JP2011117090A - 環状金属コード、無端金属ベルト及び環状金属コードの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】継続的な繰り返し負荷に対しても撚り緩みが生じず巻き付けた形状を維持することができる環状金属コード、無端金属ベルト及び環状金属コードの製造方法を提供する。
【解決手段】環状金属コードC1は、コアストランド2の周りに少なくとも7本のストランド材1が直径型付け率を70%以上91%以下に調整されて撚り合わされた原コード20が解撚され、1本のストランド材1が、原コード20のストランド材1の本数よりも少なくとも1周少ない周回環状にされつつ他のストランド材1の抜けた螺旋状の空隙部5に、余長部1eが嵌め入れられて巻き付けられて環状とされている。
【選択図】図1
【解決手段】環状金属コードC1は、コアストランド2の周りに少なくとも7本のストランド材1が直径型付け率を70%以上91%以下に調整されて撚り合わされた原コード20が解撚され、1本のストランド材1が、原コード20のストランド材1の本数よりも少なくとも1周少ない周回環状にされつつ他のストランド材1の抜けた螺旋状の空隙部5に、余長部1eが嵌め入れられて巻き付けられて環状とされている。
【選択図】図1
Description
本発明は、環状金属コード、無端金属ベルト及び環状金属コードの製造方法に関するものである。
従来、環状金属コードを製造する方法として、例えば特許文献1,2に記載されているように、ワイヤーロープを構成するストランド材の半分を解撚または切除して取り除いた後に、残ったストランド材を一部環状にしつつその周囲に巻き付けてエンドレス加工することが知られている。
特許文献1に記載されたワイヤーロープの簡易エンドレス加工法は、まず、設計寸法リングの内周長の2倍強の長さをもった6本の素線が撚り合されて構成されたワイヤーロープを用意する。これを3本の素線の撚り合せ線2本に解き別けて内周長と当該内周長より少し長いより代とを有する基糸を形成する。次に、当該3本素線撚り合せ線からなる基糸の一方を用いて、まず設計寸法の基本となるリング部とその組み合わせ部から延出するストランド部を形成する。そのうえ、当該延出するストランド部をリング部に撚り合せながら巻き付けて2本の基糸(6本の素線)が撚り合された状態のエンドレス加工を行う。その後、基糸の撚り合せ端部をロック止めもしくは半かご差しまたは半かご差しとロック止めの組み合わせ処理のいずれかの端部処理をする。
特許文献2に記載されたエンドレススリングは、次のようにして製造されている。まず、所定長さのワイヤーロープの全長にわたって、全本数の1/2のストランドを切除し、ワイヤーロープの全長の1/2の心綱を切除する。残った心綱の両端部を同心に突き合わせたうえ、心綱を切除した側のストランドを、心綱を切除しない側のストランドの切除部に巻き付けて同心状のエンドレスとする。その後、心綱及びストランドの両端部にまたがってスリーブを圧縮加工する。
特許文献3に記載されたエンドレスリングは、ワイヤーロープの一部を輪状に交差させて輪状部を形成し、ワイヤーロープを前記輪状部の回りに撚り合わせながら所定の回数周回させた後、ワイヤーロープの残り部分を撚り合わせた部分の内部にロープ心として入れ込んで形成する。
特許文献1,2に記載の環状金属コードは、何れも玉掛け用吊り具であり、所定の曲げや張力などの負荷を繰り返し受けるような使用状況は想定されていないものである。これらの環状金属コードは、ワイヤーロープを横断面でみて円周上のストランド材の本数を一旦半分にして、残ったストランド材の余長を空いている残り半分のスペースに再巻き付けしているものであるため、隣り合うストランド材同士の接触抵抗が弱い。そのため、前記のような繰り返し負荷が加わると撚り緩みが生じやすく、そのまま使用を続けていると最後には破断してしまう。
さらに、環状に巻き付けた後の端末処理は、特許文献1では端末を撚り合わせた箇所に差し込むかご差しやロック止めであるため、前記のような繰り返し負荷が加わるとこれらの箇所に応力集中が起こり、早期に破断してしまう。また、特許文献2ではスリーブにより両端末を固定するため、その部分だけコード径が太くなり、荷重が環状方向で不均一になる。このように、特許文献1,2に記載の環状金属コードは、継続的な繰り返し負荷に対して耐え得る構造ではない。
特許文献3に記載の環状金属コードであるエンドレスリングは、ワイヤーロープを輪状部の回りに撚り合わせながら所定の回数周回させることにより、ワイヤーロープ全体を使用して巻き付けることになるが、この場合巻き付けピッチが一巻き毎にばらついてしまい、コード径が太くなり、環状方向で均一な強度が得られない。また、このエンドレスリングも、荷吊り作業に用いられるものであり、所定の曲げや張力などの負荷を繰り返し受けるような使用状況は想定されていないものである。
これらのような環状金属コードを無端金属ベルトに用いると、撚り緩みや端末の結合部などの影響で回転負荷が変動し、比較的短期間で破損してしまうおそれがある。
そこで、本発明の目的は、継続的な繰り返し負荷に対しても撚り緩みが生じず巻き付けた形状を維持することができる環状金属コード、無端金属ベルト及び環状金属コードの製造方法を提供することにある。
上記課題を解決することのできる本発明に係る環状金属コードは、コア材の周りに少なくとも7本のストランド材が直径型付け率を70%以上91%以下に調整されて撚り合わされた原コードが解撚され、1本の前記ストランド材が、前記原コードの前記ストランド材の本数よりも少なくとも1周少ない周回環状にされつつ他のストランド材の抜けた螺旋状の空隙部に、余長部が嵌め入れられて巻き付けられて環状とされていることを特徴とする。
このような構成の環状金属コードによれば、コアの周りに少なくとも7本のストランド材が直径型付け率を70%以上91%以下に調整されて撚り合わされた原コードから取り出したストランド材において、原コードのストランド材の本数よりも少なくとも1周少ない周回にて環状にしつつ他のストランド材の抜けた螺旋状の空隙部に余長部を嵌め入れて巻き付けると、原コードの時と比較してストランド材の螺旋径が小さくなりストランド材の隣り合う部分同士が密着した状態となる。螺旋径が小さくなっているので、原コードのストランド材の本数よりも少ない周回で巻き付けてもストランド材同士の接触抵抗が得られ、ストランド材の全長に亘ってストランド材同士が強く拘束されるため、繰り返し負荷が加わっても撚り緩みが生じにくい。また、ストランド材同士の接触抵抗によって巻き付け状態が維持されるため、端末処理を簡素なものにすることができる。このように、ストランド材の剛性が低く直径型付率を大きくしにくい場合や、ストランド材の負担を極力低減するために直径型付率を小さくしたい場合に、直径型付け率を70%以上91%以下としてもストランド材同士を強く密着させることができる。
また、コア材の周りに少なくとも7本のストランド材を撚り合わせた原コードが解撚されて環状とされているので、中心に中空部が形成される。これにより、この中空部へストランド材の両端末を挿し入れることにより、両端末表面と螺旋状に周回させたストランド材の内側表面との接触抵抗が付加され、更に強固に固定することができる。
なお、直径型付率が70%より小さいと、複数のストランド材同士を撚り合わせた原コードを解撚して1本のストランド材を取り出したときに、このストランド材に付与された螺旋形状の直径方向は大幅に縮小しすぎ、長手方向に伸長しすぎてしまう。その結果、ストランド材の層心径が小さくなりすぎるため、環状にして他のストランド材の抜けた螺旋状の空隙部に使用する1本のストランド材の余長部を嵌め入れる際に、嵌め入れにくくなる。また、直径型付率が91%より大きいと、原コードのストランド材の本数よりも少なくする必要はなく、むしろ1本多くした方がストランド材間の接触抵抗は強められる。
直径型付率は、環状金属コードを作成した際のコード径をDとし、型付けされたストランド材の波高さ(自己径含む)をHとすると、「直径型付率(%)=H/D×100」で表される。
また、コア材の周りに少なくとも7本のストランド材を撚り合わせた原コードが解撚されて環状とされているので、中心に中空部が形成される。これにより、この中空部へストランド材の両端末を挿し入れることにより、両端末表面と螺旋状に周回させたストランド材の内側表面との接触抵抗が付加され、更に強固に固定することができる。
なお、直径型付率が70%より小さいと、複数のストランド材同士を撚り合わせた原コードを解撚して1本のストランド材を取り出したときに、このストランド材に付与された螺旋形状の直径方向は大幅に縮小しすぎ、長手方向に伸長しすぎてしまう。その結果、ストランド材の層心径が小さくなりすぎるため、環状にして他のストランド材の抜けた螺旋状の空隙部に使用する1本のストランド材の余長部を嵌め入れる際に、嵌め入れにくくなる。また、直径型付率が91%より大きいと、原コードのストランド材の本数よりも少なくする必要はなく、むしろ1本多くした方がストランド材間の接触抵抗は強められる。
直径型付率は、環状金属コードを作成した際のコード径をDとし、型付けされたストランド材の波高さ(自己径含む)をHとすると、「直径型付率(%)=H/D×100」で表される。
本発明に係る環状金属コードにおいて、前記ストランド材の両端末が直線化され、中心に形成される中空部に挿し入れられていることが好ましい。
これにより、ストランド材の両端末を容易に固定することができる。また、両端末が挿し入れられていない部分では、例えば、プーリに巻回することにより断面が自然に扁平化し易く、環状金属コード自体の自転がなくされて、疲労を抑制することができる。しかも、断面の扁平化により、中空部に挿し入れた両端末が周囲のストランド材によって強力に保持され、両端末の抜けを確実に防止することができる。
これにより、ストランド材の両端末を容易に固定することができる。また、両端末が挿し入れられていない部分では、例えば、プーリに巻回することにより断面が自然に扁平化し易く、環状金属コード自体の自転がなくされて、疲労を抑制することができる。しかも、断面の扁平化により、中空部に挿し入れた両端末が周囲のストランド材によって強力に保持され、両端末の抜けを確実に防止することができる。
