JP2010264690A - 樹脂成形体 - Google Patents

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匠一 富田
Tetsushi Yamada
哲史 山田
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Abstract

【課題】弾性部材と樹脂とを複合化した樹脂成形体において、従来に比して強度の高い樹脂成形体を提供すること。
【解決手段】弾性部材2と当該弾性部材2の外周に嵌合するカラー部材1が、射出樹脂により鋳ぐるみ成形されたことを特徴とする樹脂成形体10を提供する。この樹脂成形体10によれば、射出成形時の射出圧を高めても、カラー部材1によって弾性部材2の変形が回避できるため、ウェルド部の強度の低下を効果的に抑制でき、高い強度を有する樹脂成形体10が得られる。
【選択図】図2

Description

本発明は、樹脂成形体に関し、詳しくは、射出成形により弾性部材を樹脂で鋳ぐるんだ樹脂成形体に関する。
従来より、各種工業用部品の材料として、繊維と樹脂とを複合化した繊維強化樹脂が広く用いられている。この繊維強化樹脂によれば、極めて優れた機械的特性や成形加工性が得られることが知られている。
また、特に走行安定性や静音性が求められる自動車用部品として、上記の繊維強化樹脂にさらに弾性部材を複合化したものが用いられている。具体的には、加硫ゴム成形体などの弾性部材を金型内に配置した後、上記の繊維強化樹脂を金型のゲートから金型内部に射出することにより、弾性部材を射出樹脂で鋳ぐるみ成形した樹脂成形体が用いられている。
ところが、金型内部に弾性部材を配置し、金型のゲートから樹脂を射出して金型内に樹脂を流し込むと、弾性部材の外周を流動して回り込んだ樹脂の先端部同士が合流するウェルド部において、強度が低下することが知られている。このため、ウェルド部の強度の低下により樹脂成形体の強度が低下するのを回避すべく、種々検討が進められている。
例えば、射出成形時の射出圧を高めることにより、ウェルド部に十分に高い圧力を負荷して強度の低下を抑制する方法が検討されている。しかしながら、この方法では、圧力が高過ぎるとバリなどが発生して外観不良や寸法異常などが生じてしまう一方で、圧力が低過ぎると樹脂成形体の内部にボイドが発生し、樹脂成形体の強度が低下してしまうという不具合が生ずる。また、射出成形時の射出圧を高めても、弾性体が圧力を吸収して変形してしまう結果、目的とするウェルド部に十分に高い圧力を負荷できず、ウェルド部の強度の低下を抑制できない場合がある。
そこで、樹脂成形体の形状に工夫を凝らすことにより、ウェルド部の発生部位を制御する方法が検討されている。例えば、ロッド状部分と、このロッド状部分の両端に設けられた大小2つの筒状部分とが一体成形された樹脂製の連結ロッドにおいて、ロッド状部分の長手方向に直交する平面でロッド状部分を切断したときの断面形状が、軸に対して左右非対称であり且つ左右の断面積が略等しくなるようにした連結ロッドが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
この特許文献1に開示された樹脂製連結ロッドによれば、ウェルド部の発生部位を分散させることができるため、ロッド状部分の一方の側の強度が低下するのを回避できるとされている。
特開2002−301743号公報
しかしながら、特許文献1に開示されている発明は、強度の低いウェルド部の発生部位を分散させたに過ぎない。このため、樹脂成形体全体としての強度の低下は避けられない。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、その目的は、弾性部材と樹脂とを複合化した樹脂成形体において、従来に比して強度の高い樹脂成形体を提供することにある。
上記目的を達成するため請求項1記載の発明は、弾性部材及び当該弾性部材の外周に嵌合するカラー部材が、射出樹脂により鋳ぐるみ成形されたことを特徴とする樹脂成形体である。
請求項2記載の発明は、請求項1に記載の樹脂成形体を防振装置用部品として用いたことを特徴とする。
請求項3記載の発明は、請求項1又は2に記載の樹脂成形体において、前記カラー部材の破断強度が、前記弾性部材の破断強度に比して高いことを特徴とする。
請求項1に記載の発明では、射出樹脂により弾性部材を鋳ぐるみ成形する際に、当該弾性部材の外周に嵌合するカラー部材を設けた。
