JP2010265446A - 蛍光体材料及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】蛍光体の励起源として、希ガス放電により放射される波長172nmの励起源の照射により、近紫外線領域に強い発光を示す蛍光体材料を提供すること。
【解決手段】内部が酸化マグネシウム粒子1の凝集体であり、その凝集体の周りに、蛍光体材料に係る酸化ガドリニウムを含有する酸化マグネシウム複合酸化物粒子2であることを特徴とする蛍光体材料であり凝集体3を形成している。前記マグネシウム複合酸化物粒子中のMg元素に対するGd元素のモル比((Gd元素/Mg元素)×100)は、原子換算で、0.0001〜10mol%であることが好ましい。
【選択図】図1

Description

本発明は、真空紫外線を励起源として発光する酸化マグネシウムを母材とする蛍光体材料及びその製造方法に関するものである。
近年、希ガス放電により放射される短波長の真空紫外線を、蛍光体の励起源とする発光装置が開発されている。このような発光装置では、真空紫外線を励起源として発光する真空紫外線励起蛍光体が用いられている。真空紫外線励起の発光装置を利用した表示装置としては、プラズマディスプレイパネル(PDP)が知られている。
また、真空紫外線で蛍光体を励起して発光を得る装置としては、キセノンなどの希ガスによる放電発光を利用した希ガス放電ランプも知られている。キセノン放電ランプなどの希ガス放電ランプは、従来の水銀(Hg)放電ランプに代えて、車載用液晶ディスプレイのバックライトを初めとする、安全性などが求められる用途に用いられるようになってきた。
真空紫外線励起タイプの発光装置は、蛍光体の励起源として、従来の電子線や水銀からの紫外線に代えて、希ガス放電により放射される波長147nm、172nmなどの真空紫外線を用いることにある。
PDP用の真空励起タイプの蛍光体としては、例えば、真空紫外線で励起し、近紫外線領域に発光ピークを有するカソード・ルミネセンスを行う特性を有するMgO系蛍光体を用いることも提案されている(例えば、特許文献1参照。)
また、特許文献2には、酸化マグネシウムとEu、更にはGd等の賦活元素源とを混合し、該混合物を1300℃程度の温度で加熱処理して得られる蛍光体材料が提案されている。
特開2008−166039号公報(特許請求の範囲) 特開平8−199164号公報(特許請求の範囲)
前記特許文献1及び特許文献2の蛍光体材料では、蛍光体の励起源として、希ガス放電により放射される波長172nmの励起源の照射により、近紫外線領域で発光が見られるものの、その強度は、低いものであった。
従って、本発明の目的は、蛍光体の励起源として、特に希ガス放電により放射される波長172nmの励起源の照射により、近紫外線領域に強い発光を示す蛍光体材料を提供することにある。
本発明者らは、かかる課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、熱分解により酸化マグネシウムに転換される酸化マグネシウム前駆体粒子の表面を、賦活剤元素となる酸化ガドリニウムの前駆体で被覆処理し、次いで、得られた被覆処理物を加熱処理して熱分解させることにより、酸化ガドリニウムを含有する酸化マグネシウム複合酸化物粒子が得られ、該酸化マグネシウム複合酸化物は、励起源として、希ガス放電により放射される波長172nmを用いたときに、特定の近紫外線領域に強い発光ピークを有することを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明(1)は、酸化ガドリニウムを含有する酸化マグネシウム複合酸化物粒子であることを特徴とする蛍光体材料を提供するものである。
また、本発明(2)は、熱分解により酸化マグネシウム粒子に転換される酸化マグネシウム前駆体粒子の表面が、熱分解により酸化ガドリニウムに転換される酸化ガドリニウム前駆体で被覆されている被覆処理物を、加熱処理して熱分解させることにより、酸化ガドリニウムを含有する酸化マグネシウム複合酸化物粒子を得る加熱処理工程を行い得られたものであることを特徴とする蛍光体材料を提供するものである。
また、本発明(3)は、熱分解により酸化マグネシウム粒子に転換される酸化マグネシウム前駆体粒子が、分散媒に分散されている水性スラリーに、Gd元素源を添加し、次いで、該Gd元素源を加水分解することにより、Gd元素源の加水分解物を該酸化マグネシウム前駆体粒子の表面に析出させて、被覆処理物を得る被覆処理工程と、
該被覆処理物を加熱処理して熱分解させることにより、酸化ガドリニウムを含有する酸化マグネシウム複合酸化物粒子を得る加熱処理工程と、を有することを特徴とする蛍光体材料の製造方法を提供するものである。
本発明によれば、蛍光体の励起源として、希ガス放電により放射される波長172nmの励起源の照射により、近紫外線領域に強い発光を示す蛍光体材料を提供することができる。
凝集体(B)の模式的な断面図である。 酸化マグネシウム前駆体粒子が凝集した凝集体(C)の模式的な断面図である。 参考例1で得られた蛍光体材料のX線回折図である。 参考例2で得られた蛍光体材料のX線回折図である。 実施例3で得られた蛍光体材料のSEM写真(倍率10,000)である。 実施例3で得られた蛍光体材料のSEM写真(倍率100,000)である。 比較例1で得られた蛍光体材料のSEM写真(倍率10,000)である。 比較例1で得られた蛍光体材料のSEM写真(倍率100,000)である。 実施例1〜8及び比較例1、2で得られた蛍光体材料の蛍光スペクトル図である。 実施例3で得られた蛍光体材料の蛍光スペクトルの三次元図である。