また、本発明に係る環状金属コードにおいて、前記中空部に挿し入れられる前記ストランド材の両端末の合計長さが、環状の略周長とされていることが好ましい。
つまり、可能な撚り構造であれば環状の全周にわたって中空部にストランド材の端末が挿し入れられた状態とされているので、例え自転が発生し易い撚り構造であっても全周にわたって断面積の均一化が図られる効果が大きく、全体として均一な環状金属コードとなり、安定した強度が得られる。
つまり、可能な撚り構造であれば環状の全周にわたって中空部にストランド材の端末が挿し入れられた状態とされているので、例え自転が発生し易い撚り構造であっても全周にわたって断面積の均一化が図られる効果が大きく、全体として均一な環状金属コードとなり、安定した強度が得られる。
本発明に係る環状金属コードにおいて、前記ストランド材は複数の金属素線同士を撚り合わせた構造であり、前記金属素線同士の撚り方向と前記空隙部に嵌め入れられているストランド材の巻き付けの螺旋方向とが逆方向であることが好ましい。
ストランド材内の金属素線同士の撚り方向とストランド材の巻き付け方向を逆にすることで、環状金属コードの機械的特性に方向性が生じることを抑制し、環状金属コードを環状方向に沿って回転させて使用する場合でも蛇行しにくくなる。
ストランド材内の金属素線同士の撚り方向とストランド材の巻き付け方向を逆にすることで、環状金属コードの機械的特性に方向性が生じることを抑制し、環状金属コードを環状方向に沿って回転させて使用する場合でも蛇行しにくくなる。
本発明に係る環状金属コードにおいて、前記金属素線の直径が0.03mm以上0.14mm以下であることが好ましい。
このような細径の金属素線を用いたストランド材の場合、ストランド材の直径型付け率を大きくしても張力がかかると元に戻りやすく、無理に直径型付け率を大きくするとストランド材の真直性が維持できなくなる。そのため、上記のようにストランド材の直径型付け率を91%以下とすることでストランド材の真直性を維持しやすくなる。
また、金属素線の直径が0.03mm以上0.14mm以下であれば、可能な限り線径を細くしつつ、ストランド材をしなやかなものとすることができる。金属素線の直径が0.15mm以上であれば直径型付け率を92%以上としても型付けが維持されやすいので、金属素線の直径が0.14mm以下であれば、ストランド材の直径型付け率を70%以上91%以下とすることが好ましい。
このような細径の金属素線を用いたストランド材の場合、ストランド材の直径型付け率を大きくしても張力がかかると元に戻りやすく、無理に直径型付け率を大きくするとストランド材の真直性が維持できなくなる。そのため、上記のようにストランド材の直径型付け率を91%以下とすることでストランド材の真直性を維持しやすくなる。
また、金属素線の直径が0.03mm以上0.14mm以下であれば、可能な限り線径を細くしつつ、ストランド材をしなやかなものとすることができる。金属素線の直径が0.15mm以上であれば直径型付け率を92%以上としても型付けが維持されやすいので、金属素線の直径が0.14mm以下であれば、ストランド材の直径型付け率を70%以上91%以下とすることが好ましい。
本発明に係る環状金属コードにおいて、互いに巻き付けられた前記ストランド材の環状部分における中心軸に対する前記ストランド材の巻き付け角度が6.5度以上17.0度以下の範囲内であることが好ましい。
これにより、ストランド材の巻き付け作業が容易となるため、環状金属コードをより容易に製造できる。また、適度な伸度を有し、かつストランド材の巻き緩みがない環状金属コードを得ることができる。
これにより、ストランド材の巻き付け作業が容易となるため、環状金属コードをより容易に製造できる。また、適度な伸度を有し、かつストランド材の巻き緩みがない環状金属コードを得ることができる。
また、本発明に係る無端金属ベルトは、上記本発明に係る環状金属コードを備えていることが好ましい。
上述の環状金属コードを用いることによって、継続的な繰り返し負荷に対しても環状金属コードの撚り緩みが生じず形状を維持することができるため、破断強度及び耐疲労性に優れた無端金属ベルトを得ることができる。
上述の環状金属コードを用いることによって、継続的な繰り返し負荷に対しても環状金属コードの撚り緩みが生じず形状を維持することができるため、破断強度及び耐疲労性に優れた無端金属ベルトを得ることができる。
また、上記課題を解決することのできる本発明に係る環状金属コードの製造方法は、コア材の周りに少なくとも7本のストランド材が直径型付け率を70%以上91%以下に調整されて撚り合わされた原コードを解撚し、1本の前記ストランド材を、前記原コードの前記ストランド材の本数よりも少なくとも1周少ない周回環状にしつつ他のストランド材の抜けた螺旋状の空隙部に、余長部を嵌め入れて巻き付けて環状とすることを特徴とする。
このような構成の環状金属コードの製造方法によれば、コアの周りに少なくとも7本のストランド材が直径型付け率を70%以上91%以下に調整されて撚り合わされた原コードから取り出したストランド材において、原コードのストランド材の本数よりも少なくとも1周少ない周回にて環状にしつつ他のストランド材の抜けた螺旋状の空隙部に余長部を嵌め入れて巻き付けると、原コードの時と比較してストランド材の螺旋径が小さくなりストランド材の隣り合う部分同士が密着した状態となる。螺旋径が小さくなっているので、原コードのストランド材の本数よりも少ない周回で巻き付けてもストランド材同士の接触抵抗が得られ、ストランド材の全長に亘ってストランド材同士が強く拘束されるため、繰り返し負荷が加わっても撚り緩みが生じにくい。また、ストランド材同士の接触抵抗によって巻き付け状態が維持されるため、端末処理を簡素なものにすることができる。このように、ストランド材の剛性が低く直径型付率を大きくしにくい場合や、ストランド材の負担を極力低減するために直径型付率を小さくしたい場合に、直径型付け率を70%以上91%以下としてもストランド材同士を強く密着させることができる。
また、コア材の周りに少なくとも7本のストランド材を撚り合わせた原コードが解撚されて環状とされているので、中心に中空部が形成される。これにより、この中空部へストランド材の両端末を挿し入れることにより、両端末表面と螺旋状に周回させたストランド材の内側表面との接触抵抗が付加され、更に強固に固定することができる。
なお、直径型付率が70%より小さいと、複数のストランド材同士を撚り合わせた原コードを解撚して1本のストランド材を取り出したときに、このストランド材に付与された螺旋形状の直径方向は大幅に縮小しすぎ、長手方向に伸長しすぎてしまう。その結果、ストランド材の層心径が小さくなりすぎるため、環状にして他のストランド材の抜けた螺旋状の空隙部に使用する1本のストランド材の余長部を嵌め入れる際に、嵌め入れにくくなる。また、直径型付率が91%より大きいと、原コードのストランド材の本数よりも少なくする必要はなく、むしろ1本多くした方がストランド材間の接触抵抗は強められる。
また、コア材の周りに少なくとも7本のストランド材を撚り合わせた原コードが解撚されて環状とされているので、中心に中空部が形成される。これにより、この中空部へストランド材の両端末を挿し入れることにより、両端末表面と螺旋状に周回させたストランド材の内側表面との接触抵抗が付加され、更に強固に固定することができる。
なお、直径型付率が70%より小さいと、複数のストランド材同士を撚り合わせた原コードを解撚して1本のストランド材を取り出したときに、このストランド材に付与された螺旋形状の直径方向は大幅に縮小しすぎ、長手方向に伸長しすぎてしまう。その結果、ストランド材の層心径が小さくなりすぎるため、環状にして他のストランド材の抜けた螺旋状の空隙部に使用する1本のストランド材の余長部を嵌め入れる際に、嵌め入れにくくなる。また、直径型付率が91%より大きいと、原コードのストランド材の本数よりも少なくする必要はなく、むしろ1本多くした方がストランド材間の接触抵抗は強められる。
本発明に係る環状金属コードの製造方法において、前記ストランド材の両端末を直線化し、中心に形成される中空部に挿し入れることが好ましい。
これにより、ストランド材の両端末を容易に固定することができる。また、両端末が挿し入れられていない部分では、例えば、プーリに巻回することにより断面が自然に扁平化し、環状金属コード自体の自転がなくされ、疲労を抑制することができる。しかも、断面の扁平化により、中空部に挿し入れた両端末が周囲のストランド材によって強力に保持され、両端末の抜けを確実に防止することができる。
これにより、ストランド材の両端末を容易に固定することができる。また、両端末が挿し入れられていない部分では、例えば、プーリに巻回することにより断面が自然に扁平化し、環状金属コード自体の自転がなくされ、疲労を抑制することができる。しかも、断面の扁平化により、中空部に挿し入れた両端末が周囲のストランド材によって強力に保持され、両端末の抜けを確実に防止することができる。
本発明に係る環状金属コードの製造方法において、前記中空部に挿し入れる前記ストランド材の両端末の合計長さを、環状の略周長とすることが好ましい。
つまり、可能な撚り構造であれば環状の全周にわたって中空部にストランド材の端末が挿し入れられた状態とされるので、例え自転が発生し易い撚り構造であっても全周にわたって断面積の均一化が図られる効果が大きく、全体として均一な環状金属コードとなり、安定した強度が得られる。
つまり、可能な撚り構造であれば環状の全周にわたって中空部にストランド材の端末が挿し入れられた状態とされるので、例え自転が発生し易い撚り構造であっても全周にわたって断面積の均一化が図られる効果が大きく、全体として均一な環状金属コードとなり、安定した強度が得られる。
本発明に係る環状金属コードの製造方法において、前記ストランド材として複数の金属素線同士を撚り合わせた構造のストランド材を用い、前記金属素線同士の撚り方向と前記空隙部に嵌め入れるストランド材の巻き付けの螺旋方向とを逆方向とすることが好ましい。
ストランド材内の金属素線同士の撚り方向とストランド材の巻き付け方向を逆にすることで、環状金属コードの機械的特性に方向性が生じることを抑制し、環状金属コードを環状方向に沿って回転させて使用する場合でも蛇行しにくくなる。
ストランド材内の金属素線同士の撚り方向とストランド材の巻き付け方向を逆にすることで、環状金属コードの機械的特性に方向性が生じることを抑制し、環状金属コードを環状方向に沿って回転させて使用する場合でも蛇行しにくくなる。
