JP2010232071A - 電池用ガスケット及びそれを用いたアルカリ電池 - Google Patents

電池用ガスケット及びそれを用いたアルカリ電池 Download PDF

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Abstract

【課題】電池を長期保存したときでも、電解液の漏出を防止することのできる耐漏液性に優れた電池用ガスケットを提供する。
【解決手段】ガスケットは、集電子が挿入される貫通孔25を有する円筒状のボス部20、電池ケースの開口部を封口する部位となる外周部22、及びボス部20と外周部22とを連結する連結部21が射出成形により一体形成された樹脂からなり、ボス部20端面において、射出成形時のゲート痕である環状の注入部24を有している。ボス部20の軸方向断面積(S)と、注入部24の軸方向断面積(S)との比(S/S)が、10〜25の範囲にあり、ボス部20の外径が3.0〜4.2mmの範囲にある。
【選択図】図3

Description

本発明は、電池ケースの開口部を封口する電池用ガスケット及びそれを用いたアルカリ電池に関する。
円筒形アルカリ電池は、電池ケース内に発電要素を収納した後、電池ケースの開口部をガスケットで封口した構成になっている。
一般に、ガスケットは、集電子が挿入される貫通孔を有する円筒状のボス部と、電池ケースの開口部を封口する部位となる外周部と、ボス部と外周部とを連結する連結部とで構成されている。このような構成のガスケットは、金型内に溶融樹脂を流し込んで射出成形により一体形成される。
この射出成形において、金型内に溶融樹脂を注入するゲート部は、種々の位置に設けられる。例えば、ガスケットの連結部に防爆弁として機能する薄肉部が形成されている場合、溶融樹脂の流れやすさを考慮すれば、ガスケットのボス部端面にゲート部を設けるのがよい(例えば、特許文献1〜3を参照)。
特開2005−093204号公報 特開2004−134168号公報 特開平8−167405号公報
溶融樹脂を注入するゲート部をガスケットのボス部端面に設ける場合、金型の製作やメンテナンスの容易さ等を考慮すると、ゲル状負極側のボス部端面にゲート部を設けるのがよい。
しかしながら、ガスケットを射出成形により形成した場合、射出成型時の残留応力に起因して、ゲート部近傍のボス部にクラックが発生しやすくなる。このようなクラックがゲル状負極側(電池の内部側)に発生すると、ゲル状負極に含まれたアルカリ電解液によってガスケットが加水分解を受けて経年劣化しやくなる。その結果、電池を長期保存したとき、ガスケットのクラック発生部位から電解液が漏出するおそれがある。
本発明は、かかる点に鑑みなされたもので、その主な目的は、電池を長期保存したときでも、電解液の漏出を防止することのできる耐漏液性に優れた電池用ガスケットを提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明における電池用ガスケットは、ガスケットのボス部の軸方向断面積(S)と、射出成型時にボス部端部に形成されたゲート痕である環状の注入部の軸方向断面積(S)との比(S/S)を10〜25の範囲にした構成を採用する。
本発明の一側面における電池用ガスケットは、円筒形アルカリ電池の電池ケースの開口部を封口するガスケットであって、集電子が挿入される貫通孔を有する円筒状のボス部と、電池ケースの開口部を封口する部位となる外周部と、ボス部と外周部とを連結する連結部とが射出成形により一体形成された樹脂からなり、ボス部は、該ボス部端面において、射出成形時のゲート痕である環状の注入部を有し、ボス部の軸方向断面積(S)と、注入部の軸方向断面積(S)との比(S/S)が10〜25の範囲にあり、かつ、ボス部の外径が3.0〜4.2mmの範囲、より好ましくは3.0〜3.4mmの範囲にある。
