JP2012214608A - 硬化性樹脂組成物、フィルム、積層体、及び硬化物 - Google Patents

硬化性樹脂組成物、フィルム、積層体、及び硬化物 Download PDF

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Yohei Tateishi
洋平 立石
Shigeru Fujita
茂 藤田
Takashi Iga
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Abstract

【課題】低線膨張で耐熱性に優れ、かつ、耐水性に優れた硬化物を与える硬化性樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】カルボキシル基、カルボン酸無水物基、及びヒドロキシフェニル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有する脂環式オレフィン重合体(A)、環に縮合したエポキシ基を2つ以上含有するエポキシ化合物(B)、及び熱酸発生剤(C)を含有してなる硬化性樹脂組成物を提供する。
【選択図】なし

Description

本発明は、硬化性樹脂組成物、フィルム、積層体、及び硬化物に関する。
有機EL素子や液晶表示素子などの各種表示素子、集積回路素子、固体撮像素子などの半導体素子には、劣化や損傷を防止するための保護膜、素子表面や配線を平坦化するための平坦化膜、層状に配置されている各配線の間の電気絶縁性を保つための層間絶縁膜など、機能性の樹脂膜が設けられている。
従来、これらの膜を形成するための樹脂材料として、耐熱性に優れ、また電気特性や機械的特性に優れているという点より、ポリイミド樹脂などの熱硬化性樹脂が用いられている。
しかしながら、ポリイミド樹脂を用いた場合には、得られる樹脂膜に、マイグレーションが発生してしまうため、絶縁信頼性が十分でないという問題があった。また、ポリイミド樹脂は、硬化温度が300℃以上と高く、硬化反応の際に、配線金属が酸化されてしまうという問題もあった。
また、近年、半導体素子の高集積化、多層化による高密度化にともない、配線での信号遅延や消費電力の増大に対応して、樹脂材料には誘電特性に優れること、特に低誘電率であることが求められている。そして、このような低誘電率を達成する材料として、脂環式オレフィン重合体が検討されている。
たとえば、特許文献1には、加工性、低応力性、低吸水性、及び電気絶縁性に優れた樹脂層を与える材料として、酸性基を有する環状オレフィン系樹脂と、光酸発生剤と、130℃以上の温度で酸性基を有する環状オレフィン系樹脂の酸性基と結合しうる反応基を有する化合物とからなる樹脂組成物が開示されている。
特開2006−98807号公報
しかしながら、本発明者らが検討したところ、上述の特許文献1の樹脂組成物を用いて、半導体素子の樹脂層を形成した場合、積層基板の変形が大きくなってしまうという問題や、耐熱性などの信頼性が不十分であるという問題があることが明らかになった。また、光で反応してしまうため取り扱いに所定の環境が必要であった。
本発明の目的は、低線膨張で耐熱性に優れ、かつ、耐水性に優れた硬化物を与える硬化性樹脂組成物、並びに、これを用いて得られるフィルム、硬化物、及び積層体を提供することである。
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究した結果、特定の官能基を有する脂環式オレフィン重合体、特定のエポキシ化合物、熱酸発生剤、及び無機充填剤を含有してなる硬化性樹脂組成物が、低線膨張で耐熱性に優れ、かつ、耐水性に優れた硬化物を与えることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明によれば、
〔1〕カルボキシル基、カルボン酸無水物基、及びヒドロキシフェニル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有する脂環式オレフィン重合体(A)、環に縮合したエポキシ基を2つ以上含有するエポキシ化合物(B)、及び熱酸発生剤(C)を含有してなる硬化性樹脂組成物、
〔2〕無機充填剤(D)をさらに含有する前記〔1〕に記載の硬化性樹脂組成物、
〔3〕前記エポキシ化合物(B)が、エステル結合を含有しないものである前記〔1〕又は〔2〕に記載の硬化性樹脂組成物、
〔4〕前記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物からなるフィルム、
〔5〕前記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物、又は前記〔4〕に記載のフィルムを硬化してなる硬化物、
〔6〕前記〔4〕に記載のフィルムを基材に積層してなる積層体、
〔7〕ガラス基板又はシリコンウェハー基板と、前記〔5〕に記載の硬化物とからなる積層体、並びに、
〔8〕ウェハー・レベル・パッケージ構造の半導体装置である前記〔7〕に記載の積層体、
が提供される。
本発明によれば、低線膨張で耐熱性に優れ、かつ、耐水性に優れた硬化物を与えるこができる硬化性樹脂組成物、及び、このような硬化性樹脂組成物を用いて得られ、低線膨張で耐熱性に優れ、かつ、耐水性に優れた硬化物、及び積層体を提供することができる。
本発明の硬化性樹脂組成物は、カルボキシル基、カルボン酸無水物基、及びヒドロキシフェニル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有する脂環式オレフィン重合体(A)、環に縮合したエポキシ基を2つ以上含有するエポキシ化合物(B)、及び熱酸発生剤(C)を含有してなる。
(脂環式オレフィン重合体(A))
本発明で用いるカルボキシル基、カルボン酸無水物基、及びヒドロキシフェニル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有する脂環式オレフィン重合体(A)(以下、適宜、「脂環式オレフィン重合体(A)」と略記する。)を構成する脂環構造としては、シクロアルカン構造やシクロアルケン構造などが挙げられるが、機械的強度や耐熱性などの観点から、シクロアルカン構造が好ましい。また、脂環式構造としては、単環、多環、縮合多環、橋架け環や、これらを組み合わせてなる多環などが挙げられる。脂環式構造を構成する炭素原子数は、特に限定されないが、通常4〜30個、好ましくは5〜20個、より好ましくは5〜15個の範囲であり、環式構造を構成する炭素原子数がこの範囲にある場合に、機械的強度、耐熱性、及び成形性の諸特性が高度にバランスされ好適である。また、脂環式オレフィン重合体(A)は、通常、熱可塑性のものである。
また、本発明で用いる脂環式オレフィン重合体(A)は、カルボキシル基、カルボン酸無水物基、及びヒドロキシフェニル基のいずれを有するものでもよいが、本発明の効果がより一層顕著になるという点より、カルボキシル基又はカルボン酸無水物基を有するものがより好ましく、カルボン酸無水物基を有するものが特に好ましい。
脂環式オレフィン重合体(A)中の脂環式オレフィン由来の繰り返し単位の割合は、特に限定されないが、通常30〜100重量%、好ましくは50〜100重量%、より好ましくは70〜100重量%である。脂環式オレフィン由来の繰り返し単位の割合が過度に少ないと、耐熱性に劣り好ましくない。脂環式オレフィン由来の繰り返し単位以外の繰り返し単位としては、格別な限定はなく、目的に応じて適宜選択される。
脂環式オレフィン重合体(A)に含有されるカルボキシル基、カルボン酸無水物基、及びヒドロキシフェニル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基(以下、適宜、「特定官能基」とする。)は、重合体の主鎖を構成する原子に直接結合していても、メチレン基、オキシ基、オキシカルボニルオキシアルキレン基、フェニレン基などの他の二価の基を介して結合していてもよい。脂環式オレフィン重合体(A)中の特定官能基の含有率は、特に制限されないが、脂環式オレフィン重合体(A)を構成する全繰り返し単位のモル数に対して、通常5〜60モル%、好ましくは10〜50モル%である。
