(多層硬化性樹脂フィルム)
本発明の多層硬化性樹脂フィルムは、エポキシ化合物(A)、活性エステル化合物(B)及び無機充填剤(C)を含む第1硬化性樹脂組成物からなる第1樹脂層と、少なくとも脂環式オレフィン重合体を含む第2硬化性樹脂組成物からなる第2樹脂層と、を備える。
まず、第1樹脂層を形成するための第1硬化性樹脂組成物について説明する。
(第1硬化性樹脂組成物)
第1硬化性樹脂組成物は、エポキシ化合物(A)、活性エステル化合物(B)及び無機充填剤(C)を含有し、前記エポキシ化合物(A)が、ノボラック型エポキシ化合物(A1)を25重量%以上の含有割合で含み、前記無機充填剤(C)が、シリカ(C1)及び層状無機充填剤(C2)を含み、かつ、前記無機充填剤(C)中の前記層状無機充填剤(C2)の含有割合が0.3〜3重量%である樹脂組成物である。なお、第1硬化性樹脂組成物により形成される第1樹脂層は、特に限定されないが、導体層と接着させるための接着層として好適に用いられる。
本発明で用いるエポキシ化合物(A)は、ノボラック型エポキシ化合物(A1)を25重量%以上の含有割合で含むものである。エポキシ化合物(A)を構成するノボラック型エポキシ化合物(A1)としては、特に限定されないが、典型的には、フェノール類と、アルデヒド類又はケトン類とを酸性触媒(例えば、シュウ酸)の存在下で反応させることにより得られるエポキシ化合物であり、例えば、フェノールノボラック型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物などが挙げられ、得られる電気絶縁層の耐熱性を向上させることができるという点より、ビフェニル構造及び/又は縮合多環構造を有するものが好ましい。
本発明で用いるノボラック型エポキシ化合物(A1)は、公知の方法に従って適宜製造可能であるが、市販品としても入手可能である。
ビフェニル構造を有するノボラック型エポキシ化合物(A1)の市販品の例としては、ビフェニルアラルキル構造を有するノボラック型エポキシ化合物である、例えば、商品名「NC3000−FH、NC3000−H、NC3000、NC3000−L、NC3100」(以上、日本化薬社製)などが挙げられる。
また、縮合多環構造を有するノボラック型エポキシ化合物(A1)の市販品の例としては、ジシクロペンタジエン構造を有するノボラック型エポキシ化合物である、例えば、商品名「エピクロンHP7200L、エピクロンHP7200、エピクロンHP7200H、エピクロンHP7200HH、エピクロンHP7200HHH」(以上、DIC社製、「エピクロン」は登録商標)、商品名「Tactix556、Tactix756」(以上、ハンツマン・アドバンスト・マテリアル社製、「Tactix」は登録商標)、商品名「XD−1000−1L、XD−1000−2L」(以上、日本化薬社製)や;ナフタレン構造を有するノボラック型エポキシ化合物である、例えば、商品名「エピクロンHP−5000」(DIC社)製、「エピクロン」は登録商標);などが挙げられる。
以上のノボラック型エポキシ化合物(A1)は、それぞれ単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
本発明においては、エポキシ化合物(A)中における、ノボラック型エポキシ化合物(A1)の含有割合は、エポキシ化合物(A)を構成する全化合物100重量%に対して、25重量%以上であり、好ましくは35重量%以上、さらに好ましくは45重量%以上である。ノボラック型エポキシ化合物(A1)の含有割合を上記範囲とすることにより、得られる電気絶縁層の耐熱性を適切に高めることができる。
また、本発明においては、エポキシ化合物(A)を、上述したノボラック型エポキシ化合物(A1)に加えて、その他のエポキシ化合物を含有するものとしてもよい。その他のエポキシ化合物としては、エポキシ基(オキシラン環)を有する化合物であればよく特に限定されないが、3価以上の多価エポキシ化合物や、リン含有エポキシ化合物などが好適に挙げられる。
3価以上の多価エポキシ化合物としては、3価以上の多価フェノール型エポキシ化合物が好ましく、3価以上の多価ヒドロキシフェニルアルカン型エポキシ化合物が特に好ましい。なお、3価以上の多価ヒドロキシフェニルアルカン型エポキシ化合物とは、3以上のヒドロキシフェニル基で置換された脂肪族炭化水素のヒドロキシル基をグリシジル化した構造を有する化合物である。
3価以上の多価エポキシ化合物は、公知の方法に従って適宜製造可能であるが、市販品としても入手可能である。
たとえば、トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ化合物の市販品の例として、商品名「EPPN−503、EPPN−502H、EPPN−501H」(以上、日本化薬社製)、商品名「TACTIX−742」(以上、ダウ・ケミカル社製)、「jER 1032H60」(以上、三菱化学社製)等が挙げられる。また、テトラキスヒドロキシフェニルエタン型エポキシ化合物の市販品の例として、商品名「jER 1031S」(以上、三菱化学社製)等が挙げられる。
また、リン含有エポキシ化合物としては、ホスファフェナントレン構造を有するエポキシ化合物を好適に挙げることができる。ホスファフェナントレン構造を有するエポキシ化合物としては、例えば、ホスファフェナントレン構造を有するビフェニル型エポキシ化合物、ホスファフェナントレン構造を有するビスフェノール型エポキシ化合物、ホスファフェナントレン構造を有するフェノール系ノボラック型エポキシ化合物などが挙げられる。
ホスファフェナントレン構造を有するビフェニル型エポキシ化合物としては、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド又はその誘導体を用いてビフェニル型エポキシ樹脂を公知の方法で変性することにより得られる、各種のホスファフェナントレン構造を有するビフェニル型エポキシ化合物などが挙げられる。このような化合物の例として、特に限定されないが、テトラメチルビフェニル構造を有するエポキシ化合物である三菱化学社製のYX−4000を、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシドを用いて変性して得られるエポキシ化合物などが挙げられる。
また、ホスファフェナントレン構造を有するビスフェノール型エポキシ化合物としては、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド又はその誘導体を用いて、ビスフェノールA型エポキシ樹脂やビスフェノールF型エポキシ樹脂などのビスフェノール型エポキシ樹脂を公知の方法で変性することにより得られる各種のホスファフェナントレン構造を有するビスフェノール型エポキシ化合物などが挙げられる。このような化合物の例として、特に限定されないが、新日鉄住金化学社製のFX305EK70が挙げられる。
さらに、ホスファフェナントレン構造を有するフェノール系ノボラック型エポキシ化合物としては、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド又はその誘導体を用いて、フェノール系ノボラック型エポキシ樹脂を公知の方法で変性することにより得られる各種のホスファフェナントレン構造を有するフェノール系ノボラック型エポキシ化合物などが挙げられる。このような化合物の例として、特に限定されないが、例えば、新日鉄住金化学社製のFX289BEK75が挙げられる。
なお、その他のエポキシ化合物としては、3価以上の多価エポキシ化合物や、リン含有エポキシ化合物の他に、あるいは、これに加えて、脂環式エポキシ化合物、トリスフェノール型エポキシ化合物、テトラキス(ヒドロキシフェニル)エタン型エポキシ化合物、脂肪族鎖状エポキシ化合物などを用いてもよく、これらは適宜市販品として入手可能である。
本発明で用いる活性エステル化合物(B)としては、活性エステル基を有するものであればよいが、本発明においては、分子内に少なくとも2つの活性エステル基を有する化合物が好ましい。活性エステル化合物(B)は、加熱によりエステル部位とエポキシ基が反応することで、本発明で用いるエポキシ化合物(A)を硬化させるためのエポキシ硬化剤として作用する。
活性エステル化合物(B)としては、得られる電気絶縁層の耐熱性を高めるなどの観点から、カルボン酸化合物及び/又はチオカルボン酸化合物と、ヒドロキシ化合物及び/又はチオール化合物とを反応させたものから得られる活性エステル化合物が好ましく、カルボン酸化合物と、フェノール化合物、ナフトール化合物及びチオール化合物からなる群から選択される1種又は2種以上とを反応させたものから得られる活性エステル化合物がより好ましく、カルボン酸化合物とフェノール性水酸基を有する芳香族化合物とを反応させたものから得られ、かつ、分子内に少なくとも2つの活性エステル基を有する芳香族化合物が特に好ましい。活性エステル化合物(B)は、直鎖状又は多分岐状であってもよく、活性エステル化合物(B)が、少なくとも2つのカルボン酸を分子内に有する化合物に由来する場合を例示すると、このような少なくとも2つのカルボン酸を分子内に有する化合物が、脂肪族鎖を含む場合には、エポキシ化合物との相溶性を高くすることができ、また、芳香族環を有する場合には、耐熱性を高くすることができる。
活性エステル化合物(B)を形成するためのカルボン酸化合物の具体例としては、安息香酸、酢酸、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸等が挙げられる。これらのなかでも、得られる電気絶縁層の耐熱性を高める観点より、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸が好ましく、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸がより好ましく、イソフタル酸、テレフタル酸がさらに好ましい。
活性エステル化合物(B)を形成するためのチオカルボン酸化合物の具体例としては、チオ酢酸、チオ安息香酸等が挙げられる。
活性エステル化合物(B)を形成するためのヒドロキシ化合物の具体例としては、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールフタリン、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、カテコール、α−ナフトール、β−ナフトール、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエニルジフェノール、フェノールノボラック等が挙げられる。中でも、活性エステル化合物(B)の溶解性を向上させると共に、得られる電気絶縁層の耐熱性を高める観点から、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、ジシクロペンタジエニルジフェノール、フェノールノボラックが好ましく、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、ジシクロペンタジエニルジフェノール、フェノールノボラックがより好ましく、ジシクロペンタジエニルジフェノール、フェノールノボラックがさらに好ましい。
活性エステル化合物(B)を形成するためのチオール化合物の具体例としては、ベンゼンジチオール、トリアジンジチオール等が挙げられる。
活性エステル化合物(B)の製造方法は特に限定されず、公知の方法により製造することができる。例えば、前記したカルボン酸化合物及び/又はチオカルボン酸化合物とヒドロキシ化合物及び/又はチオール化合物との縮合反応によって得ることができる。
本発明においては、活性エステル化合物(B)として、例えば、特開2002−12650号公報に開示されている活性エステル基を持つ芳香族化合物及び特開2004−277460号公報に開示されている多官能性ポリエステルや、市販品を用いることができる。市販品としては、例えば、商品名「EXB9451、EXB9460、EXB9460S、エピクロン HPC−8000−65T」(以上、DIC社製、「エピクロン」は登録商標)、商品名「DC808」(ジャパンエポキシレジン社製)、商品名「YLH1026」(ジャパンエポキシレジン社製)などが挙げられる。
本発明で用いる第1硬化性樹脂組成物中における、活性エステル化合物(B)の配合量は、エポキシ化合物(A)100重量部に対して、好ましくは10〜150重量部、より好ましくは15〜130重量部、さらに好ましくは20〜120重量部の範囲である。