本発明の蛍光体材料は、先ず、酸化マグネシウム前駆体粒子を分散媒に分散させて水性スラリーを調製し、この水性スラリーにGd元素源を添加し、次いで、Gd元素源を加水分解する。このことにより、酸化マグネシウム前駆体粒子の表面に、Gd元素源の加水分解物が付着して、酸化マグネシウム前駆体粒子の表面が、Gd元素源の加水分解物で被覆された被覆処理物が得られる。
次いで、得られた被覆処理物を加熱処理して熱分解させることにより、酸化マグネシウム前駆体粒子は、酸化マグネシウム粒子に変換されると共に、Gd元素源の加水分解物は、反応性に優れた酸化ガドリニウムの微粒子に変換され、更に加熱処理を続けることにより、酸化ガドリニウムを含有する酸化マグネシウム複合酸化物粒子が得られる。この酸化ガドリニウムを含有する酸化マグネシウム複合酸化物粒子は、酸化ガドリニウムと酸化マグネシウムからなる複合酸化物であり、酸化マグネシウムにガドリニウム元素がドープされた複合酸化物である。
このように、本発明の蛍光体材料は、母材となる酸化マグネシウム粒子に、賦活剤である酸化ガドリニウムを含有させた複合酸化物粒子である。従来の特開平8−199164号公報の方法で得られる蛍光体材料は、単に酸化マグネシウム粉末と、酸化ガドニウム粉末とを均一に混合し、該混合物を1300℃で加熱して蛍光体材料を製造しているが、特開平8−199164号公報で得られるものは、酸化マグネシウム粉末と酸化ガドニウム粉末との単純混合物であって、本発明にかかる複合酸化物とは、区別される。
本発明の蛍光体材料は、蛍光体の励起源として、希ガス放電により放射される波長172nmの励起源の照射により、近紫外線領域の310〜320nmに極大の発光ピークを有する。なお、本発明において、「310〜320nmに極大の発光ピークを有する。」とは、発光分析をして得られる発光スペクトルにおいて、310〜320nmにピークトップを持つ発光ピークが観察されることをいう。
本発明の蛍光体材料に係る酸化マグネシウム複合酸化物粒子中、Mg元素に対するGd元素のモル比((Gd元素/Mg元素)×100)は、原子換算で、好ましくは0.0001〜10mol%、特に好ましくは0.01〜1mol%である。酸化マグネシウム複合酸化物粒子中のMg元素に対するGd元素のモル比が、上記範囲内にあることにより、蛍光体の励起源として、希ガス放電により放射される波長172nmの励起源の照射により、近紫外線領域の310〜320nmで発光強度が高くなる。
本発明の蛍光体材料に係る酸化マグネシウム複合酸化物粒子が、酸化ガドリニウムを含有することに加えて、更に、Ca、Sr及びBaから選ばれる1種以上の元素(M元素)の酸化物を含有することが、蛍光体の励起源として、希ガス放電により放射される波長172nmの励起源の照射により、近紫外線領域の310〜320nmで発光強度が高くなる点で好ましい。つまり、酸化マグネシウム複合酸化物粒子が、ガドリニウムに加えて、更に、M元素がドープされていることが、蛍光体の励起源として、希ガス放電により放射される波長172nmの励起源の照射により、近紫外線領域の310〜320nmで発光強度が高くなる点で好ましい。そして、酸化マグネシウム粒子が、M元素の酸化物を含有する場合、酸化マグネシウム複合酸化物粒子中のM元素とMg元素の合計に対するM元素のモル比({M元素/(M元素+Mg元素)}×100)は、原子換算で、0.01〜100mol%以下であることが好ましく、0.1〜10mol%であることが特に好ましい。なお、M元素が2以上の場合は、上記M元素のモル比は、それらの合計である。
本発明の蛍光体材料に係る酸化マグネシウム粒子は、酸化ガドリニウムを含有することに加えて、更に、Zr、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er及びYbから選ばれる1種以上の元素(M元素)の酸化物を含有することが、蛍光体の励起源として、希ガス放電により放射される波長172nmの励起源の照射により、近紫外線領域の310〜320nmで発光強度が高くなる点で好ましい。つまり、酸化マグネシウム複合酸化物粒子が、ガドリニウムに加えて、更に、M元素がドープされていることが、蛍光体の励起源として、希ガス放電により放射される波長172nmの励起源の照射により、近紫外線領域の310〜320nmで発光強度が高くなる点で好ましい。M元素の酸化物うち、酸化ジルコニウムが特に好ましい。そして、酸化マグネシウム粒子が、M元素の酸化物も含有する場合、酸化マグネシウム複合酸化物粒子中のMg元素に対するM元素のモル比((M元素/Mg元素)×100)は、原子換算で、好ましくは0.0001〜10mol%、特に好ましくは0.01〜1mol%である。酸化マグネシウム複合酸化物粒子中のMg元素に対するM元素のモル比が、上記範囲内にあることにより、蛍光体の励起源として、希ガス放電により放射される波長172nmの励起源の照射により、近紫外線領域の310〜320nmで発光強度が高くなる。
