JP2010212036A - 固体酸化物形燃料電池および該電池用インターコネクタ - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明に係る組成傾斜型インターコネクタは、一方のセル対向面から他方のセル対向面に向けて還元膨張率が段階的に上昇若しくは低下するように構成されており、全体に亘って一般式Ln1−xAexMO3−δ(ここでLnはランタノイドから選択される少なくとも1種、Aeは、Sr、BaおよびCaからなる群から選択される1種又は2種以上、Mは、Ti,Zr,Al,Ga,Nb,Ta,Fe,Co,Ni,Cu,Mn,Mg,Rh,Pd,PtおよびAuからなる群から選択される1種又は2種以上、0≦x≦1である。)で表わされるペロブスカイト型酸化物から形成されているとともに、段階的に還元膨張率が異なる部分毎に上記ペロブスカイト型酸化物の組成が相互に異なっている。
【選択図】図1
Description
このようなインターコネクタ材料として、金属材料またはセラミック材料が提案されている。セラミック材料としては、特許文献1〜8に示されるように、種々のペロブスカイト型酸化物材料が提案されている。例えば、La1−pApCrO3(ここで、AはMg,Ca,Sr,Baからなる群から選ばれる少なくとも1種であり、0≦p<1である。)等のランタンクロマイト系のペロブスカイト型酸化物、あるいはそのBサイトを他の元素(例えばSi,Ti,Co,NiあるいはZr)で一部置換(ドープ)したペロブスカイト型酸化物、さらにはMTiO3(ここで、MはLi,Ca,Cu,Sr,Ba,La,Ce,Pb,Biからなる群から選ばれる少なくとも1種である。)等のチタネート系のペロブスカイト型酸化物等が例示される。
Ln1−xAexMO3−δ (1)
(ここで、Lnはランタノイドから選択される少なくとも1種の元素であり、Aeは、Sr、BaおよびCaからなる群から選択される1種または2種以上の元素であり、Mは、Ti,Zr,Al,Ga,Nb,Ta,Fe,Co,Ni,Cu,Mn,Mg,Rh,Pd,PtおよびAuからなる群から選択される1種または2種以上の元素であり、0≦x≦1、δは電荷中性条件を満たすように定まる値である。)で表わされるペロブスカイト型酸化物から形成されているとともに、該インターコネクタの上記段階的に還元膨張率が異なる部分毎に、各部分を構成しているペロブスカイト型酸化物の組成が相互に異なっていることを特徴とする。
また、かかるインターコネクタは、該インターコネクタの一方のセル対向面から他方のセル対向面に向けて還元膨張率が段階的に上昇または低下するように構成されている。このことにより、例えば、上記還元膨張率が相対的に高い(すなわち高い還元膨張性を有する)一方のセル対向面を、該インターコネクタを両側から狭持する二つのセル(単セル)のうちの一方のセルの空気極に対向させ、また上記還元膨張率が相対的に低い(すなわち低い還元膨張性または高い耐還元膨張性を有する)他方のセル対向面を、もう一方のセルの燃料極に対向させるようにして該インターコネクタを配置することにより、該インターコネクタの上記燃料極に対向するセル対向面側の膨張が抑制されて、該インターコネクタの燃料極(還元雰囲気)側と空気極(酸化雰囲気)側とで生じ得る膨張差が低減されてクラック等の発生が防止される。
また、高い還元膨張性を与える組成の上記ペロブスカイト型酸化物は、典型的には比較的高い導電性を備えている一方、低い還元膨張性を与える組成の上記ペロブスカイト型酸化物の導電性は低くなる。このことにより、低い還元膨張性を有するが低い導電性を有する組成のペロブスカイト型酸化物から全体が一様に構成されるインターコネクタに比べて、本発明に係る組成傾斜型インターコネクタは、低い還元膨張性と高い導電性をともに具備し得る。
したがって、本発明によると、電池性能を低下する元素を含まず、且つ高い導電性と耐還元膨張性との両立が実現された好適な固体酸化物形燃料電池(SOFC)用の組成傾斜型インターコネクタを提供することができる。また、かかるインターコネクタを備えることにより、長期にわたり高い電池性能と耐久性を保持し得る好ましいSOFCの提供を実現することができる。
