JP2015143303A - 硬化性樹脂組成物、フィルム、積層フィルム、プリプレグ、積層体、硬化物、及び複合体 - Google Patents

硬化性樹脂組成物、フィルム、積層フィルム、プリプレグ、積層体、硬化物、及び複合体 Download PDF

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Abstract

【課題】表面粗化処理条件が変動した場合でも、表面粗度が低く、導体層との密着性に優れた電気絶縁層を安定して与えることのできる硬化性樹脂組成物を提供すること。【解決手段】カルボキシル基、カルボン酸無水物基およびフェノール性水酸基から選ばれる少なくとも1つの官能基を有する脂環式オレフィン重合体(A)、縮合多環構造を有するフェノールノボラック型エポキシ化合物(B)、およびシランカップリング剤で表面処理された無機充填剤(C)を含み、前記エポキシ化合物(B)のエポキシ当量が260〜400であり、前記脂環式オレフィン重合体(A)100重量部に対する、前記エポキシ化合物(B)の含有割合が10〜100重量部である硬化性樹脂組成物を提供する。【選択図】なし

Description

本発明は、硬化性樹脂組成物、フィルム、積層フィルム、プリプレグ、積層体、硬化物、及び複合体に関する。
電子機器の小型化、多機能化、通信高速化などの追求に伴い、電子機器に用いられる回路基板のさらなる高密度化が要求されており、このような高密度化の要求に応えるために、回路基板の多層化が図られている。このような多層回路基板は、例えば、電気絶縁層とその表面に形成された導体層とからなる内層基板の上に、電気絶縁層を積層し、この電気絶縁層の上に導体層を形成させ、さらに、これら電気絶縁層の積層と、導体層の形成と、を繰り返し行なうことにより形成される。
このような多層回路基板においては、導体層と電気絶縁層との線膨張差により回路の断線が発生してしまう場合があり、特に、導体層が高密度のパターンである場合にはこのような断線の問題は顕著であった。そのため、多層回路基板においては、電気絶縁層の低線膨張化が求められている。電気絶縁層の低線膨張化には、一般に、無機フィラーを添加することが有効ではあるが、無機フィラーを添加することにより、電気絶縁層の表面粗度が大きくなってしまい、電気絶縁層表面に導体層を形成し、該導体層をエッチングすることにより微細配線を形成した際に、エッチング不良によりパターン間に導体が残ったり、導体に浮きや剥れが発生してしまうという問題がある。
これに対し、特許文献1では、表面粗度が低く、導体層に対する密着性に優れた電気絶縁層を形成するために、電気絶縁層を形成するための絶縁性接着フィルムを、脂環式オレフィン重合体、硬化剤及び表面処理をしていない未処理無機フィラーを含有する被めっき層と、脂環式オレフィン重合体、硬化剤及び表面処理をしてなる表面処理無機フィラーを含有する接着層とからなる2層構造で形成する技術が開示されている。
特開2013−77704号公報
しかしながら、本発明者らが検討したところ、この特許文献1の技術では、過マンガン酸塩の水溶液などの酸化性化合物を用いて、被めっき層の表面を粗化処理することにより、表面粗度を低く保ちながら、導体層に対する密着性の向上を図るものであるが、このような表面粗化処理の条件が変動することにより、得られる電気絶縁層の表面粗度や、導体層に対する密着性がばらついてしまう場合があり、所望の特性を有する電気絶縁層を安定して得ることが難しいという課題があった。特に、このような表面粗化処理の条件は、各種要因により変動する場合が多く、そのため、表面粗化処理の条件が変動した場合でも、表面粗度が低く、導体層との密着性に優れた電気絶縁層を安定して得ることが望まれていた。
本発明の目的は、表面粗化処理条件が変動した場合でも、表面粗度が低く、導体層との密着性に優れた電気絶縁層を安定して与えることのできる硬化性樹脂組成物を提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究した結果、特定の官能基を有する脂環式オレフィン重合体に対して、重量平均分子量が特定の範囲にある縮合多環構造を有するフェノールノボラック型エポキシ化合物、およびシランカップリング剤で表面処理された無機充填剤を配合し、かつ、縮合多環構造を有するフェノールノボラック型エポキシ化合物の配合量を特定の範囲とすることにより得られる硬化性樹脂組成物によれば、表面粗化処理条件が変動した場合でも、表面粗度が低く、導体層との密着性に優れた電気絶縁層を安定して与えることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明によれば、
〔1〕カルボキシル基、カルボン酸無水物基およびフェノール性水酸基から選ばれる少なくとも1つの官能基を有する脂環式オレフィン重合体(A)、縮合多環構造を有するフェノールノボラック型エポキシ化合物(B)、およびシランカップリング剤で表面処理された無機充填剤(C)を含み、前記エポキシ化合物(B)のエポキシ当量が260〜400であり、前記脂環式オレフィン重合体(A)100重量部に対する、前記エポキシ化合物(B)の含有割合が10〜100重量部である硬化性樹脂組成物、
〔2〕前記無機充填剤(C)の含有割合が5〜50重量%である〔1〕に記載の硬化性樹脂組成物、
〔3〕硬化性樹脂組成物中における、前記脂環式オレフィン重合体(A)の含有量が、前記無機充填剤(C)の含有量よりも多い前記〔1〕または〔2〕に記載の硬化性樹脂組成物、
〔4〕前記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物からなるフィルム、
〔5〕前記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物からなる被めっき層と、接着層用樹脂組成物からなる接着層と、を有する積層フィルム、
〔6〕前記接着層用樹脂組成物が、エポキシ化合物および活性エステル化合物を含むものである前記〔5〕に記載の積層フィルム、
〔7〕前記〔4〕に記載のフィルム又は前記〔5〕若しくは〔6〕に記載の積層フィルムに、繊維基材を含んでなるプリプレグ、
〔8〕前記〔4〕に記載のフィルム、前記〔5〕若しくは〔6〕に記載の積層フィルム又は前記〔7〕に記載のプリプレグを、基材に積層してなる積層体、
〔9〕前記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物、前記〔4〕に記載のフィルム、前記〔5〕若しくは〔6〕に記載の積層フィルム、前記〔7〕に記載のプリプレグ、又は前記〔8〕に記載の積層体を硬化してなる硬化物、
〔10〕前記〔9〕に記載の硬化物の表面に導体層を形成してなる複合体、ならびに、
〔11〕前記〔9〕に記載の硬化物又は前記〔10〕に記載の複合体を構成材料として含む電子材料用基板、
が提供される。
本発明によれば、表面粗化処理条件が変動した場合でも、表面粗度が低く、導体層との密着性に優れた電気絶縁層を安定して与えることのできる硬化性樹脂組成物、ならびに、これを用いて得られるフィルム、積層フィルム、プリプレグ、積層体、硬化物、及び複合体が提供される。特に、本発明によれば、表面粗化処理条件のマージン(具体的には、処理時間、処理温度のマージン)が増大するため、表面粗度が低く、導体層との密着性に優れた電気絶縁層を、表面粗化処理条件を厳密に管理することなく、安定的に得ることが可能となる。
(硬化性樹脂組成物)
本発明の硬化性樹脂組成物は、カルボキシル基、カルボン酸無水物基およびフェノール性水酸基から選ばれる少なくとも1つの官能基を有する脂環式オレフィン重合体(A)、縮合多環構造を有するフェノールノボラック型エポキシ化合物(B)、およびシランカップリング剤で表面処理された無機充填剤(C)を含み、前記エポキシ化合物(B)のエポキシ当量が260〜400であり、前記脂環式オレフィン重合体(A)100重量部に対する、前記エポキシ化合物(B)の含有割合が10〜100重量部である。
(脂環式オレフィン重合体(A))
本発明で用いられる脂環式オレフィン重合体(A)は、カルボキシル基、カルボン酸無水物基およびフェノール性水酸基から選ばれる少なくとも1つの官能基を有する脂環式オレフィン重合体である。脂環式オレフィン重合体(A)を構成する脂環式構造としては、シクロアルカン構造やシクロアルケン構造などが挙げられるが、機械的強度や耐熱性などの観点から、シクロアルカン構造が好ましい。また、脂環式構造としては、単環、多環、縮合多環、橋架け環や、これらを組み合わせてなる多環などが挙げられる。脂環式構造を構成する炭素原子数は、特に限定されないが、通常4〜30個、好ましくは5〜20個、より好ましくは5〜15個の範囲であり、脂環式構造を構成する炭素原子数がこの範囲にある場合に、機械的強度、耐熱性、および成形性の諸特性が高度にバランスされ好適である。また、脂環式オレフィン重合体(A)は、通常、熱可塑性のものである。
本発明で用いる脂環式オレフィン重合体(A)は、カルボキシル基、カルボン酸無水物基およびフェノール性水酸基から選ばれる少なくとも1つの官能基を有するものであるが、これらのなかでも、カルボン酸無水物基がより好ましい。なお、脂環式オレフィン重合体(A)は、このような官能基を2種以上有するものであってもよく、このような官能基は、重合体の主鎖を構成する原子に直接結合していても、メチレン基、オキシ基、オキシカルボニルオキシアルキレン基、フェニレン基などの他の二価の基を介して結合していてもよい。脂環式オレフィン重合体(A)中のカルボキシル基、カルボン酸無水物基およびフェノール性水酸基から選ばれる少なくとも1つの官能基を有する単量体単位の含有率は、特に制限されないが、脂環式オレフィン重合体(A)を構成する全単量体単位100モル%中、通常4〜60モル%、好ましくは8〜50モル%である。
本発明で用いる脂環式オレフィン重合体(A)は、たとえば、以下の方法により得ることができる。すなわち、(1)カルボキシル基、カルボン酸無水物基およびフェノール性水酸基から選ばれる少なくとも1つの官能基(以下、適宜、「特定官能基」とする。)を有する脂環式オレフィンを、必要に応じて他の単量体を加えて、重合する方法、(2)特定官能基を有しない脂環式オレフィンを、特定官能基を有する単量体と共重合する方法、(3)特定官能基を有する芳香族オレフィンを、必要に応じて他の単量体を加えて、重合し、これにより得られる重合体の芳香環部分を水素化する方法、(4)特定官能基を有しない芳香族オレフィンを、特定官能基を有する単量体と共重合し、これにより得られる重合体の芳香環部分を水素化する方法、又は、(5)特定官能基を有しない脂環式オレフィン重合体に特定官能基を有する化合物を変性反応により導入する方法などにより得ることができる。これらのなかでも、前述の(1)の方法によって得られる重合体が好適である。
本発明で用いる脂環式オレフィン重合体(A)を得る重合法は開環重合や付加重合が用いられるが、開環重合の場合には得られた開環重合体を水素添加することが好ましい。
