以上のような特許文献1の構成では、段付きワッシャの脚部がフェンダパネルの長孔に入り込んでいる状態でフランジ部はフェンダパネルにおける長孔の側方部分に当接しているだけである。したがって、フェンダパネルを車体構造材に組み付ける前の状態では段付きワッシャが簡単にフェンダパネルの長孔から脱落してしまうため、車体構造材に対するフェンダパネルの組み付けの作業性が悪い。
本発明は、上記事実を考慮して、筒状又はリング状のカラーを用いてフェンダパネルを車体構造材に締結固定するに際して作業性の向上を図ることができるフェンダ取付構造を得ることが目的である。
請求項1に記載の本発明に係るフェンダ取付構造は、ボルトが貫通する孔部が形成された車体構造材と、貫通方向が前記孔部の貫通方向に沿った長孔が形成されて前記車体構造材に対して前記孔部の貫通方向に沿って対向して設けられる取付部を有するフェンダパネルと、前記ボルトが貫通可能な筒状又はリング状に形成され、前記長孔の長手方向に移動可能に前記長孔に嵌め込まれるカラーと、前記取付部及び前記カラーの何れかの一方に設けられて、前記長孔に嵌め込まれた前記カラーが前記取付部に対して前記車体構造材側へ移動しようとした際に、前記取付部及び前記カラーの何れかの他方に干渉されることで前記カラーの移動を規制する第1規制手段と、前記取付部及び前記カラーの何れかの一方に設けられて、前記長孔に嵌め込まれた前記カラーが前記取付部に対して前記車体構造材とは反対側へ移動しようとした際に前記取付部及び前記カラーの何れかの他方に設けられた干渉部に干渉されることで前記カラーの移動を規制する第2規制手段と、を備え、前記長孔に嵌め込まれた前記カラーと前記車体構造材の前記孔部を貫通した前記ボルトにナットを螺合させて前記フェンダパネルを前記車体構造材に一体的に締結固定する。
請求項1に記載の本発明に係るフェンダ取付構造によれば、フェンダパネルが車体構造材に取り付けられる際にはフェンダパネルの取付部に形成された長孔にカラーが嵌め込まれる。この状態で車体構造材に形成された孔部の貫通方向にフェンダパネルに取付部と車体構造材とが対向するようにフェンダパネルの取付部が配置され、カラー及び車体構造材の孔部の双方を貫通したボルトにナットが螺合させられ、これにより、フェンダパネルが車体構造材に締結固定される。
ここで、カラーは長孔の長手方向に移動可能であるため、長孔内でカラーを適宜にスライドさせることで、カラーの貫通孔及び車体構造材の孔部の双方をボルトが通過できるようにカラーの位置を調整できる。これにより、車体構造材に対するフェンダパネルの組み付けが容易になる。
また、フェンダパネルの取付部及びカラーの何れかの一方には第1規制手段が設けられており、取付部の長孔にカラーが嵌め込まれた状態で孔部の貫通方向の一方(車体構造材側)にカラーが移動しようとすると、フェンダパネルの取付部及びカラーの何れかの他方(すなわち、フェンダパネルの取付部及びカラーのうち、第1規制手段が設けられていない方)に第1規制手段が干渉される。これにより、カラーが取付部に対して孔部の貫通方向の一方(車体構造材側)へ移動することを規制できる。
さらに、フェンダパネルの取付部及びカラーの何れかの一方には第2規制手段が設けられており、取付部の長孔にカラーが嵌め込まれた状態で孔部の貫通方向の他方(取付部の車体構造材とは反対側)にカラーが移動しようとすると、フェンダパネルの取付部及びカラーの何れかの他方(すなわち、フェンダパネルの取付部及びカラーのうち、第2規制手段が設けられていない方)に設けられた干渉部に第2規制手段が干渉される。これにより、カラーが取付部に対して孔部の貫通方向の他方(取付部の車体構造材とは反対側)へ移動することを規制できる。
以上のように、本発明では、取付部の長孔に嵌め込まれたカラーは車体構造材の孔部の貫通方向に沿った何れの側へ移動しようとしても、この移動が規制されるので、長孔からカラーが脱落することが防止又は抑制される。このように、カラーの長孔からの不用意な脱落が防止又は抑制されるので、車体構造材へのフェンダパネルの取付作業の作業性が向上する。
なお、本発明において、第1規制手段及び第2規制手段の各々は、フェンダパネルの取付部及びカラーの何れかの一方に設けられる構成であるが、フェンダパネルの取付部及びカラーのうち、第1規制手段が設けられる方と第2規制手段が設けられる方とは同じであってもよいし、異なっていてもよい。
請求項2に記載の本発明に係るフェンダ取付構造は、請求項1に記載の本発明において、前記長孔の内周部に前記干渉部を設けると共に、前記カラーに設けられて前記カラーにおける軸直交方向に対して傾斜した係合面を有し、前記カラーが前記長孔に嵌め込まれた状態では前記係合面が前記干渉部と対向する係合部を前記第2規制手段としている。
請求項2に記載の本発明に係るフェンダ取付構造によれば、カラーには第2規制手段としての係合部が設けられる。カラーを長孔に嵌め込むと、係合部の係合面が長孔の内周部に設定された干渉部と対向する。係合部の係合面はカラーにおける軸直交方向に対して傾斜している。このため、長孔にカラーを嵌め込んだ状態でカラーが長孔の貫通方向に沿って車体構造材から離間するように移動しようとすると、係合部の係合面が長孔の干渉部に干渉される。これにより、車体構造材から離間する向きへのカラーの移動が規制される。この干渉部によるカラーの移動規制と、第1規制手段が干渉されることによるカラーの移動規制とにより、長孔からカラーが脱落することを防止又は抑制できる。
請求項3に記載の本発明に係るフェンダ取付構造は、請求項1又は請求項2に記載の本発明において、前記カラーと前記取付部との対向部分に対応して前記カラー及び前記取付部の何れかの一方に設けられ、前記カラーと前記取付部とを面接触させた際の摩擦抵抗よりも前記カラー及び前記取付部の何れかの他方との摩擦抵抗が低い摩擦低減手段を備えている。
