以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
先ず、図1及び図2を参照し、本発明の第1実施形態に係るインクジェットプリンタ1の全体構成について説明する。
図1に示すように、本実施形態のインクジェットプリンタ1は、直方体形状の筐体1aを有する。筐体1aの天板上部には、開口130から排出された用紙Pを受容する排紙部131が形成されている。筐体1aの内部空間は上から順に空間A,B,Cに区分されており、空間Aには、マゼンタ、シアン、イエロー、ブラックの各色インクを吐出する4つのインクジェットヘッド10、ベルト機構により順次各ヘッド10の下面(インクを吐出するノズル18(図5及び図6参照)が多数開口した吐出面)に用紙Pを対向させつつ搬送する搬送部122、プリンタ1の各部の動作を制御するコントローラ100、キャップユニット570(図2参照)等が配置されている。空間B及びCは、それぞれ、共に筐体1aに対して主走査方向に沿って着脱可能な給紙ユニット1b及びインクタンクユニット1cが配置される空間である。
インクタンクユニット1cは、図1に示すように、4つのヘッド10に対応する各色インクを貯留する4つのメインタンク121を含む。メインタンク121はそれぞれ、図3に示すように、対応するヘッド10とチューブを介して接続されている。
給紙ユニット1bは、図1に示すように、複数枚の用紙Pを収納することが可能な給紙トレイ123、及び、給紙トレイ123に取り付けられた給紙ローラ125を有する。給紙トレイ123内の用紙Pは、最も上側のものから順に、給紙ローラ125によって送り出され、ガイド127a,127bによりガイドされ且つ送りローラ対126によって挟持されつつ搬送部122へと送られる。
搬送部122は、2つのベルトローラ6,7、両ローラ6,7間に架け渡されるように巻回されたエンドレスの搬送ベルト8、搬送ベルト8の下側ループの内周面に接触しつつ下方に付勢されることで搬送ベルト8に張力を付加するテンションローラ9、及び、ローラ6,7,9を回転可能に支持する支持フレーム11を有する。ベルトローラ7は、搬送モータMからの駆動力がいくつかのギアを介して伝達される、駆動ローラである。搬送モータMが駆動されてベルトローラ7が図1中時計回りに回転すると、搬送ベルト8が走行し、従動ローラであるベルトローラ6も図1中時計回りに回転する。
搬送ベルト8の上側ループは、ベルト表面が4つのヘッド10の下面と所定距離離隔しつつ当該下面と平行に延在するよう、プラテン19により支持されている。搬送ベルト8の表面には、弱粘着性のシリコン層が形成されている。搬送部122に送られた用紙Pは、押さえローラ4によって搬送ベルト8の表面に押え付けられた後、搬送ベルト8表面の粘着力によって当該表面に保持されつつ、黒塗り矢印に沿って副走査方向に搬送されていく。押さえローラ4の副走査方向直ぐ下流側には、搬送ベルト8の上側ループ表面と対向するように、用紙Pを検出するセンサ15が設けられている。コントローラ100は、当該センサ15からの検知信号に基づいて用紙Pの位置を把握し、ヘッド10の駆動を制御する。
用紙Pが4つのヘッド10の直ぐ下方を通過する際に、各ヘッド10の吐出面から用紙Pの上面に向けて各色のインクが順に吐出されることで、用紙P上に所望のカラー画像が形成される。そして用紙Pは、剥離プレート5によって搬送ベルト8表面から剥離され、ガイド129a,129bによりガイドされ且つ二組の送りローラ対128によって挟持されつつ上方に搬送され、筐体1a上部に形成された開口130から排紙部131へと排出される。
4つのヘッド10に対して搬送方向下流側には、搬送ベルト8の上側ループ表面と対向するよう、CIS(Contact Image Sensor)50が配置されている。CIS50は、所謂接触式の読取装置であり、ガラスからなる読取面50aに用紙Pの表面を接触させ、当該用紙P表面に記録された画像を読み取るものである。
4つのヘッド10は、副走査方向(用紙Pの搬送方向)に沿って所定間隔をなして並設されると共に、フレーム3を介して筐体1aに支持されている。また4つのヘッド10は、フレーム3に支持されつつ、フレーム3に設置された移動機構551(図2参照)により、上下方向に移動可能であり、後述の記録位置と待機位置とを選択的に取り得る。
4つのヘッド10は、プリンタ1が画像を形成する記録モード時には、図1に示す記録位置(搬送ベルト8の上側ループの表面に所定距離離隔しつつ対向する位置)に配置され、プリンタ1が記録動作を行わない待機モード時には、待機位置(記録位置よりも上方であって、搬送ベルト8の上側ループの表面に記録位置よりも大きな距離離隔して対向する位置)に配置される。待機位置とは、後述の第1待機位置及び第2待機位置を総称したものである。
ヘッド10の移動機構551は、図2に示すように、フレーム3の副走査方向両端にそれぞれ設けられており、モータ552、モータ552の軸に固定されたピニオンギア553、ピニオンギア553と噛合されたラックギア554、及び、ピニオンギア553とでラックギア554を挟むガイド555を含む。各移動機構551においてモータ552の駆動によりギア553,554が回転すると、フレーム3は、4つのヘッド10を支持したまま、ガイド555により上下方向に沿ってガイドされつつ、上下方向に移動する。
プリンタ1は、図2に示すように、4つのヘッド10の下面をそれぞれ覆う4つのキャップ70とキャップ70を支持するフレーム170とを含む、キャップユニット570を有する。キャップ70は、平面視矩形形状の底部72、及び、底部72の外周縁から上方に延出した弾性体のリブ71を含む。各キャップ70は、対応するヘッド10の下面(吐出面)に形成された全ノズル18を被覆可能であると共に、フレーム170上において副走査方向に関して対応するヘッド10と同じ位置に配置されている。
キャップユニット570は、フレーム170に接続された移動機構591により、水平方向(図2の紙面に沿った方向)に移動可能であり、フレーム170に支持されつつ、図2に示す後退位置(記録位置にあるヘッド10に対して図2中左に隣接する位置)と、待機位置に配置された4つのヘッド10下面に対向するキャップ位置とを選択的に取り得る。キャップユニット570は、記録モード時には図2の後退位置に配置され、待機モード時にはキャップ位置に配置される。