本発明に係る環状金属コードの製造方法において、前記原コードにおける残りのストランド材の1本を、前記原コードの撚り合わせの本数よりも少なくとも1周少ない周回環状にしつつ他のストランド材の抜けた螺旋状の空隙部に、余長部を嵌め入れて巻き付けて環状とすることが好ましい。
原コードの内の残りのストランド材によって環状金属コードを製造することができ、経済的である。
原コードの内の残りのストランド材によって環状金属コードを製造することができ、経済的である。
本発明によれば、継続的な繰り返し負荷に対しても撚り緩みが生じず巻き付けた形状を維持することができる環状金属コード、無端金属ベルト及び環状金属コードの製造方法を提供することができる。したがって、本発明の環状金属コード及び無端金属ベルトを産業機械に用いれば、当該産業機械を耐久性に優れたものとすることができる。
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
図1は本実施形態に係る環状金属コードの斜視図であり、図2は環状金属コードを示す径方向の断面斜視図であり、図3(a)は環状金属コードC1を示す径方向の断面図であり、同図(b)は環状金属コードC1の側面図、図4は環状金属コードの一部を示す拡大斜視図である。
図1から図3に示すように、環状金属コードC1は、ストランド材を複数本用いて環状に撚り合わせてなるものであって、ストランド材として予め複数の金属素線が撚り合わされたストランド材1を用いている。
図1から図3に示すように、環状金属コードC1は、ストランド材を複数本用いて環状に撚り合わせてなるものであって、ストランド材として予め複数の金属素線が撚り合わされたストランド材1を用いている。
本実施形態の環状金属コードC1は、予め螺旋状にくせ付けされた1本のストランド材1を用意し、端末を除いた略1/6分の長さを環状にした状態で、残りの余長部をその環状部分に複数周回(5周)巻き付けて形成されている。巻き付けの撚り方向は、例えばZ撚である。この環状金属コードC1をストランド材1の径方向の断面で見ると、6本のストランド材1が円周に配置された構造を有している。
各ストランド材1は、7本の金属素線10がS撚方向で撚り合わされた(下撚りされた)7本のストランド材10aが、さらに、S撚方向で撚り合わされて(下撚りされて)構成されている。
金属素線10は、例えば、炭素(C)を0.7質量%以上含む高炭素鋼ワイヤからなるものである。0.70質量%以上のCを含む材料を選定することで、金属素線10をより破断強度に優れた鋼線とすることができる。また、金属素線10の表面には、銅合金(例えば、真鍮)または亜鉛のめっき処理が施されていてもよい。なお、金属素線10の材質は、前記のものに限られず、例えば、ピアノ線でもよい。
金属素線10は、例えば、炭素(C)を0.7質量%以上含む高炭素鋼ワイヤからなるものである。0.70質量%以上のCを含む材料を選定することで、金属素線10をより破断強度に優れた鋼線とすることができる。また、金属素線10の表面には、銅合金(例えば、真鍮)または亜鉛のめっき処理が施されていてもよい。なお、金属素線10の材質は、前記のものに限られず、例えば、ピアノ線でもよい。
また、金属素線10の直径は0.03mm以上0.14mm以下の範囲内である。このような金属素線10を用いると、可能な限り線径を細くして、ストランド材をしなやかなものとすることができる。金属素線10の直径が0.14mm以下であり、ストランド材1の剛性が低くなるので、ストランド材1の直径型付け率を大きくすることができるが、その反面、撚り合わせの際などに張力がかかると型付けが元に戻りやすい。型付けは、例えば千鳥配列された円筒ピンの間を通過させることにより行うので、型付けが戻りやすいことを見越して無理に直径型付け率を大きくすると、円筒ピンとストランド材1との摩擦力が大きくなり、型付けされた状態のストランド材1の真直性が維持できなくなる。そのようなストランド材1を用いて環状金属コードC1を作製してもストランド材1同士の撚り合わせが安定せず、好ましくない。
そこで、本実施形態では、ストランド材1の直径型付け率を91%以下とすることで、真直性を維持しやすくし、型付けが戻りにくくしている。また、直径型付け率を70%以上とすることで、ストランド材1の一部を環状にして螺旋状の空隙部に余長部を嵌め入れる際に、嵌め入れにくくならない程度の螺旋形状を確保している。
本実施形態の構造では、原コード時に付与するストランド材1の直径型付け率を85%以上88%以下に設定することが更に好ましい。
そこで、本実施形態では、ストランド材1の直径型付け率を91%以下とすることで、真直性を維持しやすくし、型付けが戻りにくくしている。また、直径型付け率を70%以上とすることで、ストランド材1の一部を環状にして螺旋状の空隙部に余長部を嵌め入れる際に、嵌め入れにくくならない程度の螺旋形状を確保している。
本実施形態の構造では、原コード時に付与するストランド材1の直径型付け率を85%以上88%以下に設定することが更に好ましい。
つまり、このような径の金属素線10でストランド材1を形成し、ストランド材1の直径型付け率を70%以上91%以下とすることで、しなやかで適度な螺旋形状を有するストランド材1を得ることができる。よって、ストランド材1の巻き付けが容易となり、かつ巻き付け後の巻き緩みが生じにくくなる。
ストランド材1同士は、Z撚、つまりストランド材1を構成する金属素線10の撚り方向とは逆方向に巻き付けられる。一方、ストランド材1自身は、金属素線10をS撚したストランド材10aをさらにS撚した構成であるため、環状金属コードC1はS/S撚構造とZ巻構造を組み合わせたものとなる。金属素線10の撚り方向と、ストランド材1の巻き付け方向とが逆であると、環状金属コードC1の機械的特性に方向性が生じることが抑制されて捩れにくく、表面外観に凹凸の少ない環状金属コードC1を得ることができる。また、環状金属コードC1を環状方向に沿って回転させて使用する場合でも蛇行しにくくなる。
また、ストランド材1は、6本の撚り合わせ中心軸に対して所定の巻き付け角度で巻き付けられている。このため、ストランド材1が乱れなく巻かれ、表面状態が略均一な環状金属コードC1を得ることができる。本実施形態においては、図3(b)に示すように、X方向、すなわち環状金属コードC1の中心軸が延びる方向に対するストランド材1の巻き付け角度θは、6.5度以上17.0度以下となっている。巻き付け角度θを6.5度以上とすることで、ストランド材1の巻き緩みが生じにくくなる。巻き付け角度θを17.0度以下とすることで、ストランド材1の伸度が過度に大きくなることを防ぐことができる。つまり、ストランド材1の巻き付け角度θを6.5度以上17.0度以下とすることで、適度な伸度を有し、かつしなやかな環状金属コードC1を得ることができる。
図4に示すように、ストランド材1の巻き付けの始端部(端末)1aと巻き付けの終端部(端末)1bとは、環状金属コードC1の環状の円弧の外周側で結ばれた後、ストランド材1同士の間から、環状金属コードC1の中心に形成されている中空部C1a(図3(a)参照)内へ挿し込まれて固定されている。
これら始端部1a及び終端部1bは、その長さがストランド材1の径の25倍以上120倍以下の長さとされている。そして、これら始端部1a及び終端部1bは、周囲のストランド材1によって強力に保持され、抜けが確実に防止されている。
これら始端部1a及び終端部1bは、その長さがストランド材1の径の25倍以上120倍以下の長さとされている。そして、これら始端部1a及び終端部1bは、周囲のストランド材1によって強力に保持され、抜けが確実に防止されている。
なお、環状金属コードC1は、例えば、減圧環境下にて、約280℃で10分間、焼鈍処理を施しても良い。
また、環状金属コードC1の環状方向全域に亘って、ストランド材1同士が接触する境目には接着系樹脂が塗布されていてもよい。これにより、ストランド材1同士をその接触抵抗だけでなく樹脂の接着力によっても移動しないように保持できるため、さらに撚り緩みが生じにくくなり、形状が安定する。接着系樹脂は、硬化後も環状金属コードC1の弾性変形に対応して伸縮可能な材質を使用する。
また、環状金属コードC1の環状方向全域に亘って、ストランド材1同士が接触する境目には接着系樹脂が塗布されていてもよい。これにより、ストランド材1同士をその接触抵抗だけでなく樹脂の接着力によっても移動しないように保持できるため、さらに撚り緩みが生じにくくなり、形状が安定する。接着系樹脂は、硬化後も環状金属コードC1の弾性変形に対応して伸縮可能な材質を使用する。
続いて、環状金属コードC1の製造方法について説明する。
図5は、環状金属コードC1を製造するために用意された金属コードを示す径方向の断面斜視図である。
図5に示すように、金属コード(原コード)20は、S撚した金属素線10からなるストランド材10aをS撚にて撚り合わせて(下撚りして)なる7本のストランド材(側ストランド材)1を、コア材であるコアストランド2を囲むように撚り合せた(上撚りした)撚線構造を有している。上撚り方向はZ撚である。コアストランド2は、周囲に7本のストランド材1を撚り合せるため、その直径がストランド材1より僅かに大きくなるように形成されている。例えば、ストランド材1の金属素線10の直径が0.08mmの場合、コアストランド2は直径0.10mmの金属素線を用いてストランド材1と同じ撚り構造で形成する。
図5は、環状金属コードC1を製造するために用意された金属コードを示す径方向の断面斜視図である。
図5に示すように、金属コード(原コード)20は、S撚した金属素線10からなるストランド材10aをS撚にて撚り合わせて(下撚りして)なる7本のストランド材(側ストランド材)1を、コア材であるコアストランド2を囲むように撚り合せた(上撚りした)撚線構造を有している。上撚り方向はZ撚である。コアストランド2は、周囲に7本のストランド材1を撚り合せるため、その直径がストランド材1より僅かに大きくなるように形成されている。例えば、ストランド材1の金属素線10の直径が0.08mmの場合、コアストランド2は直径0.10mmの金属素線を用いてストランド材1と同じ撚り構造で形成する。