請求項3に記載の本発明に係るフェンダ取付構造では、カラーとフェンダパネルの取付部との対向部分に対応してカラー及び取付部の何れかの一方に摩擦低減手段が設けられる。この摩擦低減手段は、カラー及び取付部の何れかの他方(すなわち、カラー及び取付部のうち摩擦低減手段を設けていない方)との摩擦抵抗がカラーと取付部とを面接触させた際の摩擦抵抗よりも低い。このため、長孔内でカラーを円滑にスライドさせることができる。
ところで、車両製造時(例えば、フェンダパネル等の塗装時)において車体を加熱する場合や、車両周囲の外気温が変化すると、フェンダパネルに伸縮が生じる(特に、フェンダパネルを合成樹脂材にて形成すると、この伸縮が顕著になることがある)。このようにフェンダパネルが伸縮するに際して、フェンダパネルの取付部をボルトで車体構造材に締結固定することで取付部の伸縮が規制されると、取付部において歪みが生じる可能性がある。
ここで、本発明に係るフェンダ取付構造では、上記のように摩擦低減手段を設けることでカラー及び取付部の何れかの他方(すなわち、カラー及び取付部のうち摩擦低減手段を設けていない方)との摩擦抵抗がカラーと取付部とを面接触させた際の摩擦抵抗よりも低くなる。このため、上記のようにフェンダパネルが伸縮すると、これに伴い、取付部はカラーに対して滑って変位できる。これにより、取付部における歪みの発生を防止又は効果的に抑制できる。
請求項4に記載の本発明に係るフェンダ取付構造は、請求項3に記載の本発明において、前記取付部における前記長孔の縁に沿った部分に対応して前記何れかの一方に前記摩擦低減手段を設けている。
請求項4に記載の本発明に係るフェンダ取付構造では、カラー及び取付部の何れかの一方における長孔の縁に沿った部分に対応して摩擦低減手段が設けられる。このため、長孔に沿ってカラーをスライドさせるに際して、長孔の長手方向一端から他端までの間でカラーを円滑にスライドさせることができる。
なお、本発明において摩擦低減手段は長孔の縁に沿った部分に対応して設けられるが、長孔の縁に沿って環状に摩擦低減手段を設けてもよいし、長孔の縁の一部(例えば、長孔の縁のうち、長孔の内幅方向側方の部分)に沿って摩擦低減手段を設けてもよい。
請求項5に記載の本発明に係るフェンダ取付構造は、請求項3又は請求項4に記載の本発明において、前記カラー及び前記取付部の何れかの一方から他方へ向けて突出形成されると共に、前記他方との対向面積が前記カラーと前記取付部との対向面積よりも小さな突出部を前記摩擦低減手段としている。
請求項5に記載の本発明に係るフェンダ取付構造では、カラー及びフェンダパネルの取付部の何れかの一方から他方へ向けて突出形成された突出部を摩擦低減手段としている。この突出部の先端の面積は、カラーと取付部との対向面積よりも小さい。したがって、カラー及びフェンダパネルの取付部のうち突出部が形成されていない方と突出部との摩擦抵抗が小さくなる。
しかも、このような突出部は、カラーやフェンダパネル等の成形時に形成できるのでコストを安価にできる。
請求項6に記載の本発明に係るフェンダ取付構造は、請求項1又は請求項2に記載の本発明において、前記取付部と前記車体構造材との対向部分に対応して前記取付部及び前記車体構造材の何れかの一方に設けられ、前記取付部と前記車体構造材とを面接触させた際の摩擦抵抗よりも前記取付部及び前記車体構造材の何れかの他方との摩擦抵抗が低い摩擦低減手段を備えている。
請求項6に記載の本発明に係るフェンダ取付構造では、フェンダパネルの取付部と車体構造材との対向部分に対応して取付部及び車体構造材の何れかの一方に摩擦低減手段が設けられる。この摩擦低減手段は、取付部及び車体構造材の何れかの他方(すなわち、取付部及び車体構造材のうち摩擦低減手段を設けていない方)との摩擦抵抗が車体構造材と取付部とを面接触させた際の摩擦抵抗よりも低い。このため、取付部と車体構造材とが互いに圧接していても、車体構造材に対して取付部が滑るように取付部は変位できる。
ところで、車両製造時(例えば、フェンダパネル等の塗装時)において車体を加熱する場合や、車両周囲の外気温が変化すると、フェンダパネルに伸縮が生じる(特に、フェンダパネルを合成樹脂材にて形成すると、この伸縮が顕著になることがある)。このようにフェンダパネルが伸縮するに際して、フェンダパネルの取付部をボルトで車体構造材に締結固定することで取付部の伸縮が規制されると、取付部において歪みが生じる可能性がある。
ここで、本発明に係るフェンダ取付構造では、上記のように摩擦低減手段を設けることで取付部及び車体構造材の何れかの他方(すなわち、取付部及び車体構造材のうち摩擦低減手段を設けていない方)との摩擦抵抗がカラーと取付部とを面接触させた際の摩擦抵抗よりも低くなる。このため、上記のようにフェンダパネルが伸縮すると、これに伴い、取付部は車体構造材に対して滑って変位できる。これにより、取付部における歪みの発生を防止又は効果的に抑制できる。
請求項7に記載の本発明に係るフェンダ取付構造は、請求項6に記載の本発明において、前記取付部及び前記車体構造材の何れかの一方から他方へ向けて突出形成されると共に、前記他方との対向面積が前記取付部と前記車体構造材との対向面積よりも小さな突出部を前記摩擦低減手段としている。
請求項7に記載の本発明に係るフェンダ取付構造では、フェンダパネルの取付部及び車体構造材の何れかの一方から他方へ向けて突出形成された突出部を摩擦低減手段としている。この突出部の先端の面積は、取付部と車体構造材との対向面積よりも小さい。したがって、フェンダパネルの取付部及び車体構造材のうち突出部が形成されていない方と突出部との摩擦抵抗が小さくなる。
しかも、このような突出部は、車体構造材やフェンダパネル等の成形時に形成できるのでコストを安価にできる。
