある。この結果、体積固有抵抗値が1015Ω・cmを超える樹脂を含む極細複合繊維の好ましい直径は、5μm以下にすることができる。好ましい条件においては、直径3μm以下、さらに好ましい条件においては、1μm以下にすることができる。
本発明において、複合樹脂形成物は、繊維であり、相構造が断面から見て海島型、分割型、又は芯鞘型であるのが好ましい。このような断面であれば、供給側電極を通過する部分に帯電しやすい樹脂を選択して配置できる。
また、複合樹脂形成物が繊維である場合は、その原料複合繊維は、第一成分と第二成分の配合割合は、10:90〜90:10であることが好ましく、20:80〜80〜20であることがより好ましい。第一成分を10質量%以上含むと、第一成分の帯電し易さ、エレクトロスピニング性に起因して、複合樹脂形成物をより安定してエレクトロスピニングすることができる。第一成分が90質量%以下であると、安定して原料複合繊維を製造することができる。
なお、繊維径は円形繊維の場合は繊維の直径より求められる。繊維断面からまたは繊維側面から、繊維径(直径)を計測する。
異形断面(多角形、楕円、中空、C型、Y型、X型、不定形など)は繊維断面において同じ面積を持つ円形を仮定しその直径を計測することにより繊維径とする。従って、異形繊維の場合は繊維側面より繊維径を求めることはできない。
複合樹脂形成物は、第一成分がポリオキシメチレン系重合体、第二成分が熱可塑性重合体である2以上の相を有する。ここで、2以上の相とは、第一成分と第二成分の少なくとも2成分のポリマーを含み、かつ2成分間に界面を有する構成をいう。好ましくは、2成分のポリマーがそれぞれ不均一に又は混合されずに構成されてなる。なお、本発明でいう2以上の相を有する構成は、2成分間に界面を有さない構成、例えば、ポリマーブレンドは含まない。2以上の相を持つ複合樹脂形成物は、例えば、芯鞘型、海島型、サイドバイサイド型、分割型等の複合繊維、上記複合繊維を用いた織物、編物、不織布等の繊維構成物、及び積層フィルム等が挙げられる。
複合樹脂形成物における第一成分は、ポリオキシメチレン系重合体である。第一成分の含有量は、特に限定されないが、複合樹脂形成物中に好ましくは10質量%以上、より好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上である。好ましい上限は90質量%である。第一成分の含有量が上記範囲であると、供給側電極を通過する際帯電しやすい。また、得られた極細複合繊維は、耐有機溶剤性や耐油性に優れる。
上記ポリオキシメチレン系重合体は、ホルムアルデヒドの重合体であり、一般的にはオキシメチレン単位(−CH2O−)のみが重合されたホモポリマーと、オキシメチレン単位(−CH2O−)中にオキシエチレン単位(−CH2CH2O−)を含むコポリマーがある。市販品としては、デュポン社製商品名“デルリン”、ポリプラスチックス社製商品名“ジュラコン”、三菱エンジニアリングプラスチックス社製“ユーピタル”等があり、本発明ではこれらの市販品を使用できる。また、ポリオキシメチレン系重合体がコポリマーである場合、ポリオキシメチレン系重合体におけるオキシエチレン単位の含有量は、好ましくは0.1モル%〜15モル%であり、より好ましくは1モル%〜10モル%である。
例えばオレフィン(例えばポリプロピレン、ポリエチレン)のように体積固有抵抗値が1016Ω・cm以上のような帯電しにくい樹脂を配した場合であっても、複合樹脂形成物中にポリオキシメチレン系重合体が10質量%以上あれば、良好なエレクトロスピニングができる。仮にポリオキシメチレン系重合体とオレフィンのような体積固有抵抗値1016Ω・cm以上の熱可塑性重合体とを用いた場合、好ましい体積固有抵抗値1015Ω・cm以下の樹脂の割合は10質量%〜70質量%である。より好ましくは35質量%〜60質量%である。体積固有抵抗値1015Ω・cm以下の樹脂が10質量%未満であると、極細化しにくく、70質量%を超えるようであると、エレクトロスピニング上は問題がないが、原料である複合樹脂形成物を作る際にオレフィン部分が極端に少ないため安定した複合樹脂形成物を得るのが難しいからである。