このような構成により、ガスケットのゲート部近傍のボス部にクラックが発生するのを防止することができ、かかるガスケットを用いたアルカリ電池を長期保存したときでも、電解液の漏出を防止することができる。これにより、耐漏液性に優れたアルカリ電池を実現することが可能となる。
本発明の他の側面において、ガスケットを構成する樹脂は、射出成形時に切り離されたリサイクル樹脂が5〜40重量%の範囲で含まれている。また、ガスケットを構成する樹脂は、無機フィラーが5〜15重量%の範囲で添加されている。この無機フィラーは、タルクまたはカオリンであることが好ましい。
本発明の他の側面において、ガスケットは、ボス部端面における内周縁に配されたゲート部から、ガスケットの成形金型内に樹脂を注入することにより形成されたものである。
本発明の一側面におけるアルカリ電池は、上記電池用ガスケットで電池ケースの開口部が封口されたアルカリ電池であって、ガスケットのボス部端部にある注入部は、電池ケース内に収容された発電要素側に位置している。
本発明によれば、ガスケットのゲート部近傍のボス部にクラックが発生するのを防止することができる。その結果、かかるガスケットを用いたアルカリ電池を長期保存したときでも、電解液の漏出を防止することができ、耐漏液性に優れたアルカリ電池を実現することができる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。また、本発明の効果を奏する範囲を逸脱しない範囲で、適宜変更は可能である。さらに、他の実施形態との組み合わせも可能である。
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態におけるガスケットを用いて電池ケースを封口した円筒形アルカリ電池の構成を模式的に示した半断面図である。
図1に示すように、有底円筒状の電池ケース1内に、セパレータ4を介して正極2とゲル状負極3が収納され、電池ケース1の開口部が、ガスケット5、負極集電子6、及び負極端子板7を一体化した封口ユニット9によって封口されている。
図2は、ガスケット5を射出成形により形成するための金型を示した断面図である。金型は、上金型10と下金型11を組み合わせることによって、ボス部を形成する空間部14、連結部を形成する空間部16、及び外周部を形成する空間部17を構成する。また、ボス部を形成する空間部14には、集電子6を挿入するための貫通孔を形成するコアピン13が配されている。そして、上金型10には、コアピン13の端部に向けて開口するゲート部12が形成されている。
ガスケット5は、ボス部端面における内周縁に配されたゲート部12から、ガスケット5の成形金型内の空間部14、16、17に溶融樹脂を注入することにより形成される。
図3は、このような射出成形により形成したガスケット5の構成を示した断面図である。図3に示すように、ガスケット5は、集電子6が挿入される貫通孔25を有する円筒状のボス部20と、電池ケースの開口部を封口する部位となる外周部22と、ボス部20と外周部22とを連結する連結部21とで構成される。また、ボス部20は、その端部において、射出成形時のゲート痕である環状の注入部24を有する。
ところで、アルカリ電池の高容量化を考えた場合、集電子6の径を細くして、電池ケース1内の負極充填量を増加させることが有効であり、また、低コスト化にも繋がる。
本願発明者等は、このような集電子6の径を細くした電池について種々検討していたところ、次のような課題を見出した。
集電子6の径を細くした場合、図2に示した金型において、コアピン13の径を細くすることになる。このとき、ゲート部12の径は、溶融樹脂の流れを考慮すると、コアピン13の径に合わせて細くするよりも、むしろゲート部12の径を変えずに、ゲート部12とコアピン13との隙間を広げておいた方が望ましいと考えられた。なぜなら、隙間をより広げた方が、溶融樹脂をより抵抗なく金型内に流し込ませることができると思われたからである。