なお、本発明において各元素の含有量は、ICP測定により求められ、また、上記モル比は、ICP測定により求められた各元素の含有量を基に算出した値である。
本発明の蛍光体材料に係る酸化マグネシウム複合酸化物粒子(1次粒子)の平均粒子径は、好ましくは0.01〜1μm、特に好ましくは0.05〜0.5μmである。酸化マグネシウム複合酸化物粒子(1次粒子)の平均粒子径が上記範囲内にあることにより、蛍光体の励起源として、希ガス放電により放射される波長172nmの励起源の照射により、近紫外線領域の310〜320nmで発光強度が高くなる。なお、酸化マグネシウム複合酸化物粒子の1次粒子の平均粒子径は、走査型電子顕微鏡観察(SEM)により求められ、具体的には、電子顕微鏡写真の1視野の全1次粒子の粒子径を測定し、それらを平均して求められる。一方、酸化マグネシウム複合酸化物粒子の2次粒子とは、酸化マグネシウム複合酸化物粒子の1次粒子が凝集した凝集体を指す。
本発明の蛍光体材料に係る酸化マグネシウム複合酸化物粒子(1次粒子)は、通常、凝集した凝集体(2次粒子)として存在している。本発明の蛍光体材料のレーザー回折散乱法により求められる平均粒子径D50(2次粒子の平均粒子径)は、好ましくは0.1〜100μm、特に好ましくは1〜20μmである。なお、本発明の蛍光体材料は、凝集していない酸化マグネシウム複合酸化物粒子の1次粒子のままの形態であってもよい。また、本発明において、1次粒子が凝集して2次粒子を形成していることを、具体的には走査型電子顕微鏡観察(SEM)で確認することができる。そして、本発明の蛍光体材料をSEM観察した時に、1視野の80%以上が凝集粒子であることが好ましい。
本発明の蛍光体材料では、酸化マグネシウム複合酸化物粒子の凝集体の形態としては、酸化マグネシウム複合酸化物粒子のみが凝集した凝集体、及び酸化マグネシウム粒子の凝集体の周りに、酸化マグネシウム複合酸化物粒子が凝集した凝集体の形態が挙げられる。以下、本発明の蛍光体材料に係る酸化マグネシウム複合酸化物粒子のみが凝集して形成されている凝集体を、凝集体(A)とも記載し、また、酸化マグネシウム粒子の凝集体の周りに、本発明の蛍光体材料に係る酸化マグネシウム複合酸化物粒子が凝集して形成されている凝集体を、凝集体(B)とも記載する。
凝集体Bについて、図1を参照して説明する。図1は、凝集体(B)の模式的な断面図である。図1中、凝集体(B)3は、内部が酸化マグネシウム粒子1(白色で示す。)の凝集体であり、その凝集体の周りに、本発明の蛍光体材料に係る酸化マグネシウム複合酸化物粒子2(斜線で示す。)が凝集して、形成されている。
本発明の蛍光体材料のタッピング密度は、好ましくは0.30〜0.60g/mL、特に好ましくは0.35〜0.55g/mLである。タッピング密度が上記範囲内にあることにより、媒体への分散特性、他の化合物との混合特性に優れる点で好ましい。
本発明の蛍光体材料は、熱分解により酸化マグネシウム粒子に変換される酸化マグネシウム前駆体粒子の表面に、酸化ガドリニウム前駆体を被覆して、被覆処理物を得、次いで、被覆処理物を加熱処理して熱分解して得られる酸化ガドリニウムを含有する酸化マグネシウム複合酸化物粒子であることが好ましい。
本発明の蛍光体材料は、以下の本発明の蛍光体材料の製造方法により、好適に製造される。
本発明の蛍光体材料の製造方法は、熱分解により酸化マグネシウム粒子に変換される酸化マグネシウム前駆体粒子の表面に、酸化ガドリニウム前駆体を被覆して、被覆処理物を得る被覆処理工程と、被覆処理物を加熱処理して熱分解し、酸化ガドリニウムを含有する酸化マグネシウム複合酸化物粒子を得る加熱処理工程と、を有する蛍光体材料の製造方法である。
本発明の蛍光体材料の製造方法に係る被覆処理工程は、酸化マグネシウム前駆体粒子の表面が、酸化ガドリニウム前駆体により被覆されている被覆処理物を得る工程である。
被覆処理工程を行う方法としては、例えば、酸化マグネシウム前駆体粒子が分散媒に分散されている水性スラリーに、Gd元素源を添加し、次いで、Gd元素源を加水分解することにより、Gd元素源の加水分解物を酸化マグネシウム前駆体粒子の表面に析出させて、被覆処理物を得る方法が挙げられる。
酸化マグネシウム前駆体粒子は、後段の加熱処理工程で加熱処理されることにより、熱分解して、酸化マグネシウム粒子に変換されるものであれば、特に制限されず、例えば、炭酸マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム等の低溶解度の無機マグネシウム化合物や、クエン酸マグネシウム、シュウ酸マグネシウム等の低溶解度の有機酸のマグネシウム塩が挙げられる。これらのうち、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウムが、入手及び取り扱いの容易性から好ましい。これらは、1種単独でも2種以上の組み合わせでもよい。
酸化マグネシウム前駆体粒子は、通常、酸化マグネシウム前駆体粒子(1次粒子)が凝集した凝集体(2次粒子)として存在しており、酸化マグネシウム前駆体粒子の凝集体(2次粒子)のレーザー回折散乱法により求められる平均粒子径D50は、好ましくは0.1〜100μm、特に好ましくは0.5〜20μmである。酸化マグネシウム前駆体粒子の凝集体の平均粒子径が上記範囲内にあることにより、均一な水性スラリーとなり、加熱処理後の蛍光体材料の特性を均一にし易くなる。一方、酸化マグネシウム前駆体粒子の凝集体の平均粒子径が上記範囲を超えると、媒体へ分散した際に、分散特性が低くなり易く、また、上記範囲未満だと、水性スラリーの粘度が増加するため、均一な反応をさせ難くなる。
