JP2020050966A - ポリアセタール3次元構造体 - Google Patents

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【課題】例えばPTFEやPEなどと比較して、優れた耐熱性・耐薬品性を有するとともに、安価で安全に製造可能なポリアセタール3次元構造体を提供することを目的とする。【解決手段】本発明のポリアセタール3次元構造体は、ポリアセタールを含むファイバーにより形成されるとともに、当該ファイバーが他のファイバーと複数箇所接して構成される3次元構造を有する。【選択図】図1

Description

本発明はポリアセタール3次元構造体に関する。
一般に、プラスチック製不織布等の3次元構造体の材料としては、PTFEなどのフッ素系樹脂やPEなどのポリオレフィンが用いられる。用途によって要求性能は異なるが、耐薬品性を有し、薄膜でも高強度であるものが広く好まれる。表面に親水性処理を施したり、製造過程で空隙率を制御してガスバリア性を担保したりなど様々な開発が行われている。
しかしながら、ポリオレフィンは安価であるが、耐熱性が低く、120℃を超える環境下では変形してしまい高温環境下での利用が難しいという問題がある。一方、フッ素樹脂は耐熱性・耐薬品性には優れるが、原料が炭化水素に比べ希少であり、重合技術も複雑なため製造コストがかさみ、一般的に高価である。また、製造過程で有毒なフッ化水素を発生する危険が常にあることや、さらに昨今、PFOA(パーフルオロオクタン酸)等のフッ素化合物の排出量も削減が求められている。したがって、ポリオレフィンやフッ素系樹脂の優れた特性を有しながらも安価で安全に製造可能な、環境負荷の小さい素材で製造された3次元構造体の開発が望まれる。
本発明は、上述した課題を解決するものであり、例えばPTFEやPEなどと比較して、優れた耐熱性・耐薬品性を有するとともに、安価で安全に製造可能なポリアセタール3次元構造体を提供することを目的とする。
本発明者は、上述した課題を解決するべく鋭意検討した結果、ポリアセタールを3次元網目構造に構造制御することにより、上記課題を解決可能であることが見出された。
すなわち、本発明は、以下の通りである。
〔1〕ポリアセタールを含むファイバーにより形成されるとともに、当該ファイバーが他のファイバーと複数箇所接して構成される3次元構造を有する、ポリアセタール3次元構造体。
〔2〕
ファイバーの平均直径が1μm以下である、上記〔1〕に記載のポリアセタール3次元構造体。
本発明によれば、例えばPTFEやPEなどと比較して、優れた耐熱性・耐薬品性を有するとともに、安価で安全に製造可能なポリアセタール3次元構造体を提供することができる。
実施例のポリアセタール3次元構造体を示すSEM(走査型電子顕微鏡)写真である。
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明はその実施の形態のみに限定されるものではない。すなわち、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
本実施形態のポリアセタール3次元構造体は、ポリアセタールを含むファイバーにより形成されるものであって、当該ファイバーが他のファイバーと複数箇所接して構成される3次元構造を有する。本実施形態のポリアセタール3次元構造体は、例えばPTFEやPEなどの材料と比較して、優れた耐熱性・耐薬品性を有するとともに、安価で安全に製造することができる。
[構造]
本実施形態のポリアセタール3次元構造体は、ファイバーが他のファイバーと複数箇所接して構成される3次元構造を有する。具体的には、複数の無配向のファイバー同士が複数箇所で接して形成される3次元構造を有する。なお、ファイバーが他のファイバーと複数箇所接するとは、ファイバー同士が例えば融着して接している場合や、それぞれのファイバーが融着せずに接している場合も含むものとする。また、ファイバーとは、直径が2.0μm以下であり、長さが直径の1.3倍以上であるものを指し、本実施形態のポリアセタール3次元構造体はファイバー以外の、ポリアセタールを含む部分を含んでいてもよい。