複合樹脂形成物における第二成分は、熱可塑性重合体である。第二成分の含有量は、特に限定されないが、複合樹脂形成物中に好ましくは10質量%以上、より好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上である。好ましい上限は70質量%である。
複合樹脂形成物において第一成分と第二成分の含有割合は、質量を基準として、第一成分:第二成分が、好ましくは10:90〜90:10であり、より好ましくは35:65〜60:40である。前記の範囲であれば、電極間で帯電しやすく、紡糸性が良好となる。
熱可塑性重合体は、特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等のポリオレフィン、ポリスチレン、エチレン−プロピレンコポリマー、エチレンビニルアルコールコポリマー(以下、EVOHとも記す)、ポリエチレンテレフタレート、ポリ乳酸等のポリエステル、ナイロン、ポリウレタン等が挙げられる。また、熱可塑性重合体はポリオキシメチレン系重合体を用いてもよい。
中でも熱可塑性重合体は体積固有抵抗値が1015Ω・cm以下の樹脂であることが好ましい。熱可塑性重合体の体積固有抵抗値が1015Ω・cm以下であると、供給側電極を通過する際により帯電しやすくなり、安定して極細複合繊維を得ることができる。この効果をより顕著に得る観点から、体積固有抵抗値は106〜1014Ω・cmであることがより好ましく、107〜1014Ω・cmであることがさらに好ましい。
複合樹脂形成物が、ポリオキシメチレンと体積固有抵抗値が1015Ω・cm以下の熱可塑性重合体との組み合わせであると、共に体積固有抵抗値が低いことに起因して、供給側電極を通過する際により帯電しやすく、電極間電圧や電極間距離の条件の幅が広くなり、生産しやすい。
また、本発明で用いることができる体積固有抵抗値が1015Ω・cm以下の樹脂は見掛け体積固有抵抗値が1015Ω・cm以下の樹脂も含まれる。例えば、体積固有抵抗値が1015Ω・cmをこえる高い樹脂であっても、樹脂に体積固有抵抗値が低減するようなマスターバッチの練り込み(例えば炭素や金属塩類などのフィラー類を含むマスターバッチ)や、コロナ加工、フッ素加工、エレクトレット加工など樹脂の抵抗値を下げるような処理手法、または、体積固有抵抗値が下がるような油剤(例えばアニオン系界面活性剤やカチオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤など)などを複合樹脂表面に塗布または浸漬するような処理を、単独または複数組み合わせて用いることによって、体積固有抵抗値が高い樹脂であっても、エレクトロスピニング前までに、前記手法を用いて見掛け体積固有抵抗値を下げてやることにより、エレクトロスピニングに適した樹脂となる可能性がある。
なお、見掛け体積固有抵抗値とは、一般に樹脂で測定される体積固有抵抗(ASTM D-257)の樹脂部分が前記処理手法を用いた試料で測定された値を示す。
すなわち、樹脂そのものの体積固有抵抗ではなく、処理された樹脂が持つ、体積固有抵抗を示す物である。
体積固有抵抗値が1015Ω・cm以下であるポリマーとしては、特に限定されないが、例えば、エチレンビニルアルコールコポリマー(以下、EVOHとも記す)、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ナイロン、ポリウレタン、ポリオキシメチレン等が挙げられる。中でも、高度に帯電してエレクトロスピニングによる伸張性が大きいという点から、EVOHが好ましい。上記EVOHの体積固有抵抗値は、好ましくは106〜1015Ω・cm、さらに好ましくは107〜109Ω・cm、さらにより好ましくは107.5〜108.5Ω・cmである。