そして、該酸化マグネシウム前駆体粒子を分散媒に分散させることにより、該酸化マグネシウム前駆体粒子を含む水性スラリーを調製する。
分散媒としては、水、アルコール類、ケトン類等の親水性媒体が挙げられる。これらのうち、取り扱いが容易である点で、水が好ましい。なお、分散媒は、蒸留、イオン交換樹脂によるイオン交換処理、活性炭処理などを用いて精製されたものが望ましい。
水性スラリー中、酸化マグネシウム前駆体粒子のスラリーの濃度は、1〜20質量%、好ましくは5〜20質量%である。スラリーの濃度が上記範囲内にあることにより、被覆物の酸化マグネシウム前駆体粒子への付着が均一になり、また、操作性が高くなる。
次いで、水性スラリーに、Gd元素源を添加する。Gd元素源としては、Gd元素を有する化合物であり且つ分散媒に溶解する化合物であれば、特に制限されない。分散媒が水の場合、硝酸ガドリニウム、塩化ガドリニウムが挙げられる。
水性スラリー中、酸化マグネシウム前駆体粒子とGd元素源との混合割合は、被覆処理工程を行い得られる被覆処理物中のMg元素に対するGd元素のモル比((Gd元素/Mg元素)×100)が、原子換算で、0.0001〜10mol%となる量が好ましく、0.01〜1mol%となる量が特に好ましい。酸化マグネシウム前駆体粒子とGd元素源との混合割合が、上記範囲内にあることにより、蛍光体の励起源として、希ガス放電により放射される波長172nmの励起源の照射により、近紫外線領域の310〜320nmで発光強度が高くなる。
また、水性スラリーに、Gd元素源に加えて、更に、M元素源を添加することもできる。M元素源としては、M元素を有する化合物であり且つ分散媒に溶解する化合物であれば、特に制限されない。分散媒が水の場合、M元素の硝酸塩、M元素の塩化物が挙げられる。
水性スラリーにM元素源を添加する場合、水性スラリー中、酸化マグネシウム前駆体粒子とM元素(Ca、Sr及びBaのうちのいずれか1種又はこれらのうちの2種以上)源との混合割合は、被覆処理工程を行い得られる被覆処理物中のMg元素とM元素との合計に対するM元素のモル比({M元素/(M元素+Mg元素)}×100)が、原子換算で、0.01〜100mol%となる量が好ましく、0.1〜10mol%となる量が特に好ましい。酸化マグネシウム前駆体粒子とM元素源との混合割合が、上記範囲内にあることにより、蛍光体の励起源として、希ガス放電により放射される波長172nmの励起源の照射により、近紫外線領域の310〜320nmで発光強度が高くなる。なお、M元素が2以上の場合は、上記M元素のモル数は、それらの合計である。
また、水性スラリーに、Gd元素源に加えて、更に、M元素(Zr、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er及びYbのうちのいずれか1種又はこれらのうちの2種以上)源を添加することもできる。M元素源としては、M元素を有する化合物であり且つ分散媒に溶解する化合物であれば、特に制限されない。分散媒が水の場合、M元素の硝酸塩、M元素の塩化物が挙げられる。そして、M元素源のうち、Zr元素源を添加することが、蛍光体の励起源として、希ガス放電により放射される波長172nmの励起源の照射により、近紫外線領域の310〜320nmで発光強度が高くなる点で好ましい。
水性スラリーにM元素源を添加する場合、水性スラリー中、酸化マグネシウム前駆体粒子とM元素源との混合割合は、被覆処理工程を行い得られる被覆処理物中のMg元素に対するM元素のモル比((M元素/Mg元素)×100)が、原子換算で、0.0001〜10mol%となる量が好ましく、0.01〜1mol%となる量が特に好ましい。酸化マグネシウム前駆体粒子とM元素源との混合割合が、上記範囲内にあることにより、蛍光体の励起源として、希ガス放電により放射される波長172nmの励起源の照射により、近紫外線領域の310〜320nmで発光強度が高くなる。なお、M元素が2以上の場合は、上記M元素のモル数は、それらの合計である。
水性スラリーへのGd元素源、M元素源及びM元素源の添加方法としては、これらの元素源を直接水性スラリーに投入してもよく、あるいは、分散媒にこれらの元素源を溶解させた溶液を水性スラリーに投入してもよい。
水性スラリーへのGd元素源を添加した後、あるいは、必要に応じてM元素源又はM元素源も添加した後、必要に応じて、水性スラリーを撹拌する。
次いで、水性スラリー中の該Gd元素源を加水分解する。また、水性スラリーにM元素源及びM元素源も添加した場合は、これらの元素源も加水分解する。そして、Gd元素源を加水分解することにより、酸化マグネシウム前駆体粒子の表面に、Gd元素源の加水分解物、すなわち、酸化ガドリニウム前駆体を付着させて、被覆処理物を得る。また、水性スラリーにGd元素源に加えてM元素源又はM元素源も添加した場合は、これらの元素源も加水分解することにより、酸化マグネシウム前駆体粒子の表面に、酸化ガドリニウム前駆体に加えてM元素源又はM元素源の加水分解物、すなわち、M元素の酸化物の前駆体又はM元素の酸化物の前駆体も付着させて、被覆処理物を得る。
