JP2010242277A - 環状金属コード、無端金属ベルト及び環状金属コードの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】継続的な繰り返し負荷に対しても撚り緩みが生じず巻き付けた形状を維持することができる環状金属コード、無端金属ベルト及び環状金属コードの製造方法を提供する。
【解決手段】環状金属コードC1は、コア材を含まない中心を囲むように複数のストランド材1同士を、直径型付け率を92%以上112%以下に調整して撚り合わせた金属コードが解撚され、1本のストランド材1が、金属コードの撚り合わせの本数よりも1周多い周回環状にされつつ他のストランド材の抜けた螺旋状の空隙部に、余長部が嵌め入れられて巻き付けられて環状とされている。
【選択図】図1
【解決手段】環状金属コードC1は、コア材を含まない中心を囲むように複数のストランド材1同士を、直径型付け率を92%以上112%以下に調整して撚り合わせた金属コードが解撚され、1本のストランド材1が、金属コードの撚り合わせの本数よりも1周多い周回環状にされつつ他のストランド材の抜けた螺旋状の空隙部に、余長部が嵌め入れられて巻き付けられて環状とされている。
【選択図】図1
Description
本発明は、環状金属コード、無端金属ベルト及び環状金属コードの製造方法に関するものである。
従来、環状金属コードを製造する方法として、例えば特許文献1,2に記載されているように、ワイヤーロープを構成するストランド材の半分を解撚または切除して取り除いた後に、残ったストランド材を一部環状にしつつその周囲に巻き付けてエンドレス加工することが知られている。
特許文献1に記載されたワイヤーロープの簡易エンドレス加工法は、まず、設計寸法リングの内周長の2倍強の長さをもった6本の素線が撚り合されて構成されたワイヤーロープを用意する。これを3本の素線の撚り合せ線2本に解き別けて内周長と当該内周長より少し長いより代とを有する基糸を形成する。次に、当該3本素線撚り合せ線からなる基糸の一方を用いて、まず設計寸法の基本となるリング部とその組み合わせ部から延出するストランド部を形成する。そのうえ、当該延出するストランド部をリング部に撚り合せながら巻き付けて2本の基糸(6本の素線)が撚り合された状態のエンドレス加工を行う。その後、基糸の撚り合せ端部をロック止めもしくは半かご差しまたは半かご差しとロック止めの組み合わせ処理のいずれかの端部処理をする。
特許文献2に記載されたエンドレススリングは、次のようにして製造されている。まず、所定長さのワイヤーロープの全長にわたって、全本数の1/2のストランドを切除し、ワイヤーロープの全長の1/2の心綱を切除する。残った心綱の両端部を同心に突き合わせたうえ、心綱を切除した側のストランドを、心綱を切除しない側のストランドの切除部に巻き付けて同心状のエンドレスとする。その後、心綱及びストランドの両端部にまたがってスリーブを圧縮加工する。
特許文献3に記載されたエンドレスリングは、ワイヤーロープの一部を輪状に交差させて輪状部を形成し、ワイヤーロープを前記輪状部の回りに撚り合わせながら所定の回数周回させた後、ワイヤーロープの残り部分を撚り合わせた部分の内部にロープ心として入れ込んで形成する。
特許文献1,2に記載の環状金属コードは、何れも玉掛け用吊り具であり、所定の曲げや張力などの負荷を繰り返し受けるような使用状況は想定されていないものである。これらの環状金属コードは、ワイヤーロープを横断面でみて円周上のストランド材の本数を一旦半分にして、残ったストランド材の余長を空いている残り半分のスペースに再巻き付けしているものであるため、隣り合うストランド材同士の接触抵抗が弱い。そのため、前記のような繰り返し負荷が加わると撚り緩みが生じやすく、そのまま使用を続けていると最後には破断してしまう。
さらに、環状に巻き付けた後の端末処理は、特許文献1では端末を撚り合わせた箇所に差し込むかご差しやロック止めであるため、前記のような繰り返し負荷が加わるとこれらの箇所に応力集中が起こり、早期に破断してしまう。また、特許文献2ではスリーブにより両端末を固定するため、その部分だけコード径が太くなり、荷重が環状方向で不均一になる。このように、特許文献1,2に記載の環状金属コードは、継続的な繰り返し負荷に対して耐え得る構造ではない。
特許文献3に記載の環状金属コードであるエンドレスリングは、ワイヤーロープを輪状部の回りに撚り合わせながら所定の回数周回させることにより、ワイヤーロープ全体を使用して巻き付けることになるが、この場合巻き付けピッチが一巻き毎にばらついてしまい、コード径が太くなり、環状方向で均一な強度が得られない。また、このエンドレスリングも、荷吊り作業に用いられるものであり、所定の曲げや張力などの負荷を繰り返し受けるような使用状況は想定されていないものである。
これらのような環状金属コードを無端金属ベルトに用いると、撚り緩みや端末の結合部などの影響で回転負荷が変動し、比較的短期間で破損してしまうおそれがある。
そこで、本発明の目的は、継続的な繰り返し負荷に対しても撚り緩みが生じず巻き付けた形状を維持することができる環状金属コード、無端金属ベルト及び環状金属コードの製造方法を提供することにある。
上記課題を解決することのできる本発明に係る環状金属コードは、コア材を含まない中心を囲むように複数のストランド材同士を、直径型付け率を92%以上112%以下に調整して撚り合わせた原コードが解撚され、1本の前記ストランド材が、前記原コードの前記ストランド材の本数よりも1周多い周回環状にされつつ他のストランド材の抜けた螺旋状の空隙部に、余長部が嵌め入れられて巻き付けられて環状とされていることを特徴とする。
このような構成の環状金属コードによれば、コア材を含まない中心を囲むように複数のストランド材同士を、直径型付け率を92%以上112%以下に調整して撚り合わせた原コードから取り出したストランド材において、原コードのストランド材の本数よりも1周多い周回にて環状にしつつ他のストランド材の抜けた螺旋状の空隙部に余長部を嵌め入れて巻き付けると、ストランド材の隣り合う部分同士が密着した状態となる。ストランド材同士の接触抵抗が大きく、ストランド材の全長に亘ってストランド材同士が強く拘束されるため、繰り返し負荷が加わっても撚り緩みが生じにくい。また、ストランド材同士の接触抵抗によって巻き付け状態が維持されるため、端末処理を簡素なものにすることができる。
また、コア材を含まない中心を囲むように複数のストランド材同士を撚り合わせた原コードが解撚されて環状とされているので、中心に中空部が形成される。これにより、この中空部へストランド材の両端末を挿し入れることにより、両端末表面と螺旋状に周回させたストランド材の内側表面との接触抵抗が付加され、更に強固に固定することができる。
直径型付率が92%より小さいと、複数のストランド材同士を撚り合わせた原コードを解撚して1本のストランド材を取り出したときに、このストランド材に付与された螺旋形状の直径方向は縮小し、長手方向に伸長してしまう。その結果、ストランド材の層心径が小さくなるため、環状にして他のストランド材の抜けた螺旋状の空隙部に使用する1本のストランド材の余長部を嵌め入れる際に、嵌め入れにくくなる。また、直径型付率が112%より大きいと、環状金属コードとした後、環状方向に伸び易くなり、例えばベルトとして使用すると寸法精度が保障しにくくなる。
なお、直径型付率は、環状金属コードを作成した際のコード径をDとし、型付けされたストランド材の波高さ(自己径含む)をHとすると、「直径型付率(%)=H/D×100」で表される。
また、コア材を含まない中心を囲むように複数のストランド材同士を撚り合わせた原コードが解撚されて環状とされているので、中心に中空部が形成される。これにより、この中空部へストランド材の両端末を挿し入れることにより、両端末表面と螺旋状に周回させたストランド材の内側表面との接触抵抗が付加され、更に強固に固定することができる。
直径型付率が92%より小さいと、複数のストランド材同士を撚り合わせた原コードを解撚して1本のストランド材を取り出したときに、このストランド材に付与された螺旋形状の直径方向は縮小し、長手方向に伸長してしまう。その結果、ストランド材の層心径が小さくなるため、環状にして他のストランド材の抜けた螺旋状の空隙部に使用する1本のストランド材の余長部を嵌め入れる際に、嵌め入れにくくなる。また、直径型付率が112%より大きいと、環状金属コードとした後、環状方向に伸び易くなり、例えばベルトとして使用すると寸法精度が保障しにくくなる。
なお、直径型付率は、環状金属コードを作成した際のコード径をDとし、型付けされたストランド材の波高さ(自己径含む)をHとすると、「直径型付率(%)=H/D×100」で表される。
