JP2008001871A - ワニスの製造方法およびワニスよりなる成形物 - Google Patents

ワニスの製造方法およびワニスよりなる成形物 Download PDF

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Abstract

【課題】充填剤の分散安定性に優れ、保存中の粘度変化の少ない、ワニスを製造する方法を提供する。
【解決手段】カルボキシル基または酸無水物基を有する重合体、充填剤、エポキシ化合物および有機溶剤を含むワニスの製造方法において、
予め重合体溶液および充填剤スラリーを調製し、
前記重合体溶液に前記充填剤スラリーを添加し、次いで、得られる混合液の粘度の10分間の変化率が2%以下になるまで撹拌した後、
前記エポキシ化合物を添加し、次いで、ここで得られる混合液の粘度の10分間の変化率が2%以下になるまで撹拌する。
【選択図】なし

Description

本発明は、電気機器のプリント配線板の製造に用いる電気絶縁層の形成に好適な、充填剤の分散安定性に優れ、保存中の粘度変化の小さいワニスの製造方法、およびこれを支持体に塗布し乾燥してなる成形物に関する。
電子機器の小型化、多機能化に伴って、電子機器に用いられているプリント配線板も、より高密度化、高性能化が要求されるようになってきている。プリント配線板を高密度化するために、プリント配線板を多層化することが一般的である。多層化されたプリント配線板(多層プリント配線板ともいう。)は、通常、最外層に導体層が形成された内層基板の表面に、電気絶縁層を積層し、当該電気絶縁層の上にめっきなどにより導体層を形成することによって得られる。電気絶縁層と導体層とは、必要に応じて、数層積層することもできる。
多層プリント配線板は、通電駆動時のLSI等の実装された素子や多層プリント配線板自体からの発熱により火災発生の危険性があるため、その電気絶縁層には高い難燃性が求められている。電気絶縁層に難燃性を付与させる方法の一つとして、ハロゲン化合物と三酸化アンチモンを添加する方法が提案されている。例えば、特許文献1には、優れた難燃性を持つ電気絶縁膜を提供する組成物として、電気絶縁性のカルボキシル基を有する重合体、ハロゲン原子を有しない多価エポキシ化合物、ハロゲン化多価エポキシ化合物および三酸化アンチモンを含有した熱硬化性重合体組成物、ならびにワニスが記載されている。しかし、かかるワニスの詳細な調整方法は開示されていない。
また、特許文献2には、無機充填剤と、エポキシ樹脂およびフェノールノボラック樹脂からなるワニスを製造する方法として、予め前記無機充填剤を適当な有機溶剤中に分散したスラリーを調製し、そのスラリーと、エポキシ樹脂、フェノールノボラック樹脂および有機溶剤からなる重合体溶液とを、混合する方法が記載されている。
しかし、例えば三酸化アンチモンなど比重の大きな充填剤を含むワニスは、保存中に充填剤が凝集・沈降する、ワニスの粘度が上昇し取り扱い性が悪化するなどの問題があった。また、このワニスを支持体に塗布し、乾燥して成形物を得る場合においては、充填剤が凝集し均質な成形物が得られない、または、凝集物を除去する工程が必要となるなどの問題もあった。
特開2006−28225号公報 特開2005−38821号公報
本発明は、充填剤の分散安定性に優れ、保存中の粘度変化の少ない、ワニスを製造する方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、特許文献1には調整法の詳細は記載されていないが、各成分を同時に混合して得られたワニスは保存中に充填剤が沈降しやすい、という不具合があることを見出した。この不具合を解決するために、充填剤を何で被覆するか、つまり先に何と混合するか、ということ、および各段階での粘度変化に注目し、鋭意検討した。その結果、まず、重合体溶液および充填剤スラリーを予め別々に調整しておき、重合体溶液に充填剤スラリーを添加し、充分に撹拌し、次いで硬化剤としてエポキシ化合物を添加して、さらに充分に撹拌することにより、充填剤の分散安定性に優れ、保存中に充填剤が沈降しないワニスを製造できることを見出した。
そして、さらに鋭意検討した結果、カルボキシル基または酸無水物基を有する重合体、充填剤、エポキシ化合物および有機溶剤を含むワニスの製造方法において、
予め重合体溶液および充填剤スラリーを調製し、
重合体溶液に充填剤スラリーを添加し、次いで、得られる混合液の粘度の10分間の変化率が2%以下になるまで撹拌した後、
これにエポキシ化合物を添加し、次いで、ここで得られる混合液の粘度の10分間の変化率が2%以下になるまで撹拌する
ことにより、上記課題を解決できることを見出し、この知見に基づき本発明を完成するに到った。
かくして本発明の第一によれば、カルボキシル基または酸無水物基を有する重合体、充填剤、エポキシ化合物、有機溶剤Aおよび有機溶剤Bを含むワニスの製造方法であって、次の工程(a)〜(d)を含むことを特徴とするワニスの製造方法が提供される。
(a)前記重合体を前記有機溶剤Aに溶解し、重合体溶液を調製する工程
(b)前記充填剤を前記有機溶剤B中に分散し、充填剤スラリーを調製する工程
(c)前記重合体溶液に、前記充填剤スラリーを添加し、次いで、本工程における混合液の(式1)で表される粘度の10分間の変化率が2%以下になるまで撹拌する工程
(d)工程(c)で得た混合液に、エポキシ化合物を添加し、次いで、本工程における混合液の(式1)で表される粘度の10分間の変化率が2%以下になるまで撹拌する工程
(ここで、(式1)変化率(%)=|η1−η2|/η2×100であり、
η1は工程中にサンプリングした混合液の25℃における粘度を、
η2は前記サンプリングから10分前にサンプリングした混合液の25℃における粘度を表す。)
前記充填剤は無機充填剤であることが好ましい。
前記重合体は脂環式オレフィン重合体であることが好ましい。
前記有機溶剤Aの含水率は0.05重量%以下であることが好ましい。
本発明の第二によれば、上記製造方法で得られたワニスを支持体に塗布し、乾燥してなる成形物が提供される。
上記成形物は、フィルム状またはシート状であることが好ましく、該フィルム状またはシート状の成形物は、導体層を有する基板同士の接合に用いられるものであってもよい。
本発明の第三によれば、上記成形物を硬化してなる硬化物が提供される。
本発明の第四によれば、表面に導体層を有する基板と、上記硬化物とを積層してなる積層体が提供される。
本発明の第五によれば、表面に導体層を有する基板上に、上記成形物を加熱圧着し、この成形物を硬化して基板上に電気絶縁層を形成することを特徴とする上記積層体の製造方法、ならびに、表面に導体層を有する基板上に、上記ワニスを塗布し、乾燥して該基板上に成形物を形成する工程(I)、および該成形物を硬化して電気絶縁層を形成する工程(II)を含有する、上記積層体の製造方法、が提供される。
本発明の第六によれば、上記積層体を含有する多層プリント配線板が提供される。
本発明によれば、充填剤の分散安定性に優れ、保存中の粘度変化の少ない、ワニスを製造する方法が提供される。本発明の製造方法で得られるワニスを乾燥してなる成形物は、電気絶縁層を有する積層体および多層プリント配線板を得るのに好適な無機充填剤の分散性に優れる硬化性樹脂成形物として好適である。本発明の多層プリント配線板は、コンピュータや携帯電話等の電子機器における、CPUやメモリなどの半導体素子、その他の実装部品用基板として好適に使用できる。
本発明の製造方法における工程(a)は、カルボキシル基または酸無水物基を有する重合体を有機溶剤Aに溶解し、重合体溶液を調製する工程である。
カルボキシル基または酸無水物基(以下、この両者をまとめて「カルボキシル基等」と記すことがある。)を有する重合体は、分子内にカルボキシル基等を有する重合体であれば、特に制限されないが、電気絶縁性を有する重合体であることが好ましい。該重合体のASTM D257による体積固有抵抗は、1×10Ω・cm以上が好ましく、1×1010Ω・cm以上がより好ましい。
