以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
図1は本実施形態にかかる収納庫を備えるキッチンを示す図である。キッチン100は一枚の天板110(ワークトップ)の下に複数の収納庫(キャビネット)を備えた、いわゆるシステムキッチンである。天板110は合成樹脂(人工大理石)やステンレスなどからなり、キッチン100の全体の上面を覆っている。
天板110には、組み込み式に取り付けられたコンロ112、調理スペース114、天板110に一体形成されたシンク116が設けられる。シンク116とコンロ112の間に位置する調理スペース114は平坦なテーブル面であり、主に調理を行うのに利用される。
天板110の下は、コンロ112本体が設置されているコンロキャビネット120と、調理スペース114に対応したベースキャビネット130と、シンク116が設置されているシンクキャビネット140といった各収納庫で構成される。各収納庫は収納スペースとして機能し、収納庫内の空きスペースには、コンロ112への配線や、シンク116および水栓への給排水管なども収容されている。このように、天板110の下では、天板110の上のシンク116やコンロ112といった各構成に対応した収納庫がその高さおよび奥行きを等しくして複数設けられている。
各収納庫は、被収納物を収納するために、様々な大きさの引出をスライド自在に設けている。例えばコンロキャビネット120は、上部にコンロ112のグリル112aおよび操作パネル112bを備え、その脇には調味料などの小物を収納するための小さな引出であるスパイスボックス122が配設されている。コンロキャビネット120の中央部、すなわちグリル112aの下には幅の広い大きな引出124が配設され、鍋やボウルなどの比較的大きな調理器具を収納することが可能になっている。またコンロキャビネット120の下部の床近傍には、引出式の足元収納庫126が配設されている。
同様に、ベースキャビネット130には複数の比較的小さな引出132、134および足元収納庫136が備え付けられている。シンクキャビネット140には足元収納庫146、およびかかる足元収納庫146から天板110に到る高い前板を備えた引出144が備え付けられている。
次に、本実施形態の特徴である収納庫について説明する。上記したコンロキャビネット120、ベースキャビネット130、シンクキャビネット140のうち、ベースキャビネット130を例にとって説明する。
図2は引出134の分解斜視図、図3は引出134をベースキャビネット130に取り付けた状態を示す図である。上述したように、ベースキャビネット130には上段の引出132、中段の引出134、下段の足元収納庫136がスライド自在に収容される。なお、引出132、134、136そのものを出し入れするためのレール機構は一般的なものでよいため、その説明を省略する。図2に示すように、引出134は、前板134aと、側板134bと、背板134cと、底板134dとから構成される。
中段の引出134には、その内部に更に被収納物を載置可能な載置部材150を配置されており、載置部材150は、後述する昇降機構によって上下移動可能となっている。図4は載置部材150を説明する図である。図4に示すように、本実施形態において載置部材150は、天面が開放された箱状であって、いわゆるポケット形状を成している。
また載置部材150の上縁の一辺には鈎状の嵌合部152が形成されており、かかる嵌合部152を後述する前側上下部材170の梁176に吊下する(図3参照)ことによって載置部材150が梁176(前側上下部材170)に対して着脱可能に構成されている。これにより、載置部材150が交換可能となるため、形状や容積、取り付ける個数などを選択することができる。また載置部材150を取り外せることから、清掃も容易となる。
更に、載置部材150は、仕切り154および仕切り溝156を有する。これにより、仕切り溝156に仕切り154を挿入し、載置部材150内の収納空間を分割することができる。したがって、載置部材150内に載置した被収納物の整理整頓が可能となる。特に、仕切り154および仕切り溝156を複数設けることによって、載置部材150内の空間を複数に分割し、分割された空間の大きさを所望の大きさに調節することができ、利便性が向上する。
なお、本実施形態においては、仕切り154の数を1つ、仕切り溝156の数を3つとしたが、これに限定するものではない。仕切り154および仕切り溝156の数は各々1つ以上であればよく、好ましくは、仕切り溝156の数は仕切り154の数より多いとよい。
図2に示すように、昇降機構は、引出134内に設けられる前側柱部材160、前側上下部材170、後側柱部材180、後側上下部材190、およびワイヤ200と、ベースキャビネット130内の壁板130aに設けられる案内部材210とから構成される。これらの部材の各要素は引出134の左右方向に対称に構成されており、後述する梁176を除いて左右両側にそれぞれ2つ(鏡面対称に)配置されている。以下、昇降機構を構成する部材について詳述し、次に、昇降機構を用いた載置部材150の昇降について詳述する。