また、本発明に係る環状金属コードは、コア材の周りに少なくとも5本のストランド材が直径型付け率を92%以上112%以下に調整されて撚り合わせた原コードが解撚され、1本の前記ストランド材が、前記原コードの前記ストランド材の本数よりも1周多い周回環状にされつつ他のストランド材の抜けた螺旋状の空隙部に、余長部が嵌め入れられて巻き付けられて環状とされていることを特徴とする。
このような構成の環状金属コードによれば、コアの周りに少なくとも5本のストランド材が直径型付け率を92%以上112%以下に調整されて撚り合わせた原コードから取り出したストランド材において、原コードのストランド材の本数よりも1周多い周回にて環状にしつつ他のストランド材の抜けた螺旋状の空隙部に余長部を嵌め入れて巻き付けると、ストランド材の隣り合う部分同士が密着した状態となる。ストランド材同士の接触抵抗が大きく、ストランド材の全長に亘ってストランド材同士が強く拘束されるため、繰り返し負荷が加わっても撚り緩みが生じにくい。また、ストランド材同士の接触抵抗によって巻き付け状態が維持されるため、端末処理を簡素なものにすることができる。
また、コア材の周りに少なくとも5本のストランド材を撚り合わせた原コードが解撚されて環状とされているので、中心に中空部が形成される。これにより、この中空部へストランド材の両端末を挿し入れることにより、両端末表面と螺旋状に周回させたストランド材の内側表面との接触抵抗が付加され、更に強固に固定することができる。
また、コア材の周りに少なくとも5本のストランド材を撚り合わせた原コードが解撚されて環状とされているので、中心に中空部が形成される。これにより、この中空部へストランド材の両端末を挿し入れることにより、両端末表面と螺旋状に周回させたストランド材の内側表面との接触抵抗が付加され、更に強固に固定することができる。
本発明に係る環状金属コードにおいて、前記ストランド材の両端末が直線化され、中心に形成される中空部に挿し入れられていることが好ましい。
これにより、ストランド材の両端末を容易に固定することができる。また、両端末が挿し入れられていない部分では、例えば、プーリに巻回することにより断面が自然に扁平化し易く、環状金属コード自体の自転がなくされて、疲労を抑制することができる。しかも、断面の扁平化により、中空部に挿し入れた両端末が周囲のストランド材によって強力に保持され、両端末の抜けを確実に防止することができる。
これにより、ストランド材の両端末を容易に固定することができる。また、両端末が挿し入れられていない部分では、例えば、プーリに巻回することにより断面が自然に扁平化し易く、環状金属コード自体の自転がなくされて、疲労を抑制することができる。しかも、断面の扁平化により、中空部に挿し入れた両端末が周囲のストランド材によって強力に保持され、両端末の抜けを確実に防止することができる。
本発明に係る環状金属コードにおいて、前記中空部に挿し入れられる前記ストランド材の端末の長さが、前記ストランド材の径の25倍以上120倍以下の長さとされていることが好ましい。
中空部に挿し入れられるストランド材の片側の端末の必要長さは、接触表面積が影響し、結局、前記ストランド材の直径に比例することから、ストランド材の径の25倍以上120倍以下の長さとされている。これにより、両端末を確実に保持して固定することができる。また、両端末が挿し入れられていない部分において良好に扁平化させることができ、環状金属コード自体の自転をなくして疲労を抑制することができる。
中空部に挿し入れられるストランド材の片側の端末の必要長さは、接触表面積が影響し、結局、前記ストランド材の直径に比例することから、ストランド材の径の25倍以上120倍以下の長さとされている。これにより、両端末を確実に保持して固定することができる。また、両端末が挿し入れられていない部分において良好に扁平化させることができ、環状金属コード自体の自転をなくして疲労を抑制することができる。
また、本発明に係る環状金属コードにおいて、前記中空部に挿し入れられる前記ストランド材の両端末の合計長さが、環状の略周長とされていることが好ましい。
つまり、可能な撚り構造であれば環状の全周にわたって中空部にストランド材の端末が挿し入れられた状態とされているので、例え自転が発生し易い撚り構造であっても全周にわたって断面積の均一化が図られる効果が大きく、全体として均一な環状金属コードとなり、安定した強度が得られる。
つまり、可能な撚り構造であれば環状の全周にわたって中空部にストランド材の端末が挿し入れられた状態とされているので、例え自転が発生し易い撚り構造であっても全周にわたって断面積の均一化が図られる効果が大きく、全体として均一な環状金属コードとなり、安定した強度が得られる。
本発明に係る環状金属コードにおいて、前記ストランド材は複数の金属素線同士を撚り合わせた構造であり、前記金属素線同士の撚り方向と前記空隙部に嵌め入れられているストランド材の巻き付けの螺旋方向とが逆方向であることが好ましい。
ストランド材内の金属素線同士の撚り方向とストランド材の巻き付け方向を逆にすることで、環状金属コードの機械的特性に方向性が生じることを抑制し、環状金属コードを環状方向に沿って回転させて使用する場合でも蛇行しにくくなる。
ストランド材内の金属素線同士の撚り方向とストランド材の巻き付け方向を逆にすることで、環状金属コードの機械的特性に方向性が生じることを抑制し、環状金属コードを環状方向に沿って回転させて使用する場合でも蛇行しにくくなる。
本発明に係る環状金属コードにおいて、前記ストランド材は、直径が0.06mm以上0.30mm以下の範囲内である複数の金属素線同士を撚り合わせた構造であることが好ましい。
これにより、ストランド材に適度な剛性をもたせることができ、ストランド材を良好な耐疲労性を有するものとすることができる。その結果、環状金属コードをより耐久性に優れたものにできる。
これにより、ストランド材に適度な剛性をもたせることができ、ストランド材を良好な耐疲労性を有するものとすることができる。その結果、環状金属コードをより耐久性に優れたものにできる。
本発明に係る環状金属コードにおいて、互いに巻き付けられた前記ストランド材の環状部分における中心軸に対する前記ストランド材の巻き付け角度が4.5度以上13.8度以下の範囲内であることが好ましい。
これにより、ストランド材の巻き付け作業が容易となるため、環状金属コードをより容易に製造できる。また、適度な伸度を有し、かつストランド材の巻き緩みがない環状金属コードを得ることができる。
これにより、ストランド材の巻き付け作業が容易となるため、環状金属コードをより容易に製造できる。また、適度な伸度を有し、かつストランド材の巻き緩みがない環状金属コードを得ることができる。
また、本発明に係る無端金属ベルトは、上記本発明に係る環状金属コードを備えていることが好ましい。
上述の環状金属コードを用いることによって、継続的な繰り返し負荷に対しても環状金属コードの撚り緩みが生じず形状を維持することができるため、破断強度及び耐疲労性に優れた無端金属ベルトを得ることができる。
また、上記課題を解決することのできる本発明に係る環状金属コードの製造方法は、コア材を含まない中心を囲むように複数のストランド材同士を、直径型付け率を92%以上112%以下に調整して撚り合わせた原コードを解撚し、1本の前記ストランド材を、前記原コードの撚り合わせの本数よりも1周多い周回環状にしつつ他のストランド材の抜けた螺旋状の空隙部に、余長部を嵌め入れて巻き付けて環状とすることを特徴とする。
このような構成の環状金属コードの製造方法によれば、コアのない中心を囲むように複数のストランド材同士を、直径型付け率を92%以上112%以下に調整して撚り合わせた原コードから取り出したストランド材において、原コードの撚り合わせの本数よりも1周多い周回にて環状にしつつ他のストランド材の抜けた螺旋状の空隙部に余長部を嵌め入れて巻き付けると、ストランド材の隣り合う部分同士が密着した状態となる。ストランド材同士の接触抵抗が大きく、ストランド材の全長に亘ってストランド材同士が強く拘束されるため、繰り返し負荷が加わっても撚り緩みが生じにくい。また、ストランド材同士の接触抵抗によって巻き付け状態が維持されるため、端末処理を簡素なものにすることができる。
また、コアのない中心を囲むように複数のストランド材同士を撚り合わせた原コードが解撚されて環状とされているので、中心に中空部が形成される。これにより、この中空部へストランド材の両端末を挿し入れることにより、両端末表面と螺旋状に周回させたストランド材の内側表面との接触抵抗が付加され、更に強固に固定することができる。