重合体のカルボキシル基等の含有量は、重合体1g当りのモル当量として0.25〜2.5mmol/gの範囲が好ましく、0.50〜2.0mmol/gの範囲がより好ましい。得られる成形物の硬化物を電気絶縁層として利用した場合、カルボキシル基等の含有量が小さすぎると、電気絶縁層のめっき密着性や耐熱性が低下するおそれがあり、カルボキシル基等の含有量が大きすぎると、電気絶縁層の絶縁特性が低下する可能性がある。
本発明で用いるカルボキシル基等を有する重合体の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは15,000〜150,000であり、より好ましくは20,000〜100,000である。Mwが小さすぎると、得られる成形物を硬化物とした場合の強度が不十分となる、または電気絶縁性が低下する、などのおそれがある。一方、Mwが大きすぎると、カルボキシル基等を有する重合体とエポキシ化合物との相溶性が低下し、得られる成形物を硬化物とした場合の表面粗度が大きくなるため、該硬化物を積層体として用いた場合、その表面に形成する配線パターンの精度が低下するおそれがある。
カルボキシル基等を有する重合体の骨格をなす重合体は、特に限定されないが、その具体例としては、マレイミド樹脂、アクリル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、トリアジン樹脂、脂環式オレフィン重合体、芳香族ポリエーテル重合体、ベンゾシクロブテン重合体、シアネートエステル重合体、およびポリイミド樹脂;などが挙げられ、一種類を単独で使用してもよく、二種類以上を併用してもよい。これらの中でも、誘電率や誘電正接などの電気特性が優れているので、脂環式オレフィン重合体、芳香族ポリエーテル重合体、ベンゾシクロブテン重合体、シアネートエステル重合体およびポリイミド樹脂が好ましく、脂環式オレフィン重合体および芳香族ポリエーテル重合体がより好ましく、脂環式オレフィン重合体が特に好ましい。
本発明において、脂環式オレフィン重合体は、炭素−炭素不飽和結合を有する脂環式化合物(脂環式オレフィンという。)の単独重合体および共重合体並びにこれらの誘導体(水素添加物等)の総称である。また、重合の様式は、付加重合であっても開環重合であってもよい。
脂環式オレフィン重合体の具体例としては、ノルボルネン環を有する単量体(以下、ノルボルネン系単量体という)の開環重合体およびその水素添加物、ノルボルネン系単量体の付加重合体、ノルボルネン系単量体とビニル化合物との付加重合体、単環シクロアルケン付加重合体、脂環式共役ジエン重合体、ビニル系脂環式炭化水素重合体およびその水素添加物を挙げることができる。更に、芳香族オレフィン重合体の芳香環水素添加物等の、重合後の水素化によって脂環構造が形成されて、脂環式オレフィン重合体と同等の構造を有するに至った重合体もその一例である。これらの中でも、ノルボルネン系単量体の開環重合体およびその水素添加物、ノルボルネン系単量体の付加重合体、ノルボルネン系単量体とビニル化合物との付加重合体、および芳香族オレフィン重合体の芳香環水素添加物が好ましく、特にノルボルネン系単量体の開環重合体の水素添加物が好ましい。
重合体が脂環式オレフィン重合体の場合、カルボキシル基等は、脂環構造を形成する炭素原子に直接結合していても、メチレン基、オキシ基、オキシカルボニルオキシアルキレン基、およびフェニレン基など他の二価の基を介して結合していてもよい。
重合体のカルボキシル基等の含有量を上記範囲とする方法は、制限されない。例えば、(i)カルボキシル基等を有する単量体を、単独重合し、又は、これと共重合可能な単量体と共重合する方法;(ii)カルボキシル基等を有しない重合体に、カルボキシル基等および炭素−炭素不飽和結合を有する化合物を、例えばラジカル開始剤存在下で、グラフト結合させることにより、カルボキシル基等を導入する方法;(iii)カルボン酸エステル基等の、カルボキシル基の前駆体となる基を有する単量体を重合した後、加水分解等によって前駆体基をカルボキシル基へ変換させる方法;等がある。
(i)の方法に用いられるカルボキシル基含有脂環式オレフィン単量体としては、8−ヒドロキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、5−ヒドロキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メチル−5−ヒドロキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−カルボキシメチル−5−ヒドロキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、8−メチル−8−ヒドロキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−カルボキシメチル−8−ヒドロキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、5−エキソ−6−エンド−ジヒドロキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、および8−エキソ−9−エンド−ジヒドロキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン;などが挙げられる。
また、(i)の方法に用いられる酸無水物基含有脂環式オレフィン単量体としては、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン−5,6−ジカルボン酸無水物、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン−8,9−ジカルボン酸無水物、およびヘキサシクロ[6.6.1.13,6.110,13.02,7.09,14]ヘプタデカ−4−エン−11,12−ジカルボン酸無水物;などが挙げられる。
(i)の方法に用いられる、カルボキシル基含有脂環式オレフィン単量体と共重合可能な単量体は、特に制限されないが、カルボキシル基等を有さない脂環式オレフィン単量体が好ましい。
カルボキシル基等を有さない脂環式オレフィン単量体の具体例としては、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(慣用名:ノルボルネン)、5−エチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−ブチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−エチリデン−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メチリデン−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−ビニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン(慣用名:ジシクロペンタジエン)、テトラシクロ[8.4.0.111,14.02,8]テトラデカ−3,5,7,12,11−テトラエン、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]デカ−3−エン(慣用名:テトラシクロドデセン)、8−メチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−エチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−メチリデン−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−エチリデン−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−ビニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−プロペニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカ−3,10−ジエン、ペンタシクロ[7.4.0.13,6.110,13.02,7]ペンタデカ−4,11−ジエン、シクロペンテン、シクロペンタジエン、1,4−メタノ−1,4,4a,5,10,10a−ヘキサヒドロアントラセン、および8−フェニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン;などが挙げられる。