かかる構成の組成傾斜型インターコネクタを用いることにより、該インターコネクタの空気極に対向する一方のセル対向面側と燃料極に対向する他方のセル対向面側の膨張差によるクラック等の発生がより一層確実に防止されて耐久性が向上するとともにインターコネクタ全体として高い導電性をも具備するより好ましいSOFCの提供を実現することができる。
かかる多層構造の組成傾斜型インターコネクタを用いることにより、該インターコネクタの一方のセル対向面から他方のセル対向面に向けて還元膨張率が段階的に上昇若しくは低下するような構成(構造)を容易に実現し、長期にわたり高い電池性能と耐久性を保持し得る好ましいSOFCを提供することができる。
La1−xSrxM1−yFeyO3−δ (2)
(ここで、Mは、Ti,Zr,Al,Ga,Nb,Ta,Fe,Co,Ni,Cu,Mn,Mg,Rh,Pd,PtおよびAuからなる群から選択される1種または2種以上の元素であり、0≦x≦1であり、0.5≦y≦0.9であり、δは電荷中性条件を満たすように定まる値である。)で表わされるペロブスカイト型酸化物に包含されることを特徴とする。
かかるペロブスカイト型酸化物をインターコネクタに適用することにより、その組成を調整することで、段階的に還元膨張率が異なる各部分(典型的には複数の層)から構成されるインターコネクタを容易に実現することをできる。
かかる構成の組成傾斜型インターコネクタを用いることにより、簡単な構成であっても上記一方のセル対向面から他方のセル対向面に向けて還元膨張率が段階的に上昇若しくは低下するような構成を容易に且つ効果的に実現することができる。
かかる還元膨張率を有する組成傾斜型インターコネクタを用いることにより、該インターコネクタの空気極に対向する一方のセル対向面側と燃料極に対向する他方のセル対向面側の膨張差によるクラックの発生が効果的に防止されてインターコネクタ、延いてはSOFCの耐久性が向上する。なお、本明細書における還元膨張率とは、還元雰囲気(水素ガス)下における熱膨張率をER(%)、空気雰囲気下における熱膨張率をEA(%)としたとき、下記(3)式で与えられる。
還元膨張率(%)=[{(1+ER/100)−(1+EA/100)}/(1+EA/100)]×100 (3)
かかる導電率を全体に亘って有するインターコネクタを用いることにより、実用性に優れる導電性を具備したSOFCの提供を実現することができる。
該複数のセル間に、ここで開示される組成傾斜型インターコネクタが配置されていることを特徴とするSOFCを提供することができる。
また、本発明に係る組成傾斜型インターコネクタは、種々の構造の固体酸化物形燃料電池(例えば、平板型(Planar)、円筒型(Tubular)、あるいは円筒の周側面を垂直に押し潰したフラットチューブラー(Flat tubular)型等)に対して好ましく適用することができ、燃料電池の形状に特に限定されない。
Ln1−xAexMO3−δ (1)
で表わされるペロブスカイト型酸化物から形成されている。ここで、上記Lnはランタノイドから選択される少なくとも1種の元素であり、好ましくはLa(ランタン)である。また、Aeは、Sr(ストロンチウム)、Ba(バリウム)およびCa(カルシウム)からなる群から選択される1種または2種以上の元素であり、好ましくはSrである。また、Mは、チタン(Ti),ジルコニウム(Zr),アルミニウム(Al),ガリウム(Ga),ニオブ(Nb),タンタル(Ta),鉄(Fe),コバルト(Co),ニッケル(Ni),銅(Cu),マンガン(Mn),マグネシウム(Mg),ロジウム(Rh),パラジウム(Pd),白金(Pt)および金(Au)からなる群から選択される1種または2種以上の元素である。さらに、上記一般式(1)における「x」は、このペロブスカイト型構造においてLnがAeによって置き換えられた割合を示す値である。このxの取り得る範囲は0≦x≦1(好ましくは0≦x<1、例えば0.4≦x≦0.6)である。