特定官能基を有する脂環式オレフィンの具体例としては、5−ヒドロキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メチル−5−ヒドロキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−カルボキシメチル−5−ヒドロキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、9−ヒドロキシカルボニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−メチル−9−ヒドロキシカルボニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−カルボキシメチル−9−ヒドロキシカルボニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、5−エキソ−6−エンド−ジヒドロキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、9−エキソ−10−エンド−ジヒドロキシカルボニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、などのカルボキシル基を有する脂環式オレフィン;ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン−5,6−ジカルボン酸無水物、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン−9,10−ジカルボン酸無水物、ヘキサシクロ[10.2.1.13,10.15,8.02,11.04,9]ヘプタデカ−6−エン−13,14−ジカルボン酸無水物などのカルボン酸無水物基を有する脂環式オレフィン;(5−(4−ヒドロキシフェニル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、9−(4−ヒドロキシフェニル)テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、N−(4−ヒドロキシフェニル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミドなどのフェノール性水酸基を有する脂環式オレフィンなどが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
特定官能基を有しない脂環式オレフィンの具体例としては、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(慣用名:ノルボルネン)、5−エチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−ブチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−エチリデン−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メチリデン−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−ビニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−3,8−ジエン(慣用名:ジシクロペンタジエン)、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン(慣用名:テトラシクロドデセン)、9−メチル−テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−エチル−テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−メチリデン−テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−エチリデン−テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−メトキシカルボニル−テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−ビニル−テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−プロペニル−テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−フェニル−テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、テトラシクロ[9.2.1.02,10.03,8]テトラデカ−3,5,7,12−テトラエン、シクロペンテン、シクロペンタジエンなどが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
特定官能基を有しない芳香族オレフィンの例としては、スチレン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼンなどが挙げられる。なお、これらの化合物が前記特定官能基を有する場合、特定官能基を有する芳香族オレフィンの例として挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
脂環式オレフィンや芳香族オレフィンと共重合することができる、特定官能基を有する脂環式オレフィン以外の、特定官能基を有する単量体としては、特定官能基を有するエチレン性不飽和化合物が挙げられ、その具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、α−エチルアクリル酸、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸などの不飽和カルボン酸化合物;無水マレイン酸、ブテニル無水コハク酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水シトラコン酸などの不飽和カルボン酸無水物;などが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
脂環式オレフィンや芳香族オレフィンと共重合することができる、脂環式オレフィン以外の、特定官能基を有しない単量体としては、特定官能基を有しないエチレン性不飽和化合物が挙げられ、その具体例としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセンなどの炭素数2〜20のエチレン又はα−オレフィン;1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエンなどの非共役ジエン;などが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
本発明で用いる脂環式オレフィン重合体(A)の分子量は、特に限定されないが、テトロヒドロフランを溶媒として用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィにより測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量で、500〜1,000,000の範囲であることが好ましく、1,000〜500,000の範囲であることがより好ましく、特に好ましくは、3,000〜300,000の範囲である。重量平均分子量が小さすぎると硬化性樹脂組成物を硬化して得られる硬化物の機械的強度が低下し、大きすぎるとシート状又はフィルム状に成形して成形体とする際に作業性が悪化する傾向がある。
本発明で用いる脂環式オレフィン重合体(A)を、開環重合法により得る場合の重合触媒としては、従来公知のメタセシス重合触媒を用いることができる。メタセシス重合触媒としては、Mo,W,Nb,Ta,Ruなどの原子を含有してなる遷移金属化合物が例示され、なかでも、Mo,W又はRuを含有する化合物は重合活性が高くて好ましい。特に好ましいメタセシス重合触媒の具体的な例としては、(1)ハロゲン基、イミド基、アルコキシ基、アリロキシ基又はカルボニル基を配位子として有する、モリブデンあるいはタングステン化合物を主触媒とし、有機金属化合物を第二成分とする触媒や、(2)Ruを中心金属とする金属カルベン錯体触媒を挙げることができる。
上記(1)の触媒で主触媒として用いられる化合物の例としては、MoCl、MoBrなどのハロゲン化モリブデン化合物やWCl、WOCl、タングステン(フェニルイミド)テトラクロリド・ジエチルエーテルなどのハロゲン化タングステン化合物が挙げられる。また、上記(1)の触媒で、第二成分として用いられる有機金属化合物としては、周期表第1族、2族、12族、13族又は14族の有機金属化合物を挙げることができる。なかでも、有機リチウム化合物、有機マグネシウム化合物、有機亜鉛化合物、有機アルミニウム化合物、有機スズ化合物が好ましく、有機リチウム化合物、有機アルミニウム化合物、有機スズ化合物が特に好ましい。有機リチウム化合物としては、n−ブチルリチウム、メチルリチウム、フェニルリチウム、ネオペンチルリチウム、ネオフィルリチウムなどを挙げることができる。有機マグネシウムとしては、ブチルエチルマグネシウム、ブチルオクチルマグネシウム、ジヘキシルマグネシウム、エチルマグネシウムクロリド、n−ブチルマグネシウムクロリド、アリルマグネシウムブロミド、ネオペンチルマグネシウムクロリド、ネオフィルマグネシウムクロリドなどを挙げることができる。有機亜鉛化合物としては、ジメチル亜鉛、ジエチル亜鉛、ジフェニル亜鉛などを挙げることができる。有機アルミニウム化合物としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、ジエチルアルミニウムエトキシド、エチルアルミニウムジエトキシドなどを挙げることができ、さらに、これらの有機アルミニウム化合物と水との反応によって得られるアルミノキサン化合物も用いることができる。有機スズ化合物としては、テトラメチルスズ、テトラ(n−ブチル)スズ、テトラフェニルスズなどを挙げることができる。これらの有機金属化合物の量は、用いる有機金属化合物によって異なるが、主触媒の中心金属に対して、モル比で、0.1〜10,000倍が好ましく、0.2〜5,000倍がより好ましく、0.5〜2,000倍が特に好ましい。
また、上記(2)のRuを中心金属とする金属カルベン錯体触媒としては、(1,3−ジメシチル−イミダゾリジン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、トリシクロヘキシルホスフィン−〔1,3−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)−4,5−ジブロモイミダゾール−2−イリデン〕−〔ベンジリデン〕ルテニウムジクロリド、4−アセトキシベンジリデン(ジクロロ)(4,5−ジブロモ−1,3−ジメシチル−4−イミダゾリン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムなどが挙げられる。
メタセシス重合触媒の使用割合は、重合に用いる単量体に対して、(メタセシス重合触媒中の遷移金属:単量体)のモル比で、通常1:100〜1:2,000,000の範囲であり、好ましくは1:200〜1:1,000,000の範囲である。触媒量が多すぎると触媒除去が困難となり、少なすぎると十分な重合活性が得られないおそれがある。
重合反応は、通常、有機溶媒中で行なう。用いられる有機溶媒は、重合体が所定の条件で溶解又は分散し、重合に影響しないものであれば、特に限定されないが、工業的に汎用されているものが好ましい。有機溶媒の具体例としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、トリメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ジエチルシクロヘキサン、デカヒドロナフタレン、ビシクロヘプタン、トリシクロデカン、ヘキサヒドロインデンシクロヘキサン、シクロオクタンなどの脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン系脂肪族炭化水素;クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどのハロゲン系芳香族炭化水素;ニトロメタン、ニトロベンゼン、アセトニトリルなどの含窒素炭化水素系溶媒;ジエチルエ−テル、テトラヒドロフランなどのエ−テル系溶媒;アニソール、フェネトールなどの芳香族エーテル系溶媒;などを挙げることができる。これらの中でも、工業的に汎用されている芳香族炭化水素系溶媒や脂肪族炭化水素系溶媒、脂環族炭化水素系溶媒、エーテル系溶剤、芳香族エーテル系溶媒が好ましい。
