JP5004774B2 - 極細複合繊維及びその製造方法、並びに繊維構造物 - Google Patents

極細複合繊維及びその製造方法、並びに繊維構造物 Download PDF

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Description

本発明は、エレクトロスピニング法(静電紡糸法)(electro spinning)を用いた極細複合繊維及びその製造方法並びにこの極細複合繊維を含む繊維構造物に関する。
従来からポリプロピレン(PP)繊維は一般的に溶融紡糸法により製造されている。ところが溶融紡糸法では、極細のPP繊維は困難であり、とりわけ直径20μm(単繊維繊度で約3deci tex)以下の繊維を安定して得ることは困難であった。
一方、極細繊維を得る方法としてエレクトロスピニング法が下記特許文献1〜3によって提案されている。固体溶融エレクトロスピニング法は特許文献1に開示されている。
特開2007−239114 特開2007−197859 特開2005−154927
しかし、従来のエレクトロスピニング法には、以下の問題があった。PPそれ自体は、電圧をかけても細繊維化しにくく、エレクトロスピニング法に適用することは困難であった。また、特許文献1〜3では、固体溶融エレクトロスピニング法による複合繊維の伸張性は具体的に検討がなされていなかった。
本発明は前記従来の問題を解決するため、供給繊維原料を特定なものとすることにより、エレクトロスピニング法を用いたポリプロピレン(PP)を含む極細複合繊維及び極細複合繊維を得る方法、極細複合繊維を含む繊維構造物を提供する。
本発明の極細複合繊維は、ポリプロピレン(PP)樹脂と、その外周を包皮するように配されたエチレン−ビニルアルコールコポリマー(EVOH)である固体状の複合樹脂形成物を、電極間における複合樹脂形成物供給側電極前及び/又は電極間で加熱溶融し、エレクトロスピニング(electro spinning)により伸張して得られることを特徴とする。
本発明の繊維構造物は、ポリプロピレン(PP)樹脂と、その外周を包皮するように配されたエチレン−ビニルアルコールコポリマー(EVOH)である固体状の複合樹脂形成物を、電極間における複合樹脂形成物供給側電極前及び/又は電極間で加熱溶融し、エレクトロスピニング(electro spinning)により伸張して得られる極細複合繊維を含むことを特徴とする。
本発明のポリプロピレン極細繊維は、前記極細複合繊維のエチレン−ビニルアルコールコポリマー(EVOH)を脱離して得られることを特徴とする。
本発明の極細複合繊維の製造方法は、ポリプロピレン(PP)樹脂と、その外周を包皮するように配したエチレン−ビニルアルコールコポリマー(EVOH)である固体状の複合樹脂形成物を供給する工程、電極間における複合樹脂形成物供給側電極前及び/又は電極間で加熱溶融する工程、溶融した複合樹脂形成物をエレクトロスピニング(electro spinning)により伸張する工程を含むことを特徴とする。
本発明は、ポリプロピレン(PP)樹脂と、その外周を包皮するように配されたエチレン−ビニルアルコールコポリマー(EVOH)である固体状の複合樹脂形成物を用いてエレクトロスピニングすることにより、従来法では得ることが困難であったポリプロピレン(PP)を含む極細複合繊維を効率よく得ることができる。