本発明で用いる脂環式オレフィン重合体(A)は、たとえば、以下の方法により得ることができる。すなわち、(1)特定官能基を有する脂環式オレフィンを、必要に応じて他の単量体を加えて、重合する方法、(2)特定官能基を有しない脂環式オレフィンを、特定官能基を有する単量体と共重合する方法、(3)特定官能基を有する芳香族オレフィンを、必要に応じて他の単量体を加えて、重合し、これにより得られる重合体の芳香環部分を水素化する方法、(4)特定官能基を有しない芳香族オレフィンを、特定官能基を有する単量体と共重合し、これにより得られる重合体の芳香環部分を水素化する方法、又は、(5)特定官能基を有しない脂環式オレフィン重合体に特定官能基を有する化合物を変性反応により導入する方法、もしくは(6)前述の(1)〜(5)のようにして得られるカルボン酸エステル基を有する脂環式オレフィン重合体のカルボン酸エステル基を、例えば加水分解することなどによりカルボキシル基に変換する方法などにより得ることができる。これらのなかでも、前述の(1)の方法によって得られる重合体が好適である。
本発明で用いる脂環式オレフィン重合体(A)を得る重合法は開環重合や付加重合が用いられるが、開環重合の場合には得られた開環重合体を水素添加することが好ましい。
特定官能基を有する単量体として用いられ得る、特定官能基を有する脂環式オレフィンの具体例としては、5−ヒドロキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メチル−5−ヒドロキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−カルボキシメチル−5−ヒドロキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、9−ヒドロキシカルボニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−メチル−9−ヒドロキシカルボニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−カルボキシメチル−9−ヒドロキシカルボニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、5−エキソ−6−エンド−ジヒドロキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、9−エキソ−10−エンド−ジヒドロキシカルボニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、などのカルボキシル基を有する脂環式オレフィン;ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン−5,6−ジカルボン酸無水物、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン−9,10−ジカルボン酸無水物、ヘキサシクロ[10.2.1.13,10.15,8.02,11.04,9]ヘプタデカ−6−エン−13,14−ジカルボン酸無水物などのカルボン酸無水物基を有する脂環式オレフィン;(5−(4−ヒドロキシフェニル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、9−(4−ヒドロキシフェニル)テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、N−(4−ヒドロキシフェニル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミドなどのヒドロキシフェニル基を有する脂環式オレフィン;などが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
また、カルボン酸エステル基を有する脂環式オレフィンとしては、9−メチル−9−メトキシカルボニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、5−メトキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メチル−5−メトキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エンなどが挙げられる。
特定官能基を有しない脂環式オレフィンの具体例としては、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(慣用名:ノルボルネン)、5−エチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−ブチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−エチリデン−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メチリデン−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−ビニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−3,8−ジエン(慣用名:ジシクロペンタジエン)、テトラシクロ〔6.2.1.13,6.02,7〕ドデカ−4−エン(慣用名:テトラシクロドデセン)、9−メチル−テトラシクロ〔6.2.1.13,6.02,7〕ドデカ−4−エン、9−エチル−テトラシクロ〔6.2.1.13,6.02,7〕ドデカ−4−エン、9−メチリデン−テトラシクロ〔6.2.1.13,6.02,7〕ドデカ−4−エン、9−エチリデン−テトラシクロ〔6.2.1.13,6.02,7〕ドデカ−4−エン、9−メトキシカルボニル−テトラシクロ〔6.2.1.13,6.02,7〕ドデカ−4−エン、9−ビニル−テトラシクロ〔6.2.1.13,6.02,7〕ドデカ−4−エン、9−プロペニル−テトラシクロ〔6.2.1.13,6.02,7〕ドデカ−4−エン、9−フェニル−テトラシクロ〔6.2.1.13,6.02,7〕ドデカ−4−エン、テトラシクロ[9.2.1.02,10.03,8]テトラデカ−3,5,7,12−テトラエン、シクロペンテン、シクロペンタジエンなどが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
特定官能基を有しない芳香族オレフィンの例としては、スチレン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼンなどが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
脂環式オレフィンや芳香族オレフィンと共重合することができる、特定官能基を有する脂環式オレフィン以外の、特定官能基を有する単量体としては、特定官能基を有するエチレン性不飽和化合物が挙げられ、その具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、α−エチルアクリル酸、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸などの不飽和カルボン酸化合物;無水マレイン酸、ブテニル無水コハク酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水シトラコン酸などの不飽和カルボン酸無水物;などが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
脂環式オレフィンや芳香族オレフィンと共重合することができる、脂環式オレフィン以外の、特定官能基を有しない単量体としては、特定官能基を有しないエチレン性不飽和化合物が挙げられ、その具体例としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセンなどの炭素数2〜20のエチレン又はα−オレフィン;1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエンなどの非共役ジエン;などが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
