JP2010209548A - 鋼矢板基礎構造および基礎の補強方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】地盤Gと鋼矢板壁体4との剛性比に基づいて短尺鋼矢板3Bの地盤Gへの貫入長さL1が3/β以上に設定されるので、鋼矢板基礎構造1の水平抵抗力が確保できるので、土圧や地震力等の水平力に抵抗し、水平変形を抑制することができる。そして、先端が支持層に貫入される長尺鋼矢板3Aによって鉛直支持力が確保できるので、上部構造の鉛直荷重を適切に支持することができる。従って、長尺鋼矢板3Aおよび短尺鋼矢板3Bからなる鋼矢板基礎構造1において、必要以上に短尺鋼矢板3Bを長くしなくても所定の鉛直支持力と水平抵抗力が得られるので、鋼矢板3全体の長さを節約して使用鋼材量が低減でき、工期やコストを効果的に削減することができる。
【選択図】図2
Description
一方、特許文献1に記載の基礎構造では、鋼矢板の先端を比較的強固な支持層に貫入することで支持力を発揮するようになっているものの、地盤が軟弱な場合には、鋼矢板を長くして支持層まで到達させる必要があり、施工コストが増大してしまう。このため、地盤が軟弱な場合であっても、鋼矢板併用直接基礎を適用するために、鋼矢板の先端以深の軟弱層を地盤改良して安定した支持力を確保する構造も提案されている(例えば、特許文献3参照)。
また、特許文献3記載の基礎構造では、鋼矢板の数量は節約できるものの、地盤改良に要する工期やコストが増大してしまうという問題がある。
一方、特許文献4記載の鋼矢板基礎構造では、長い鋼矢板のみで鉛直支持力を確保するようになっているものの、短い鋼矢板の長さが設定されておらず、短い鋼矢板はフーチングの型枠として使用されるものであって、鋼矢板による水平抵抗力に関して考慮されていなかった。このため、短い鋼矢板を用いた場合の構造上の安定性を確保できる保証がなく、短い鋼矢板を含めた全鋼矢板の数量を削減できる根拠がないため、工期やコストの削減効果が十分に実現できず、その改良が望まれていた。
なお式(1)のβは、地盤を深さ方向に一様な無数のバネと考え、地盤反力Pと杭の変位yの関係を一次関数(P=kH・y)で表し、そこから導かれるChangの微分方程式である式(2)の一般解の定数である。この式(2)は、水平力を受ける杭の挙動として簡便で実用的な解法であることから、鋼矢板の計算にも従前から使用されている。式(2)において、xは、深さ(m )である。
これにより、地下水の流れを阻害する鋼矢板壁体の断面積が縮小されるため、地下水の通水性低下を半分程度以下に抑えることができ、周辺環境への影響を小さくすることができる。
さらに、短尺鋼矢板の先端が位置する地盤としては、軟弱なN値5以下の層であってもよい。
すなわち、本発明の鋼矢板基礎構造では、地盤の剛性(水平方向地盤反力係数)を考慮して短尺鋼矢板の長さL1を設定することから、その先端が軟弱な層に位置する場合であっても、その剛性を適切に評価して必要十分な水平抵抗力を確保することができる。
このような構成によれば、長尺鋼矢板の先端に設けた閉合部材によって閉鎖形状を形成することで、長尺鋼矢板の鉛直支持力を高めることができ、長尺鋼矢板の必要本数を削減して鋼矢板全体の使用鋼材量をさらに低減させることができる。ここで、長尺鋼矢板の本数は、設計鉛直荷重に対して所定の安全率を確保した上で、必要最低限の本数に設定することが好ましい。
ここで、特に、基礎全体が水平荷重および鉛直荷重に対してバランスよく抵抗できるように、平面的に均等に短尺鋼矢板と長尺鋼矢板とを配置することが好ましい。
このような構成によれば、一対の鋼矢板壁体を互いに対向して配置することで、当該鋼矢板基礎構造が対象とする水平力の方向に一対の鋼矢板壁体の対向方向を合わせることで、水平抵抗力を効果的に発揮させるとともに、対向方向と交差する方向の鋼矢板を削減したり省略したりすることができ、基礎構造全体の使用鋼材量をより一層削減することができる。
