JP5311455B2 - 紡糸方法並びにそれを用いた繊維製造方法及び装置 - Google Patents

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本発明は、レーザー光を照射して素材を加熱溶融するとともに溶融部位を帯電して静電力により繊維を紡出する紡糸方法並びにそれを用いた繊維製造方法及び装置に関する。
近年、ナノファイバーが着目されている。サブミクロン又はナノメータオーダの繊維径を有する繊維(ナノ繊維)は、高い比表面積と繊維形態とを活用した新規な材料を開発可能な点から注目されている。一般に、極細繊維を製造する方法としては、高分子の溶融液を高圧で押出すと共に熱風で吹き飛ばして極細(微細)繊維を製造するメルトブロー法がある。この方法においては、ノズル内の溶融物への圧力及び熱風によるせん断力によって極細繊維が製造される。しかし、このような方法では、数μm以上の直径を有する極細繊維を製造できるものの、ナノ繊維の製造は困難である。
そこで、ナノ繊維を製造する方法として、高分子溶液又は高分子融液に高電圧を作用させて繊維を形成する静電紡糸法が利用されている。以下、前者の高分子溶液を用いる方法を溶媒型静電紡糸法と称し、後者の高分子融液を用いる方法を溶融型静電紡糸法と称する。なお、溶融型静電紡糸法は溶媒型静電紡糸法から派生した方法であるため、これらの紡糸原理は基本的には同一である。
溶媒型静電紡糸法においては、先ず、高分子溶液をシリンジに入れ、シリンジ先端に取り付けられたノズルとコレクタ(捕集部)との間に高電圧を印加し、高い電位差を発生させる。その結果、電荷が導入された高分子溶液は、ノズル先端から反対の電荷を持ったコレクタ方向に静電引力を受けて飛翔し、ホイッピング振動(whipping motion)を起こしながら、この過程で溶媒が蒸発することによりナノ繊維が形成される。なお、ここで言うホイッピング振動(又はホイッピング振動)とは、静電引力で牽引された繊維がコレクタまでの間に1秒間に何百回〜何万回もの回転を伴う綾振り運動をしながら繊維形成される挙動を意味する。このような溶媒型静電紡糸法の装置は簡単に作製できるため広く普及し、溶媒に溶解する多くの高分子材料からナノ繊維が開発されている。従って、現状では、静電紡糸法は溶媒型静電紡糸法を指すと言っても過言でない状況である。
他方、溶融型静電紡糸法は、前述のメルトブロー法と類似する方法であり、溶融高分子に電荷を付与し、この電荷を帯びた溶融物と異種の電荷を持つ電極(コレクタ)間での電気的引力により、溶融物を自発的に伸張させ、微細繊維を作製する方法である。溶融型静電紡糸法では、電荷が非常に小さいため、得られる繊維の径は、メルトブロー法で得られる繊維の径よりも小さくすることが可能であるものの、ホイッピング振動を起こしてナノ繊維を得るまでには至っていなかった。しかし、溶融型静電紡糸法では、溶媒を使用しないため、溶媒を回収する必要もなく、また、捕集された繊維から残存溶媒の除去も必要ない。従って、溶融型静電紡糸法は、溶媒型静電紡糸法に比較して、環境に優しく、高い生産性で極細繊維を製造できることが期待されていた。
このように、溶融型静電紡糸法は、その開発が切望されているにもかかわらず、現状ではあまり研究されていない。その理由としては、以下の理由が考えられる。
(1)静電紡糸は、コレクタ方向への電気的引力が高分子の表面張力や粘弾性力に勝ると生じる機構であるため、溶融型静電紡糸法の場合、より高い電圧とより高い温度とより低い粘度とが融液に要求されること。
(2)溶媒型静電紡糸法の場合、紡糸中に高分子溶液のドラフト延伸に加えて、溶液からの溶媒の揮発が生じ、ドラフト延伸と相まって繊維径がこの揮発により小さくなるのに対して、溶融型静電紡糸法の場合、溶媒を含まないため、繊維径はドラフト延伸のみに依存し、ナノ繊維の作製が原理上危惧されること。
(3)溶融型静電紡糸法の場合、高電圧を溶融物に付与可能な加熱装置を必要とするが、加熱装置として一般的に採用される電気加熱方式では、高電圧作用の際に電源部に放電を惹起し、このような放電を防止するために装置全体が複雑かつ不安定になること。
(4)固体状態の樹脂は電気伝導性が低いため、固体状態の樹脂に印加した高電圧が有効に溶融部に伝達し難いこと。
溶融型静電紡糸法において、電気加熱方式における前記の弊害や溶融粘度を下げるための長期間の加熱滞留による樹脂の物性低下などを改良する目的で、特許文献1には、(1)ポリマーを供給する工程、(2)前記供給したポリマーに対してレーザーを照射してポリマーが変形可能な状態にする照射工程、(3)前記変形可能なポリマーを電気的に牽引し、細径化するとともに引き伸ばして繊維化する繊維化工程、及び(4)前記繊維を集積して繊維集合体を形成する繊維集合体形成工程を備えている繊維集合体の製造方法が提案されている。この文献には、ポリマーとしての繊維にレーザーの照射により熱を与え、変形可能(静電紡糸可能)な状態としているため、溶液静電紡糸法と異なり、溶媒を必要としないと記載されている。さらに、繊維を供給するのに替えて、棒状のポリマーを供給する方法も記載されている。
また、特許文献2には、原料繊維として熱可塑性高分子繊維あるいは紡糸後の繊維に赤外線を照射して低粘度化させ細化させる方法が開示されている。一方、特許文献3には、線状体樹脂の平均経の2〜50倍のビーム径を有するレーザー光線で線状体樹脂を照射して、極細繊維を生成させる溶融型静電紡糸方法が開示されている。
これまでのレーザー光線を用いる静電紡糸法では、いずれも線状材料にビーム状のレーザー光を照射する技術であった。このことは、多数本の線状熱可塑性高分子に一本毎に焦点を合わせ、多数本のビームを精密に制御する技術が必要となり、他方、精度を下げて太い径のビーム径を用いると、実質的に照射に必要とする部分以外にもレーザー光が照射され、レーザー光の照射効率が著しく低いものとなる問題点を有していた。
特開2005−154927号公報(請求項1、段落[0006]、[0015]、[0018]〜[0020]、[0025]、図1〜3) 特開2007―262644号公報(請求項1、6、段落[0003]、[0004]、[0019]、図13) 特開2007−239114号公報(請求項4、段落[0014])
従って、本発明の目的は、レーザー光を熱可塑性樹脂に効率良く照射し、溶融させて繊維を効率よく製造できる紡糸方法を提供すること、および 極細繊維で構成された繊維集合体を製造できる繊維製造方法及び装置を提供することである。
本発明に係る紡糸方法は、光源から出射したレーザー光を所定の照射ラインに沿って照射し、熱可塑性樹脂材料からなる面状体を前記照射ラインを横切るように移動させながら前記照射ラインで当該面状体の幅方向に沿って全幅にわたってレーザー光を照射することで連続して加熱溶融し、加熱溶融された前記面状体の溶融部位を帯電させることで静電力により多数の針状突出部を生成して当該針状突出部より繊維を紡出させることを特徴とする。さらに、前記針状突出部は、前記照射ラインの幅2cm当り2本以上生成することを特徴とする。さらに、紡出された繊維を輻射熱線の照射により加熱してホイッピング振動により伸長細径化させることを特徴とする。さらに、紡出された繊維を100回/秒以上の振動数でホイッピングさせることを特徴とする。さらに、前記照射ラインにおけるレーザー光の照射範囲の幅が0.5mm以上であることを特徴とする。
本発明に係る繊維製造方法は、上記の紡糸方法により紡出された繊維をコレクタに捕集して互いに重層させることで繊維集合体を形成することを特徴とする。