上記EVOHは、エチレン酢酸ビニル共重合体を鹸化して得られる。上記EVOHにおけるエチレンの含有量は特に限定されないが、一般的には29〜47モル(mol)%である。市販品としては、クラレ社製商品名“エバール”、日本合成化学工業社製商品名“ソアノール”等があり、本発明ではこれらの市販品を使用できる。また、EVOHの融点は、それに含まれるエチレンとビニルアルコールの含有量により異なり、例えば、エチレンを38モル%含む場合は、融点が171℃である。また、上記固体状の複合樹脂形成物に含まれる他の成分との組合せにより、エチレンの含有量が異なるEVOHを適宜選択して用いてもよい。
上記エチレン−ビニルアルコールコポリマーの融点は100℃〜190℃であることが好ましく、より好ましくは120℃〜180℃であり、さらに好ましくは140℃〜175℃である。エチレン−ビニルアルコールコポリマーの融点が100℃以上であると繊維化しやすく、エチレン−ビニルアルコールコポリマーの融点が190℃以下であると、繊維同士の交点を熱接着する場合に比較的低温で熱処理することができる。
複合樹脂形成物は、第一成分が複合樹脂形成物表面上に30%以上露出していることが好ましい。複合樹脂形成物表面上に第一成分が30%以上露出しているようにすると、帯電しにくい体積固有抵抗値が1015Ω・cmを超える熱可塑性重合体であっても、ポリオキシメチレン系重合体が充分に帯電しエレクトロスピニングされる際、その影響力により同時にエレクトロスピニングされ伸張される。
複合樹脂形成物表面上に体積固有抵抗値が1015Ω・cm以下である樹脂が30%以上露出しているようにさえすれば、体積固有抵抗が高い樹脂と低い樹脂の組み合わせでも極細複合繊維が形成され、好ましい条件の場合は直径3μm以下の極細複合繊維が得られる。
複合樹脂形成物は、第一成分及び第二成分の他に、他のポリマーを50質量%以下で含んでよい。他のポリマー分は、特に限定されず、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン、ポリトリメチレンテレフタレート、エチレン−プロピレンコポリマー等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド、ポリスチレン等のうち1種又は2種以上を混合して用いてよい。
次に本発明の極細複合繊維について説明する。極細複合繊維は、前記複合樹脂形成物を、供給側電極前及び/又は前記供給側電極と捕集電極間で加熱溶融し、エレクトロスピニングにより伸張して得られる。好ましくは、複合樹脂形成物を構成する第一成分と第二成分を含む。
極細複合繊維は、繊維内又は繊維表面からホルムアルデヒドが検出される場合がある。これは、ポリオキシメチレン重合体がオキシメチレン単位を含むことに起因すると考えられる。極細繊維内又は繊維表面に存在するホルムアルデヒドは水又はエタノール等のアルコールで洗浄することで除去することができる。
前記極細複合繊維の単繊維繊維径は5μm以下が好ましく、さらに好ましくは0.2〜3μmの範囲、特に好ましくは0.5〜2μmである。前記の範囲の極細繊維は、通常の溶融紡糸で得ることは困難である。
エレクトロスピンニングによって得られた複合繊維は、少なくとも第一成分と第二成分を含む2以上の相を有することが好ましい。ここで、2以上の相とは、第一成分と第二成分の少なくとも2成分のポリマーを含み、かつ2成分間に界面を有する構成をいう。好ましくは、2成分のポリマーがそれぞれ不均一に又は混合されずに構成されてなる。なお、本発明でいう2以上の相を有する構成は、ポリマーブレンドを含まない。2以上の相を持つ複合繊維は、例えば、芯鞘型、海島型、サイドバイサイド型、分割型、アロイ型等の複合繊維が挙げられる。2以上の相を有することにより剥離又は脱離しやすく、極細繊維が得やすい。
極細複合繊維は、断面から見て海島型、分割型、又は芯鞘型であるのが好ましい。複合樹脂形成物がマルチフィラメント又はトウである場合、マルチフィラメント又はトウが1つの繊維となったような断面形状の極細繊維となる場合がある。例えば、複合樹脂形成物として芯鞘型複合繊維を600本集束したトウを用いた場合、エレクトロスピニングにより伸張して得られた極細複合繊維は、見かけ上、島成分のセグメント数が1〜600である海島型複合繊維が得られる場合である。本発明でいう海島型及び/又は芯鞘型複合繊維は、このような断面形状の極細繊維も含む。
