JP2010248289A - 半導電性ポリイミドベルトの製造方法 - Google Patents

半導電性ポリイミドベルトの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】表面抵抗率と体積抵抗率の制御可能で、低湿下で画出しした場合に、黒色トナーを転写する感光体にトナーが不均一に移動することがない半導電性ポリイミドベルトの製造方法を提供する。
【解決手段】導電性フィラーA1を溶媒に分散させた分散液に、テトラカルボン酸成分とジアミン成分を溶解・重合させてポリアミド酸溶液B1を調製する工程と、前記B1を、更に、攪拌することにより、前記A1を凝集させた凝集導電性フィラーA2を含有するポリアミド酸溶液B2を調製する工程と、導電性フィラーA3を溶媒に分散させた分散液に、テトラカルボン酸成分とジアミン成分を溶解・重合させてポリアミド酸溶液B3を調製する工程と、前記B2及び前記B3を混合させた混合溶液Cを調製する工程と、前記Cを加熱することによりイミド転化して半導電性ポリイミドベルトを調製する工程とを含む半導電性ポリイミドベルトの製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、半導電性ポリイミドベルトの製造方法に関する。本発明により得られる半導電性ポリイミドベルトは、例えば、電子写真方式の複写機、プリンタやファクシミリ等の電子写真画像形成装置の中間転写ベルト等に使用することができる。
従来、電子写真方式により像を形成記録する電子写真記録装置として、複写機、レーザープリンタ、ビデオプリンタ、ファクシミリ及びそれらの複合機が知られている。これらは、装置寿命の向上などを目的に、感光ドラム等の像担持体にトナー等の記録剤を介し形成された像を印刷シート上に直接定着させる方式を回避して、像担持体上の像を中間転写ベルトに一旦転写(一次転写)し、それを印刷シート上に転写(二次転写)してから定着させる中間転写方式が検討されている。また、装置の小型化等を目的に、転写搬送ベルトを使用して転写ベルトに印刷シートの搬送も兼ねさせる方式も検討されている。
このような中間転写ベルト等に用いる半導電性ベルトの一例として、ポリイミド樹脂に導電性フィラーであるファーネスブラックやアセチレンブラック等のカーボンブラックを分散した中間転写ベルトが提案されている(特許文献1)。
しかしながら、従来の中間転写ベルトでは、低湿下で画出しすると、ベルトから黒色トナーを転写する感光体に、トナーが不均一に移動することが観察されている。特に、ベルト表面の表面抵抗率の高い領域では、トナーの不均一な移動が顕著になる傾向にある。
また、金型内面にポリアミド酸溶液(ワニス)を塗布・焼成して中間転写ベルトを作製する場合、例えば、印加電圧を100Vに設定して測定した場合に、表面抵抗率が11.88logΩ/□、体積抵抗率11.62logΩ・cmの特性バランスの取れたベルトを作製できた場合であっても、低湿下で画出しすると、感光体にトナーが不均一に移動する問題が生じている。このような問題、つまりは二次転写の画質の安定性や信頼性にかける問題を解消することが求められている。
特開2003−277502号公報
そこで、本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、ベルトの体積抵抗率が転写画像に大きな影響を及ぼすことを見出した。一般的に、ベルトの表面抵抗率と体積抵抗率をそれぞれ独立して制御することは困難であるが、例えば、導電性フィラーとして、カーボンブラックを用いた場合に、前記カーボンブラックを凝集させたポリアミド酸溶液を、ベルトの製造に使用したところ、凝集していない導電性フィラーのみを用いた場合と比較して、表面抵抗率に対して、体積抵抗率の低いベルトを作製することができ、つまりは表面抵抗率と体積抵抗率を、それぞれ独立して、制御することを見出し、更に、前記ベルトを用いて、低湿下で画出しした場合に、ベルトから、トナーが不均一に移動することがないことを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の半導電性ポリイミドベルトの製造方法は、導電性フィラーA1