本発明に係る繊維製造装置は、光源から出射したレーザー光を所定の照射ラインに沿って照射するように制御するレーザー照射部と、熱可塑性樹脂材料からなる面状体を前記照射ラインを横切るように移動させて前記照射ラインで当該面状体の幅方向に沿って全幅にわたってレーザー光を照射することで連続して加熱溶融させる移動部と、加熱溶融された前記面状体の溶融部位を帯電させることで静電力により多数の針状突出部を生成して各針状突出部より繊維を紡出させる紡出部と、紡出された繊維を捕集する捕集部を備えていることを特徴とする。さらに、前記紡出部は、前記溶融部位に近接配置された電極部と、前記電極部及び前記捕集部の間に電圧を印加する電圧印加部とを備えていることを特徴とする。さらに、前記電極部及び前記捕集部の間には、前記針状突出部より紡出された繊維を輻射熱線により加熱する加熱部を備えていることを特徴とする。さらに、前記捕集部は、紡出された繊維をコレクタに捕集して互いに重層させることで繊維集合体を形成することを特徴とする。
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、従来のレーザー溶融静電紡糸で用いられるスポット状に照射するレーザー光の代わりにライン状に照射するレーザー光を用い、熱可塑性樹脂材料からなる素材にライン状にレーザー光を照射して多数本の繊維を同時に形成させる技術を見出した。
本発明では、ライン状のレーザー光を照射することにより、熱可塑性樹脂材料からなる素材を局所的かつ短時間で溶融できるため、高温の溶融液を長時間保持する必要がない。その結果、本発明では、従来の溶融型静電紡糸法とは異なり、生じる熱エネルギーの拡散や熱可塑性樹脂材料の熱分解を抑制でき、また、放電に対する特別な工夫を必要とせず、溶融静電紡糸が可能となる。さらに、融点の高い熱可塑性樹脂、例えば、液晶ポリマーの静電紡糸が可能になり、高融点樹脂(液晶ポリマーなど)で構成された繊維、特に極細繊維が得られる。
素材が円柱状である場合には、比較的低速で回転する円柱の軸方向に沿ってライン状にレーザー光を照射することで加熱溶融した表面から静電力により多数の針状突出部を形成して針状突出部から繊維を紡糸することができる。
また、フィルムもしくはシート状物、繊維束が平行に配列されたシート材料といったシート状の素材である場合、その表面に幅方向に沿ってライン状にレーザー光を照射して加熱溶融させ、加熱溶融された素材の溶融部位を帯電させることで静電力により多数の針状突出部を生成して各針状突出部より繊維を紡出することができる。
本発明に係る紡糸方法の特長は、(1)レーザー光が素材の全幅又は全長にわたって隙間なく照射するので、照射ロスが少なく熱可塑性樹脂材料の溶融効率が高いこと、(2)多数の針状突出部から繊維がランダムに紡出されるため、多数の繊維を同時に生産できること、(3)溶融部位に生成された針状突出部から静電力により繊維を紡出するため、熱可塑性樹脂で構成された極細繊維をエネルギー効率よく製造できる。
本発明に係る紡糸方法では、紡出される繊維を輻射熱線により加熱することで、紡出した繊維を熱可塑性樹脂材料の融点近傍の雰囲気で、毎秒100回以上のホイッピング振動をさせて極細繊維を効率良く大量に製造することができる。輻射熱線により加熱する加熱部の照射範囲を30mm以上の長さに設定することにより、紡出する繊維を加熱してホイッピング振動させて繊維が伸長され極細繊維が得られる。特に、平均繊維径5μm以下の繊維を紡糸には100回/秒以上の振動数でホイッピングさせればよい。
針状突出部の生成密度は、素材の溶融部位に対する印加電圧が高く、レーザー光のエネルギーが大きいほど密になり、印加電圧が低く、レーザー光のエネルギーが小さいほど粗になる。針状突出部の生成密度は、溶融状態の高分子の粘度にも依存するので、一律に条件を決められないが、安定にかつ効率良く繊維を製造するためには、その密度は少なくとも幅2cm当たり2本以上が必要である。
また、照射ラインにおけるレーザー光の照射範囲の幅は0.5mm以上とすることで、ライン状に素材を加熱溶融するのに有効なレーザー照射を行うことができる。
従来のスポット型レーザー光線溶融型静電紡糸法では、繊維や線状物を溶融対象とし、これらの対象物一つから1本の繊維しか形成できず、高効率な繊維形成ができなかったが、本発明では、レーザー光によりライン状に溶融部が形成され、溶融部位から静電力により針状突出部分が雨だれのように生成されて多数の箇所から同時に繊維が紡出されるので、極めて高い生産性で繊維が製造できる。レーザー光を用いるだけの融解熱量だけでは、細い繊維は冷却が進みやすくホイッピング振動による細化のための時間及び熱量が不足し、繊維のさらなる細径化が生じにくい。そこで、本発明では、ホイッピング振動を十分に行う熱空間として紡出された繊維を輻射熱線により加熱する加熱部を設けたので、ホイッピング振動によって極細繊維を生成することができ、生成された極細繊維を重層して均一なシート状極細繊維不織布を得ることができる。
生成された極細繊維をコレクタに捕集するようにすれば重層した不織布を容易に作製することができる。コレクタを移動させながら極細繊維を捕集するようにすれば、均一な厚みの不織布を作製することも可能となる。
以下に、必要に応じて添付図面を参照しつつ、本発明の実施形態を詳細に説明する。図1は、本発明の実施形態に関する一例を示す概略構成図である。繊維製造装置は、レーザービームを出射するレーザービーム発生装置1、レーザービームからライン状のレーザー光3を生成する光学系2、電極部5に電圧を印加する高電圧印加装置4、輻射熱線を照射して加熱する加熱部6、生成された繊維7を搬送ベルト表面に捕集する搬送コンベヤ8、及び、熱可塑性樹脂材料からなる平板状の素材9を搬送する供給ローラ10を備えている。図1では、紙面の上下方向が素材9の長さ方向で、矢印で示す供給方向に一致している。また、左右方向が素材9の厚さ方向であり、紙面と直交する方向が素材9の幅方向となっている。光学系2で生成されたライン状のレーザー光は、素材9の幅方向(紙面と直交方向)に設定された照射ラインに沿って照射するようになっている。
そして、レーザービーム発生装置1から出射されたレーザービームに基づいて光学系2において生成されたライン状のレーザー光が素材9の幅方向に設定された照射ラインに沿って照射されて、熱可塑性樹脂材料からなる素材9が供給ローラ10により長さ方向に供給されて照射ラインを横切るように移動することで照射ラインにおいて素材9が連続して加熱溶融する。加熱溶融された素材9の溶融部位(図1では素材9の先端部の斜線部分で表示)は、素材9の下端部を照射ラインに沿って溶融して形成される。
図2は、素材9の下端部に形成された溶融部位に関する模式図である。電極部5に対して高電圧印加装置4から電圧が印加されると素材9が帯電し、接地された搬送コンベヤ8との間で静電力が生じて素材9の溶融部位に多数の針状突出部9aが生成される。そして、静電力により針状突出部9aから搬送コンベヤ8に向かって繊維7が紡出されるようになる。
溶融部位に生成される針状突出部9aは、雨だれのようにランダムに生成されるため、紡出される繊維もランダムに生成されて搬送コンベヤ8の搬送ベルト上に捕集される。そして、捕集された繊維が重層して繊維集合体を形成するようになる。紡出された繊維7は、加熱部6を通過する際に輻射熱線により加熱され、ホイッピング振動によって細化される。
レーザービーム発生装置1に用いる光源としては、YAGレーザー、炭酸ガス(CO2)レーザー、アルゴンレーザー、エキシマレーザー、ヘリウム−カドミウムレーザー、固体半導体レーザーなどが挙げられる。これらのレーザー光源のうち、電源効率が高く、熱可塑性樹脂の溶融性が高い点から、炭酸ガスレーザーが好ましい。
なお、ファイバー伝送可能で、変換効率が高く、装置コスト及び運転コストが低くなる点から、固体半導体レーザーであってもよいが透過率が高いケースが多く、半導体レーザーを用いる場合はカーボンや金属酸化物などレーザー光線を吸収発熱し易い物質を熱可塑性樹脂に含ませるか塗布した樹脂にして樹脂を溶融させると良い。レーザービームの波長は、例えば、200nm〜20μm、好ましくは500nm〜18μm、さらに好ましくは1〜16μm(特に5〜15μm)程度である。