また、本発明で用いる第1硬化性樹脂組成物中における、エポキシ化合物(A)と活性エステル化合物(B)との当量比〔エポキシ化合物(A)のエポキシ基の合計数に対する、活性エステル化合物(B)の反応性基の合計数の比率(活性エステル基量/エポキシ基量)〕は、好ましくは0.8〜1.2、より好ましくは0.9〜1.1、さらに好ましくは0.95〜1.05の範囲である。活性エステル化合物(B)の使用量を上記範囲とすることにより、エポキシ化合物(A)を適切に硬化させることができ、これにより得られる電気絶縁層の機械的強度を良好なものとすることができる。
また、本発明で用いる無機充填剤(C)は、シリカ(C1)及び層状無機充填剤(C2)を含有するものである。
シリカ(C1)としては、特に限定されないが、公知の方法によって得られるものを特に制限なく使用することができ、たとえば、乾式シリカ、湿式シリカ、ゾル−ゲル法シリカなどのいずれも用いることができ、また、その形状も特に限定されないが、球状のもの(例えば、アスペクト比が、好ましくは0.8〜1.2の範囲のもの)を好適に用いることができる。
また、本発明で用いるシリカ(C1)としては、シランカップリング剤等で予め表面処理されたものであってもよく、この場合に用いられるシランカップリング剤としては、特に限定されないが、グリシジル基、アミノ基、メルカプト基から選択される少なくとも1つの官能基を有するものであることが好ましく、アミノ基を有するものであることが好ましい。
本発明で用いるシリカ(C1)の平均粒径は、特に限定されないが、レーザー回折散乱式粒度分布計にて測定される体積平均粒子径で、好ましくは0.1〜0.9μmであり、より好ましくは0.3〜0.7μmである。
また、本発明で用いる層状無機充填剤(C2)としては、層状あるいは扁平状のものであればよく特に限定されないが、アスペクト比が10〜100であるものが好ましく、アスペクト比が20〜90であるものがより好ましい。第1硬化性樹脂組成物中に、このような層状無機充填剤(C2)を配合することにより、得られる電気絶縁層の信頼性を向上させることができる。具体的には、層状無機充填剤(C2)を配合することにより、ハローイング(ビアホールを酸性化合物により処理した際に、電気絶縁層の下層に位置する導体層表面のうち、ビアホール周囲の部分が溶解して変色する現象)の発生を有効に防止でき、さらには、高温高湿試験後における導体層との密着性を高めることができる。
本発明で用いる層状無機充填剤(C2)としては、層状あるいは扁平状のものであればよいが、例えば、グラファイト;TiS2、NbSe2、MoS2などの遷移金属ジカルコゲン化物;CrPS4などの二価金属リンカルコゲン化物;MoO3、V2O5などの遷移金属の酸化物;FeOCl、VOCl、CrOClなどのオキシハロゲン化物;Zn(OH)2、Cu(OH)2などの水酸化物;Zr(HPO4)2・nH2O、Ti(HPO4)3・nH2O、Na(UO2PO4)3・nH2Oなどのリン酸塩;Na2Ti3O7、KTiNbO5、RbxMnxTi2−xO4などのチタン酸塩;Na2U2O7、K2U2O7などのウラン酸塩;KV3O8、K3V5O14、CaV6O16・nH2O、Na(UO2V3O9)・nH2Oなどのバナジン酸塩;KNb3O3、K4Nb6O17などのニオブ酸塩;Na2W4O13、Ag4W10O13などのタングステン酸塩;Mg2Mo2O7・Cs2Mo5O16、Cs2Mo7O22、Ag4Mo10O33などのモリブデン酸塩;モンモリロナイト、サポナイト、ハイデライト、ヘクトライト、ノントロナイト、スティブンサイト、トリオクタヘドラルバーミキュライト、ジオクタヘドラルバーミキュライト、マスコバイト、フィロゴバイト、バイオタイト、レピドライト、バラゴナイト、テトラシリシックマイト、カオリナイト、ハロイサイト、ディッカイト、H2SiO5、H2Si14O29・5H2Oなどの、珪酸塩又はこの珪酸塩により構成される鉱物類;などが挙げることができる。これらの中でも、樹脂組成物中における分散性や、電気絶縁層の信頼性の向上効果が高いという点から、珪酸塩が特に好ましい。
本発明で用いる層状無機充填剤(C2)は、層間に存在する陽イオン(Na+、Ca2+、K+、Mg2+)を有機カチオンで置き換えたものであってもよい。有機カチオンとしては、第4級アンモニウム塩、ホスホニウム塩、スルホニウム塩、及びそれらの混合物からなる有機カチオンが挙げられる。
第4級アンモニウム塩としては、ベンジルトリメチルアンモニウム、ベンジルトリエチルアンモニウム、ベンジルトリブチルアンモニウム、ベンジルジメチルドデシルアンモニウム、ベンジルジメチルオクタデシルアンモニウム、ベンサルコニウムなどのベンジルトリアルキルアンモニウムイオンやトリメチルオクチルアンモニウム、トリメチルドデシルアンモニウム、トリメチルオクタデシルアンモニウムなどのアルキルトリメチルアンモニウムイオン、さらにジメチルジオクチルアンモニウム、ジメチルジドデシルアンモニウム、ジメチルジオクタデシルアンモニウムなどのジメチルジアルキルアンモニウムイオン、さらにトリオクチルメチルアンモニウム、トリドデシルメチルアンモニウムなどのトリアルキルメチルアンモニウムイオン、ベンゼン環を2個有するベンゼトニウムイオンが挙げられる。
本発明で用いる層状無機充填剤(C2)は、その表面をシランカップリング剤で処理して用いてもよい。本発明に使用できるシランカップリング剤としては、一般式
〔YSiX3〕
で表される化合物が好ましい。式中、Yは炭素数が1から25の炭化水素基を表す。炭素数1から25の炭化水素基は、さらに有機官能基で置換されていてもよい。かかる有機官能基としては、例えば、ビニル基、クロル基、アミノ基、アミド基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、メルカプト基、エポキシ基、ニトロ基、ニトロソ基、ニトリル基、メタクリロキシ基等が挙げられる。なかでも、第1硬化性樹脂組成物中における分散性向上の観点から、フェニル基を有するシランカップリング剤が好ましい。
本発明で用いる無機充填剤(C)中における、層状無機充填剤(C2)の含有割合は、無機充填剤(C)を構成する各成分の全量100重量%に対し、0.3〜3重量%であり、好ましくは0.5〜2.8重量%、より好ましくは0.7〜2.6重量%である。層状無機充填剤(C2)の含有割合が少なすぎると、その添加効果、すなわち、得られる電気絶縁層の信頼性の向上効果が得難くなり、一方、多すぎると、第1硬化性樹脂組成物の流動性が低下し、配線埋め込み性が悪化してしまう。
本発明で用いる無機充填剤(C)は、シリカ(C1)及び層状無機充填剤(C2)以外の球状または不定形の無機充填剤(C3)を含有していてもよい。かかる無機充填剤(C3)としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸ジルコニウム、水和アルミナ、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、硫酸バリウムなどが挙げられる。
本発明で用いる第1硬化性樹脂組成物中における、無機充填剤(C)の含有量は、特に限定されるものではないが、固形分換算で、好ましくは30〜90重量%であり、より好ましくは40〜80重量%、さらに好ましくは45〜75重量%である。
また、本発明で用いる第1硬化性樹脂組成物には、本発明の効果の発現を阻害しない範囲で、適宜、上記各成分に加えて、以下に記載するような、その他の成分をさらに含有させてもよい。
すなわち、本発明で用いる第1硬化性樹脂組成物には、極性基を有する脂環式オレフィン重合体を配合することができる。極性基を有する脂環式オレフィン重合体としては、後述する第2硬化性樹脂組成物に用いるものと同様のものを制限なく用いることができる。
また、本発明で用いる第1硬化性樹脂組成物には、所望により、硬化促進剤を含有させてもよい。硬化促進剤としては特に限定されないが、例えば、脂肪族ポリアミン、芳香族ポリアミン、第2級アミン、第3級アミン、酸無水物、イミダゾール誘導体、有機酸ヒドラジド、ジシアンジアミド及びその誘導体、尿素誘導体などが挙げられる。中でも、イミダゾール誘導体が特に好ましい。
イミダゾール誘導体としては、イミダゾール骨格を有する化合物であればよく、特に限定されないが、例えば、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、ビス−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−メチル−2−エチルイミダゾール、2−イソプロピルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾールなどのアルキル置換イミダゾール化合物;2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−エチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、ベンズイミダゾール、2−エチル−4−メチル−1−(2’−シアノエチル)イミダゾールなどのアリール基やアラルキル基などの環構造を含有する炭化水素基で置換されたイミダゾール化合物などが挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
本発明で用いる第1硬化性樹脂組成物中における、硬化促進剤の配合量としては、エポキシ化合物(A)100重量部に対して、通常、0.1〜10重量部、好ましくは0.5〜8重量部である。
さらに、本発明で用いる第1硬化性樹脂組成物には、得られる電気絶縁層の難燃性を向上させる目的で、例えば、ハロゲン系難燃剤やリン酸エステル系難燃剤などの一般の電気絶縁膜形成用の樹脂組成物に配合される難燃剤を適宜配合してもよい。
また、本発明で用いる第1硬化性樹脂組成物には、さらに所望により、難燃助剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、老化防止剤、紫外線吸収剤(レーザー加工性向上剤)、レベリング剤、帯電防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、染料、天然油、合成油、ワックス、乳剤、磁性体、誘電特性調整剤、靭性剤などの公知の成分を適宜配合してもよい。
本発明で用いる第1硬化性樹脂組成物の製造方法としては、特に限定されるものではなく、上述したエポキシ化合物(A)、活性エステル化合物(B)及び前記無機充填剤(C)、並びに必要に応じて用いられるその他の成分を、そのまま混合してもよいし、有機溶剤に溶解もしくは分散させた状態で混合してもよいが、分散性を良好なものとするという点より、有機溶剤に分散させた状態で混合することが好ましく、特に、無機充填剤(C)(シリカ(C1)及び層状無機充填剤(C2))を良好に分散させることができるという点より、圧力式分散機を用いて分散させることが好ましい。圧力式分散機を用いて分散させることにより、無機充填剤(C)の分散性、特に層状無機充填剤(C2)の分散性を高めることができ、得られる電気絶縁層の信頼性の向上効果(ハローイングの防止効果、及び高温高湿試験後の導体層に対する密着性の向上効果)をより高めることができる。なお、圧力式分散機としては、代表的には、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザーなどが挙げられる。
(第2硬化性樹脂組成物)
次いで、本発明の多層硬化性樹脂フィルムの第2樹脂層を形成するための第2硬化性樹脂組成物について説明する。
第2硬化性樹脂組成物は、少なくとも脂環式オレフィン重合体を含有する。
本発明においては、第2樹脂層を構成する樹脂成分として、脂環式オレフィン重合体を用いることにより、脂環式オレフィン重合体の疎水性により、第2樹脂層を疎水性の高いものとすることができる。そのため、上述した第1樹脂層に加えて、このような第2樹脂層を形成することにより、第2樹脂層を構成する脂環式オレフィン重合体の作用により、得られる電気絶縁層について高温高湿試験を行った際における、電気絶縁層中への水の侵入を防止することができ、これにより、高温高湿試験後における、導体層に対する密着性に優れたものとすることができる。加えて、本発明においては、第2硬化性樹脂組成物からなる第2樹脂層を形成し、第2樹脂層を無電解めっきを行うための被めっき層とすることにより、優れためっき密着性を実現することができる。
