JP2010215717A - 発光体、及び当該発光体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】低コストで合成が可能でありながら、汎用性に優れ、高い応力発光強度を示す新規な発光体(応力発光体)を提供する。
【解決手段】本発明に係る発光体は、単斜晶のLiSrPO4:Eu2+からなるか、単斜晶のLiSrPO4:Eu2+を含有することを特徴としている。また、本発明に係る別の発光体は、斜方晶のLiBaPO4からなる母体構造に形成された空間に、発光中心としてユウロピウム(Eu)のイオンが挿入されたLiBaPO4:Eu2+であって、当該発光中心の含有量が2.0〜3.5モル%であるLiBaPO4:Eu2+からなる。これらの発光体は、低コストで合成が可能でありながら、高い応力発光強度を示す新規な発光体(応力発光体)である。
【選択図】図2
【解決手段】本発明に係る発光体は、単斜晶のLiSrPO4:Eu2+からなるか、単斜晶のLiSrPO4:Eu2+を含有することを特徴としている。また、本発明に係る別の発光体は、斜方晶のLiBaPO4からなる母体構造に形成された空間に、発光中心としてユウロピウム(Eu)のイオンが挿入されたLiBaPO4:Eu2+であって、当該発光中心の含有量が2.0〜3.5モル%であるLiBaPO4:Eu2+からなる。これらの発光体は、低コストで合成が可能でありながら、高い応力発光強度を示す新規な発光体(応力発光体)である。
【選択図】図2
Description
本発明は、発光体及びその製造方法に関する。
応力発光体は通常の蛍光体と同様に母体結晶となる金属酸化物に発光中心を添加することによって作製される。応力発光現象は一般に圧電効果と電場発光の2つの現象によって説明することが出来る。すなわち、外部からの力により圧電効果が発生し、結晶内部に電場が生じる。この電場が発光中心である原子を励起し発光する。そのため、通常の蛍光体の中でも応力発光体の性質を有するには圧電性と電場発光の2つの性質が必要であると考えられている。その他にも応力発光体の共通の特徴として、結晶が変形しやすいフレキシブルな構造であること、発光中心が結晶場の影響を受けやすく、ブロードな蛍光スペクトルを持つことが挙げられる。以上のような複数の条件を満たさなければならないため蛍光体としては優良であっても、応力発光を示さない材料が多かった。
これまで開発された応力発光体は、母体結晶としてアルミン酸塩やケイ酸塩そしてチタン酸塩を用いたものが主であったが、応力発光体の応用用途の拡大を目指し、生体親和性が良く、低コストで合成が可能なリン酸塩を用いた応力発光体の開発が行われてきた。しかし、得られたリン酸塩応力発光体は母体結晶の種類が少なく、また応力発光強度も弱かったため、さらなる母体の探索及び、応力発光強度の向上が課題であった。
これまでに結晶構造が歪みやすい性質を持つものや、優れた蛍光特性を示すリン酸塩蛍光体を中心とする様々なリン酸塩母体に対して応力発光の有無が調査され、Sr3(PO4)2:Eu2+、Ba3(PO4)2:Eu2+、NaLa(PO3)4:Ce3+に対して応力発光が確認されている。
近年、アルカリ金属及びアルカリ土類金属を含むオルトリン酸塩ABPO4(A=Li+,Na+,K+,Rb+、B=Ca2+,Sr2+,Ba2+)が優れた熱安定性と加水分解安定性を有する蛍光母体であるとして注目されており(非特許文献1〜6)、これまでにW.L. WanmakerらによってCu+,Tb3+,Sn2+などの発光中心を添加した蛍光体の詳しい蛍光特性が示されている(非特許文献7及び8)。PO4 3−のような組成を持つリン酸塩は歪みやすい性質を持っており、応力発光体の共通の特徴を持っている母体であることから新規な応力発光体として期待できる。しかしながら、現在、応力発光を示す材料に多く用いられているEu2+を発光中心として用いた蛍光体の報告例は存在してなかった。そのような中で最近、Z.C. Wuらの研究グループにより白色LED用の青色蛍光体として六方晶LiSrPO4:Eu2+と斜方晶LiBaPO4:Eu2+の蛍光特性が報告されている(非特許文献9及び10)。
M.-Th. Paques-Ledent, J. Solid State Chem. 23 (1978) 147-154.
J.Y. Sun, C.S. Shi, Y.M. Li, Bull. Electrochem. 4 (9) (1988) 835-839.
L. Elammati, B. Elouadi, G. Muller-Vogt, Phase Transitions 13 (1-4)(1988) 29-32.
C. S. Liang, H. Eckert, T.E. Gier, G.D. Stucky, Chem. Mater. 5 (5)(1993) 597-603.
R.R. Patil, S.V. Moharil, Phys. Stat. Sol. A 187 (2) (2001) 557-562.
R.R. Patil, S.V. Moharil, S.M. Dhopte, P.L. Muthal, V.K.Kondawar, Phys. Stat. Sol. A 199 (2003) 527-532.
W.L. Wanmaker, H.L. Spier, J. Electrochem. Soc. 109 (1962) 109-114.
W.L. Wanmaker, A. Bril, J.W. ter Vrugt, Appl. Phys. Lett. 8 (10)(1966) 260-261.