なお、上記δは電荷中性条件を満たすように定まる値である。上記一般式(1)における酸素原子数は、ペロブスカイト型構造の一部を置換する原子の種類および置換割合その他の条件により変動するため正確に表示することは困難である。このため、電荷中性条件を満たすように定まる値として、1を超えない正の数δ(0<δ<1)を採用し、酸素原子の数を3−δと表示するのが妥当であるが、以下では便宜的に3と表示することもある。ただし、該酸素原子の数を便宜的に3として表示しても、異なる化合物を表しているわけではない。
La1−xSrxM1−yFeyO3−δ (2)
で表わされるペロブスカイト型酸化物であって、そのBサイトにFeを含有する。また、Mは、Ti,Zr,Al,Ga,Nb,Ta,Fe,Co,Ni,Cu,Mn,Mg,Rh,Pd,PtおよびAuからなる群から選択される1種または2種以上の元素であり、好ましくはTiおよび/またはZrである。すなわち、このようなペロブスカイト型酸化物の好適例として、La1−xSrxTi1−yFeyO3−δで表わされるペロブスカイト型酸化物(以下、「LSTF酸化物」という。)、またはLa1−xSrxZr1−yFeyO3−δで表わされるペロブスカイト型酸化物(以下、「LSZF酸化物」という。)が挙げられる。このようにTiおよび/またはZrを含むペロブスカイト型酸化物は、該酸化物の還元膨張が抑制されて低い還元膨張率(高い耐還元膨張性)を示し得るので好ましい。
このことにより、上記耐還元膨張性と導電性とをともに与え得る構成成分として好適なペロブスカイト型酸化物として、上記一般式(2)におけるBサイトのMおよびFeのモル比率を(1−y):yとすると、yの取り得る範囲は0<y≦1であり、好ましくは0.4≦y<1であり、より好ましくは、0.5≦y≦0.9である。特に好ましくは0.7≦y≦0.9である。
このような多層構造を構成する各層を形成する上記ペロブスカイト型酸化物としては、いずれも上記一般式(1)および/または(2)で表わされるペロブスカイト型酸化物であればよいが、各層を形成するペロブスカイト型酸化物は、いずれも構成元素は同一であるが該各構成元素の含有量(モル比率)が異なることにより、組成が相互に異なっていることがより好ましい。すなわち、例えば上記一般式(2)で表わされるペロブスカイト型酸化物から形成される層が積層されてなる組成傾斜型インターコネクタにおいて、好ましくは、全ての層がそのペロブスカイト型酸化物の構成元素としてLa、Sr、Fe、および同一のMを備えているが、xおよび/またはyの値が各層で相互に異なっている。このような組成のペロブスカイト型酸化物から形成される多層構造の組成傾斜型インターコネクタは、隣り合う層同士の親和性が高まるため、各層の界面(接触面)での剥離やクラック等の発生が抑制され、インターコネクタ全体としての耐久性が向上するので好ましい。
還元膨張率(%)=[{(1+ER/100)−(1+EA/100)}/(1+EA/100)]×100 (3)
ここで、かかるインターコネクタ10において、低還元膨張性層2の還元膨張率は0.15%未満(より好ましくは0.14%以下、さらに好ましくは0.10%以下)であることが好ましい。低還元膨張性層2がかかる範囲に含まれる還元膨張率を有すると、低還元膨張性層2を構成する上記セル対向面12が一方のセルの燃料極に対向するように該インターコネクタ10を配置した際に、該低還元膨張性層2が還元雰囲気下に曝されても該暴露部分の還元膨張は効果的に防止され得るので好ましい。
他方、高導電性層4は高い導電性を有する半面、その還元膨張率は上記低還元膨張性層2の還元膨張率よりも高くなる。かかる還元膨張率は、典型的には0.15%以上(例えば0.15%〜0.7%)、または0.2%以上(例えば0.28%〜0.7%)であり得る。例えばLSZF酸化物から形成される高導電性層4の還元膨張率が上記範囲以上であると、かかる層の1000℃での導電率は凡そ80S/cm以上となる。このような導電率を有する高導電性層4を備えた組成傾斜型インターコネクタ10は、該インターコネクタ全体としても実用性に優れる高い導電性を有し得るので好ましい。
