JP2014117823A - 絶縁フィルム、プリプレグ、及び、硬化物 - Google Patents

絶縁フィルム、プリプレグ、及び、硬化物 Download PDF

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修平 早川
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Abstract

【課題】多層回路基板の電気絶縁層に使用できる良好な電気特性に加えて、優れた難燃性、耐熱性、及び、ピール強度、を兼ね備えた電気絶縁層を形成できる多層構造の絶縁フィルム、プリプレグ、及びそれらの硬化物を提供する。
【解決手段】極性基含有脂環式オレフィン重合体と、前記極性基含有脂環式オレフィン重合体の極性基と反応するエポキシ基を有するリン含有エポキシ化合物と、充填剤とを含む被めっき層用樹脂組成物からなる被めっき層と、接着層用樹脂組成物からなる接着層とを有する絶縁フィルム。
【選択図】なし

Description

本発明は、絶縁フィルム、プリプレグ、及び、硬化物に関する。
電子機器の小型化、多機能化、通信高速化などの追求に伴い、電子機器中の半導体素子などに使用される回路基板のさらなる高密度化が要求されており、このような要求に応えるため、多層構造を有する回路基板(以下、多層回路基板という)が使用されている。
このような多層回路基板は、例えば、電気絶縁層とその表面に形成された導体層とからなる内層基板の上に、電気絶縁層を積層し、この電気絶縁層の上に導体層を形成させ、さらに、これら電気絶縁層の積層と、導体層の形成と、を繰り返し行なうことにより形成される。ここで、多層回路基板の電気絶縁層を形成するために用いられる絶縁フィルムには、良好な電気特性が求められている。そこで、近年では、該絶縁フィルムとして、脂環式オレフィン重合体を含む樹脂組成物を用いて形成した、電気特性に優れるフィルムが検討されている。しかしながら、この脂環式オレフィン重合体を用いたフィルムは、誘電正接が小さい等、電気特性に優れるものの、難燃性が十分でない場合もあった。そのため、この難燃性を補うため様々な難燃剤を添加する技術が開発されている。このような技術として、例えば特許文献1には、重量平均分子量が10,000〜250,000であり、カルボキシル基又は酸無水物基を有する脂環式オレフィン重合体に、硬化剤と、難燃剤として特定構造のホスファゼン化合物とを配合してなる硬化性樹脂組成物が記載されている。この特許文献1に記載の硬化性樹脂組成物を硬化して得られる電気絶縁層(硬化物)は、難燃性に優れ、その表面にめっきにより微細な回路パターンを備える導体層を設けることが容易であり、更に、表面に形成した当該導体層との密着性に優れる。
特開2010−84026号公報
ここで、絶縁フィルムに求められる難燃性のレベルは近年さらに高まっており、難燃剤を添加しただけでは、該絶縁フィルムを硬化して得られる電気絶縁層の難燃性が十分ではない場合もあった。一方、十分な難燃性を確保するために十分な量の難燃剤を絶縁フィルムに配合すると、得られる電気絶縁層の耐熱性やピール強度に悪影響を及ぼすという問題もあった。即ち、従来の硬化性樹脂組成物よりなる絶縁フィルムを用いて形成した電気絶縁層では、優れた難燃性、耐熱性、及び、ピール強度を並立させることが困難であった。
また、近年では、互いに異なる複数の樹脂組成物よりなる層を積層して絶縁フィルムを形成することにより、様々な特性を併せ持つバランスの良い電気絶縁層を形成する試みもなされているが、そのような多層構造の絶縁フィルムにおいても、得られる電気絶縁性の難燃性、耐熱性、及び、ピール強度を並立させることが求められていた。
本発明は、これらの問題に鑑みてなされたものであり、優れた電気特性に加えて、優れた難燃性、耐熱性、及び、ピール強度を兼ね備えた電気絶縁層を形成できる多層構造の絶縁フィルム、プリプレグ、及び、それらの硬化物を提供することを目的とする。
本発明者らは、絶縁フィルムを内層基板等に積層して用いるにあたり、この内層基板等を構成する基材の表面に接着する接着層と、その表面に導体層が形成される被めっき層とを有する多層構造の絶縁フィルムにおいて、該被めっき層を構成する被めっき層用樹脂組成物に、極性基含有脂環式オレフィン重合体と、前記極性基含有脂環式オレフィン重合体の極性基と反応するエポキシ基を有するリン含有エポキシ化合物と、充填剤とを配合することで、該絶縁フィルムから形成される硬化物(電気絶縁層)の優れた電気特性に加えて、さらに難燃性、耐熱性、及び、ピール強度を優れたものとすることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
上記目的を達成するための本発明の要旨構成は、以下の通りである。
[1]極性基含有脂環式オレフィン重合体(A1)と、前記極性基含有脂環式オレフィン重合体(A1)の極性基と反応するエポキシ基を有するリン含有エポキシ化合物(A2)と、充填剤(A3)とを含む被めっき層用樹脂組成物からなる被めっき層と、接着層用樹脂組成物からなる接着層と、を有する絶縁フィルム。
このように、極性基含有脂環式オレフィン重合体(A1)と、前記極性基含有脂環式オレフィン重合体(A1)の極性基と反応するエポキシ基を有するリン含有エポキシ化合物(A2)と、充填剤(A3)とを配合した樹脂組成物からなる被めっき層を有する絶縁フィルムを用いることにより、硬化物とした際に、優れた電気特性に加えて、優れた難燃性、耐熱性、ピール強度を有する。また、接着層を介して内層基板などの基材の表面に良好に積層することができる。
[2]前記リン含有エポキシ化合物(A2)が、ホスファフェナントレン構造を有するエポキシ化合物である、前記絶縁フィルム。
このように、リン含有エポキシ化合物(A2)としてホスファフェナントレン構造を有するエポキシ化合物を用いることにより、本発明の絶縁フィルムから形成される硬化物の難燃性、耐熱性、ピール強度を十分に高めることができる。
[3]前記リン含有エポキシ化合物(A2)の含有量が、前記極性基含有脂環式オレフィン重合体(A1)100質量部当たり、50〜90質量部である、前記絶縁フィルム。
このように、リン含有エポキシ化合物(A2)の含有量を、極性基含有脂環式オレフィン重合体(A1)100質量部当たり50質量部以上とすることにより、絶縁フィルムから形成される硬化物の難燃性を十分に高めることができる。また、リン含有エポキシ化合物(A2)の含有量を、脂環式オレフィン重合体(A1)100質量部当たり90質量部以下とすることにより、硬化物の電気特性と、前記硬化物の表面にめっき層を設けた場合における当該めっき層と硬化物との間におけるめっき層のピール強度とのバランスを高度に確保できる。
[4]前記極性基含有脂環式オレフィン重合体(A1)の極性基が、カルボキシル基、カルボン酸無水物基、フェノール性ヒドロキシル基、及び、エポキシ基からなる群から選択される少なくとも1種である、前記絶縁フィルム。
このように、上述した極性基含有脂環式オレフィン重合体(A1)を用いることにより、極性基含有脂環式オレフィン重合体(A1)の極性基がリン含有エポキシ化合物(A2)のエポキシ基と反応して得られる硬化物の機械的強度、耐熱性に優れるという利点がある。
[5]前記被めっき層の厚みが1〜10μmであり、前記接着層の厚みが10〜100μmである、前記絶縁フィルム。
被めっき層の厚みを上記の範囲とすることで、絶縁フィルムを硬化して得られる硬化物に導体層を形成することが容易となり、かつ、該硬化物の線膨張を小さくすることができる。また、接着層の厚みを上記の範囲とすることで、絶縁フィルムの配線埋め込み性を良好なものとすることができ、かつ、本発明の絶縁フィルムを硬化してなる電気絶縁層の厚みが十分薄くなり、結果として該電気絶縁層を備える基板の厚みを薄くすることができる。
また、上述の通り被めっき層が高い難燃性を有するため、接着層に対して被めっき層を相対的に厚くした場合には、絶縁フィルムを硬化してなる電気絶縁層全体としての難燃性を向上できる。逆に、被めっき層に対して接着層を相対的に厚くした場合には、接着層がたとえば耐熱性や配線埋め込み性、表面平坦性等の各種特性に優れる場合には、絶縁フィルムを硬化してなる電気絶縁層全体としての上記接着層由来の各種特性を向上できる。また、例えば、相対的に充填剤含有量の少ない被めっき層と、相対的に充填剤含有量の多い接着層とを備える絶縁フィルムを形成した場合には、一般的に、充填剤含有量を多くすると線膨張係数が小さくなることから、被めっき層に対して接着層を相対的に厚くすることにより、絶縁フィルムを硬化してなる電気絶縁層全体としての線膨張係数を小さくできる。
[6]極性基含有脂環式オレフィン重合体(A1)と、前記極性基含有脂環式オレフィン重合体(A1)の極性基と反応するエポキシ基を有するリン含有エポキシ化合物(A2)と、充填剤(A3)とを含む被めっき層用樹脂組成物からなる被めっき層と、接着層用樹脂組成物からなる接着層と、繊維基材と、を備えるプリプレグ。
このように、極性基含有脂環式オレフィン重合体(A1)と、前記極性基含有脂環式オレフィン重合体(A1)の極性基と反応するエポキシ基を有するリン含有エポキシ化合物(A2)と、充填剤(A3)とを配合した樹脂組成物からなる被めっき層を有するプリプレグは、硬化物とした際に、優れた電気特性に加えて、優れた難燃性、耐熱性、ピール強度を有する。また、接着層を介して内層基板などの基材の表面に良好に積層することができる。
[7]前記絶縁フィルム、又は前記プリプレグを硬化してなる硬化物。
このように、上述した絶縁フィルム、又はプリプレグを硬化すれば、難燃性、耐熱性、ピール強度に優れる硬化物を提供することができる。
なお、本発明の硬化物は本発明の絶縁フィルム、プリプレグを硬化してなるものであれば特に限定されず、前記絶縁フィルム又は前記プリプレグを基材に積層してなる積層体を硬化したものも含まれる。
その他の発明として、以下の発明も提供できる。
[8]前記絶縁フィルム又は前記プリプレグを基材に積層してなる積層体。
[9]前記硬化物の表面に導体層を形成してなる複合体
上述した絶縁フィルム又はプリプレグを用いることにより、優れた電気特性に加えて、難燃性、ピール強度に優れる硬化物を形成できる積層体を提供することができる。そして、優れた電気特性に加えて、難燃性、耐熱性、ピール強度に優れる複合体を提供することができる。
なお、本明細書では、適宜、「極性基含有脂環式オレフィン重合体(A1)」を「脂環式オレフィン重合体(A1)」と略記し、「極性基含有脂環式オレフィン重合体(A1)の極性基と反応するエポキシ基を有するリン含有エポキシ化合物(A2)」を「リン含有エポキシ化合物(A2)」と略記するものとする。
本発明によれば、優れた電気特性に加えて、優れた難燃性、耐熱性、及び、ピール強度を兼ね備えた電気絶縁層を形成できる多層構造の絶縁フィルム、プリプレグ、及びそれらの硬化物を提供することができる。
以下、本発明についてその実施形態を例示して具体的に説明する。なお、本明細書において「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値および最大値として含む範囲を示す。
本発明の絶縁フィルムは、極性基含有脂環式オレフィン重合体(A1)と、前記極性基含有脂環式オレフィン重合体(A1)の極性基と反応するエポキシ基を有するリン含有エポキシ化合物(A2)と、充填剤(A3)とを含む被めっき層用樹脂組成物からなる被めっき層と、接着層用樹脂組成物からなる接着層とを有する多層構造のフィルムである。なお、本発明の絶縁フィルムは、被めっき層と接着層とが直接接してなる2層構造のフィルムとしてもよいし、被めっき層と接着層との間に任意の追加層を有する3層以上の多層構造のフィルムとしてもよい。ここで、追加層を形成するにあたっては、接着層自体を多層構成として形成することもでき、この場合、例えば、接着層を、樹脂組成物層と、繊維材料含有層(追加層に相当)とを含む多層構造とすることにより構成できる。前記追加層は、樹脂組成物を用いて形成してもよいし、樹脂フィルムであってもよいし、繊維基材層としてもよく、その材料や形状等は特に限定されない。
