JP2010275493A - エポキシ樹脂組成物及びそれをマトリックス樹脂とするプリプレグ - Google Patents

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Abstract

【課題】構造材料として好適な繊維強化複合材料を与える樹脂組成物とそのプリプレグを提供すること。
【解決手段】少なくとも下記式(1)で表されるエポキシ樹脂と、硬化剤と、熱可塑性樹脂を含むエポキシ樹脂組成物であって、該樹脂組成物の所定条件(オートクレーブ成形、圧力0.49MPa、温度180℃、時間120分)下で硬化したときの硬化物の、室温条件(25℃、50%RH)下で測定した曲げ弾性率が3.0GPa以上で、かつ、曲げ強度が130MPa以上となるような物性を有するエポキシ樹脂組成物である。
Figure 2010275493

(上記式(1)中、Arは炭素数6〜20の芳香族基を表す。)
【選択図】なし

Description

本発明は、航空機用の構造材用プリプレグに適したエポキシ樹脂組成物、及びこのエポキシ樹脂組成物をマトリックス樹脂とした、航空機用構造材用プリプレグ及びこのプリプレグを使用した複合材料に関する。更に詳しくは、圧縮系の機械特性に優れ、高い耐湿熱性を有する航空機用構造材料のためのエポキシ樹脂組成物と、プリプレグ及び複合材料に関する。
炭素繊維や芳香族ポリアミド繊維等を強化材として用いた繊維強化複合材料は、強化材(強化繊維)を用いていない材料と比較して、強度や剛性が高いという特徴を有する。繊維強化複合材料の製造には、現在、様々な方法が用いられるが、強化繊維にマトリックス樹脂を含浸させたシート状中間基材であるプリプレグを用いる方法が広く用いられている。この方法ではプリプレグを複数枚、任意の方向により積層した後、加熱することによって、高い強度、剛性を有する繊維強化複合材料の成形物が得られる。これら複合材料は、その物性的な特徴が利用され、航空機等の構造材として多く用いられている。
マトリックス樹脂としては、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂が使用されるが、取扱い性の優れる熱硬化性樹脂が特に用いられ、その中でもエポキシ樹脂が最も多く使用されている。
エポキシ樹脂を用いるプリプレグ(エポキシ樹脂系のプリプレグ)において、マトリックス樹脂の一方の成分(主成分)として、芳香族グリシジルアミン型エポキシ樹脂と、マトリックス樹脂の他方の成分(硬化剤)としてジアミノジフェニルスルフォンとを組合せることにより、優れた耐熱性、機械的特性、寸法安定性、耐薬品性、耐候性を与える複合材料が提供されている。このようにエポキシ樹脂系のプリプレグから作られる複合材料は、良好な性能示すことが認められてきている反面、マトリックス樹脂の伸度が低く、脆いことも知られている。そのため、複合材料の機械物性が劣ることが指摘され、耐熱性を減少させずに機械物性を改善することが求められている。
複合材料を構造材料として用いる場合に、重要な機械物性の一つに圧縮強度がある。圧縮強度の測定には、無孔板、有孔板などの試験片を用いて行われるが、実際の使用においては、ボルト穴を設けた板材の形にすることが多いため、特に有孔板の圧縮強度、とりわけ高温高湿条件での強度が産業上利用する上で重要になる。
一般にポリマー系の材料は、高温下、もしくは高湿条件下で、強度及び弾性率が低下することが知られている。従って、ポリマーをマトリックス樹脂とする繊維強化複合材料の機械物性も高温下、若しくは、高湿条件下で低下しやすい。しかし、複合材料を、特に航空機などの構造材料として適用する場合は、高温下、若しくは、高湿条件下でも機械物性、とりわけ圧縮強度を、十分保持することが要求されている。
複合材料の圧縮強度を向上させるためには、一般にマトリックス樹脂の弾性率を上げることが有効である。エポキシ樹脂硬化物の弾性率を高くすることは、配合する原料の特性を勘案し、選択することで可能である。しかし、一般に弾性率の高いエポキシ樹脂硬化物は靱性が低く、脆いため、耐衝撃性、特に衝撃後圧縮強度、更には疲労などの特性が低下し、実用上、弾性率が高い原料の使用に制限がある。一方、繊維強化複合材料を構造材料として用いる場合には、前記のごとく耐衝撃性も重要になる。例えば、これらの繊維強化複合材料を航空機用の一次構造材用に使用する場合、離着陸時の小石の跳ね上げ、整備時の工具の落下等により外部からの衝撃を受けることがあり、耐熱性を減少させずに耐衝撃性を改善することも重要課題となっている。
耐衝撃性のある成形物を得ようとする場合、炭素繊維等の強化材自身の伸度を向上させることは勿論である。他方、プリプレグに用いられるマトリックス樹脂の靱性(タフネス)を上げることも重要な点であると指摘され、マトリックス樹脂の改善が数多く試みられている。複合材料の衝撃後圧縮強度が高くなるような、高靱性のエポキシ樹脂硬化物をマトリックス樹脂として用いると、一般にこれらのものは、弾性率をあまり高くできないため、圧縮強度の高い繊維強化複合材料を得ることはできない。つまり、産業上最も要求されている複合材料は、複合材料の圧縮強度と衝撃後圧縮強度が高くなるような、高剛性かつ高靱性を併せ持つ、エポキシ樹脂硬化物であるといえる。