直径型付率が92%より小さいと、複数のストランド材同士を撚り合わせた原コードを解撚して1本のストランド材を取り出したときに、このストランド材に付与された螺旋形状の直径方向は縮小し、長手方向に伸長してしまう。その結果、ストランド材の層心径が小さくなるため、環状にして他のストランド材の抜けた螺旋状の空隙部に使用する1本のストランド材の余長部を嵌め入れる際に、嵌め入れにくくなる。また、直径型付率が112%より大きいと、環状金属コードとした後、環状方向に伸び易くなり、例えばベルトとして使用すると寸法精度が保障しにくくなる。
また、コアのない中心を囲むように複数のストランド材同士を撚り合わせた原コードが解撚されて環状とされているので、中心に中空部が形成される。これにより、この中空部へストランド材の両端末を挿し入れることにより、両端末表面と螺旋状に周回させたストランド材の内側表面との接触抵抗が付加され、更に強固に固定することができる。
直径型付率が92%より小さいと、複数のストランド材同士を撚り合わせた原コードを解撚して1本のストランド材を取り出したときに、このストランド材に付与された螺旋形状の直径方向は縮小し、長手方向に伸長してしまう。その結果、ストランド材の層心径が小さくなるため、環状にして他のストランド材の抜けた螺旋状の空隙部に使用する1本のストランド材の余長部を嵌め入れる際に、嵌め入れにくくなる。また、直径型付率が112%より大きいと、環状金属コードとした後、環状方向に伸び易くなり、例えばベルトとして使用すると寸法精度が保障しにくくなる。
また、本発明に係る環状金属コードの製造方法は、コア材の周りに少なくとも5本のストランド材が直径型付け率を92%以上112%以下に調整されて撚り合わせた原コードを解撚し、1本の前記ストランド材を、前記原コードの前記ストランド材の本数よりも1周多い周回環状にしつつ他のストランド材の抜けた螺旋状の空隙部に、余長部を嵌め入れて巻き付けて環状とすることを特徴とする。
このような構成の環状金属コードの製造方法によれば、コア材の周りに少なくとも5本のストランド材を、直径型付け率を92%以上112%以下に調整して撚り合わせた原コードから取り出したストランド材において、原コードのストランド材の本数よりも1周多い周回にて環状にしつつ他のストランド材の抜けた螺旋状の空隙部に余長部を嵌め入れて巻き付けると、ストランド材の隣り合う部分同士が密着した状態となる。ストランド材同士の接触抵抗が大きく、ストランド材の全長に亘ってストランド材同士が強く拘束されるため、繰り返し負荷が加わっても撚り緩みが生じにくい。また、ストランド材同士の接触抵抗によって巻き付け状態が維持されるため、端末処理を簡素なものにすることができる。
また、コア材の周りに少なくとも5本のストランド材を撚り合わせた原コードが解撚されて環状とされているので、中心に中空部が形成される。これにより、この中空部へストランド材の両端末を挿し入れることにより、両端末表面と螺旋状に周回させたストランド材の内側表面との接触抵抗が付加され、更に強固に固定することができる。
また、コア材の周りに少なくとも5本のストランド材を撚り合わせた原コードが解撚されて環状とされているので、中心に中空部が形成される。これにより、この中空部へストランド材の両端末を挿し入れることにより、両端末表面と螺旋状に周回させたストランド材の内側表面との接触抵抗が付加され、更に強固に固定することができる。
本発明に係る環状金属コードの製造方法において、前記ストランド材の両端末を直線化し、中心に形成される中空部に挿し入れることが好ましい。
これにより、ストランド材の両端末を容易に固定することができる。また、両端末が挿し入れられていない部分では、例えば、プーリに巻回することにより断面が自然に扁平化し、環状金属コード自体の自転がなくされ、疲労を抑制することができる。しかも、断面の扁平化により、中空部に挿し入れた両端末が周囲のストランド材によって強力に保持され、両端末の抜けを確実に防止することができる。
これにより、ストランド材の両端末を容易に固定することができる。また、両端末が挿し入れられていない部分では、例えば、プーリに巻回することにより断面が自然に扁平化し、環状金属コード自体の自転がなくされ、疲労を抑制することができる。しかも、断面の扁平化により、中空部に挿し入れた両端末が周囲のストランド材によって強力に保持され、両端末の抜けを確実に防止することができる。
本発明に係る環状金属コードの製造方法において、前記中空部に挿し入れる前記ストランド材の端末の長さを、前記ストランド材の径の25倍以上120倍以下の長さとすることが好ましい。
このように、中空部に挿し入れられるストランド材の端末の長さを、ストランド材の径の25倍以上120倍以下の長さとするので、両端末を確実に保持して固定することができる。また、両端末が挿し入れられていない部分において良好に扁平化させることができ、環状金属コード自体の自転をなくして疲労を抑制することができる。
このように、中空部に挿し入れられるストランド材の端末の長さを、ストランド材の径の25倍以上120倍以下の長さとするので、両端末を確実に保持して固定することができる。また、両端末が挿し入れられていない部分において良好に扁平化させることができ、環状金属コード自体の自転をなくして疲労を抑制することができる。
本発明に係る環状金属コードの製造方法において、前記中空部に挿し入れる前記ストランド材の両端末の合計長さを、環状の略周長とすることが好ましい。
つまり、可能な撚り構造であれば環状の全周にわたって中空部にストランド材の端末が挿し入れられた状態とされるので、例え自転が発生し易い撚り構造であっても全周にわたって断面積の均一化が図られる効果が大きく、全体として均一な環状金属コードとなり、安定した強度が得られる。
つまり、可能な撚り構造であれば環状の全周にわたって中空部にストランド材の端末が挿し入れられた状態とされるので、例え自転が発生し易い撚り構造であっても全周にわたって断面積の均一化が図られる効果が大きく、全体として均一な環状金属コードとなり、安定した強度が得られる。
本発明に係る環状金属コードの製造方法において、前記ストランド材として複数の金属素線同士を撚り合わせた構造のストランド材を用い、前記金属素線同士の撚り方向と前記空隙部に嵌め入れるストランド材の巻き付けの螺旋方向とを逆方向とすることが好ましい。
ストランド材内の金属素線同士の撚り方向とストランド材の巻き付け方向を逆にすることで、環状金属コードの機械的特性に方向性が生じることを抑制し、環状金属コードを環状方向に沿って回転させて使用する場合でも蛇行しにくくなる。
ストランド材内の金属素線同士の撚り方向とストランド材の巻き付け方向を逆にすることで、環状金属コードの機械的特性に方向性が生じることを抑制し、環状金属コードを環状方向に沿って回転させて使用する場合でも蛇行しにくくなる。
本発明に係る環状金属コードの製造方法において、前記原コードにおける残りのストランド材の1本を、前記原コードの撚り合わせの本数よりも1周多い周回環状にしつつ他のストランド材の抜けた螺旋状の空隙部に、余長部を嵌め入れて巻き付けて環状とすることが好ましい。
原コードの内の残りのストランド材によって環状金属コードを製造することができ、経済的である。
原コードの内の残りのストランド材によって環状金属コードを製造することができ、経済的である。
本発明によれば、継続的な繰り返し負荷に対しても撚り緩みが生じず巻き付けた形状を維持することができる環状金属コード、無端金属ベルト及び環状金属コードの製造方法を提供することができる。したがって、本発明の環状金属コード及び無端金属ベルトを産業機械に用いれば、当該産業機械を耐久性に優れたものとすることができる。
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
図1は本実施形態に係る環状金属コードの斜視図であり、図2は環状金属コードを示す径方向の断面斜視図であり、図3(a)は環状金属コードC1を示す径方向の断面図であり、同図(b)は環状金属コードC1の側面図、図4は環状金属コードの一部を示す拡大斜視図である。
図1から図3に示すように、環状金属コードC1は、ストランド材を複数本用いて環状に撚り合わせてなるものであって、ストランド材として予め複数の金属素線が撚り合わされたストランド材1を用いている。
図1から図3に示すように、環状金属コードC1は、ストランド材を複数本用いて環状に撚り合わせてなるものであって、ストランド材として予め複数の金属素線が撚り合わされたストランド材1を用いている。
本実施形態の環状金属コードC1は、予め螺旋状にくせ付けされた1本のストランド材1を用意し、端末を除いた略1/7分の長さを環状にした状態で、残りの余長部をその環状部分に複数周回(6周)巻き付けて形成されている。巻き付けの撚り方向は、例えばZ撚である。この環状金属コードC1をストランド材1の径方向の断面で見ると、7本のストランド材1が円周に配置された構造を有している。
各ストランド材1は、3本の金属素線10がS撚方向で撚り合わされた(下撚りされた)4本のストランド材10aが、さらに、S撚方向で撚り合わされて(下撚りされて)構成されている。
