JP2010249210A - ベルト式無段変速機 - Google Patents

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Abstract

【課題】可動シーブの倒れを抑制することができるプーリを備えるベルト式無段変速機を提供すること。
【解決手段】可動シーブ4の背面側に該可動シーブ4を固定シーブ3に向けて押圧する押圧機構18が設けられるとともに、前記可動シーブ4の背面における外周側の部分に前記押圧機構18の押圧力を前記可動シーブ4に伝達する張り出し部12が軸線方向に向けて突設され、前記可動シーブ4の背面のうち前記張り出し部12より内周側の部分に前記固定シーブ3に向けた押圧力を受けない非押圧領域13が設けられ、前記固定シーブ3は、回転軸2に一体化されるとともに、前記可動シーブ4は前記回転軸2にその軸線方向に前後動可能に嵌合され、前記可動シーブ4が前記固定シーブ3と一体の回転軸2に摺動自在に接している箇所の径が、前記可動シーブ4の前記押圧機構18における圧力流体から圧力を受ける面の外径より大きいことによる。
【選択図】図1

Description

この発明は、プーリに巻き掛けたベルトを介して動力の伝達を行うベルト式無段変速機に関するものである。
ベルト式無段変速機は、互いに平行に配列された動力側に伝動可能に接続された入力軸と、駆動輪側に伝動可能に接続された出力軸と、入力軸と出力軸とにそれぞれ設けられたプーリとを備えている。このプーリに多数のエレメントと複数のリングとにより構成されたベルトを巻き掛けて、その接触面の摩擦力により動力を伝達する。また、プーリは固定シーブと可動シーブとが設けられており、可動シーブ背面側に設けられたポンプ機構の前後動により、プーリに形成されるV字状のプーリ溝間の距離が変更される。このため、プーリ溝間に巻き掛けられたベルトの巻き掛け半径が変わり、入力回転数と出力回転数との比、つまり変速比を変更することができる。その変速比を変更するために、可動シーブの軸線方向の移動を、可動シーブの背面側に設けられた油圧室の圧油の給排を制御することにより行う。なお、他方のプーリにおける可動シーブの背面側にも油圧室が設けられており、無段変速機に入力されるトルクに応じた油圧をその油圧室に供給することにより、入力トルクに応じた挟圧力、すなわち伝達トルク容量を設定する構成とされている。
このようなベルト式無段変速機の一例が特許文献1から4に記載されている。この特許文献1に記載されたベルト式無段変速機は、上記の構成・効果に加えて固定シーブと一体化されたシーブシャフトに軸方向の孔が設けられている。この孔にスリーブを介在させて、シーブシャフトの一方端からベルトの巻き掛け半径を変えるための作動油を供給する。また他方端からベアリングなどの潤滑のための潤滑油を供給する。そしてこの両端からの作動油による押圧力と潤滑油による押圧力とがスリーブに対してシーブシャフト軸線上で反対向きに作用する。その押圧力の作用の仕方によってスリーブが所定の位置に保持されるように構成されている。
また特許文献2に記載されたベルト式無段変速機は、ベルトを挟むプーリのV溝内でのベルトのすべりを防止するために、固定シーブと油圧により駆動する可動シーブとの挟圧力を上げる構造が設けられている。その構造とは駆動損失が増大する制御油圧を上げる手法ではなく、プライマリプーリとセカンダリプーリとの有効受圧面積を調整することにより、両プーリが協調して制御される構成が用いられている。
また特許文献3に記載されたベルト式無段変速機は、従動プーリ側に設けられた動力伝達機構によって、車両の牽引走行時、つまり動力源からトルクによって駆動プーリと従動プーリとが駆動するのではなく、車輪からの駆動プーリと従動プーリとに伝えられるトルクによって両プーリが駆動する際にその車輪側からの動力を遮断するように構成されている。その動力伝達機構は従動プーリにおいて従動プーリの可動フランジが従動プーリの固定フランジから強制的に引き離すための機構である。この機構により、従動プーリから駆動プーリに対しての動力の伝達を遮断して、その結果トランスミッションで回転が生じず、各部品の損傷を抑制する。
さらに特許文献4に記載されたベルト式無段変速機は、プーリ軸と可動シーブとが動力伝達可能かつ軸方向に摺動可能とするためのボールスプラインおよびボールスプラインが収容される半球形状の溝による点接触結合に代わる構成となっている。その構成とは、プーリ軸側と可動シーブ側とに略円柱形状のローラが収容される断面矩形状もしくは断面V形状の溝を設けて、そのローラが複数収容されるものである。これによりスプライン結合において点接触結合から面接触結合もしくは線接触結合となり、点接触結合で発生する応力集中を低減できる。