有機溶媒の使用量は、重合溶液中の単量体の濃度が、1〜50重量%となる量であることが好ましく、2〜45重量%となる量であることがより好ましく、3〜40重量%となる量であることが特に好ましい。単量体の濃度が1重量%未満の場合は生産性が悪くなり、50重量%を超えると、重合後の溶液粘度が高すぎて、その後の水素添加反応が困難となる場合がある。
重合反応は、重合に用いる単量体とメタセシス重合触媒とを混合することにより開始される。これらを混合する方法としては、単量体溶液にメタセシス重合触媒溶液を加えてもよいし、その逆でもよい。用いるメタセシス重合触媒が、主触媒である遷移金属化合物と第二成分である有機金属化合物とからなる混合触媒である場合には、単量体溶液に混合触媒の反応液を加えてもよいし、その逆でもよい。また、単量体と有機金属化合物との混合溶液に遷移金属化合物溶液を加えてもよいし、その逆でもよい。さらに、単量体と遷移金属化合物の混合溶液に有機金属化合物を加えてもよいし、その逆でもよい。
重合温度は特に制限はないが、通常、−30℃〜200℃、好ましくは0℃〜180℃である。重合時間は、特に制限はないが、通常、1分間〜100時間である。
得られる脂環式オレフィン重合体(A)の分子量を調整する方法としては、ビニル化合物又はジエン化合物を適当量添加する方法を挙げることができる。分子量調整に用いるビニル化合物は、ビニル基を有する有機化合物であれば特に限定されないが、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンなどのα−オレフィン類;スチレン、ビニルトルエンなどのスチレン類;エチルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、アリルグリシジルエーテルなどのエーテル類;アリルクロライドなどのハロゲン含有ビニル化合物;酢酸アリル、アリルアルコール、グリシジルメタクリレートなど酸素含有ビニル化合物、アクリルアミドなどの窒素含有ビニル化合物などを挙げることができる。分子量調整に用いるジエン化合物としては、1,4−ペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、1,6−ヘプタジエン、2−メチル−1,4−ペンタジエン、2,5−ジメチル−1,5−ヘキサジエンなどの非共役ジエン、又は、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエンなどの共役ジエンを挙げることができる。ビニル化合物又はジエン化合物の添加量は、目的とする分子量に応じて、重合に用いる単量体に対して、0.1〜10モル%の間で任意に選択することができる。
本発明で用いる脂環式オレフィン重合体(A)を、付加重合法により得る場合の重合触媒としては、たとえば、チタン、ジルコニウム又はバナジウム化合物と有機アルミニウム化合物とからなる触媒が好適に用いられる。これらの重合触媒は、それぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。重合触媒の量は、(重合触媒中の金属化合物:重合に用いる単量体)のモル比で、通常、1:100〜1:2,000,000の範囲である。
本発明で用いる脂環式オレフィン重合体(A)として、開環重合体の水素添加物を用いる場合の、開環重合体に対する水素添加は、通常、水素添加触媒を用いて行われる。水素添加触媒は特に限定されず、オレフィン化合物の水素添加に際して一般的に使用されているものを適宜採用すればよい。水素添加触媒の具体例としては、たとえば、酢酸コバルトとトリエチルアルミニウム、ニッケルアセチルアセトナートとトリイソブチルアルミニウム、チタノセンジクロリドとn−ブチルリチウム、ジルコノセンジクロリドとsec−ブチルリチウム、テトラブトキシチタネートとジメチルマグネシウムのような遷移金属化合物とアルカリ金属化合物との組み合わせからなるチーグラー系触媒;ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム、特開平7−2929号公報、特開平7−149823号公報、特開平11−209460号公報、特開平11−158256号公報、特開平11−193323号公報、特開平11−209460号公報などに記載されている、たとえば、ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリジンルテニウム(IV)ジクロリドなどのルテニウム化合物からなる貴金属錯体触媒;などの均一系触媒が挙げられる。また、ニッケル、パラジウム、白金、ロジウム、ルテニウムなどの金属を、カーボン、シリカ、ケイソウ土、アルミナ、酸化チタンなどの担体に担持させた不均一触媒、たとえば、ニッケル/シリカ、ニッケル/ケイソウ土、ニッケル/アルミナ、パラジウム/カーボン、パラジウム/シリカ、パラジウム/ケイソウ土、パラジウム/アルミナなどを用いることもできる。また、上述したメタセシス重合触媒をそのまま、水素添加触媒として用いることも可能である。
水素添加反応は、通常、有機溶媒中で行う。有機溶媒は生成する水素添加物の溶解性により適宜選択することができ、上述した重合反応に用いる有機溶媒と同様の有機溶媒を使用することができる。したがって、重合反応後、有機溶媒を入れ替えることなく、そのまま水素添加触媒を添加して反応させることもできる。さらに、上述した重合反応に用いる有機溶媒の中でも、水素添加反応に際して反応しないという観点から、芳香族炭化水素系溶媒や脂肪族炭化水素系溶媒、脂環族炭化水素系溶媒、エーテル系溶媒、芳香族エーテル系溶媒が好ましく、芳香族エーテル系溶媒がより好ましい。
水素添加反応条件は、使用する水素添加触媒の種類に応じて適宜選択すればよい。反応温度は、通常、−20〜250℃、好ましくは−10〜220℃、より好ましくは0〜200℃である。−20℃未満では反応速度が遅くなり、逆に250℃を超えると副反応が起こりやすくなる。水素の圧力は、通常、0.01〜10.0MPa、好ましくは0.05〜8.0MPaである。水素圧力が0.01MPa未満では水素添加速度が遅くなり、10.0MPaを超えると高耐圧反応装置が必要となる。
水素添加反応の時間は、水素添加率をコントロールするために適宜選択される。反応時間は、通常、0.1〜50時間の範囲であり、重合体中の主鎖の炭素−炭素二重結合100モル%のうち50モル%以上、好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上、特に好ましくは90モル%以上を水素添加することができる。
水素添加反応を行った後、水素添加反応に用いた触媒を除去する処理を行ってもよい。触媒の除去方法は特に制限されず、遠心分離、濾過などの方法が挙げられる。さらに、水やアルコールなどの触媒不活性化剤を添加したり、また活性白土、アルミナ、珪素土などの吸着剤を添加したりして、触媒の除去を促進させることができる。
本発明で用いられる脂環式オレフィン重合体(A)は、重合や水素添加反応後の重合体溶液として使用しても、溶媒を除去した後に使用してもどちらでもよいが、樹脂組成物を調製する際に添加剤の溶解や分散が良好になるとともに、工程が簡素化できるため、重合体溶液として使用するのが好ましい。
(縮合多環構造を有するフェノールノボラック型エポキシ化合物(B))
本発明で用いられる縮合多環構造を有するフェノールノボラック型エポキシ化合物(B)〔以下、「フェノールノボラック型エポキシ化合物(B)」と略記することがある。〕は、縮合多環構造を有し、エポキシ当量が260〜400の範囲にあるフェノールノボラック型のエポキシ化合物である。ここでフェノールノボラック型エポキシ化合物(B)のエポキシ当量とは、1グラム当量のエポキシ基を含むエポキシ化合物のグラム数(g/eq)であり、化合物中のオキシラン酸素量を測定することにより算出される。
前記縮合多環構造とは、2以上の単環が縮合(縮環)してなる構造をいう。縮合多環構造を構成する環は脂環であっても芳香環であってもよく、また、ヘテロ原子を含んだものであってもよい。縮合環数は特に限定されるものではないが、得られる電気絶縁層の耐熱性や機械的強度を高める観点から、2環以上であるのが好ましく、実用上、その上限としては10環程度である。このような縮合多環構造としては、例えば、ジシクロペンタジエン構造、ナフタレン構造、フルオレン構造、アントラセン構造、フェナントレン構造、トリフェニレン構造、ピレン構造、オバレン構造などが挙げられる。縮合多環構造は、得られる硬化樹脂において、通常、当該樹脂の主鎖を構成するが、側鎖に存在していてもよい。
本発明で用いるフェノールノボラック型エポキシ化合物(B)としては、エポキシ当量が260〜400の範囲であればよいが、好ましくは265〜350の範囲、より好ましくは270〜300の範囲である。エポキシ当量が低すぎたり、あるいは高過ぎたりすると、表面粗化処理条件が変動した場合における、得られる硬化物の安定性(特に、表面粗度、導体層との密着性の安定性)の向上効果が得られなくなる。
本発明で用いられるフェノールノボラック型エポキシ化合物(B)は、公知の方法に従って適宜製造可能であるが、市販品としても入手可能である。たとえば、フェノールノボラック型エポキシ化合物(B)の市販品の例としては、ジシクロペンタジエン構造を有するノボラック型エポキシ化合物である、例えば、商品名「エピクロンHP7200、エピクロンHP7200H、エピクロンHP7200HH、エピクロンHP7200HHH」(以上、DIC社製、「エピクロン」は登録商標)、商品名「Tactix756」(ハンツマン・アドバンスト・マテリアル社製、「Tactix」は登録商標)などが挙げられる。
以上のフェノールノボラック型エポキシ化合物(B)は、それぞれ単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
本発明の硬化性樹脂組成物中における、フェノールノボラック型エポキシ化合物(B)の含有量は、脂環式オレフィン重合体(A)100重量部に対して、10〜100重量部であり、好ましくは15〜80重量部、より好ましくは20〜60重量部である。フェノールノボラック型エポキシ化合物(B)の含有量が少なすぎると、表面粗化処理条件が変動した場合における、導体層との密着強度の安定性の向上効果が得られなくなったり、耐熱性や実装信頼性に劣る場合がある。一方、フェノールノボラック型エポキシ化合物(B)の含有量が多すぎると、表面粗化処理条件が変動した場合における、得られる硬化物の表面粗度の安定性の向上効果が得られなくなったり、耐熱性や電気特性に劣る場合がある。
また、本発明の硬化樹脂組成物中における、フェノールノボラック型エポキシ化合物(B)と脂環式オレフィン重合体(A)との当量比〔フェノールノボラック型エポキシ化合物(B)のエポキシ基の合計数に対する、脂環式オレフィン重合体(A)の官能基の合計数の比率(エポキシ基量/官能基量)〕は、好ましくは、0.9〜1.2、より好ましくは0.95〜1.15である。
〔シランカップリング剤で表面処理された無機充填剤(C)〕
本発明で用いられるシランカップリング剤で表面処理された無機充填剤(C)〔以下、「表面処理無機充填剤(C)」と略記することがある。〕は、無機充填剤を、その表面をシランカップリング剤で予め処理したものであればよく、特に限定されない。なお、本発明において、シランカップリング剤で「表面処理された」とは、無機充填剤粒子の表面にシランカップリング剤が物理的または化学的に結合していることを示す。
本発明においては、上述した脂環式オレフィン重合体(A)と、フェノールノボラック型エポキシ化合物(B)とともに、表面処理無機充填剤(C)を用いることにより、表面粗化処理に通常用いられる過マンガン酸塩の水溶液などの酸化性化合物に対する耐性を高めることができ、これにより、表面粗化処理を温和に進行させることが可能となり、結果として、表面粗化処理条件が変動した場合でも、表面粗度が低く、導体層との密着性に優れた電気絶縁層を安定して得ることが可能となる。