(ii)の方法に用いられる、カルボキシル基等を有しない脂環式オレフィン重合体は、前記のカルボキシル基等を有さない脂環式オレフィン単量体を重合させたものである。重合の様式は、付加重合であっても開環重合であってもよく、それらの誘導体(水素添加物等)であってもよい。
また、(ii)の方法に用いられる、カルボキシル基等を有する炭素−炭素不飽和結合含有化合物としては、アクリル酸、メタクリル酸、α−エチルアクリル酸、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸、エンドシス−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸、およびメチル−エンドシス−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸などの不飽和カルボン酸化合物;無水マレイン酸、クロロ無水マレイン酸、ブテニル無水コハク酸、テトラヒドロ無水フタル酸、および無水シトラコン酸などの不飽和カルボン酸無水物;などが挙げられる。
(iii)の方法に用いられる、カルボキシル基の前駆体となる基を有するノルボルネン系単量体としては、8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、5−メトキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、および5−メチル−5−メトキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン;などが挙げられる。
カルボキシル基等を有する重合体は、カルボキシル基等以外の官能基を有していてもよい。カルボキシル基等以外の官能基としては、アルコキシカルボニル基、シアノ基、水酸基、エポキシ基、アルコキシル基、アミノ基、アミド基、およびイミド基;などが挙げられる。
有機溶剤Aは、カルボキシル基等を有する重合体を溶解し、後の工程で充填剤を凝集させないものであればよく、特に限定はされない。例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、およびトリメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;n−ペンタン、n−ヘキサン、およびn−ヘプタン等の脂肪族炭化水素類;シクロペンタン、およびシクロヘキサン等の脂環式炭化水素類;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、およびトリクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、およびシクロヘキサノン等のケトン類;メタノール、エタノール、ジアセトンアルコール等のアルコール類;テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等のエーテル類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、および2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸メチル等のエステル類;等が挙げられ、一種類を単独で使用してもよく、二種類以上を併用してもよい。
有機溶剤Aの含水率は0.05重量%以下が好ましく、さらには0.02重量%以下が好ましい。含水率が多すぎると、重合体溶液の保存中の粘度変化が大きくなる場合がある。
これは、重合体のカルボキシル基等が水分と反応、または相互作用しているためと推測される。含水率は、JIS K0068によるカールフィッシャー滴定法で測定される。
有機溶剤Aの含水率を低減させる方法は、特に限定されないが、例えば、モレキュラーシーブスや無水硫酸マグネシウムなどの脱水剤を用いることが出来る。
前記有機溶剤Aにカルボキシル基等を有する重合体を溶解する方法は、特に限定されないが、撹拌式、振とう式、および回転式などの溶解装置が使用できる。溶解する温度は、特に限定されないが、温度が低すぎると溶解に長時間を有し、温度が高すぎると溶解中に溶剤が揮発し濃度が変化するため、好ましくない。また、溶解は未溶解物が実質的に残っていないことを確認することで終了とすることができる。
重合体溶液中のカルボキシル基等を有する重合体の濃度および粘度は、特に限定されないが、製造するワニスの用途により範囲は適宜選択され、通常、濃度は10〜50重量%であり、粘度は1〜100Pa・sである。濃度および粘度が高くなりすぎると、溶解に長時間を有するばかりでなく、後の工程での混合にも長時間有する。
重合体溶液は、すぐに次の工程に用いてもよいし、保存した後に使用してもよい。保存方法は特に限定されないが、通常は密閉容器で冷暗所に保存する。
工程(b)は充填剤を有機溶剤B中に分散し、充填剤スラリーを調製する工程である。
本発明で使用する充填剤は、無機充填剤でも有機充填剤であっても良いが、充填剤として無機充填剤を使用した場合、特に本発明の製造方法の効果が著しい。
無機充填剤としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、および炭酸バリウムなどの炭酸塩;ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸ジルコニウム、タルク、およびクレーなどのケイ酸塩;酸化亜鉛、酸化チタン、酸化マグネシウム、アルミナ、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、およびシリカなどの酸化物;水酸化マグネシウム、および水酸化アルミニウムなどの水酸化物;硫酸バリウム、および硫酸カルシウムなどの硫酸塩;などが挙げられる。中でも成形物の難燃性を必要とする場合は、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、および水酸化物が好ましい。成形物を硬化物とした時の強度を高めるためには、酸化物、および炭酸塩が好ましい。
有機充填剤としては、エポキシ系、ゴム系、ウレタン系、ポリイミド系、ポリアミド系などの高分子化合物の架橋微粒子、および塩基性含窒素化合物とりん酸との塩などの有機系難燃剤;などが挙げられ、成形物の難燃性を必要とする場合は、塩基性含窒素化合物とりん酸との塩などの有機系難燃剤が好ましい。
充填剤の粒径は限定されないが、その一次粒子の体積平均粒径は、0.1〜5.0μmであることが好ましく、0.5〜2.0μmであることがより好ましい。粒径がこの範囲であると得られるワニスの流動性、および得られる成形体の平滑性が良好である。
また、これらの充填剤は、シランカップリング剤やステアリン酸等の有機酸により表面処理をしたものが好ましい。また、充填剤は一種類を単独で使用してもよく、二種類以上を併用してもよい。
有機溶剤Bは、特に限定されず、その例は有機溶剤Aと同様であるが、充填剤を凝集させないものを用いることが好ましい。例えば、充填剤としてシリカや三酸化アンチモンなどを使用する場合は、ケトン類を含むことが好ましい。また、有機溶剤Bの含水率は、有機溶剤Aと同様に0.05重量%以下が好ましく、さらには0.02重量%以下が好ましい。
充填剤スラリーを調製する方法は、充填剤が有機溶剤B中に分散される方法であれば、特に限定されないが、例えば、高速ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、およびディスパーなどの分散機;遊星攪拌機、および二軸攪拌機などの攪拌機;ペイントシェーカー、ボールミル、ダイノーミル、および三本ロールミルなどのミル;を用いた方法が挙げられる。調製時の温度は、充填剤や有機溶剤Bの変質が起こらない範囲で、有機溶剤Bの沸点以下が好ましい。