コアストランド2の周囲に撚られた側線としてのストランド材1は、環状金属コードC1を構成するために用いられる。これら7本のストランド材1は、撚り合わせて金属コード20とすることにより、直径型付け率70%以上91%以下(本実施形態では85%以上88%以下)にてそれぞれ螺旋状の型付けを施しておく。
なお、金属コード20におけるストランド材1の本数は、環状金属コードC1の用途に応じて金属素線径を含めたストランド材1の撚り構造と環状金属コードC1に必要なストランド材1の本数を決定し、環状金属コードC1に供されるストランド材1の直径型付け率から決められる。
なお、金属コード20におけるストランド材1の本数は、環状金属コードC1の用途に応じて金属素線径を含めたストランド材1の撚り構造と環状金属コードC1に必要なストランド材1の本数を決定し、環状金属コードC1に供されるストランド材1の直径型付け率から決められる。
このような金属コード20を解撚して、各ストランド材1に分け、これらストランド材1の1本を用いて1つの環状金属コードC1を製造する。
なお、金属コード20のコア材は環状金属コードC1の製造に使用しない。そのため、コア材として、コアストランド2の代わりに同じ径の軟鋼材のモノフィラメントを1本用いてもよい。
なお、金属コード20のコア材は環状金属コードC1の製造に使用しない。そのため、コア材として、コアストランド2の代わりに同じ径の軟鋼材のモノフィラメントを1本用いてもよい。
そして、上記のように金属コード20から取り出した1本のストランド材1は、図6に示すように、他のストランド材1が存在していた箇所に螺旋状の空隙部5が形成されている。ストランド材1の直径型付け率が85%以上88%以下であり、金属コード20を解撚した際に螺旋径が収縮するので、空隙部5は、ストランド材1のほぼ1本分狭くなり、5本分のストランド材1の断面積を有している。
次いで、図7に示すように、ストランド材1の長さの端末を除いた略1/6分の長さを環状にして、その環状部分1dにおける螺旋状の空隙部5にストランド材1の余長部1eを5周嵌め入れ、金属コード20の撚り合わせの本数よりも1周少ない周回(6周)環状にする。ストランド材1における空隙部5は、その断面積が5本のストランド材1の断面積の合計と同等であり、5周巻き付けられるストランド材1の余長部1eが螺旋状の空隙部5に嵌め入れられるため、巻き付けられたストランド材1の隣り合う余長部1e同士が互いに接触した状態となる。これにより、ストランド材1の全長に亘ってストランド材1同士の巻き付けが安定するため、繰り返し荷重が加わっても撚り緩みが生じにくい。このように本実施形態によれば、継続的な繰り返し負荷に対してもストランド材1の撚り緩みが生じず、しかも、7本のストランド材1を撚り合わせて金属コード20とすることにより、直径型付け率70%以上91%以下にて調整してそれぞれ螺旋状の型付けを施しておくので、ストランド材1が巻き付けられた形状が維持可能な環状金属コードC1を容易に製造することができる。
また、ストランド材1が単線ではなく、複数の金属素線10からなるストランド材10a同士を撚り合わせたものであるため、ストランド材1表面の凹凸によりストランド材1同士の接触抵抗も大きくなるので、撚り緩みがさらに生じにくくなる。また、環状金属コードC1の柔軟性が向上し、外力に対して均一負荷となりやすいので破断強度の低下を抑制できる。
また、ストランド材1は、金属コード20の状態でZ撚方向の螺旋状の型付けが施されている。そのためストランド材1同士は、Z撚、つまりストランド材1を構成する金属素線10の撚り方向(S/S撚構造)とは逆方向に巻き付けられる。すなわち、環状金属コードC1はS/S撚構造とZ巻構造を組み合わせたものとなる。金属素線10の撚り方向と、ストランド材1の巻き付け方向とが逆であるため、環状金属コードC1の機械的特性に方向性が生じることが抑制されて捩れにくく、表面外観に凹凸の少ない環状金属コードC1を得ることができる。また、環状金属コードC1を環状方向に沿って回転させて使用する場合でも蛇行しにくくなる。
環状に巻き付けを行った後、ストランド材1の始端部1a及び終端部1bを、図8に示すように、環状の円弧の外周側に引き出す。この引き出す始端部1a及び終端部1bのそれぞれの長さは、ストランド材1の径の25倍以上120倍以下の長さとすることが好ましい。そして、この引き出した始端部1a及び終端部1bを直線化して伸ばし、これら始端部1a及び終端部1bの端部を電気溶断する。このようにすると、これら始端部1a及び終端部1bにおいて金属素線10がばらけるのを防止することができる。
次いで、図9に示すように、始端部1a及び終端部1bを、環状の円弧の外周側にて結ぶ。
その後、図10に示すように、ストランド材1同士の間にピンPを差し込んで隙間Sをつくり、さらに、ストランド材1の束を回転させながらピンPを環状に沿ってスライドさせて隙間Sの位置を環状に沿って移動させながら、この隙間Sに始端部1a及び終端部1bを押し込んでいく。このとき、始端部1a及び終端部1bは、引き伸ばして略直線化されているので、隙間Sへの挿し込みを容易に行うことができる。そして、このようにストランド材1同士の隙間Sへ始端部1a及び終端部1bを挿し込むと、始端部1a及び終端部1bが6本のストランド材1の中心に形成されている中空部C1a内に挿し入れられて固定される。このようにすると、中空部C1aに挿し入れられたストランド材1の始端部1a及び終端部1bが周囲のストランド材1によって強力に保持され、両端末の抜けが確実に防止される。
その後、図10に示すように、ストランド材1同士の間にピンPを差し込んで隙間Sをつくり、さらに、ストランド材1の束を回転させながらピンPを環状に沿ってスライドさせて隙間Sの位置を環状に沿って移動させながら、この隙間Sに始端部1a及び終端部1bを押し込んでいく。このとき、始端部1a及び終端部1bは、引き伸ばして略直線化されているので、隙間Sへの挿し込みを容易に行うことができる。そして、このようにストランド材1同士の隙間Sへ始端部1a及び終端部1bを挿し込むと、始端部1a及び終端部1bが6本のストランド材1の中心に形成されている中空部C1a内に挿し入れられて固定される。このようにすると、中空部C1aに挿し入れられたストランド材1の始端部1a及び終端部1bが周囲のストランド材1によって強力に保持され、両端末の抜けが確実に防止される。
なお、始端部1a及び終端部1bを結んでから中空部C1aに挿し入れたが、これら始端部1a及び終端部1bを結ばずに中空部C1aに挿し入れて固定しても良い。この場合も、中空部C1aに挿し入れられたストランド材1の始端部1a及び終端部1bは、周囲のストランド材1によって強力に保持され、両端末の抜けが十分に防止される。
次に、上述した構成を有する環状金属コードC1を備える無端金属ベルトの一例について説明する。図11は本実施形態に係る無端金属ベルトの使用状態を示す模式的な斜視図である。
無端金属ベルトB1は、例えば図11に示されるような、精密機器やその他の産業機械で使用されている減速機30用に用いられる。無端金属ベルトB1は、並行して配列された3本の環状金属コードC1からなり、小径の駆動側プーリ32と大径の被駆動側プーリ34との間の動力伝達を担っている。駆動側プーリ32の回転中心には、駆動用モータ36の駆動軸が接続されている。駆動側プーリ32及び被駆動側プーリ34の外周には各環状金属コードC1を安定的に掛け渡すための円周溝が形成され、無端金属ベルトB1を駆動側プーリ32及び被駆動側プーリ34に掛け渡すことにより、駆動側プーリ32の回転力が無端金属ベルトB1を介して被駆動側プーリ34に伝達される。その際、駆動側プーリ32の回転速度は被駆動側プーリ34にて減速され、駆動側プーリ32のトルクは被駆動側プーリ34にて増大される。被駆動側プーリ34は、例えば図示せぬ他のプーリ等に軸接続され、動力を伝達する。
環状金属コードC1は、先に述べたように破断強度が非常に大きい。また、1本のストランド材1が、金属コード20の撚り合わせ本数よりも少なくとも1周少ない周回環状にされつつ空隙部5に余長部1eが嵌め入れられて巻き付けられ、中空部C1aを有する環状とされているので、プーリ32,34に巻回することにより、始端部1a及び終端部1bの挿し込み箇所以外にて、中空部C1aが潰れて断面が扁平化し、環状金属コードC1自体の自転がなくされる。つまり、自転が生じないので、疲労を抑制することができ、また、環状の円弧の外周側に多少の突起があってもベルトとしてプーリ32,34に巻回して用いることができる。
しかも、このように扁平化されることにより、中空部C1aに挿し入れられている始端部1a及び終端部1bが周囲のストランド材1によって、より強力に保持され、これにより、始端部1a及び終端部1bの抜けを確実に防止することができる。
なお、焼鈍処理を施した場合では、ストランド材1の撚り合わせ時の加工歪を除去することができ、さらに耐久性を高めることができる。
しかも、このように扁平化されることにより、中空部C1aに挿し入れられている始端部1a及び終端部1bが周囲のストランド材1によって、より強力に保持され、これにより、始端部1a及び終端部1bの抜けを確実に防止することができる。
なお、焼鈍処理を施した場合では、ストランド材1の撚り合わせ時の加工歪を除去することができ、さらに耐久性を高めることができる。
また、上記実施形態では、金属コード20を構成する7本のストランド材1の内の1本のストランド材1を用いて環状金属コードC1を製造したが、残りの6本のそれぞれのストランド材1についても同様に、前述したように、金属コード20の撚り合わせ本数よりも少なくとも1周少ない周回環状にしつつ空隙部5に、余長部1eを嵌め入れて巻き付けて環状金属コードC1を製造することができ、経済性を高めることができる。
また、本実施形態の無端金属ベルトB1において、駆動側プーリ32及び被駆動側プーリ34に環状金属コードC1がそれぞれ3本ずつ掛け渡される形態としたが、掛け渡される環状金属コードC1の本数はこれに限られない。求められる駆動力またはベルト張力に応じて、環状金属コードC1の本数を調整することが可能である。