Z. C. Wu, J. X. Shi, J. Wang, M. L. Gong, Q. Su, J. Solid State Chem.(2006), 179, 2356-2360.
Z. C. Wu, Jie Liu, Qingjie Guo, M. L. Gong, Chem. lett.37.2.(2008)190-191.
しかしながら、上述のような従来技術は実用に際して十分なものとは言えず、低コストで合成が可能でありながら、汎用性に優れ、高い応力発光強度を示す新規な発光体(応力発光体)の開発が渇望されている。
そこで、本願発明者らは、材料合成のコストが安価であるリン酸塩を母体とし、優れた応力発光を示す発光体の合成に成功し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明に係る発光体は、上記の課題を解決するために、単斜晶のLiSrPO4:Eu2+を含有することを特徴としている。
また、本発明に係る発光体は、上記の構成に加えて、六方晶のLiSrPO4:Eu2+を更に含有することが好ましい。
また、本発明に係る別の発光体は、上記の課題を解決するために、単斜晶のLiSrPO4:Eu2+からなることを特徴としている。
また本発明に係る、単斜晶のLiSrPO4:Eu2+を含有する発光体の製造方法は、上記の課題を解決するために、LiSr1−XEuXPO4(但し、0<X≦0.8)となるように調製された粉末試薬を湿式混合した後、その混合物を、900〜1200℃の温度にて焼成することによって、得られた結晶物のうちの少なくとも一部分が単斜晶のLiSrPO4:Eu2+である結晶系のLiSrPO4:Eu2+を得ることを特徴としている。
また本発明に係る、単斜晶のLiSrPO4:Eu2+からなる発光体の製造方法は、上記の課題を解決するために、LiSr1−XEuXPO4と(但し、0<X≦0.8)なるように調製された粉末試薬を湿式混合した後、その混合物を1200℃にて焼成することによって、単斜晶のLiSrPO4:Eu2+を得ることを特徴としている。
また本発明に係る更に別の発光体は、斜方晶のLiBaPO4からなる母体構造に形成された空間に、発光中心としてユウロピウム(Eu)のイオンが挿入されたLiBaPO4:Eu2+であって、当該発光中心の含有量が2.0〜3.5モル%であるLiBaPO4:Eu2+からなることを特徴としている。
本発明は、リン酸塩を母体とする発光体であることから、安価に提供でき、且つ高い応力発光強度を示すことができるという効果を奏する。
〔実施の形態1〕
<発光体LiSrPO4:Eu2+>
以下、本発明に係る発光体の第1の実施形態について説明する。
<発光体LiSrPO4:Eu2+>
以下、本発明に係る発光体の第1の実施形態について説明する。
本実施形態における発光体は、(i)単斜晶のLiSrPO4:Eu2+からなるか、もしくは、(ii)単斜晶のLiSrPO4:Eu2+を含有する、ことを特徴としている。
ここで、両者の違いは、(i)が、本実施形態における発光体が単斜晶のLiSrPO4:Eu2+以外のものを含まない、単斜晶のLiSrPO4:Eu2+のみから構成される発光体であるのに対して、(ii)は、本実施形態における発光体が単斜晶のLiSrPO4:Eu2+の他に別の構成を含んでなるところにある。
本発明に係る発光体は、多面体構造の複数の分子によって形成される母体構造の空間に、アルカリ金属イオンとアルカリ土類金属イオンとが挿入された基本構造によって形成されている。すなわち、本実施形態におけるLiSrPO4:Eu2+は、四面体構造であるPO4が母体構造である。母体構造は、大きな空間(隙間)を含む柔軟な構造を有している。すなわち、上記母体構造では、上記空間において、歪が生じやすい。このように、上記母体構造が歪むことにより、発生する歪エネルギーは、応力発光材料の発光中心を励起する。その励起状態の発光中心が、基底状態に戻る時に、上記応力発光材料は発光する。したがって、母体構造が上記のような構造を有することにより、上記応力発光材料は強い発光を示すことができる。特に、上述した四面体構造の分子は非常に硬いのに対して、これらで形成された母体構造の中に挿入される発光中心の周りの構造はフレキシブル性が高い。そのため、応力を加えたとき、フレキシブル構造の発光中心のところに応力が集中し、上記母体構造が歪みやすくなる。したがって、上述したように、上記応力発光材料は、歪エネルギーによる応力発光が起こりやすくなる。
上記基本構造は、上記母体構造の空間に、アルカリ金属イオンとアルカリ土類金属イオンとが挿入されることにより形成されるが、具体的には、リン酸塩によって実現される。本明細書において「リン酸塩」とはリン酸の、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩をいう。
また、本明細書において、「応力発光」とは、摩擦力、せん断力、圧力、および張力等の機械的な外力による変形によって発光することをいう。
すなわち、本実施形態における発光体は、アルカリ金属イオンとしてリチウム(Li)を含み、アルカリ土類金属イオンとしてストロンチウム(Sr)を含む。
更に、本実施形態における発光体は、上記母体構造の空間に挿入されたアルカリ金属イオンおよび/またはアルカリ土類金属イオンの一部が、発光中心となる希土類金属イオンによって置換されている。具体的には、本実施形態における発光体は、希土類金属イオンとしてユウロピウム(Eu)を含む。
本実施形態における発光体LiSrPO4:Eu2+は、単斜晶のLiSrPO4:Eu2+からなること、もしくは単斜晶のLiSrPO4:Eu2+を含有することにより、紫色の光(蛍光)を発するという新規な現象を示す。ここで、紫色の光とは、発光中心波長419nmの放射をいう。加えて、本実施形態における発光体LiSrPO4:Eu2+は、実使用に足る応力発光を示す。