を溶媒に分散させた分散液に、テトラカルボン酸成分と、ジアミン成分を溶解・重合させてポリアミド酸溶液B1を調製する工程と、前記ポリアミド酸溶液B1を、更に、攪拌することにより、前記導電性フィラーA1を凝集させた凝集導電性フィラーA2を含有するポリアミド酸溶液B2を調製する工程と、導電性フィラーA3を溶媒に分散させた分散液に、テトラカルボン酸成分と、ジアミン成分を溶解・重合させてポリアミド酸溶液B3を調製する工程と、前記ポリアミド酸溶液B2、及び、前記ポリアミド酸溶液B3を混合させた混合溶液Cを調製する工程と、前記混合溶液Cを加熱することによりイミド転化して半導電性ポリイミドベルトを調製する工程と、を含むことを特徴とする。
本発明の半導電性ポリイミドベルトの製造方法は、前記凝集導電性フィラーA2のメジアン径を、前記導電性フィラーA1のメジアン径の1.1倍以上に調製することが好ましい。
本発明の半導電性ポリイミドベルトの製造方法は、前記導電性フィラーA1、A2及びA3が、カーボンブラックであることが好ましい。
本発明の半導電性ポリイミドベルトの製造方法は、前記半導電性ポリイミドベルトが、印加電圧100Vにおける表面抵抗率(Ω/□)の常用対数値が7〜13であり、前記表面抵抗率の常用対数値が、印加電圧100Vにおける体積抵抗率の常用対数値の1.1倍以上であることが好ましい。
本発明の半導電性ポリイミドベルトの製造方法により得られる半導電性ポリイミドベルトは、凝集導電性フィラーを含有することにより、詳細な理由は明らかではないが、ベルトの厚み方向への導通パスが増大し、ベルトの表面抵抗率を、体積抵抗率に比べて、大きくすることができ、これにより、前記ベルトを用いて、低湿下で画出しした場合に、ベルトから、トナーが不均一に移動すること抑制することができ、有効である。
本発明の半導電性ポリイミドベルトの製造方法は、特に限定されるものではないが、例えば、以下の製造方法(工程)を用いることができる。
(1)導電性フィラーA1を溶媒に分散させた分散液に、テトラカルボン酸成分とジアミン成分を溶解・重合させて、ポリアミド酸溶液B1を調製する工程。
(2)前記ポリアミド酸溶液B1を、更に加熱・攪拌することにより、導電性フィラーA1を凝集させた凝集導電性フィラーA2を含有するポリアミド酸溶液B2を調製する工程。
(3)導電性フィラーA3を溶媒に分散させた分散液に、テトラカルボン酸成分とジアミン成分を溶解・重合させて、ポリアミド酸溶液B3を調製する工程。
なお、ポリアミド酸溶液B1及びB3は、組成や反応条件が同じものであっても構わないし、異なるものであっても構わず、特に限定されるものではないが、例えば、前記ポリアミド酸溶液B1に使用する導電性フィラーA1の方が、前記ポリアミド酸溶液B3に使用される導電性フィラーA3よりも、凝集しやすいものを用いることが、好ましい態様である。
(4)前記ポリアミド酸溶液B2と、前記ポリアミド酸溶液B3を混合して、混合溶液Cを調製する工程。
(5)前記混合溶液Cを、円筒型金型の内周面に、塗布して塗膜を調製する工程。
(6)前記塗膜をさらに加熱して、イミド転化する工程、とを含むものである。以下に具体的にそれぞれの工程を説明する。
<導電性フィラー分散液の調製>
以下に導電性フィラーを分散させた分散液の調製方法について説明する。具体的な導電性フィラーとしては、カーボンブラック、アルミニウム、ニッケル、酸化錫、チタン酸カリウム等の無機化合物やポリアニリンやポリピロールなどに代表される導電性高分子を用いることができる。特に、抵抗制御や抵抗低下の観点から、カーボンブラックを用いることが好ましい。
前記カーボンブラックとしては、例えば、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を併用して使用することができる。
これらのカーボンブラックの種類は、目的とする導電性により適宜選択することができ、中間転写ベルトや転写搬送ベルト等の中抵抗から高抵抗域(表面抵抗率10〜1014[Ω/□]、体積抵抗率10〜1014[Ω・cm])に制電する必要がある場合、特にチャンネルブラックやファーネスブラックが好適に用いられ、その用途によっては酸化処理、グラフト処理等の酸化劣化を防止したものや溶媒への分散性を向上させたものを用いると好ましい。
