JP2010241852A - 変性シリカの製造方法、絶縁材料用樹脂組成物および絶縁膜用フィルム - Google Patents

変性シリカの製造方法、絶縁材料用樹脂組成物および絶縁膜用フィルム Download PDF

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Abstract

【課題】環式オレフィン重合体などの重合体に配合した場合の分散性に優れる変性シリカを与えることができる、変性シリカの製造方法を提供する。
【解決手段】エポキシ基含有シランカップリング剤で表面処理されたシリカと、カルボキシル基、カルボン酸無水物基、およびヒドロキシフェニル基から選択される官能基を有する環式オレフィン重合体と、を溶媒中で混合する変性シリカの製造方法。エポキシ基含有シランカップリング剤で表面処理されたシリカの体積平均粒径は1μm以下であることが好ましい。
【選択図】なし

Description

本発明は、変性シリカの製造方法に関し、さらに詳しくは、重合体に配合した場合の分散性に優れ、特に、特定の官能基を有する環式オレフィン重合体およびエポキシ化合物に配合して、絶縁材料用樹脂組成物を得るために好適に用いられる変性シリカを与える、変性シリカの製造方法に関する。
近年、樹脂にシリカなどの微細な無機粒子を高充填して、電気特性や強度特性などの種々の特性が改良された、無機粒子高充填樹脂組成物を得る試みについて様々な検討が行われている。しかし、たとえば体積平均粒径が1μm以下である微細な無機粒子を高充填した樹脂組成物では、組成物の粘度が高くなりすぎて、樹脂組成物中の無機粒子の分散性が悪くなり、その結果、樹脂組成物が材料としてもろいものとなり、却って機械的強度が低下していまうという問題がある。この問題を解決すべく、微細な無機粒子の樹脂に対する分散性を改良するための種々の検討が行われている。
例えば、特許文献1〜3には、環状オレフィン系樹脂と、シランカップリング剤や有機酸で表面処理されたシリカなどの無機フィラーとを含む樹脂組成物が開示されている。しかしながら、これらの樹脂組成物は、表面処理によりシリカ表面に導入される官能基と環状オレフィン系樹脂との親和性が十分でない場合があり、環状オレフィン系樹脂に対する無機フィラーの分散性が十分に改良されているとは言い難いものであった。
また、特許文献4には、無機粒子などの粒子表面の改質などの目的で使用できる分散剤として、極性基を有する脂環式オレフィン開環重合体やその水素化物からなる分散剤が開示されている。また、特許文献5には、表面を有機物でコーティングしたフィラーを接着剤樹脂組成物に配合することが記載されている。しかしながら、粒子表面に有機物が付着したり、コーティングされていたりするだけでは、粒子表面と有機物との結合が弱いため、樹脂組成物の機械的強度の改良効果が十分でない場合があった。
特開2007−269929号公報 特開2008−1871号公報 特開2004−277726号公報 特開2002−177757号公報 国際公開第01/060938号パンフレット
本発明は、環式オレフィン重合体などの重合体に配合した場合の分散性に優れる変性シリカを与えることができる、変性シリカの製造方法を提供することを目的とする。
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意研究した結果、エポキシ基含有シランカップリング剤で表面処理されたシリカと、特定の官能基を有する環式オレフィン重合体と、を溶媒中で加熱混合することにより得られる変性シリカが、環式オレフィン重合体などの重合体に配合した場合の分散性に優れたものとなることを見出した。そして、その変性シリカを、特定の官能基を有する環式オレフィン重合体およびエポキシ化合物に配合してなる樹脂組成物は、絶縁材料用樹脂組成物として好適に用いられることを見出した。本発明は、これらの知見に基づいて完成するに至ったものである。
かくして、本発明によれば、エポキシ基含有シランカップリング剤で表面処理されたシリカと、カルボキシル基、カルボン酸無水物基およびフェノール性水酸基から選択される官能基を有する環式オレフィン重合体と、を溶媒中で混合する変性シリカの製造方法が提供される。
上記の変性シリカの製造方法では、エポキシ基含有シランカップリング剤で表面処理されたシリカの体積平均粒径が1μm以下であることが好ましい。
また、本発明によれば、上記の変性シリカの製造方法により得られる変性シリカと、カルボキシル基、カルボン酸無水物基およびフェノール性水酸基から選択される官能基を有する環式オレフィン重合体と、エポキシ化合物と、を含有してなる絶縁材料用樹脂組成物が提供される。
さらに、本発明によれば、上記の絶縁材料用樹脂組成物からなる絶縁膜用フィルムが提供される。
本発明によれば、環式オレフィン重合体などの重合体に配合した場合の分散性に優れる変性シリカを与えることができる、変性シリカの製造方法が提供される。
本発明の変性シリカの製造方法は、エポキシ基含有シランカップリング剤で表面処理されたシリカと、カルボキシル基、カルボン酸無水物基およびフェノール性水酸基から選択される官能基(以下の記載において、これらの官能基を「特定官能基」と称する場合がある)を有する環式オレフィン重合体と、を溶媒中で混合して、変性シリカを製造する方法である。
本発明の変性シリカの製造方法で用いられる、エポキシ基含有シランカップリング剤で表面処理されたシリカは、シリカ粒子の表面にエポキシ基含有シランカップリング剤を接触させることにより、シリカ粒子の表面にエポキシ基含有シランカップリング剤が結合または付着してなるシリカである。エポキシ基含有シランカップリング剤で表面処理するシリカの種類は、特に限定されず、天然シリカや、乾式法ホワイトカーボン、湿式法ホワイトカーボン、合成ケイ酸塩系ホワイトカーボン、コロイダルシリカなどの合成シリカを用いることできる。これらのなかでも、不純物含量が少ないことから合成シリカを用いることが好ましい。また、用いるシリカの形状は、球状や破砕物状などのいずれの形状でも良いが、得られる樹脂組成物あるいはその溶液の流動性を良好とする観点からは、球状のものであることが好ましい。
エポキシ基含有シランカップリング剤で表面処理するシリカの体積平均粒径は、特に限定されないが、1μm以下であることが好ましく、0.01〜0.8μmであることがより好ましく、0.02〜0.4μmであることがさらに好ましい。また、このシリカの比表面積は、特に限定されないが、1.5〜500m/gであることが好ましい。用いるシリカの粒子径が小さすぎたり、比表面積が大きすぎたりすると、凝集しやすくなって分散性が悪くなり、得られる樹脂組成物を溶液から塗膜にする場合に、該溶液の粘度が高くなりすぎて流動性が悪化するおそれがある。また、用いるシリカの粒子径が大きすぎたり、比表面積が小さすぎたりすると、塗膜表面の平滑性が失われたり、樹脂組成物が脆くなるおそれがある。さらに、用いるシリカの長径と短径との比であるアスペクト比は1.0〜2.5の範囲内であるものが好ましく、1.0〜2.2の範囲内であるものがより好ましい。シリカのアスペクト比が2.5を超えてしまうと、塗膜表面が荒れるおそれがある。
エポキシ基含有シランカップリング剤で表面処理されたシリカを得るために用いられるエポキシ基含有シランカップリング剤は、分子中にエポキシ基を含有する有機ケイ素化合物であれば特に限定されない。エポキシ基含有シランカップリング剤の具体例としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、などのグリシドキシ基含有シランカップリング剤;2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシシクロヘキシル基含有シランカップリング剤;などが挙げられる。
シリカの表面処理に用いられるエポキシ基含有シランカップリング剤の量は、特に限定されないが、表面処理するシリカ100重量部に対して、好ましくは0.1〜10重量部、より好ましくは0.5〜5重量部である。用いるエポキシ基含有シランカップリング剤の量が少なすぎると、得られる表面処理されたシリカを特定官能基を有する環式オレフィン重合体により十分に変性することが困難となり、その結果として、変性シリカの重合体への分散性に劣るおそれがある。また、用いるエポキシ基含有シランカップリング剤の量が多すぎると、シランカップリング剤が遊離して、得られる樹脂組成物の特性を劣化させるおそれがある。
エポキシ基含有シランカップリング剤によりシリカを表面処理する方法は、シリカ粒子の表面にエポキシ基含有シランカップリング剤を接触させて、シリカ粒子の表面にエポキシ基含有シランカップリング剤を結合または付着させることができる方法であれば特に限定されない。例えば、乾式法、インテグラルブレンド法、マスターバッチ法、湿式法など、いずれの方法も採用できるが、これらの方法のなかでも、シリカ粒子の表面を均一に表面処理しやすいという観点から、シリカとエポキシ基含有シランカップリング剤とを溶媒中で混合し、シリカスラリーを形成することによりシリカの表面処理を行う、湿式法が特に好適に用いられる。なお、湿式法でシリカを表面処理するにあたっては、シリカ中の粒子径が1μmを越える粒子は、分級やろ過などの手法により予め除去しておくことが好ましい。
湿式法を採用する場合において、シリカスラリーの調製に用いられる溶媒は、シリカおよびシランカップリング剤の種類に応じて適宜選択すればよく、特に限定されないが、常温常圧下で液体の有機溶剤であることが好ましい。用いられ得る有機溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン、アニソールなどの芳香族系有機溶剤;n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタンなどの脂肪族炭化水素系有機溶剤;シクロペンタン、シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素系有機溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなどのケトン系有機溶剤;などが挙げられる。また、これらの有機溶剤は蒸留、吸着、乾燥などの手段で該有機溶剤中に含まれる水分を除去して用いるのが好ましい。