本発明で用いる脂環式オレフィン重合体(A)の分子量は、特に限定されないが、テトロヒドロフランを溶媒として用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィにより測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量が、500〜1,000,000の範囲であることが好ましく、1,000〜500,000の範囲であることがより好ましく、特に好ましくは、5,000〜300,000の範囲である。重量平均分子量が小さすぎると硬化性樹脂組成物を硬化して得られる硬化物の機械的強度が低下し、大きすぎるとシート状又はフィルム状に成形して成形体とする際に作業性が悪化する傾向にある。
本発明で用いる脂環式オレフィン重合体(A)を、開環重合法により得る場合の重合触媒としては、従来公知のメタセシス重合触媒を用いることができる。メタセシス重合触媒としては、Mo,W,Nb,Ta,Ruなどの原子を含有してなる遷移金属化合物が例示され、なかでも、Mo,W又はRuを含有する化合物は重合活性が高くて好ましい。特に好ましいメタセシス重合触媒の具体的な例としては、(1)ハロゲン基、イミド基、アルコキシ基、アリロキシ基又はカルボニル基を配位子として有する、モリブデンあるいはタングステン化合物を主触媒とし、有機金属化合物を第二成分とする触媒や、(2)Ruを中心金属とする金属カルベン錯体触媒を挙げることができる。
上記(1)の触媒で主触媒として用いられる化合物の例としては、MoCl、MoBrなどのハロゲン化モリブデン化合物やWCl、WOCl、タングステン(フェニルイミド)テトラクロリド・ジエチルエーテルなどのハロゲン化タングステン化合物が挙げられる。また、上記(1)の触媒で、第二成分として用いられる有機金属化合物としては、周期表第1族、2族、12族、13族又は14族の有機金属化合物を挙げることができる。なかでも、有機リチウム化合物、有機マグネシウム化合物、有機亜鉛化合物、有機アルミニウム化合物、有機スズ化合物が好ましく、有機リチウム化合物、有機アルミニウム化合物、有機スズ化合物が特に好ましい。有機リチウム化合物としては、n−ブチルリチウム、メチルリチウム、フェニルリチウム、ネオペンチルリチウム、ネオフィルリチウムなどを挙げることができる。有機マグネシウムとしては、ブチルエチルマグネシウム、ブチルオクチルマグネシウム、ジヘキシルマグネシウム、エチルマグネシウムクロリド、n−ブチルマグネシウムクロリド、アリルマグネシウムブロミド、ネオペンチルマグネシウムクロリド、ネオフィルマグネシウムクロリドなどを挙げることができる。有機亜鉛化合物としては、ジメチル亜鉛、ジエチル亜鉛、ジフェニル亜鉛などを挙げることができる。有機アルミニウム化合物としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、ジエチルアルミニウムエトキシド、エチルアルミニウムジエトキシドなどを挙げることができ、さらに、これらの有機アルミニウム化合物と水との反応によって得られるアルミノキサン化合物も用いることができる。有機スズ化合物としては、テトラメチルスズ、テトラ(n−ブチル)スズ、テトラフェニルスズなどを挙げることができる。これらの有機金属化合物の量は、用いる有機金属化合物によって異なるが、主触媒の中心金属に対して、モル比で、0.1〜10,000倍が好ましく、0.2〜5,000倍がより好ましく、0.5〜2,000倍が特に好ましい。
また、上記(2)のRuを中心金属とする金属カルベン錯体触媒としては、(1,3−ジメシチル−イミダゾリジン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、トリシクロヘキシルホスフィン−〔1,3−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)−4,5−ジブロモイミダゾール−2−イリデン〕−〔ベンジリデン〕ルテニウムジクロリド、4−アセトキシベンジリデン(ジクロロ)(4,5−ジブロモ−1,3−ジメシチル−4−イミダゾリン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムなどが挙げられる。
メタセシス重合触媒の使用割合は、重合に用いる単量体に対して、(メタセシス重合触媒中の遷移金属:単量体)のモル比で、通常1:100〜1:2,000,000の範囲であり、好ましくは1:200〜1:1,000,000の範囲である。触媒量が多すぎると触媒除去や重合制御が困難となり、少なすぎると十分な重合活性が得られないおそれがある。
重合反応は、通常、有機溶媒中で行なう。用いられる有機溶媒は、重合体が所定の条件で溶解又は分散し、重合に影響しないものであれば、特に限定されないが、工業的に汎用されているものが好ましい。有機溶媒の具体例としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、トリメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ジエチルシクロヘキサン、デカヒドロナフタレン、ビシクロヘプタン、トリシクロデカン、ヘキサヒドロインデンシクロヘキサン、シクロオクタンなどの脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン系脂肪族炭化水素;クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどのハロゲン系芳香族炭化水素;ニトロメタン、ニトロベンゼン、アセトニトリルなどの含窒素炭化水素系溶媒;ジエチルエ−テル、テトラヒドロフランなどのエ−テル系溶媒;アニソール、フェネトールなどの芳香族エーテル系溶媒;などを挙げることができる。これらの中でも、工業的に汎用されている芳香族炭化水素系溶媒や脂肪族炭化水素系溶媒、脂環族炭化水素系溶媒、エーテル系溶剤、芳香族エーテル系溶媒が好ましい。
有機溶媒の使用量は、重合溶液中の単量体の濃度が、1〜50重量%となる量であることが好ましく、2〜45重量%となる量であることがより好ましく、3〜40重量%となる量であることが特に好ましい。単量体の濃度が1重量%未満の場合は生産性が悪くなり、50重量%を超えると、重合後の溶液粘度が高すぎて、その後の水素添加反応が困難となる場合がある。
重合反応は、重合に用いる単量体とメタセシス重合触媒とを混合することにより開始される。これらを混合する方法としては、単量体溶液にメタセシス重合触媒溶液を加えてもよいし、その逆でもよい。用いるメタセシス重合触媒が、主触媒である遷移金属化合物と第二成分である有機金属化合物とからなる混合触媒である場合には、単量体溶液に混合触媒の反応液を加えてもよいし、その逆でもよい。また、単量体と有機金属化合物との混合溶液に遷移金属化合物溶液を加えてもよいし、その逆でもよい。さらに、単量体と遷移金属化合物の混合溶液に有機金属化合物を加えてもよいし、その逆でもよい。
重合温度は特に制限はないが、通常、−30℃〜200℃、好ましくは0℃〜180℃である。重合時間は、特に制限はないが、通常、1分間〜100時間である。
得られる脂環式オレフィン重合体の分子量を調整する方法としては、ビニル化合物又はジエン化合物を適当量添加する方法を挙げることができる。分子量調整に用いるビニル化合物は、ビニル基を有する有機化合物であれば特に限定されないが、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンなどのα−オレフィン類;スチレン、ビニルトルエンなどのスチレン類;エチルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、アリルグリシジルエーテルなどのエーテル類;アリルクロライドなどのハロゲン含有ビニル化合物;酢酸アリル、アリルアルコール、グリシジルメタクリレートなど酸素含有ビニル化合物、アクリルアミドなどの窒素含有ビニル化合物などを挙げることができる。分子量調整に用いるジエン化合物としては、1,4−ペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、1,6−ヘプタジエン、2−メチル−1,4−ペンタジエン、2,5−ジメチル−1,5−ヘキサジエンなどの非共役ジエン、又は、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエンなどの共役ジエンを挙げることができる。ビニル化合物又はジエン化合物の添加量は、目的とする分子量に応じて、重合に用いる単量体に対して、0.1〜10モル%の間で任意に選択することができる。