また、本実施形態は、環状金属コードを、減速機において動力を伝達する無端金属ベルトに適用したものであるが、本発明の環状金属コードは、減速機以外で使用される無端金属ベルトにも適用することができる。例えば、プリンタをはじめとする印刷機において紙送りローラ間の動力伝達を担う無端金属ベルト、一軸ロボットの直行駆動を担う無端金属ベルト、X−Yテーブル機構の駆動や三次元のキャリッジ駆動を担う無端金属ベルト、光学機器や検査機、あるいは測定器内において精密駆動を担う無端金属ベルト、自動車の無段変速機における駆動側プーリ及び被駆動側プーリの間の動力伝達を担う無端金属ベルト等に適用可能である。
なお、上記実施形態では、断面におけるストランド材1の本数が6本の場合を例示して説明したが、断面におけるストランド材1は、6本に限定されない。
また、上記実施形態では、始端部1a及び終端部1bのそれぞれの長さを、ストランド材1の直径の25倍以上120倍以下の長さとして中空部C1aに挿し入れたが、図12に示すように、例えば、中空部C1aに挿し入れる始端部1a及び終端部1bを環状の周長の略半分ずつとし、これら始端部1a及び終端部1bの合計長さを、環状の略周長としても良い。
このようにすると、環状金属コードC1では、可能な撚り構造であればその環状の全周にわたって中空部C1aに始端部1a及び終端部1bが挿し入れられた状態とされ、よって、例え自転が発生し易い撚り構造であっても全周にわたって断面積の均一化が図られる効果が大きく、全体として均一な環状金属コードC1となる。このような環状金属コードC1によれば、全周にわたって安定した強度を得ることができる。
このようにすると、環状金属コードC1では、可能な撚り構造であればその環状の全周にわたって中空部C1aに始端部1a及び終端部1bが挿し入れられた状態とされ、よって、例え自転が発生し易い撚り構造であっても全周にわたって断面積の均一化が図られる効果が大きく、全体として均一な環状金属コードC1となる。このような環状金属コードC1によれば、全周にわたって安定した強度を得ることができる。
また、ストランド材の撚り構造を変更した別の環状金属コードの形態例を、図13に示す。
この環状金属コードC2は、断面におけるストランド材3の本数が6本であり、ストランド材3は、3本の金属素線13をZ撚した周囲に、さらに9本の金属素線13をS撚した構造のストランド材13aを7本用いてS撚にて撚り合わせて形成されている。金属素線13の直径は0.06mmである。この環状金属コードC2は、上記環状金属コードC1より耐疲労性能が良好である。
この環状金属コードC2は、断面におけるストランド材3の本数が6本であり、ストランド材3は、3本の金属素線13をZ撚した周囲に、さらに9本の金属素線13をS撚した構造のストランド材13aを7本用いてS撚にて撚り合わせて形成されている。金属素線13の直径は0.06mmである。この環状金属コードC2は、上記環状金属コードC1より耐疲労性能が良好である。
この環状金属コードC2の場合、ストランド材3の実現可能な直径型付け率は77%以上80%以下であり、原コード(金属コード)として8本のストランド材3が必要となる。原コードにおいてコア材に対するストランド材3の撚り合わせを均一にするために、コア材の径はストランド材3より大きくする。本例では、コアストランドの撚り構造はストランド材3と同じでよいが金属素線径をストランド材3の金属素線13より大きい0.095mmにする。このコアストランドの周囲に8本のストランド材3をZ撚にて撚り合わせて、金属コードとする。このように8本のストランド材3を撚り合わせて金属コードとすることにより、直径型付け率77%以上80%以下にてそれぞれ螺旋状の型付けを施す。
金属コードを解撚してストランド材3を取り出し、1本のストランド材3の長さの端末を除いた略1/6分の長さを環状にして、その環状部分における螺旋状の空隙部にストランド材3の余長部を5周嵌め入れ、金属コードの撚り合わせの本数よりも2周少ない周回(6周)環状にする。ストランド材3の直径型付け率は77%以上80%以下であるため、金属コードを解撚してストランド材3を取り出した後は螺旋径が収縮して、螺旋状の空隙部がストランド材3の2本分狭くなる。すなわち、ストランド材3を、金属コードより2周少ない周回で巻き付けるとストランド材3の隣り合う余長部同士が互いに接触した状態となって空隙部が埋まり、ストランド材3同士の巻き付けが安定する。その後、ストランド材3の端末の処理等は上記環状金属コードC1と同様に行う。
また、金属コードのコア材は環状金属コードC1と同様に、軟鋼材のモノフィラメントを1本用いてもよい。
そして、この環状金属コードC2においても、破断強度が非常に大きく、繰り返し負荷に対しても緩みが生じない。
また、金属コードのコア材は環状金属コードC1と同様に、軟鋼材のモノフィラメントを1本用いてもよい。
そして、この環状金属コードC2においても、破断強度が非常に大きく、繰り返し負荷に対しても緩みが生じない。
次に、本発明に係る環状金属コードの実施例について説明する。
ストランド材の金属素線径や撚り構造の異なる複数種類の環状金属コードについて、型付け率の違いによる巻き付け性及び焼鈍処理の有無による耐久性の変化を調べた。
ストランド材の金属素線径や撚り構造の異なる複数種類の環状金属コードについて、型付け率の違いによる巻き付け性及び焼鈍処理の有無による耐久性の変化を調べた。
(1)6×7×7×0.08の環状金属コード
(金属素線の作製)
スチールコード用途の直径3.8mmの線材を酸洗皮膜処理した後、乾式伸線機により直径1.8mmまで伸線加工し、加熱、パテンチング、酸洗皮膜処理を行った後、再度乾式伸線機により直径0.55mmまで伸線加工する。これを再加熱、パテンチング、酸洗、水洗した後、ブラスめっき(銅めっき、亜鉛めっき後、熱拡散により合金化)して直径0.55mmのブラスめっき鋼線とする。これを湿式伸線機により直径0.08mmまで伸線加工して金属素線(側ストランド材用)とする。また、直径0.55mmのブラスめっき鋼線を湿式伸線機により直径0.10mmまで伸線加工して金属素線(コアストランド材用)とする。
(側ストランド材の作製)
直径0.08mmの金属素線を、7本撚り(1+6の構成)ができるチューブラー型撚線機を用いて3.0mmの撚りピッチでS撚りにて下撚り(子撚り)する。このとき、プレフォーム装置により事前に87%前後の直径型付け率になるように調整する。このストランド材を所定量巻き取ったリールを7リール用意する。
子撚りした7本撚りのストランド材を用いて、7本撚り(1+6の構成)ができるチューブラー型撚線機を用いて9.0mmの撚りピッチでS撚りにて下撚り(親撚り)する。このとき、プレフォーム装置により事前に87%前後の直径型付け率になるように調整する。このストランド材を所定量巻き取ったリールを7リール用意する。
(コアストランド材の作製)
環状金属コードには使用されないので、直径0.10mmの金属素線を、7本撚り(1+6の構成)ができるチューブラー型撚線機を用いて3.0mmの撚りピッチでS撚りにて下撚り(子撚り)する。このとき、プレフォーム装置により事前に87%前後の直径型付け率になるように調整する。このストランド材を所定量巻き取ったリールを7リール用意する。
子撚りした7本撚りのストランド材を用いて、7本撚り(1+6の構成)ができるチューブラー型撚線機を用いて9.0mmの撚りピッチでS撚りにて下撚り(親撚り)する。このとき、プレフォーム装置により事前に87%前後の直径型付け率になるように調整する。このストランド材を所定量巻き取ったリールを1リール用意する。
(原コードの作製)
上記のコアストランド材(親撚り)1リールと側ストランド材(親撚り)7リールを用いて8本撚り(1+7の構成)ができるチューブラー型撚線機を用いて22.0mmの撚りピッチでZ撚りにて所定量上撚りして金属コード(原コード)とする。なお、プレフォーム装置を用いて事前に87%前後の直径型付け率に調整する。
(原コードの解撚)
上撚りした金属コードを、余長分も含めて必要な環状金属コードの環状径(層心径:D1)の約22倍((D1)π×7+α)の長さで切断した後、全長にわたって解撚し、各ストランド材毎に分離する。
(環状金属コードの作製)
金属コードから分離した7本の側ストランド材の内の1本を使用して、例えば、直径200mmの環状径を形成し、その後、5周回巻回移動させて他の7本のストランド材が抜けた螺旋状の空隙部に余長部を嵌め込んで断面にて6本のストランド材を有する環状金属コードとする。
始端部及び終端余長部は、6本のストランド材の中心の中空部の全長に亘って挿し入れるのに必要な長さを残して再切断後、オーバーラップする螺旋形状を出来るだけ真直化して、両端末とも中空部に入れ込み、端末処理(ばらけ防止またはハンダ溶着)する。
(金属素線の作製)
スチールコード用途の直径3.8mmの線材を酸洗皮膜処理した後、乾式伸線機により直径1.8mmまで伸線加工し、加熱、パテンチング、酸洗皮膜処理を行った後、再度乾式伸線機により直径0.55mmまで伸線加工する。これを再加熱、パテンチング、酸洗、水洗した後、ブラスめっき(銅めっき、亜鉛めっき後、熱拡散により合金化)して直径0.55mmのブラスめっき鋼線とする。これを湿式伸線機により直径0.08mmまで伸線加工して金属素線(側ストランド材用)とする。また、直径0.55mmのブラスめっき鋼線を湿式伸線機により直径0.10mmまで伸線加工して金属素線(コアストランド材用)とする。
(側ストランド材の作製)
直径0.08mmの金属素線を、7本撚り(1+6の構成)ができるチューブラー型撚線機を用いて3.0mmの撚りピッチでS撚りにて下撚り(子撚り)する。このとき、プレフォーム装置により事前に87%前後の直径型付け率になるように調整する。このストランド材を所定量巻き取ったリールを7リール用意する。
子撚りした7本撚りのストランド材を用いて、7本撚り(1+6の構成)ができるチューブラー型撚線機を用いて9.0mmの撚りピッチでS撚りにて下撚り(親撚り)する。このとき、プレフォーム装置により事前に87%前後の直径型付け率になるように調整する。このストランド材を所定量巻き取ったリールを7リール用意する。
(コアストランド材の作製)
環状金属コードには使用されないので、直径0.10mmの金属素線を、7本撚り(1+6の構成)ができるチューブラー型撚線機を用いて3.0mmの撚りピッチでS撚りにて下撚り(子撚り)する。このとき、プレフォーム装置により事前に87%前後の直径型付け率になるように調整する。このストランド材を所定量巻き取ったリールを7リール用意する。
