JP2010265423A - 絶縁膜形成用インキ組成物、該インキ組成物から形成された絶縁膜、該絶縁膜を有する電子素子 - Google Patents

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Abstract

【課題】 凸版反転印刷法による精密パターン形成が可能であり、極めて平滑な表面形状と大気下においても漏れ電流が小さいゲート絶縁膜を形成する絶縁膜形成用インキ組成物を提供する。第二の課題は、該インキ組成物から形成された絶縁膜、及び、該絶縁膜を有する電子素子を提供する。
【解決手段】 樹脂成分、体質成分、有機溶剤、及び、離型剤を含有する絶縁膜形成用インキ組成物であって、樹脂成分がポリビニルフェノール系樹脂を含有し、体質成分/樹脂成分の比が0.03〜0.1の範囲であることを特徴とする絶縁膜形成用インキ組成物。
【選択図】 図1

Description

本発明は、電子素子の製造に相応しく使用できる絶縁膜形成用インキ組成物ならびに、該インキ組成物から形成される絶縁膜ならびに、該絶縁膜を有する電子素子に関する。
トランジスタはテレビやコンピューター機器を構成する重要な電子素子(電子部品)として広く活用されており、現在、シリコン等の無機物を主材料にして製造されている。近年、こうしたトランジスタの部材に有機物を使った有機トランジスタ(OFET)が注目を集めている(非特許文献1参照)。OFETは、柔らかくフレキシブルである上、単位面積あたりで考えると原料が低価格で生産できるというメリットがあり、ユビキタス時代の必須アイテム、すなわち、フレキシブル&低コスト端末の実現には欠かせない構成要素と考えられている。
OFETは三つの電極、絶縁層および半導体層を必須部材とする電子素子である。素子構造の一例を図1に示す。本発明は、図中番号3に該当するゲート絶縁膜に関するものである。ゲート絶縁膜の形成法には、印刷法等のウェットプロセスと真空蒸着やスパッタリング等のドライプロセスがあるが、低価格化を考えるとウェットプロセスが好ましい(非特許文献2参照)。また、ウェットプロセスとして印刷法を適用する場合には、絶縁膜形成用インキ組成物には精密なパターン形成に対応可能な優れた印刷特性が要求される場合も有る。
一方、ゲート絶縁膜自体には、ゲート絶縁膜はその表面にキャリアが流れるチャネルが形成されることから、極めて平滑な表面形状が求められ、また、そのチャネル上にゲート電極(図中番号2)に印加される電圧によってキャリアが誘起されることから、極めて大きい電気抵抗(極めて低い漏れ電流)が求められている。
印刷法によるゲート絶縁膜形成に関して、印刷法の中でもとりわけ凸版反転印刷法が精密パターン形成に向いていることから、電子素子のような精密パターンが要求されるケースで、近年、活発に研究開発がなされている(例えば特許文献1参照)。同文献には、凸版反転印刷法による回路素子の製造方法が開示されている。しかしながら、詳細なインキ配合が開示されておらず、また、得られたゲート絶縁膜の表面形状、電気抵抗に関する記載がない。従って、凸版反転印刷法による精密パターン形成と、高い表面平滑性および電気抵抗性を十分に兼ね備えたGIを与えるGI形成用インキ組成物技術がないのが現状である。
アドバンスドマテリアルズ(Advanced Materials) 2002年、第14号, P.99 ケミストリーオブマテリアルズ(Chemistry of Materials)2004年、第16号、P.4543 特開2007−273712号公報
本発明の第一の課題は、凸版反転印刷法による精密パターン形成が可能であり、極めて平滑な表面形状と大気下においても漏れ電流が小さいゲート絶縁膜を形成する絶縁膜形成用インキ組成物を提供することにある。第二の課題は、該インキ組成物から形成されたゲート絶縁膜、及び、該絶縁膜を有する電子素子を提供することにある。
上記課題を解決するために、鋭意検討した結果、体質成分と樹脂成分の配合比を特定の範囲とするときに課題を解決することを見出し、本発明に想到した。
すなわち、本発明は、第一に、樹脂成分、体質成分、有機溶剤、及び、離型剤を含有する絶縁膜形成用インキ組成物であって、樹脂成分がポリビニルフェノール系樹脂を含有し、体質成分/樹脂成分の比が0.03〜0.1の範囲であることを特徴とする絶縁膜形成用インキ組成物を提供する。
第二に、前記した絶縁膜形成用インキ組成物より形成されることを特徴とする絶縁膜及び該絶縁膜を有する電子素子を提供する。
本発明により、精密パターンを形成可能であり、極めて平滑な表面形状と大気下においても漏れ電流が小さいゲート絶縁膜を形成できる絶縁膜形成用インキ組成物を得ることができる。更に、該インキ組成物を用いて凸版反転印刷法により製造されるゲート絶縁膜及び該絶縁膜を有する、有機トランジスタに代表される各種電子素子を得ることができる。