本発明で用いる脂環式オレフィン重合体(A)を、付加重合法により得る場合の重合触媒としては、たとえば、チタン、ジルコニウム又はバナジウム化合物と有機アルミニウム化合物とからなる触媒が好適に用いられる。これらの重合触媒は、それぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。重合触媒の量は、重合触媒中の金属化合物:重合に用いる単量体のモル比で、通常、1:100〜1:2,000,000の範囲である。
本発明で用いる脂環式オレフィン重合体(A)として、開環重合体の水素添加物を用いる場合の、開環重合体に対する水素添加は、通常、水素添加触媒を用いて行われる。水素添加触媒は特に限定されず、オレフィン化合物の水素添加に際して一般的に使用されているものを適宜採用すればよい。水素添加触媒の具体例としては、たとえば、酢酸コバルトとトリエチルアルミニウム、ニッケルアセチルアセトナートとトリイソブチルアルミニウム、チタノセンジクロリドとn−ブチルリチウム、ジルコノセンジクロリドとsec−ブチルリチウム、テトラブトキシチタネートとジメチルマグネシウムのような遷移金属化合物とアルカリ金属化合物との組み合わせからなるチーグラー系触媒;ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム、特開平7−2929号公報、特開平7−149823号公報、特開平11−209460号公報、特開平11−158256号公報、特開平11−193323号公報、特開平11−209460号公報などに記載されている、たとえば、ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリジンルテニウム(IV)ジクロリドなどのルテニウム化合物からなる貴金属錯体触媒;などの均一系触媒が挙げられる。また、ニッケル、パラジウム、白金、ロジウム、ルテニウムなどの金属を、カーボン、シリカ、ケイソウ土、アルミナ、酸化チタンなどの担体に担持させた不均一触媒、たとえば、ニッケル/シリカ、ニッケル/ケイソウ土、ニッケル/アルミナ、パラジウム/カーボン、パラジウム/シリカ、パラジウム/ケイソウ土、パラジウム/アルミナなどを用いることもできる。また、上述したメタセシス重合触媒をそのまま、水素添加触媒として用いることも可能である。
水素添加反応は、通常、有機溶媒中で行う。有機溶媒は生成する水素添加物の溶解性により適宜選択することができ、上述した重合反応に用いる有機溶媒と同様の有機溶媒を使用することができる。したがって、重合反応後、有機溶媒を入れ替えることなく、そのまま水素添加触媒を添加して反応させることもできる。さらに、上述した重合反応に用いる有機溶媒の中でも、水素添加反応に際して反応しないという観点から、芳香族炭化水素系溶媒や脂肪族炭化水素系溶媒、脂環族炭化水素系溶媒、エーテル系溶媒、芳香族エーテル系溶媒が好ましく、芳香族エーテル系溶媒がより好ましい。
水素添加反応条件は、使用する水素添加触媒の種類に応じて適宜選択すればよい。反応温度は、通常、−20〜250℃、好ましくは−10〜220℃、より好ましくは0〜200℃である。−20℃未満では反応速度が遅くなり、逆に250℃を超えると副反応が起こりやすくなる。水素の圧力は、通常、0.01〜10.0MPa、好ましくは0.05〜8.0MPaである。水素圧力が0.01MPa未満では水素添加速度が遅くなり、10.0MPaを超えると高耐圧反応装置が必要となる。
水素添加反応の時間は、水素添加率をコントロールするために適宜選択される。反応時間は、通常、0.1〜50時間の範囲であり、重合体中の主鎖の炭素−炭素二重結合のうち50%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、特に好ましくは90%以上を水素添加することができる。
水素添加反応を行った後、水素添加反応に用いた触媒を除去する処理を行ってもよい。触媒の除去方法は特に制限されず、遠心分離、濾過などの方法が挙げられる。さらに、水やアルコールなどの触媒不活性化剤を添加したり、また活性白土、アルミナ、珪素土などの吸着剤を添加したりして、触媒の除去を促進させることができる。
本発明で用いられる脂環式オレフィン重合体(A)は、重合や水素添加反応後の重合体溶液として使用しても、溶媒を除去した後に使用してもどちらでもよいが、樹脂組成物を調製する際に添加剤の溶解や分散が良好になるとともに、工程が簡素化できるため、重合体溶液として使用するのが好ましい。
(エポキシ化合物(B))
本発明で用いられる、環に縮合したエポキシ基を2つ以上含有するエポキシ化合物(B)(以下、適宜、「エポキシ化合物(B)」と略記する。)は、シクロアルカン環上に存在するエポキシ基を分子中に2個含有する脂環式エポキシ化合物であり、本発明では、シクロアルカン環上に存在するエポキシ基を分子中に2個含有し、かつ、エステル結合を含有しないものが好ましく、また、エポキシ基以外に、窒素原子、酸素原子、硫黄原子などのヘテロ原子を有する官能基を含有しないものであることがより好ましい。
エポキシ化合物(B)の具体例としては、下記一般式(1)〜(3)で表される化合物のいずれかが好ましい。
Figure 2012214608
(上記一般式(1)中、R〜R12は、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、又は炭素数1〜20の炭化水素基を表す。)
Figure 2012214608
(上記一般式(2)中、R13〜R30は、互いに独立して、水素原子;ハロゲン原子;酸素原子もしくはハロゲン原子を含んでもよい、炭素数1〜20の炭化水素基;又は置換基を有してもよい炭素数1〜20のアルコキシ基を表す。)
Figure 2012214608
(上記一般式(3)中、R31〜R41は、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、又は炭素数1〜20の炭化水素基を表す。)
上記一般式(1)〜(3)中、R〜R41を構成するハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
〜R12、R31〜R41を構成する炭素数1〜20の炭化水素基、及びR13〜R30を構成する酸素原子もしくはハロゲン原子を含んでもよい、炭素数1〜20の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基等の芳香族基等が挙げられる。なお、R13〜R30においては、これら炭化水素基は、酸素原子又はハロゲン原子を含んでもよい。
13〜R30を構成する置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基の、炭素数1〜20のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、s−ブトキシ基、t−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−オクチルオキシ基等が挙げられる。その置換基としては、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;等が挙げられる。
これらのなかでも、エポキシ化合物(B)としては、本発明の効果がより一層顕著なものとなることから、分子量が300以下のものが好ましく、分子量が100〜300であるものがより好ましい。また、温度25℃において液体であるものが好ましい。さらに、エポキシ化合物(B)としては、得られる硬化物の電気特性及び耐水性を向上させることができるという点より、エポキシ基以外の極性基を有しないものが好ましい。