金属素線10は、例えば、炭素(C)を0.7質量%以上含む高炭素鋼ワイヤからなるものである。0.70質量%以上のCを含む材料を選定することで、金属素線10をより破断強度に優れた鋼線とすることができる。また、金属素線10の表面には、銅合金(例えば、真鍮)または亜鉛のめっき処理が施されていてもよい。なお、金属素線10の材質は、前記のものに限られず、例えば、ピアノ線でもよい。
金属素線10は、例えば、炭素(C)を0.7質量%以上含む高炭素鋼ワイヤからなるものである。0.70質量%以上のCを含む材料を選定することで、金属素線10をより破断強度に優れた鋼線とすることができる。また、金属素線10の表面には、銅合金(例えば、真鍮)または亜鉛のめっき処理が施されていてもよい。なお、金属素線10の材質は、前記のものに限られず、例えば、ピアノ線でもよい。
また、金属素線10の直径は0.06mm以上0.30mm以下の範囲内である。このように、金属素線10の直径が0.06mm以上であるので、ストランド材1の剛性を最低限維持することができ、環状金属コードC1を変形に耐え得るものとすることができる。また、金属素線10の直径が0.30mm以下であるので、ストランド材1の剛性が過度に大きくならずにすむ。したがって、環状金属コードC1は、繰り返し曲げ応力による疲労破断を生じにくくすることができる。
つまり、このような径の金属素線10でストランド材1を形成すると、適度な剛性を有するストランド材1を得ることができる。よって、ストランド材1の巻き付けが容易となり、かつ巻き付け後の巻き緩みが生じにくくなる。
ストランド材1同士は、Z撚、つまりストランド材1を構成する金属素線10の撚り方向とは逆方向に巻き付けられる。一方、ストランド材1自身は、金属素線10をS撚したストランド材10aをさらにS撚した構成であるため、環状金属コードC1はS/S撚構造とZ巻構造を組み合わせたものとなる。金属素線10の撚り方向と、ストランド材1の巻き付け方向とが逆であると、環状金属コードC1の機械的特性に方向性が生じることが抑制されて捩れにくく、表面外観に凹凸の少ない環状金属コードC1を得ることができる。また、環状金属コードC1を環状方向に沿って回転させて使用する場合でも蛇行しにくくなる。
また、ストランド材1は、7本の撚り合わせ中心軸に対して所定の巻き付け角度で巻き付けられている。このため、ストランド材1が乱れなく巻かれ、表面状態が略均一な環状金属コードC1を得ることができる。本実施形態においては、図3(b)に示すように、X方向、すなわち環状金属コードC1の中心軸が延びる方向に対するストランド材1の巻き付け角度θは、4.5度以上13.8度以下となっている。巻き付け角度θを4.5度以上とすることで、ストランド材1の巻き緩みが生じにくくなる。巻き付け角度θを13.8度以下とすることで、ストランド材1の伸度が過度に大きくなることを防ぐことができる。つまり、ストランド材1の巻き付け角度θを4.5度以上13.8度以下とすることで、適度な伸度を有し、かつしなやかな環状金属コードC1を得ることができる。
図4に示すように、ストランド材1の巻き付けの始端部(端末)1aと巻き付けの終端部(端末)1bとは、環状金属コードC1の環状の円弧の外周側で結ばれた後、ストランド材1同士の間から、環状金属コードC1の中心に形成されている中空部C1a(図3(a)参照)内へ挿し込まれて固定されている。
これら始端部1a及び終端部1bは、その長さがストランド材1の径の25倍以上120倍以下の長さとされており、本例では約2cm以上8cm以下とするのが好ましい。
そして、これら始端部1a及び終端部1bは、周囲のストランド材1によって強力に保持され、抜けが確実に防止されている。
これら始端部1a及び終端部1bは、その長さがストランド材1の径の25倍以上120倍以下の長さとされており、本例では約2cm以上8cm以下とするのが好ましい。
そして、これら始端部1a及び終端部1bは、周囲のストランド材1によって強力に保持され、抜けが確実に防止されている。
なお、環状金属コードC1は、例えば、減圧環境下にて、約280℃で10分間、焼鈍処理を施しても良い。
また、環状金属コードC1の環状方向全域に亘って、ストランド材1同士が接触する境目には接着系樹脂が塗布されていてもよい。これにより、ストランド材1同士をその接触抵抗だけでなく樹脂の接着力によっても移動しないように保持できるため、さらに撚り緩みが生じにくくなり、形状が安定する。接着系樹脂は、硬化後も環状金属コードC1の弾性変形に対応して伸縮可能な材質を使用する。
また、環状金属コードC1の環状方向全域に亘って、ストランド材1同士が接触する境目には接着系樹脂が塗布されていてもよい。これにより、ストランド材1同士をその接触抵抗だけでなく樹脂の接着力によっても移動しないように保持できるため、さらに撚り緩みが生じにくくなり、形状が安定する。接着系樹脂は、硬化後も環状金属コードC1の弾性変形に対応して伸縮可能な材質を使用する。
続いて、環状金属コードC1の製造方法について説明する。
図5は、環状金属コードC1を製造するために用意された金属コードを示す径方向の断面斜視図である。
図5に示すように、金属コード(原コード)20は、S撚した金属素線10からなるストランド材10aをS撚にて撚り合わせて(下撚りして)なる6本のストランド材1を、コア材のない中心(コア材を有する構造でもコア材を含まない中心)を囲むように撚り合せた(上撚りした)撚線構造を有している。上撚り方向はZ撚である。これらストランド材1は、環状金属コードC1を構成するために用いられる。これら6本のストランド材1は、撚り合わせて金属コード20とすることにより、直径型付け率92%以上112%以下にてそれぞれ螺旋状の型付けを施しておく。
図5は、環状金属コードC1を製造するために用意された金属コードを示す径方向の断面斜視図である。
図5に示すように、金属コード(原コード)20は、S撚した金属素線10からなるストランド材10aをS撚にて撚り合わせて(下撚りして)なる6本のストランド材1を、コア材のない中心(コア材を有する構造でもコア材を含まない中心)を囲むように撚り合せた(上撚りした)撚線構造を有している。上撚り方向はZ撚である。これらストランド材1は、環状金属コードC1を構成するために用いられる。これら6本のストランド材1は、撚り合わせて金属コード20とすることにより、直径型付け率92%以上112%以下にてそれぞれ螺旋状の型付けを施しておく。
このような金属コード20を解撚して、各ストランド材1に分け、これらストランド材1の1本を用いて1つの環状金属コードC1を製造する。
なお、金属コード20にコア材が含まれる場合には、そのコア材は環状金属コードC1の製造に使用しない。
なお、金属コード20にコア材が含まれる場合には、そのコア材は環状金属コードC1の製造に使用しない。
そして、上記のように金属コード20から取り出した1本のストランド材1は、図6に示すように、他のストランド材1が存在していた箇所に螺旋状の空隙部5が形成されている。この空隙部5は、他の5本のストランド材1の断面積の合計の断面積を有している。
次いで、図7に示すように、ストランド材1の長さの端末を除いた略1/7分の長さを環状にして、その環状部分1dにおける螺旋状の空隙部5にストランド材1の余長部1eを6周嵌め入れ、金属コード20の撚り合わせの本数よりも1周多い周回(7周)環状にする。ストランド材1における空隙部5は、その断面積が6本のストランド材1の断面積の合計より小さく、6周巻き付けられるストランド材1の余長部1eがそれ自身より狭い螺旋状の空隙部5に嵌め入れられるため、巻き付けられたストランド材1の隣り合う余長部1e同士が径方向に押圧されて密着された状態となる。これにより、ストランド材1の全長に亘ってストランド材1同士が強く拘束されるため、繰り返し荷重が加わっても撚り緩みが生じにくい。このように本実施形態によれば、継続的な繰り返し負荷に対してもストランド材1の撚り緩みが生じず、しかも、6本のストランド材1を撚り合わせて金属コード20とすることにより、直径型付け率92%以上112%以下にて調整してそれぞれ螺旋状の型付けを施しておくので、ストランド材1が巻き付けられた形状が維持可能な環状金属コードC1を容易に製造することができる。
また、ストランド材1が単線ではなく、複数の金属素線10からなるストランド材10a同士を撚り合わせたものであるため、ストランド材1表面の凹凸によりストランド材1同士の接触抵抗も大きくなるので、撚り緩みがさらに生じにくくなる。また、環状金属コードC1の柔軟性が向上し、外力に対して均一負荷となりやすいので破断強度の低下を抑制できる。
