JP2010275554A - インク組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】蛍光分子を組み込んだ、改良された相変化インク組成物を提供する。
【解決手段】放射線硬化性相変化インク組成物であって、硬化性の蛍光コモノマーと、硬化性の第1コモノマーと、前記インク組成物の約1から約50質量%の量のゲル化剤と、必要に応じて光開始剤と、必要に応じて着色剤と、を含み、前記インク組成物の粘度は、約110℃以下の温度において約15mPa・s以下である、インク組成物である。
【選択図】なし

Description

本発明は、インク組成物に関する。
相変化インク組成物などのインク組成物が知られている。
米国特許出願公開第2009/0104373号明細書 米国特許出願公開第2008/0090928号明細書 米国特許出願公開第2007/0254978号明細書 米国特許出願公開第2007/0120924号明細書 米国特許第7,538,145号明細書 米国特許出願公開第2007/0120922号明細書 米国特許第7,501,015号明細書 米国特許出願公開第2007/0120921号明細書 米国特許第7,323,498号明細書 米国特許第7,270,408号明細書 米国特許第7,531,582号明細書 米国特許第7,276,614号明細書 米国特許第7,279,587号明細書 米国特許出願公開第2006/0119686号明細書 米国特許第5,389,958号明細書
公知の組成物および方法は、その意図した目的には適しているが、セキュリティ特性と、食品包装用途における他の同様の製品との差別化の両方が得られるような、非移行性の蛍光分子を組み込んだ改良されたインクが求められている。また、改良された相変化インクが求められている。更に、相変化インクビヒクルに対して可溶な、混和性の、あるいはその他の方法で親和性を持った蛍光分子が求められている。更に、硬化性の相変化インクに用いた場合に、硬化した画像からの移行の少ない蛍光分子が求められている。加えて、印刷工程の間にゲル相となる相変化インクに対して、優れた親和性を持つ蛍光分子が求められている。揮発性の低い蛍光分子も求められている。更に、ゲル相の規則的な微細構造から排除されず、それに対して良好な親和性を備えた蛍光分子が求められている。更に、硬化性の高い蛍光分子が求められている。また、定着後に抽出される可能性のある種の量が少ない、またはない、相変化インクが求められている。
放射線硬化性相変化インク組成物であって、該インク組成物は、硬化性の蛍光コモノマーと、硬化性の第1コモノマーと、前記インク組成物の約1から約50質量%の量のゲル化剤と、必要に応じて光開始剤と、必要に応じて着色剤と、を含み、前記インク組成物の粘度は、約110℃以下の温度において約15mPa・s以下である、インク組成物である。
少なくとも1つの放射線硬化性の蛍光コモノマーと少なくとも1つのゲル化剤とを含むUV硬化性インク(放射線硬化性組成物)と、画像形成法、特に、食品包装、文書セキュリティ、潜在的ブランドハイライトのためのインクジェット印刷法について述べる。
UV硬化性ゲルインク配合物は、多くの被印刷体、例えば、ポリエステル(Melinex 813など)、ポリプロピレン(OPPalyte ASW 250など)、アルミニウムホイルなどに対して高い親和性を備えている。UVゲルインクのゲル化する性質により、固定(pinning)を行わなくとも、非多孔性の可撓性包装材上での優れたドット構造が可能となる。印刷後、被印刷体にUV光を当てて頑丈な画像および構造体とする。硬化性の蛍光コモノマーを加えると、文書セキュリティ特性と潜在的ブランドハイライト特性の両方を備えた印刷用インクができる。小分子蛍光添加剤の安全性に関する懸念がなく、調節可能な蛍光効果を加えることが可能で、それらが食品へ移染するおそれを効果的に除くことのできるUV硬化性ゲル系について述べる。
本明細書中において、“a”、“an”、および“the”は、その内容が明らかに別のものを示していない限り、複数形を含んでいる。全ての範囲は、全ての端および中間値を含む。
“炭化水素”および“アルカン”とは、一般式C2n+2(式中、nは、1以上の数、例えば、約1から約60である)で示される分枝および非分枝分子を指す。1つ以上の官能基で水素原子を置き換えてアルカン類を置換し、アルカン誘導体化合物としても良い。
“官能基”(functional group)とは、その基およびそれが結合している分子の化学的性質を決めるように配列した原子団(group of atoms)を指す。官能基の例としては、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボン酸基などが挙げられる。
“長鎖”とは、nの数が約8から約60、例えば、約20から約45または約30から約40である炭化水素鎖を指す。“短鎖”とは、nの数が約1から約7、例えば、約2から約5または約3から約4の炭化水素鎖を指す。
“硬化性”とは、例えば、フリーラジカルによる重合によって硬化し、および/または、このとき重合が、放射線感受性(radiation-sensitive)光開始剤の使用により光開始される材料をいう。“放射線硬化性”とは、開始剤の存在下、または開始剤を用いずに、光および熱源などの放射線源に曝すと硬化する全ての形態を指す。
“粘度”とは、複素粘度を指す。これは、試料に定常剪断歪または小振幅正弦変形を加える機械式レオメータによって得られる典型的な測定値である。このタイプの装置では、オペレータがモーターに剪断歪をかけ、試料の変形(トルク)をトランスデューサで測定する。あるいは、剪断応力をかけて生じる歪を測定する、制御応力装置を用いても良い。複素粘度(η)は、η=η’−iη”(式中、η’=G”/ω、η”=G’/ω、iは、√−1(−1の平方根))と定義される。あるいは、例えば、毛細管または剪断粘度の過渡測定値だけを測定できる粘度計を用いても良い。
“必要に応じた”または“必要に応じて”とは、その次に述べられている状況が起こる、または起こらない事例を指し、その状況が起こる事例とその状況が起こらない事例とを含んでいる。
“1つ以上”および“少なくとも1つ”とは、その次に述べられている状況の1つが起こる事例と、その次に述べられている状況の1つより多くが起こる事例を指す。同様に、“2つ以上”および“少なくとも2つ”とは、例えば、その次に述べられている状況の2つが起こる事例と、その次に述べられている状況の2つより多くが起こる事例を指す。
例示されているインクビヒクルおよびインク組成物は、圧電インクジェット印刷法の要求を満たし、かつ、優れた印刷品質が得られる。
