JP2010207946A - 切削工具 - Google Patents

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Abstract

【課題】 刃先に大きな衝撃がかかる切削においてもαAl層とTiCN層との界面で破壊が起きず、αAl層が剥離しない切削工具を提供する。
【解決手段】 基体2表面にTiCN層4とαAl層6を順に形成し、すくい面11においてαAl層6の表面を鏡面とした状態で電界放出型走査顕微鏡を用いて後方散乱電子回折像解析からαAl層の各結晶の結晶方位を特定し、これに基づいてカラーマップを作成したとき、50〜90面積%が長径1μm〜3μmの粗粒子21、0〜20面積%が長径0.5μmより大きくて1μmより小さい中粒子23、10〜50面積%が長径0.05μm〜0.5μmの微粒子22で構成され、かつ、粗粒子21のうちの80面積%以上が(0,0,0,1)面の結晶方位を持つとともに、微粒子22のうちの50面積%以上が(1,0,−1,0)面の結晶方位を持っている切削工具1である。
【選択図】 図3

Description

本発明は、被覆層を基体の表面に被着形成した切削工具に関する。
従来より、金属の切削加工に広く用いられている切削工具は、超硬合金やサーメット、セラミックス等の基体の表面に、複数の被覆層が形成された切削工具が多用されている。前記被覆層としては、炭化チタン(TiC)層、窒化チタン(TiN)層、炭窒化チタン(TiCN)層および酸化アルミニウム(Al)層等の多層構造からなる被覆層が知られており、TiCN層、中間層(結合層)、Al層の順に成膜された被覆層が多用されている。特に、Al層をα型結晶からなるαAl層にて構成する場合には、TiCN層とαAl層との間で剥離が発生しやすく、αAl層の密着力を高める必要があった。
特許文献1では、αAl層の粒径、膜厚、および(012)面に対する組織化係数を調整することにより、αAl層の密着力を向上させることが記載されている。
また、特許文献2では、αAl層における(0001)面に配向している粒子が、70面積%以上を占めることによって、Al層が優れた耐チッピング性を発揮することが記載されている。
特開平06−316758号公報 特開2004−284003号公報
しかしながら、上記特許文献1または2に記載の切削工具も、αAl層とその下地層との密着力やαAl層の被削材に対する耐溶着性が不十分であり、鋳鉄等の中速、または高速連続切削加工のように被削材が溶着しやすく、かつ、断続的に切刃に衝撃がかかるような切削加工においては被覆層が剥離して十分な切削性能を発揮できず、このような被削材の切削加工においては被覆層の耐剥離性の向上が求められていた。
従って、本発明は上記課題を解決するためになされたもので、その目的は、被削材が溶着せず、さらにαAl層が剥離しない安定した切削性能を発揮する切削工具を提供することである。
本発明者は、上記課題に対して検討した結果、αAl層を構成する結晶を粗粒子と微粒子が混在した構成とし、かつ、粗粒子と微粒子の結晶方位を適正化することによって、αAl層の耐溶着性を向上させ、かつ、αAl層の剥離を抑制できる結果、切削工具の耐摩耗性が向上することを知見した。
すなわち、本発明の切削工具は、すくい面と逃げ面との交差稜線部が切刃を構成し、基体表面に、炭窒化チタン(TiCN)層とα型結晶構造を有する酸化アルミニウム(Al)層とを順に形成してなる切削工具において、前記すくい面において前記αAl層の表面を鏡面とした状態で電界放出型走査顕微鏡(FE−SEM)を用いて後方散乱電子回折像(EBSD)解析から酸化アルミニウム層の各結晶の結晶方位を特定し、これに基づいてカラーマップを作成したとき、50〜90面積%が長径1μm〜3μmの粗粒子、0〜20面積%が長径が0.5μmより大きく1μmより小さい中粒子、10〜50面積%が長径0.05μm〜0.5μmの微粒子で構成され、かつ、前記粗粒子のうちの80面積%以上が(0,0,0,1)面の結晶方位を持つとともに、前記微粒子のうちの50面積%以上が(1,0,−1,0)面の結晶方位を持っていることを特徴とする。