充填剤スラリーの充填剤の濃度および粘度は特に限定されないが、製造するワニスの用途により範囲は適宜選択され、通常、濃度は20〜80重量%、粘度は0.001〜1Pa・sの範囲である。
工程(c)は前記重合体溶液に前記充填剤スラリーを添加し、次いで、撹拌する工程である。
添加方法は特に限定されず、一括添加方法、分割添加方法、連続添加方法などが好適に用いられる。また、添加時に、後述する前記重合体溶液の撹拌を開始していてもよい。
撹拌方法は特に限定されないが、例えば回転式撹拌機が好適に使用できる。攪拌翼の形状・回転数などの条件は混合液が飛散しない条件であればよい。混合液の温度は、10〜60℃の範囲が好ましく、特に好ましくは20〜50℃の範囲である。低すぎると混合液の粘度が高くなるため、攪拌効率が悪くなり、高すぎると溶剤の揮発や混合液の変質が起こるため好ましくない。
工程の進行を、混合液の粘度の経時変化により確認する。例えば、重合体溶液の粘度が充填剤スラリーの粘度より高い場合、添加終了後から混合が進行するに従い粘度は低下し、混合が実質的に終了し均質となった時に粘度は安定する。
本発明での混合液の粘度は、円錐平板型回転粘度計により測定した25℃の粘度である。工程中、5分毎にサンプリングを行い、その試料の粘度を測定する。「10分間における変化率」を、その時点でサンプリングした試料の粘度と、その10分前にサンプリングした試料の粘度から、式1により計算する。
(式1)変化率(%)=|η1−η2|/η2×100
η1:工程中にサンプリングした混合液の粘度
η2:前記サンプリングから10分前にサンプリングした混合液の粘度
混合液の粘度の10分間における変化率が2%以下、より好ましくは1%以下になったら、すぐに次の工程(d)に移行することができる。移行はすぐに行っても良いし、充分に撹拌時間をとってからでも良い。変化率がより高い時点で、エポキシ化合物を添加した場合、得られたワニスの保存中の安定性が劣り、充填剤が凝集沈降する、粘度の上昇が激しいといった問題を生じる。これは、カルボキシル基等を有する重合体が充填剤の表面を充分被覆して安定な混合液を形成する前に、エポキシ化合物を添加することにより発生する問題であると考えられる。
重合体溶液と充填剤スラリーの混合比率は、特に限定されないが、製造するワニスの用途により範囲は適宜選択され、通常は重量比で、重合体溶液/充填剤スラリー=90/10〜50/50の範囲である。
工程(c)で得られる混合物の粘度は、特に限定されないが、製造するワニスの用途により範囲は適宜選択され、通常、0.01〜100Pa・sである。粘度が高くなりすぎると、混合に長時間を有するばかりでなく、工程(d)での混合にも長時間有する。
工程(d)は前記混合液にエポキシ化合物を添加し、次いで混合する工程である。
エポキシ化合物は、エポキシ基を有する化合物である。その種類は、特に限定されないが、例えば、臭素化多価エポキシ化合物および臭素を含まない多価エポキシ化合物の混合物を使用すると、得られる成形物を難燃性および密着性に優れたハロゲン系難燃組成物の成形物として利用できるので、好ましい。
臭素化多価エポキシ化合物の具体例としては、例えば、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノ−F型エポキシ樹脂、臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂、臭素化クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、臭素化レゾルシン型エポキシ樹脂、臭素化ハイドロキノン型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂、臭素化メチルレゾルシン型エポキシ樹脂、および臭素化レゾルシンノボラック型エポキシ樹脂;などの臭素化エポキシ樹脂が挙げられる。これらの中でも、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂および臭素化ビスフェノ−F型エポキシ樹脂(両者を「臭素化ビスフェノール型樹脂」と総称する。)が、耐熱性に優れる点から好ましい。更に、平均重合度100以下の臭素化ビスフェノール型エポキシ樹脂が、カルボキシル基等を有する重合体との相溶性に優れる点から好ましく、特に平均重合度20以下の臭素化ビスフェノール型エポキシ樹脂が好ましい。
臭素化ビスフェノール型エポキシ樹脂を構成する臭素化ビスフェノールの具体例としては、ジブロモビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールA、ジブロモビスフェノールF、テトラブロモビスフェノールF、ジブロモビスフェノールS、およびテトラブロモビスフェノールS;等が挙げられる。
また、臭素を含まない多価エポキシ化合物の具体例としては、フェノールノボラック型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、クレゾール型エポキシ化合物、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、および水素添加ビスフェノールA型エポキシ化合物などのグリシジルエーテル型エポキシ化合物;脂環式エポキシ化合物;グリシジルエステル型エポキシ化合物;グリシジルアミン型エポキシ化合物;イソシアヌレート型エポキシ化合物;などを示すことができる。
上記臭素を含まない多価エポキシ化合物のうち、他の成分との相溶性の観点から、グリシジルエーテル型エポキシ化合物が好ましく、中でも、フェノールノボラック型エポキシ化合物、およびビスフェノールA型エポキシ化合物が好ましい。ビスフェノールA型エポキシ化合物の具体例としては、ビスフェノールAビス(エチレングリコールグリシジルエーテル)エーテル、ビスフェノールAビス(プロピレングリコールグリシジルエーテル)エーテル、ビスフェノールAビス(ジエチレングリコールグリシジルエーテル)エーテル、およびビスフェノールAビス(トリエチレングリコールグリシジルエーテル)エーテル;などを挙げることができる。
エポキシ化合物の使用量は、特に限定されないが、その用途により範囲は適宜選択される。例えば、エポキシ化合物を、カルボキシル基等を有する重合体と反応させる場合は、エポキシ基/カルボキシル基等のモル当量比を30/70〜70/30とすることが好ましく、40/60〜60/40とすることがさらに好ましく、45/55〜55/45とすることがさらに好ましい。
エポキシ化合物は、単独で添加することも出来るが、固体の場合は予め溶液にして用いると工程(d)の撹拌時間が短縮できるので好ましい。溶液とする場合に用いる溶剤は、特に限定されず、その例は有機溶剤Aと同様であるが、エポキシ化合物を溶解し、工程(d)において充填剤を凝集させないものが好ましい。
添加方法は特に限定されず、一括添加方法、分割添加方法、連続添加方法などが好適に用いられる。また、添加時に、工程(c)に引き続き撹拌を行っていてもよい。
撹拌方法は、特に限定されないが、例えば、工程(c)に引き続き、回転式撹拌機でおこなうことができる。攪拌翼の形状・回転数および混合液の温度も同様の条件でおこなえばよい。
混合液の粘度の10分間における変化率が2%以下、より好ましくは1.0%以下になった時点で工程(d)を終了できる。変化率がより高い時点で終了させた場合、得られたワニスの均質性が低下し、例えばワニスを支持体に塗布し、乾燥して成形物を得た場合、成形物の物性のバラつきが大きくなる。
ワニスの溶液粘度は、用途により範囲は異なるが、例えばワニスを支持体に塗布し、乾燥して成形物を得る場合には0.1〜100Pa・s、さらに好ましくは1〜10Pa・sの範囲が好ましい。
本発明においては、ワニスに硬化促進剤を添加し、含有させることができる。