まず、製造しようとする二層構造のインターコネクタ10を構成する低還元膨張性層2と高導電性層4のそれぞれを作製する。すなわち、まず低還元膨張性層2を形成するペロブスカイト型酸化物であって上記一般式(1)で表わされるペロブスカイト型酸化物を構成する金属原子(すなわち、上記一般式(1)におけるLn(例えばLa)、Ae(例えばSr)およびペロブスカイト型酸化物のBサイトを構成し得る金属元素M(例えばFeおよびTiまたはZr))をそれぞれ含む化合物の粉末(原料粉末)を用意する。そして各原料粉末を所定の配合割合(すなわち、上記ペロブスカイト型酸化物全体を1モルとして、上記各金属原子が所定の組成比でそれぞれ含まれるように決定された配合比)で混合する。この混合物を所定形状(板状、または層状)に成形し、酸化性雰囲気(例えば大気中)または不活性ガス雰囲気下で焼成(本焼成)することにより低還元膨張性層2としての成形体を得る。高導電性層4の成形体についても上記低還元膨張性層2と同様にして作製する。
ここで、上記原料粉末としては、かかるペロブスカイト型酸化物を構成する上記各金属原子を含む酸化物あるいは加熱により酸化物となり得る化合物(当該金属原子の炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、ハロゲン化物、水酸化物、オキシハロゲン化物等)の一種以上を含有するものを用いることができる。この原料粉末は、上記金属原子のうち二種以上の金属原子を含む化合物(複合金属酸化物、複合金属炭酸塩等)を含有してもよい。上記各原料粉末の平均粒径は、例えば0.5μm〜3μm(好ましくは凡そ1μm〜2μm)である。ここで平均粒径とは、原料粉末の粒度分布におけるD50(メジアン径)をいう。なお、上記原料粉末の代わりに、所定組成比からなるペロブスカイト型酸化物粉末の市販品を使用しても良い。
なお、原料粉末の成形、あるいは仮焼工程後に得られる仮焼物を粉砕して得られた仮焼粉末の成形には、一軸圧縮成形、静水圧プレス、押出し成形等の、従来公知の成形法を採用することができる。この成形のために従来公知のバインダ等を使用することができる。
なお、上記低還元膨張性層2および高導電性層4は、その性能(Cr被毒による電池劣化防止性、低還元膨張性、高導電性、またはセル材料と類似の熱膨張係数による歪みやクラックの発生防止性等)を顕著に損なわない範囲で、上記一般式(1)で表されるペロブスカイト酸化物以外の成分を含有してもよい。
次に、上記のように厚さが調整された低還元膨張性層2と高導電性層4の各成形体を互いに対向させ、これらの対向面同士を接触させて接合する。接合方法としてはインターコネクタ全体としての導電性と耐還元膨張性を高く保持できる限りにおいて特に限定されないが、例えば固相接合が好ましく、特に、固相状態で塑性変形が生じない程度に加熱、加圧して接合部分の原子を拡散させることにより接合する拡散接合法を好ましく採用することができる。拡散接合により上記低還元膨張性層2と高導電性層4を接合する場合には、例えば1000℃〜1400℃に加熱することが好ましい。
以上のようにして、上記低還元膨張性層2と高導電性層4とが積層された二層構造の組成傾斜型インターコネクタ10が製造される。
ここで、上記SOFC100に具備される二層構造の組成傾斜型インターコネクタ10について、該インターコネクタ10のうちの一つであるインターコネクタ10Aを例として図2を参照しつつ説明する。かかるインターコネクタ10Aは、その両面を二つのセル20A,20Bで挟まれており、低還元膨張性層2が構成するセル対向面12が一方のセル20Aの燃料極26と対向(隣接)し、高導電性層4が構成するセル対向面14が他方のセル20Bの空気極24と対向(隣接)している。上記セル対向面12には、複数の溝が形成されていてもよく、かかる溝は供給された燃料ガス(例えばH2ガス)が流れるための燃料ガス用流路13となっている。同様に、上記セル対向面14には、供給された空気が流れる空気用流路15としての溝が複数形成されていてもよい。かかる形態のインターコネクタ10では、図2に示されるように、典型的には燃料ガス用流路13と空気用流路15は、その流路の方向が互いに直交するように形成されている。なお、SOFC100は、典型的には、スタック内に供給されるガスが漏れないようにガラスシーリング等の封止部材で密閉された密閉構造を有している。