エポキシ化合物(B)としては、特に、下記式(4)で表される化合物(テトラヒドロインデンジエポキシド)、下記式(5)で表される化合物((3,3’,4,4’−ジエポキシ)ビシクロヘキシル)又は下記式(6)で表される化合物(ジシクロペンタジエンジエポキシド)が好ましく、下記式(5)で表される化合物が反応性の観点から、また液体であることからより好ましい。
Figure 2012214608
Figure 2012214608
Figure 2012214608
なお、エポキシ化合物(B)としては、上記式(4)〜(6)で表される化合物以外にも、たとえば、対応するオレフィンの炭素−炭素二重結合をエポキシ化する方法等の公知の方法により製造し、入手することができる(例えば、特開2002−145872号公報、特開2008−189698号公報、特開2008−189709号公報等参照。)。また、市販品をそのまま使用することもできる。
本発明の硬化性樹脂組成物中における、エポキシ化合物(B)の配合割合は、「脂環式オレフィン重合体(A)/エポキシ化合物(B)」の重量比で、好ましくは1/99〜50/50の範囲、より好ましくは10/90〜40/60の範囲、さらに好ましくは20/80〜40/60の範囲である。エポキシ化合物(B)の配合割合が少なすぎると、硬化が不十分となり、得られる硬化物の機械的強度が悪化するおそれがある。一方、エポキシ化合物(B)の配合割合が多すぎると、脆くなるおそれがある。
(熱酸発生剤(C))
本発明で用いられる熱酸発生剤(C)は、加熱により酸を発生する物質であり、硬化剤として作用する。熱酸発生剤(C)としては、たとえば、スルホニウム塩、ベンゾチアゾリウム塩、アンモニウム塩、ホスホニウム塩のようなオニウム塩、ハロゲン化合物、及び硫酸塩が挙げられる。これらの中でも、スルホニウム塩及びベンゾチアゾリウム塩が好ましい。
スルホニウム塩の具体例としては、4−アセトフェニルジメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−アセトフェニルジメチルスルホニウムヘキサフルオロアルセネート、ジメチル−4−(ベンジルオキシカルボニルオキシ)フェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジメチル−4−(ベンゾイルオキシ)フェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジメチル−4−(ベンゾイルオキシ)フェニルスルホニウムヘキサフルオロアルセネート等のアルキルスルホニウム塩;ベンジル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−アセトキシフェニルベンジルメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ベンジル−4−メトキシフェニルメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ベンジル−3−クロロ−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムヘキサフルオロアルセネート、4−メトキシベンジル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート等のベンジルスルホニウム塩;
ジベンジル−4−ヒドロキシフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジベンジル−4−ヒドロキシフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェー、ジベンジル−4−メトキシフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ベンジル−4−メトキシベンジル−4−ヒドロキシフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート等のジベンジルスルホニウム塩;p−クロロベンジル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、p−ニトロベンジル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、3,5−ジクロロベンジル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、o−クロロベンジル−3−クロロ−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート等の置換ベンジルスルホニウム塩;などが挙げられる。
ベンゾチアゾリウム塩の具体例としては、3−ベンジルベンゾチアゾリウムヘキサフルオロアンチモネート、3−ベンジルベンゾチアゾリウム ヘキサフルオロホスフェート、3−ベンジルベンゾチアゾリウム テトラフルオロボレート、3−(p−メトキシベンジル)ベンゾチアゾリウム ヘキサフルオロアンチモネート、3−ベンジル−2−メチルチオベンゾチアゾリウム ヘキサフルオロアンチモネート、3−ベンジル−5−クロロベンゾチアゾリウム ヘキサフルオロアンチモネート等のベンジルベンゾチアゾリウム塩が挙げられる。
これらのうち、4−アセトキシフェニルジメチルスルホニウムヘキサフルオロアルセネート、ベンジル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−アセトキシフェニルベンジルメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジベンジル−4−ヒドロキシフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、3−ベンジルベンゾチアゾリウムヘキサフルオロアンチモネート等が好ましく用いられる。これらの熱酸発生剤(C)は、単独であるいは2種以上組み合わせて用いることができる。
また、上記以外にも、トリアルキル亜リン酸エステル、トリアリール亜リン酸エステル、ジアルキル亜リン酸エステル、モノアルキル亜リン酸エステル、次亜リン酸エステル、アリールホスホン酸の第2級又は第3級アルキルエステル又はシクロアルキルエステル、有機リン酸の第2級又は第3級アルキルエステル又はシクロアルキルエステル、有機カルボン酸のシリルエステル、第3級アルキルエステル又はシクロアルキルエステル、有機スルフォン酸の第2級又は第3級アルキルエステル又はシクロアルキルエステルなどであって、水又は水蒸気の存在下又は非存在下で、加熱することで酸を発生する化合物などを用いることもできる。
また、本発明で用いられる熱酸発生剤(C)としては、好ましくは80℃以上、より好ましくは100℃以上、特に好ましくは110℃以上に加熱することで酸を発生する化合物が好ましい。酸を発生する温度が80℃未満の場合、硬化性樹脂組成物をフィルムに成形する工程において酸が発生してしまい、硬化性樹脂組成物の流動性が低下してしまう場合がある。
本発明の硬化性樹脂組成物中における、熱酸発生剤(C)の配合量は、脂環式オレフィン重合体(A)及びエポキシ化合物(B)の合計100重量部に対して、好ましくは、0.1〜10重量部、より好ましくは0.5〜5重量部、さらに好ましくは1〜5重量部である。熱酸発生剤(C)の配合量が少なすぎると、硬化が不十分になるおそれがあり、一方、多すぎると、信頼性が悪化するおそれがある。
(無機充填材(D))
また、本発明の硬化性樹脂組成物には、上述した脂環式オレフィン重合体(A)、エポキシ化合物(B)及び熱酸発生剤(C)に加えて、無機充填材(D)を配合することが好ましい。無機充填材(D)としては、工業的に一般に使用されるものであれば特に限定されず、たとえば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸ジルコニウム、水和アルミナ、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、シリカ、タルク、クレーなどを挙げることができる。無機充填材を配合することで、得られる硬化物の線膨張を低くすることができる。