光学系2は、照射ラインにおけるエネルギー密度ができるだけ均一となるライン状のレーザー光を生成するものが好ましい。具体的には、(1)ビームエキスパンダーとシリンドリカルレンズを使用する光学系、(2)モータとミラーを用いてレーザービームを走査する光学系、(3)多段階位相ビーム分岐回折型光学部品(DOE)を利用する光学系、(4)カライドスコープを利用する光学系、などが挙げられる。
レーザービームをライン状に生成する方法は、前述したように種々あるが、ここではビームエキスパンダーとシリンドリカルレンズの組み合わせについて説明する。この方式におけるビームエキスパンダーは、レーザービームを一定の倍率の平行光束に拡げる役割がある。ビームエキスパンダーにおけるガリレオタイプについては、(1)凹レンズと凸レンズの組合せにより光学系の全長が比較的短くできる、(2)球面収差の補正に有利なので最小限のレンズ枚数で構成できる、といった特長を備えている。
シリンドリカルレンズは、レンズの入射面(二次元)をX軸とY軸の二つの成分に分けて考えた場合、片側の軸のみにレンズとして作用する曲率があり、他方の軸には曲率がない。そのため、物体の一方向成分のみがレンズとして作用し、レーザービームをライン状に変換するのに使用できる。
なお、レーザー光の強度分布は一般にはガウシアン分布を主とするため不均一であるが、ビームホモジナイザーを使用すれば、均一な強度分布(トップハット)を実現することができる。
ライン状のレーザー光3の照射方法は、特に限定されないが、素材に対して、局所的に照射できる点から、素材表面に対して略直角方向から照射する方法が好ましい。レーザー光3を素材に照射する範囲は、素材の形状に応じて適宜設定すればよい。生成されるライン状のレーザー光は、実質的にエネルギー分布を有するレーザー光であり、熱溶融に有効なエネルギー密度を有する領域が照射ラインに沿って帯状に形成されて長手方向に所定の長さで短手方向に所定の幅で所定の深さまで形成されている。ライン状のレーザー光の照射範囲における加熱融解領域の長さL、幅W及び深さdは、板状で分厚い透明PMMA樹脂材料の表面に垂直方向から10秒間照射することで加熱融解により形成された凹部の長さ、幅及び深さを測定して設定すればよい。
板状(又はシート状)の素材の幅が長さLより小さい場合は、必要に応じてレーザー光をマスキングして素材の幅に合致するように調整してもよい。また、素材の幅が長さLより大きい場合は複数のライン状のレーザー光を生成してそれらを照射ラインに並列して照射すればよい。例えば、素材の幅が90cmの場合、ライン状のレーザー光の長さLが150mmとすると6セットのライン状のレーザー光を照射ラインに沿って並列して素材に照射すればよい。
ライン状のレーザー光の幅Wは、例えば、板状の素材の場合その厚さの2倍以上が好ましく、さらに好ましくは、0.5mm以上で素材の厚さの2〜10倍程度である。板状の素材の場合、レーザー光の幅Wが0.5mmより小さいと、素材の照射面からその裏面までの加熱溶融に時間差が発生し、素材の厚さ方向に均一な加熱溶融が行えなくなって溶融部位にカールなどの変形が発生するようになる。
熱可塑性樹脂材料を溶融するためには、熱可塑性樹脂の融点以上で熱可塑性樹脂の発火点以下の温度まで加熱するのに必要なレーザー光のエネルギー密度となるように制御すればよいが、極細繊維を製造する場合には、エネルギー密度は大きい方が好ましい。具体的なレーザービームの出力は、素材となる熱可塑性樹脂材料の物性値(融点、LOI値(限界酸素指数))、素材の形状及び素材の移動速度などに応じて適宜選択すればよく、例えば、0.1〜50W、好ましくは1〜100W、さらに好ましくは15〜70W(特に30〜50W)程度に設定すればよい。レーザー光に関する条件設定は、素材の溶融部位における温度を測定して調整してもよいが、粘度の低い状態の樹脂に高電圧が付与される場合には、簡便性の点から、レーザー光線の出力により制御するのが好ましい。
レーザー光の照射方法としては、素材に対して一方向から照射してもよいが、素材を均一かつ充分に溶融できる点から、溶融部位に対して複数の方向から同時に照射するようにしてもよい。例えば、板状の素材の場合には前面と背面の2方向から同じ照射ラインに沿って照射すればよく、また、2方向以上、好ましくは2〜6方向、さらに好ましくは3〜5方向から同じ照射ラインに照射するようにしてもよい。
このような複数方向からの照射は、複数のレーザー光源を用いて照射してもよいが、効率よく素材を溶融するために、単独のレーザー光源により出射されたレーザービームを分割して複数の方向から照射するようにしてもよい。
素材に用いる熱可塑性樹脂材料としては、例えば、オレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレンなどのポリエチレン系樹脂、ポリプロピレンなどのポリプロピレン系樹脂など)、スチレン系樹脂(例えば、ポリスチレン、ABS樹脂、AS樹脂など)、ビニル系樹脂(例えば、ポリ塩化ビニルなどの塩化ビニル系樹脂、ポリメタクリル酸メチルなどの(メタ)アクリル系樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体系樹脂など)、ポリエステル系樹脂(例えば、ポリエチレンナフタレート系、ポリブチレンテレフタレート系、ポリトリメレチンテレフタレート系、ポリエチレンテレフタレート系などの芳香族ポリエステル系樹脂、ポリ乳酸などの脂肪族ポリエステル系樹脂、ポリアリレートなどの全芳香族ポリエステル系樹脂、液晶ポリエステル系樹脂など)、ポリアミド系樹脂(例えば、ポリアミド6などの脂肪族ポリアミド系樹脂、ナイロン9MTなどの半芳香族ポリアミド系樹脂、MXD6などの芳香族ポリアミド系樹脂、液晶ポリアミド系樹脂など)、ポリイミド系樹脂(例えば、熱可塑性ポリイミド、ポリエーテルイミドなど)、ポリカーボネート系樹脂(例えば、ビスフェノールA型ポリカーボネートなど)、熱可塑性ポリウレタン系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂(例えば、ポリフェニレンサルファイドなど)、ポリフェニレンエーテル系樹脂(例えば、ポリフェニレンエーテルなど)、ポリアセタール樹脂(例えば、ポリオキシメチレンなど)、ポリエーテルケトン系樹脂(ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトンなど)、ポリスルホン系樹脂(例えば、ポリスルホン、ポリエーテルスルホンなど)などが挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
これらの熱可塑性樹脂のうち、電荷を先端の溶融部まで充分に到達させて静電力を向上できる点から、高分子の主鎖又は側鎖に、官能基(極性基)を有する樹脂、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂などが好ましい。このような樹脂の電気抵抗は、高温時に低下するため極細繊維を形成し易い。さらに、ナノ繊維などの極細繊維を形成し易い点からは、低粘度の熱可塑性樹脂、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂などが好ましい。これらの熱可塑性樹脂を使用すると、ナノメータサイズの繊維径でありながら、均一な径の極細繊維を製造できる。特に、本発明の方法では、溶媒の選択が困難な生分解性プラスチックや、高い融点を有するエンジニアリングプラスチックであっても簡便に紡糸できる。