なお、上記セル20としては、上記の構成に限られず一般的なSOFCに適用可能な従来公知の構成を特に制限なく適宜選択して用いることができる。また、SOFCに適用可能なこれら以外の他の構成(例えば、空気極24と固体電解質22との間に配置される空気極中間層や、燃料極26と固体電解質22との間に配置される燃料極中間層)を備えていてもよい。
次いで、両側面に空気極材料と燃料極材料とが付与された上記固体電解質22を焼成することにより、該固体電解質22の両側面にと燃料極とがそれぞれ形成されたセル20を得る。そして、上述のようにして得られた組成傾斜型インターコネクタ10を用いて複数のセル20をスタックすることにより、SOFC100を得る。
市販の酸化ランタン(La2O3)粉末(平均粒径約2μm)、炭酸ストロンチウム(SrCO3)粉末(平均粒径約2μm)、酸化チタン(TiO2)粉末(平均粒径約1μm)および酸化鉄(Fe2O3)粉末(平均粒径約2μm)を、焼成後に得られる焼成体の組成の化学量論比で混合した。すなわち、Laは0.6、Srは0.4、Tiは0.1、Feは0.9モルとなるように配合して、ボールミルを用いて混合した。これにより得られた混合粉末を1200℃の焼成温度で6時間仮焼した。このようにして得られた仮焼物を湿式ボールミルにより粉砕してペロブスカイト型酸化物の原料粉末を得た。
次に、この原料粉末に対して、バインダを混合して約80μmの粒子に造粒した。この造粒粉末を100MPaでのプレス成形により直径約30mm、厚さ約4mmの円板状に成形した。この成形体を大気中で1400℃〜1600℃まで昇温して6時間保持して焼成し、その後機械研磨することにより所定厚さのペロブスカイト型酸化物LSTF1(La0.6Sr0.4Ti0.1Fe0.9O3)を得た。
ペロブスカイト型酸化物LSTF2およびLSTF3についても上記LSTF1と同様にして得た。
ペロブスカイト型酸化物LSCFについては、上記酸化チタン(TiO2)粉末に代えて酸化クロム(Cr2O3)粉末(平均粒径約1μm)を用意し、上記LSTF1と同様にして作製した。
ペロブスカイト型酸化物LSCについては、上記酸化チタン(TiO2)粉末および酸化鉄(Fe2O3)粉末に代えて上記酸化クロム(Cr2O3)粉末を用意し、上記LSTF1と同様にして作製した。
以上のようにして、9種類の組成のペロブスカイト型酸化物を得た。以下に、各ペロブスカイト型酸化物の組成と各酸化物の組成名(呼称)を示す。
LSTF1;La0.6Sr0.4Ti0.1Fe0.9O3
LSTF2;La0.6Sr0.4Ti0.2Fe0.8O3
LSTF3;La0.6Sr0.4Ti0.3Fe0.7O3
LSZF1;La0.6Sr0.4Zr0.1Fe0.9O3
LSZF2;La0.6Sr0.4Zr0.15Fe0.85O3
LSZF3;La0.6Sr0.4Zr0.2Fe0.8O3
LSZF4;La0.6Sr0.4Zr0.3Fe0.7O3
LSCF;La0.6Sr0.4Cr0.5Fe0.5O3
LSC;La0.6Sr0.4CrO3
<還元膨張率の評価>
上記得られたLSTF1において、LSTF1を空気雰囲気(酸素分圧約200hPa(約0.2atm))下で室温から1000℃まで維持した。その温度領域におけるLSTF1の体積の増加分を測定し、その増加分を室温における体積に対する百分率で表した。これを空気雰囲気下における熱膨張率EAとした。これと同様にして、還元雰囲気(水素5vol%、窒素の95vol%を含有する)下におけるLSTF1の熱膨張率ERを求めた。これら熱膨張率EAおよびERを上記(3)式にあてはめることによりLSTF1の還元膨張率[%]を算出した。