なお、脂環式オレフィン重合体としては、特に限定されないが、脂環式構造として、シクロアルカン構造やシクロアルケン構造などを有するものが挙げられる。機械的強度や耐熱性などに優れることから、シクロアルカン構造を有するものが好ましい。また、脂環式オレフィン重合体としては、極性基を有するものが好ましく、極性基としては、アルコール性水酸基、フェノール性水酸基、カルボキシル基、アルコキシル基、エポキシ基、グリシジル基、オキシカルボニル基、カルボニル基、アミノ基、カルボン酸無水物基、スルホン酸基、リン酸基などが挙げられる。中でも、カルボキシル基、カルボン酸無水物基、及びフェノール性水酸基が好ましく、カルボン酸無水物基がより好ましい。
極性基を有する脂環式オレフィン重合体は、たとえば、以下の方法により得ることができる。すなわち、(1)極性基を有する脂環式オレフィンを、必要に応じて他の単量体を加えて、重合する方法、(2)極性基を有しない脂環式オレフィンを、極性基を有する単量体と共重合する方法、(3)極性基を有する芳香族オレフィンを、必要に応じて他の単量体を加えて、重合し、これにより得られる重合体の芳香環部分を水素化する方法、(4)極性基を有しない芳香族オレフィンを、極性基を有する単量体と共重合し、これにより得られる重合体の芳香環部分を水素化する方法、又は、(5)極性基を有しない脂環式オレフィン重合体に極性基を有する化合物を変性反応により導入する方法、もしくは(6)前述の(1)〜(5)のようにして得られる極性基(例えばカルボン酸エステル基など)を有する脂環式オレフィン重合体の極性基を、例えば加水分解することなどにより他の極性基(例えばカルボキシル基)に変換する方法などにより得ることができる。これらのなかでも、前述の(1)の方法によって得られる重合体が好適である。
極性基を有する脂環式オレフィン重合体を得る重合法は開環重合や付加重合が用いられるが、開環重合の場合には得られた開環重合体を水素添加することが好ましい。
極性基を有する脂環式オレフィンの具体例としては、5−ヒドロキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メチル−5−ヒドロキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−カルボキシメチル−5−ヒドロキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、9−ヒドロキシカルボニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−メチル−9−ヒドロキシカルボニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−カルボキシメチル−9−ヒドロキシカルボニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、5−エキソ−6−エンド−ジヒドロキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、9−エキソ−10−エンド−ジヒドロキシカルボニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、などのカルボキシル基を有する脂環式オレフィン;ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン−5,6−ジカルボン酸無水物、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン−9,10−ジカルボン酸無水物、ヘキサシクロ[10.2.1.13,10.15,8.02,11.04,9]ヘプタデカ−6−エン−13,14−ジカルボン酸無水物などのカルボン酸無水物基を有する脂環式オレフィン;9−メチル−9−メトキシカルボニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、5−メトキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メチル−5−メトキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エンなどのカルボン酸エステル基を有する脂環式オレフィン;(5−(4−ヒドロキシフェニル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、9−(4−ヒドロキシフェニル)テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、N−(4−ヒドロキシフェニル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミドなどのフェノール性水酸基を有する脂環式オレフィンなどが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
極性基を有しない脂環式オレフィンの具体例としては、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(慣用名:ノルボルネン)、5−エチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−ブチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−エチリデン−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メチリデン−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−ビニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−3,8−ジエン(慣用名:ジシクロペンタジエン)、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン(慣用名:テトラシクロドデセン)、9−メチル−テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−エチル−テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−メチリデン−テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−エチリデン−テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−メトキシカルボニル−テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−ビニル−テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−プロペニル−テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−フェニル−テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、テトラシクロ[9.2.1.02,10.03,8]テトラデカ−3,5,7,12−テトラエン、シクロペンテン、シクロペンタジエンなどが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
極性基を有しない芳香族オレフィンの例としては、スチレン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼンなどが挙げられる。これらの具体例が前記極性基を有する場合、極性基を有する芳香族オレフィンの例として挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
脂環式オレフィンや芳香族オレフィンと共重合することができる、極性基を有する脂環式オレフィン以外の、極性基を有する単量体としては、極性基を有するエチレン性不飽和化合物が挙げられ、その具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、α−エチルアクリル酸、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸などの不飽和カルボン酸化合物;無水マレイン酸、ブテニル無水コハク酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水シトラコン酸などの不飽和カルボン酸無水物;などが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
脂環式オレフィンや芳香族オレフィンと共重合することができる、脂環式オレフィン以外の、極性基を有しない単量体としては、極性基を有しないエチレン性不飽和化合物が挙げられ、その具体例としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセンなどの炭素数2〜20のエチレン又はα−オレフィン;1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエンなどの非共役ジエン;などが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
脂環式オレフィン重合体の分子量は、特に限定されないが、テトロヒドロフランを溶媒として用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィにより測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量で、500〜1,000,000の範囲であることが好ましく、1,000〜500,000の範囲であることがより好ましく、特に好ましくは、5,000〜300,000の範囲である。重量平均分子量が小さすぎると樹脂組成物を硬化して得られる硬化物の機械的強度が低下し、大きすぎるとシート状又はフィルム状に成形して成形体とする際に作業性が悪化する傾向がある。
脂環式オレフィン重合体を、開環重合法により得る場合の重合触媒としては、従来公知のメタセシス重合触媒を用いることができる。メタセシス重合触媒としては、Mo,W,Nb,Ta,Ruなどの原子を含有してなる遷移金属化合物が例示され、なかでも、Mo,W又はRuを含有する化合物は重合活性が高くて好ましい。特に好ましいメタセシス重合触媒の具体的な例としては、(1)ハロゲン基、イミド基、アルコキシ基、アリロキシ基又はカルボニル基を配位子として有する、モリブデンあるいはタングステン化合物を主触媒とし、有機金属化合物を第二成分とする触媒や、(2)Ruを中心金属とする金属カルベン錯体触媒を挙げることができる。
上記(1)の触媒で主触媒として用いられる化合物の例としては、MoCl5、MoBr5などのハロゲン化モリブデン化合物やWCl6、WOCl4、タングステン(フェニルイミド)テトラクロリド・ジエチルエーテルなどのハロゲン化タングステン化合物が挙げられる。また、上記(1)の触媒で、第二成分として用いられる有機金属化合物としては、周期表第1族、2族、12族、13族又は14族の有機金属化合物を挙げることができる。なかでも、有機リチウム化合物、有機マグネシウム化合物、有機亜鉛化合物、有機アルミニウム化合物、有機スズ化合物が好ましく、有機リチウム化合物、有機アルミニウム化合物、有機スズ化合物が特に好ましい。有機リチウム化合物としては、n−ブチルリチウム、メチルリチウム、フェニルリチウム、ネオペンチルリチウム、ネオフィルリチウムなどを挙げることができる。有機マグネシウムとしては、ブチルエチルマグネシウム、ブチルオクチルマグネシウム、ジヘキシルマグネシウム、エチルマグネシウムクロリド、n−ブチルマグネシウムクロリド、アリルマグネシウムブロミド、ネオペンチルマグネシウムクロリド、ネオフィルマグネシウムクロリドなどを挙げることができる。有機亜鉛化合物としては、ジメチル亜鉛、ジエチル亜鉛、ジフェニル亜鉛などを挙げることができる。有機アルミニウム化合物としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、ジエチルアルミニウムエトキシド、エチルアルミニウムジエトキシドなどを挙げることができ、さらに、これらの有機アルミニウム化合物と水との反応によって得られるアルミノキサン化合物も用いることができる。有機スズ化合物としては、テトラメチルスズ、テトラ(n−ブチル)スズ、テトラフェニルスズなどを挙げることができる。これらの有機金属化合物の量は、用いる有機金属化合物によって異なるが、主触媒の中心金属に対して、モル比で、0.1〜10,000倍が好ましく、0.2〜5,000倍がより好ましく、0.5〜2,000倍が特に好ましい。