ゲル化剤は、インク組成物が噴射される特定の温度より低い温度では、インクビヒクル中で半固体ゲルとなっている。半固体ゲル相は、1つ以上の固体のゲル化剤分子と液状溶媒とから成る、動的平衡状態にある物理ゲルである。半固体ゲル相は、水素結合、ファン・デル・ワールス相互作用、芳香族非結合相互作用(non-bonding interactions)、イオンまたは配位結合、ロンドン分散力などの非共有結合相互作用によって互いに保持されている、分子成分の動的網目構造化集合体であり、温度や機械的撹拌などの物理的力、あるいはpHやイオン強度などの化学的力の刺激を受けると、巨視的レベルで液体から半固体状態へ可逆的に転移することができる。このインク組成物は、温度をゲル相転移温度の上または下に変化させると、半固体ゲル状態と液体状態との間で熱的可逆転移を示す。半固体ゲル相と液相との間でのこの可逆転移サイクルは、インク配合物中で何度も繰り返すことが可能である。1つ以上ゲル化剤の混合物を用いて、相変化転移に影響を与えても良い。
相変化インク組成物は、室温ではゲルである。相変化インク組成物は、室温で液体または固体であっても良い。相変化放射線硬化性インク組成物は、噴射温度において、約15mPa・s以下、例えば、約12mPa・s以下、例えば、約3から約12mPa・s、約5から約10mPa・sの粘度を持つ。インク組成物は、110℃以下の温度、例えば、約50℃から約110℃、例えば、約60℃から約100℃または約70℃から約90℃で噴射される。
このように、ゲル化剤の相変化する性質を用いて、噴射されたインク組成物の粘度を急激に上げ、インク組成物のインク噴射温度よりも低い温度にある被印刷体上の位置に噴射インク液滴を固定することができる。
インク組成物がゲル状態となる温度は、インク組成物の噴射温度よりも低い温度、例えば、インク組成物の噴射温度よりも約5℃以上低い温度である。実施の形態において、約25℃から約80℃の温度、例えば、約30℃から約70℃または約30℃から約50℃でゲル状態となる。冷えると、インク粘度の急激かつ著しい上昇が起こる。いくつかの実施の形態のインク組成物は、少なくとも102.5倍の粘度の上昇を示す。
インク組成物を噴射後、ドラム上に置かれたインク画像の粘度が著しく上がって、にじむ心配のない安定かつ転写可能な画像が得られるならば、中間転写部材表面からの転写効率や印刷品質が最も良いものとなる。インク組成物に適したゲル化剤は、インクビヒクル中のモノマー類/オリゴマー類を急速かつ可逆的にゲル化し、例えば、約30℃から約80℃の狭い温度範囲、例えば、約30℃から約70℃の範囲で相変化転移を示す。代表的なインク組成物のゲル状態では、被印刷体温度、例えば、約30℃から約70℃において、少なくとも102.5mPa・s、例えば、10mPa・sと、噴射温度での粘度に比べて大きな粘度を示す。具体的な実施の形態では、ゲル化剤を含むインク組成物は、噴射温度より5℃から10℃下がると粘度が急激に上がり、ついには噴射粘度の10倍以上、例えば、噴射粘度の約10倍の粘度に達する。
実施の形態のインク組成物がゲル状態にあるとき、このインク組成物の粘度は、少なくとも約1,000mPa・sである。例示的なインク組成物のゲル状態での粘度値は、約10から約10mPa・sの範囲、例えば、約104.5から約106.5mPa・sである。中間転写法や、多孔性の紙に直接噴射した場合にインクのにじみ(bleed)とけば立ち(feathering)を少なくするには、最も高い粘度が適している。プラスチックなどのあまり多孔性でない被印刷体では、ドットゲイン(dot gain)や個々のインクピクセルの凝集を制御するため、粘度は低い方が良い。ゲル粘度は、インクの配合と被印刷体の温度によって制御可能である。放射線硬化性ゲル化剤を含むインク組成物がゲル状態であることのもうひとつの利点は、約10から10mPa・sのように粘度が高いと、酸素の拡散を少なくできることであり、これも、フリーラジカルで開始する硬化の速度を上げることにつながる。
[硬化性コモノマー類]
インクビヒクルは、1つ以上の硬化性コモノマー類、例えば、硬化性の第2のコモノマー、および/または硬化性の第3のコモノマーを含んでいても良い。インクビヒクル中には少なくとも、1つの硬化性蛍光コモノマーと1つの硬化性第1コモノマーが含まれる。コモノマー類を組み合わせてゲル化剤材料を溶け易くしても良い。硬化性蛍光コモノマーとは異なる第1硬化性コモノマーは、希望に応じて、蛍光性であってもなくても良いが、実施の形態においては、第1コモノマーは蛍光性でないものである。硬化性コモノマーは、放射線硬化性コモノマーである。
インク組成物は、硬化性の蛍光コモノマーと、硬化性の第1コモノマーとを含んでいる。エポキシ−ポリアミド複合ゲル化剤などのゲル化剤材料は、その溶解性とゲル化する性質のため、熱によって可逆的にゲル相に変化するインクビヒクルを含むインク組成物の製造に有用である。このインクビヒクルは、液状のUV硬化性モノマー類を含むものである。このようなインク組成物のゲル相によって、インク液滴を被印刷体に固定することができる。
硬化性蛍光コモノマーは、放射線硬化性部分と共有結合によって結合し、前述の配合物中に組み込むことのできる適当なフルオロフォア(fluorophore、蛍光色素分子)から選ばれる。
適当なフルオロフォアとしては、アクリジン類、シアニン類、オキサジン、フルオレン類、ローダミン類、フルオレセイン類、メロシアニン類、ルシフェリン類、ペリレン類、クマリン類、キサンテン類、チアゾール類、ピレン類、およびアントラセン類の蛍光誘導体、例えば、テキサスレッド(Texas Red)および9−ヒドロキシフルオレニルアクリラートが挙げられる。“蛍光誘導体”とは、親物質の蛍光性をもたらす必須構造を含む別のものから誘導した化合物を示す。
非蛍光性の硬化性コモノマー類は、適当な硬化性モノマー類から選ばれる。
本組成物の少なくとも1つの硬化性モノマーの例としては、プロポキシル化ネオペンチルグリコールジアクリラート、ジエチレングリコールジアクリラート、トリエチレングリコールジアクリラート、ヘキサンジオールジアクリラート、ジプロピレングリコールジアクリラート、トリプロピレングリコールジアクリラート、アルコキシル化ネオペンチルグリコールジアクリラート、イソデシルアクリラート、トリデシルアクリラート、イソボルニルアクリラート、イソボルニル(メタ)アクリラート、プロポキシル化トリメチロールプロパントリアクリラート、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリラート、ジ−トリメチロールプロパンテトラアクリラート、ジペンタエリトリトールペンタアクリラート、エトキシル化ペンタエリトリトールテトラアクリラート、プロポキシル化グリセロールトリアクリラート、イソボルニルメタクリラート、ラウリルアクリラート、ラウリルメタクリラート、ネオペンチルグリコールプロポキシラートメチルエーテルモノアクリラート、イソデシルメタクリラート、カプロラクトンアクリラート、2−フェノキシエチルアクリラート、イソオクチルアクリラート、イソオクチルメタクリラート、これらの混合物などが挙げられる。比較的無極性のモノマー類として、イソデシル(メタ)アクリラート、カプロラクトンアクリラート、2−フェノキシエチルアクリラート、イソオクチル(メタ)アクリラート、およびブチルアクリラートが挙げられる。更に、多官能アクリラートモノマー類/オリゴマー類を、反応性希釈剤としてだけでなく、硬化した画像の架橋密度を上げることのできる物質としても使用し、硬化画像の靱性を高めても良い。