特許文献1では、プリプレグの製造に2種類のエポキシ樹脂組成物、即ち、耐衝撃性、疲労に関与する表層には、硬化物が高靱性のエポキシ樹脂組成物を用い、圧縮強度に寄与する内部には、硬化物が高弾性率のエポキシ樹脂組成物を用いることにより、圧縮強度の向上の開示がされている。しかし、エポキシ樹脂組成物を2種類製造することが必須であり、マトリックス樹脂及びプリプレグの製造において、手間とコストがかかることが指摘でき、産業で利用する上で不利となる。特許文献2では、非円形横断面炭素繊維により、圧縮強度や衝撃後圧縮強度に優れたプリプレグが開示されている。しかしながら、炭素繊維の横断面形状に制限があり、一般的な炭素繊維の横断面形状である、円形に対応していないため、産業用途には不向きである。
以上のように、高い圧縮強度、特に有孔板圧縮強度と高い耐衝撃性、特に衝撃後圧縮強度を両立させ、且つ、汎用の強化繊維に対応し、製造に手間がかからないエポキシ樹脂組成物およびプリプレグ材料は、まだ得られていない。
特開平8−225666号公報 国際公開第96/21695号パンフレット
本発明の目的は、圧縮系の機械特性、特に湿熱時の有孔板圧縮強度に優れると共に耐衝撃性に優れ、構造材料として好適な繊維強化複合材料を与える樹脂組成物とそのプリプレグを提供することである。
上記目的に沿う本発明の構造材用のエポキシ樹脂組成物は、少なくとも下記の成分[A]、成分[B]、成分[C]を含むエポキシ樹脂組成物であって、該樹脂組成物を下記の成形条件下で硬化したときの硬化物の、室温条件(25℃、50%RH)下で測定した曲げ弾性率が3.0GPa以上で、かつ、曲げ強度が130MPa以上となるような物性を有するものであることを特徴とするエポキシ樹脂組成物である。
成分[A]:下記式(1)で表されるエポキシ樹脂
Figure 2010275493
(上記式(1)中、Arは炭素数6〜20の芳香族基を表す。)
成分[B]:硬化剤
成分[C]:熱可塑性樹脂
成形条件:オートクレーブ成形、圧力0.49MPa、温度180℃、時間120分
本発明の他の態様であるプリプレグは、前記構造材用のエポキシ樹脂組成物を繊維強化材シートに含浸させてなるものであることを特徴とする。本発明のプリプレグは、耐熱性及び耐湿熱性に優れ、構造材としての該プリプレグを積層した複合材料を作製した場合には、圧縮系の機械特性、特に湿熱時の有孔板圧縮強度に優れるとともに耐衝撃性で代表される特性が向上したものが得られる。
本発明のエポキシ樹脂組成物を、強化繊維基材のマトリックス樹脂としてプリプレグを作製し、そのプリプレグを用いることによって、圧縮系の機械特性、特に湿熱時の有孔板圧縮強度に優れると共に耐衝撃性に優れ、構造材料として好適な繊維強化複合材料が得られる。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、少なくとも特定のエポキシ樹脂成分[A]、硬化剤成分[B]、熱可塑性樹脂成分[C]を含むエポキシ樹脂組成物であって、所定の成形条件下で硬化したときの硬化物の、室温条件(25℃、50%RH)下で測定したとき、曲げ弾性率が3.0GPa以上で、かつ、曲げ強度が130MPa以上となるような物性を有するものである。所定の成形条件は、圧力0.49MPa、温度180℃、時間120分下でのオートクレーブ成形として定義される。また、室温条件での曲げ測定とは、25℃50%RH雰囲気で曲げ測定として定義される。かかる条件を満足するエポキシ樹脂組成物をマトリックス樹脂として用いることで、マトリックス樹脂自体の耐熱性及び耐湿熱性を持ち合わせ、かつ、高い機械特性、例えば、高い圧縮特性や衝撃特性を与えることができるプリプレグ及び該複合材料が得られる。
本発明におけるエポキシ樹脂組成物は、前記条件下で硬化させた硬化物の室温条件での曲げ弾性率が、3.0GPa以上、かつ、曲げ強度が130MPa以上のものである。好ましくは、室温下での曲げ弾性率が3.2GPa以上、かつ、曲げ強度が135MPa以上であり、室温下での曲げ弾性率が3.5GPa以上、かつ、曲げ強度が140MPa以上であるものがより好ましい。室温下の曲げ弾性率が3.0GPa未満、かつ、曲げ強度が130MPa未満の樹脂硬化物は、繊維強化複合材料とした場合の圧縮強度が低下する場合があり、好ましくない。
本発明におけるエポキシ樹脂組成物は、前記硬化条件下で得られたその硬化物の密度が1.26g/cm以上であることが好ましい。密度が1.26g/cm未満の場合には、繊維強化複合材料の圧縮強度が著しく低下する場合がある。更に好ましくは、1.28g/cm以上で、より好ましくは1.30g/cm以上である。
繊維強化複合材料を構造材料として用いる場合は、高温高湿条件の物性低下が小さいことが必要である。従って、本発明においては、前記条件で硬化させた硬化物は、これを高温高湿条件(121℃、2気圧、24時間)で処理した後、高温(82℃)下で測定した曲げ弾性率が2.5GPa以上で、かつ、曲げ強度が70MPa以上となるような物性を有するものであるものが好ましい。高温高湿時の曲げ弾性率が2.5GPa未満、かつ、曲げ強度が70MPa未満の硬化物は、繊維強化複合材料とした場合の高温高湿時の圧縮強度が著しく低下する場合がある。なお、高温高湿条件での曲げ測定とは、121℃、2気圧で24時間吸湿暴露させた後に、82℃雰囲気での曲げ測定として定義される。
次に、本発明の構造材用のエポキシ樹脂組成物に用いられる成分[A]〜[C]について詳述する。
成分[A]は、前記式(1)で表されるエポキシ樹脂であるが、前記式(1)中、Arは炭素数6〜20の芳香族基を表し、芳香族基は非反応性官能基を含んでいてもよい。芳香族基としては、例えば、フェニレン基、ジフェニレン基、ナフチレン基、ジフェニレンエーテル基、ジフェニレンスルホン基、ジフェニレンインダン基、ジフェニレンアミド基などを例示することができる。