湿式法を採用する場合において、表面処理の温度(シリカスラリーの液温)は、通常20〜100℃、好ましくは30〜90℃、より好ましくは40〜80℃である。この温度が低すぎると、シリカスラリーの粘度が高くなってシリカの解砕が不十分となる結果、未処理のシリカ凝集体が生じるおそれがあり、しかも、結露による水分の混入して、シランカップリング剤の官能基が加水分解し、シリカの表面処理が不十分になるおそれもある。一方、温度が低すぎると溶媒の蒸気圧が高くなり、耐圧容器が必要になったり、溶媒の揮発による衛生性の低下の問題が生じたりするおそれがある。処理時間は、通常1分〜300分、好ましくは2分〜200分、より好ましくは3分〜120分である。
湿式法を採用する場合において、表面処理に用いる装置は、上記処理条件でシリカとシランカップリング剤とを接触させることができるものであれば限定されず、マグネチックスターラーを使用した反応容器、ホバートミキサー、リボンブレンダー、高速ホモジナイザー、ディスパー、遊星式攪拌機、ボールミル、ビーズミル、インクロールなどが挙げられる。これらのなかでも、凝集しやすいシリカ粒子を十分に分散させる観点から、ビーズミルまたは超音波分散装置を用いてシリカを解砕しつつ表面処理することが好ましい。
以上のようにして得られる、湿式法によりエポキシ基含有シランカップリング剤で表面処理されたシリカを含有するシリカスラリーは、シリカスラリーの状態のまま、本発明の変性シリカの製造方法に用いてもよいし、一度、溶媒を除去して固形状としてから、本発明の変性シリカの製造方法に用いてもよい。
なお、エポキシ基含有シランカップリング剤で表面処理されたシリカは、商品名「SX009」、「SC1000−GRT」、「SC1000−SET」(いずれもアドマテックス社製)などとして市販されており、本発明ではそのような市販のポキシ基含有シランカップリング剤で表面処理されたシリカを用いてもよい。
本発明で用いる、エポキシ基含有シランカップリング剤で表面処理されたシリカの体積平均粒径は、特に限定されないが、表面処理前のシリカと同様の理由により、1μm以下であることが好ましく、0.01〜0.8μmであることがより好ましく、0.02〜0.4μmであることがさらに好ましい。また、比表面積やアスペクト比の好ましい範囲も、表面処理前のシリカの好ましい範囲と同様である。なお、エポキシ基含有シランカップリング剤で表面処理されたシリカにおいて、シリカ中の粒子径が1μmを越える粒子は、本発明の変性シリカの製造方法に供する前に、分級やろ過などの手法により除去することが好ましい。
本発明の変性シリカの製造方法において、以上のようにして得られるエポキシ基含有シランカップリング剤で表面処理されたシリカと、溶媒中で混合される重合体は、カルボキシル基、カルボン酸無水物基、およびヒドロキシフェニル基から選択される官能基(特定官能基)を有する環式オレフィン重合体である。ここで、本発明において、「環式オレフィン重合体」は、脂環式オレフィンの単独重合体および共重合体並びにこれらの誘導体(水素添加物など)のほか、これらと同等の構造を有する重合体の総称である。また、重合の様式は、付加重合であっても開環重合であってもよい。環式オレフィン重合体の具体例としては、ノルボルネン系単量体の開環重合体およびその水素添加物、ノルボルネン系単量体の付加重合体、ノルボルネン系単量体とビニル化合物との付加重合体、単環シクロアルケン付加重合体、脂環式共役ジエン重合体、ビニル系脂環式炭化水素重合体およびその水素添加物を挙げることができる。更に、芳香族オレフィン重合体の芳香環水素添加物などの、重合後の水素化によって脂環構造が形成されて、環式オレフィン重合体と同等の構造を有するに至った重合体もその一例である。これらの中でも、ノルボルネン系単量体の開環重合体及びその水素添加物、ノルボルネン系単量体の付加重合体、ノルボルネン系単量体とビニル化合物との付加重合体、芳香族オレフィン重合体の芳香環水素添加物が好ましく用いられ、特にノルボルネン系単量体の開環重合体の水素添加物が好ましく用いられる。
本発明の変性シリカの製造方法において用いられる環式オレフィン重合体は、エポキシ基を有するシランカップリング剤で表面処理されたシリカが有するエポキシ基と反応して結合を形成しうる、カルボキシル基、カルボン酸無水物基およびフェノール性水酸基から選択される官能基を有する環式オレフィン重合体である。なお、本発明で用いられる環式オレフィン重合体は、これら特定官能基を1種のみ含むものであってもよく、2種以上の特定官能基を含むものであってもよいが、カルボン酸無水物基を含むものが最も好ましい。また、これらの特定官能基は、環式オレフィン重合体の主鎖を構成する原子に、直接結合していても、メチレン基、オキシ基、オキシカルボニルオキシアルキレン基、フェニレン基などの他の二価の基を介して結合していてもよい。環式オレフィン重合体中の特定官能基の量は、特に制限されないが、環式オレフィン重合体を構成する全繰り返し単位のモル数に対して、通常5〜60モル%、好ましくは10〜50モル%である。
特定官能基を有する環式オレフィン重合体を得る方法は、特に制限されない。その具体例としては、(i)特定官能基を含有する脂環式オレフィン単量体を、単独重合し、または、これと共重合可能な単量体(エチレン、1−ヘキセン、1,4−ヘキサジエン、ノルボルネンなど)と共重合する方法;(ii)特定官能基を含有しない環式オレフィン重合体に、特定官能基を有する炭素−炭素不飽和結合含有化合物を、例えばラジカル開始剤存在下で、グラフト結合させることにより、特定官能基を導入する方法;(iii)カルボン酸エステル基などの、カルボキシル基の前駆体となる基を有する脂環式オレフィン単量体を重合した後、加水分解等によって前駆体基をカルボキシル基へ変換させる方法;などがある。本発明の変性シリカの製造方法では、これらのなかでも、上記(i)の方法で得られる特定官能基を有する環式オレフィン重合体が特に好適に使用される。
上記(i)の方法で用いられ得るフェノール性水酸基を含有する脂環式オレフィン単量体としては、5−(4−ヒドロキシフェニル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、9−(4−ヒドロキシフェニル)テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、N−(4−ヒドロキシフェニル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミドなどが挙げられる。
上記(i)の方法で用いられ得るカルボキシル基を含有する脂環式オレフィン単量体としては、9−ヒドロキシカルボニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、5−ヒドロキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メチル−5−ヒドロキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−カルボキシメチル−5−ヒドロキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、9−メチル−9−ヒドロキシカルボニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−カルボキシメチル−9−ヒドロキシカルボニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、5−エキソ−6−エンド−ジヒドロキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、9−エキソ−10−エンド−ジヒドロキシカルボニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、N−(4−カルボキシフェニル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミドなどが挙げられる。
上記(i)の方法で用いられ得るカルボン酸無水物基を含有する脂環式オレフィン単量体としては、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン−5,6−ジカルボン酸無水物、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン−9,10−ジカルボン酸無水物、ヘキサシクロ[10.2.1.13,10.15,8.02,11.04,9]ヘプタデカ−6−エン−13,14−ジカルボン酸無水物などが挙げられる。
また、上記(ii)の方法で用いられ得る、特定官能基を有さない環式オレフィン重合体を得るための単量体の具体例としては、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(慣用名:ノルボルネン)、5−エチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−ブチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−エチリデン−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メチリデン−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−ビニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、トリシクロ〔5.2.1.02,6〕デカ−3,8−ジエン(慣用名:ジシクロペンタジエン)、テトラシクロ〔6.2.1.13,6.02,7〕ドデカ−4−エン(慣用名:テトラシクロドデセン)、9−メチル−テトラシクロ〔6.2.1.13,6.02,7〕ドデカ−4−エン、9−エチル−テトラシクロ〔6.2.1.13,6.02,7〕ドデカ−4−エン、9−メチリデン−テトラシクロ〔6.2.1.13,6.02,7〕ドデカ−4−エン、9−エチリデン−テトラシクロ〔6.2.1.13,6.02,7〕ドデカ−4−エン、9−メトキシカルボニル−テトラシクロ〔6.2.1.13,6.02,7〕ドデカ−4−エン、9−ビニル−テトラシクロ〔6.2.1.13,6.02,7〕ドデカ−4−エン、9−プロペニル−テトラシクロ〔6.2.1.13,6.02,7〕ドデカ−4−エン、9−フェニル−テトラシクロ〔6.2.1.13,6.02,7〕ドデカ−4−エン、テトラシクロ[9.2.1.02,10.03,8]テトラデカ−3,5,7,12−テトラエン、シクロペンテン、シクロペンタジエン、などが挙げられる。