本発明者らは、固体溶融エレクトロスピニング法において、なぜポリプロピレン(PP)が伸張(extension)または延伸(drawing)できないかを検討した。その結果、ポリプロピレン(PP)の体積固有抵抗値は1016〜1020Ω・cmと高く、電圧を印加しても電荷を持ちにくいこと、その結果、細繊維化することは困難であることがわかった。そこで、体積固有抵抗の低い樹脂成分を複合樹脂形成物にすることを検討した。様々な検討をした結果、体積固有抵抗の低いエチレン−ビニルアルコールコポリマー(EVOH)によって外周を包皮(被覆)するとエレクトロスピニングによる伸張性が格段に向上することを知り、本発明に至った。すなわち、ポリプロピレン(PP)樹脂と、その外周を包皮するように配されたエチレン−ビニルアルコールコポリマー(EVOH)である固体状の複合樹脂形成物を供給原料として使用するのがもっとも伸張性がよいことがわかった。エチレン−ビニルアルコールコポリマー(EVOH)の体積固有抵抗値は107〜109Ω・cmである。体積固有抵抗値のデータは旭化成アミダス社「プラスチックス」編集部編、「プラスチック・データブック」1999年12月1日発行、工業調査会、186頁を参考にした。
エチレン−ビニルアルコールコポリマー(EVOH)は、エチレン酢酸ビニル共重合体を鹸化して得られる。一般的にエチレン含有量は29〜47モル%である。市販品としては、クラレ社製商品名“エバール”、日本合成化学工業社製“ソアノール”等があり、本発明ではこれらの市販品を使用できる。ポリプロピレン(PP)は汎用樹脂であり、多くのメーカーから販売されており、本発明ではこれらの市販品を使用できる。
本発明においては、電極間すなわち供給側電極と捕集側電極との間に電圧を印加する。好ましい電圧は、20〜100kVであり、さらに好ましくは30〜50kVである。
電圧が20kV未満であると、雰囲気中の空間(電極間)において電極間の抵抗があるため、電子の流れが悪くなり、樹脂が帯電しにくくなる恐れがある。また、100kVを超えるようであると、電極間でスパークがおこり、樹脂に引火する恐れがある。
そして、極間距離は2〜25cmが好ましく、さらに好ましくは5〜20cmである。極間距離が2cm未満であると電極間でスパークが起こりやすくなり、樹脂に引火する恐れがあり、25cmを超えるようであると、電極間の抵抗が高くなり、電子の流れが妨げられ、樹脂が帯電しにくくなる傾向にあるからである。
供給側電極に供給する複合樹脂形成物は、固体状態で供給することが好ましい。供給側電極を通過する際には、加熱して溶融状または半溶融(軟化)状の複合樹脂形成物であってもよい。好ましい複合樹脂形成物の形態は繊維(糸)の状態である。供給糸(複合繊維)としては、モノフィラメント、モノフィラメントを複数本収束したマルチフィラメント、又はトウであることが好ましい。前記においてマルチフィラメントとはフィラメント数が2〜100本をいい、トウとはフィラメント数が100本を超えるものをいう。
供給する複合樹脂形成物は、供給側電極を通過するとき帯電する。このときポリプロピレン(PP)樹脂の外周を包皮するようにエチレン−ビニルアルコールコポリマー(EVOH)が配されているので、PPが帯電しにくくても、EVOHが高度に帯電してエレクトロスピニングによる伸張性が大きくなる。EVOHの体積固有抵抗は106〜1015Ω・cmであることが好ましい。より好ましくは、107〜109Ω・cmである(特に107。5〜108.5Ω・cm)。EVOHの体積固有抵抗値が1015Ω・cmを超えると帯電しにくくなり、エレクトロスピニングが難しくなる傾向にある。
なお、体積固有抵抗値は樹脂の場合通常ASTM D-257によって測定される。