樹脂硬化物の高弾性率を実現するには、式(1)で示したような3官能エポキシ樹脂であることが好ましい。具体的には、N,N,O−トリグリシジル−p−アミノフェノール(市販品として、ジャパンエポキシレジン社製jER630(商品名)、ハンツマン社製アラルダイトMY0500(商品名)、MY0510(商品名))や、N,N,O−トリグリシジル−m−アミノフェノール(ハンツマン社製アラルダイトMY0600(商品名)、住友化学社製スミエポキシELM−120(商品名))、p-グリシジルアミノフェノール型エポキシ(住友化学社製スミエポキシELM−100(商品名))、トリグリシジルアミノクレゾールのようなグリシジルアミン型エポキシ樹脂やナフタレン型エポキシ樹脂等が挙げられる。また、剛直な骨格を有するエポキシ樹脂、例えば、ナフタレン骨格や、フルオレン骨格、ビフェニル骨格等を分子内に有するエポキシ樹脂を配合すると、より高弾性率が実現できるので好ましい。これらのうち1種或いは2種以上を配合して用いることができる。特に樹脂硬化物の高弾性率を実現するために、N,N,O−トリグリシジル−m−アミノフェノールを用いることが好ましい。
更に樹脂硬化物の高弾性率を実現するには、成分[A]を全エポキシ樹脂成分中の70重量%以上として配合すること好ましい。成分[A]のエポキシ樹脂成分中の比率が70重量%未満の場合、得られる硬化物や複合材料の弾性率が不十分となる場合がある。好ましくは75重量%以上であり、更に好ましくは80重量%以上であり、90重量%以上が特に好ましい。
本発明のエポキシ樹脂組成物に用いられる成分[A]以外のエポキシ樹脂としては、前記の成分[A]のごとくグリシジルアミノ基を有する3官能エポキシ樹脂を除いた従来公知のいずれのエポキシ樹脂でも用いることができ、特に限定されるものではない。ビスフェノール型エポキシ樹脂、アルコール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ヒドロフタル酸型エポキシ樹脂、ダイマー酸型エポキシ樹脂、脂環型エポキシ樹脂などの2官能エポキシ樹脂、テトラキス(グリシジルオキシフェニル)エタン、トリス(グリシジルオキシフェニル)メタンのようなグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタンのようなグリシジルアミン型エポキシ樹脂やナフタレン型エポキシ樹脂や、ノボラック型エポキシ樹脂であるフェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂など、また、フェノール型エポキシ樹脂などの多官能エポキシ樹脂等が挙げられる。更に、ウレタン変性エポキシ樹脂、ゴム変性エポキシ樹脂などの各種変性エポキシ樹脂も用いることができる。
ビスフェノール型エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型樹脂、ビスフェノールF型樹脂、ビスフェノールAD型樹脂、ビスフェノールS型樹脂等が挙げられる。更に具体的にはジャパンエポキシレジン社製jER815(商品名)、jER828(商品名)、jER834(商品名)、jER1001(商品名)、jER807(商品名)、三井石油化学製エポミックR−710(商品名)、大日本インキ化学工業製EXA1514(商品名)等を例示できる。
脂環型エポキシ樹脂としては、ハンツマン社製社製アラルダイトCY−179(商品名)、CY−178(商品名)、CY−182(商品名)、CY−183(商品名)等が例示される。
フェノールノボラック型エポキシ樹脂としては、ジャパンエポキシレジン社製jER152(商品名)、jER154(商品名)、ダウケミカル社製DEN431(商品名)、DEN485(商品名)、DEN438(商品名)、DIC社製エピクロンN740(商品名)等、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂として、ハンツマン社製社製アラルダイトECN1235(商品名)、ECN1273(商品名)、ECN1280(商品名)、日本化薬製EOCN102(商品名)、EOCN103(商品名)、EOCN104(商品名)等を例示できる。
各種変性エポキシ樹脂としては、例えば、ウレタン変性ビスフェノールAエポキシ樹脂として旭電化製アデカレジンEPU−6(商品名)、EPU−4(商品名)等が例示できる。
これらの成分[A]以外のエポキシ樹脂は、適時選択して1種あるいは2種以上を混合して用いることができる。この中で、ビスフェノール型に代表される2官能エポキシ樹脂は、分子量の違いにより液状から固形まで種々のグレードがあり、プリプレグ用マトリックス樹脂に配合する場合、適宜、これらを混合して粘度調整を行う目的の成分とされる。
次に、成分[B]の硬化剤につて説明する。エポキシ樹脂は、通常、公知の硬化剤と共に用いられるが、本発明においても同様である。本発明で用いられる硬化剤は、通常、エポキシ樹脂の硬化剤として用いられるものなら何でもよいが、芳香族アミン系硬化剤が好ましい。具体的には、ジアミノジフェニルスルホン(DDS)、ジアミノジフェニルメタン(DDM)、ジアミノジフェニルエーテル(DPE)、フェニレンジアミンなどがエポキシ樹脂の硬化剤として用いられるものである。また、例えば、ジメチルジエチルDDMやテトラエチルDDM、ジエチルジイソピルDDMなど芳香族アミン系硬化剤の誘導体など、180℃硬化に対応できるものであれば特に限定されるものではなく、従来公知のいかなる芳香族アミン系硬化剤でも用いることができる。高弾性率、かつ、耐熱性がある硬化物を得るためには、硬化剤としてジアミノジフェニルスルホンを用いることが好ましく、特にその異性体のなかでも、3,3′−ジアミノジフェニルスルホンを用いることが特に好ましい。