上記(ii)の方法で用いられ得る、特定官能基を有する炭素−炭素不飽和結合含有化合物としては、ヒドロキシスチレン、イソプロペニルフェノール、o−ヒドロキシフェニルアクリレート、m−ヒドロキシフェニルアクリレート、p−ヒドロキシフェニルアクリレート、o−ヒドロキシフェニルメタクリレート、m−ヒドロキシフェニルメタクリレート、p−ヒドロキシフェニルメタクリレート、N−ヒドロキシフェニルマレイミドなどの不飽和フェノール化合物;アクリル酸、メタクリル酸、α−エチルアクリル酸、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸、エンドシス−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸、メチル−エンドシス−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸などの不飽和カルボン酸化合物;無水マレイン酸、クロロ無水マレイン酸、ブテニル無水コハク酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水シトラコン酸などの不飽和カルボン酸無水物;などが挙げられる。
また、上記(iii)の方法で用いられ得る、カルボキシル基の前駆体となる基を含有する脂環式オレフィン単量体としては、5−メトキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メチル−5−メトキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、9−メトキシカルボニル−テトラシクロ〔6.2.1.13,6.02,7〕ドデカ−4−エン、9−メチル−9−メトキシカルボニル−テトラシクロ〔6.2.1.13,6.02,7〕ドデカ−4−エンなどのカルボキシル基の前駆体となる基を含有するノルボルネン系単量体が挙げられる。
本発明の変性シリカの製造方法において用いられる環式オレフィン重合体は、特定官能基以外の官能基(以下の記載において、これらの官能基を「他の官能基」と称する場合がある)を有していてもよい。他の官能基としては、アルコキシカルボニル基、シアノ基、水酸基(芳香環に結合したものを除く)、エポキシ基、アルコキシル基、アミノ基、アミド基、イミド基等が挙げられる。
本発明の変性シリカの製造方法において用いられる環式オレフィン重合体の分子量は、特に限定されないが、テトロヒドロフランを溶媒として用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィにより測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量が、500〜1,000,000の範囲であることが好ましく、1,000〜500,000の範囲であることがより好ましい。
本発明の変性シリカの製造方法において用いられる環式オレフィン重合体を開環重合法により得る場合の重合触媒としては、従来公知のメタセシス重合触媒を用いることができる。メタセシス重合触媒としては、Mo,W,Nb,Ta,Ruなどの原子を含有してなる遷移金属化合物が例示され、なかでも、Mo,WまたはRuを含有する化合物は重合活性が高くて好ましい。特に好ましいメタセシス重合触媒の具体的な例としては、(1)ハロゲン基、イミド基、アルコキシ基、アリロキシ基またはカルボニル基を配位子として有する、モリブデンあるいはタングステン化合物を主触媒とし、有機金属化合物を第二成分とする触媒や、(2)Ruを中心金属とする金属カルベン錯体触媒を挙げることができる。前記(1)の触媒で主触媒として用いられる化合物の例としては、MoCl、MoBrなどのハロゲン化モリブデン化合物やWCl、WOCl、タングステン(フェニルイミド)テトラクロリド・ジエチルエーテルなどのハロゲン化タングステン化合物が挙げられる。また、前記(1)の触媒で、第二成分として用いられる有機金属化合物としては、周期表第1族、2族、12族、13族または14族の有機金属化合物を挙げることができる。なかでも、有機リチウム化合物、有機マグネシウム化合物、有機亜鉛化合物、有機アルミニウム化合物、有機スズ化合物が好ましく、有機リチウム化合物、有機アルミニウム化合物、有機スズ化合物が特に好ましい。有機リチウム化合物としては、n−ブチルリチウム、メチルリチウム、フェニルリチウム、ネオペンチルリチウム、ネオフィルリチウムなどを挙げることができる。有機マグネシウムとしては、ブチルエチルマグネシウム、ブチルオクチルマグネシウム、ジヘキシルマグネシウム、エチルマグネシウムクロリド、n−ブチルマグネシウムクロリド、アリルマグネシウムブロミド、ネオペンチルマグネシウムクロリド、ネオフィルマグネシウムクロリドなどを挙げることができる。有機亜鉛化合物としては、ジメチル亜鉛、ジエチル亜鉛、ジフェニル亜鉛などを挙げることができる。有機アルミニウム化合物としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、ジエチルアルミニウムエトキシド、エチルアルミニウムジエトキシドなどを挙げることができ、さらに、これらの有機アルミニウム化合物と水との反応によって得られるアルミノキサン化合物も用いることができる。有機スズ化合物としては、テトラメチルスズ、テトラ(n−ブチル)スズ、テトラフェニルスズなどを挙げることができる。これらの有機金属化合物を添加する量は、用いる有機金属化合物によって異なるが、主触媒の中心金属に対して、0.1〜10,000倍が好ましく、0.2〜5,000倍がより好ましく、0.5〜2,000倍が特に好ましい。また、前記(2)のRuを中心金属とする金属カルベン錯体触媒としては、(1,3−ジメシチル−イミダゾリジン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、トリシクロヘキシルホスフィン−〔1,3−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)−4,5−ジブロモイミダゾール−2−イリデン〕−〔ベンジリデン〕ルテニウムジクロリド、4−アセトキシベンジリデン(ジクロロ)(4,5−ジブロモ−1,3−ジメシチル−4−イミダゾリン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムなどをあげることができる。
単量体に対するメタセシス重合触媒の割合は、(メタセシス重合触媒中の遷移金属:単量体)のモル比が、通常1:100〜1:2,000,000の範囲であり、好ましくは1:200〜1:1,000,000の範囲である。触媒量が多すぎると触媒除去が困難となり、少なすぎると十分な重合活性が得られない。
重合反応は、通常、有機溶媒中で行なう。用いられる有機溶媒は、重合体が所定の条件で溶解または分散し、重合に影響しないものであれば、特に限定されないが、工業的に汎用されるものが好ましい。有機溶媒の具体例としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、トリメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ジエチルシクロヘキサン、デカヒドロナフタレン、ビシクロヘプタン、トリシクロデカン、ヘキサヒドロインデンシクロヘキサン、シクロオクタンなどの脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン系脂肪族炭化水素;クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどのハロゲン系芳香族炭化水素;ニトロメタン、ニトロベンゼン、アセトニトリルなどの含窒素炭化水素系溶媒;ジエチルエ−テル、テトラヒドロフランなどのエ−テル系溶媒;アニソール、フェネトールなどの芳香族エーテル系溶媒などを挙げることができる。これらの中でも、工業的に汎用な芳香族炭化水素系溶媒や脂肪族炭化水素系溶媒、脂環族炭化水素系溶媒、エーテル系溶剤、芳香族エーテル系溶媒が好ましい。
溶媒の使用量は、溶液中の単量体の濃度が、1〜50重量%となる量であることが好ましく、2〜45重量%となる量であることがより好ましく、3〜40重量%となる量であることが特に好ましい。単量体の濃度が1重量%以下の場合は生産性が悪く、50重量%以上の場合は重合後の溶液粘度が高すぎて、重合後の取り扱いが困難となる。
重合反応は、単量体とメタセシス重合触媒とを混合することにより開始される。混合する方法は、単量体溶液にメタセシス重合触媒溶液を加えても良いし、その逆でも良い。メタセシス重合触媒が主触媒である遷移金属化合物と第二成分である有機金属化合物とからなる混合触媒である場合には、単量体溶液に混合触媒の反応液を加えても良いし、その逆でも良い。また、単量体と有機金属化合物の混合溶液に遷移金属化合物溶液を加えても良いし、その逆でも良い。さらに、単量体と遷移金属化合物の混合溶液に有機金属化合物を加えても良いし、その逆でも良い。
重合温度は特に制限はないが、一般には、−30℃〜200℃、好ましくは0℃〜180℃である。重合時間は、通常1分間〜100時間であるが、特に制限はない。
