JP2007217463A - エポキシ樹脂組成物および複合材料中間体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】2官能エポキシ樹脂(A)と3官能エポキシ樹脂(B)とフェノール化合物(C)と、特定のポリアミド樹脂(D)が混合、加熱されたエポキシ樹脂成分を含有するエポキシ樹脂組成物である。ポリアミド樹脂(D)は、特定のポリエーテルエステルアミド(ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体)であり、ポリアミド成分と、ポリオキシアルキレングリコールおよびジカルボン酸からなるポリエーテルエステル成分との反応で得られるものである。
【選択図】なし
Description
このように耐衝撃性と耐熱性との両立は従来非常に困難であった。
しかしながら、この方法で一定の効果を得るためには、熱可塑性樹脂の添加量を多くする必要があり、その結果、エポキシ樹脂組成物の粘度が上がってしまう。一般に、複合材料からなるゴルフシャフトやテニスラケットを製造する際には、エポキシ樹脂組成物を補強用繊維に含浸させた複合材料中間体(プリプレグともいう。)を材料とし、このプリプレグは、通常、離型紙(工程紙)上に塗布されたエポキシ樹脂組成物に対して、一方向に引き揃えた補強用繊維を加熱、加圧して、補強用繊維にエポキシ樹脂組成物を含浸させる方法で製造される。そのため、このようにエポキシ樹脂組成物の粘度が上昇すると、離型紙の表面にエポキシ樹脂組成物を塗布できなくなるおそれや、加熱・加圧により補強用繊維にエポキシ樹脂組成物を含浸できなくなる可能性が生じ、複合材料中間体の製造工程通過性も著しく低下する。また、得られた複合材料中間体は、適度なタックや柔軟性など、複合材料中間体に求められる特性が不十分なものとなってしまう傾向がある。
また、特許文献13には、上述の樹脂組成物に、両末端がカルボキシル基のブタジエン−アクリロニトリル共重合体等のエラストマーをさらに配合することにより、より高い耐衝撃性が発現可能である旨記載されているが、エラストマーなどのゴム成分を単に配合すると、配合量に応じて耐衝撃性は向上するものの、耐熱性はやはり低下してしまう。
前記フェノール化合物(C)は、下記式(VI)で示されるものであることが好ましい。
前記エポキシ樹脂成分は、2官能エポキシ樹脂(A)および/または前記3官能エポキシ樹脂(B)と、前記ポリアミド樹脂(D)とが混合、加熱されたものに、少なくとも前記フェノール化合物(C)が混合、加熱されたものであることが好ましい。
本発明の複合材料中間体は、前記エポキシ樹脂組成物が補強用繊維に含浸したことを特徴とする。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、2官能エポキシ樹脂(A)と、3官能エポキシ樹脂(B)と、フェノール化合物(C)と、上記式(I)で示されるポリアミド樹脂(D)とが混合され、加熱されて得られるエポキシ樹脂成分を含有するものである。
(A)成分である2官能エポキシ樹脂とは、分子中に2つのエポキシ基を有するエポキシ樹脂であって、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、それらのブロム化エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、アルキル骨格を主鎖とするエポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂あるいはこれらを変性したエポキシ樹脂等をその代表例として挙げることができ、これらは1種単独で使用しても、2種類以上を併用してもよい。また、これらのうち例えばビスフェノール型エポキシ樹脂は、下記式(VII)で示される。
これらのうちTPAE32は、式(I)で示されるものの混合物であって、式(I)〜(V)中、平均値として、X=Y=1、Z=7.26、a=0.16、b=0.84、l=2.23、α=10、β=34、d=2、m=14、n=1、γ=10、e=4である。また、R1およびR1’はいずれもHである。また、TPAE32においては、PA1、PA2はいずれも、式(III)の構造のものと式(IV)の構造のものとが混在した状態となっている。
ここで2官能エポキシ樹脂(A)の比率を10質量部以上とすることにより、エポキシ樹脂組成物の耐衝撃性が十分となり、90質量部以下とすることにより、エポキシ樹脂組成物の耐熱性の低下を抑えることができる。3官能エポキシ樹脂(B)の比率を0.5質量部以上としておけば十分な耐熱性が得られ、40質量部以下とすると、耐熱性と耐衝撃性との両立が達成できる。フェノール化合物(C)の比率を10質量部以上としておけば十分な耐衝撃性が得られ、50質量部以下としておけばエポキシ樹脂組成物を硬化させた際に密な架橋骨格が得られ、耐熱性を良好なものとできるだけでなく、20%以上のフェノール性水酸基が未反応で残存してしまうこともない。
また、ポリアミド樹脂(D)の比率が、(A)〜(C)成分の合計100質量部に対して1質量部以上であれば、エポキシ樹脂組成物の耐衝撃性は十分なものとなり、45質量部以下であれば、エポキシ樹脂組成物の粘度を低く抑えられ、これを用いてプリプレグを製造する際の製造工程通過性が良好となる。さらに好ましいポリアミド樹脂(D)の比率は3〜25質量部である。