また、成分[B]はコート剤によりマイクロカプセル化されたDDS(mc−DDS)を用いることが可能である。mc−DDSは室温状態においてエポキシ樹脂と反応することを防止するため、物理的、化学的な結合によりDDS粒子の表層をエポキシ樹脂と反応性の少ない物質、具体的には、ポリアミド、変性尿素樹脂、変性メラミン樹脂、ポリオレフィン、ポリパラフィン(変性品も含む)等によりコートされたものである。 これらのコート剤は、単独使用又は併用してもよく、また、前記以外の種々のコート剤によりマイクロカプセル化されたDDSを用いることもできる。
本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、適宜、上述の成分[B]以外の硬化剤、硬化促進剤、熱硬化性樹脂、反応性希釈剤、充填剤、老化防止剤、難燃剤、顔料等の各種添加剤を含有していてもよい。成分[B]以外の、他のエポキシ樹脂硬化剤及び/又は硬化促進剤としては、酸無水物、ルイス酸、ジシアンジアミド(DICY)やイミダゾール類の如く塩基性硬化剤、尿素化合物、有機金属塩などが挙げられる。より具体的には、酸無水物としては、無水フタル酸、トリメリット酸無水物、無水ピロメリット酸等が例示される。ルイス酸としては、三フッ化ホウ素塩類が例示され、更に詳細には、BFモノエチルアミン、BFベンジルアミン等が例示される。イミダゾール類としては、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾールが例示される。また、尿素化合物である3−[3,4−ジクロロフェニル]−1,1−ジメチル尿素(DCMU)等や、有機金属塩であるCo[III]アセチルアセトネート等を例示することができる。反応性希釈剤としては、例えば、ポリプロピレンジグリコール・ジグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル等の反応性希釈剤が例示される。
本発明で用いられる成分[B]の配合量は、成分[B]以外の硬化剤・硬化促進剤の有無と添加量、エポキシ樹脂との化学反応量論及び組成物の硬化速度などを考慮して、適宜、所望の配合量で用いることができる。
次に、成分[C]の熱可塑性樹脂について説明する。本発明のエポキシ樹脂組成物に用いられる熱可塑性樹脂としては、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド(PEI)に代表される熱可塑性樹脂のほか、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリスルフォン、ポリカーボネート、ポリエーテルエーテルケトンや、ナイロン6、ナイロン12、非晶性ナイロンなどのポリアミド、アラミド、アリレート、ポリエステルカーボネート等が挙げられる。この中でも、ポリイミド、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリスルフォン、ポリアミドイミドは耐熱性の観点からより好ましい例として挙げることができる。末端変性ポリエステルや末端変性PEI(商品名)も使用できる。また、本発明のエポキシ樹脂組成物に用いられる熱可塑性樹脂としては、ゴム成分も含まれる。ゴム成分の代表的な例示としては、カルボキシ末端スチレンブタジエンゴム、カルボキシ末端水素化アクリロニトリルブタジエンゴムに代表されるゴム成分が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は単独で用いても、任意の割合で二種以上を併用することもできる。
熱可塑性樹脂の形態は、特に限定されるものではないが、エポキシ樹脂組成物中に、均質、かつ、成形性を維持して添加されるために、粒子状であることが好ましい。該熱可塑性樹脂微粒子の平均粒子径は、0.1〜100μmの範囲であることが好ましい。0.1μmより小さいと嵩密度が高くなり、エポキシ樹脂組成物の粘度が著しく増粘したり、十分な量を添加することが困難となったりする場合がある。一方、100μmより大きいと得られるエポキシ樹脂組成物をシート状にする際、均質な厚みのシート状のものが得られにくくなる場合がある。より好ましくは、平均粒径1〜50μmである。
本発明で用いられる成分[C]の配合量は、全エポキシ樹脂組成物の重量に対して2〜60重量%であることが好ましい。成分[C]の配合量が2重量%より少ないと、得られるプリプレグ及び複合材料の耐衝撃性が不十分になる。60重量%を超えると、樹脂硬化物において、相転移が起こり、機械物性の低下の場合があり、かつ、樹脂組成の粘度が高くなり成形性・取扱性の劣るものとなる場合がある。好ましくは、10〜50重量%であり、更に好ましくは15〜40重量%である。