生分解性プラスチックとしては、例えば、脂肪族ポリエステル系樹脂や脂肪族ポリアミド系樹脂などが挙げられる。これらのうち、脂肪族ポリエステル系樹脂が好ましい。脂肪族ポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリネオペンチレンサクシネートなどのポリアルキレンサクシネート、ポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリネオペンチレンアジペートなどのポリアルキレンアジペート、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリリンゴ酸などのポリオキシカルボン酸、ポリプロピオラクトン、ポリカプロラクトンなどのポリラクトンなどが挙げられる。
エンジニアリングプラスチックとしては、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂などが挙げられる。これらのうち、溶融異方性を有するサーモトロピック液晶ポリマー(液晶ポリエステル系樹脂、液晶ポリアミド系樹脂、液晶ポリエステルアミド系樹脂など)、特に、液晶ポリエステル系樹脂が好ましい。液晶ポリエステル系樹脂は、p−置換芳香族環、直鎖状ビフェニル基、置換ナフチル基などのメソーゲン基(液晶形成能を有する基)を構造単位として有するポリエステル系樹脂であってもよい。具体的には、p−ヒドロキシ安息香酸と、ジオール(ジヒドロキシビフェニルなどの芳香族ジオール、エチレングリコールなどのC2−6アルカンジオールなど)、芳香族ジカルボン酸(テレフタル酸など)及び芳香族ヒドロキシカルボン酸(オキシナフトエ酸など)から選択された少なくとも一種の単量体との共重合体などが例示できる。より具体的には、p−ヒドロキシ安息香酸と4,4′−ジヒドロキシビフェニルとの共重合体、p−ヒドロキシ安息香酸と4,4′−ジヒドロキシビフェニルとテレフタル酸との共重合体、p−ヒドロキシ安息香酸単位とエチレンテレフタレート単位との共重合体、p−ヒドロキシ安息香酸と2−オキシ−6−ナフトエ酸との共重合体などが挙げられる。このような液晶ポリエステル系樹脂は、「ベクトラ」、「ザイダー」、「エコノール」、「X−7G」などの商品名で上市されている。液晶ポリマーは、高い機械的特性を有しているにも拘わらず、溶融流動性に優れるため、本発明の方法による極細繊維の紡糸に適している。
なお、熱可塑性樹脂は、繊維に用いられる各種の慣用の添加剤、例えば、安定剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤など)、難燃剤、帯電防止剤、着色剤、充填剤、滑剤、抗菌剤、防虫・防ダニ剤、防カビ剤、つや消し剤、畜熱剤、香料、蛍光増白剤、湿潤剤、可塑剤、増粘剤、分散剤、発泡剤などを含有してもよい。これらの添加剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
これらの添加剤は、それぞれ、熱可塑性樹脂100質量部に対して、50質量部以下の割合で使用でき、例えば、0.01〜30質量部、好ましくは0.1〜20質量部程度の割合である。
熱可塑性樹脂は、室温で固体状である。なお、固体状熱可塑性樹脂は、加熱溶融部に供給される前に、予め溶融して半固体状又は液状にしてもよいが、簡便性や作業性の点から、固体状が好ましい。
熱可塑性樹脂の形状は、レーザー光線の照射により溶融可能であれば特に限定されず、不定形であってもよいが、照射ラインに対して連続して供給し、レーザー光の照射により局所的に短時間で加熱溶融するためには、面状体が好ましい。面状体において、断面形状は、特に限定されず、多角形状(三角や四角形状など)、楕円形状、不定形状などであってもよいが、長方形状、連続したシート形状又はテープ状といった面状体が好ましい。
面状体のサイズは、電極部における移送性を考慮して厚さ0.05mm以上、幅3cm以上のものを用いると安定供給しやすい。面状体の長さは、特に限定されず、必要な繊維の量に応じて選択すればよく、例えば、10cm以上であるが、通常、連続的に供給される場合には、1m以上(例えば、1〜1000m程度)であればよい。
素材を照射ラインに対して横切る方向に移動させるように供給する手段は、所定方向に素材を移動可能なものであれば特に限定されないが、通常、電気的な駆動力(モータの回転など)を利用して、素材を一定速度で移動可能な機構(例えば、モータの回転運動を直線運動に変換する機構)を有する装置が用いられる。特に、面状体の場合には、その樹脂を固定可能な保持部(チャック)を有する装置であってもよい。素材の供給速度は、繊維が製造可能であれば、生産性の点からは高い方が好ましく、例えば、1〜1000mm/時間、好ましくは5〜500mm/時間、さらに好ましくは10〜300mm/時間(特に50〜200mm/時間)程度である。
素材9の溶融部位に対して電圧を印加する方法は、溶融部に充分な電荷を供給し易い点から、レーザー光の照射ラインと電荷を付与するための電極部5とを一致させる直接印加方法が好ましいが、簡便に装置を作製できる点、レーザー光を有効に熱エネルギーに変換できる点、レーザー光の反射方向を容易に制御でき、安全性が高い点などから、レーザー光の照射ラインと電極部5とを別個の位置に設ける間接印加方法(特に、素材の供給方向における下流側にレーザー光の照射ラインを設定する方法)であってもよい。間接印加方法の場合、電極部5と照射ラインとは可能な限り近接することが好ましく、特に、本発明では、電極部5よりも下流側で素材にレーザー光を照射するとともに、電極部5と照射ラインとの間の距離(例えば、電極部の下流側端部と照射ラインとの間の距離)を所定の範囲(例えば、5mm〜20mm程度)に調整するのが好ましい。この距離は、熱可塑性樹脂の導電率、熱伝導率、ガラス転移点、レーザー光の照射エネルギー量などに応じて設定すればよく、例えば、0.5〜10mm、好ましくは5〜8mm、さらに好ましくは5〜7mm程度である。両者の間の距離をこうした範囲に設定すると、レーザー光の照射ライン近傍において熱可塑性樹脂の分子運動性が高まり、溶融状態の熱可塑性樹脂に充分な電荷を付与できるため、静電紡糸の生産性が向上する。
電極部5に印加する電圧は、装置内で放電しない範囲で高電圧であるのが好ましく、電極部5とコレクタである搬送コンベヤ8との間の距離、レーザー光の照射エネルギー量などに応じて適宜設定すればよい。具体的には、一般的な印加電圧としては、例えば、0.1〜80kV/cm、好ましくは1〜50kV/cm、さらに好ましくは5〜30kV/cm(特に10〜25kV/cm)程度である。本発明では、電極部5に印加する電圧は、レーザー光によって素材9が溶融する際に印加されて、素材9の溶融部位に電荷が付与され、電極部5と搬送コンベヤ8との間に電位差が生じる状態になっていればよい。また、印加するタイミングは特に限定されないが、電極部5に電圧が印加された後、レーザー光の照射が行われるようにタイミング制御すればよい。
電極部5は、導電性材料(通常、金属成分)で構成されていればよく、例えば、クロムなどの6A族元素、白金などの8族金属元素、銅や銀などの1B族元素、亜鉛などの2B族元素、アルミニウムなどの3B族元素などの金属単体や合金(アルミニウム合金やステンレス合金など)、又はこれらの金属を含む化合物(酸化銀、酸化アルミニウムなどの金属酸化物など)などが挙げられる。これらの金属成分は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの金属成分のうち、銅、銀、アルミニウム、ステンレス合金などが特に好ましい。
電極部5により素材9を効率よく帯電させるためには、電極部5を平板状の一対の電極板を互いに平行に配置してその間に通路を形成し、この通路に挿入された板状の素材9に対して電荷を付与するようにすればよい。電極部5に形成される通路の形状は、素材9の形状に応じて適宜設計すればよい。