その他の8種類のペロブスカイト型酸化物についても、LSTF1と同様にして還元膨張率[%]を求めた。これらの結果を表1に示す。
次に、上記LSTF1における導電率を以下のようにして測定した。まず、上記LSTF1の表面に電極となる白金ペーストを塗布した後、該電極部分に電流端子および電圧端子を接続するための白金線を取り付けて850〜1100℃で10〜60分間焼き付け、任意の温度に調整可能な装置内で、直流四端子法で導電率[S/cm]を求めた。その他の8種類のペロブスカイト型酸化物における導電率についても上記と同様にして求めた。一定の温度条件(1000℃)下における導電率の測定結果を表1に示す。
表1に示されるような還元膨張率と導電率を備える上記9種類のペロブスカイト型酸化物を用いて二層構造の組成傾斜型インターコネクタ(の試供体)(1)〜(9)を作製した。
まず、上記のようにして得られた円板状のLSTF1とLSTF3の互いの面同士を接触させて所定圧力で加圧し、1000℃〜1400℃の温度条件下で拡散接合した。これにより上記LSTF1とLSTF3とが積層されてなる二層構造の組成傾斜型インターコネクタ(1)を作製した。このとき、上記測定された還元膨張率が相対的に高いLSTF1の層が高導電性層(高還元膨張性層)として機能し、上記還元膨張率が相対的に低いLSTF3の層が低還元膨張性層として機能するものとする。また、高導電性層となるLSTF1をその形状の厚みが凡そ0.4mmとなるように研磨するとともに、低還元膨張性層となるLSTF3をその形状の厚みが0.05mm〜0.1mmとなるように研磨した後、両者を接合することによりインターコネクタ(1)を作製した。
かかるインターコネクタ(2)〜(9)についても、上記インターコネクタ(1)と同様にして作製した。なお、これらのインターコネクタ(2)〜(9)のそれぞれにおける低還元膨張層と高導電性層に対応する二つのペロブスカイト型酸化物の組み合わせを表2に示す。なお、インターコネクタ(2)〜(9)においても、高導電性層となる側の厚みを凡そ0.4mm、低還元膨張性層となる側の厚みを0.05mm〜0.1mmとなるようにした。
上記9種類のペロブスカイト型酸化物の導電率測定と同様に直流四端子法でインターコネクタ(1)〜(9)の導電率[S/cm]をそれぞれ求めた。その結果を表2に示す。
この結果、二層とも導電率の低い(50S/cm以下の導電率を有する)ペロブスカイト型酸化物からなるインターコネクタ(6),(7)および(9)の導電率が50S/cmを下回った。また、上記インターコネクタ(1)〜(9)においては、高導電性層となるペロブスカイト型酸化物単体の導電率がより高いインターコネクタ、そして高導電性層となるペロブスカイト型酸化物の導電率と低還元膨張性層となるペロブスカイト型酸化物の導電率の差がより大きいインターコネクタが、それぞれより高い導電率を示す傾向にあることがわかった。
次に、インターコネクタ(1)〜(9)について、かかるインターコネクタの一方の面に空気、他方の面に水素(H2)ガス(燃料ガス)を暴露し、所定時間経過後にリークが生じているか否かを測定した。その試験方法について図3を参照しつつ説明する。図3は、円板状に形成された二層構造の上記インターコネクタ(1)〜(9)を空気雰囲気および還元雰囲気に暴露してリーク発生を測定するための装置60を模式的に示した図である。