更に、これらの熱可塑性樹脂は、エポキシ樹脂(成分[A]及び/又は成分[A]以外のエポキシ樹脂)に溶解し得るもの(成分[C1])と、溶解し得えないもの(成分[C2])が挙げられる。成分[A]及び/又は成分[A]以外のエポキシ樹脂に可溶な熱可塑性樹脂[C1]としては、例えば、グリシジルアミノ基を有する多官能エポキシ樹脂を用いた場合、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド(PEI)等が挙げられる。
成分[C1]は、硬化過程でエポキシ樹脂に溶解し、マトリックスの粘度を増加させ、エポキシ樹脂組成物の粘度低下を防ぐ効果もある。成分[C1]は靭性、耐高温高湿特性及び耐薬品性の観点から、末端反応性熱可塑性樹脂が好ましい。なお、本発明において、エポキシ樹脂に熱可塑性樹脂が可溶又は不溶とは、熱可塑性樹脂をペレット、粉砕物若しくはパウダー状でエポキシ樹脂中に投入し、硬化温度以下で撹拌した際に、粒子の大きさが変化しない場合を不溶とし、粒子の大きさが小さくなるか若しくは消失する場合を可溶として定義される。
成分[C1]を用いる場合は、エポキシ樹脂に全く溶解してない状態(全エポキシ樹脂組成物に微粒子として分散させた状態)、一部の成分[C1]を溶解させ残りを全エポキシ樹脂組成物に分散させた状態、完全に溶解している状態で添加されていてもよい。エポキシ樹脂組成物の成形性、プリプレグの取扱性の観点からは、全く溶解していない状態、又は、一部溶解している状態で添加されていることがより好ましい。溶解している割合については、前記の如くエポキシ樹脂組成物の成形性、プリプレグ取扱性などを勘案し、適宜所望の割合を設定することができ、特に限定されるものではない。
本発明で用いられる成分[C1]の配合量は、全エポキシ樹脂組成物の重量に対して1〜30重量%であることが好ましい。成分[C1]の配合量が1重量%より少ないと、得られる複合材料の耐衝撃性が不十分になる。30重量%を超えると、樹脂硬化物において、相転移が起こり、機械物性や耐薬品性の低下の場合があり、かつ、樹脂組成の粘度が高くなり成形性・取扱性の劣るものとなる場合がある。好ましくは、2〜28重量%であり、更に好ましくは3〜25重量%である。
成分[A]及び/又は成分[A]以外のエポキシ樹脂に不溶な熱可塑性樹脂[C2]としては、例えば、グリシジルアミノ基を有する多官能エポキシ樹脂を用いた場合、ポリエーテルエーテルケトン(PEK)や、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ナイロン6、ナイロン12、非晶性ナイロン(TR−55)、非晶性ポリイミド(PIXA−M)などのポリアミド等が挙げられる。
エポキシ樹脂に可溶な熱可塑性樹脂[C1]と不溶な熱可塑性樹脂[C2]とをあらかじめ溶融ブレンドし、これを粉砕し粒子状として混合してもよい。
本発明で用いられる成分[C2]の配合量は、全エポキシ樹脂組成物の重量に対して1〜30重量%であることが好ましい。成分[C]の配合量が1重量%より少ないと、得られる複合材料の耐衝撃性が不十分になる。30重量%を超えると、樹脂硬化物において、相転移が起こり、機械物性の低下の場合があり、かつ樹脂組成の粘度が高くなり成形性・取扱性の劣るものとなる場合がある。好ましくは、2〜25重量%であり、更に好ましくは5〜20重量%である。
熱可塑性樹脂の配合は、本発明によるエポキシ樹脂組成物を硬化して得られる硬化物の耐熱性を殆ど低下させず、耐衝撃性を向上させる目的で、必須の成分である。ただし、成分[C1]と成分[C2]は、あくまでも成分[A]及び/又は成分[A]以外のエポキシ樹脂との特定の組み合わせによって選択されるものである。
上記成分[A]、成分[B]及び成分[C]以外の成分も、得られた成形物の機械物性を損なわない範囲で、任意の量を添加することも可能である。例えば、無機フィラーとしては、特に限定されるものではないが、カーボンナノチューブやフラーレン等の炭素体や、溶融シリカ(SiO)、結晶シリカ(SiO)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化アルミニウム(Al)、窒化ホウ素(BN)、窒化アルミニウム(AlN)等を用いることができ、また、これらの他に、高誘電率性チタン酸バリウムや酸化チタンのような高誘電率フィラーや、ハードフェライトや、ハードフェライトのような磁性フィラー、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、グアニジン塩、ホウ酸亜鉛、モリブデン化合物、スズ酸亜鉛等の無機系難燃剤や、タルク、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、雲母粉等を用いることができる。同様に、有機フィラーとしては、特に限定されるものではないが、シリコンゴム(単体であって、パウダー状のものを含む)や架橋アクリルゴム(単体)及びこれをコアとするコアシェル構造を有するものが挙げられる。なお、コアシェル構造とは、シリコンゴムや架橋アクリルゴムのようなゴム状ポリマーからなるコア層を、ガラス状ポリマーからなるシェル層で被覆した構造をいう。そして、これらのフィラーは、一種のみを用いたり二種以上を組み合わせて用いたりすることができる。
本発明のエボキシエポキシ樹脂組成物の製造方法は、特に限定されるものではなく、従来公知のいずれの方法を用いてもよい。例えば、エポキシ樹脂組成物製造時に適用される混練温度としては、10〜160℃の範囲が例示できる。160℃を超えるとエポキシ樹脂の熱劣化や、部分的な硬化反応が開始し、得られるエポキシ樹脂組成物並びにそれを用いたプリプレグの保存安定性が低下する場合がある。10℃より低いとエポキシ樹脂組成物の粘度が高く、実質的に混練が困難となる場合がある。好ましくは20〜130℃であり、更に好ましくは30〜110℃の範囲である。