“硬化性モノマー”は、硬化性オリゴマー類も含むものであり、これも組成物に使用できる。硬化性オリゴマー類は、放射線硬化性オリゴマー類であっても良い。適当な硬化性オリゴマー類は、約50cPs(=mPa・s)から約10,000cPs、例えば、約75cPsから約7,500cPsまたは約100cPsから約5,000cPsと低い粘度を持つ。このようなオリゴマー類としては、CN549、CN131、CN131B、CN2285、CN3100、CN3105、CN132、CN133、CN132(Sartomer Company, Inc.製)、Ebecryl 140、Ebecryl 1140、Ebecryl 40、Ebecryl 3200、Ebecryl 3201、Ebecryl 3212(Cytec Industries Inc.製)、PHOTOMER 3660、PHOTOMER 5006F、PHOTOMER 5429、PHOTOMER 5429F(Cognis Corporation製)、LAROMER PO 33F、LAROMER PO 43F、LAROMER PO 94F、LAROMER UO 35D、LAROMER PA 9039V、LAROMER PO 9026V、LAROMER 8996、LAROMER 8765、LAROMER 8986(BASF Corporation製)などが挙げられる。多官能アクリラート類およびメタクリラート類としては、ペンタエリトリトールテトラ(メタ)アクリラート、1,2−エチレングリコールジ(メタ)アクリラート、1,6−ヘキサンジオールジメタ)アクリラート、1,12−ドデカノールジ(メタ)アクリラート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌラートトリアクリラート、プロポキシル化ネオペンチルグリコールジアクリラート、ヘキサンジオールジアクリラート、トリプロピレングリコールジアクリラート、ジプロピレングリコールジアクリラート、アミン変性ポリエーテルアクリラート類、トリメチロールプロパントリアクリラート、グリセロールプロポキシラートトリアクリラート、ジペンタエリトリトールペンタ/ヘキサアクリラート、エトキシル化ペンタエリトリトールテトラアクリラートなども挙げられる。
非蛍光性の硬化性コモノマーは、プロポキシル化ネオペンチルグリコールジアクリラートなどの、短鎖アルキルグリコールジアクリラート類またはエーテルジアクリラート類から選ぶことができ、非蛍光性コモノマーは、カプロラクトンアクリラートなどの、短鎖アルキルエステル置換基を持つアクリラート類から選ぶことができる。
放射線硬化性相変化インク組成物は、インク組成物の総質量に対して、約20から約95質量%、例えば、約40から約85質量%または約50から約80質量%の範囲の量の、1つ以上の硬化性コモノマー類と、インク組成物の総質量に対して、約0.1から約30質量%、例えば、約0.5から約15質量%または約1から約5質量%の範囲の量の硬化性蛍光コモノマーとを含んでいる。
放射線硬化性相変化インク組成物は、放射線硬化性蛍光コモノマーに対する1つ以上の硬化性コモノマー類の比が、約100部から約1部、約20部から約1部、例えば、約75部から約1部および約10部から約1部となるような割合で、1つ以上の硬化性コモノマー類と硬化性蛍光コモノマーとを含んでいる。
[硬化性ゲル化剤]
放射線硬化性組成物での使用に適したゲル化剤としては、硬化性アミドと硬化性ポリアミド−エポキシアクリラート成分とポリアミド成分とを含む硬化性ゲル化剤、硬化性エポキシ樹脂とポリアミド樹脂とを含む硬化性複合ゲル化剤、これらの混合物などが挙げられる。本組成物にゲル化剤を加えると、塗布の後に組成物が冷えるにつれて、組成物の粘度が急激に上がるため、被印刷体に過剰に浸透することなく、被印刷体の1つ以上の部分、および/または、被印刷体上に既に形成されている画像の1つ以上の部分など、被印刷体上に組成物を塗布することができる。紙などの多孔性の被印刷体に液体が過剰に浸透すると、好ましくない被印刷体の不透明性の低下が起こることがある。硬化性ゲル化剤は、組成物のモノマー(類)の硬化にも関与する。
本組成物での使用に適したゲル化剤は、シリコーンまたは他の油を載せた被印刷体上に本組成物を使用する場合の濡れ性を高めるため、両親媒性のものとしても良い。両親媒性とは、分子中に極性部分と無極性部分の両方を備えた分子をいう。例えば、ゲル化剤は、無極性の長い炭化水素鎖と、極性のアミド結合とを備えている。
使用に適したアミドゲル化剤としては、米国特許出願第2008/0122914号、米国特許第7,276,614号、および米国特許第7,279,587号に記載のものが挙げられる。
米国特許第7,279,587号に記載されているように、アミドゲル化剤は次の式で示される化合物であっても良い。
Figure 2010275554
前述の適当な置換基およびゲル化剤は更に、米国特許第7,279,587号および米国特許第7,276,614号に具体的に述べられている。
ゲル化剤は、(I)、(II)、および(III)の混合物を含むものでも良い。
Figure 2010275554

(I)
Figure 2010275554

(II)
Figure 2010275554

(III)
上記各式中、−C3456+a−は、分枝アルキレン基を示している。この基は、不飽和および環状基を含んでいても良く、変数“a”は0〜12の整数である。
ゲル化剤は、硬化性エポキシ樹脂とポリアミド樹脂とを含む複合ゲル化剤であっても良い。適当な複合ゲル化剤は、同一出願人による、米国特許出願第2007/0120921号に記載されている。
