住宅等の建物において、建物の周辺地盤が建物よりも沈下する場合に、建物から周辺地盤に向けて埋設される排水管が周辺地盤に随従して沈下し、埋設された排水管が折損することや排水管路に設けられた継ぎ手部分が脱落することを抑止するために、従来より各種の対策が講じられている。
この一例として、地盤の不等沈下が発生しても管路やその構成部材などが破損しにくく、且つ排水機能を維持することができる排水管路の構造が提案されている(例えば特許文献1)。この排水管路は、可撓性継手を有する上流側と下流側の二つの曲がり管の間に伸縮継手が設けられ、双方の曲がり管は可撓性継手によりほぼ鉛直で且つ相互に本質的に平行な面に沿って回転可能とされている。そして、上流側曲がり管の上流側端部は、建物の屋内側から屋外側へ躯体を貫通して敷設された排水管の流出側端部と接続されている。一方、下流側曲がり管の下流側端部は、建物の屋外側に埋設された排水桝の流入側受口と接続されている。
また、建物から第1の管路を鉛直方向に引出して、地盤中に鉛直姿勢で設けられる第1の伸縮継手に接続するとともに、周囲の地盤へ配管するための第2の管路を、前記鉛直方向に設けられる第1の伸縮継手の近傍で地盤中に水平姿勢で設けられる第2の伸縮継手に接続し、第1及び第2の伸縮継手間を、両方の伸縮継手の軸線方向を含む平面内で屈曲して、第1及び第2の管路よりも剛性の大きい第3の管路で接続した地盤沈下対策配管構造が提案されている(例えば特許文献2)。
このように構成することにより、不等沈下の鉛直成分については、第1の伸縮継ぎ手の伸長により、また、水平成分に対しては、第2の伸縮継ぎ手の伸縮により対応するので、不等沈下の鉛直成分と水平成分とに個別的に対応でき、建物から周囲の地盤に配管する部分での不等沈下量を吸収し、伸縮継手の曲げ変形を防止し得るというものである。
また、歪を受けても亀裂が入ったり、破断したり、連結が外れたりしないようにすることを目的とした管路の伸縮構造並びに伸縮可撓構造が知られている(特許文献3参照)。このものは、外管の軸線方向の一端部の内側に、内管の軸線方向の一端部をその軸線方向にスライド可能に差込み、内外両管の差込み部の外周にカバーを被せている。そして、内管の外周のうち、外管の一端部よりも外側に内管ストッパーが形成され、外管の一端部の外周に外管ストッパーとカバー係止部が形成されている。
また、前記カバーのうち、外管側の端部には外管のカバー係止部に係止可能な外管係止部が形成されている。さらに、カバーの他端側であって、内管ストッパーよりも外側には、同内管ストッパーが係止するカバーストッパーが形成されている。このように、外管と内管とをスライド可能にしてあるので、2以上の管路が伸縮自在となっている。また、内管の軸線方向の他端部を、他の連結管に回動可能に連結してある。よって、地中に配管されたガス管や水道管等の管路は、地盤沈下や貯水タンクの傾斜等があっても、歪を受けにくくなり、管路における水漏れやガス漏れが発生しにくくなるというものである。
また、小さな半径のエルボを使用しても大きな地盤沈下に耐えられるトランジッション継手を得ることを目的としたガス配管用トランジッション継手が知られている(特許文献4参照)。このガス配管用トランジッション継手は、金属製継手本体に樹脂製蛇腹管を一体に接続しており、この蛇腹管側を樹脂製エルボ側に、継手本体側を金属製の建物引き込み立ち上がり管側に接続する構成となっている。
このように、このガス配管用トランジッション継手は、金属製継手本体に樹脂製蛇腹管を一体に接続し、この蛇腹管側を樹脂製エルボに接続しているので、地盤沈下があった場合、地中配管された樹脂製蛇腹管が伸長し、かつ樹脂管が沈下量を吸収する。よって、他の配管部分に無理な力がかからないようになり、ガス漏れの発生が回避されるというものである。