[被めっき層用樹脂組成物]
まず、本発明の絶縁フィルムの被めっき層を形成するための被めっき層用樹脂組成物について説明する。本発明で用いる被めっき層用樹脂組成物は、上述のように、極性基含有脂環式オレフィン重合体(A1)と、極性基含有脂環式オレフィン重合体(A1)の極性基と反応するエポキシ基を有するリン含有エポキシ化合物(A2)と、充填剤(A3)とを含む硬化性の樹脂組成物である。
<極性基含有脂環式オレフィン重合体(A1)>
本発明に用いる極性基含有脂環式オレフィン重合体(A1)は、単量体単位の一部又は全部に脂環式構造を含み、かつ、重合体分子中に少なくとも1つの極性基を有する。脂環式構造を有することで、被めっき層用樹脂組成物(硬化性樹脂組成物)から形成される硬化物の電気特性が良好となり、前記極性基とリン含有エポキシ化合物(A2)におけるエポキシ基との反応により、得られる硬化物の機械的強度を高めることができる。
脂環式オレフィン重合体(A1)が有する脂環式構造としては、シクロアルカン構造やシクロアルケン構造などが挙げられるが、脂環式オレフィン重合体(A1)を含む被めっき層用樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物の機械的強度や耐熱性などの観点からは、シクロアルカン構造が好ましい。また脂環式構造としては、特に限定されないが、単環、多環、縮合多環、橋架け環、及び、これらを組合せてなる多環などが挙げられる。脂環式構造を構成する炭素原子数は特に限定されないが、通常4〜30個、好ましくは5〜20個、より好ましくは5〜15個の範囲であり、環式構造を構成する炭素原子数がこの範囲にある場合に、機械的強度、耐熱性、及び成形性の諸特性が高度にバランスされ好適である。また、脂環式オレフィン重合体(A1)は、通常、熱可塑性であるが、硬化剤(リン含有エポキシ化合物(A2)を含む)と組合せて使用することで熱硬化性を示しうる。
脂環式オレフィン重合体(A1)の脂環式構造は、炭素原子で形成される脂環構造を有するオレフィン単量体単位、すなわち、脂環式オレフィン単量体単位よりなる。脂環式オレフィン重合体(A1)は、脂環式オレフィン単量体単位の他、その他の単量体単位を含んでいてもよい。脂環式オレフィン重合体(A1)中の脂環式オレフィン単量体単位の割合は、特に限定されないが、通常30〜100質量%、好ましくは50〜100質量%、より好ましくは70〜100質量%である。脂環式オレフィン単量体単位の割合が30質量%以上であることで、得られる硬化物の耐熱性に優れる。脂環式オレフィン単量体単位以外の単量体単位としては、格別な限定はなく、目的に応じて適宜選択される。
脂環式オレフィン重合体(A1)が含有する極性基としては、特に限定されないが、アルコール性ヒドロキシル基、フェノール性ヒドロキシル基、カルボキシル基、アルコキシル基、エポキシ基、グリシジル基、オキシカルボニル基、カルボニル基、アミノ基、エステル基、カルボン酸無水物基、スルホン酸基、リン酸基等が挙げられるが、これらの中でも脂環式オレフィン重合体(A1)が含有する極性基は、リン含有エポキシ化合物(A2)のエポキシ基と反応して得られる硬化物の機械的強度、耐熱性を優れたものとする観点から、カルボキシル基、カルボン酸無水物基、フェノール性ヒドロキシル基、及び、エポキシ基からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。なお、脂環式オレフィン重合体(A1)は極性基を1種含んでもよく2種以上含有してもよい。
また、脂環式オレフィン重合体(A1)の極性基は、重合体の主鎖を構成する原子に直接結合していてもよいし、メチレン基、オキシ基、オキシカルボニルオキシアルキレン基、フェニレン基などの他の二価の基を介して結合してもよい。脂環式オレフィン重合体(A1)中の極性基を有する単量体単位の含有率は、特に制限されないが、脂環式オレフィン重合体(A1)を構成する全単量体単位100モル%中、4モル%以上が好ましく、8モル%以上がより好ましく、60モル%以下が好ましく、50モル%以下が好ましい。
なお、本発明で用いる脂環式オレフィン重合体(A1)は、極性基及び脂環式構造に加え、芳香環を有していてもよい。脂環式オレフィン重合体(A1)として極性基を有する芳香環含有脂環式オレフィン重合体を使用すれば、被めっき層用樹脂組成物の剛直さが増加し、該樹脂組成物を用いて形成した絶縁フィルムの強度が増加するからである。また、極性基を有する芳香環含有脂環式オレフィン重合体は、被めっき層用樹脂組成物に配合し得る他の化合物との相溶性に優れるからである。
そして、本発明に用いる脂環式オレフィン重合体(A1)は、例えば、以下の方法により得ることができる。すなわち、(1)極性基を有する脂環式オレフィンを、必要に応じて他の単量体を加えて、重合する方法、(2)極性基を有しない脂環式オレフィンを、極性基を有する単量体と共重合する方法、(3)極性基を有する芳香族オレフィンを、必要に応じて他の単量体を加えて、重合し、これにより得られる重合体の芳香環部分を水素化する方法、(4)極性基を有しない芳香族オレフィンを、極性基を有する単量体と共重合し、これにより得られる重合体の芳香環部分を水素化する方法、又は、(5)極性基を有しない脂環式オレフィン重合体に極性基を有する化合物を変性反応により導入する方法、もしくは、(6)上述の(1)〜(5)のようにして得られる極性基(例えばカルボン酸エステル基など)を有する脂環式オレフィン重合体の極性基を、例えば加水分解することなどにより他の極性基(例えばカルボキシル基)に変換する方法、などにより得ることができる。これらのなかでも、脂環式オレフィン重合体に極性基を容易な反応条件で効率よく導入できるという観点から、(1)の方法によって得られる重合体が好適である。また、脂環式オレフィン重合体(A1)を得る重合法は開環重合や付加重合が用いられるが、開環重合の場合には得られた開環重合体を水素添加することが好ましい。極性基を有する芳香環含有脂環式オレフィン重合体は、例えば(7)上述の(1)の方法の極性基を有する脂環式オレフィンとして、極性基を有する芳香環含有脂環式オレフィンを用いて重合する方法、(8)上述の(2)の方法の極性基を有しない脂環式オレフィンとして、極性基を有しない芳香環含有脂環式オレフィンを用いて重合する方法、により得ることができる。
上記極性基を有する脂環式オレフィンの例としては、特に限定されないが、5−ヒドロキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メチル−5−ヒドロキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−カルボキシメチル−5−ヒドロキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、9−ヒドロキシカルボニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−メチル−9−ヒドロキシカルボニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−カルボキシメチル−9−ヒドロキシカルボニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、5−エキソ−6−エンド−ジヒドロキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、9−エキソ−10−エンド−ジヒドロキシカルボニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、などのカルボキシル基を有する脂環式オレフィン;ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン−5,6−ジカルボン酸無水物、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン−9,10−ジカルボン酸無水物、ヘキサシクロ[10.2.1.13,10.15,8.02,11.04,9]ヘプタデカ−6−エン−13,14−ジカルボン酸無水物、などのカルボン酸無水物基を有する脂環式オレフィン;9−メチル−9−メトキシカルボニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、5−メトキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メチル−5−メトキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、などのカルボン酸エステル基を有する脂環式オレフィン;(5−(4−ヒドロキシフェニル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、9−(4−ヒドロキシフェニル)テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、N−(4−ヒドロキシフェニル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミドなどのフェノール性ヒドロキシル基を有する脂環式オレフィン;5−エポキシエチルー2−ノルボルネン、9−エポキシエチルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エンなどのエポキシ基を有する脂環式オレフィン、などが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記極性基を有しない脂環式オレフィンの例としては、特に限定されないが、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(慣用名:ノルボルネン)、5−エチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−ブチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−エチリデン−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メチリデン−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−ビニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−3,8−ジエン(慣用名:ジシクロペンタジエン)、テトラシクロ〔6.2.1.13,6.02,7〕ドデカ−4−エン(慣用名:テトラシクロドデセン)、9−メチル−テトラシクロ〔6.2.1.13,6.02,7〕ドデカ−4−エン、9−エチル−テトラシクロ〔6.2.1.13,6.02,7〕ドデカ−4−エン、9−メチリデン−テトラシクロ〔6.2.1.13,6.02,7〕ドデカ−4−エン、9−エチリデン−テトラシクロ〔6.2.1.13,6.02,7〕ドデカ−4−エン、9−メトキシカルボニル−テトラシクロ〔6.2.1.13,6.02,7〕ドデカ−4−エン、9−ビニル−テトラシクロ〔6.2.1.13,6.02,7〕ドデカ−4−エン、9−プロペニル−テトラシクロ〔6.2.1.13,6.02,7〕ドデカ−4−エン、9−フェニル−テトラシクロ〔6.2.1.13,6.02,7〕ドデカ−4−エン、テトラシクロ[9.2.1.02,10.03,8]テトラデカ−3,5,7,12−テトラエン、シクロペンテン、シクロペンタジエンなどが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