このようにポリアミド樹脂(D)がエポキシ樹脂成分中に島相として固定されていると、得られたエポキシ樹脂組成物の硬化条件を種々変化させて加熱硬化させても、ポリアミド樹脂(D)は相分離することなく、ソフトセグメントの役割を担う島相としてエポキシ樹脂成分中に存在することができ、その結果、得られるエポキシ樹脂組成物は非常に高い耐衝撃性を発現する。さらに、ソフトセグメントとしては、ポリアミド樹脂(D)からなる島相に加え、フェノール化合物(C)からなる島相も存在している。よって、それぞれのソフトセグメントの相乗効果が発現し、どちらか一方のみからソフトセグメントが構成されている場合に比べて、得られるエポキシ樹脂組成物の耐衝撃性が非常に向上し、その結果、炭素繊維複合材料などの複合材料とした際に、190MPaを超える程度の高い衝撃後圧縮強度(CAI)が発現するものとなる。
また、ポリアミド樹脂(D)が島相としてエポキシ樹脂成分中に均一に存在し、少なくともその一部は骨格に組み込まれていると考えられるため、ポリアミド樹脂(D)の吸湿量を飛躍的に低減でき、従来困難であった高温高湿度環境下での複合材料の機械特性の低下が低減できる。
他のエポキシ樹脂としては、トリグリシジル−p−アミノフェノール、トリグリシジル−m−アミノフェノール、トリグリシジルアミノクレゾール等のアミン類を前駆体とするエポキシ樹脂および各種異性体、フェノール類を前駆体とするエポキシ樹脂として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂等、炭素−炭素2重結合を前駆体とするエポキシ樹脂として、脂環式エポキシ樹脂等ナフタレン等の多核骨格を有するエポキシ樹脂等を挙げることができるが、これらに限定するものではない。さらに、エポキシ基の一部を熱可塑性樹脂やエラストマー、イソシアネート等で変性したエポキシ樹脂も使用できる。また、これらのエポキシ樹脂をブロム等で変性し、難燃性を付与したエポキシ樹脂も好ましく用いる。なお、その他のエポキシ樹脂の使用量は、エポキシ樹脂組成物中における全樹脂成分の40%以下が好ましい。
具体的には、アミン系硬化剤としてはジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、N−アミノエチルピペラジン等の脂肪族系アミン化合物類、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、トリメチレン−ビス(4−アミノベンゾエート)等の芳香族系アミン化合物類、ジシアンジアミド等が挙げられる。その他、三フッ化ホウ素モノエチルアミン錯体をはじめ、ベンジルジメチルアミン、2−エチル−4−メチルイミダゾールに代表されるイミダゾール類、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等が例示できる。また、酸無水物系硬化剤としては、メチルナジック酸無水物、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、フタル酸無水物、ドデセニル無水コハク酸、無水クロレンディック酸、ピロメリット酸無水物等が挙げられる。
複合材料中間体を製造する際において、エポキシ樹脂組成物を含浸する補強用繊維としては、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、ボロン繊維、シリコンカーバイド繊維等が挙げられ、これらはミルドファイバー状、チョップドファイバー状、連続繊維、各種織物等の形態で用いることができる。なかでも、引張強度450MPa以上、引張伸度1.7%以上の高強度・高伸度の炭素繊維が連続繊維状または各種織物状の形態となっているものが最も好適に用いられる。
エポキシ樹脂組成物を補強用繊維に含浸する方法としては特に制限はなく、通常の方法によればよい。
各例で使用した各成分は以下の通りである。
(A)成分、他のエポキシ樹脂
・エピコート807(Ep807):ジャパンエポキシレジン社製、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、平均分子量:約312
・エピコート828(Ep828):ジャパンエポキシレジン社製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、平均分子量:約340
(B)成分
・エピコート630(Ep630):ジャパンエポキシレジン社製、平均分子量318
(C)成分
・4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ビス(2,6−キシレノール)(分子量402)
(D)成分
・TPAE32:富士化成工業社製、重合脂肪酸系のポリエーテルエステルアミド
硬化剤
・DICY:ジャパンエポキシレジン社製、ジシアンジアミド、品名:DICY7
・オミキュア94:PTIジャパン社製 フェニルジメチルウレア
・DDS:和歌山精化社製セイカキュアS 4,4’−ジアミノジフェニルスルホン