以上説明したように、請求項1に記載の本発明に係るフェンダ取付構造は、取付部に形成された長孔からのカラーの不用意な脱落を防止又は抑制でき、車体構造材へのフェンダパネルの取付作業の作業性を向上させることができる。
請求項2に記載の本発明に係るフェンダ取付構造では、長孔の内周部に設定された干渉部にカラーの係合部が干渉されることでカラーの移動を規制でき、長孔からカラーが脱落することを防止又は抑制できる。
請求項3に記載の本発明に係るフェンダ取付構造では、フェンダパネルを締結固定した後にフェンダパネルが伸縮した際には、この伸縮に応じて取付部がカラーに対して滑るように変位でき、取付部に歪みが生じることを防止又は抑制できる。
請求項4に記載の本発明に係るフェンダ取付構造では、フェンダパネルを締結固定した後も長孔の長手方向一端から他端までの間でカラーを比較的円滑にスライドさせることができ、フェンダパネルが伸縮に応じて取付部が変位できる。
請求項5に記載の本発明に係るフェンダ取付構造では、安価なコストで摩擦低減手段を設けることができる。
請求項6に記載の本発明に係るフェンダ取付構造では、フェンダパネルを締結固定した後にフェンダパネルが伸縮した際には、この伸縮に応じて取付部が車体構造材に対して滑るように変位でき、取付部に歪みが生じることを防止又は抑制できる。
請求項7に記載の本発明に係るフェンダ取付構造では、安価なコストで摩擦低減手段を設けることができる。
<第1の実施の形態の構成>
図1には、本発明の第1の実施の形態に係るフェンダパネル取付構造を適用して合成樹脂材の成形品であるフェンダパネルとしてのフロントフェンダパネル12を組み付けた車両14の要部の構成の拡大斜視図が示されている。また、図2には、本発明の第1の実施の形態に係るフェンダパネル取付構造を適用してフロントフェンダパネル12を組み付けた車両14の要部の構成の拡大正面断面図が示されている。なお、図1及び図2を含む各図において矢印FRは車両14の前後方向前方、矢印UPは車両14の上下方向上方、矢印OUTは車両14の幅(左右)方向外方をそれぞれ示している。
また、通常、フロントフェンダパネル12は車両14の左右両側にそれぞれ設けられるが、本実施の形態では、車両14の右側に設けられるフロントフェンダパネル12を例として説明する。このため、本実施の形態では、車両14の幅方向外方とは車両14の左右方向右方のことを意味し、車両14の幅方向内方とは車両14の左右方向左方のことを意味する。当然のことながら、車両14の左側に設けられるフロントフェンダパネル12に関しても本発明の適用は可能であるが、この場合、車両14の幅方向外方は車両14の左右方向左方となり、車両14の幅方向内方とは車両14の左右方向右方となる。
図1及び図2に示されるように、車両14は車両の骨格を成す骨格部材として車体構造材を構成するエプロンアッパメンバ16を備えている。エプロンアッパメンバ16は上壁部20と内壁部22とを含めて構成されたアッパメンバ18を備えている。アッパメンバ18の上壁部20は長手方向が車両14の前後方向に沿い幅方向が車両14の幅(車両14の左右)方向に沿った平板状に形成されている。これに対してアッパメンバ18の内壁部22は長手方向が車両14の前後方向に沿い幅方向が車両14の上下方向に沿った平板状に形成され、その幅方向上端部は上壁部20の車両14の幅方向内方側の端部に繋がり、アッパメンバ18は全体的に正面視で鉤状に屈曲した板状とされている。
また、エプロンアッパメンバ16は下壁部26と外壁部28とを含めて構成されたロアメンバ24を備えている。ロアメンバ24の下壁部26は長手方向が車両14の前後方向に沿い幅方向が車両14の幅(車両14の左右)方向に沿った平板状に形成されている。これに対してロアメンバ24の外壁部28は長手方向が車両14の前後方向に沿い幅方向が車両14の上下方向に沿った平板状に形成され、その幅方向下端部は下壁部26の車両14の幅方向外方側の端部に繋がり、ロアメンバ24は全体的に正面視で鉤状に屈曲した板状とされている。
また、車両14の幅方向に沿った内方側の下壁部26の端部からは車両14の下方へ向けてフランジ部30が延出されている。フランジ部30は、車両14の幅方向に沿った内壁部22の外側で、内壁部22の下端部近傍に隣接するように配置される。また、車両14の上下方向に上方側の下壁部26の端部からは車両14の幅方向外方へ向けてフランジ部32が延出されている。フランジ部32は、車両14の上下方向に沿った上壁部20の下側で上壁部20の幅方向外側端部近傍に隣接するように配置される。上記の内壁部22の下端部近傍とフランジ部30とは車両14の前後方向に沿った適宜位置で溶接されて一体に結合され、上記の上壁部20の幅方向外側端部近傍とフランジ部32とは車両14の前後方向に沿った適宜位置で溶接されて一体に結合される。これにより、エプロンアッパメンバ16の断面形状は閉じた矩形(長方形)状となっている。
このエプロンアッパメンバ16を構成するアッパメンバ18の上壁部20には、エプロンアッパメンバ16にフロントフェンダパネル12を締結固定するためのボルト34の軸部36が貫通する孔部38が形成されている。ボルト34は上壁部20の上方から孔部38を貫通し、エプロンアッパメンバ16の内側に設けられたナット40に軸部36が螺合する。
一方、このエプロンアッパメンバ16の車幅方向外方には上記のフロントフェンダパネル12が配置されている。フロントフェンダパネル12は外側縦壁部42を備えている。外側縦壁部42はその表面が車両14の意匠面を形成する。外側縦壁部42の上端側は、車両14のエンジンルームを上方から覆うエンジンフード(図示省略)の外周部(エンジンフードの車幅方向端部)に接近するように車両14のへ幅方向内方側向けて湾曲している。