上記極性基を有しない芳香族オレフィンの例としては、特に限定されないが、スチレン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼンなどが挙げられる。これらの具体例が前記極性基を有する場合、極性基を有する芳香族オレフィンの例として挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
上記極性基を有する芳香環含有脂環式オレフィンの例としては、特に限定されないが、フェノール性ヒドロキシル基を有する脂環式オレフィンや、1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロジベンゾフラン、1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロジベンゾチアジン、1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロカルバゾール、1,4−メタノ−9−フェニル−1,4,4a,9a−テトラヒドロカルバゾール、4−カルボキシフェニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、N−(4−カルボキシフェニル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミドなどが挙げられる。
上記極性基を有しない芳香環含有脂環式オレフィンの例としては、特に限定されないが、9−フェニル−テトラシクロ〔6.2.1.13,6.02,7〕ドデカ−4−エンや、5−(4−メチルフェニルー2−ノルボルネン、5−(1−ナフチル)−2−ノルボルネン、テトラシクロ[9.2.1.02,10.03,8]テトラデカ−3,5,7,12−テトラエン(MTF)、1,4−メタノ−1,4,4a,4b,5,8,8a,9a−オクタヒドロフルオレンなどが挙げられる。
上記極性基を有する単量体としては、特に限定されないが、極性基を有するエチレン性不飽和化合物が挙げられる。該極性基を有するエチレン性不飽和化合物の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、α−エチルアクリル酸、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸などの不飽和カルボン酸化合物;無水マレイン酸、ブテニル無水コハク酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水シトラコン酸などの不飽和カルボン酸無水物;などが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
極性基を有しない単量体としては、極性基を有しないエチレン性不飽和化合物が挙げられる。該極性基を有しないエチレン性不飽和化合物の例としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセンなどの炭素数2〜20のエチレン又はα−オレフィン;1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエンなどの非共役ジエン;などが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
本発明に用いる脂環式オレフィン重合体(A1)の重量平均分子量は、特に限定されないが、絶縁フィルムを硬化して得られる硬化物の機械的強度を良好とするためには、500以上であることが好ましく、1,000以上であることがより好ましく、3,000以上であることが特に好ましく、また、絶縁フィルムを成形する際の作業性を良好とするためには、1,000,000以下であることが好ましく、500,000以下であることがより好ましく、300,000以下であることが特に好ましい。なお、本発明において、重量平均分子量は、テトラヒドロフランを溶媒として使用したゲルパーミエーションクロマトグラフィにより測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量を指す。
本発明に用いる脂環式オレフィン重合体(A1)を、開環重合法により得る場合の重合触媒としては、例えば国際公開第2012/090980号に記載の従来公知のメタセシス重合触媒を用いることができる。メタセシス重合触媒としては、Mo,W,Nb,Ta,Ruなどの原子を含有してなる遷移金属化合物が例示され、なかでも、Mo,WまたはRuを含有する化合物は重合活性が高くて好ましい。特に好ましいメタセシス重合触媒の具体的な例としては、<1>ハロゲン基、イミド基、アルコキシ基、アリロキシ基またはカルボニル基を配位子として有する、モリブデンあるいはタングステン化合物を主触媒とし、有機金属化合物を第二成分とする触媒や、<2>Ruを中心金属とする金属カルベン錯体触媒を挙げることができる。なお、脂環式オレフィン重合体(A1)の重合は、特に限定されることなく、例えば国際公開第2012/090980号に記載の方法を用いて行うことができる。
ここで、脂環式オレフィン重合体(A1)の分子量を調整する方法としては、ビニル化合物又はジエン化合物を適当量添加する方法を挙げることができる。分子量調整に用いるビニル化合物は、ビニル基を有する有機化合物であれば特に限定されないが例えば国際公開第2012/090980号に記載の化合物を挙げることができる。ビニル化合物又はジエン化合物の添加量は、目的とする分子量に応じて、重合に用いる単量体に対して、0.1〜10モル%の間で任意に選択することができる。
本発明に用いる脂環式オレフィン重合体(A1)を、付加重合法により得る場合の重合触媒としては、例えば国際公開第2012/090980号に記載の、チタン、ジルコニウムまたはバナジウム化合物と有機アルミニウム化合物とからなる触媒が好適に用いられる。これらの重合触媒は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明に用いる脂環式オレフィン重合体(A1)として、開環重合体の水素添加物を用いる場合の、開環重合体に対する水素添加は、通常、水素添加触媒を用いて行われる。水素添加触媒は特に限定されず、オレフィン化合物の水素添加に際して一般的に使用されているものを適宜採用すればよい。水素添加触媒としては、例えば、国際公開第2012/090980号に記載の公知の触媒を用いることが可能である。
水素添加反応は、通常、有機溶媒中で行う。有機溶媒は生成する水素添加物の溶解性により適宜選択することができ、上述した重合反応に用いる有機溶媒と同様の有機溶媒を使用することができる。したがって、重合反応後、有機溶媒を入れ替えることなく、そのまま水素添加触媒を添加して反応させることもできる。さらに、上述した重合反応に用いる有機溶媒の中でも、水素添加反応に際して反応しないという観点から、芳香族炭化水素系溶媒、脂肪族炭化水素系溶媒、エーテル系溶媒、芳香族エーテル系溶媒が好ましく、芳香族エーテル系溶媒がより好ましい。
なお、水素添加反応条件は、使用する水素添加触媒の種類に応じて適宜選択すればよく、例えば、国際公開第2012/090980号に記載の条件を用いることができる。
本発明に用いる脂環式オレフィン重合体(A1)は、重合や水素添加反応後の重合体溶液として使用しても、溶媒を除去した後に使用してもどちらでもよいが、被めっき層用樹脂組成物を調製する際に添加剤の溶解や分散が良好になるとともに、工程が簡素化できるため、重合体溶液として使用するのが好ましい。
<リン含有エポキシ化合物(A2)>
本発明に用いるリン含有エポキシ化合物(A2)とは、分子構造中にリン原子が化学結合により組み込まれているエポキシ化合物であれば特に限定されない。また、リン含有エポキシ化合物のエポキシ基は、加熱等により極性基含有脂環式オレフィン重合体(A1)の極性基と反応する。本発明において、被めっき層用樹脂組成物に該リン含有エポキシ化合物(A2)を配合することで、絶縁フィルムを硬化して得られる硬化物の難燃性、耐熱性、めっきピール強度を優れたものとすることができる。
分子構造中にリン原子を化学結合により組み込みうるエポキシ化合物としては、特に限定されないが、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂等のグリシジルエーテル系エポキシ樹脂;ヘキサヒドロフタル酸グリシジルエステル、ダイマー酸グリシジルエステル等のグルシジルエステル系エポキシ樹脂;トリグリシジルイソシアヌレート、テトラグリシジリジアミノジフェニルメタン等のグリシジルアミン系エポキシ樹脂;エポキシ化ポリブタジエン、エポキシ化大豆油等の線状脂肪族エポキサイド系樹脂を骨格としているものが挙げられる。
本発明において使用可能なリン含有エポキシ化合物としては、例えば上記のエポキシ化合物に、リン含有化合物を反応させて得ることができるものが挙げられる。そのようなリン含有エポキシ化合物としては、例えば、特開平5−214068号公報や特開2000−336145号公報に記載のジフェニルホスフィニルハイドロキノンをエポキシ化合物と反応させることにより得られるリン含有エポキシ化合物が挙げられる。その他にも、公知のリン含有エポキシ化合物を使用可能であるが、下記のホスファフェナントレン構造を有するエポキシ化合物を使用することが好ましい。
ここで、「ホスファフェナントレン構造を有する」とは、以下の式(I)で表される基を分子中に有することをいう。
Figure 2014117823
被めっき層用樹脂組成物にホスファフェナントレン構造を有するエポキシ化合物を配合することで、該エポキシ化合物のエポキシ基と、極性基含有脂環式オレフィン重合体(A1)の極性基との反応に基づいて得られる硬化物の難燃性および耐熱性を優れたものとすることができる。
ホスファフェナントレン構造を有するエポキシ化合物としては、特に限定されないが、例えば、ホスファフェナントレン構造を有するビフェニル型エポキシ化合物、ホスファフェナントレン構造を有するビスフェノール型エポキシ化合物、ホスファフェナントレン構造を有するフェノール系ノボラック型エポキシ化合物、などが挙げられる。
ホスファフェナントレン構造を有するビフェニル型エポキシ化合物としては、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド又はその誘導体を用いてビフェニル型エポキシ樹脂を公知の方法で変性することにより得られる各種のホスファフェナントレン構造を有するビフェニル型エポキシ化合物などが挙げられる。これらの例としては、特に限定されないが、下記式(II)に示すような構造を有する三菱化学社製のYX4000を、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシドを用いて変性して得られるエポキシ化合物が挙げられる。
Figure 2014117823
(式中、nは0または自然数)
ホスファフェナントレン構造を有するビスフェノール型エポキシ化合物としては、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド又はその誘導体を用いて、ビスフェノールA型エポキシ樹脂やビスフェノールF型エポキシ樹脂などのビスフェノール型エポキシ樹脂を公知の方法で変性することにより得られる各種のホスファフェナントレン構造を有するビスフェノール型エポキシ化合物などが挙げられる。これらの例として、特に限定されないが、下記式(III)に示すような構造を有する新日鉄住金化学社製のFX305EK70が挙げられる。
Figure 2014117823
ホスファフェナントレン構造を有するフェノール系ノボラック型エポキシ化合物としては、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド又はその誘導体を用いて、フェノール系ノボラック型エポキシ樹脂を公知の方法で変性することにより得られる各種のホスファフェナントレン構造を有するフェノール系ノボラック型エポキシ化合物などが挙げられる。これらの例として、例えば、新日鉄住金化学社製のFX289BEK75が挙げられる。