前記ファーネスブラックとしては、デグサ社製のSpecial Black 550、Special Black 350、Special Black 250、Special Black 100、Printex 35、Printex 25、三菱化学社製のMA 7、MA 77、MA 8、MA 11、MA 100、MA 100R、MA 220、MA 230、キャボット社製、MONARCH 1300、MONARCH 1100、MONARCH 1000、MONARCH 900、MONARCH 880、MONARCH 800、MONARCH 700、MOGUL L、REGAL 400R、ULCAN XC−72R等が挙げられる。
また、チャンネルブラックとして、デグサ社製のColor Black FW200、Color B1ack FW2、Color Black FW2V、Color Black FW1、Color Black FW18、Special Black 6、Color Black S170、Color Black S160、Special Black 5、Special Black 4、Special Black 4A、Printex 150T、Printex U、Printex V、Printex 140U、Printex 140V等が挙げられ、特に導電性フィラー(ここでは、カーボンブラック)を凝集させたポリアミド酸溶液を調製する際には、凝集しやすいSpecial Black 4、Color Black FW200、Printex V等を用いることが好ましい態様である。
また、本発明において、凝集させて使用される導電性フィラーのメジアン径(凝集前)としては、特に限定されるものではなく、半導電性ポリイミドベルトの厚さ等の関係から、適宜、選択して使用することができる。たとえば、半導電性ポリイミドベルトの厚さが、50〜200μmの場合には、凝集させて使用される導電性フィラーのメジアン径(凝集前)は、0.1〜0.5μmのものを用いることが好ましい態様である。
カーボンブラックはその用途によって、酸化処理、グラフト処理等の酸化劣化を防止したものや、溶剤への分散性を向上させたものを用いることが好ましく、特に、酸化処理されたカーボンブラックを用いることが好ましい。
前記酸化処理カーボンブラックは、カーボンブラックを酸化処理することで、表面に酸素含有官能基(例えば、カルボキシル基、キノン基、ラクトン基、水酸基等)を付与して得ることができるものである。
前記酸化処理は、高温雰囲気下で、空気と接触・反応させる空気酸化法、常温で窒素酸化物やオゾン等と反応させる方法、及び高温での空気酸化後、低温でオゾン酸化する方法等により行うことができる。上記方法により得られる酸化処理カーボンブラックは、一部に過剰な電流が流れ、繰り返しの電圧印加による酸化の影響を受けにくい。また、その表面に付着する酸素含有官能基の効果で、ポリイミド中への分散性が高く、抵抗のバラツキを小さくすることができ、電界依存性も小さくなり、転写電圧による電界集中が起き難くなる。その結果、転写電圧による電気抵抗の低下を防止し、電気抵抗の均一性を改善し、電界依存性や環境による抵抗の変化が少なく、用紙走行部が白く抜ける等の画質欠陥の発生を抑制することができるため、高画質を得ることができる。
本発明において使用するカーボンブラックの含有量は、その目的に応じ、添加するカーボンブラックの種類により適宜決定されるが、画像形成装置などに用いられる中間転写ベルトや転写搬送ベルト等としては、その機械的強度等から、ポリイミド固形分に対し3〜40重量%であることが好ましく、より好ましくは3〜30重量%である。カーボンブラックの含有量が3重量%未満であると、抵抗値のコントロールが困難となり、また、ベルト内のバラツキが大きくなりやすい。一方、40重量%を越えると、ベルトの機械的強度が低下しやすくなる。