ところが、このような金型を用いてガスケット5を形成し、これを用いて図1に示したようなアルカリ電池を試作し、電解液の耐漏液性を評価したところ、後述するように、高温保持試験において電解液の漏液が生じた電池があった。
本願発明者等は、このような漏液に至った原因を調べたところ、次のような事実が判明した。
図4(a)〜(e)は、図2に示した金型において、ボス部20を形成する空間部14の片側断面図であり、ゲート部12から注入された溶融樹脂30が空間部14内を満たすまでの樹脂の流れの時間的変化を模式的に示したものである。
ゲート部12の注入部24から注入された溶融樹脂30は、図4(a)〜(d)に示すように、空間部14を満たしていく。そして、溶融樹脂30が空間部14を満たした後は、図4(e)に示すように、連結部(不図示)に繋がる開口部15から、溶融樹脂30が連結部側に流れ出していく。このとき、注入部24から注入される溶融樹脂30は、図4(e)の矢印で示すように、樹脂中の領域31内を通って、開口部15から連結部側に流れ出ていく。
図5(a)は、射出成形により形成したガスケット5のボス部20の片側断面偏光顕微鏡写真で、図5(b)は、それを模式的に示した図である。図5(a)、(b)に示すように、ボス部20内において、注入部24から開口部15に向けて一定の流れを形成した樹脂領域31と、流れを形成せずに滞留した樹脂領域30との境界が形成されていることが分かる。以下、この境界のボス部20内周面に接する部分を、「界面の起点A」という。
図5(a)、(b)に示したガスケット5は、従来の径の太い集電子6用のものである。これに対して、集電子6の径を細くした電池において、漏液に至った電池に用いたガスケット5について、同様の観察を行った。
図6(a)は、漏液に至ったガスケット5のボス部20片側断面写真で、図6(b)は、それを模式的に示した図である。図6(a)、(b)に示すように、界面の起点Aの位置が、図5(a)、(b)に示した界面の起点Aの位置よりも、注入部24側に近づいていることが分かる。これは、図6(b)の矢印Bで示すように、注入部24から開口部15に向けて一定の流れを形成した樹脂31の一部が、注入部24側に逆流したものと考えられる。そして、この逆流は、コアピン13の径を細くした結果、ゲート部12とコアピン13との隙間が広がり、注入部24から空間部14内に注入される溶融樹脂の流れる層が大きくなったことが原因と考えられる。
そこで、本願発明者等は、界面の起点Aと、ボス部20の注入部24側端面との距離(以下、「界面の起点高さ(H)」という)と、溶融樹脂の流れる層の大きさとの関係を調べるために、以下のような検討を行った。
すなわち、図7に示すように、ボス部20の内径をR、外径をR、注入部24の外径をLとしたとき、表1に示すように、Rを1.1mm、Rを3.0mmに固定して、Lを1.60〜1.21mmの範囲に変えたガスケット(例1〜例5)を形成し、各ガスケットにおける界面の起点高さ(H)を測定した。
表1は、その結果を示した表である。表1に示すように、注入部24の外径Lが大きくなるほど、界面の起点高さ(H)が小さくなるのが分かる。このことから、溶融樹脂の流れる層が大きくなると、樹脂の逆流が起こり、その結果、界面の起点Aがボス部20の端面側に近づくものと考えられる。
図8は、この関係を定性的に示したグラフで、ボス部20の軸方向断面積をSとし、注入部24の軸方向断面積をSとしたとき、それらの比(S/S)に対して、界面の起点高さHをプロットしたものである。
ここで、S、Sは、以下の式で計算した値である。
=π/4(R −R
=π/4(L−R
本願発明者等は、さらに、ガスケットのS/Sの値と、これらのガスケットを用いて作製したアルカリ電池の耐漏液性との関係を調べた。