前側柱部材160は、引出134の前側に配置され、後述する前側上下部材170を上下方向に案内する部材である。図5は前側柱部材160の詳細を示す斜視図である。図5(a)は、前側柱部材160を引出134の内側から見た斜視図であり、図5(b)は、前側柱部材160を上方から見た図である。図5に示すように、前側柱部材160は、前側固定部162と、上下レール164と、L字部168とを有する。
前側固定部162は、上下レール164およびL字部168が接続され、引出134の側板134bに固定される(図3参照)。
上下レール164は、前側固定部162に上下方向に延設され、後述する前側上下部材170に設けられる上下ローラ174を上下方向に案内する。図5(b)に示すように、上下レール164は、断面が略T字状である。そして、T字を形成する突出部164aを後述する複数の上下ローラ174によって挟むことで、上下レール164は上下ローラ174を上下方向に案内可能となる。なお、上下レール164と上下ローラ174の組み合わせについては後に詳述する。
L字部168は、後述するワイヤ200のアウターワイヤ204の一端を前側固定部162に固定する部材である。アウターワイヤ204の内部には、インナーワイヤ202が摺動自在に挿通されている。
なお、本実施形態においては、前側柱部材160を構成する前側固定部162、上下レール164およびL字部168を各々別部材としたが、これに限定するものではなく、これらの部材のうち2つまたはすべてを一体に成型してもよい。
前側上下部材170は、載置部材150と連結され、前側柱部材160に沿って上下方向に移動する部材である。これにより、かかる前側上下部材170を介して載置部材150を上下方向に移動させることが可能となる。
図6は前側上下部材170の詳細を示す斜視図であり、図6(a)は前側上下部材170を引出134の外側から見た斜視図、図6(b)は前側上下部材170を引出134の内側から見た斜視図である。図6(c)は図6(a)に示す上下ローラ174aの断面図、図6(d)は図6(a)に示す上下ローラ174bの断面図である。図6に示すように、前側上下部材170は、前側連結部172と、上下ローラ174と、梁176とを有する。
前側連結部172は、上下ローラ174、梁176およびインナーワイヤ202を連結する部材である。図6(a)に示すように、前側連結部172は、前側柱部材160と対向する面に上下ローラ174を接続される。これにより、前側上下部材170が円滑に上下移動することが可能となる。なお、上下ローラ174の詳細については後述する。
また前側連結部172は、後述する梁176を接続される梁接続部172aを有する(図6(b)参照)。これにより、引出134の両側に設けられた2つの前側連結部172の梁接続部172aに梁176の端部を接続することで、前側連結部172と梁176とを連結し、載置部材150を収容する枠体を形成することができる(図2参照)。
インナーワイヤ202は、前側連結部172のインナー接続部172bに接続される。172bは、前側連結部172に対して位置調整可能になっており、インナーワイヤ202の長さを調整することができる。
なお、本実施形態においては、前側連結部172、梁接続部172aおよびインナー接続部172bを各々個別の板状部材としたが、これに限定するものではなく、これらを一体に成型してもよい。
上下ローラ174は、前側連結部172に接続される回転可能なローラである。これにより、上下ローラ174が上下レール164上を回転しながら移動し、前側上下部材170を上下方向に円滑に移動させることが可能となる。また前側上下部材170が上下ローラ174を有することで、前側上下部材170と前側柱部材160との摩擦が低減されるため、これらの部材の損耗を防ぐことが可能となる。
上下ローラ174は、前側連結部172の上方に配置される2つの上下ローラ174a、および前側連結部172の下方に配置される2つの上下ローラ174bの計4つのローラから構成される。
図6(c)に示すように、上下ローラ174aは、外周にフランジ174cを有するローラである。これにより、上下レール164の突出部164aと上下ローラ174aのフランジ174cとが組み合わさるため、上下レール164からの上下ローラ174aの脱離(脱輪)を防ぐことができ、載置部材150、ひいてはこれに収納される被収納物を確実に上昇させることが可能となる。