このような蛍光及び応力発光には、本実施形態における発光体LiSrPO4:Eu2+におけるEu2+の含有量、言い換えれば、発光中心の含有量が大きく影響する。上記含有量は、母体構造の3次元構造を維持できる範囲内であることが好ましい。そのため、具体的には、1.0mol%以上20.0mol%以下の範囲内であることが好ましい。上記含有量が、1.0mol%未満の場合、効率的な発光が得られず、20.0mol%を超えると母体構造が乱れ、発光効率が低下すると考えられるためである。また、1.0mol%以上3.0mol%以下であることがより好ましい。また本願発明者らは、後述する実施例1に記載の通り、当該範囲のなかでも、上記含有量を1.5mol%とすることにより、高い蛍光強度と同時に、強い応力発光も得ることができることを見出している。
<発光体LiSrPO4:Eu2+の製造方法>
本実施形態の発光体LiSrPO4:Eu2+は、LiSr1−XEuXPO4(但し、0<X≦0.2)
となるように各種原料を秤量して、これらを湿式混合し、その混合物を、還元雰囲気(5%水素含有アルゴン)中において、焼成処理を行なうことによって得ることができる。
本実施形態の発光体LiSrPO4:Eu2+は、LiSr1−XEuXPO4(但し、0<X≦0.2)
となるように各種原料を秤量して、これらを湿式混合し、その混合物を、還元雰囲気(5%水素含有アルゴン)中において、焼成処理を行なうことによって得ることができる。
ここで、焼成処理の焼成温度を最低900℃から、最高1200℃に到達する温度になるように焼成すれば、得られる結晶物のうちの一部が単斜晶のLiSrPO4:Eu2+であり、残りの少なくとも一部分が六方晶のLiSrPO4:Eu2+である発光体を得ることができる。この場合の昇温速度は、1℃/分〜5℃/分とすることが好ましいが、特に限定されるものではない。
一方、焼成処理の焼成温度を1200℃とすることにより、得られる結晶物が、全て、単斜晶のLiSrPO4:Eu2+である発光体を得ることができる。昇温速度は、1℃/分〜5℃/分とすることが好ましいが、特に限定されるものではない。
以上のような本実施形態によれば、これまで青色の光(波長450nm近傍の光)に発することが知られていた組成物であるLiSrPO4:Eu2+について、特定の結晶系にすることによって紫色の光を発するという新規な応力発光体を実現することができる。また、このような新規な応力発光体について、材料合成のコストが安価であるリン酸塩を母体としながら、実使用に十分足る応力発光強度を有した発光体を提供することが可能となる。
尚、本実施形態ではアルカリ土類金属イオンとしてSrを挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、Ca,Mgであってもよい。
また、本実施形態では発光中心としてEuを挙げて説明したが、Eu以外の発光中心であってもよい。例えば、他の希土類金属イオン、遷移金属イオン、III族の金属イオン、IV族の金属イオンであってもよい。具体例を挙げれば、Ce,Ho,Tm,Nd,Er,Mn等がある。また本発光体は、これらを複数種含有するものであってもよい。
また、本実施形態では、Eu含有量(添加量)xを、0<X≦0.2と示したが、更に他のアルカリ金属、発光中心イオンの同時添加を加える場合には、上限値を0.8としても良い。
<発光体LiSrPO4:Eu2+の利用>
本実施形態にかかる発光体は、従来得られなかった紫色の強い発光を示す応力発光材料である。したがって、本発明の利用としては、特に限定されるものではなく、上記応力発光材料は、発光を利用するあらゆる分野に利用することができるだけでなく、さまざまの利用形態が可能である。
本実施形態にかかる発光体は、従来得られなかった紫色の強い発光を示す応力発光材料である。したがって、本発明の利用としては、特に限定されるものではなく、上記応力発光材料は、発光を利用するあらゆる分野に利用することができるだけでなく、さまざまの利用形態が可能である。
例えば、まず、上記発光体は、微粒子として利用することができる。すなわち、1次元分散系への利用が可能である。なお、本明細書において、「1次元分散」とは、微粒子状のある物質が、他の均一な物質の中に散在する現象をいい、「1次元分散させる」とは、微粒子状のある物質(本発明における例としては、粒径が数nm〜100μmの応力発光微粒子)を、他の均一な物質の中に散在させることをいう。
本発明にかかる発光体を1次元分散させることによって、上記発光体を利用する方法としては、例えば、上記発光体からなる応力発光微粒子を対象系に分散し、機械的な外力によって、紫色光を発生させて用いる方法が挙げられる。
また、上記発光体は、対象物にコーティングすることによって利用することができる。すなわち、2次元的に分布させて、利用することができる。例えば、上記応力発光微粒子で、対象系の表面をコーティングし、機械的な外力によって、紫外線を発生させる。この紫外線は、上記応力発光微粒子が接触している対象物に対して、物理的および化学的に機能する。
さらに、上記応力発光材料は、3次元のネットワーク構造に、対象物をコーティングすることによって利用することができる。すなわち、3次元的に分布させて、利用することができる。
〔実施の形態2〕
<発光体LiBaPO4:Eu2+>
以下、本発明に係る発光体の第2の実施形態について説明する。
<発光体LiBaPO4:Eu2+>
以下、本発明に係る発光体の第2の実施形態について説明する。
本実施形態における発光体は、斜方晶のLiBaPO4からなる母体構造に形成された空間に、発光中心としてユウロピウム(Eu)のイオンが挿入されたLiSrPO4:Eu2+であって、当該発光中心の含有量が2.0〜3.5mol%であるLiSrPO4:Eu2+からなることを特徴としている。
本発明に係る発光体は、多面体構造の複数の分子によって形成される母体構造の空間に、アルカリ金属イオンとアルカリ土類金属イオンとが挿入された基本構造によって形成されている。すなわち、本実施形態におけるLiBaPO4:Eu2+は、四面体構造であるPO4が母体構造である。母体構造は、大きな空間(隙間)を含む柔軟な構造を有している。すなわち、上記母体構造では、上記空間において、歪が生じやすい。このように、上記母体構造が歪むことにより、発生する歪エネルギーは、応力発光材料の発光中心を励起する。その励起状態の発光中心が、基底状態に戻る時に、上記応力発光材料は発光する。したがって、母体構造が上記のような構造を有することにより、上記応力発光材料は強い発光を示すことができる。特に、上述した四面体構造の分子は非常に硬いのに対して、これらで形成された母体構造の中に挿入される発光中心の周りの構造はフレキシブル性が高い。そのため、応力を加えたとき、フレキシブル構造の発光中心のところに応力が集中し、上記母体構造が歪みやすくなる。したがって、上述したように、上記応力発光材料は、歪エネルギーによる応力発光が起こりやすくなる。
上記基本構造は、上記母体構造の空間に、アルカリ金属イオンとアルカリ土類金属イオンとが挿入されることにより形成されるが、具体的には、リン酸塩によって実現される。本明細書において「リン酸塩」とはリン酸の、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩をいう。
すなわち、本実施形態における発光体は、アルカリ金属イオンとしてリチウム(Li)を含み、アルカリ土類金属イオンとしてバリウム(Ba)を含む。
更に、本実施形態における発光体は、上記母体構造の空間に挿入されたアルカリ金属イオンおよび/またはアルカリ土類金属イオンの一部が、発光中心となる希土類金属イオンによって置換されている。具体的には、本実施形態における発光体は、希土類金属イオンとしてユウロピウム(Eu)を含む。
本実施形態における発光体LiBaPO4:Eu2+は、Eu2+の含有量、言い換えれば、発光中心の含有量を所定の値にすることにより、青色蛍光を示すとともに、十分な応力発光強度を示す発光体として用いることができる。
具体的には、本実施形態における発光体LiBaPO4:Eu2+に対して、ユウロピウム(Eu)の含有量が2.0〜3.5モル%となっている場合には、この範囲を外れた含有量のユウロピウム(Eu)を含むLiBaPO4:Eu2+と比較して著しく高い応力発光強度を示す発光体を実現することが見出された。すなわち、本実施形態における発光体LiBaPO4:Eu2+によれば、青色光の発光量が実使用に足る量であるとともに高い応力発光強度を示す、従来無い応力発光体LiBaPO4:Eu2+を提供することができる。詳細は後述する実施例において説明する。
(発光体LiBaPO4:Eu2+の製造方法)
本実施形態の発光体LiBaPO4:Eu2+は、LiBa1−XEuXPO4(但し、0<X≦0.2)となるように各種原料を秤量して、これらを湿式混合し、その混合物を、還元雰囲気(5%水素含有アルゴン)中において、最低900℃から、最高1200℃に到達する温度になるように焼成処理を行なうことによって得ることができる。この場合の昇温速度は、1℃/分〜20℃/分とすることが好ましいが、特に限定されるものではない。尚、焼成処理の焼成温度を900℃とすれば、単相の結晶を得ることができる。
本実施形態の発光体LiBaPO4:Eu2+は、LiBa1−XEuXPO4(但し、0<X≦0.2)となるように各種原料を秤量して、これらを湿式混合し、その混合物を、還元雰囲気(5%水素含有アルゴン)中において、最低900℃から、最高1200℃に到達する温度になるように焼成処理を行なうことによって得ることができる。この場合の昇温速度は、1℃/分〜20℃/分とすることが好ましいが、特に限定されるものではない。尚、焼成処理の焼成温度を900℃とすれば、単相の結晶を得ることができる。
尚、本実施形態ではアルカリ土類金属イオンとしてBaを挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、Ca,Mgであってもよい。
また、本実施形態では発光中心としてEuを挙げて説明したが、Eu以外の発光中心であってもよい。例えば、他の希土類金属イオン、遷移金属イオン、III族の金属イオン、IV族の金属イオンであってもよい。具体例を挙げれば、Ce,Ho,Tm,Nd,Er,Mn等がある。また本発光体は、これらを複数種含有するものであってもよい。
また、本実施形態では、Eu含有量(添加量)xを、0<X≦0.2と示したが、更に他のアルカリ金属、発光中心イオンの同時添加を加える場合には、上限値を0.8としても良い。
<発光体LiBaPO4:Eu2+の利用>
本実施形態にかかる発光体の利用としては、特に限定されるものではなく、上記応力発光材料は、発光を利用するあらゆる分野に利用することができるだけでなく、さまざまの利用形態が可能である。
本実施形態にかかる発光体の利用としては、特に限定されるものではなく、上記応力発光材料は、発光を利用するあらゆる分野に利用することができるだけでなく、さまざまの利用形態が可能である。
例えば、まず、上記発光体は、微粒子として利用することができる。すなわち、1次元分散系への利用が可能である。なお、本明細書において、「1次元分散」とは、微粒子状のある物質が、他の均一な物質の中に散在する現象をいい、「1次元分散させる」とは、微粒子状のある物質(本発明における例としては、粒径が数nm〜100μmの応力発光微粒子)を、他の均一な物質の中に散在させることをいう。