水性スラリー中のGd元素源、M元素源及びM元素源を加水分解する方法としては、例えば、水性スラリーに、アンモニア、アミン類、アルカリ金属水酸化物等のアルカリを添加し、撹拌する方法が挙げられる。
Gd元素源、M元素源及びM元素源の加水分解を行う際の加水分解温度は、5〜80℃、好ましくは15〜50℃である。加水分解温度が上記範囲内にあることにより、操作上の安全性が向上し、また、特殊な熱源と装置が必要でないという利点も有する。
アルカリの添加終了後、必要に応じて、引き続き撹拌を続ける熟成を行うことができる。そして、熟成を行うことが、加水分解物をマグネシウム前駆体粒子の表面に十分に付着させることができる点で好ましい。熟成を行う際の熟成温度は、通常は5〜80℃、好ましくは15〜50℃の温度である。熟成温度が上記範囲未満だと、加水分解が不十分になり易く、また、上記範囲を超えると、急激な加水分解が起こるため、マグネシウム前駆体粒子の表面に均一に加水分解物が付着し難くなる。なお、熟成温度とは、アルカリ添加後撹拌する際の反応液全体の温度をいう。また、熟成を行う際の熟成時間は、0.5時間以上、好ましくは1時間以上である。
また、酸化マグネシウム前駆体粒子が、炭酸マグネシウム又は水酸化マグネシウムの場合は、これらの化合物が水に対して若干溶解性があるため、水性スラリーはアルカリ性を示す。このような場合は、水性スラリーにGd元素源、必要に応じてM元素源又はM元素源を添加した後、5〜80℃、好ましくは15〜50℃で撹拌することによって、加水分解を行うことができる。この場合は、水性スラリーにGd元素源、必要に応じてM元素源又はM元素源を添加し、水性スラリーを撹拌することにより、これらの元素源の加水分解が起こる。このような場合、Gd元素源、必要に応じてM元素源又はM元素源の添加終了後、必要に応じて、引き続き撹拌を続ける熟成を行うことができる。熟成を行うことが、加水分解物をマグネシウム前駆体粒子の表面に十分に付着させることができる点で好ましい。熟成を行う際の熟成温度は、通常は5〜80℃、好ましくは15〜50℃の温度である。また、熟成を行う際の熟成時間は、0.5時間以上、好ましくは1時間以上である。なお、酸化マグネシウム前駆体粒子が、炭酸マグネシウム又は水酸化マグネシウムの場合、水性スラリーにアルカリを添加し、撹拌することにより、加水分解を行うこともできる。
加水分解の終了後(必要に応じて熟成を行う場合は、熟成終了後)、常法により固液分離を行い、次いで、分離した固形物を水で洗浄する。洗浄方法として特に制限されるものではない。次いで、洗浄終了後、乾燥し、所望により粉砕等を行うこともできる。
次いで、被覆処理工程を行い得られた被覆処理物を、加熱処理する加熱処理工程を行う。
加熱処理工程では、被覆処理物を加熱して、熱分解により、酸化マグネシウム前駆体粒子を酸化マグネシウム粒子に転換すると共に、Gd元素源の加水分解物、M元素源の加水分解物及びM元素源の加水分解物を、これらの元素の酸化物の微粒子へと転換し、更に加熱処理を続けることで、酸化ガドリニウムを含有する酸化マグネシウム複合酸化物粒子を得る。
加熱処理工程を行う際の加熱処理温度は、400℃〜1600℃、好ましくは500〜1300℃である。加熱温度が上記範囲未満だと、酸化マグネシウム前駆体から酸化マグネシウムへの転換が進まず、一方、上記範囲を超えると、加熱処理容器による汚染が進み易く、また、焼結が進み、解砕や粉砕等の二次加工が困難になる。加熱処理工程を行う際の加熱時間は、1〜20時間、好ましくは3〜12時間である。加熱処理工程を行う際の雰囲気は、特に制限されず、大気雰囲気、不活性雰囲気、還元性雰囲気の何れであってもよいが、還元性雰囲気が、発光強度が高い蛍光体材料が得られる点で好ましい。
また、加熱に用いる炉の材質は、特に制限されるものではなく、例えば、炭化珪素製、アルミナ・ジルコニア製、高純度アルミナ製、スピネル製、ムライト製、コージュライト等が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
本発明の蛍光体材料の製造方法に係る加熱処理工程では、加熱処理を所望により、何度行ってもよく、粉体特性を均一にするために、1度加熱処理したものを粉砕し、再度加熱処理を行ってもよい。
加熱処理工程を行った後、適宜冷却し、必要に応じ解砕して、蛍光体材料を得る。解砕には、ジョークラッシャー、ロールミル、ジェットミル、ボールミル等、通常の解砕装置を用いることができる。
被覆処理工程において、表面が被覆処理される前の酸化マグネシウム前駆体粒子は、図2に示すように、通常、酸化マグネシウム前駆体粒子1(白色で示す。)が凝集した凝集体(C)5として存在する。そのため、このような凝集体(C)5を、分散媒に分散させて、Gd元素源、必要に応じてM元素源又はM元素源を添加して、これらの元素源を加水分解すると、酸化マグネシウム前駆体粒子1のうち、凝集体(C)5の外側近傍に存在する酸化マグネシウム前駆体粒子1aのみ、表面がGd元素源の加水分解物、必要に応じて添加されるM元素源の加水分解物又はM元素源の加水分解物で被覆され、凝集体(C)5の内部に存在する酸化マグネシウム前駆体粒子1bは、表面がこれらの元素源の加水分解物では被覆されない。