まず、形成したガスケットの外観検査を行った。具体的には、各ガスケットを50個ずつ、集電子が挿入される方向に半分に切断して、ボス部20の外表面と貫通孔25の表面を顕微鏡観察し、ウエルドの発生したガスケットをカウントした。また、外周部22の表面を顕微鏡観察し、ヒケ及びウエルドの発生したガスケットをそれぞれカウントした。
次に、形成したガスケットを用いて単3形のアルカリ電池を作製し、高温多湿試験と保存試験の2種類の耐漏液性試験を行った。高温多湿試験は、温度60℃、湿度90%の試験槽に各電池を20個ずつ保存し、1ヶ月(1M)毎に漏液した電池をカウントした。保存試験は、温度45℃の試験槽に各電池を110個ずつ保存し、3ヶ月(3M)後に漏液した電池をカウントした。また、110個のうち10個の電池を分解して、ボス部20のゲート部12付近に亀裂が発生した電池をカウントした。さらに、残りの100個の電池について、温度45℃の試験槽に3ヶ月間保存し、6ヶ月(6M)後に漏液した電池をカウントした。また、100個のうち10個の電池を分解して、ボス部20のゲート部12付近に亀裂が発生した電池をカウントした。
表2は、S/Sの値が5.77〜30.66の範囲のガスケット(例1〜例5)、及び、これらを用いて作製したアルカリ電池に対して、上記評価を行った結果を示した表である。
表2に示すように、S/Sの値が5.77のガスケット(例1)では、外観検査において、ボス部20にウエルドが発生しているものがあった。そして、このガスケットを用いて作製したアルカリ電池の耐漏液性試験において、45℃、3ヶ月の保存試験では、漏液は発生しなかったが、そのうち10個の電池を抜き取って分解すると、7個の電池においてゲート部12付近に亀裂が発生しているガスケットが認められた。さらに、45℃、6ヶ月の保存試験では、漏液が発生するとともに、抜き取った10個の電池全てにゲート部12付近に亀裂が発生していた。
一方、S/Sの値が30.66のガスケット(例5)では、外観検査において、外周部22にヒケ及びウエルドが発生しているものがあった。そして、このガスケットを用いて作製したアルカリ電池の耐漏液性試験において、高温多湿試験(60℃ 90%−2M、3M)で漏液に至った電池があった。
これに対し、S/Sの値が10.01〜24.71のガスケット(例2〜例4)では、外観検査において、ボス部20及び外周部22にウエルドやヒケの発生は見られなかった。また、これらのガスケットを用いて作製したアルカリ電池の耐漏液性試験においても、高温多湿試験、保存試験ともに漏液に至る電池は見られなかった。
以上の結果から、S/Sの値が10より小さくなると、溶融樹脂の流れる大きな層で注入されるため、樹脂の逆流が起こり、ボス部20内周面近傍での樹脂の流れが乱れ、界面の起点Aがボス部20の端面側に近づく。その結果、ウエルドが発生して、ボス部20の端面近傍に亀裂が発生しやすくなり、このような亀裂がゲル状負極側に発生すると、ボス部20の亀裂発生部位から電解液が漏出すると考えられる。
一方、S/Sの値が25を超えると、溶融樹脂の流れる層が小さすぎて、ガスケットの末端部である外周部22まで樹脂を充填するのに時間がかかり、外周部22にヒケやウエルドが発生しやすくなる。その結果、外周部22をかしめて電池ケースを封口する際、外周部22と電池ケースの密着度が下がり、ガスケットと電池ケースの間から電解液が漏出すると考えられる。
従って、アルカリ電池を長期保存したときでも、電解液の漏出を防止するためには、S/Sの値を10〜25の範囲に設定することが好ましい。
このことをさらに検証するために、表1に示したガスケット(例1〜例5)に代えて、ボス部20の内径Rは変えずに、外径Rを3.0mmから4.2mmに大きくしたガスケット(例6〜例10)を用いて、表2に示した評価と同様の評価を行った。なお、S/Sの値を8.09〜29.4の範囲にするために、注入部24の外径Lの大きさを変えた。