また、埋設管路側の継手部を管端部に確実に追従させることにより、漏水のおそれがなく、しかも長い直管部を設けることなしに安価に構成することを目的とした伸縮可撓管が提案されている(特許文献5参照)。この伸縮可撓管は、沈下するおそれのある地盤に埋設される管路と沈下の起こらない構造物との間を接続するもので、端部に継手部を有するとともに、この継手部の近傍の外面に、この外面から地盤内に向けて入り込む規制板を取り付けた構成となっている。
このような構成によれば、地盤沈下時に伸縮可撓部の曲げ剛性によって継手部を埋設管路の管軸心に対して傾斜させるようなモーメントが作用しても、そのモーメントが規制板を介して地盤により受けられるので、継手部は埋設管路の管端部の沈下に確実に追従する。したがって、漏水を確実に防止でき、しかも規制板を取り付けるだけでよいので、安価に設置できる。
また、止水性を確保しつつ地盤変動に追従可能で、かつ低コストな管路の連結構造及び連結方法が提案されている(特許文献6参照)。この管路の連結構造は、地盤内に構築された下水管である既設管を有している。そして、この既設管の側面には、連結部であるソケット管が溶接等で接続されている。また、このソケット管には、雨水管である削進管が嵌合され、この削進管の一端は地上に露出している。さらに、このソケット管と削進管の間に、シール材が設けられている。よって、地震や地盤沈下等で地盤が変動した場合であっても、シール材により連結構造の内部に地下水が浸入するのを防止することができる。
しかしながら、上記特許文献1の排水管路の構造は、屋外側へ延出する排水管に接続された上流側曲がり管と、排水ますの流入側受口に接続された下流側曲がり管及びこれらの間に接続された伸縮継手が、排水管の延出方向に沿ってほぼ直線上に配置されているので、建物から相当離れた位置まで敷地が必要であり、狭小地等においては、設置が困難である。また、上流側と下流側の二つの曲がり管がそれぞれクランク状に形成されているので、排水がスムーズに流れにくいという問題点もある。さらに、この排水管路の構造は鉛直方向の変位にのみ管が追従するものであるので、水平方向の変位に対する対応が不十分である。
また、上記特許文献2の配管の不等沈下対策方法も、地盤中に鉛直姿勢で設けられる第1の伸縮継手と、水平姿勢で設けられる第2の伸縮継手の各伸び代以上に地盤が沈下したときは、これらの伸縮継手が対応できない。よって、上記特許文献1の排水管路の構造と同じく、管路同士の連結が外れるおそれがあった。しかも、水平管路部分で逆勾配になる虞があり、排水がスムーズに行われなくなる虞があった。
また、上記特許文献3の管路の伸縮構造並びに伸縮可撓構造は、2以上の管路が伸縮自在のみの構成であるから、地盤沈下があったときに、管の長手方向以外への荷重に対して弱いという欠点がある。したがって、貯水タンクが追従して沈下せずに傾斜する不具合があり、貯水タンクに亀裂が入って水漏れが生じるおそれがあった。
また、上記特許文献4のガス配管用トランジッション継手は、金属製継手本体に樹脂製蛇腹管を一体に接続した簡易な構成であるから、不等沈下の吸収量が小さく、樹脂製蛇腹管の伸び代以上に地盤が沈下したときは、この樹脂製蛇腹管が対応できなかった。このため、配管や樹脂製蛇腹管に亀裂が入ってガス漏れが発生するおそれがあった。
また、上記特許文献5の伸縮可撓管は、埋設管路の管軸心に対して傾斜させるようなモーメントを規制板及び地盤側で受けることはできるが、鉛直成分を吸収しにくいので、伸縮可撓管の伸び代以上に地盤が沈下したときは、この伸縮可撓管が対応できなかった。よって、歪を受けて管路に亀裂が入ったり、抜き上がったり、管路同士の連結が外れる等で、水漏れが生じ易いという問題が残されていた。
また、上記特許文献6の管路の連結構造及び連結方法は、下水管である既設管の側面に、連結部であるソケット管を溶接等で接続した構成であり、不等沈下の吸収量が小さいという難点があった。よって、地盤沈下に十分追従し得ず、やはり管路に亀裂が入ったり、連結が外れたりする等で、内部に地下水が浸入するおそれがあった。
そこで、本発明は、地盤に埋設された配管路の亀裂、損傷、抜き上り及び流体排出桝の傾きや破損を抑制することができる不等沈下対策配管構造を提供することを目的としている。