本発明にかかる発光体を1次元分散させることによって、上記発光体を利用する方法としては、例えば、上記発光体からなる応力発光微粒子を対象系に分散し、機械的な外力によって、青色光を発生させて用いる方法が挙げられる。
また、上記発光体は、対象物にコーティングすることによって利用することができる。すなわち、2次元的に分布させて、利用することができる。例えば、上記応力発光微粒子で、対象系の表面をコーティングし、機械的な外力によって、紫外線を発生させる。この紫外線は、上記応力発光微粒子が接触している対象物に対して、物理的および化学的に機能する。
さらに、上記応力発光材料は、3次元のネットワーク構造に、対象物をコーティングすることによって利用することができる。すなわち、3次元的に分布させて、利用することができる。
以下、各実施形態について実施例に基づいて詳述する。
〔実施例1 発光体LiSrPO4:Eu2+〕
(1−1)発光体の製造
図1は本実施例の発光体LiSrPO4:Eu2+を製造するための工程を示したフローである。
(1−1)発光体の製造
図1は本実施例の発光体LiSrPO4:Eu2+を製造するための工程を示したフローである。
図1に示すように、粉末試料合成は全て固相反応法を用いて行った。発光中心となるEuをSrに対して置換を行い組成比がLiSr1−XEuXPO4となるように原料を秤量した。原料はLi2CO3(99.9%)、SrCO3(99.9%)、NH4H2PO4(99.9%)、Eu2O3(99.9%)の粉末状試薬を使用し、エタノールを用いての湿式混合を行った後、熱処理を施した。焼成条件は、結晶化が始まる800℃から1300℃に設定を行った。発光中心となるEuは2価の状態に保つため焼成時の雰囲気を還元性ガス中(Ar+H2 5%)とし、添加量はSrに対して1.5mol%として試料を合成した。
(1−2)試料の特性評価
上記(1−1)で得られた試料LiSrPO4:Eu2+の特性評価として、CuKαを用いた粉末X線回折測定(XRD)により同定した。また、分光蛍光光度計(FP6600,JASCO Co.)を用いて蛍光特性(PL)を測定して、常温にて蛍光スペクトルの測定を行った。更に、蛍光顕微鏡観察と走査型電子顕微鏡SEM観察、及び、カソードルミネッセンス(CL)の測定を行った。蛍光顕微鏡観察にはOLYMPUSの高級システム金属顕微鏡を使用し、CL測定にはオックスフォード・インストゥルメンツ株式会社のMonoCLを用いた。更に、応力発光(ML)の測定も行った。応力発光評価には粉末試料をエポキシ樹脂と混合し、25×9mmの円柱状に成形した複合ペレットを用いて評価した。作製したペレットを材料試験機(RTC−1310A,Orientics Co.)を用いて一軸圧縮する。圧縮により生じる発光を光電子増倍管(R585,Hamamatsu Photonics Co.)によりカウントした。
上記(1−1)で得られた試料LiSrPO4:Eu2+の特性評価として、CuKαを用いた粉末X線回折測定(XRD)により同定した。また、分光蛍光光度計(FP6600,JASCO Co.)を用いて蛍光特性(PL)を測定して、常温にて蛍光スペクトルの測定を行った。更に、蛍光顕微鏡観察と走査型電子顕微鏡SEM観察、及び、カソードルミネッセンス(CL)の測定を行った。蛍光顕微鏡観察にはOLYMPUSの高級システム金属顕微鏡を使用し、CL測定にはオックスフォード・インストゥルメンツ株式会社のMonoCLを用いた。更に、応力発光(ML)の測定も行った。応力発光評価には粉末試料をエポキシ樹脂と混合し、25×9mmの円柱状に成形した複合ペレットを用いて評価した。作製したペレットを材料試験機(RTC−1310A,Orientics Co.)を用いて一軸圧縮する。圧縮により生じる発光を光電子増倍管(R585,Hamamatsu Photonics Co.)によりカウントした。
(1-2-a) 粉末X線回折測定(XRD)
図2に焼成温度を900℃と1200℃として合成した試料の粉末X線回折パターンと、無機結晶構造データベース(ICSD)にある六方晶LiSrPO4の回折パターンを示す。
図2に焼成温度を900℃と1200℃として合成した試料の粉末X線回折パターンと、無機結晶構造データベース(ICSD)にある六方晶LiSrPO4の回折パターンを示す。
900℃にて焼成を行った試料はデータベースの六方晶LiSrPO4と一致するピークがあるものの、Li3PO4やその他にも不明な回折ピークが現れていることが確認できる。一方、1200℃で焼成したものは900℃で見られた回折強度の低い不純物ピークが消えており、一見してLiSrPO4と一致するようなパターンを示している。しかし、回折角度が全体的に低角に位置しており、2θ=36°,42°付近に明らかにピークが存在していないことからデータベースの六方晶LiSrPO4とは異なる結晶が合成されているといえる。この1200℃で得られた回折パターンは、これまでに知られておらず未知の結晶による回折と考えられる。2つの試料のXRDを比較すると900℃焼成の試料にはLiSrPO4と1200℃焼成のパターンが同時に含まれていることが確認できる。
(1-2-b) 蛍光特性PL
蛍光特性の評価結果を図3に示す。図3は、横軸に波長、縦軸に本実施例の試料(発光体LiSrPO4:Eu2+)の発光強度をとって示している。
蛍光特性の評価結果を図3に示す。図3は、横軸に波長、縦軸に本実施例の試料(発光体LiSrPO4:Eu2+)の発光強度をとって示している。
ここで、比較のために、従来の六方晶LiSrPO4:Eu2+の蛍光特性PLを図4に示す。