供給側電極を通過した直後の複合樹脂形成物に、例えばレーザ光線を照射し、加熱溶融する。予め複合樹脂形成物を溶融状または半溶融状とした場合でも、加えて電極間で加熱溶融することにより、複合樹脂形成物を低粘度化することができるので、伸張性を高くすることができる。レーザ光線には、YAGレーザ、炭酸ガス(CO2)レーザ、アルゴンレーザ、エキシマレーザ、ヘリウム−カドミウムレーザなどの光源から発生されるレーザ光線が含まれる。これらのレーザ光線のうち、電源効率が高く、複合繊維の溶融性が高い点から、炭酸ガスレーザによるレーザ光線が好ましい。レーザ光線の波長は、例えば、200nm〜20μm、好ましくは500nm〜18μm、さらに好ましくは1〜16μm(とくに5〜15μm)程度である。レーザ光線の照射方法は、特に限定されないが、複合繊維に対して、局所的に照射できる点から、スポット状にレーザ光線を照射する方法が好ましい。このスポット状レーザ光線を複合繊維に照射するビーム径の大きさは、複合繊維の形状に応じて選択できる。具体的なビーム径は、例えば、線状体樹脂(モノフィラメント・マルチフィラメント・トウ等)の場合、線状体樹脂の平均径よりも大きい径であればよく、例えば、0.5〜30mm、好ましくは1〜20mm、さらに好ましくは2〜15mm(特に3〜10mm)程度である。線状体樹脂の平均径とビーム径との比率は、線状体樹脂の平均径に対して、1〜100倍程度のビーム径であってもよく、好ましくは2〜50倍、さらに好ましくは3〜30倍(特に5〜20倍)程度のビーム径である。
複合樹脂形成物を溶融するために必要なレーザ光線の出力は、複合樹脂形成物を構成するいずれかの樹脂のうち高い融点を有する樹脂の融点以上であり、かつ複合樹脂形成物のいずれかの樹脂が発火または分解しない温度となる範囲に制御すればよい。要は、複合樹脂形成物が粘性を有する状態になればよい。複合樹脂形成物が粘性を持たせるように加熱する温度は、複合樹脂形成物の供給速度やレーザ光線の出力、レーザと複合樹脂形成物間の距離、複合樹脂形成物の太さによって、加熱する温度は変わってくる。例えばレーザ光線の場合好ましくは、164℃〜1200℃、より好ましくは600℃〜800℃の加熱温度がよい。164℃を下回る温度であると、原料に加熱する熱量が少ないため溶融不良がおき極細化しがたく、また、1200℃を超えるようであると、樹脂が発火又は分解し繊維化できない恐れがある。また、具体的なレーザ光線の出力は、用いる複合繊維の物性値(融点)や形状、太さ、供給速度などに応じて適宜選択できるが、例えば、5〜20mA、好ましくは6〜10mA程度であってもよい。レーザ光線の照射条件は、複合繊維の融点を測定して制御してもよいが、複合繊維が径の小さな線状体であり、高電圧が付与される場合には、簡便性の点から、レーザ光線の出力により制御するのが好ましい。レーザ光線は、複合繊維の周囲から1箇所又は複数箇所から照射してもよい。
溶融された複合樹脂形成物は、電気引力によって捕集側電極に向かって伸張される。このときの伸張倍率は100〜1000倍、好ましくは200〜800倍、さらに好ましくは300〜500倍程度である。この伸張倍率に伸ばされることにより、極細化される。このときには超延伸がおきている可能性もある。この結果、ポリプロピレンを含む極細複合繊維の繊維径は17μm以下にすることができる。好ましい条件においては繊維径4μm以下、さらに好ましい条件においては1μm以下にすることができる。
なお、繊維径は円形繊維の場合は繊維の直径より求められる。繊維断面からまたは繊維側面から、繊維径(直径)を計測する。
異形断面(多角形、楕円、中空、C型、Y型、X型、不定形など)は繊維断面において同じ面積を持つ円形を仮定しその直径を計測することにより繊維径とする。従って、異形繊維の場合は繊維側面より繊維径を求めることはできない。
本発明において、供給原料の複合樹脂形成物のポリプロピレン(PP)とエチレン−ビニルアルコールコポリマー(EVOH)との割合は、質量比で10:90〜70:30の範囲であることが好ましい。より好ましくは35:65〜60:40である。この範囲であれば極細複合繊維を安定して得ることができる。