本発明に用いる溶媒としては、特に制限されないが、溶解性等の点より極性溶媒が好適に挙げられる。特に、カーボンブラックの分散用と重合反応の溶媒用とを兼用できるものが好ましい。極性溶媒としては、N,N−ジアルキルアミド類が好ましく、具体的には、例えば、これの低分子量のものであるN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルメトキシアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルトリアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ピリジン、テトラメチレンスルホン、ジメチルテトラメチレンスルホン等が挙げられる。これらは単独又は複数併用することができる。
更に、クレゾール、フェノール、キシレノール等のフェノール類、ベンゾニトリル、ジオキサン、ブチロラクトン、キシレン、シクロヘキサン、ヘキサン、ベンゼン、トルエンなどを単独又は複数併用することができる。
カーボンブラックの分散方法には、公知の分散方法を適用することができる。例えば、溶媒にカーボンブラックを添加した後、ナノマイザー、ボールミル、サンドミル、バスケットミル、三本ロールミル、プラネタリーミキサー、ビーズミル、ホモジナイザー、超音波などの方法を適宜選択して、分散作業を行うことができる。
カーボンブラックの分散性や親和性の向上を狙って、カーボンブラックを分散剤の存在下で前記ポリアミド酸溶液に分散することができる。分散剤としては、本発明の目的にかなうものであれば、特に限定されないが、例えば、高分子分散剤、界面活性剤、無機塩等の分散安定化剤を用いることができる。
前記高分子分散剤としては、ポリ(N−ビニル−2−ピロリドン)、ポリ(N,N’−ジエチルアクリルアジド)、ポリ(N−ビニルホルムアミド)、ポリ(N−ビニルアセトアミド)、ポリ(N−ビニルフタルアミド)、ポリ(N−ビニルコハク酸アミド)、ポリ(N−ビニル尿素)、ポリ(N−ビニルピペリドン)、ポリ(N−ビニルカプロラクタム)、ポリ(N−ビニルオキサゾリン)等が挙げられ、単独または複数の高分子分散剤を添加することができる。
導電性フィラーの分散状態を調べる方法は、特に制限されないが、例えば、顕微鏡にて目視観察する方法等が挙げられる。
<ポリアミド酸溶液B1及びB3の調製>
以下、ポリアミド酸溶液B1及びB3について、説明する。なお、ポリアミド酸溶液B1及びB3は、組成や反応条件が同じものであっても構わないし、異なるものであっても構わず、特に限定されるものではないが、例えば、前記ポリアミド酸溶液B1に使用する導電性フィラーA1の方が、前記ポリアミド酸溶液B3に使用される導電性フィラーA3よりも、凝集しやすいものであることが、好ましい態様である。
前記テトラカルボン酸成分としては、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、2,3,3’,4−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2’−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ペリレン−3,4,9,10−テトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、エチレンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を併用することができる。
前記ジアミン成分としては、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジクロロベンジジン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、1,5−ジアミノナフタレン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン(PDA)、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニルジアミン、ベンジジン、3,3’−ジメチルベンジジン、3,3’−ジメトキシベンジジン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルプロパン、2,4−ビス(β−アミノ−t−ブチル)トルエン、ビス(p−β−アミノ−t−ブチルフェニル)エーテル、ビス(p−β−メチル−δ−アミノフェニル)ベンゼン、ビス−p−(1,1−ジメチル−5−アミノ−ペンチル)ベンゼン、1−イソプロピル−2,4−m−フェニレンジアミン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、ジ(p−アミノシクロヘキシル)メタン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ジアミノプロピルテトラメチレン、3−メチルへプタメチレンジアミン、4,4−ジメチルヘプタメチレンジアミン、2,11−ジアミノドデカン、1,2−ビス−3−アミノプロポキシエタン、2,2−ジメチルプロピレンジアミン、3−メトキシヘキサメチレンジアミン、2,5−ジメチルヘプタメチレンジアミン、3−メチルへプタメチレンジアミン、5 −メチルノナメチレンジアミン、2,11−ジアミノドデカン、2,17−ジアミノエイコサデカン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,10−ジアミノ−1,10−ジメチルデカン、1,12−ジアミノオクタデカン、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を併用することができる。
前記分散液にテトラカルボン酸成分とジアミン成分を溶解し、重合させる。ここで、前記ポリアミド酸(ポリイミド前駆体)は、テトラカルボン酸成分とジアミン成分との略等モルを有機溶媒中で反応させて得ることができる。重合反応の際のモノマー濃度(溶媒中におけるテトラカルボン酸成分とジアミン成分の濃度)は、種々の条件に応じて設定される。通常は、5〜30重量%程度が好ましい。また反応温度は80℃以下が好ましく、特に好ましくは5〜50℃である。反応時間は0.5〜10時間が好ましい。反応時間が0.5時間未満であると反応が不十分となり、10時間を超えても、それ以上の効果が得られない。
上記の反応により得られるポリアミド酸溶液の粘度は上昇するが、そのまま加熱を行うと、ポリアミド酸溶液の粘度が低下する。この現象を利用して、前記ポリアミド酸溶液を所定の粘度に調製することができる。このときの加熱温度は50〜90℃が好ましい。
<凝集導電性フィラー含有ポリアミド酸溶液B2の調製>
以下、凝集導電性フィラー含有ポリアミド酸溶液B2(以下、ポリアミド酸溶液B2とする)について説明する。
上述した方法により得られたポリアミド酸溶液B1を、更に加熱・攪拌することにより、凝集した導電性フィラーA2を含有するポリアミド酸溶液B2を得ることができる。導電性フィラー(導電性フィラーA1)を凝集させる方法としては、特に限定されるものではないが、具体的には、攪拌方法としては、せん断をかけて攪拌する方法を用いることが好ましく、例えば、スリーワンモーターなどを使用することが好ましい。せん断をかけることにより、より導電性フィラーの凝集が促進される。
上記攪拌の際の温度としては、10〜60℃が好ましく、攪拌時間は、10分〜24時間であることが好ましい。前記条件下で攪拌することによって、凝集後の導電性フィラーのメジアン径を、凝集前の導電性フィラーのメジアン径より、増大させることができる。
また、上記方法により得られたポリアミド酸溶液B2中の導電性フィラーA2のメジアン径は、ポリアミド酸溶液B1中の導電性フィラーA1のメジアン径の1.1倍以上であり、好ましくは1.1〜5倍である。メジアン径比を1.1倍以上に調製することにより、詳細な理由は明らかではないが、導電性フィラーの粒子同士が、数珠や、葡萄の房のように、連結(接触)して、大きくなることにより、ベルトの厚み方向への導通パスが増大し、ベルトの表面抵抗率を、体積抵抗率に比べて、大きくすることができるものと考えられる。また、前記メジアン径の導電性フィラーA2(凝集導電性フィラー)を含有するベルトは、低湿下で画出しした場合であっても、二次転写の画質に優れたものが得られ、有効である。なお、ここでいうメジアン径とは、粒子径と固体粒子量との粒度分布曲線を求めた場合について、全体固体粒子量に対する積算固体粒子量が50%となるものの粒子径(いわゆる50%粒子径)を意味するものである。