電極部5の通路には、素材9に電荷を付与し易いように、電極板の表面に(特に略全表面に亘り)コイル状金属線やブラシ状金属細線集合体などの金属線を配設してもよい。金属線を構成する金属材料としては、電極部5で例示された金属材料を使用することができ、通常、銅、銀、アルミニウム、ステンレス合金などが使用される。金属細線集合体は金属繊維であってもよい。金属繊維としては、例えば、アモルファス金属繊維、ステンレス繊維、超弾性NT(ニッケル・チタン)合金ワイヤ、チタンワイヤなどが挙げられる。
一対の電極板の表面にコイル状金属線を配設すると、コイルに対向する素材に対して容易に高電圧が付与できる。一方、電極板に金属細線集合体を配設すると、金属細線が素材を柔らかく取り囲むとともに電荷を素材に対して付与できる。金属細線の配列方向を素材9の供給方向と同様に重力の方向と一致するように設定すれば特に有用である。
素材9の溶融部位に電荷が付与されると、溶融部位の表面に電荷が集まり、次第に円錐状(いわゆるテーラーコーン)の針状突出部がランダムに生成される。そして、生成された針状突出部の先端から静電によりコレクタである搬送コンベヤ8に向けて噴射され、繊維となる。
素材9の溶融部位には高電圧が印加されているため、搬送コンベヤ8との間には電位差が生じている。電位差による電界は、例えば、0.1〜40kV/cm、好ましくは1〜30kV/cm、さらに好ましくは5〜25kV/cm(特に10〜20kV/cm)程度であればよい。
素材9の溶融部位とコレクタである搬送コンベヤ8との間の距離は、加熱部6により繊維が加熱されて繊維にホイッピング振動を付与可能であれば特に限定されず、50mm以上であればよいが、効率よく極細繊維を製造するため、例えば、60〜300mm、好ましくは70〜200mm程度であってもよい。
素材9の溶融部位と搬送コンベヤ8との間の空間(紡糸空間)は、不活性ガス雰囲気であってもよい。紡糸空間を不活性ガス雰囲気とすることにより、熱可塑性樹脂の熱劣化や発火を抑制できるため、レーザー光の出力を高めることが可能となる。不活性ガスとしては、例えば、窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガス、炭酸ガスなどが挙げられるが、通常は窒素ガスが使用される。不活性ガスは、例えば、電極部5の電極板に、不活性ガスを供給するための流路を形成して素材9が挿入される通路から紡糸空間に不活性ガスを供給するようにしてもよい。
本発明では、素材9の溶融部位から紡出された繊維の繊維径を小さくするため、紡糸空間に加熱部6を設置して、紡出して伸長する繊維が加熱部6を通過することにより輻射熱線により加熱される。
加熱部6は、紡糸空間の空気又は不活性ガスを介して、紡出して伸長する繊維を加熱できる機構を有していれば特に限定されず、例えば、ヒーター(ハロゲンヒーター、電気ヒーター等)で加熱する機構、レーザー光線を照射する機構などであってもよい。電熱線が露出する電気ヒーター等の加熱体では、放電電流によって装置が故障するおそれがあるため、ハロゲンランプなどの加熱体を用いる機構やレーザーを照射する機構、特に、加熱効率の点から、ハロゲンランプを用いたハロゲンヒーターで加熱する機構が好ましい。
さらに、加熱方法としては、熱風を用いる方法では、伸長する繊維の動きを阻害するため、輻射熱線を照射する方法が好ましい。さらに、輻射熱線の付与方法は、ハロゲンランプなどによる直接輻射法や、セラミック製電気絶縁性チューブに絶縁性熱媒を循環させる方法などであってもよいが、簡便性や温度を制御し易い点から、放射加熱用蓄熱ブロックを設け、これをハロゲンランプなどの加熱体で加熱して輻射熱線を照射する方法が好ましい。なお、このような蓄熱ブロックを用いる方法では、加熱体の種類は、特に限定されない。
シリンドリカルレンズを用いてライン状のレーザー光を素材表面に照射する場合、シリンドリカルレンズの焦点距離とビームエキスパンダで拡大されたレーザービーム径を考慮して、ライン状のレーザー光の形成の際に蓄熱ブロックがレーザー光を遮蔽しないように蓄熱ブロックの形状、シリンドリカルレンズの焦点距離およびハロゲンランプの位置を設定しなければならない。特に、長いライン状のレーザー光を用いる場合には注意が必要である。
加熱部6での加熱温度は、熱可塑性樹脂の発火点未満の温度であればよいが、ホイッピング振動を促進し、極細繊維を形成するためには、熱可塑性樹脂の融点近傍の加熱温度にするのが好ましい。熱可塑性樹脂の融点近傍の加熱温度とは、熱可塑性樹脂の種類や溶融粘度、耐熱安定性などによっても変わるので一律には決めることはできないが、具体的には、熱可塑性樹脂の融点をmp(℃)としたとき、(mp−70)℃〜(mp+100)℃、好ましくは(mp−50)℃〜(mp+80)℃、さらに好ましくは(mp−30)℃〜(mp+60)℃[特に(mp)℃〜(mp+50)℃]程度である。このような加熱温度で伸長する繊維を加熱すると、熱可塑性樹脂の流動性維持及び細化の優位性だけでなく、電荷をさらに繊維の先端まで行き渡らせる効果を有している。すなわち、固体状態の熱可塑性樹脂は一般的物性として電気抵抗が大きいが、加熱部6の雰囲気温度を熱可塑性樹脂の融点近傍とすることにより、熱可塑性樹脂を溶融状態にして電気抵抗を低下させることができる。その結果、電極部5において電圧の印加により素材に注入された電荷が、さらにコレクタ側の繊維の先端まで行き渡ることになる。
また、加熱部6は、繊維が通過可能な加熱空間を有していることが好ましく、加熱温度や熱線の種類によっても変化するが、加熱空間における繊維の通過方向の長さ(繊維が伸長する方向、通常、重力方向の長さ)は、繊維が30mm以上通過可能な長さであることが好ましい。特に、熱可塑性樹脂の融点近傍の雰囲気で少なくとも30mm以上の通過距離を設定すると、融点近傍の雰囲気で安定して温度制御することができる。なお、前述の蓄熱ブロックを用いると、融点近傍の雰囲気は、繊維の通過部分に熱電対などの温度センサーで雰囲気温度を計測し、蓄熱ブロックの温度を制御することにより雰囲気温度を調整できる。
加熱空間の長さは、30mm以上であれば、上限は特にないが、作業性の点から、例えば、30〜300mm、好ましくは35〜200mm程度であってもよい。
また、加熱部の加熱空間の幅(繊維が伸長する方向に対して垂直方向の距離)は、加熱空間を形成する内壁と伸長する繊維との間の最短距離が、例えば、20〜400mm、好ましくは25〜200mm、さらに好ましくは30〜100mm(特に35〜60mm)程度となる幅に設定すればよい。本発明では、この最短距離が狭すぎると、繊維が加熱部(蓄熱ブロックなど)の内面に捕集されるかあるいは、接触してホイッピング振動が阻害され易い。
素材9の溶融部位と加熱部6との間の距離(例えば、溶融部位の先端と加熱部6の上端との間の距離)は、例えば、50mm以下、好ましくは1〜30mm、さらに好ましくは3〜20mm程度である。
加熱部6で加熱された繊維は、ホイッピング振動する。ホイッピング振動(モーション)の振動回数は、例えば、100回/秒以上(例えば、100〜100000回/秒)、好ましくは150回/秒以上(例えば、150〜10000回/秒)、さらに好ましくは200回/秒以上(例えば、200〜5000回/秒)程度である。本発明では、このような高い振動数で繊維をホイッピングさせることにより、伸長する繊維の径をナノメータサイズにまで細くできる。1秒間に100回未満では、適切な細径の繊維を形成するのは困難である。
ホイッピング振動した繊維は、飛翔途中から、螺旋状に回転しながら伸長する。ホイッピング振動によって伸長した繊維の振幅(すなわち、コレクタである搬送コンベヤ8上に堆積した繊維集合体の半径)は、例えば、10mm以上(例えば、10〜100mm)、好ましくは15mm以上(例えば、15〜50mm)、さらに好ましくは20mm以上(例えば、20〜40mm)程度である。