上述した無機充填材(D)の中でも、耐熱性、低吸水率、誘電特性、低不純物性、放熱性等に優れるという点より、シリカが好ましく、特に、その表面をシランカップリング剤で処理してなるシリカがより好ましい。なお、シランカップリング剤としては、特に限定されず、公知のものを使用することができる。
本発明で用いられる無機充填材(D)は、平均粒子径が、好ましくは0.05〜1.5μmであり、より好ましくは0.1〜1μmである。無機充填材(D)の平均粒子径が小さすぎると、溶融粘度が高くなり埋め込み平坦性が確保できなくなる場合があり、一方、大きすぎると、微細な配線パターンを埋め込んだときに配線間のショートを引き起こす場合がある。なお、平均粒子径は、粒度分布測定装置により測定することができる。
本発明の硬化性樹脂組成物中における、無機充填材(D)の配合割合は、30〜90重量%であり、好ましくは40〜80重量%、より好ましくは50〜70重量%である。無機充填材(D)の配合割合が低すぎると、無機充填材(D)を配合した効果が得難くなり、一方、配合割合が高すぎると、硬化性組成物からなるフィルムや硬化物が脆くなるおそれがある。
(その他の成分)
また、本発明の硬化性樹脂組成物には、必要に応じて、溶剤を配合してもよい。溶剤を配合することにより、本発明の硬化性樹脂組成物を調製した際における、硬化反応の進行を抑制することができ、これにより、安定した組成物を得ることができるとともに、フィルム状に成形する際における、成形性を向上させることができる。なお、溶剤は、本発明の硬化性樹脂組成物をフィルム状に成形し、フィルム化する際に、加熱等により揮発除去されることとなる。
溶剤としては、フィルム状に成形する際に、加熱等により揮発除去させるという観点から、その沸点が30〜250℃のものが好ましく、50〜200℃のものがより好ましい。このような溶剤の具体例としては、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン、及びアニソールなどの芳香族炭化水素;n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、メチルエチルケトン、及びメチルイソブチルケトンなどの脂肪族炭化水素;シクロペンタンやシクロヘキサン、シクロペンタノン、及びシクロヘキサノンなどの脂環式炭化水素;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、及びトリクロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素;などが挙げられる。これらのなかでも、本発明の硬化性樹脂組成物を構成する各成分との相溶性の観点より、環式オレフィン重合体(A)を重合体溶液の形態で用いる場合には、該重合体溶液に使用する溶剤と同様のものを用いることが好ましい。
本発明の硬化性樹脂組成物中における、溶剤の配合割合は、好ましくは90重量%以下、より好ましくは80重量%以下、さらに好ましくは70重量%以下である。
さらに、本発明の硬化性樹脂組成物には、必要に応じて、ゴム質重合体や、上記した脂環式オレフィン重合体(A)以外のその他の熱可塑性樹脂を配合することができる。ゴム質重合体としては、常温(25℃)以下のガラス転移温度を持つ重合体であり、一般的なゴム状重合体及び熱可塑性エラストマーが含まれる。本発明の硬化性樹脂組成物に、ゴム質重合体やその他の熱可塑性樹脂を配合することにより、得られる硬化物の柔軟性改良することができる。用いるゴム質重合体のムーニー粘度(ML1+4,100℃)は、適宜選択すればよいが、通常、5〜200である。
上述したゴム状重合体やその他の熱可塑性樹脂は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができ、その配合量は、本発明の目的を損なわない範囲で適宜選択されるが、脂環式オレフィン重合体(A)及びエポキシ化合物(B)の合計100重量部に対して、30重量部以下の配合量とすることが好ましい。
本発明の硬化性樹脂組成物には、硬化物とした際における難燃性を向上させる目的で、例えば、ハロゲン系難燃剤やリン酸エステル系難燃剤などの一般の電気絶縁膜形成用の硬化性樹脂組成物に配合される難燃剤を配合してもよい。本発明の硬化性樹脂組成物に難燃剤を配合する場合の配合量は、脂環式オレフィン重合体(A)及びエポキシ化合物(B)の合計100重量部に対して、好ましくは100重量部以下であり、より好ましくは60重量部以下である。
また、本発明の硬化性樹脂組成物には、さらに必要に応じて、難燃助剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、老化防止剤、紫外線吸収剤(レーザー加工性向上剤)、レベリング剤、帯電防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、染料、天然油、合成油、ワックス、乳剤、磁性体、誘電特性調整剤、靭性剤などの任意成分を配合してもよい。これらの任意成分の配合割合は、本発明の目的を損なわない範囲で適宜選択すればよい。
本発明の硬化性樹脂組成物の製造方法としては、特に限定されるものではなく、上記各成分を混合することにより製造することができる。また、溶剤を用いる場合には、上記各成分の一部を溶剤に溶解もしくは分散させた状態の組成物を調製し、当該組成物に残りの成分を混合してもよい。
(フィルム)
本発明のフィルムは、上述した本発明の硬化性樹脂組成物をシート状又はフィルム状に成形してなる成形体である。あるいは、本発明のフィルムとしては、本発明の硬化性樹脂組成物を、繊維基材に含浸させることにより得られる、シート状又はフィルム状の複合成形体であってもよい。
本発明の硬化性樹脂組成物を、シート状又はフィルム状に成形して成形体とする際には、本発明の硬化性樹脂組成物を、必要に応じて有機溶剤を添加して、支持体に塗布、散布又は流延し、次いで乾燥することより得ることが好ましい。
この際に用いる支持体としては、樹脂フィルムや金属箔などが挙げられる。樹脂フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリアリレートフィルム、ナイロンフィルムなどが挙げられる。これらのフィルムのうち、耐熱性、耐薬品性、剥離性などの観点からポリエチレンテレフタレートフィルム又はポリエチレンナフタレートフィルムが好ましい。金属箔としては、銅箔、アルミ箔、ニッケル箔、クロム箔、金箔、銀箔などが挙げられる。
シート状又はフィルム状の成形体の厚さは、特に限定されないが、作業性などの観点から、通常、1〜150μm、好ましくは2〜100μm、より好ましくは5〜80μmである。また、支持体の表面平均粗さRaは、通常、300nm以下、好ましくは150nm以下、より好ましくは100nm以下である。
本発明の硬化性樹脂組成物を塗布する方法としては、ディップコート、ロールコート、カーテンコート、ダイコート、スリットコート、グラビアコートなどが挙げられる。
なお、本発明で用いる成形体においては、本発明の硬化性樹脂組成物が未硬化又は半硬化の状態であることが好ましい。ここで未硬化とは、成形体を、脂環式オレフィン重合体(A)を溶解可能な溶剤に漬けたときに、実質的に脂環式オレフィン重合体(A)の全部が溶解する状態をいう。また、半硬化とは、加熱すれば更に硬化しうる程度に途中まで硬化された状態であり、好ましくは、脂環式オレフィン重合体(A)を溶解可能な溶剤に脂環式オレフィン重合体(A)の一部(具体的には7重量%以上)が溶解する状態であるか、あるいは、溶剤中に成形体を24時間浸漬した後の体積が、浸漬前の体積の200%以上(膨潤率)である状態をいう。
また、本発明の硬化性樹脂組成物を、支持体上に塗布した後、必要に応じて、乾燥を行ってもよい。乾燥温度は、本発明の硬化性樹脂組成物が硬化しない程度の温度とすることが好ましく、通常、20〜150℃、好ましくは30〜100℃である。乾燥温度が高すぎると、硬化反応が進行しすぎて、得られる成形体が未硬化又は半硬化の状態とならなくなるおそれがある。また、乾燥時間は、通常、30秒間〜1時間、好ましくは1分間〜30分間である。
そして、このようにして得られる本発明のフィルムは、支持体上に付着させた状態で、又は支持体からはがして、使用される。