得られる環式オレフィン重合体の分子量を調整する方法としては、ビニル化合物またはジエン化合物を適当量添加する方法を挙げることができる。分子量調整に用いるビニル化合物は、ビニル基を有する有機化合物であれば特に限定されないが、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンなどのα−オレフィン類;スチレン、ビニルトルエンなどのスチレン類;エチルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、アリルグリシジルエーテルなどのエーテル類;アリルクロライドなどのハロゲン含有ビニル化合物;酢酸アリル、アリルアルコール、グリシジルメタクリレートなど酸素含有ビニル化合物、アクリルアミドなどの窒素含有ビニル化合物などを挙げることができる。ジエン化合物は、1,4−ペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、1,6−ヘプタジエン、2−メチル−1,4−ペンタジエン、2,5−ジメチル−1,5−ヘキサジエンなどの非共役ジエン、または1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエンなどの共役ジエンを挙げることができる。添加するビニル化合物またはジエン化合物の量は求める分子量により、単量体に対して、0.1〜10モル%の間で任意に選択することができる。
本発明で用いる環式オレフィン重合体を、付加重合法により得る場合の重合触媒としては、例えば、チタン、ジルコニウムまたはバナジウム化合物と有機アルミニウム化合物とからなる触媒が好適に用いられる。これらの重合触媒は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。重合触媒の量は、重合触媒中の金属化合物:単量体のモル比で、通常、1:100〜1:2,000,000の範囲である。
本発明で用いる環式オレフィン重合体として、開環重合体の水素添加物を用いる場合の、開環重合体に対する水素添加は、通常、水素添加触媒を用いて行われる。水素添加触媒は特に限定されず、オレフィン化合物の水素添加に際して一般的に使用されているものを適宜採用すればよい。水素添加触媒の具体例としては、例えば、酢酸コバルトとトリエチルアルミニウム、ニッケルアセチルアセトナートとトリイソブチルアルミニウム、チタノセンジクロリドとn−ブチルリチウム、ジルコノセンジクロリドとsec−ブチルリチウム、テトラブトキシチタネートとジメチルマグネシウムのような遷移金属化合物とアルカリ金属化合物の組み合わせからなるチーグラー系触媒;ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム、特開平7−2929、特開平7−149823、特開平11−209460、特開平11−158256、特開平11−193323、特開平11−209460などに記載される、例えばビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリジンルテニウム(IV)ジクロリドなどのルテニウム化合物からなる貴金属錯体触媒;などの均一系触媒が挙げられる。また、ニッケル、パラジウム、白金、ロジウム、ルテニウムなどの金属を、カーボン、シリカ、ケイソウ土、アルミナ、酸化チタンなどの担体に担持させた不均一触媒、例えば、ニッケル/シリカ、ニッケル/ケイソウ土、ニッケル/アルミナ、パラジウム/カーボン、パラジウム/シリカ、パラジウム/ケイソウ土、パラジウム/アルミナなどを用いることもできる。また、メタセシス重合触媒をそのまま、水素添加触媒として用いることも可能である。
水素添加反応は、通常、有機溶媒中で実施する。有機溶媒は生成する水素添加物の溶解性により適宜選択することができ、前記重合溶媒と同様の有機溶媒を使用することができる。したがって、重合反応後、溶媒を入れ替えることなく、そのまま水素添加触媒を添加して反応させることもできる。さらに、前記重合溶媒の中でも、水素添加反応で反応しない点から、芳香族炭化水素系溶媒や脂肪族炭化水素系溶媒、脂環族炭化水素系溶媒、エーテル系溶剤、芳香族エーテル系溶媒が好ましく、エーテル系溶剤が特に好ましく、テトラヒドロフランが最も好ましい。
水素添加反応条件は、使用する水素添加触媒の種類に応じて適宜選択すればよい。反応温度は、通常−20〜250℃、好ましくは−10〜220℃、より好ましくは0〜200℃である。−20℃未満では反応速度が遅くなり、逆に250℃を超えると副反応が起こりやすくなる。水素の圧力は、通常0.01〜10.0MPa、好ましくは0.05〜8.0MPaである。水素圧力が0.01MPa未満では水素添加速度が遅くなり、10.0MPaを超えると高耐圧反応装置が必要となる。
水素添加反応の時間は、水素添加率をコントロールするために適宜選択される。反応時間は、通常0.1〜50時間の範囲であり、重合体中の主鎖の炭素−炭素二重結合のうち50%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、最も好ましくは90%以上を水素添加することができる。
水素添加反応に用いた触媒は除去しても良い。除去方法は特に制限されず、遠心分離、濾過などの方法が挙げられる。さらに、水やアルコールなどの触媒不活性化剤を添加したり、また活性白土、アルミナ、珪素土などの吸着剤を添加したりして、触媒の除去を促進させることができる。
以上のようにして得られる環式オレフィン重合体の溶液は、そのまま本発明の変性シリカの製造方法に供してもよいし、常法に従い溶媒を除去して、固形状のる環式オレフィン重合体を得て、それを本発明の変性シリカの製造方法に供してもよい。
本発明の変性シリカの製造方法は、それぞれ上述のようにして得ることができる、エポキシ基含有シランカップリング剤で表面処理されたシリカと、カルボキシル基、カルボン酸無水物基およびフェノール性水酸基から選択される官能基(特定官能基)を有する環式オレフィン重合体と、を溶媒中で混合して、変性シリカを製造する方法である。このようにエポキシ基含有シランカップリング剤で表面処理されたシリカと、特定官能基を有する環式オレフィン重合体とを混合することにより、シリカのエポキシ基と環式オレフィン重合体の特定官能基とが反応して、結合を形成し、シリカの表面に環式オレフィン重合体が結合されてなる変性シリカが得られると考えられる。
混合に用いる溶媒は、特に限定されないが、工業的に汎用される溶媒が好ましい。なお、溶媒としては、シリカスラリーの調製に用いられる溶媒や重合体の重合反応溶媒または水添添加反応溶媒と同様の溶媒を使用することができる。したがって、シリカスラリー、重合反応溶液、水素添加反応溶液を、溶媒を入れ替えることなく、そのまま混合させることもできる。
溶媒の使用量は、溶液中のシリカ及び環式オレフィン重合体の濃度が、1〜50重量%となる量であることが好ましく、2〜45重量%となる量であることがより好ましく、3〜40重量%となる量であることが特に好ましい。単量体の濃度が1重量%以下の場合は生産性が悪く、50重量%以上の場合は溶液粘度が高すぎて、攪拌が不十分になる恐れがある。
本発明の変性シリカの製造方法における、特定官能基を有する環式オレフィン重合体の量は、エポキシ基含有シランカップリング剤で表面処理されたシリカ(固形分)100重量部に対して、1〜500重量部、好ましくは5〜400重量部、より好ましくは10〜300重量部である。環式オレフィン重合体の量が少なすぎると、得られる変性シリカの重合体に対する分散性が不十分となるおそれがあり、環式オレフィン重合体の量が多すぎると、溶液粘度が高すぎて、攪拌が不十分になるおそれがある。
エポキシ基含有シランカップリング剤で表面処理されたシリカと、特定官能基を有する環式オレフィン重合体との反応を促進させるために、溶液には、反応促進剤を配合しても良い。この反応促進剤としては、第3級アミン系化合物や三弗化ホウ素錯化合物などが好適に用いられる。
反応促進剤として用いられ得る第3級アミン系化合物の具体例としては、例えば、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリベンジルアミン、ジメチルホルムアミドなどの鎖状3級アミン化合物;ピラゾール類、ピリジン類、ピラジン類、ピリミジン類、インダゾール類、キノリン類、イソキノリン類、イミダゾール類、トリアゾール類などの化合物が挙げられる。これらの中でも、イミダゾール類、特に置換基を有する置換イミダゾール化合物が好ましい。
反応促進剤として用いられ得る 置換イミダゾール化合物の具体例としては、例えば、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、ビス−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−メチル−2−エチルイミダゾール、2−イソプロピルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾールなどのアルキル置換イミダゾール化合物;2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール,1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−エチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、ベンズイミダゾール、2−エチル−4−メチル−1−(2’−シアノエチル)イミダゾール、2−エチル−4−メチル−1−[2’−(3”,5”−ジアミノトリアジニル)エチル]イミダゾールなどのアリール基やアラルキル基などの環構造を含有する炭化水素基で置換されたイミダゾール化合物などが挙げられる。これらの中でも、環構造含有の置換基を有するイミダゾールが好ましく、特に、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾールが好ましい。
これらの反応促進剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。硬化促進剤の添加量は、使用目的に応じて適宜選択すれば良いが、エポキシ基含有シランカップリング剤で表面処理されたシリカ(固形分)100重量部に対して、0.001〜30重量部、好ましくは0.01〜10重量部、より好ましくは0.03〜5重量部である。