ここで、前記中粒子が存在する場合にはそのうちの50面積%以上が(0,1,−1,0)面の結晶方位を持っていることが望ましい。
本発明の切削工具によれば、Al層を構成する結晶がα型Al結晶であって粗粒子と微粒子が混在した構成からなり、かつ、粗粒子と微粒子の配向結晶面を適正化することによって、αAl層の耐溶着性を向上させ、かつ、αAl層の剥離を抑制できる結果、切削工具の耐剥離性を向上させることができる。
また、前記中粒子が存在する場合にはそのうちの50面積%以上の粒子の結晶配向が(0,1,−1,0)面に配向していることによって、αAl層の耐溶着性をさらに向上させることができる。
本発明の切削工具の好適例であるスローアウェイチップの一例についての概略斜視図である。 図1のスローアウェイチップの断面についての模式図である。 図2のスローアウェイチップについて、Al層を表面に露出させた状態で電界放出型走査顕微鏡(FE−SEM)を用いて後方散乱電子回折像(EBSD)解析からAl層の各結晶の結晶方位を特定し、これに基づいて作成したカラーマップである。
本発明の切削工具の好適例であるスローアウェイチップ(以下、チップと略す。)の一例についての概略斜視図である図1、およびその断面についての模式図である図2に基づいて説明する。図1によれば、チップ1は主面をすくい面11および着座面(図示せず)、側面を逃げ面12とし、すくい面11と逃げ面12の交差稜線部に切刃13を有する形状からなる。そして、図2に示すように、チップ1は、基体2の表面に、TiN層3と、TiCN層4と、α型結晶構造を有するAl層(以下、単にαAl層と称す。)6とが形成された被覆層8を被覆した構成からなる。
ここで、本発明によれば、αAl層6を表面に露出させて、鏡面となるように加工した状態で電界放出型走査顕微鏡(FE−SEM)を用いて後方散乱電子回折像(EBSD)解析からαAl層6の各結晶の結晶方位を特定し、これに基づいてカラーマップを作成したとき、図3のようなマップとなる。すなわち、αAl結晶のうちの50〜90面積%、好ましくは60〜80面積%、特に60〜70面積%が長径1μm〜3μmよりなる粗粒子21からなり、0〜20面積%、好ましくは、0〜10面積%、特に0〜1面積%が長径0.5μmより大きく1μmより小さい中粒子23からなり、10〜50面積%、好ましくは20〜40面積%、特に、30〜40面積%が長径0.05μm〜0.5μmの微粒子22からなる構成となる。そして、粗粒子21のうちの80面積%以上、特に90面積%以上が(0,0,0,1)面の結晶方位を持ち、かつ、微粒子22のうちの50面積%以上、特に80面積%以上が(1,0,−1,0)面の結晶方位を持っている。
すなわち、αAl層6を構成するαAl結晶が粗粒子と微粒子が混在する粗微混粒構造からなり、かつこれらの粒子の結晶方位が上記所定の方向にあることによって、αAl層6の被削材に対する耐溶着性を向上できると共に、αAl層6の耐剥離性を向上させることができる。
ここで、粗粒子21の含有量が50面積%未満もしくは90面積%より大きくなると、αAl層6の密着力が弱くなり、αAl層に剥離が発生してしまう。また、微粒子22の含有比率が10面積%未満になるかもしくは50面積%より大きくなると、αAl層6に十分な密着力を付与させることができなくなる。さらに、中粒子23の含有量が10面積%より多い場合にもαAl層に剥離が発生しやすくなる。