<混合溶液Cの調製>
前記ポリアミド酸溶液B2と前記ポリアミド酸溶液B3を混合して混合溶液Cを調製する方法について、以下に説明する。
得られたポリアミド酸溶液B2とポリアミド酸溶液B3の固形分比が、2:1〜1:2になるように混合することが好ましく、より好ましくは1.5:1〜1:1.5に混合することにより、混合溶液Cを調製することができる。固形分比が上記範囲内にあると、所望の抵抗率に制御しやすく、好ましい。ポリアミド酸溶液B2とポリアミド酸溶液B3を混合する理由としては、抵抗率の制御などが挙げられる。また、ポリアミド酸溶液B2とポリアミド酸溶液B3に用いる導電性フィラーとして、同一のものを使用しても構わないが、好ましくはポリアミド酸溶液B2に用いられる導電性フィラーA1(その後、凝集させて導電性フィラーA2とする。)が、ポリアミド酸溶液B3に用いられる導電性フィラーA3よりも、凝集しやすいものを用いることが好ましい。また、ポリアミド酸溶液B2を単独で使用しない理由としては、単独使用の場合に、体積抵抗率を制御することは可能であるが、これに対して、表面抵抗率を所望のレベルまでに上げることができないことが挙げられる。従って、表面抵抗率と体積抵抗率の両者において、所望の特性が得られるように調整するため、凝集した導電性フィラーを含有するポリアミド酸溶液B2だけでなく、実質、凝集した導電性フィラーを含有しない(あえて凝集した導電性フィラーを含有しない)ポリアミド酸溶液B3を混合して、用いることが、両者のバランスを図る際に有効である。
<半導電性ポリイミドベルトの調製>
本発明により得られる半導電性ポリイミドベルトは、以下に示す方法により調製される。
まず、前記混合溶液Cに、触媒を添加・混合したものを円筒金型の内周面に供給し、回転遠心成形法により金型内周面に遠心力により均一に展開する。このとき前記溶液の粘度は、B型粘度計で1〜1000Pa・s(25℃)が好ましい。これ以外の場合は、遠心成形の際、均一に展開することが困難であり、ポリイミドベルトの厚みバラツキの原因となる。製膜後、更に、80〜150℃にて加熱を行い、溶媒を除去して、前駆体膜を調製した。
次いで、上記前駆体膜を、300〜450℃の高温で加熱することにより、閉環イミド化反応(イミド転化)を進行させ、ポリイミドベルトを調製し、これを金型から取り出す。この閉環イミド化反応(及び溶媒除去)時の加熱は、均等に行う必要がある。不均等であると、溶剤蒸発時において、カーボンブラックの凝集バラツキや、分散バラツキが発生し、ポリイミドベルトの抵抗値にバラツキが生じる。均等に加熱する方法としては、金型を回転させながら加熱する、熱風の循環を改善する等の方法や、低温で投入し、昇温速度を遅くする等の方法がある。
なお、閉環イミド化反応は、上記高温加熱する方法もしくは、ポリアミド酸溶液に触媒単独あるいは触媒と脱水剤を併用して添加し、低温加熱する方法いずれを用いてもよく、本発明の目的にかなうものであれば特に限定されない。
前記触媒としては、特に限定されないが、例えば、脂肪族3級アミン、芳香族3級アミン、複素環式3級アミン等を挙げることができる。特に、イミダゾール、ベンズイミダゾール、イソキノリン、キノリン、ジエチルピリジン、β−ピコリン等の複素環式化合物が好ましい。
触媒の添加量としては、ポリアミド酸溶液中のポリアミド酸1モル当量に対して0.05〜2.0モル当量添加することが好ましく、より好ましくは0.1〜1.0モル当量である。触媒の添加量が0.05モル当量未満であると、触媒効果が十分でなく、また、2.0モル当量を超えても触媒効果は変わらない。また、これら触媒は脱水剤を使用しない加熱イミド化においても、低温でのイミド化促進剤として有効である。
前記脱水剤については、有機カルボン酸無水物、N,N’−ジアルキルカルボジイミド類、低級脂肪酸ハロゲン化物、ハロゲン化低級脂肪酸無水物、アリールホスホン酸ジハロゲン化物、及びチオニルハロゲン化物等が挙げられ、これらの中でも特に有機カルボン酸無水物が好ましい。