硬化促進剤は、カルボキシル基等を有する重合体をエポキシ化合物で硬化させる反応を促進させるものである。硬化促進剤としては、第3級アミン化合物や三弗化ホウ素錯化合物等が好適である。中でも、第3級アミン化合物を使用すると、成形物の微細配線に対する積層性、硬化物の絶縁抵抗性、耐熱性、耐薬品性等が向上するので好ましい。
第3級アミン化合物の具体例としては、ベンジルメチルアミン、トリエタノールアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリベンジルアミン、およびジメチルホルムアミド等の鎖状3級アミン化合物;ピラゾール類、ピリジン類、ピラジン類、ピリミジン類、インダゾール類、キノリン類、イソキノリン類、イミダゾール類、およびトリアゾール類などの含窒素ヘテロ環化合物;などが挙げられる。これらの中で、イミダゾール類、特に置換基を有する置換イミダゾール化合物が好ましい。
置換イミダゾール化合物の具体例としては、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、ビス−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−メチル−2−エチルイミダゾール、2−イソプロピルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、および2−ヘプタデシルイミダゾール等のアルキル置換イミダゾール化合物;2−フェニルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−エチルイミダゾール、ベンズイミダゾール、2−エチル−4−メチル−1−(2’−シアノエチル)イミダゾール、2−エチル−4−メチル−1−[2’−(3’’,5’’−ジアミノトリアジニル)エチル]イミダゾール、および1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール等のアリール基やアラルキル基等の環構造を有する炭化水素基で置換されたイミダゾール化合物;等が挙げられる。
これらの中でも、環構造を有する炭化水素基で置換されたイミダゾール化合物が好ましく、特に1−ベンジル−2−フェニルイミダゾールが好ましい。
これらの硬化促進剤は、それぞれ単独で又は二種以上を組み合わせて用いられる。
硬化促進剤の配合量は使用目的に応じて適宜選択されるが、カルボキシル基等を有する重合体100重量部に対して、通常0.001〜30重量部、好ましくは0.01〜10重量部、より好ましくは0.03〜5重部である。
硬化促進剤は単独で添加してもよいし、溶液として添加してもよい。また、(a)〜(d)のどの工程で添加してもよいし、別の工程として添加し、混合してもよい。
本発明において、ワニスには更に必要に応じて、軟質重合体、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、老化防止剤、レベリング剤、帯電防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、染料、顔料、天然油、合成油、ワックス、乳剤、磁性体、誘電特性調整剤、および靭性剤等の任意成分を添加し、混合することが出来る。これら任意成分の配合量は、本発明の目的を損なわない範囲で適宜選択される。
これら任意成分は単独で添加してもよいし、溶液またはスラリーとして添加してもよい。また、(a)〜(d)のどの工程で添加してもよいし、別の工程として添加し、混合してもよい。
本発明において、ワニスを製造後又は使用時に、異物や凝集物を除去するために、金属フィルター、メンブランフィルター等で濾過することが好ましい。メンブランフィルターとしては、例えば、日本ポール社製のプリーツタイプ(ウルチプリーツ・プロファイル)、デプスタイプ(プロファイル)、セミデプスタイプ(プロファイルスター)等が好ましい。
本発明の成形物は、上記ワニスを支持体に塗布し、乾燥することにより得られる。支持体としては、樹脂フィルムや金属箔などが挙げられる。樹脂フィルムとしては、通常、熱可塑性樹脂フィルムが用いられ、具体的には、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリアリレートフィルム、およびナイロンフィルム;などが挙げられる。これら樹脂フィルムのうち、耐熱性や耐薬品性、積層後の剥離性などの観点からポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルムが好ましい。金属箔としては、例えば、銅箔、アルミ箔、ニッケル箔、クロム箔、金箔、および銀箔;などが挙げられる。導電性が良好である点から、銅箔、特に電解銅箔や圧延銅箔が好適である。支持体の厚さは特に制限されないが、作業性等の観点から、通常1μm〜200μm、好ましくは2μm〜100μm、より好ましくは3〜50μmである。
塗布方法としては、ディップコート、ロールコート、カーテンコート、ダイコート、およびスリットコート;などの方法が挙げられる。
乾燥方法は、特に限定されないが、成形物の用途により適宜選択され、熱風乾燥炉、遠赤外炉、真空乾燥炉;などを用いる方法が挙げられる。乾燥は、溶剤を除去するために行われ、例えば、熱風乾燥炉を用いた場合の乾燥温度は、通常20〜300℃、好ましくは30〜200℃、より好ましくは70〜140℃であり、乾燥時間は、通常30秒〜1時間、好ましくは1分〜30分である。乾燥温度が高すぎる、および、乾燥時間が長すぎると、溶剤の除去だけではなく、一部硬化が起こるため、硬化させる前に積層を行う用途などでは好ましくない。
上記成形物は、フィルム状またはシート状であることが好ましい。その厚みは、通常0.1〜150μm、好ましくは0.5〜100μm、より好ましくは1.0〜80μmである。なお、フィルム状またはシート状の成形物を単独で得たい場合には、上記の方法により支持体上にフィルム状またはシート状の成形物を形成した後、支持体から剥離する。このフィルム状またはシート状の成形物は、導体層を有する基板同士の接合にも用いることができる。このほか、本発明で得られたワニスを有機合成繊維やガラス繊維などの繊維基材に含浸させてプリプレグを形成することもできる。
本発明の硬化物は、上記本発明の成形物を硬化してなる。成形物の硬化は、通常、成形物を加熱することによりおこなう。硬化条件は成形物の組成に応じて適宜選択される。硬化温度は、通常30〜400℃、好ましくは70〜300℃、より好ましくは100〜200℃である。硬化時間は、0.1〜5時間、好ましくは0.5〜3時間である。加熱の方法は特に制限されず、例えば熱風乾燥炉を用いておこなえばよい。
本発明の積層体は、表面に導体層を有する基板(以下、内層基板という)と前記本発明の硬化物からなる電気絶縁層とを積層してなる。内層基板は、電気絶縁性基板の表面に導体層を有するものである。電気絶縁性基板は、公知の電気絶縁材料を含有する硬化性樹脂組成物を硬化して形成されたものを用いることができる。該電気絶縁材料としては、例えば、脂環式オレフィン重合体、エポキシ樹脂、マレイミド樹脂、アクリル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、トリアジン樹脂、ポリフェニルエーテル、およびガラス等が挙げられる。また、上記本発明の硬化物も用いることができる。これらはさらにガラス繊維、樹脂繊維などを含有させて強度を向上させたものであってもよい。
導体層は、特に限定されないが、通常、導電性金属等の導電体により形成された配線を含む層であって、更に各種の回路を含んでいてもよい。配線や回路の構成、厚み等は、特に限定されない。内層基板の具体例としては、プリント配線基板、およびシリコンウエハー基板等を挙げることができる。内層基板の厚みは、通常、20μm〜2mm、好ましくは30μm〜1.5mm、より好ましくは50μm〜1mmである。