また、ストランド材1は、金属コード20の状態でZ撚方向の螺旋状の型付けが施されている。そのためストランド材1同士は、Z撚、つまりストランド材1を構成する金属素線10の撚り方向(S/S撚構造)とは逆方向に巻き付けられる。すなわち、環状金属コードC1はS/S撚構造とZ巻構造を組み合わせたものとなる。金属素線10の撚り方向と、ストランド材1の巻き付け方向とが逆であるため、環状金属コードC1の機械的特性に方向性が生じることが抑制されて捩れにくく、表面外観に凹凸の少ない環状金属コードC1を得ることができる。また、環状金属コードC1を環状方向に沿って回転させて使用する場合でも蛇行しにくくなる。
環状に巻き付けを行った後、ストランド材1の始端部1a及び終端部1bを、図8に示すように、環状の円弧の外周側に引き出す。この引き出す始端部1a及び終端部1bのそれぞれの長さは、ストランド材1の径の25倍以上120倍以下の長さとすることが好ましい。そして、この引き出した始端部1a及び終端部1bを直線化して伸ばし、これら始端部1a及び終端部1bの端部を電気溶断する。このようにすると、これら始端部1a及び終端部1bにおいて金属素線10がばらけるのを防止することができる。
次いで、図9に示すように、始端部1a及び終端部1bを、環状の円弧の外周側にて結ぶ。
その後、図10に示すように、ストランド材1同士の間にピンPを差し込んで隙間Sをつくり、さらに、ストランド材1の束を回転させながらピンPを環状に沿ってスライドさせて隙間Sの位置を環状に沿って移動させながら、この隙間Sに始端部1a及び終端部1bを押し込んでいく。このとき、始端部1a及び終端部1bは、引き伸ばして略直線化されているので、隙間Sへの挿し込みを容易に行うことができる。そして、このようにストランド材1同士の隙間Sへ始端部1a及び終端部1bを挿し込むと、始端部1a及び終端部1bが7本のストランド材1の中心に形成されている中空部C1a内に挿し入れられて固定される。このようにすると、中空部C1aに挿し入れられたストランド材1の始端部1a及び終端部1bが周囲のストランド材1によって強力に保持され、両端末の抜けが確実に防止される。
その後、図10に示すように、ストランド材1同士の間にピンPを差し込んで隙間Sをつくり、さらに、ストランド材1の束を回転させながらピンPを環状に沿ってスライドさせて隙間Sの位置を環状に沿って移動させながら、この隙間Sに始端部1a及び終端部1bを押し込んでいく。このとき、始端部1a及び終端部1bは、引き伸ばして略直線化されているので、隙間Sへの挿し込みを容易に行うことができる。そして、このようにストランド材1同士の隙間Sへ始端部1a及び終端部1bを挿し込むと、始端部1a及び終端部1bが7本のストランド材1の中心に形成されている中空部C1a内に挿し入れられて固定される。このようにすると、中空部C1aに挿し入れられたストランド材1の始端部1a及び終端部1bが周囲のストランド材1によって強力に保持され、両端末の抜けが確実に防止される。
なお、始端部1a及び終端部1bを結んでから中空部C1aに挿し入れたが、これら始端部1a及び終端部1bを結ばずに中空部C1aに挿し入れて固定しても良い。この場合も、中空部C1aに挿し入れられたストランド材1の始端部1a及び終端部1bは、周囲のストランド材1によって強力に保持され、両端末の抜けが十分に防止される。
次に、上述した構成を有する環状金属コードC1を備える無端金属ベルトの一例について説明する。図11は本実施形態に係る無端金属ベルトの使用状態を示す模式的な斜視図である。
無端金属ベルトB1は、例えば図11に示されるような、精密機器やその他の産業機械で使用されている減速機30用に用いられる。無端金属ベルトB1は、並行して配列された3本の環状金属コードC1からなり、小径の駆動側プーリ32と大径の被駆動側プーリ34との間の動力伝達を担っている。駆動側プーリ32の回転中心には、駆動用モータ36の駆動軸が接続されている。駆動側プーリ32及び被駆動側プーリ34の外周には各環状金属コードC1を安定的に掛け渡すための円周溝が形成され、無端金属ベルトB1を駆動側プーリ32及び被駆動側プーリ34に掛け渡すことにより、駆動側プーリ32の回転力が無端金属ベルトB1を介して被駆動側プーリ34に伝達される。その際、駆動側プーリ32の回転速度は被駆動側プーリ34にて減速され、駆動側プーリ32のトルクは被駆動側プーリ34にて増大される。被駆動側プーリ34は、例えば図示せぬ他のプーリ等に軸接続され、動力を伝達する。
環状金属コードC1は、先に述べたように破断強度が非常に大きい。また、1本のストランド材1が、金属コード20の撚り合わせ本数よりも1周多い周回環状にされつつ空隙部5に余長部1eが嵌め入れられて巻き付けられ、中空部C1aを有する環状とされているので、プーリ32,34に巻回することにより、始端部1a及び終端部1bの挿し込み箇所以外にて、中空部C1aが潰れて断面が扁平化し、環状金属コードC1自体の自転がなくされる。つまり、自転が生じないので、疲労を抑制することができ、また、環状の円弧の外周側に多少の突起があってもベルトとしてプーリ32,34に巻回して用いることができる。
しかも、このように扁平化されることにより、中空部C1aに挿し入れられている始端部1a及び終端部1bが周囲のストランド材1によって、より強力に保持され、これにより、始端部1a及び終端部1bの抜けを確実に防止することができる。
なお、焼鈍処理を施した場合では、ストランド材1の撚り合わせ時の加工歪を除去することができ、さらに耐久性を高めることができる。
しかも、このように扁平化されることにより、中空部C1aに挿し入れられている始端部1a及び終端部1bが周囲のストランド材1によって、より強力に保持され、これにより、始端部1a及び終端部1bの抜けを確実に防止することができる。
なお、焼鈍処理を施した場合では、ストランド材1の撚り合わせ時の加工歪を除去することができ、さらに耐久性を高めることができる。
また、上記実施形態では、金属コード20を構成する6本のストランド材1の内の1本のストランド材1を用いて環状金属コードC1を製造したが、残りの5本のそれぞれのストランド材1についても同様に、前述したように、金属コード20の撚り合わせ本数よりも1周多い周回環状にしつつ空隙部5に、余長部1eを嵌め入れて巻き付けて環状金属コードC1を製造することができ、経済性を高めることができる。
また、本実施形態の無端金属ベルトB1において、駆動側プーリ32及び被駆動側プーリ34に環状金属コードC1がそれぞれ3本ずつ掛け渡される形態としたが、掛け渡される環状金属コードC1の本数はこれに限られない。求められる駆動力またはベルト張力に応じて、環状金属コードC1の本数を調整することが可能である。
また、本実施形態は、環状金属コードを、減速機において動力を伝達する無端金属ベルトに適用したものであるが、本発明の環状金属コードは、減速機以外で使用される無端金属ベルトにも適用することができる。例えば、プリンタをはじめとする印刷機において紙送りローラ間の動力伝達を担う無端金属ベルト、一軸ロボットの直行駆動を担う無端金属ベルト、X−Yテーブル機構の駆動や三次元のキャリッジ駆動を担う無端金属ベルト、光学機器や検査機、あるいは測定器内において精密駆動を担う無端金属ベルト、自動車の無段変速機における駆動側プーリ及び被駆動側プーリの間の動力伝達を担う無端金属ベルト等に適用可能である。
なお、上記実施形態では、断面におけるストランド材1の本数が7本の場合を例にとって説明したが、断面におけるストランド材1は、7本に限定されない。
ここで、断面におけるストランド材1が6本の環状金属コードC1について説明する。
この6本のストランド材1からなる環状金属コードC1を作製する例としては、図12に示すように、5本のストランド材1を、コアのない中心を囲むように撚り合わせの際、直径型付け率92%以上112%以下にて螺旋状の型付けを施して、金属コード(原コード)20を得る。
ここでは、このストランド材1は、S撚方向で撚り合わされた3本の金属素線10bの周囲に9本の金属素線10cが同じS撚方向で撚り合わされている。そして、この5本のストランド材1がZ撚方向で撚り合わされて金属コード20が構成されている。
この6本のストランド材1からなる環状金属コードC1を作製する例としては、図12に示すように、5本のストランド材1を、コアのない中心を囲むように撚り合わせの際、直径型付け率92%以上112%以下にて螺旋状の型付けを施して、金属コード(原コード)20を得る。
ここでは、このストランド材1は、S撚方向で撚り合わされた3本の金属素線10bの周囲に9本の金属素線10cが同じS撚方向で撚り合わされている。そして、この5本のストランド材1がZ撚方向で撚り合わされて金属コード20が構成されている。