無機充填剤としては、たとえば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸ジルコニウム、水和アルミナ、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、シリカ、タルク、クレーなどが挙げられる。これらのなかでも、硬化物の表面粗化処理に使用される過マンガン酸塩の水溶液などの酸化性化合物により、分解もしくは溶解しないものが好ましく、特にシリカが好ましい。
無機充填剤の表面処理に用いられるシランカップリング剤としては、特に限定されないが、グリシジル基、アミノ基、メルカプト基から選択される少なくとも1つの官能基を有するものであることが好ましく、アミノ基を有するものであることが好ましい。
グリシジル基を有するシランカップリング剤としては、たとえば、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等が挙げられる。
アミノ基を有するシランカップリング剤としては、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−(N−フェニル)アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
メルカプト基を有するシランカップリング剤としては、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。
表面処理無機充填剤(C)の平均粒子径は、好ましくは0.1〜0.5μmであり、より好ましくは0.15〜0.4μmである。表面処理無機充填剤(C)の平均粒子径を前記範囲とすることにより、得られる電気絶縁層の表面粗度をより適切なものとすることができる。なお、平均粒子径は、粒度分布測定装置により測定することができる。
表面処理無機充填剤(C)の含有量は、本発明の硬化性樹脂組成物中(有機溶剤を含む場合には有機溶剤を除く硬化性樹脂組成物中)、好ましくは5〜50重量%であり、より好ましくは10〜45重量%、さらに好ましくは15〜40重量%である。また、本発明の硬化性樹脂組成物中において、表面処理無機充填剤(C)の含有量は、上記範囲とすればよいが、脂環式オレフィン重合体(A)の含有量よりも少ないものとすることが好ましい。表面処理無機充填剤(C)の含有量を前記範囲とすることにより、表面粗化処理条件が変動した場合であっても、得られる電気絶縁層の表面粗度の変動が少なく、導体層との密着強度が安定なものとすることができる。
(その他の成分)
また、本発明で用いる硬化性樹脂組成物には、必要に応じて、硬化促進剤を含有していてもよい。硬化促進剤としては特に限定されないが、たとえば、脂肪族ポリアミン、芳香族ポリアミン、第2級アミン、第3級アミン、イミダゾール誘導体、有機酸ヒドラジド、ジシアンジアミド及びその誘導体、尿素誘導体などが挙げられるが、これらのなかでも、イミダゾール誘導体が特に好ましい。
イミダゾール誘導体としては、イミダゾール骨格を有する化合物であればよく、特に限定されないが、たとえば、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、ビス−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−メチル−2−エチルイミダゾール、2−イソプロピルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾールなどのアルキル置換イミダゾール化合物;2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−エチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、ベンズイミダゾール、2−エチル−4−メチル−1−(2’−シアノエチル)イミダゾールなどのアリール基やアラルキル基などの環構造を含有する炭化水素基で置換されたイミダゾール化合物;などが挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
硬化促進剤を配合する場合における配合量は、使用目的に応じて適宜選択すればよいが、脂環式オレフィン重合体(A)100重量部に対して、好ましくは0.1〜20重量部、より好ましくは0.1〜10重量部、さらに好ましくは0.1〜5重量部である。
また、本発明の硬化性樹脂組成物は、上記成分以外に、ヒンダードフェノール化合物やヒンダードアミン化合物を含有していてもよい。これらヒンダードフェノール化合物やヒンダードアミン化合物は、老化防止剤として作用する。
ヒンダードフェノール化合物とは、ヒドロキシル基を有し、かつ、該ヒドロキシル基のβ位の炭素原子に水素原子を有さないヒンダード構造を分子内に少なくとも1つ有するフェノール化合物である。ヒンダードフェノール化合物の具体例としては、1,1,3−トリス−(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、4,4’−ブチリデンビス−(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2−チオビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、n−オクタデシル−3−(4′−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)プロピオネート、テトラキス−〔メチレン−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタンなどが挙げられる。
本発明の硬化性樹脂組成物中における、ヒンダードフェノール化合物の配合量は、特に限定されないが、脂環式オレフィン重合体(A)100重量部に対して、好ましくは0.04〜10重量部、より好ましくは0.3〜5重量部、さらに好ましくは0.5〜3重量部の範囲である。ヒンダードフェノール化合物の配合量を上記範囲とすることにより、得られる電気絶縁層の機械的強度を良好とすることができる。
また、ヒンダードアミン化合物とは、4−位に2級アミン又は3級アミンを有する2,2,6,6−テトラアルキルピペリジン基を分子中に少なくとも一個有する化合物である。アルキルの炭素数としては、通常、1〜50である。ヒンダードアミン化合物としては、4−位に2級アミン又は3級アミンを有する2,2,6,6−テトラメチルピペリジル基を分子中に少なくとも一個有する化合物が好ましい。なお、本発明においては、ヒンダードフェノール化合物と、ヒンダードアミン化合物とを併用することが好ましい。
ヒンダードアミン化合物の具体例としては、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、1〔2−{3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}エチル〕−4−{3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、8−ベンジル−7,7,9,9−テトラメチル−3−オクチル−1,2,3−トリアザスピロ〔4,5〕ウンデカン−2,4−ジオンなどが挙げられる。
ヒンダードアミン化合物の配合量は、特に限定されないが、脂環式オレフィン重合体(A)100重量部に対して、通常、0.02〜10重量部、好ましくは0.2〜5重量部、より好ましくは0.25〜3重量部である。ヒンダードアミン化合物の配合量を上記範囲とすることにより、得られる電気絶縁層の機械的強度を良好とすることができる。
さらに、本発明の硬化性樹脂組成物には、得られる電気絶縁層の難燃性を向上させる目的で、例えば、ハロゲン系難燃剤やリン酸エステル系難燃剤などの一般の電気絶縁膜形成用の樹脂組成物に配合される難燃剤を配合してもよい。難燃剤を配合する場合の配合量は、脂環式オレフィン重合体(A)100重量部に対して、好ましくは100重量部以下であり、より好ましくは60重量部以下である。
また、本発明の硬化性樹脂組成物には、さらに必要に応じて、難燃助剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、老化防止剤、紫外線吸収剤(レーザー加工性向上剤)、レベリング剤、帯電防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、染料、天然油、合成油、ワックス、乳剤、磁性体、誘電特性調整剤、靭性剤などの任意成分を配合してもよい。これらの任意成分の配合割合は、本発明の目的を損なわない範囲で適宜選択すればよい。
本発明の硬化性樹脂組成物の製造方法としては、特に限定されるものではなく、上記各成分を、そのまま混合してもよいし、有機溶剤に溶解もしくは分散させた状態で混合してもよいし、上記各成分の一部を有機溶剤に溶解もしくは分散させた状態の組成物を調製し、当該組成物に残りの成分を混合してもよい。
(フィルム)
本発明のフィルムは、上述した本発明の硬化性樹脂組成物をシート状又はフィルム状に成形してなる成形体である。
本発明の硬化性樹脂組成物を、シート状又はフィルム状に成形して成形体とする際には、本発明の樹脂組成物を、必要に応じて有機溶剤を添加して、支持体に塗布、散布又は流延し、次いで乾燥することより得ることが好ましい。
この際に用いる支持体としては、樹脂フィルムや金属箔などが挙げられる。樹脂フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリアリレートフィルム、ナイロンフィルムなどが挙げられる。これらのフィルムのうち、耐熱性、耐薬品性、剥離性などの観点からポリエチレンテレフタレートフィルム又はポリエチレンナフタレートフィルムが好ましい。金属箔としては、銅箔、アルミ箔、ニッケル箔、クロム箔、金箔、銀箔などが挙げられる。
シート状又はフィルム状の成形体の厚さは、特に限定されないが、作業性などの観点から、通常、1〜150μm、好ましくは2〜100μm、より好ましくは5〜80μmである。また、支持体の表面粗度Raは、通常、300nm以下、好ましくは200nm以下、より好ましくは100nm以下である。
本発明の硬化性樹脂組成物を塗布する方法としては、ディップコート、ロールコート、カーテンコート、ダイコート、スリットコート、グラビアコートなどが挙げられる。
なお、本発明においては、シート状又はフィルム状の成形体としては、本発明の硬化性樹脂組成物が未硬化又は半硬化の状態であることが好ましい。ここで未硬化とは、成形体を、該組成物の調製に用いた脂環式オレフィン重合体を溶解可能な溶剤に浸けたときに、実質的に該脂環式オレフィン重合体の全部が溶解する状態をいう。また、半硬化とは、さらに加熱すれば硬化しうる程度に途中まで硬化された状態であり、好ましくは、該組成物の調製に用いた脂環式オレフィン重合体を溶解可能な溶剤に該エポキシ化合物の一部(具体的には7重量%以上の量であり、かつ、一部が残存するような量)が溶解する状態であるか、又は、溶剤中に成形体を24時間浸漬した後の体積が、浸漬前の体積の200%以上(膨潤率)になる状態をいう。
また、本発明の硬化性樹脂組成物を、支持体上に塗布した後、所望により、乾燥を行ってもよい。乾燥温度は、本発明の硬化性樹脂組成物が硬化しない程度の温度とすることが好ましく、通常、20〜300℃、好ましくは30〜200℃である。乾燥温度が高すぎると、硬化反応が進行しすぎて、得られる成形体が未硬化又は半硬化の状態とならなくなるおそれがある。また、乾燥時間は、通常、30秒間〜1時間、好ましくは1分間〜30分間である。
そして、このようにして得られる本発明のフィルムは、支持体上に付着させた状態で、又は支持体からはがして、使用される。
(積層フィルム)
本発明の積層フィルムは、上述した硬化性樹脂組成物からなる被めっき層と、接着層用樹脂組成物からなる接着層と、を有するものである。
接着層を形成するための接着層用樹脂組成物としては、特に限定されるものではないが、積層フィルムの電気特性及び耐熱性を向上させる観点から、エポキシ化合物および活性エステル化合物を含むものであることが好ましい。