図3と図4の比較から、従来は発光波長が450nmであると報告されているLiSrPO4:Eu2+について、本実施例のLiSrPO4:Eu2+の場合は図3に示すように発光波長が419nmであることから、従来とは異なる発光スペクトルを示す新規の発光体LiSrPO4:Eu2+であるが示された。
(1-2-c) 蛍光顕微鏡観察
作製した試料について、実際の発光色を確認するため蛍光顕微鏡を用いて肉眼での確認を行った。図5に蛍光顕微鏡にて撮影した写真を示す。観察時には水銀ランプにより紫外線照射した際の発光の様子及び照射なしの状態を比較し、倍率は接眼レンズ10倍、対物レンズ20倍の計200倍で観察を行った。まず、900℃焼成サンプルの発光を観察したところ、青色に発光する粒子と紫色に発光する粒子、そして僅かに無発光の粒子(不純物)が確認された。全体の割合としては紫色が多くを占めている。次に1200℃焼成サンプルでは、全ての粒子が紫色の発光を示していることが確認できた。この結果から1200℃で得られた未知の回折パターンを持つ結晶は紫色単色(波長419nm)の発光を示しており、単一の結晶相からの発光であると考えられる。また、900℃焼成サンプルの発光スペクトルは六方晶LiSrPO4:Eu2+の青色発光と、1200℃焼成サンプルと同一の結晶による紫色発光が確認されたものだと考えられる。
作製した試料について、実際の発光色を確認するため蛍光顕微鏡を用いて肉眼での確認を行った。図5に蛍光顕微鏡にて撮影した写真を示す。観察時には水銀ランプにより紫外線照射した際の発光の様子及び照射なしの状態を比較し、倍率は接眼レンズ10倍、対物レンズ20倍の計200倍で観察を行った。まず、900℃焼成サンプルの発光を観察したところ、青色に発光する粒子と紫色に発光する粒子、そして僅かに無発光の粒子(不純物)が確認された。全体の割合としては紫色が多くを占めている。次に1200℃焼成サンプルでは、全ての粒子が紫色の発光を示していることが確認できた。この結果から1200℃で得られた未知の回折パターンを持つ結晶は紫色単色(波長419nm)の発光を示しており、単一の結晶相からの発光であると考えられる。また、900℃焼成サンプルの発光スペクトルは六方晶LiSrPO4:Eu2+の青色発光と、1200℃焼成サンプルと同一の結晶による紫色発光が確認されたものだと考えられる。
(1-2-d) 走査型電子顕微鏡(SEM)観察及びカソードルミネッセンス(CL)測定
さらに微細粒子に対する発光スペクトルを知るために、走査型電子顕微鏡(SEM)観察とカソードルミネッセンス(CL)を用いた測定を行った。図6に900℃で焼成した試料のSEM像とCL像、そして特定粒子からの発光スペクトルを示す。加速電圧を15keV、照射電流を13nAとし、3000倍に拡大して観察を行った。SEM観察により粒子のサイズは数μmから十数μmで大きさが不均一であることがわかった。また、観察範囲全体のCLスペクトルを測定したところ(図6全体)、蛍光発光のスペクトルと同様に420nmにピークを持ち、長波長側に広がりのある結果となった。次にCL装置の分光波長を419nmとして観察を行った(図6)。撮影した画像から明るい粒子と暗い粒子の存在が確認できる。明るい粒子に対して発光波長を測定したところ(図6のCL419nm画像中のポイント(1))、419nmにピークを持つスペクトルが得られた。この発光スペクトルは1200℃の焼成で得られた試料とよく一致している。同時に観察された暗い粒子は419nmの発光を示さない結晶であり、蛍光顕微鏡で観察された青色発光(450nm)と無発光粒子(不純物)であると思われる。そこで、CLの分光波長を六方晶LiSrPO4Eu2+の発光波長である450nmに設定し観察したところ(図6)、419nm分光では暗く写っていた粒子の一部が強く発光していることがわかる。この部分に対して発光スペクトルを測定したところ(図6のCL450nm画像のポイント(2))、440nm付近にピークを持つブロードなスペクトルが得られた。この発光は六方晶LiSrPO4:Eu2+によるものと考えられ、CL測定により紫色発光粒子及び、青色発光粒子の結晶粒子それぞれの発光スペクトルを確認することが出来た。尚、419nm分光と450nm分光の両方で暗く観察された粒子は不純物の無発光粒子であると考えられる。
さらに微細粒子に対する発光スペクトルを知るために、走査型電子顕微鏡(SEM)観察とカソードルミネッセンス(CL)を用いた測定を行った。図6に900℃で焼成した試料のSEM像とCL像、そして特定粒子からの発光スペクトルを示す。加速電圧を15keV、照射電流を13nAとし、3000倍に拡大して観察を行った。SEM観察により粒子のサイズは数μmから十数μmで大きさが不均一であることがわかった。また、観察範囲全体のCLスペクトルを測定したところ(図6全体)、蛍光発光のスペクトルと同様に420nmにピークを持ち、長波長側に広がりのある結果となった。次にCL装置の分光波長を419nmとして観察を行った(図6)。撮影した画像から明るい粒子と暗い粒子の存在が確認できる。明るい粒子に対して発光波長を測定したところ(図6のCL419nm画像中のポイント(1))、419nmにピークを持つスペクトルが得られた。この発光スペクトルは1200℃の焼成で得られた試料とよく一致している。同時に観察された暗い粒子は419nmの発光を示さない結晶であり、蛍光顕微鏡で観察された青色発光(450nm)と無発光粒子(不純物)であると思われる。そこで、CLの分光波長を六方晶LiSrPO4Eu2+の発光波長である450nmに設定し観察したところ(図6)、419nm分光では暗く写っていた粒子の一部が強く発光していることがわかる。この部分に対して発光スペクトルを測定したところ(図6のCL450nm画像のポイント(2))、440nm付近にピークを持つブロードなスペクトルが得られた。この発光は六方晶LiSrPO4:Eu2+によるものと考えられ、CL測定により紫色発光粒子及び、青色発光粒子の結晶粒子それぞれの発光スペクトルを確認することが出来た。尚、419nm分光と450nm分光の両方で暗く観察された粒子は不純物の無発光粒子であると考えられる。