また図6(d)に示すように、上下ローラ174bは、フランジ174cを有さないローラとしている。これは、仮に、前側連結部172の配置されるすべての上下ローラ174がフランジ174cを有すると、上下ローラ174の遊びが極度に抑制されてしまうからである。したがって、本実施形態のように、前側連結部172の下方に配置される上下ローラ174bにフランジ174cを設けないことで、適度な遊びを許容し、上下レール164の突出部164aとフランジ174cが噛んでしまって動きにくくなることを防止することができる。
なお、本実施形態においては、前側連結部172の上方にフランジ174cを有する上下ローラ174aを、下方にフランジ174cを有さない上下ローラ174bを設けたが、これに限定するものではなく、これらの上下ローラ174を上下逆の位置に配置してもよい。また上記説明したように、前側連結部172の上方に配置される上下ローラ174または下方に配置される上下ローラ174のいずれかにフランジ174cを設けることが好ましいが、すべての上下ローラ174にフランジ174cを設けることを妨げるものではない。
更に、本実施形態では、前側連結部172の上方に2つの(1対の)上下ローラ174aを、下方に2つの(1対の)上下ローラ174bを、すなわち計4つ(2対)の上下ローラ174を設けたが、かかる数に限定するものではなく、上下ローラ174は1対だけ設けられてもよいし、3対以上設けられてもよい。ただし、上下ローラ174を1対のみ設けるのであれば、かかる上下ローラ174はフランジ174cを有するローラとし、3対以上設けるのであれば、少なくとも1対の上下ローラ174をフランジ174cを有するローラとすることが好ましい。
梁176は、載置部材150の嵌合部152が吊下されることでかかる載置部材150を支持する。そして、梁176の端部が前側連結部172の梁接続部172aに接続(連結)されることで、梁176は前側上下部材170と一体に動作する。これにより、梁176に吊下された載置部材150が前側上下部材170と連動して上下に移動する(上昇または下降する)ことが可能となる。
図7は、前側柱部材160と前側上下部材170との取付を説明する図である。なお、図7では理解を容易にするために前側固定部162(前側柱部材160)を破線で示す。前側柱部材160と前側上下部材170を取り付ける際には、まず、前側連結部172(前側上下部材170)の梁接続部172aに梁176を接続し、インナー接続部172bにインナーワイヤ202を接続し、これらの部材を連結する(図6参照)。これと並行して、前側柱部材160を引出134の側板134bに設置し、L字部168にアウターワイヤ204を固定(接続)する(図2および図5参照)。
そして、各部材が連結された前側上下部材170を、上下ローラ174aのフランジ174cが上下レール164の突出部164aと組み合わさるように、前側柱部材160に上方から取り付ける。これにより図7に示す状態となり、前側柱部材160を介して前側上下部材170が引出134に取り付けられ、且つ上下ローラ174が上下レール164上を移動可能となる。
図8は、後側柱部材180と後側上下部材190の詳細を示す図である。図8(a)は、後側上下部材190と、これを取り付けられる前の後側柱部材180を、図8(b)は、後側上下部材190を取り付けられた後側柱部材180を、図8(c)は、図8(b)の上面を示している。
後側柱部材180は、引出134の後側に配置され、後述する後側上下部材190を上下方向に案内する部材である。かかる後側柱部材180は、後側固定部182と、上下レール184と、バネ186とを有する。
後側固定部182は後側柱部材180の基体であって、上下レール184やバネ186、その他の部材が取り付けられている。後側固定部182は、引出134の背板134cに固定される(図3参照)。これにより、引出134が引き出されると、後側固定部182、ひいてはこれに接続された上下レール184およびバネ186(後側柱部材180)が引出134と同じ方向に移動することが可能となる。
また後側固定部182は、バネ186の一端を係合されるバネ係合部182aを備える。これにより、バネ係合部182aにバネ186を係合し、バネ186の他端を係合された後側上下部材190を上方に付勢することが可能となる。
後側固定部182は更に、後述するワイヤ200のアウターワイヤ204を固定するアウター固定部182bを有する。これにより、アウターワイヤ204の先端が位置決めされるため、ワイヤ200の経路長を一定に保つことができる。
なお、本実施形態においては、バネ係合部182aとアウター固定部182bを後側固定部182と一体に成型したが、これに限定するものではなく、後側固定部182、バネ係合部182aおよびアウター固定部182bを各々別部材としてもよいし、これらの部材のうち、2つを一体に成型してもよい。