本発明に用いるリン含有エポキシ化合物(A2)としては、その分子内にエポキシ基を1つ以上有する任意のものを用いることができるが、本発明においては、リン含有エポキシ化合物(A2)中の2以上のエポキシ基が極性基含有脂環式オレフィン重合体(A1)の極性基と架橋することにより、その架橋密度を向上できるため、得られる硬化物の難機械的強度や耐熱性、線膨張率の低下、ひいては電気特性の向上にも寄与できるとの観点から分子内に少なくとも2つのエポキシ構造(エポキシ基)を有する多価エポキシ化合物が好ましい。
被めっき層用樹脂組成物中のリン含有エポキシ化合物(A2)の含有量は、脂環式オレフィン重合体(A1)100質量部当たり、50質量部以上が好ましく、60質量部以上がより好ましく、90質量部以下が好ましく、85質量部以下が更に好ましく、80質量部以下がより好ましく、65質量部以下が特に好ましい。脂環式オレフィン重合体(A1)100質量部当たり50質量部以上の割合でリン含有エポキシ化合物(A2)を配合することにより、得られる硬化物の難燃性を十分に高めることができる。また、脂環式オレフィン重合体(A1)100質量部当たり90質量部以下の割合でリン含有エポキシ化合物(A2)を配合することにより、硬化物の電気特性と、前記硬化物の表面にめっき層を設けた場合における当該めっき層と硬化物との間におけるめっき層のピール強度とのバランスを高度に確保できる。さらに、脂環式オレフィン重合体(A1)100質量部当たり80質量部以下の割合でリン含有エポキシ化合物(A2)を配合することにより、硬化物の表面粗度を良好なものとすることができる。
被めっき層用樹脂組成物中、リン含有エポキシ化合物(A2)由来のエポキシ基と、脂環式オレフィン重合体(A1)由来の極性基(すなわち、リン含有エポキシ化合物(A2)のエポキシ基と反応性を有する基(エポキシ反応性基)との比率は、「エポキシ基/エポキシ反応性基(極性基)」の当量比で、0.8以上が好ましく、1.2以下が好ましい。「エポキシ基/エポキシ反応性基(極性基)」を0.8以上とすれば、得られる硬化物の難燃性を十分に高めることができ、1.2以下とすれば、得られる硬化物の表面粗度を適度な大きさとすることができる。
被めっき層用樹脂組成物において、リン含有量は、0.8〜5質量%が好ましく、1〜2.5質量%がより好ましい。リン含有量を上記の範囲とすることにより、得られる硬化物の難燃性に加えて、電気特性を優れたものとすることができる。なお、被めっき層用樹脂組成物において「リン含有量」とは、被めっき層用樹脂組成物中のリン原子の質量を、被めっき層用樹脂組成物の固形分の質量から充填剤(A3)の質量を除いた質量で除した値(質量%)をいう。
また、被めっき層用樹脂組成物中、脂環式オレフィン重合体(A1)の質量に対するリン原子の質量(以下、適宜「リン原子質量/COP質量」と略記する)は、1〜5質量%であることが好ましく、1.6〜3質量%であることがより好ましい。リン原子質量/COP質量を上記の範囲とすることにより、得られる硬化物の難燃性に加えて、電気特性を優れたものとすることができる。
<充填剤(A3)>
本発明に用いる充填剤(A3)としては、工業的に一般的に使用されている無機充填剤、有機充填剤であれば格別な限定はなく使用することができるが、無機充填剤が好ましい。充填剤(A3)を被めっき層用樹脂組成物に配合することにより、絶縁フィルムを硬化して得られる硬化物の低線膨張性を優れたものにできるとともに、難燃性を向上できる。なお、被めっき層用樹脂組成物における充填剤(A3)の配合割合が多くなればなるほど、被めっき層用樹脂組成物中の樹脂割合が減少することにより、その難燃性をより一層向上できる。
無機充填剤の例としては、特に限定されないが、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸ジルコニウム、水和アルミナ、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、シリカ、タルク、クレーなどを挙げることができる。これらの中でも、硬化物の表面粗化処理に使用される過マンガン酸塩の水溶液などの酸化性化合物により、分解もしくは溶解しないものが好ましく、その中でも特にシリカが、微細な粒子が得やすいため好ましい。なお、充填剤は、組成物中への充填剤の分散性や硬化物の耐水性の観点から、エポキシ基、アミノ基、イソシアネート基、イミダゾール基などの官能基を有するシランカップリング剤で表面処理されていることが好ましい。なお、充填剤(A3)としては、リン原子を含有する充填剤やリン原子を含有しない充填剤を用いることができるが、通常は、リン原子を含有しない充填剤(とくに上述の無機充填剤)を用いる。
また、充填剤(A3)としては、絶縁フィルムを硬化させて電気絶縁層として用いた場合における誘電特性を低下させない非導電性のものであることが好ましい。なお、充填剤(A3)としては、特に限定されず、例えば国際公開第2012/090980号に記載の形状や平均粒子径を有する無機充填剤を用いることができる。
被めっき層用樹脂組成物中の充填剤(A3)の含有量は、脂環式オレフィン重合体(A1)100質量部当たり、15質量部以上が好ましく、30質量部以上がより好ましく、200質量部以下が好ましく、150質量部以下がより好ましい。脂環式オレフィン重合体(A1)100質量部当たり15質量部以上の割合で充填剤(A3)を配合することにより、耐熱性を向上できる。また、脂環式オレフィン重合体(A1)100質量部当たり200質量部以下の割合で充填剤(A3)を配合することにより、硬化物表面の粗度を適宜なものにでき、硬化物の表面にめっき層を設けた場合における当該めっき層と硬化物との間におけるめっき層のピール強度と硬化物の電気特性とのバランスを確保できる。
<その他の成分>
また、本発明の絶縁フィルムに用いる被めっき層用樹脂組成物は、上記成分以外に、ヒンダードフェノール化合物やヒンダードアミン化合物、硬化促進剤、難燃剤、難燃助剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、老化防止剤、紫外線吸収剤(レーザー加工性向上剤)、レベリング剤、帯電防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、染料、天然油、合成油、ワックス、乳剤、磁性体、誘電特性調整剤、靭性剤などの任意成分を配合してもよい。これらの任意成分の配合割合は、本発明の目的を損なわない範囲で適宜選択すればよい。
本発明の絶縁フィルムに用いる被めっき層用樹脂組成物の製造方法としては、特に限定されるものではなく、上記各成分を、そのまま混合してもよいし、有機溶剤に溶解もしくは分散させた状態で混合してもよいし、上記各成分の一部を有機溶剤に溶解もしくは分散させた状態の組成物を調製し、当該組成物に残りの成分を混合してもよい。
[接着層用樹脂組成物]
次いで、本発明の絶縁フィルムの接着層を形成するための接着層用樹脂組成物について説明する。本発明に用いる接着層用樹脂組成物の配合としては、得られる接着層が基材(例えば、絶縁フィルムが積層される内層基板など)の表面形状に追従可能であり、かつ、基材と接着するものであれば特に限定されず、絶縁フィルムに用いられる一般的な配合を使用することができる。そして、接着層用樹脂組成物としては、熱硬化性樹脂(B1)と、充填剤(B2)とを含むものを好適に用いることができる。なお、接着用樹脂組成物の配合組成は、前記被めっき層用樹脂組成物の配合組成とは異なるものである。
<熱硬化性樹脂(B1)>
接着用樹脂組成物に用いる熱硬化性樹脂(B1)は、熱硬化性樹脂(B1)単独で、もしくは後述する硬化剤(B3)との組み合わせで熱硬化性を示し、電気絶縁性を有するものであれば特に制限されない。熱硬化性樹脂(B1)としては、例えば、エポキシ樹脂、マレイミドトリアジン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、脂環式オレフィン重合体、芳香族ポリエーテル重合体、ベンゾシクロブテン重合体、シアネ−トエステル樹脂、およびポリイミドなどを挙げることができる。これらの熱硬化性樹脂(B1)は、それぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて用いられる。そして熱硬化性樹脂(B1)として、耐熱性、耐水性、電気特性の観点からは、脂環式構造を含有する樹脂、フルオレン構造を含有する樹脂が好ましい。更に、熱硬化性樹脂(B1)としては、エポキシ基を含有するもの(即ちエポキシ樹脂)が好ましく、架橋密度を増加させて樹脂強度を向上させる観点から、少なくとも2つのエポキシ基を有するものがより好ましい。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」とはメタクリルまたはアクリルを意味する。
まず、熱硬化性樹脂(B1)樹脂として使用可能な、脂環式構造を含有する樹脂について以下説明する。脂環式構造を含有する樹脂としては、例えば、脂環式オレフィン重合体が挙げられる。なお、脂環式構造としては、例えば、上述の脂環式オレフィン重合体(A1)の脂環式構造と同様のものが挙げられる。脂環式オレフィン重合体としては、極性基を有していても有しなくもよいが、極性基を有するものが好ましい。極性基としては、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アルコキシル基、エポキシ基、グリシジル基、オキシカルボニル基、カルボニル基、アミノ基、エステル基、及びカルボン酸無水物基などが挙げられ、特に、エポキシ基が好適である。脂環式オレフィン重合体を構成する全繰り返し単位100モル%中、極性基を有する繰り返し単位の含有率は、特に制限されないが、通常、5〜60モル%、好ましくは10〜50モル%である。なお、各繰り返し単位に存在する極性基の数は特に制限されないが、通常、1〜2個が好適である。
上記脂環式オレフィン重合体の製造方法としては、例えば、脂環式オレフィン単量体を付加重合又は開環重合し、所望により不飽和結合部分を水素化する方法、或いは芳香族オレフィン単量体を付加重合し、得られた重合体の芳香環部分を水素化する方法等が挙げられる。
そして特に、熱硬化性樹脂(B1)として好ましい、極性基含有脂環式オレフィン重合体は、上述の被めっき層に含まれる、極性基含有脂環式オレフィン重合体(A1)と同様の方法を用いて製造することができる。
熱硬化性樹脂(B1)樹脂として使用可能な、脂環式構造を含有する樹脂としては、少なくとも2つのエポキシ基を含有する脂環式オレフィン重合体が特に好ましい。少なくとも2つのエポキシ基を含有する脂環式オレフィン重合体としては、たとえば、商品名「EPICLON(登録商標) HP7200L」、「EPICLON HP7200」、「EPICLON HP7200H」、「EPICLON HP7200HH」(以上、大日本インキ化学工業社製);商品名「Tactix(登録商標)558」(ハンツマン・アドバンスト・マテリアル社製);商品名「XD−1000−1L」、「XD−1000−2L」(以上、日本化薬社製)などのジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂が挙げられる。
次に、熱硬化性樹脂(B1)樹脂として使用可能な、フルオレン構造を含有する樹脂について以下説明する。ここで、「フルオレン構造を含有する」とは、以下の式(IV)で表されるフルオレン構造を分子中に含有することをいう(即ち、フルオレン中の一つ又は複数の水素原子が置換されることにより、分子中に組み込まれている構造をいう)。
Figure 2014117823