エポキシ基含有シランカップリング剤で表面処理されたシリカと、特定官能基を有する環式オレフィン重合体との混合は、加熱下で行うことが好ましく、溶媒の温度は、特に制限はないが、通常50℃〜200℃、好ましくは70℃〜180℃である。加熱時間は、通常1分間〜10時間、好ましくは2分間〜5時間、より好ましくは3分間〜2時間である。加熱温度が低すぎたり、加熱時間が短すぎると、反応速度が遅くなり、高分子変性反応が不十分になるおそれがあり、好ましくない。一方、加熱温度が高すぎたり、加熱時間が長すぎると、副反応が起こりやすくなる。
エポキシ基含有シランカップリング剤で表面処理されたシリカと、特定官能基を有する環式オレフィン重合体との混合に用いる装置は、特に限定されず、オイルバスとマグネチックスターラーを用いた反応容器、ホバートミキサー、リボンブレンダー、高速ホモジナイザー、ディスパー、遊星式攪拌機、ボールミル、ビーズミル、インクロールなどを使用することができる。これらのなかでも、シリカを十分に分散させる観点から、ビーズミルや超音波分散装置などを用いてシリカを解砕しつつ、混合を行うことが好ましい。
以上のようにして得られる変性シリカの分散スラリーは、常法に従って溶媒を除いて固形状のものとして得てもよいが、スラリーのまま、重合体と混合して、樹脂組成物の溶液を得ることもできる。
以上のようにして得られる変性シリカは、シリカの表面に環式オレフィン重合体が結合されてなるものであると考えられ、重合体に配合した場合の分散性に優れる変性シリカである。そして、本発明により得られる変性シリカは、特に、環式オレフィン重合体に配合する場合に、その優れた分散性を発揮するものである。さらにそのなかでも、本発明により得られる変性シリカは、カルボキシル基、カルボン酸無水物基およびフェノール性水酸基から選択される官能基(特定官能基)を有する環式オレフィン重合体とエポキシ化合物との混合物に配合して、絶縁材料用樹脂組成物を構成するために特に好適に用いられる。すなわち、本発明の絶縁材料用樹脂組成物は、本発明の変性シリカの製造方法により得られる変性シリカと、カルボキシル基、カルボン酸無水物基、およびヒドロキシフェニル基から選択される官能基を有する環式オレフィン重合体と、エポキシ化合物と、を含有してなる絶縁材料用樹脂組成物である。この絶縁材料用樹脂組成物は、通常、加熱により、環式オレフィン重合体の官能基と、エポキシ化合物のエポキシ基とが反応し結合を形成することにより、硬化され、それにより得られる硬化物は、機械強度が高く、耐熱性、電気特性、耐湿性に優れるため、回路基板の絶縁膜などを構成する絶縁材料として用いられる。
本発明の絶縁材料用樹脂組成物に用いられる特定官能基を有する環式オレフィン重合体としては、本発明の変性シリカの製造方法で用いられる特定官能基を有する環式オレフィン重合体と同様のものを用いることができ、また、本発明の変性シリカの製造方法で用いられる特定官能基を有する環式オレフィン重合体として好ましいものが好ましく用いられる。環状オレフィン重合体が、環状オレフィン化合物の開環重合体またはその水素添加物であるものが、より好ましい。
本発明の絶縁材料用樹脂組成物に用いられるエポキシ化合物は、例えば、フェノールノボラック型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、クレゾール型エポキシ化合物、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、水素添加ビスフェノールA型エポキシ化合物などのグリシジルエーテル型エポキシ化合物;脂環式エポキシ化合物、グリシジルエステル型エポキシ化合物、グリシジルアミン型エポキシ化合物、イソシアヌレート型エポキシ化合物、リン含有エポキシ化合物などの多価エポキシ化合物;などの分子内に2以上のエポキシ基を有する化合物が挙げられ、これらは1種を単独で用いても良いし2種以上を併用しても良い。官能基との反応性が緩やかであり、硬化性樹脂組成物の扱いが容易となる観点から多価エポキシ化合物が好ましく用いられ、グリシジルエーテル型エポキシ化合物や脂環式の多価エポキシ化合物が特に好ましく用いられる。
本発明の絶縁材料用樹脂組成物におけるエポキシ化合物の使用量は、特に限定されないが、特定官能基を有する環式オレフィン重合体100重量部に対して、通常1〜100重量部、好ましくは5〜80重量部、より好ましくは10〜50重量部の範囲である。このような範囲の使用量でエポキシ化合物を用いることにより、樹脂組成物を硬化して得られる硬化物の機械的強度および電気特性が特に良好となる。
また、本発明の絶縁材料用樹脂組成物における、本発明の変性シリカの製造方法で得られる変性シリカの使用量も特に限定されないが、特定官能基を有する環式オレフィン重合体100重量部に対して、通常5〜1,000重量部、好ましくは10〜800重量部、より好ましくは20〜500重量部の範囲である。このような範囲の使用量で変性シリカを用いることにより、樹脂組成物を硬化して得られる硬化物の機械強度が高く、平坦性、組成の均一性が特に良好となる。
また、絶縁材料用樹脂組成物の硬化を促進させるために、樹脂組成物には、硬化促進剤や硬化助剤を配合しても良い。硬化促進剤としては、一般の絶縁材料用の樹脂組成物に配合される硬化促進剤を用いれば良いが、特に、第3級アミン系化合物や三弗化ホウ素錯化合物などが硬化促進剤として好適に用いられる。なかでも、第3級アミン系化合物を使用すると、得られる絶縁材料の絶縁抵抗性、耐熱性、耐薬品性が向上する。
第3級アミン系化合物の具体例としては、例えば、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリベンジルアミン、ジメチルホルムアミドなどの鎖状3級アミン化合物;ピラゾール類、ピリジン類、ピラジン類、ピリミジン類、インダゾール類、キノリン類、イソキノリン類、イミダゾール類、トリアゾール類などの化合物が挙げられる。これらの中でも、イミダゾール類、特に置換基を有する置換イミダゾール化合物が好ましい。
置換イミダゾール化合物の具体例としては、例えば、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、ビス−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−メチル−2−エチルイミダゾール、2−イソプロピルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾールなどのアルキル置換イミダゾール化合物;2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール,1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−エチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、ベンズイミダゾール、2−エチル−4−メチル−1−(2’−シアノエチル)イミダゾール、2−エチル−4−メチル−1−[2’−(3”,5”−ジアミノトリアジニル)エチル]イミダゾールなどのアリール基やアラルキル基などの環構造を含有する炭化水素基で置換されたイミダゾール化合物などが挙げられる。これらの中でも、環構造含有の置換基を有するイミダゾールが特定官能基を有する環式オレフィン重合体との相溶性の観点から好ましく、特に、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾールが好ましい。
これらの硬化促進剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。硬化促進剤の配合量は、使用目的に応じて適宜選択すれば良いが、特定官能基を有する環式オレフィン重合体100重量部に対して、通常0.001〜30重量部、好ましくは0.01〜10重量部、より好ましくは0.03〜5重量部である。
硬化助剤としては、一般の絶縁材料用の樹脂組成物に配合される硬化助剤を用いれば良いが、その具体例としては、キノンジオキシム、ベンゾキノンジオキシム、p−ニトロソフェノールなどのオキシム・ニトロソ系硬化助剤;N,N−m−フェニレンビスマレイミドなどのマレイミド系硬化助剤;ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレートなどのアリル系硬化助剤;エチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレートなどのメタクリレート系硬化助剤;ビニルトルエン、エチルビニルベンゼン、ジビニルベンゼンなどのビニル系硬化助剤などが挙げられる。これらの硬化助剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができ、その配合割合は、用いるエポキシ化合物100重量部に対して、通常1〜1000重量部、好ましくは10〜500重量部の範囲である。