そのため、このような凝集体(C)5を用いて被覆処理工程及び加熱処理工程を行って得られる蛍光体材料は、図1に示す凝集体(B)3のように、酸化マグネシウム粒子1の凝集体の周りに、酸化マグネシウム複合酸化物粒子2(1次粒子)が凝集した形態、すなわち、凝集体(B)3となる。そして、蛍光体材料の表面に、本発明の蛍光体材料に係る酸化マグネシウム複合酸化物粒子が存在していれば、蛍光体の励起源として、希ガス放電により放射される波長172nmの励起源の照射により、近紫外線領域の310〜320nmで強い発光強度を示すので、このような形態(凝集体(B))であっても、本発明の効果を奏する。
このようにして得られる蛍光体材料は、蛍光体の励起源として、希ガス放電により放射される波長172nmの励起源の照射により、近紫外線領域の310〜320nmで極大の発光ピークを有し、高い発光強度を示し、特にPDP用の蛍光体材料として好適に用いられる。
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが本発明はこれらに限定されるものではない。
(参考実験)
(参考例1)
イオン交換水500mLを入れた1Lガラス製ビーカーに、市販の炭酸マグネシウム(MgOとして43%、平均粒子径8μm)93.7g(MgO:1mol)を加えて攪拌し、炭酸マグネシウムの水性スラリーを調製した。これとは別に100mLガラス製ビーカーに、塩化ガドリニウム6水塩を3.72g(Gd:0.01mol)量り取り、イオン交換水100mLを加えて溶解し、ガドリニウム溶液とした(A液)。定量ポンプを用いてA液を炭酸マグネシウムの水性スラリーに1.7mL/minの流速で滴下した。この時、炭酸マグネシウムの水性スラリー及びガドリニウム溶液共に20℃で実施した。
滴下終了後、攪拌を継続させた状態のまま20℃で30分保持し、熟成を行った。次いで、反応液をブフナーロートでろ過し、ろ別した固形分を120℃で12時間乾燥して、被覆処理物を得た。次いで、この被覆処理物を電気炉内にて大気雰囲気下1300℃で5時間加熱し、自然冷却後、解砕を行って蛍光体材料試料を得た。
(参考例2)
市販の酸化マグネシウム40.3g(MgO:1mol、平均粒子径3μm)と、酸化ガドリニウム1.81g(Gd:0.01mol)を軽く混合し、これにエタノールを加えて1時間乳鉢内にて混合した。得られた混合物を120℃で12時間乾燥した後、1300℃で3時間加熱し、蛍光体材料試料を得た。
参考例1及び参考例2で得られた蛍光体材料試料を、線源としてCu−Kα線を用いてX線回折分析を行った。蛍光体材料試料のX線回折図を図3及び図4にそれぞれ示す。なお、MgO単独とGdO単独で測定したX線回折図も合せて併記した。
図3及び図4の結果より、参考例1の蛍光体材料試料では、単相のMgOが得られ、MgOとGdOからなる複合酸化物であるのに対して、参考例2の蛍光体材料試料は、MgOと酸化ガドリニウムとの単純混合物であることが分かる。
従って、以下の実施例で得られる本発明の蛍光体材料は、更にGdの添加量を参考例1より低減し、より単相のMgOが得られやすい条件下で反応を行っていることから、本発明の蛍光体材料は、酸化マグネシウム粒子に酸化カドリニウムが含有された複合酸化物、つまり、酸化マグネシウムにガドリニウムがドープされた複合酸化物であることが分かる。
(実施例1)
イオン交換水500mLを入れた1Lガラス製ビーカーに、市販の炭酸マグネシウム(MgOとして43%、平均粒子径8μm)93.7g(MgO:1mol)を加えて攪拌し、炭酸マグネシウムの水性スラリーを調製した。これとは別に100mLガラス製ビーカーに、塩化ガドリニウム6水塩を0.372g(Gd:0.001mol)量り取り、イオン交換水100mLを加えて溶解し、ガドリニウム溶液とした(A液)。定量ポンプを用いてA液を炭酸マグネシウムの水性スラリーに1.7mL/minの流速で滴下した。この時、炭酸マグネシウムの水性スラリー及びガドリニウム溶液共に20℃で実施した。
滴下終了後、攪拌を継続させた状態のまま20℃で30分保持し、熟成を行った。次いで、反応液をブフナーロートでろ過し、ろ別した固形分を120℃で12時間乾燥して、被覆処理物aを得た。次いで、この被覆処理物aを電気炉内にて大気雰囲気下1300℃で5時間加熱し、自然冷却後、解砕を行って蛍光体材料aを得た。
(実施例2)
イオン交換水500mLを入れた1Lガラス製ビーカーに、市販の炭酸マグネシウム(MgOとして43%、平均粒子径8μm)92.8g(MgO:0.99mol)を加えて攪拌し、炭酸マグネシウムの水性スラリーを調製した。これとは別に100mLガラス製ビーカーに、塩化ガドリニウム6水塩を0.372g(Gd:0.001mol)と、塩化カルシウム2水塩1.47g(CaO:0.01mol)を量り取り、イオン交換水100mLを加えて溶解し、カルシウムガドリニウム溶液とした(A液)。定量ポンプを用いてA液を炭酸マグネシウムの水性スラリーに1.7mL/minの流速で滴下した。この時の炭酸マグネシウムの水性スラリー及びカルシウムガドリニウム溶液共に20℃で実施した。
滴下終了後、攪拌を継続させた状態のまま20℃で30分保持して、熟成を行った。次いで、反応液をブフナーロートでろ過し、ろ別した固形分を120℃で12時間乾燥して、被覆処理物bを得た。次いで、この被覆処理物bを電気炉内にて大気雰囲気下1300℃で5時間加熱し、自然冷却後、解砕を行って蛍光体材料bを得た。