また、粗粒子21の(0,0,0,1)面配向が80%未満だと耐溶着性が低下する。一方、微粒子22の(1,0,−1,0)面配向となる粒子が50%未満であると、αAl層6の密着力が不十分となり、膜剥離が発生しやすくなってしまう。
ここで、αAl層6を構成する結晶の粒径、および各結晶の結晶方位を測定する方法について説明する。測定面はすくい面11のうちの着座面に平行な部分とし、αAl層6の上面から0.2μmの深さ以内の深さだけ研磨した鏡面とする。このとき、被覆層8の表面がαAl層6でなく、TiNのように他の層が被覆している場合には、被覆層8を着座面と平行に研磨加工してαAl層6を露出させた面を測定面とする。αAl層6が露出している場合には上面から0.2μmの深さ以内の深さだけ研磨した鏡面を測定面とする。
測定装置は、電界放出型走査電子顕微鏡(FE−SEM)を用い、これに後方散乱電子回折像(EBSD:Electron Backscatter diffrection PatternまたはEBSPとも呼ばれる。)システムが組み込まれた装置を用いる。そして、この装置を用いて後方散乱電子回折像(EBSD)を作成し、そのデータを解析して結晶方位データを算出し、この結晶方位データに基づいてカラーマッピング図を作成する。カラーマッピングにおいては、αAl層6の(0,0,0,1)面、(1,0,−1,0)面、(0,1,−1,0)面をそれぞれ異なる色に指定してマッピングすることにより、視覚的に各結晶の配向状態を認識することができる。
本発明においては、各結晶に対して最も長く引ける対角線を長軸として、1〜3μmを粗粒子21、0.5μmより大きく1μmより小さい中粒子23、0.05〜0.5μmを微粒子22と区分する。そして、粗粒子の各結晶について結晶方位を特定し、(0,0,0,1)面の結晶方位を示す色を呈している結晶の面積を粗粒子21の総面積で割り、(0,0,0,1)面の粒子の割合を算出する。同様に微粒子22の(1,0,−1,0)面の結晶方位を示す色を呈している結晶の割合、中粒子23の(0,1,−1,0)面の結晶方位を示す色を呈している結晶の割合を算出する。
なお、測定に際しては、観察する画像の倍率は7,500倍として15μm四方のカラーマッピングにて分析する。また、このカラーマッピングを3視野について行い、これらの測定値の平均値を測定値とする。
ここで、本発明によれば、αAl層6において、中粒子23の存在比率が20面積%以下であることが、αAl層6の密着力を向上させることができるために望ましい。つまり、中粒子23の含有量を20面積%以下として、αAl層6の結晶状態を粗微混粒の組織とすることによってαAl層6の付着力を高めることができる。
なお、中粒子23が存在する場合であっても、中粒子23のうちの50面積%以上、特に、80面積%以上の粒子の結晶配向が(0,1,−1,0)面に配向していることが、αAl層6の被削材に対する耐溶着性が向上するため望ましい。
一方、TiCN層4は、高い硬度と靭性を有するため、工具1の耐摩耗性および耐欠損性を向上させることができる。特に、筋状結晶構造をなす筋状TiCN結晶とすることにより、工具1の耐摩耗性および耐欠損性を向上させることができる。また、幅の狭い筋状TiCN結晶にて構成されるTiCN層の上に、幅の広い結晶構造をなす筋状のTiCN結晶からなるTiCN層を設けることによって、αAl層6の密着力をさらに向上させることができるため望ましい。
さらに、αAl層6とTiCN層4との間には、Ti、Al、炭素および窒素を主成分とする中間層5が設けられている。特に、中間層5は、αAl層6と接する下層として酸素を15〜25原子%含有し、かつ、厚みが0.5〜30nmからなることが、αAl層6の密着力を向上させることができるため望ましい。