得られた極細複合繊維は、エチレン−ビニルアルコールコポリマー(EVOH)をさらに脱離させ、ポリプロピレン(PP)繊維のみを取り出すこともできる。エチレン−ビニルアルコールコポリマー(EVOH)は、一例として2−プロパノールを含む水溶液またはジメチルスルホオキシド(DMSO)で加熱することにより脱離できる。脱離されたポリプロピレン極細繊維は、得られた極細複合繊維よりさらに細くなる可能性がある。得られるポリプロピレン極細繊維の繊維径は、13μm以下であることが好ましい。より好ましいポリプロピレン極細繊維の繊維径は、5μm以下である。例えば、好ましい条件において1.2μm程度にされた芯鞘比50:50の極細複合繊維は、エチレン−ビニルアルコールコポリマーを脱離することによって、さらに細い0.3μmのポリプロピレン極細繊維を得ることができる。
また、原料である複合樹脂形成物に対する加熱の仕方により、伸張された極細複合繊維及び/または芯成分のポリプロピレンを様々な形状にすることができる。例えば、均一に加熱することにより、相似形の断面形状を得ることができる。複合樹脂形成物の一方向の側面から加熱することにより、断面内で溶融状態の偏向が起こり、非相似形の断面形状を得ることができる。その理由は、一方の樹脂側面は十分に溶融されるので伸張されようとするが、反対面は一方の側面に比べて溶融粘度が大きいため、非相似形になるものと考えられる。具体的には、丸形断面がC型断面になるか、あるいは芯成分が2以上に分裂して、さらに細い繊維になる可能性がある。
極細複合繊維が捕集側電極に集積されると、繊維構造物を得ることができる。繊維構造物は捕集側電極に集積したものを直接採取してもよいし、捕集側電極がコンベア形状をなしており、連続的に集積する位置を移動させることにより、シート状の繊維構造物を連続して作製できるようにしてもよい。また、繊維構造物の別の採取方法としては、捕集側電極に、金属メッシュや織布、不織布、紙などを配置し、そのシート状物の上に極細複合繊維を集積させることにより、積層構造の繊維構造物を得ることができる。
前記極細複合繊維を含む繊維構造物は、エチレン−ビニルアルコールコポリマーを脱離することにより、さらに細い繊維構造物を得ることができる。一例としては、2−プロパノールを含む水溶液またはジメチルスルホオキシドで加熱することによりエチレン−ビニルアルコールコポリマーを脱離して得ることができる。
次に図面を用いて製造方法について説明する。図1Aは本発明の一実施例で使用する原料の複合樹脂形成物である複合繊維の断面図である。この複合繊維20はモノフィラメントであり、芯がポリプロピレン(PP)21、鞘がエチレン−ビニルアルコールコポリマー(EVOH)22からなる芯鞘構造をしている。図1Bは本発明の一実施例で得られた極細複合繊維の断面図である。この複合繊維23は、芯が極細化されたポリプロピレン(PP)24、鞘が極細化されたエチレン−ビニルアルコールコポリマー(EVOH)25からなる芯鞘構造をしている。
図2Aは本発明の別の実施例で使用する原料の複合樹脂形成物である複合繊維の断面図である。例えば、この複合繊維26はマルチフィラメントを仮止めした例であり、芯がポリプロピレン(PP)27、鞘がエチレン−ビニルアルコールコポリマー(EVOH)28からなる芯鞘構造のフィラメントを複数本収束している。収束するための仮止めは、例えば複数本の複合繊維に熱湯をかけることにより得られる。図2Bは本発明の別の実施例で得られた極細複合繊維の断面図である。この複合繊維30は、芯が極細化されたポリプロピレン(PP)31、鞘が極細化されたエチレン−ビニルアルコールコポリマー(EVOH)32からなる芯鞘構造をしている。