キャップユニット570の移動機構591は、図2に示すように、モータ592、モータ592の軸に接続されたモータプーリ593、アイドルプーリ594、モータプーリ593とアイドルプーリ594との間に架け渡されたタイミングベルト595、フレーム3,170の副走査方向両側においてタイミングベルト595と同一方向に延在する一対のガイド軸596a,596b、及び、フレーム170の副走査方向両端から副走査方向に沿って外側に延出すると共にガイド軸596a,596bのそれぞれに支持された軸受け部材597a,597b,598a,598bを含む。軸受け部材597aは、タイミングベルト595に接続されている。モータ592の駆動によりタイミングベルト595が走行すると、フレーム170は、キャップ70を支持したまま、水平方向(図2の主走査方向)に移動する。
プリンタ1が記録モードから待機モードへと移行する際、4つのヘッド10は、先ず、一対の移動機構551の駆動により、一旦記録位置から上方に移動される。このとき、4つのヘッド10は、下面がキャップ70のリブ71の先端よりも上方に位置するように、配置される(このときの位置を「第1待機位置」と称す)。そして移動機構591の駆動によりキャップユニット570が後退位置からキャップ位置に移動されると、4つのヘッド10は、第1待機位置から若干下方へと移動され、その下面がそれぞれ対応するキャップ70のリブ71先端に当接するように配置される(このときの位置を「第2待機位置」と称す)。このとき4つのヘッド10はそれぞれ、対応するキャップ70によって覆われ、吐出面に形成された全ノズル18が密閉される。これにより、待機モード時において、ノズル18の乾燥が防止されるようになっている。
次いで、図3〜図7を参照し、各ヘッド10の構成について詳細に説明する。
図3に示すように、ヘッド10は、全体として主走査方向に長尺な略直方体形状を有する。ヘッド10は、下から順に、流路ユニット10a、流路ユニット10aの上面に配置された8つのアクチュエータユニット21(図4参照)、及び、流路ユニット10a上面にアクチュエータユニット21を避けて配置されたリザーバユニット10bを有する。流路ユニット10aの上面において、リザーバユニット10bは、図4に示す開口105bを含む領域(図4において二点鎖線で区画された領域)に固定され、僅かな隙間を介してアクチュエータユニット21と対向している。アクチュエータユニット21は、平面視で略台形形状を有する。
リザーバユニット10bは、図3に示すように、その上面における主走査方向一端近傍にジョイント91が設けられており、チューブを介して対応するメインタンク121(図1参照)と連通している。リザーバユニット10bの内部には、メインタンク121から供給されたインクを一時的に貯留するインクリザーバが形成されている。当該インクリザーバ内のインクは、開口105b(図4参照)から流路ユニット10aに供給される。また、リザーバユニット10bは、その上面における主走査方向他端近傍にジョイント92が設けられており、チューブを介して廃液タンクと連通している。メンテナンス時には、リザーバユニット10b内のインクがジョイント92を介して廃液タンクに排出される。
流路ユニット10aの下面(吐出面)には、図5及び図6に示すように、各アクチュエータユニット21に対向する8つの台形形状の吐出領域のそれぞれに、多数のノズル18がマトリクス状に形成されている。1の吐出領域内に形成された多数のノズル18が、1のノズル群を構成する。流路ユニット10aの内部には、流路ユニット10aの上面に形成された開口105bに連通する共通インク通路(マニホールド流路105及び副マニホールド流路105a)と共通インク通路に連通する多数の個別インク流路32とが形成されている。流路ユニット10aの上面には、多数の圧力室33が開口しており、上記ノズル群に対応する圧力室群が形成されている。リザーバユニット10bから流路ユニット10aに供給されたインクは、開口105bから流入し、共通インク通路と各個別インク流路32とを介して、各ノズル18に分配される。個別インク流路32は、副マニホールド流路105aの出口から、絞りとして機能するアパーチャ34、さらに圧力室33を経て、ノズル18に至る流路である。
流路ユニット10a及びリザーバユニット10bは、平面視において、主走査方向(搬送方向と直交する方向)に細長な、略同一サイズの略矩形形状を有する。流路ユニット10aは、図6に示すように、インク流路を構成する貫通孔がそれぞれ形成された略同一サイズの略矩形状の9枚の金属プレート22,23,24,25,26,27,28,29,30を互いに位置合わせしつつ積層・固定することにより形成されている。リザーバユニット10bは、図示は省略するが、樹脂等の材料による一体成型品である上部リザーバと、数枚の金属プレートとを互いに位置合わせしつつ積層・固定することにより形成されている。
なお、図5では、流路構成を明瞭に示すため、流路ユニット10a上に配置されたアクチュエータユニット21を一点鎖線で描くと共に、それぞれ流路ユニット10aの内部及び下面に形成されていて破線で描くべきアパーチャ34及びノズル18を実線で描いている。
アクチュエータユニット21は、図7(a)に示すように、3枚の圧電セラミック層41,42,43を互いに積層して形成された平板状の部材であり、最上層の圧電セラミック層41の上面に各圧力室33に対応して形成された個別電極135、及び、圧電セラミック層41と圧電セラミック層42との間で全面に亘って形成された内部共通電極134を含む。各圧電セラミック層41〜43は、強誘電性を有するチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)系のセラミック材料からなり、厚みは約15μmである。
個別電極135は、図7(b)に示すように、略菱形平面形状の主電極部135a、主電極部135aの一方の鋭角部から延びた延出部135b、及び、延出部135bの先端に設けられた個別ランド136を含む。主電極部135aは、圧力室33と略相似であり、サイズは圧力室33より一回り小さい。主電極部135aはそれぞれ圧力室33と対向配置され、延出部135bは圧力室33との対向領域外にまで延び、個別ランド136は圧力室33を画定する壁(金属プレート22)上に位置する。個別ランド136の高さは約10μmである。圧電セラミック層41の表面には、内部共通電極134と導通した共通電極用のランドも形成されている。共通電極用のランドは、個別ランド136と同じサイズ及び形状を有している。