これにより、ウェルド部の強度の低下を抑制すべく射出成形時の射出圧を高めた場合であっても、射出された樹脂と弾性部材との間にカラー部材が介在することによって、弾性部材にかかる圧力を軽減でき、弾性部材が圧力を吸収して変形してしまうのを回避できる。このため、ウェルド部に高い圧力を負荷できる結果、ウェルド部の強度を向上させることができる。
そして、弾性部材に比して剛性の高いカラー部材を設けたため、樹脂成形体に応力が入力された場合であっても、入力された応力をカラー部材で分散させることができ、樹脂成形体の振動吸収特性が向上する。このため、樹脂成形体の部品単体としての性能を向上させることができ、軽量化が期待できる。
また、本発明では、射出成形時に、弾性部材の外周に嵌合するカラー部材を設ければよいため、従来の射出成形機により容易に成形できる。要求される部品特性の変更に伴って弾性部材の仕様(例えば、硬度など)が変更になった場合であっても、樹脂の射出条件を変更する必要も無く、設計自由度が高い。
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の樹脂成形体を防振装置用部品として用いた。
上述したように、請求項1に記載の樹脂成形体は、従来の樹脂成形体に比して振動吸収特性が優れている。このため、請求項1に記載の樹脂成形体を防振装置用部品として用いることにより、上述の効果が最大限に発揮される。
請求項3に記載の発明では、請求項1又は2に記載の樹脂成形体のカラー部材の破断強度を、弾性部材の破断強度に比して高く設定した。
これにより、射出成形時の高い射出圧によってカラー部材が破断することを回避でき、上述の効果がより確実に奏される。
本実施形態に係る樹脂成形体の平面図である。 本実施形態に係る樹脂成形体の部分断面図である。 図1のA−A線断面図である。 本実施形態の変形例を説明するための図である。 ウェルド強度の測定方法を説明するための図である。 弾性部材の変形量とウェルド強度との関係を示す図である。 カラー部材とウェルド強度との関係を示す図である。 樹脂組成とウェルド強度との関係を示す図である。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本実施形態の変形例の説明において、本実施形態と共通する構成については同様の符号を用い、適宜その説明を省略化又は簡略化する。
図1は、本実施形態に係る樹脂成形体10の平面図である。図1に示すように、本実施形態に係る樹脂成形体10は、自動車エンジンに使用されるトルクロッドである。
樹脂成形体10は、ロッド部11と、ロッド部11の両端に設けられた筒状で大きさの異なる大端部12及び小端部13と、から構成される。これらロッド部11、大端部12、及び小端部13は、射出樹脂により一体成形されている。
大端部12は、ロッド部11の延出方向に直交する方向に延びて、略四角筒形状をなしている。小端部13は、ロッド部11の延出方向と大端部12の延出方向に直交する方向に延びて、円筒形状をなしている。即ち、略四角筒形状の大端部12の中心軸と、円筒形状の小端部13の中心軸とのなす角は、90度である。
図2は、樹脂成形体10を、小端部13が延出する方向に直交する平面で切断したときの小端部13付近の部分断面図である。図2に示すように、小端部13は、内筒3と、内筒3の外周に嵌合するように円筒形状に成形された弾性部材2と、弾性部材2の外周に嵌合するように円筒形状に成形されたカラー部材1とを備える。また、小端部13は、これら内筒3、弾性部材2、及びカラー部材1を、射出樹脂で鋳ぐるみ成形することにより形成されている。
図3は、図1のA−A線断面図である。図3に示すように、カラー部材1の軸方向の長さは、内筒3や弾性部材2の軸方向の長さに比して短く設計されている。このため、内筒3及び弾性部材2の軸方向の両端面と、カラー部材1の軸方向の両端面との間には段差が生じているが、この段差には射出樹脂が充填され、カラー部材1の軸方向の両端面が射出樹脂により鋳ぐるみされている。これにより、カラー部材1の軸方向への移動が防止されている。
本実施形態では、カラー部材1の軸方向の両端面全てが射出樹脂により鋳ぐるみされているが、図4に示す本実施形態の変形例のように、小端部14に設けられたカラー部材1の軸方向の両端面の少なくとも一部が鋳ぐるみされていればよい。
なお、大端部12は、内筒、及び弾性部材を射出樹脂で鋳ぐるみ成形することにより形成されている。射出樹脂は、大端部12側から射出充填されるため、ウェルド部は小端部13側に形成される。このため、大端部12側では、ウェルド部の強度の低下という問題が生じないため、小端部13のようにカラー部材を用いる必要は無い。