子撚りした7本撚りのストランド材を用いて、7本撚り(1+6の構成)ができるチューブラー型撚線機を用いて9.0mmの撚りピッチでS撚りにて下撚り(親撚り)する。このとき、プレフォーム装置により事前に87%前後の直径型付け率になるように調整する。このストランド材を所定量巻き取ったリールを1リール用意する。
(原コードの作製)
上記のコアストランド材(親撚り)1リールと側ストランド材(親撚り)7リールを用いて8本撚り(1+7の構成)ができるチューブラー型撚線機を用いて22.0mmの撚りピッチでZ撚りにて所定量上撚りして金属コード(原コード)とする。なお、プレフォーム装置を用いて事前に87%前後の直径型付け率に調整する。
(原コードの解撚)
上撚りした金属コードを、余長分も含めて必要な環状金属コードの環状径(層心径:D1)の約22倍((D1)π×7+α)の長さで切断した後、全長にわたって解撚し、各ストランド材毎に分離する。
(環状金属コードの作製)
金属コードから分離した7本の側ストランド材の内の1本を使用して、例えば、直径200mmの環状径を形成し、その後、5周回巻回移動させて他の7本のストランド材が抜けた螺旋状の空隙部に余長部を嵌め込んで断面にて6本のストランド材を有する環状金属コードとする。
始端部及び終端余長部は、6本のストランド材の中心の中空部の全長に亘って挿し入れるのに必要な長さを残して再切断後、オーバーラップする螺旋形状を出来るだけ真直化して、両端末とも中空部に入れ込み、端末処理(ばらけ防止またはハンダ溶着)する。
このようにして作製した環状金属コードを、実施例1(直径型付け率87%)とする。この他に、直径型付け率を変更したものを作製した(実施例2〜5、比較例1〜3)。各例においてストランド材を環状に巻き付けて環状金属コードとする際の状態(環状巻き付け性)を調べた。その結果を表1に示す。
表1に示すように、直径型付け率が97%である比較例1では、ストランド材がコイル状になり環状に巻き付けるのが困難であった。そして、環状に維持することも困難であった。直径型付け率が92%である比較例2では、比較例1よりやや改善したものの、比較例1と同様の傾向があった。
直径型付け率が87%である実施例1、直径型付け率が83%である実施例2では、全く問題なく計6周回の巻き付けを行うことができ、巻き付け後の環状形状も良好に維持された。
直径型付け率が80%である実施例3では、やや巻き付けしにくいものの、計6周回の巻き付けを行うことができ、巻き付け後の環状形状も維持された。
直径型付け率が77%である実施例4、直径型付け率が70%である実施例5では、計6周回の巻き付けが困難であったため、計5周回の巻き付けにより環状金属コードとした。巻き付け後の環状形状も良好に維持された。
直径型付け率が68%である比較例3では、計5周回でも環状に巻き付けるのが困難であり、計4周回の巻き付けを行ったが、ストランド同士の撚り合わせが不安定で強度が低下しやすく、端末を中空部へ収納することにも支障が生じた。
直径型付け率が87%である実施例1、直径型付け率が83%である実施例2では、全く問題なく計6周回の巻き付けを行うことができ、巻き付け後の環状形状も良好に維持された。
直径型付け率が80%である実施例3では、やや巻き付けしにくいものの、計6周回の巻き付けを行うことができ、巻き付け後の環状形状も維持された。
直径型付け率が77%である実施例4、直径型付け率が70%である実施例5では、計6周回の巻き付けが困難であったため、計5周回の巻き付けにより環状金属コードとした。巻き付け後の環状形状も良好に維持された。
直径型付け率が68%である比較例3では、計5周回でも環状に巻き付けるのが困難であり、計4周回の巻き付けを行ったが、ストランド同士の撚り合わせが不安定で強度が低下しやすく、端末を中空部へ収納することにも支障が生じた。
(2)6×7×7×0.06の環状金属コード
(金属素線の作製)
スチールコード用途の直径3.8mmの線材を酸洗皮膜処理した後、乾式伸線機により直径1.4mmまで伸線加工し、加熱、パテンチング、酸洗皮膜処理を行った後、再度乾式伸線機により直径0.40mmまで伸線加工する。これを再加熱、パテンチング、酸洗、水洗した後、ブラスめっき(銅めっき、亜鉛めっき後、熱拡散により合金化)して直径0.40mmのブラスめっき鋼線とする。これを湿式伸線機により直径0.06mmまで伸線加工して金属素線(側ストランド材用)とする。また、直径0.40mmのブラスめっき鋼線を湿式伸線機により直径0.09mmまで伸線加工して金属素線(コアストランド材用)とする。
(側ストランド材の作製)
直径0.06mmの金属素線を、7本撚り(1+6の構成)ができるチューブラー型撚線機を用いて2.5mmの撚りピッチでS撚りにて下撚り(子撚り)する。このとき、プレフォーム装置により事前に87%前後の直径型付け率になるように調整する。このストランド材を所定量巻き取ったリールを7リール用意する。
子撚りした7本撚りのストランド材を用いて、7本撚り(1+6の構成)ができるチューブラー型撚線機を用いて7.0mmの撚りピッチでS撚りにて下撚り(親撚り)する。このとき、プレフォーム装置により事前に87%前後の直径型付け率になるように調整する。このストランド材を所定量巻き取ったリールを7リール用意する。
(コアストランド材の作製)
環状金属コードには使用されないので、直径0.09mmの金属素線を、7本撚り(1+6の構成)ができるチューブラー型撚線機を用いて3.0mmの撚りピッチでS撚りにて下撚り(子撚り)する。このとき、プレフォーム装置により事前に87%前後の直径型付け率になるように調整する。このストランド材を所定量巻き取ったリールを7リール用意する。
子撚りした7本撚りのストランド材を用いて、7本撚り(1+6の構成)ができるチューブラー型撚線機を用いて9.0mmの撚りピッチでS撚りにて下撚り(親撚り)する。このとき、プレフォーム装置により事前に87%前後の直径型付け率になるように調整する。このストランド材を所定量巻き取ったリールを1リール用意する。
(原コードの作製)
上記のコアストランド材(親撚り)1リールと側ストランド材(親撚り)7リールを用いて8本撚り(1+7の構成)ができるチューブラー型撚線機を用いて20.0mmの撚りピッチでZ撚りにて所定量上撚りして金属コード(原コード)とする。なお、プレフォーム装置を用いて事前に87%前後の直径型付け率に調整する。
(原コードの解撚)
上撚りした金属コードを、余長分も含めて必要な環状金属コードの環状径(層心径:D1)の約22倍((D1)π×7+α)の長さで切断した後、全長にわたって解撚し、各ストランド材毎に分離する。
(環状金属コードの作製)
金属コードから分離した7本の側ストランド材の内の1本を使用して、例えば、直径200mmの環状径を形成し、その後、5周回巻回移動させて他の7本のストランド材が抜けた螺旋状の空隙部に余長部を嵌め込んで断面にて6本のストランド材を有する環状金属コードとする。
始端部及び終端余長部は、6本のストランド材の中心の中空部の全長に亘って挿し入れるのに必要な長さを残して再切断後、オーバーラップする螺旋形状を出来るだけ真直化して、両端末とも中空部に入れ込み、端末処理(ばらけ防止またはハンダ溶着)する。
(金属素線の作製)
スチールコード用途の直径3.8mmの線材を酸洗皮膜処理した後、乾式伸線機により直径1.4mmまで伸線加工し、加熱、パテンチング、酸洗皮膜処理を行った後、再度乾式伸線機により直径0.40mmまで伸線加工する。これを再加熱、パテンチング、酸洗、水洗した後、ブラスめっき(銅めっき、亜鉛めっき後、熱拡散により合金化)して直径0.40mmのブラスめっき鋼線とする。これを湿式伸線機により直径0.06mmまで伸線加工して金属素線(側ストランド材用)とする。また、直径0.40mmのブラスめっき鋼線を湿式伸線機により直径0.09mmまで伸線加工して金属素線(コアストランド材用)とする。
(側ストランド材の作製)
直径0.06mmの金属素線を、7本撚り(1+6の構成)ができるチューブラー型撚線機を用いて2.5mmの撚りピッチでS撚りにて下撚り(子撚り)する。このとき、プレフォーム装置により事前に87%前後の直径型付け率になるように調整する。このストランド材を所定量巻き取ったリールを7リール用意する。
子撚りした7本撚りのストランド材を用いて、7本撚り(1+6の構成)ができるチューブラー型撚線機を用いて7.0mmの撚りピッチでS撚りにて下撚り(親撚り)する。このとき、プレフォーム装置により事前に87%前後の直径型付け率になるように調整する。このストランド材を所定量巻き取ったリールを7リール用意する。
(コアストランド材の作製)
環状金属コードには使用されないので、直径0.09mmの金属素線を、7本撚り(1+6の構成)ができるチューブラー型撚線機を用いて3.0mmの撚りピッチでS撚りにて下撚り(子撚り)する。このとき、プレフォーム装置により事前に87%前後の直径型付け率になるように調整する。このストランド材を所定量巻き取ったリールを7リール用意する。
子撚りした7本撚りのストランド材を用いて、7本撚り(1+6の構成)ができるチューブラー型撚線機を用いて9.0mmの撚りピッチでS撚りにて下撚り(親撚り)する。このとき、プレフォーム装置により事前に87%前後の直径型付け率になるように調整する。このストランド材を所定量巻き取ったリールを1リール用意する。
(原コードの作製)
上記のコアストランド材(親撚り)1リールと側ストランド材(親撚り)7リールを用いて8本撚り(1+7の構成)ができるチューブラー型撚線機を用いて20.0mmの撚りピッチでZ撚りにて所定量上撚りして金属コード(原コード)とする。なお、プレフォーム装置を用いて事前に87%前後の直径型付け率に調整する。
(原コードの解撚)
上撚りした金属コードを、余長分も含めて必要な環状金属コードの環状径(層心径:D1)の約22倍((D1)π×7+α)の長さで切断した後、全長にわたって解撚し、各ストランド材毎に分離する。
(環状金属コードの作製)
金属コードから分離した7本の側ストランド材の内の1本を使用して、例えば、直径200mmの環状径を形成し、その後、5周回巻回移動させて他の7本のストランド材が抜けた螺旋状の空隙部に余長部を嵌め込んで断面にて6本のストランド材を有する環状金属コードとする。