8つのアクチュエータユニット21は、図4に示すように、それぞれ同一の形状及びサイズを有すると共に、流路ユニット10aの上面において、流路ユニット10aの長手方向(主走査方向)に沿って、2列の千鳥状に配列している。各アクチュエータユニット21は、多数の圧力室33に跨るサイズを有し、対応する圧力室33内のインクにそれぞれ吐出圧力を付与する多数の圧電アクチュエータを含む。圧電セラミック層41の各個別電極135と内部共通電極134とで挟まれた部分が、当該圧電アクチュエータに相当する。
隣接するアクチュエータユニット21同士は、斜辺が互いに平行に配置されると共に、台形の上底及び下底が互いに逆向きで且つ下底が流路ユニット10aの副走査方向端部近傍に互いに偏倚して配置されている。これに対応して、吐出面の各吐出領域に配置されたノズル群は、斜辺と下底とで形成される鋭角部を含む略三角形の領域21xにおいて、副走査方向及び主走査方向に関して互いに部分的に重複している。1のヘッド10に含まれる全てのノズル18は、主走査方向に関して記録解像度(例えば600dpi)に対応する等間隔(例えば42.3μm)で配置されている。つまり、各ヘッド10において、画像形成に関与する全ノズル18の開口の中心を主走査方向に平行な線分に射影したとき、各射影点間の距離記録解像度に対応する間隔となっている。これにより、主走査方向に亘って途切れることなく所定の解像度で記録可能となっている。
各アクチュエータユニット21の個別ランド136及び共通電極用ランドには、図3に示すフレキシブルプリント基板(FPC)80の一端が接続されている。FPC80の他端は、制御基板(図示せず)と接続されている。また、各FPC80の途中部分には、ドライバIC81が実装されている。FPC80は、制御基板から出力された画像信号をドライバIC81に伝達し、ドライバIC81から出力された駆動電圧をアクチュエータユニット21に供給する。そしてドライバIC81から駆動電圧が圧電アクチュエータに印加されると、圧電アクチュエータが変形し、対応する圧力室33内のインクに圧力が付与され、ノズル18からインクが吐出される。
図4に示すように、流路ユニット10aの下面(吐出面)は、主走査方向に沿って、記録領域R1及び非記録領域R2を有する。記録領域R1は、主走査方向両端近傍の非記録領域R2を除いた領域である。記録領域R1の主走査方向に沿った長さは、プリンタ1により記録可能な最大サイズ(A4サイズ:日本工業規格A4判(横21cm・縦29.7cm))の用紙Pの幅と略等しい。
吐出面に形成された8つノズル群のうち、主走査方向両端近傍にある2つのノズル群は、記録領域R1と非記録領域R2とに跨って配置されている。ここで、主走査方向両端近傍にある2つのノズル群において非記録領域R2に属する部分を「非記録部21n」とする。非記録部21nとそれ以外の部分とにおいて、ノズル18並びにこれらに対応する圧力室33及び圧電アクチュエータ(個別電極135等)は同様の配置で形成されているが、非記録部21nに形成されたノズル18(図5参照)は画像形成に寄与しない「ダミーノズル」として機能する。ダミーノズルは、インク滴を吐出可能であり、後述の測定(図8のS11)において用いられる。
即ち、流路ユニット10aの下面(吐出面)には、図4に示す8つのアクチュエータユニット21の配置領域のそれぞれに対応するよう、8つのノズル群が配置されている。これら8つのノズル群のうち、主走査方向両端近傍にある2つのノズル群を除く、主走査方向中央側に配置された6つのノズル群は全て、画像形成に係るインク滴を吐出する「画像形成ノズル」から構成される。これに対し、主走査方向両端近傍にある2つのノズル群は、記録領域R1と非記録領域R2とに跨って配置されており、当該ノズル群を構成するノズル18のうち、非記録領域R2にあるノズル(即ち、非記録部21nに対応する部分に配置されたノズル)18は「ダミーノズル」、記録領域R1にあるノズル18は「画像形成ノズル」として機能する。
本実施形態において、ダミーノズルは、主走査方向に関して画像形成ノズルと重ならないよう、副走査方向に沿った列を複数形成しつつ配列されている。
流路ユニット10a上面には、図4に示す8つのアクチュエータユニット21の配置領域のそれぞれに対応するよう、8つの圧力室群が配置されている。これら8つの圧力室群のうち、主走査方向両端近傍にある2つの圧力室群を除く、主走査方向中央側に配置された6つの圧力室群は全て、画像形成ノズルと同じ個別インク流路32に属する「画像形成圧力室」から構成される。これに対し、主走査方向両端近傍にある2つの圧力室群は、記録領域R1と非記録領域R2とに跨って配置されており、当該圧力室群を構成する圧力室33のうち、非記録領域R2にある圧力室(即ち、非記録部21nに対応する部分に配置された圧力室であって、ダミーノズルと同じ個別インク流路32に属する圧力室)33は「ダミー圧力室」、記録領域R1にある圧力室33は「画像形成圧力室」として機能する。
「ダミーノズル」及び「ダミー圧力室」は、マニホールド流路105及び副マニホールド流路105aを介して、「画像形成ノズル」及び「画像形成圧力室」と連通している。換言すると、マニホールド流路105及び副マニホールド流路105aは、「ダミーノズル」及び「ダミー圧力室」並びに「画像形成ノズル」及び「画像形成圧力室」に共通のインク流路である。
次いで、図8を参照し、コントローラ100によるインクジェットプリンタ1の制御について説明する。コントローラ100は、CPU(Central Processing Unit)、RAM、ROM、インターフェース等を有する。ROMには、図8に示す制御に係るプログラム、プログラムを実行するための各種データ等が記憶されている。CPUは、ROMに記憶されているプログラムを読み出した上で、ROMに記憶されているデータやRAMに一次記憶されているデータを参照しつつ、図8に示す各ステップを実行する。