前記極細複合繊維は、第一成分が30〜90質量%、第二成分が70〜10質量%の範囲で含まれることが好ましい。より好ましくは第一成分が35〜60質量%、第二成分が65〜40質量%の範囲でである。前記の範囲であれば、電極間で帯電しやすく、紡糸性が良好となる。
本発明で得られた極細複合繊維を構成するいずれかの成分を脱離し、残存成分からなる極細繊維とすることもできる。これにより、さらに細い繊維とすることができる。さらに、目的とするポリマーのみを残存させた極細繊維とすることもできる。
海島構造または多成分に区分される分割構造は、独立した樹脂1成分のセグメント単位がそもそも小さい(断面形状でいうと非常に小さいものが寄り集まっている)ため、供給側電極の樹脂を帯電させるときの影響、レーザ光線で樹脂を加熱溶融するときの影響を受けやすく、セグメント全体に均一に影響しやすいからと考えられる。
得られた極細複合繊維は、どちらか一方の樹脂成分をさらに脱離させ、さらに細い繊維を取り出すこともできる。脱離方法は、酸、アルカリ、有機溶媒による方法など公知の手法でよく、別段限定はされない。脱離方法は、樹脂の溶媒に対する、溶解度積によって適宜選択するとよい。
例えば、ポリ乳酸を脱離させる場合は、80〜100℃の水や、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等を水に溶解させたアルカリ性水溶液を用いる。またエチレンビニルアルコールコポリマーを脱離させる場合は、常温(20〜30℃)のジメチルスキホキシド(DMSO)、60℃に加熱したイソプロピルアルコール、又は2−プロパノール等を用いることができる。
原料である複合樹脂形成物に対する加熱の仕方により、伸張された極細複合繊維を様々な形状にすることができる。例えば、均一に加熱することにより、複合樹脂形成物と相似形の断面形状を有する極細複合繊維を得ることができる。複合樹脂形成物の一方向の側面から加熱することにより、断面内で溶融状態の偏向が起こり、非相似形の断面形状を得ることができる。その理由は、一方の樹脂側面は十分に溶融されるので伸張されようとするが、反対面は一方の側面に比べて溶融粘度が大きいため、十分に伸張していくことができず、非相似形になるものと考えられる。具体的には、丸形断面がC型断面になるか、あるいは芯成分が2以上に分裂して、さらに細い繊維になる可能性がある。
極細複合繊維が捕集側電極に集積されると、繊維構造物を得ることができる。繊維構造物は捕集側電極に集積したものを直接採取してもよいし、捕集側電極がコンベア形状をなしており、連続的に集積する位置を移動させることにより、シート状の繊維構造物を連続して作製できるようにしてもよい。また、繊維構造物の別の採取方法としては、捕集側電極上に、金属メッシュや織布、不織布、紙などを配置し、そのシート状物の上に極細複合繊維を集積させることにより、積層構造の繊維構造物を得ることができる。さらに、カートリッジ型のフィルターなど、ある程度厚みをもつ物品のようにシート型でないものに集積させてもよい。本発明において繊維構造物とは、繊維シート、フィルター等のある程度厚みをもつ物品等の繊維堆積物をいう。
集積させる対象物は、アースを取り、捕集側電極と電位差をなくすことが好ましい。ただし、生産上特に問題がなければ、別段アースをとる必要性はなく、捕集側電極から若干浮いた状態で対象物を保持してもよい。