特開2008−223903号公報 特開2005−273730号公報 特開2001−108033号公報 特開2001−165254号公報
しかしながら特許文献1から4に記載されているベルト式無段変速機の油圧アクチュエータもしくは油圧サーボ機構では、プーリの可動シーブ裏面の外周部のみではなく内周部も油圧により付勢される。これにより、例えば外周部のみもしくは外周部が集中的に付勢される場合に比較して、ベルトがプーリの外径側に巻き付きついている際などに、ベルトの反力による可動シーブのいわゆる倒れが大きくなってしまい、いわゆるエレメントの沈み込みおよびエレメントとプーリとの下当り接触が生じてしまう虞がある。
この発明は上記の技術的課題に着目してなされたものであり、可動シーブの倒れを抑制することができるプーリを備えたベルト式無段変速機を提供することを目的とするものである。
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、固定シーブと該固定シーブに対して前後動するように配置された可動シーブとによってベルトを挟み付け、これら固定シーブと可動シーブとからなるプーリに対する前記ベルトの巻掛け半径を変化させることにより変速を行うベルト式無段変速機において、前記可動シーブの背面側に該可動シーブを前記固定シーブに向けて押圧する押圧機構が設けられるとともに、前記可動シーブの背面における外周側の部分に前記押圧機構の押圧力を前記可動シーブに伝達する張り出し部が軸線方向に向けて突設され、前記可動シーブの背面のうち前記張り出し部より内周側の部分に前記固定シーブに向けた押圧力を受けない非押圧領域が設けられ、前記固定シーブは、回転軸に一体化されるとともに、前記可動シーブは前記回転軸にその軸線方向に前後動可能に嵌合され、前記可動シーブが前記固定シーブと一体の回転軸に摺動自在に接している箇所の径が、前記可動シーブの前記押圧機構における圧力流体から圧力を受ける面の外径より大きいことを特徴とするものである。
請求項1の発明によれば、押圧機構により伝えられる押圧力が前記可動シーブに突設された張り出し部を介して行われ、前記張り出し部より内周側の部分に前記押圧力を受けない非押圧領域が設けられていることにより、相対的に可動シーブの背面における外周側の部分に押圧力が加えられる。一方、可動シーブの押圧機構における圧力流体から圧力を受ける面では前記可動シーブの移動のための押圧機構に供給される圧力流体の押圧力を受ける。これらの押圧力により固定シーブに一体化された回転軸を摺動してその軸線方向に可動シーブが移動する。このとき可動シーブにおいて可動シーブのボス部を除く内周側は付勢されず、主に外周側を中心に押圧力が作用する。そのため、ベルトを構成するエレメントとの接触位置を支点にしたシーブ下側部分の変形や、それに伴う可動シーブにいわゆる倒れが生じない。
また、可動シーブが固定シーブと一体の回転軸に摺動自在に接している箇所の径に受ける油圧による押圧力が、前記可動シーブの前記押圧機構の圧力流体から圧力を受ける面にかかる押圧力より大きく、さらに可動シーブが固定シーブと一体の回転軸に摺動自在に接している箇所の径の外周側に作用する押圧力がシーブの倒れと反対方向の力が作用するため、シーブの倒れを回避もしくは抑制することができる。それに伴い、エレメントの沈み込みやエレメントの傾きが要因となる、いわゆる下当り接触などの現象が回避もしくは抑制されてトルク容量の低下や燃費の悪化を防ぐことができる。このような効果を奏するとともに、その製品化においてプーリの大型化や高剛性化をせずにシーブ倒れを抑制でき、そのため、コスト・重量の増加なくトルク容量や燃費を向上できる。
この発明のプーリの第1の構成例において、プーリシャフト中心軸線の上方側の部分の縦断面図である。 この発明のプーリにおけるシーブ倒れの一例を表す概略図である。 従来のプーリの構成例において、プーリシャフト中心軸線の上方側の部分の縦断面図である。 従来のプーリにおけるシーブ倒れの一例を表す概略図である。