内層基板は、導体層表面に前処理が施されていることが好ましい。前処理の方法としては、公知の技術が特に限定されず使用できる。例えば、導体層が銅からなるものであれば、強アルカリ酸化性溶液を導体層表面に接触させて、導体表面に酸化銅の層を形成して粗化する酸化処理方法、導体層表面を先の方法で酸化した後に水素化ホウ素ナトリウム、ホルマリンなどで還元する方法、導体層にめっきを析出させて粗化する方法、導体層に有機酸を接触させて銅の粒界を溶出して粗化する方法、および導体層にチオール化合物やシラン化合物などによりプライマー層を形成する方法;などが挙げられる。これらの内、微細な配線パターンの形状維持の容易性の観点から、導体層に有機酸を接触させて銅の粒界を溶出して粗化する方法、および、チオール化合物やシラン化合物などによりプライマー層を形成する方法が好ましい。このような導体層表面の前処理により、電気絶縁層との密着性を向上させることができる。
本発明の積層体を得る方法としては、(i)内層基板上に、本発明のフィルム状又はシート状の成形物を積層し、次いで加熱圧着等により密着させ、更に硬化させる方法、および、(ii)本発明で得られたワニスを、内層基板に塗布した後、乾燥して上記本発明の成形物を得、次いで硬化させる方法、が挙げられる。得られる硬化物の平滑性が高く、多層形成が容易な点から、(i)の方法が好ましい。
(i)の方法において、加熱圧着の方法の具体例としては、フィルム状又はシート状の成形物を、内層基板の導体層に接するように重ね合わせ、加圧ラミネータ、プレス、真空ラミネータ、真空プレス、およびロールラミネータ;などの加圧機を使用して加圧と同時に加熱して圧着(ラミネーション)し、導体層上に硬化物を形成する方法が挙げられる。加熱加圧することにより、内層基板表面の導体層と硬化物との界面に空隙が実質的に存在しないように接合させることができる。成形物として支持体付きのものを用いる場合は、通常は支持体を剥がしてから硬化をおこなうが、支持体を剥がさずにそのまま加熱圧着および硬化を行ってもよい。特に、前記支持体として金属箔を用いた場合は、得られる硬化物と金属箔との密着性も向上するので、該金属箔をそのまま後述する多層プリント配線板の導体層として用いることができる。
加熱圧着操作の温度は、通常30〜250℃、好ましくは70〜200℃である。加える圧力は、通常10kPa〜20MPa、好ましくは100kPa〜10MPaである。加熱圧着の時間は、通常30秒〜5時間、好ましくは1分〜3時間である。また、加熱圧着は、配線パターンの埋め込み性を向上させ、気泡の発生を抑えるために減圧下でおこなうのが好ましい。加熱圧着をおこなう雰囲気の圧力は、通常100kPa〜1Pa、好ましくは40kPa〜10Paである。
加熱圧着される成形物の硬化を行い、硬化物を形成して本発明の積層体が製造される。硬化は、通常、導体層上に成形物が積層された基板全体を加熱することによりおこなう。硬化は、前記加熱圧着操作と同時におこなうことができる。また、先ず加熱圧着操作を硬化の起こらない条件、すなわち比較的低温、短時間で行った後、硬化を行ってもよい。硬化物の平坦性を向上させる目的や、硬化物の厚みを増す目的で、内層基板の導体層上に成形物を2以上接して貼り合わせて積層してもよい。
(ii)の方法は、表面に導体層を有する基板上に、ワニスを塗布し、乾燥して該基板上に成形物を形成する工程(I)、および、該成形物を硬化して硬化物を形成する工程(II)を含有する積層体の製造方法である。
工程(I)の条件は、前記成形物を得る方法と同様であり、工程(II)の条件は、前記硬化物を得る方法と同様である。必要な場合には、前記乾燥後にプレス装置などを用いて成形物の表面を平滑化してから硬化させてもよい。
形成される硬化物の厚みは、通常0.1〜200μm、好ましくは1〜150μm、より好ましくは10〜100μmである。
本発明の多層プリント配線板は、上記の積層体を含有する。本発明の積層体は、単層のプリント配線板として用いることもできるが、好適には、前記硬化物上にさらに導体層を形成した多層プリント配線板として使用される。前記積層体の製造において、成形物の支持体として樹脂フィルムを用いた場合は、これを剥離した後に、硬化物上にめっき等により導体層を形成して本発明の多層プリント配線板を製造できる。また、成形物の支持体として金属箔を用いた場合は、公知のエッチング法により該金属箔をパターン状にエッチングして導体層を形成することができる。
本発明の多層プリント配線板における層間の絶縁抵抗は、JIS C5012に規定される測定法に基づき、好ましくは10Ω以上である。また、直流電圧10Vを印加した状態で、温度130℃、湿度85%の条件下に100時間放置した後の層間の絶縁抵抗が、10Ω以上であることがより好ましい。
めっきにより導体層を形成する方法の具体例としては、まず、硬化物にビアホール形成用の開口を形成し、次いで、この硬化物表面とビアホール形成用開口の内壁面に無電解めっき法などにより金属薄膜を形成した後、金属薄膜上にめっきレジストを形成させ、更にその上に電解めっき法等によりめっき膜を形成する。次いで、このめっきレジストを除去した後、エッチングにより金属薄膜と電解めっき膜からなる第二の導体層を形成することができる。硬化物と第二の導体層との密着力を高めるために、硬化物の表面を過マンガン酸やクロム酸等の液と接触させ、あるいはプラズマ処理等を施すことができる。
前記ビアホール形成用の開口を形成させる方法に格別な制限はなく、例えば、ドリル、レーザー、およびプラズマエッチング等の物理的処理;等によっておこなう。硬化物の特性を低下させず、より微細なビアホールを形成することができるという観点から、炭酸ガスレーザー、エキシマレーザー、およびUV-YAGレーザー等のレーザーによる方法が好ましい。
このようにして得られた多層プリント配線板を新たな積層体として用いて、上述の硬化物形成と導体層形成の工程を繰り返すことにより、更なる多層化をおこなうことができ、これにより所望の多層プリント配線板を得ることができる。また、上記プリント配線板において、導体層の一部は、金属電源層や金属グラウンド層、金属シールド層になっていてもよい。
以下、実施例および比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例および比較例における部および%は、特に断りのない限り重量基準である。
実施例および比較例における各特性は、下記の方法に従い測定した。
(1)重合体の分子量(重量平均分子量Mwおよび数平均分子量Mn)
重合体の、数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により測定し、ポリスチレン換算値として求めた。展開溶剤としては、無水マレイン酸残基を有しない重合体の分子量測定にはトルエンを使用し、無水マレイン酸残基を含有する重合体の分子量測定にはテトラヒドロフランを使用した。
(2)重合体の水素化率
水素化率は、水素添加前の重合体中の不飽和結合のモル数に対する水素添加された不飽和結合のモル数の比率をいい、H−NMRスペクトルにより測定した。
(3)重合体の無水マレイン酸残基含有率
重合体中の総単量体単位数に対する無水マレイン酸残基のモル数の割合をいい、H−NMRスペクトルにより測定した。また、求めた無水マレイン酸残基含有率、および単量体と無水マレイン酸の分子量より、重合体のカルボキシル基等の含有量(重合体1g当たりの無水マレイン酸残基のモル数)を求めた。
(4)重合体のガラス転移温度(Tg)
示差走査熱量法(DSC法)により昇温速度=5℃/分で測定した。
(5)溶剤の含水率
カールフィッシャー法(電位法)で測定した。装置は、三菱化成株式会社製「MoistureMeter CA−06」を用い、試薬は、三菱化学株式会社製「アクアミクロンAX」、および「アクアミクロンCXU」を用いた。
(6)充填剤の平均粒子径
充填剤の粒径は、分散媒としてシクロペンタノンを用い、株式会社島津製作所製光散乱方式粒度分布測定器「SALD2000」で、体積平均粒子径を測定した。
(7)粘度
工程(c)および工程(d)において撹拌容器上部から、シリンジを用いて、混合液1.2mlを採取し、BROOKFIELD社製E型粘度計「DV−II+ PRO Digital Viscometer」により測定した。スピンドルはNo.51を用いた。測定値は、回転数2.5rpm、25℃の条件下で4分後の値とした。
(8)ワニスの保存安定性