また、同様に1200℃で焼成した試料に対してもSEM観察及びCLの測定を行った。
観察条件は加速電圧15keV、照射電流9nA、拡大倍率は3000倍とした。図7にSEM像とCL像、発光スペクトルを示す。SEM観察により、900℃焼成の試料に比べて結晶子サイズが若干大きくなっていることがわかった。これは焼成温度が高いために結晶がよく成長したためだと考えられる。観察範囲全体のCLスペクトルを測定した結果(図7)、419nm付近にピークを持つブロードな発光が確認され、蛍光発光と一致するスペクトルであることがわかった。次に、CL装置の分光波長を419nmに設定し観察を行った(図7)。900℃焼成の試料と異なり全ての粒子が明るく発光しており、全ての結晶が419nm付近に発光波長を持つ発光を示していることが確認できる。特定の結晶粒子に対してCLスペクトルを測定したところ(図7のCL419nm画像中のポイント(1))、全体の蛍光発光スペクトルとほぼ同様なスペクトルが得られ、その他に発光波長が異なる結晶が見られなかったことから、1200℃の焼成で得られた試料は単一の結晶相であることがわかった。
これらの結果は、図8に示すように、発光ピーク解析の結果と一致している。
(1-2-e) 結晶系と格子定数の決定
以上のように、1200℃焼成で得られた結晶相はLiSrPO4の新規な結晶構造であると考えられる。そこで、この未知の結晶相のXRDパターンから解析ソフトEXPO2004を用いて結晶系と格子定数の決定を行った。
以上のように、1200℃焼成で得られた結晶相はLiSrPO4の新規な結晶構造であると考えられる。そこで、この未知の結晶相のXRDパターンから解析ソフトEXPO2004を用いて結晶系と格子定数の決定を行った。
図9に解析の手順を示す。まず1200℃の焼成で得られた試料のXRDパターンからCuKα2のピークとバックグラウンドを除去する。その後、ピークサーチを行い積分強度Iと回折角2θを求め、N−TREORルーチンを用いて指数付けを行い格子定数の精密化した。その結果、1200℃の焼成で得られた未知の結晶は、単斜晶系、a=5.197Å, b=8.294Å, c=8.249Å,α=γ=90°,β=90.421°,V=355.635Å3であり、LiSrPO4の新規な結晶構造であることがわかった。すなわち、LiSrPO4には六方晶系と単斜晶系の2つの異なる結晶構造が存在し、Eu2+を発光中心として添加することで、それぞれ青色発光(450nm)と紫色発光(419nm)示す。発光色の違いは結晶構造によりEu2+周りの結晶場が異なるために生じたと考えられる。
(1-2-f) 新規の結晶系に関する特性評価
1200℃の焼成で得られた新規の結晶系(単斜晶系)の試料について、Eu2+の含有量を1mol%、1.5mol%、3mol%、5mol%とした試料を用いてXRDパターンと、蛍光特性(PL)と応力発光特性(ML)とを測定した。
1200℃の焼成で得られた新規の結晶系(単斜晶系)の試料について、Eu2+の含有量を1mol%、1.5mol%、3mol%、5mol%とした試料を用いてXRDパターンと、蛍光特性(PL)と応力発光特性(ML)とを測定した。
図10(a)がXRDパターンの結果であり、図10(b)が蛍光特性の結果である。図10(b)から、1200℃の焼成で得られた試料においてはEu2+の含有量を1.5mol%とした試料が最も蛍光(紫色発光)が強いことが示された。
図11は、横軸に荷重量(単位:N)をとり、縦軸に応力発光強度をとり、上述した各Eu2+含有量の試料を用いて測定した。その結果、本評価においても、Eu2+の含有量を1.5mol%とした試料が最も強い応力発光を示すことがわかった。
図12は、図10(b)と図11において測定した特性と、Eu2+の含有量との関係についてまとめたグラフである。図12に示すように、1200℃の焼成で得られた単斜晶系のLiSrPO4:Eu2+は、Eu2+の含有量を1.5mol%としたものが蛍光及び応力発光の双方の発光特性において優れていることがわかった。
〔実施例2− 発光体LiBaPO4:Eu2+〕
(2−1)発光体の製造
図13は本実施例の発光体LiBaPO4:Eu2+を製造するための工程を示したフローである。
(2−1)発光体の製造
図13は本実施例の発光体LiBaPO4:Eu2+を製造するための工程を示したフローである。
図13に示すように、粉末試料合成は全て固相反応法を用いて行った。発光中心となるEuをSrに対して置換を行い組成比がLiBa1−XEuXPO4となるように原料を秤量した。原料はLi2CO3(99.9%)、BaCO3(99.9%)、NH4H2PO4(99.9%)、Eu2O3(99.9%)の粉末状試薬を使用し、エタノールを用いての湿式混合を行った後、熱処理を施した。焼成条件は、結晶化が始まる800℃以上の温度である900℃〜1300℃に設定して行った。発光中心となるEuは2価の状態に保つため焼成時の雰囲気を還元性ガス中(Ar+H2 5%)とし、添加量はLiBaPO4に対して1.5mol%として試料を合成した。
得られた試料に対してXRD測定行った結果、900℃にて焼成を行った試料に対してLiBaPO4の単相試料を得ることが出来た。LiSrPO4の場合と異なり単相試料の合成に成功したことから、LiBaPO4に対してはEuを1mol%、1.5mol%、3mol%、5mol%と変化させて合成を行った。