本発明の絶縁膜形成用インキ組成物は、樹脂成分、体質成分、有機溶剤、及び、離型剤を含有し、該樹脂成分がポリビニルフェノール系樹脂を含有し、体質成分/樹脂成分の比が0.03〜0.1の範囲であることを特徴とする絶縁膜形成用インキ組成物である。
本発明の絶縁膜形成用インキ組成物は、樹脂成分として、ポリビニルフェノール系樹脂を含有することを特徴としている。ポリビニルフェノール系樹脂には、p−ビニルフェノールのホモポリマー、p−ビニルフェノールと他のビニルモノマー(例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸2−ヒドロキシルエチル、スチレン、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−ヒドロキシルエチル、フェニルマレイイミド、マレイン酸、フマル酸)との共重合体、p−ビニルフェノールを臭素置換した臭素置換p−ビニルフェノールのホモポリマー、臭素置換p−ビニルフェノールと他のビニル樹脂との共重合体、p−ビニルフェノールをスルホン化、t−ブチル化、アミノ化したp−ビニルフェノール誘導体のホモポリマー、p−ビニルフェノール誘導体と他のビニルモノマーとの共重合体などがあるが、特に限定するものではない。また、これらは単独または二種類以上を併用してもよい。本発明に於いて、ポリビニルフェノール系樹脂は、絶縁膜形成用インキ組成物の体質顔料を除く全固形分中に10質量%以上含有することが好ましい。より好ましくは25質量%以上である。
本発明の絶縁膜形成用インキ組成物には、ポリビニルフェノール系樹脂の架橋剤の機能を奏するものとしてエポキシ樹脂を添加させることが出来る。エポキシ樹脂としては、2官能以上の反応性のエポキシ基を有する公知慣用のエポキシ樹脂であればどのようなものでも良く、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、多官能エポキシ樹脂、可撓性エポキシ樹脂、臭素化エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、高分子型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂等があるが、特に限定するものではない。また、これらは単独または二種類以上を併用してもよい。
本発明の絶縁膜形成用インキ組成物には、架橋助剤を用いてもよい。架橋助剤としては、アミン系化合物、ポリアミド樹脂、イミダゾール類、ポリメルカプタン類、三フッ化ホウ素類、ジシアンジアミド類、有機酸ヒドラジド、トリフェニルホスフィン、その他、公知慣用の架橋助剤のいずれでもよい。これらの架橋助剤は単独で使用しても良いし、二種以上を併用しても良い。室温安定性と150℃以下での低温硬化の観点からは、2−エチル−4−メチルイミダゾールが好ましい。これら架橋助剤は、全固形分中に0.3〜10.0質量%、好ましくは1.0〜5.0質量%含有される。この含有量がこの範囲外で量が少なすぎると硬化不足となり、多すぎると得られた絶縁樹脂膜内に極性の強い架橋助剤が残留するため、絶縁特性を阻害する不具合が生じて好ましくない。後述の体質成分を添加する場合は、体質成分を除く全固形分中に0.3〜10.0質量%、好ましくは1.0〜5.0質量%含有される。
本発明の絶縁膜形成用インキ組成物に用いる体質成分としては、塗膜の絶縁性を保持できるものであれば公知慣用のカラー顔料単体、微粒子粉末単体、これらカラー顔料単体や微粒子粉末単体を予め分散剤、有機溶剤に分散させた顔料分散体の一種または二種以上が用いられる。具体的には、EXCEDIC BLUE0565、EXCEDIC RED 0759、EXCEDIC YELLOW 0599、EXCEDIC GREEN0358、EXCEDIC YELLOW0648(商品名 DIC製)、アエロジルシリーズ(商品名 エボニック社製)、サイリシア、サイロホービック、サイロピュート、サイロページ、サイロピュア、サイロスフェア、サイロマスク、シルウェル、フジバルーン(商品名 富士シリシア社製)、PMA−ST、IPA−ST(商品名 日産化学)、NANOBIC3600シリーズ、NANOBIC3800シリーズ(商品名 ビックケミー社製)などがあるが、特に限定するものではない。また、これらは単独または二種以上を併用しても良い。絶縁膜の絶縁性を高めるためには、これら体質成分自体の電気絶縁性が高く且つこれらの体質成分が、均質かつ緻密に絶縁膜中に分散していることが好ましい。また、電子素子として例えば有機トランジスタのゲート絶縁膜に本発明の絶縁インキを適用する場合、膜の表面平滑性が求められる。このために、インキに添加する体質成分の平均粒径は1〜150nmであることが好ましく、5〜50nmであるとさらに好ましい。