上下レール184は、後側固定部182に上下方向に延設され、後述する後側上下部材190に設けられる上下ローラ194を上下方向に案内する。図8(c)に示すように、上下レール184は、断面が略C字状である。そして、図8(b)に示すように、C字により形成される空間に後述する上下ローラ194を嵌入されることで、上下レール184は上下ローラ194を上下方向に案内可能となる。
なお、本実施形態においては、後側固定部182と上下レール184を各々別部材としたが、これに限定するものではなく、これらを一体に成型してもよい。
バネ186は、本実施形態においては引張りバネであり、その一端が後側柱部材180のバネ係合部182aに、他端が後述する後側上下部材190のバネ係合部192aに係合され、かかる後側上下部材190を上方に付勢する。これにより、後側上下部材190、およびワイヤ200(インナーワイヤ202)を介して後側上下部材190と接続されている前側上下部材170、ひいては前側上下部材170に連結されている載置部材150も同様に上方に付勢されることとなる。したがって、載置部材150を上昇させるために必要とする力、すなわち引出134を引き出すための力を軽減することができ、引出134を引き出す動作が容易になる。
後側上下部材190は、後側柱部材180に沿って上下方向に移動する部材である。これにより、かかる後側上下部材190に接続されたインナーワイヤ202を牽引し、インナーワイヤ202の反対側に接続された前側上下部材170、ひいては前側上下部材170に連結(支持)される載置部材150を上昇させることが可能となる。後側上下部材190は、後側連結部192と、上下ローラ194と、プーリ196とを有する。
後側連結部192は、上下ローラ194、プーリ196および後述するインナーワイヤ202を連結する部材である。図8(a)に示すように、後側連結部192は、後側柱部材180と対向する面に上下ローラ194を接続される。これにより、後側上下部材190が円滑に上下移動することが可能となる。なお、上下ローラ194の詳細については後述する。
また後側連結部192は、バネ186の一端を係合(接続)されるバネ係合部192aを有する。これにより、バネ係合部192aにバネ186を係合し、当該後側上下部材190を上方に付勢することが可能となる。
図8(b)に示すように、後側連結部192は更に、後述するワイヤ200のインナーワイヤ202が接続されるインナー接続部192bを有する。これにより、後側連結部192のインナー接続部192bにインナーワイヤ202を接続することで、後側連結部192(後側上下部材190)とインナーワイヤ202とが連結され、後側上下部材190がインナーワイヤ202を牽引することが可能となる。
なお、本実施形態においては、バネ係合部192aとインナー接続部192bを後側連結部192と一体に成型したが、これに限定するものではなく、後側連結部192、バネ係合部192aおよびインナー接続部192bを各々別部材としてもよいし、これらの部材のうち、2つを一体に成型してもよい。
上下ローラ194は、後側連結部192に接続される回転可能なローラである。これにより、引出134が引き出された際に上下ローラ194が上下レール184上(上下レール184のC字内)を回転しながら移動し、後側上下部材190を上下方向に円滑に移動させることが可能となる。また後側上下部材190が上下ローラ194を有することで、後側上下部材190と後側柱部材180との摩擦が低減され、これらの部材の損耗を防ぐことが可能となる。
本実施形態では、上下ローラ194は、後側連結部192の上方および下方に1つずつ、計2つ設けられているが、かかる例に限定するものではなく、上下ローラ194は後側連結部192に1つ以上もうけられればよい。
プーリ196は、後側連結部192の引出134の壁板130aと当接する面に設けられ、引出134の移動に伴って後述する案内部材210のレール溝212上を移動する。これにより、引出134をベースキャビネット130から引き出した際に、プーリ196がレール溝212の形状に沿って上方に移動し、後側上下部材190がインナーワイヤ202(ワイヤ200)を牽引することが可能となる。なお、レール溝212上でのプーリ196の移動については後述する。
ワイヤ200は、引出134が引き出された際に前側上下部材170を上方に牽引する部材である。図9は、ワイヤ200の詳細を示す図である。図9に示すように、ワイヤ200は、インナーワイヤ202(ワイヤ)と、アウターワイヤ204とから構成される。
インナーワイヤ202(ワイヤ)は、末端に接続端部202aを有し、一方の接続端部202aが前側上下部材170のインナー接続部172bに、他方の接続端部202aが後側上下部材190のインナー接続部192bに各々上方から接続される。これにより、後側上下部材190が上昇すると前側上下部材170を上方に牽引することが可能となる。したがって、前側上下部材170に連結された載置部材150、ひいては載置部材150に収納された被収納物を上昇させることができる。