表3は、その結果を示した表である。表3に示すように、S/Sの値が8.09のガスケット(例6)では、外観検査において、ボス部20にウエルドが発生しているものがあった。そして、このガスケットを用いて作製したアルカリ電池の耐漏液性試験において、保存試験(45℃−6M)で漏液に至った電池があった。さらに、漏液に至った電池においては、ゲート部12付近に亀裂が発生していた。
一方、S/Sの値が29.4のガスケット(例10)では、外観検査において、外周部22にヒケ及びウエルドが発生しているものがあった。そして、このガスケットを用いて作製したアルカリ電池の耐漏液性試験において、高温多湿試験(60℃ 90%−2M、3M)及び保存試験(45℃−6M)で漏液に至った電池があった。
これに対し、S/Sの値が9.98〜24.64のガスケット(例7〜例9)では、外観検査において、ボス部20及び外周部22にウエルドやヒケの発生は見られなかった。また、これらのガスケットを用いて作製したアルカリ電池の耐漏液性試験においても、高温多湿試験、保存試験ともに漏液に至る電池は見られなかった。
以上より、アルカリ電池を長期保存したときでも、電解液の漏出を防止するためには、S/Sの値を10〜25の範囲に設定することが好ましいことが確認できた。
次に、ボス部20の外径Rの大きさと耐漏液性との関係を調べるために、次のような評価をさらに行った。すなわち、ボス部20の外径Rが2.8mmと4.5mmの2種類のガスケットを用意し、表2に示した評価と同様の評価を行った。
表4に示すように、ボス部20の外径Rが2.8mmのガスケット(例11、12)では、外観検査において、ボス部20にウエルドが発生しているものがあった。また、このガスケットを用いて作製したアルカリ電池の耐漏液性試験において、高温多湿試験(60℃ 90%−2M、3M)及び保存試験(45℃−6M)で漏液に至った電池があった。さらに、漏液に至った電池において、ゲート部12付近に亀裂が発生していた。
一方、ボス部20の外径Rが4.5mmのガスケット(例13、14)では、外観検査において、外周部22にヒケ及びウエルドが発生しているものがあった。また、このガスケットを用いて作製したアルカリ電池の耐漏液性試験において、高温多湿試験(60℃90%−2M、3M)及び保存試験(45℃−6M)で漏液に至った電池があった。さらに、漏液に至った電池において、ガスケットと電池ケースとの間から電解液が漏出していた。
以上のことから、S/Sの値が10〜25の範囲にある場合であっても、ボス部20の外径Rが3.0mmより小さくなると、溶融樹脂の流れる層の大きさに対してボス部の厚みが薄いため、樹脂の逆流が起こり、ボス部20にウエルドが発生しやすくなる。また、ボス部20の外径Rが4.2mmより大きくなると、溶融樹脂の流れる層の大きさに対してボス部の厚みが厚いため、ガスケットの末端部である外周部22まで樹脂を充填するのに時間がかかり、外周部22にヒケやウエルドが発生しやすくなる。その結果、ボス部20に亀裂が発生したり、外周部22と電池ケースとの間の密着度が下がることによって、電解液が漏出すると考えられる。
以上の検討から、アルカリ電池を長期保存したときでも、電解液の漏出を防止するためには、ボス部20の軸方向断面積(S)と、注入部24の軸方向断面積(S)との比(S/S)を10〜25の範囲にし、かつ、ボス部20の外径Rを3.0〜4.2mmの範囲にすることが好ましい。
このような構成により、ガスケット5のゲート部12近傍のボス部20に亀裂(クラック)が発生するのを防止することができ、このようなガスケット5を用いたアルカリ電池を長期保存したときでも、耐漏液性に優れたアルカリ電池を実現することができる。
ところで、ボス部20の外径Rを4.2mmにしたとき、例7〜例9のアルカリ電池の耐漏液性試験において、表3に示したように、保存試験(45℃−6M)で、漏液には至らなかったが、ゲート部付近に亀裂が生じた電池があった。そのため、さらに長期間の保存を想定した場合に、より高い耐漏液性を確保することが望ましい。