本発明の絶縁材料用樹脂組成物には、必要に応じて、ゴム質重合体やその他の熱可塑性樹脂を配合することができる。ゴム質重合体は、常温(25℃)以下のガラス転移温度を持つ重合体であって、通常のゴム状重合体および熱可塑性エラストマーが含まれる。樹脂組成物にゴム質重合体や熱可塑性樹脂を配合することにより、好ましくはゴム質重合体を配合することにより、得られる絶縁材料用樹脂組成物の柔軟性を改良することができる。用いるゴム質重合体のムーニー粘度(ML1+4,100℃)は、適宜選択すれば良いが、通常5〜200である。ゴム状重合体の具体例としては、エチレン−α−オレフィン系ゴム状重合体;エチレン−α−オレフィン−ポリエン共重合体ゴム;エチレン−メチルメタクリレート、エテレン−ブチルアクリレートなどのエチレンと不飽和カルボン酸エステルとの共重合体;エチレン−酢酸ビニルなどのエチレンと脂肪酸ビニルとの共重合体;アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ラウリルなどのアクリル酸アルキルエステルの重合体;ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン−ブタジエンまたはスチレン−イソプレンのランダム共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、ブタジエン−イソプレン共重合体、ブタジエン−(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体、ブタジエン−(メタ)アクリル酸アルキルエステル−アクリロニトリル共重合体、ブタジエン−(メタ)アクリル酸アルキルエステル−アクリロニトリル−スチレン共重合体などのジエン系ゴム;エポキシ化ポリブタジエンなどの変性ジエン系ゴム;ブチレン−イソプレン共重合体などが挙げられる。熱可塑性エラストマーの具体例としては、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、水素化スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−イソプレンブロック共重合体、水素化スチレン−イソプレンブロック共重合体などの芳香族ビニル−共役ジエン系ブロック共重合体、低結晶性ポリブタジエン樹脂、エチレン−プロピレンエラストマー、スチレングラフトエチレン−プロピレンエラストマー、熱可塑性ポリエステルエラストマー、エチレン系アイオノマー樹脂などを挙げることができる。これらの熱可塑性エラストマーのうち、好ましくは、水素化スチレン−ブタジエンブロック共重合体、水素化スチレン−イソプレンブロック共重合体などであり、具体的には、特開平2−133406号公報、特開平2−305814号公報、特開平3−72512号公報、特開平3−74409号公報などに記載されているものを挙げることができる。
樹脂組成物に配合しうるその他の熱可塑性樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンエーテル、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、セルローストリアセテートなどが挙げられる。
ゴム状重合体やその他の熱可塑性樹脂は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができ、その配合量は、本発明の目的を損なわない範囲で適宜選択されるが、絶縁材料としての特性を損なわせないためには、特定官能基を有する環式オレフィン重合体100重量部に対して、30重量部以下の配合量とすることが好ましい。
本発明の絶縁材料用樹脂組成物では、難燃性をより向上させる目的で、例えば、ハロゲン系難燃剤やリン酸エステル系難燃剤などの一般の絶縁材料用の樹脂組成物に配合される難燃剤を配合しても良い。樹脂組成物に難燃剤を配合する場合の配合量は、特定官能基を有する環式オレフィン重合体100重量部に対して、100重量部以下であることが好ましく、60重量部以下であることがより好ましい。
本発明の絶縁材料用樹脂組成物では、さらに必要に応じて、本発明の変性シリカの製造方法で得られる変性シリカ以外の無機充填剤、難燃助剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、老化防止剤、紫外線吸収剤(レーザー加工性向上剤)、レベリング剤、帯電防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、染料、天然油、合成油、ワックス、乳剤、磁性体、誘電特性調整剤、靭性剤などの任意成分が配合される。任意成分の配合割合は、本発明の目的を損なわない範囲で適宜選択すれば良い。
以上のような本発明の絶縁材料用樹脂組成物は、特に、回路基板の絶縁膜を形成するために用いられる絶縁膜用フィルムとして好適に用いられるものである。すなわち、本発明の絶縁膜用フィルムは、本発明の絶縁材料用樹脂組成物からなる絶縁膜用フィルムである。本発明の絶縁材料用樹脂組成物を用いて絶縁膜用フィルムを得るにあたっては、樹脂組成物を有機溶剤と混合してワニスとして用いることが好ましい。ワニス調製用の有機溶剤は、後に加熱して揮発させる便宜から、沸点が好ましくは30〜250℃、より好ましくは50〜200℃のものである。かかる有機溶剤の例としては、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼンなどの芳香族炭化水素;n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタンなどの脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなどを挙げることができる。
ワニスの調製法に格別な制限はなく、例えば、樹脂組成物を構成する各成分と有機溶剤とを常法に従って混合すればよい。例えば、マグネチックスターラー、高速ホモジナイザー、ディスパージョン、遊星攪拌機、二軸攪拌機、ボールミル、三本ロールを使用した方法などで行うことができる。混合温度は、エポキシ化合物による反応を起こさない範囲で、有機溶剤の沸点以下が好ましい。有機溶剤の使用量は、電気絶縁層の厚みや表面平坦度の要望に応じて適宜選択されるが、ワニスの固形分濃度が、通常5〜70重量%、好ましくは10〜65重量%、より好ましくは20〜60重量%になる範囲である。
次に、調製したワニスを、通常、基材に含浸および/または塗布した後、または支持体に塗布した後、ワニスを構成する有機溶剤を乾燥により除去することにより、樹脂組成物からなる絶縁膜用フィルムを得る。通常、得られた絶縁膜用フィルムは、少なくとも表面に導体層を有する基板上(以下、「内層基板と」いうことがある。)に積層し、必要に応じて支持体を剥離し、次いで、当該絶縁膜用フィルム中の樹脂組成物を硬化して、内層基板上に絶縁膜を形成し、回路基板を得る。この絶縁膜は、回路基板の電気絶縁層(絶縁材料)として機能し、この上に更に導体層を形成して回路基板を多層化することができる。このとき内層基板上に形成された絶縁膜は所謂層間絶縁層となる。
基材の具体例としては、不織布、織布、樹脂フィルムなどが挙げられる。また、その材料である有機高分子としては、ポリアクリレート、アラミド、含フッ素アラミド、液晶ポリマー、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンナフタレート、ポリイミド、ナイロンなどが挙げられ、特にアラミド、含フッ素アラミド、液晶ポリマーが難燃性と電気特性の観点から好ましい。また、基材は、上述したワニスを含浸または塗布することができる成形体であり、絶縁膜形成の観点から、膜厚は、通常20μm以下、好ましくは15μm以下、より好ましくは10μm以下であり、通常0.05μm以上、好ましくは0.1μm以上である。
不織布としては、アラミド不織布、含フッ素アラミド織布、液晶ポリマー不織布、ポリエチレンテレフタレート不織布、ポリカーボネート不織布、ナイロン不織布などが挙げられる。これらの不織布うち、アラミド不織布、液晶ポリマー不織布が好ましい。織布としてはアラミド織布、液晶ポリマー織布、ポリエチレンテレフタラート織布、ポリカーボネート織布、ナイロン織布などが挙げられる。これらの織布うち、アラミド織布、含フッ素アラミド織布、液晶ポリマー織布が好ましい。樹脂フィルムとしては、ポリアミドフィルム、アラミドフィルム、含フッ素アラミドフィルム、液晶ポリマーフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリアリレートフィルム、ポリイミドフィルム、ナイロンフィルムなどが挙げられる。これら樹脂フィルムのうち、耐熱性や耐薬品性、線膨張係数などの観点からポリアミドフィルム、アラミドフィルム、含フッ素アラミドフィルム、液晶ポリマーフィルムが好ましい。
支持体として用いられうる樹脂フィルムは、通常、熱可塑性樹脂フィルムであり、具体的には、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリアリレートフィルム、およびナイロンフィルム;などが挙げられる。これら樹脂フィルムのうち、耐熱性や耐薬品性、積層後の剥離性などの観点からポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルムが好ましい。支持体として用いられうる金属箔としては、例えば、銅箔、アルミ箔、ニッケル箔、クロム箔、金箔、および銀箔;などが挙げられる。導電性が良好である点から、銅箔、特に電解銅箔や圧延銅箔が好適である。支持体の厚さは特に制限されないが、作業性等の観点から、通常1μm〜200μm、好ましくは2μm〜150μm、より好ましくは3〜100μmである。
基材に樹脂組成物のワニスを含浸および/または塗布する方法、支持体に樹脂組成物のワニスを塗布する方法として、浸漬、ロールコート、カーテンコート、ダイコート、スリットコートなどの方法が挙げられる。
有機溶剤除去のための乾燥の条件は、有機溶剤の種類により適宜選択される。加熱温度は、通常30〜200℃、好ましくは40〜180℃であり、加熱時間は、通常30秒〜1時間、好ましくは1分〜30分である。
樹脂組成物からなる絶縁膜用フィルムを内層基板上に積層する方法に格別な制限はないが、例えば、当該絶縁膜用フィルムを、内層基板の導体層に接するように重ね合わせ、加圧ラミネータ、プレス、真空ラミネータ、真空プレス、ロールラミネータなどの加圧機を使用して加熱圧着(ラミネーション)して、内層基板表面の導体層と樹脂成形体層との界面に空隙が実質的に存在しないように結合させる方法が挙げられる。加熱圧着は、配線パターンの埋め込み性を向上させ、気泡の発生を抑えるために真空下で行うのが好ましい。加熱圧着操作の温度は、通常30〜250℃、好ましくは70〜200℃であり、加える圧力は、通常10kPa〜20MPa、好ましくは100kPa〜10MPaであり、時間は、通常30秒〜5時間、好ましくは1分〜3時間である。また、雰囲気の気圧を、通常100kPa〜1Pa、好ましくは40kPa〜10Paに減圧下で行う。
本発明の絶縁材料用樹脂組成物からなる絶縁膜用フィルムの硬化は、通常、その成形体の層を内層基板ごと加熱することにより行う。硬化条件はエポキシ化合物の種類に応じて適宜選択されるが、温度は、通常30〜400℃、好ましくは70〜300℃、より好ましくは100〜200℃であり、時間は、通常0.1〜5時間、好ましくは0.5〜3時間である。加熱の方法は特に制限されず、例えば電気オーブンを用いて行えばよい。硬化によって生成した絶縁膜は、内層基板の導体層の上に積層されて電気絶縁層(絶縁材料)を構成することとなる。