熱硬化性樹脂(B1)として好適に使用される、少なくとも2つのエポキシ基を有するフルオレン構造含有エポキシ樹脂としては、たとえば、商品名「オンコートEX−1010」、「オンコートEX−1011」、「オンコートEX−1012」、「オンコートEX−1020」、「オンコートEX−1030」、「オンコートEX−1040」、「オンコートEX−1050」、「オンコートEX−1051」(以上、長瀬産業社製);商品名「オグソールPG−100」、「オグソールEG−200」、「オグソールEG−250」(以上、大阪ガスケミカル社製)などが挙げられる。
<硬化剤(B3)>
また、接着層用樹脂組成物には、必要に応じて硬化剤(B3)を含めてもよい。硬化剤(B3)は、使用する熱硬化性樹脂(B1)の種類に応じて適宜公知のものを選択して使用すればよく、即ち、熱硬化性樹脂(B1)と反応性を有する基を含有するものを使用すればよい。以下、熱硬化性樹脂(B1)としてエポキシ基を含有するもの(エポキシ樹脂)を用いた場合を例示して、好適な硬化剤(B3)について説明する。ここでエポキシ樹脂とはエポキシ基を有していれば特に限定されず、エポキシ基を含有する脂環式オレフィン重合体も含まれるものである。
エポキシ樹脂に対して用いる硬化剤(B3)としては、当該エポキシ樹脂を硬化させることができれば特に限定されず、例えば、エポキシ基と反応する基を有する脂環式オレフィン重合体、ジシアンジアミド、アミン化合物、アミン化合物から合成される化合物、ヒドラジド化合物、メラミン化合物、酸無水物、フェノール化合物(フェノール硬化剤)、活性エステル化合物、ベンゾオキサジン化合物、マレイミド化合物、熱潜在性カチオン重合触媒、光潜在性カチオン重合開始剤又はシアネート樹脂等が挙げられる。これらの硬化剤の誘導体を用いてもよい。硬化剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。また、硬化剤とともに、アセチルアセトン鉄等の硬化触媒を用いてもよい。上述のアミン化合物、アミン化合物から合成される化合物、ヒドラジド化合物、メラミン化合物、酸無水物としては、例えば、フタル酸無水物、トリメリット酸無水物、ピロメリット酸無水物、フェノール化合物としては、例えば国際公開第2010/035451号に記載のものを用いることができる。
これらエポキシ樹脂に対して用いる硬化剤(B3)としては、電気特性や耐水性の観点から、エポキシ基と反応する基を有する脂環式オレフィン重合体、活性エステル化合物が好ましい。
上記エポキシ基と反応する基を有する脂環式オレフィン重合体中の、「エポキシ基と反応する基」としては、例えば、酸無水物基等の極性基が好ましく挙げられ、これらの中でも酸無水物基が特に好ましい。エポキシ基と反応する基を有する脂環式オレフィン重合体は、上述の被めっき層に含まれる、極性基含有脂環式オレフィン重合体(A1)と同様の方法を用いて製造することができる。
また、上記活性エステル化合物は、活性エステル基を有するものであれば特に限定されないが、分子内に少なくとも2つの活性エステル基を有する化合物が好ましい。活性エステル化合物としては、耐熱性等の観点から、カルボン酸化合物及び/又はチオカルボン酸化合物と、ヒドロキシ化合物及び/又はチオール化合物とを反応させて得られる活性エステル化合物が好ましく、カルボン酸化合物と、フェノール化合物、ナフトール化合物及びチオール化合物からなる群から選択される1種又は2種以上とを反応させて得られる活性エステル化合物がより好ましく、カルボン酸化合物とフェノール性ヒドロキシル基を有する芳香族化合物とを反応させて得られ、かつ、分子内に少なくとも2つの活性エステル基を有する芳香族化合物が特に好ましい。活性エステル化合物は、直鎖状であっても多分岐状であってもよい。活性エステル化合物が、少なくとも2つのカルボン酸を分子内に有する化合物に由来する場合を例示すると、このような少なくとも2つのカルボン酸を分子内に有する化合物が、脂肪族鎖を含む場合には、エポキシ樹脂との相溶性を高くすることができ、また、芳香族環を有する場合には、得られる硬化物の耐熱性を高くすることができる。
活性エステル化合物を形成するためのカルボン酸化合物、フェノール化合物、ナフトール化合物、チオール化合物としては、特開2012−153885号公報に記載のものを用いることができる。
ここで、活性エステル化合物としては、たとえば、特開2002−12650号公報に記載されている活性エステル基を持つ芳香族化合物及び特開2004−277460号公報に記載されている多官能性ポリエステル、あるいは、市販のものを用いることができる。市販されている活性エステル化合物としては、たとえば、商品名「EXB9451」、「EXB9460」、「EXB9460S」、「EPICLON HPC−8000−65T」(以上、DIC社製)、商品名「DC808」(三菱化学社製)、商品名「YLH1026」(三菱化学社製)などが挙げられる。
活性エステル化合物の製造方法は特に限定されず、公知の方法により製造ができるが、たとえば、カルボン酸化合物及び/又はチオカルボン酸化合物とヒドロキシ化合物及び/又はチオール化合物との縮合反応によって得ることができる。
ここで、硬化剤(B3)の配合量は、エポキシ樹脂100質量部当たり、好ましくは20〜120質量部、より好ましくは40〜100質量部、さらに好ましくは50〜90質量部の範囲である。また、硬化剤(B3)として活性エステル化合物を使用した場合を例示すると、エポキシ樹脂および活性エステル化合物等を含む接着層用樹脂組成物中、エポキシ樹脂由来のエポキシ基と、活性エステル化合物由来の活性エステル基との比率は、「エポキシ基/活性エステル基」の当量比で、好ましくは0.5〜1.25、より好ましくは0.7〜1.1、さらに好ましくは0.8〜1.05である。活性エステル化合物の配合量を上記範囲とすることにより、硬化物としての電気特性、及び耐熱性を向上させ、熱膨張率を小さく抑えることができる。
<充填剤(B2)>
充填剤(B2)は、上述した被めっき層用樹脂組成物を構成する充填剤(A3)と同様のものを用いることができる。本発明に用いる充填剤(B2)の配合量は、熱硬化性樹脂(B1)100質量部当たり、50質量部以上が好ましく、60質量部以上がより好ましく、85質量部以下が好ましく、80質量部以下がより好ましい。上記の範囲で充填剤(B3)を配合することにより、得られる硬化物の線膨張係数を小さくでき、かつ積層性を向上できる。
<その他の成分>
また、本発明で用いる接着層用樹脂組成物は、上記成分以外に、上述した被めっき層用樹脂組成物と同様に、硬化促進剤、難燃剤、難燃助剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、老化防止剤、紫外線吸収剤(レーザー加工性向上剤)、レベリング剤、帯電防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、染料、天然油、合成油、ワックス、乳剤、磁性体、誘電特性調整剤、靭性剤などの任意成分を適宜配合してもよい。
本発明で用いる接着層用樹脂組成物の製造方法としては、特に限定されるものではなく、上記各成分を、そのまま混合してもよいし、有機溶剤に溶解もしくは分散させた状態で混合してもよいし、上記各成分の一部を有機溶剤に溶解もしくは分散させた状態の組成物を調製し、当該組成物に残りの成分を混合してもよい。
(絶縁フィルム)
本発明の絶縁フィルムは、上述した被めっき層用樹脂組成物からなる被めっき層と、上述した接着層用樹脂組成物からなる接着層とを有するものである。
本発明の絶縁フィルムは、たとえば、以下の2つの方法:(1)上述した被めっき層用樹脂組成物を支持体上に塗布、散布又は流延し、必要に応じて乾燥させて被めっき層を形成し、次いで、その上に、上述した接着層用樹脂組成物をさらに塗布又は流延し、必要に応じて乾燥させることにより接着層を形成する方法;(2)上述した被めっき層用樹脂組成物を支持体上に塗布、散布又は流延し、必要に応じて乾燥させて得られたシート状又はフィルム状に成形してなる被めっき層用成形体と、上述した接着層用樹脂組成物を支持体上に塗布、散布又は流延し、必要に応じて乾燥させて、シート状又はフィルム状に成形してなる接着層用成形体とを積層し、これらの成形体を一体化させることにより製造する方法、により製造することができる。これらの製造方法の内、より容易なプロセスであり生産性に優れることから、上記(1)の製造方法が好ましい。なお、被めっき層と接着層との間に任意の追加層を有する絶縁フィルムを製造する場合には、例えば、上記(1)の製造方法において被めっき層上に追加層を形成した後、追加層上に接着層を形成する製造方法、或いは、上記(2)の製造方法において被めっき層用成形体と接着層用成形体とを中間層用成形体を介して一体化させる製造方法を用いることができる。
上述の(1)の製造方法において、被めっき層用樹脂組成物を支持体に塗布、散布又は流延する際、及び塗布、散布又は流延された被めっき層用樹脂組成物に接着層用樹脂組成物を塗布、散布又は流延する際、あるいは上述の(2)の製造方法において、被めっき層用樹脂組成物及び接着層用樹脂組成物をシート状又はフィルム状に成形して被めっき層用成形体及び接着層用成形体とする際には、被めっき層用樹脂組成物又は接着層用樹脂組成物を、必要に応じて有機溶剤を添加して、支持体に塗布、散布又は流延することが好ましい。
この際に用いる支持体としては、例えば国際公開第2012/090980号に記載の樹脂フィルムや金属箔などが挙げられる。
上述の(1)の製造方法における、被めっき層用樹脂組成物及び接着層用樹脂組成物の厚み、あるいは上述の(2)の製造方法における被めっき層用成形体及び接着層用成形体の厚みは、特に限定されないが、絶縁フィルム中の被めっき層の厚みは、好ましくは1〜10μm、より好ましくは1.5〜8μm、さらに好ましくは2〜5μmである。
被めっき層の厚みが、1μm以上であることで、絶縁フィルムを硬化して得られる硬化物に導体層を形成することが容易となり、10μm以下であることで、該硬化物の線膨張を小さくすることができる。また、接着層の厚みは、好ましくは10〜100μm、より好ましくは10〜80μm、さらに好ましくは15〜60μmである。接着層の厚みが、10μm以上であることで、絶縁フィルムの配線埋め込み性が良好となり、100μm以下であることで、絶縁フィルムの上下方向を導通させる孔の穴開け加工性を向上できるとともに、その孔表面へのめっきを均一にできる等の利点がある。
被めっき層用樹脂組成物及び接着層用樹脂組成物を塗布する方法としては、ディップコート、ロールコート、カーテンコート、ダイコート、スリットコート、グラビアコートなどが挙げられる。
被めっき層用樹脂組成物、接着層用樹脂組成物、被めっき層用成形体、及び、接着層用成形体を乾燥させる温度は、それらが硬化しない程度の温度とすることが好ましく、通常、20〜300℃、好ましくは30〜200℃である。また、乾燥時間は、通常、30秒間〜1時間、好ましくは1分間〜30分間である。
なお、本発明の絶縁フィルムにおいては、絶縁フィルムを構成する被めっき層及び接着層が未硬化又は半硬化の状態であることが好ましい。特に、接着層を未硬化又は半硬化の状態とすることにより、接着層の接着性をより一層高いものとすることできる。ここで、接着層用樹脂組成物を構成する樹脂成分として、前述した熱硬化性樹脂(B1)と硬化剤(B3)とを含む組成物を用いた場合について例示すると、接着層が未硬化の状態とは、絶縁フィルムを、熱硬化性樹脂(B1)を溶解可能な溶剤、硬化剤(B3)を溶解可能な溶剤にそれぞれ漬けたときに、実質的に接着層中の熱硬化性樹脂(B1)および硬化剤(B3)の全部が溶解する状態をいう。また、接着層が半硬化の状態とは、加熱すれば更に硬化しうる程度に途中まで硬化された状態であり、好ましくは、絶縁フィルムを、熱硬化性樹脂(B1)を溶解可能な溶剤、硬化剤(B3)を溶解可能な溶剤にそれぞれ漬けたときに、熱硬化性樹脂(B1)および硬化剤(B3)の一部(具体的には7質量%以上の量であり、かつ、一部が残存するような量)が溶解する状態であるか、あるいは、絶縁フィルムを、熱硬化性樹脂(B1)を溶解可能な溶剤、硬化剤(B3)を溶解可能な溶剤に24時間浸漬した後の接着層部分の体積が、それぞれ浸漬前の体積の200%以上(膨潤率)となる状態をいう。なお、被めっき層が未硬化の状態、半硬化の状態は、上記接着層が未硬化の状態、半硬化の状態についての例示中、熱硬化性樹脂(B1)を極性基含有脂環式オレフィン重合体(A1)に置き換え、硬化剤(B3)をリン含有エポキシ化合物(A2)に置き換えることで、上記接着層の未硬化の状態、半硬化の状態と同様に定義できる。