請求項1に記載の不等沈下対策配管構造は、建物から地中に向けて配管された引込管の管端に、この管端に対して回動自在の管路接続部を接続するとともに、流入側接続部及び流出側接続部を備えた流体排出桝の前記流入側接続部を回動自在の接続構造とし、前記管路接続部と前記流入側接続部との間に、前記引込管の軸線方向を含む水平面内で屈曲する第1屈曲部と、長さ方向に伸縮する伸縮自在部と、前記第1屈曲部の反対方向に屈曲する第2屈曲部と、を備えた配管路を接続することを特徴としている。
請求項2に記載の不等沈下対策配管構造は、前記管路接続部は、前記引込管の軸線方向に対し所定の傾斜角度内で自在に屈曲可能な自在継手であることを特徴としている。
請求項3に記載の不等沈下対策配管構造は、前記第1屈曲部は、略直角に屈曲するエルボ継手であることを特徴としている。
請求項4に記載の不等沈下対策配管構造は、前記伸縮自在部は、伸縮自在、且つ回動自在な伸縮継手であることを特徴としている。
請求項1に記載の不等沈下対策配管構造によると、前記引込管に接続された管路接続部と流体排出桝の流入側接続部との間に、第1屈曲部、伸縮自在部及び第2屈曲部を備えた配管路を接続しているので、建物周囲の地盤が不等沈下すると、引込管に対して配管路の管路接続部が回動するとともに、流体排出桝の流入側接続部も回動し、さらに、伸縮自在部が伸張して流体排出桝が地盤の沈下に追従する。
これにより、流体排出桝は傾くことなく鉛直方向へ沈下することとなり、回動自在な管路接続部及び流入側接続部が不等沈下の鉛直成分に対応しつつ、伸縮自在部がやや傾きながら不等沈下の水平成分に対応しつつ、地盤の沈下を吸収する。
このように管路接続部が回動自在に構成されることで、伸縮自在部は傾斜自在となるので、伸縮自在部を鉛直又は水平方向に固定して地盤沈下に対応しようとした場合に比べて地盤沈下に柔軟に対応でき、且つ、地盤の沈下量に比べて伸縮自在部の伸長量を短くすることができる。さらにまた、液体排出桝の鉛直方向への沈下に対応しつつ、伸縮自在部を傾斜をなだらかに傾斜を付けた状態とすることができるので、極端な鉛直方向や水平方向に伸縮自在部を設けた場合に比べて、排水管路をなだらかに形成することができるので、スムーズな排水を行うことができる。しかも、流体排出桝の流入側接続部が回動自在であるので、この流体排出桝と回動自在な継手とを別構成にした場合に比べて施工が容易であるとともに、しっかりと取付けることができる。
また、予め伸縮自在部の伸長できる限界から、この不等沈下対策配管構造が対応できる沈下量の限界を計算しておくことができるので、地盤が想定以上に沈下した場合にも配管の補修交換時期を確実に判断することができる。
請求項2に記載の不等沈下対策配管構造によると、前記管路接続部が引込管の軸線方向に対し所定の傾斜角度内で自在に屈曲可能な自在継手であるから、不等沈下の鉛直成分により一層対応し、不等沈下量に応じて流体排出桝を追従させることができる。
請求項3に記載の不等沈下対策配管構造によると、前記第1屈曲部は、略直角に屈曲するエルボ継手であるので、配管を埋設する敷地の幅が余り確保できない場合にも簡単な構成で、配管路を容易に製作して設置することができる。
請求項4に記載の不等沈下対策配管構造によると、前記伸縮自在部は、伸縮自在、且つ回動自在な伸縮継手であるので、流体排出桝が傾くことをよりいっそう抑制することができる。
以下、本発明における不等沈下対策配管構造について、図面を参照しながら詳述する。この実施形態においては、住宅等の建物の外壁1から導出される排水用引込管2と、地盤に埋設された排水桝7との間を連通させる排水管路3として不等沈下対策配管構造を採用している。
引込管2は、図1に示すように、基礎又は外壁1を貫通して建物内から屋外へ延びる配管である。そして、外壁1から所要の間隔をあけた屋外の地盤内で、引込管2の管端2aに排水管路3が接続される。この排水管路3は、図1〜図4に示すように、自在継手4、第1エルボ継手8、伸縮継手5、第2エルボ継手6及び排水桝7を含んで構成される。