また、絶縁膜の平坦性を向上させる目的や、絶縁膜の厚みを増す目的で本発明の絶縁膜用フィルムを2以上接して貼り合わせて積層してもよい。
一般に、絶縁膜用フィルムに含まれるシリカが凝集して分散性が悪いと、流動性が不均一となって配線埋め込み時に気泡が残る、絶縁膜の平坦性が悪くなる、めっきフクレが発生する、絶縁膜上に形成した回路が荒れるなどの問題が発生するおそれがある。
ところが、本発明の変性シリカを含有する絶縁膜用フィルムは、機械強度が高く、熱膨張係数が小さく、表面平坦性、組成の均一性、耐熱性、電気特性、耐湿性に優れ、さらにめっきフクレがなく、配線埋め込み性、積層平坦性、密着性、耐薬品性、絶縁性、冷熱衝撃耐性、耐イオンマイグレーション性に優れる。
本発明の絶縁材料用樹脂組成物、またはその絶縁材料用樹脂組成物を用いて得られる絶縁膜用フィルムの用途は特に限定されないが、例えば、コンピューターや携帯電話などの電子機器における、CPUやメモリなどの半導体素子、その他の実装部品用基板の材料として好適に使用できる。
以下に実施例および比較例を挙げて、本発明についてより具体的に説明する。なお、各例中の部および%は、特に断りのない限り、重量基準である。
各種の物性については、以下の方法に従って評価した。
(1)重合体の数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn):トルエンまたはテトラヒドロフランを展開溶媒として、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により測定し、ポリスチレン換算値として求めた。
(2)重合体の水素化率:水素化率は、水素化前における重合体中の不飽和結合のモル数に対する水素添加された不飽和結合のモル数の比率をいい、H−NMRスペクトル測定により求めた。
(3)重合体のカルボン酸無水物基含有率:重合体中の総単量体単位数に対するカルボン酸無水物基のモル数の割合をいい、H−NMRスペクトル測定により求めた。
(4)シリカの分散性評価:絶縁膜用フィルムを光学顕微鏡で観察し、視野内のシリカの凝集物の有無を観察した。凝集物が確認されないものが、分散性良好と判断した。
(5)めっきの仕上がり評価:めっき後の基板を目視で観察し、めっき皮膜のふくれの有無を観察した。ふくれのないものが、めっきの仕上がり良好と判断した。
〔合成例1〕
テトラシクロ[9.2.1.02,10.03,8]テトラデカ−3,5,7,12−テトラエン(メタノテトラヒドロフルオレン、以下、「MTF」と略記する。)70モル部、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン−5,6−ジカルボン酸無水物(以下、「NDCA」と略記する)30モル部、1−ヘキセン0.9モル部、アニソール590モル部およびルテニウム系重合触媒として4−アセトキシベンジリデン(ジクロロ)(4,5−ジブロモ−1,3−ジメシチル−4−イミダゾリン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウム(和光純薬社製)0.015モル部を、窒素置換した耐圧ガラス反応器に仕込み、攪拌下に80℃で1時間の重合反応を行って開環重合体の溶液を得た。次いで、窒素置換した攪拌機付きオートクレーブに、得られた開環重合体の溶液を仕込み、150℃、水素圧6MPaで、5時間攪拌させて水素添加反応を行って、環式オレフィン重合体(1)の溶液を得た。得られた環式オレフィン重合体(1)の重量平均分子量は、50,000、数平均分子量は26,000、分子量分布は1.9であった。また、水素添加率は97%であり、カルボン酸無水物基含有率は30モル%であった。環式オレフィン重合体(1)の溶液の固形分濃度は25%であった。
〔合成例2〕
8−エチリデン−テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン(以下、「ETD」と略記する)70モル部、NDCA30モル部、1−ヘキセン1.1モル部、キシレン480部およびルテニウム系重合触媒として4−アセトキシベンジリデン(ジクロロ)(4,5−ジブロモ−1,3−ジメシチル−4−イミダゾリン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウム(和光純薬社製)0.009部を、窒素置換した耐圧ガラス反応器に仕込み、攪拌下に80℃で2時間の重合反応を行って開環重合体の溶液を得た。次いで、窒素置換した攪拌機付きオートクレーブに、得られた開環重合体の溶液を仕込み、150℃、水素圧7MPaで、5時間攪拌させて水素化反応を行って、環式オレフィン重合体(2)の溶液を得た。得られた環式オレフィン重合体(2)の重量平均分子量は、63,000、数平均分子量は28,000、分子量分布は2.3であった。また、水素添加率は99.9%であり、カルボン酸無水物基含有率は30モル%であった。環式オレフィン重合体(2)の溶液の固形分濃度は25%であった。
〔合成例3〕
MTF70モル部、NDCA30モル部、1−ヘキセン6モル部、アニソール590モル部およびルテニウム系重合触媒として4−アセトキシベンジリデン(ジクロロ)(4,5−ジブロモ−1,3−ジメシチル−4−イミダゾリン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウム(和光純薬社製)0.015モル部を、窒素置換した耐圧ガラス反応器に仕込み、攪拌下に80℃で1時間の重合反応を行って開環重合体の溶液を得た。次いで、窒素置換した攪拌機付きオートクレーブに、得られた開環重合体の溶液を仕込み、150℃、水素圧6MPaで、5時間攪拌させて水素添加反応を行って、環式オレフィン重合体(3)の溶液を得た。得られた環式オレフィン重合体(3)の重量平均分子量は、8,000、数平均分子量は4,200、分子量分布は1.9であった。また、水素添加率は97%であり、カルボン酸無水物基含有率は30モル%であった。環式オレフィン重合体(3)の溶液の固形分濃度は25%であった。
〔合成例4〕
ETD70モル部、NDCA30モル部、1−ヘキセン6モル部、キシレン480部およびルテニウム系重合触媒として4−アセトキシベンジリデン(ジクロロ)(4,5−ジブロモ−1,3−ジメシチル−4−イミダゾリン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウム(和光純薬社製)0.009部を、窒素置換した耐圧ガラス反応器に仕込み、攪拌下に80℃で2時間の重合反応を行って開環重合体の溶液を得た。次いで、窒素置換した攪拌機付きオートクレーブに、得られた開環重合体の溶液を仕込み、150℃、水素圧7MPaで、5時間攪拌させて水素化反応を行って、環式オレフィン重合体(4)の溶液を得た。得られた環式オレフィン重合体(4)の重量平均分子量は、8,000、数平均分子量は4,200、分子量分布は1.9であった。また、水素添加率は99.9%であり、カルボン酸無水物基含有率は30モル%であった。環式オレフィン重合体(4)の溶液の固形分濃度は25%であった。
〔実施例1〕
2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランで表面処理したシリカ(商品名「SX009」、アドマテックス社製、体積平均粒径0.05μm、ゲル法球状シリカ)の25%シクロペンタノン分散スラリー400部(シリカ固形分として100部)、合成例1で得た環式オレフィン重合体(1)の溶液20部(環式オレフィン重合体(1)の量として5部)、および反応促進剤として1−べンジル−2−フェニルイミダゾール0.2部を、容器に量り取り、遊星式攪拌機(商品名「あわとり錬太郎AR−250」、シンキー社製)で3分間攪拌し、超音波ホモジナイザー(商品名「US−150T」、日本精機社製、250μA)で2分間超音波攪拌し、次いで120℃で10分間加熱して、変性シリカ(1)の分散スラリーを得た。
次いで、得られた変性シリカ(1)の分散スラリー420部(シリカ固形分として100部)と、エポキシ化合物として水素添加ビスフェノールAジグリシジルエーテル(商品名「YX8000」、ジャパンエポキシレジン社製)36部とを遊星攪拌機を用いて混合し、さらに合成例1で得た環式オレフィン重合体(1)の溶液400部(環式オレフィン重合体の量として100部)、ゴム質重合体として液状ポリブタジエン(商品名「Ricon152」、サートマージャパン社製)10部、紫外線吸収剤として2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール1部、および老化防止剤として1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリオン1部を添加して遊星攪拌機を用いて3分間攪拌混合し、次いで超音波ホモジナイザー(250μA)で2分間超音波攪拌し、さらに硬化促進剤として1−べンジル−2−フェニルイミダゾール0.5部を添加して、遊星攪拌機を用いて混合させて樹脂組成物のワニス(1)を得た。
得られた樹脂組成物のワニス(1)を、縦300mm×横300mmの大きさで厚さが100μm、表面平均粗さRaが0.08μmのポリエチレンナフタレートフィルム(支持体)上に、YD型のドクターブレードを用いてポリイミドフィルムに塗工した。次いで、窒素雰囲気下、80℃で10分間乾燥させて、樹脂組成物層の厚みが25μmである支持体付きの絶縁膜用フィルム(1)を得た。この絶縁膜用フィルム(1)の表面を光学顕微鏡で観察したところ、凝集物は観察されなかった。
ガラスフィラーおよびハロゲン不含エポキシ樹脂を含有するワニスをガラス繊維に含浸させて得られたコア材の表面に、厚みが18μmの銅が貼られた、厚み0.8mm、縦150mm×横150mmの両面銅張り基板(内層基板)の表面に、縦150mm×横150mmの大きさに切断した、支持体付きの絶縁膜用フィルム(1)を樹脂組成物の層が内層基板の表面に接するように、内層基板の両面に重ね合わせた。これを、耐熱ゴム製プレス板を上下に備えた真空ラミネータを用いて、200Paに減圧して、温度140℃、圧力0.9MPaで60秒間加熱圧着した。次いで支持体を剥がすことにより、絶縁膜用フィルム(1)が積層された内層基板を得た。