本実施形態において、ファイバーに好適な平均直径は3次元構造体の用途により異なるが、ファイバーの平均直径は1μm以下であることが好ましく、これにより3次元構造特有の柔軟性を発現することができる。さらに、ファイバーの平均直径が0.25μm以下となる場合は、3次元構造体の比表面積が大きくなるため、3次元構造体をガス分離膜などに用いる場合に好適である。また、ファイバー同士は化学結合的な接着状態でもよく、互いに独立した相互侵入網目構造であってもよい。
本実施形態において、ファイバーの平均長さは、平均直径の1.5倍以上であることが好ましく、より好ましくは2.0倍以上であり、さらに好ましくは5.0倍以上である。これにより、3次元構造特有の柔軟性を発現することができる。
ファイバーの構造、平均直径、平均長さは、SEM観察により確認することができる。またファイバーの平均直径、平均長さは、SEM写真において、ファイバーのうち、ファイバーが他のファイバーと接する部分以外の線状の部分を無作為に30本選択し、その直径や長さを測定して算術平均することで得ることができる。
[性状]
本実施形態のポリアセタール3次元構造体は、比表面積が50〜2000m2/gであることが好ましく、より好ましくは50〜1600m2/gであり、さらに好ましくは50〜1300m2/gである。比表面積を当該範囲内にすることにより、適切な柔軟性を確保しやすくなるとともに、ガス分離膜などに用いる場合に好適である。なお、比表面積は、窒素吸着試験により測定することができる。
[ポリアセタール]
本実施形態におけるポリアセタールは、分子鎖が[−CH2−O−]単位のみからなるホモポリマーであってもよく、分子鎖が[−CH2−O−]単位とともにコモノマー由来の単位を含むコポリマーであってもよい。ポリアセタールのコポリマーは、コモノマー成分の含有量が少ないほど結晶性が高まり剛直になる傾向があるが、コモノマー成分の含有量は用途によって選択できる。
モノマーとしては、[−CH2−O−]単位を形成するものであれば特に限定されず、環状エーテルを用いることができ、具体例を挙げると1,3,5−トリオキサンである。
コモノマーとしては、一般にポリアセタールの共重合成分として用いることができる次の式(I)の構造式で表される単位を形成するものを任意に用いることができる。
[−O−(CH2n−]・・・(I)
式(I)中、nは2〜8の整数であり、nは2であることが好ましい。
具体例としては、エチレンオキシド、プロピレン1,2−オキシド、ブチレン1,2−オキシド、ブチレン1,3−オキシド、1,3−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、1,3−ジオキセパン、及び1,3,6−トリオキソカンが挙げられる。
また本実施形態におけるポリアセタールは、特に限定されず任意の方法により得ることができる。
本実施形態において、ポリアセタールの重量平均分子量(Mw)は1000以上であることが、ポリアセタール3次元構造体の強度の観点から好ましい。より好ましくは、重量平均分子量(Mw)は10,000〜3000,000であり、さらに好ましくは1000,000〜15000,000である。重量平均分子量(Mw)が上記の範囲であることにより、高い強度を発揮しながら、成形加工性に優れた材料となる。
なお、上記の重量平均分子量(Mw)および下記の分子量分布は、PMMAを標準物質としてゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定することで得ることができる。
本実施形態において、ポリアセタールの分子量分布は、特に限定されず、低分子量画(分子量1,000〜10,000)にピークもしくはショルダーを有し、高分子量画(分子量10,000以上)にもピークやショルダーを有する2峰性であってもよいし、単峰性であってもよい。強度を優先する場合は高分子量画に1つのピークを有する単峰性がよく、加工性や柔軟性を優先する場合は低分子量画を有していてもよい。好ましくは、低分子量画(分子量1,000〜10,000)にテーリングし、高分子量画(分子量10,000以上)にもピークを有する単峰性であり、この分子量分布であることにより、耐熱性・強度・耐薬品性に優れた材料となる。
[ポリアセタール3次元構造体の製造方法]
本実施形態のポリアセタール3次元構造体は、特に限定されないが例えば、次の方法で製造することができる。即ち、公知の方法により得たポリアセタール樹脂を、ポリアセタール樹脂を溶解可能な第1溶媒に溶かしてポリアセタール溶液を得、次いで、当該溶液を第1溶媒の融点よりも低い温度に冷却して固化させる。その後、第1溶媒よりも融点が低く、ポリアセタール樹脂が不溶であり、第1溶媒と混ざり合う第2溶媒を、当該ポリアセタール溶液の固化物に第1溶媒の融点よりも低い温度を維持するように加えて洗浄し(第1溶媒を第2溶媒へ抽出し)、その後、ポリアセタール樹脂を乾燥することで、ポリアセタール3次元構造体を得ることができる。