内筒3の材質は特に限定されない。後述する弾性部材2の内周に嵌合するものであればよい。
弾性部材2の材質は特に限定されず、弾性を有する材質からなるものであればよい。例えば、弾性部材として一般的な加硫ゴムが用いられる。
なお、従来では、弾性部材2の変形を抑制するために弾性部材2を肉厚にする必要があったところ、本実施形態では後述するカラー部材1を設けることによって弾性部材2の変形を回避できるため、従来に比して弾性部材2の厚みを薄くできる。
カラー部材1の材質は特に限定されない。例えば、鉄製、アルミニウム製、樹脂製のカラー部材1が用いられる。
カラー部材1の厚みも特に限定されない。カラー部材1の厚みは、厚くすると強度が向上する一方で重量が嵩むため、これらのバランスを考慮して適宜設定される。
また、カラー部材1は、弾性部材2に嵌合していればよく、射出樹脂により鋳ぐるみ成形されるため、特に接着剤などで接着する必要は無い。
なお、カラー部材1は安価に入手できることから、本実施形態の樹脂成形体はコストの面でも優れている。
また、カラー部材1の破断強度は、上記の弾性部材2の破断強度に比して高く設定されている。ここで、「破断強度」とは、部材を破断させるのに必要な引張強度を意味し、従来公知の引張試験により測定される。一例として、ゴム、樹脂、及びアルミニムの引張強度比を表1に示す。表1は、ゴムの引張強度を1としたときの樹脂及びアルミニウムの引張強度比を示している。表1に示すように、樹脂及びアルミニウムは、ゴムに比して引張強度(破断強度)比が高いことが判る。
Figure 2010264690
また、樹脂としては特に限定されず、従来から射出成形に用いられている一般的な樹脂が使用可能である。例えば、高強度で耐熱性にも優れるPA6(ナイロン6)、PA66(ナイロン6,6)、PA12(ナイロン12)、PA46(ナイロン4,6)、PA610(ナイロン6,10)、PA612(ナイロン6,12)、PA6T(ナイロン6,T)、PA9T(ナイロン9,T)などのポリアミド樹脂、又は、これらの共重合体が好ましく用いられる。
また、適宜、繊維材料を添加して複合化した繊維強化樹脂が用いられる。繊維材料としては特に限定されず、従来公知の繊維材料を用いることができる。具体例としては、ガラス繊維やカーボン繊維などが挙げられる。これらの繊維材料の繊維長なども特に限定されず、要求される部品特性に応じて、その配合量なども適宜設定される。
次に、本実施形態に係る樹脂成形体10の製造方法について説明する。本実施形態に係る樹脂成形体10の製造方法は、弾性部材2の外周に嵌合するカラー部材1を設ける以外は従来の製造方法と同様であり、射出工程、保圧工程、及び冷却工程を有する。
先ず、小端部13の構成材料である内筒3と、この内筒3の外周に嵌合する弾性部材2と、この弾性部材2の外周に嵌合するカラー部材1と、を準備する。これら部材を嵌合させた後、金型内の所定の位置に配置する。大端部12の構成材料も同様に金型内の所定の位置に配置させる。
次いで、大端部12側に設けられた金型のゲートから、金型内に射出成形用の樹脂を射出する。射出後は保圧をかけて射出樹脂を流動させた後、冷却して射出樹脂を固化させる。これにより、金型内に配置した内筒3、弾性部材2、及びカラー部材1が射出樹脂により鋳ぐるみ成形され、本実施形態に係る樹脂成形体10が得られる。
次に、弾性部材2の変形量と、ウェルド部の強度(以下、「ウェルド強度」という)との関係について説明する。ウェルド強度については、ウェルド部を含む樹脂成形品を切り出した後、図5に示すように、ウェルド部に対して圧縮荷重をかけ、破損した時の荷重を測定することにより求めることができる。
弾性部材2の変形量とウェルド強度との関係について調べた結果を図6に示す。具体的には、図6は、弾性部材2の変形量が0である樹脂成形体のウェルド強度を100としたときに、各変形量に対応するウェルド強度比を表している。
図6に示すように、弾性部材2の変形量が大きくなるに従って、ウェルド強度が低下していく。この結果から、樹脂成形体の強度を向上させるためには、弾性部材2の変形を抑制することが重要であることが判る。
次に、カラー部材1と、ウェルド強度との関係を調べた結果を図7に示す。具体的には、図7は、カラー部材1を設けていない従来の樹脂成形体のウェルド強度を100としたときに、各種のカラー部材を設けたときのウェルド強度比を表している。