自在継手4は、図1、図2に示すように、継手本体4aと可動部4dとからなり、例えば、ゴム製リングなどのシール部材4gを介して連結することによって、排水管路3の気密を保持するようになっている。即ち、継手本体4aは、図2(a)に示すように、湾曲部4bと円筒部4cとを一体形成したもので、略半球形状の湾曲部4bが円筒部4cの内径よりも略大径に形成されている。そして、湾曲部4bの開口4eを、引込管2の管端2aの外径よりも略大径に形成してある。さらに、円筒部4cは第1エルボ継手8の一端部8aの外径よりも略小径に形成してある。
可動部4dは、略円筒形で、弾性を有した合成樹脂材等により形成されている。この可動部4dの外周面は、湾曲部4bの内周面に沿った湾曲状で、内径が前記管端2aの外径よりも略大径となっており、この管端2aの外周面と湾曲部4bの内周面との間に収納保持される。また、この可動部4dは、外側面の2箇所に環状凹溝を形成してあり、中央の環状凹溝4fに前記シール部材4gが嵌着されている。この可動部4dは、湾曲部4b内に収納されたときフリーな状態であり、継手本体4aを360°回動自在とする。また、引込管2に自在継手4を接続した状態では、図2(b)に示す如く継手本体4aが引込管2の軸線方向に対し、傾斜角度θ内で鉛直方向へ屈曲可能となっている。本例では、傾斜角度θを約13°に設定している。
これにより、地盤が沈下したとき、排水管路3が追従して沈下しても、引込管2に接続された固定状態の可動部4dに対して継手本体4aが自在に回動し、この沈下量を吸収することができる。また、地盤の沈下とともに継手本体4aが自在に屈曲するので、引込管2に対して排水管路3が鉛直方向へ傾斜しても、この傾斜分を充分に吸収可能である。
自在継手4は、継手本体4aの可動部4dを引込管2の管端2aに接続し、円筒部4cの端部に第1エルボ継手8の一端部8aを接続している。このように自在継手4を介して、引込管2と第1エルボ継手8とが連通されることにより、建物の外壁1に固定されて動くことがない引込管2に対して第1エルボ継手8が回動自在に構成されることとなり、第1エルボ継手8の他端部8bに直管部9を介して接続された伸縮継手5を自在に傾斜させることができる。
伸縮継手5は、図1、図3に示すように、内筒管5aと外筒管5bとからなり、シール部材5iを介して連結することによって、排水管路3の気密を保持する。内筒管5aは、図3(a)に示す如く外径が外筒管5bの内径よりも僅かに小径で、この外筒管5b内に挿入されて、図3(b)に示すように、長さ方向に伸縮自在となっている。また、内筒管5aと外筒管5bとは、360°回動自在である。外筒管5bは、管端に鍔部5hを設けており、この鍔部5hの内側に環状の凹溝を形成して、シール部材5iを保持するようになっている。
この伸縮継手5は、外筒管5bに第2エルボ継手6の一端部6aが接続されている。この伸縮継手5は、地盤が沈下したとき、充分に対応し得る伸び代を有している。つまり、地盤沈下に後述の排水桝7が追従して沈下しても、この沈下に伴う引っ張り力に応じて外筒管5bに内筒管5aが摺接しつつ伸張するので、この沈下量を吸収することができる。
第2エルボ継手6は、図1に示すように、一端部6aの開口と他端部6bの開口とを直角方向へ向けており、内側面を略直角に屈曲し、外側面を緩やかな傾斜面にして、排水を流れ易くしている。この第2エルボ継手6の他端部6bは円形状で、図4に示す如くその内周面に沿って凹状の被嵌合部6cを形成してある。そして、この被嵌合部6cにシール部材6dを保持し、排水桝7の嵌合部7gに嵌合されるようになっている。
この排水桝7は、図1、図4に示すように、桝本体7aに立上げ部7b、第1、第2の流入側接続部7d,7e及び流出側接続部7fを設けている。立上げ部7bは、略円筒状で上方の開口7cが点検口となっている。第1流入側接続部7dに排水管路3が接続され、第2流入側接続部7eに排水流入管12が接続され、流出側接続部7fに排水流出管13が接続される。