エポキシ樹脂成分は、適当であればどのようなエポキシ基含有材料であっても良い。エポキシ基を含む成分としては、ポリフェノール系エポキシ樹脂またはポリオール系エポキシ樹脂のいずれかのジグリシジルエーテル類、あるいはこれらの混合物が挙げられる。エポキシ樹脂は、分子の末端に置かれた2つのエポキシ官能基を備えている。ポリフェノール系エポキシ樹脂は、2つまでのグリシジルエーテル末端基を持つビスフェノールA−コ−エピクロロヒドリン樹脂であっても良い。ポリオール系エポキシ樹脂は、2つまでのグリシジルエーテル末端基を持つジプロピレングリコール−コ−エピクロロヒドリン樹脂であっても良い。適当なエポキシ樹脂は、約200から約800、例えば、約300から約700の範囲の質量平均分子量を持つものである。市販品として入手可能なエポキシ樹脂は、Dow Chemical Corp.製の、ビスフェノールA系エポキシ樹脂またはジプロピレングリコール系樹脂である。その他、天然材料からのもの、例えば、植物または動物由来のエポキシ化トリグリセリド脂肪酸エステル類、例えば、エポキシ化アマニ油、菜種油など、またはその混合物も使用できる。植物油由来のエポキシ化合物、例えば、VIKOFLEXシリーズ(Arkema Inc.製)なども使用できる。このように、エポキシ樹脂成分は、不飽和カルボン酸や他の不飽和試薬との化学反応により、アクリラートまたは(メタ)アクリラート、ビニルエーテル、アリルエーテルなどで官能化されている。例えば、樹脂の末端エポキシド基は、この化学反応で開環し、(メタ)アクリル酸とのエステル化反応によって(メタ)アクリル酸エステルに変換される。
エポキシ−ポリアミド複合ゲル化剤のポリアミド成分としては、適当なポリアミド材料が使用できる。ポリアミドは、重合させた脂肪酸、例えば、天然材料(例えば、ヤシ油、菜種油、ヒマシ油など、またこれらの混合物)から得られたもの、あるいは、二量体化したC−18不飽和酸材料(例えば、オレイン酸、リノール酸など)から調製した、一般に知られている炭化水素“ダイマー酸”と、ジアミン(例えば、エチレンジアミンなどのアルキレンジアミン類、DYTEK(登録商標)シリーズのジアミン類、ポリ(アルキレンオキシ)ジアミン類、等)などのポリアミンとから誘導したポリアミド樹脂を含むもの、あるいはまた、ポリエステル−ポリアミド類やポリエーテル−ポリアミド類などのポリアミド類の共重合体である。ゲル化剤の配合に、1つ以上ポリアミド樹脂を用いても良い。市販品として入手可能なポリアミド樹脂としては、VERSAMIDシリーズ(Cognis Corporation製)、特に、VERSAMID 335、VERSAMID 338、VERSAMID 795、およびVERSAMID 963が挙げられる。これらはいずれも、低分子量、低アミン数である。次の一般式で示されるポリアルキレンオキシジアミンポリアミド類として記載されている、SYLVAGEL(登録商標)ポリアミド樹脂を用いても良い。
Figure 2010275554

式中、Rは、少なくとも17個の炭素を含むアルキル基であり、Rは、ポリアルキレンオキシドを含み、Rは、C−6炭素環基を含み、nは、少なくとも1の整数である。
ゲル化剤は、同一出願人による米国特許出願第2007/0120924号に開示のような、硬化性ポリアミド−エポキシアクリラート成分とポリアミド成分とを含むものでも良い。硬化性ポリアミド−エポキシアクリラートは、その中に少なくとも1つの官能基を含んでいるため硬化可能である。ポリアミド−エポキシアクリラートは、二官能性であっても良い。アクリラート基などの官能基は、フリーラジカルによって放射線硬化を開始し、ゲル化剤を硬化したインクビヒクルに化学結合させることができる。硬化性ポリアミド−エポキシアクリラートはまた、硬化性エポキシ樹脂とポリアミド樹脂とを含む硬化性複合ゲル化剤として先に示した構造のものの中から選んでも良い。
本組成物は、適当な量、例えば、組成物の約1から約50質量%のゲル化剤を含むことができる。実施の形態において、ゲル化剤の含有量は、組成物の約2から約20質量%、例えば、組成物の約3から約10質量%である。
本組成物は更に、必要に応じて、少なくとも1つの硬化性ワックスを含んでいる。ワックスは、室温(25℃)で固体である。ワックスを加えると、塗布温度から冷めるにつれて組成物の粘度が上がり易くなる。このように、組成物が被印刷体ににじむのを防ぐ上で、ワックスもゲル化剤の助けとなる。
硬化性ワックスは、他の成分と混和し、硬化性モノマーと重合してポリマーを生成するものであればどのようなワックス成分であっても良い。“ワックス”には、一般にワックスまたはロウと呼ばれる、様々な天然材料、変性させた天然材料、合成材料が含まれる。
硬化性ワックス類の適当な例としては、硬化性基を含む、またはこれで官能化したワックス類が挙げられる。硬化性基としては、アクリラート、メタクリラート、アルケン、アリルエーテル、エポキシド、オキセタンなどが挙げられる。これらのワックス類は、カルボン酸やヒドロキシルなどの変換可能な官能基を備えたワックスの反応によって合成可能である。本件に記載の硬化性ワックス類は、開示されているモノマー(類)と共に硬化させることができる。
硬化性基で官能化されるヒドロキシル末端化ポリエチレンワックス類の適当な例としては、CH−(CH−CHOHの構造を持つ炭素鎖(鎖長nは混合物であって、平均鎖長は、約16から約50の範囲とすることができる)と、同様の平均鎖長の直鎖状低分子量ポリエチレンとの混合物が挙げられる。このようなワックス類の適当な例としては、UNILIN(登録商標)シリーズの材料、例えば、UNILIN(登録商標)350、UNILIN(登録商標)425、UNILIN(登録商標)550、およびUNILIN(登録商標)700(それぞれ、375、460、550、および700g/molにほぼ等しいMを持つ)が挙げられる。2,2−ジアルキル−1−エタノール類であることを特徴とする、ゲルベアルコール類も適当な化合物である。ゲルベアルコール類の例としては、約16から約36個の炭素を含むもの(次の式で示される異性体を含む、C−36ダイマージオール混合物)、また更に、不飽和および環状基を含む他の分枝異性体が挙げられる。
Figure 2010275554
このような種類のC36ダイマージオール類に関する情報は、“Dimer Acids”,Kirk-Othmer Encyclopedia of Chemical Technology, Vol. 8, 4th Ed. (1992), pp. 223 to 237 に更に示されており、その内容は全て本件に引用して援用する。このようなアルコール類は、UV硬化性部分を備えたカルボン酸類と反応させて反応性エステル類とすることができる。このような酸類の例としては、アクリル酸類およびメタクリル酸類が挙げられる。
硬化性基で官能化されるカルボン酸末端化ポリエチレンワックス類の適当な例としては、CH−(CH−COOHの構造を持つ炭素鎖(鎖長nは混合物であって、平均鎖長は約16から約50である)と、同様の平均鎖長の直鎖状低分子量ポリエチレンとの混合物が挙げられる。適当な例としては、UNICID(登録商標)350、UNICID(登録商標)425、UNICID(登録商標)550、およびUNICID(登録商標)700(それぞれ、390、475、565、720g/molにほぼ等しいMを持つ)が挙げられる。他の適当なワックス類は、CH−(CH−COOH(例えば、n=14、15、16、18、20、22、24、25、26、28、30、31、32、および33)の構造を持つものである。2,2−ジアルキルエタン酸類であることを特徴とする、ゲルベ酸類も適当な化合物である。ゲルベ酸類の例としては、16から36個の炭素を含むもの(次の式で示される異性体を含む、C−36ダイマー酸混合物)、また更に、不飽和および環状基を含む他の分枝異性体(デラウェア州ニューカッスル、Uniqema製)が挙げられる。