つぎに、この発明の実施例を図面に基づいて説明する。図1はこの発明の無段変速機における入力側のプーリ(プライマリプーリ)1を示しており、ここに示すプーリ1は、回転軸(プーリシャフト)2と一体化されている固定シーブ3とこれに対向するように前記プーリシャフト2に嵌合させられた可動シーブ4とによって構成されている。これらのシーブ3,4の対向面は、テーパ状に形成され、これらのテーパ面によって、ベルト5を巻き掛ける(挟み込む)巻き掛け溝6が形成されている。なお、ベルト5は、従来のものと同様の構成であって、姿勢を揃えて環状に配列した多数のエレメントにリング(フープ)を巻き掛けて結束して構成されている。
上記の可動シーブ4の背面側(図1の左側)には、可動シーブ4側に開口したシリンダ部材7が配置されており、前記プーリシャフト2に嵌合している前記可動シーブ4のボス部8がそのシリンダ部材7の内部に挿入されている。そして、このボス部8の外周面と前記シリンダ部材7の内周面に前後動自在に接触したピストン部材9が設けられている。そのピストン部材9の内周部と外周部とにはシールリング10が配置され、したがってシリンダ部材7の内部に油圧室11が形成されている。
そして、前記可動シーブ4の背面における外周側の部分に前記ピストン部材9に向けた軸線方向に突出した張り出し部12が形成されており、その張り出し部12の先端部が前記ピストン部材9に当接させられている。したがって、ピストン部材9による推力が、張り出し部12を介して、可動シーブ4の背面のうちその外周側の部分に作用するように構成されている。また、可動シーブ4の背面側で、その張り出し部12と前記ボス部8との間の部分は解放空間となっており、可動シーブ4の背面における解放空間に相当する部分が、ピストン部材9から推力を受けない非押圧領域13となっている。
前記プーリシャフト2にはその中心軸線に沿って油路14が形成され、この油路14から半径方向に向けて分岐した分岐油路15,16が形成されている。一方の分岐油路15は、プーリシャフト2の外周面のうち前記ボス部8が嵌合している部分に開口しており、そのボス部8には半径方向に貫通した貫通孔が形成され、したがってこれら分岐油路15および貫通孔を介して前記油圧室11に圧油が供給されるようになっている。また、プーリシャフト2の外径は、可動シーブ4が嵌合している部分で大径であり、前記ボス部8が嵌合している部分で相対的に小径になっており、このように外径が変化する部分に段差部が形成されている。
そして、可動シーブ4およびそのボス部8の内径も、プーリシャフト2の外径に合わせて大小に変化しており、その結果、前記の段差部に密閉空間17が形成されている。その密閉空間17に他方の分岐油路16が開口している。この密閉空間17の構造は、図1に示すように可動シーブ4が嵌合して密閉空間17を形成するプーリシャフト2の受け面Aの外径Dが可動シーブ4のボス部8の最大外径dよりも相対的に大きい構造となっている。つまり可動シーブ4のボス部8の最大外径dと可動シーブ4が嵌合するプーリシャフト2の受け面Aの外径DとがD>dの関係式を満たす構成となっている。またこのプーリシャフト2に設けられた受け面Aと対面する可動シーブ4側に受け面Bが内径Dとして設けられている。この受け面A,Bが本願請求項1に記載の「前記可動シーブが前記固定シーブと一体の回転軸に摺動自在に接している箇所の径」に相当する面であり、またボス部8の内径が本願請求項1に記載の「前記可動シーブの前記押圧機構における圧力流体から圧力を受ける面」に相当する。
上記のようにプーリシャフト2に設けられた油路14、分岐油路15,16、前記の段差部に形成された密閉空間17、シリンダ部材7に形成された油圧室11、シールリング10、ピストン部材9などにより油圧アクチュエータ(押圧機構)18が構成されている。なお、プーリシャフト2と可動シーブ4とは図示しないボールスプラインを介して前記可動シーブ4を滑らかに軸線方向に前後動させるように構成されている。また、符号19,20は軸受を示し、プーリシャフト2はこれらの軸受19,20によって回転自在に支持されている。さらにまた、プーリ1をプライマリプーリとしたが、プーリ1の形状などを調整することでセカンダリプーリにも本発明の構造を適用可能である。
つぎに、プーリ1の動作を図1に基づいて説明する。プーリ1には、上記に記載したように油圧アクチュエータ18が形成されており、図示しない油圧ポンプと油圧制御装置とにより油圧が制御・供給される。供給された油圧はプーリシャフト2に設けられた油路14から分岐油路15を介し、さらにボス部8の半径方向に貫通した貫通孔からシリンダ部材7の内部に形成された油圧室11にオイルが供給されるようになっている。そして供給されたオイルの油圧ポンプによる圧力と油圧室11が回転運動することによるオイルの遠心力によって生じる圧力とが、可動シーブ4の背面の張り出し部12に当接し、ボス部8に隔てられて設けられたピストン部材9に付与される。