また、αAl層6の上層にTiN層を形成した場合には、被覆層表面の摺動性、外観等の調整が可能となる。すなわち、TiN層は金色を呈するため、切削工具1を使用したときに表層が摩耗して使用済みかどうかの判別がつきやすく、また、摩耗の進行を容易に確認できるため望ましい。なお、表層はTiN層に限定されるものではなく、摺動性を高めるためにDLC(ダイヤモンドライクカーボン)層やCrN層を形成する場合もある。表層をなすTiN層の厚みは2.0μm以下であることが望ましく、かかる表層の剥離強度がαAl層6の剥離強度よりも低いことが使用の有無を目視で確認しやすくなる点で望ましい。
さらに、TiCN層4と基体2との間に下地層として配設されるTiN層3は、基体2の成分が被覆層8に拡散することを抑制する効果がある。
なお、切削工具1の基体2は、炭化タングステン(WC)と、所望により周期表第4、5、6族金属の炭化物、窒化物、炭窒化物の群から選ばれる少なくとも1種からなる硬質相をコバルト(Co)および/またはニッケル(Ni)等の鉄属金属からなる結合相にて結合させた超硬合金や、Ti基サーメット、またはSi、Al、ダイヤモンド、立方晶窒化ホウ素(cBN)等のセラミックスのいずれかが好適に使用できる。中でも、基体2は、超硬合金またはサーメットからなることが耐欠損性および耐摩耗性の点で望ましい。
(製造方法)
ここで、本発明の切削工具を作製する方法の一例について説明する。
まず、基体2となる硬質合金を焼成によって形成しうる金属炭化物、窒化物、炭窒化物、酸化物等の無機物粉末に、金属粉末、カーボン粉末等を適宜添加、混合し、プレス成形、鋳込成形、押出成形、冷間静水圧プレス成形等の公知の成形方法によって所定の工具形状に成形した後、真空中または非酸化性雰囲気中にて焼成することによって上述した硬質合金からなる基体2を作製する。そして、上記基体2の表面に所望によって研磨加工や切刃部のホーニング加工を施す。
次に、その表面に化学気相蒸着(CVD)法によって表面被覆層を成膜する。
まず、反応ガス組成として四塩化チタン(TiCl)ガスを0.5〜10体積%、窒素(N)ガスを10〜60体積%、残りが水素(H)ガスからなる混合ガスを調整して反応チャンバ内に導入し、チャンバ内を800〜940℃、8〜50kPaの条件で下地層であるTiN層3を成膜する。
次に、反応ガス組成として、体積%で四塩化チタン(TiCl)ガスを0.5〜10体積%、窒素(N)ガスを10〜60体積%、アセトニトリル(CHCN)ガスを0.1〜3.0体積%、残りが水素(H)ガスからなる混合ガスを調整して反応チャンバ内に導入し、成膜温度を780〜880℃、5〜25kPaにてTiCN層4を成膜する。
ここで、上記成膜条件のうち、反応ガス中のアセトニトリルガスの割合が0.1〜0.4体積%に調整すること、および成膜温度を780℃〜880℃とすることが、断面観察において下側部分が微細な筋状晶をなすTiCN層(MT−TiCN層)を形成できるために望ましい。
また、TiCN層4の上側部分の成膜条件として、四塩化チタン(TiCl)ガスを2.5〜4体積%、メタン(CH)ガスを0.1〜10体積%、窒素(N)ガスを0〜15体積%、残りが水素(H)ガスからなる混合ガスを調整して反応チャンバ内に導入し、チャンバ内を950〜1100℃、5〜40kPaとすることが望ましい。
その後、中間層5を下記a工程にて成膜する。具体的な条件としては、まず、四塩化チタン(TiCl)ガスを1〜5体積%、メタン(CH)ガスを4〜10体積%、窒素(N)ガスを10〜30体積%、一酸化炭素(CO)ガスを4〜10体積%、残りが水素(H)ガスからなる混合ガスを調整する。これらの混合ガスを調整して反応チャンバ内に導入し、チャンバ内を950〜1100℃、ガス圧5〜40kPa、成膜時間を20〜60分とする(a−1工程)。
次に、二酸化炭素(CO)ガスを1〜3体積%、残りが窒素(N)ガスとし、この混合ガスを反応チャンバ内に導入し、反応チャンバ内の温度を950〜1100℃、圧力を5〜40kPaにして、処理時間を10〜60分として前記a−1工程で成膜された部分を酸化する処理を行う(a−2工程)。