この測定装置60は、インターコネクタ(1)〜(9)(以下、「サンプル40」ということもある。)を収容するケーシング30と、サンプル40を所定の使用温度に維持するためのヒータ50とを備える。ケーシング30は、サンプル40の一方の面側に接続された空気極側外管32と、空気極側外管32の内部に挿入された空気供給内管34と、サンプル40の他方の面側に接続された燃料極側外管36と、燃料極側外管36の内部に挿入された燃料ガス供給内管38とを有する。上記内管34,38および外管32,36は、いずれもアルミナ、ムライト等の緻密なセラミック(ここではアルミナ)により形成されている。サンプル40の外周部にはガラスシール35がリング状に形成されている。このガラスシール35は、外管32,36の一端をサンプル40に気密に接合するとともに、サンプル40の外周端を気密にシールしている。サンプル40の上記一方の面側には、該サンプル40および空気極側外管32によって空気供給空間33が区画形成されている。また、サンプル40の上記他方の面側には、該サンプル40および燃料極側外管36によって燃料ガス供給空間37が区画形成されている。
このような構成の測定装置60にサンプル40をセットすることにより、サンプル40の一方の面は、空気供給空間33に供給された空気と接触するとともに、該サンプル40の他方の面は、燃料ガス供給空間37に供給された燃料ガスと接触することができる。このことにより、かかるサンプル40を、一方のセルの空気極と他方のセルの燃料極とに挟まれたインターコネクタの状態に模擬することができる。
次に、測定方法について説明する。
サンプル40を上記測定装置60にセットし、空気供給空間33に、空気(酸素分圧約200hPa(約0.2atm))を所定流量で供給した。また、燃料ガス供給空間37には、水素(H2)含有混合ガス(H2を5vol%、窒素(N2)を95vol%)を所定流量で供給した。この状態で測定装置60(サンプル40)の温度を1000℃にして10時間維持した後、空気供給空間33から排出されるガスの組成をガスクロマトグラフにより測定し、燃料ガス供給空間37に燃料ガスの構成成分として供給された窒素(N2)ガスが含まれるか否か(すなわち、N2ガスがリークしているか否か)を測定した。
上記のようにして、インターコネクタ(1)〜(9)のそれぞれについて測定した。
次に、Cr拡散の可能性を評価した。上記リーク試験実施後のインターコネクタ(1)〜(9)において各層にCrの拡散が起こっているかどうかをEDXにより観察した。この結果、インターコネクタ(8)において、高導電性層となるLSCFに含まれるCrが隣り合う低還元膨張性層のLSZF3の内部にまで拡散していることが確認された。またインターコネクタ(9)においても、高導電性層となるLSCに含まれるCrが隣り合う低還元膨張性層のLSTF3の内部にまで拡散していることが確認された。それ以外のインターコネクタ(1)〜(7)ではCrの拡散は認められなかった。
上記インターコネクタ(1),(3)および(5)をそれぞれ備えた3種類の模擬的なSOFC(1)〜(3)を作製し、各SOFCの発電性能として出力密度を評価した。ここで、SOFC(1)はいずれも固体電解質層として膜厚20μmのYSZ膜、燃料極層として厚さ1mmのNiO−YSZ層、および空気極層として膜厚50μmのLaSrMn酸化物層から構成される積層構造を有するセルAを1個備えており、かかるセルA同士の間にインターコネクタ(1)を配置してなるスタックである。SOFC(2)は上記セルAを1個とインターコネクタ(3)とを備えるスタックである。SOFC(3)は上記セルAを1個とインターコネクタ(5)とを備えるスタックである。
SOFCの使用温度域内である1000℃の下での上記SOFC(1)〜(3)の出力密度[W/cm2]を従来と同様の方法を用いて測定した。この結果、SOFC(1)の出力密度は0.3W/cm2であった。SOFC(2)の出力密度は0.3W/cm2であった。SOFC(3)の出力密度は0.2W/cm2であった。以上より、上記インターコネクタ(1),(3)および(5)は実用的なSOFCに具備されるインターコネクタとして適用可能であることが確認された。
4 高導電性層
10 組成傾斜型インターコネクタ
12 低還元膨張性層が構成するセル対向面
13 燃料ガス用流路
14 高導電性層が構成するセル対向面
15 空気用流路
22 固体電解質
24 空気極
26 燃料極
30 ケーシング
32 空気極側外管
33 空気供給空間
34 空気供給内管
35 ガラスシール
36 燃料極側外管
37 燃料ガス供給空間