そこで、さらなる長期間の保存においても、漏液のない電池を検討するために、外径Rを3.4mmにしたガスケット(例15〜例17)を用いて、表2に示した評価と同様の評価を行った。なお、S/Sの値を8.95〜24.16の範囲にするために、注入部24の外径Lの大きさを変えた。
表5は、その結果を示した表である。表5に示すように、全てのアルカリ電池(例15〜例17)の耐漏液性試験において、保存試験(45℃−6M)でも、ゲート部付近に亀裂が生じた電池は認められなかった。
従って、アルカリ電池をより長期に保存したときでも、電解液の漏出を防止するためには、ボス部20の軸方向断面積(S)と、注入部24の軸方向断面積(S)との比(S/S)を10〜25の範囲にし、かつ、ボス部20の外径Rを3.0〜3.4mmの範囲にすることがより好ましい。
次に、単4形のアルカリ電池について、表1〜表5に示したガスケットと同じ仕様のガスケットを用いて、単3形のアルカリ電池に対して行った評価と同様の評価を行った。
表6は、ボス部20の外径Rが3.0mmの場合の評価結果を示した表である。表6に示すように、単4形のアルカリ電池においても、単3形のアルカリ電池とほぼ同様の結果(表1、表2を参照)が得られた。
表7は、ボス部20の外径Rが4.2mmの場合の評価結果を示した表である。表7に示すように、単4形のアルカリ電池においても、単3形のアルカリ電池とほぼ同様の結果(表3を参照)が得られた。
表8は、ボス部20の外径Rが2.8mmと4.5mmの場合の評価結果を示した表である。表8に示すように、単4形のアルカリ電池においても、単3形のアルカリ電池とほぼ同様の結果(表4を参照)が得られた。
表9は、ボス部20の外径Rが3.4mmの場合の評価結果を示した表である。表9に示すように、単4形のアルカリ電池においても、単3形のアルカリ電池とほぼ同様の結果(表5を参照)が得られた。
以上のように、単4形のアルカリ電池においても、単3形のアルカリ電池とほぼ同様の結果が得られた。すなわち、単4形のアルカリ電池を長期保存したときでも、電解液の漏出を防止するためには、ボス部20の軸方向断面積(S)と、注入部24の軸方向断面積(S)との比(S/S)を10〜25の範囲にし、かつ、ボス部20の外径Rを3.0〜4.2mmの範囲、より好ましくは3.0〜3.4mmの範囲にすることが好ましい。
本発明において、ガスケット5のボス部20端面ある注入部24が、電池ケース内に収容された発電要素側に位置している場合に、本発明の効果はより顕著に発揮される。
また、本発明における「注入部」は、射出成形時にボス部20端面に残存したゲート痕をいうが、その形状は、必ずしも、図3または図7に示したような円筒形に限らず、一定の断面積を有する環状の部位であればよい。
また、本発明におけるガスケット5の材料は、特に制限されないが、例えば、耐アルカリ性と耐熱性を有する6,6−ナイロン、6,10−ナイロン、6,12−ナイロン等を好適に用いることができる。
(その他の実施形態)
〈リサイクル樹脂を含むガスケット〉
通常、ガスケットは、一つの金型で複数個が同時に形成されるが、このとき、複数の部品間にあるランナー部分は、成形後にガスケットから切り離され、原料に混合して再利用される。しかしながら、再利用した樹脂(リサイクル樹脂)は、熱履歴が異なるため、成形時の溶融樹脂の流れが安定せず、ウエルドが発生しやすい。
そこで、リサイクル樹脂の割合(リサイクル率)の耐漏液性への影響を調べるために、次のような評価を行った。すなわち、リサイクル率が5、20、40重量%の3種類のガスケットを用意し、表2に示した評価と同様の評価を行った。
表10は、その結果を示した表である。なお、ガスケットの各部の寸法は、表10に示したとおりである。ボス部20の外径Rは4.0mmに、S/Sの値は、16.57と7.29に設定した。