ここで、上記の第1溶媒は、ポリアセタール樹脂を溶解可能であれば特に限定されず、第1溶媒としては、例えばヘキサフルオロイソプロパノールが挙げられる。
また、第2溶媒は、第1溶媒よりも融点が低く、ポリアセタール樹脂が不溶であり、第1溶媒と混ざり合うものであれば特に限定されず、第2溶媒としては、アセトン、エタノール、メタノール、テトラヒドロキシフラン等が挙げられる。
また、上記のポリアセタール溶液は、適切な3次元構造を得る観点から、ポリアセタール樹脂の濃度が0.1〜100mg/mLであることが好ましく、より好ましくは0.5〜50mg/mLである。また、適切な3次元構造を得る観点から、ポリアセタール溶液を冷却して固化させた際の冷却温度と第2溶媒の融点との差は、5℃以上が好ましく、より好ましくは10℃以上であり、さらに好ましくは15℃以上である。
以下、実施例によって本実施形態を具体的に説明するが、実施例によって何ら限定されるものではない。
[実施例]
直径16mmのフッ素樹脂製試験管に、1,3,5−トリオキサンを2g計量して撹拌子と入れ、セプタムキャップをした。90℃に加温したオイルバス中に試験管を固定し、1,3,5−トリオキサンを融解させたのち、1,3−ジオキソランを100μL加え、次いでシクロヘキサンで0.06mmol/mLに調製した三フッ化ホウ素ジブチルエーテル溶液を100μL添加し重合を開始した。30分後、セプタムキャップを外し、20%トリエチルアミン/エタノール溶液を1mLとアセトン2.5mLをそれぞれ加え重合を停止した。生成したポリマーを砕いて取り出し、洗浄後、濾過し、25℃下で2時間の真空乾燥し、約2gのポリアセタールのコポリマーを得た。このポリアセタールの重量平均分子量(Mw)は、174,857であった。なお、重量平均分子量(Mw)は、東ソー株式会社製GPC装置(HPLC8320)を使用し、溶離液にトリフルオロ酢酸ナトリウム塩を0.4質量%溶解させたヘキサフルオロイソプロパノールを用い、標準物質としてPMMAを用いて、測定した。
このポリアセタールをヘキサフルオロイソプロパノールと混合して10mg/mLの混合液5mLをスクリュー管に調製し、超音波洗浄機にて1hr超音波を照射しポリアセタールを溶解させた。次いで、氷と塩化ナトリウムを混合して−20℃に温度管理したビーカーにスクリュー管を浸け、ポリアセタール−ヘキサフルオロイソプロパノール溶液を冷却・固化させた。次いで、アセトンを上記の溶液の固化物が液化しないように10mL加えて洗浄し、窒素ブローにより溶媒を除去したのち25℃下で2時間の真空乾燥を行うことでポリアセタールの固体を得た。当該固体を、SEM(HITACHI製、S−4700)を用いて1万倍で観察したところ、図1のSEM写真に示すように、当該固体が、ファイバー同士が複数箇所接して構成される3次元構造を有することがわかった。また、SEM写真において、ファイバー同士が接する部分以外の線状の部分を30本無作為に選択して直径および長さを測定し、算術平均して得た平均直径および平均長さは、それぞれ、0.085μm、1.72μmであった。
このポリアセタール3次元構造体を高分子電解質膜の補強材として用いたところ、その成形過程における熱処理後もファイバー形状や空隙を維持し、高強度の高分子電解質膜となった。
本発明のポリアセタール3次元構造体は、その耐熱性・耐薬品性と高い強度により、フッ素系樹脂製の不織布等、多孔質膜の代替として利用することができる。また、その大きな比表面積により、各種物質の吸着・吸収、分離、有害物質の除去、有価物質の回収、触媒の単体、さらにその耐摩耗性によりアラミン樹脂製スポンジの代替など、広範な分野で利用することができる。

Claims (2)

  1. ポリアセタールを含むファイバーにより形成されるとともに、当該ファイバーが他のファイバーと複数箇所接して構成される3次元構造を有する、ポリアセタール3次元構造体。
  2. ファイバーの平均直径が1μm以下である、請求項1に記載のポリアセタール3次元構造体。
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