(実施例3)
実施例2と同様にして被覆処理物bを得た後、該被覆処理物bを窒素水素混合ガス(水素3vol%)気流中(20mL/min)において、900℃で6時間加熱し、自然冷却後、解砕を行って蛍光体材料cを得た。
(実施例4)
実施例2と同様にして被覆処理物bを得た後、該被覆処理物bを窒素水素混合ガス(水素3vol%)気流中(20mL/min)において900℃で12時間加熱し、自然冷却後、解砕を行って蛍光体材料dを得た。
(実施例5)
イオン交換水500mLを入れた1Lガラス製ビーカーに、市販の炭酸マグネシウム(MgOとして43%、平均粒子径8μm)92.8g(MgO:0.99mol)を加えて攪拌し、炭酸マグネシウムの水性スラリーを調製した。これとは別に100mLガラス製ビーカーに、塩化ガドリニウム6水塩を0.372g(Gd:0.001mol)と、塩化カルシウム2水塩1.47g(CaO:0.01mol)と、塩化ジルコニウム0.233g(Zr:0.001mol)を量り取り、イオン交換水100mLを加えて溶解し、カルシウムガドリニウムジルコニウム溶液とした(A液)。定量ポンプを用いてA液を炭酸マグネシウムの水性スラリーに1.7mL/minの流速で滴下した。この時、炭酸マグネシウムの水性スラリー及びカルシウムガドリニウムジルコニウム溶液共に20℃で実施した。
滴下終了後、攪拌を継続させた状態のまま20℃で30分保持し、熟成を行った。次いで、反応液をブフナーロートでろ過し、ろ別した固形分を120℃で12時間乾燥して、被覆処理物cを得た。次いで、この被覆処理物cを窒素水素混合ガス(水素3vol%)気流中(20mL/min)において、900℃で6時間加熱し、自然冷却後、解砕を行って蛍光体材料eを得た。
(実施例6)
イオン交換水500mLを入れた1Lガラス製ビーカーに、市販の水酸化マグネシウム(MgOとして69%、平均粒子径1μm)57.8g(MgO:0.99mol)を加えて攪拌し、水酸化マグネシウムの水性スラリーを調製した。これとは別に100mLガラス製ビーカーに、塩化ガドリニウム6水塩を0.372g(Gd:0.001mol)と、塩化カルシウム2水塩1.47g(CaO:0.01mol)を量り取り、イオン交換水100mLを加えて溶解し、カルシウムガドリニウム溶液とした(A液)。定量ポンプを用いてA液を水酸化マグネシウムの水性スラリーに1.7mL/minの流速で滴下した。この時、水酸化マグネシウムの水性スラリー及びカルシウムガドリニウム溶液共に20℃で実施した。
滴下終了後、攪拌を継続させた状態のまま20℃で30分保持し、熟成を行った。次いで、ブフナーロートでろ過し、固形分を120℃で12時間乾燥して被覆処理物dを得た。次に、この被覆処理物dを窒素水素混合ガス(水素3vol%)気流中(20mL/min)において、900℃で6時間加熱し、自然冷却後、解砕を行って蛍光体材料fを得た。
(実施例7)
実施例3で得られた蛍光体材料cをジェットミル解砕して、微粒化した蛍光体材料gを得た。
(実施例8)
市販の炭酸マグネシウムをジェットミル解砕し、微粒炭酸マグネシウムを回収した。次いで、イオン交換水500mLを入れた1Lガラス製ビーカーに、該微粒炭酸マグネシウム(MgOとして43%、平均粒子径3μm)92.8g(MgO:0.99mol)を加えて攪拌し、炭酸マグネシウムの水性スラリーを調製した。これとは別に100mLガラス製ビーカーに、塩化ガドリニウム6水塩を0.372g(Gd:0.001mol)と、塩化カルシウム2水塩1.47g(CaO:0.01mol)を量り取り、イオン交換水100mLを加えて溶解し、カルシウムガドリニウム溶液とした(A液)。定量ポンプを用いてA液を炭酸マグネシウムスラリーに1.7mL/minの流速で滴下した。この時、炭酸マグネシウムの水性スラリー及びカルシウムガドリニウム溶液共に20℃で実施した。
滴下終了後、攪拌を継続させた状態のまま20℃で30分保持し、熟成を行った。次いで、反応液をブフナーロートでろ過し、ろ別された固形分を120℃で12時間乾燥して、被覆処理物eを得た。次いで、この被覆処理物eを窒素水素混合ガス(水素3vol%)気流中(20mL/min)において、900℃で6時間加熱し、自然冷却後、解砕を行って蛍光体材料hを得た。

1)酸化マグネシウム前駆体粒子の平均粒子径は、レーザー回折散乱法により求められたD50である。
(比較例1)
市販の酸化マグネシウム40.3g(MgO:1mol、平均粒子径3μm)と、酸化ガドリニウム0.181g(Gd:0.001mol)を軽く混合し、これにエタノールを加えて1時間乳鉢内にて混合した。得られた混合物を120℃で12時間乾燥した後、1300℃で3時間加熱し、蛍光体材料iを得た。
(比較例2)
市販の酸化マグネシウム40.3g(MgO:1mol、平均粒子径3μm)と、酸化ガドリニウム0.181g(Gd:0.001mol)と、ホウ酸0.121g(MgOに対して0.3%)を軽く混合し、これにエタノールを加えて1時間乳鉢内にて混合した。得られた混合物を120℃で12時間乾燥した後、1300℃で3時間加熱し、蛍光体材料jを得た。
<物性の評価>