(2−2)試料の特性評価
上記(2−1)で得られた試料LiBaPO4:Eu2+の特性評価として、CuKαを用いた粉末X線回折測定(XRD)により同定した。また、分光蛍光光度計(FP6600,JASCO Co.)を用いて蛍光特性(PL)を測定して、常温にて蛍光スペクトルの測定を行った。更に、蛍光顕微鏡観察と走査型電子顕微鏡SEM観察、及び、カソードルミネッセンス(CL)の測定を行った。蛍光顕微鏡観察にはOLYMPUSの高級システム金属顕微鏡を使用し、CL測定にはオックスフォード・インストゥルメンツ株式会社のMonoCLを用いた。更に、応力発光(ML)の測定も行った。応力発光評価には粉末試料をエポキシ樹脂と混合し、25×9mmの円柱状に成形した複合ペレットを用いて評価した。作製したペレットを材料試験機(RTC−1310A,Orientics Co.)を用いて一軸圧縮する。圧縮により生じる発光を光電子増倍管(R585,Hamamatsu Photonics Co.)によりカウントした。
上記(2−1)で得られた試料LiBaPO4:Eu2+の特性評価として、CuKαを用いた粉末X線回折測定(XRD)により同定した。また、分光蛍光光度計(FP6600,JASCO Co.)を用いて蛍光特性(PL)を測定して、常温にて蛍光スペクトルの測定を行った。更に、蛍光顕微鏡観察と走査型電子顕微鏡SEM観察、及び、カソードルミネッセンス(CL)の測定を行った。蛍光顕微鏡観察にはOLYMPUSの高級システム金属顕微鏡を使用し、CL測定にはオックスフォード・インストゥルメンツ株式会社のMonoCLを用いた。更に、応力発光(ML)の測定も行った。応力発光評価には粉末試料をエポキシ樹脂と混合し、25×9mmの円柱状に成形した複合ペレットを用いて評価した。作製したペレットを材料試験機(RTC−1310A,Orientics Co.)を用いて一軸圧縮する。圧縮により生じる発光を光電子増倍管(R585,Hamamatsu Photonics Co.)によりカウントした。
図14(a)に各Eu添加量に対するXRDの結果を示す。全ての回折ピークはLiBaPO4に帰属でき不純物を含まない単相試料が得られた。
図14(b)に励起スペクトル及び発光スペクトルを示す。励起スペクトルはそれぞれの試料の最大発光波長に対して測定した。全ての試料に対して474nm付近に中心波長を持つブロードな発光スペクトルを示している。この発光はEu2+の4f65d1励起状態から4f7基底状態に遷移によるものである。Eu添加量の増加により励起スペクトル、発光スペクトルの波長に変化はないものの、発光強度が増加していることがわかる。
図15(a)に各Eu添加量における応力発光応答曲線を示す。比較として900℃で焼成したLiSrPO4:Eu2+試料及び、Sr3(PO4)2:Eu2+のML結果も示す。全ての試料に対して応力発光が確認できた。また、Eu添加量が1〜3mol%と増加するにつれて応力発光強度も増加しているが、3mol%を最大として4mol%,5mol%では大きく低下している。また、従来のリン酸塩系蛍光体の中で最大の応力発光を示していたSr3(PO4)2:Eu2+と、900℃で焼成したLiSrPO4:Eu2+の試料と比較をすると、応力発光強度が大きく上回る結果となった。図15(b)にEu3mol%の試料で作製した複合ペレットの応力発光画像を示す。
最後に、蛍光発光強度及び応力発光強度のEu添加量の依存性を図16に示す。Eu添加量の増加に伴い、紫外線励起による蛍光強度は増加を示した。これに対して応力発光は3mol%を最大として、その後大きく応力発光強度が減少している。蛍光発光と応力発光では異なるEu添加量の依存性を表す結果となった。これは、蛍光発光を示すEu2+の発光サイトの全てが応力発光に寄与しているとは限らないためだと考えられる。
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。
本発明に係る発光体は、強い発光を示すため、応力発光だけでなく、種々の発光様式の発光材料として利用することができる。
Claims (6)
- 単斜晶のLiSrPO4:Eu2+を含有することを特徴とする発光体。
- 六方晶のLiSrPO4:Eu2+を更に含有する請求項1に記載の発光体。
- 単斜晶のLiSrPO4:Eu2+からなることを特徴とする発光体。
- LiSr1−XEuXPO4(但し、0<X≦0.2)となるように調製された粉末試薬を湿式混合した後、その混合物を、900〜1200℃の温度にて焼成することによって、得られた結晶物のうちの少なくとも一部分が単斜晶のLiSrPO4:Eu2+である結晶系のLiSrPO4:Eu2+を得ることを特徴とする、単斜晶のLiSrPO4:Eu2+を含有する発光体の製造方法。
- LiSr1−XEuXPO4と(但し、0<X≦0.2)なるように調製された粉末試薬を湿式混合した後、その混合物を1200℃にて焼成することによって、単斜晶のLiSrPO4:Eu2+を得ることを特徴とする、単斜晶のLiSrPO4:Eu2+からなる発光体の製造方法。
- 斜方晶のLiBaPO4からなる母体構造に形成された空間に、発光中心としてユウロピウム(Eu)のイオンが挿入されたLiBaPO4:Eu2+であって、当該発光中心の含有量が2.0〜3.5モル%であるLiBaPO4:Eu2+からなることを特徴とする発光体。
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2009
- 2009-03-13 JP JP2009061671A patent/JP2010215717A/ja active Pending
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