エポキシ化合物としては、特に限定されないが、たとえば、フェノールノボラック型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、クレゾール型エポキシ化合物、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ポリフェノール型エポキシ化合物、臭素化ビスフェノールA型エポキシ化合物、臭素化ビスフェノールF型エポキシ化合物、水素添加ビスフェノールA型エポキシ化合物等のグリシジルエーテル型エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物、グリシジルエステル型エポキシ化合物、グリシジルアミン型エポキシ化合物、イソシアヌレート型エポキシ化合物や、脂環式オレフィン構造又はフルオレン構造を有するエポキシ樹脂等が挙げられる。これらのなかでも、得られるフィルム、積層体及び硬化物の機械物性をより良好なものとすることができるという点より、ビスフェノールA型エポキシ化合物や、脂環式オレフィン構造又はフルオレン構造を有するエポキシ樹脂が好ましい。
ビスフェノールA型エポキシ化合物としては、たとえば、商品名「jER827、jER828、jER828EL、jER828XA、jER834」(以上、三菱化学社製)、商品名「エピクロン840、エピクロン840−S、エピクロン850、エピクロン850−S、エピクロン850−LC」(以上、大日本インキ化学工業社製、「エピクロン」は登録商標)などが挙げられる。脂環式オレフィン構造又はフルオレン構造を有するエポキシ樹脂としては、上述したフェノールノボラック型エポキシ化合物(B)として例示したものと同様のものを用いることができる。
活性エステル化合物としては、活性エステル基を有するものであればよいが、本発明においては、分子内に少なくとも2つの活性エステル基を有する化合物が好ましい。活性エステル化合物は、加熱によりエステル部位とエポキシ基が反応することで、上述したエポキシ化合物の硬化剤として作用する。
活性エステル化合物としては、得られる電気絶縁層の耐熱性を高めるなどの観点から、カルボン酸化合物及び/又はチオカルボン酸化合物と、ヒドロキシ化合物及び/又はチオール化合物とを反応させたものから得られる活性エステル化合物が好ましく、カルボン酸化合物と、フェノール化合物、ナフトール化合物及びチオール化合物からなる群から選択される1種又は2種以上とを反応させたものから得られる活性エステル化合物がより好ましく、カルボン酸化合物とフェノール性水酸基を有する芳香族化合物とを反応させたものから得られ、かつ、分子内に少なくとも2つの活性エステル基を有する芳香族化合物が特に好ましい。活性エステル化合物は、直鎖状又は多分岐状であってもよく、活性エステル化合物が、少なくとも2つのカルボン酸を分子内に有する化合物に由来する場合を例示すると、このような少なくとも2つのカルボン酸を分子内に有する化合物が、脂肪族鎖を含む場合には、エポキシ化合物との相溶性を高くすることができ、また、芳香族環を有する場合には、耐熱性を高くすることができる。
活性エステル化合物を形成するためのカルボン酸化合物の具体例としては、安息香酸、酢酸、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸等が挙げられる。これらのなかでも、得られる電気絶縁層の耐熱性を高める観点より、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸が好ましく、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸がより好ましく、イソフタル酸、テレフタル酸がさらに好ましい。
活性エステル化合物を形成するためのチオカルボン酸化合物の具体例としては、チオ酢酸、チオ安息香酸等が挙げられる。
活性エステル化合物を形成するためのヒドロキシ化合物の具体例としては、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールフタリン、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、カテコール、α−ナフトール、β−ナフトール、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエニルジフェノール、フェノールノボラック等が挙げられる。中でも、活性エステル化合物の溶解性を向上させると共に、得られる電気絶縁層の耐熱性を高める観点から、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、ジシクロペンタジエニルジフェノール、フェノールノボラックが好ましく、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、ジシクロペンタジエニルジフェノール、フェノールノボラックがより好ましく、ジシクロペンタジエニルジフェノール、フェノールノボラックがさらに好ましい。
活性エステル化合物を形成するためのチオール化合物の具体例としては、ベンゼンジチオール、トリアジンジチオール等が挙げられる。
活性エステル化合物の製造方法は特に限定されず、公知の方法により製造することができる。例えば、前記したカルボン酸化合物及び/又はチオカルボン酸化合物とヒドロキシ化合物及び/又はチオール化合物との縮合反応によって得ることができる。
本発明においては、活性エステル化合物として、例えば、特開2002−12650号公報に開示されている活性エステル基を持つ芳香族化合物及び特開2004−277460号公報に開示されている多官能性ポリエステルや、市販品を用いることができる。市販品としては、例えば、商品名「EXB9451、EXB9460、EXB9460S、エピクロン HPC−8000−65T」(以上、DIC社製、「エピクロン」は登録商標)、商品名「DC808」(ジャパンエポキシレジン社製)、商品名「YLH1026」(ジャパンエポキシレジン社製)などが挙げられる。
本発明で用いる接着層用樹脂組成物中における、活性エステル化合物の配合量は、用いるエポキシ化合物100重量部に対して、好ましくは10〜150重量部、より好ましくは15〜130重量部、さらに好ましくは20〜120重量部の範囲である。
また、本発明で用いる接着層用樹脂組成物には、さらに所望により、シリカなどの充填剤、硬化促進剤、難燃剤、難燃助剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、老化防止剤、紫外線吸収剤(レーザー加工性向上剤)、レベリング剤、帯電防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、染料、天然油、合成油、ワックス、乳剤、磁性体、誘電特性調整剤、靭性剤などの公知の成分を適宜配合してもよい。
本発明で用いられる接着層用樹脂組成物の製造方法としては、特に限定されるものではなく、上記各成分を、そのまま混合してもよいし、有機溶剤に溶解若しくは分散させた状態で混合してもよいし、上記各成分の一部を有機溶剤に溶解若しくは分散させた状態の組成物を調製し、当該組成物に残りの成分を混合してもよい。
本発明の積層フィルムは、このような接着層用樹脂組成物と、上述した本発明の硬化性樹脂組成物とを用いて製造される。具体的には、本発明の積層フィルムは、例えば、以下の2つの方法:(1)上述した本発明の硬化性樹脂組成物を支持体上に塗布、散布又は流延し、所望により乾燥させ、次いで、その上に、上述した接着層用樹脂組成物をさらに塗布又は流延し、所望により乾燥させることにより製造する方法;(2)上述した本発明の硬化性樹脂組成物を支持体上に塗布、散布又は流延し、所望により乾燥させて得られたシート状又はフィルム状に成形してなる被めっき層用成形体と、上述した接着層用樹脂組成物とを支持体上に塗布、散布又は流延し、所望により乾燥させて、シート状又はフィルム状に成形してなる接着層用成形体と、を積層し、これらの成形体を一体化させることにより製造する方法、により製造することができる。これらの製造方法の内、より容易なプロセスであり生産性に優れることから、上記(1)の製造方法が好ましい。
上述の(1)の製造方法において、本発明の硬化性樹脂組成物を支持体に塗布、散布又は流延する際、及び塗布、散布又は流延された硬化性樹脂組成物に接着層用樹脂組成物を塗布、散布又は流延する際、あるいは上述の(2)の製造方法において、硬化性樹脂組成物及び接着層用樹脂組成物をシート状又はフィルム状に成形して被めっき層用成形体及び接着層用成形体とする際には、硬化性樹脂組成物又は接着層用樹脂組成物を、所望により有機溶剤を添加して、支持体に塗布、散布又は流延することが好ましい。
その際に用いる支持体としては、樹脂フィルムや金属箔などが挙げられる。樹脂フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリアリレートフィルム、ナイロンフィルムなどが挙げられる。これらのフィルムのうち、耐熱性、耐薬品性、剥離性などの観点から、ポリエチレンテレフタレートフィルム又はポリエチレンナフタレートフィルムが好ましい。金属箔としては、銅箔、アルミ箔、ニッケル箔、クロム箔、金箔、銀箔などが挙げられる。なお、支持体の表面平均粗さRaは、通常、300nm以下、好ましくは150nm以下、より好ましくは100nm以下である。
上述の(1)の製造方法における、硬化性樹脂組成物及び接着層用樹脂組成物の厚み、あるいは上述の(2)の製造方法における被めっき層用成形体及び接着層用成形体の厚みは、特に限定されないが、積層フィルムとした際における、被めっき層の厚みが、好ましくは1〜10μm、より好ましくは1.5〜8μm、さらに好ましくは2〜5μm、また、接着層の厚みが、好ましくは10〜100μm、より好ましくは10〜80μm、さらに好ましくは15〜60μmとなるような厚みとすることが好ましい。被めっき層の厚みが薄すぎると、積層フィルムを硬化して得られる硬化物上に、無電解めっきにより導体層を形成した際における、導体層の形成性が低下してしまうおそれがあり、一方、被めっき層の厚みが厚すぎると、積層フィルムを硬化して得られる硬化物の線膨張が大きくなるおそれがある。また、接着層の厚みが薄すぎると、積層フィルムの配線埋め込み性が低下してしまうおそれがある。
硬化性樹脂組成物及び接着層用樹脂組成物を塗布する方法としては、ディップコート、ロールコート、カーテンコート、ダイコート、スリットコート、グラビアコートなどが挙げられる。
また、上述の(1)の製造方法における、硬化性樹脂組成物を支持体上に塗布、散布又は流延した後、あるいは接着層用樹脂組成物を硬化性樹脂組成物上に塗布、散布又は流延した後、あるいは上述の(2)の製造方法における、硬化性樹脂組成物及び接着層用樹脂組成物を支持体上に塗布した後、所望により、乾燥を行ってもよい。乾燥温度は、硬化性樹脂組成物及び接着層用樹脂組成物が硬化しない程度の温度とすることが好ましく、通常、20〜300℃、好ましくは30〜200℃である。また、乾燥時間は、通常、30秒間〜1時間、好ましくは1分間〜30分間である。
本発明の積層フィルムにおいては、積層フィルムを構成する被めっき層及び接着層が未硬化又は半硬化の状態であることが好ましい。これらを未硬化又は半硬化の状態とすることにより、本発明の積層フィルムを接着性の高いものとすることできる。また、本発明の積層フィルムは、被めっき層により優れためっきのピール強度を発揮しうる。
(プリプレグ)
本発明のプリプレグは、上述した本発明のフィルム又は本発明の積層フィルムに、繊維基材を含んでなるものである。
繊維基材としては、ポリアミド繊維、ポリアラミド繊維やポリエステル繊維等の有機繊維や、ガラス繊維、カーボン繊維等などの無機繊維が挙げられる。また、繊維基材の形態としては、平織りもしくは綾織りなどの織物の形態、または不織布の形態等が挙げられる。繊維基材の厚さは5〜100μmが好ましく、10〜50μmの範囲が好ましい。薄すぎると取り扱いが困難となり、厚すぎると相対的に樹脂層が薄くなり配線埋め込み性が不十分になる場合がある。