このa−1工程とa−2工程によって中間層5を極薄く形成できる。形成された中間層5は適正な酸素量を有するが、これが、この後に成膜されるAl層を構成する結晶がα型Al結晶となり、α型Al結晶の成長を本発明の範囲内とするために必要である。
そして、上記a工程にて形成された中間層5の表面に、水素(H)ガスをキャリアガスとして塩化アルミニウム(AlCl)を流すことによってαAl層6の核形成を行う(b工程)。本発明によれば、この核形成処理工程(b工程)を下記2つの工程に分けて行う。すなわち、まず、三塩化アルミニウム(AlCl)ガスを2.0〜5.0体積%、残りが水素(H)ガスからなる混合ガスを用いて、この混合ガスを反応チャンバ内に導入し、反応チャンバ内の温度を950〜1100℃、圧力を5〜40kPa、処理時間を5〜10分として成膜を行う。これによって、中間層5の表面部分にαAl層6の粗粒子の核が生成する(b−1工程)。次に、AlClガスの量を0.5〜1.5体積%として、反応チャンバ内の温度を950〜1100℃、圧力を5〜40kPa、処理時間を1〜4分として成膜を行う。これによってαAlの微粒子の核が生成する(b−2工程)。このように粗粒子の核を生成させた後に微粒子の核を生成させることによって、αAl粒子が粗粒子と微粒子との2種類の粒径群からなるとともに結晶の方位を特定の方向に制御したαAl層6を作製することができる。
そして、引き続き、αAl層6を成膜する。αAl層6の成膜方法としては、三塩化アルミニウム(AlCl)ガスを0.5〜3.0体積%、塩化水素(HCl)ガスを1.0〜3.0体積%、二酸化炭素(CO)ガスを1.0〜5.0体積%、硫化水素(HS)ガスを0.2〜0.4体積%、残りが水素(H)ガスからなる混合ガスを用い、950〜1050℃、5〜10kPaとすることが望ましい。
また、所望により、表層(TiN層等)を成膜する。具体的な成膜条件は、反応ガス組成として四塩化チタン(TiCl)ガスを0.1〜10体積%、窒素(N)ガスを5〜60体積%、残りが水素(H)ガスからなる混合ガスを調整して反応チャンバ内に導入し、チャンバ内を960〜1100℃、10〜85kPaとすればよい。
そして、所望により、成膜した被覆層3表面の少なくとも切刃部を研磨加工する。この研磨加工により、切刃部が平滑に加工され、被削材の溶着を抑制して、さらに耐欠損性に優れた工具となる。
平均粒径1.5μmの炭化タングステン(WC)粉末に対して、平均粒径1.2μmの金属コバルト(Co)粉末を6質量%の割合で添加、混合して、プレス成形により切削工具形状(CNMA120412)に成形した後、脱バインダ処理を施し、0.5〜100Paの真空中、1400℃で1時間焼成して超硬合金を作製した。さらに、作製した超硬合金にブラシ加工にてすくい面側について刃先処理(Rホーニング)を施した。
次に、上記超硬合金に対して、CVD法により、TiClガスを2.0体積%、Nガスを33体積%、残りがHガスからなる混合ガスを反応チャンバ内に導入し、チャンバ内を880℃、16kPaとして下地層のTiN層を0.1μm成膜し、次に、TiClガスを2.5体積%、Nガスを23体積%、CHCNガスを0.4体積%、残りがHガスからなる混合ガスを反応チャンバ内に導入し、チャンバ内を865℃、9kPaとして平均結晶幅が0.3μmの筋状TiCN層を5μm成膜し、続いて、TiClガスを2.5体積%、Nガスを10体積%、CHCNガスを0.9体積%、残りがHガスからなる混合ガスを反応チャンバ内に導入し、チャンバ内を865℃、9kPaとして平均結晶幅が0.8μmの筋状TiCN層を0.5μm成膜した。その後、表1の条件の工程を表2に示す順に成膜して、中間層を15nm、αAl層を4.5μmおよび最表層のTiN層を0.5μm成膜した。そして、被覆層の表面をすくい面側から30秒間ブラシ加工して試料No.1〜20の切削工具を作製した。