アウターワイヤ204は、中空のワイヤであり、インナーワイヤ202を内部に挿通される。そして、アウターワイヤ204の一端は前側柱部材160のL字部168に、他端は後側柱部材180のアウター固定部182bに固定(接続)される。これにより、前側上下部材170および後側上下部材190を接続するインナーワイヤ202(ワイヤ)の経路長が変化しないため、インナーワイヤ202の弛み等の発生を防ぎ、前側上下部材170を後側上下部材190に確実に連動させることができる。またインナーワイヤ202がアウターワイヤ204に挿通されていることで、インナーワイヤ202を保護することが可能となる。
本実施形態において、ワイヤ200は、引出134の側板134b内を通って前側上下部材170から後側上下部材190に至るように配置されている(図3参照)。これにより、ワイヤ200が引出134内に配置されないため、引出134内の空間の有効活用を図ることが可能となる。また引出134内に収納された被収納物とワイヤ200とが接触することがないため、ワイヤ200の損傷を防ぐことが可能となる。
図10は、ワイヤ200による前側上下部材170と後側上下部材190の連動を説明する図である。なお、図10は、引出134の前板134aを正面としたときに、左側に配置されている各部材を引出134の内側から見た状態を示している。このため、上下ローラ174は前側上下部材170の背後に、上下ローラ194は後側上下部材190の背後に位置することとなるため、図面上示されていない。
図10(a)に示すように、後側上下部材190が、後側柱部材180上で最下部に位置するとき、かかる後側上下部材190とインナーワイヤ202(ワイヤ200)を介して接続される前側上下部材170も前側柱部材160上で最下部に位置する。なお前側上下部材170は、重力によって下降している。
そして、後述する案内部材210のレール溝212上を後側上下部材190のプーリ196が移動すると、後側上下部材190が上昇し、図10(a)に示す状態から図10(b)に示す状態となる。詳細には、プーリ196がレール溝212上を移動することにより、同じく後側上下部材190に設けられた上下ローラ194が上下レール184上を上方に移動する(図8(b)参照)。すると、後側上下部材190に接続されたインナーワイヤ202が引っ張られ、インナーワイヤ202の反対側に接続された前側上下部材170が牽引されて上昇し、前側上下部材170の上下ローラ174が上下レール164上を上方に移動する(図7参照)。
その後、案内部材210のレール溝212上をプーリ196が更に移動すると、図10(b)に示す状態から図10(c)に示す状態となる。すなわち、後側上下部材190の上下ローラ194が上下レール184上を更に上方に移動してインナーワイヤ202が更に引っ張られる。そして、前側上下部材170がインナーワイヤ202に更に牽引され、上下ローラ174が上下レール164上を更に上方に移動する。したがって、後側上下部材190が上昇することで、インナーワイヤ202を介して前側上下部材170が上昇し、前側上下部材170の梁176に支持された載置部材150(図3参照)を上昇させることが可能となる。
なお、本実施形態においては、前側柱部材160に設けられる上下レール164をT字形状のレール、後側柱部材180に設けられる上下レール184をC字形状のレールとしたがこれに限定するものではなく、上下レール164をC字形状のレール、上下レール184をT字形状のレールとしてもよい。また上下レール164および184の両方を、C字形状のレールまたはT字形状のレールで構成してもよい。このとき、上下ローラ174および194を上下レール164および184の形状に対応させて変更することは言うまでもない。
案内部材210は、ベースキャビネット130(収納庫)内の壁板に配置され、プーリ196を案内する。図11は案内部材210の詳細を示す図である。図11に示すように、案内部材210は、板状の基部に形成された溝であるレール溝212を有する。
レール溝212は、その中央部には、ベースキャビネット130の後側から前側に向かって上昇する傾斜部212bを有している。傾斜部212bより前側には、略水平にプーリ196を案内する前側水平部212cを有している。傾斜部212bより奥側には、略水平にプーリ196を案内する奥側水平部212aを有している。
上記構成により、引出134を引き出すと、後側上下部材190に設けられたプーリ196は、レール溝212(案内部材210)上を奥側水平部212aの形状に沿って引出134の奥側から手前側に移動することとなる。そして、プーリ196が傾斜部212bに到達すると、プーリ196は傾斜部212bの形状(傾斜)に沿って移動しながら上昇するため、後側上下部材190も水平方向に移動し且つ上方にも移動することとなる。これに伴い、インナーワイヤ202を介して後側上下部材190に連結された前側上下部材170がかかるインナーワイヤ202に牽引されて上方に移動し(上昇し)、前側上下部材170の梁176に支持(連結)された載置部材150が上昇する。したがって、案内部材210とプーリと各上下部材(前側上下部材170および後側上下部材190)を用いた簡易な機構で、引出134の内部に配置された載置部材150を昇降させることが可能となる。