この第1流入側接続部7dは、接続口が第2エルボ継手6に回動自在な嵌合構造となっている。即ち、この接続口は、前記第2エルボ継手6の他端部6bと略同形状で、環状の嵌合部7gが形成されている。この嵌合部7gには、シール部材6dを介して前記第2エルボ継手6の被嵌合部6cが回動自在に嵌合保持されている。
これにより、地盤が沈下したとき、排水桝7が追従して沈下しても、第1流入側接続部7dに対して第2エルボ継手6が回動する。また、引込管2に対し自在継手4が自在に回動する。そして、伸縮継手5が引っ張りに応じて伸長する。これにより、直管部9及び伸縮継手5を傾斜自在にしつつも、排水桝7を傾くことなく沈下させることができる。このように、不等沈下対策配管構造は、地盤沈下に伴って排水桝7が支障なく追従し、沈下量を充分に吸収するので、沈下の度合いの大きい地盤にも不具合が生じるおそれなく設置することができる。
このように構成される不等沈下対策配管構造の動作メカニズムについて、図5を参照しつつ説明する。図5において、Cは自在継手4の中心線、Eは排水管路3の先端、W1は伸縮継手5の伸長前の長さ、Wnは伸縮継手5の伸長時の長さ、H1は排水桝7の初期の位置、Hnは排水桝7の沈下時の位置、Hは排水桝7の沈下量である。
同図に示されるように、排水桝7は、初期の位置H1から沈下が進行するとHnの位置になる。よって、H1―Hn=Hが、沈下に追従する排水桝7の沈下量である。また、排水管路3は、伸縮継手5の伸長前の長さがW1であるとき、排水桝7の沈下が進行するに伴って伸長し、Hnの沈下位置ではWnの長さとなる。よって、Wn―W1=Wが、沈下に応じた伸縮継手5の伸長量である。
この排水管路3は、地盤の沈下に追従する排水桝7の沈下に応じて第1エルボ8、及び第2エルボ6が回動し、伸縮継手5が伸長するように動作する。この結果、地盤が沈下しても排水管路3に負担がかかることなく、また、排水桝7が傾くことなく設置当初の姿勢が維持される。よって、排水管路3が折損したり、排水桝7が破損するのが回避され、漏水も防止される。また、このように自在継手4を回動させることにより伸縮継手5は排水桝7側に向かって下る方向により傾きつつ伸長する。したがって、このような伸縮継手5を鉛直又は水平方向に固定して地盤沈下に対応しようとした場合に比べて地盤沈下に柔軟に対応でき、且つ、地盤の沈下量に比べて伸縮継手5の伸長量を短くすることができる。さらにまた、排水桝7の鉛直方向への沈下に対応しつつ、伸縮継手5を傾斜をなだらかに付けた状態とすることができるので、極端な鉛直方向や水平方向に伸縮継手5を設けた場合に比べて、排水管路をなだらかに形成することができるので、スムーズな排水を行うことができる。
しかし、地盤によっては、不等沈下対策配管構造の設計限界以上に沈下することがある。すなわち伸縮継手5が伸びきってこれ以上伸長することができなくなるか、伸縮継手5の連結が外れることが考えられる。したがって、地盤が不等沈下対策配管構造の設計限界まで沈下した場合は早期に補修又は交換する必要がある。そこで予め不等沈下対策配管構造の沈下量の設計限界を計算しておき、設計限界に近づいた場合には、補修又は交換を行う。
不等沈下対策配管構造の沈下量の設計限界Dは、以下のように計算することができる。なお、図6及び下記の数式において、Dは排水桝7の沈下量の設計限界、Lは伸張前の伸縮継手5を含む排水管路3の全長、rは伸縮継手5の最大伸張量、αは埋設当初の排水管路3の勾配角度、βは伸縮継手5の最大伸張時の排水管路3の勾配角度である。そして、予め排水管路3の全長L及び伸縮継手5の最大伸長量rを計測しておくとともに、排水管路3を埋設した当初の排水管路3の勾配角度αを記録しておく。
D0y=Lsinα・・・・・・・(1)
D0x=Lcosα・・・・・・・(2)
D1y=(L+r)sinβ・・・(3)