Figure 2010275554
このような種類のC36ダイマー酸類に関する情報は、Kirk-Othmer Encyclopedia of Chemical Technology に更に示されている。このようなカルボン酸類は、UV硬化性部分を備えたアルコール類と反応させて反応性エステル類とすることができる。このようなアルコール類の例としては、次に示す2−アリルオキシエタノール、
Figure 2010275554

、次に示すCD572(R=H、n=10)およびSR604(R=Me、n=4)が挙げられる。
Figure 2010275554
硬化性ワックスは、組成物中に、例えば、組成物の約0.1から約30質量%、例えば、組成物の約0.5から約20質量%または約0.5から15質量%の量で加えることができる。
[必要に応じた添加剤]
実施の形態のインクビヒクルは、硬化性成分と、必要に応じて追加の材料との混合物であっても良い。追加材料は、反応性希釈剤、着色剤、開始剤、酸化防止剤、更に、従来の必要に応じた添加剤、例えば、消泡剤、スリップおよびレベリング剤、顔料分散剤などである。インクに、追加のモノマーまたはポリマー材料を加えても良い。
[着色剤]
本インク組成物には、必要に応じて着色剤を加えても良い。染料類、顔料類、これらの混合物など、インクビヒクル中に溶解または分散可能な着色剤であれば、どのような所望のまたは効果的な着色剤を使用しても良い。多くの染料の色は、フリーラジカルによるその分子構造への攻撃によると考えられる、硬化段階の間に起こる重合過程によって変わることがある。本組成物は、従来のインク着色料、例えば、カラー・インデックス(C.I.)溶媒染料、分散染料、変性した酸性および直接染料、塩基性染料、硫黄染料、バット染料などと組み合わせて用いることができる。
適当な染料の例としては、Usharect Blue 86(Direct Blue 86);Intralite Turquoise 8GL (Direct Blue 86);Chemictive Brilliant Red 7BH (Reactive Red 4);Levafix Black EB; Reactron Red H8B (Reactive Red 31);D&C Red #28(Acid Red 92);Direct Brilliant Pink B;Acid Tartrazine;Cartasol Yellow 6GF Clariant;Carta Blue 2GLなどが挙げられる。揮発性溶剤に可溶な染料などの溶媒染料、例えば、Neozapon Red 492;Orasol Red G;Direct Brilliant Pink B;Aizen Spilon Red C-BH;Kayanol Red 3BL;Spirit Fast Yellow 3G;Aizen Spilon Yellow C-GNH;Cartasol Brilliant Yellow 4GF;Pergasol Yellow CGP;Orasol Black RLP;Savinyl Black RLS;Morfast Black Conc. A;Orasol Blue GN;Savinyl Blue GLS;Luxol Fast Blue MBSN;Sevron Blue 5GMF;Basacid Blue 750;Neozapon Black X51 [C.I.Solvent Black, C.I.12195], Sudan Blue 670[C.I.61554](BASF),Sudan Yellow 146[C.I.12700], Sudan Red 462[C.I.260501]なども適している。
顔料も本インクに適した着色剤である。その例としては、Violet PALIOGEN Violet 5100;PALIOGEN Violet 5890;HELIOGEN Green L8730;LITHOL Scarlet D3700;SUNFAST(登録商標) Blue 15:4;Hostaperm Blue B2G-D;Permanent Red P-F7RK;Hostaperm Violet BL;LITHOL Scarlet 4440;Bon Red C;ORACET Pink RF;PALIOGEN Red 3871 K; SUNFAST(登録商標) Blue 15:3;PALIOGEN Red 3340;SUNFASTt(登録商標) Carbazole Violet 23;LITHOL Fast Scarlet L4300;Sunbrite Yellow 17;HELIOGEN Blue L6900, L7020;Sunbrite Yellow 74;SPECTRA PAC(登録商標) C Orange 16;HELIOGEN Blue K6902, K6910;SUNFAST(登録商標)Magenta 122;HELIOGEN Blue D6840, D7080;Sudan Blue OS;NEOPEN Blue FF4012;PV Fast Blue B2GO1;IRGALITE Blue BCA;PALIOGEN Blue 6470;Sudan Orange G, Sudan Orange 220;PALIOGEN Orange 3040;PALIOGEN Yellow 152, 1560;LITHOL Fast Yellow 0991 K;PALIOTOL Yellow 1840;NOVOPERM Yellow FGL;Lumogen Yellow D0790;Suco-Yellow L1250;Suco-Yellow D1355;Suco Fast Yellow Dl 355, Dl 351;HOSTAPERM Pink E 02;Hansa Brilliant Yellow 5GX03;Permanent Yellow GRL 02;Permanent Rubine L6B 05;FANAL Pink D4830;CINQUASIA Magenta, PALIOGEN Black L0084;Pigment Black K801;カーボンブラック類(例えば、REGAL330(登録商標)、カーボンブラック5250、カーボンブラック5750など)、これらの混合物等が挙げられる。
着色剤の含有量は、インク組成物の約0.1から約15質量%、例えば、約2.0から約8質量%である。
[開始剤]
放射線硬化性相変化インクは、必要に応じて、少なくとも1つの開始剤、例えば、少なくとも1つの、または2つ以上の光開始剤を含んでいる。