始端部及び終端余長部は、6本のストランド材の中心の中空部の全長に亘って挿し入れるのに必要な長さを残して再切断後、オーバーラップする螺旋形状を出来るだけ真直化して、両端末とも中空部に入れ込み、端末処理(ばらけ防止またはハンダ溶着)する。
このようにして作製した環状金属コードを、実施例6(直径型付け率86%)とする。この他に、直径型付け率を変更したものを作製した(実施例7〜10、比較例4〜6)。各例においてストランド材を環状に巻き付けて環状金属コードとする際の状態(環状巻き付け性)を調べた。その結果を表2に示す。
表2に示すように、直径型付け率が95%である比較例4では、ストランド材がコイル状になり環状に巻き付けるのが困難であった。そして、環状に維持することも困難であった。直径型付け率が92%である比較例5では、比較例4よりやや改善したものの、比較例4と同様の傾向があった。
直径型付け率が86%である実施例6、直径型付け率が83%である実施例7では、全く問題なく計6周回の巻き付けを行うことができ、巻き付け後の環状形状も良好に維持された。
直径型付け率が80%である実施例8では、やや巻き付けしにくいものの、計6周回の巻き付けを行うことができ、巻き付け後の環状形状も維持された。
直径型付け率が75%である実施例9、直径型付け率が70%である実施例10では、計6周回の巻き付けが困難であったため、計5周回の巻き付けにより環状金属コードとした。巻き付け後の環状形状も良好に維持された。
直径型付け率が68%である比較例6では、計5周回でも環状に巻き付けるのが困難であり、計4周回の巻き付けを行ったが、ストランド同士の撚り合わせが不安定で強度が低下しやすく、端末を中空部へ収納することにも支障が生じた。
直径型付け率が86%である実施例6、直径型付け率が83%である実施例7では、全く問題なく計6周回の巻き付けを行うことができ、巻き付け後の環状形状も良好に維持された。
直径型付け率が80%である実施例8では、やや巻き付けしにくいものの、計6周回の巻き付けを行うことができ、巻き付け後の環状形状も維持された。
直径型付け率が75%である実施例9、直径型付け率が70%である実施例10では、計6周回の巻き付けが困難であったため、計5周回の巻き付けにより環状金属コードとした。巻き付け後の環状形状も良好に維持された。
直径型付け率が68%である比較例6では、計5周回でも環状に巻き付けるのが困難であり、計4周回の巻き付けを行ったが、ストランド同士の撚り合わせが不安定で強度が低下しやすく、端末を中空部へ収納することにも支障が生じた。
(3)6×7×(3+9)×0.06の環状金属コード
(金属素線の作製)
スチールコード用途の直径3.8mmの線材を酸洗皮膜処理した後、乾式伸線機により直径1.4mmまで伸線加工し、加熱、パテンチング、酸洗皮膜処理を行った後、再度乾式伸線機により直径0.40mmまで伸線加工する。これを再加熱、パテンチング、酸洗、水洗した後、ブラスめっき(銅めっき、亜鉛めっき後、熱拡散により合金化)して直径0.40mmのブラスめっき鋼線とする。これを湿式伸線機により直径0.06mmまで伸線加工して金属素線(側ストランド材用)とする。また、直径0.40mmのブラスめっき鋼線を湿式伸線機により直径0.095mmまで伸線加工して金属素線(コアストランド材用)とする。
(側ストランド材の作製)
直径0.06mmの金属素線を、3本撚りができるチューブラー型撚線機を用いて1.5mmの撚りピッチでS撚りしてコアを作製する。このコアと直径0.06mmの金属素線を用いて、10本撚り(コア(3)+9の構成)ができるチューブラー型撚線機を用いて3.5mmの撚りピッチでS撚りにて下撚り(子撚り)する。このとき、プレフォーム装置により事前に79%前後の直径型付け率になるように調整する。このストランド材を所定量巻き取ったリールを7リール用意する。
子撚りした10本撚り(コア(3)+9の構成)のストランド材を用いて、7本撚り(1+6の構成)ができるチューブラー型撚線機を用いて9.5mmの撚りピッチでS撚りにて下撚り(親撚り)する。このとき、プレフォーム装置により事前に79%前後の直径型付け率になるように調整する。このストランド材を所定量巻き取ったリールを8リール用意する。
(コアストランド材の作製)
環状金属コードには使用されないので、直径0.095mmの金属素線を、3本撚りができるチューブラー型撚線機を用いて2.0mmの撚りピッチでS撚りしてコアを作製する。このコアと直径0.095mmの金属素線を用いて、10本撚り(コア(3)+9の構成)ができるチューブラー型撚線機を用いて5.0mmの撚りピッチでS撚りにて下撚り(子撚り)する。このとき、プレフォーム装置により事前に87%前後の直径型付け率になるように調整する。このストランド材を所定量巻き取ったリールを7リール用意する。
子撚りした10本撚り(コア(3)+9の構成)のストランド材を用いて、7本撚り(1+6の構成)ができるチューブラー型撚線機を用いて15.0mmの撚りピッチでS撚りにて下撚り(親撚り)する。このとき、プレフォーム装置により事前に87%前後の直径型付け率になるように調整する。このストランド材を所定量巻き取ったリールを1リール用意する。
(原コードの作製)
上記のコアストランド材(親撚り)1リールと側ストランド材(親撚り)8リールを用いて9本撚り(1+8の構成)ができるチューブラー型撚線機を用いて27.0mmの撚りピッチでZ撚りにて所定量上撚りして金属コード(原コード)とする。なお、プレフォーム装置を用いて事前に79%前後の直径型付け率に調整する。
(原コードの解撚)
上撚りした金属コードを、余長分も含めて必要な環状金属コードの環状径(層心径:D1)の約22倍((D1)π×7+α)の長さで切断した後、全長にわたって解撚し、各ストランド材毎に分離する。
(環状金属コードの作製)
金属コードから分離した8本の側ストランド材の内の1本を使用して、例えば、直径200mmの環状径を形成し、その後、5周回巻回移動させて他の7本のストランド材が抜けた螺旋状の空隙部に余長部を嵌め込んで断面にて6本のストランド材を有する環状金属コードとする。
始端部及び終端余長部は、6本のストランド材の中心の中空部の全長に亘って挿し入れるのに必要な長さを残して再切断後、オーバーラップする螺旋形状を出来るだけ真直化して、両端末とも中空部に入れ込み、端末処理(ばらけ防止またはハンダ溶着)する。
(金属素線の作製)
スチールコード用途の直径3.8mmの線材を酸洗皮膜処理した後、乾式伸線機により直径1.4mmまで伸線加工し、加熱、パテンチング、酸洗皮膜処理を行った後、再度乾式伸線機により直径0.40mmまで伸線加工する。これを再加熱、パテンチング、酸洗、水洗した後、ブラスめっき(銅めっき、亜鉛めっき後、熱拡散により合金化)して直径0.40mmのブラスめっき鋼線とする。これを湿式伸線機により直径0.06mmまで伸線加工して金属素線(側ストランド材用)とする。また、直径0.40mmのブラスめっき鋼線を湿式伸線機により直径0.095mmまで伸線加工して金属素線(コアストランド材用)とする。
(側ストランド材の作製)
直径0.06mmの金属素線を、3本撚りができるチューブラー型撚線機を用いて1.5mmの撚りピッチでS撚りしてコアを作製する。このコアと直径0.06mmの金属素線を用いて、10本撚り(コア(3)+9の構成)ができるチューブラー型撚線機を用いて3.5mmの撚りピッチでS撚りにて下撚り(子撚り)する。このとき、プレフォーム装置により事前に79%前後の直径型付け率になるように調整する。このストランド材を所定量巻き取ったリールを7リール用意する。
子撚りした10本撚り(コア(3)+9の構成)のストランド材を用いて、7本撚り(1+6の構成)ができるチューブラー型撚線機を用いて9.5mmの撚りピッチでS撚りにて下撚り(親撚り)する。このとき、プレフォーム装置により事前に79%前後の直径型付け率になるように調整する。このストランド材を所定量巻き取ったリールを8リール用意する。
(コアストランド材の作製)
環状金属コードには使用されないので、直径0.095mmの金属素線を、3本撚りができるチューブラー型撚線機を用いて2.0mmの撚りピッチでS撚りしてコアを作製する。このコアと直径0.095mmの金属素線を用いて、10本撚り(コア(3)+9の構成)ができるチューブラー型撚線機を用いて5.0mmの撚りピッチでS撚りにて下撚り(子撚り)する。このとき、プレフォーム装置により事前に87%前後の直径型付け率になるように調整する。このストランド材を所定量巻き取ったリールを7リール用意する。
子撚りした10本撚り(コア(3)+9の構成)のストランド材を用いて、7本撚り(1+6の構成)ができるチューブラー型撚線機を用いて15.0mmの撚りピッチでS撚りにて下撚り(親撚り)する。このとき、プレフォーム装置により事前に87%前後の直径型付け率になるように調整する。このストランド材を所定量巻き取ったリールを1リール用意する。
(原コードの作製)
上記のコアストランド材(親撚り)1リールと側ストランド材(親撚り)8リールを用いて9本撚り(1+8の構成)ができるチューブラー型撚線機を用いて27.0mmの撚りピッチでZ撚りにて所定量上撚りして金属コード(原コード)とする。なお、プレフォーム装置を用いて事前に79%前後の直径型付け率に調整する。
(原コードの解撚)
上撚りした金属コードを、余長分も含めて必要な環状金属コードの環状径(層心径:D1)の約22倍((D1)π×7+α)の長さで切断した後、全長にわたって解撚し、各ストランド材毎に分離する。
(環状金属コードの作製)
金属コードから分離した8本の側ストランド材の内の1本を使用して、例えば、直径200mmの環状径を形成し、その後、5周回巻回移動させて他の7本のストランド材が抜けた螺旋状の空隙部に余長部を嵌め込んで断面にて6本のストランド材を有する環状金属コードとする。
始端部及び終端余長部は、6本のストランド材の中心の中空部の全長に亘って挿し入れるのに必要な長さを残して再切断後、オーバーラップする螺旋形状を出来るだけ真直化して、両端末とも中空部に入れ込み、端末処理(ばらけ防止またはハンダ溶着)する。
このようにして作製した環状金属コードを、実施例1(直径型付け率80%)とする。この他に、直径型付け率を変更したものを作製した(実施例12〜14、比較例7)。各例においてストランド材を環状に巻き付けて環状金属コードとする際の状態(環状巻き付け性)を調べた。その結果を表3に示す。