図3は本発明における一実施例のエレクトロスピニング装置の概略説明図である。このエレクトロスピニング装置11は、供給側電極1と捕集側電極2との間に電圧発生装置3から電圧を印加し、供給側電極1の直下にレーザ照射装置4から矢印Aに沿ってレーザ光を照射する。供給側電極と捕集側電極の電極間距離は2〜25cmが好ましい。より好ましくは5〜20cmである。電極間距離が2cmを下回ると高電圧を印加するため放電が起こり、25cmを超えるようであると電気引力の効果が小さくなり、捕集側電極に溶融した樹脂(繊維)が伸張していかなくなる恐れがある。原料の複合樹脂形成物である複合繊維7は、容器5に入れられた繊維堆積物6から引き出され、ガイド8,9を通過し、供給ローラ10からエレクトロスピニング装置11に供給される。原料の複合繊維は、ボビンに巻き取られた糸巻体から供給してもよい。複合繊維7は供給側電極を通過するときに帯電する。この帯電状態で、供給側電極1の直下でレーザ照射装置4から矢印Aに沿ってレーザ光線が照射されることにより、複合繊維7は加熱溶融され、電気引力とともに捕集側電極に伸張される。このとき複合繊維は矢印B方向に伸長され、極細化する。12は極細化された複合繊維の構造物である。
本発明の極細複合繊維を製造する場合、好ましくは供給側電極と捕集側電極間において、レーザによる樹脂形成物の溶融加熱後、例えば電気ヒーターによる方法、又は、油槽による方法など、レーザ溶融した樹脂が加熱領域を設けて、溶融または半溶融(軟化)状態を維持することが好ましい。レーザ照射部以降の捕集側電極に近づくにつれて温度が低くなる場合、伸張している最中に樹脂の結晶化が始まり、細く引くことが困難になる傾向にあるからである。ヒーターなどの加熱手段から熱を送り、加熱を維持する加熱領域の温度は繊維の繊維径にもよるが、PPやEVOHが結晶化しにくい温度がよく、加熱維持温度は50〜300℃が好ましく、さらに好ましくは100〜140℃である。
また、加熱方法は電気を使用した方法で行うことが、細かい温度調整が容易であることから好ましい。
以下、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
(1)原料繊維の製造
ポリプロピレン(PP)は日本ポリプロ社製商品名“SA03”、融点161℃、JIS−K−7210に準じて測定したメルトフローレート(MFR;測定温度230℃、荷重21.18N(2.16kgf))30を使用した。エチレン−ビニルアルコールコポリマー(EVOH)は日本合成化学社製“K3835BN”、融点171℃、JIS−K−7210に準じて測定したメルトフローレート(MFR;測定温度230℃、荷重21.18N(2.16kgf))35を使用した。
原料繊維は、常法にしたがい、芯成分は250℃、鞘成分は230℃で溶融紡糸し、紡糸時にドラフトせず採取した未延伸糸を図1Aの原料繊維とし、引き取り速度250m/分(ドラフト倍率約500倍)で採取した繊維を図2Bの原料繊維とした。
(2)エレクトロスピニング方法
エレクトロスピニング装置は図3に示す装置を使用し、その条件は次のとおりとした。
電極間の電圧:35kV
電極間距離:8cm
原料繊維の送り出し速度:6.0mm/min
雰囲気温度:28℃
レーザ装置:鬼塚硝子社製PIN−30R(定格出力30W、波長10.6μm、ビーム径6mm)
レーザ強度:100V 8mA
供給側電極とレーザ照射部の距離:4mm
(3)繊維径の測定方法
走査電子顕微鏡(SEM、日立製作所社製商品名“S−2300”、倍率5000倍)を使用して、繊維側面を観察し、任意の40本の測定結果から平均値を求めた。
(実施例1)
実験番号1〜3については、複合樹脂形成物である原料繊維は図1Aに示す断面構造のものを使用した。実験番号4〜5(比較例)の断面構造は表1に示す。その他、実験番号1〜5の芯鞘成分、樹脂比率、繊維径については、表1に示すとおりである。