実施例及び比較例で得られた蛍光体材料について、ICP測定により各元素の含有量を求め、その値を基に算出した、Mg元素に対するCa元素、Gd元素及びZr元素のモル比(mol%)、粒度分布を表2に示す。また、実施例3で得られた蛍光体材料cのSEM写真を図5及び図6に示す。また、比較例1で得られた蛍光体材料iのSEM写真を図7及び図8に示す。
なお、モル比の算出に当たり、Ca、Gd、Zrの含有量をICP発光分析法により求めた。また、粒子の粒度分布を、レーザー散乱回折法により求めた。

1)モル比は、ICP測定により求めた各元素の含有量を基に算出した値である。
<蛍光特性の評価>
実施例1〜8及び比較例1、2で得られた蛍光体材料の蛍光特性はキセノンエキシマランプから照射される172nmを、プレス成型した蛍光体材料に直角から照射し、その照射面から出る蛍光を測定した。その結果を図9及び図10に示す。なお、図9中の各ピークのピークトップの強度は、上から順に、実施例4が31827cps、実施例5が27806cps、実施例6が22129cps、実施例8が19068cps、実施例3が18849cps、実施例7が14086cps、実施例2が11897cps、実施例1が4926cps、比較例1が370cps、比較例2が614cpsであった。
図9及び図10の結果より、実施例1〜8の蛍光体材料は、比較例1及び2の蛍光体材料に比べ、高い発光強度を有することが分かった。

Claims (15)

  1. 酸化ガドリニウムを含有するマグネシウム複合酸化物粒子であることを特徴とする蛍光体材料。
  2. 前記マグネシウム複合酸化物粒子中のMg元素に対するGd元素のモル比((Gd元素/Mg元素)×100)が、原子換算で、0.0001〜10mol%であることを特徴とする蛍光体材料。
  3. 前記マグネシウム複合酸化物粒子が、更に、Ca、Sr及びBaから選ばれる1種以上の元素(M元素)の酸化物を含有することを特徴とする請求項1又は2いずれか1項記載の蛍光体材料。
  4. 前記マグネシウム複合酸化物粒子が、更に、Zr、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er及びYbから選ばれる1種以上の元素(M元素)の酸化物を含有することを特徴とする請求項1〜3いずれか1項記載の蛍光体材料。
  5. 310〜320nmに極大の発光ピークを有することを特徴とする請求項1〜4いずれか1項記載の蛍光体材料。
  6. 熱分解により酸化マグネシウム粒子に転換される酸化マグネシウム前駆体粒子の表面が、熱分解により酸化ガドリニウムに転換される酸化ガドリニウム前駆体で被覆されている被覆処理物を、加熱処理して熱分解させることにより、酸化ガドリニウムを含有するマグネシウム複合酸化物粒子を得る加熱処理工程を行い得られたものであることを特徴とする蛍光体材料。
  7. 前記被覆処理物中のMg元素に対するGd元素のモル比((Gd元素/Mg元素)×100)が、原子換算で、0.0001〜10mol%であることを特徴とする請求項6記載の蛍光体材料。
  8. 前記被覆処理物には、更に、Ca、Sr及びBaから選ばれる1種以上の元素(M元素)の酸化物の前駆体も被覆されていることを特徴とする請求項6又は7いずれか1項記載の蛍光体材料。
  9. 前記被覆処理物中のM元素とMg元素の合計に対するM元素のモル比({M元素/(M元素+Mg元素)}×100)が、原子換算で、0.01〜100mol%であることを特徴とする請求項8記載の蛍光体材料。
  10. 前記被覆処理物には、更に、Zr、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er及びYbから選ばれる1種以上の元素(M元素)の酸化物の前駆体も被覆されていることを特徴とする請求項6〜9いずれか1項記載の蛍光体材料。
  11. 熱分解により酸化マグネシウム粒子に転換される酸化マグネシウム前駆体粒子が、分散媒に分散されている水性スラリーに、Gd元素源を添加し、次いで、該Gd元素源を加水分解することにより、Gd元素源の加水分解物を該酸化マグネシウム前駆体粒子の表面に析出させて、被覆処理物を得る被覆処理工程と、該被覆処理物を加熱処理して熱分解させることにより、酸化ガドリニウムを含有するマグネシウム複合酸化物粒子を得る加熱処理工程と、を有することを特徴とする蛍光体材料の製造方法。
  12. 前記被覆処理工程において、前記水性スラリーに、更に、Ca、Sr及びBaから選ばれる1種以上の元素(M元素)源を添加することを特徴とする請求項11記載の蛍光体材料の製造方法。
  13. 前記被覆処理工程において、前記水性スラリーに、更に、Zr、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er及びYbから選ばれる1種以上の元素(M元素)源を添加することを特徴とする請求項11又は12いずれか1項記載の蛍光体材料の製造方法。
  14. 前記加熱処理工程において、加熱処理温度が400〜1600℃であることを特徴とする請求項11〜13いずれか1項記載の蛍光体材料の製造方法。
  15. 前記加熱処理工程において、加熱処理を還元雰囲気中で行うことを特徴とする請求項11〜14いずれか1項記載の蛍光体材料の製造方法。
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