(4)の数式に排水管路3の全長L、伸縮継手5の最大伸長量r、及び当初の排水管路3の勾配角度αを代入して、伸縮継手5の最大伸張時の排水管路3の勾配角度βを導き出し、このβの値を(3)を代入して、D1yを求める。そして排水桝の初期位置D0yからD1yを引いた値が排水桝の鉛直方向の移動量である。鉛直方向の移動量D0y−D1y=排水桝7の沈下量の設計限界Dであるので、定期的に地盤沈下量を調査しておくことで、実際に伸縮継手5が限界伸長量に達して、脱落や破損により水漏れが起こる前に不等沈下対策配管構造の交換又は補修を行うことができる。
次に、不等沈下対策配管構造の設置例について、図7〜図9を参照しつつ説明する。この不等沈下対策配管構造は、建物の外壁1から地盤に向けられた第1、第2引込管2A,2Bに第1及び第2排水管路3A,3Bを接続して、各排水桝7A,7Bに排水を流出させるようになっている。この第1及び第2排水管路3A,3Bは、図1〜図4に示した排水管路3と基本的構成が略同一であり、同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
第1及び第2引込管2A,2Bは、図7〜図8に示すように、コンクリート製の外壁1を挿通して建物内へ引込まれている。そして、外壁1から所定距離屋外へ延出した位置で、各管端に第1、第2排水管路3A,3Bがそれぞれ接続される。第1、第2排水管路3A,3Bは、2本の自在継手4、第1、第2エルボ継手8,6、伸縮継手5及び排水桝7A,7B等をそれぞれ備えて構成される。
第1排水管路3Aは、自在継手4の一端部を第1引込管2Aの管端に接続し、他端部に曲管部を介して直管部10の一端部を接続している。この直管部10は、下向きに傾斜しており、他端部に曲管部を介して直管部9の一端部が接続されている。この直管部9は、略水平方向に延出し、他端部に第1エルボ継手8の一端部が接続されている。
この第1エルボ継手8は、略水平方向に向けた他端部に短管部を介して伸縮継手5の一端部が接続されている。この伸縮継手5は、略水平方向に延出し、他端部に短管部を介して第2エルボ継手6の一端部が接続されている。この第2エルボ継手6は、他端部に第1排水桝7Aの第1流入側接続部7dが接続されている。
第2排水管路3Bは、第1排水管路3Aと構成が同一であり、第2引込管2Bと第2排水桝7Bとの間に接続されている。そして、この第2排水桝7Bの第2流入側接続部7eと、第1排水桝7Aの流出側接続部7fとの間に排水流出管12が接続されている。また、この第2排水桝7Bの流出側接続部7fに排水流出管13が接続されている。
図7及び図8において、14はプラベース、15は支柱である。プラベース14は、略方形に形成されており、各排水桝7A,7Bの下部に敷設されている。支柱15は、排水桝7A,7Bの底面を支持するようにプラベース14上に立設されている。これにより、排水桝7A,7Bの荷重をプラベース14側から地中に分散させることができる。また、図9において、16は保持プレートであり、各排水管路3A,3Bの他端部の下部に敷設されていて、排水桝7A,7B側の接続部を保持するようになっている。
このように構成された不等沈下対策配管構造は、第1引込管2Aからの排水が、第1排水管路3Aを介して第1排水桝7Aに流入し、排水流出管12を介して第2排水桝7Bに流入する。また、第2引込管2Bからの排水が、第2排水管路3Bを介して第2排水桝7Bに流入した後、第1排水桝7Aからの排水とともに排水流出管13を介して公共桝側に流出する。
地盤が沈下したときには、各排水管路3A,3Bが追従して沈下する一方、固定状態の各引込管2A,2Bに対して各自在継手4が自在に回動し、この沈下量を吸収することができる。また、地盤沈下に各排水桝7A,7Bが追従して沈下しても、この沈下に伴う引っ張り力に応じて各伸縮継手5が伸張するので、沈下量を充分に吸収することができる。
さらに、地盤の沈下に各排水桝7A,7Bが追従して沈下しても、第1流入側接続部7dに対して、第2エルボ継手6が自在に回動し、この沈下量を吸収できる。よって、両排水桝7A,7Bを傾くことなく沈下させることができる。