混練機械装置としては、従来公知のものを用いることができる。具体的な例としては、ロールミル、プラネタリーミキサー、ニーダー、エクストルーダー、バンバリーミキサー、攪拌翼を供えた混合容器、横型混合槽などが挙げられる。各成分の混練は、大気中又は不活性ガス雰囲気下にて行うことができる。また、特に大気中で混練が行われる場合は、温度、湿度管理された雰囲気が好ましい。特に限定されるものではないが、例えば、30℃以下にて一定温度に管理された温度や、相対湿度50%RH以下といった低湿度雰囲気にて混練されるのが好ましい。
各成分の混練は一段で行われても、逐次添加することにより多段的に行われても良い。また、逐次添加する場合は、任意の順序で添加することができる。この中でも、先に述べた通り、成分[C1]については、予め、成分[A]及び/又は成分[A]以外のエポキシ樹脂に、その一部又は全量を予め溶解せしめた後に、供することもできる。また、特に限定するものではないが、混練・添加順序として、成分[B]を最後に添加することが、得られるエポキシ樹脂組成物及びにそれからなるプリプレグの保存安定性の観点から、好ましい。
次に、本発明の他の態様であるプリプレグについて説明する。
本発明におけるプリプレグとは、上記の如くして得られる耐湿熱特性等に優れた本発明のエポキシ樹脂組成物を、強化繊維基材(繊維強化材)に含浸させてなるプリプレグである。本発明のプリプレグに用いられる繊維強化材は、炭素繊維、ガラス繊維、芳香族ポリアミド繊維、ポリイミド繊維、ポリベンゾオキサゾール繊維、全芳香族ポリエステル繊維などが挙げられる。これらは、単独又は、二種以上を併用することができる。特に限定されるものではないが、複合材料の機械的性質を向上させるためには、引っ張り強度に優れる炭素繊維を用いることが好ましい。また、繊維強化材の形態は、織物、一方向引き揃え物等である。特に、炭素繊維又は炭素繊維と他の繊維を組合わせたものからなる、一方向織物シートが好ましい。
本発明のプリプレグは、これを構成するエポキシ樹脂組成物の含有率(RC)が15〜60重量%であることが好ましい。15重量%より少ないと、得られる複合材料に空隙などが発生し、機械特性を低下させる場合がある。60重量%を超えると強化繊維による補強効果が不十分となり、実質的に重量対比機械特性が低いものとなる場合がある。好ましくは20〜50量%の範囲であり、より好ましくは25〜50重量%の範囲である。ここでいうエポキシ樹脂組成物含有率(RC)とは、プリプレグを硫酸分解にて樹脂を分解による重量変化から算出される割合である。より具体的には、プリプレグを100mm×100mmに切り出して試験片を作成し、その重量を測定し、硫酸中で樹脂分が溶出するまで、浸漬または煮沸を行い、ろ過して残った繊維を硫酸で洗浄し、乾燥してからその重量を測定し、算出することによって得られる、エポキシ樹脂組成物の含有率である。
また、特に限定されるものではないが、具体的なプリプレグの好ましい形態としては、例えば、強化繊維及び前記強化繊維間に含浸されたエポキシ樹脂組成物からなる強化繊維層と、前記強化繊維層表面に被覆された樹脂被覆層とからなり、樹脂被覆層の厚みが2〜50μmであるものが例示される。2μm未満の場合、タック性が不十分となり、プリプレグの成形加工性が著しく低下する場合がある。50μmを超えると、プリプレグを均質な厚みでロール状に巻き取ることが困難となり、成形精度が著しく低下する場合がある。より好ましくは、5〜45μmであり、更に好ましくは10〜40μmである。
本発明のプリプレグは、特に限定されるものではなく、従来公知のいかなる方法を用いて製造することができ、上記本発明のエポキシ樹脂組成物を離型紙の上に薄いフィルム状に塗布し、剥離して得られた樹脂フィルムを、強化繊維シートに積層成形してエポキシ樹脂組成物を含浸させる、いわゆるホットメルト法や、エポキシ樹脂組成物を適当な溶媒を用いてワニス状にし、このワニスを強化繊維に含浸させる溶剤法が挙げられる。この中でも、特に本発明のプリプレグは、従来公知の製造方法であるホットメルト法により、好適に製造することができる。
本発明のエポキシ樹脂組成物をエポキシ樹脂組成物シートにする方法としては、特に限定されるものではなく、従来公知のいずれの方法を用いることもできる。より具体的には、ダイ押し出し、アプリケーター、リバースロールコーター、コンマコーターなどにより、離型紙、フィルムなどの支持体上に流延、キャストをすることにより得ることが出来る。フィルム化の際の樹脂温度としては、その樹脂組成・粘度に応じて適宜設定可能であるが、前述のエポキシ樹脂組成物製造方法における混練温度と同じ条件が好適に用いることができる。
ここでいう強化繊維シートとは、繊維強化材の形態を指し、上述の如く織物、一方向引き揃え物などのごとくシート状の強化繊維である。これらの強化繊維シート並びにエポキシ樹脂組成物シートの大きさなどは、特に限定されるものではない。
また、連続製造の場合、生産速度としては、特に限定しないが、生産性や経済性などを考慮すると0.1m/分以上である。より好ましくは1m/分以上であり、更に好ましくは5m/分以上である。
エポキシ樹脂組成物シートを強化繊維シートへ含浸させるための含浸加圧は、そのエポキシ樹脂組成物の粘度・樹脂フローなどを勘案し、任意の圧力を用いることが出来る。