なお、本実施形態において奥側水平部212a、傾斜部212b、前側水平部212cは概ね直線であり、その交点(屈曲点)はアールが付けられている。このとき、アールの曲率半径は、プーリ196の半径よりも大きい(曲がりが緩やかである)ことが好ましい。ただし、更に傾斜部212bをS字を描くような滑らかな曲線としたり、奥側水平部212aや前側水平部212cも傾斜、屈曲、ないしは湾曲させたりすることを除外するものではない。
次に、上記構成のベースキャビネット130における、昇降機構による載置部材150の動作について説明する。図12は、引出134を引き出す際の昇降機構による載置部材150の動作を説明する図である。なお上記構成において前側上下部材170およびその周辺の部材はほとんど外観から観察できないが、図12では説明の便宜上、前側固定部162を二点鎖線で示し、前側上下部材およびその周辺の部材を描いている。
図12(a)は引出134がベースキャビネット130に収容されている状態を示している。このとき、後側上下部材190はバネ186によって上方向に付勢されているが、プーリ196がレール溝212(案内部材210)の奥側水平部212aにあるため、高さ方向の位置が規制される。したがって、後側上下部材190、これに連結された前側上下部材170、および前側上下部材170の梁176に支持された載置部材150は最も下降した状態(最下部)にある。
図12(b)は引出134を引き出した状態を示している。このとき、プーリ196は傾斜部212bにあるため、引出134を引き出すと後側上下部材190が上昇し、インナーワイヤ202が引っ張られる。すると、インナーワイヤ202の他端に接続された前側上下部材170がインナーワイヤ202に牽引されて上昇し、梁176(前側上下部材170)に支持された載置部材150も上昇する。すなわち、引出134を引き出す力が、載置部材150を上昇させる力に変換される。このとき、バネ186により後側上下部材190が上方に付勢されるため、引出134を引き出すために要する力を低減することができる。
図12(c)は引出134を概ね引き出した状態を示している。このときプーリ196は前側水平部212cにある。これにより、引出134を引き出した状態において載置部材150の重量を前側水平部212cが支持することとなり、引出134がベースキャビネット130内へ戻ってしまうことを防止できる。このとき、後側柱部材180に対する後側上下部材190の移動限界またはバネ186の縮小限界により、前側上下部材170の高さは上限に到る。
引出134をベースキャビネット130に収納する場合は、上記の逆の動作となる。引出134を引き出された状態(図12(c)参照)から押し込むと、図12(b)に示すようにプーリ196が傾斜部にさしかかる。すると、プーリ196が傾斜部212bに案内されて下降するため、インナーワイヤ202は前側上下部材170に向かって繰り出される状態となる。したがって前側上下部材170は、インナーワイヤ202による押し下げと、重力とによって、前側固定部162に沿って下降する。これにより、単に引出134を押し込む操作によって、前側上下部材170ひいては載置部材150が下降する。
上記説明した如く、本実施形態にかかる収納庫(ベースキャビネット130)によれば、引出134を引き出すと、後側上下部材190が案内部材210の傾斜部212bに案内されて上昇する。そして、後側上下部材190が上昇すると、前側上下部材170がインナーワイヤに牽引されて上昇し、かかる前側上下部材170に連結された載置部材150が上方に移動する。したがって、案内部材210とワイヤ200と各上下部材を用いた簡易な機構で、引出134の内部に配置された載置部材150、ひいては載置部材150に収納した被収納物を上昇させて取り出しやすくすることができる。これにより、被収納物を屈まずに取り出せるため、低い位置にある引出134の使い勝手を向上させることができる。また、引出134を出し入れする操作に伴って載置部材150が昇降するため、操作が簡潔且つ容易である。
なお、上記実施形態においてはベースキャビネット130の引出134について説明したが、他の引出132や足元収納庫136に載置部材150を設けてもよく、また他の収納庫であるコンロキャビネット120やシンクキャビネット140の引出に載置部材150を設けてもよい。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。