また、上記(2)のRuを中心金属とする金属カルベン錯体触媒としては、(1,3−ジメシチル−イミダゾリジン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、トリシクロヘキシルホスフィン−〔1,3−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)−4,5−ジブロモイミダゾール−2−イリデン〕−〔ベンジリデン〕ルテニウムジクロリド、4−アセトキシベンジリデン(ジクロロ)(4,5−ジブロモ−1,3−ジメシチル−4−イミダゾリン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムなどが挙げられる。
メタセシス重合触媒の使用割合は、重合に用いる単量体に対して、(メタセシス重合触媒中の遷移金属:単量体)のモル比で、通常1:100〜1:2,000,000の範囲であり、好ましくは1:200〜1:1,000,000の範囲である。触媒量が多すぎると触媒除去が困難となり、少なすぎると十分な重合活性が得られないおそれがある。
重合反応は、通常、有機溶媒中で行なう。用いられる有機溶媒は、重合体が所定の条件で溶解又は分散し、重合に影響しないものであれば、特に限定されないが、工業的に汎用されているものが好ましい。有機溶媒の具体例としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、トリメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ジエチルシクロヘキサン、デカヒドロナフタレン、ビシクロヘプタン、トリシクロデカン、ヘキサヒドロインデンシクロヘキサン、シクロオクタンなどの脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン系脂肪族炭化水素;クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどのハロゲン系芳香族炭化水素;ニトロメタン、ニトロベンゼン、アセトニトリルなどの含窒素炭化水素系溶媒;ジエチルエ−テル、テトラヒドロフランなどのエ−テル系溶媒;アニソール、フェネトールなどの芳香族エーテル系溶媒;などを挙げることができる。これらの中でも、工業的に汎用されている芳香族炭化水素系溶媒や脂肪族炭化水素系溶媒、脂環族炭化水素系溶媒、エーテル系溶剤、芳香族エーテル系溶媒が好ましい。
有機溶媒の使用量は、重合溶液中の単量体の濃度が、1〜50重量%となる量であることが好ましく、2〜45重量%となる量であることがより好ましく、3〜40重量%となる量であることが特に好ましい。単量体の濃度が1重量%未満の場合は生産性が悪くなり、50重量%を超えると、重合後の溶液粘度が高すぎて、その後の水素添加反応が困難となる場合がある。
重合反応は、重合に用いる単量体とメタセシス重合触媒とを混合することにより開始される。これらを混合する方法としては、単量体溶液にメタセシス重合触媒溶液を加えてもよいし、その逆でもよい。用いるメタセシス重合触媒が、主触媒である遷移金属化合物と第二成分である有機金属化合物とからなる混合触媒である場合には、単量体溶液に混合触媒の反応液を加えてもよいし、その逆でもよい。また、単量体と有機金属化合物との混合溶液に遷移金属化合物溶液を加えてもよいし、その逆でもよい。さらに、単量体と遷移金属化合物の混合溶液に有機金属化合物を加えてもよいし、その逆でもよい。
重合温度は特に制限はないが、通常、−30℃〜200℃、好ましくは0℃〜180℃である。重合時間は、特に制限はないが、通常、1分間〜100時間である。
得られる脂環式オレフィン重合体の分子量を調整する方法としては、ビニル化合物又はジエン化合物を適当量添加する方法を挙げることができる。分子量調整に用いるビニル化合物は、ビニル基を有する有機化合物であれば特に限定されないが、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンなどのα−オレフィン類;スチレン、ビニルトルエンなどのスチレン類;エチルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、アリルグリシジルエーテルなどのエーテル類;アリルクロライドなどのハロゲン含有ビニル化合物;酢酸アリル、アリルアルコール、グリシジルメタクリレートなど酸素含有ビニル化合物、アクリルアミドなどの窒素含有ビニル化合物などを挙げることができる。分子量調整に用いるジエン化合物としては、1,4−ペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、1,6−ヘプタジエン、2−メチル−1,4−ペンタジエン、2,5−ジメチル−1,5−ヘキサジエンなどの非共役ジエン、又は、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエンなどの共役ジエンを挙げることができる。ビニル化合物又はジエン化合物の添加量は、目的とする分子量に応じて、重合に用いる単量体に対して、0.1〜10モル%の間で任意に選択することができる。
脂環式オレフィン重合体を、付加重合法により得る場合の重合触媒としては、たとえば、チタン、ジルコニウム又はバナジウム化合物と有機アルミニウム化合物とからなる触媒が好適に用いられる。これらの重合触媒は、それぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。重合触媒の量は、重合触媒中の金属化合物:重合に用いる単量体のモル比で、通常、1:100〜1:2,000,000の範囲である。
脂環式オレフィン重合体として、開環重合体の水素添加物を用いる場合の、開環重合体に対する水素添加は、通常、水素添加触媒を用いて行われる。水素添加触媒は特に限定されず、オレフィン化合物の水素添加に際して一般的に使用されているものを適宜採用すればよい。水素添加触媒の具体例としては、たとえば、酢酸コバルトとトリエチルアルミニウム、ニッケルアセチルアセトナートとトリイソブチルアルミニウム、チタノセンジクロリドとn−ブチルリチウム、ジルコノセンジクロリドとsec−ブチルリチウム、テトラブトキシチタネートとジメチルマグネシウムのような遷移金属化合物とアルカリ金属化合物との組み合わせからなるチーグラー系触媒;ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム、特開平7−2929号公報、特開平7−149823号公報、特開平11−209460号公報、特開平11−158256号公報、特開平11−193323号公報、特開平11−209460号公報などに記載されている、たとえば、ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリジンルテニウム(IV)ジクロリドなどのルテニウム化合物からなる貴金属錯体触媒;などの均一系触媒が挙げられる。また、ニッケル、パラジウム、白金、ロジウム、ルテニウムなどの金属を、カーボン、シリカ、ケイソウ土、アルミナ、酸化チタンなどの担体に担持させた不均一触媒、たとえば、ニッケル/シリカ、ニッケル/ケイソウ土、ニッケル/アルミナ、パラジウム/カーボン、パラジウム/シリカ、パラジウム/ケイソウ土、パラジウム/アルミナなどを用いることもできる。また、上述したメタセシス重合触媒をそのまま、水素添加触媒として用いることも可能である。
水素添加反応は、通常、有機溶媒中で行う。有機溶媒は生成する水素添加物の溶解性により適宜選択することができ、上述した重合反応に用いる有機溶媒と同様の有機溶媒を使用することができる。したがって、重合反応後、有機溶媒を入れ替えることなく、そのまま水素添加触媒を添加して反応させることもできる。さらに、上述した重合反応に用いる有機溶媒の中でも、水素添加反応に際して反応しないという観点から、芳香族炭化水素系溶媒や脂肪族炭化水素系溶媒、脂環族炭化水素系溶媒、エーテル系溶媒、芳香族エーテル系溶媒が好ましく、芳香族エーテル系溶媒がより好ましい。
水素添加反応条件は、使用する水素添加触媒の種類に応じて適宜選択すればよい。反応温度は、通常、−20〜250℃、好ましくは−10〜220℃、より好ましくは0〜200℃である。−20℃未満では反応速度が遅くなり、逆に250℃を超えると副反応が起こりやすくなる。水素の圧力は、通常、0.01〜10.0MPa、好ましくは0.05〜8.0MPaである。水素圧力が0.01MPa未満では水素添加速度が遅くなり、10.0MPaを超えると高耐圧反応装置が必要となる。
水素添加反応の時間は、水素添加率をコントロールするために適宜選択される。反応時間は、通常、0.1〜50時間の範囲であり、重合体中の主鎖の炭素−炭素二重結合のうち50%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、特に好ましくは90%以上を水素添加することができる。
水素添加反応を行った後、水素添加反応に用いた触媒を除去する処理を行ってもよい。触媒の除去方法は特に制限されず、遠心分離、濾過などの方法が挙げられる。さらに、水やアルコールなどの触媒不活性化剤を添加したり、また活性白土、アルミナ、珪素土などの吸着剤を添加したりして、触媒の除去を促進させることができる。
また、本発明で用いる第2硬化性樹脂組成物は、硬化剤をさらに含有していることが好ましい。硬化剤としては、加熱により極性基を有する脂環式オレフィン重合体に架橋構造を形成させることのできるものであればよく、特に限定されず、一般の電気絶縁膜形成用の樹脂組成物に配合される硬化剤を用いることができる。硬化剤としては、用いる極性基を有する脂環式オレフィン重合体の極性基と反応して結合を形成することができる官能基を2個以上有する化合物を用いるのが好ましい。
例えば、極性基を有する脂環式オレフィン重合体として、カルボキシル基やカルボン酸無水物基、フェノール性水酸基を有する脂環式オレフィン重合体を用いる場合に好適に用いられる硬化剤としては、多価エポキシ化合物、多価イソシアナート化合物、多価アミン化合物、多価ヒドラジド化合物、アジリジン化合物、塩基性金属酸化物、有機金属ハロゲン化物などが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。また、これらの化合物と、過酸化物とを併用することで硬化剤として用いてもよい。
中でも、硬化剤としては、極性基を有する脂環式オレフィン重合体が有する極性基との反応性が緩やかであり、第2硬化性樹脂組成物の扱いが容易になることから、多価エポキシ化合物が好ましく、グリシジルエーテル型エポキシ化合物や脂環式の多価エポキシ化合物が特に好ましく用いられる。グリシジルエーテル型エポキシ化合物の市販品としては例えば、商品名「エピクロンHP7200L、エピクロンHP7200、エピクロンHP7200H、エピクロンHP7200HH、エピクロンHP7200HHH」(以上、DIC社製、「エピクロン」は登録商標)や商品名「デナコールEX512、デナコールEX721(以上、ナガセケムテックス社製、「デナコール」は商標登録)などの多価エポキシ化合物が挙げられる。脂環式の多価エポキシ化合物としては例えば、商品名「エポリードGT401、セロキサイド2021P、(以上、ダイセル社製、「エポリード、セロキサイド」は商標登録)などの多価エポキシ化合物が挙げられる。
第2硬化性樹脂組成物中における、硬化剤の配合量は、脂環式オレフィン重合体100重量部に対して、好ましくは1〜100重量部、より好ましくは5〜80重量部、さらに好ましくは10〜50重量部の範囲である。硬化剤の配合量を上記範囲とすることにより、得られる電気絶縁層の機械的強度及び電気特性を良好なものとすることができる。
また、本発明で用いる第2硬化性樹脂組成物は、上記成分以外に、ヒンダードフェノール化合物やヒンダードアミン化合物を含有していてもよい。