このような構成によれば、既設の基礎の補強においても、前述したように鉛直支持力および水平抵抗力を付与することができ、鋼矢板を用いた短工期かつ低コストでの基礎の補強を実現することができる。
なお、第2実施形態以降において、次の第1実施形態で説明する構成部材と同じ構成部材、および同様な機能を有する構成部材には、第1実施形態の構成部材と同じ符号を付し、それらの説明を省略または簡略化する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る鋼矢板基礎構造1を示す断面図である。図2は、鋼矢板基礎構造1を示す図1の直交方向から見た断面図である。図3は、鋼矢板基礎構造1を示す斜視図である。図4は、鋼矢板基礎構造1における長尺鋼矢板3Aの先端部を示す横断面図および斜視図である。
図1〜図3において、鋼矢板基礎構造1は、上部構造としての擁壁や橋台を支持するものであって、上部構造の脚部に連結されるコンクリート製のフーチング(橋台基礎)2と、このフーチング2の対向する2側面に固定されて地盤Gに貫入される複数の鋼矢板3とを有して構成されている。ここで、地盤Gは、地表面側から順に、非常に軟弱な表層地盤G1と、その下側で比較的軟弱な中間地盤G2と、その下側で強固な支持地盤G3とで構成されている。また、フーチング2は、上部構造からの鉛直荷重と、フーチング2の一側面側に盛られた盛土Sから土圧(水平力)とを受け、鋼矢板3を介して鉛直荷重および土圧を地盤Gに伝達するようになっている。
式(1)において、kH は、水平方向地盤反力係数(kN/m3)であり、Dは、荷重作用方向(X方向)に直交する鋼矢板基礎の載荷幅(m )、EIは、鋼矢板基礎の曲げ剛性(kN・m2 )である。すなわち、図2、3に示すように、Dは、鋼矢板壁体4のY方向に沿った幅寸法であり、EIは、鋼矢板壁体4のY軸回りの曲げ剛性を意味する。
次に、本発明の第2実施形態の鋼矢板基礎構造1Aを図5、図6に基づいて説明する。
図5は、第2実施形態に係る鋼矢板基礎構造1Aを示す断面図である。図6は、鋼矢板基礎構造1Aにおける長尺鋼矢板3Aの先端部を示す横断面図および側面図である。
鋼矢板基礎構造1Aは、前記第1実施形態の鋼矢板基礎構造1と比較して、長尺鋼矢板3Aと短尺鋼矢板3Bとの本数および配置、および長尺鋼矢板3A先端の閉合鋼材5の構成が相違するものの、他の構成は第1実施形態と略同様である。以下、相違点について詳しく説明する。
以上の鋼矢板基礎構造1Aにおいても、短尺鋼矢板3Bの地盤Gへの貫入長さL1は、特性値βに基づき3/β以上に設定され、かつ長尺鋼矢板3Aの地盤Gへの貫入長さL2に対して1/2以下に設定されている。
すなわち、地盤Gと鋼矢板壁体4との剛性比に基づいて短尺鋼矢板3Bの地盤Gへの貫入長さL1が3/β以上に設定されるので、鋼矢板基礎構造1,1Aの水平抵抗力が確保できるので、フーチング2に作用する土圧や地震力等の水平力に抵抗し、水平変形を抑制することができる。そして、閉合鋼材5で閉鎖断面とされた先端が支持地盤(支持層)G3に貫入される長尺鋼矢板3Aによって鉛直支持力が確保できるので、上部構造の鉛直荷重を適切に支持することができる。従って、長尺鋼矢板3Aおよび短尺鋼矢板3Bからなる鋼矢板基礎構造1,1Aにおいて、必要以上に短尺鋼矢板3Bを長くしなくても所定の鉛直支持力と水平抵抗力が得られるので、鋼矢板3全体の長さを節約して使用鋼材量が低減でき、工期やコストを効果的に削減することができる。
この載荷試験では、短尺鋼矢板3Bの貫入長さ寸法L1をパラメータとし、前記特性値βおよび長尺鋼矢板3Aの貫入長さ寸法L2との関係において、
L1=(1/β,2/B,3/β,L2)
の4種類の鋼矢板基礎構造1について実施した。ここで、L1=3/βを設定した根拠は、地盤を深さ方向に一様な無数のバネと仮定したとき、鋼矢板基礎頭部に水平力が作用した場合に、鋼矢板に発生する応力や水平変位が、鋼矢板の長さが3/β以上となると鋼矢板の長さが無限長とした場合と解析上ほぼ同程度になることから、一つの目安とした。