ワニス500gを内径80mmの円筒状のガラス瓶に採取し、室温で1時間静置後、底部を目視で確認した。底部に沈降した凝集粒子が観察されないものを○、凝集粒子が観察されたものを×とした。
(9)濾過後のワニスに含まれる充填剤量
ワニスを、フィルターとしてポール社製「ウルチプリーツ・プロファイルPUY01UY200J」を用いて、1kg/分の速度でろ過した。得られたワニスを酸素で置換した完全密閉系のフラスコ内で完全燃焼させた。得られた分解成分を濃塩酸で溶解し、さらに純水にて定容した。得られた液をフレームレス原子吸光装置にて、検量線法により元素濃度を求め、ワニス中の三酸化アンチモン量(重量%)を算出した。また、ワニスを白金ルツボに秤量し、熱板上でゆっくり炭化し、次いでバーナーで灰化した。得られた灰分の重量を測定した後、灰分にフッ酸を添加してシリカを分解した。これを電気炉にて400℃で充分乾燥し、重量差からワニス中のシリカ量(重量%)を算出した。
(10)塗膜の外観評価
ワニスを、フィルターとしてポール社製「ウルチプリーツ・プロファイルPUY01UY200J」を用いて、1kg/分の速度でろ過した。次いで、ポリエチレンナフタレートフィルム(厚さ75μm、帝人デュポンフィルム株式会社製「テオネックスQ51」)上に、ドクターブレード(ブレード深さ200μm、テスター産業株式会社製)にて250mm幅で塗工し、60℃の窒素雰囲気下で10分乾燥し、塗膜サンプルを作製した。塗膜をスケール付き顕微鏡にて観察し、短径が20μm以上の凹状欠陥の個数を求めた。欠陥の個数を100,000mm中の個数に換算し、0個のものを○、1個〜9個のものを△、10個以上のものを×と評価した。
(11)導体層の密着性
導体層と硬化物との間の引き剥がし強さをJIS C6481に準拠して測定した。
(12)電気特性
幅2.6mm、長さ80mm、厚み40μmの硬化したシート状の電気絶縁性フィルムを作製し、空洞共振器摂動法誘電率測定装置を用いて10GHzにおける比誘電率の測定を行った。
実施例および比較例におけて使用した無水マレイン酸残基含有重合体は以下の製造例により作製した。
<無水マレイン酸残基含有重合体の製造例>
8−エチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エンを開環重合し、次いで水素添加反応を行い、数平均分子量(Mn)=31,200、重量平均分子量(Mw)=55,800、Tg=140℃の水素化重合体を得た。得られた水素化重合体の水素化率は99%以上であった。
この水素化重合体100部および無水マレイン酸28.5部をシクロヘキサン233部に溶解した。135℃に昇温した後、ジクミルパーオキシド8部をシクロヘキサノン149部に溶解した溶液を2時間で滴下し、さらにその温度で3時間反応を行った。得られた反応生成物溶液をシクロヘキサノン42部、トルエン362部で希釈した後、2768部のイソプロピルアルコール中に注ぎ、反応生成物を凝固させ、得られた固形分を100℃で20時間真空乾燥して、マレイン酸変性水素化重合体を得た。このマレイン酸変性水素化重合体の分子量は、Mn=29,000、Mw=76,000で、Tgは170℃であった。マレイン酸基含有率は29モル%(1.33mmol/g)であった。
(実施例1)
<工程(a)>
ステンレス容器にシクロペンタノン(日本ゼオン株式会社製)1890gと工業用キシレン810gを入れ、混合し、モレキュラーシーブス5A(ユニオン昭和株式会社製)200gを入れて、1日室温で放置し、脱水溶剤を調製した。測定の結果、含水率は0.01%であった。
パドル翼型撹拌機を備えたステンレス容器に無水マレイン酸残基含有重合体1184g、および上記溶剤2016gを入れ、室温で12時間、回転数200rpmで攪拌を行い、重合体溶液を調製した。得られた重合体溶液の粘度は粘度17.3Pa・sであった。
<工程(b)>
株式会社アドマテックス製シリカ「アドマファインシリカSO―E5」(平均粒径1.6μm)100部、シクロペンタノン40.9部、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン2部、および、直径0.3mmのジルコニアビーズ122部をジルコニア製ポットに充填し、フリッチュ社製遊星型ボールミル「P−2」を用いて遠心加速度5G(ディスク回転数(公転速度)200rpm、ポット回転数(自転速度)434rpm)にて5分間攪拌し、均一に分散したシリカスラリー(粘度0.013Pa・s)を調製した。
日本精鉱株式会社製三酸化アンチモン「PATOX−CF(平均粒径1.0μm)」100部、シクロペンタノン98部、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン2部、および、直径0.3mmのジルコニアビーズ171部をジルコニア製ポットに充填し、フリッチュ社製遊星型ボールミル「P−2」を用いて遠心加速度5G(ディスク回転数(公転速度)200rpm、ポット回転数(自転速度)434rpm)にて5分間攪拌し、均一に分散した三酸化アンチモンスラリー(粘度0.005Pa・s)を調製した。
<工程(c)>
前記工程(a)で調製した重合体溶液に、前記工程(b)で調製したシリカスラリー510g、および三酸化アンチモンスラリー360gを添加して、室温で、回転数300rpmで撹拌を行った。撹拌開始後5分後より、5分おきに粘度測定を行った。撹拌開始60分後に粘度変化が2%以下になった。工程(c)における粘度の変化を表1に示す。
Figure 2008001871
<工程(d)>
別のステンレス容器にジャパンエポキシレジン株式会社製フェノールノボラック型エポキシ樹脂「エピコート152」を120g(粘度68Pa・s)、および大日本インキ化学工業株式会社製臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂「EPICRON152」360gを、キシレン288g、およびシクロペンタノンを72gに溶解したものを(粘度0.0017Pa・s)混合して、エポキシ化合物溶液を調製した。
前記工程(c)で調製した混合液に、前記エポキシ化合物溶液を添加し、室温で、回転数300rpmで撹拌を行った。撹拌開始後5分後より、5分おきに粘度測定を行った。撹拌開始65分後に粘度変化が2%以下になった。工程(d)における粘度の変化を表2に示す。
Figure 2008001871
<ワニスの評価>
得られたワニスについて、保存安定性、および濾過後の充填剤量を評価した結果を表3に示す。
(実施例2)
充填剤スラリーとして、三酸化アンチモンスラリーのみを用いたことの外は、実施例1と同様にして、ワニスを得た。得られたワニスについて保存安定性、および濾過後の充填剤量を評価した結果を表3に示す。
Figure 2008001871
(比較例1)
シリカスラリーと三酸化アンチモンスラリーと同時にエポキシ化合物溶液を添加したことの外は、実施例1と同様にして、ワニスを得た。得られたワニスについて保存安定性、および濾過後の充填剤量を評価した結果を表3に示す。
(比較例2)
工程(c)において撹拌開始30分後、粘度変化率が4%の時点で工程(d)に移行したこと、および工程(d)において撹拌開始35分後、粘度変化が5%の時点で撹拌を終了したことの外は、実施例1と同様にして、ワニスを得た。得られたワニスについて保存安定性、および濾過後の充填剤量を評価した結果を表3に示す。
(比較例3)
工程(c)において撹拌開始15分後、粘度変化率が5%の時点で工程(d)に移行したことの外は、実施例1と同様にして、ワニスを得た。得られたワニスについて保存安定性、および濾過後の充填剤量を評価した結果を表3に示す。
(実施例3)
工程(a)を実施した後、重合体溶液を室温にて密閉して14日間保存した後に工程(b)〜(d)を実施した外は、実施例1と同様にして、ワニスを得た。14日後の重合体溶液の粘度は22.9Pa・sであった。得られたワニスについて塗膜の外観評価を行った結果を表4に示す。
Figure 2008001871
(実施例4)