(プリプレグ)
本発明のプリプレグは、極性基含有脂環式オレフィン重合体(A1)と、極性基含有脂環式オレフィン重合体(A1)の極性基と反応するエポキシ基を有するリン含有エポキシ化合物(A2)と、充填剤(A3)とを含む被めっき層用樹脂組成物からなる被めっき層と、接着層用樹脂組成物からなる接着層と、繊維基材とを含んで構成される。ここで、繊維基材は、前記接着層の中に配置されていることが好ましい。さらに、繊維基材は、接着層の中において、被めっき層側に近接するように、偏って配置されていることがより好ましい。
繊維基材としては、ポリアミド繊維、ポリアラミド繊維やポリエステル繊維などの有機繊維や、ガラス繊維、カーボン繊維等などの無機繊維が挙げられる。また、繊維基材の形態としては、平織りもしくは綾織りなどの織物の形態、又は不織布の形態等が挙げられる。繊維基材の厚さは、その取り扱いを容易とする観点から、5μm以上が好ましく、10μm以上がより好ましい。また、繊維基材の厚みは、例えば、接着層中に繊維基材が配置されている場合を例にとれば、接着層の厚さを当該繊維基材の厚みに対して相対的に厚くすることができ、接着層への配線の埋め込み性を向上できるという観点から、100μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましい。
本発明のプリプレグは、一方の面に接着層と、他方の面に被めっき層、内部に繊維基材を有するものであればその製造方法は限定されないが、たとえば、以下の方法:(1)支持体付き接着層用樹脂組成物フィルムと支持体付き被めっき層用樹脂組成物フィルムを、繊維基材を間に挟むように各フィルムの樹脂組成物層側を合わせて、必要により加圧、真空、加熱などの条件のもとで積層して製造する方法;(2)接着層用樹脂組成物又は被めっき層用樹脂組成物のいずれかを繊維基材に含浸して、必要により乾燥した後、その表面にもう一方の樹脂組成物を塗布、散布又は流延することにより、もしくはもう一方の支持体付き樹脂組成物フィルムを積層することにより製造する方法;(3)支持体上に接着層用樹脂組成物又は被めっき層用樹脂組成物のいずれかを塗布、散布又は流延などにより積層し、その上に繊維基材を重ね、さらにその上からもう一方の樹脂組成物を塗布、散布又は流延することにより積層し、必要により乾燥させることにより製造することができる。なお、いずれの方法も組成物には必要に応じて有機溶剤を添加して、組成物の粘度を調整することにより、繊維基材への含浸や支持体への塗布、散布又は流延における作業性を制御することが好ましい。
また、この際に用いる支持体としては、例えば国際公開第2012/090980号に記載の樹脂フィルムや金属箔などが挙げられる。これらは、プリプレグの一方の面だけでなく、両方の面に付いていてもよい。
本発明のプリプレグの厚みは、特に限定されないが、上述の絶縁フィルムと同様の理由で、被めっき層の厚みが、好ましくは1〜10μm、より好ましくは1.5〜8μm、さらに好ましくは2〜5μm、また、接着層の厚みが、好ましくは10〜100μm、より好ましくは10〜80μm、さらに好ましくは15〜60μmとなるような厚みとすることが好ましい。
本発明のプリプレグを製造する際に、被めっき層用樹脂組成物及び接着層用樹脂組成物を塗布する方法としては、ディップコート、ロールコート、カーテンコート、ダイコート、スリットコート、グラビアコートなどが挙げられる。
また、本発明のプリプレグにおいては、上述した本発明の絶縁フィルムと同様に、被めっき層及び接着層を構成する樹脂組成物が未硬化又は半硬化の状態であることが好ましい。
(積層体)
本発明の絶縁フィルム又はプリプレグを用いてなる積層体は、上述した本発明の絶縁フィルム又はプリプレグを基材に積層してなるものである。この積層体としては、少なくとも、上述した本発明の絶縁フィルム又はプリプレグを積層してなるものであればよいが、例えば積層体を多層回路基板の製造に使用する場合には、表面に導体層を有する基板を基材とし、上述した本発明の絶縁フィルム、又はプリプレグを当該基板上に積層してなるものとすることができる。この場合、基板上に積層したフィルム又はプリプレグを硬化させることにより、電気絶縁層を形成することができる。なお、この際、本発明の絶縁フィルム又はプリプレグが、接着層を介して基板と積層されるような構成とし、積層体の表面に被めっき層が位置するようにする。所定の組成物よりなる被めっき層と接着層とが前述の位置関係となるように積層することで、基板の表面に位置する導体層を接着層に良好に埋め込みつつ(即ち、接着層を導体層の形状に良好に追従させつつ)、電気絶縁層の表面を被めっき層の硬化物で構成して、電気絶縁層上へのめっきを良好に行うことができる。
ここで、表面に導体層を有する基板は、電気絶縁性基板の表面に導体層を有するものである。電気絶縁性基板は、公知の電気絶縁材料(たとえば、脂環式オレフィン重合体、エポキシ樹脂、マレイミド樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、トリアジン樹脂、ポリフェニルエーテル、ガラス等)を含有する樹脂組成物を硬化して形成されたものである。導体層は、特に限定されないが、通常、導電性金属等の導電体により形成された配線を含む層であって、更に各種の回路を含んでいてもよい。配線や回路の構成、厚み等は、特に限定されない。表面に導体層を有する基板の具体例としては、プリント配線基板、シリコンウェーハ基板等を挙げることができる。
表面に導体層を有する基板は、電気絶縁層との密着性を向上させるために、導体層表面に前処理が施されていることが好ましい。前処理の方法としては、公知の技術を、特に限定されず使用することができる。
本発明の積層体は、通常、表面に導体層を有する基板上に、上述した本発明の絶縁フィルム又はプリプレグを加熱圧着することにより、製造することができる。
加熱圧着の方法としては、支持体付きの絶縁フィルム又はプリプレグを、上述した基板の導体層に接するように重ね合わせ、加圧ラミネータ、プレス、真空ラミネータ、真空プレス、ロールラミネータなどの加圧機を使用して加熱圧着(ラミネーション)する方法が挙げられる。加熱加圧することにより、基板表面の導体層と絶縁フィルムとの界面に空隙が実質的に存在しないように結合させることができる。なお、加熱圧着条件は既知の条件を採用することができる。
(硬化物)
本発明の硬化物は、上述した絶縁フィルム、プリプレグ、又は積層体中の絶縁フィルムもしくはプリプレグに対して硬化処理を施して製造することができる。硬化処理は、通常、上述した絶縁フィルム、プリプレグ、又は積層体中の絶縁フィルムもしくはプリプレグを加熱することにより行う。例えば積層体を用いて硬化物を製造する場合、硬化は、上述した加熱圧着操作と同時に行うことができる。なお、積層体を用いて硬化物を製造する場合、先ず加熱圧着操作を硬化の起こらない条件、すなわち比較的低温、短時間で行った後、硬化を行ってもよい。
ここで、上述した積層体を硬化させて多層回路基板の製造に利用する場合には、基板上に積層した絶縁フィルム又はプリプレグを硬化させて形成した電気絶縁層の平坦性を向上させる目的や、電気絶縁層の厚みを増す目的で、基板の導体層上に本発明のフィルム又はプリプレグを2以上接して貼り合わせて積層してもよい。
硬化温度は、通常30〜400℃、好ましくは70〜300℃、より好ましくは100〜200℃である。また、硬化時間は、0.1〜5時間、好ましくは0.5〜3時間である。加熱の方法は特に制限されず、例えば電気オーブンなどを用いて行えばよい。
(複合体)
本発明の絶縁フィルム又はプリプレグを用いてなる複合体は、本発明の硬化物の表面、具体的には当該硬化物の硬化した被めっき層上に、導体層を形成してなるものである。かかる導体層としては金属めっきを使用することができる。金属めっきの材料としては、金、銀、銅、ロジウム、パラジウム、ニッケル又はスズなどが挙げられる。以下、本発明の複合体の製造方法を、本発明の複合体の一例としての多層回路基板を例示して、説明する。当該多層回路基板において、本発明の絶縁フィルム(又はプリプレグ)の硬化物は電気絶縁層を形成する。
まず、電気絶縁性基板の表面に導体層を形成してなる基材上に本発明の絶縁フィルム又はプリプレグを積層し、硬化させて電気絶縁層を形成した硬化物に、電気絶縁層を貫通するビアホールやスルーホールを形成する。ビアホールは、多層回路基板とした場合に、多層回路基板を構成する各導体層を連結するために形成される。ビアホールやスルーホールは、フォトリソグラフィ法のような化学的処理により、又は、ドリル、レーザー、プラズマエッチングなどの物理的処理などにより形成することができる。
次に、硬化物の電気絶縁層、具体的には、硬化した絶縁フィルム又はプリプレグの被めっき層の表面を、粗化する表面粗化処理を行う。表面粗化処理は、電気絶縁層上に形成する導体層との接着性を高めるために行う。
電気絶縁層の表面平均粗さRaは、好ましくは0.3μm未満、より好ましくは0.2μm未満である。なお、電気絶縁層の表面平均粗度Raの下限値は0.05μm以上
とすることができる。また、表面十点平均粗さRzjisは、好ましくは0.3μm以上4μm未満、より好ましくは0.5μm以上2μm以下である。なお、本明細書において、RaはJIS B0601−2001に示される算術平均粗さであり、表面十点平均粗さRzjisは、JIS B0601−2001付属書1に示される十点平均粗さである。
表面粗化処理方法としては、特に限定されないが、電気絶縁層表面(すなわち、絶縁フィルムの硬化物の被めっき層の表面)と酸化性化合物とを接触させる方法などが挙げられる。酸化性化合物としては、無機酸化性化合物や有機酸化性化合物などの酸化能を有する公知の化合物が挙げられる。電気絶縁層の表面平均粗さの制御の容易さから、無機酸化性化合物や有機酸化性化合物を用いるのが特に好ましい。無機酸化性化合物としては、過マンガン酸塩、無水クロム酸、重クロム酸塩、クロム酸塩、過硫酸塩、活性二酸化マンガン、四酸化オスミウム、過酸化水素、過よう素酸塩などが挙げられる。有機酸化性化合物としてはジクミルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、m−クロロ過安息香酸、過酢酸、オゾンなどが挙げられる。
無機酸化性化合物や有機酸化性化合物を用いて電気絶縁層表面を表面粗化処理する方法に格別な制限はなく、例えば国際公開第2012/090980号に記載の方法を用いることができる。
次いで、電気絶縁層について表面粗化処理を行った後、電気絶縁層の表面(すなわち、絶縁フィルムの硬化物の被めっき層の表面)及びビアホールやスルーホールの内壁面に、導体層を形成する。
導体層の形成方法は、特に限定されないが、密着性に優れる導体層を形成できるという観点より、無電解めっき法により行なうことが好ましい。
たとえば、無電解めっき法により導体層を形成する際においては、まず、金属薄膜を電気絶縁層の表面に形成させる前に、電気絶縁層上(より詳しくは、絶縁フィルム又はプリプレグの被めっき層が硬化して得られた硬化物層の上)に、銀、パラジウム、亜鉛、コバルトなどの触媒核を付着させるのが一般的である。触媒核を電気絶縁層に付着させる方法は特に制限されず、例えば、銀、パラジウム、亜鉛、コバルトなどの金属化合物やこれらの塩や錯体を、水又はアルコールもしくはクロロホルムなどの有機溶剤に0.001〜10質量%の濃度で溶解した液(必要に応じて酸、アルカリ、錯化剤、還元剤などを含有していてもよい。)に浸漬した後、金属を還元する方法などが挙げられる。