ここで、実大基礎において想定する地盤Gの条件として、表層地盤G1は、N値が3の軟弱層であり層厚が7mで、中間地盤G2は、N値が5の軟弱層であり層厚が13mで、支持地盤G3は、N値が50以上の強固な層である。また、長尺鋼矢板3Aの先端には閉合鋼材5が設けられ、この先端は、支持地盤G3に対し、当該鋼矢板3の断面高さ寸法の2倍以上貫入されている。
図7は、水平載荷試験の結果を表すグラフであって、横軸が鋼矢板3頭部の水平変位(mm)であり、縦軸が水平荷重(kN)である。このグラフにおいて、短尺鋼矢板3Bを長尺鋼矢板3Aと同じ貫入長さ(L1=L2、全長)にしたものを□で表し、短尺鋼矢板3Bの貫入長さ寸法L1を1/β(L1=1/β)にしたものを◇で表し、2/β(L1=2/β)にしたものを○で表し、3/β(L1=3/β)にしたものを△で表す。
(1)L1=L2(全長)のものと比較して、L1が1/β(L1=1/β)のものでは、最大水平荷重が約75%に低下し、L1が2/β(L1=2/β)のものでは、最大水平荷重が約85%に低下する。
(2)L1が3/β(L1=3/β)のものでは、全長(L1=L2)のものと終局状態において同程度の最大水平荷重となり、載荷初期の剛性も他のものより高い。
以上の試験結果から、短尺鋼矢板3Bの貫入長さ寸法L1を3/β以上(L1≧3/β)とすれば、全長(L1=L2)のものと同程度の水平抵抗力が得られることが判明した。ここで、短尺鋼矢板3Bの貫入長さ寸法L1を3/βよりも長くしても、水平抵抗力が増加するわけではなく、使用鋼材量が増えるだけであるから、その長さ寸法L1としては、3/β以上を確保した上で、できるだけ短く設定することが経済的である。
例えば、前記実施形態における長尺鋼矢板3Aと短尺鋼矢板3Bとの配列は、例示にすぎず、その配列に限定されるものではない。例えば、長尺鋼矢板3Aと短尺鋼矢板3Bとを各1本ずつ交互に配列してもよく、また長尺鋼矢板3Aと短尺鋼矢板3Bとを各2本ずつ交互に配列してもよく、さらにはそれぞれ任意の本数ずつ長尺鋼矢板3Aおよび短尺鋼矢板3Bを配列してもよい。
また、前記実施形態では、長尺鋼矢板3Aの先端に閉合鋼材5を設け、この先端を支持層に貫入することとしたが、閉合鋼材5は、本発明の必須要件ではなく適宜に省略することができる。
従って、上記に開示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質などの限定の一部もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
Claims (6)
- 請求項1に記載の鋼矢板基礎構造において、
前記短尺鋼矢板の地盤への貫入長さL1は、前記長尺鋼矢板の地盤への貫入長さL2に対して1/2以下に設定されていることを特徴とする鋼矢板基礎構造。 - 請求項1または請求項2に記載の鋼矢板基礎構造において、
前記短尺鋼矢板の先端が位置する地盤が軟弱なN値10以下の層であることを特徴とする鋼矢板基礎構造。 - 請求項1から請求項3のいずれかに記載の鋼矢板基礎構造において、
前記長尺鋼矢板の先端には、当該長尺鋼矢板の開断面を閉じる閉合部材が設けられていることを特徴とする鋼矢板基礎構造。 - 請求項1から請求項4のいずれかに記載の鋼矢板基礎構造において、
前記長尺鋼矢板と短尺鋼矢板とがそれぞれ1本または複数本ずつ交互に隣り合って連結された鋼矢板壁体が構成され、この鋼矢板壁体が互いに対向した一対で設けられていることを特徴とする鋼矢板基礎構造。 - 請求項1から請求項5のいずれかに記載の鋼矢板基礎構造を用いて、既設の基礎を補強することを特徴とする基礎の補強方法。
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