あるいは、本発明のフィルムとしては、本発明の硬化性樹脂組成物を、繊維基材に含浸させることにより、シート状又はフィルム状の複合成形体の形態として得られるものであってもよい。
この場合に用いる繊維基材としては、たとえば、ロービングクロス、チョップドマット、サーフェシングマットなどの織布、不織布;繊維の束や塊などが挙げられる。これら繊維基材の中で、寸法安定性の観点からは織布が好ましく、加工性の観点からは不織布が好ましい。
シート状又はフィルム状の複合成形体の厚さは、特に限定されないが、作業性などの観点から、通常、1〜150μm、好ましくは2〜100μm、より好ましくは5〜80μmである。また、複合成形体中の繊維基材の量は、通常、20〜90重量%、好ましくは30〜85重量%である。
本発明の硬化性樹脂組成物を、繊維基材に含浸させる方法としては、特に限定されないが、粘度などを調整するために本発明の硬化性樹脂組成物に有機溶剤を添加し、有機溶剤を添加した硬化性樹脂組成物に繊維基材を浸漬する方法、有機溶剤を添加した硬化性樹脂組成物を繊維基材に塗布や散布する方法などが挙げられる。塗布又は散布する方法においては、支持体の上に繊維基材を置いて、これに、有機溶剤を添加した硬化性樹脂組成物を塗布又は散布することができる。なお、本発明で用いる複合成形体においては、上述した成形体と同様に、本発明の硬化性樹脂組成物が未硬化又は半硬化の状態で含有されていることが好ましい。
また、本発明の硬化性樹脂組成物を、繊維基材に含浸させた後、必要に応じて、乾燥を行ってもよい。乾燥温度は、本発明の硬化性樹脂組成物が硬化しない程度の温度とすることが好ましく、通常、20〜300℃、好ましくは30〜200℃である。乾燥温度が高すぎると、硬化反応が進行しすぎて、得られる複合成形体が未硬化又は半硬化の状態とならなくなるおそれがある。また、乾燥時間は、通常、30秒間〜1時間、好ましくは1分間〜30分間である。
そして、このようにして得られる本発明のフィルムは、これを加熱し、硬化させることにより硬化物とすることができる。
硬化温度は、通常、30〜400℃、好ましくは70〜300℃、より好ましくは120〜200℃である。また、硬化時間は、0.1〜5時間、好ましくは0.5〜3時間である。加熱の方法は特に制限されず、例えば電気オーブンなどを用いて行えばよい。
(積層体)
本発明の積層体は、上述した本発明のフィルムを積層してなるものである。本発明の積層体としては、少なくとも、上述した本発明のフィルムを積層してなるものであればよいが、ガラス基板又はシリコーンウェハー基板と、上述した本発明のフィルムとを積層してなるものが好ましい。
本発明の積層体は、通常、基板上に、上述した本発明のフィルム(すなわち、本発明の硬化性樹脂組成物を、シート状又はフィルム状に成形してなる成形体、又は本発明の硬化性樹脂組成物を、繊維基材に含浸させてなる複合成形体)を加熱圧着することにより、製造することができる。
加熱圧着の方法としては、支持体付きの成形体又は複合成形体を、上述した基板に接するように重ね合わせ、加圧ラミネータ、プレス、真空ラミネータ、真空プレス、ロールラミネータなどの加圧機を使用して加熱圧着する方法が挙げられる。加熱加圧することにより、基板表面と成形体又は複合成形体との界面に空隙が実質的に存在しないように結合させることができる。
加熱圧着操作の温度は、通常、30〜150℃、好ましくは70〜120℃であり、加える圧力は、通常、10kPa〜20MPa、好ましくは100kPa〜10MPaであり、時間は、通常、30秒〜1時間、好ましくは1分〜30分である。また、加熱圧着は、基板表面の凹凸に対する積層性を向上させ、気泡の発生を抑えるために減圧下で行うのが好ましい。加熱圧着を行う減圧下の圧力は、通常100kPa〜1Pa、好ましくは40kPa〜10Paである。
そして、このようにして得られる積層体について、本発明のフィルムを硬化する処理を行なうことで、硬化物とすることができる。硬化は、通常、導体層上に、本発明のフィルムが形成された基板全体を加熱することにより行う。硬化は、上述した加熱圧着操作と同時に行うことができる。また、先ず加熱圧着操作を硬化の起こらない条件、すなわち比較的低温、短時間で行った後、硬化を行ってもよい。
本発明の積層体の一態様としてはウェハー・レベル・パッケージ構造の半導体装置が挙げられる。当該半導体装置は、半導体素子と、半導体素子の表面の電極に接続された外部接続用端子と、外部接続用端子を除く半導体素子の表面を覆うフィルムから構成されている。かかるフィルムは、本発明のフィルムからなり、絶縁樹脂層として機能する。当該半導体装置の製造方法としては、半導体ウェハーの表面を覆うようにして本発明のフィルムを接着する工程、前記フィルムを硬化させた後、硬化フィルムに、半導体素子の電極位置となる部分に開口を形成する工程、この開口を介して硬化フィルムの表面に導電配線を形成する工程、及び前記3つの工程を適宜繰り返すことにより、前記半導体素子の電極と外部接続用端子を接続する工程からなる。このようにして得られたウェハーを個々の素子に切断することにより、ウェハー・レベル・パッケージ構造の半導体装置が得られる。
以下に実施例及び比較例を挙げて、本発明についてより具体的に説明する。なお、各例中の部及び%は、特に断りのない限り、重量基準である。各種の物性については、以下の方法に従って評価した。
(1)脂環式オレフィン重合体の数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)
テトラヒドロフランを展開溶媒として、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により測定し、ポリスチレン換算値として求めた。
(2)脂環式オレフィン重合体の水素添加率
水素添加前における脂環式オレフィン重合体中の不飽和結合のモル数に対する水素添加された不飽和結合のモル数の比率を、400MHzのH−NMRスペクトル測定により求め、これを水素添加率とした。
(3)脂環式オレフィン重合体のカルボン酸無水物基を有する繰り返し単位の含有率
脂環式オレフィン重合体中の総単量体単位モル数に対するカルボン酸無水物基を有する繰り返し単位のモル数の割合を、400MHzのH−NMRスペクトル測定により求めた。
(4)線膨張係数
フィルム状の硬化物から幅5.95mm、長さ15.4mm、厚さ20μmの小片を切り出し、支点間距離10mm、昇温速度10℃/分の条件で、熱機械分析装置(TMA/SDTA840:メトラー・トレド社製)により、30℃〜150℃の線膨張係数の測定を行い、以下の基準で評価した。
A:線膨張係数の値が、25ppm/℃未満
B:線膨張係数の値が、25ppm/℃以上、40ppm/℃未満
C:線膨張係数の値が、40ppm/℃以上、55ppm/℃未満
D:線膨張係数の値が、55ppm/℃以上
(5)ガラス転移温度(Tg)
硬化性樹脂組成物のフィルム成形体のガラス転移温度(Tg)は、上記(4)と同様にして、熱機械分析装置を用いて、IPC−TM−650 2.4.24に準拠してガラス転移温度(Tg)の測定を行い、以下の基準で評価した。なお、ガラス転移温度が高いほど、耐熱性に優れると判断できるため、好ましい。
A:ガラス転移温度が、170℃以上
B:ガラス転移温度が、160℃以上、170℃未満
C:ガラス転移温度が、150℃以上、160℃未満
D:ガラス転移温度が、150℃未満
(6)吸水率(重量変化率)
硬化フィルムについて、温度100℃の沸騰水の中に1時間浸漬して、その前後の重量変化率を測定することで、吸水率の評価を行った。なお、重量変化率は、「重量変化率(%)=〔(沸騰水浸漬後の重量−沸騰水浸漬前の重量)/沸騰水浸漬前の重量〕×100」に従って求め、以下の基準に従って、吸水率を評価した。重量変化率が小さいほど、吸水率が低く、耐水性に優れていると判断できるため、好ましい。
A:重量変化率が0.5%未満
B:重量変化率が0.5%以上、1%未満
C:重量変化率が1%以上
製造例1