ピストン部材9の圧力の受け面Cに付与された圧力は張り出し部12とピストン部材9とが当接している面を介して伝達される。そしてピストン部材9と張り出し部12とが当接し、可動シーブ4と一体化した状態で、油圧による可動シーブ4の前後動が行われる。また、プーリシャフト2に設けられた分岐油路16にもオイルの油圧が供給され、分岐油路16を介してプーリシャフト2と可動シーブ4の嵌合する段差部の密閉空間17にオイルが供給される。この密閉空間17に供給されるオイルの油圧が可動シーブ4の動作やシーブ倒れなどの挙動に影響を与える。
そして、可動シーブ4の前後動が行われると固定シーブ3と可動シーブ4との間に形成されるテーパ状の巻き掛け溝6の幅が変化する。巻き掛け溝6の幅が変化すると挟まれているベルト5の巻き掛け半径がプーリの狭圧力とベルト5の張力とによって変更される。このとき、プーリ1が摩擦伝動している状態でベルト5の巻き掛け半径が変更できるので連続的に変速比が変更される。そして、油圧による可動シーブ4の前後動が行われ、ベルト5に狭圧力を与える際に、可動シーブ4とベルト5のエレメントと固定シーブ3との接触面に互いに力が作用する。この可動シーブ4とベルト5のエレメントと固定シーブ3との接触面に力が作用することにより、いわゆるシーブ倒れが発生してしまう場合がある。
このシーブ3,4の倒れは固定シーブ3と可動シーブ4とに油圧による押圧力が作用することにより固定シーブ3と可動シーブ4とに変形が引き起こされることで発生する。これにより、ベルト5のエレメントが巻き掛け溝6の内周方向に沈み込んでしまう現象(エレメントの沈み込み)や、板片状のエレメントが油圧による押圧力によって作用するモーメントに起因して、その板面で回転もしくは傾いてしまう現象などが発生してしまう場合がある。またさらに、倒れ現象が発生することにより、図4に示すようなエレメントが固定シーブ3と可動シーブ4とで形成される巻き掛け溝6の内周側で接触する現象(下当たり接触)も発生してしまう場合がある。
通常、可動シーブ4の背面内周側にも油圧によるシーブを押す力が作用するような構成が一般的である。このような構成の場合、ベルト5がプーリ1の外周側に巻き掛けられている際に、ベルト5の巻き掛け溝6の外周側では固定シーブ3と可動シーブ4とベルト5のエレメントとに作用する力は互いの反力とベルト5の巻き掛け溝6の外周側で油圧アクチュエータ18により作用する押圧力とにより均衡状態であるが、可動シーブ4の内周側で油圧アクチュエータ18により作用する押圧力が付与されることにより、ベルト5のエレメントから両シーブ3,4が反力を受けて変形を起こしてしまう可能性が増大する。
本発明では、この両シーブ3,4が変形することによるシーブ倒れを回避もしくは抑制するために、可動シーブ4の背面側で、その張り出し部12と前記ボス部8との間の部分に、ピストン部材9からの推力を受けない非押圧領域13が設けられた構成となっている。また張り出し部12は可動シーブ4の最外径側に設けられて、エレメントが可動シーブ4の外径側に当接した場合でも張り出し部12の方が相対的に可動シーブ4の外径側に位置する構成が望ましい。これにより、ピストン部材9から推力を張り出し部12が受けると、可動シーブ4はエレメントとの接触位置より下に力を受けなくなり、張り出し部12に作用する押圧力とエレメントからの反力とよる偶力でシーブ倒れを抑制できる。また、シーブ倒れを抑制するために、シーブの構造を補強するためのプーリの重量やコストの増加がなくシーブ倒れを抑制できる。さらにシーブ倒れが抑制できるためトルクをロスなく伝達でき、燃費を上げることができる。
また、本発明の構成によると、プーリシャフト2の軸線上の可動シーブ4側から固定シーブ3側の方向を正,油圧をP,可動シーブ4のボス部8の最大外径はd,可動シーブ4が嵌合するプーリシャフト2の受け面Aの外径もしくは可動シーブ側の受け面Bの内径をDとすると、受け面Bに作用する押圧力は、
(P×π(Dの2乗)/4)・・・I式
となり(図1の矢印I)、ボス部8に作用する押圧力は、
(P×π(dの2乗)/4)・・・II式
となる(図1の矢印II)。D>dであるから、つまり負の向きに絶対値
|(P×π((dの2乗)−(Dの2乗))/4)|