このような観点から、微粒子シリカ分散やアルミナ分散体であるPMA−ST、IPA−ST(商品名 日産化学)、NANOBIC3600シリーズ商品名 ビックケミー社製)が好ましい。なお、体質成分の平均粒径は例えば動的光散乱法により容易に測定でき、ここで言う平均粒径は、体積平均値で代表されるものである。
本発明の絶縁膜形成用インキ組成物は、前記した、体質成分と、前記したポリビニルフェノール系樹脂を含む樹脂成分との比が0.03〜0.1の範囲であることを特徴としている。比が0.03を下回ると、精密パターン印刷が困難となり、0.1を上回ると、表面平滑性が落ちかつ絶縁特性が悪化する傾向がある。
本発明の絶縁膜形成用インキ組成物に用いる有機溶剤としては、前記ポリビニルフェノール系樹脂を溶解するものであれば任意の溶剤を使用することができ、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、イソペンタン、イソヘキサン、イソオクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロペンタン等の脂肪族炭化水素系有機溶剤、ベンゼン、トルエン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、エチルベンゼン、メシチレン、ナフタレン、シクロヘキシルベンゼン、ジエチルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶剤、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸プロピル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸n-プロピル、酢酸イソブチル、酢酸n−ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル等のエステル系溶剤、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、sec-ブタノール、tert-ブタノール、シクロヘキサノール、α-テルピネオール等のアルコール系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、2-ヘキサノン、2-ヘプタノン、2-オクタノン、テトラヒドロフラン等のケトン系溶剤、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等の炭酸エステル類、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールプロピルエーテルアセテート、ジエチレングリコールイソプロピルエーテルアセテート、ジエチレングリコールブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコール-t-ブチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールエチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールプロピルエーテルアセテート、トリエチレングリコールイソプロピルエーテルアセテート、トリエチレングリコールブチルエーテルアセテート、トリエチレングリコール-t-ブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル等のアルキレングリコール系溶剤、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジヘキシルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、アニソール、ブチルフェニルエーテル、ペンチルフェニルエーテル、メトキシトルエン、ベンジルエチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、ジオキサン、フラン、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶剤、N、N-ジメチルホルムアミド、N、N-ジメチルアセタミド、N-メチルピロリドン等のアミド系溶剤等々があるが、特に限定されるものではない。また、これらは単独または二種類以上を併用してもよい。
上記の有機溶剤には、以下に示す速乾性有機溶剤及び遅乾性有機溶剤を含有することが好ましい。
速乾性有機溶剤としては、20℃における蒸気圧が11.3×10Pa(8.0mmHg)以上かつ大気圧下における沸点が115℃未満の溶剤のいずれか1つ以上が用いられ、この速乾性有機溶剤は全インキ組成物中、5.0〜90.0質量%、より好ましくは10.0〜60.0質量%、さらに好ましくは20.0〜40.0質量%含有されている。