エポキシ樹脂組成物シートの強化繊維シートへの含浸温度は、50〜150℃の範囲である。50℃未満の場合、エポキシ樹脂組成物シートの粘度が高く、強化繊維シートの中へ十分含浸しない場合がある。150℃以上の場合、エポキシ樹脂組成物の硬化反応が、開始され、プリプレグの保存安定性が低下したり、ドレープ性が低下したりする場合がある。より好ましくは、60〜145℃であり、より好ましくは70〜140℃である。また、含浸は1回ではなく、複数回に分けて任意の圧力と温度にて、多段的に行うこともできる。
かかる手段により得られるプリプレグを用いて、積層などの成形並びに硬化せしめて製造される複合材料は、高い耐湿熱特性を有し、更に優れた耐衝撃性を有しており、航空機用構造材料用途へと好適なものである。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。本実施例、比較例においてエポキシ樹脂組成物の各種試験方法は下記にしたがって行った。
(1)曲げ測定用試験片の高温高湿暴露条件
各エポキシ樹脂組成物を通常のオートクレーブ成形法を用い、圧力0.49MPaで、温度180℃で、時間120分間成形して得られた硬化物を、厚み3mm、幅10mm、長さ70mmのサイズに切りだした後、121℃、2気圧の条件で24時間、高温高湿処理を行った。
(2)樹脂硬化物 曲げ測定
各エポキシ樹脂組成物の硬化物の曲げ弾性率及び強度の測定は、オートクレーブ成形法を用い、圧力0.49MPaで、温度180℃で、時間120分間成形して得られた硬化物の板を作製した。その後、厚み3mm、幅10mm、長さ70mmのサイズにカットした試験片を作製し、スパン間48mmの3点曲げで、室温条件(25℃、50%RH)、及び、前記高温高湿条件に暴露させた試験片の高湿高温条件(82℃)での硬化物曲げ測定を行った。
(3)樹脂硬化物の密度測定
オートクレーブ成形法を用い、圧力0.49MPaで、温度180℃で、時間120分間成形して得られた硬化物を、厚み3mm、幅6mm、長さ50mmのサイズに切りだした後、水置換法により密度測定を行った。このとき、水温も同時に測定し、水の温度に適した密度を用いて算出する。これらの測定値から下記式を用いて樹脂硬化物の密度を算出した。
エポキシ樹脂組成物の硬化物の密度(g/cm)=[(W1/(W1−W2)]×d
W1:エポキシ樹脂組成物の硬化物の大気中での重量(g)
W2:エポキシ樹脂組成物の硬化物の水中での重量(g)
d:測定水温での水の密度(g/cm
(4)複合材料の衝撃後圧縮強度(CAI)の測定
耐衝撃性の指標として、衝撃後圧縮強度の評価を、EN6038に準拠し測定した。即ち、プリプレグをカット、積層し、積層構成[+45/0/−45/90]3Sの積層体を得、通常のオートクレーブ成形法を用い、圧力0.49MPaで、温度180℃で、時間120分間成形した。得られた成形物を0゜方向が
152.4mm、90゜方向が101.6mmの寸法に切断し、衝撃後圧縮強度(CAI)試験の試験片を得た。この試験片を用いて30.5kJ衝撃後の衝撃後圧縮強度(CAI)を室温下(25℃、50%RH)で測定した。
(5)有孔板圧縮強度(OHC)測定
カット、積層し、積層構成[+45/0/−45/90]2Sの積層体を得た。通常のオートクレーブ成形法を用い、圧力0.49MPaで、温度180℃で、時間120分間成形した。得られた成形物を、0°方向が305mm、90°方向が34.8mmの長方形に切り出し、さらに中央部に直径6.25mmの円形の孔を穿孔して有孔板に加工し、室温下の圧縮強度(25℃、50%RH)、及び、高温高湿時条件の圧縮強度(71℃の温水に2週間浸漬させた試験片を、82℃で圧縮測定)を、島津製作所製10Tオートグラフ試験機を用いて測定した。
[実施例1〜6及び比較例1〜2]
エポキシ樹脂組成物の各成分のうち、成分[A]として、ハンツマン社製のグリシジルアミン型エポキシ樹脂:アラルダイトMY0600を、成分[A]以外のエポキシ樹脂として、ジャパンエポキシレジン社製のグリシジルアミン型エポキシ樹脂:Ep604、ビスフェノールA型エポキシ樹脂:Ep828、アデカ社製のウレタン変性エポキシ樹脂:EPU−6を、成分[B]として、和歌山精化工業製の芳香族アミン硬化剤:セイカキュア−S(4,4’−DDS)、コート剤によりマイクロカプセル化されたDDS(mc−DDS、コート率は10重量%)、日本合成化工社製の芳香族アミン硬化剤:DAS(3,3’−DDS)を、成分[C1]として、住友化学工業社製のポリエーテルスルホン:PES5003P(平均粒子径10μm)、日本GEプラスチック社製のポリエーテルイミド(PEI):ウルテム1000−1000を、成分[C2]として、エムスケミージャパン社製のグリルアミド:TR−55、三井化学社製の熱可塑性ポリイミド:オーラムPD450Mを、その他の添加剤として、ジャパンエポキシレジン社製の硬化剤:DICY7T、保土谷化学工業社製の硬化促進剤:DCMU−99を用いた。
実施例1〜6及び比較例1〜2は、各種原材料を表1に示す組成となるように、以下の手順で配合した。先ず、下記の表1に示す組成の成分[A]と、成分[C1]の一部又は全量をニーダー中で加熱・溶解させた。その後、得られた樹脂混合物をロールミルに移し、成分[B]と分散用の成分[C1]と成分[C2]及びその他添加剤成分等をロールミル上で良く混練し、実施例1〜6及び比較例1〜2のエポキシ樹脂組成物をそれぞれ得た。