ヒンダードフェノール化合物とは、ヒドロキシル基を有し、かつ、該ヒドロキシル基のβ位の炭素原子に水素原子を有さないヒンダード構造を分子内に少なくとも1つ有するフェノール化合物である。ヒンダードフェノール化合物の具体例としては、1,1,3−トリス−(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、4,4’−ブチリデンビス−(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2−チオビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、n−オクタデシル−3−(4′−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチル・フェニル)プロピオネート、テトラキス−〔メチレン−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタンなどが挙げられる。
第2硬化性樹脂組成物中における、ヒンダードフェノール化合物の配合量は、特に限定されないが、脂環式オレフィン重合体100重量部に対して、好ましくは0.04〜10重量部、より好ましくは0.3〜5重量部、さらに好ましくは0.5〜3重量部の範囲である。ヒンダードフェノール化合物の配合量を上記範囲とすることにより、得られる電気絶縁層の機械的強度を良好とすることができる。
また、ヒンダードアミン化合物とは、4−位に2級アミン又は3級アミンを有する2,2,6,6−テトラアルキルピペリジン基を分子中に少なくとも一個有する化合物である。アルキルの炭素数としては、通常、1〜50である。ヒンダードアミン化合物としては、4−位に2級アミン又は3級アミンを有する2,2,6,6−テトラメチルピペリジル基を分子中に少なくとも一個有する化合物が好ましい。なお、本発明においては、ヒンダードフェノール化合物と、ヒンダードアミン化合物とを併用することが好ましく、これらを併用することにより、本発明の多層硬化性樹脂フィルムを硬化して得られる硬化物について過マンガン酸塩の水溶液などを用いて、表面粗化処理を行なった場合に、表面粗化処理条件が変化した場合でも、表面粗化処理後の硬化物を表面粗度の低いものに保つことが可能となる。
ヒンダードアミン化合物の具体例としては、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、1〔2−{3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}エチル〕−4−{3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、8−ベンジル−7,7,9,9−テトラメチル−3−オクチル−1,2,3−トリアザスピロ〔4,5〕ウンデカン−2,4−ジオンなどが挙げられる。
第2硬化性樹脂組成物中における、ヒンダードアミン化合物の配合量は、特に限定されないが、脂環式オレフィン重合体100重量部に対して、通常、0.02〜10重量部、好ましくは0.2〜5重量部、より好ましくは0.25〜3重量部である。ヒンダードアミン化合物の配合量を上記範囲とすることにより、得られる電気絶縁層の機械的強度を良好とすることができる。
また、本発明で用いる第2硬化性樹脂組成物は、上記成分以外に、硬化促進剤を含有していてもよい。硬化促進剤としては、一般の電気絶縁膜形成用の樹脂組成物に配合される硬化促進剤を用いればよいが、例えば、上述した第1硬化性樹脂組成物と同様の硬化促進剤を用いることができる。第2硬化性樹脂組成物中における、硬化促進剤の配合量は、使用目的に応じて適宜選択すればよいが、脂環式オレフィン重合体100重量部に対して、好ましくは0.001〜30重量部、より好ましくは0.01〜10重量部、さらに好ましくは0.03〜5重量部である。
さらに、本発明で用いる第2硬化性樹脂組成物は、上記成分以外に、充填剤を含有していてもよい。充填剤としては、公知の無機充填剤及び有機充填剤のいずれをも用いることができるが、無機充填剤が好ましい。無機充填剤の具体例としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸ジルコニウム、水和アルミナ、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、シリカ、タルク、クレーなどを挙げることができる。なお、充填剤としては、シランカップリング剤などで表面処理がされているものと用いてもよい。第2硬化性樹脂組成物中における、充填剤の配合量は、固形分換算で、通常、1〜50重量%であり、好ましくは2〜45重量%、より好ましくは3〜35重量%である。
また、本発明で用いる第2硬化性樹脂組成物は、上記成分以外に、上述した第1硬化性樹脂組成物と同様に、硬化促進剤、難燃剤、難燃助剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、老化防止剤、紫外線吸収剤(レーザー加工性向上剤)、レベリング剤、帯電防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、染料、天然油、合成油、ワックス、乳剤、磁性体、誘電特性調整剤、靭性剤などの公知の成分を適宜配合してもよい。これらの任意成分の配合割合は、本発明の目的を損なわない範囲で適宜選択すればよい。
本発明で用いる第2硬化性樹脂組成物の製造方法としては、特に限定されるものではなく、上記各成分を、そのまま混合してもよいし、有機溶剤に溶解若しくは分散させた状態で混合してもよいし、上記各成分の一部を有機溶剤に溶解若しくは分散させた状態の組成物を調製し、当該組成物に残りの成分を混合してもよい。
(多層硬化性樹脂フィルム、多層硬化性樹脂フィルムの製造方法)
本発明の多層硬化性樹脂フィルムは、上述した第1硬化性樹脂組成物からなる第1樹脂層と、上述した第2硬化性樹脂組成物からなる第2樹脂層とからなる、硬化性の多層フィルムであり、上述した第1硬化性樹脂組成物及び第2硬化性樹脂組成物を用いて製造される。具体的には、本発明の多層硬化性樹脂フィルムは、例えば、以下の2つの方法:(1)上述した第2硬化性樹脂組成物を支持体上に塗布、散布又は流延し、所望により乾燥させることで第2樹脂層を形成し、次いで、その上に、上述した第1硬化性樹脂組成物をさらに塗布又は流延し、所望により乾燥させることにより第1樹脂層を形成することにより製造する方法;(2)上述した第2硬化性樹脂組成物を支持体上に塗布、散布又は流延し、所望により乾燥させて得られたシート状又はフィルム状に成形してなる第2樹脂層用成形体と、上述した第1硬化性樹脂組成物を支持体上に塗布、散布又は流延し、所望により乾燥させて、シート状又はフィルム状に成形してなる第1樹脂層用成形体と、を積層し、これらの成形体を一体化させることにより製造する方法、により製造することができる。これらの製造方法の内、より容易なプロセスであり生産性に優れることから、上記(1)の製造方法が好ましい。
上述の(1)の製造方法において、第2硬化性樹脂組成物を支持体に塗布、散布又は流延する際、及び塗布、散布又は流延された第2硬化性樹脂組成物からなる第2樹脂層上に第1硬化性樹脂組成物を塗布、散布又は流延する際、あるいは上述の(2)の製造方法において、第2硬化性樹脂組成物及び第1硬化性樹脂組成物をシート状又はフィルム状に成形して第2樹脂層用成形体及び第1樹脂層用成形体とする際には、第2硬化性樹脂組成物又は第1硬化性樹脂組成物を、所望により有機溶剤を添加して、支持体に塗布、散布又は流延することが好ましい。
その際に用いる支持体としては、樹脂フィルムや金属箔などのフィルム状の支持体(支持体フィルム)が挙げられる。樹脂フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリアリレートフィルム、ナイロンフィルムなどが挙げられる。これらのフィルムのうち、耐熱性、耐薬品性、剥離性などの観点から、ポリエチレンテレフタレートフィルム又はポリエチレンナフタレートフィルムが好ましい。金属箔としては、銅箔、アルミ箔、ニッケル箔、クロム箔、金箔、銀箔などが挙げられる。なお、支持体フィルムの表面平均粗さRaは、通常、300nm以下、好ましくは150nm以下、より好ましくは100nm以下である。
上述の(1)の製造方法における、第2硬化性樹脂組成物からなる第2樹脂層及び第1硬化性樹脂組成物からなる第1樹脂層の厚み、あるいは上述の(2)の製造方法における第2樹脂層用成形体及び第1樹脂層用成形体の厚みは、特に限定されないが、積層フィルムとした際における、第2樹脂層の厚みが、好ましくは1〜10μm、より好ましくは1.5〜8μm、さらに好ましくは2〜5μm、また、第1樹脂層の厚みが、好ましくは10〜100μm、より好ましくは10〜80μm、さらに好ましくは15〜60μmとなるような厚みとすることが好ましい。第2樹脂層の厚みが薄すぎると、多層硬化性樹脂フィルムを硬化して得られる硬化物上に、無電解めっきにより導体層を形成した際における、導体層の形成性が低下してしまうおそれがあり、一方、第2樹脂層の厚みが厚すぎると、多層硬化性樹脂フィルムを硬化して得られる硬化物の線膨張が大きくなるおそれがある。また、第1樹脂層の厚みが薄すぎると、多層硬化性樹脂フィルムの配線埋め込み性が低下してしまうおそれがある。
第2硬化性樹脂組成物及び第1硬化性樹脂組成物を塗布する方法としては、ディップコート、ロールコート、カーテンコート、ダイコート、スリットコート、グラビアコートなどが挙げられる。
また、上述の(1)の製造方法における、第2硬化性樹脂組成物を支持体上に塗布、散布又は流延した後、あるいは第1硬化性樹脂組成物を第2硬化性樹脂組成物からなる第2樹脂層上に塗布、散布又は流延した後、あるいは上述の(2)の製造方法における、第2硬化性樹脂組成物及び第1硬化性樹脂組成物を支持体上に塗布した後、所望により、乾燥を行ってもよい。乾燥温度は、第2硬化性樹脂組成物及び第1硬化性樹脂組成物が硬化しない程度の温度とすることが好ましく、通常、20〜300℃、好ましくは30〜200℃である。また、乾燥時間は、通常、30秒間〜1時間、好ましくは1分間〜30分間である。
本発明の多層硬化性樹脂フィルムにおいては、多層硬化性樹脂フィルムを構成する第2樹脂層及び第1樹脂層は未硬化又は半硬化の状態であり、これにより、本発明の多層硬化性樹脂フィルムを硬化反応性を示し、かつ、接着性の高いものとすることできる。
(プリプレグ)
本発明のプリプレグは、上述した本発明の多層硬化性樹脂フィルムに、繊維基材を含んでなるものである。
繊維基材としては、ポリアミド繊維、ポリアラミド繊維やポリエステル繊維等の有機繊維や、ガラス繊維、カーボン繊維等などの無機繊維が挙げられる。また、繊維基材の形態としては、平織りもしくは綾織りなどの織物の形態、又は不織布の形態等が挙げられる。繊維基材の厚さは5〜100μmが好ましく、10〜50μmの範囲が好ましい。薄すぎると取り扱いが困難となり、厚すぎると相対的に樹脂層が薄くなり配線埋め込み性が不十分になる場合がある。
本発明のプリプレグは、一方の面に第2硬化性樹脂組成物からなる第2樹脂層を、他方の面に第1硬化性樹脂組成物からなる第2樹脂層をそれぞれ有し、かつ、内部に繊維基材を有するものであることが好ましく、その製造方法は限定されないが、たとえば、以下の方法:(1)支持体付き第1硬化性樹脂組成物のフィルムと支持体付き第2硬化性樹脂組成物のフィルムを、繊維基材を間に挟むように各フィルムの樹脂層側を合わせて、所望により加圧、真空、加熱などの条件のもとで積層して製造する方法;(2)第1硬化性樹脂組成物又は第2硬化性樹脂組成物のいずれかを繊維基材に含浸して、所望により乾燥することでプリプレグを作製し、このプリプレグにもう一方の樹脂組成物を塗布、散布又は流延することにより、若しくはもう一方の支持体付き樹脂組成物フィルムを積層することにより製造する方法;(3)支持体上に第1硬化性樹脂組成物又は第2硬化性樹脂組成物のいずれかを塗布、散布又は流延などにより積層し、その上に繊維基材を重ね、さらにその上からもう一方の樹脂組成物を塗布、散布又は流延することにより積層し、所望により乾燥させることで製造する方法;などにより製造することができる。なお、いずれの方法も第1硬化性樹脂組成物及び第2硬化性樹脂組成物には所望により有機溶剤を添加して、第1硬化性樹脂組成物及び第2硬化性樹脂組成物の粘度を調整することにより、繊維基材への含浸や支持体への塗布、散布又は流延における作業性を制御することが好ましい。
また、この際に用いる支持体としては、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリアリレートフィルム、ナイロンフィルムなどの樹脂フィルムや、銅箔、アルミ箔、ニッケル箔、クロム箔、金箔、銀箔などの金属箔が挙げられ、これらは、プリプレグの一方の面だけでなく、両方の面に付いていてもよい。