無電解めっき法に用いる無電解めっき液としては、公知の自己触媒型の無電解めっき液を用いればよく、めっき液中に含まれる金属種、還元剤種、錯化剤種、水素イオン濃度、溶存酸素濃度などは特に限定されない。
金属薄膜を形成した後、基板表面を防錆剤と接触させて防錆処理を施すことができる。また、金属薄膜を形成した後、密着性向上などのため、金属薄膜を加熱することもできる。加熱温度は、通常、50〜350℃、好ましくは80〜250℃である。なお、この際において、加熱は加圧条件下で実施してもよい。このときの加圧方法としては、例えば、熱プレス機、加圧加熱ロール機などの物理的加圧手段を用いる方法が挙げられる。加える圧力は、通常、0.1〜20MPa、好ましくは0.5〜10MPaである。この範囲であれば、金属薄膜と電気絶縁層との高い密着性が確保できる。
このようにして形成された金属薄膜上にめっき用レジストパターンを形成し、更にその上に電解めっきなどの湿式めっきによりめっきを成長させ(厚付けめっき)、次いで、レジストを除去し、更にエッチングにより金属薄膜をパターン状にエッチングして導体層を形成する。従って、この方法により形成される導体層は、通常、パターン状の金属薄膜と、その上に成長させためっきとからなる。
このようにして得られる本複合体(及び本複合体の一例としての多層回路基板)は、本発明の絶縁フィルム(又はプリプレグ)からなる電気絶縁層を有してなり、該電気絶縁層は、優れた難燃性、耐熱性、及び、ピール強度を兼ね備えたものであり、本複合体(及び本複合体の一例としての多層回路基板)は、各種用途に好適に用いることができる。
(電子材料用基板)
本発明の硬化物又は上述の複合体は、電子材料用基板として用いることができる。このような本発明の硬化物又は複合体からなる電子材料用基板は、携帯電話機、PHS、ノート型パソコン、PDA(携帯情報端末)、携帯テレビ電話機、パーソナルコンピューター、スーパーコンピューター、サーバー、ルーター、液晶プロジェクタ、エンジニアリング・ワークステーション(EWS)、ページャ、ワードプロセッサ、テレビ、ビューファインダ型又はモニタ直視型のビデオテープレコーダ、電子手帳、電子卓上計算機、カーナビゲーション装置、POS端末、タッチパネルを備えた装置などの各種電子機器に好適に用いることができる。
以下、本発明について実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
(i)脂環式オレフィン重合体の数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、及び、分子量分布(Mw/Mn)
脂環式オレフィン重合体の数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、及び、分子量分布(Mw/Mn)は、テトラヒドロフランを展開溶媒として、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により測定し、ポリスチレン換算値として求めた。
(ii)脂環式オレフィン重合体の水素添加率
水素添加前における重合体中の不飽和結合のモル数に対する水素添加された不飽和結合のモル数の比率を、400MHzのH−NMRスペクトル測定により求め、これを水素添加率とした。
(iii)脂環式オレフィン重合体の極性基を有する単量体単位の含有率
重合体中の総単量体単位モル数に対する極性基(カルボン酸無水物基)を有する単量体単位のモル数の割合を、400MHzのH−NMRスペクトル測定により求め、これを重合体の極性基(カルボン酸無水物基)を有する単量体単位の含有率とした。
(iv)難燃性
得られた支持体付き絶縁フィルムを、両面の銅をエッチングした厚さ0.6mm×縦11cm×横16cmのハロゲンフリー基板両面に積層し、フィルム支持体だけを剥がしとり、空気雰囲気下、180℃で60分間放置し、フィルムの被めっき層及び接着層を硬化させて絶縁膜を形成させた。この絶縁膜が形成された基板を、幅13mm、長さ100mmの短冊状に切断して難燃性評価基板を作成した。この小片にUL94V垂直難燃試験方法に準じて測定を行い、以下の基準で評価した。
A:UL94 V−0
B:UL94 V−1
C:UL94 V−1未満
(v)耐熱性
得られた基板を、25mm角に切り出し、260℃のハンダ浴中に120秒浮かべた後、外観の変化を目視により観察し、以下の基準で耐熱性を評価した。
A:外観に変化なし
C:外観に変化あり
(vi)電気絶縁層と導体層との密着性(ピール強度)
得られた基板の、導体層と積層体の硬化物との引き剥がし強さをJIS C6481−1996に準拠して測定し、以下の基準で評価した。
A:ピール強度が5N/cm以上
C:ピール強度が5N/cm未満
(vii)電気絶縁層の表面粗度(算術平均粗さRa)
積層体を硬化させてなる硬化物の電気絶縁層の表面を、表面形状測定装置(ビーコインスツルメンツ社製、WYKO NT1100)を用いて、測定範囲91μm×120μmで表面粗度(算術平均粗さRa)を測定し、以下の基準で評価した。
A:算術平均粗さRaが0.2μm未満
B:算術平均粗さRaが0.2μm以上、0.3μm未満
C:算術平均粗さRaが0.3μm以上
・脂環式オレフィン重合体の合成例1
重合1段目として5−エチリデン−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(EdNB)35モル部、1−ヘキセン0.9モル部、アニソール340モル部及び4−アセトキシベンジリデン(ジクロロ)(4,5−ジブロモ−1,3−ジメシチル−4−イミダゾリン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウム(C1063、和光純薬社製)0.005モル部を、窒素置換した耐圧ガラス反応器に仕込み、攪拌下に80℃で30分間の重合反応を行ってノルボルネン系開環重合体の溶液を得た。
次いで、重合2段目として重合1段目に得た溶液中にテトラシクロ[9.2.1.02,10.03,8]テトラデカ−3,5,7,12−テトラエン(MTF)35モル部、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン−5,6−ジカルボン酸無水物(NDCA)30モル部、アニソール250モル部及びC1063 0.01モル部を追加し、攪拌下に80℃で1.5時間の重合反応を行ってノルボルネン系開環重合体の溶液を得た。この溶液について、ガスクロマトグラフィーを測定したところ、実質的に単量体が残留していないことが確認され、重合転化率は99%以上であった。
次いで、窒素置換した攪拌機付きオートクレーブに、得られた開環重合体の溶液を仕込み、C1063 0.03モル部を追加し、150℃、水素圧7MPaで、5時間攪拌させて水素添加反応を行って、ノルボルネン系開環重合体の水素添加物である脂環式オレフィン重合体(P−1)の溶液を得た。得られた重合体(P−1)の重量平均分子量は60,000、数平均分子量は30,000、分子量分布は2であった。また、水素添加率は95%であり、カルボン酸無水物基を有する単量体単位の含有率は30モル%であった。重合体(P−1)の溶液の固形分濃度は20質量%であった。
・脂環式オレフィン重合体の合成例2
テトラシクロ[9.2.1.02,10.03,8]テトラデカ−3,5,7,12−テトラエン(MTF)70モル部、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン−5,6−ジカルボン酸無水物(NDCA)30モル部、1−ヘキセン0.9モル部、アニソール590モル部及びC1063 0.015モル部を、窒素置換した耐圧ガラス反応器に仕込み、攪拌下に80℃で1時間の重合反応を行ってノルボルネン系開環重合体の溶液を得た。この溶液について、ガスクロマトグラフィーを測定したところ、実質的に単量体が残留していないことが確認され、重合転化率は99%以上であった。
次いで、窒素置換した攪拌機付きオートクレーブに、得られた開環重合体の溶液を仕込み、150℃、水素圧7MPaで、5時間攪拌させて水素添加反応を行って、ノルボルネン系開環重合体の水素添加物である脂環式オレフィン重合体(P−2)の溶液を得た。得られた重合体(P−2)の重量平均分子量は50,000、数平均分子量は26,000、分子量分布は1.9であった。また、水素添加率は97%であり、カルボン酸無水物基を有する単量体単位の含有率は30モル%であった。重合体(P−2)の溶液の固形分濃度は20質量%であった。
・実施例1
(被めっき層用樹脂組成物の調製)
合成例1で得られた脂環式オレフィン重合体(P−1)の溶液500質量部(重合体(P−1)固形分として100質量部)、及びリン含有エポキシ化合物溶液(ホスファフェナントレン構造を有するエポキシ化合物。FX305EK70、新日鉄住金化学社製、メチルエチルケトン70%溶解品、リン含有量2%、エポキシ当量485g/eq)72質量部(エポキシ化合物固形分として50.4質量部)、無機充填剤としての未処理球状シリカ(アドマファイン(登録商標)SO−C1、アドマテックス社製、体積平均粒径0.25μm)40質量部、レーザー加工性向上剤として2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール1質量部、老化防止剤としてトリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレート(IRGANOX(登録商標)3114、BASF社製)1質量部、老化防止剤としてテトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシラート(アデカスタブ(登録商標)LA52、ADEKA社製)0.5質量部を混合し高圧ホモジナイザーで分散処理した。
さらにこれに、硬化促進剤として1−べンジル−2−フェニルイミダゾールをアニソールに50%溶解した溶液1質量部を混合、攪拌機で5分間攪拌して被めっき層用樹脂組成物のワニスを得た。
(接着層用樹脂組成物の調製)
熱硬化性樹脂(B1)としてのジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(EPICLON HP7200HH、DIC社製、エポキシ基当量280g/eq)100質量部、硬化剤(B3)としての活性エステル化合物(EPICLON HPC−8000−65T、不揮発分65質量%のトルエン溶液、DIC社製、活性エステル基当量223g/eq)121質量部(活性エステル化合物79質量部)、合成例2で得られた、硬化剤(B3)としての脂環式オレフィン重合体(P−2)の溶液35質量部(脂環式オレフィン重合体7質量部)、無機充填剤としてのシリカ(SC2500−SXJ、平均粒径0.5μm、アミノシランカップリング剤表面処理、アドマテックス社製)352質量部、老化防止剤としてのヒンダードフェノール系酸化防止剤(IRGANOX3114、BASF社製)1質量部、及びアニソール110質量部を混合し、高圧ホモジナイザーで分散処理した。
さらにこれに、硬化促進剤として1−べンジル−2−フェニルイミダゾールをアニソールに50質量%溶解した溶液を5.4質量部(硬化促進剤2.7質量部)を混合し、攪拌機で5分間攪拌して接着層用樹脂組成物のワニスを得た。
(支持体付き絶縁フィルムの作製)
上記にて得られた被めっき層用樹脂組成物のワニスを、厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(支持体)上にワイヤーバーを用いて塗布し、次いで、窒素雰囲気下、85℃で5分間乾燥させて、未硬化の被めっき層用樹脂組成物からなる、厚み3μmの被めっき層が形成された支持体付きフィルムを得た。