これら速乾性有機溶剤は、樹脂の溶解性、顔料分散系への親和性を考慮し、それぞれに応じた溶剤が選択されるが、例として次に挙げられるものが用いられる。エステル系溶剤として、酢酸エチル、酢酸ノルマルプロピル、酢酸イソプロピル、アルコール系溶剤として、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、炭化水素系溶剤として、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、トルエン、キシレン、ケトン系溶剤としてテトラヒドロフラン等が挙げられる。またこれらは、それぞれの系内および複数の系の混合物でもよい。なかでも、酢酸イソプロピルや、エタノールおよび2―プロパノールが、その蒸発速度や表面張力から見て好ましい。
遅乾性有機溶剤としては、20℃における蒸気圧が11.3×10Pa(8.0mmHg)未満かつ大気圧下における沸点が115℃以上の溶剤のいずれか1つ以上が用いられ、この遅乾性有機溶剤は全インキ組成物中5.0〜90.0質量%、より好ましくは30.0〜70.0質量%、さらに好ましくは40.0〜60.0質量%含有されている。これら溶剤は、樹脂の溶解性、顔料分散系への親和性を考慮し、それぞれに応じた溶剤が選択されるが、例えば次に挙げられるものが用いられる。エステル系溶剤として、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMAc)、3メトキシ−3−メチルーブチルアセテート、エトキシエチルプロピオネート(EEP)、アルコール系溶剤として、1−ブタノール、ダイヤドール135(商品名 三菱レーヨン製)、3メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、1−ヘキサノール、1,3ブタンジオール、1−ペンタノール、2−メチル−1−ブタノール、4−メチル−2−ペンタノール、エーテル系溶剤として、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールターシャリーブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、炭酸エステル類としてエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、炭化水素系溶剤として、ソルベッソ100、ソルベッソ150(商品名 エクソン化学製)またこれらはそれぞれの系内および複数の系の混合物でもよい。なかでも、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシ−3メチル−ブチルアセテート、エトキシエチルプロピオネート、及び、ダイヤドール135が、その蒸発速度や表面張力から見て好ましい。
本発明の絶縁膜形成用インキ組成物に用いる離型剤としては、公知慣用のシリコーン系化合物の一種または二種以上が用いられる。具体的なものとしては、ジメチルシリコーンオイル、ジメチルシリコーンゴム、シリコーンレジン、有機変性シリコーン、メチルフェニルシリコーンオイル、長鎖アルキル変性シリコーンオイル、フッ素化合物とシリコーンポリマーの混合物、フッ素変性シリコーン等があるが、特に限定するものではない。また、これらは単独または二種以上を併用しても良い。これらの中で、KF−96Lシリーズ(商品名 信越化学製)が、離型性やPVP樹脂との相溶性の点から見て好ましい。これら離型剤は全インキ組成物中0.0〜5.0質量%、好ましくは0.0〜1.0質量%含有される。この含有量がこの範囲外で量が多すぎると、印刷特性を低下させるばかりでなく、絶縁膜特性を阻害する不具合が生じて好ましくない。
本発明の絶縁膜形成用インキ組成物は、更に、インキ表面張力調整、レベリング性向上を主な目的として各種界面活性剤等を必要に応じて添加して使用することができる。
界面活性剤としては、炭化水素系、シリコーン系、フッ素系およびこれら界面活性剤の2種類以上の混合系が適用可能である。特にフッ素系界面活性剤は、その優れたインキ表面張力調整、レベリング性向上効果に加えて、該界面活性剤添加したインキにより形成された絶縁膜は、ポリチオフェン系等の結晶性の有機半導体との相性に優れ、インキ特性のみならずトランジスタ特性の向上が期待できることから最も好適な界面活性剤である。なかでも好ましいフッ素系界面活性剤は、直鎖状のパーフルオロアルキル基を有し、鎖長がC6以上、さらに好ましくはC8以上のノニオン系のフッ素系界面活性剤である。具体的なものとしては例えば、メガファックF−482、メガファックF−470(R−08)、メガファックF−472SF、メガファックR−30、メガファックF−484、メガファックF−486、メガファックF−172D、メガファックF178RM(以上、商品名 DIC製)等があるが、特に限定するものではない。また、これらは単独または二種以上を併用しても良い。これら界面活性剤は全インキ組成物中、有効成分で0.01〜5.0質量%、より好ましくは有効成分で0.05〜1.0質量%含有される。