得られた工具について、主面を研磨加工し、αAl層が表面から0.2μm以内の深さだけ研磨された鏡面状態で露出するように研磨加工した。そして、この研磨面に対して電界放出型走査電子顕微鏡(FE−SEM)を用いてEBSD解析からαAl層を構成する各αAl結晶の粒径、粗粒子、微粒子、中粒子の存在割合、および各結晶の結晶方位を測定した。なお、測定には上記EBSD解析からαAl層の各結晶の結晶方位を特定したデータに基づいて作成したカラーマッピングを用いた。ここで、カラーマッピング像においては、酸化アルミニウム層の(0,0,0,1)面を赤色、(1,0,−1,0)面を青色、(0,1,−1,0)面を緑色として示した。
そして、全ての粗粒子に対して、(0,0,0,1)面の赤色になっている粒子を特定して粗粒子の総面積で割り、粗粒子のうちの(0,0,0,1)面の結晶方位を持つ結晶の割合を算出した。同様に微粒子の(1,0,−1,0)面の結晶方位を持つ結晶の割合、中粒子の(0,1,−1,0)面の結晶方位を持つ結晶の割合を算出した。このとき、測定する画像の倍率は7,500倍とし、15μm四方を1視野として3視野について測定を行い、これらの測定値の平均値を各結晶の測定値とした。結果は表3に示した。
そして、この切削工具を用いて下記の条件により、断続切削試験を行い、耐欠損性を評価した。
被削材 :ダクタイル鋳鉄8本溝入りスリーブ材(FCD700)
工具形状:CNMA120412
切削速度:300m/分
送り速度:0.3mm/rev
切り込み:1.0mm
その他 :水溶性切削液使用
評価項目: 摩耗量が0.3mmとなった時の切削時間を測定した。また、切削直後、切削時間3分経過した後の切刃の状態をそれぞれ観察した。結果は表4に示した。
表1〜4より、試料No.9〜20では、切刃のαAl層が早期に剥離したため、摩耗の進行が早まり、十分な工具寿命を得ることができなかった。
これに対して、本発明のαAl層を成膜した試料1〜8では、切削評価においてαAl層の剥離や切刃チッピング、被削材の溶着が抑制され、耐摩耗性が優れた切削性能を有するものであった。
1 切削工具
2 基体
3 窒化チタン(TiN)層
4 炭窒化チタン(TiCN)層
5 中間層
6 α型結晶構造を有する酸化アルミニウム層(αAl層)
8 被覆層
11 すくい面
12 逃げ面
13 切刃
21 粗粒子
22 微粒子
23 中粒子

Claims (2)

  1. すくい面と逃げ面との交差稜線部が切刃を構成し、基体表面に、炭窒化チタン層とα型結晶構造を有する酸化アルミニウム層とを順に形成してなる切削工具において、前記すくい面において前記酸化アルミニウム層の表面を鏡面とした状態で電界放出型走査顕微鏡(FE−SEM)を用いて後方散乱電子回折像(EBSD)解析から前記酸化アルミニウム層の各結晶の結晶方位を特定し、これに基づいてカラーマップを作成したとき、50〜90面積%が長径1μm〜3μmの粗粒子、0〜20面積%が長径0.5μmより大きくて1μmより小さい中粒子、10〜50面積%が長径0.05μm〜0.5μmの微粒子で構成され、かつ、前記粗粒子のうちの80面積%以上が(0,0,0,1)面の結晶方位を持つとともに、前記微粒子のうちの50面積%以上が(1,0,−1,0)面の結晶方位を持っていることを特徴とする切削工具。
  2. 前記中粒子が存在する場合には、前記中粒子のうちの50面積%以上が(0,1,−1,0)面の結晶方位を持っていることを特徴とする請求項1に記載の切削工具。
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