なお、第1硬化性樹脂組成物及び第2硬化性樹脂組成物を、繊維基材に含浸させた後、所望により、乾燥を行ってもよい。乾燥温度は、第1硬化性樹脂組成物及び第2硬化性樹脂組成物が硬化しないが硬化しない程度の温度とすることが好ましく、通常、20〜300℃、好ましくは30〜200℃である。乾燥温度が高すぎると、硬化反応が進行しすぎて、得られるプリプレグが未硬化又は半硬化の状態とならなくなるおそれがある。また、乾燥時間は、通常、30秒間〜1時間、好ましくは1分間〜30分間である。
本発明のプリプレグの厚みは、特に限定されないが、第2樹脂層の厚みが、好ましくは1〜10μm、より好ましくは1.5〜8μm、さらに好ましくは2〜5μm、また、第1樹脂層の厚みが、好ましくは10〜100μm、より好ましくは10〜80μm、さらに好ましくは15〜60μmとなるような厚みとすることが好ましい。
本発明のプリプレグを製造する際に、第1硬化性樹脂組成物及び第2硬化性樹脂組成物を塗布する方法としては、ディップコート、ロールコート、カーテンコート、ダイコート、スリットコート、グラビアコートなどが挙げられる。
また、本発明のプリプレグにおいては、上記した本発明の多層硬化性樹脂フィルムと同様に、プリプレグを構成する樹脂組成物が未硬化又は半硬化の状態であることが好ましい。
そして、このようにして得られる本発明のプリプレグは、これを加熱し、硬化させることにより硬化物とすることができる。
硬化温度は、通常、30〜400℃、好ましくは70〜300℃、より好ましくは100〜200℃である。また、硬化時間は、0.1〜5時間、好ましくは0.5〜3時間である。加熱の方法は特に制限されず、例えば、電気オーブンなどを用いて行えばよい。
(積層体)
本発明の積層体は、上述した本発明の多層硬化性樹脂フィルム又はプリプレグを基材に積層してなるものである。本発明の積層体としては、少なくとも、上述した本発明の多層硬化性樹脂フィルム又はプリプレグを積層してなるものであればよいが、表面に導体層を有する基板と、上述した本発明の多層硬化性樹脂フィルム又はプリプレグからなる電気絶縁層とを積層してなるものが好ましい。
表面に導体層を有する基板は、電気絶縁性基板の表面に導体層を有するものである。電気絶縁性基板は、公知の電気絶縁材料(例えば、脂環式オレフィン重合体、エポキシ化合物、マレイミド樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、トリアジン樹脂、ポリフェニレンエーテル、ガラス等)を含有する樹脂組成物を硬化して形成されたものである。導体層は、特に限定されないが、通常、導電性金属等の導電体により形成された配線を含む層であって、更に各種の回路を含んでいてもよい。配線や回路の構成、厚み等は、特に限定されない。表面に導体層を有する基板の具体例としては、プリント配線基板、シリコンウェーハ基板等を挙げることができる。表面に導体層を有する基板の厚みは、通常、10μm〜10mm、好ましくは20μm〜5mm、より好ましくは30μm〜2mmである。
本発明で用いられる表面に導体層を有する基板は、電気絶縁層との密着性を向上させるために、導体層表面に前処理が施されていることが好ましい。前処理の方法としては、公知の技術を、特に限定されず使用することができる。例えば、導体層が銅からなるものであれば、強アルカリ酸化性溶液を導体層表面に接触させて、導体表面に酸化銅の層を形成して粗化する酸化処理方法、導体層表面を先の方法で酸化した後に水素化ホウ素ナトリウム、ホルマリンなどで還元する方法、導体層にめっきを析出させて粗化する方法、導体層に有機酸を接触させて銅の粒界を溶出して粗化する方法、及び導体層にチオール化合物やシラン化合物などによりプライマー層を形成する方法等が挙げられる。これらのうち、微細な配線パターンの形状維持の容易性の観点から、導体層に有機酸を接触させて銅の粒界を溶出して粗化する方法、及び、チオール化合物やシラン化合物などによりプライマー層を形成する方法が好ましい。
本発明の積層体は、通常、表面に導体層を有する基板上に、上述した本発明の多層硬化性樹脂フィルム又はプリプレグを構成する第1樹脂層が、基板に接するように加熱圧着することにより、製造することができる。
加熱圧着の方法としては、支持体付きの多層硬化性樹脂フィルム又はプリプレグを、本発明の多層硬化性樹脂フィルム又はプリプレグを構成する第1樹脂層が、上述した基板の導体層に接するように重ね合わせ、加圧ラミネータ、プレス、真空ラミネータ、真空プレス、ロールラミネータなどの加圧機を使用して加熱圧着(ラミネーション)する方法が挙げられる。加熱加圧することにより、基板表面の導体層と多層硬化性樹脂フィルム又はプリプレグとの界面に空隙が実質的に存在しないように結合させることができる。前記多層硬化性樹脂フィルム又はプリプレグは、通常、未硬化又は半硬化の状態で基板の導体層に積層されることになる。
加熱圧着操作の温度は、通常、30〜250℃、好ましくは70〜200℃であり、加える圧力は、通常、10kPa〜20MPa、好ましくは100kPa〜10MPaであり、時間は、通常、30秒〜5時間、好ましくは1分〜3時間である。また、加熱圧着は、配線パターンの埋め込み性を向上させ、気泡の発生を抑えるために減圧下で行うのが好ましい。加熱圧着を行う減圧下の圧力は、通常100kPa〜1Pa、好ましくは40kPa〜10Paである。
(硬化物)
本発明の硬化物は、本発明の多層硬化性樹脂フィルムを硬化してなるものであり、当該多層硬化性樹脂フィルムで構成される、本発明のプリプレグ、及び積層体を硬化してなるいずれのものも含まれる。硬化は、後述する硬化条件にて、本発明の多層硬化性樹脂フィルムを構成する第1硬化性樹脂組成物及び第2硬化性樹脂組成物を適宜加熱することで行うことができる。
例えば、本発明の積層体については、それを構成する、本発明の多層硬化性樹脂フィルム又はプリプレグを硬化する処理を行なうことで、硬化物とすることができる。硬化は、通常、導体層上に、本発明の多層硬化性樹脂フィルム又はプリプレグが形成された基板全体を加熱することにより行う。硬化は、上述した加熱圧着操作と同時に行うことができる。また、まず加熱圧着操作を硬化の起こらない条件、すなわち比較的低温、短時間で行った後、硬化を行ってもよい。
また、電気絶縁層の平坦性を向上させる目的や、電気絶縁層の厚みを増す目的で、基板の導体層上に本発明の多層硬化性樹脂フィルム又はプリプレグを2以上接して貼り合わせて積層してもよい。
硬化温度は、通常、30〜400℃、好ましくは70〜300℃、より好ましくは100〜200℃である。また、硬化時間は、通常、0.1〜5時間、好ましくは0.5〜3時間である。加熱の方法は特に制限されず、例えば電気オーブンなどを用いて行えばよい。
(複合体)
本発明の複合体は、上述した、本発明の硬化物の表面に導体層を形成してなるものである。
例えば、本発明の複合体が多層基板を形成する場合、本発明の複合体は、該積層体の電気絶縁層上に、さらに別の導体層を形成してなるものである。かかる導体層としては金属めっき又は金属箔を使用することができる。金属めっき材料としては、金、銀、銅、ロジウム、パラジウム、ニッケル又はスズ等、金属箔としては前述の多層硬化性樹脂フィルム又はプリプレグの支持体として使用されるものが挙げられる。なお、本発明においては、導体層としては金属めっきを使用する方法の方が、微細配線が可能であるという点より、好ましい。以下、本発明の複合体の製造方法を、本発明の複合体の一例として、導体層として金属めっきを用いた多層回路基板を例示して、説明する。
まず、積層体に、電気絶縁層を貫通するビアホールやスルーホールを形成する。ビアホールは、多層回路基板とした場合に、多層回路基板を構成する各導体層を連結するために形成される。ビアホールやスルーホールは、フォトリソグラフィ法のような化学的処理により、又は、ドリル、レーザー、プラズマエッチングなどの物理的処理などにより形成することができる。これらの方法の中でもレーザーによる方法(炭酸ガスレーザー、エキシマレーザー、UV−YAGレーザーなど)は、より微細なビアホールを電気絶縁層の特性を低下させずに形成できるので好ましい。
なお、本発明においては、上述した積層体及び硬化物を得る際に、支持体付きの多層硬化性樹脂フィルム又はプリプレグを用いた場合には、支持体が付いた状態のまま、支持体側からレーザーを照射することで、ビアホール又はスルーホールを形成し、次いで支持体を剥離する工程を採用してもよいし、あるいは、支持体を剥離した後に、ビアホール又はスルーホールを形成してもよい。本発明においては、ビアホール又はスルーホール形成による、電気絶縁層表面のダメージを軽減することができ、ビア底径とトップ径との差を小さくすることができるという点より、支持体が付いた状態のまま、支持体側からレーザーを照射する方法が好ましい。電気絶縁層を形成するための多層硬化性樹脂フィルム又はプリプレグとして、支持体付きの多層硬化性樹脂フィルム又はプリプレグを用い、これを第1樹脂層側において基板の導体に接するように積層し、これを硬化して硬化物とし、この硬化物に対し、支持体が付いた状態のまま、支持体側からレーザーを照射することで、ビアホール又はスルーホールを形成し、次いで支持体を剥離する工程を採用することが好ましく、これにより、ビアホール又はスルーホール形成による、電気絶縁層表面のダメージを軽減することができ、ビア底径とトップ径との差を小さくすることができる。
次に、積層体の電気絶縁層(すなわち、本発明の硬化物)の表面を、粗化する表面粗化処理を行う。表面粗化処理は、電気絶縁層上に形成する導体層との接着性を高めるために行う。
電気絶縁層の表面平均粗度Raは、好ましくは0.05μm以上0.5μm未満、より好ましくは0.06μm以上0.3μm以下であり、かつ表面十点平均粗さRzjisは、好ましくは0.3μm以上5μm未満、より好ましくは0.5μm以上3μm以下である。なお、本明細書において、RaはJIS B0601−2001に示される算術平均粗さであり、表面十点平均粗さRzjisは、JIS B0601−2001付属書1に示される十点平均粗さである。
表面粗化処理方法としては、特に限定されないが、電気絶縁層表面と酸化性化合物とを接触させる方法などが挙げられる。酸化性化合物としては、無機酸化性化合物や有機酸化性化合物などの酸化能を有する公知の化合物が挙げられる。電気絶縁層の表面平均粗度の制御の容易さから、無機酸化性化合物や有機酸化性化合物を用いるのが特に好ましい。無機酸化性化合物としては、過マンガン酸塩、無水クロム酸、重クロム酸塩、クロム酸塩、過硫酸塩、活性二酸化マンガン、四酸化オスミウム、過酸化水素、過よう素酸塩などが挙げられる。有機酸化性化合物としてはジクミルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、m−クロロ過安息香酸、過酢酸、オゾンなどが挙げられる。
無機酸化性化合物や有機酸化性化合物を用いて電気絶縁層表面を表面粗化処理する方法に格別な制限はない。例えば、上記酸化性化合物を溶解可能な溶媒に溶解して調製した酸化性化合物溶液を電気絶縁層表面に接触させる方法が挙げられる。酸化性化合物溶液を、電気絶縁層の表面に接触させる方法としては、特に限定されないが、例えば、電気絶縁層を酸化性化合物溶液に浸漬するディップ法、酸化性化合物溶液の表面張力を利用して、酸化性化合物溶液を、電気絶縁層に載せる液盛り法、酸化性化合物溶液を、電気絶縁層に噴霧するスプレー法、などいかなる方法であってもよい。表面粗化処理を行うことにより、電気絶縁層の、導体層など他の層との間の密着性を向上させることができる。
これらの酸化性化合物溶液を電気絶縁層表面に接触させる温度や時間は、酸化性化合物の濃度や種類、接触方法などを考慮して、任意に設定すればよいが、温度は、通常、10〜100℃、好ましくは20〜90℃であり、時間は、通常、0.5〜60分間、好ましくは1〜40分間である。
なお、表面粗化処理後、酸化性化合物を除去するため、表面粗化処理後の電気絶縁層表面を水で洗浄する。また、水だけでは洗浄しきれない物質が付着している場合には、その物質を溶解可能な洗浄液でさらに洗浄したり、他の化合物と接触させたりすることにより水に可溶な物質にしてから水で洗浄する。例えば、過マンガン酸カリウム水溶液や過マンガン酸ナトリウム水溶液などのアルカリ性水溶液を電気絶縁層と接触させた場合は、発生した二酸化マンガンの皮膜を除去する目的で、硫酸ヒドロキシルアミンと硫酸との混合液などの酸性水溶液により中和還元処理した後に水で洗浄することができる。