コントローラ100は、インターフェースに接続されたPC(パーソナル・コンピュータ)等から、記録指令を受信する。記録指令は、1又は2以上の用紙Pに対する画像記録に係る記録データを含む。プリンタ1の電源投入時から記録指令を受信するまで、及び、1の記録指令に基づく記録終了後次の記録指令を受信するまで、プリンタ1は待機モードにあり、4つのヘッド10はそれぞれ、対応するキャップ70(図2参照)によって、吐出面に形成された全ノズル18を覆うように密閉されている。
記録指令を受信したと判断すると(S1:YES)、コントローラ100は、各ヘッド10について、パージを行う(S2)。パージとは、ポンプ(図示せず)を駆動してメインタンク121からヘッド10内にインクを導入し、ダミーノズルを含む全ノズル18からインクを強制的に排出させることをいう。このとき各吐出面は対応するキャップ70(図2参照)により覆われているため、排出されたインク滴は全てキャップ70に受容される。キャップ70に受容されたインクは、チューブ等を介して廃液タンクに排出されるようになっている。なお、このパージ時には、リザーバユニット10b上面のジョイント92を介して、リザーバユニット10b内のインクも一部排出される。また、このパージによって、吐出面にインク滴が残留するが、当該インク滴は、ワイパーやインク吸収部材(図示せず)によって除去される。このパージによっても、吐出性能が回復する。
パージ(S2)の後、コントローラ100は、移動機構551(図2参照)を駆動し、第2待機位置にある4つのヘッド10を若干上方の第1待機位置へと移動させる(S3)。これにより、各ヘッド10の下面がキャップ70から離れ、密閉状態が解除される(アンキャップ)。
アンキャップ(S3)の後、コントローラ100は、移動機構591(図2参照)を駆動し、キャップ位置にあるキャップユニット570を図2中左方に、後退位置(図2に示す位置であって、記録位置にあるヘッド10に対して図1の紙面奥側の位置)へと移動させる(S4)。
S4の後、コントローラ100は、移動機構551(図2参照)を駆動し、第1待機位置にある4つのヘッド10を下方の記録位置へと移動させる(S5)。S5の後、コントローラ100は処理をS6に進める。
S6において、コントローラ100は、受信した記録指令に含まれる記録データに基づいて、n枚目の用紙Pに対する記録が行われるよう、搬送部122、ヘッド10等の駆動を制御する(S6)。ここで、記録すべき用紙Pの頁番号に関するパラメータnは、記録指令の受信(S1:YES)の直後に初期化される。したがって、このとき(S5の直後は)n=1であり、コントローラ100は、1枚目の用紙Pに対する記録が行われるよう、搬送部122、ヘッド10等の駆動を制御する。
S6の後、コントローラ100は、記録データ等が一時記憶されたRAMを参照し、記録すべき次頁の記録データがあるか否かを判断する(S7)。次頁の記録データが無い場合(S7:NO)、コントローラ100は、処理を後述のS14に移行させる。ここで、次頁の記録データが無い場合とは、その時点でのnの数値が当該記録指令に係る記録数に達した場合である。
次頁の記録データがある場合(S7:YES)、コントローラ100は、パラメータnについて、前回の頁番号に1をプラスした上で(S8)、nが30を超過しているか否かを判断する(S9)。
nが30を超過していない場合(S9:NO)、コントローラ100は、処理をS6に戻す。その後、上述したS6〜S9の処理が繰り返される。
nが30を超過している場合(S9:YES)、コントローラ100は、測定(S11)を行うか否かを判断する(S10)。「測定」とは、ダミーノズルからインク滴が吐出されるようヘッド10を制御すると共に、当該吐出されたインク滴の飛翔速度の測定を行うことをいう。
なお、測定を行うか否かの判断(S10)は、ヘッド10毎になされる。
コントローラ100のRAMは、各ヘッド10について、直近のパージ及びフラッシング(S13)後における画像形成ノズルの吐出の有無、及び、直近のパージ及びフラッシング(S13)後に測定に用いられたダミーノズルに関する情報(例えばダミーノズルの位置データ等)を記憶している。
S10において、コントローラ100は、記録指令の受信(S1:YES)の後フラッシング(S13)が未だ1回も行われていない場合、全てのヘッド10について、測定を行う(S10:YES)と判断する。例えばn=31の場合(連続記録において、30枚の用紙Pに対する記録が終了して次に31枚目の用紙Pに対する記録を行う場合)、この時点でフラッシング(S13)は1回も行われていないため、コントローラ100は全てのヘッド10について測定を行う(S10:YES)と判断する。一方、あるヘッド10において、記録指令の受信(S1:YES)の後フラッシング(S13)が1回以上行われている場合、コントローラ100は、RAMに記憶された情報(直近のフラッシング(S13)後における画像形成ノズルの吐出の有無)を参照し、そのヘッド10において、画像形成ノズルのうち未吐出のものが1以上ある場合に、測定を行う(S10:YES)と判断する。そのヘッド10において、画像形成ノズルのうち未吐出のものが1以上ない場合(即ち、直近のフラッシング(S13)後に全ての画像形成ノズルが吐出を行っている場合)、コントローラ100は、測定を行わない(S10:NO)と判断する。
全てのヘッド10について測定を行わないと判断した場合(S10:NO)、コントローラ100は、処理をS6に戻す。その後、上述したS6〜S9の処理が繰り返される。
少なくとも1のヘッド10について測定を行うと判断した場合(S10:YES)、コントローラ100は、以下に述べる測定に係る制御を実施する(S11)。
即ち、測定(S11)において、コントローラ100は、先ず、測定対象となる各ヘッド10について、多数あるダミーノズル(図4の非記録部21nに配置されたノズル18)から1のダミーノズルを選択する。当該選択の際、コントローラ100は、RAMを参照し、直近のフラッシング(S13)後に測定に用いられていない1以上のダミーノズルの中から1のダミーノズルを選択する。また、当該選択の際、直近のフラッシング(S13)後に測定に用いられていないダミーノズルが複数ある場合、ランダムに行ってもよいし、或いは、例えば、2つの非記録部21n(図4参照)のうち一方を優先し、さらに各非記録部21n内の複数のダミーノズルの中では、ノズル群の配置領域を画定する台形の下底により近い列(主走査方向に沿った列)に属するものを優先し、また列中に存在する複数のダミーノズルの中では、ヘッド10の主走査方向端部により近いものを優先してよい(図5参照)。