この内層基板を、1−(2−アミノエチル)−2−メチルイミダゾールの1.0%水溶液に30℃にて10分間浸漬し、次いで25℃の水に1分間浸漬した後、エアーナイフにて余分な溶液を除去した。これを窒素雰囲気下、160℃で30分間放置し、絶縁膜用フィルム(1)を硬化させて内層基板上に絶縁膜を形成し、多層の回路基板を得た。
得られた多層の回路基板を、過マンガン酸濃度60g/リットル、水酸化ナトリウム濃度28g/リットルになるように調整した70℃の水溶液に10分間揺動浸漬した。次いで、この多層の回路基板を水槽に1分間揺動浸漬し、更に別の水槽に1分間揺動浸漬することにより水洗した。続いて硫酸ヒドロキシルアミン濃度170g/リットル、硫酸80g/リットルになるように調整した25℃の水溶液に、多層の回路基板を5分間浸漬し、中和還元処理をした後、水洗した。
次いで、めっき前処理として、上記水洗後の多層の回路基板をアルカップアクチベータMAT−1−A(商品名、上村工業社製)が200ml/リットル、アルカップアクチベータMAT−1−B(商品名、上村工業社製)が30ml/リットル、水酸化ナトリウムが0.35g/リットルになるように調整した60℃のPd塩含有めっき触媒水溶液に5分間浸漬した。次いで、この多層の回路基板を水槽に1分間揺動浸漬し、更に別の水槽に1分間揺動浸漬することにより水洗した後、アルカップレデユーサーMAB−4−A(商品名、上村工業社製)が20ml/リットル、アルカップレデユーサーMAB−4−B(商品名、上村工業社製)が200ml/リットルになるように調整した溶液に35℃で、3分間浸漬し、めっき触媒を還元処理した。このようにしてめっき触媒を吸着させ、めっき前処理を施した多層の回路基板を得た。
次いで、めっき前処理後の多層の回路基板を、スルカップPSY−1A(商品名、上村工業社製)100ml/リットル、スルカップPSY−1B(商品名、上村工業社製)40ml/リットル、ホルマリン0.2モル/リットルとなるように調整した水溶液に空気を吹き込みながら、温度36℃、5分間浸漬して無電解銅めっき処理を行った。無電解めっき処理により金属薄膜層が形成された多層の回路基板を、更に水槽に1分間揺動浸漬し、更に別の水槽に1分間揺動浸漬することにより水洗した後、乾燥し、防錆処理を施し、無電解めっき皮膜が形成された多層の回路基板を得た。
無電解めっき皮膜が形成された多層の回路基板を、硫酸100g/リットルの水溶液に25℃で1分間浸漬させ防錆剤を除去し、電解銅めっきを施し厚さ30μmの電解銅めっき膜を形成させた。そして、最後に、170℃で60分間アニール処理をして多層の回路基板を完成させた。多層の回路基板のめっき皮膜にふくれが無く、良好な仕上がりであった。
〔実施例2〕
2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランで表面処理したシリカのシクロペンタノン分散スラリーの量を200部(シリカ固形分として50部)に変えたこと以外は実施例1と同様にして変性シリカ(2)、樹脂組成物のワニス(2)、支持体付きの絶縁膜用フィルム(2)、および多層の回路基板を得た。絶縁膜用フィルム(2)の表面を光学顕微鏡で観察したところ、凝集物は観察されなかった。また、多層の回路基板のめっき皮膜にふくれが無く、良好な仕上がりであった。
〔実施例3〕
2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランで表面処理したシリカ(商品名「SC1000−GRT」、アドマテックス社製、平均粒径0.3μm)の25%アニソール分散スラリー400部(シリカ固形分として100部)、合成例3で得た環式オレフィン重合体(3)の溶液20部(環式オレフィン重合体(3)の量として5部)、および反応促進剤として1−べンジル−2−フェニルイミダゾール0.2部を、容器に量り取り、遊星式攪拌機で3分間攪拌し、超音波ホモジナイザー(250μA)で2分間超音波攪拌し、次いで120℃で10分間加熱して、変性シリカ(3)の分散スラリーを得た。
次いで、得られた変性シリカ(3)の分散スラリー420部(シリカ固形分として100部)と、エポキシ化合物として水素添加ビスフェノールAジグリシジルエーテル(商品名YX8000、ジャパンエポキシレジン社製)36部とを遊星攪拌機を用いて混合し、さらに合成例1で得た環式オレフィン重合体(1)の溶液400部(環式オレフィン重合体の量として100部)、ゴム質重合体として液状ポリブタジエン(商品名「Ricon152」、サートマージャパン社製)10部、紫外線吸収剤として2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール1部、および老化防止剤として1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリオン1部を遊星攪拌機を用いて3分間攪拌混合し、次いで超音波ホモジナイザー(250μA)で2分間超音波攪拌し、さらに硬化促進剤として1−べンジル−2−フェニルイミダゾール0.5部を遊星攪拌機を用いて混合させて樹脂組成物のワニス(3)を得た。
得られた樹脂組成物のワニス(3)を用いて、実施例1と同様にして支持体付きの絶縁膜用フィルム(3)、および多層の回路基板を得た。絶縁膜用フィルム(3)の表面を光学顕微鏡で観察したところ、凝集物は観察されなかった。また、多層の回路基板のめっき皮膜にふくれが無く、良好な仕上がりであった。
〔実施例4〕
γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランで表面処理したシリカ(商品名「SC1000−SET」、アドマテックス社製、平均粒径0.3μm)の25%キシレン分散スラリー400部(シリカ固形分として100部)、合成例4で得た環式オレフィン重合体(4)の溶液20部(環式オレフィン重合体(4)の量として5部)、および反応促進剤として1−べンジル−2−フェニルイミダゾール0.2部を、容器に量り取り、遊星式攪拌機で3分間攪拌し、超音波ホモジナイザー(250μA)で2分間超音波攪拌し、次いで120℃で10分間加熱して、変性シリカ(4)の分散スラリーを得た。
次いで、得られた変性シリカ(4)の分散スラリー420部(シリカ固形分として100部)と、硬化剤として水素添加ビスフェノールAジグリシジルエーテル(商品名YX8000、ジャパンエポキシレジン社製)36部とを遊星攪拌機を用いて混合し、さらに合成例2で得た環式オレフィン重合体(2)の溶液400部(環式オレフィン重合体の量として100部)、ゴム質重合体として液状ポリブタジエン(商品名「Ricon152」、サートマージャパン社製)10部、紫外線吸収剤として2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール1部、および老化防止剤として1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリオン1部を添加して遊星攪拌機を用いて3分間攪拌混合し、次いで超音波ホモジナイザー(250μA)で2分間超音波攪拌し、さらに硬化促進剤として1−べンジル−2−フェニルイミダゾール0.5部を遊星攪拌機を用いて混合させて樹脂組成物のワニス(4)を得た。
得られた樹脂組成物のワニス(4)を用いて、実施例1と同様にして支持体付きの絶縁膜用フィルム(4)、および多層の回路基板を得た。絶縁膜用フィルム(4)の表面を光学顕微鏡で観察したところ、凝集物は観察されなかった。また、多層の回路基板のめっき皮膜にふくれが無く、良好な仕上がりであった。
〔比較例1〕
用いるシリカの分散スラリーを、表面処理していないシリカ(商品名「SO−C1」、アドマテックス社製、平均粒径0.3μm)の25%シクロペンタノン分散スラリー400部(シリカとして100部)に変えたこと以外は実施例1と同様にしてシリカ(6)、樹脂組成物のワニス(6)、支持体付きの絶縁膜用フィルム(6)、および多層の回路基板を得た。絶縁膜用フィルム(6)の表面を観察した結果、多数の凝集物が観察された。また、多層の回路基板の表面を観察した結果、めっき皮膜に多数のふくれがみられた。
〔比較例2〕
用いるシリカの分散スラリーを、表面処理していないシリカ(商品名「SO−C1」、アドマテックス社製、平均粒径0.3μm)を、ヘキサメチルジシラザンで表面処理したシリカの25%シクロペンタノン分散スラリー400部(シリカ固形分として100部)に変えたこと以外は実施例1と同様にしてシリカ(7)、樹脂組成物のワニス(7)、支持体付きの絶縁膜用フィルム(7)、および多層の回路基板を得た。絶縁膜用フィルム(7)の表面を観察した結果、多数の凝集物が観察された。また、多層の回路基板の表面を観察した結果、多数のふくれがみられた。
以上の実施例および比較例から分かるように、本発明の高分子変性シリカは分散性に優れ、めっきふくれが無く、絶縁膜とめっき皮膜が密着していた(実施例1〜4)。一方、エポキシ基を有するシランカップリング剤で表面処理しなかったシリカを用いた場合は、シリカの分散性に劣るものであった(比較例1、2)。

Claims (4)

  1. エポキシ基含有シランカップリング剤で表面処理されたシリカと、カルボキシル基、カルボン酸無水物基およびフェノール性水酸基から選択される官能基を有する環式オレフィン重合体と、を溶媒中で混合する変性シリカの製造方法。
  2. エポキシ基含有シランカップリング剤で表面処理されたシリカの体積平均粒径が1μm以下である請求項1に記載の変性シリカの製造方法。
  3. 請求項1または2に記載の変性シリカの製造方法により得られる変性シリカと、カルボキシル基、カルボン酸無水物基およびフェノール性水酸基から選択される官能基を有する環式オレフィン重合体と、エポキシ化合物と、を含有してなる絶縁材料用樹脂組成物。
  4. 請求項3に記載の絶縁材料用樹脂組成物からなる絶縁膜用フィルム。
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