また、本発明により得られる半導電性ポリイミドベルトは、印加電圧100Vにおける表面抵抗率(Ω/□)の常用対数値が7〜13であり、前記表面抵抗率の常用対数値が、印加電圧100Vにおける体積抵抗率の常用対数値の1.1倍以上であることが好ましい。表面抵抗率の常用対数値が上記範囲を外れると、白抜けや、転写チリなどの画質不良が発生するため、好ましくない。また、表面抵抗率の常用対数値が、印加電圧100Vにおける体積抵抗率の常用対数値の1.1倍未満であると、転写チリなどの画質不良が発生するため、好ましくない。
以下に示す製造方法により、導電性フィラーとしてカーボンブラックを使用した、カーボンブラック含有ポリアミド酸溶液、及び、凝集カーボンブラック含有ポリアミド酸溶液を調製し、これらを用いて半導電性ポリイミドベルトを得た。また、評価結果を表1に示した。
(実施例1)
<カーボンブラック含有ポリアミド酸溶液B1の調製>
800gのN−メチル−2−ピロリドン(NMP)中に、乾燥した200gのカーボンブラック(デグサ(株)製Special Black 4)を添加した。次に、この溶液をボールミルで室温にて6時間撹拌・混合を行い、20重量%のカーボンブラック分散液を得た。
上記分散液にNMPに、108gのp−フェニレンジアミン(PDA)、200gの4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、588gの3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)を窒素雰囲気中で室温にて投入し、6時間撹拌して溶解した。続いて、撹拌しながら加温し、75℃で10時間加熱を続け、重合反応により増粘後、カーボンブラック含有ポリアミド酸溶液B1(固形分20重量%、カーボンブラックの含有率20重量%)を得た。前記ポリアミド酸溶液B1中の前記カーボンブラック(A1)のメジアン径は、0.35μmであった。
<凝集カーボンブラック含有ポリアミド酸溶液B2の調製>
前記ポリアミド酸溶液B1をスリーワンモーターを用いて、50℃で3時間追加攪拌し、カーボンブラックを凝集させた凝集カーボンブラック含有ポリアミド酸溶液B2(固形分20重量%、カーボンブラックの含有率20重量%)を得た。前記ポリアミド酸溶液B2中のカーボンブラック(A2)のメジアン径は、0.72μmであった。前記追加攪拌により、カーボンブラックのメジアン径が、凝集前(ポリアミド酸溶液B1に含有されるカーボンブラック)と比較して、2.06倍に成長していることが確認された。
<カーボンブラック含有ポリアミド酸溶液B3の調製>
使用するカーボンブラックを、乾燥した200gのカーボンブラック(デグサ(株)製Special Black 250)に変更した以外は、上記ポリアミド酸溶液B1と同様の方法で、カーボンブラック含有ポリアミド酸溶液B3を調製した。前記ポリアミド酸溶液B3中の前記カーボンブラック(A3)のメジアン径は、0.50μmであった。
<混合溶液Cの調製>
得られたポリアミド酸溶液B2とポリアミド酸溶液B3の固形分比(重量比)が、1:1になるように混合し、混合溶液Cを調製した。
<半導電性ポリイミドベルトの調製>
次いで、前記混合溶液Cに、触媒を添加・混合したものを円筒金型内に供給し、を内径60mm、長さ850mmのドラム金型内周面に、ディスペンサにて最終の厚さが700μmとなるよう塗布し、1500rpmで10分間回転させて、均一な展開層を得た。その後、60rpmでドラム金型を回転させながら、金型の外側より130℃の熱風を20分間当てて、溶剤を除去し (予備乾燥)、前駆体膜を調製した。
更に、3℃/分の速度で340℃まで昇温させ、そのまま10分加熱を続け、閉環イミド化反応を進行させた。その後、室温まで冷却し、金型内面より剥離し、厚さ80μmの半導電性ポリイミドベルトを得た。
(比較例1)
<半導電性ポリイミドベルトの調製>
上記ポリアミド酸溶液B1とポリアミド酸溶液B3の固形分比(重量比)が、1:1.05になるように混合し、混合溶液Cを調製した。なお、実施例1と固形分比が異なる理由としては、実施例1においては、凝集させたカーボンブラックを使用しているため、比較例1において、同じ固形分比で評価を行うと、表面抵抗率を実施例1と同等レベルに調整できなくなるためであり、また、表面抵抗率を調整することにより、両者の体積抵抗率の差異を明確にすることができる。