図7に示すように、カラー部材を設けた樹脂成形体のウェルド強度はいずれも、カラー部材を設けていない樹脂成形体のウェルド強度に比して大きい。この結果から、弾性部材の外周に嵌合するカラー部材を設けて射出樹脂で鋳ぐるみ成形することにより、より強度の高い樹脂成形体が得られることが判る。
また、アルミ製カラー部材を用いることにより、樹脂製カラー部材に比してより強度の高い樹脂成形体が得られることが判る。
また、カラー部材の厚みを厚くすることにより、より強度の高い樹脂成形体が得られることが判る。ただし、あまり厚くし過ぎてもそれ以上の強度が得られないうえ重量が嵩んでしまうため、これらのバランスを考慮して適宜、厚みを設定するのが望ましい。
次に、射出樹脂の組成と、ウェルド強度との関係を調べた結果を図8に示す。具体的には、図8は、脂肪族系ポリアミド樹脂に短繊維ガラスを50%含有させた射出樹脂、及び芳香族系ポリアミド樹脂に長繊維ガラスを50%含有させた射出樹脂を用いて、カラー部材を用いずにカラーレスで成形したときの樹脂成形体のウェルド強度比と、アルミニウム製カラー部材を鋳ぐるみ成形したときの樹脂成形体のウェルド強度比を表している。
図8に示すように、いずれの組成の射出樹脂であっても、アルミニウム製カラー部材を用いた方が、ウェルド強度が高い。この結果から、射出樹脂の組成によらず、カラー部材を用いて弾性部材の変形を抑制することにより、樹脂成形体の強度を向上できることが判る。
以下、本実施形態に係る樹脂成形体の効果について説明する。
本実施形態では、射出樹脂により弾性部材2を鋳ぐるみ成形する際に、当該弾性部材2の外周に嵌合するカラー部材1を設けた。
これにより、ウェルド強度の低下を抑制すべく射出成形時の射出圧を高めた場合であっても、射出された樹脂と弾性部材2との間にカラー部材1が介在することによって、弾性部材2にかかる圧力を軽減でき、弾性部材2が圧力を吸収して変形してしまうのを回避できる。このため、ウェルド部に高い圧力を負荷できる結果、健全なウェルド部を形成でき、ウェルド強度を向上させることができる。
そして、弾性部材2に比して剛性の高いカラー部材1を設けたため、樹脂成形体10に応力が入力された場合であっても、入力された応力をカラー部材1で分散させることができ、樹脂成形体10の振動吸収特性が向上する。このため、部品単体としての性能を向上させることができ、軽量化が期待できる。
また、射出成形時に、弾性部材2の外周に嵌合するカラー部材1を設ければよいため、従来の射出成形機により容易に成形できる。要求される部品特性の変更に伴って弾性部材2の仕様(例えば、硬度など)が変更になった場合であっても、樹脂の射出条件を変更する必要も無く、設計自由度が高い。
また、本実施形態では、樹脂成形体10を、自動車エンジンに使用されるトルクロッドとして用いた。
上述したように、本実施形態に係る樹脂成形体10は、従来の樹脂成形体に比して振動吸収特性が優れている。このため、樹脂成形体10を自動車エンジン用のトルクロッドとして用いることにより、上述の効果が最大限に発揮される。
また、本実施形態では、樹脂成形体10のカラー部材1の破断強度を、弾性部材2の破断強度に比して高く設定した。
これにより、射出成形時の高い射出圧によってカラー部材1が破断することを回避でき、上述の効果が確実に奏される。
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良は本発明に含まれる。
例えば、上記実施形態では、本発明に係る樹脂成形体10を自動車エンジンのトルクロッドに適用したが、これに限定されず、他の防振装置用部品などにも用いることができる。
1…カラー部材
2…弾性部材
3…内筒
10…樹脂成形体
11…ロッド部
12…大端部
13…小端部

Claims (3)

  1. 弾性部材及び当該弾性部材の外周に嵌合するカラー部材が、射出樹脂により鋳ぐるみ成形されたことを特徴とする樹脂成形体。
  2. 前記樹脂成形体が、防振装置用部品であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂成形体。
  3. 前記カラー部材の破断強度が、前記弾性部材の破断強度に比して高いことを特徴とする請求項1又は2に記載の樹脂成形体。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2013187569A1 (ko) * 2012-06-12 2013-12-19 주식회사 티앤지 토크로드 구조체 및 그 토크로드의 제조방법

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