表10に示すように、S/Sの値が16.57で、リサイクル率が5、20、40重量%のガスケット(例35〜例36)では、外観検査において、ボス部20及び外周部22にウエルドやヒケの発生は見られなかった。また、これらのガスケットを用いて作製したアルカリ電池の耐漏液性試験においても、高温多湿試験、保存試験ともに漏液に至る電池は見られなかった。
一方、S/Sの値が7.29で、リサイクル率が5、20、40重量%のガスケット(例38〜例40)では、外観検査において、ボス部20にウエルドが発生しているものがあった。また、このガスケットを用いて作製したアルカリ電池の耐漏液性試験において、保存試験(45℃−6M)で漏液に至った電池があった。さらに、漏液に至った電池において、ゲート部12付近に亀裂が発生していた。
以上のことから、S/Sの値が10〜25の範囲にあれば、ガスケットにリサイクル率が5〜40重量%の範囲のリサイクル樹脂が含まれていても、このようなガスケットを用いたアルカリ電池を長期保存しても、電解液の漏出を防止することができる。
〈無機フィラーを添加したガスケット〉
通常、ガスケットの剛性や耐熱性を高めるために、樹脂に無機フィラーを添加する場合がある。しかしながら、無機フィラーの添加された樹脂は、成形時の溶融樹脂の流れが安定せず、ウエルドが発生しやすい。
そこで、無機フィラーの添加量の耐漏液性への影響を調べるために、次のような評価を行った。すなわち、無機フィラ−としてタルクを用い、その添加量が5、10、15重量%の3種類のガスケットを用意し、表2に示した評価と同様の評価を行った。
表11は、その結果を示した表である。なお、ガスケットの各部の寸法は、表11に示したとおりである。ボス部20の外径Rは4.0mmに、S/Sの値は、16.57と7.29に設定した。
表11に示すように、S/Sの値が16.57で、タルク添加量が5、10、15重量%のガスケット(例41〜例43)では、外観検査において、ボス部20及び外周部22にウエルドやヒケの発生は見られなかった。また、これらのガスケットを用いて作製したアルカリ電池の耐漏液性試験においても、高温多湿試験、保存試験ともに漏液に至る電池は見られなかった。
一方、S/Sの値が7.29で、タルク添加量が5、10、15重量%のガスケット(例44〜例46)では、外観検査において、ボス部20にウエルドが発生しているものがあった。また、このガスケットを用いて作製したアルカリ電池の耐漏液性試験において、保存試験(45℃−3M、6M)で漏液に至った電池があった。さらに、漏液に至った電池において、ゲート部12付近に亀裂が発生していた。
さらに、無機フィラーとしてカオリンを用いた場合も、同様の評価を行った。
表12は、その結果を示した表である。表12に示すように、S/Sの値が16.57で、カオリン添加量が5、10、15重量%のガスケット(例47〜例49)では、外観検査において、ボス部20及び外周部22にウエルドやヒケの発生は見られなかった。また、これらのガスケットを用いて作製したアルカリ電池の耐漏液性試験においても、高温多湿試験、保存試験ともに漏液に至る電池は見られなかった。
一方、S/Sの値が7.29で、カオリン添加量が5、10、15重量%のガスケット(例50〜例52)では、外観検査において、ボス部20にウエルドが発生しているものがあった。また、このガスケットを用いて作製したアルカリ電池の耐漏液性試験において、保存試験(45℃−3M、6M)で漏液に至った電池があった。さらに、漏液に至った電池において、ゲート部12付近に亀裂が発生していた。
以上のことから、S/Sの値が10〜25の範囲にあれば、ガスケットに無機フィラーが5〜15重量%の範囲で添加されていても、このようなガスケットを用いたアルカリ電池を長期保存しても、電解液の漏出を防止することができる。
なお、他の無機フィラーとして、炭酸カルシウム、カーボンブラック、マイカ等を用いてもよく、これらを適宜ブレンドして用いてもよい。