外側縦壁部42の上端部からは車両14の下方へ向けて垂下部46が延出されている。この垂下部46の下端部からは車両14の幅方向内方側へ向けて取付部48が延出されている。取付部48はその厚さ方向が概ね車両14の上下方向に沿った板状に形成されており、車両14の上下方向に沿って上記の上壁部20と対向している。
この取付部48にはエプロンアッパメンバ16の孔部38に対応して長孔60が形成されている。長孔60は長手方向が車両14の前後方向に沿っており、車両14の上下方向に貫通している。フロントフェンダパネル12をエプロンアッパメンバ16に取り付ける際には、長孔60と孔部38とが車両14の上下方向に対向し、ボルト34は取付部48の上側から長孔60を貫通して孔部38を貫通する。但し、長孔60の内幅寸法(長孔60における車両14の幅方向に沿った寸法)は、孔部38の内径寸法よりも十分に大きく設定されている。
また、長孔60の内周面は、干渉部としての干渉面62とされている。干渉面62は車両14の上方側(すなわち、エプロンアッパメンバ16から離間する方向)へ向けて漸次長孔60の開口径方向内方側に変位しており、このため、干渉面62は長孔60の開口径方向内方側への向きに対して、長孔60の貫通方向下方(すなわち、エプロンアッパメンバ16の側)へ傾斜した斜面となっている。
この長孔60にはカラー70が嵌め込まれる。カラー70は第2規制手段としての係合部72を備えている。係合部72は外形が車両14の上方へ向けて漸次外径寸法が小さくなる略円錐台形状とされている。また、係合部72の軸方向寸法は取付部48の厚さ寸法以下とされている。さらに、係合部72の上端における係合部72の外径寸法は、干渉面62の上側の開口端における干渉面62の内幅寸法以下とされている。
これに対して、係合部72の下端における係合部72の外径寸法は、干渉面62の下側の開口端における干渉面62の内幅寸法以下とされているが、干渉面62の上側の開口端における干渉面62の内幅寸法よりも大きい。係合部72は、以上のような寸法設定の略円錐台形に形成されていることで、長孔60の内側に位置することができ、しかも、長孔60の内側で長孔60の長手方向へ移動できる。さらに、係合部72を上記のような寸法設定の略円錐台形とすることで、長孔60の内側に係合部72を位置させた際には、係合部72の外周面である係合面74の一部が干渉面62の傾斜方向とは反対向きに干渉面62の一部と対向する。
一方、係合部72の上端部には第1規制手段としてのフランジ部82が設けられている。フランジ部82は直径が長孔60の上側の開口端における内幅寸法よりも大きな円板状とされており、係合部72に対して同軸的に一体形成されている。この係合部72とフランジ部82とにより構成されたカラー70には貫通孔84が形成されており、この貫通孔84を上記のボルト34の軸部36が貫通し、ナット40が軸部36に螺合してフロントフェンダパネル12がエプロンアッパメンバ16に締結固定された状態では、ボルト34の頭部86が上方からフランジ部82に圧接する。
さらに、フランジ部82に対応して取付部48には突出部として摩擦低減手段を構成する線状突起92が形成されている。線状突起92は、長孔60の内幅方向(すなわち、車両14の幅方向)に沿って長孔60の両側に形成されている。これらの線状突起92は長手方向が長孔60の長手方向に沿った直線状に形成されており、係合部72が長孔60の内側に入り込んでいる状態では、長孔60の貫通方向に沿って線状突起92の先端とフランジ部82の下面(すなわち、フランジ部82の取付部48と対向する側の面)とが対向する。
また、取付部48の上壁部20と対向する側の面には線状突起94が形成されている。線状突起94は線状突起92と同様に長手方向が長孔60の長手方向に沿った直線状に形成されており、長孔60の内幅方向(すなわち、車両14の幅方向)に沿って長孔60の両側にそれぞれ形成されている。
<第1の実施の形態の作用、効果>
次に、本実施形態の作用並びに効果について説明する。
本実施の形態では、フロントフェンダパネル12がエプロンアッパメンバ16に締結固定されるに際して長孔60の内側に係合部72が位置するようにカラー70が長孔60に嵌め込まれる。この状態で、取付部48の下面と上壁部20の上面とが対向し、且つ、カラー70の貫通孔84と上壁部20の孔部38とが対向するようにフロントフェンダパネル12が配置される。次いで、取付部48の上方からボルト34の軸部36がカラー70の貫通孔84を貫通させられ、更に、貫通孔84を貫通した軸部36が上壁部20の孔部38を貫通させられる。この状態で、エプロンアッパメンバ16内のナット40が軸部36の先端側(すなわち、軸部36の頭部86とは反対側)から螺合させられる。これにより、ボルト34及びナット40によりフロントフェンダパネル12がエプロンアッパメンバ16に締結固定される。
ところで、上記のように、本実施の形態では、フロントフェンダパネル12がエプロンアッパメンバ16に締結固定されるに際して長孔60の内側に係合部72が位置するようにカラー70が長孔60に嵌め込まれる。ここで、干渉面62は長孔60の開口径方向内方側への向きに対して、長孔60の貫通方向下方へ傾斜した斜面となっており、係合部72が長孔60の内側に入り込んだ状態では、略円錐台形とされた係合部72の外周面である係合面74の一部が干渉面62の傾斜方向とは反対向きに干渉面62の一部と対向している。
このため、カラー70が取付部48に対して上方へ変位しようとすると、長孔60の干渉面62に係合部72の係合面74が干渉される。これにより、取付部48に対するカラー70の上方変位が規制される。また、取付部48に対してカラー70が下方へ変位しようとすると、取付部48にフランジ部82が干渉される。これにより、取付部48に対するカラー70の下方変位が規制される。すなわち、本実施の形態では、長孔60にカラー70を嵌め込んだ状態では、長孔60の貫通方向に沿った取付部48に対するカラー70の相対変位が規制されるので、長孔60からの係合部72の抜け、すなわち、長孔60にカラー70を嵌め込んだ後の長孔60からのカラー70の脱落を防止又は抑制できる。