この金属コード20を解撚し、1本のストランド材1を、6周回環状にしつつ他の4本のストランド材1の抜けた螺旋状の空隙部5に、余長部1eを5周嵌め入れて巻き付けて環状とする。そして、始端部1aと終端部1bとを、結んだ後、ストランド材1同士の隙間から中空部C1a内に挿し入れて固定する。なお、その後、焼鈍処理を施しても良い。
これにより、1本のストランド材1から、断面におけるストランド材1が6本の環状金属コードC1が得られる。
これにより、1本のストランド材1から、断面におけるストランド材1が6本の環状金属コードC1が得られる。
そして、この環状金属コードC1においても、破断強度が非常に大きく、繰り返し負荷に対しても緩みが生じない。また、ストランド材1における空隙部5は、その断面積が5本のストランド材1の断面積の合計より小さく、ストランド材1の余長部1eがそれ自身より狭い螺旋状の空隙部5に5周嵌め入れられて巻き付けられるため、巻き付けられたストランド材1の隣り合う余長部1e同士が径方向に押圧されて密着された状態となる。これにより、ストランド材1の全長に亘ってストランド材1同士が強く拘束されるため、繰り返し荷重が加わっても撚り緩みが生じにくい。したがって、継続的な繰り返し負荷に対してもストランド材1の撚り緩みが生じず、しかも、5本のストランド材1を撚り合わせて金属コード20とすることにより、直径型付け率92%以上112%以下にてそれぞれ螺旋状の型付けを施しておくので、ストランド材1が巻き付けられた形状が良好に維持された環状金属コードC1を容易に製造することができる。
また、1本のストランド材1が、金属コード20の撚り合わせ本数よりも1周多い周回環状にされつつ空隙部5に余長部1eが嵌め入れられて巻き付けられ、中空部C1aを有する環状とされているので、プーリ32,34に巻回することにより、始端部1a及び終端部1bの挿し込み箇所以外にて、中空部C1aが潰れて断面が扁平化し易く、環状金属コードC1自体の自転がなくされる。つまり、自転が生じないので、疲労を抑制することができ、また、環状の円弧の外周側に多少の突起があってもベルトとしてプーリ32,34に巻回して用いることができる。
しかも、このように扁平化されることにより、中空部C1aに挿し入れられている始端部1a及び終端部1bが周囲のストランド材1によって、より強力に保持され、これにより、始端部1a及び終端部1bの抜けを確実に防止することができる。
なお、焼鈍処理を施した場合では、ストランド材1の撚り合わせ時の加工歪を除去することができ、さらに耐久性を高めることができる。
なお、焼鈍処理を施した場合では、ストランド材1の撚り合わせ時の加工歪を除去することができ、さらに耐久性を高めることができる。
なお、この場合も、金属コード20を構成していた残りの4本のそれぞれのストランド材1についても同様に、6周回環状にしつつ空隙部5に、余長部1eを嵌め入れて巻き付けて環状金属コードC1を製造することができ、経済性を高めることができる。
なお、上記実施形態では、始端部1a及び終端部1bのそれぞれの長さを、ストランド材1の直径の25倍以上120倍以下の長さとして中空部C1aに挿し入れたが、図13に示すように、例えば、中空部C1aに挿し入れる始端部1a及び終端部1bを環状の周長の略半分ずつとし、これら始端部1a及び終端部1bの合計長さを、環状の略周長としても良い。
このようにすると、環状金属コードC1では、可能な撚り構造であればその環状の全周にわたって中空部C1aに始端部1a及び終端部1bが挿し入れられた状態とされ、よって、例え自転が発生し易い撚り構造であっても全周にわたって断面積の均一化が図られる効果が大きく、全体として均一な環状金属コードC1となる。このような環状金属コードC1によれば、全周にわたって安定した強度を得ることができる。
このようにすると、環状金属コードC1では、可能な撚り構造であればその環状の全周にわたって中空部C1aに始端部1a及び終端部1bが挿し入れられた状態とされ、よって、例え自転が発生し易い撚り構造であっても全周にわたって断面積の均一化が図られる効果が大きく、全体として均一な環状金属コードC1となる。このような環状金属コードC1によれば、全周にわたって安定した強度を得ることができる。
また、上記実施形態では、コア材を含まない中心を囲むように複数のストランド材同士を撚り合わせた原コードを解撚させて環状に撚り合わせた環状金属コードについて説明したが、原コードには中心にコア材があってもよい。例えば、図5に示した6本のストランド材1の撚り合わせ中心に、コア材を有する原コードを使用することができる。
このような原コードを解撚して、得られたストランド材の1本を環状に巻き付けることで、上記実施形態と同様に環状金属コードを製造することができる。コア材の周りに少なくとも5本のストランド材同士を撚り合わせた原コードを用いることで、得られた環状金属コードは上記実施形態と同様に中心に中空部が形成される。これにより、この中空部へストランド材の両端末を挿し入れることにより、両端末表面と螺旋状に周回させたストランド材の内側表面との接触抵抗が付加され、更に強固に固定することができる。
このような原コードを解撚して、得られたストランド材の1本を環状に巻き付けることで、上記実施形態と同様に環状金属コードを製造することができる。コア材の周りに少なくとも5本のストランド材同士を撚り合わせた原コードを用いることで、得られた環状金属コードは上記実施形態と同様に中心に中空部が形成される。これにより、この中空部へストランド材の両端末を挿し入れることにより、両端末表面と螺旋状に周回させたストランド材の内側表面との接触抵抗が付加され、更に強固に固定することができる。
次に、本発明に係る環状金属コードの実施例について説明する。
周回数の異なる複数種類の環状金属コードについて、型付け率、端末処理の違い及び焼鈍処理の有無による耐久性の変化を調べた。
周回数の異なる複数種類の環状金属コードについて、型付け率、端末処理の違い及び焼鈍処理の有無による耐久性の変化を調べた。
(1)使用する原金属コード
(1−1)6×4×3×0.150の金属コード
(ストランド材の作製)
スチールコード用途の直径0.90mmのブラスメッキ鋼線を直径0.15mmまで伸線加工した素線を3リールに巻き取り、バンチャー型撚線機を用いて7.5mmの撚りピッチでS撚りにて撚り合わせる。
さらに、この線材(3×0.150)を4リールに所定量巻き取り、再度サプライしてバンチャー型撚線機を用いて6.5mmの撚りピッチでS/S撚りにて撚り合わせてストランド材を作製し、このストランド材を6リール用意する。
なお、バンチ撚りの場合、プレフォーム装置を使用しなくても93%前後の直径型付け率になるように調整できる。
(金属コードの作製)
上記のストランド材を、6本撚りができるチューブラー型撚線機を用いて13.0mmの撚りピッチでZ撚りにて所定量上撚りして金属コードとする。なお、プレフォーム装置を用いて事前に102%前後の直径型付け率に調整する。
(金属コードの解撚)
上撚りした金属コードを、端末分も含めて必要な環状金属コードの環状径(層心径:D1)の約24倍((D1)π×7+α)の長さで切断した後、全長にわたって解撚し、各ストランド材毎に分離する。
(1−1)6×4×3×0.150の金属コード
(ストランド材の作製)
スチールコード用途の直径0.90mmのブラスメッキ鋼線を直径0.15mmまで伸線加工した素線を3リールに巻き取り、バンチャー型撚線機を用いて7.5mmの撚りピッチでS撚りにて撚り合わせる。
さらに、この線材(3×0.150)を4リールに所定量巻き取り、再度サプライしてバンチャー型撚線機を用いて6.5mmの撚りピッチでS/S撚りにて撚り合わせてストランド材を作製し、このストランド材を6リール用意する。
なお、バンチ撚りの場合、プレフォーム装置を使用しなくても93%前後の直径型付け率になるように調整できる。
(金属コードの作製)
上記のストランド材を、6本撚りができるチューブラー型撚線機を用いて13.0mmの撚りピッチでZ撚りにて所定量上撚りして金属コードとする。なお、プレフォーム装置を用いて事前に102%前後の直径型付け率に調整する。
(金属コードの解撚)
上撚りした金属コードを、端末分も含めて必要な環状金属コードの環状径(層心径:D1)の約24倍((D1)π×7+α)の長さで切断した後、全長にわたって解撚し、各ストランド材毎に分離する。
(1−2)5×(3+9)×0.150の金属コード
(ストランド材の作製)
スチールコード用途の直径0.90mmのブラスメッキ鋼線を直径0.15mmまで伸線加工した素線を12リールに巻き取り、その内の3リールだけを使用し、バンチャー型撚線機を用いて7.5mmの撚りピッチでS撚りにて撚り合わせる。
さらに、この線材(3×0.150)をコアとして、さらに残りの9リールを使用し、バンチャー型撚線機を用いて6.5mmの撚りピッチでS/S撚りにて撚り合わせて3+9の構造のストランド材を作製し、このストランド材を5リール用意する。