ホイッピングの観察は、熱可塑性樹脂(特に線状樹脂)が1個の場合に明確に観察できる。ホイッピング振動により螺旋状に回転しながら伸長する繊維は、略円盤状に拡がって、コレクタに捕集される。ホイッピング振動の定量は、高速度ビデオカメラなどの機器でも測定できるが、コレクタに集積した繊維集合体の状態から算出してもよい。具体的には、極細繊維の平均直径と、コレクタに供給された一定時間当たりの繊維集合体の重量とから平均繊維長さが算出できるので、1秒間当たりの平均繊維長さをコレクタ上に形成された略円盤状の円周長で除すると最小振動数Hz(回/秒)が求められ、略円盤状の短径の2倍で除すると最大振動数Hz(回/秒)が求められ、両者の平均値として算出する。ホイピングモーションが大きく、集積した繊維集合体の略円盤状の面積が大きい場合に好ましい極細繊維が得られる。
コレクタ(繊維捕集部)としては、捕集した繊維の用途に応じて選択でき、例えば、平板(例えば、固定された平板、回転ディスクなど)、回転ドラム、ベルトコンベヤなどが挙げられる。例えば、連続繊維(フィラメント)を作製する場合は、回転ディスクを使用してもよく、繊維集合体を作製する場合には、回転ドラムやベルトコンベヤを使用してもよい。繊維集合体の中でも、マット状繊維堆積物を作製する場合は、ベルトコンベヤを使用してもよく、筒状繊維堆積物を作製する場合は、綾振り機構のある回転ドラムを使用してもよい。さらに、回転ディスクやドラムの回転速度を高くすると、繊維の配列が向上し、高性能繊維を得ることができる。
特に、極細繊維は、飛翔途中からホイッピング振動により螺旋状に伸長するため、不織布などの繊維集合体を製造する場合、均一な密度の繊維集合体を形成する点から、前後左右に移動可能な綾振り機構を有するコレクタを使用するのが好ましい。このような綾振り機構を有するコレクタは、例えば、ホイッピング振動している繊維のホイッピング振動数に対して1/3000倍以下(例えば、1/3000〜1/10000倍程度)の振動数に相当する低速の振動数で前後左右に移動させて繊維を捕集することにより、略円盤状に集積する繊維集合体を均一に重ねることができる。
本発明では、板状の素材を連続して供給しながらライン状のレーザー光により加熱溶融すれば、連続した長繊維を得ることができるとともに、繊維長が100mm以上のフィラメントや、均一な繊維集合体(密度分布の均一な不織布)を得ることができる。
加熱部6の下端とコレクタとの距離は、ホイッピング振動しながら螺旋運動し、繊維を細く伸長可能な空間が確保されていればよく、例えば、30mm以上(例えば、30〜300mm)、好ましくは50〜200mm、さらに好ましくは80〜150mm程度である。
コレクタは、電極部5との間で高電圧を印加する場合、捕集する繊維の取り扱い性の点から、接地(アース)してもよい。
以上説明した繊維製造装置では、静電紡糸工程において、素材9の表面にライン状のレーザー光を照射して照射ラインに沿って加熱溶融し、素材9に電圧を印加して帯電させ溶融部位の表面から静電力により針状突出部分を生成して針状突出部の先端から繊維を紡出させる。針状突出部の密度が少なくとも幅2cm当たり2本以上となるように、照射するレーザー光の出力を調整し、針状突出部の密度を多くするために高電圧を印加することで、効率的な静電紡糸が可能になる。針状突出部から紡出された多数本の繊維をさらに伸長するため加熱部6において輻射熱線で加熱してホイッピングさせながら静電力によりコレクタである搬送コンベヤ8のベルト表面に捕集する。
静電紡糸工程では、素材にコレクタとは逆極性の電荷を付与して帯電させ、素材の溶融部位とコレクタとの間で発生した電位差を利用して、溶融状態の樹脂を針状突出部からコレクタに向けて飛翔させる。コレクタに向けて飛翔して伸長する繊維は、熱可塑性樹脂の融点近傍の雰囲気で加熱されて、ホイッピング振動を繰り返しながら飛翔してさらに伸長することにより極細繊維が形成され、この極細繊維がコレクタに捕集される。
素材の溶融部位に電圧を作用させる方法としては、例えば、素材が面状体の場合、電極部に配置された平板状の一対のブラシ電極板の間に形成された通路に面状体が挿入されることにより、面状体に電荷が付与される。素材の帯電極性は、正極及び負極のいずれでもよく、逆極性に帯電されたコレクタとの静電力により静電紡糸される。通常、素材は正極に帯電され、コレクタである搬送コンベヤは負極に帯電される。
上述した実施形態では、静電紡糸工程において、電極部5と搬送コンベヤ(コレクタ)8との間には、高電圧印加装置4から高電圧が印加され、電極部5が正極に帯電されるとともに、コレクタ8は負極に帯電される。そして、素材9は電極部5の通路に挿入されているため、電極部5を介して正に帯電される。照射ラインにおいて素材9が加熱溶融されると、その溶融部位は正極に帯電される。そのため、負極に帯電したコレクタ8に向けて繊維が伸長して飛翔するようになる。
加熱溶融工程では、板状の素材9は、電極部5の平板状の電極板の間に形成された通路に挿入されて、照射ラインを横切るように連続して供給される。電極部5の電極板の内面には、銅細線集合体が配設されている。電極部5に高電圧を印加することで素材9が帯電するようになる。照射ラインでは、レーザービーム発生装置1から出射されたレーザービームに基づいて光学系2により生成されたライン状のレーザー光が素材9に照射されて加熱溶融される。その溶融部位おいて帯電による静電力が作用して多数の針状突出部が生成し、生成された針状突出部から繊維7が形成される。形成された繊維7は、加熱部6でホイッピング振動を繰り返して搬送コンベヤ8で捕集される。
捕集工程では、ホイッピング振動を繰り返しながら繊維は飛翔して螺旋状に伸長し、コレクタ8で捕集されるようになる。
図3は、本発明の別の実施形態に関する概略構成図である。11はレーザービーム発生装置、12は光学系、13はライン状のレーザー光、14は高電圧印加装置、16は加熱部、17は紡出された繊維、18は搬送コンベヤ(コレクタ)であり、図1に示すものと同様であるので、説明は省略する。
この例では、素材19として熱可塑性樹脂材料からなる円柱体を用いている。素材19は、中心軸を回転軸として図示せぬ駆動モータにより常時回転駆動されており、昇降装置20により素材19が照射ラインを横切るように上下に移動させる。素材19の周面には導電ブラシからなる電極部15が近接配置されており、電極部15には高電圧印加装置14により高電圧が印加される。
素材19の周面において最下位置を通る軸方向の直線に沿って照射ラインが設定されており、照射ラインに向かって光学系12から接線方向に沿ってライン状のレーザー光13が照射される。素材19は常時回転されているため、照射ラインに素材19の周面が連続して供給されてライン状のレーザー光により加熱溶融され溶融部位が生成される。
素材19は電極部15により高電圧が印加されて帯電するようになり、接地された搬送コンベヤ18との間に所定の電位差が設定されている。そのため、素材19の溶融部位に静電力が作用して多数の針状突出部が生成され、搬送コンベヤ18に引き寄せられるように針状突出部から繊維17が紡出されるようになる。
紡出された繊維7は、加熱部16を通過する際に輻射熱線により加熱され、ホイッピング振動しながら伸長して、搬送コンベヤ18に捕集される。素材19が加熱溶融して半径方向に減少した場合には、昇降装置20が作動して素材19を下方に移動させ常時照射ラインに素材19の周面が設定されるようになっており、素材19の溶融部位から連続的に繊維を紡出できるようになっている。