以上、本発明を好適な実施形態により説明してきたが、こうした記述は限定事項ではなく、勿論、種々の改変が可能である。例えば、上記の実施形態では、単3形及び単4形のアルカリ電池を例に説明したが、他の大きさのアルカリ電池についても、同様の効果を得ることができる。
本発明の電池用ガスケットは、長期保存における耐漏液性に優れ、乾電池を電源とする広範な電子機器に用いることができる。
本発明の第1の実施形態におけるアルカリ電池の構成を示した半断面図である。 第1の実施形態におけるガスケットを射出成形により形成するための金型を示した断面図である。 第1の実施形態におけるガスケット5の構成を示した断面図である。 (a)〜(e)は、ボス部を形成する空間部の片側断面図であり、溶融樹脂が空間部内を満たすまでの樹脂の流れの時間的変化を模式的に示したものである。 (a)は、射出成形により形成したガスケットのボス部の片側断面偏光顕微鏡写真、(b)は、それを模式的に示した図である。 (a)は、漏液に至ったガスケットのボス部の片側断面偏光顕微鏡写真、(b)は、それを模式的に示した図である。 ガスケットのボス部の部分断面図である。 /Sと界面の起点高さHとの関係を示したグラフである。
1 電池ケース
2 正極
3 ゲル状負極
4 セパレータ
5 ガスケット
6 負極集電子
7 負極端子板
9 封口ユニット
10 上金型
11 下金型
12 ゲート部
13 コアピン
14、16、17 空間部
15 開口部
20 ボス部
21 連結部
22 外周部
24 注入部
25 貫通孔
30、31 樹脂

Claims (8)

  1. 円筒形アルカリ電池の電池ケースの開口部を封口するガスケットであって、
    前記ガスケットは、
    集電子が挿入される貫通孔を有する円筒状のボス部と、
    前記電池ケースの開口部を封口する部位となる外周部と、
    前記ボス部と前記外周部とを連結する連結部と、
    が射出成形により一体形成された樹脂からなり、
    前記ボス部は、該ボス部端面において、射出成形時のゲート痕である環状の注入部を有し、
    前記ボス部の軸方向断面積(S)と、前記注入部の軸方向断面積(S)との比(S/S)が、10〜25の範囲にあり、かつ、
    前記ボス部の外径が、3.0〜4.2mmの範囲にある、電池用ガスケット。
  2. 請求項1に記載の電池用ガスケットであって、
    前記ボス部の外径が、3.0〜3.4mmの範囲にある、電池用ガスケット。
  3. 請求項1または2に記載の電池用ガスケットであって、
    前記ガスケットを構成する樹脂は、射出成形時に切り離されたリサイクル樹脂が5〜40重量%の範囲で含まれている、電池用ガスケット。
  4. 請求項1または2に記載の電池用ガスケットであって、
    前記ガスケットを構成する樹脂は、無機フィラーが5〜15重量%の範囲で添加されている、電池用ガスケット。
  5. 請求項4に記載の電池用ガスケットであって、
    前記無機フィラーは、タルクまたはカオリンである、電池用ガスケット。
  6. 請求項1に記載の電池用ガスケットであって、
    前記ガスケットは、前記ボス部端面における内周縁に配されたゲート部から、前記ガスケットの成形金型内に樹脂を注入することにより形成されたものである、電池用ガスケット。
  7. 請求項1〜6の何れかに記載の電池用ガスケットで電池ケースの開口部が封口されたアルカリ電池であって、
    前記ガスケットのボス部端面にある注入部は、前記電池ケース内に収容された発電要素側に位置している、アルカリ電池。
  8. 請求項7に記載のアルカリ電池であって、
    前記アルカリ電池は、単3形または単4形である、アルカリ電池。
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