次いで、積層体の電気絶縁層について表面粗化処理を行った後、電気絶縁層の表面及びビアホールやスルーホールの内壁面に、導体層を形成する。
導体層の形成方法は、密着性に優れる導体層を形成できるという観点より、無電解めっき法により行なうのが好ましい。
例えば、無電解めっき法により導体層を形成する際においては、まず、金属薄膜を電気絶縁層の表面に形成させる前に、電気絶縁層上に、銀、パラジウム、亜鉛、コバルトなどの触媒核を付着させるのが一般的である。触媒核を電気絶縁層に付着させる方法は特に制限されず、例えば、銀、パラジウム、亜鉛、コバルトなどの金属化合物やこれらの塩や錯体を、水又はアルコールもしくはクロロホルムなどの有機溶剤に0.001〜10重量%の濃度で溶解した液(所望により、酸、アルカリ、錯化剤、還元剤などを含有していてもよい。)に浸漬した後、金属を還元する方法などが挙げられる。
無電解めっき法に用いる無電解めっき液としては、公知の自己触媒型の無電解めっき液を用いればよく、めっき液中に含まれる金属種、還元剤種、錯化剤種、水素イオン濃度、溶存酸素濃度などは特に限定されない。例えば、次亜リン酸アンモニウム、次亜リン酸、水素化硼素アンモニウム、ヒドラジン、ホルマリンなどを還元剤とする無電解銅めっき液;次亜リン酸ナトリウムを還元剤とする無電解ニッケル−リンめっき液;ジメチルアミンボランを還元剤とする無電解ニッケル−ホウ素めっき液;無電解パラジウムめっき液;次亜リン酸ナトリウムを還元剤とする無電解パラジウム−リンめっき液;無電解金めっき液;無電解銀めっき液;次亜リン酸ナトリウムを還元剤とする無電解ニッケル−コバルト−リンめっき液などの無電解めっき液を用いることができる。
金属薄膜を形成した後、基板表面を防錆剤と接触させて防錆処理を施すことができる。また、金属薄膜を形成した後、密着性向上などのため、金属薄膜を加熱することもできる。加熱温度は、通常、50〜350℃、好ましくは80〜250℃である。なお、この際において、加熱は加圧条件下で実施してもよい。このときの加圧方法としては、例えば、熱プレス機、加圧加熱ロール機などの物理的加圧手段を用いる方法が挙げられる。加える圧力は、通常、0.1〜20MPa、好ましくは0.5〜10MPaである。この範囲であれば、金属薄膜と電気絶縁層との高い密着性が確保できる。
このようにして形成された金属薄膜上にめっき用レジストパターンを形成し、更にその上に電解めっきなどの湿式めっきによりめっきを成長させ(厚付けめっき)、次いで、レジストを除去し、更にエッチングにより金属薄膜をパターン状にエッチングして導体層を形成する。従って、この方法により形成される導体層は、通常、パターン状の金属薄膜と、その上に成長させためっきとからなる。
あるいは、多層回路基板を構成する導体層として、金属めっきの代わりに、金属箔を用いた場合には、以下の方法により製造することができる。
すなわち、まず、上記と同様にして、多層硬化性樹脂フィルム又はプリプレグからなる電気絶縁層と金属箔からなる導体層とから構成される積層体を準備する。このような積層体としては、積層成形した場合に、多層硬化性樹脂フィルムを構成する各組成物を各要求特性が保持できる硬化度とし、その後の加工を行なった場合や、多層回路基板とした際に問題のないようなものとすることが望ましく、特に、積層成形を、真空下に行なうことにより形成することが望ましい。なお、このような多層硬化性樹脂フィルム又はプリプレグからなる電気絶縁層と金属箔からなる導体層とから構成される積層体は、例えば、公知のサブトラクティブ法によりプリント配線板にも用いることができる。
そして、準備した積層体に、上記と同様にして、電気絶縁層を貫通するビアホールやスルーホールを形成し、次いで、形成したビアホール内の樹脂残渣を除去するために、スルーホールを形成した積層体について、デスミア処理を行なう。デスミア処理の方法は特に限定されないが、例えば、過マンガン酸塩などの酸化性化合物の溶液(デスミア液)を接触させる方法が挙げられる。具体的には、過マンガン酸ナトリウム濃度70g/リットル、水酸化ナトリウム濃度40g/リットルになるように調整した60〜90℃の水溶液に、ビアホールを形成した積層体を1〜50分間揺動浸漬することにより、デスミア処理を行なうことができる。
次いで、積層体についてデスミア処理を行った後、ビアホール内壁面に、導体層を形成する。導体層の形成方法は、特に限定されず、無電解めっき法又は電解めっき法のいずれも用いることができるが、密着性に優れる導体層を形成できるという観点より、上記した導体層として金属めっきを形成する方法と同様に、無電解めっき法により行なうことができる。
次いで、ビアホール内壁面に導体層を形成した後、金属箔上に、めっき用レジストパターンを形成し、更にその上に電解めっきなどの湿式めっきによりめっきを成長させ(厚付けめっき)、次いで、レジストを除去し、更にエッチングにより金属箔をパターン状にエッチングして導体層を形成する。従って、この方法により形成される導体層は、通常、パターン状の金属箔と、その上に成長させためっきとからなる。
以上のようにして得られた多層回路基板を、上述した積層体を製造するための基板とし、これを上述した成形体又は複合成形体とを加熱圧着し、硬化して電気絶縁層を形成し、さらにこの上に、上述した方法に従い、導体層の形成を行い、これらを繰り返すことにより、更なる多層化を行うことができ、これにより所望の多層回路基板とすることができる。
このようにして得られる本発明の複合体(及び本発明の複合体の一例としての多層回路基板)は、本発明の多層硬化性樹脂フィルムからなる電気絶縁層(本発明の硬化物)を有してなり、該電気絶縁層は、配線埋め込み性、めっき密着性、及び導体層に対する密着性に優れることに加え、優れた信頼性を有するもの(具体的には、ハローイングの発生を有効に防止でき、さらには、高温高湿試験後における導体層との密着性に優れるという高い信頼性を有するもの)であるため、本発明の多層回路基板は、各種用途に好適に用いることができる。
(電子材料用基板)
本発明の電子材料用基板は、上述した本発明の硬化物又は複合体からなるものである。このような本発明の硬化物又は複合体からなる本発明の電子材料用基板は、携帯電話機、PHS、ノート型パソコン、PDA(携帯情報端末)、携帯テレビ電話機、パーソナルコンピューター、スーパーコンピューター、サーバー、ルーター、液晶プロジェクタ、エンジニアリング・ワークステーション(EWS)、ページャ、ワードプロセッサ、テレビ、ビューファインダ型又はモニタ直視型のビデオテープレコーダ、電子手帳、電子卓上計算機、カーナビゲーション装置、POS端末、タッチパネルを備えた装置などの各種電子機器に好適に用いることができる。
以下に実施例及び比較例を挙げて、本発明についてより具体的に説明する。なお、各例中の「部」及び「%」は、特に断りのない限り、重量基準である。各種の物性については、以下の方法に従って評価した。
(1)脂環式オレフィン重合体の数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)
テトラヒドロフランを展開溶媒として、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により測定し、ポリスチレン換算値として求めた。
(2)脂環式オレフィン重合体の水素添加率
水素添加前における重合体中の不飽和結合のモル数に対する水素添加された不飽和結合のモル数の比率を、400MHzの1H−NMRスペクトル測定により求め、これを水素添加率とした。
(3)脂環式オレフィン重合体のカルボン酸無水物基を有する単量体単位の含有率
重合体中の総単量体単位モル数に対するカルボン酸無水物基を有する単量体単位のモル数の割合を、400MHzの1H−NMRスペクトル測定により求め、これを重合体のカルボン酸無水物基を有する単量体単位の含有率とした。
(4)配線埋め込み平坦性
積層体硬化物について、配線幅50μm、配線間距離50μmの導体パターン部分の導体がある部分とない部分との段差を触針式段差膜厚計(Tencor Instruments製 P−10)にて測定し、以下の基準で、配線埋め込み平坦性を評価した。
A:段差が2μm未満
B:段差が2μm以上、5μm未満
C:段差が5μm以上
(5)ハローイング耐性
無電解めっき膜を形成した積層体硬化物について、無電解金めっき後の開口部周辺の外観の変色を光学顕微鏡で観察し、以下の基準で、ハローイング耐性を評価した。
A:ハローイング直径が70μm未満
B:ハローイング直径が70μm以上、90μm未満
C:ハローイング直径が90μm以上
(6)めっき密着性
多層プリント配線板における第2樹脂層(第2硬化性樹脂組成物からなる層)を硬化してなる被めっき層と銅めっき層との引き剥がし強さ(ピール強度)をJIS C6481に準拠して測定し、以下の基準で、めっき密着性を評価した。
A:ピール強度が6N/cm以上
B:ピール強度が5Ncm以上、6N/cm未満
C:ピール強度が5Ncm未満
(7)銅箔の初期密着性
厚さ35μmの電解銅箔の表面をエッチング剤(商品名「CZ−8101」、メック社製)で約1μmエッチングした。得られた電解銅箔のエッチング処理面に、フィルム成形体の第1樹脂層(第1硬化性樹脂組成物からなる層)側の面が接するように積層し、真空ラミネータにて、真空度1kPa以下、90℃、30秒間、圧力0.7MPaの条件で加熱圧着した。次に、フィルム成形体の第2樹脂層(第2硬化性樹脂組成物からなる層)側の支持体を剥がし、現れた第2樹脂層の表面に、前記エッチング剤で約2μmエッチングしたガラスエポキシ銅張積層板(FR−4)のエッチング処理面を重ね、真空ラミネータにて前記と同条件で加熱圧着した。そのようにして得られた複合成形体をオーブンにて180℃で90分間加熱することにより積層体硬化物を得た。得られた積層体硬化物からの電解銅箔の引きはがし強さをJIS C6481に準じて測定し、以下の基準で、初期密着性を評価した。
A:ピール強度が6N/cm以上
B:ピール強度が5N/cm以上、6N/cm未満
C:ピール強度が5N/cm未満
(8)高温高湿試験後の銅箔の密着性
上記(7)と同様にして得られた積層体硬化物表面の銅箔を幅10mm残してそれ以外の部分の銅箔を剥離した試料を、温度130℃、湿度85%RHの恒温恒湿槽中で100時間放置した後、この積層体硬化物からの銅箔の引きはがし強さをJIS C6481に準じて測定し、以下の基準で、高温高湿試験後の密着性を評価した。
A:ピール強度が3N/cm以上
B:ピール強度が2N/cm以上、3N/cm未満
C:ピール強度が2N/cm未満
合成例1
重合1段目として5−エチリデン−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エンを35モル部、1−ヘキセンを0.9モル部、アニソールを340モル部及びC1063を0.005モル部、窒素置換した耐圧ガラス反応器に仕込み、攪拌下に80℃で30分間の重合反応を行ってノルボルネン系開環重合体の溶液を得た。
次いで、重合2段目として重合1段目で得た溶液中にテトラシクロ[6.5.0.12,5.08,13]トリデカ−3,8,10,12−テトラエンを45モル部、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン−5,6−ジカルボン酸無水物を20モル部、アニソールを250モル部及びルテニウム系重合触媒として4−アセトキシベンジリデン(ジクロロ)(4,5−ジブロモ−1,3−ジメシチル−4−イミダゾリン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウム(C1063,和光純薬社製)を0.01モル部追加し、攪拌下に80℃で1.5時間の重合反応を行ってノルボルネン系開環重合体の溶液を得た。この溶液について、ガスクロマトグラフィーを測定したところ、実質的に単量体が残留していないことが確認され、重合転化率は99%以上であった。
次いで、窒素置換した攪拌機付きオートクレーブに、得られた開環重合体の溶液を仕込み、C1063を0.03モル部を追加し、150℃、水素圧7MPaで、5時間攪拌させて水素添加反応を行って、ノルボルネン系開環重合体の水素添加物である脂環式オレフィン重合体(1)の溶液を得た。脂環式オレフィン重合体(1)の重量平均分子量は60,000、数平均分子量は30,000、分子量分布は2であった。また、水素添加率は95%であり、カルボン酸無水物基を有する繰り返し単位の含有率は20モル%であった。脂環式オレフィン重合体(1)の溶液の固形分濃度は22%であった。