以上説明した紡糸方法により、繊維、特に繊維径の小さい極細繊維が得られる。極細繊維の平均繊維径は、例えば、5μm以下であり、好ましくは100nm〜3μm程度である。このような平均繊維径を有する極細繊維には、例えば、50〜1000nm(特に100〜500nm)程度の繊維径を有する繊維が含まれていてもよい。さらに、熱可塑性樹脂の種類や製造条件などを調整することにより、均一なナノメータサイズを有する極細繊維を得ることもできる。本発明で得られる極細繊維は、ホイッピング振動を発生させて採取するので、高速回転ドラムなどの特殊な採取方法を選択しない限り、シート状不織布を構成する極細繊維は反転部分(折り返し部分)を有しているのが特徴である。
また、本発明では、溶媒の選択が困難な生分解性プラスチックや、高融点のエンジニアリングプラスチックであっても、簡便な方法で、極細繊維が得られる。特に、従来では、融点が高く、通常の溶融紡糸方法ではナノサイズの極細繊維を得ることが困難であった溶融異方性を有する液晶ポリマーの紡糸に適しており、液晶ポリマーであっても、繊維径1μm以下の極細繊維(ナノ繊維)の製造が可能である。さらに、レーザー光のエネルギー出力を調整することにより、幅広い繊維径を有する繊維を製造できる。
繊維の繊維長は、特に限定されず、製造条件などを調整することにより、用途に応じて選択すればよいが、例えば、平均繊維長0.5mm以上であり、不織布などの繊維集合体として用いる場合には、1〜50mm、好ましくは2〜30mm、さらに好ましくは3〜10mm程度であってもよい。なお、極細繊維は一般的に繊維集合体として得られるが、本発明では、連続的に供給される素材にレーザー光を照射するため、平均繊維長100mm以上のマルチフィラメント状繊維として得ることもできる。この場合、平均繊維長は、例えば、150mm以上、好ましくは200mm以上(例えば、200〜1000mm程度)の連続的なマルチフィラメント糸であってもよい。
上述した紡糸法により、ナノ繊維を含む極細繊維(特に、連続したナノメータサイズの極細繊維)で構成される繊維集合体が得られるが、繊維径に高い分散度を有する繊維集合体も製造可能である。例えば、このような繊維集合体において、最大繊維径と最小繊維径との差は、例えば、200nm〜5μm、好ましくは300nm〜4μm、さらに好ましくは400nm〜3μm(特に500nm〜2μm)程度であってもよい。
このような繊維集合体は、通常、不織布(マット状堆積物、筒状堆積物など)である。不織布は、慣用の方法、例えば、バインダーを用いた方法や、部分的な熱圧融着(熱エンボス加工など)、機械的圧縮(ニードルパンチ処理)、交絡処理(水流絡合処理など)などの方法を用いて複数枚の不織布を貼り合わせ、積層して得ることもできる。また、不織布は、本発明の極細繊維の効果を損なわない範囲(例えば、0.1〜50質量%、好ましくは1〜30質量%程度)で、他の繊維(合成繊維、半合成繊維、再生繊維、天然繊維など)を含んでいてもよい。
他の繊維で構成された基布と積層する場合、基布は電気の漏洩性を有する基布の方がシート状に積層しやすい。電気漏洩性の目安として、導電性金属のスパッタリングや蒸着でもよいが、通常の静電気の帯電防止加工レベルでもよい。電気漏洩性能を全く有していない場合には、帯電反発によりシート状に集積するのが困難になり易い。基布としては、例えば、織編物、組物(網、ネット、レースなどで中空形状であってもよい)、不織布(例えば、スパンボンド不織布など)などが挙げられ、その形状は、通常、シート又はフィルム状である。
不織布又は基布との積層体の場合、その形態は、通常、シート状であり、その厚みは、用途に応じて適宜すればよく、0.01〜100mm程度の範囲から選択できるが、通常、0.02〜30mm、好ましくは0.03〜10mm程度である。さらに、不織布の目付も、用途に応じて選択できるが、例えば、5〜500g/m2程度であり、好ましくは10〜300g/m2、さらに好ましくは20〜100g/m2程度である。
得られたフィラメントや繊維集合体は、目的に応じ、エレクトレット加工による帯電処理、プラズマ放電処理やコロナ放電処理による親水化処理などの後加工処理をしてもよく、さらに二次加工してもよい。
以上説明した実施形態では、素材を面状体及び円柱体の形態で供給しているが、面状体の素材の供給については、異なる種類の樹脂材料からなる複数枚の面状体を同時に照射ラインに供給し、別々に溶融させて静電紡糸した後捕集して繊維集合体を得てもよい。また、素材として、複数種の線状体を予め複合形成した繊維材料、あるいは別々の複数種の材料を別々に繊維材料とした線状繊維材料を製経機などで引き揃えて固定しシート状にしたものを平板状シート材料として同時に加熱溶融させて、静電紡糸して、複合繊維で構成された繊維集合体を得てもよい。
次に本発明を具体的に実施例で説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例における繊維径は、以下に示す方法で測定した。
[繊維径の測定方法]
コレクタ上に約30mm角に切られたアルミホイルを置き、溶融静電紡糸を各種条件下で行い、アルミホイル上に作製された繊維堆積物を金スパッタコーティングした。このコーティング物の画像を走査型電子顕微鏡(SEM;(株)キーエンス製、VE−9800)により撮影し、コンピュータの画面上に見られる繊維を任意に30本選び、これらの繊維径を画像解析ソフト(Adobe、PhtoshopCS3 Extended)により計測し、その平均値及び標準偏差を求めた。
[実施例1](メタクリル酸メチルポリマーの静電紡糸)
メタクリル酸メチルポリマー(三菱レイヨン(株)製、アクリライト、厚さ3.0mm)から長さ70mm、幅30mmの平板状試料を得た。図1で説明した溶融型静電紡糸装置を基に極細繊維を製造した。
供給ローラの回転により平板状試料を下方向に一定速度(10mm/h)で搬送し、照射ライン向かって連続的に供給した。
電極部では、黄銅製の平板状電極板が一対配置されており、高電圧発生装置(松定プレシジョン(株)製、HARb−60P1)により高電圧が付与されている。そして、平板状試料が下方向に搬送中に、電極板の間を通過する際に平板状試料に電荷が付与される。
レーザービーム発生装置として炭酸ガスレーザービーム発生装置(シンラッド社製、RF励起CO2レーザー、波長:10.2〜10.8μm、定格出力:10W、ビーム径:3.5mm)を用い、ライン状のレーザー光を生成する光学系としてビームエキスパンダー(ULO Optics社/伯東(株)製、C−BE7.0)及びシリンドリカル凸レンズ(古川電子社製、f300mm)を用いた。得られたライン状のレーザー光(L=30mm、t=3mm)を平板状体試料に照射することにより、平板状体試料を照射ラインに沿って加熱溶融した。電極部と照射ラインとの間の距離は10mmに設定した。
加熱部として、一対の放射加熱用蓄熱ブロック(セラミックを厚さ5mm、幅50mm、高さ30mmに加工して作製した蓄熱ブロック)を用意し、これを幅方向がコレクタと垂直かつ紡糸方向に垂直に、高さ方向が紡糸方向になるように照射ラインとコレクタとの間に、幅40mmを保って平行に設置した。ただし、照射ラインと蓄熱ブロックの上端との距離は15mmに設定し、蓄熱ブロック下端とコレクタとの距離は30mmに設定した。設置された蓄熱ブロックを2台のハロゲンランプ(ウシオ電機(株)製、スポットヒータ「UL−SH−02」)で加熱し、蓄熱ブロックにより囲まれた繊維が通過する加熱空間の雰囲気温度(Ts)をヒーターの電圧を変化させることにより制御した。
繊維を捕集するコレクタとしては、前後左右に綾振り運動可能なコレクタ(カトーテック(株)製、XYステージ)を用いた。ただし、実施例1では、このコレクタは静止した状態とした。
コレクタ距離(照射ライン−コレクタ間距離)を75mm、レーザー出力(Lp)10W、加熱部の中心部(通過距離が30mmで、かつ蓄熱ブロック壁から20mmの距離に位置する加熱空間の中心部)における加熱雰囲気温度(Ts)を室温に固定して実験を行ったところ、照射ラインにおいてレーザー光により試料が加熱溶融され、溶融部位から針状突出部が形成されて複数本の繊維が下方のコレクタに向かって紡出された。図4は、紡出された繊維の径と印加電圧(Hv)との関係を示したグラフである。この実験結果から、印加電圧の増加に伴って繊維径が減少することが分かる。さらに、繊維径の平均が2μm前後の繊維もあるものの、部分的に1μm以下の繊維が得られた。