このため、長孔60からカラー70が外れないように注意しながらフロントフェンダパネル12を移動させたり、長孔60からカラー70が脱落しないようにカラー70を抑えながらフロントフェンダパネル12をエプロンアッパメンバ16に組み付けたりしなくてもよい。これにより、エプロンアッパメンバ16に対してフロントフェンダパネル12を組み付ける際の作業性が向上する。
また、本実施の形態では、係合部72の軸方向寸法が取付部48の厚さ寸法以下とされているため、カラー70を長孔60に嵌め込んだ状態でも係合部72が長孔60の下側の開口端から突出しない。このため、ボルト34及びナット40でフロントフェンダパネル12をエプロンアッパメンバ16に締結すると、線状突起92にフランジ部82が圧接する。このため、フロントフェンダパネル12をエプロンアッパメンバ16に強固に固定できる。
一方、以上のようにしてフロントフェンダパネル12がエプロンアッパメンバ16に組み付けられた車両14はフロントフェンダパネル12の外面等に塗装が施される。このような塗装工程では、フロントフェンダパネル12の外面に塗布された塗料を乾燥させるために、熱風をフロントフェンダパネル12に吹きかけたり、高温雰囲気中に車両14を配置したりして車両14を加熱することがある。また、車両14がユーザの手に渡った後に車両14は常に外気に晒される。したがって、夏季では日光によってフロントフェンダパネル12が加熱され、冬季には寒風や雪等により冷却される。
フロントフェンダパネル12が合成樹脂材の成形品であると、上記のような温度変化によってフロントフェンダパネル12が伸縮する。このようなフロントフェンダパネル12の伸縮により、エプロンアッパメンバ16に対する取付部48の相対的な位置関係に変化が生じる。ここで、本実施の形態では、カラー70を構成するフランジ部82の下面(取付部48側の面)は線状突起92の先端と対向しているので、ボルト34の頭部86に押圧されても取付部48の上面とは基本的に接触せずに、線状突起92の先端とだけ接触している。
この線状突起92の先端とフランジ部82との接触面積は、取付部48の上面とフランジ部82の下面とが面接触している場合に比べて十分に小さいため、この線状突起92の先端とフランジ部82の下面との摩擦抵抗は、取付部48の上面とフランジ部82の下面とが面接触している場合での摩擦抵抗に比べて小さい。これにより、フロントフェンダパネル12がエプロンアッパメンバ16に締結固定された状態であっても、上記のようなフロントフェンダパネル12の伸縮が生じると、フランジ部82と線状突起92との間で滑りが生じて、カラー70に対して取付部48が変位する。
また、本実施の形態では、取付部48の下面と対向する上壁部20の上面は線状突起94の先端と対向しているので、フロントフェンダパネル12がエプロンアッパメンバ16に締結固定されても長孔60の近傍では上壁部20の上面は取付部48の下面とは基本的に接触せずに、線状突起94の先端とだけ接触している。この線状突起94の先端と上壁部20との接触面積は、取付部48の下面と上壁部20の上面とが面接触している場合に比べて十分に小さいため、この線状突起94の先端と上壁部20の上面との摩擦抵抗は、取付部48の下面と上壁部20の上面とが面接触している場合での摩擦抵抗に比べて小さい。これにより、フロントフェンダパネル12がエプロンアッパメンバ16に締結固定された状態であっても、上記のようなフロントフェンダパネル12の伸縮が生じると、上壁部20と線状突起94との間で滑りが生じて、上壁部20、すなわち、エプロンアッパメンバ16に対して取付部48が変位する。
このように、上記のような温度変化が生じてフロントフェンダパネル12が伸縮した際の取付部48の変位が許容されるので、このような取付部48の変位が妨げられたままフロントフェンダパネル12が伸縮することに起因して取付部48に歪みが生じることを防止又は抑制できる。
しかも、線状突起92及び線状突起94はフロントフェンダパネル12の成形時に形成できるので、線状突起92、94をフロントフェンダパネル12に設けるための特別な工程や部材が不要であり、安価なコストで実現できる。
<第2の実施の形態の構成>
次に、本発明のその他の実施の形態について説明する。なお、以下の各実施の形態を説明するにあたり、前記第1の実施の形態を含めて説明している実施の形態よりも前出の実施の形態と基本的に同一の部位に関しては、同一の符号を付与してその詳細な説明を省略する。
図3には、本発明の第2の実施の形態に係るフェンダパネル取付構造を適用して合成樹脂材の成形品であるフェンダパネルとしてのフロントフェンダパネル12を組み付けた車両14の要部の構成の拡大斜視図が示されている。また、図4には、本発明の第2の実施の形態に係るフェンダパネル取付構造を適用してフロントフェンダパネル12を組み付けた車両14の要部の構成の拡大正面断面図が示されている。
これらの図に示されるように、本実施の形態では、エプロンアッパメンバ16のアッパメンバ18は上壁部20を備えておらず、代わりに上壁102を備えている。この上壁102には各々が突出部として摩擦低減手段を構成する複数の突起104が形成されている。これらの突起104は前記第1の実施の形態における線状突起94とは異なり、点状又は長孔60の長手方向に沿った寸法が線状突起94よりも十分に短い粒状とされており、長孔60の内幅方向両側で長孔60の長手方向に沿って断続的に突起104から突出形成されている。