放射線、例えば、UV光線を吸収してインクの硬化性成分の硬化を開始する、少なくとも1つの光開始剤が使用できる。遊離基重合によって硬化するインク組成物の光開始剤として、ベンゾフェノン類、ベンゾインエーテル類、ベンジルケタール類、α−ヒドロキシアルキルフェノン類、α−アミノアルキルフェノン類、および、Cibaより、IRGACUREおよびDAROCURの商品名で市販されているアシルホスフィン光開始剤などの光開始剤が挙げられる。適当な光開始剤の具体例としては、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド;2,4,6−トリメチルベンゾイルエトキシフェニルホスフィンオキシド;ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシドおよびその他のアシルホスフィン類;2−メチル−1−(4−メチルチオ)フェニル−2−(4−モルホリニル)−1−プロパノンおよび1−(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン;2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)ブタノン−1;2−ヒドロキシ−1−(4−(4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)ベンジル)フェニル)−2−メチルプロパン−1−オン;2−ジメチルアミノ−2−(4−メチルベンジル)−1−(4−モルホリン−4−イルフェニル)ブタノン;チタノセン類(titanocene(s));イソプロピルチオキサントン;1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルケトン;ベンゾフェノン;2,4,6−トリメチルベンゾフェノン;4−メチルベンゾフェノン;ジフェニル−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド;2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィン酸エチルエステル;オリゴ(2−ヒドロキシ−2−メチル(methy)−1−(4−(1−メチルビニル)フェニル)プロパノン);2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパノン;ベンジル−ジメチルケタール;およびこれらの混合物が挙げられる。アミン共力剤(synergist(s))、即ち、光開始剤に水素原子を与えることで、重合を開始するラジカル種を生成する共開始剤(アミン共力剤は、インク中に溶解している酸素を消費することもできる−酸素はフリーラジカル重合を阻害するため、その消費により重合速度は上がる)、例えば、4−ジメチルアミノ安息香酸エチルおよび4−ジメチルアミノ安息香酸2−エチルヘキシルなども挙げられる。UV光などの所望の波長の放射線を当てるとフリーラジカル反応を開始する、公知の光開始剤が使用できる。
光開始剤は、硬化を開始するため、約200から約420nmの波長の放射線を吸収するが、より長い波長を吸収する開始剤、例えば、560nmまで吸収するチタノセン類なども使用できる。
含まれる開始剤の総量は、インク組成物の約0.5から約15質量%、例えば、約1から約10質量%である。
[酸化防止剤]
放射線硬化性相変化インク組成物には、必要に応じて酸化防止剤も加えることができる。インク組成物の必要に応じた酸化防止剤は、画像を酸化から守り、更に、インク製造工程の加熱部分におけるインク成分の酸化を防止する。適当な酸化防止安定剤の具体例としては、NAUGARD(登録商標)524、NAUGARD(登録商標)635、NAUGARD(登録商標)A、NAUGARD(登録商標)I−403、およびNAUGARD(登録商標)959;IRGANOX(登録商標)1010およびIRGASTAB UV10;GENORAD16およびGENORAD40が挙げられる。
必要に応じて酸化防止剤を使用する場合、その含有量は、所望のまたは効果的な量、例えば、インク組成物の少なくとも約0.01質量%である。
[インク組成物の調製および使用]
実施の形態の放射線硬化性相変化インクは、適当であればどのような手法で調製しても良い。まず、開始剤成分を、反応性希釈剤または硬化性モノマーと、必要に応じてオリゴマー混合物とに溶解し、特定量(インク組成物の50質量%以下または15質量%以下)のゲル化剤を加え、必要に応じて特定量(50質量%以下または10質量%以下)の反応性ワックスを加え、混合物を加熱して粘度の低い1つの相とした後、この熱混合物を、温めた顔料分散物(濃縮物であっても良い)に混合物をかき混ぜながらゆっくりと加えて、インクを調製する。次に、このインク組成物を、必要に応じて高めた温度でフィルタに通して濾過し、異粒子を除いても良い。このインク組成物の調製法は、インク組成物の調製に使用する反応性ゲル化剤の種類に合わせて変更しても良い。例えば、他の成分を加える前に、インク組成物の成分の1つにゲル化剤を加え、濃い溶液を調製する。前述と同様な方法で、共凝集剤を含む溶液も調製可能である。インク調製法のその他の例は、以下の実施例に述べられている。
本件に記載のインク組成物は、約100℃以下の温度、例えば、約40℃から約100℃または約75℃から約90℃で噴射される。本インク組成物は、圧電インクジェット装置での使用に適している。
本インク組成物は、直接印刷式インクジェット法のための装置に使用できる。この方法では、溶融インクの液滴を記録用被印刷体上に画像の形に噴出する場合、この記録用被印刷体が最終的な記録用被印刷体である。記録用被印刷体は、印刷の際、どのような適当な温度であっても良い。記録用被印刷体は、室温でも良い。しかし、被印刷体を加熱または冷却して、インク組成物のゲル相転移温度の範囲内の表面温度を持つようにしても良い。例えば、被印刷体を、約5℃から約160℃の温度、例えば、約15℃から約50℃または約20℃から約40℃に保つ。こうすると噴射されたインクはすぐにゲルとなる。このように、インクは、インクが噴射される第1の温度、例えば、インク組成物のゲル転移温度以上に加熱される。この第1温度は、約50℃から約100℃とすることができる。ゲルが生成する第2の温度は第1温度よりも低く、例えば、前述のように約5℃から約75℃である。
本インク組成物は、間接(オフセット)印刷インクジェット法にも使用できる。この方法では、溶融インクの液滴を記録用被印刷体上に画像の形に噴出する場合、この記録用被印刷体は中間転写部材であって、画像状のインクは後に、中間転写部材から最終的な記録用被印刷体へ転写される。