実施例1
(第1硬化性樹脂組成物)
ノボラック型エポキシ化合物(A1)としてのジシクロペンタジエン構造含有ノボラック型エポキシ化合物(商品名「エピクロンHP7200H」、DIC社製、エポキシ当量280)100部、活性エステル化合物(B)としての活性エステル化合物(商品名「エピクロン HPC−8000−65T」、不揮発分65%のトルエン溶液、DIC社製、活性エステル基当量223)123部(活性エステル化合物換算で80部)、シリカ(C1)としてのシリカ(商品名「SC2500−SXJ」、アドマテックス社製)300部、層状無機充填剤(C2)としての有機ベントナイト(商品名「エスベンNX80」、ホージュン社製、アスペクト比50)5部、老化防止剤としてのヒンダードフェノール系酸化防止剤(商品名「イルガノックス(登録商標)3114」、BASF社製)0.2部、及びアニソール137部を混合し、高圧ホモジナイザー(商品名「LPN-60」、三丸機械工業社製)のノズルに3回通液させて分散させた。さらにこれに、硬化促進剤として1−べンジル−2−フェニルイミダゾールをアニソールに30%溶解した溶液(商品名「キュアゾール1B2PZ」、四国化成社製)1.7部(1−べンジル−2−フェニルイミダゾール換算で0.5部)を混合し、高圧ホモジナイザーのノズルに1回通液させて分散させて、第1硬化性樹脂組成物のワニスを得た。
(第2硬化性樹脂組成物)
合成例1にて得られた脂環式オレフィン重合体(1)の溶液454部〔脂環式オレフィン重合体(1)換算で100部〕、硬化剤としてのジシクロペンタジエン骨格を有する多価エポキシ化合物(商品名「エピクロン HP7200L」、DIC社製、「エピクロン」は登録商標)36部、無機充填剤としてのシリカ(商品名「アドマファイン SO−C1」、アドマテックス社製、平均粒子径0.25μm、「アドマファイン」は登録商標)24.5部、老化防止剤としてのトリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレート(商品名「イルガノックス(登録商標)3114」、BASF社製)1部、紫外線吸収剤としての2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール0.5部、及び硬化促進剤としての1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール0.5部を、アニソールに混合して、配合剤濃度が16%になるように混合することで、第2硬化性樹脂組成物のワニスを得た。
(多層硬化性樹脂フィルムの作製)
上記にて得られた第2硬化性樹脂組成物のワニスを、厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(支持体)上にワイヤーバーを用いて塗布し、次いで、窒素雰囲気下、80℃で10分間乾燥させて、未硬化の第2硬化性樹脂組成物からなる、厚み3μmの第2樹脂層(被めっき層)が形成された支持体付きフィルムを得た。
次に、支持体付きフィルムの第2硬化性樹脂組成物からなる第2樹脂層の形成面に、上記にて得られた第1硬化性樹脂組成物のワニスを、ドクターブレード(テスター産業社製)とオートフィルムアプリケーター(テスター産業社製)を用いて塗布し、次いで、窒素雰囲気下、80℃で10分間乾燥させて、総厚みが40μmである第2樹脂層(被めっき層)及び第1樹脂層(接着層)が形成された支持体付き多層硬化性樹脂フィルムを得た。当該支持体付き多層硬化性樹脂フィルムは、支持体、第2硬化性樹脂組成物からなる第2樹脂層、第1硬化性樹脂組成物からなる第1樹脂層の順で形成された。
(積層体硬化物の作製)
次いで、上記とは別に、ガラスフィラー及びハロゲン不含エポキシ化合物を含有するワニスをガラス繊維に含浸させて得られたコア材の表面に、厚みが18μmの銅が貼られた、厚み0.8mm、150mm角(縦150mm、横150mm)の両面銅張り基板表面に、配線幅及び配線間距離が50μm、厚みが18μmで、表面が有機酸との接触によってマイクロエッチング処理された導体層を形成して内層基板を得た。
この内層基板の両面に、上記にて得られた支持体付き多層硬化性樹脂フィルムを150mm角に切断したものを、第1硬化性樹脂組成物からなる第1樹脂層側の面が内側となるようにして貼り合わせた後、一次プレスを行った。一次プレスは、耐熱ゴム製プレス板を上下に備えた真空ラミネータにて、200Paの減圧下で温度110℃、圧力0.1MPaで90秒間の加熱圧着である。さらに、金属製プレス板を上下に備えた油圧プレス装置を用いて、圧着温度110℃、1MPaで90秒間、加熱圧着した。次いで支持体を剥がすことにより、第1硬化性樹脂組成物からなる第1樹脂層及び第2硬化性樹脂組成物からなる第2樹脂層と内層基板との積層体を得た。さらに積層体を空気雰囲気下、180℃で60分間放置し、第1樹脂層及び第2樹脂層を硬化させて内層基板上に電気絶縁層を形成した。そして、このようにして得られた積層体硬化物について、上記方法に従って、配線埋め込み平坦性の評価を行った。
(膨潤処理工程)
得られた積層体硬化物を、膨潤液(「スウェリング ディップ セキュリガント P」、アトテック社製、「セキュリガント」は登録商標)500mL/L、水酸化ナトリウム3g/Lになるように調製した60℃の水溶液に15分間揺動浸漬した後、水洗した。
(酸化処理工程)
次いで、過マンガン酸塩の水溶液(「コンセントレート コンパクト CP」、アトテック社製)640mL/L、水酸化ナトリウム濃度40g/Lになるように調製した80℃の水溶液に15分間揺動浸漬をした後、水洗した。
(中和還元処理工程)
続いて、硫酸ヒドロキシルアミン水溶液(「リダクション セキュリガント P 500」、アトテック社製、「セキュリガント」は登録商標)100mL/L、硫酸35mL/Lになるように調製した40℃の水溶液に、積層体硬化物を5分間浸漬し、中和還元処理をした後、水洗した。
(クリーナー・コンディショナー工程)
次いで、クリーナー・コンディショナー水溶液(「アルカップ MCC−6−A」、上村工業社製、「アルカップ」は登録商標)を濃度50ml/Lとなるよう調整した50℃の水溶液に積層体硬化物を5分間浸漬し、クリーナー・コンディショナー処理を行った。次いで40℃の水洗水に積層体硬化物を1分間浸漬した後、水洗した。
(ソフトエッチング処理工程)
次いで、硫酸濃度100g/L、過硫酸ナトリウム100g/Lとなるように調製した水溶液に積層体硬化物を2分間浸漬しソフトエッチング処理を行った後、水洗した。
(酸洗処理工程)
次いで、硫酸濃度100g/Lなるよう調製した水溶液に積層体硬化物を1分間浸漬し酸洗処理を行った後、水洗した。
(触媒付与工程)
次いで、アルカップ アクチベータ MAT−1−A(商品名、上村工業社製、「アルカップ」は登録商標)が200mL/L、アルカップ アクチベータ MAT−1−B(商品名、上村工業社製、「アルカップ」は登録商標)が30mL/L、水酸化ナトリウムが0.35g/Lになるように調製した60℃のPd塩含有めっき触媒水溶液に積層体硬化物を5分間浸漬した後、水洗した。
(活性化工程)
続いて、アルカップ レデユーサ− MAB−4−A(商品名、上村工業社製、「アルカップ」は登録商標)が20mL/L、アルカップ レデユーサ− MAB−4−B(商品名、上村工業社製、「アルカップ」は登録商標)が200mL/Lになるように調整した水溶液に積層体硬化物を35℃で、3分間浸漬し、めっき触媒を還元処理した後、水洗した。
(アクセラレータ処理工程)
次いで、アルカップ アクセラレーター MEL−3−A(商品名、上村工業社製、「アルカップ」は登録商標)が50mL/Lになるように調製した水溶液に積層体硬化物を25℃で、1分間浸漬した。
(無電解めっき工程)
このようにして得られた積層体硬化物を、スルカップ PEA−6−A(商品名、上村工業社製、「スルカップ」は登録商標)100mL/L、スルカップ PEA−6−B−2X(商品名、上村工業社製)50mL/L、スルカップ PEA−6−C(商品名、上村工業社製)14mL/L、スルカップ PEA−6−D(商品名、上村工業社製)15mL/L、スルカップ PEA−6−E(商品名、上村工業社製)50mL/L、37%ホルマリン水溶液5mL/Lとなるように調製した無電解銅めっき液に空気を吹き込みながら、温度36℃で、20分間浸漬して無電解銅めっき処理して積層体硬化物表面(第2硬化性樹脂組成物かなる第2樹脂層表面)に無電解めっき膜を形成した。
次いで、無電解めっき膜を形成した積層体硬化物を、AT−21(商品名、上村工業社製)が10mL/Lになるよう調製した防錆溶液に室温で1分間浸漬した後、水洗した。さらに、乾燥することで、防錆処理積層体硬化物を作製した。この防錆処理が施された積層体硬化物を空気雰囲気下において150℃で30分間アニール処理を行った。そして、このようにして無電解めっき膜を形成した積層体硬化物について、上記方法に従って、ハローイング耐性の評価を行った。
(電気めっき工程)
アニール処理が施された積層体硬化物に、電解銅めっきを施し厚さ30μmの電解銅めっき膜を形成させた。次いで当該積層体硬化物を180℃で60分間加熱処理することにより、積層体硬化物上に前記金属薄膜層及び電解銅めっき膜からなる導体層を形成した両面2層の多層プリント配線板を得た。そして、このようにして得られた多層プリント配線板を用いて、上記方法に従って、めっき密着性、銅箔の初期密着性、及び高温高湿試験後の銅箔の密着性の評価を行った。
実施例2〜4、比較例1,2
表1の実施例2〜4及び比較例1,2における第1硬化性樹脂組成物の組成に従って、配合を変更した以外は、実施例1と同様にして、第1硬化性樹脂組成物のワニス、第2硬化性樹脂組成物のワニス、多層硬化性樹脂フィルム、積層体硬化物及び多層プリント配線板を得て、同様に測定、評価を行った。結果を表1に示す。
なお、表1において、「ビフェニルジメチレン骨格ノボラック型エポキシ樹脂」は、ノボラック型エポキシ化合物(A1)としてのビフェニルジメチレン骨格ノボラック型エポキシ樹脂(商品名「NC−3000H」、日本化薬社製、エポキシ当量290)である。
実施例5
第1硬化性樹脂組成物を調製する際に、高圧ホモジナイザーの代わりに、遊星式攪拌機を用いて、各成分を撹拌・混合した以外は、実施例1と同様に第1硬化性樹脂組成物のワニス、第2硬化性樹脂組成物のワニス、多層硬化性樹脂フィルム、積層体硬化物及び多層プリント配線板を得て、同様に測定、評価を行った。結果を表1に示す。
比較例3
第2硬化性樹脂組成物を使用せず、実施例1と同様に調製した第1硬化性樹脂組成物のワニスを、ドクターブレード(テスター産業社製)とオートフィルムアプリケーター(テスター産業社製)を用いて、厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(支持体)上に直接、塗布し、次いで、窒素雰囲気下、80℃で10分間乾燥させて、総厚みが38μmである第2樹脂層が形成された支持体付き硬化性樹脂フィルムを得た。すなわち、比較例3では、第2硬化性樹脂組成物からなる第2樹脂層のみからなる単層の硬化性樹脂フィルムを得た。そして、得られた単層の硬化性樹脂フィルムを用いた以外は、実施例1と同様にして、積層体硬化物及び多層プリント配線板を得て、同様に測定、評価を行った。結果を表1に示す。
表1に示すように、本発明の多層硬化性樹脂フィルムを用いて得られる電気絶縁層は、配線埋め込み平坦性に優れ、めっき密着性及び銅箔に対する密着性(銅箔の初期密着性)が良好であり、さらには、ハローイング耐性及び高温高湿試験後の銅箔の密着性に優れ、信頼性の高いものであることがわかる(実施例1〜5)。
一方、第1樹脂層を形成するための第1硬化性樹脂組成物に、層状無機充填剤(C2)を配合しない場合には、得られる電気絶縁層は、ハローイング耐性及び高温高湿試験後の銅箔の密着性に劣り、信頼性の低いものであった(比較例1)。
また、第1樹脂層を形成するための第1硬化性樹脂組成物中における、層状無機充填剤(C2)の配合量が多すぎる場合には、第1硬化性樹脂組成物の流動性が低下してしまい、得られる電気絶縁層は、配線埋め込み平坦性に劣る結果となった(比較例2)。
さらに、第2硬化性樹脂組成物からなる第2樹脂層を形成しなかった場合には、得られる電気絶縁層は、めっき密着性に劣るものであった(比較例3)。