モレキュラーシーブスによる脱水処理を行わない外は、実施例3と同様にして、ワニスを得た。工程(a)で用いた混合溶剤の含水率は0.33%であった。14日後の重合体溶液の粘度は31.3Pa・sであった。得られたワニスについて塗膜の外観評価を行った結果を表4に示す。
(実施例5)
実施例1と同様にして得られたワニスを、フィルターとしてポール社製「ウルチプリーツ・プロファイルPUY01UY200J」を用いて、1kg/分の速度でろ過した。ろ過したワニスをダイコーターを用いて、300mm×300mmで厚さが50μmのポリエチレンナフタレートフィルム(厚さ75μm、帝人デュポンフィルム株式会社製「テオネックスQ51」、支持体フィルム)に塗工し、窒素雰囲気下オーブン中60℃で10分間乾燥し、支持体付きフィルム状成形物を得た。該フィルム状成形物の厚みは40μmであった。
厚さ1.6mmの両面銅張り積層板(CCL−HL830、三菱ガス化学株式会社製、ガラスフィラー及びエポキシ樹脂を含有するワニスをガラスクロスに含浸させて得られたコア基板の両面に厚み18μmの銅箔が貼られたもの)を用意して、この両面銅張り基板を5%硫酸水溶液に25℃で1分間浸漬した後に純水で洗浄して内層基板(本発明でいう「表面に導体層を有する基板」に該当する。)を得た。次いで、2,4,6−トリメルカプト−s−トリアジンの0.1%イソプロピルアルコール溶液を調製し、この溶液に前述のコア基板を25℃で1分間浸漬した後、90℃で15分間、窒素置換されたオーブン中で乾燥させて内層基板上にプライマー層を形成させた。
次いで、先に得た支持体付きのフィルム状成形物を、樹脂成形体面が内側となるようにして内層基板に重ね合わせた。これを、耐熱ゴム製プレス板を上下に備えた真空積層装置を用いて、200Paに減圧して、温度110℃、圧力1.0MPaで60秒間加熱圧着した(一次プレス)。次いで、金属製プレス板で覆われた耐熱ゴム製プレス板を上下に備えた真空積層装置を用いて、200Paに減圧して、温度140℃、圧力1.0MPaで60秒間加熱圧着した(二次プレス)。この後、ポリエチレンナフタレートフィルムのみを剥がして、表面に樹脂成形体層を有する内層基板を得た。
次いで、この表面に樹脂成形体層を有する内層基板を、1−(2−アミノエチル)−2−メチルイミダゾールの1.0%水溶液に30℃で10分間浸漬し、次いで25℃の水に1分間浸漬した後、エアーナイフにより余分な溶液を除去した。これを窒素オーブン中に60℃で30分間、170℃で60分間放置して樹脂成形体層を乾燥・硬化して、基板上に硬化物を形成し積層体を得た。
この積層体を、DS250A及びDS150B(いずれも荏原ユージライト社製)の濃度が、それぞれ、60g/リットル及び70ml/リットルになるように調製した過マンガン酸処理浴に、80℃で15分間浸漬し、更に45℃の湯煎浴で1分間湯煎した。次いで、ビアホール形成積層体を水槽中に1分間浸漬し、更に別の水槽中に1分間浸漬することにより水洗を行った。続いてDS350(荏原ユージライト社製)及び硫酸の濃度が、いずれも50ml/リットルになるように調製した中和還元浴に、基板を45℃で5分間浸漬し、中和還元処理をした。
中和還元処理後、上述と同様に水洗を行ったビアホール形成積層体をPC65H及びSS400(いずれも荏原ユージライト社製)の濃度が、それぞれ、250ml/リットル及び0.8ml/リットルになるように調製した触媒浴に50℃で5分間浸漬した。次いで、上述と同じ方法で積層体を水洗した後、PCBA及びPC66H(いずれも荏原ユージライト製)の濃度が、それぞれ、14g/リットル及び10ml/リットルになるように調製した触媒活性化浴に、35℃で5分間浸漬し、めっき触媒を還元処理した。
このようにして得られた積層体を、PB556MU、PB556A、PB566B及びPB566C(いずれも荏原ユージライト社製)の濃度が、それぞれ、20ml/リットル、60ml/リットル、60ml/リットル及び60ml/リットルになるように調製した無電解銅めっき浴に空気を吹き込みながら、35℃で4.5分間浸漬して無電解めっき処理を行った。
無電解めっき処理により金属薄膜層が形成された積層体を、更に上述と同様に水洗した。次いで、電解銅めっきを施して厚さ18μmの電解銅めっき膜を形成(厚付けめっき)させた。次いで、得られた積層体を170℃で30分間加熱処理することにより、多層基板を得た。
この多層回板について、密着性を評価したところ、引き剥がし強度が平均6N/cmを超え、4N/cm未満の領域が4mm以上発生せず、良好な結果であった。
また、上記多層回路基板Aの製造とは別に、支持体付きのフィルム状成形体A1を75μmの圧延銅箔の片面に積層し、上記と同様の条件下に硬化した。次いで塩化第二銅/塩酸混合溶液により圧延銅箔を全てエッチング除去処理することにより電気特性評価用のシート状の電気絶縁フィルムを得た。この電気絶縁性フィルムを用いて電気特性を評価したところ、比誘電率が2.8未満であり、良好な結果であった。
本発明の製造方法によれば、保存安定性の良好なワニスが提供される(実施例1および2)のに対し、製造条件が異なる製造方法ではワニスの保存安定性が悪く、充填剤が凝集沈降する(比較例1〜3)。
また、工程(a)に用いる溶剤の含水率が低いと重合体溶液を室温で14日間保存しても外観良好な塗膜が得られる(実施例3および4)。さらに、本発明の製造方法を用いて得たワニスは、良好な硬化物を有する積層体の製造に用いられる(実施例5)。

Claims (12)

  1. カルボキシル基または酸無水物基を有する重合体、充填剤、エポキシ化合物、有機溶剤Aおよび有機溶剤Bを含むワニスの製造方法であって、次の工程(a)〜(d)を含むことを特徴とするワニスの製造方法:
    (a)前記重合体を前記有機溶剤Aに溶解し、重合体溶液を調製する工程;
    (b)前記充填剤を前記有機溶剤B中に分散し、充填剤スラリーを調製する工程;
    (c)前記重合体溶液に、前記充填剤スラリーを添加し、次いで、本工程における混合液の(式1)で表される粘度の10分間の変化率が2%以下になるまで撹拌する工程;および
    (d)工程(c)で得た混合液に、エポキシ化合物を添加し、次いで、本工程における混合液の(式1)で表される粘度の10分間の変化率が2%以下になるまで撹拌する工程。
    (ここで、(式1)変化率(%)=|η1−η2|/η2×100であり、
    η1は工程中にサンプリングした混合液の25℃における粘度を、
    η2は前記サンプリングから10分前にサンプリングした混合液の25℃における粘度を表す。)
  2. 前記充填剤が無機充填剤である請求項1記載の製造方法。
  3. 前記重合体が脂環式オレフィン重合体である請求項1または2に記載の製造方法。
  4. 前記有機溶剤Aの含水率が0.05重量%以下である請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法で得られるワニスを支持体に塗布し、乾燥してなる成形物。
  6. フィルム状またはシート状である請求項5記載の成形物。
  7. 導体層を有する基板同士の接合に用いられるものである、請求項5または6に記載の成形物。
  8. 請求項5〜7のいずれかに記載の成形物を硬化してなる硬化物。
  9. 表面に導体層を有する基板と、請求項8に記載の硬化物とを積層してなる積層体。
  10. 表面に導体層を有する基板上に、請求項5〜7のいずれかに記載の成形物を加熱圧着し、この成形物を硬化して前記基板上に硬化物を形成することを特徴とする、請求項9に記載の積層体の製造方法。
  11. 表面に導体層を有する基板上に、請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法で得られたワニスを塗布し、乾燥して該基板上に成形物を形成する工程(I)、および該成形物を硬化して硬化物を形成する工程(II)を含有する、請求項9に記載の積層体の製造方法。
  12. 請求項9に記載の積層体を有する多層プリント配線板。
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