(A)成分であるEp807:58gと(D)成分であるTPAE32:6gとを混合して180℃で4時間加熱し、(A)成分に(D)成分を溶解させた後、さらに、(B)成分であるEp630:6gと、(C)成分である4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ビス(2,6−キシレノール):35gを溶解させた。その後、100℃で、触媒であるトリフェニルホスフィン(TPP、キシダ化学社製):1.0gを加えて、 2時間加熱しエポキシ樹脂成分を得た。この際、4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ビス(2,6−キシレノール)のフェノール性水酸基の未反応量は1%以下であった。
次に、このエポキシ樹脂成分を60℃まで降温し、他のエポキシ樹脂としてEp828:10g、硬化剤および硬化促進剤としてDICY:3g、オミキュア94:3gを順次投入し、全体が均一になるまで十分に混合し、エポキシ樹脂組成物を得た。表1に各成分の配合比をまとめる。
得られた樹脂板について、JIS K6911に準拠して3点曲げ物性(強度、弾性率、伸度)を、ASTM D5045 SENB法に準拠して破壊靱性値(GIC)を、DMA法によりG’−Tg(ガラス転移温度)を測定した。これらの結果を表2に示す。
また、工程紙上に50g/m2塗工できるようにギャップが調整された簡易コーターを用いて、得られたエポキシ樹脂組成物が60℃においてフィルム状に塗工できるかどうか評価した。50g/m2のフィルムが均一に塗工できれば製造工程通過性は「良好」、均一に塗工できなければ「不良」と判断し、表2に示した。
各成分の配合比を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にしてエポキシ樹脂組成物を調製し、さらに、得られたエポキシ樹脂組成物を用いて樹脂板を製造し、実施例1と同様の測定を行った。
結果を表2に示す。
また、各例において、(A)成分中における4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ビス(2,6−キシレノール)のフェノール性水酸基の未反応量は1%以下であった。
各成分の配合比を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にしてエポキシ樹脂組成物を調製した。さらに、得られたエポキシ樹脂組成物を用いて、硬化条件を130℃×2時間ではなく180℃×2時間とした以外は実施例1と同様にして、樹脂板を製造し、実施例1と同様の測定を行った。
結果を表2に示す。
また、各例において、(A)成分中における4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ビス(2,6−キシレノール)のフェノール性水酸基の未反応量は1%以下であった。また、DDSは、エポキシ基に対する理論当量が120%となるように配合した。
各成分の配合比を表3に示すように変更した以外は、実施例1と同様にしてエポキシ樹脂組成物を得た。さらに、得られたエポキシ樹脂組成物を用いて樹脂板を製造し、実施例1と同様の測定を行った。
結果を表4に示す。
表3に記載の配合比で、(A)成分であるEp807と(D)成分であるTPAE32とを混合して180℃で4時間加熱し、(A)成分に(D)成分を溶解させた後、さらに、(B)成分であるEp630と、(C)成分である4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ビス(2,6−キシレノール)を溶解させた。その後、加熱せずに60℃まで降温し、他のエポキシ樹脂としてEp828、硬化剤および硬化促進剤としてDICYおよびオミキュア94を順次投入し、全体が均一になるまで十分に混合して、組成物を調製した。加熱をしなかったため、4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ビス(2,6−キシレノール)のフェノール性水酸基の未反応量は80%であった。
次に、こうして得られた組成物を用いた以外は、実施例1と同様にして樹脂板を製造し、実施例1と同様の測定を行った。
結果を表4に示す。
また、(C)成分の添加後の加熱を行わなかった場合(比較例2)、ポリアミド樹脂(D)が樹脂板においてゲリマンダー状態に析出し、均一な樹脂板を作製できず、そのため、各種測定ができなかった。
Claims (4)
- 10〜90質量部の2官能エポキシ樹脂(A)と、0.5〜40質量部の3官能エポキシ樹脂(B)と、10〜50質量部のフェノール性水酸基を分子中に2つ以上有するフェノール化合物(C)との合計100質量部に対して、下記式(I)で示されるポリアミド樹脂(D)1〜45質量部が混合、加熱され、前記フェノール化合物(C)中に含まれるフェノール性水酸基の80%以上が反応したエポキシ樹脂成分を含有することを特徴とするエポキシ樹脂組成物。
- 前記エポキシ樹脂成分は、2官能エポキシ樹脂(A)および/または前記3官能エポキシ樹脂(B)と、前記ポリアミド樹脂(D)とが混合、加熱されたものに、少なくとも前記フェノール化合物(C)が混合、加熱されたものであることを特徴とする請求項1または2に記載のエポキシ樹脂組成物。
- 請求項1ないし3のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物が補強用繊維に含浸したことを特徴とする複合材料中間体。
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