電子素子を形成する基板としては、例えば、ガラス織布エポキシ積層板、ガラス不織布エポキシ積層板、紙エポキシ積層板、紙フェノール積層板、ガラス織布ポリイミド積層板等のガラス繊維強化プラスチック、ポリエチレンナフタレート、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート等のプラスチックフィルム、絶縁体で被覆された銅、アルミニウム、ステンレス、鉄等の金属板または箔、板状のガラス、アルミナ、ジルコニア、シリカ等があるが、特に、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート等の柔軟性を有するプラスチック素材を用いると次世代フレキシブルトランジスタへの対応が可能となる。
本発明の絶縁膜形成用インキ組成物の製膜化には、各種の印刷方式を採用することができる。公知慣用の印刷方式を使用でき、単層または複数層構成の塗布物製造方式を採用して製造することができる。具体的には、例えばグラビア法、オフセット法、凸版法、スクリーン法、リバース法、エアドクターコーター法、ブレードコーター法、エアナイフコーター法、スクイズコーター法、含浸コーター法、トランスファーロールコーター法、キスコーター法、キャストコーター法、スプレイコーター法、ダイ法、スピンコーター法、バーコーター法、マイクロコンタクト法、凸版反転印刷法等が挙げられる。本発明のインキ組成物は、各印刷方式に応じて、その印刷方式に適した添加剤を含有し、印刷方式に適した溶剤が選択され、印刷方式に適した樹脂成分濃度で調製される。
印刷方式の中で、精密な回路を形成するためには、細線等を再現良くパターンできる凸版反転印刷方式がより好ましく用いられる。ここで言う凸版反転印刷法とはポリジメチルシロキサン(PDMS)等からなる平滑な離型性表面にインキを塗布し、このインキ塗布面に抜き版となる凸版を押圧し、該凸版に接触するインキ部分を該離型性表面から除去し、残存するパターンを被印刷体に反転転写する方法である。この印刷法に適用するインキには、離型性表面を均一に濡らすことができ、凸版の押圧に凸版のパターン通りにきれいに離型性表面よりインキが除去できること、さらに残ったインキパターンが離型性表面から被印刷体に残らず転写することが要求される。かかる印刷法に好適な本発明の絶縁膜形成用インキ組成物は、必須成分以外に、二種以上の速乾性および遅乾性溶剤、体質成分、表面エネルギー調整剤、離型剤を含むことが好ましい。これら成分の添加により、インク印刷特性を向上でき、有機トランジスタ等の電子部品を構成するために必要となる精密なパターンニング性を実現できる。
本発明の絶縁膜形成用インキ組成物にあって、凸版反転印刷方式用に適するインキは、上述の組成を有するものであるが、その物性も重要な因子である。この物性としては、まず温度が25℃におけるインキ粘度が、0.5〜30.0mPa・sの範囲内にある。なかでも、1.0〜5.0mPa・sであることがより好ましい。次に、インキ組成物の表面エネルギーも重要な因子である。インキ組成物の表面エネルギーは、17〜30mN/mであることが好ましいが、概ね22mN/mより低表面エネルギーである程好ましい。
以下、実験例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実験例に限定されるものではない。
(実施例1インキの調製)
ポリビニルフェノール系樹脂として、マルカリンカーM(丸善石油製:商品名、以下PVP)を6.36g、体質成分として、PMA−ST(日産化学製:商品名、粒径20μmのコロイダルシリカ)2.29g、架橋剤として、エポキシ樹脂エピクロン850CRP(DIC製:商品名)を9.25g、架橋助剤として、2−エチル−4−メチルイミダゾール(以下、2E4MZ)を0.40g、離型剤として、シリコーンオイルKF96L−1cs(信越化学製:商品名)を2.27g、フッ素系界面活性剤として、TF−1303(DIC製:商品名)を1.22g、溶剤として、イソプロピルアセテート(以下IPAc)を48.01g、プロピレンカーボネート(以下PC)を6.04g、プロピレングリコールモノメチルエーテル(以下PGM)を24.15g、混合して実施例1インキを調製した。
(実施例2〜3インキの調製)
後述の表1の組成に従い、実施例1インキと同様に、実施例2〜3インキを調製した。
(比較例1〜4インキの調製)
後述の表1、2の組成に従い、実施例1インキと同様に、比較例1〜4インキを調製した。