上記選択の後、コントローラ100は、測定対象とされた各ヘッド10において、選択したダミーノズルからインク滴が吐出されるようアクチュエータユニット21の駆動を制御すると共に、ダミーノズルから吐出されたインク滴が1の用紙P上に着弾するよう搬送部122の駆動を制御する。このとき、アクチュエータユニット21の駆動は、ノズル18の吐出性能が悪化していない場合にインク滴の飛翔速度が所定速度(S12参照)となると想定される、所定の条件(アクチュエータユニット21に印加される駆動信号の電圧、駆動信号の印加タイミング等についての条件)の下で行われる。また、搬送部122の駆動は、記録時と同じ用紙搬送速度が得られるよう、制御される。
そしてコントローラ100は、用紙P上の画像を読み取るようCIS50(図1参照)の駆動を制御する。コントローラ100は、CIS50から当該画像データを受信し、測定対象とされたヘッド10毎に、用紙P上におけるダミーノズルから吐出されたインク滴の着弾位置と着弾予定位置とのずれに基づいて、吐出されたインク滴の飛翔速度を求める。ここで、着弾位置・着弾予定位置とは、例えば1の用紙Pにおける着弾した又は着弾予定のインク滴の中心位置をいう。
「着弾予定位置」は、上記所定条件の下で吐出されたインク滴が着弾すると予測される用紙P上の位置のことをいい、ヘッド10毎・ダミーノズル毎に予め設定され、コントローラ100のROMに記憶されている。上記所定条件の下でインク滴が吐出されたにも関わらず、ノズル18の吐出性能の悪化等により、所定よりも遅い速度で飛翔した場合、着弾位置が、着弾予定位置よりも用紙搬送方向上流側にずれる。コントローラ100のROMには、このずれの大きさと飛翔速度とを対応付けたテーブルが記憶されている。コントローラ100のCPUは、CIS50から受信した画像データにより上記ずれの大きさを求め、ROMに記憶されたテーブルを参照し、当該ずれの大きさに対応する飛翔速度を、ダミーノズルから吐出されたインク滴の飛翔速度として求める。
具体的には、コントローラ100のCPUは、検出された用紙Pの先端を基準とし、ダミーノズルからのインク滴の着弾位置が検出されるまでの時間から、飛翔速度を求める。インク滴が着弾予定位置に着弾していれば、コントローラ100は、(例えばアクチュエータユニット21の駆動時から)所定の時間後に、CIS50からの検出信号を受信する。しかし、インク滴の飛翔速度が低下して着弾予定位置よりも用紙搬送方向上流側にインク滴が着弾した場合、CIS50からの検出信号は、上記所定の時間後よりもさらに遅れて(時間差を介して)コントローラ100に受信される。この時間差と搬送速度とから着弾位置のずれの大きさが算出され、コントローラ100のROMに記憶されたテーブルから飛翔速度が求められる。このとき、各ヘッド10によって着弾位置を変えることで、着弾して形成されたインクドットに対する視認性が低くなり、測定用ドットが目立ちにくくなる。また、検出精度向上の観点から、1のヘッド10において、複数のダミーノズルによる着弾位置をそれぞれ検出し、これらから求められたずれ量の平均値によって、インク滴の飛翔速度を求めてもよい。
測定(S11)の後、コントローラ100は、測定対象とされたヘッド10毎に、S11で得られた飛翔速度が所定速度(例えば、10m/s)以下であるか否かを判断する(S12)。
測定対象とされた全てのヘッド10において、S11で得られた飛翔速度が所定速度以下でない場合(S12:NO)、コントローラ100は、フラッシング(S13)を行わず、処理をS6に戻す。その後、上述したS6〜S12等の処理が繰り返される。
少なくとも1のヘッド10において、S11で得られた飛翔速度が所定速度以下である場合(S12:YES)、コントローラ100は、その飛翔速度が所定速度以下と判断された各ヘッド10について、フラッシング(S13)を行う。「フラッシング」とは、記録データとは異なるフラッシングデータに基づく駆動信号によって、ヘッド10に形成された画像形成ノズル及びダミーノズルを含む全ノズル18のそれぞれに対応して設けられたアクチュエータを駆動することにより、全ノズル18からインク滴を吐出させることをいう。このときコントローラ100は、測定(S11)に用いられた(即ち、測定の際にダミーノズルから吐出されたインク滴が着弾した)用紙Pに向けて、フラッシングが行われるよう、対象となるヘッド10及び搬送部122の駆動を制御する。
フラッシング(S13)の後、コントローラ100は、処理をS6に戻す。その後、上述したS6〜S13の処理が繰り返される。
そしてS7において次頁の記録データが無いと判断した場合(S7:NO)、コントローラ100は、移動機構551(図2参照)を駆動し、記録位置にある4つのヘッド10を上方の第1待機位置へと移動させる(S14)。
S14の後、コントローラ100は、移動機構591(図2参照)を駆動し、後退位置にあるキャップユニット570を図2中右方に、キャップ位置へと移動させる(S15)。そしてキャップユニット570をキャップ位置にて静止させた後、コントローラ100はさらに移動機構551を駆動し、第1待機位置にある4つのヘッド10を若干下方の第2待機位置へと移動させる(S16)。これにより、各ヘッド10の吐出面がキャップ70により密閉される(キャップ)。
S17の後、コントローラ100は、S2と同様のパージを行う(S17)。
パージ(S2,S17)を行うことで、全ヘッド10の全ノズル18における吐出性能が初期化される(即ち、全ノズル18において、吐出性能が回復し、吐出性能が揃う)。
パージ(S17)の後、コントローラ100は、処理をS1に戻す。その後次の記録指令が受信されるまで、プリンタ1は待機モードとなる。