次いで、前記混合溶液Cを内径60mm、長さ850mmのドラム金型内周面に、ディスペンサにて最終の厚さが700μmとなるよう塗布し、1500rpmで10分間回転させて、均一な展開層を得た。その後、60rpmでドラム金型を回転させながら、金型の外側より130℃の熱風を20分間当てて、溶剤を除去し (予備乾燥)、前駆体膜を調製した。
更に、3℃/分の速度で340℃まで昇温させ、そのまま10分加熱を続け、閉環イミド化反応を進行させた。その後、室温まで冷却し、金型内面より剥離し、80μmの半導電性ポリイミドベルトを得た。
<評価方法>
(表面抵抗率・体積抵抗率)
ハイレスタ−UP MCP−HT450(三菱化学社製、リングプローブ:UR)を用い、印加電圧100Vの10秒後の表面抵抗率(Ω/□)を測定した。測定条件は、25℃×60%RHで行った。測定は、ベルト表面の6箇所における表面抵抗率を測定し、平均値を常用対数値により示した。
(メジアン径)
ポリアミド酸溶液の合成の際に使用するN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を用いて、それぞれのポリアミド酸溶液を100倍希釈(重量比)し、これを1時間攪拌・溶解して試料とし、これをLB−500(堀場製作所製、動的光散乱式粒径分布測定装置)を用いて、3回測定し、平均値をメジアン径として算出した。
(感光体上のトナーの有無)
得られた半導電性ポリイミドベルトを、室温(23℃)×10%RH環境下にて、24時間静置した後、画像出しを行い黒色トナー転写用の感光体を取り出して、感光体表面を目視にて観察し、トナーの有無を確認した。
Figure 2010248289
表1より、実施例1においては、カーボンブラックを凝集させたポリアミド酸溶液を用いることで、表面抵抗率と体積抵抗率の常用対数値の比を1.1以上に調製することができ、感光体へのトナーの移動も認められず、良好な結果が得られた。一方、比較例1では、カーボンブラックを凝集させたポリアミド酸溶液を用いなかったため、表面抵抗率と体積抵抗率の常用対数値の比が1.1未満となり、感光体へのトナーの移動が確認され、画質が劣る結果となった。

Claims (4)

  1. 導電性フィラーA1を溶媒に分散させた分散液に、テトラカルボン酸成分と、ジアミン成分を溶解・重合させてポリアミド酸溶液B1を調製する工程と、
    前記ポリアミド酸溶液B1を、更に、攪拌することにより、前記導電性フィラーA1を凝集させた凝集導電性フィラーA2を含有するポリアミド酸溶液B2を調製する工程と、
    導電性フィラーA3を溶媒に分散させた分散液に、テトラカルボン酸成分と、ジアミン成分を溶解・重合させてポリアミド酸溶液B3を調製する工程と、
    前記ポリアミド酸溶液B2、及び、前記ポリアミド酸溶液B3を混合させた混合溶液Cを調製する工程と、
    前記混合溶液Cを加熱することによりイミド転化して半導電性ポリイミドベルトを調製する工程と、を含むことを特徴とする半導電性ポリイミドベルトの製造方法。
  2. 前記凝集導電性フィラーA2のメジアン径を、前記導電性フィラーA1のメジアン径の1.1倍以上に調製することを特徴とする請求項1記載の半導電性ポリイミドベルトの製造方法。
  3. 前記導電性フィラーA1、A2及びA3が、カーボンブラックであることを特徴とする請求項1又は2記載の半導電性ポリイミドベルトの製造方法。
  4. 前記半導電性ポリイミドベルトが、印加電圧100Vにおける表面抵抗率(Ω/□)の常用対数値が7〜13であり、
    前記表面抵抗率の常用対数値が、印加電圧100Vにおける体積抵抗率の常用対数値の1.1倍以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の半導電性ポリイミドベルトの製造方法。
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CN113355107A (zh) * 2021-07-05 2021-09-07 合肥中聚合臣电子材料有限公司 一种液晶取向剂

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