38 燃料ガス供給内管
40 サンプル
50 ヒータ
60 測定装置
100 固体酸化物形燃料電池(SOFC)
Claims (8)
- 正極である空気極と、負極である燃料極と、両極間に配置された固体酸化物電解質とからなるセルを複数備える固体酸化物形燃料電池において、該複数のセルを電気的に接続するために該セル間に配置される固体酸化物形燃料電池用インターコネクタであって、
該インターコネクタの一方のセル対向面から他方のセル対向面に向けて還元膨張率が段階的に上昇若しくは低下するように構成されており、
ここで該インターコネクタは全体に亘って以下の一般式:
Ln1−xAexMO3−δ (1)
ここで、Lnはランタノイドから選択される少なくとも1種の元素であり、Aeは、Sr、BaおよびCaからなる群から選択される1種または2種以上の元素であり、Mは、Ti,Zr,Al,Ga,Nb,Ta,Fe,Co,Ni,Cu,Mn,Mg,Rh,Pd,PtおよびAuからなる群から選択される1種または2種以上の元素であり、0≦x≦1、δは電荷中性条件を満たすように定まる値である。;
で表わされるペロブスカイト型酸化物から形成されているとともに、該インターコネクタの前記段階的に還元膨張率が異なる部分毎に、各部分を構成しているペロブスカイト型酸化物の組成が相互に異なっていることを特徴とする、組成傾斜型インターコネクタ。 - 前記還元膨張率が相対的に高い一方のセル対向面が前記インターコネクタを挟む一方のセルの空気極と対向する面であり、且つ、前記還元膨張率が相対的に低い他方のセル対向面が該インターコネクタを挟む他方のセルの燃料極と対向する面となるように配置されていることを特徴とする、請求項1に記載の組成傾斜型インターコネクタ。
- 前記一方のセル対向面から他方のセル対向面に向けて前記ペロブスカイト型酸化物の組成が相互に異なる複数の層であって該一方のセル対向面を構成する層から他方のセル対向面を構成する層に向けて段階的に還元膨張率が低下するように積層された複数の層からなる多層構造を形成しており、
該多層構造において、還元膨張率の高い前記一方のセル対向面を構成する層が該セルの空気極側に配置され、且つ、還元膨張率の低い前記他方のセル対向面を構成する層が該セルの燃料極側に配置されることを特徴とする、請求項1または2に記載の組成傾斜型インターコネクタ。 - 前記段階的に還元膨張率が異なる各部分を構成している相互に組成が異なるペロブスカイト型酸化物は、何れも以下の一般式:
La1−xSrxM1−yFeyO3−δ (2)
ここで、Mは、Ti,Zr,Al,Ga,Nb,Ta,Fe,Co,Ni,Cu,Mn,Mg,Rh,Pd,PtおよびAuからなる群から選択される1種または2種以上の元素であり、0≦x≦1であり、0.5≦y≦0.9であり、δは電荷中性条件を満たすように定まる値である。;
で表わされるペロブスカイト型酸化物に包含されることを特徴とする、請求項1〜3に記載の組成傾斜型インターコネクタ。 - 相互に還元膨張率が異なる一方のセル対向面を構成する層と他方のセル対向面を構成する層との二層構造により構成されていることを特徴とする、請求項3または4に記載の組成傾斜型インターコネクタ。
- 前記二層構造のうちの一方の層の還元膨張率は0.15%以上であり、且つ、他方の層の還元膨張率は0.15%未満であることを特徴とする、請求項5に記載の組成傾斜型インターコネクタ。
- 導電率がインターコネクタ全体に亘って50S/cm以上であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の組成傾斜型インターコネクタ。
- 正極である空気極と負極である燃料極と両極間に配置された固体酸化物電解質とからなるセルを複数備える固体酸化物形燃料電池であって、
該複数のセル間に、請求項1〜7のいずれかに記載の組成傾斜型インターコネクタが配置されていることを特徴とする、固体酸化物形燃料電池。
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