これらの原料繊維を使用して、前記したエレクトロスピニング方法で極細繊維を製造した。得られた実験番号1の極細繊維の走査電子顕微鏡(SEM、倍率2000倍)の写真を図4に示す。実験番号2〜3も同様な外観であった。
得られた極細繊維は、2−プロパノール70gと蒸留水30gからなる90℃の混合溶液にエチレン−ビニルアルコールコポリマー(EVOH)が完全に溶解するまで十分に浸漬し、エチレン−ビニルアルコールコポリマー(EVOH)を除去した。EVOH除去後の実験番号1〜3の極細繊維の走査電子顕微鏡(SEM、倍率2000倍)の写真を図5〜7に示す。得られた結果を表1に示す。
表1から明らかなとおり、実験番号1〜3は芯がポリプロピレン(PP)、鞘がエチレン−ビニルアルコールコポリマー(EVOH)の複合繊維を原料として使用したことにより、スピンニング後の繊維径1.85〜16.34μmが得られた。エチレン−ビニルアルコールコポリマー(EVOH)の成分比が多いほうが、スピニング性は良好で細径化できたが、繊維径分布のバラツキは大であった。
また、エチレン−ビニルアルコールコポリマー(EVOH)を除去した後、ポリプロピレン(PP)単独の極細繊維を得ることができた。
(実施例2)
実験番号6〜8については、複合樹脂形成物である原料繊維は図2Aに示す断面構造のものを使用し、芯鞘成分、樹脂比率、繊維径については、表2に示すとおりである。この繊維を60本使用して収束させた。収束は60本の繊維の束を、一方をクリップで固定し、他方を軽く引っ張り緊張させる事により引きそろえ、熱湯をかけ仮固定し、乾燥させることにより得られた。例えば、実験番号6においては、繊維径120μmのフィラメント繊維を60本収束させ、図2Aのようにした。
これらの原料繊維を使用して、前記したエレクトロスピニング方法で極細繊維を製造した。得られた実験番号6の極細繊維の走査電子顕微鏡(SEM、倍率5000倍)の写真を図8に示す。実験番号9〜10も同様な外観であった。
得られた極細繊維は、2−プロパノール70gと蒸留水30gからなる90℃の混合溶液にエチレン−ビニルアルコールコポリマー(EVOH)が完全に溶解するまで十分に浸漬し、エチレン−ビニルアルコールコポリマー(EVOH)を除去した。EVOH除去後の実験番号6〜8の極細繊維の走査電子顕微鏡(SEM、倍率5000倍)の写真を図9〜11に示す。得られた結果を表2に示す。
表2から明らかなとおり、実験番号6〜8は芯がポリプロピレン(PP)、鞘がエチレン−ビニルアルコールコポリマー(EVOH)の複合繊維を原料として使用したことにより、スピニング後の繊維径1.21〜1.53μmが得られた。スピンニング性は良好で、実施例1と比較しても、さらに安定して細径化でき、繊維径分布のバラツキも小さかった。
また原料の芯鞘複合繊維と相似形の極細複合繊維が得られた。
また、エチレン−ビニルアルコールコポリマー(EVOH)を除去した後のポリプロピレン(PP)の繊維径は0.43〜1.28μmであった。
本発明で得られる極細複合繊維、又は極細のポリプロピレン(PP)は、フィルター、電池セパレータ(特にリチウムイオン電池用セパレータ)、紙、不織布等、人工皮革用基布として有用である。
図1Aは本発明の一実施例で使用する原料の複合樹脂形成物である複合繊維の断面の一例である、図1Bは本発明の一実施例で得られた極細複合繊維の断面の一例である。 図2Aは本発明の別の実施例で使用する原料の複合樹脂形成物である複合繊維の断面の一例である、図2Bは本発明の別の実施例で得られた極細複合繊維の断面の一例である。 図3は本発明における一実施例のエレクトロスピニング装置の概略説明図である。 図4は本発明の実施例1、実験番号1で得られたEVOH除去前の極細繊維の走査電子顕微鏡(SEM、倍率2000倍)の写真である。 図5は本発明の実施例1、実験番号1で得られたEVOH除去後の極細繊維の走査電子顕微鏡(SEM、倍率2000倍)の写真である。 