上記で調製した実施例インキ1〜3及び比較例インキ1〜4を用い、以下の評価方法にて、パターン印刷性、表面平滑性、及び、大気下抵抗率を評価した。
(パターン印刷性評価)
上記の実施例1インキから比較例4インキを、ブランケットのPDMS表面に塗膜化し、この塗膜に抜き版となる凸版ガラス版を押圧、余分なインクを除去して線幅20μmの格子状のパターンをブランケット上に形成する。これを被印刷基材であるガラス板に転写し画像を形成した。このガラス板上に形成された画像品質を光学顕微鏡で観察し、上記凸版のパターンが正確に再現されているかどうかを評価した。結果を表1、2に示す。
(表面平滑性)
上記の実施例1インキから比較例4インキを、ブランケットのPDMS表面に塗膜化し、こうして得られたブランケット上の塗膜を被印刷基材であるガラス板に転写し、140℃で1時間焼成した。このガラス板上の絶縁塗膜表面をスキャニングプローブマイクロスコープ(セイコーインスツルメンツ製SPA400)でタッピングモード観察し、表面平滑性を二乗平均化することで評価した。単位はnmである。結果を表1、2に示す。
(大気下抵抗率)
上記の実施例1インキから比較例4インキを、前記の表面平滑性評価サンプルと同様に、厚さ1.5mmのITO付きガラス板上に、塗膜化し、140℃で1時間焼成して膜厚1μmの絶縁膜を得た。該絶縁膜上部に銀電極を真空蒸着法により形成し、絶縁膜に100V印加したときの電流値を測定し、印加電圧を得られた電流値で除し、さらに電極面積で規格化することで、体積抵抗値を算出した。単位はΩcmである。結果を表1、2に示す。
(FET特性評価)
図1に示す構造の素子を形成した。ガラス(1)を基材に用いて、基材表面にITO電極(2)をスパッタリングにより作製した。次に、このITO電極(2)を覆うように、本発明の実施例インキ乃至は比較例インキを、表面平滑性評価サンプルと同様に塗布し、140℃1時間焼成して絶縁膜(3)を1μm形成した。次に、有機半導体(4)として、ペンタセンを真空蒸着法により50nm積層した。最後に、メタルマスクを用いて、Au電極(5)を厚さ30nm、75μmの間隔でパターン形成した。トランジスタ特性の測定方法は、デジタルマルチメーター(ケースレー製237)を用いて、ITO電極(1)に0〜―80V電圧(Vg)をスイープ印加し、−80V印加したAu電極間(5)の電流(Id)を測定することで行なった。移動度は、√Id−Vgの傾きから、周知の方法により求めた。単位はcm/Vsである。結果を表1、2に示す。
Figure 2010265423
Figure 2010265423
本発明により、精密パターンを形成可能であり、極めて平滑な表面形状と大気下においても漏れ電流が小さいゲート絶縁膜を形成できる絶縁膜形成用インキ組成物を得ることができる。該インキ組成物を用いて凸版反転印刷法により製造されるゲート絶縁膜及び該絶縁膜を有する、有機トランジスタに代表される各種電子素子の製造に相応しく応用できる。
本発明の絶縁膜を使用した電子素子の一例を模式的に示す概略構成図である。
1.基板
2.ゲート電極
3.絶縁膜
4.有機半導体層
5.ソース、ドレイン電極

Claims (9)

  1. 樹脂成分、体質成分、有機溶剤、及び、離型剤を含有する絶縁膜形成用インキ組成物であって、樹脂成分がポリビニルフェノール系樹脂を含有し、体質成分/樹脂成分の比が0.03〜0.1の範囲であることを特徴とする絶縁膜形成用インキ組成物。
  2. 前記した体質成分が、前記した樹脂成分と相溶しない、体積平均粒径が1〜150nmの粒子である請求項1に記載の絶縁膜形成用インキ組成物。
  3. 前記した体質成分が、コロイダルシリカ又はコロイダルジルコニアである請求項1又は2に記載の絶縁膜形成用インキ組成物。
  4. 前記した有機溶剤が、20℃における蒸気圧が11.3×10Pa(8.0mmHg)以上かつ大気圧下における沸点が115℃未満の有機溶剤、及び、20℃における蒸気圧が11.3×10Pa(8.0mmHg)未満かつ大気圧下における沸点が115℃以上の有機溶剤を含む溶剤である請求項1〜3の何れかに記載の絶縁膜形成用インキ組成物。
  5. 前記した離型剤がシリコーン系離型剤である請求項1〜4の何れかに記載の絶縁膜形成用インキ組成物。
  6. フッ素系界面活性剤を含有する請求項1〜5の何れかに記載の絶縁膜形成用インキ組成物。
  7. 25℃におけるインキの表面張力が17〜30mN/mであり、インキの粘度が0.5〜30mPa・sである請求項1〜6の何れかに記載の絶縁膜形成用インキ組成物。
  8. 請求項1〜7の何れかに記載の絶縁膜形成用インキ組成物より形成されることを特徴とする絶縁膜。
  9. 請求項8に記載の絶縁膜をゲート絶縁膜として有する電子素子。
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