以上に述べたように、本実施形態によると、フラッシングのタイミングが、ダミーノズルから吐出されたインク滴の飛翔速度に基づいて、決定される(図8のS11〜13参照)。したがって、各ノズル18の吐出履歴を記憶する必要がなく、ノズル18の数が多い場合であっても、膨大な記憶領域が必要とならない。また、ダミーノズルはマニホールド流路105及び副マニホールド流路105aを介して画像形成ノズルと接続されており、ダミーノズルから吐出されインク滴の飛翔速度によって、画像形成ノズルの吐出性能を把握することができる。そのため、フラッシングを定期的に行う場合における不具合(吐出性能が悪化していない場合にフラッシングを行うことによる過大なインク消費の問題や、一部のノズル18において吐出性能が既に悪化していてもフラッシングが行われないことによる吐出性能の回復不足の問題)を抑制し、より適切なタイミングでフラッシングを行うことができる。
コントローラ100は、図8に示すように、1の記録指令に基づく記録が行われる間に、時間的間隔をなして、複数のダミーノズルを用いて、複数回の測定(S11)を行い、当該測定(S11)によって得られた速度が所定速度以下である場合(S12:YES)に、フラッシング(S13)を行う。これにより、フラッシングのタイミングがより的確なものとなる。
ライン式のヘッド10の場合、ノズル18の数が比較的多いため、各ノズル18の吐出履歴を記憶する必要がないことによる効果(即ち、膨大な記憶領域が必要ないこと)、及び、フラッシングを定期的に行わないことによる効果(即ち、記録速度の低下及びインク消費量の増加や記録品質低下の抑制)が特に有効に得られる。
本実施形態では、本来画像形成ノズルが形成されない領域(吐出面における主走査方向端部近傍)を非記録領域R2としてこの領域にダミーノズルを形成しているので、別途ダミーノズルのための領域を設ける必要がなく、ヘッド10の大型化を抑制することができる。
ライン式のヘッド10は一般に吐出面が主走査方向に沿って長尺であるが、ノズル群を主走査方向に沿って8つ配置することで、当該長尺な吐出面においてノズル18を効率よく配置することができる。
図4に示すように、隣接するノズル群を三角形領域21xにおいて主操作方向に関して互いに部分的に重複させることで、所望の記録解像度を実現しつつ、ノズル18をより効率よく配置することができる。
また、主走査方向両端近傍にある2つのノズル群の配置領域において、主走査方向端部に配置された一方の三角形領域(上述した領域21xと同様、斜辺と下底とで形成される鋭角部を含む略三角形の領域であって、対応するアクチュエータユニット21の非記録部21nに対応する領域)が非記録領域R2に属し、当該一方の三角形領域を除く他方の三角形領域を含む残りの領域が記録領域R1に属する。この構成により、ダミーノズル及び画像形成ノズルの吐出性能が均一化される。そして、ダミーノズル及び画像形成ノズルの吐出性能の均一化によって、上記測定(S11)に基づく画像形成ノズルの吐出性能の把握がより的確になり、より適切なタイミングでフラッシング(S13)を行うことができる。
コントローラ100は、連続記録時(2以上の用紙Pに対する画像記録に係る記録指令に基づいて記録を行う場合)において、所定数の用紙Pへの記録が終了する毎に(本実施形態では、記録数が30枚を超えた後、1枚の記録が終了する毎に、条件が満たされた場合)、測定(S11)を行う。このように、所定数の用紙Pへの記録が終了する毎に測定を行うことで、連続記録時において、フラッシング(S13)のタイミングをより的確に把握することができる。
コントローラ100は、連続記録時において、1の用紙Pへの記録の終了後、その次の用紙Pへの記録が行われる前に、測定(S11)を行う。例えば、連続記録時において、用紙Pへの記録の際に同時に測定を行う場合、画像形成用の用紙P上にダミーノズルからのインク滴が着弾し、記録品質が悪化する問題が生じ得るが、上記構成の場合、このような問題を回避することができる。
コントローラ100は、S10において、直近のフラッシング(S13)後、全ての画像形成ノズルが吐出を行っている場合には測定を行わない(S10:NO)と判断し、未吐出の画像形成ノズルが存在する場合にのみ測定を行う(S10:YES)と判断する。これにより、測定の頻度を低減することができ、測定に係る時間の省略により、記録速度の向上を図ることができる。
コントローラ100は、測定(S11)において、複数のダミーノズルから1つを選択し、当該1のダミーノズルのからインク滴が吐出されるよう、ヘッド10を制御する。この場合、1の測定において複数のダミーノズルからインク滴を吐出させる場合に比べ、測定をより多くの回数行うことができる。
コントローラ100は、測定(S11)において、複数のダミーノズルのうち直近のフラッシング(S13)後に測定に用いられていないダミーノズルを、測定用に選択する。この構成によれば、直近のフラッシング後に未吐出である画像形成ノズルが存在する場合に、同じく未吐出であるダミーノズルを測定に用いることで、フラッシングのタイミングがより的確なものとなる。
コントローラ100は、測定(S11)に用いられた用紙Pに向けて、フラッシング(S13)を行う。この場合、測定の際にインク滴が着弾した用紙Pをフラッシングにも用いることで、測定とフラッシングとにおいて別々の用紙Pを用いる場合に比べ、用紙Pの消費を抑えることができる。
コントローラ100は、例えば待機モード時や、記録モード時において1の用紙Pへの記録の終了後且つその次の用紙Pへの記録が行われる前等に、不吐出フラッシングを行う。「不吐出フラッシング」とは、記録データとは異なる不吐出フラッシングデータに基づく駆動信号によって、各ヘッド10の全ノズル18のそれぞれに対応して設けられたアクチュエータを駆動することにより、全ノズル18について、インク滴を吐出させることなく各ノズル18に形成されたメニスカスを振動させることをいう。この場合、不吐出フラッシングにより吐出性能がある程度回復するため、フラッシング(S13)の頻度が低減される。したがって、フラッシングを頻繁に行う場合に比べ、記録速度の低下やインク消費量の増加を抑制することができる。例えば、不吐出フラッシングと吐出を伴うフラッシングとを交互に行ってもよい。
コントローラ100は、1の記録指令に基づく記録の終了後、次の記録指令に基づく記録の前に、パージ(S17)を行う。これにより、全ノズル18の吐出性能が揃うため、その後、次の記録指令に基づく記録の際に行われる測定(S11)において、画像形成ノズルの吐出性能の把握がより的確なものとなり、より適切なタイミングでフラッシングを行うことができる。