一方、本実施の形態においてカラー70はフランジ部82を備えておらず代わりに第1規制手段としてのフランジ部108を備えている。フランジ部108は係合部72に対して同軸的な円板形状である点に関してはフランジ部82と同じであるが、フランジ部82とは異なり、フランジ部108の下面(フランジ部108の取付部48と対向する側の面)から突出部として摩擦低減手段を構成する環状突出部110が突出形成されている。図5に示されるように、環状突出部110はフランジ部108に対して同軸の円環状とされており、その内径寸法は長孔60の上側の開口端における内幅寸法よりも大きい。
さらに、図3及び図4に示されるように、本実施の形態では、取付部48に線状突起92、94が形成されていない。
<第2の実施の形態の作用、効果>
以上の構成の本実施の形態では、本実施の形態では、取付部48に線状突起92が形成されていないものの、カラー70のフランジ部108に環状突出部110が形成されており、この環状突出部110の先端が取付部48の上面と対向している。したがって、フロントフェンダパネル12がエプロンアッパメンバ16に締結固定されてもフランジ部108の下面は取付部48の上面とは基本的に接触せずに、取付部48の上面が環状突出部110の先端とだけ接触している。
環状突出部110の先端の面積はフランジ部108の下面の面積よりも十分に小さいため、環状突出部110の先端と取付部48の上面との接触面積は、フランジ部108の下面と取付部48の上面とが面接触している場合に比べて十分に小さい。これにより、環状突出部110の先端と取付部48の上面との摩擦抵抗は、フランジ部108の下面と取付部48の上面とが面接触している場合での摩擦抵抗に比べて小さい。これにより、フロントフェンダパネル12がエプロンアッパメンバ16に締結固定された状態であっても、上記のようなフロントフェンダパネル12の伸縮が生じると、取付部48と環状突出部110との間で滑りが生じて、カラー70に対して取付部48が変位する。
一方、本実施の形態では、取付部48に線状突起94が形成されていないものの、エプロンアッパメンバ16を構成するアッパメンバ18の上壁102に突起104が突出形成されており、この突起104の先端が取付部48の下面と対向している。したがって、フロントフェンダパネル12がエプロンアッパメンバ16に締結固定されても上壁102の上面は取付部48の下面とは基本的に接触せずに、取付部48の下面が突起104の先端とだけ接触している。
突起104の先端の面積は上壁102の上面の面積よりも十分に小さいため、突起104の先端と取付部48の下面との接触面積は、上壁102の上面と取付部48の下面とが面接触している場合に比べて十分に小さい。これにより、突起104の先端と取付部48の下面との摩擦抵抗は、上壁102の上面と取付部48の下面とが面接触している場合での摩擦抵抗に比べて小さい。これにより、フロントフェンダパネル12がエプロンアッパメンバ16に締結固定された状態であっても、上記のようなフロントフェンダパネル12の伸縮が生じると、上壁102と突起104との間で滑りが生じて、上壁部102、すなわち、エプロンアッパメンバ16に対して取付部48が変位する。
このように、本実施の形態においても、上記のような温度変化が生じてフロントフェンダパネル12が伸縮した際の取付部48の変位が許容されるので、このような取付部48の変位が妨げられたままフロントフェンダパネル12が伸縮することに起因して取付部48に歪みが生じることを防止又は抑制できる。
また、本実施の形態では、長孔60の干渉面62とカラー70と係合面74との関係は、前記第1の実施の形態と同じであるので、この点に関しては前記第1の実施の形態の同様の作用を奏し、前記第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
<第3の実施の形態の構成>
図6には、本発明の第3の実施の形態に係るフェンダパネル取付構造を適用して合成樹脂材の成形品であるフェンダパネルとしてのフロントフェンダパネル12を組み付けた車両14の要部の構成の拡大斜視図が示されている。また、図7には、本発明の第2の実施の形態に係るフェンダパネル取付構造を適用してフロントフェンダパネル12を組み付けた車両14の要部の構成の拡大正面断面図が示されている。
これらの図に示されるように、本実施の形態では、カラー70は係合部72を備えておらず、代わりにカラー本体122を備えている。カラー本体122は全体的に円筒形状に形成されており、その内側が貫通孔84とされている。このカラー本体122の軸方向中間部には係合部として第2規制手段を構成する環状突出部124が設けられている。環状突出部124はカラー本体122の外周部からカラー本体122の半径方向外方へ向けて円環状に突出形成されている。
環状突出部124の断面形状は、カラー本体122側の辺と取付部48側の辺とが略直角の略直角三角形状とされている。環状突出部124のフランジ部82側の面は係合面126とされている。係合面126は環状突出部124の半径方向外方に対してカラー本体122の軸方向上側(すなわち、フランジ部82側)に傾斜した斜面とされている。
これに対し、本実施の形態では、取付部48に長孔60が形成されておらず、代わりに長孔132が形成されている。長孔132は内幅寸法が環状突出部124の外径寸法以上とされている。また、長孔132の貫通方向中間部よりも上側(すなわち、エプロンアッパメンバ16の上壁部20とは反対側)にはフランジ部134が設けられている。フランジ部134は長孔132の内周部から長孔132の開口径方向内方へ延出されており、フランジ部134の内幅寸法は環状突出部124の外径寸法未満とされている。