図6は本発明の実施例1、実験番号2で得られたEVOH除去後の極細繊維の走査電子顕微鏡(SEM、倍率2000倍)の写真である。 図5は本発明の実施例1、実験番号3で得られたEVOH除去後の極細繊維の走査電子顕微鏡(SEM、倍率1000倍)の写真である。 図8は本発明の実施例2、実験番号6で得られたEVOH除去前の極細繊維の走査電子顕微鏡(SEM、倍率5000倍)の写真である。 図9は本発明の実施例2、実験番号6で得られたEVOH除去後の極細繊維の走査電子顕微鏡(SEM、倍率5000倍)の写真である。 図10は本発明の実施例2、実験番号7で得られたEVOH除去後の極細繊維の走査電子顕微鏡(SEM、倍率5000倍)の写真である。 図11は本発明の実施例2、実験番号8で得られたEVOH除去後の極細繊維の走査電子顕微鏡(SEM、倍率5000倍)の写真である。
符号の説明
1 供給側電極
2 捕集側電極
3 電圧発生装置
4 レーザ照射装置
5 容器
6 繊維構造物
7,20,26 原料複合繊維
8,9 ガイド
10 供給ローラ
11 エレクトロスピニング装置
12,23,30 極細化された複合繊維
21,24,27,31 芯PP
22,25,28,32 鞘EVOH

Claims (9)

  1. ポリプロピレン(PP)樹脂と、その外周を包皮するように配されたエチレン−ビニルアルコールコポリマー(EVOH)である固体状の複合樹脂形成物を、電極間における複合樹脂形成物供給側電極前及び/又は電極間で加熱溶融し、エレクトロスピニング(electro spinning)により伸張して得られる極細複合繊維。
  2. 前記極細複合繊維は、ポリプロピレン(PP)樹脂とエチレン−ビニルアルコールコポリマー(EVOH)が相分離している請求項1に記載の極細複合繊維。
  3. 前記極細複合繊維は、前記複合樹脂形成物の芯鞘構造の複合繊維の断面形状と相似形の繊維断面を有している請求項1または2に記載の極細複合繊維。
  4. 前記固体状の複合樹脂形成物が芯鞘構造の複合繊維であり、芯鞘構造の複合繊維がモノフィラメント、又は複数本収束したマルチフィラメント若しくはトウである請求項1から3いずれか1項に記載の極細複合繊維。
  5. 前記固体状の複合樹脂形成物における前記ポリプロピレン(PP)と前記エチレン−ビニルアルコールコポリマー(EVOH)との割合が、質量比で10:90〜70:30の範囲である請求項1〜4いずれか1項に記載の極細複合繊維。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の極細複合繊維のエチレン−ビニルアルコールコポリマー(EVOH)を脱離して得られるポリプロピレン極細繊維。
  7. ポリプロピレン(PP)樹脂と、その外周を包皮するように配されたエチレン−ビニルアルコールコポリマー(EVOH)である固体状の複合樹脂形成物を、電極間における複合樹脂形成物供給側電極前及び/又は電極間で加熱溶融し、エレクトロスピニング(electro spinning)により伸張して得られる極細複合繊維を含む繊維構造物。
  8. ポリプロピレン(PP)樹脂と、その外周を包皮するように配したエチレン−ビニルアルコールコポリマー(EVOH)である固体状の複合樹脂形成物を供給する工程、電極間における複合樹脂形成物供給側電極前及び/又は電極間で加熱溶融する工程、溶融した複合樹脂形成物をエレクトロスピニング(electro spinning)により伸張する工程を含む極細複合繊維の製造方法。
  9. 前記加熱溶融する工程において、加熱がレーザ光線の照射である請求項8記載の極細複合繊維の製造方法。
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