テトラシクロ[9.2.1.02,10.03,8]テトラデカ−3,5,7,12−テトラエン70モル部、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン−5,6−ジカルボン酸無水物30モル部、1−ヘキセン0.9モル部、アニソール590モル部及びルテニウム系重合触媒として4−アセトキシベンジリデン(ジクロロ)(4,5−ジブロモ−1,3−ジメシチル−4−イミダゾリン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウム(和光純薬社製)0.015モル部を、窒素置換した耐圧ガラス反応器に入れ、攪拌下に80℃で1時間の重合反応を行って開環重合体の溶液を得た。次いで、窒素置換した攪拌機付きオートクレーブに、得られた開環重合体の溶液を入れ、150℃、水素圧7MPaで、5時間攪拌させて水素添加反応を行って、脂環式オレフィン重合体(A1)の溶液を得た。得られた脂環式オレフィン重合体(A1)の重量平均分子量は50,000、数平均分子量は26,000、分子量分布は1.9であった。また、水素添加率は97%であり、カルボン酸無水物基を有する繰り返し単位の含有率は30モル%であった。脂環式オレフィン重合体(A1)の溶液の固形分濃度は25%であった。
実施例1
(硬化性樹脂組成物)
上記合成例1で得られた脂環式オレフィン重合体(A1)のアニソール溶液400部(重合体として100部)、エポキシ化合物(B)としての(3,3’,4,4’−ジエポキシ)ビシクロヘキシル(B1)100部、熱酸発生剤(C)としてのSbF 系スルホニウム塩(C1)(商品名「サンエイドSI-100L」、三新化学工業社製)2部と、アニソールとを混合して、配合剤濃度が60%になるように混合することで、硬化性樹脂組成物を得た。
(フィルム成形体)
次いで、上記にて得られた硬化性樹脂組成物を、ダイコーターを用いて、厚さが38μm、表面平均粗さRaが0.08μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(支持体:ルミラー(登録商標)T60 東レ社製)上に塗工し、次いで、窒素雰囲気下、80℃で10分間乾燥し、支持体上に厚さ20μmの硬化性樹脂組成物のフィルム成形体を得た。
(硬化フィルム)
得られた硬化性樹脂組成物のフィルム成形体を、基板上に載せた厚さが9μmの銅箔上に硬化性樹脂組成物面が内層基板側となるようにして貼り合わせた後、一次プレスを行った。一次プレスは、耐熱ゴム製プレス板を上下に備えた真空ラミネータにて、200Paの減圧下で温度60℃、圧力0.1MPaで90秒間の加熱圧着により行なった。さらに、金属製プレス板を上下に備えた油圧プレス装置を用いて、圧着温度60℃、1MPaで90秒間、加熱圧着した。次いで、支持体を剥がすことにより、硬化性樹脂組成物層と銅箔との積層体を得て、得られた積層体を空気雰囲気下、180℃で60分間放置し、銅箔上に厚さ20μmのフィルム成形体の硬化物を得た。そして、得られた銅箔付きフィルム成形体の硬化物の銅箔を1モル/リットルの過硫酸アンモニウム水溶液にて溶解し、これを減圧乾燥することで、硬化フィルム(フィルム状の硬化物)を得た。
そして、上記のようにして得られた硬化フィルムを用いて、上記方法に従い、線膨張係数、ガラス転移温度、及び吸水率の各測定を行った。結果を表1に示す。
実施例2
脂環式オレフィン重合体(A1)のアニソール溶液の配合量を400部から、120部(重合体として30部)に変更するとともに、無機充填材(D)としてのシランカップリング剤処理シリカ(D1)(商品名「アドマファインシリカSC2500−SXJ」、アドマテックス社製)198部をさらに配合した以外は、実施例1と同様にして、硬化性樹脂組成物、フィルム成形体、及び硬化フィルムを得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
実施例3
エポキシ化合物(B)として、(3,3’,4,4’−ジエポキシ)ビシクロヘキシル(B1)の代わりに、ジシクロペンタジエンジエポキシド(B2)100部を使用した以外は、実施例2と同様にして、硬化性樹脂組成物、フィルム成形体、及び硬化フィルムを得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
比較例1
脂環式オレフィン重合体(A1)を配合しなかった以外は、実施例1と同様にして、硬化性樹脂組成物、フィルム成形体、及び硬化フィルムを得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
比較例2
エポキシ化合物(B)としての(3,3’,4,4’−ジエポキシ)ビシクロヘキシル(B1)の代わりに、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(jER828EL、三菱化学社製)100部を使用した以外は、実施例1と同様にして、硬化性樹脂組成物、フィルム成形体、及び硬化フィルムを得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
比較例3
エポキシ化合物(B)としての(3,3’,4,4’−ジエポキシ)ビシクロヘキシル(B1)の代わりに、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(jER828EL、三菱化学社製)100部を使用するとともに、熱酸発生剤(C)としてのSbF 系スルホニウム塩(C1)の代わりに、イミダゾール系硬化剤としての(1 - ベンジル - 2 - フェニルイミダゾール,四国化成工業社製)を使用した以外は、実施例1と同様にして、硬化性樹脂組成物、フィルム成形体、及び硬化フィルムを得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
Figure 2012214608
表1に示すように、脂環式オレフィン重合体(A)、環に縮合したエポキシ基を2つ以上含有するエポキシ化合物(B)、及び熱酸発生剤(C)を含有する硬化性樹脂組成物は、低線膨張であり、かつ、耐熱性に優れた硬化物を与えることが可能であることが分かる(実施例1〜3)。
一方、脂環式オレフィン重合体(A)を配合しない場合には、良好なフィルムを得ることができず、また、得られる硬化物は、吸水率が悪化する結果となった(比較例1)。
また、環に縮合したエポキシ基を2つ以上含有するエポキシ化合物(B)の代わりに、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を用いた場合には、硬化が不十分であり、線膨張係数及びガラス転移温度の測定ができるような試料を得ることができなかった(比較例2)。
さらに、環に縮合したエポキシ基を2つ以上含有するエポキシ化合物(B)の代わりに、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を用いるとともに、熱酸発生剤(C)の代わりに、イミダゾール系硬化剤を用いた場合には、線膨張係数が悪化し、さらには、耐熱性に劣る結果となった(比較例3)。

Claims (8)

  1. カルボキシル基、カルボン酸無水物基、及びヒドロキシフェニル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有する脂環式オレフィン重合体(A)、環に縮合したエポキシ基を2つ以上含有するエポキシ化合物(B)、及び熱酸発生剤(C)を含有してなる硬化性樹脂組成物。
  2. 無機充填剤(D)をさらに含有する請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
  3. 前記エポキシ化合物(B)が、エステル結合を含有しないものである請求項1又は2に記載の硬化性樹脂組成物。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物からなるフィルム。
  5. 請求項1〜3のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物、又は請求項4に記載のフィルムを硬化してなる硬化物。
  6. 請求項4に記載のフィルムを基材に積層してなる積層体。
  7. ガラス基板又はシリコンウェハー基板と、請求項5に記載の硬化物とからなる積層体。
  8. ウェハー・レベル・パッケージ構造の半導体装置である請求項7に記載の積層体。
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