長孔132の内周形状は内幅寸法がカラー本体122の外径寸法以上とされており、カラー本体122は長孔132を容易に通過できる。但し、フランジ部134の内幅寸法は環状突出部124の外径寸法未満とされており、且つ、フランジ部134の下面である干渉部としての干渉面136は係合面126の向きとは反対方向を向いている。このため、カラー本体122が長孔132を通過して、環状突出部124が長孔132よりも下側に位置した状態では、フランジ部134の下面である干渉面136が環状突出部124の係合面126と対向する。
また、本実施の形態では、カラー本体122の軸方向に沿った環状突出部124の上端部からカラー本体122の下端部までの長さが、長孔132の開口方向に沿った長孔132の下側の開口端からフランジ部134の内端までの距離以下とされている。
<第3の実施の形態の作用、効果>
以上の構成の本実施の形態では、本実施の形態では、フロントフェンダパネル12がエプロンアッパメンバ16に締結固定されるに際してフランジ部134の下側に環状突出部124が位置するようにカラー本体122が長孔132に嵌め込まれる。ここで、フランジ部134の干渉面136は長孔132の開口径方向内方側への向きに対して、長孔132の貫通方向下方へ傾斜した斜面となっており、環状突出部124が長孔132の内側に入り込んだ状態では、環状突出部124の係合面126の一部が干渉面136の傾斜方向とは反対向きに干渉面136の一部と対向している。
このため、カラー70が取付部48に対して上方へ変位しようとすると、フランジ部134の干渉面136に環状突出部124の係合面126が干渉される。これにより、取付部48に対するカラー70の上方変位が規制される。また、取付部48に対するカラー70の下方への変位は前記第1の実施の形態と同様に規制される。すなわち、本実施の形態では、長孔132にカラー70を嵌め込んだ状態では、長孔132の貫通方向に沿った取付部48に対するカラー70の相対変位が規制されるので、長孔132からの環状突出部124の抜け、すなわち、長孔132にカラー70を嵌め込んだ後の長孔132からのカラー70の脱落を防止又は抑制できる。
このため、長孔132からカラー70が外れないように注意しながらフロントフェンダパネル12を移動させたり、長孔132からカラー70が脱落しないようにカラー70を抑えながらフロントフェンダパネル12をエプロンアッパメンバ16に組み付けたりしなくてもよい。これにより、エプロンアッパメンバ16に対してフロントフェンダパネル12を組み付ける際の作業性が向上する。
また、本実施の形態では、カラー本体122の軸方向に沿った環状突出部124の上端部からカラー本体122の下端部までの長さが、長孔132の開口方向に沿った長孔132の下側の開口端からフランジ部134の内端までの距離以下とされているため、カラー70を長孔132に嵌め込んだ状態でもカラー本体122が長孔132の下側の開口端から突出しない。このため、ボルト34及びナット40でフロントフェンダパネル12をエプロンアッパメンバ16に締結すると、線状突起92にフランジ部82が圧接する。このため、フロントフェンダパネル12をエプロンアッパメンバ16に強固に固定できる。
なお、本実施の形態では、環状突出部124の形状をフランジ部82の側へ向けて漸次外径寸法が小さくなる円錐台形としている。例えば、図8及び図9に示されるように、環状突出部124の形状をフランジ部82とは反対側へ向けて漸次外径寸法が小さくなる円錐台形としてもよい。フランジ部82とは反対側へ向けて漸次外径寸法が小さくなる円錐台形に環状突出部124を形成した場合、環状突出部124におけるフランジ部82とは反対側の面がテーパ状となるので、長孔132へのカラー70の嵌め込みが容易である。これに対して、フランジ部82の側へ向けて漸次外径寸法が小さくなる円錐台形に環状突出部124を形成すると環状突出部124とフランジ部82との間隔が、環状突出部124の半径方向外方へ向けて漸次大きくなるので、カラー70の成形が容易で、且つ、カラー70を成形した際に金型から抜き易いという効果がある。
<第4の実施の形態の構成>
図10には、本発明の第4の実施の形態に係るフェンダパネル取付構造を適用して合成樹脂材の成形品であるフェンダパネルとしてのフロントフェンダパネル12を組み付けた車両14の要部の構成の拡大斜視図が示されている。また、図10には、本発明の第2の実施の形態に係るフェンダパネル取付構造を適用してフロントフェンダパネル12を組み付けた車両14の要部の構成の拡大正面断面図が示されている。
これらの図に示されるように、本実施の形態では、カラー70は係合部72を備えておらず、代わりに第2規制手段としての係合部152を備えている。係合部152は円筒部154を備えている。円筒部154は外径寸法がフランジ部82の外径寸法よりも小さな円筒形状とされ、フランジ部82に対して同軸的に形成されている。この円筒部154とフランジ部82との間には円筒部154と共に係合部152を構成する係合部本体156が形成されている。係合部本体156はフランジ部82及び円筒部154に対して同軸でフランジ部82の側へ向けて漸次外径寸法が小さくなる円錐台形とされており、係合部本体156の円筒部154側の端部の外径寸法は円筒部154の外径寸法に等しい。係合部本体156の外周面は係合面158とされており、係合部本体156が上記のような円錐台形とされていることで、係合面158は係合部152の半径方向外方に対して係合部152の軸方向上方(すなわち、フランジ部82の側)へ向いた斜面とされている。
このように、円筒部154と係合部本体156とで構成された係合部152は、その軸方向一端から他端までの軸方向寸法が外側縦壁部42の厚さ寸法以下とされている。