このように、各自在継手4、及び第1流入側接続部7dの回転と、各伸縮継手5の伸縮とにより不等沈下を吸収するので、例えば図6に示すように、伸縮継手5の伸長量r以上に鉛直方向への沈下量Dを吸収することができる。よって、各引込管2A,2Bや各排水管路3A,3Bが折損したり、折曲、又は脱落することなく、両排水桝7A,7Bが傾斜したり、破損するのが回避される。これにより、引込管2A,2Bからの排水が漏れることなく、排水桝7Bより下水道側に流出する。
以上のように、不等沈下対策配管構造は、排水桝7A,7Bが地盤沈下に伴って支障なく追従し、沈下量を充分に吸収するので、沈下の度合いの大きい地盤にも不具合が生じるおそれなく設置することができる。
次に、不等沈下対策配管構造の他の設置例について、図10及び図11を参照しつつ説明する。この不等沈下対策配管構造は、建物の外壁1から地盤に向けられた第1、第2引込管2C,2Dに第1及び第2排水管路3C,3Dを接続して、各排水桝7C,7Dに排水を流出させるようになっている。この第1及び第2排水管路3C,3Dは、図7〜図9に示した前記排水管路3A,3Bと基本的構成が略同一であり、同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
第1引込管2C及び第2引込管2Dは、図10、図11に示すように、コンクリート製の外壁1を挿通して建物内へ引込まれている。そして、外壁1から屋外へ延出した位置で、各管端に第1排水管路3C、第2排水管路3Dがそれぞれ接続される。第1、第2排水管路3C,3Dは、一対の鉛直部エルボ17a、17b、鉛直部直管18、第1エルボ継手8、第2エルボ継手6、及び伸縮継手5及び排水桝7C,7Dをそれぞれ備えて構成される。
第1排水管路3Cは、第1引込管2Cの管端に管路を鉛直方向に折曲する上側の鉛直部エルボ17aを接続している。そして、この上側の鉛直部エルボ17aの下方に向けた他端に鉛直部直管18を接続し、この鉛直部直管18の下端に管路を水平方向に戻す下側の鉛直部エルボ17bを接続している。そして、下側の鉛直部エルボ17bの水平方向を向いた端部には、短管部及び自在継手4を介して、第1エルボ継手8が接続され、この第1エルボ継手8は、直管部10を介して伸縮継手5が接続されている。この伸縮継手5は、他端部に第2エルボ継手6の一端部が接続されている。この第2エルボ継手6は、他端部に第1排水桝7Cの第1流入側接続部7dが接続されている。
また、第2排水管路3Dは、第1排水管路3Cと構成が同一であり、第2引込管2Dと第2排水桝7Dとの間に接続されている。そして、この第2排水桝7Dの第2流入側接続部7eと、第1排水桝7Cの流出側接続部7fとの間に排水流出管12が接続されている。また、第1排水桝7Cの第2流入側接続部7eに排水流出管12が接続され、第2排水桝7Dの流出側接続部7fに排水流出管13が接続されている。
以上のように構成された不等沈下対策配管構造は、鉛直部直管18を設けることにより、下側の鉛直部エルボ17bを下方に配置することができ、この鉛直部エルボ17bに接続される直管部10及び伸縮継手5の傾斜を緩やかにすることができる。したがって、直管部10及び伸縮継手5には傾斜角にゆとりがあるので、地盤が沈下したときに、伸縮継手5に接続される排水桝7C、7Dが相当程度沈下したとしてもこの排水桝7C、7Dの沈下を吸収することができる。
以上のように、不等沈下対策配管構造は、埋設深度の大きい排水桝7C,7Dが地盤沈下に伴って支障なく追従し、沈下量を充分に吸収するので、沈下の度合いの大きい地盤にも不具合が生じるおそれなく設置することができる。
なお、本実施の形態で示した不等沈下対策配管構造は、本発明に係る装置の一態様に過ぎず、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で適宜設計変更できることは勿論である。