次に、上記得られた支持体付きフィルムの被めっき層用樹脂組成物からなる被めっき層の形成面に、上記にて得られた接着層用樹脂組成物のワニスを、ドクターブレード(テスター産業社製)とオートフィルムアプリケーター(テスター産業社製)を用いて塗布し、次いで、窒素雰囲気下、80℃で10分間乾燥させて、総厚みが40μm(被めっき層の厚みは3μm)である被めっき層及び接着層が形成された支持体付き絶縁フィルムを得た。当該支持体付き絶縁フィルムは、支持体、被めっき層用樹脂組成物からなる被めっき層、接着層用樹脂組成物からなる接着層の順で形成された。得られた支持体付き絶縁フィルムを用い、難燃性を上記方法にしたがって測定した。結果を表1に示す。
(積層体の作製)
次いで、上記とは別に、ガラスフィラー及びハロゲン不含有エポキシ樹脂を含有するワニスをガラス繊維に含浸させて得られたコア材の表面に、厚さ18μmの銅が貼られた、厚さ0.6mm×縦125mm×横125mmの両面銅張り積層基板の銅表面を有機酸との接触によってマイクロエッチング処理した両面銅張り積層基板(内層基板)を得た。
この内層基板の両面に、上記にて得られた支持体付き絶縁フィルムを125mm角に切断したものを、接着層用樹脂組成物側の面が内側(内層基板側)となるようにして貼り合わせた後、一次プレスを行った。一次プレスは、耐熱ゴム製プレス板を上下に備えた真空ラミネータにて、200Paの減圧下、温度110℃、圧力0.1MPaで90秒間の加熱圧着である。さらに、金属製プレス板を上下に備えた油圧プレス装置を用いて、圧着温度110℃、圧力1MPaで90秒間、加熱圧着した。次いで支持体を剥がすことにより、樹脂組成物からなる樹脂組成物層(被めっき層と接着層)と内層基板との積層体を得た。さらに積層体を空気雰囲気下、180℃で60分間放置し、樹脂組成物層を硬化させて内層基板上に電気絶縁層を形成した。
(膨潤処理工程)
得られた硬化物を、膨潤液(「スウェリング ディップ セキュリガント P」、アトテック社製、「セキュリガント」は登録商標)500mL/L、水酸化ナトリウム3g/Lになるように調製した60℃の水溶液に15分間揺動浸漬した後、水洗した。
(粗化処理工程)
次いで、過マンガン酸塩の水溶液(「コンセントレート コンパクト CP」、アトテック社製)500mLと水酸化ナトリウム40gとの混合物に、合計で1Lとなるよう水を加えて調製した水溶液を80℃とし、この水溶液に20分間揺動浸漬をした後、水洗した。
(中和還元処理工程)
続いて、硫酸ヒドロキシアミン水溶液(「リダクション セキュリガント P 500」、アトテック社製、「セキュリガント」は登録商標)100mL/L、硫酸35mL/Lになるように調製した40℃の水溶液に、積層体の硬化物を5分間浸漬し、中和還元処理をした後、水洗した。
(クリーナー・コンディショナー工程)
次いで、クリーナー・コンディショナー水溶液(「アルカップ MCC−6−A」、上村工業社製、「アルカップ」は登録商標)を濃度50ml/Lとなるよう調整した50℃の水溶液に積層体の硬化物を5分間浸漬し、クリーナー・コンディショナー処理を行った。次いで40℃の水洗水に積層体の硬化物を1分間浸漬した後、水洗した。
(ソフトエッチング処理工程)
次いで、硫酸濃度100g/L、過硫酸ナトリウム100g/Lとなるように調製した水溶液に積層体の硬化物を2分間浸漬しソフトエッチング処理を行った後、水洗した。
(酸洗処理工程)
次いで、硫酸濃度100g/Lなるよう調製した水溶液に積層体の硬化物を1分間浸漬し酸洗処理を行った後、水洗した。
(触媒付与工程)
次いで、アルカップ アクチベータ MAT−1−A(商品名、上村工業社製、「アルカップ」は登録商標)が200mL/L、アルカップ アクチベータ MAT−1−B(商品名、上村工業社製、「アルカップ」は登録商標)が30mL/L、水酸化ナトリウムが0.35g/Lになるように調製した60℃のPd塩含有めっき触媒水溶液に積層体の硬化物を5分間浸漬した後、水洗した。
(活性化工程)
次いで、アルカップ レデユーサ− MAB−4−A(商品名、上村工業社製、「アルカップ」は登録商標)が20mL/L、アルカップ レデユーサ− MAB−4−B(商品名、上村工業社製、「アルカップ」は登録商標)が200mL/Lになるように調整した水溶液に積層体の硬化物を35℃で、3分間浸漬し、めっき触媒を還元処理した後、水洗した。
(アクセレレータ処理工程)
次いで、アルカップ アクセレレーター MEL−3−A(商品名、上村工業社製、「アルカップ」は登録商標)が50mL/Lになるように調製した水溶液に積層体の硬化物を25℃で、1分間浸漬した。
(無電解めっき工程)
このようにして得られた積層体の硬化物を、スルカップ PEA−6−A(商品名、上村工業社製、「スルカップ」は登録商標)100mL/L、スルカップ PEA−6−B−2X(商品名、上村工業社製)50mL/L、スルカップ PEA−6−C(商品名、上村工業社製)14mL/L、スルカップ PEA−6−D(商品名、上村工業社製)15mL/L、スルカップ PEA−6−E(商品名、上村工業社製)50mL/L、37%ホルマリン水溶液5mL/Lとなるように調製した無電解銅めっき液に空気を吹き込みながら、温度36℃で、20分間浸漬し、無電解銅めっき処理して積層体の硬化物の表面に無電解めっき膜を形成した。次いで、空気雰囲気下において150℃で30分間アニール処理を行った。
アニール処理が施された積層体の硬化物に、電解銅めっきを施し厚さ30μmの電解銅めっき膜を形成させた。次いで当該電解銅めっき膜を形成した積層体の硬化物を180℃で60分間加熱処理することにより、積層体の硬化物表面上に前記金属薄膜層及び電解銅めっき膜からなる導体層を形成した多層回路基板(複合体)を得た。そして、得られた基板の導体層のピール強度および耐熱性を、上記方法にしたがって測定した。結果を表1に示す。
また、上記で得られた150℃で30分アニール処理が施された積層体の硬化物に対し、塩化第二鉄と塩酸との混合溶液により無電解めっき膜のエッチング処理を行った。これを乾燥させて、電気絶縁層の表面平均粗さRaを、上記方法にしたがって測定した。結果を表1に示す。
・実施例2
被めっき層用樹脂組成物中の、リン含有エポキシ化合物溶液の量を90質量部(エポキシ化合物固形分として63質量部)とした以外は、実施例1と同様にして、支持体付き絶縁フィルム、積層体、積層体の硬化物、基板を製造した。
・実施例3
被めっき層用樹脂組成物中の、リン含有エポキシ化合物溶液の量を108.1質量部(エポキシ化合物固形分として75.6質量部)とした以外は、実施例1と同様にして、支持体付き絶縁フィルム、積層体、積層体の硬化物、基板を製造した。
・実施例4
被めっき層用樹脂組成物中の、リン含有エポキシ化合物溶液の量を126.1質量部(エポキシ化合物固形分として88.2質量部)とした以外は、実施例1と同様にして、支持体付き絶縁フィルム、積層体、積層体の硬化物、基板を製造した。
・比較例1
被めっき層用樹脂組成物中の、リン含有エポキシ化合物に変えて、リン原子を含有しないジシクロペンタジエン骨格エポキシ樹脂(EPICLON HP−7200L、DIC社製、エポキシ当量250g/eq)32質量部を配合した以外は、実施例1と同様にして、支持体付き絶縁フィルム、積層体、積層体の硬化物、基板を製造した。
・比較例2
被めっき層用樹脂組成物中の、リン含有エポキシ化合物に変えて、比較例1と同様のリン原子を含有しないジシクロペンタジエン骨格エポキシ樹脂32質量部を配合し、さらに難燃剤として脂環式オレフィン重合体(P−1)と反応する基を有さないホスファフェナントレン構造を有する難燃剤(ラビトル(登録商標)FP−110、伏見製薬所製)20質量部を配合した以外は、実施例1と同様にして、支持体付き絶縁フィルム、積層体、積層体の硬化物、基板を製造した。
・比較例3
被めっき層用樹脂組成物中の、リン含有エポキシ化合物に変えて、比較例1と同様のリン原子を含有しないジシクロペンタジエン骨格エポキシ樹脂32質量部を配合し、さらに未処理球状シリカに変えて、無機充填剤として水酸化マグネシウム(無機難燃剤、MAGNIFIN(登録商標)H10、アルベマール日本社製)40質量部を配合した以外は、実施例1と同様にして、支持体付き絶縁フィルム、積層体、積層体の硬化物、基板を製造した。
Figure 2014117823
*1 新日鉄住金化学社製、FX305EK70(メチルエチルケトン70%溶解品、リン2質量%含有、エポキシ当量485g/eq)
*2 DIC社製、EPICLON HP−7200L(エポキシ当量250g/eq)
*3 伏見製薬所製、ラビトルFP−110
*4 アドマテックス社製、アドマファインSO−C1
*5 アルベマール日本社製 MAGNIFIN H10(水酸化マグネシウム、無機難燃剤)
表1の結果から明らかなように、極性基を有する脂環式オレフィン重合体と、リン含有エポキシ化合物と、無機充填剤とを含む被めっき層樹脂組成物から形成される被めっき層を有する実施例1〜4の絶縁フィルムは、優れた難燃性、耐熱性、ピール強度を兼ね備えていた。それらの中でも、難燃性については、リン含有エポキシ化合物の含有量が60質量部以上である実施例2〜4が特に優れていた。さらに、表面粗度については、該エポキシ化合物の含有量が80質量部以下である実施例1〜3が優れており、エポキシ化合物の含有量が65質量部以下である実施例1,2が特に優れていた。
また、比較例1は、リン含有エポキシ化合物に変えてシクロペンタジエン骨格エポキシ樹脂を使用しており、実施例1〜4に比して難燃性について劣っていた。
比較例2は、リン含有エポキシ化合物に変えてシクロペンタジエン骨格エポキシ樹脂を使用しているが、ホスファフェナントレン構造を有する難燃剤を多量に配合しているため、難燃性は確保することができている。しかし、比較例2では、多量の難燃剤を配合しているため、耐熱性、ピール強度、表面粗度について劣っていた。即ち、比較例2では、優れた難燃性、耐熱性、ピール強度、及び、表面粗度を兼ね備えた絶縁フィルムを提供することができなかった。
比較例3は、リン含有エポキシ化合物に変えてジシクロペンタジエン骨格エポキシ樹脂を使用しており、さらに難燃効果を有する充填剤(無機難燃剤)を使用しているが、難燃剤の添加量が不十分であることにより難燃性について劣り、さらにピール強度や表面粗度の点についても劣っていた。

Claims (7)

  1. 極性基含有脂環式オレフィン重合体(A1)と、前記極性基含有脂環式オレフィン重合体(A1)の極性基と反応するエポキシ基を有するリン含有エポキシ化合物(A2)と、充填剤(A3)とを含む被めっき層用樹脂組成物からなる被めっき層と、
    接着層用樹脂組成物からなる接着層と、を有する絶縁フィルム。
  2. 前記リン含有エポキシ化合物(A2)が、ホスファフェナントレン構造を有するエポキシ化合物である、請求項1に記載の絶縁フィルム。
  3. 前記リン含有エポキシ化合物(A2)の含有量が、前記極性基含有脂環式オレフィン重合体(A1)100質量部当たり、50〜90質量部である、請求項1又は2に記載の絶縁フィルム。
  4. 前記極性基含有脂環式オレフィン重合体(A1)の極性基が、カルボキシル基、カルボン酸無水物基、フェノール性ヒドロキシル基、及び、エポキシ基からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の絶縁フィルム。
  5. 前記被めっき層の厚みが1〜10μmであり、前記接着層の厚みが10〜100μmである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の絶縁フィルム。
  6. 極性基含有脂環式オレフィン重合体(A1)と、前記極性基含有脂環式オレフィン重合体(A1)の極性基と反応するエポキシ基を有するリン含有エポキシ化合物(A2)と、充填剤(A3)とを含む被めっき層用樹脂組成物からなる被めっき層と、
    接着層用樹脂組成物からなる接着層と、
    繊維基材と、を備えるプリプレグ。
  7. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の絶縁フィルム、又は請求項6に記載のプリプレグを硬化してなる硬化物。
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