次いで、図9を参照し、本発明の第2実施形態に係るインクジェットプリンタについて説明する。本実施形態のプリンタの構造は、各ヘッドの流路ユニット210aにダミー領域D(図9(a)において格子状に示す領域)を設けた点、及び、CIS50(図1参照)を省略すると共に各流路ユニット210aに対して主走査方向両側に一対の速度センサ150a,150bを設けた点において、上述した第1実施形態と異なり、上記点以外は第1実施形態と同じである。第2実施形態では、測定(S11)を行う際、CIS50ではなく、速度センサ150a,150bを用いる。以下、第1実施形態と同じ構成要素については同じ符号を付して説明を省略するものとする。
ダミー領域Dは、流路ユニット210aの副走査方向一端側(図9(a)下側:搬送方向上流側)が下底となるよう配置された4つのアクチュエータユニット21それぞれの下底の辺(アクチュエータユニット21の副走査方向一端の縁)と流路ユニット210aの副走査方向一端との間において、対応するアクチュエータユニット21の下底の辺の長さに亘って延在している。1の流路ユニット210aにおいては、主走査方向に互いに離隔した計4つのダミー領域Dが設けられている。
各ダミー領域Dにおいて、流路ユニット210a上面にはダミー圧力室、流路ユニット210a下面にはダミーノズルがそれぞれ多数形成されている。ダミー圧力室及びダミーノズルはそれぞれ、各ダミー領域Dにおいて、主走査方向に関して所定間隔をなし、主走査方向に沿った1の列を形成するよう、配置されている。ダミー圧力室及びダミーノズルは一対一の関係にある(即ち、1のダミー圧力室に対して1のダミーノズルが設けられている)。
図示は省略するが、ダミー領域Dに形成された各ダミーノズル及びこれに対応するダミー圧力室は、マニホールド流路105(副マニホールド流路105a)を介して、アクチュエータユニット21の配置領域内に形成されているノズル18(画像形成ノズル)及び圧力室33(画像形成圧力室)と接続している。換言すると、マニホールド流路105は、「ダミーノズル」及び「ダミー圧力室」並びに「画像形成ノズル」及び「画像形成圧力室」に共通のインク流路である。
速度センサ150a,150bは、図9(a),(b)に示すように、流路ユニット210aを主走査方向両側から挟むように、流路ユニット210aの主走査方向両端から若干離隔した位置に配置されている。速度センサ150aは発光部であって、主走査方向に沿って進行する光を出射する。速度センサ150bは受光部であって、速度センサ150aから出射された光を受光する。速度センサ150aから出射された光は、図9(a)に示すように、平面視において、各ダミー領域Dに形成された多数のダミーノズルの真下を順次通るように進行する。各ダミー領域Dにおいて、ダミーノズルは、図9(a)に示す点線(速度センサ150aから出射された光の進行経路)上にそれぞれ開口中心が配置されるよう、列をなしている。
測定(S11)におけるダミーノズルの選択にあたり、コントローラ100は、直近のフラッシング(S13)後に測定に用いられていないダミーノズルが複数ある場合、例えば、4つのダミー領域Dのうち速度センサ150aに近い方を優先し、さらに各ダミー領域Dに含まれる複数のダミーノズルの中でも速度センサ150aに近い方を優先してよい。
また、測定(S11)において、コントローラ100は、第1実施形態と同様にアクチュエータユニット21や搬送部122の駆動を制御すると共に、速度センサ150a,150bの駆動を制御する。そしてコントローラ100は、アクチュエータへの駆動信号の印加タイミングから、ダミーノズルから吐出されたインク滴d1(図9(b)参照)が速度センサ150aからの出射光と重なるタイミングまでの時間、及び、インク滴d1の飛翔方向(図9(b)では、吐出面に直交する方向)に関するダミーノズルの吐出位置(吐出面と同じレベルにある、ダミーノズルの吐出口の位置)と出射光との距離xから、インク滴d1の飛翔速度を算出する。ここで、上記のインク滴d1が速度センサ150aからの出射光と重なるタイミングは、速度センサ150a,150bからのデータによって導出される。
以上に述べたように、本実施形態によると、第1実施形態と同様の構成による同様の効果に加え、以下のような効果が得られる。
即ち、本実施形態では、ダミーノズルが、図9(a)に示すように、ダミー領域Dにおいて、副走査方向に関して画像形成ノズルと重ならないよう、主走査方向に沿って配列されている。この場合、主走査方向に沿って長尺な吐出面に、より多くのダミーノズルを形成することができる。したがって、測定(S11)の度に異なるダミーノズルを用いても、より多くの回数測定を行うことができる。なお、検出精度向上の観点から、1の測定(S11)において、複数のダミーノズルから順にインク滴を吐出させ、これらの飛翔速度の平均値を、インク滴の飛翔速度として算出してもよい。
また本実施形態では、本来画像形成ノズルが形成されない領域(吐出面における副走査方向端部近傍)をダミー領域Dとして、当該領域Dにダミーノズルを形成しているので、第1実施形態と同様、別途ダミーノズルのための領域を設ける必要がなく、ヘッド10の大型化を抑制することができるという効果も得られる。
コントローラ100は、インク滴d1の飛翔速度の測定にあたり、速度センサ150a,150bを利用する。そのため、飛翔速度を、上記のようにアクチュエータへの駆動信号の印加タイミング、速度センサ150a,150bからの検出データ等を用いて容易に算出することができ、フラッシングの要否の判定を容易に行うことができる。また、上記データ等を用いて、用紙P上におけるインク滴の着弾位置のずれ量も容易に推定することができる。
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施形態及び変形例に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な設計変更が可能なものである。
パージ(S2,S17)は、各ヘッド10の下面がキャップ70により密閉された状態で行われることに限定されず、各ヘッド10の下面がキャップにより密閉されない状態で行われてよい。例えばキャップ70に大気連通孔が設けられてある場合がこれに該当し、この場合、外気圧の変化によってメニスカスの破壊が防止される。