一方、取付部48には長孔60が形成されておらず、代わりに長孔162が形成されている。長孔162の内幅寸法は円筒部154の外径寸法以上とされ円筒部154を長孔162の内側へ収容できる。また、長孔162にはフランジ部164が設けられている。フランジ部164は長孔162の軸方向中間部よりも上側で長孔162の内周部から長孔162の開口径方向内方へ延出されている。フランジ部164において長孔162の開口径方向内方側に位置する側の端部(フランジ部164の先端部)では長孔162の内幅寸法が円筒部154の外径寸法よりも小さく、且つ、係合部本体156のフランジ部82側の端部における係合部本体156の外径寸法以上に設定されている。また、フランジ部164の内周面は干渉部としての干渉面166とされており、干渉面166は長孔162の内側に係合部152が入り込んだ状態での係合面158の向きとは反対方向を向いている。
<第4の実施の形態の作用、効果>
以上の構成の本実施の形態では、フロントフェンダパネル12がエプロンアッパメンバ16に締結固定されるに際して長孔162の内側に係合部152が位置するようにカラー70が長孔162に嵌め込まれる。ここで、干渉面166は長孔162の開口径方向内方側への向きに対して、長孔162の貫通方向下方へ傾斜した斜面となっており、係合部152が長孔162の内側に入り込んだ状態では、略円錐台形とされた係合部本体156の外周面である係合面158の一部が干渉面166の傾斜方向とは反対向きに干渉面166の一部と対向している。
このため、カラー70が取付部48に対して上方へ変位しようとすると、長孔162の干渉面166に係合部152の係合面158が干渉される。これにより、取付部48に対するカラー70の上方変位が規制される。また、取付部48に対するカラー70の下方への変位は前記第1の実施の形態と同様に規制される。すなわち、本実施の形態では、長孔162にカラー70を嵌め込んだ状態では、長孔162の貫通方向に沿った取付部48に対するカラー70の相対変位が規制されるので、長孔162からの環状突出部124の抜け、すなわち、長孔162にカラー70を嵌め込んだ後の長孔162からのカラー70の脱落を防止又は抑制できる。
このため、長孔162からカラー70が外れないように注意しながらフロントフェンダパネル12を移動させたり、長孔162からカラー70が脱落しないようにカラー70を抑えながらフロントフェンダパネル12をエプロンアッパメンバ16に組み付けたりしなくてもよい。これにより、エプロンアッパメンバ16に対してフロントフェンダパネル12を組み付ける際の作業性が向上する。
また、本実施の形態では、係合部152の軸方向寸法が外側縦壁部42の厚さ寸法以下とされているため、カラー70を長孔162に嵌め込んだ状態でも円筒部154が長孔162の下側の開口端から突出しない。このため、ボルト34及びナット40でフロントフェンダパネル12をエプロンアッパメンバ16に締結すると、線状突起92にフランジ部82が圧接する。このため、フロントフェンダパネル12をエプロンアッパメンバ16に強固に固定できる。
<第5の実施の形態の構成>
図12には、本発明の第5の実施の形態に係るフェンダパネル取付構造を適用して合成樹脂材の成形品であるフェンダパネルとしてのフロントフェンダパネル12を組み付けた車両14の要部の構成の拡大斜視図が示されている。また、図13には、本発明の第2の実施の形態に係るフェンダパネル取付構造を適用してフロントフェンダパネル12を組み付けた車両14の要部の構成の拡大正面断面図が示されている。
これらの図に示されるように、本実施の形態では、カラー70のカラー本体122から環状突出部124が延出されておらず、代わりに係合部として第2規制手段を構成する環状突出部174が形成されている。環状突出部174は、カラー本体122の外周部から延出されているという点では環状突出部124と同じであるが、環状突出部124とは異なり環状突出部174は厚さが変化しない円環状の平板とされ、この環状突出部174の上面(フランジ部82側の面)が係合面176とされている。
一方、本実施の形態では長孔60の軸方向中間部に環状溝182が形成されている。環状溝182は長孔60の開口径方向内方側へ向けて開口した溝で、長孔60の内周面からの環状溝182の深さはカラー本体122の外周面からの環状突出部174の延出寸法以上とされており、長孔60にカラー本体122が入り込んだ状態で環状突出部174が環状溝182に入り込むことができる。環状溝182の内壁面のうち、環状溝182に環状突出部174が入り込んだ状態で係合面176と対向する面が干渉部としての干渉面184とされている。
<第5の実施の形態の作用、効果>
以上の構成の本実施の形態では、長孔60にカラー本体122が入り込んだ状態で環状溝182に環状突出部174が入り込む。この状態では、カラー本体122の軸方向に環状突出部174の係合面176と環状溝182の干渉面184とが対向し、カラー70が取付部48に対して上方へ変位しようとすると、環状突出部174の係合面176が環状溝182の干渉面184に干渉される。これにより、取付部48に対するカラー70の上方変位が規制される。また、取付部48に対するカラー70の下方への変位は前記第1の実施の形態と同様に規制される。すなわち、本実施の形態では、長孔60にカラー70を嵌め込んだ状態では、長孔60の貫通方向に沿った取付部48に対するカラー70の相対変位が規制されるので、長孔60からの環状突出部124の抜け、すなわち、長孔60にカラー70を嵌め込んだ後の長孔60からのカラー70の脱落を防止又は抑制できる。
このため、長孔60からカラー70が外れないように注意しながらフロントフェンダパネル12を移動させたり、長孔60からカラー70が脱落しないようにカラー70を抑えながらフロントフェンダパネル12をエプロンアッパメンバ16に組み付けたりしなくてもよい。これにより、エプロンアッパメンバ16に対してフロントフェンダパネル12を組み付ける際の作業性が向上する。