次に、図面を用いて製法について説明する。図1は、本発明における一実施例のエレクトロスピニング装置の概略説明図である。このエレクトロスピニング装置11は、供給側電極1と捕集側電極2との間に電圧発生装置3から電圧を印加し、供給側電極1の直下にレーザ照射装置4から矢印Xに沿ってレーザ光線を照射する。供給側電極と捕集側電極間距離は2〜25cmが好ましい。より好ましくは5〜20cmである。電極間距離が2cmを下回ると高電圧を印加するためスパークやコロナ放電が起こり、25cmを超えるようであると電気引力の効果が小さくなり、捕集側電極に溶融した繊維が伸張していかなくなる恐れがある。原料の複合繊維7は、容器5に入れられた収納繊維6から引き出され、ガイド8,9を通過し、供給ローラ10からエレクトロスピニング装置11に供給される。原料の複合繊維は、ボビンに巻き取られた糸巻体から供給してもよい。複合繊維7は供給側電極を通過する際帯電する。この帯電状態で、供給側電極1の直下でレーザ照射装置4から矢印Xに沿ってレーザ光線が照射されることにより、複合繊維7は加熱溶融され、電気引力とともに捕集側電極に伸張される。このとき複合繊維は矢印Y方向に伸張され、極細化する。12は極細化された複合繊維が集積した繊維構造物(シート)である。
図1において、原料の複合繊維が複数本、例えば図11に示すように複合繊維7a〜7fの6本のとき、レーザ照射装置4から反射板ミラー13を介して供給側電極1の直下にレーザ光線を照射してもよい。このとき、反射板ミラー13を操作して、レーザ光線を矢印X1からX2に角度θで振る。これにより、原料の複合繊維7a〜7fの全部にレーザ光線を照射できる。このようにすれば、複合樹脂形成物が多数本の複合繊維又は不織布の形態であっても紡糸できる。
図2は、本発明における別の実施例のエレクトロスピニング装置の概略説明図である。このエレクトロスピニング装置20は、予備加熱領域26が設けられ、複合樹脂形成物は、予備加熱領域に供給され、予備加熱される。そして、ポリイミド樹脂板23に取り付けた供給側電極21に高電圧端子22から電圧を印加する。供給側電極はニードル状が好ましい。ニードル状電極において、好ましいニードル長さは5〜30mmである。さらに好ましいニードル長さは10〜20mmである。ニードル長さが5mmを下回ると原料である複合繊維の押し出す方向性が定まらず、レーザ光線照射部分に誘導しがたくなる傾向にある。また30mmを超えるようであると、ニードル内を原料繊維が通過する際に抵抗がかかり、押し出すときにスムーズに押し出されない可能性がある。ニードル内径は10〜2000μmが好ましい。より好ましい内径は20〜1650μmである。内径が20μmを下回ると、処理本数が少なくなり、細いため原料繊維を通すのが難しくなる。2000μmを超えるようであると繊維の内部の方まで帯電させることが難しくなる傾向にある。そして、ニードル状電極は1本である必要はなく、一度に多量のエレクトロスピニングを行いたい場合には、太いニードル1本で行うよりは、細い複数本のニードルを束ねた方が、原料繊維のレーザ光線照射部に誘導する誘導性について有利である。好ましいニードル本数は1〜1000本である。さらに好ましいニードル本数は1〜300本である。捕集側電極24にはアースを取る。供給側電極21の直下に複数のレーザ照射装置25,25から矢印X1,X2に沿ってレーザ光線を照射する。原料の複合繊維7は、供給側電極21を通過する際帯電する。この帯電状態で、供給側電極21の直下でレーザ照射装置25,25から矢印X1,X2に沿ってレーザ光線が照射されることにより、複合繊維7は加熱溶融され、電気引力とともに捕集側電極24に伸張される。このとき複合繊維は矢印Y方向に一例として数百倍に伸張され、極細化する。29は極細化された複合繊維の集積物である。また、供給側電極と捕集側電極の間に、加熱伸張領域を設けてもよい。加熱伸張領域では、レーザ照射部以降の捕集側電極付近に近づくにつれて温度が低くなる場合、伸張している最中に樹脂の結晶化が始まり、細く引くことが困難になる傾向にあるから、例えば電気ヒーターやなどの加熱手段から熱を送り、繊維が急冷されないように、ヒーターや油槽などの加熱手段から熱を送り、加熱伸張領域を加熱する事が好ましい。加熱伸張領域の温度は繊維の種類にもよるが、合成繊維のガラス転移点以上融点以下に加熱するとよい。具体的には加熱伸張領域の温度は50〜300℃が好ましく、さらに好ましくは100〜200℃である。加熱方法は電気を使用した方法で行うことが、細かい温度調整が容易であることから好ましい。