本発明のプリプレグが、上述した本発明のフィルムに繊維基材を含んでなるものである場合には、本発明のプリプレグは、本発明の硬化性樹脂組成物を、繊維基材に含浸させることにより、製造することができる。この場合において、本発明の硬化性樹脂組成物を、繊維基材に含浸させる方法としては、特に限定されないが、粘度などを調整するために本発明の硬化性樹脂組成物に有機溶剤を添加し、有機溶剤を添加した硬化性樹脂組成物に繊維基材を浸漬する方法、有機溶剤を添加した硬化性樹脂組成物を繊維基材に塗布や散布する方法などが挙げられる。塗布又は散布する方法においては、支持体の上に繊維基材を置いて、これに、有機溶剤を添加した硬化性樹脂組成物を塗布又は散布することができる。なお、本発明においては、シート状又はフィルム状の複合成形体としては、上述したシート状又はフィルム状の成形体と同様に、本発明の硬化性樹脂組成物が未硬化又は半硬化の状態で含有されていることが好ましい。
また、本発明の硬化性樹脂組成物を、繊維基材に含浸させた後、所望により、乾燥を行ってもよい。乾燥温度は、本発明の硬化性樹脂組成物が硬化しない程度の温度とすることが好ましく、通常、20〜300℃、好ましくは30〜200℃である。乾燥温度が高すぎると、硬化反応が進行しすぎて、得られる複合成形体が未硬化又は半硬化の状態とならなくなるおそれがある。また、乾燥時間は、通常、30秒間〜1時間、好ましくは1分間〜30分間である。
あるいは、本発明のプリプレグが、上述した本発明の積層フィルムに繊維基材を含んでなるものである場合には、本発明のプリプレグは、一方の面に接着層と、他方の面に被めっき層、内部に繊維基材を有するものであることが好ましく、その製造方法は限定されないが、たとえば、以下の方法:(1)支持体付き接着層用樹脂組成物フィルムと支持体付き硬化性樹脂組成物フィルムを、繊維基材を間に挟むように各フィルムの樹脂層側を合わせて、所望により加圧、真空、加熱などの条件のもとで積層して製造する方法;(2)接着層用樹脂組成物又は硬化性樹脂組成物のいずれかを繊維基材に含浸して、所望により乾燥することでプリプレグを作製し、このプリプレグにもう一方の樹脂組成物を塗布、散布又は流延することにより、若しくはもう一方の支持体付き樹脂組成物フィルムを積層することにより製造する方法;(3)支持体上に接着層用樹脂組成物又は硬化性樹脂組成物のいずれかを塗布、散布又は流延などにより積層し、その上に繊維基材を重ね、さらにその上からもう一方の樹脂組成物を塗布、散布又は流延することにより積層し、所望により乾燥させることで製造することができる。なお、いずれの方法も組成物には所望により有機溶剤を添加して、組成物の粘度を調整することにより、繊維基材への含浸や支持体への塗布、散布又は流延における作業性を制御することが好ましい。
また、この際に用いる支持体としては、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリアリレートフィルム、ナイロンフィルムなどの樹脂フィルムや、銅箔、アルミ箔、ニッケル箔、クロム箔、金箔、銀箔などの金属箔が挙げられ、これらは、プリプレグの一方の面だけでなく、両方の面に付いていてもよい。
本発明のプリプレグの厚みは、特に限定されないが、被めっき層の厚みが、好ましくは1〜10μm、より好ましくは1.5〜8μm、さらに好ましくは2〜5μm、また、接着層の厚みが、好ましくは10〜100μm、より好ましくは10〜80μm、さらに好ましくは15〜60μmとなるような厚みとすることが好ましい。
本発明のプリプレグを製造する際に、接着層用樹脂組成物及び硬化性樹脂組成物を塗布する方法としては、ディップコート、ロールコート、カーテンコート、ダイコート、スリットコート、グラビアコートなどが挙げられる。
また、本発明のプリプレグにおいては、上記した本発明のフィルム及び積層フィルムと同様に、プリプレグを構成する樹脂組成物が未硬化又は半硬化の状態であることが好ましい。
そして、このようにして得られる本発明のプリプレグは、これを加熱し、硬化させることにより硬化物とすることができる。
硬化温度は、通常、30〜400℃、好ましくは70〜300℃、より好ましくは100〜200℃である。また、硬化時間は、0.1〜5時間、好ましくは0.5〜3時間である。加熱の方法は特に制限されず、例えば、電気オーブンなどを用いて行えばよい。
(積層体)
本発明の積層体は、上述した本発明のフィルム、積層フィルム又はプリプレグを基材に積層してなるものである。本発明の積層体としては、少なくとも、上述した本発明のフィルム、積層フィルム又はプリプレグを積層してなるものであればよいが、表面に導体層を有する基板と、上述した本発明のフィルム、積層フィルム又はプリプレグからなる電気絶縁層とを積層してなるものが好ましい。
表面に導体層を有する基板は、電気絶縁性基板の表面に導体層を有するものである。電気絶縁性基板は、公知の電気絶縁材料(例えば、脂環式オレフィン重合体、エポキシ化合物、マレイミド樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、トリアジン樹脂、ポリフェニレンエーテル、ガラス等)を含有する樹脂組成物を硬化して形成されたものである。導体層は、特に限定されないが、通常、導電性金属等の導電体により形成された配線を含む層であって、更に各種の回路を含んでいてもよい。配線や回路の構成、厚み等は、特に限定されない。表面に導体層を有する基板の具体例としては、プリント配線基板、シリコンウェーハ基板等を挙げることができる。表面に導体層を有する基板の厚みは、通常、10μm〜10mm、好ましくは20μm〜5mm、より好ましくは30μm〜2mmである。
本発明で用いられる表面に導体層を有する基板は、電気絶縁層との密着性を向上させるために、導体層表面に前処理が施されていることが好ましい。前処理の方法としては、公知の技術を、特に限定されず使用することができる。例えば、導体層が銅からなるものであれば、強アルカリ酸化性溶液を導体層表面に接触させて、導体表面に酸化銅の層を形成して粗化する酸化処理方法、導体層表面を先の方法で酸化した後に水素化ホウ素ナトリウム、ホルマリンなどで還元する方法、導体層にめっきを析出させて粗化する方法、導体層に有機酸を接触させて銅の粒界を溶出して粗化する方法、及び導体層にチオール化合物やシラン化合物などによりプライマー層を形成する方法等が挙げられる。これらのうち、微細な配線パターンの形状維持の容易性の観点から、導体層に有機酸を接触させて銅の粒界を溶出して粗化する方法、及び、チオール化合物やシラン化合物などによりプライマー層を形成する方法が好ましい。
本発明の積層体は、通常、表面に導体層を有する基板上に、上述した本発明のフィルム(すなわち、本発明の硬化性樹脂組成物を、シート状又はフィルム状に成形してなる成形体)、積層フィルム(すなわち、本発明の硬化性樹脂組成物からなる被めっき層と、接着層とからなるシート状又はフィルム状の成形体)、又はプリプレグ(本発明のフィルムに繊維基材を含んでなる複合成形体、又は、本発明の積層フィルムに繊維基材を含んでなる複合成形体)を加熱圧着することにより、製造することができる。
加熱圧着の方法としては、支持体付きの成形体又は複合成形体を、上述した基板の導体層に接するように重ね合わせ、加圧ラミネータ、プレス、真空ラミネータ、真空プレス、ロールラミネータなどの加圧機を使用して加熱圧着(ラミネーション)する方法が挙げられる。加熱加圧することにより、基板表面の導体層と成形体又は複合成形体との界面に空隙が実質的に存在しないように結合させることができる。前記成形体又は複合成形体は、通常、未硬化又は半硬化の状態で基板の導体層に積層されることになる。
加熱圧着操作の温度は、通常、30〜250℃、好ましくは70〜200℃であり、加える圧力は、通常、10kPa〜20MPa、好ましくは100kPa〜10MPaであり、時間は、通常、30秒〜5時間、好ましくは1分〜3時間である。また、加熱圧着は、配線パターンの埋め込み性を向上させ、気泡の発生を抑えるために減圧下で行うのが好ましい。加熱圧着を行う減圧下の圧力は、通常100kPa〜1Pa、好ましくは40kPa〜10Paである。
(硬化物)
本発明の硬化物は、本発明の硬化性樹脂組成物を硬化してなるものであり、当該組成物で構成される、本発明のフィルム、積層フィルム、プリプレグ、及び積層体を硬化してなるいずれのものも含まれる。硬化は、後述する硬化条件にて、本発明の硬化性樹脂組成物やフィルム等を適宜加熱することで行うことができる。
例えば、本発明の積層体については、それを構成する、本発明のフィルム、積層フィルム又はプリプレグを硬化する処理を行なうことで、硬化物とすることができる。硬化は、通常、導体層上に、本発明のフィルム、積層フィルム又はプリプレグが形成された基板全体を加熱することにより行う。硬化は、上述した加熱圧着操作と同時に行うことができる。また、まず加熱圧着操作を硬化の起こらない条件、すなわち比較的低温、短時間で行った後、硬化を行ってもよい。
また、電気絶縁層の平坦性を向上させる目的や、電気絶縁層の厚みを増す目的で、基板の導体層上に本発明のフィルム、積層フィルム又はプリプレグを2以上接して貼り合わせて積層してもよい。
硬化温度は、通常、30〜400℃、好ましくは70〜300℃、より好ましくは100〜200℃である。また、硬化時間は、通常、0.1〜5時間、好ましくは0.5〜3時間である。加熱の方法は特に制限されず、例えば電気オーブンなどを用いて行えばよい。
(複合体)
本発明の複合体は、上述した、本発明の硬化物の表面に導体層を形成してなるものである。
例えば、本発明の積層体が多層基板を形成する場合、本発明の複合体は、該積層体の電気絶縁層上に、さらに別の導体層を形成してなるものである。かかる導体層としては金属めっき又は金属箔を使用することができる。金属めっき材料としては、金、銀、銅、ロジウム、パラジウム、ニッケル又はスズ等、金属箔としては前述のフィルム、積層フィルム又はプリプレグの支持体として使用されるものが挙げられる。なお、本発明においては、導体層としては金属めっきを使用する方法の方が、微細配線が可能であるという点より、好ましい。以下、本発明の複合体の製造方法を、本発明の複合体の一例として、導体層として金属めっきを用いた多層回路基板を例示して、説明する。
まず、積層体に、電気絶縁層を貫通するビアホールやスルーホールを形成する。ビアホールは、多層回路基板とした場合に、多層回路基板を構成する各導体層を連結するために形成される。ビアホールやスルーホールは、フォトリソグラフィ法のような化学的処理により、又は、ドリル、レーザー、プラズマエッチングなどの物理的処理などにより形成することができる。これらの方法の中でもレーザーによる方法(炭酸ガスレーザー、エキシマレーザー、UV−YAGレーザーなど)は、より微細なビアホールを電気絶縁層の特性を低下させずに形成できるので好ましい。
次に、積層体の電気絶縁層(すなわち、本発明の硬化物)の表面を粗化する表面粗化処理を行う。表面粗化処理は、電気絶縁層上に形成する導電層との接着性を高めるために行う。
電気絶縁層の表面の算術平均粗さRaは、好ましくは0.5μm以下、より好ましくは0.3μm以下であり、かつ表面十点平均粗さRzjisは、好ましくは5μm未満、より好ましくは3μm以下である。なお、本明細書において、RaはJIS B0601−2001に示される算術平均粗さであり、表面十点平均粗さRzjisは、JIS B0601−2001付属書1に示される十点平均粗さである。
表面粗化処理方法としては、本発明では、電気絶縁層表面と酸化性化合物とを接触させる方法などが挙げられる。酸化性化合物としては、無機酸化性化合物や有機酸化性化合物などの酸化能を有する公知の化合物が挙げられる。電気絶縁層の表面粗度の制御の容易さから、無機酸化性化合物や有機酸化性化合物を用いるのが特に好ましい。無機酸化性化合物としては、過マンガン酸塩、無水クロム酸、重クロム酸塩、クロム酸塩、過硫酸塩、活性二酸化マンガン、四酸化オスミウム、過酸化水素、過よう素酸塩などが挙げられる。有機酸化性化合物としてはジクミルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、m−クロロ過安息香酸、過酢酸、オゾンなどが挙げられる。