本インク組成物は、中間転写基材、例えば、中間転写定着ドラムまたはベルト上への噴射に適している。適当な設計では、例えば、インクジェットヘッドに対して、中間転写定着部材が4回から18回回転する(動きが次第に大きくなる)間に、適切に着色されたインク組成物を噴射して画像を塗布する。即ち、各回転間での、被印刷体に対するプリントヘッドの移動が小さい。この方法はプリントヘッドの構造が簡単で、動きが小さいため液滴の配置が良好である。転写定着、即ち、転写および定着工程は、高速回転する転写部材上に高品質の画像を作り上げることができるため、画像形成において好ましい。転写定着は、典型的に、インクジェットヘッドから、ベルトやドラムなどの中間転写部材、即ち、転写定着部材上にインク組成物を噴射する工程を含む。これにより、後に画像を受け取る被印刷体に転写および定着するため、画像を転写定着部材上に迅速に作り上げることができる。あるいは、同様の画像形成を、画像被印刷体上で直接行うことができる。
中間転写部材は、ドラムやベルトなど適当な形をとることができる。部材表面は室温でも良いが、実施の形態においては、インク組成物がゲル状態である温度範囲に表面温度がなるよう、部材を加熱しても良い。例えば、表面を、約25℃から約100℃の温度、例えば、約30℃から約70℃または約30℃から約50℃に保つ。こうすると噴射されたインクはすぐにゲルとなり、このゲルは、画像被印刷体に転写されるまで転写部材の表面に保持される。このように、インクは、インクが噴射される第1温度、例えば、インク組成物のゲル転移温度以上に加熱される。この第1温度は、約40℃から約100℃とすることができる。ゲルが生成する第2温度は第1温度よりも低く、例えば、前述のように約25℃から約100℃である。
中間転写部材表面に噴射されたインク組成物には、中間転写部材表面でインクがある限られた程度まで硬化するよう、限られた強さの放射線を当てる。この中間硬化は、インク組成物を完全に硬化するのではなく、単に、噴射されたインクが適度な浸透量で画像被印刷体に転写されるようインクを固定するものである。このためには、転写前にインク液滴がある特定のレオロジーを持つ必要がある。中間硬化を行う場合、硬化の程度を制御する方法については、同時係属中の米国特許出願第11/034,850号および第11/005,991号を参照されたい。ゲル状態でインク液滴が所望のレオロジーを十分に備えているような実施の形態では、この中間硬化工程は不要である。
中間転写部材へ噴射し、必要に応じてその上で中間硬化を行った後、インク組成物を画像被印刷体へ転写する。被印刷体は、非多孔性の可撓性食品包装材、食品包装紙用接着剤、ホイルラミネート、布、プラスチック、ガラス、金属など、適当であればどのような材料であっても良い。被印刷体へ転写の後、被印刷体上の画像に放射線を当ててインク組成物を硬化する。例えば、適当な波長、主に、インク開始剤が放射線を吸収する波長を持つ放射線が用いられる。これによりインク組成物の硬化反応が始まる。放射線曝露は長い必要はなく、例えば、約0.05から約10秒、例えば、約0.2から約2秒とする。このような曝露時間はしばしば、UVランプの下を通過するインク組成物の被印刷体速度として表される。例えば、マイクロ波でエネルギーを与えた、UV Fusion製のドープした水銀灯を、幅10cm、複数ユニットを並べた、楕円鏡集合体(elliptical mirror assembly)中に置く。こうすると、1つのユニットの下を通過する画像上の一点において、0.1ms−1のベルトスピードでは1秒が必要であるが、4個の電球集合体の下を通過するには、ベルトスピード4.0ms−1で0.2秒が必要である。本組成物の放射線硬化性成分の架橋を開始するためのエネルギー源としては、スペクトルの紫外または可視領域の波長を持つ化学線、加速粒子(例えば、電子ビーム線)、熱線(熱または赤外線)などが使用できる。エネルギーが、架橋の開始と速度の制御に優れていることから、エネルギーとして化学線を用いる。適当な化学線源としては、水銀ランプ、キセノンランプ、炭素アークランプ、タングステンフィラメントランプ、レーザ、発光ダイオード、太陽光、電子ビームエミッタなどが挙げられる。硬化光をフィルタに通しても良い。インク組成物の硬化性成分は反応して、適当な硬さの硬化または架橋した網目構造を生成する。硬化はほぼ完全に進み、即ち、硬化性成分の少なくとも75%が硬化(反応および/または架橋)する。これによりインク組成物は非常に硬くなって、傷つきにくくなり、また被印刷体上の透き通しの程度を適切に調節することができる。
間接印刷法を用いる場合、中間転写部材は、所望のまたは適当な形状、例えば、ドラムまたはローラ、ベルトまたはウェブ、平面またはプラテンなどとすることができる。中間転写部材の温度は、所望のまたは適当な方法、例えば、中間転写部材の内部または近傍にヒータを置く、気流を用いて転写部材を冷却する、などによって制御することができる。必要に応じて、米国特許第5,389,958号に開示されているように、溶融インクの液滴を中間転写部材上に噴射する前に、中間転写部材に犠牲液(sacrificial liquid)の層を塗布し、溶融インク液滴を中間転写部材上の犠牲液層の上に噴射しても良い。中間転写部材から最終記録用被印刷体への転写は、所望のまたは適当な方法、例えば、最終記録用被印刷体を中間転写部材と裏部材とによって形成されるニップに通すなどして行うことができる。裏部材は、所望のまたは効果的な形状、例えば、ドラムまたはローラ、ベルトまたはウェブ、平面またはプラテンなどとすることができる。転写は、所望のまたは効果的なニップ圧、例えば、約5から約2,000ポンド/平方インチ(約35から14,000kPa)、例えば、約10から約200ポンド/平方インチ(約69から1,400kPa)で行うことができる。転写表面は、硬いものでも柔らかく可撓性のものでも良い。転写後、被印刷体上の画像を硬化する。インク組成物の光重合成分を硬化するための放射線は、実行可能な様々な技術、例えば、キセノンランプ、レーザ光、中圧水銀ランプ、H電球としてよく知られているマイクロ波励起水銀ランプ、しばしばDまたはV電球と呼ばれるドープした水銀ランプ、LEDなどで供給する。特定の理論に限定するものではないが、この実施の形態では、インク組成物を半固体状態で最終的な記録用被印刷体へ転写すると、インク組成物が最終被印刷体(例えば、紙繊維)へ染み込み易くなり、また、接着性を良く、透き通しを少なく、堆積高さを低くすることができると考えられる。
以下の放射線硬化性相変化インク組成物の実施例で、前述の実施の形態を更に詳しく説明する。
以下に実施例を述べ、本件に開示の内容を実施する上で使用可能な様々な組成物および条件を示す。全ての割合は、別記のない限り質量比である。しかしながら、本件に開示の内容は、先の開示の内容に従って、また以下に示すように、多くの種類の組成物を用いて実行でき、多くの様々な使用法が可能であることは明らかであろう。
<実施例1> [9−フルオレニルアクリラートの合成]