以下、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
実施例及び比較例で用いた測定方法は以下のとおりである。
<繊維径の測定方法>
走査電子顕微鏡(SEM、日立製作所社製商品名“S−3500N”、倍率1500倍)を使用して、繊維側面を観察し、任意の30本の単繊維の測定結果から平均値を求めた。
<目付け>
JIS L 1906(2000)に準じて測定した。
<引張強度>
JIS L 1096 6.12.1(ストリップ法)に準じ、幅5cm、長さ15cmの不織布の試験片を用いて、複合繊維の長さ方向の引張強度を測定した。
<突刺強度>
不織布を、25mmφの固定枠にセットし、先端部半径1mmφの突刺針を100mm/分で突刺し、不織布に穴等の欠陥が生じた時の荷重[gf]を求め、突刺強度とした。なお、1gfは9.8×10-3Nである。
<透気度>
JIS P 8117に準じて測定した。測定装置としてB型ガーレーデンソメーター(東洋精機社製)を使用した。不織布の試験片を直径28.6mm、面積645mm2の円孔に締付ける。内筒重量567gにより、筒内の空気を試験円孔部から筒外へ通過させる。空気100ccが通過する時間を測定し、透気度(ガーレー値)とした。
<平均孔径及び最大孔径>
ASTM F 316 86に準じて、バブルポイント法によって測定した。
<捕集効率>
JIS B 9908に準じ、フィルターユニットの替わりに不織布の試験片を装着し、濾過面を100mmφとして測定する測定法により、測定速度5.3cm/秒で大気塵を濾過し、濾過前後の0.3〜2.0μmの粒子を分画し、粒子の個数を測定して下記式により捕集効率を算出した。なお、3サンプルの平均値を用いた。
捕集効率(%)=(1−C2/C1)×100
上記式において、C1は濾過前の粒子の個数であり、C2は濾過後の粒子の個数である。
<圧力損失>
上記捕集効率測定時のフィルターユニットの替わりに装着した不織布の試験片の上流側の圧力及び下流側の圧力を測定し、上流側の圧力と下流側の圧力の差を圧力損失とした。
1.原料樹脂
下記の樹脂を使用した。
(1)ポリオキシメチレン系重合体(POM):三菱エンジニアリングプラスチックス社製、“A40−EF”、融解ピーク温度170.8℃、結晶化温度146℃、メルトインデックス59g/10min、Mz357000、体積固有抵抗値1012〜1013Ω・cmを使用した。
(2)エチレン−ビニルアルコールコポリマー(EVOH):日本合成化学社製“SG544”、融点170℃、JIS−K−7210に準じて測定したメルトフローレート(MFR;測定温度230℃、荷重21.18N(2.16kgf))45を使用した。
(3)ポリプロピレン(PP):日本ポリプロ社製商品名“SA03”、融点161℃、JIS−K−7210に準じて測定したメルトフローレート(MFR;測定温度230℃、荷重21.18N(2.16kgf))30を使用した。
2.原料複合樹脂形成物の製造
原料複合樹脂形成物は、常法にしたがい、溶融紡糸し未延伸糸を得、原料の複合樹脂形成物(複合繊維)とした。
3.エレクトロスピニング方法
エレクトロスピニング装置は図2に示す装置を使用し、その条件は表2に示すとおりとした。
レーザ装置:鬼塚硝子社製PIN−30R(定格出力30W、波長10.6μm、ビーム径6mm)
供給側電極とレーザ照射部の距離:4mm
供給側電極:ユニコントロールズ株式会社製 UNシリーズ 20G×15を1本で使用
4.繊維径の測定方法
走査電子顕微鏡(SEM、日立製作所社製商品名“S−3500N”、倍率1500倍)を使用して、繊維側面を観察し、任意の30本の測定結果から平均値を求めた。
(実施例1)
実験番号1〜4について、原料複合樹脂形成物の第1成分、第2成分、断面構造、樹脂比率、繊維径について、表2に示すとおりとした。
これらの原料複合樹脂形成物を使用して、図2に示すエレクトロスピニング方法で極細繊維を製造した。エレクトロスピニング条件及び得られた極細繊維の繊維径を表2にまとめて示す。