初期化のためのパージ(S2,S17)は、本発明において必須要件ではなく、省略してよい。例えばパージの代わりに、吐出を伴うフラッシングや不吐出フラッシングを行ってよい。この場合、パージに比べて消費インク量が少なくなる。
不吐出フラッシングを行わなくてもよい。特に、増粘しやすいインクの場合は、パージや吐出を伴うフラッシングの方が吐出特性の回復に有効である。
フラッシングは、測定に用いられた用紙Pに向けて行うことに限定されない。例えばフラッシングと測定とにおいて別々の用紙Pを用いてよい。これにより、形成される画像の品質低下が防止される。
1の測定(S11)において、複数のダミーノズルを用いて(即ち、複数のダミーノズルから一斉にインク滴を吐出させて)よい。この構成は、第1実施形態において有効であり、検出精度の向上に繋がる。
測定(S11)のタイミングは、所定数の記録媒体への記録終了毎や、1の記録媒体の記録終了後且つ次の記録媒体への記録の前や、直近のフラッシング後において画像形成ノズルに未吐出のものが1以上ある場合等に限定されず、例えばユーザによる随時の測定指示があったとき等、任意に設定可能である。
測定(S11)のタイミングを、所定数の記録媒体への記録終了毎とする場合、上述の実施形態のように1枚毎には限定されず、2以上の数毎としてよい。
測定(S11)を1の記録指令に基づく記録が行われる間に複数回行う場合において、測定の間隔は任意に設定可能である。
測定(S11)は、1の記録指令に基づく記録が行われる間に、複数回行われることに限定しない。
上述の実施形態では、1の記録指令に基づく記録開始後、先ず30枚の用紙Pに記録を行った後、測定の判断(S10)を行うが、1の記録指令に基づく記録開始後、所定枚数の記録終了毎に、測定の判断等の処理を行ってよい。
測定を行うか否かの判断(S10)を省略し、所定のタイミングで測定(S11)を行うようにしてもよい。
測定(S11)で利用する手段として、第1実施形態ではCIS50、第2実施形態では速度センサ150a,150bを例示しているが、これらに限定されず、その他様々な手段を適用可能である。
第2実施形態の速度センサ150a,150bについて、センサ150aから出射された光が、画像形成ノズルを避けつつ複数のダミーノズルを順次通るように吐出面に沿って進行する限り、センサ自体の配置は特に限定されない。
速度センサ150a,150bを適用した場合における、ダミーノズルの位置は、第2実施形態で述べた位置に限定されず、例えば、副走査方向に沿って又は副走査方向に傾斜して配置したり、第1実施形態におけるダミーノズルの位置と同じにしたりしてよい。速度センサ150a,150bを適用した場合において、ダミーノズルの位置を第1実施形態同じにした場合、速度センサ150a,150bは、主走査方向両端の三角形領域21xにあるダミーノズルを副走査方向両側から挟むように、配置されてよい。またこの場合、平面視において、速度センサ150aから出射された光の進行経路上に、複数のダミーノズルが配列されているのが好ましい。さらにこの場合において、検出精度向上の観点から、各ダミーノズルからのインク吐出を順に行い、これらから得られる複数の速度の平均値を飛翔速度としてよい。
測定(S11)における飛翔速度の算出は、上述の実施形態に限定されず、様々な方法により行われてよい。
ダミーノズルが複数ある場合、測定(S11)毎に異なるダミーノズルを用いることには限定しない。
ダミーノズルは複数に限定されない。
本発明における「速度に基づいて決定されたタイミング」とは、飛翔速度が所定速度以下である場合(S12:YES)に限定されない。例えば、全ダミーノズルを使用して測定を行っても所定速度以下にならなかった場合、(例えば最後の測定により得られた速度から)所定速度以下となるタイミングを演算により求め、そのタイミングで回復動作を行う場合も含む。
液滴吐出ヘッドに形成されたダミーノズルが単数の形態において、当該1のダミーノズルを用いて測定を行った結果、飛翔速度が所定速度を超えていた場合、その速度に基づいて演算により決定したタイミングで、回復動作を行ってよい。
液滴吐出ヘッドにおける画像形成ノズル及びダミーノズルの位置は特に限定されない。
第2実施形態において、ダミー領域Dに形成されたダミーノズルは、主走査方向に沿って2以上の列をなすよう配置されてよい。
第2実施形態において、ダミーノズルを、主走査方向に関して画像形成ノズルと重ならないよう、副走査方向に沿って(例えば非記録領域R2に)配列すると共に、速度センサ150a,150bを、上記ダミーノズルの列を挟むようにヘッドの幅方向両側に配置してよい。
上述の実施形態では、アクチュエータユニット21が台形形状であり、多数のノズル18が各アクチュエータユニット21に対応した台形領域内にノズル群を形成しているが、アクチュエータユニットの形状・ノズル群の配置領域の形状は台形に限定されない。例えば、平行四辺形や三角形形状であってよい。
上述の実施形態では、ノズル18が、アクチュエータユニット21にそれぞれ対応して、8つのノズル群を形成しているが、群をなすように配置されなくてもよい。
記録媒体は、紙に限定されず、その他様々な材料(例えば布等)であってよい。
回復動作として、上述の実施形態では「フラッシング」を例示しているが、「フラッシング」以外にも、「加圧又は吸引パージ(アクチュエータを駆動させずにポンプ等によりヘッド内の液体に圧力を付与してノズルから液滴を吐出させること)」等も本発明に係る回復動作に含まれる。
キャップユニット570(図2参照)は、キャップ70の他、各ヘッド10下面に付着したインク滴等を除去するワイパー、インク受け部材等を含んでよい。
本発明に係る液滴吐出ヘッドは、圧電方式以外の方式(サーマルジェット方式等)のアクチュエータを含むものであってよく、さらに、インク以外の液体を液滴として吐出するものであってよい。
本発明に係る液滴吐出ヘッドは、ライン式に限定されず、シリアル式でもよい。
本発明に係る液滴吐出ヘッドの数は4に限定されず、1以上であればよい。
本発明に係る液滴吐出装置は、プリンタ以外のファクシミリやコピー機等であってもよい。