[実施例2](エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂の溶融型静電紡糸)
エバール(エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂、(株)クラレ製、Fグレード)チップから、ホットプレス(GONNO HYDRAULIC PRESS MANUFACTUING社製、TON PRESS)を用いて厚さ1.5mm、長さ70mmの平板状試料を得た。作製条件は、融解温度200℃、圧力5MPaである。作製された平板状試料を用いて実施例1と同様の装置構成で実験を行った。
図5は、コレクタ距離を75mm、レーザー出力(Lp)10W、印加電圧(Hv)を30kVに固定して、加熱雰囲気温度(Ts)を室温、50℃、70℃、90℃、110℃、130℃、150℃、180℃と変えて繊維径との関係を示したグラフである。この実験結果から、融点を超えた温度領域でも安定したホイッピング振動を伴って極細の繊維が得られることがわかる。
[実施例3](ベクトラ L920の溶融型静電紡糸)
ベクトラ(ポリプラスチックス(株)製、グレードL920)チップから、ホットプレス(GONNO HYDRAULIC PRESS MANUFACTUING社製、TON PRESS)を用いて厚さ1.5mm、長さ70mm以上の平板状試料を得た。作製条件は、融解温度315℃、圧力5MPaである。作製された平板状試料を用いて実施例1と同様の装置構成で実験を行った。
図6は、実施例2と同条件において、加熱雰囲気温度(Ts)を室温、100℃、220℃、300℃と変えて繊維径との関係を示したグラフである。この実験結果から、加熱雰囲気温度の増加に伴って繊維径が減少し、極細の繊維が得られることがわかる。
[実施例4](半芳香族ポリアミド径樹脂の溶融型静電紡糸)
ポリアミド9MT(ポリノナンジアミンテレフタルアミド、(株)クラレ製、ジェネスタ、融点270℃)チップから、ホットプレス(GONNO HYDRAULIC PRESS MANUFACTUING社製、TON PRESS)を用いて厚さ1.5mm、長さ70mm以上の平板状試料を得た。作製条件は、融解温度300℃、圧力5MPaである。作製された平板状試料を用いて実施例1と同様の装置構成で実験を行った。
図7は、実施例2と同条件において、加熱雰囲気温度(Ts)を室温、100℃、150℃、200℃、270℃、300℃、330℃と変えて繊維径との関係を示したグラフである。この実験結果から、繊維径の平均が2μm前後の繊維もあるものの、部分的に1μm以下の繊維が得られた。
本発明の方法で得られた極細繊維は、柔軟性に優れ、表面積が大きいため、吸液性や濾過性などの各種特性に優れる。また、溶剤の含有が嫌われる分野の製品により好適である。従って、各種用途、例えば、絶縁材用セパレータなどのエレクトロニクス用部材、産業用資材(油吸着材、皮革基布、セメント用配合材、ゴム用配合材、各種テープ基材、エアフィルター、液体フィルターなど)、医療・衛生材(紙おむつ、ガーゼ、包帯、医療用ガウン、サージカルテープなど)、生活関連資材(ワイパー、印刷物基材、包装・袋物資材、収納材、フィルターなど)、衣料用材、内装用材(断熱材、吸音材など)、建設資材、農業・園芸用資材、土木用資材(土壌安定材、濾過用資材、流砂防止材、補強材など)、鞄・靴材などに使用できる。
特に、生分解性プラスチックで構成された極細繊維は、高度な性能が要求される医療又は農業用分野などに適しており、例えば、不織布は、組織医学工学材料(人工膜)、細胞増殖用足場材料などに用いることができ、フィラメント又は筒状物は、人工血管などに用いることができる。また、エンジニアリングプラスチックで構成された極細繊維で構成された不織布は、電池用セパレータ(ニッケル−カドミウム電池、ニッケル−水素電池、リチウム二次電池、アルカリ二次電池など)やキャパシター用セパレータなどのエレクトロニクス分野などに用いることができる。
本発明の実施形態に関する概略構成図である。 素材の下端部に形成された溶融部位に関する模式図である。 本発明の別の実施形態に関する概略構成図である。 実施例1で得られた印加電圧(Hv)と繊維径との関係を示すグラフである。 実施例2で得られた加熱雰囲気温度(Ts)と繊維径の関係を示すグラフである。 実施例3で得られた加熱雰囲気温度(Ts)と繊維径の関係を示すグラフある。 実施例4で得られた加熱雰囲気温度(Ts)と繊維径の関係を示すグラフある。
符号の説明
1 レーザービーム発生装置
2 光学系
3 ライン状のレーザー光
4 高電圧印加装置
5 電極部
6 加熱部
7 繊維
8 搬送コンベヤ(コレクタ)
9 素材
10 供給ローラ
11 レーザービーム発生装置
12 光学系
13 ライン状のレーザー光
14 高電圧印加装置
15 電極部
16 加熱部
17 繊維
18 搬送コンベヤ(コレクタ)
19 素材
20 昇降装置

Claims (10)

  1. 光源から出射したレーザー光を所定の照射ラインに沿って照射し、熱可塑性樹脂材料からなる面状体を前記照射ラインを横切るように移動させながら前記照射ラインで当該面状体の幅方向に沿って全幅にわたってレーザー光を照射することで連続して加熱溶融し、加熱溶融された前記面状体の溶融部位を帯電させることで静電力により多数の針状突出部を生成して当該針状突出部より繊維を紡出させることを特徴とする紡糸方法。
  2. 前記針状突出部は、前記照射ラインの幅2cm当り2本以上生成することを特徴とする請求項1に記載の紡糸方法。
  3. 紡出された繊維を輻射熱線の照射により加熱してホイッピング振動により伸長細径化させることを特徴とする請求項1又は2に記載の紡糸方法。
  4. 紡出された繊維を100回/秒以上の振動数でホイッピングさせることを特徴とする請求項3に記載の紡糸方法。
  5. 前記照射ラインにおけるレーザー光の照射範囲の幅が0.5mm以上であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の紡糸方法。
  6. 請求項1から5のいずれかに記載の紡糸方法により紡出された繊維をコレクタに捕集して互いに重層させることで繊維集合体を形成することを特徴とする繊維製造方法。
  7. 光源から出射したレーザー光を所定の照射ラインに沿って照射するように制御するレーザー照射部と、熱可塑性樹脂材料からなる面状体を前記照射ラインを横切るように移動させて前記照射ラインで当該面状体の幅方向に沿って全幅にわたってレーザー光を照射することで連続して加熱溶融させる移動部と、加熱溶融された前記面状体の溶融部位を帯電させることで静電力により多数の針状突出部を生成して各針状突出部より繊維を紡出させる紡出部と、紡出された繊維を捕集する捕集部を備えていることを特徴とする繊維製造装置。
  8. 前記紡出部は、前記溶融部位に近接配置された電極部と、前記電極部及び前記捕集部の間に電圧を印加する電圧印加部とを備えていることを特徴とする請求項7に記載の繊維製造装置。
  9. 前記電極部及び前記捕集部の間には、前記針状突出部より紡出された繊維を輻射熱線により加熱する加熱部を備えていることを特徴とする請求項7又は8に記載の繊維製造装置。
  10. 前記捕集部は、紡出された繊維をコレクタに捕集して互いに重層させることで繊維集合体を形成することを特徴とする請求項7から9のいずれかに記載の繊維製造装置。
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