実験番号1〜3はいずれも複合樹脂形成物中にポリオキシメチレン系重合体を含んでおり、良好にエレクトロスピニングを行うことができ、極細繊維が得られた。また、実験番号1〜3は、原料として分割型構造の複合樹脂形成物を使用したため、相似形の極細複合繊維が得られた。
実験番号1〜3で得られた極細繊維の走査電子顕微鏡(SEM、倍率5000倍)の写真を図3〜図5にそれぞれ示す。
実験番号4は、体積固有抵抗値が1015Ω・cm以下であるEVOHを含むため、エレクトロスピニングを行うことができ、極細繊維が得られた。
実験番号1〜4の極細複合繊維を、それぞれ目付が6、9、12、20g/m2となるように集積して得た繊維集合物を作製した。実施例1〜4の繊維集合物の目付け、厚み、引張強度、突刺強度、透気度、平均孔径、最大孔径、圧力損失、捕集効率等の材料特性を上記のとおり測定し、その測定結果を表3に示した。
実験番号1〜3の繊維集合物は、実験番号4と比較して引張強度及び突刺強度が高い。また、引張強度はポリオキシメチレン重合体の配合割合が多いほど高い。実験番号1〜3で得られた繊維集合物は、適度な透気度、孔径を有しており、フィルター用素材に適した不織布であった。
本発明で得られる極細の複合繊維及び繊維構造物は、紙、不織布、フィルター、吸音材、電池用セパレータ等に有用である。また、油性燃料を濾過するためのフィルター素材として特に有用であり、例えば、自動車、電気機器等の駆動部付近に用いるフィルターとして利用できる。
1,21 供給側電極
2,24 捕集側電極
3 電圧発生装置
4,25 レーザ照射装置
5 容器
6 繊維収納物
7 原料複合樹脂形成物
8,9 ガイド
10 供給ローラ
11,20 エレクトロスピニング装置
12 極細化された複合繊維
13 反射板ミラー
22 高電圧端子
23 ポリイミド樹脂板
26 予備加熱領域
29 極細化された複合繊維の繊維構造物(シート)

Claims (9)

  1. 第一成分がポリオキシメチレン系重合体、第二成分が熱可塑性重合体である2以上の相を持つ固体状の複合樹脂形成物を、供給側電極前及び/又は前記供給側電極と捕集電極間で加熱溶融し、エレクトロスピニング(electro spinning)により伸張して得られる極細複合繊維。
  2. 熱可塑性重合体は体積固有抵抗値が1015Ω・cm以下の樹脂である請求項1に記載の極細複合繊維。
  3. 熱可塑性重合体はエチレン−ビニルアルコールコポリマーである請求項1又は2に記載の極細複合繊維。
  4. 第一成分が複合樹脂形成物表面上に30%以上露出している請求項1〜3のいずれかに記載の極細複合繊維。
  5. 前記極細複合繊維を構成する繊維成分は2以上の相を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の極細複合繊維。
  6. 前記複合樹脂形成物は繊維であり、相構造が海島型、分割型、又は芯鞘型である請求項1〜5のいずれかに記載の極細複合繊維。
  7. 前記複合樹脂形成物は、モノフィラメント、又は複数本収束したマルチフィラメント若しくはトウである請求項1〜6のいずれかに記載の極細複合繊維。
  8. 第一成分がポリオキシメチレン系重合体、第二成分が熱可塑性重合体である2以上の相を持つ固体状の複合樹脂形成物を供給側電極に供給する工程と、
    前記供給側電極前及び/又は前記供給側電極と捕集側電極との間で加熱溶融する工程と、
    前記溶融した複合樹脂形成物をエレクトロスピニング(electro spinning)により伸張する工程を含む極細複合繊維の製造方法。
  9. 第一成分がポリオキシメチレン系重合体、第二成分が熱可塑性重合体である2以上の相を持つ固体状の複合樹脂形成物を、供給側電極前及び/又は前記供給側電極と捕集電極間で加熱溶融し、エレクトロスピニング(electro spinning)により伸張して得られ、前記極細複合繊維を構成する繊維成分は2以上の相を有している極細複合繊維を含むことを特徴とする繊維構造物。
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