なお、バンチ撚りの場合、プレフォーム装置を使用しなくても93%前後の直径型付け率になるように調整できる。
(金属コードの作製)
上記のストランド材を、5本撚りができるチューブラー型撚線機を用いて11.5mmの撚りピッチでZ撚りにて所定量上撚りして金属コードとする。なお、プレフォーム装置を用いて事前に102%前後の直径型付け率に調整する。
(金属コードの解撚)
上撚りした金属コードを、端末分も含めて必要な環状金属コードの環状径(層心径:D1)の約20倍((D1)π×6+α)の長さで切断した後、全長にわたって解撚し、各ストランド材毎に分離する。
(ストランド材の作製)
スチールコード用途の直径0.90mmのブラスメッキ鋼線を直径0.15mmまで伸線加工した素線を12リールに巻き取り、その内の3リールだけを使用し、バンチャー型撚線機を用いて7.5mmの撚りピッチでS撚りにて撚り合わせる。
さらに、この線材(3×0.150)をコアとして、さらに残りの9リールを使用し、バンチャー型撚線機を用いて6.5mmの撚りピッチでS/S撚りにて撚り合わせて3+9の構造のストランド材を作製し、このストランド材を5リール用意する。
なお、バンチ撚りの場合、プレフォーム装置を使用しなくても93%前後の直径型付け率になるように調整できる。
(金属コードの作製)
上記のストランド材を、5本撚りができるチューブラー型撚線機を用いて11.5mmの撚りピッチでZ撚りにて所定量上撚りして金属コードとする。なお、プレフォーム装置を用いて事前に102%前後の直径型付け率に調整する。
(金属コードの解撚)
上撚りした金属コードを、端末分も含めて必要な環状金属コードの環状径(層心径:D1)の約20倍((D1)π×6+α)の長さで切断した後、全長にわたって解撚し、各ストランド材毎に分離する。
(2)作製する環状金属コード
(2−1)実施例の環状金属コード
(実施例1,3,5)
6×4×3×0.150の金属コードから分離した6本のストランド材の内の1本を使用して、例えば、直径200mmの環状径を形成し、その後、6周回巻回移動させて他の5本のストランド材が抜けた螺旋状の空隙部に余長部を嵌め込んで断面にて7本のストランド材を有する環状金属コードとする。
始端部及び終端部は、必要部分を残して電気溶断して約5cmとし、ストランド材同士の隙間から中空部に挿し込んで固定する。
直径型付け率は、実施例1にて93%、実施例3にて105%、実施例5にて109%とし、また、実施例3では、減圧環境下にて、約280℃で10分間、焼鈍処理を施す。
(2−1)実施例の環状金属コード
(実施例1,3,5)
6×4×3×0.150の金属コードから分離した6本のストランド材の内の1本を使用して、例えば、直径200mmの環状径を形成し、その後、6周回巻回移動させて他の5本のストランド材が抜けた螺旋状の空隙部に余長部を嵌め込んで断面にて7本のストランド材を有する環状金属コードとする。
始端部及び終端部は、必要部分を残して電気溶断して約5cmとし、ストランド材同士の隙間から中空部に挿し込んで固定する。
直径型付け率は、実施例1にて93%、実施例3にて105%、実施例5にて109%とし、また、実施例3では、減圧環境下にて、約280℃で10分間、焼鈍処理を施す。
(実施例2,4)
5×(3+9)×0.150の金属コードから分離した5本のストランド材の内の1本を使用して、例えば、直径200mmの環状径を形成し、その後、5周回巻回移動させて他の4本のストランド材が抜けた螺旋状の空隙部に余長部を嵌め込んで断面にて6本のストランド材を有する環状金属コードとする。
始端部及び終端部は、必要部分を残して電気溶断して約5cmとし、ストランド材同士の隙間から中空部に挿し込んで固定する。
直径型付け率は、実施例2にて102%、実施例4にて107%とし、また、実施例4では、減圧環境下にて、約280℃で10分間、焼鈍処理を施す。
5×(3+9)×0.150の金属コードから分離した5本のストランド材の内の1本を使用して、例えば、直径200mmの環状径を形成し、その後、5周回巻回移動させて他の4本のストランド材が抜けた螺旋状の空隙部に余長部を嵌め込んで断面にて6本のストランド材を有する環状金属コードとする。
始端部及び終端部は、必要部分を残して電気溶断して約5cmとし、ストランド材同士の隙間から中空部に挿し込んで固定する。
直径型付け率は、実施例2にて102%、実施例4にて107%とし、また、実施例4では、減圧環境下にて、約280℃で10分間、焼鈍処理を施す。
(2−2)比較例の環状金属コード
(比較例1,3)
6×4×3×0.150の金属コードから分離した6本のストランド材の内の1本を使用して、例えば、直径200mmの環状径を形成し、その後、5周回巻回移動させて他の5本のストランド材が抜けた螺旋状の空隙部に余長部を嵌め込んで断面にて6本のストランド材を有する環状金属コードとする。
始端部及び終端部は、比較例1では金属スリーブによって接続し、比較例3では撚合わせ後、半かご差しにて接続する。
直径型付け率は、比較例1にて90%、比較例3にて99%とする。
(比較例1,3)
6×4×3×0.150の金属コードから分離した6本のストランド材の内の1本を使用して、例えば、直径200mmの環状径を形成し、その後、5周回巻回移動させて他の5本のストランド材が抜けた螺旋状の空隙部に余長部を嵌め込んで断面にて6本のストランド材を有する環状金属コードとする。
始端部及び終端部は、比較例1では金属スリーブによって接続し、比較例3では撚合わせ後、半かご差しにて接続する。
直径型付け率は、比較例1にて90%、比較例3にて99%とする。
(比較例5)
6×4×3×0.150の金属コードから分離した6本のストランド材の内の1本を使用して、例えば、直径200mmの環状径を形成し、その後、6周回巻回移動させて他の5本のストランド材が抜けた螺旋状の空隙部に余長部を嵌め込んで断面にて7本のストランド材を有する環状金属コードとする。
始端部及び終端部は、必要部分を残して電気溶断して約5cmとし、ストランド材同士の隙間から中空部に挿し込んで固定する。
直径型付け率は、89%とする。
6×4×3×0.150の金属コードから分離した6本のストランド材の内の1本を使用して、例えば、直径200mmの環状径を形成し、その後、6周回巻回移動させて他の5本のストランド材が抜けた螺旋状の空隙部に余長部を嵌め込んで断面にて7本のストランド材を有する環状金属コードとする。
始端部及び終端部は、必要部分を残して電気溶断して約5cmとし、ストランド材同士の隙間から中空部に挿し込んで固定する。
直径型付け率は、89%とする。
(比較例2,4)
5×(3+9)×0.150の金属コードから分離した5本のストランド材の内の1本を使用して、例えば、直径200mmの環状径を形成し、その後、4周回巻回移動させて他の4本のストランド材が抜けた螺旋状の空隙部に余長部を嵌め込んで断面にて5本のストランド材を有する環状金属コードとする。
始端部及び終端部は、比較例2では撚合わせ後、半かご差しにて接続し、比較例4では必要部分を残して電気溶断して約5cmとし、ストランド材同士の隙間から中空部に挿し込んで固定する。
直径型付け率は、比較例2にて93%、比較例4にて103%とする。
5×(3+9)×0.150の金属コードから分離した5本のストランド材の内の1本を使用して、例えば、直径200mmの環状径を形成し、その後、4周回巻回移動させて他の4本のストランド材が抜けた螺旋状の空隙部に余長部を嵌め込んで断面にて5本のストランド材を有する環状金属コードとする。
始端部及び終端部は、比較例2では撚合わせ後、半かご差しにて接続し、比較例4では必要部分を残して電気溶断して約5cmとし、ストランド材同士の隙間から中空部に挿し込んで固定する。
直径型付け率は、比較例2にて93%、比較例4にて103%とする。
(比較例6)
5×(3+9)×0.150の金属コードから分離した5本のストランド材の内の1本を使用して、例えば、直径200mmの環状径を形成し、その後、5周回巻回移動させて他の4本のストランド材が抜けた螺旋状の空隙部に余長部を嵌め込んで断面にて6本のストランド材を有する環状金属コードとする。
始端部及び終端部は、必要部分を残して電気溶断して約5cmとし、ストランド材同士の隙間から中空部に挿し込んで固定する。
直径型付け率は、113%とする。
5×(3+9)×0.150の金属コードから分離した5本のストランド材の内の1本を使用して、例えば、直径200mmの環状径を形成し、その後、5周回巻回移動させて他の4本のストランド材が抜けた螺旋状の空隙部に余長部を嵌め込んで断面にて6本のストランド材を有する環状金属コードとする。
始端部及び終端部は、必要部分を残して電気溶断して約5cmとし、ストランド材同士の隙間から中空部に挿し込んで固定する。
直径型付け率は、113%とする。