表3に示すように、直径型付け率が80%である実施例11、直径型付け率が77%である実施例12、直径型付け率が74%である実施例13では、全く問題なく計6周回の巻き付けを行うことができ、巻き付け後の環状形状も良好に維持された。
直径型付け率が70%である実施例14では、やや巻き付けしにくいものの、計6周回の巻き付けを行うことができ、巻き付け後の環状形状も維持された。
直径型付け率が67%である比較例7では、計6周回の巻き付けが困難であったため、計5周回の巻き付けを行ったが、ストランド同士の撚り合わせが不安定で強度が低下しやすく、端末を中空部へ収納することにも支障が生じた。
直径型付け率が70%である実施例14では、やや巻き付けしにくいものの、計6周回の巻き付けを行うことができ、巻き付け後の環状形状も維持された。
直径型付け率が67%である比較例7では、計6周回の巻き付けが困難であったため、計5周回の巻き付けを行ったが、ストランド同士の撚り合わせが不安定で強度が低下しやすく、端末を中空部へ収納することにも支障が生じた。
(4)耐久試験
(4−1)耐久試験装置
図14に耐久試験装置を示す。図14に示すように、耐久性試験装置は、駆動モータ51によって回転される駆動プーリ52と、この駆動プーリ52に対して水平方向へ接離可能に支持された従動プーリ53と、従動プーリ53を駆動プーリ52から離間させる方向へ荷重を付与する張力付加部54とを備える。上記(1)の環状金属コードを試験する際の駆動プーリ52及び従動プーリ53の直径は、23.9mm(架けた環状金属コードの中心で直径25.0mm)とした。上記(2)の環状金属コードを試験する際の駆動プーリ52及び従動プーリ53の直径は、19.2mm(架けた環状金属コードの中心で直径20.0mm)とした。上記(3)の環状金属コードを試験する際の駆動プーリ52及び従動プーリ53の直径は、18.9mm(架けた環状金属コードの中心で直径20.0mm)とした。
(4−1)耐久試験装置
図14に耐久試験装置を示す。図14に示すように、耐久性試験装置は、駆動モータ51によって回転される駆動プーリ52と、この駆動プーリ52に対して水平方向へ接離可能に支持された従動プーリ53と、従動プーリ53を駆動プーリ52から離間させる方向へ荷重を付与する張力付加部54とを備える。上記(1)の環状金属コードを試験する際の駆動プーリ52及び従動プーリ53の直径は、23.9mm(架けた環状金属コードの中心で直径25.0mm)とした。上記(2)の環状金属コードを試験する際の駆動プーリ52及び従動プーリ53の直径は、19.2mm(架けた環状金属コードの中心で直径20.0mm)とした。上記(3)の環状金属コードを試験する際の駆動プーリ52及び従動プーリ53の直径は、18.9mm(架けた環状金属コードの中心で直径20.0mm)とした。
張力付加部54は、従動プーリ53にロープ55を介して取り付けられた重り56と、ロープ55が掛けられた滑車57とを有し、重り56の荷重によって従動プーリ53が駆動プーリ52から離間される。そして、この張力付加部54では、重り56の重さを調整し、付加張力は、上記(1)の環状金属コードでは19.5kg(コードの強度の5%前後)として、上記(2)の環状金属コードでは11.5kg(コードの強度の5%前後)として、上記(3)の環状金属コードでは19.0kg(コードの強度の5%前後)とした。
(3−2)耐久試験方法
上記の耐久性試験装置の駆動プーリ52と従動プーリ53とに、各環状金属コードを巻き掛けて駆動プーリ52を3500rpmにて回転させ、環状金属コードに繰り返し引っ張り曲げ応力をかけ、環状金属コードの切断、弛み、ワイヤー(素線)の切れ等の不具合の発生の有無及び不具合発生までの耐久回数(換算回数)を調べて評価した。
上記の耐久性試験装置の駆動プーリ52と従動プーリ53とに、各環状金属コードを巻き掛けて駆動プーリ52を3500rpmにて回転させ、環状金属コードに繰り返し引っ張り曲げ応力をかけ、環状金属コードの切断、弛み、ワイヤー(素線)の切れ等の不具合の発生の有無及び不具合発生までの耐久回数(換算回数)を調べて評価した。
(3−3)耐久試験結果
(1)の環状金属コードにおける耐久試験結果を、表4に示す。なお、ストランド材の巻き付けを計5周回とした実施例4,5、比較例3では、重りは6周回の例に対して5/6とした。
(1)の環状金属コードにおける耐久試験結果を、表4に示す。なお、ストランド材の巻き付けを計5周回とした実施例4,5、比較例3では、重りは6周回の例に対して5/6とした。
表4に示すように、実施例1〜5では、耐え得る繰り返し引っ張り曲げ回数が極めて多くなり、特に、焼鈍処理を施した実施例2では切断が認められなかった。
これに対して、環状巻き付け性に問題のあった比較例1〜3では、耐え得る繰り返し引っ張り曲げ回数が少なかった。
これに対して、環状巻き付け性に問題のあった比較例1〜3では、耐え得る繰り返し引っ張り曲げ回数が少なかった。
次いで、(2)の環状金属コードにおける耐久試験結果を、表5に示す。なお、ストランド材の巻き付けを計5周回とした実施例9,10、比較例6では、重りは6周回の例に対して5/6とした。
表5に示すように、実施例6〜10では、耐え得る繰り返し引っ張り曲げ回数が極めて多くなり、特に、焼鈍処理を施した実施例7では切断が認められなかった。
これに対して、環状巻き付け性に問題のあった比較例4〜6では、耐え得る繰り返し引っ張り曲げ回数が少なかった。
これに対して、環状巻き付け性に問題のあった比較例4〜6では、耐え得る繰り返し引っ張り曲げ回数が少なかった。
次いで、(3)の環状金属コードにおける耐久試験結果を、表6に示す。なお、ストランド材の巻き付けを計5周回とした比較例7では、重りは6周回の例に対して5/6とした。
表6に示すように、実施例11〜14では、耐え得る繰り返し引っ張り曲げ回数が極めて多くなり、特に、焼鈍処理を施した実施例12では切断が認められず、焼鈍処理を施した実施例14では切断があったものの、耐え得る繰り返し引っ張り曲げ回数が最も多くなった。
これに対して、環状巻き付け性に問題のあった比較例7では、耐え得る繰り返し引っ張り曲げ回数が少なかった。
これに対して、環状巻き付け性に問題のあった比較例7では、耐え得る繰り返し引っ張り曲げ回数が少なかった。
以上のことから、コア材の周りに少なくとも7本のストランド材が直径型付け率を70%以上91%以下に調整されて撚り合わされた原コードを解撚され、1本の前記ストランド材を、前記原コードの前記ストランド材の本数よりも少なくとも1周少ない周回環状にされつつ他のストランド材の抜けた螺旋状の空隙部に、余長部を嵌め入れて巻き付けて環状とすることにより、ストランド材の撚り緩みが生じず巻き付けた形状を維持することが可能な強固な環状金属コードとすることができることが分かった。
1…ストランド材、1a…始端部(端末)、1b…終端部(端末)、1e…余長部、5…空隙部、10…金属素線、20…金属コード(原コード)、B1…無端金属ベルト、C1,C2…環状金属コード、C1a…中空部
Claims (12)
- コア材の周りに少なくとも7本のストランド材が直径型付け率を70%以上91%以下に調整されて撚り合わされた原コードが解撚され、1本の前記ストランド材が、前記原コードの前記ストランド材の本数よりも少なくとも1周少ない周回環状にされつつ他のストランド材の抜けた螺旋状の空隙部に、余長部が嵌め入れられて巻き付けられて環状とされていることを特徴とする環状金属コード。
- 請求項1に記載の環状金属コードであって、
前記ストランド材の両端末が直線化され、中心に形成される中空部に挿し入れられていることを特徴とする環状金属コード。 - 請求項1または2に記載の環状金属コードであって、
前記中空部に挿し入れられる前記ストランド材の両端末の合計長さが、環状の略周長とされていることを特徴とする環状金属コード。 - 請求項1から3の何れか一項に記載の環状金属コードであって、
前記ストランド材は複数の金属素線同士を撚り合わせた構造であり、前記金属素線同士の撚り方向と前記空隙部に嵌め入れられているストランド材の巻き付けの螺旋方向とが逆方向である - 請求項4に記載の環状金属コードであって、
前記金属素線の直径が0.03mm以上0.14mm以下であることを特徴とする環状金属コード。 - 請求項1から5の何れか一項に記載の環状金属コードであって、
互いに巻き付けられた前記ストランド材の環状部分における中心軸に対する前記ストランド材の巻き付け角度が6.5度以上17.0度以下の範囲内であることを特徴とする環状金属コード。 - 請求項1から6の何れか一項に記載の前記環状金属コードを備えていることを特徴とする無端金属ベルト。
- コア材の周りに少なくとも7本のストランド材が直径型付け率を70%以上91%以下に調整されて撚り合わされた原コードを解撚し、1本の前記ストランド材を、前記原コードの前記ストランド材の本数よりも少なくとも1周少ない周回環状にしつつ他のストランド材の抜けた螺旋状の空隙部に、余長部を嵌め入れて巻き付けて環状とすることを特徴とする環状金属コードの製造方法。
- 請求項8に記載の環状金属コードの製造方法であって、
前記ストランド材の両端末を直線化し、中心に形成される中空部に挿し入れることを特徴とする環状金属コードの製造方法。 - 請求項8または9に記載の環状金属コードの製造方法であって、
前記中空部に挿し入れる前記ストランド材の両端末の合計長さを、環状の略周長とすることを特徴とする環状金属コードの製造方法。 - 請求項8から10の何れか一項に記載の環状金属コードの製造方法であって、
前記ストランド材として複数の金属素線同士を撚り合わせた構造のストランド材を用い、前記金属素線同士の撚り方向と前記空隙部に嵌め入れるストランド材の巻き付けの螺旋方向とを逆方向とすることを特徴とする環状金属コードの製造方法。 - 請求項8から11の何れか一項に記載の環状金属コードの製造方法であって、
前記原コードにおける残りのストランド材の1本を、前記原コードの撚り合わせの本数よりも少なくとも1周少ない周回環状にしつつ他のストランド材の抜けた螺旋状の空隙部に、余長部を嵌め入れて巻き付けて環状とすることを特徴とする環状金属コードの製造方法。
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