の大きさの押圧力が作用する。さらに、シール部材10の最大外径をDoutとすると、可動シーブ4の張り出し部12に作用する押圧力は、
(P×π((Doutの2乗)−(dの2乗))/4)・・・III式
である(図1の矢印III)。つまり正の向きに絶対値
|(P×π((Doutの2乗)−(dの2乗))/4)|
の大きさの押圧力が作用する。
上記のようにD>dの関係が成り立つように構成されていることから、シーブ倒れを抑制できる。しかし図3に示すようにD<dの関係が成り立つような構成(従来構成)とした場合、すなわち可動シーブ4のボス部8の最大外径dが可動シーブ4の受け面Bの内径Dよりも相対的に大きい場合であっても式IからIIIは同様に成り立つ。この場合、式IからIIIにより可動シーブ4のボス部8に作用する押圧力と可動シーブの受け面Bに作用する押圧力とによる合力は一部互いに打ち消しあう。しかしボス部8の外径dが受け面Bの内径Dよりも相対的に大きいためにシーブ倒れを起こす方向に押圧力が作用する。つまり可動シーブ4の内周側で正の方向に力が可動シーブ4に対して作用する。さらに可動シーブ4のボス部8に作用する押圧力と可動シーブの受け面Bに作用する押圧力とによる力は作用線がずれていることにより発生する偶力が、シーブ倒れを起こす方向に作用してしまう。これにより、張り出し部12とボス部8との間の部分にピストン部材9からの推力を受けない非押圧領域13が設けられ、可動シーブ4が倒れを抑制するような偶力を受けることによるシーブ倒れ抑制効果が減少し、図4に示すような、シーブ倒れによるエレメントの下当たり接触が発生し易くなってしまう。なお図3は、図1とはボス部8の最大外径dと可動シーブ4の受け面Bの内径Dとの大きさの違いを除けばほぼ同一のため、同様の符号を付して説明した。
一方、本発明の構成によると図1に示すようにD>dの関係が成り立っている。この本発明の構成によると、上述したように式IからIIIにより可動シーブ4のボス部8に作用する押圧力と可動シーブの受け面Bに作用する押圧力とによる合力は一部互いに打ち消しあう。そして可動シーブ4の受け面Bの内径Dが可動シーブ4のボス部8の最大外径dよりも相対的に大きいためにシーブ倒れを抑制する方向に押圧力が作用する。つまり可動シーブ4の内周側で負の方向に力が可動シーブ4に対して作用する。また、可動シーブ4のボス部8に作用する押圧力と可動シーブ4の受け面Bに作用する押圧力とによる力が作用線がずれていることにより発生する偶力は、シーブ倒れを抑制する方向に作用する。これにより図2に示すようにシーブ倒れを発生させる力と反対に力が作用するため、エレメント倒れを抑制できる状態、すなわちエレメントの上当たりの状態となる。
本発明では、上記のように可動シーブ4には張り出し部12に作用する押圧力とボス部8に作用する押圧力と可動シーブ4の受け面Bに作用する押圧力とによる力とモーメントとが作用することになる。そのためシーブ倒れを抑制でき、さらにシーブの構造を補強するためのプーリの重量やコストの増加がなくシーブ倒れを抑制できる。さらにシーブ倒れが抑制できるためトルクをロスなく伝達でき、燃費を向上できる。
2…回転軸、 3…固定シーブ、 4…可動シーブ、 8…ボス部、 12…張り出し部、 13…非押圧領域、 18…油圧アクチュエータ(押圧機構)。

Claims (1)

  1. 固定シーブと該固定シーブに対して前後動するように配置された可動シーブとによってベルトを挟み付け、これら固定シーブと可動シーブとからなるプーリに対する前記ベルトの巻掛け半径を変化させることにより変速を行うベルト式無段変速機において、
    前記可動シーブの背面側に該可動シーブを前記固定シーブに向けて押圧する押圧機構が設けられるとともに、
    前記可動シーブの背面における外周側の部分に前記押圧機構の押圧力を前記可動シーブに伝達する張り出し部が軸線方向に向けて突設され、
    前記可動シーブの背面のうち前記張り出し部より内周側の部分に前記固定シーブに向けた押圧力を受けない非押圧領域が設けられ、
    前記固定シーブは、回転軸に一体化されるとともに、前記可動シーブは前記回転軸にその軸線方向に前後動可能に嵌合され、
    前記可動シーブが前記固定シーブと一体の回転軸に摺動自在に接している箇所の径が、前記可動シーブの前記押圧機構における圧力流体から圧力を受ける面の外径より大きい
    ことを特徴とするベルト式無段変速機。
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