無機酸化性化合物や有機酸化性化合物を用いて電気絶縁層表面を表面粗化処理する方法に格別な制限はない。例えば、上記酸化性化合物を溶解可能な溶媒に溶解して調製した酸化性化合物溶液を電気絶縁層表面に接触させる方法が挙げられる。酸化性化合物溶液を、電気絶縁層の表面に接触させる方法としては、特に限定されないが、たとえば、電気絶縁層を酸化性化合物溶液に浸漬するディップ法、酸化性化合物溶液の表面張力を利用して、酸化性化合物溶液を、電気絶縁層に載せる液盛り法、酸化性化合物溶液を、電気絶縁層に噴霧するスプレー法、などいかなる方法であってもよい。表面粗化処理を行うことにより、電気絶縁層の、導体層など他の層との間の密着性を向上させることができる。
これらの酸化性化合物溶液を電気絶縁層表面に接触させる温度や時間は、酸化性化合物の濃度や種類、接触方法などを考慮して、任意に設定すればよいが、温度は、通常、25〜95℃、好ましくは30〜85℃であり、時間は、通常、0.5〜60分間、好ましくは1〜40分間である。
なお、表面粗化処理後、酸化性化合物を除去するため、表面粗化処理後の電気絶縁層表面を水で洗浄する。また、水だけでは洗浄しきれない物質が付着している場合には、その物質を溶解可能な洗浄液でさらに洗浄したり、他の化合物と接触させたりすることにより水に可溶な物質にしてから水で洗浄する。例えば、過マンガン酸カリウム水溶液や過マンガン酸ナトリウム水溶液などのアルカリ性水溶液を電気絶縁層と接触させた場合は、発生した二酸化マンガンの皮膜を除去する目的で、硫酸ヒドロキシアミンと硫酸との混合液などの酸性水溶液により中和還元処理した後に水で洗浄することができる。
次いで、積層体の電気絶縁層について表面粗化処理を行った後、電気絶縁層の表面及びビアホールやスルーホールの内壁面に、導体層を形成する。導体層の形成方法は、密着性に優れる導体層を形成できるという観点より、無電解めっき法により行なうことが好ましい。
たとえば、無電解めっき法により導体層を形成する際においては、まず、金属薄膜を電気絶縁層の表面に形成させる前に、電気絶縁層上に、銀、パラジウム、亜鉛、コバルトなどの触媒核を付着させるのが一般的である。触媒核を電気絶縁層に付着させる方法は特に制限されず、例えば、銀、パラジウム、亜鉛、コバルトなどの金属化合物やこれらの塩や錯体を、水又はアルコールもしくはクロロホルムなどの有機溶剤に0.001〜10重量%の濃度で溶解した液(必要に応じて酸、アルカリ、錯化剤、還元剤などを含有していてもよい。)に浸漬した後、金属を還元する方法などが挙げられる。
無電解めっき法に用いる無電解めっき液としては、公知の自己触媒型の無電解めっき液を用いればよく、めっき液中に含まれる金属種、還元剤種、錯化剤種、水素イオン濃度、溶存酸素濃度などは特に限定されない。例えば、次亜リン酸アンモニウム、次亜リン酸、水素化硼素アンモニウム、ヒドラジン、ホルマリンなどを還元剤とする無電解銅めっき液;次亜リン酸ナトリウムを還元剤とする無電解ニッケル−リンめっき液;ジメチルアミンボランを還元剤とする無電解ニッケル−ホウ素めっき液;無電解パラジウムめっき液;次亜リン酸ナトリウムを還元剤とする無電解パラジウム−リンめっき液;無電解金めっき液;無電解銀めっき液;次亜リン酸ナトリウムを還元剤とする無電解ニッケル−コバルト−リンめっき液などの無電解めっき液を用いることができる。
金属薄膜を形成した後、基板表面を防錆剤と接触させて防錆処理を施すことができる。また、金属薄膜を形成した後、密着性向上などのため、金属薄膜を加熱することもできる。加熱温度は、通常、50〜250℃、好ましくは80〜200℃である。
このようにして形成された金属薄膜上にめっき用レジストパターンを形成し、更にその上に電解めっきなどの湿式めっきによりめっきを成長させ(厚付けめっき)、次いで、レジストを除去し、更にエッチングにより金属薄膜をパターン状にエッチングして導体層を形成する。従って、この方法により形成される導体層は、通常、パターン状の金属薄膜と、その上に成長させためっきとからなる。
以上のようにして得られた多層回路基板を、上述した積層体を製造するための基板とし、これを上述した成形体又は複合成形体とを加熱圧着し、硬化して電気絶縁層を形成し、さらにこの上に、上述した方法に従い、導電層の形成を行い、これらを繰り返すことにより、さらなる多層化を行うことができ、これにより所望の多層回路基板とすることができる。
このようにして得られる本発明の複合体(及び本発明の複合体の一例としての多層回路基板)は、本発明の硬化性樹脂組成物からなる電気絶縁層(本発明の硬化物)を有してなり、本発明の硬化性樹脂組成物は、表面粗化処理条件が変動した場合でも、表面粗度が低く、導体層との密着性に優れた電気絶縁層を安定して与えることができるものであるため、本発明の複合体(及び本発明の複合体の一例としての多層回路基板)は、各種用途に好適に用いることができる。
(電子材料用基板)
本発明の電子材料用基板は、上述した本発明の硬化物又は複合体からなるものである。このような本発明の硬化物又は複合体からなる本発明の電子材料用基板は、携帯電話機、PHS、ノート型パソコン、PDA(携帯情報端末)、携帯テレビ電話機、パーソナルコンピューター、スーパーコンピューター、サーバー、ルーター、液晶プロジェクタ、エンジニアリング・ワークステーション(EWS)、ページャ、ワードプロセッサ、テレビ、ビューファインダ型又はモニタ直視型のビデオテープレコーダ、電子手帳、電子卓上計算機、カーナビゲーション装置、POS端末、タッチパネルを備えた装置などの各種電子機器に好適に用いることができる。
以下に実施例及び比較例を挙げて、本発明についてより具体的に説明する。なお、各例中の「部」及び「%」は、特に断りのない限り、重量基準である。各種の物性については、以下の方法に従って評価した。
(1)脂環式オレフィン重合体の数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)
テトラヒドロフランを展開溶媒として、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により測定し、ポリスチレン換算値として求めた。
(2)脂環式オレフィン重合体の水素添加率
水素添加前における重合体中の不飽和結合のモル数に対する水素添加された不飽和結合のモル数の比率を、400MHzのH−NMRスペクトル測定により求め、これを水素添加率とした。
(3)脂環式オレフィン重合体のカルボン酸無水物基を有する単量体単位の含有率
重合体中の総単量体単位モル数に対するカルボン酸無水物基を有する単量体単位のモル数の割合を、400MHzのH−NMRスペクトル測定により求め、これを重合体のカルボン酸無水物基を有する単量体単位の含有率とした。
(4)電気絶縁層(被めっき層)の表面粗度(算術平均粗さRa)
多層プリント配線板表面の銅を過硫酸アンモニウム溶液で溶解して得られた被めっき層表面を、表面形状測定装置(ビーコインスツルメンツ社製、WYKO NT1100)を用いて、測定範囲91μm×120μmで表面粗度(算術平均粗さRa)を測定した。
なお、本実施例においては、後述する酸化処理工程における処理時間(表面粗化処理時間)の異なる2種類の多層プリント配線板(80℃、15分の条件、および80℃、30分の条件)を得て、これら2種類の多層プリント配線板のそれぞれについて、表面粗度の測定を行った。
○:表面粗度Raが200μm未満
△:表面粗度Raが200μm以上、300μm未満
×:表面粗度Raが300μm以上
(5)電気絶縁層(被めっき層)と導体層との密着性(ピール強度)
多層プリント配線板における被めっき層と銅めっき層との引き剥がし強さ(ピール強度)をJIS C6481−1996に準拠して測定した。
なお、本実施例においては、後述する酸化処理工程における処理時間(表面粗化処理時間)の異なる2種類の多層プリント配線板(80℃、15分の条件、および80℃、30分の条件)を得て、これら2種類の多層プリント配線板のそれぞれについて、ピール強度の測定を行った。
○:ピール強度が6N/cm以上
△:ピール強度が4Ncm以上、6N/cm未満
×:ピール強度が4Ncm未満
合成例1
重合1段目として5−エチリデン−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(EdNB)35モル部、1−ヘキセン0.9モル部、アニソール340モル部及び4−アセトキシベンジリデン(ジクロロ)(4,5−ジブロモ−1,3−ジメシチル−4−イミダゾリン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウム(C1063、和光純薬社製)0.005部を、窒素置換した耐圧ガラス反応器に仕込み、攪拌下に80℃で30分間の重合反応を行ってノルボルネン系開環重合体の溶液を得た。
次いで、重合2段目として重合1段目に得た溶液中にテトラシクロ[9.2.1.02,10.03,8]テトラデカ−3,5,7,12−テトラエン(MTF)35モル部、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン−5,6−ジカルボン酸無水物(NDCA)30モル部、アニソール250モル部及びC1063 0.01部を追加し、攪拌下に80℃で1.5時間の重合反応を行ってノルボルネン系開環重合体の溶液を得た。この溶液について、ガスクロマトグラフィーを測定したところ、実質的に単量体が残留していないことが確認され、重合転化率は99%以上であった。
次いで、窒素置換した攪拌機付きオートクレーブに、得られた開環重合体の溶液を仕込み、C1063 0.03部を追加し、150℃、水素圧7MPaで、5時間攪拌させて水素添加反応を行って、ノルボルネン系開環重合体の水素添加物である脂環式オレフィン重合体(A−1)の溶液を得た。得られた重合体(A−1)の重量平均分子量は60,000、数平均分子量は30,000、分子量分布は2であった。また、水素添加率は95%であり、カルボン酸無水物基を有する単量体単位の含有率は30モル%であった。重合体(A−1)の溶液の固形分濃度は22%であった。
実施例1
(硬化性樹脂組成物の調製)
合成例1で得られた脂環式オレフィン重合体(A−1)の溶液を455部(脂環式オレフィン重合体(A−1)の量で100部)、フェノールノボラック型エポキシ化合物(B)としてジシクロペンタジエン構造を有するノボラック型エポキシ化合物(エピクロンHP7200H、DIC社製、エポキシ当量278)31部、表面処理無機充填剤(C)として、球状シリカ(アドマファイン(登録商標)SO−C1、アドマテックス社製、体積平均粒径0.25μm)をN−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(KBM−573、信越化学工業社製、アミノ基含有シランカップリング剤)で処理してなるアミノ基含有シランカップリング剤処理シリカ60部、老化防止剤としてテトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシラート(アデカスタブ(登録商標)LA52、ADEKA社製)1.3部、老化防止剤としてトリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレート(IRGANOX(登録商標)3114、BASF社製)1部、レーザー加工性向上剤として2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール(TINUVIN 234、BASF製)1部、及びアニソール335部を混合し、遊星式攪拌機で3分間攪拌した。
さらにこれに、硬化促進剤として1−べンジル−2−フェニルイミダゾールをアニソールに50%溶解した溶液1部(1−べンジル−2−フェニルイミダゾール換算で0.5部)を混合し、遊星式攪拌機で5分間攪拌し被めっき層用の硬化性樹脂組成物のワニスを得た。