(3)耐久試験
(3−1)耐久試験装置
図14に耐久試験装置を示す。図14に示すように、耐久性試験装置は、駆動モータ51によって回転される駆動プーリ52と、この駆動プーリ52に対して水平方向へ接離可能に支持された従動プーリ53と、従動プーリ53を駆動プーリ52から離間させる方向へ荷重を付与する張力付加部54とを備える。駆動プーリ52及び従動プーリ53の直径は、40.0mmとした。
(3−1)耐久試験装置
図14に耐久試験装置を示す。図14に示すように、耐久性試験装置は、駆動モータ51によって回転される駆動プーリ52と、この駆動プーリ52に対して水平方向へ接離可能に支持された従動プーリ53と、従動プーリ53を駆動プーリ52から離間させる方向へ荷重を付与する張力付加部54とを備える。駆動プーリ52及び従動プーリ53の直径は、40.0mmとした。
張力付加部54は、従動プーリ53にロープ55を介して取り付けられた重り56と、ロープ55が掛けられた滑車57とを有し、重り56の荷重によって従動プーリ53が駆動プーリ52から離間される。そして、この張力付加部54では、重り56の重さを調整し、付加張力は、6×4×3×0.150の金属コードから作製した環状金属コードでは、20Kgf(コードの強度の5%前後)とし、5×(3+9)×0.150の金属コードから作製した環状金属コードでは、17.5Kgf(コードの強度の5%前後)とした。
(3−2)耐久試験方法
上記の耐久性試験装置の駆動プーリ52と従動プーリ53とに、各環状金属コードを巻き掛けて駆動プーリ52を3500rpmにて回転させ、環状金属コードに繰り返し引っ張り曲げ応力をかけ、環状金属コードの切断、弛み、ワイヤー(素線)の切れ等の不具合の発生の有無及び不具合発生までの耐久回数(換算回数)を調べて評価した。
上記の耐久性試験装置の駆動プーリ52と従動プーリ53とに、各環状金属コードを巻き掛けて駆動プーリ52を3500rpmにて回転させ、環状金属コードに繰り返し引っ張り曲げ応力をかけ、環状金属コードの切断、弛み、ワイヤー(素線)の切れ等の不具合の発生の有無及び不具合発生までの耐久回数(換算回数)を調べて評価した。
(3−3)耐久試験結果
耐久試験結果を、表1に示す。
耐久試験結果を、表1に示す。
表1から明らかなように、実施例1〜5では、耐え得る繰り返し引っ張り曲げ回数が極めて多くなり、特に、焼鈍処理を施した実施例3,4では切断が認められなかった。
これに対して、空隙部への余長部の嵌め込み本数が空隙部に入っていた他のストランド材の本数と同数である比較例1〜4では、耐え得る繰り返し引っ張り曲げ回数が少なかった。
また、空隙部への余長部の嵌め込み本数が空隙部に入っていた他のストランド材の本数より1本多いが、直径型付け率が92%以上112%以下の範囲から外れた比較例5,6の場合も、耐え得る繰り返し引っ張り曲げ回数が少なかった。
これに対して、空隙部への余長部の嵌め込み本数が空隙部に入っていた他のストランド材の本数と同数である比較例1〜4では、耐え得る繰り返し引っ張り曲げ回数が少なかった。
また、空隙部への余長部の嵌め込み本数が空隙部に入っていた他のストランド材の本数より1本多いが、直径型付け率が92%以上112%以下の範囲から外れた比較例5,6の場合も、耐え得る繰り返し引っ張り曲げ回数が少なかった。
以上のことから、コア材を含まない中心を囲むように複数のストランド材同士を、直径型付け率を92%以上112%以下に調整して撚り合わせた金属コードを解撚し、1本のストランド材を、金属コードの撚り合わせの本数よりも1周多い周回環状にしつつ他のストランド材の抜けた螺旋状の空隙部に、余長部を嵌め入れて巻き付けて環状とすることにより、ストランド材の移動を防止でき、撚り緩みが生じず巻き付けた形状を維持することが可能な強固な環状金属コードとすることができることが分かった。
1…ストランド材、1a…始端部(端末)、1b…終端部(端末)、1e…余長部、5…空隙部、10…金属素線、20…金属コード(原コード)、B1…無端金属ベルト、C1…環状金属コード、C1a…中空部
Claims (16)
- コア材を含まない中心を囲むように複数のストランド材同士を、直径型付け率を92%以上112%以下に調整して撚り合わせた原コードが解撚され、1本の前記ストランド材が、前記原コードの前記ストランド材の本数よりも1周多い周回環状にされつつ他のストランド材の抜けた螺旋状の空隙部に、余長部が嵌め入れられて巻き付けられて環状とされていることを特徴とする環状金属コード。
- コア材の周りに少なくとも5本のストランド材が直径型付け率を92%以上112%以下に調整されて撚り合わせた原コードが解撚され、1本の前記ストランド材が、前記原コードの前記ストランド材の本数よりも1周多い周回環状にされつつ他のストランド材の抜けた螺旋状の空隙部に、余長部が嵌め入れられて巻き付けられて環状とされていることを特徴とする環状金属コード。
- 請求項1または2に記載の環状金属コードであって、
前記ストランド材の両端末が直線化され、中心に形成される中空部に挿し入れられていることを特徴とする環状金属コード。 - 請求項1から3の何れか一項に記載の環状金属コードであって、
前記中空部に挿し入れられる前記ストランド材の端末の長さが、前記ストランド材の径の25倍以上120倍以下の長さとされていることを特徴とする環状金属コード。 - 請求項1から3の何れか一項に記載の環状金属コードであって、
前記中空部に挿し入れられる前記ストランド材の両端末の合計長さが、環状の略周長とされていることを特徴とする環状金属コード。 - 請求項1から5の何れか一項に記載の環状金属コードであって、
前記ストランド材は複数の金属素線同士を撚り合わせた構造であり、前記金属素線同士の撚り方向と前記空隙部に嵌め入れられているストランド材の巻き付けの螺旋方向とが逆方向であることを特徴とする環状金属コード。 - 請求項1から6の何れか一項に記載の環状金属コードであって、
前記ストランド材は、直径が0.06mm以上0.30mm以下の範囲内である複数の金属素線同士を撚り合わせた構造であることを特徴とする環状金属コード。 - 請求項1から7の何れか一項に記載の環状金属コードであって、
互いに巻き付けられた前記ストランド材の環状部分における中心軸に対する前記ストランド材の巻き付け角度が4.5度以上13.8度以下の範囲内であることを特徴とする環状金属コード。 - 請求項1から8の何れか一項に記載の前記環状金属コードを備えていることを特徴とする無端金属ベルト。
- コア材を含まない中心を囲むように複数のストランド材同士を、直径型付け率を92%以上112%以下に調整して撚り合わせた原コードを解撚し、1本の前記ストランド材を、前記原コードの前記ストランド材の本数よりも1周多い周回環状にしつつ他のストランド材の抜けた螺旋状の空隙部に、余長部を嵌め入れて巻き付けて環状とすることを特徴とする環状金属コードの製造方法。
- コア材の周りに少なくとも5本のストランド材が直径型付け率を92%以上112%以下に調整されて撚り合わせた原コードを解撚し、1本の前記ストランド材を、前記原コードの前記ストランド材の本数よりも1周多い周回環状にしつつ他のストランド材の抜けた螺旋状の空隙部に、余長部を嵌め入れて巻き付けて環状とすることを特徴とする環状金属コードの製造方法。
- 請求項10または11に記載の環状金属コードの製造方法であって、
前記ストランド材の両端末を直線化し、中心に形成される中空部に挿し入れることを特徴とする環状金属コードの製造方法。 - 請求項10から12の何れか一項に記載の環状金属コードの製造方法であって、
前記中空部に挿し入れる前記ストランド材の端末の長さを、前記ストランド材の径の25倍以上120倍以下の長さとすることを特徴とする環状金属コード製造方法。 - 請求項10から12の何れか一項に記載の環状金属コードの製造方法であって、
前記中空部に挿し入れる前記ストランド材の両端末の合計長さを、環状の略周長とすることを特徴とする環状金属コードの製造方法。 - 請求項10から14の何れか一項に記載の環状金属コードの製造方法であって、
前記ストランド材として複数の金属素線同士を撚り合わせた構造のストランド材を用い、前記金属素線同士の撚り方向と前記空隙部に嵌め入れるストランド材の巻き付けの螺旋方向とを逆方向とすることを特徴とする環状金属コードの製造方法。 - 請求項10から15の何れか一項に記載の環状金属コードの製造方法であって、
前記原コードにおける残りのストランド材の1本を、前記原コードの撚り合わせの本数よりも1周多い周回環状にしつつ他のストランド材の抜けた螺旋状の空隙部に、余長部を嵌め入れて巻き付けて環状とすることを特徴とする環状金属コードの製造方法。
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