このエポキシ樹脂組成物の硬化物の室温での曲げ弾性率(GPa)と強度(MPa)と高温高湿条件の曲げ弾性率(GPa)と強度(MPa)を表1に示した。
上記にて得られたエポキシ樹脂組成物は、オートクレーブ成形法を用い、圧力0.49MPaで、温度180℃で、時間120分間成形し、実施例1〜6及び比較例1〜2の硬化物を作製した。硬化物を厚み3mm、幅10mm、長さ70mmのサイズにカットした試験片を得た。得られた試験片をスパン間48mmの3点曲げ測定を行った。また、高温高湿下の曲げ試験には、121℃、2気圧の条件で24時間、暴露して得られた試験片を用いた。その結果、表1に示すように、実施例1〜6で得られた試験片については曲げ弾性率及び曲げ強度ともに高いものであり、特に高温高湿下の曲げ特性も高かったが、比較例1、2で得られた試験片については両測定条件共に低い値となった。
同様に実施例1〜6及び比較例1〜2で得られたエポキシ樹脂組成物硬化物をカットし、樹脂密度測定の試験片を得た。得られた試験片を前記方法にて密度測定を行った。その結果、表1に示すように、実施例1〜6で得られた試験片については、樹脂密度は高かったが、比較例1、2で得られた試験片については低いものであった。
次に、フィルムコーターを用いて離型フィルム上に、実施例1〜6及び比較例1〜2のエポキシ樹脂組成物をそれぞれ塗布して、目付51.0g/mの離型フィルム付の樹脂シートを作製した。
炭素繊維束 (東邦テナックス社製・テナックスIMS60、
引張強度5490MPa、弾性率289GPa)を並べ、これを実施例1〜6及び比較例1〜2で得られたそれぞれの樹脂シート2枚で挟み込み、温度100℃、圧力0.3MPaで加熱、含浸させ、炭素繊維目付190g/m、樹脂含有率35重量%の一方向プリプレグを得た。
上記方法にて得られた、実施例1〜6及び比較例1〜2のエポキシ樹脂組成物による一方向プリプレグをカットし、次いで積層をして成型板を作製し、得られた複合材料のCAIと、室温及び高温高湿条件の有孔板圧縮強度について評価した。結果を表1に示した。実施例1〜6で得られた試験片のCAI及び有孔板圧縮強度はいずれも高いものであったが、比較例1、2で得られた試験片ではこれらの値は低いものであった。
Figure 2010275493

Claims (14)

  1. 少なくとも下記の成分[A]、成分[B]、成分[C]を含むエポキシ樹脂組成物であって、該樹脂組成物を下記の成形条件下で硬化したときの硬化物の、室温条件(25℃、50%RH)下で測定した曲げ弾性率が3.0GPa以上で、かつ、曲げ強度が130MPa以上となるような物性を有するものであることを特徴とするエポキシ樹脂組成物。
    成分[A]:下記式(1)で表されるエポキシ樹脂
    Figure 2010275493
    (上記式(1)中、Arは炭素数6〜20の芳香族基を表す。)
    成分[B]:硬化剤
    成分[C]:熱可塑性樹脂
    成形条件:オートクレーブ成形、圧力0.49MPa、温度180℃、時間120分
  2. 硬化物を高温高湿条件(121℃、2気圧、24時間)で処理した後、高温(82℃)下で測定した曲げ弾性率が2.5GPa以上で、かつ、曲げ強度が70MPa以上となるような物性を有するものであることを特徴とする請求項1記載のエポキシ樹脂組成物。
  3. 硬化物の密度が、1.26g/cm以上であることを特徴とする請求項1又は2記載のエポキシ樹脂組成物。
  4. エポキシ樹脂組成物中の全エポキシ樹脂成分の70重量%以上が、成分[A]であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
  5. 成分[B]が、主として芳香族アミンであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
  6. 成分[C]が、エポキシ樹脂組成物全体に対して2〜60重量%であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
  7. 成分[C]が、エポキシ樹脂組成物のエポキシ樹脂成分に少なくとも一部可溶な熱可塑性樹脂[C1]と、エポキシ樹脂成分に不溶な熱可塑性樹脂[C2]を併用したであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
  8. 成分[C1]が、エポキシ樹脂組成物全体に対して1〜30重量%であることを特徴とする請求項7に記載のエポキシ樹脂組成物。
  9. 成分[C2]が、エポキシ樹脂組成物全体に対して1〜30重量%であることを特徴とする請求項7に記載のエポキシ樹脂組成物。
  10. 請求項1〜9のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物を、強化繊維基材に含浸させてなるプリプレグ。
  11. 強化繊維基材が、炭素繊維であることを特徴とする請求項10に記載のプリプレグ。
  12. 強化繊維基材が、一方向炭素繊維シートであることを特徴とする請求項10に記載のプリプレグ。
  13. 強化繊維基材が、炭素繊維織物シート又は複数種類の繊維で構成された織物シートであることを特徴とする請求項10に記載のプリプレグ。
  14. 請求項10〜13のいずれか1項に記載のプリプレグを使用し、成形又は硬化して得られる複合材料。
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