(接着層用樹脂組成物)
ジシクロペンタジエン構造を有するフェノールノボラック型エポキシ化合物(エピクロンHP7200H、DIC社製、エポキシ当量278)80部、テトラキスヒドロキシフェニルエタン型エポキシ化合物(jER 1031S、三菱化学社製、エポキシ当量200)20部、活性エステル化合物(エピクロン HPC−8000−65T、不揮発分65%のトルエン溶液、DIC社製、活性エステル基当量223)90部、シリカ(商品名「SC2500−SXJ」、アドマテックス社製)350部、老化防止剤としてトリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレート(IRGANOX(登録商標)3114、BASF社製)0.95部、及びアニソール97部を混合し、遊星式攪拌機で3分間攪拌した。
さらにこれに、硬化促進剤として1−べンジル−2−フェニルイミダゾールをアニソールに50%溶解した溶液9部(1−べンジル−2−フェニルイミダゾール換算で4.5部)を混合し、遊星式攪拌機で5分間攪拌して接着層用樹脂組成物のワニスを得た。
(積層フィルムの作製)
上記にて得られた被めっき層用の硬化性樹脂組成物のワニスを、厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(支持体)上にワイヤーバーを用いて塗布し、次いで、窒素雰囲気下、85℃で5分間乾燥させて、未硬化の硬化性樹脂組成物からなる、厚み3μmの被めっき層が形成された支持体付きフィルムを得た。
次に、支持体付きフィルムの硬化性樹脂組成物からなる被めっき層の形成面に、上記にて得られた接着層用樹脂組成物のワニスを、ドクターブレード(テスター産業社製)とオートフィルムアプリケーター(テスター産業社製)を用いて塗布し、次いで、窒素雰囲気下、80℃で10分間乾燥させて、総厚みが40μmである被めっき層及び接着層が形成された支持体付き積層フィルムを得た。得られた支持体付き積層フィルムは、支持体、硬化性樹脂組成物からなる被めっき層、接着層用樹脂組成物からなる接着層の順で形成された。
(積層体の作製)
次いで、上記とは別に、ガラスフィラー及びハロゲン不含エポキシ樹脂を含有するワニスをガラス繊維に含浸させて得られたコア材の表面に、厚さ35μmの銅が貼られた、厚さ0.8mm×縦150mm×横150mmの両面銅張り積層基板の銅表面を、有機酸との接触によってマイクロエッチング処理した、両面銅張り積層基板(内層基板)を得た。
この内層基板の両面に、上記にて得られた支持体付き接着フィルムを150mm角に切断したものを、接着層用樹脂組成物側の面が内側となるようにして貼り合わせた後、一次プレスを行った。一次プレスは、耐熱ゴム製プレス板を上下に備えた真空ラミネータにて、200Paの減圧下で温度110℃、圧力0.1MPaで90秒間の加熱圧着である。さらに、金属製プレス板を上下に備えた油圧プレス装置を用いて、圧着温度110℃、1MPaで90秒間、加熱圧着した。次いで支持体を剥がすことにより、硬化性樹脂組成物及び接着層用樹脂組成物からなる樹脂層と内層基板との積層体を得た。さらに積層体を空気雰囲気下、180℃で60分間放置し、樹脂層を硬化させて内層基板上に電気絶縁層を形成した。
(膨潤処理工程)
得られた積層体を、膨潤液(「スウェリング ディップ セキュリガント P」、アトテック社製、「セキュリガント」は登録商標)500mL/L、水酸化ナトリウム3g/Lになるように調製した60℃の水溶液に15分間揺動浸漬した後、水洗した。
(酸化処理工程)
次いで、過マンガン酸塩の水溶液(「コンセントレート コンパクト CP」、アトテック社製)640mL/L、水酸化ナトリウム濃度40g/Lになるように調製した80℃の水溶液に揺動浸漬をした後、水洗した。
なお、本実施例においては、80℃の水溶液に揺動浸漬する時間を15分とした積層体、及び30分とした積層体を得た。すなわち、酸化処理時間(表面粗化処理時間)の異なる積層体を得て、これら酸化処理時間の異なる積層体のそれぞれについて、下記の各工程を行った。
(中和還元処理工程)
続いて、硫酸ヒドロキシアミン水溶液(「リダクション セキュリガント P 500」、アトテック社製、「セキュリガント」は登録商標)100mL/L、硫酸35mL/Lになるように調製した40℃ の水溶液に、積層体を5分間浸漬し、中和還元処理をした後、水洗した。
(クリーナー・コンディショナー工程)
次いで、クリーナー・コンディショナー水溶液(「アルカップ MCC−6−A」、上村工業社製、「アルカップ」は登録商標)を濃度50ml/Lとなるよう調整した50℃の水溶液に積層体を5分間浸漬し、クリーナー・コンディショナー処理を行った。次いで40℃の水洗水に積層体を1分間浸漬した後、水洗した。
(ソフトエッチング処理工程)
次いで、硫酸濃度100g/L、過硫酸ナトリウム100g/Lとなるように調製した水溶液に積層体を2分間浸漬しソフトエッチング処理を行った後、水洗した。
(酸洗処理工程)
次いで、硫酸濃度100g/Lなるよう調製した水溶液に積層体を1分間浸漬し酸洗処理を行った後、水洗した。
(触媒付与工程)
次いで、アルカップ アクチベータ MAT−1−A(商品名、上村工業社製、「アルカップ」は登録商標)が200mL/L、アルカップ アクチベータ MAT−1−B(上商品名、村工業社製、「アルカップ」は登録商標)が30mL/L、水酸化ナトリウムが0.35g/Lになるように調製した60℃のPd塩含有めっき触媒水溶液に積層体を5分間浸漬した後、水洗した。
(活性化工程)
続いて、アルカップ レデユーサ− MAB−4−A(商品名、上村工業社製、「アルカップ」は登録商標)が20mL/L、アルカップ レデユーサ− MAB−4−B(商品名、上村工業社製、「アルカップ」は登録商標)が200mL/Lになるように調整した水溶液に積層体を35℃で、3分間浸漬し、めっき触媒を還元処理した後、水洗した。
(アクセレレータ処理工程)
次いで、アルカップ アクセレレーター MEL−3−A(商品名、上村工業社製、「アルカップ」は登録商標)が50mL/Lになるように調製した水溶液に積層体を25℃で、1分間浸漬した。
(無電解めっき工程)
このようにして得られた積層体を、スルカップ PEA−6−A(商品名、上村工業社製、「スルカップ」は登録商標)100mL/L、スルカップ PEA−6−B−2X(商品名、上村工業社製)50mL/L、スルカップ PEA−6−C(商品名、上村工業社製)14mL/L、スルカップ PEA−6−D(商品名、上村工業社製)15mL/L、スルカップ PEA−6−E(商品名、上村工業社製)50mL/L、37%ホルマリン水溶液5mL/Lとなるように調製した無電解銅めっき液に空気を吹き込みながら、温度36℃で、20分間浸漬して無電解銅めっき処理して積層体表面(被めっき層用樹脂組成物からなる被めっき層の表面)に無電解めっき膜を形成した。次いで、空気雰囲気下において150℃で30分間アニール処理を行った。
アニール処理が施された積層体に、電解銅めっきを施し厚さ30μmの電解銅めっき膜を形成させた。次いで当該積層体を180℃で60分間加熱処理することにより、積層体上に前記金属薄膜層及び電解銅めっき膜からなる導体層で回路を形成した両面2層の多層プリント配線板を得た。そして、得られた多層プリント配線板について、被めっき層の表面粗度(算術平均粗さRa)、及び被めっき層と金属層との密着性(ピール強度)を、上記方法にしたがって評価した。なお、本実施例においては、上述する酸化処理工程における処理時間(表面粗化処理時間)を15分として得られた多層プリント配線板、処理時間を30分として得られた多層プリント配線板のそれぞれについて、上記各評価を行った。結果を表1に示す。
実施例2,3、比較例1,2
表1の実施例2,3及び比較例1,2における硬化性樹脂組成物の組成に従って、配合を変更した以外は、実施例1と同様にして、硬化性樹脂組成物のワニス、及び多層プリント配線板を得て、同様に測定、評価を行った。結果を表1に示す。
なお、表1において、表1に示す各化合物は以下のとおりである。
・「ジシクロペンタジエン構造含有フェノールノボラック型エポキシ化合物(HP7200HH)」は、ジシクロペンタジエン構造を有するフェノールノボラック型エポキシ化合物(エピクロンHP7200HH、DIC社製、エポキシ当量282)である。
・「ビスフェノールA型エポキシ化合物(jER828EL)」は、ビスフェノールA型エポキシ化合物(jER828EL、三菱化学社製、エポキシ当量186)である。
・「未処理シリカ」は、球状シリカ(アドマファイン(登録商標)SO−C1、アドマテックス社製、体積平均粒径0.25μm)の未処理品である。
Figure 2015143303
表1に示すように、本発明の硬化性樹脂組成物によれば、酸化処理工程における処理時間(表面粗化処理時間)を、80℃、15分とした場合、80℃、30分とした場合のいずれにおいても、表面粗度が低く、導体層との密着性に優れた電気絶縁層(被めっき層)を形成可能であることがわかる(実施例1〜3)。したがって、本発明の硬化性樹脂組成物によれば、表面粗化処理条件のマージンが大きく、表面粗度が低く、導体層との密着性に優れた電気絶縁層を、表面粗化処理条件を厳密に管理することなく、安定的に得ることが可能であることがわかる。
一方、フェノールノボラック型エポキシ化合物(B)を含有しない場合や、シランカップリング剤で処理していない無機充填剤を用いた場合には、酸化処理工程における処理時間(表面粗化処理時間)により、得られる電気絶縁層の表面粗度や、導体層との密着性に劣る結果となった(比較例1,2)。

Claims (11)

  1. カルボキシル基、カルボン酸無水物基およびフェノール性水酸基から選ばれる少なくとも1つの官能基を有する脂環式オレフィン重合体(A)、縮合多環構造を有するフェノールノボラック型エポキシ化合物(B)、およびシランカップリング剤で表面処理された無機充填剤(C)を含み、
    前記エポキシ化合物(B)のエポキシ当量が260〜400であり、
    前記脂環式オレフィン重合体(A)100重量部に対する、前記エポキシ化合物(B)の含有割合が10〜100重量部である硬化性樹脂組成物。
  2. 前記無機充填剤(C)の含有割合が5〜50重量%である請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
  3. 硬化性樹脂組成物中における、前記脂環式オレフィン重合体(A)の含有量が、前記無機充填剤(C)の含有量よりも多い請求項1または2に記載の硬化性樹脂組成物。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物からなるフィルム。
  5. 請求項1〜3のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物からなる被めっき層と、接着層用樹脂組成物からなる接着層とを有する積層フィルム。
  6. 前記接着層用樹脂組成物が、エポキシ化合物および活性エステル化合物を含むものである請求項5に記載の積層フィルム。
  7. 請求項4に記載のフィルム又は請求項5若しくは6に記載の積層フィルムに、繊維基材を含んでなるプリプレグ。
  8. 請求項4に記載のフィルム、請求項5若しくは6に記載の積層フィルム又は請求項7に記載のプリプレグを、基材に積層してなる積層体。
  9. 請求項1〜3のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物、請求項4に記載のフィルム、請求項5若しくは6に記載の積層フィルム、請求項7に記載のプリプレグ、又は請求項8に記載の積層体を硬化してなる硬化物。
  10. 請求項9に記載の硬化物の表面に導体層を形成してなる複合体。
  11. 請求項9に記載の硬化物又は請求項10に記載の複合体を構成材料として含む電子材料用基板。
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