試料の蛍光モノマーは、以下に概説した手法に従って市販の開始物質から容易に調製できた。
Figure 2010275554
250mLの丸底フラスコに、9−ヒドロキシフルオレン(5g、27.4mmol)と、ベンゼン(150mL)に溶解したトリエチルアミン(3.86mL、27.4mmol)とを加え、無色の溶液とした。この溶液を氷浴で8℃に冷却した。次に、塩化アクリロイル(2.229mL、27.4mmol)を25mLのベンゼンに溶解して滴下漏斗に入れ、激しく撹拌しながら1時間かけて加えた。反応により、白色沈殿が生じた。氷浴を外し、粘り気のある沈殿物を室温で一晩撹拌した。得られた灰白色の懸濁液を、50mLの水、次に、5mLの5%NaOH溶液、更に50mLの水で洗った。ベンゼン層を集めてMgSOで乾燥し、濾過し、ロータリーエバポレータにかけて、ベージュ色の粘稠な油として9−フルオレニルアクリラートを得、これを4℃に冷却して結晶化させた(4.73g、20.02mmol、収率73.0%)。
このモノマーを、表1に示すような配合の、顔料を含まないUV硬化性インク(実施例A)に配合した。
Figure 2010275554
表1の混合物を90℃に加熱して90分間撹拌した。得られた配合物の粘度は、TA Instruments製の制御歪みレオメータで平行平板配置を用いて測定したところ、80℃以上で約10cPsであり、室温では約10cPsに粘度が上がった。90℃で24時間加熱しても蛍光性は失われなかった。噴射できるようにするため、プリントヘッド内でインクは日常的に90℃以下に加熱されるため、この点は重要である。
前述の配合物を、白色プラスチックに手塗りして、厚さ約1mmの層とし、ベンチトップコンベヤを備えたLighthammer 6(D電球)を用い、32fpmで硬化した。この露光の後、物質は完全に硬化し、365nmの光を当てると鮮やかに蛍光を発した。
実施例2から実施例5は、他の適当な反応性蛍光部分を予想した例である。
<実施例2> [9−アクリジンカルボン酸4−(ビニルオキシ)ブチルの合成]
撹拌棒とアルゴン供給口と栓とを取り付けた1リットルの2つ口フラスコに、9−アクリジンカルボン酸水和物(41mmol)と塩化メチレン(500mL)とを加える。次に、4−(ジメチルアミノ)ピリジン(8.8mmol)を加え、反応混合物を0℃に冷却して、N,N−ジシクロカルボジイミド(DCC)(44mmol)を少量ずつ加える。DCCを添加後、反応混合物を0℃で0.5時間撹拌し、1,4−ブタンジオールビニルエーテル(44mmol)を加える。CDCl中、H NMR分光法で、反応が完了したと判断されるまで、反応物を室温で撹拌する(2時間)。次に、反応混合物を濾過して固体のDCHU副生物を除き、濾液を減圧下で濃縮して、残留物を酢酸エチル(300mL)に溶解する。有機層を、飽和重炭酸ナトリウム(2×150mL)と水(2×150mL)で洗い、無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮して、9−アクリジンカルボン酸4−(ビニルオキシ)ブチル生成物を得る。
<実施例3> [ローダミンBイソチオシアナートの4−(ビニルオキシ)ブチルエステルの合成]
撹拌棒とアルゴン供給口と栓とを取り付けた1リットルの2つ口フラスコに、ローダミンBイソチオシアナート(18.6mmol)と塩化メチレン(500mL)とを加える。次に、4−(ジメチルアミノ)ピリジン(3.9mmol)を加え、反応混合物を0℃に冷却して、N,N−ジシクロカルボジイミド(DCC)(20mmol)を少量ずつ加える。DCCを添加後、反応混合物を0℃で0.5時間撹拌し、1,4−ブタンジオールビニルエーテル(20mmol)を加える。CDCl中、H NMR分光法で、反応が完了したと判断されるまで、反応物を室温で撹拌する(2時間)。次に、反応混合物を濾過して固体のDCHU副生物を除き、濾液を減圧下で濃縮して、残留物を酢酸エチル(300mL)に溶解する。有機層を、飽和重炭酸ナトリウム(2×150mL)と水(2×150mL)で洗い、無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮して、ローダミンBイソチオシアナートの4−(ビニルオキシ)ブチルエステルを得る。
<実施例4> [4−(ピレン−1−イル)ブタン酸ビニルの合成]
撹拌棒とアルゴン供給口と栓とを取り付けた500mLの2つ口フラスコに、4−(1−ピレニル)ブタン酸(34.7mmol)と、酢酸パラジウム=1,10−フェナントロリン錯体(1mmol)と、酢酸ビニル(1.39mol)とを加える。次に、トルエン(200mL)を加え、この溶液をアルゴンでパージして、マグネットスターラを用いて60℃で62時間撹拌する。過剰の酢酸ビニルを酢酸(副生物)と共に除き、酢酸ビニル(0.35mol)を追加して、アルゴン雰囲気中、60℃で48時間反応を続け、反応を完了させる。過剰のビニルエステルを除き、粗生成物を濾過して、懸濁していた触媒残留物を除き、減圧下でトルエンを除いて、4−(ピレン−1−イル)ブタン酸ビニルを得る。
<実施例5> [6,7−ジヒドロキシ−4−クマリニル酢酸4−(ビニルオキシ)ブチルの合成]
撹拌棒とアルゴン供給口と栓とを取り付けた1リットルの2つ口フラスコに、6,7−ジヒドロキシ−4−クマリニル酢酸(42.3mmol)と塩化メチレン(500mL)とを加える。次に、4−(ジメチルアミノ)ピリジン(8.9mmol)を加え、反応混合物を0℃に冷却して、N,N−ジシクロカルボジイミド(DCC)(46.5mmol)を少しずつ加える。DCCを添加後、反応混合物を0℃で0.5時間撹拌し、1,4−ブタンジオールビニルエーテル(46.5mmol)を加える。CDCl中、H NMR分光法で、反応が完了したと判断されるまで、反応物を室温で撹拌する(2時間)。次に、反応混合物を濾過して固体のDCHU副生物を除き、濾液を減圧下で濃縮して、残留物を酢酸エチル(300mL)に溶解する。有機層を、飽和重炭酸ナトリウム(2×150mL)と水(2×150mL)で洗い、無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮して、6,7−ジヒドロキシ−4−クマリニル酢酸4−(ビニルオキシ)ブチルを得る。

Claims (1)

  1. 放射線硬化性相変化インク組成物であって、該インク組成物は、
    硬化性の蛍光コモノマーと、
    硬化性の第1コモノマーと、
    前記インク組成物の約1から約50質量%の量のゲル化剤と、
    必要に応じて光開始剤と、
    必要に応じて着色剤と、
    を含み、
    前記インク組成物の粘度は、約110℃以下の温度において約15mPa・s以下であることを特徴とするインク組成物。
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